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SS

【SS】忌まれた子供

 ▼ 1 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 17:46:59 ID:VJ2CsGJg [1/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
寒く暗い闇夜に浮かぶ青白い半月。
それは深く黒い草むらを行く二匹をうっすらと写し出した。
クリーム色の体表に、青い耳と手足をもつそれは、一般的にマイナンと言う名で呼ばれている。
この二匹は夫婦である。そして、彼らが袋に入れて運んでいたのが、彼らの幼い息子であった。
彼らは原を抜け、……自らの子を捨てるのに丁度いい場所を見つけた。
顔を見合せ、どちらもなく頷く。
袋から取り出し、寒空の下に置き去りにしていった息子は、クリーム色の体表に、青でなく……青緑の耳と手足を持っていた。


 ▼ 2 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 17:49:09 ID:VJ2CsGJg [2/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

プラスル「今日も楽しかったね、じゃあまたね!!」

フォッコ「うん!!」

キモリ「そうだな!!」

プラスル「まったねー!!」フリフリ

キモリ「じゃあねー♪」ブンブン

ジグザグマ「また明日〜!!」フリフリ

フォッコ「気を付けてね!!」フリフリ

チルット「バイバーイ!!」パタパタ


まだ幼いポケモン達が、夕焼けに照らされる森で笑いながら別れる。
その幼いポケモンの中の一匹に、プラスルと呼ばれるポケモンがいた。
クリーム色の体表に赤い耳と手足を持つ、マイナンの対になるポケモンである。
 ▼ 3 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 17:51:01 ID:VJ2CsGJg [3/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「〜♪ 〜♪〜……?」


鼻唄を歌いながら帰る彼女は、他の草と色の違う緑に気がついた。プラスルはそれに興味を示してしまった。
低木を掻き分けて、その緑の正体を見る。
それは、マイナンであった。あの、青緑のマイナンである。


   ガサッ ガサッ

プラスル「え、これマイナン?マイナンなのかな……起きてる? 大丈夫?」コンコン

マイナン「」

プラスル「大丈夫? 生きてる?」コンコン


返事がない。只の屍のようだ。……いや、もう動こうとしないコレはある意味屍であった。
このまま誰にも見つけられなければ、これは確実に屍だっただろう。
痩せこけた体は、まだ若いポケモンであるプラスルでも持ち上げられた。

プラスル「大丈夫かな……」ヨイショッ

プラスル「うーん、この子どうしよう……お姉ちゃんにきいてみようかな?」
 ▼ 4 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 17:53:03 ID:VJ2CsGJg [4/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少し迷ったプラスルは、姉に相談しようと考えた。
プラスルがマイナンを持っていく。
二匹の影は、夕日によって、長く歪められていた。

木の洞。端的に表すなら、プラスルの家はそれであった。
森の木の中でわりかし太いものを加工し、穴をほり、すみやすい住居としたものだ。
今は亡きプラスルの両親が作った、天然のエアコンつきマイホームである。
そこにプラスルは、唯一の肉親である姉と住んでいた。


プラスル「お姉ちゃん?」

プラスル姉「あ、お帰りプラスル!! ……何それ」

プラスル「ん、これ? 拾った!!」

プラスル姉「拾ったって、ポケモンじゃない……え、いや何なのこれ本当」


プラスルの帰宅と共に連れ込まれた青緑の不審者は、すぐに姉に気づかれた。
マイナンを覗き込み、この個体は色違いだと確信するプラスルの姉。
そこからの彼女の判断は早かった。
 ▼ 5 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 17:56:35 ID:VJ2CsGJg [5/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル姉「もとの場所に戻してきなさい」キッパリ

プラスル「ふぇっ!?」ビクッ

プラスル姉「戻してきなさい。そんなやつ養えません」

プラスル「で、でも……」

プラスル姉「でもも何もありません!! 色違いだなんて、一緒に居るだけで寒気がする……」

プラスル「うう……」


色違い=不幸を呼ぶ子。野生だとそのように思われているらしい。
研究者達は、色が原因で天敵に見つかるとか、仲間達がストレスを溜めるとか言っているが、詳細は定かでない。
ただ、この色違いのマイナンが歓迎されていない事だけは、確かな真実だった。


マイナン「……んっ……」

プラスル姉「ほら、もう起きそうじゃない。早く戻しなさい」

プラスル「やだ!! 私ちゃんとお世話するから!!」

プラスル姉「でも……」

プラスル「お姉ちゃん!! 一生のお願い!!」ドゲザッ

プラスル姉「もう……仕方無いなぁ」ハァ
 ▼ 6 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:00:18 ID:VJ2CsGJg [6/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

どうやら妹には甘い姉だったようだ。
プラスルの姉は、プラスルの土下座での頼み込みに折れたようだった。
一応マイナンを保護するとして、食事を与えようと考えたプラスルの姉は、妹にマイナンを起こさせた。

プラスル「ねぇ、起きて、起きて!!」ユサユサ

マイナン「……?」

プラスル「あ、起きた!!」

マイナン「……ここは?」

プラスル「私の家よ!!」ドヤッ


目を覚ましたマイナンに胸を張るプラスル。
プラスルはマイナンに食事を取らせながら、彼に何が有ったのかと話を聞こうとした。
だが、マイナンにはあるものが消えていたのだ。


プラスル「どこから来たの?」

マイナン「……どこだろ?」


記憶だ。何が原因かは分からないが、このマイナンからは記憶がさっぱり抜け落ちていたのだった。
 ▼ 7 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:02:49 ID:VJ2CsGJg [7/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナンは訳もわからず食べ物を押し付けられ、いつの間にか寝かされた。
扱いはさながらペットである。
マイナンは布団で微動だにしなかった。
長く短い夜が更け、そして朝日が昇る。


プラスル「ふぁぁ……おはようお姉ちゃん!!」

プラスル姉「おはよう♪」

プラスル「学校行ってくるね!!」ダッ

プラスル姉「いってらっしゃい!!」


プラスルは起きてすぐに"学校"なる所へと向かった。
別に学費は払っていない。
子供の遊び場に旅のポケモンがやって来て先生となった……といったところだろうか。
行く義務何て何処にも無いが、プラスルは毎日通っていた。姉が行かせていたのだ。

プラスルの姉は妹を見送ってから、家の掃除をしていた。
プラスルの隣の布団で眠るマイナンを見つけ、思わず舌打ちする。
見るだけで不愉快な存在、それが色違い。
人間で例えるなら、一昔前の西洋の構図……黒人を憎む白人といったところだろうか?
 ▼ 8 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:06:22 ID:VJ2CsGJg [8/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル姉「……」ゲシッ

マイナン「……!?」ビクッ

プラスル姉「起きろホームレス……さっさと出ていって」ギロッ

マイナン「……!!」


プラスルの姉は苛ついていた。
だから、手近にあった"サンドバッグ"を殴ることにした。
寝ていたマイナンを蹴り起こす。そして出ていくよう言いつけた。

プラスル姉「正直言って、貴方みたいな忌み子が居ると迷惑なのよ。もし貴方のせいで私達に何かあったらどうするの? ただでさえ大変なのに……」

マイナン「……」

プラスル姉「ねぇ、出ていってよ!! 貴方みたいな奴なんて飼う気全然起きないのよ!!」ゲシッ
 ▼ 9 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:09:22 ID:VJ2CsGJg [9/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナンは抵抗しない。
抵抗する気が起きなかったのだ。
だが、それはプラスルの姉が恐ろしかった訳では無く、いや、恐ろしいとか悲しいとか空しいなんて微塵も思っていなくて、ただ抵抗しようと思わなかっただけである。
つまり、このマイナンからは記憶だけでなく、感情までもが抜け落ちていたのである。


   ガサッ

マイナン「……?」

プラスル姉「ほら、プラスルが帰ってこないうちに出ていきなさい!!」グイグイ

マイナン「……」ズルズル


日はもう天頂を通過しようとしていた。
マイナンはゆっくりと立ち上がる。
苛立たしさを隠そうとしないプラスルの姉を尻目に、彼は木の洞を出ていった。
 ▼ 10 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:13:36 ID:VJ2CsGJg [10/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


プラスル「ただいま!!」

プラスル姉「お帰り!! 学校どうだった?」

プラスル「楽しかったよ!! マイナンは?」

プラスル姉「あー、マイナン? あの子出て行っちゃったのよ、いつの間にか」

プラスル「え!?」


プラスルの姉は、マイナンを追い出した。そしてそれを隠した。
妹に嫌われたく無かったのか、罪悪感を無いものとしたかったのか。いや、何となくかもしれない。
とにかく、マイナンはいつの間にか出ていった事にされた。
黙っていられないのはプラスルだ。


プラスル「マイナンいなくなっちゃったの!? 探さなきゃ!!」

プラスル姉「駄目よプラスル!! マイナンは自然に帰ったの、私たちが干渉しちゃ……」

プラスル「でもお世話するって言ったから!!」ダッ


プラスルは駆け出した。
それを姉は妹が成長して嬉しいような、それよりあのマイナンを再び見たく無いような、複雑な顔で見送った。
勢いよく走るプラスルの影を作り出す、今日の夕日は赤かった。
 ▼ 11 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:17:18 ID:VJ2CsGJg [11/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
昔から、森には魔が潜むと言う。
光無き森の中、一匹のポケモンが少し怯えながら走っていた。プラスルだ。
プラスルは暗くなった森を、マイナンを探して駆けていた。


プラスル「マイナン!? どこ!? 返事して!!」タッタッタッタッ

プラスル「ねぇ返事してよ!! しなさいよ!! マイナン!?」タッタッタッタッ


それは義務感か庇護欲か、もしくは本当に愛なのか、プラスルは自分の足下も気にせず駆けていた。
そして、何処までも続く黒と灰の森の中に、薄く光るポケモンを見つけ出した。
あのマイナンだ。プラスルは悟り、直ぐ様そこに寄る。


プラスル「マイナン!? マイナンなの!?」

マイナン「……うん」

プラスル「ほら、一緒に帰ろ?ね?」

マイナン「……無理だよ。お姉さんが言っていたよ、忌み子は居るなって」


マイナンは淡々と告げた。者によっては棒読みとも思われかねない感情無き告白は、プラスルを却って熱くした。
 ▼ 12 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:26:45 ID:VJ2CsGJg [12/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「良いの!? ねぇ良いのマイナン!? 折角家族になったのに!! ねぇ!! もっと意思を出してよ!! 家にいたいって言ってよ!!」ユサユサ

マイナン「……」

プラスル「ほら、帰るよ!! 家に帰る!!」グイグイ


プラスルはマイナンを引きずった。彼女は、マイナンが何の意思も話していない事を見失って……いや、元から見えなかった。
プラスルは、自分の意志はきっとマイナンも共有していると思い込んでいたのだ。
マイナンは何も語らず、二匹は闇へ歩いた。

プラスルはマイナンを引きずって帰ってきた。
マイナンを追い出した姉を説得する方法を考えていたプラスルは、何の警戒も無く家へ入った。だが、そこには先客が……ずっと隙を伺っていた先客がいたのだ。
そこにいたのは、組伏せられた姉と、先客である灰色の丸いポケモン……トゲデマルだった。
 ▼ 13 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:31:32 ID:VJ2CsGJg [13/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

トゲデマル「プラスルたん(;´Д`)ハァハァ……」ペロペロ

プラスル姉「いや、止めて、離れて!! ……ひゃっ、気持ち悪いっ!!」モゴモゴ

プラスル「……はっ!! お姉ちゃん!?」


一瞬意味の分からない光景に意識を失ったプラスルは、ワンテンポ遅れて状況を理解した。
姉がレイプ魔に襲われている、と。
プラスルは、訳もわからず不審者を攻撃した。


プラスル の たいあたり!!

プラスル「えいっ!!」

   コツンッ

トゲデマル「(;´Д`)ハァハァ(^ω^)ペロペロ……何?」

こうかは いまひとつ の ようだ……

プラスル「そんな……」

プラスル姉「に、逃げてプラスル……」モゴモゴ
 ▼ 14 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:33:36 ID:VJ2CsGJg [14/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
トゲデマル「はあはあプラスルたん、プラスルたんクンカクンカ……」クンクン

プラスル姉「やめっ、止めなさい変態!!」モゴモゴ

トゲデマル「ああっ、もっともっと罵ってプラスルたん!!」ハアハア

プラスル「お、お姉ちゃん……」

マイナン「……」


エロ同人もかくやという状況だが、マイナンは動かない。
何が起こっているかは分かるが、何をすれば良いのか分からないのだ。
・トゲデマルに攻撃
・プラスルと逃げる
・見捨てる
・レイプに加わる
誰も答えは教えてくれない。
マイナンはただ立っていた。


トゲデマル「はあはあ……プラスルたんはフルーティーな味の汗をかくんだぁ……♪」ペロペロ

プラスル姉「いやぁ……いや、もう止めて……」

トゲデマル「そろそろ、本番に入っちゃおうかな……?」ニヤリ

プラスル姉「ひゃっ、助、け……て……」

プラスル「お姉ちゃん!! ねぇマイナン!! お姉ちゃんを助けて!!」
 ▼ 15 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:35:53 ID:VJ2CsGJg [15/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……!!」


彼の前に答えは出された。
感情無きマイナンは、他者の命令を受けて漸く起動する。
トゲデマルと目があった。
拳を握って息を吐き、目線を一点に絞って……


マイナン の ばくれつパンチ!!

マイナン「……!!」シュッ

トゲデマル「ペロヘ……っ!?」ビクッ

マイナン「!!」ダダダダダダダ

トゲデマル「あががががが……」


高速でトゲデマルに肉薄するマイナン。強すぎる一発目の拳は丸い胴を捉え、トゲデマルを転がす。
二発目は股間、三発目は眉間、四発目は鳩尾、五発目は脳天、六発目は尻穴、七発目は首筋。
マイナンに転がされるトゲデマルは、訳も分からないままに、そのままプラスルの家を叩き出された。
 ▼ 16 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:36:47 ID:VJ2CsGJg [16/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

プラスル姉「……っ……」ピクピク

プラスル「あー、お姉ちゃん?」チョイチョイ

プラスル姉「お願い。 お願いだから一旦家を出て?」

プラスル「マイナンは……」

プラスル姉「分かったから!! 分かったからとりあえず出てよぉ!!」

プラスル「あーごめん、今いくから……行くよマイナン」

マイナン「……うん」


マイナンはこうして、プラスルの家で居候させて貰うことになった。
羞恥に震えるプラスルの姉が、不審者を恐れてボディーガードとして雇った形になった。
つまりは捨て犬が番犬となったのである。
 ▼ 17 ポッコ@こだいのうでわ 16/08/01 18:39:23 ID:PAVn9o5M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スレタイでサレンダーさんだと分かった
支援
 ▼ 18 ルフーン@あさせのかいがら 16/08/01 18:45:51 ID:B564lsRk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>17
嘘だろ……
割と汎用的なスレタイだと思ったが…
 ▼ 19 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 18:45:51 ID:VJ2CsGJg [17/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「ただいまー!!」

プラスル姉「あ、お帰りなさい!!」

マイナン「お帰り」


マイナンはそれから大分、家に馴染んだ。
ただ、プラスルの姉と共に家事を行うようになり、彼女は暇が有り余るようになった。マイナンも大分暇を持て余している。
そんなマイナンを見ているうちに、プラスルはふと考えた。


プラスル「ねぇマイナン、あなた……勉強に興味ない?」

マイナン「勉強?」

プラスル「うんうん、勉強だよ」

マイナン「……勉強」


それからは毎日、プラスルは学校で聞いた話を持ち帰るようになった。
マイナンは話を十二分に理解した。
四則演算を三日で習得し、文字を一日で100種マスターし、力学を図で表すようになった時点で、もうプラスルより遥かに頭が良かった。
それを何処か呆れた目で見るプラスルは考えた。
 ▼ 20 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 19:03:10 ID:VJ2CsGJg [18/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「ねぇお姉ちゃん、マイナンも学校に連れていっちゃダメ?」

プラスル姉「駄目よ、色違い養ってるってバレたらご近所付き合いが大変になっちゃう」

プラスル「じゃあ、周りにばれなきゃ良いの?」

プラスル姉「だったらバレないように出来るの?」

プラスル「ぐぬぬ……」


プラスルは悩んだ。大切な家族を学校に連れていってあげたい。
だが色違いである彼を外に出すのは色々と危険だ。だから彼女は考えた。そして、1つの答えを出す。



プラスル「おはよう!!」

キモリ「おはようプラスル!!」

フォッコ「おはよう!!」

ジグザグマ「おはよう皆」

マイナン「……」

キモリ「あれ、それ何?」

チルット「茶色いポケモン?」

ジグザグマ「いや、木でできた……簑?」
 ▼ 21 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 19:04:09 ID:VJ2CsGJg [19/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
色違いだと知られるな。それを達成するためにプラスルが考えたことは、簑でマイナンの姿を隠す事だった。
プラスルが夜なべして、その辺の木と草で作ったのだ。

プラスル「うん、今私の家に住んでるマイナン!!」

チルット「え、同居?」

キモリ「羨ましいなぁ……」ボソッ

ジグザグマ「何で簑纏ってるのさ?」

プラスル「 ちょっと事情があって……」


突然現れた奇妙なクラスメイトに、彼らの反応は四者四様。
いや、全員警戒してると言う点では皆同じとも言える。
突如学舎に現れた異物が疎まれるようになるのには、時間を要さなかった。


ユンゲラー「……であるからして、一は何倍しても一なのである。何か質問は?」

マイナン「そもそも理論の展開方法に問題があると思われます。倍にするとは……」ペラペラ
 ▼ 22 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 19:04:53 ID:VJ2CsGJg [20/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

キモリ「何だよあいつ……」ボソッ

フォッコ「怖いし不気味だし……」ヒソッ

ジグザグマ「無駄に頭が良いのも気持ち悪いし……」コソッ

チルット「うんうん……」シッソッ

プラスル「うう……そんな……」ショボン


プラスルは悩んだ。このままではマイナンは学校に馴染めない。
正直な所、マイナンは学校に行きたいなんて一言も言っていないし、帰れと言われたら直ぐ帰るだろう。
プラスルの感情がそれを許さなかったのだ。

プラスルは悩んで悩んで、いつの間にか一週間過ぎていた。
プラスルは思いきった。仕方無い、奥の手だ。


プラスル「ねぇ皆!! マイナンは怖くないよ!? 優しいんだよ!?」

フォッコ「でも……」

チルット「うーん……」

ジグザグマ「怖くない?」

マイナン「……」

プラスル「ほら、見てて、大丈夫だから!!」グイッ
 ▼ 23 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 19:17:48 ID:VJ2CsGJg [21/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスルはマイナンの肩を掴んだ。
少し力を入れ、マイナンの頭を地に傾かせて、プラスルは一気に顔を近づけた。


   チュッ

マイナン「……?」

キモリ「×%98ι%41#15/-!?」

ジグザグマ「わ、え、え!?」アワアワ

フォッコ「そんな、早いよ……」カアアア

チルット「これは……」ボーゼン

プラスル「……ね……?///」


……ありのままに今起こった事を説明しよう。
プラスルはマイナンを押さえつけ目線を同じ高さに変える→顔を近づける→接吻
つまりはキスである。
周囲は突然の出来事にどよめいた。
キモリは興奮してオーバーヒートし、ジグザグマは挙動不審になり、フォッコは動揺して思考回路がショート、チルットは意識を一瞬手放した。
プラスルにとっては何の意識も無かったのだが、何の気もなしに置いていくにはその爆弾は大きすぎた。
 ▼ 24 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 19:19:33 ID:VJ2CsGJg [22/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その日は皆会話も無く、ささっと帰り眠った。
キモリは思う、あれは夢だ。いや、そんなことは全く無いがそう考えたかった。
愛しのプラスルがあんな何処の馬の骨とも知らぬ奴とデキてるなんて……
何処と無くトゲデマルと似たような思考に陥り出したキモリ。その夜は悪い夢を見た。

朝になる。プラスルはマイナンに今日は休もうと言った。
自分勝手な物である。だが、マイナンは愚痴の一つも溢さなかった。溢さずに、学校へと向かったのだ。
プラスルは訳がわからなくなった。彼は自分の思い通りには決してならない。プラスルは頭では理解した。彼女はただ彼について歩いた。


   ガサッ ガサガサッ

???1「……見つけた」

???2「ようやく……過去を精算できる……!!」
 ▼ 25 マゾウ@ノワキのみ 16/08/01 19:26:22 ID:Y9hCmQAo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 26 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 20:28:55 ID:VJ2CsGJg [23/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「お、おはよう……」ボソッ

ジグザグマ「う、うん……」

フォッコ「ええ……」

チルット「……」

プラスル「あ、あー……うん」


沈黙の空間。何時もより赤いプラスルは照れ臭くて何も言えない。
それを見て更にキモリは何となく腹を立てた。
しれっとつるのむちを伸ばす。マイナンの足に引っ掻けて、転ばせた。


   ズデッ

プラスル「マイナン!?」

マイナン「……ううっ……」ヨロッ

プラスル「大丈夫マイナン!?」

キモリ「チッ……」イライラ


キモリにとっては只の腹いせだったが、それは思いもよらぬ効果を生んだ。
プラスルは転んだマイナンを抱き起こした拍子に、マイナンの纏っていた簑が脱げたのだ。
マイナンの、青緑の体が白日に晒される。
 ▼ 27 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 20:30:02 ID:VJ2CsGJg [24/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   ズルッ

プラスル「あ、しまった!!」

マイナン「……っ!!」ビクッ

キモリ「な……!?」

チルット「あれって……」

ジグザグマ「色違い……だよね」

フォッコ「……うん」

マイナン「……」

プラスル「あっ……あっ……」アワアワ


クラスメイト達は目を疑って、一瞬のブランクの後に後退りした。
不幸の運び屋色違い。風評被害も甚だしいが、マイナンは確かに苛められてもおかしくないくらいには異質だった。
 ▼ 28 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 20:32:13 ID:VJ2CsGJg [25/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

プラスル「皆……色違いでも、彼は……」

チルット「でも、それでも……」

フォッコ「怖いし……何で連れてきたの……?」

ジグザグマ「うん、本当それ」

キモリ「とりあえずさ、コイツが悪いんだよ!! 出てけ!!」

キモリ の つるのむち!!

   ビシッ

マイナン「……っ!!」

プラスル「ちょっ、止めてよ!!」

マイナン「……」タッタッ


マイナンは去った。プラスルも、後から来たユンゲラーも彼らを止められず、マイナンは森の中へと去った。
プラスルは後から彼を追いかける。
責めて、彼がここから消えるのは止めなければ、責めて家に帰ろうと、彼女は焦っていた。
 ▼ 29 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 20:39:05 ID:VJ2CsGJg [26/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



プラスル姉「あらお帰り、早かったわね」

プラスル「あ、うん……」

マイナン「……」

プラスル姉「どうしたの?何かむこうで有ったの?」

プラスル「え、イヤー……」アセアセ

プラスル姉「……ん、この簑……ねぇプラスル、これ、……土が中にかなり付いてるんだけど」

プラスル「……あっ!!」ビクッ

マイナン「……」

プラスル姉「……バレたのね?」

プラスル「……うん……」

マイナン「……」

プラスル姉「そう……分かったわ。可哀想だけど、約束だから……彼には、マイナンには出ていって貰うわ。今すぐよ」

マイナン「……」
 ▼ 30 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 21:30:24 ID:VJ2CsGJg [27/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後プラスルは学校へ返され、マイナンは家を出た。プラスルの姉に抗う意思も無いマイナンは昼の森を歩き、迷子になった。
そして暫く森を彷徨いていたが、運が良いのか悪いのか、彼が暫く通った学舎にたどり着いたのだ。
そこには、先程マイナンを痛め付けたキモリと、傍観者達がいた。


マイナン「……ハァ」

マイナン「……ここにも、何も無かった」


マイナンは呟いて、あれから、拾われてから出来た記憶を思い出す。いつの間にか連れていかれていつの間にか終わっていた記憶。
だが、学校を去ろうとするマイナンの心には何故か、どこか穴が空いているような気がした。
何も感じなかった、感情の無かった心に、元々何も無かった心に、何故か空白が出来た。
マイナンは学校を暫く観察する。後ろ髪を引かれるようで、離れられなかった。
そして、彼は学校に起こる異変に気づいた。


チルット「ねぇ、何であんなのを連れてきたのよ……」

フォッコ「うん……」

ジグザグマ「そうだよ、危ないよ」

プラスル「ううっ、ううっ……」

キモリ「でも、プラスル責めるなよ……悪いのは全部あいつだし……」

   ガサッ ガサガサッ  ガサッ
 ▼ 31 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 21:31:34 ID:VJ2CsGJg [28/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン母「……ここね、さっきまでマイナンがあったのは」

マイナン父「殺す……過去を精算するために!!」


そこに現れたのは、クリーム色の体表に、青い耳と手足を持つポケモン、マイナンだった。あの時の、子供を捨てたマイナンだ。


ユンゲラー「な、何しに来たんです?」

マイナン父「さっきまで、ここにマイナンがいたろう?」

ユンゲラー「え、ええ……でも今は

マイナン父「今、あの忌まわしきマイナンを知るものは、全て……殺す」ビリビリ

マイナン母「あれを消して、全てやり直す!!」ビリビリ


殺意を剥き出しにして帯電する夫婦。ユンゲラーは子供たちを下げ、迎え撃つ体制を整える。


ユンゲラー「……止まってもらいます。子供たちに手だしは……」

マイナン父「……お前も殺すが、子供も殺す!! 全員だ!!」

マイナン母「そうよ、私達はやり直すの!! 忌み子の存在何て消してやる!!」

マイナン父 の スパーク!!

マイナン父「うおおっ!!」ダッ
 ▼ 32 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 23:22:28 ID:VJ2CsGJg [29/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一気に駆け寄るマイナンの父。ユンゲラーがそれを受け止めたとき、隣からマイナンの母の蹴りが入る。
するとそちら側に意識が奪われ、一瞬隙が生じた。父が身を翻して子供たちに攻め寄る。
子供は一気にパニックになった。
無理もない、相手は自分を殺しに来たのだ。


マイナン父「待て、止まれ!!」ダダダダ

キモリ「来るな、来るな!!」タッタッ

ジグザグマ「止めてぇェ!!!!」ジグザグ

フォッコ「うわあっ!!」タッタッ

チルット「怖いよぉ……」パタパタ

ユンゲラー「皆、早く逃げて……

マイナン母「あら、貴方は無駄口叩いてる暇がある?」

マイナン母 の めざめるパワー!!

ユンゲラー「ぐうっ……!!」

マイナン父「おらっ、待てっ!!」ダダダダ

ジグザグマ「わあああっ!!」ジグザグ

チルット「はあ、はあ……」パタパタ

プラスル「助けて……助けてよ……!!」タッタッ
 ▼ 33 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 23:31:13 ID:VJ2CsGJg [30/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   ズデッ

プラスル「痛っ!!」

キモリ「プラスル!!」

チルット「早く、早く逃げて!!」

プラスル「う、うん……」ヨロヨロ


走っている最中に転んだプラスル。
立ち上がって逃げようとしたが、その時にはもう既に、マイナンの父がプラスルの肩に手を掛けていた。
絶望の吐息が背中にかかる。


マイナン父「まずは……一匹……!!」

プラスル「嫌……嫌だ……助けて……助けてマイナン!!」ガクガク

マイナン「あいつの名を、呼ぶなぁぁあぁああぁあ!!」

マイナン父 の スパー

マイナン の アイアンテール!!
 ▼ 34 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 23:33:15 ID:VJ2CsGJg [31/31] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

   ギャキンッ

マイナン父「な、ぐっ……!?」バッ

プラスル「マイナン……!!」

マイナン「……」

マイナン が あらわれた!!


マイナンは何も思っていない。
ただ、放っておけなかっただけだ。
家族……かどうかは分からないが、自分に似た者が殺しに来ようと、助けるのが自分に利益をもたらさない敵だろうと、今のマイナンは何も思わない。
ただ、己の体を振るうのみ。


マイナン父「糞がっ!! お前さえ……お前さえ居なければっ!!」ダダダダ

マイナン の スパーク!!

マイナン父「死ねえっ!!」ビリビリ
 ▼ 35 ィアルガ@カシブのみ 16/08/02 14:41:18 ID:ZzT.1n7M NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 36 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 08:22:02 ID:hdsB9un6 [1/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

走ってくるマイナンの父。マイナンはそれを無言で見つめる。
徐々に狭まる相手との距離は、もう50センチを切っていた。
残り30センチ、マイナンは父の手を掴んで捻る。
残り20センチ、マイナンは顔をずらす。
残り10センチ、空いた手で父の股間を強打する。
残り5センチ、マイナンは父を掴んでいた手を振り下げる。
……一瞬だった。一瞬でマイナンは地に打ち付けられ、気力を奪われた。


プラスル「マイナン……!!」

キモリ「……すげぇ……」ボーゼン

フォッコ「かっこいい……」

マイナン母「そんな、一発で!?」


呆然と見つめるクラスメイト達、動揺するマイナンの母。
その、母の側に音もなく駆け寄ったマイナンは、下腹部に全力の一発。


マイナン の かみなりパンチ!!

マイナン「はあっ!!」

   ズドンッ

マイナン母「ごふっ……!?」
 ▼ 37 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 08:23:45 ID:hdsB9un6 [2/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

突然感じる未知の痛みにマイナンの母は脱力し、力無く糞便を垂れ流す肉塊となる。
クラスメイトはマイナンを畏敬の目で見つめ、明滅する意識のなかで立ち上がった父親は状況を理解した。
マイナンの父は立ち尽くす妻を引きずって、勝者達を睨みながら森へと消えた。


ユンゲラー「き、君は……一体……」

マイナン「……」スタスタ

プラスル「ま、待ってよ!!」

マイナン「……?」


プラスルが立ち去ろうとするマイナンを呼び止めた。誰もプラスルを止めようとはしなかった。
汗でマイナンの青緑の体表が光る。
彼は振り替える。そして彼は目撃した。


キモリ「マジですいませんでした」ドゲザッ

ジグザグマ「したっ!!」ドゲザッ

フォッコ「残って下さいっ!!」ドゲザッ

チルット「マジリスペクトっす!!」ドゲザッ

プラスル「ね? ……残ってよ、お願い」
 ▼ 38 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 08:27:28 ID:hdsB9un6 [3/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


一つ二つ三つ四つと、並んだ土下座の前でプラスルが彼を引き留める。
マイナンは、その前で考えた。
……結論はすでに出されていた。彼が決断するのに、時間は大していらなかった。


マイナン「……うん!!」ニパッ

プラスル「……!!」パアアア


マイナンは笑った。初めて、記憶を失い感情を失っていた頃には見せなかった笑顔を見せた。
和解し、仲良くなったクラスメイト達に囲まれて、彼は感情を、"楽しさ"を得た。
マイナンの心は、今までに無いほどに満たされた。
 ▼ 39 EKF2Th1IA2 16/08/03 08:31:41 ID:9eu8DeWU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援!
 ▼ 40 レフワン@ヨロギのみ 16/08/03 08:35:55 ID:YWg1itnU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 41 椛◆FL6pGotkUE 16/08/03 08:38:06 ID:HMiQMc06 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 42 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 09:25:25 ID:hdsB9un6 [4/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


それから数日後。
マイナンはプラスルの家を離れ、クラスメイトのジグザグマの家に住んでいた。
ジグザグマの両親は何者かに殺されてしまったらしく、これまで空き部屋が有ったらしいのだ。


ジグザグマ「マイナン? 起きて!!」ユサユサ

マイナン「ん、んー……」

ジグザグマ「今日は遠足でしょ? 起きて!!」

マイナン「あ、そうだったね……今いく」


ジグザグマ「おはよう!!」

マイナン「おはよう」

プラスル「おはよう!!」

キモリ「おはよう皆」

チルット「今日晴れて良かったね!!」

フォッコ「うんうん!!」

ジグザグマ「あれ、先生は?」

チルット「あ、忘れてた……もうすぐ来るでしょ」
 ▼ 43 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 09:26:34 ID:hdsB9un6 [5/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

   タッタッタッタッ

ユンゲラー「遅れて済まんな、皆……じゃあ、出発するか!!」

一同「「「「「「おー!!」」」」」」


さて、彼らは遠足で山を上る事になっている。山を上るルートの途中には崖があった。
崖から一番下まではおよそ500m。
落ちたら勿論、只ではすまない。良くて瀕死、打ち所によっては生命活動が止まるだろう。
そんなところを、彼らは歩いていた。


チルット「ねぇ、何でここを渡るの?」

ユンゲラー「他の道は……危険だったからだ」

キモリ「え、どこが?」

ユンゲラー「……人間の痕跡があった」

プラスル「別に大丈夫じゃない?」

ユンゲラー「……大丈夫じゃない。……人間は危険だ」


会話しながら歩く生徒達。青い空に黄色い地表のずっと同じ景色に、彼らの警戒も段々薄くなり、ここが危険な場所だと忘れだした頃だった。
 ▼ 44 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 09:27:49 ID:hdsB9un6 [6/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

   パアンッ

   ガラッ

フォッコ「あっ……」ガタッ

ユンゲラー「しまった!!」

ジグザグマ「フォッコ!!」

プラスル「危ない、落ちる!!」


一瞬の破裂音の後だった。
崖が、いきなり音を立てて崩れたのだ。
崩れる大地に足を取られて、真っ逆さまに崖を落ちていくフォッコ。
クラスメイト達が呼び止めるがもう遅い。


マイナン「……っ!!」ダッ

プラスル「マイナン!?」

キモリ「マイナン、まさか……」

ユンゲラー「よせ、止めるんだマイナン!!」

マイナン「今いくっ!!」バアッ
 ▼ 45 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 09:28:46 ID:hdsB9un6 [7/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナンもフォッコの後を追うように崖から飛び降りた。
体を地面に対して垂直にし、空気抵抗を減らして落下する事により、フォッコに追い付く。
フォッコの手を掴み、体で抱え、マイナンは地面に背を向けて墜落した。


   ドサッ

プラスル「マイナン!!」

ジグザグマ「マイナン、フォッコ!!」

キモリ「大丈夫か!?」

チルット「先生、フォッコとマイナンは大丈夫なの!?」

ユンゲラー「……どうやらこの崖の中でも比較的落差の小さい、棚に落下したようだ。まだ軽い怪我だろう。……それより、今の崖の崩れ方は妙だ。まるで壁面から衝撃を受けたような……人間の起こす衝撃だ」

プラスル「じ、じゃあ……」

ユンゲラー「何者かが狙っているな。君達は隠れなさい。そこに岩が有るだろう、盾にするんだ」

ジグザグマ「先生は!?」

ユンゲラー「……人間を追う」ダッ
 ▼ 46 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 09:33:07 ID:hdsB9un6 [8/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

フォッコ「う、うう……」

マイナン「大丈夫か?」

フォッコ「うん、何とか……」


二匹は、崖の中腹に落ちていた。ここから見上げる崖はひどく切り立っていて、ここからは上に登れなさそうと考えられた。
しかも、どうやらフォッコは打ち所が悪く、足を怪我していて上手く動けない様子だ。


フォッコ「う……」ヨタッ

マイナン「取り合えず登れる場所を探そう。肩を貸すよ」

フォッコ「あ、ありが……と……///」

マイナン「……よいしょっ」カツギッ

フォッコ「……///!!」

マイナン「何処なら登れそうかな……」
 ▼ 47 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 09:34:39 ID:hdsB9un6 [9/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


所変わって、崖の上の岩場。
ここでプラスル、キモリ、ジグザグマ、チルットは押し込められていた。
窮屈な空間の中で四匹は顔を付き合わせ、仲間の身を案じていた。


プラスル「ねぇ、このままじっとしてられないよ」

チルット「助けに行かないと!!」

ジグザグマ「でもどうやって?」

キモリ「俺のつるのむちなら……」

ジグザグマ「でもそれだとある程度登って来ていないと……」

プラスル「あーもうじれったい!! 作戦は向こうで考えましょう向こうで!!」

チルット「うん、そうだね!! でも、今二匹はどこに?」

プラスル「……分からない!! とにかく探さなきゃ!!」タッ

ジグザグマ「あ、ちょっ!!」タッ

チルット「待って置いていかないで!!」タッ
 ▼ 48 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 09:36:03 ID:hdsB9un6 [10/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


崖の上から下を伺うユンゲラー。
人間の残していく足跡、缶や屑を辿って人間を探す。
あの破裂音はどう考えても猟銃の物だ。教え子が狙われている!!
その危機感が彼を突き動かした。


ユンゲラー「何処だ……あれか!!」

ハンター『えーと、何処に落ちたかな……』ウロウロ

ユンゲラー「……やはり、あのマイナンを狙っていたか……不意討ちすれば倒せるだろうか? いや、まだ様子を見よう……」ヒソッ

ハンター『はあ……面倒くさいな……』ウロウロ


薄焦げ茶のジャケットに浅葱色のワイシャツ、紺のジーンズを身に纏い、白いハンチングを被った、猟銃を担いでいる男……ポケモンハンターを発見したユンゲラーは、その背後を取りながら、ゆっくりと、慎重に追跡を開始した。
 ▼ 49 ブクロン@ポロックケース 16/08/03 09:37:07 ID:usf53cmQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思うんですけどなんで!が「!」じゃなく!なんですか?
 ▼ 50 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 09:38:25 ID:hdsB9un6 [11/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>49
何となく
特にこれといった意味はない
強いて言うなら
「嘘だろ!?」より「嘘だろ!?」の方が好きだから
 ▼ 51 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 10:13:11 ID:hdsB9un6 [12/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナン「ふう……ここなら何とか、登れそうだな」

フォッコ「あ、ありが、とう……///」

マイナン「あー、大丈夫? 体冷えてない? 風邪?」

フォッコ「い、いや……」

マイナン「少し休もう。多分さっきほどじゃないけどここも登るのはきつい」

フォッコ「あ、うん……」


ハンター『……見つけた』


ハンターは岩陰で猟銃を構えた。照準が色違いマイナンの足に合わさる。
殺傷力低めで捕獲向きの弾丸、ソフトポイント弾をセットする。鉛で出来ていて、相手の体内で変形して苦しめる物だ。イッシュ辺りだと警察が使っているらしい。


ハンター『さて……撃つか』ゴソゴソ

ユンゲラー「……させない……」コソッ

ユンゲラー の きあいだま!!

   ドンッ
 ▼ 52 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 10:14:19 ID:hdsB9un6 [13/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

しかし あたらなかった!!

ハンター『!?』

ユンゲラー「くそっ、外れたか!!」

ハンター『危なかった……へぇ、あいつの仲間か、不意討ちとはやってくれるな、行けスカタンク』

スカタンク「兄貴を怒らせた罪は重いで」

ユンゲラー「……ああ、何てこった……!!」


マイナン「……!!」

フォッコ「どうしたの!?」

マイナン「何者かが狙ってる、すぐに登るぞ!!」

フォッコ「う、うん!!」


ハンター『よし、あいつらを打ち落とすか!!』

   カチャ チャキッ
 ▼ 53 イバニラ@きのみジュース 16/08/03 10:14:46 ID:YjIeb9/U [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 54 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 10:51:59 ID:hdsB9un6 [14/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユンゲラー「や、止めっ」

   スカタンク の スモッグ!!

スカタンク「邪魔はさせないで」

ユンゲラー「くっ、通せ!! 退け!!」


崖を登るマイナンとフォッコが出っ張ってる岩を掴んで這い上がる。
汗が二匹の顔を滴り、視界が揺れて足がふらつく。
マイナンは、いつ来るか分からない破裂音に備えながら、フォッコをサポートしつつ崖を登ったのだが。


   パアンッ

マイナン「右だ!!」ダッ

フォッコ「う、うん!!」タッ

   パアンッ

マイナン「左だ、急げ!!」ダッ

フォッコ「ひっ、うん……」タッ

   ガラッ

マイナン「くっ、向こうの足場が……」
 ▼ 55 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 10:52:40 ID:hdsB9un6 [15/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
破裂音と共に、一つまた一つと足場が崩れ落ちる。
フォッコは怯えて足が上手く動かず、マイナンのサポートも追い付かない。
このままだとまた落ちるだろう。その時、また目を覚ます保証は無い。


ハンター『よし、足場を一つブレイク!! 周囲を崩していけば後はヌルゲーヌルゲー♪』チャキッ

ユンゲラー「くっ、止めてくれ……」

スカタンク「大人しくしなっ!!」

スカタンク の あくのはどう!!

ユンゲラー「ぐっ……!!」ザザザザ


   パアンッ

フォッコ「も、もう……無理……」ヨタッ

マイナン「まだだ!!」ガシッ ダッ

   パアンッ

   ガラッ

マイナン「ぐっ……」タラア


フォッコを担いで岩場を跳ぶマイナンだが、徐々に減ってゆく足場に動揺を隠せない。
一筋の汗が彼の頬を伝う。
 ▼ 56 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 10:53:34 ID:hdsB9un6 [16/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハンター『ふぅん……中々しぶといな、腹も減ってきたし、そろそろ終わらせたい』

スカタンク「そうだな兄貴」

ユンゲラー「この、この……」

スカタンク「あんたはもう死ねや。兄貴、良い?」

ハンター『ああ、好きにしろ』

スカタンク「OK、殺すね!! 死ねぇ!!」

スカタンク の あくのはどう!!
 ▼ 57 ンリュウ@こだいのおまもり 16/08/03 12:27:33 ID:YjIeb9/U [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 58 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 13:54:43 ID:hdsB9un6 [17/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   パアンッ

   ガラッ

マイナン「くっ、もう少しだ!!」ダッ

フォッコ「うう……う……」


崖の終わりが近づいて来た。
マイナンはフォッコを担いだまま登りきろうとする。
思わず彼の顔に笑みが浮かんだ。
崖のてっぺんに左手を伸ばした、その瞬間だった。


   パアンッ

マイナン「っ!?」

フォッコ「マイナン!?」


破裂音と共に、マイナンの手に衝撃が走った。
左の手の甲を撃ち抜かれたのだ。
マイナンはバランスを崩し、今度はさっきよりも更に深い、深い谷の底へと落ちていく。
 ▼ 59 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 13:55:23 ID:hdsB9un6 [18/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

プラスル「マイナン、フォッコ!!」

ジグザグマ「大変だ!! キモリ!!」

キモリ「おう!!」

キモリ の つるのむち!!

マイナン「……っ!!」


焦点の合わない目で仲間たちを確認したマイナンは、痺れる腕に鞭を打ち、フォッコを崖の上に向かって放り投げた。


フォッコ「きゃあっ!?」

   ガシッ

キモリ「よしっ!!」

チルット「ナイスキャッチ!! 引き上げるよ!!」

プラスル「でもマイナンが!!」

チルット「分かってる、でも今は、此方に集中して!!」グイッ


マイナンは引き上げられるフォッコを見届けながら、段々と闇の底へと、堕ちていった。
 ▼ 60 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 18:57:40 ID:hdsB9un6 [19/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ハンター『ちっ!! 風向きが悪かったか……』

スカタンク「あらー、落ちちゃいましたね……」

ハンター『ユンゲラーは始末したか?』

スカタンク「ええ勿論」

ユンゲラー「」

ハンター『殺ったみたいだな……奴を追うぞ、戻れスカタンク、出てこいアーケオス!!』

アーケオス「あいよ!!」

アーケオス の そらをとぶ!!

   バッサバッサ バッサバッサ



 ▼ 61 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 18:58:16 ID:hdsB9un6 [20/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……?」


マイナンは、蒼い草の上に立っていた。
青々とした草原は暖かな光に満ちて、何処からともなく甘美な音楽が流れて来る。
草原を歩くマイナンは、近くを流れる川を見つけた。
澄みきった水を湛えた川には一つ小舟が浮き、優しげな風がマイナンの頬を撫でた。


マイナン「ここが……あの世って事?」


ただ立っているマイナンの横を風が吹き抜ける。まるで彼をあの世に誘おうとするかのように。
彼は一歩踏み出した。だがすぐにその足を引っ込めた……彼は見たのだ、誰もいない川の向こう岸を。


マイナン「そうか……そうだよね、うん」


マイナンは一人頷いて、川に背を向けて歩き出した。歩き出したが、ふと思い直したのか向き直った。
その場に屈んで川の水を掬う。水は何処までも澄んでいて、マイナンの顔を写し出した。
水は、少しだけ甘かった。
 ▼ 62 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 19:04:16 ID:hdsB9un6 [21/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



マイナン「……!!」


マイナンは目を覚ました。固い岩場の陰で気を失っていた彼は、今の今まで眠っていたのだ。
マイナンはまず撃ち抜かれた左手を見つめた。血が止まり、じゅくじゅくと膿むそれを一瞥したマイナンは、迷うことなくソフトポイント弾を引っ張り抜いた。


マイナン「ぐっ……!!」


左手に走る激痛。変形した鉛の弾丸は、マイナンの左手の肉と神経を道連れにした。
再び血の湧き出る源泉と化した左腕は尋常でない鉄臭さの臭いを発する。
 ▼ 63 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 19:53:29 ID:hdsB9un6 [22/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ハンター『……?』クンクン

アーケオス「気づいたか兄貴? 臭うだろ?」

ハンター『……血だ』

アーケオス「そうだな、きっとマイナンの奴だぜ」

ハンター『あっちだ、方向を変えてくれ』

アーケオス「おうともよ!!」

   バッサバッサ バッサバッサ


マイナン「……来る」


敵の来襲を察するマイナン。血を出したのは呼び寄せる為の囮だった。
近づいてくる羽音に、青い電気を纏うマイナン。


   バッサバッサ バッサバッサ バッサバッサ
 ▼ 64 ィ@かいがらのすず 16/08/03 19:57:51 ID:IKMdQexM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
ゆ、ユンゲラーのアニィ!
 ▼ 65 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 21:58:36 ID:hdsB9un6 [23/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   バッサバッサ バッサバッサ バッサバッサ

ハンター『いたぞアーケオス、突っ込め!!』

アーケオス「アイアイサー!!」

アーケオス の そらをとぶ!!

マイナン「……見切った!!」


高速で迫るアーケオス、その軌道をマイナンは読みきった。
懐にスライディングで潜り込み、無防備な胸元に雷を纏う拳でアッパーをかます。


マイナン の かみなりパンチ!!

   グシャッ

アーケオス「うごぼぉっ!?」

きゅうしょ に あたった!!
 ▼ 66 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 23:13:59 ID:hdsB9un6 [24/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   バッサバッサ バッサバッサ バッサバッサ

ハンター『いたぞアーケオス、突っ込め!!』

アーケオス「アイアイサー!!」

アーケオス の そらをとぶ!!

マイナン「……見切った!!」


高速で迫るアーケオス、その軌道をマイナンは読みきった。
懐にスライディングで潜り込み、無防備な胸元に雷を纏う拳でアッパーをかます。


マイナン の かみなりパンチ!!

   グシャッ

アーケオス「うごぼぉっ!?」

きゅうしょ に あたった!!


胸元に吸い込まれるように決まったアッパーはアーケオスの肋骨を砕き、肺を潰し、心臓を抉るようなダメージを叩き込んだ。
あり得ないまでの衝撃に、アーケオスはバランスを失い、よろけふらつき墜落する。
ハンターは地面に投げ出され、アーケオスは倒れ伏した。
 ▼ 67 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/03 23:14:39 ID:hdsB9un6 [25/25] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アーケオス「」バタッ

ハンター『あ……が……』

マイナン「ふぃー……」



場所は移って、崖の上。
五匹の幼いポケモンが、崖の下を見下ろしていた。
視線の先には、死んだ師が力無く横たわっている。


キモリ「どうする?」

ジグザグマ「何とかして、引き上げないと……」

プラスル「でもどうやって?」

チルット「流石にこの距離じゃあつるのむちも……」

キモリ「うん、ここからじゃあ無理だね」

フォッコ「でも、先生を放って置けないし……」

プラスル「うーん……」
 ▼ 68 CSn9vcIqE6 16/08/04 06:30:53 ID:yyUD4ydE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援です!
 ▼ 69 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/04 16:32:02 ID:rVvJ6mlE [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナン「……」ズルズル

ハンター『』

アーケオス「」

マイナン「……」ズルズル


マイナンは、返り討ちにした犯罪者を引き摺りながら谷底を歩いていた。
何処かに、閉じ込めるのに適当な岩窟でも無いかと思っていたのだが、それっぽい物は未だに見つからない。


ハンター『う……止めっ……』

マイナン「……」ゲシッ

ハンター『あがっ』


もがくハンターの股間に蹴りを入れ、マイナンは一つ息を吐いた。ここら辺に良い場所はなさそうだ。
仕方無く、マイナンは岩の窪みにハンターを詰めて、岩で蓋をする。
マイナンは切り立つ崖を見上げ、手に力を込めた。
 ▼ 70 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/04 18:13:02 ID:rVvJ6mlE [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


崖の上では、五匹の幼いポケモンが沈み行く夕日を憂鬱そうに眺めていた。
何処かでヤミカラスが喚いている。
もう帰らないと、危険だ。


キモリ「どうしよう、もう日が暮れちゃうよ……」

ジグザグマ「うん……」

フォッコ「ねぇ……もう帰ろう? これは無理だよ……」

キモリ「……」

プラスル「マイナンは!? マイナンはどうするの!?」

チルット「プラスル……もう、マイナンは、もう……」

フォッコ「マイナン……」


五匹は崖を立ち去った。
明日またこの崖に来ようと誓って、黒に染まった道を別れた。
暗くて寒い道だった。
 ▼ 71 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/04 18:20:13 ID:rVvJ6mlE [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナン「よいしょっ……よいしょっ……ふぅ、大体半分くらいかな……」


崖の中腹でマイナンは一息ついていた。
競りだした岩に腰を掛け、登る月を見つめる。
マイナンが下を見下ろすと、蓋にした岩が少し揺れているのが分かった。
あまり時間に余裕は無い。再びマイナンは岩に手を掛ける。


ハンター『うっ、くっ……』モゴモゴ

   ズズズッ

ハンター『ふう、やっと顔が出せた……あの野郎、売り飛ばそうと思ってたが気が変わった。皮剥いで剥製にしてやらぁ……』

   ズズズッ

ハンター『とりあえず、ここから出ないと……!?』

岩から這い出そうとするハンターの上に、大きめの石が降ってきた。
ハンターが目にしたのは、ぼんやり光るマイナンだった。
 ▼ 72 イリキー@がんせきおこう 16/08/04 18:23:47 ID:XuzwKGX. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナンえげつないな
急所ってあんな恐ろしいものだったのか
 ▼ 73 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/04 19:14:25 ID:rVvJ6mlE [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



夜道は暗かった。闇の中をプラスルは歩きながら、今日あった出来事を思い返していた。
最愛の同居人の墜落、慣れ親しんだ師の死。どちらをとっても、ごく普通の幼いポケモンに体験させるにはあまりにもあんまりなものである。
彼女は家の中へと入った。そこで、今日三つ目の衝撃を目撃する。


トゲデマル「ああプラスルたん!! 良いよ、良いよ!!」ペロペロ

プラスル姉「あっ……がっ……やっ……」ヒクヒク

トゲデマル「はあはあ、大好きだよプラスルたん!! もっと、もっとプラスルたんを感じたいな!!」ペロペロ

プラスル姉「やっ……あん……止めっ……」

プラスル「……!!」
 ▼ 74 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/04 19:15:56 ID:rVvJ6mlE [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

プラスルの目に入ったのは、あのトゲデマルに体を嘗め回され、全身を擦り付けられて苦悶に喘ぐ姉の姿だった。
嘗ては思考を停止してしまっていたが、今度はプラスルの反応は早かった。


プラスル「……マイナン、力を貸して!!」ダッ

プラスル姉「プラスル……!!」

トゲデマル「はあはあ……ん!?」


愛しき同居人の名を唱え、一気に駆け出すプラスル。不思議な事に勇気と力が沸き上がる様な気がして、トゲデマルに近づいて一発。


プラスル「はあああああっ!!」

プラスル の たいあたり!!

プラスル「だあああぁぁぁぁあ!!」

トゲデマル「お、おおおおっ!?」

   コツッ

トゲデマル「……あ、ああ……」


勇気があっても、力になるとは限らない。
 ▼ 75 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/04 19:16:44 ID:rVvJ6mlE [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


プラスル「ひゃっ、や、止めて……」

トゲデマル「はあはあ、妹の方も良いね……凄く良い……」ペロペロ

プラスル姉「プラスル……あ……」


組伏せられて嘗め回されるプラスル。腰が抜けて動けない姉が、半ば諦めた目で妹を見つめる。


プラスル「いや、やだぁ……」

プラスル姉「プラスル……」

トゲデマル「プラスルたん、プラスルたんも良いよ……!!」ペロペロ


どうしようもなく、彼女は全てを失う……姉妹は絶望し、消えた同居人を思って空を仰いだ。その時。


   ザッ

トゲデマル「誰だ……?」
 ▼ 76 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/04 19:19:43 ID:rVvJ6mlE [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

マイナン父「……あれ、これどういう状況?」

マイナン母「さ、さあ……」

トゲデマル「……誰?」

マイナン父「いやそれはこっちのセリフだよこっちの」


そこに現れたのはマイナンではなく、キモリでもジグザグマでもなく、先日襲いかかってきたあの夫婦だった。
今度は世帯毎に始末する気だったのだが、そこは何故かR-18なシーン。夫婦の思考が停止する。
運命は無情だ。


マイナン父「あの、どちら様で……」

トゲデマル「そう言われましても……」

プラスル「え……え……?」

プラスル姉「プ、ラ、スル……逃げ……」

プラスル「う、うん!!」


二匹は、混沌の隙を突いて、夜闇に駆け出した。
 ▼ 77 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/05 10:55:03 ID:T7hog7ds [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナン「ふぅ……疲れた」テクテク


夜道を歩いているマイナン。先刻崖を登りきり、来た道を戻っていた。
月に照らされて夜道は薄明かるく、静かな森に木の葉の擦れる微かな音が響く。


   タッタッタッタッ

マイナン「……?」

   タッタッタッタッ


突如耳に入る足音。
不審に思ってマイナンが見つめる先では、二つの影が揺れながら大きくなっていた。
マイナンと同じようなシルエットに赤い耳と手足、そう、プラスルだ。


マイナン「……え?」

プラスル「マイナン!? マイナンなの!?」ガシッ

プラスル姉「助けてマイナン!!」ガシッ

マイナン「え? え?」
 ▼ 78 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/05 10:56:37 ID:T7hog7ds [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

プラスル「――――って事があって、ここまで逃げてきたの!!」

マイナン「そうか、大変だったね……で、どうする?」

プラスル「うーん、とりあえず何処かで匿って欲しいんだけど……」

プラスル姉「うん……」

マイナン「ついて来て……ジグザグマに聞いてみるよ」


マイナンがジグザグマの家に帰還すると、ジグザグマも驚愕の色を示し、マイナンの肩を掴んで強く揺さぶった。


ジグザグマ「マイナン!? マイナンか!?」ガシッ

マイナン「うんそうだよ」

ジグザグマ「良かった……本当に良かった!! 危ないことしちゃダメじゃないか!! 心配したんだぞ!?」

マイナン「うんうん悪い悪い」

ジグザグマ「まったく、君は自分の心配をしなさすぎる!! もっと自分の事も考えてくれ!!」

マイナン「……自分の……事、ねぇ……」
 ▼ 79 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/05 10:57:15 ID:T7hog7ds [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

忘れているかも知れないが、このマイナンはこの前まで感情と記憶を失っていた。
楽しいという感情を手に入れ、その他についてもぼんやりと知りだした彼だが、未だに恐怖という感情を知らない。
だから、彼はいくらでも自分を捨てられる。怖くなんてないのだ。


マイナン「……考えておくよ。それより、さっき夜道でプラスルとそのお姉ちゃんを拾ったんだ」

ジグザグマ「……え?」

マイナン「いや、なんか家に変態が押し掛けてきたらしくて……」

ジグザグマ「うわぁ」


……結局、その晩はジグザグマの家に合計四匹のポケモンが眠る事になった。
それぞれ別の布団で眠ったはずだった。
はずだったのだが。
 ▼ 80 メパト@エスパージュエル 16/08/05 10:57:41 ID:t3NZK8lA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 81 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/05 11:08:41 ID:T7hog7ds [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……zzz……?」

プラスル「……マイナン……zzz」

マイナン「あれ、あれ?」

プラスル「……zzz……」ガシッ

マイナン「……」

何故か自分の上に乗って寝息を立てているプラスルに気づいたマイナン。どうしようかと思案するが答えなんて出るわけがなく……
このあとめちゃくちゃ二度寝した。


朝が来る。動けずに眠っていたマイナンの上で、プラスルが目を覚ました。


プラスル「……zzz……ふぁぁ……え?」

マイナン「……zzz」

プラスル「ええと、私寝てて、目が覚めたら、マイナンと一緒の布団で、私がマイナンの上にいて、つまり……」

マイナン「……」

プラスル「……もしかしてエッチな?」カアアア


勝手に赤くなるプラスル。因みにエッチな事なんて全く無くて、ただプラスルが寝相が悪かっただけの事である。
何ということはない。
 ▼ 82 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/05 23:27:51 ID:T7hog7ds [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ジグザグマ「――ということが有ってだね」

フォッコ「うう……」カアアア

チルット「昨日あんなことが有ったのに……心から軽蔑します」

プラスル「そんなに言わなくても……」

キモリ「まあまあ、仕方ない仕方ない……良いなあ……」ボソッ

チルット「まあそれはおいておきましょう。先生も連れてこなきゃいけないし、プラスルの家も心配だから」

プラスル「あ、まだいるのかも……」


まだプラスルの家に変態達がいるかもしれない。
そんな会話をしていた時だった。
マイナンの耳は、微かな物音を捉えた。
足音、それも三つ。サイズは自分と同じぐらい。
向こうは……マイナン二匹とトゲデマルだ。


マイナン「……っ!!」

   ガサッ ガサガサッ

ジグザグマ「……誰?」

チルット「もしかして……」
 ▼ 83 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/05 23:29:18 ID:T7hog7ds [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……下がって、……プラスルの家にはもう奴等は居ないよ」

プラスル「え?」

マイナン「……ここにいるから!!」

   バッ

トゲデマル「やっほーっ!!」バッ

トゲデマル の ころがる!!

トゲデマル「マルマルマルマルッ!!」ゴロゴロゴロゴロ


マイナンが言った刹那、草むらからトゲデマルが飛び出してきた。
いつもより無駄に多く回っているせいで体表が熱を帯び、接触しにくい。


トゲデマル「どうだ!! これなら手が出まい!!」ゴロゴロゴロゴロ

マイナン「……」

フォッコ「マイナン退いて!!」

マイナン「!?」

フォッコ の ひのこ!!

こうかは ばつぐんだ!!
 ▼ 84 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/05 23:31:15 ID:T7hog7ds [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
トゲデマル「あっちい!!」ボッ

トゲデマル は やけどを おった!!

フォッコ「やったあ!!」

マイナン「フォッコ……」


マイナンが攻めあぐねていた後ろから、一発のひのこが飛んできた。
それはトゲデマルに容赦なく襲いかかり、彼を火傷させる。
それを皮切りに、クラスメイト達の猛攻が始まった。


キモリ の つるのむち!!

チルット の つつく!!

ジグザグマ の たいあたり!!

プラスル の でんきショック!!

トゲデマル「あががが、あががが……」

マイナン「皆……」


火が、蔦が、嘴が、胴体が、電撃が飛び交う小さな戦場で、トゲデマルが転がる。
しかしこれは攻撃等ではなく、単に全身に走る痛みを堪えるための足掻きだった。
隙だらけだ。
 ▼ 85 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/05 23:33:56 ID:T7hog7ds [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フォッコ「今だよマイナン!!」

マイナン「分かってる!!」

マイナン の ばくれつパンチ!!

トゲデマル「あ……あ……」

マイナン「お、らああっ!!」ダダダダダダダダ


トゲデマルを襲う拳の雨は、確実に彼を追い詰めて戦闘力を剥ぎ取り、その勢いのままに学校から叩き出した。


トゲデマル「はひ、はひ……」

トゲデマル は にげだした!!

マイナン「……どうやら、トゲデマルもマイナン二匹も……敵は逃げたみたいだね」

フォッコ「や……やったあ!!」

キモリ「勝ったぞ!!」

ジグザグマ「やったね!!」

チルット「凄い凄い!!」

プラスル「私やったよ、やったよ!!」
 ▼ 86 マカジ@かいふくのくすり 16/08/06 14:14:20 ID:eEvPiTiY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
捻りもないし発想がアレな訳でもないし単純に面白くない
 ▼ 87 ジャンボ@のろいのおふだ 16/08/06 17:53:49 ID:7L7.3KvI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>86
わかるわ、おじいさんのSSは面白かったのに
ポケモンが喋るSSって面白くないよね
 ▼ 88 ボミー@ノメルのみ 16/08/06 20:38:02 ID:8LFFJ2l. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺は好きだけどな
支援
 ▼ 89 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/06 22:21:57 ID:LyhG32o2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>86
>>87
精進します
……一旦プロット見直して来よう
 ▼ 90 ガイドス@ラブラブボール 16/08/07 12:19:11 ID:5WYxfzxI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>89
頑張れ
 ▼ 91 ニーゴ@ボーマンダナイト 16/08/07 15:11:07 ID:h5Qjc8kM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
普通にすごいし面白いと思うよ
 ▼ 92 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 08:05:16 ID:jExXf3kA [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フォッコ「やったねマイナン!!」ギュッ

マイナン「……!?」

プラスル「あっ、ちょっ!!」


突如マイナンにフォッコが飛び付いた。
プラスルは焦りながら少し嫉妬し、ジグザグマは赤くなり、キモリは何だか虚しくなって、チルットはそれを笑っていた。
彼らの回りには、暖かな風が流れていた。


マイナン「……♪」


マイナンは思い返していた。
いつの間にか始まった居候生活。
プラスルと過ごした家庭での時間。
始めは上手く行かなかった学校生活。
親らしきマイナン達の襲撃と、クラスメイト達との和解。
ジグザグマとの生活。
崖での事故。
何者にも負けず輝く皆。
マイナンは彼らと共にいることで喜びを得た。彼らとの思い出を守りたいと思った。


マイナン「皆……ありがとう」


彼の呟きは、清々しい空に吸い込まれていった。
 ▼ 93 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 08:08:43 ID:jExXf3kA [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   ガサッ ガサガサッ


その頃、森の外れに、一人と二匹がやって来ていた。
悪運強く生き延びたハンターとその手持ち達だ。


ハンター『ったくあの野郎……今度会ったら絶対ぶっ殺す……』ウロウロ

スカタンク「おうともよ」ウロウロ

アーケオス「分かってら」ウロウロ

ハンター『……にしても何処にいるんだよ』ウロウロ


もうかれこれ三時間は森をさ迷っていたハンター達。痺れを切らしたのか、こんな事を命令した。


ハンター『ええい面倒くさい、アーケオス、スカタンク、森を端からぶっ壊すぞ!!』

アーケオス「あいあいさー!!」

スカタンク「合点!!」
 ▼ 94 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 08:10:02 ID:jExXf3kA [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そうして森林の伐採を開始した二匹。
何本目の木が倒れた所だろうか。ハンターは木の又に挟まっていた一冊のノートを見つけた。
薄茶色の汚れたノートで、表紙はもうぐちゃぐちゃだが、まだ野ざらしにされてから日は余り立っていないようで、中身は無事な様だ。


ハンター『ん? 何だコレ……? 誰のだろ……まあいいや、後で読もう。続けて』

二匹「「おう!!」」

スカタンク の あくのはどう!!

アーケオス の アクロバット!!

 ▼ 95 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 08:13:46 ID:jExXf3kA [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
日は傾き出していた。不審者の襲撃の片付けをしていた学生達は、結局崖へ戻る事は出来なかった。


チルット「あー……もう夕方か……」

キモリ「先生……」

ジグザグマ「明日、明日行こう?」

キモリ「うん……」

フォッコ「今日はもう家に帰らないと」

ジグザグマ「うんうん」


そんな話をして、もう家に帰ろうという話になった時だった。


プラスル「……あ、家どうしよう」

ジグザグマ「あ」


プラスルとジグザグマ、マイナンは顔を見合わせた。
プラスルの家はさっきまで変態どもが潜んでいた。今日帰るのは精神的に来る藻のがある。
因みに、プラスルの姉は現在、ジグザグマ家を掃除している。
 ▼ 96 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 08:14:38 ID:jExXf3kA [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


プラスル「ごめんね今日も……」

ジグザグマ「良いの良いの、困ったときはお互い様だよ」

プラスル姉「本当にありがとう……!!」

ジグザグマ「うん、良いですよ……でも、プラスル?」

プラスル「?」

ジグザグマ「猥褻行為禁止」

マイナン「……」

プラスル「あっ、あれは、その……寝相と言いますか、不可抗力と言いますか……」

ジグザグマ「言い逃れ禁止!!」
 ▼ 97 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 15:33:18 ID:jExXf3kA [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



夜がだんだんと更けていく。
ジグザグマの家から離れた所で、ハンターがノートを見ていた。
さっき拾った、薄汚れたあのノートだ。


ハンター『さて、このノート……誰かの日記っぽい奴、覗いてみるか……』ペラッ

アーケオス「何なんだろな」

ハンター『……』


――――――――――

今日、マイナンの番を発見した。レベルは30第と予想。
どうやら一つ、卵を設けているらしい。リア充爆発しろ
……卵で思い出した。確か鞄の中に、嘗てロケット団基地からパクって培養した"はかいのいでんし"があるはずだ。この際だから卵の中に打ち込んでやろう

……中々スリリングで面白かった。
マイナン達には気づかれずにはかいのいでんしを打つのに成功した。
この後の経過が楽しみだ。


どうやら卵が孵った様だ。色違いの個体らしい。はかいのいでんしの影響だろうか? 経過を観察しよう
番は子供をどうするか決めかねている様子
ポケモン達の間では色違いは捨てられる傾向にあるから、どうなるか見物だ。ひょっとすれば、実に面白いものが見られるかもしれない。
とりあえず資料を集めよう。
 ▼ 98 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 15:34:23 ID:jExXf3kA [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しまった。勘づかれた。マイナンの糞尿を味見しつつ採取してたらあの番は周囲を警戒し出した。

本当に面白いわこいつら
自分の子供を疑い出したよ! さしづめ、こいつうんこ食うのかよって所か?
とにかく、私の疑いは晴れたって訳だ


マイナンの番は子供を捨てたようだ。
まあ予想通り
親の無い子が生きていけるか怪しいが、とりあえず観察を続けよう。


マイナンは目を覚ましてこの方、ずっと泣いている。水分足りなくなるぞ
まあ目が覚めたら親がいなくなっていたからまあ泣くのも当然っちゃ当然
周囲にはろくな食糧も無いし、どうやって生きていくんだろうねぇ


……驚いた。こいつ三日三晩何も食ってない。
はかいのいでんしはなかなかの耐久力をもたらすらしい。予想外だった。
サバイバル生活もここまで来ると、流石に泣き続ける事も無くなり、効率よく食糧を探している。まあここに食糧無いけどね
 ▼ 99 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 15:34:57 ID:jExXf3kA [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

マイナンとうとう倒れる。衰弱して行って、もうピクリとも動かない。
放置しすぎたかな? この前用意した薬品でどうにかなるかな……

どうにかなったっぽい。垂らしたらマイナンは身体を動かし始めた。次いでにはかいのいでんしも起こしたから、今動いているのははかいのいでんしのはずだ。
さて、どうする?

やりおったやりおった、とうとうあのマイナンは強盗に手を出した。
ターゲットはマッスグマ、食糧を集めてここら辺まで来た個体を後ろから一発、即死
泣きながら食糧奪って食ってた、にしてもマッスグマ確一って何レベだよ


お、またマッスグマ殺した。番だったのだろうか
今度は泣きもせず叫びもせずでまるで感情を失ったみたい
もしかするとはかいのいでんしの影響か?


やっぱり感情を無くしているのか
仮説を立てるなら、はかいのいでんしは感情に呼応するが、このマイナンの場合身体の発達が感情の暴走に追い付いていない為自壊を防ぐために記憶消去というリミッターを用意した……と言ったところか
何にせよ面白い状況、観察を続けよう
 ▼ 100 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 15:35:21 ID:jExXf3kA [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ここ数日間、マイナンはずっと誰かを襲撃している。
食糧目的……なのだろうが、それ以上に襲撃自体が目的と化しているようにも思える。
あ、またトレーナー襲った。
……マイナンはかみなりパンチでたんぱんこぞうのコリンクを倒した。方法は多大な電流を流してコリンク自体の回路をショートさせる……あのコリンク死んだな(確信)


いつまでこの森にいるんだろう
もう一月位立っているぞ
……あとこのマイナンの親は最近上手く食糧を見つけられていないみたいだ。この辺りまで探しに来ていた。
まさかこれもこの色違いのせいにしたりはしない……よね?
したら面白すぎる


トレーナー追い剥ぎ37回目
あ、猟友会の奴だ。あれは、……クリムガン? 無駄にごついけど
マイナンはばくれつパンチで特攻……あ、ドラテで吹っ飛んだ、追わなきゃ

―――――――――
 ▼ 101 リュウズ@ボロのつりざお 16/08/09 15:53:07 ID:gHtRBwLY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン畜生じゃねーか
 ▼ 102 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 15:59:30 ID:jExXf3kA [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ハンター『ここで途切れている、か…… 大方、追うときにここにノートを置き忘れたんだろうな』

スカタンク「だろうね」

ハンター『成程、あのマイナンは魔改造による精神崩壊を一度起こしていて、だから……ははっ、とんだ化け物だな……』

スカタンク「そうやね」

ハンター『まあ、明日捕まえよう』

スカタンク「ああ、おやすみ」
 ▼ 103 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 15:59:57 ID:jExXf3kA [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナン父「……なあ、母さん」

マイナン母「何でしょう」


暗い闇夜の中、二匹のマイナンが話し合っていた。変態は寝ている。


マイナン父「……あの家を出てから、何日たったっけな」

マイナン母「さあ、もう一月は経ったでしょうね」

マイナン父「一月……そんなに、か……」

マイナン母「早いですね……」

マイナン父「ああ……思えば、あの忌み子の存在を知られて、村八分にされたあの日が昨日の……いや今日のように感じられる」

マイナン母「……」

マイナン父「あいつを殺せば……きっと、元に……」


朝はやって来る。誰も一日からは逃れられない。過去には戻れない、昨日は変わらない。
 ▼ 104 バゴ@かたいいし 16/08/09 16:03:15 ID:gHtRBwLY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハンター普通にいい人に見えてきた
手持ちには優しいんだな
 ▼ 105 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 19:28:39 ID:jExXf3kA [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ジグザグマ「ふわぁぁ……あ」

プラスル「zzz……マイナン……」ギューッ

マイナン「ううっ……ぐ……zzz……」モゴモゴ

ジグザグマ「……」


目を覚ましたジグザグマは、やっぱりマイナンに抱きついていたプラスルを目撃する。
足が凍りつき、視線が離れない。


プラスル姉「あら、おはよう……」

ジグザグマ「あ、おはようございます……ずっと見てたんですか?」

プラスル姉「ええ……」

プラスル「マイナン……zzz……」ギューッ


妹を見ながら、軽く溜め息をつくプラスル姉。
初めは見るのも嫌だったあのマイナンが、こんな事になるだなんて、彼女も、誰も思っていなかったのだ。


プラスル姉「なんだか……複雑だけど、受け入れないと……ね」

ジグザグマ「……」
 ▼ 106 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/09 21:19:57 ID:jExXf3kA [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
学校にて、やっぱりプラスルはマイナンに抱きついていた事を弄られていた。


プラスル「もう、何で知ってるの!!」

マイナン「……」

チルット「うふふ♪」

キモリ「……」チラッ

フォッコ「それは……」チラッ

ジグザグマ「ドヤッ」フンス

プラスル「あああ!!」

ジグザグマ「HAHAHA」


崩れ落ちるプラスル。それを見ながら笑い合うクラスメイト。学校に暖かな雰囲気が流れる。
だが、それはあくまで一時しのぎの暖かさ。彼らは決して、過去を忘れた訳ではない。
 ▼ 107 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/10 01:42:35 ID:Ghe67bk. [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チルット「……じゃあ、崖行こうか」

キモリ「……うん」

ジグザグマ「そうだね」

プラスル「……うん」

フォッコ「……分かった」

マイナン「……」


成すべき事を成すために、六匹のポケモンが立ち去ろうとした、その時だ。
背後から、聞きなれた声がかかる。


ユンゲラー「久し振りだな」

六匹『!?』


そこにいたのは、紛れもなく。
目を擦っても変わることなく、それはあの、死んだはずのユンゲラーだった。
 ▼ 108 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/10 01:50:11 ID:Ghe67bk. [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チルット「え……」

キモリ「な……」

プラスル「ふぁっ……」

ジグザグマ「ま……」

フォッコ「う……」

マイナン「あ……」

ユンゲラー「……いや、そんなに驚くなよ」

キモリ「いや驚くよ普通」

チルット「何で、何で生きてるんです!? ここに来てるんです!?」


ユンゲラーに、死者に詰め寄る教え子達。
死者は甦らない筈なのに、その常識があっというまに崩された。
その衝撃は大きかった。


ユンゲラー「いや〜……何でって言われても……目覚めたらいつの間にか崖の上で寝てたって位で……」

ジグザグマ「そんなの絶対おかしいよ」


そんなやり取りを陰から見る人が一人。
ユンゲラー復活は何もおかしい事ではない。彼が起こした事だ。
 ▼ 109 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/10 08:05:55 ID:Ghe67bk. [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ハンター『良く良く考えたら、しらみ潰しに森の中探すより、崖からユンゲラー拾って欠片使えば、こうやって場所が分かるんじゃねえかなって思った……当たってたよ』

アーケオス「さっすが!!」

ハンター『……暫く様子見だ。弾丸の用意は十分か?』


談笑するポケモン達。
今はただ再会を喜んでいただけだったのだが、そんな事は歯牙にもかけず、運命は彼らに牙を剥く。


ハンター『目標、マイナン』


猟銃の照準を合わせながら、ハンターが呟く。
懐から、紐付きクイックボール――猟銃にセットして命中させた相手を捕獲する、ハンターが盗み出した、猟友会特注のボール――を取り出してセットする。


   チャキッ

ハンター『さて……行くぞ』

   パアンッ
 ▼ 110 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/10 15:26:03 ID:Ghe67bk. [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
響く破裂音、ボールが当たったのは、マイナンでなく……プラスルだった。


プラスル「うわああああっ!!」

   プイッ プイッ プイッ  カチッ

マイナン「あっ、プラスル!?」

キモリ「プラスル!!」

ハンター『……ちっ、俺も鈍ったか!!』

スカタンク「あちゃー、風向きが悪かったね」

ハンター『とにかく突撃するぞ!! 今なら多分何とかなる!!』ダッ

スカタンク「おう!!」

アーケオス「OK!!」


茂みから飛び出して、一直線に駆け出すハンター達。その前に、ユンゲラーが立ちはだかる。
崖での戦いのリベンジマッチ……と言ったところか
 ▼ 111 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/10 15:28:38 ID:Ghe67bk. [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユンゲラー「子供達に手出しはさせない!!」

ハンター『へっ、お前のお陰でここまで来れた、お礼に相手してやりな……スカタンク!!』

スカタンク「おうおう!!」


スカタンクをぶつけて、ユンゲラーを突破するハンター。
プラスルの入ったボールを拾い上げ、プラスルを繰り出す。


プラスル「うっ……はぁ、はぁ……」

フォッコ「プラスル!!」

ジグザグマ「早く逃げてぇ!!」


繰り出されたプラスル。すぐそばの危険に仲間達が悲鳴を上げ、プラスルもその場を動こうとする。だが、ハンターはホルスターから拳銃を取り出して、ゆっくりとプラスルに銃口を押し付けた。


ハンター『動くなよ? ……動いたら撃つ』カチャッ

プラスル「……っ!!」

マイナン「プラスル!! どうしよう……」


焦燥の色を見せるマイナン。下手に動けば彼女は死ぬ。
他のポケモン達もどうすればいいのかと悩んでいた。
 ▼ 112 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/10 15:31:57 ID:Ghe67bk. [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


スカタンク「おらっ!!」

スカタンク の ヘドロばくだん!!

ユンゲラー「ふんっ!!」

ユンゲラー の サイコキネシス!!


ヘドロばくだんとサイコキネシス、二匹の攻撃が相殺される。辺りに飛び散る衝撃波が、二匹の頬を撫でた。


ユンゲラー の めざめるパワー!!

スカタンク の あくのはどう!!

スカタンク「ふ……ふ……なあ、そろそろ負けてくれよ?」

ユンゲラー「やなこった!!」


突進してくるスカタンクを、念動力で押さえつけるユンゲラー。かなりギリギリの戦いだ。
どちらもあまり長くは持たないだろう。


スカタンク「へっ……だったら本気出すぞおら!!」

ユンゲラー「ほざけ!!」
 ▼ 113 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/10 17:15:31 ID:Ghe67bk. [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ハンター『……マイナン、両手を上げて、歩いて此方に来い。……変なことを考えるなよ?』

マイナン「分かった」

プラスル「マイナン……」


ハンターの呼び掛けにすんなり応じて、彼に向かって歩き出すマイナン。勿論、彼に恐怖は無い。
プラスルはそんなマイナンを心配そうに見つめている。


ハンター『よし、来たな……捕まえるぞ、良いな? 大人しくしてろよ?』

フォッコ「マイナン!!」

ジグザグマ「駄目だよマイナン!!」

チルット「どうしようどうしよう……」

プラスル「マイナン……!!」


マイナンにモンスターボールが、当たる、押し当てられる、マイナンが捕まろうとする、その時だった。
銃口を押し付けられたプラスルの元に、一本の蔓が、蔓の鞭が飛んできたのだ。
 ▼ 114 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/10 18:01:10 ID:Ghe67bk. [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キモリ の つるのむち!!

キモリ「捕まって!!」

ハンター『げっ!?』


プラスルを素早く回収するキモリ。隙を突かれたハンターは、取り合えずマイナンを捕獲しようとモンスターボールをを投げる。だが。


   スカッ

しかし あたらなかった!!

ハンター『嘘おっ!?』

アーケオス「兄ちゃん、後ろ後ろ!!」


そこにはマイナンはいなかった。
一瞬で消えたマイナンに驚くハンター。その背後には、雷を纏った拳を振りかぶるマイナンの姿が。
 ▼ 115 ターミー@あかいいと 16/08/10 18:06:15 ID:hv9WvQK. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン氏ね
 ▼ 116 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 20:13:42 ID:KsZgfaL6 [1/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン の かみなりパンチ!!

マイナン「うらあっ!!」ブンッ

ハンター『よっ!! ……危ねえな』


咄嗟に、体をぐいっと捻ってかわすハンター。躱されて一瞬動きが止まったマイナンにアーケオスがたいあたりして、肉弾戦へともつれ込む。


マイナン の かみなりパンチ!!

マイナン「だあっ!!」ズザザザザ

アーケオス の アクロバット!!

アーケオス「同じ手は食わねえ!!」


以前のように、スライディングしてから腹を狙おうとするマイナンだが、アーケオスに躱される。
そこからアーケオスの足裏を鳩尾に叩き込まれてふらつくマイナン。
マイナンの、友の行う殺し合いを前に、クラスメイト達は、いてもたってもいられ無かった。
 ▼ 117 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 20:14:28 ID:KsZgfaL6 [2/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
フォッコ の ひのこ!!

チルット の りんしょう!!

アーケオス「え、おわっ!?」

マイナン「っ止めろ!!」

フォッコ「でも、見ていられないから!!」

マイナン「良いから離れろ!!」

チルット「私達も助けたいの!!」

ジグザグマ「君も、皆も!!」


マイナンが止めるも、彼らは無視した。
彼らに恐怖は無い……訳ではない。無いのだが、それでもじっとしていることの方が、何もできない事の方が、彼らにとっては怖かったのだ。


スカタンク「はあっ、はあっ……」

ユンゲラー「はあっ……はあっ……」


戦闘の途中に、教え子達に目を遣るユンゲラー。
もうユンゲラーもスカタンクも限界だった。
歪む視界に炎の赤が飛び込んでくる。
 ▼ 118 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 20:15:33 ID:KsZgfaL6 [3/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

スカタンク「……良いのか? 大事な生徒さんが戦いに首突っ込んでるぜ?」

ユンゲラー「良くない……心配するなら、倒れてくれ!!」ダッ

ユンゲラー の きあいだま!!


アーケオス「5っ、5vs1は卑怯だろ!!」

フォッコ「そんなの知らない!!」

ジグザグマ「そうだそうだ!!」


マイナン、フォッコ、ジグザグマ、チルット、キモリがアーケオスを袋叩きにする。
アーケオス、上手く動けずにもがくのみ、徐々に疲弊してゆく。
数の暴力、勝負はマイナン達の優勢だった。
……だが、アーケオスの表面積に対して五匹は流石に多すぎた。
今もキモリがあぶれている。


ハンター『これは、不味いな……』

   カチャッ

ハンター『仕方無い、あまり使いたくないのだが……』

   カシャン  チャッ

ハンター『悪く……思うなよ?』
 ▼ 119 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 20:16:00 ID:KsZgfaL6 [4/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハンターは、拳銃に新しい弾丸――殺傷力重視のフォローポイント弾――に詰め替えた。迷い無く撃ってくるのだろう。
それにいち早く気づいたキモリは、攻撃を逸らすためにハンターへと近づく。


   チャキッ

キモリ「止めっ……」

   カチャッ


刹那、キモリに銃口が押し当てられた。冷たい金属がキモリの正気を蝕む。
目を見開いて硬直する彼に向かって、ハンターはトリガーを引いた。


   パアンッ パアンッ パアンッ パアンッ  ドサッ

キモリ「……っ…………」ビクビク

マイナン「キモリ!!」

フォッコ「キモリ!?」

ジグザグマ「大丈夫か!?」


四発。四発の銃弾がキモリを貫いた。それぞれ頭、喉、心臓、足を撃ち抜いている。
駆け寄るポケモン達。ハンターはその隙にアーケオスとスカタンクを回収してその場を離脱した。
あとには、キモリを囲んで絶句するクラスメイトと、その場に腰をついて動けないユンゲラーのみが残された。
 ▼ 120 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 20:16:52 ID:KsZgfaL6 [5/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

キモリ「……がっ……」

チルット「キモリ!!」

マイナン「喋るなキモリ!! 今なんとか……」

ジグザグマ「何か何か薬草は!?」

フォッコ「私取ってくる!!」ダッ

キモリ「……」


赤黒く鉄臭い血に染まった、冷たい地面に倒れ伏すキモリの周囲には、プラスルとマイナンのみが残された。
キモリは、虚ろな目で力無く二匹を交互に見つめる。
 ▼ 121 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 20:17:40 ID:KsZgfaL6 [6/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

プラスル「ねぇ、しっかりしてよ!!」ユサユサ

キモリ「プラ、スル……大、丈……」

プラスル「大丈夫だから!! 私大丈夫だから!! だから……」

マイナン「キモリ……」

キモリ「マイ、ナ……ごほっ……プ、……ル……」

マイナン「おい、しっかりしろ!! おい!!」

キモリ「た、のむ……よ……」ドサッ

キモリ は たおれた!!


キモリは倒れた。ぐったりとした体はもう、酷く冷たくなっていた。
拳を握りしめ、地面を殴り付けるマイナン。己の無力と、ハンターに対して"怒り"が混み上がり、キモリも、仲間を失った"悲しみ"がマイナンを飲み込んだ。
森に、叫びが響いた。
 ▼ 122 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 22:34:13 ID:KsZgfaL6 [7/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
  
 タッタッタッタッ

ハンター『うわー……何だよあのマイナン。チートだよチート』タッタッタッタッ

アーケオス「はぁ……はぁ……」

ハンター『取り合えずどっかで休むぞ。あの木の辺りが良さそうだ。 ……ん?』

アーケオス「どうした?」


逃げていたハンターが視線を逸らす。その方向には、あの薄汚れた茶色いノートが。
きっと、あの日記だ。続きを書いたのだろうか?
そう思いながらハンターはノートを手に取り、パラパラとめくり出した。
 ▼ 123 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 22:36:19 ID:KsZgfaL6 [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――

マイナンも見つかったし、また日記をつけたいと思う。
マイナンは、どうやらプラスルの巣に転がり込んでいたらしい。
プラスル自体はなんのへんてつも無い個体だった。
観察を続けよう


マイナン自体はかなり馴染んでいるらしい。糞尿も苦味が少ないから、かなり良い食事環境なのだろう。
なんて考えていたらプラスルが出てきた。その辺から草をかき集めている。
何が目的だろうか?
マイナンの蒸し焼き? ……案外味付けによっては美味しそうだが


まさかの簑だった。ポケモンの集合場所……学校? らしきところに簑マイナンをつれていく。
恐らく色違いを隠そうとしたのか
寧ろ目立つぞ、それ
 ▼ 124 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 22:37:36 ID:KsZgfaL6 [9/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

はいバレた、マイナンの簑取れた。
しかも自分で取っていやがる
バカなのかドジっ娘なのか何なのか……

マイナンは一旦プラスルの巣に戻ってから外へ出た。身仕度していたのだろうか? 取り合えず追ってみよう

……一目みたいと思ったのか迷子になったのかは知らないが、何故か学校らしきところに戻ってきてしまった。しかもマイナン見てる。ストーカーかな?
あ、学校を誰か襲撃してきた。あのマイナンの番じゃないか、奇遇だね
マイナン後ろからそいつらに飛びかかる。
そして一方的に戦闘終了した


あのあと再び学校に入るようになったマイナン。英雄視されたのだろうか
現在は学校にいたジグザグマ……多分マイナンが殺したマッスグマの子供の巣にいる。随分狭いコミュニティだこと……
今いるのがどんな者の棲家なのかは……記憶を失っているから気付いてないんだろうけど、気付いたらどうなるのか

――――
 ▼ 125 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 22:38:27 ID:KsZgfaL6 [10/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ハンター『で、ここで途切れている、と……』

アーケオス「そうだね」

ハンター『こいつよく日記を落とすな……見直ししろよ』


等とハンターが呟いていた時だった。
何者かの足跡がハンターに近づいてくる。もしやマイナンか?と身構えるハンター。だが、すぐにそうではない、人間だと気付いた。では、誰だ?


研究者『あら、悪かったわね……日記を良く落とす見直ししない女で』

ゴルーグ「ゴー……」

ジバコイル「Hello……」


そこにいたのは、白衣に長靴、眼鏡を装備した長髪の女研究員だった。傍らにはゴルーグとジバコイルを引き連れている。


ハンター『あー……日記読んじゃった、ごめんな?』

研究者『それは……まあ良いわ、落としたのが悪いんだし……でも、今日は貴方に言いたいことがあってね』

ハンター『……何だ?』
 ▼ 126 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 22:40:24 ID:KsZgfaL6 [11/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
研究者『あのマイナンは、私の研究対象よ。手を出さないで貰いたいんだけど。 ……ノーと言うなら、此方にも手があるわ』

ゴルーグ「コー……ホー……」

ジバコイル「battle……」

ハンター『……』

アーケオス「うわぁ……うわぁ……」


何も言えないハンター。本当なら直ぐ様ノーと言うのだが、今の手持ちは手負いのアーケオスとスカタンク。対して相手は、良く鍛えられたゴルーグとジバコイルだ。
形勢は明らかに不利、ハンターの取るべき最善手は、一つしか無かった。


ハンター『はぁ……オーライ、俺はあんたの研究の邪魔はしない。だが……あんたの研究が終わったらあいつを捕まえても良いだろ?』

研究者『ええ、それは勿論』

ハンター『……じゃあ、あんたについていっちゃ駄目かい?』

研究者『あら、新手のナンパかしら?』

ハンター『……』

研究者『……構わないわ。でも、変なことは考えないでね』

ハンター『ああ、分かってる』
 ▼ 127 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 23:00:20 ID:KsZgfaL6 [12/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一言も発すること無く、冷たく、固くなっているキモリを見つめるポケモン達。
眼前にある死に、涙すら出てこない教え子を前に、ユンゲラーは言った。


ユンゲラー「……この子は任せて、皆はもう帰りなさい」

チルット「……じゃあ、キモリは……」

プラスル「キモリは、どうするの?」

ユンゲラー「……送っておくよ」


生徒達は黙って立ち去った。
マイナンは、沈んだ目で空を見上げてから、その目を伏せた。
その日の空は、酷く濁っていた。
 ▼ 128 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 23:02:35 ID:KsZgfaL6 [13/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

その日の夜、プラスルは嫌な夢を見た。
泥の中からキモリが這い出てきて、それとマイナンがひたすらに殴り合う夢。
泥に濡れたキモリは、壊れても壊れても再生して、ぬちゃぬちゃと音を立てながらマイナンを襲い、マイナンは段々と消耗して行く。
それを見ていた仲間のポケモン達も、いつの間にか泥に足を突っ込んでいて、自分も引き摺り込まれていて。
必死にもがいていると、ハンターがそれを笑いながら見ているのに気がついて、でも何もできずに飲み込まれる夢。


プラスル「っ……!!」ハアッ ハアッ


夢から覚めても、まだ夢の中の様で、プラスルは考えるのを止められなかった。
怖かったのだ。とにかく、怖かったのだ……プラスルは、誰ももう失いたくない、失うのは怖いと考えた。
目には涙が溜まっていた。
 ▼ 129 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 23:50:22 ID:KsZgfaL6 [14/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナン「……おはよ……」

ジグザグマ「おはよう……あれ、マイナン?」


ジグザグマは、起きてきたマイナンを見て驚いた。彼は、酷く窶れていたのである。今いるのは、悲しみも、怒りも……恐怖も無かった彼では無い。
感情を取り戻す事で、かかっていた魔法を解いてしまった、一匹の小さなマイナンである。


学校でも、窶れたマイナンはクラスメイト達を驚かせた。
魔法のかかっていたマイナンがデフォだった彼らにとっては、今の、魔法の解けたマイナンは初対面のような物だった。


プラスル「……マイナン……」

フォッコ「……」

チルット「……」

マイナン「……」

プラスル「ねえ……ねえしっかりしてよ!! ねえ!! 戻ってきて!!」ユサユサ

マイナン「……?」

プラスル「マイナン、いつものマイナンじゃないよ!! 私の知ってるマイナンじゃない!! 帰ってきてよ!!」ユサユサ
 ▼ 130 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/13 23:52:06 ID:KsZgfaL6 [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナンを揺さぶるプラスル。変わってしまったマイナンは、虚ろな目で、プラスルを眺める。
それは彼女の知るマイナンでは無かった。彼女にとっては、マイナンは失われかけていたのだ。マイナンを、己の知るマイナンを繋ぎ止めようと、尚も揺さぶり続けるプラスル。そこに横槍が入った。


プラスル「ねぇ、ねぇ!! 帰ってきてよ!!」

マイナン「……」

プラスル「ね

フォッコ「止めてプラスル!!」

プラスル「……フォッコ?」

フォッコ「彼は彼、彼は普通のポケモンになっただけ!! マイナンのままよ!! 貴女は、自分の理想を彼に押し付けているだけよ!!」

プラスル「そ、そんな言い方……」

マイナン「……」


横槍を入れたのはフォッコだった。
貴女のそれは押し付けに過ぎないという意見に、プラスルは反論できない。
気まずい沈黙。今はモブに徹している豆狸と綿鳥も、重苦しい雰囲気に息を潜める。
後から来たユンゲラーも何も言えず、ただ黙り込むのみ。
その時だった。
 ▼ 131 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 03:22:31 ID:jlkDe26A [1/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   ガサッ

マイナン「!!」

プラスル「誰!?」


何者かが茂みを揺らす。凍りついたようにその場に棒立ちになるマイナン。
蠢く低木から現れたのは、マイナンの父と母だった。


マイナン「……っ」ビクッ

マイナン父「見ていたぞ……昨日は狩人に、キモリ……仲間を殺られていたな」

マイナン「……」

マイナン父「やっぱり……やはりお前は忌み子だよ。お前の側にいるだけで、多くのポケモンが被害を被る。勿論、私達もだ」

フォッコ「そんな!! マイナンは、私達の!!」

マイナン父「良く考えろ、お前がいなければ、あのキモリは死ななかったぞ!!」
 ▼ 132 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 03:23:20 ID:jlkDe26A [2/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チルット「……でも!!」

ジグザグマ「マイナンは悪くない!! 僕らの大事な、かけがえのn

マイナン父「煩い……もう言うな、何にせよ、お前らもマイナンも殺す!!」


場にいるのはマイナン夫婦とプラスル、マイナン、ジグザグマ、フォッコ、チルット。
手近にいたフォッコに襲いかかる夫婦を見て、マイナンは何時ものように、父を殴りに向かおうとした。
だが。


マイナン「……っ……」ブルッ

プラスル「マイナン!!」

マイナンは ひるんで うごけない!!


彼の魔法は既に解けている。無感情だった彼は魔法を解き、恐怖を手に入れてしまった為、目の前の狂気を前に足が竦みだしたのだ。
勿論、フォッコを助けなければとは思う。だが体がそれを拒否するのだ。


マイナン父「はっ、動けないか……あんたも気の毒だな、フォッコ」

マイナン母「そうね……もう終わらせましょう?」


助けたい、死にたく無い、でも助けたい……
生への葛藤にがんじがらめにされ、身動きの取れないマイナンの前で、父と母の足がフォッコに叩き込まれた。
 ▼ 133 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 03:24:37 ID:jlkDe26A [3/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
筈だった。
だがそこにいたのは、枝で器用に足裏を受けとめ、そこからかえんほうしゃを放つ、テールナーの姿だった。
つまりは、進化したのである。


テールナー「私は好きでマイナンと居るの!!それは忌み子とかどうとか関係無くて、その……だから私はあなたたちを倒す!!」

チルット「フォッコ……私たちも負けてられないね!!」

マッスグマ「うん!!」

チルット「何さらっと貴方も進化してるのよ」


チルットとマッスグマも、テールナーの元へと向かう。友の助けとなるため、己の感情に嘘をつかない為に。
残されたマイナンとプラスルは、茫然自失とした感じでそれを見つめる。


マッスグマ の とっしん!!

チルット の りんしょう!!

テールナー の かえんほうしゃ!!

マイナン父「ちっ!!」

マッスグマ「僕らは、マイナンと共にいたい!!」

チルット「私達の邪魔はしないで!!」
 ▼ 134 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 03:25:10 ID:jlkDe26A [4/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マッスグマ の とっしん!!

マイナン母「ぐっ!!」

きゅうしょ に あたった!!


とっしんがマイナンの母の下腹部を豪打する。よろめいた次の瞬間には輪唱が襲いかかり、かえんほうしゃで火傷を負った。
流れるようなコンボは、三匹の意思の成せる技だ。


マイナン父「これは、不味い……お前たち、このままだと不幸になるぞ!!」

チルット「不幸かどうかは!!」

テールナー「私達が決める!!」

マイナン父「……くそっ!!」ダッ


脅しにも怯まず答える三匹に不気味さを覚えた父は、母を回収した。そのまま茂みへと戻る。
両親は立ち去った。彼女らはやり遂げたのだ。


マイナン「皆……」


マイナンは周囲を、友の戦績を見回した。
両親を追い払った彼らの力は、とてもマイナン自身には及ばない。だが彼らは今、強かった。眩しかった。
 ▼ 135 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 03:25:52 ID:jlkDe26A [5/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

プラスル「皆……」

テールナー「ふぅ……私達だってやればできるのよ。これからは、一方的に守られる自分じゃ無くて、支え合って……」

マッスグマ「うんうん、悩みを溜めなくたって良いんだよ。僕らは君の友達だから」

チルット「そうそう!!」

マイナン「……」


彼らの心の輝きは、目が痛くなるほどの眩しさだった。マイナンはそれを直視出来なかった。
彼らは、マイナンの中で大切な、守るべき存在だった。友であり仲間であり愛する者達だった。
彼らはもう今までの彼らでは無かった。
それはきっと喜ばしい事なのだが、どこか寂しかった。
 ▼ 136 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 07:38:48 ID:jlkDe26A [6/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


……その日の夜だ。マイナンは夢を見ている。青白い半月の下で、あのマイナン夫婦に袋に入れられて運ばれている夢。


マイナン「……っ……zzz」


木の下にやって来た。袋が下ろされる。待って、捨てないで、捨てられる。嫌だ、苦しい。
誰もいない。とっても辛い。寂しい。


マイナン「っ……や……zzz」


お腹すいた。喉乾いた。暑い。寂しい。
誰もいない中で泣いているのは、空しい。


マイナン「あっ……zzz……」

マッスグマ「……zzz……」


……何日経っただろうか?
この生活で命を削り続けて、もう涙も枯れ果てた。
でも限界、体が動かない。意識が飛ぶ……
あ、マッスグマだ……助けてもらoっ……!?

   
   ピチャッ
 ▼ 137 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 07:46:37 ID:jlkDe26A [7/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……あれ、何か垂れたような……?   !?
痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい
何だか体が痺れてきて、自分の物じゃ無いように思えて、視界が紫に染まって……
あれ、何で歩いてるの? 何で勝手に足が、何で? どうして拳を握ってるの!?


マイナン「あっ……だ……zzz……がっ……」

マッスグマ「マイナン……?」


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、久々に会った他人なのに、殺しちゃった殺しちゃった
辛い、この手で殺した事実が重い。
こんな事になるんなら、もう死にたい。
死ねないなら、責めて全部無くなってしまいたい。こんな感情感じたくない!!


マイナン「うわああああっ!!」ガバッ

マッスグマ「マイナン!!」


夢から醒めると、隣でマッスグマが呼んでいた。かなり怖がっている。床は寝汗でグショグショ、きっと顔も酷いだろう。
 ▼ 138 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 07:47:07 ID:jlkDe26A [8/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……はぁ、はぁ……夢?」

マッスグマ「……マイナン? 大丈夫?」

マイナン「……うん」

マッスグマ「辛かったら……何時でも言って?」

マイナン「……分かってる、ありがとう」


マイナンは全てを思い出した。
色違いとして生まれた為に恨まれて捨てられた事も、意識を失って倒れた事も、暴走してマッスグマを殺した事も。


マイナン「……」

マッスグマ「……zzz」


いくら悩んだとしても残酷な事に、朝は必ずやって来る。
マッスグマと共に登校するマイナンの面持ちは暗かった。
 ▼ 139 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 07:55:52 ID:jlkDe26A [9/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……」


マイナンは考えた。 きっと自分は、マッスグマの両親を殺してしまっていたのだろう。
今なら、殴り殺した感触に、かかった血液の温度までまでありありと思い出せる。
……コレを知られてしまったなら、きっとここにも居場所は無くなる。
変えられるなら過去を変えたい。でもそれは不可能だ。
ならば……ならば責めて、今を失いたくない。彼らとの思い出だけでも守りたい。
マイナンはそう思った。


マイナン「……」

プラスル「……マイナン? 大丈夫?」

マイナン「……あっ、大丈夫大丈夫……問題ないよ」


学校での、単調な日々。ユンゲラーは葬儀の事情で来ない為、授業すら無く、重く陰鬱な沈黙が自然と増えた。
マイナンは、押し潰されそうな人格を支えながら沈黙を耐えた。
……その時だ。また、あいつらがやって来た。
マイナンの邪魔をする、思い出を破壊する、マイナンの過去の象徴であり偶像であるあいつらが。
 ▼ 140 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 07:56:20 ID:jlkDe26A [10/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   ガサッ ガサガサッ ガサッ

マイナン「……!!」

   バッ

あ!! やせいのトゲデマル が とびだしてきた!!

トゲデマル「マイナン!! ここで決着を着けてやる!!」


まずはトゲデマル。プラスルを襲った変態であり、倒すべき奴その1。
クラスメイト達も彼を敵視していて、罵倒の言葉を浴びせかける。


チルット「出たな変態!!」

テールナー「帰ってもらうわよ変態!!」

プラスル「そうだそうだ!!」

マッスグマ「帰れk……危ない!!」

チルット「!!」バッ

マイナン父 の スパーク!!

しかし あたらなかった!!
 ▼ 141 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 07:57:19 ID:jlkDe26A [11/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マッスグマが真っ先に気づいたのは、マイナンの両親でありマイナンを苦しめた元凶、父と母。
何故襲ってくるかは良く分からない。昨日の言葉を聞く限り、もしかしたら止ん事なき事情が有ったかもしれない。
だがそんなの関係ない。敵は潰す、それだけだ。
睨み合う三匹と五匹。最初に動いたのはマイナンの父だった。


マイナン父「私達はやり直す!! マイナン、お前と、……お前の信者達を消してな!!」ダッ

マイナン「悪いな、父さん……俺は、負けられないんだ!!」ダッ

マイナン父 の かみなりパンチ!!

マイナン の かみなりパンチ!!


二匹のマイナンが宙を舞う。
かみなりパンチはお互いの顔面に突き刺さり、二匹は吹き飛んだ。


マイナン父「くっ、まだまだあ!!」バッ

マイナン父 の スパーク!!

マイナン の かみなりパンチ!!

   ガンッ


マイナンの拳が父の胴体にめり込み、父の電撃がマイナンの肉を焼く。
お互いに逼迫した状況、マイナンは自分の体を捻った。
 ▼ 142 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 07:59:52 ID:jlkDe26A [12/48] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン の メガトンキック!!

マイナン「やあっ!!」

   グサアッ

マイナン父「ぬうっ!?」


脇腹に抉り込まれる膝は、マイナンの父の内蔵をを揺さぶり、身体を地面に打ち付ける。
地に堕ちた父の姿目掛けて、マイナンは己の拳を打ち付けた。


マイナン「らあっ!!」

マイナン の ばくれつパンチ!!

   ダダダダダダ

マイナン父「くっ!!」ゴロゴロ

しかし あたらなかった!!


それを地面を転がって回避する父を、マイナンの終わらないラッシュが襲う。
徐々に狭まる二匹の間。
拳との距離があと5pも無いぐらいの所で、マイナンの父は突如跳ね上がった。
怯むマイナンに向かって空中から蹴り込まれるキックがマイナンの首を打ち抜く。
 ▼ 143 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 08:00:18 ID:jlkDe26A [13/48] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン父 の メガトンキック!!

きゅうしょ に あたった!!

マイナン「!?」ズザザザ

マイナン父「お前を生んでから、俺達は苦労してきた!! 隣人に蔑まれ、ろくに食うことも出来ず、狭い思いをしてきた、この思いが分かるか!? あ!?」

マイナン「ゲホッ……そんなの知るか……苦労したかも知れんがな、ただ言えるのは、俺は知らねえってだけだ!!」

マイナン の メガトンキック!!


二匹とも地を蹴り、互いに蹴りの応酬を始めた。
火花が散り、血が吹き出す。顔を歪めながら睨み合う二匹は、間違っても親子とは思えず、それは、宿敵……いや、外敵との殺し合いだった。
 ▼ 144 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 08:11:28 ID:jlkDe26A [14/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
テールナー の かえんほうしゃ!!

マッスグマ の とっしん!!

マイナン母「くっ……」


かえんほうしゃが頬を焼き、捨て身の特攻が精神を擦る。
二匹の止むことの無い猛攻は、彼女、マイナンの母の神経を蝕んで行く。


テールナー「私の、私達のマイナンに、傷はつけさせない!!」

マッスグマ「僕らは彼に守られていた!! 今度は僕らが守るんだ!!」

マイナン母「黙って!! うるさい!!」


金切り声があたりに響く。
再び土手っ腹にマッスグマが突き刺さり、かえんほうしゃが全身を焼いた。
 ▼ 145 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:28:23 ID:jlkDe26A [15/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

チルット「これはプラスルの分!!」

チルット の かぜおこし!!

   バサバサバササッ

トゲデマル「あうあうあうあう」

プラスル「これはお姉ちゃんの分!!」

プラスル の スパーク!!

トゲデマル「あばばばばば」


二匹の攻撃が、疾風と電撃がトゲデマルを襲う。
因縁……というか恨みがあるプラスルは、殊更に苛烈な攻撃の雨を降らせた。


プラスル「よくも私達を虐めてくれたわね!!」

トゲデマル「そ、そんな……プラスルたんh

   ゲシッ

トゲデマル「いったああい!!」


容赦なく股間に決まる金的が、トゲデマルの理性も吹き飛ばした。
力なく倒れ込み、ひくひくと痙攣する変態を前に、チルットは風を起こした。丸いボディのトゲデマルは、風に吹かれて転がりだす。
 ▼ 146 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:29:00 ID:jlkDe26A [16/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「シュート!!」ゲシッ

トゲデマル「あひっ、あひっ」ゴロゴロ

マッスグマ「おわっ、こっち来る!!」

テールナー「身代わりよ身代わり!!」

   ゴスッ

マイナン母「痛っ!!」


勢い余ってマッスグマとテールナーの元へと蹴り込まれたシュートは、身代わりにされたマイナンの母へと見事に決まり、二匹とも大地に倒れ付した。それを喜ぶ四匹。


マッスグマ「やった!!」

テールナー「ナイスシュート!!」

チルット「よっ、MVP!!」

プラスル「えへへ……」
 ▼ 147 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:29:50 ID:jlkDe26A [17/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

   ガンッ ガンッガンッ  ガンッ

マイナン「ぐうっ……」

マイナン父「はあ……はあ……」


仲間達が勝利を喜んでいるなか、まだマイナンは父と殴りあっていた。
火事場の馬鹿力とでも言うべきか、マイナンの父の力はつきることなく、何時までも争いは続いている。


マイナン の かみなりパンチ!!

マイナン父 の スパーク!!


二匹の電撃が飛び散り、周囲が眩く光る。
明滅する視界の中に、マイナンは父の足裏を見た。
力強い蹴りが鳩尾に入る。勝った……マイナンの父はそう確信した。
刹那、マイナンの目が紫に光り、口角が、ニヤリと歪んだ。


マイナン の くさむすび!!

マイナン父「おわっ!?」ヨロッ
 ▼ 148 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:30:34 ID:jlkDe26A [18/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
仕込んでいた草の紐が。マイナンの父の足元を掬い上げた。
よろける父親の全身に、容赦ないラッシュが抉り込まれる。


マイナン「……終わりだあああぁあ!!」ダダダダダダ

マイナン の ばくれつパンチ!!

きゅうしょ に あたった!!


父親の五臓六腑を尽く破壊したマイナンは、その拳を解き、倒れ伏す父親を一瞥した。
もうピクリとも動かない父親に、嬉しいのか悲しいのか良く分からない視線を向けるマイナン。


マイナン父「」

マイナン「……さよなら、二度と出てくるな」


そう言い放つ。
マイナンの母がよたよたと起き上がり、父とトゲデマルを回収して消えていった。
マイナンに駆け寄るクラスメイト達。それを見るマイナンの目は、もう黒くなっていた。
 ▼ 149 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:39:18 ID:jlkDe26A [19/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その日の夕方の事だ。
マイナンは、学校の近くで待たされていた。
テールナーが、後でここに来いと言っていたのだ。


マイナン「……なんだい、急に呼び出して」

テールナー「あ……その、言いたいことあって」

マイナン「言いたい事って?」

テールナー「あの、その……あ……」

マイナン「……?」


もじもじとするテールナーに、訝しげな視線を向けるマイナン。
上手く言葉にできない苦しさに悶えながら、テールナーは思いの丈を紡ぎ出す。
 ▼ 150 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:40:09 ID:jlkDe26A [20/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
テールナー「す……き…………で……」

マイナン「……え?」

テールナー「だか……ら……その……」

マイナン「……」

テールナー「ああもう!! 好きだって言ってるのよ!!」

マイナン「え?」

テールナー「あっ、いや……」カアアア


勢い重視の告白に、マイナンは一瞬呆気に取られる。テールナーはそれを見て焦る焦る。
少しの間の後に、マイナンは返事した。


マイナン「……今は、答えられない。少し……考えさせて」スタスタ

テールナー「あ……」

 ▼ 151 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:41:37 ID:jlkDe26A [21/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナンは立ち去った。後に残るのは、何処か冷たく、湿った風だった。


テールナー「あーもう!! 私のバカ!! バカバカバカ!! 可愛く言ってアンポンタン!!」バタバタ


テールナーが悶えていたその頃、森の何処かで。


ハンター『なあ研究者、もうそろそろ奴を打ちのめしたいんだが』

研究者『まあ落ち着いて、これからもっと面白くなるわ』

ハンター『そう言われてもな……俺はじっとしていられない性分でね、観察は向かねえんだ』

研究者『ふーん……』

ハンター『……何だその目は』

研究者『……まあ良いわ、じゃあ貴方に仕事を与えるわよ……』

ハンター『仕事?』

研究者『――――をしなさい』

ハンター『……そうか、なるほど』
 ▼ 152 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 10:17:00 ID:jlkDe26A [22/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


今宵の月は雲に隠れていた。何処か湿った空気に何者かの足音が沈む。
何者かはプラスルの家へと侵入した。


プラスル「……zzz……」

プラスル姉「んっ……zzz……」

???「……」


何者かは音もなく彼女らに歩み寄り、プラスルの姉の首筋へと手を伸ばした。ゆっくりと、じっくりと、首を絞める。
 ▼ 153 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 10:17:23 ID:jlkDe26A [23/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「……っ……」グググ

プラスル姉「……っ……!?」

???「……」ググググググ

プラスル姉「あっ……や……っ……!?」

???「……」ググググググググググググ

プラスル姉「がっ……んっ……か……」

プラスル姉 は たおれた!!


彼女は死んだ。静かに死んだ。何者かは、冷たくなりだした彼女を一瞥して、無言でその場を立ち去った。
 ▼ 154 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 10:25:27 ID:jlkDe26A [24/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


……次の日になった。クラスメイト達が学校に集まって雑談していた中に、泣きながらプラスルが飛び込んできた。


チルット「プ、プラスル!? 一体どうしたの!?」

プラスル「うっ、ひっく、お姉、お姉ちゃんが……」

マッスグマ「お姉ちゃんが?」

プラスル「死、死んでた……」


プラスルの告白に周囲が凍りつく。
死者が出た、それも身内に。プラスルの足が尋常じゃないぐらいにガクガクと震え、今にも折れそうだ。


テールナー「え……」

チルット「嘘……」

マイナン「……!?」

ユンゲラー「何てこと……」
 ▼ 155 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 10:48:51 ID:jlkDe26A [25/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

彼らは直ぐ様プラスルの家へと向かった。
プラスルの姉は相も変わらず冷たくなって死んでいて、それを前に泣き崩れるプラスルに、誰も何も言えなかった。
彼らに出来るのは、遺体を火葬場に運ぶ事だけだった。


サマヨール「分かりました、御愁傷様です……」

プラスル「お姉ちゃんを……お姉ちゃんを、よろしくお願いいたします」

クラスメイト一同「「「「「「よろしくお願いいたします」」」」」」

サマヨール「分かっています、では……」

プラスル「……」

そこに吹くのは、何処か煙たい風だった。


ハンター『ふぅん……』

ゴルーグ「……」


ハンターは、木の陰でそれをにやけながら見つめていた。
傍にはあの研究者のゴルーグが立っていた。
 ▼ 156 ノノクス@しずくプレート 16/08/14 11:34:24 ID:pJMmRp42 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援ネ
 ▼ 157 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:36:21 ID:jlkDe26A [26/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ユンゲラー「……今日は、もう帰りなさい」


泣きじゃくるクラスメイト達を前に、ユンゲラーはそう述べた。
これ以上固まっていると、また何か起こるのではないか……そう考え、身震いしたからだ。
その場を立ち去り、家路を急ぐ彼ら。
死、死、死……訪れる狂気の連鎖は、ポケモン達を追い込んでいく。


マイナン「……」ピタッ

マッスグマ「……どうしたの?」

マイナン「いや、別に……少し一人にしてくれ」

マッスグマ「……うん……分かった。暗くなる前に……帰ってきてね」


マイナンの足下に、一つ、染みができた。
 ▼ 158 クラビス@アクアカセット 16/08/14 11:38:55 ID:pJMmRp42 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
見てるよ
 ▼ 159 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:44:03 ID:jlkDe26A [27/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


チルット「お母さん……」ギュッ

チルタリス「うんうん、辛かったね……泣いていいんだよ? うんと泣いて?」ギュッ


他より少し大人びて、ませていたチルットも、家に帰れば幼いポケモン。家に帰ると母に抱きつき泣き出した。
母の胸元で泣きつかれて、すうすうと寝息をたてだしたチルットと、それを見る母。


チルット「……zzz……」

チルタリス「チルット……貴女は、私が……」


このごろかなりチルットは辛い目に会ってしまっている。もう娘の涙は見たくない。
何があっても娘を守る、そう決意した母親にも、ジリジリと絶望が忍び寄る。
 ▼ 160 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:44:56 ID:jlkDe26A [28/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   ザッ

チルタリス「あら、誰?」

???「……」

チルタリス「え、あ、あn

   グチャッ



何者かが立ち去ってゆく。後には……チルットの家には、血にまみれて真っ赤な、粗悪な鶏肉のミンチが、二つばかり、落ちているだけだった。
 ▼ 161 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:47:10 ID:jlkDe26A [29/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


その次の日。何時もと変わらず昇る朝日の下で、マッスグマは新たなショックを受ける。
そしてそれをマイナンへと伝えた。


マイナン「……zzz……」

マッスグマ「マイナン!! 起きて!!」ユサユサ

マイナン「え!? な、何!?」


マイナンを叩き起こしたマッスグマ。動揺するマイナンに、マッスグマは残酷な、あまりにも残酷な事実を伝える。


マッスグマ「チルットが……今度はチルットが!!」

マイナン「……!!」
 ▼ 162 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:55:10 ID:jlkDe26A [30/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


また死んだ。今度はチルットが死んだ。次は誰だ?
学校では、そんな話がされていた。
チルットと、その母の遺体は、もうチルットの父が葬ったらしい。
次は誰が死ぬ?


テールナー「私と……マイナンと……プラスルと……マッスグマと……先生」

プラスル「やだ……死にたく無い……」

マッスグマ「止めてよそんな縁起でもない!!」

マイナン「……」

ユンゲラー「皆……」

   ガサッ ガガガガサッ
 ▼ 163 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:19:00 ID:jlkDe26A [31/48] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
頭を垂れるポケモン達の、その前に、音を立てて現れたのは。
冷たく光る猟銃を提げ、腰には物々しい拳銃をセットし、その傍らには物々しい雰囲気を放つゴルーグを携えた、あの。
ユンゲラーを、キモリを殺した、あの。
ハンターだった。


ハンター『……』

ゴルーグ「コー……」

ユンゲラー「貴様……良くもまあノコノコと……!!」

テールナー「許さない……!!」

マッスグマ「ここで……!!」

ハンター『お、敵意剥き出しだな……ゴルーグ、取り合えず痛め付けろ』

ユンゲラー「……貴様のせいで……せいで!!」

ユンゲラー の サイ

ゴルーグ の シャドーパンチ!!

ゴルーグ「ホー……」ブンッ

   グチャッ

ユンゲラー「……っ……!!」
 ▼ 164 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:19:32 ID:jlkDe26A [32/48] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ゴルーグを止めようと声をあげたユンゲラーを、霊の拳が貫いた。飛び散る血飛沫がプラスルの頬を濡らす。
……穴の開いた腹を呆然と見たあと、その場に倒れ伏すユンゲラー。何が起こったのか把握出来ないクラスメイトを尻目に、マイナンは地を蹴ってゴルーグへと飛びかかった。


マイナン の ばくれつパンチ!!

マイナン「だああっ!!」ブンッ

   ズプッ

マイナン「!?」

ゴルーグ「……」

こうかは ないようだ……


思いきり、力の限り打ち込んだパンチは、確かにゴルーグにめり込んだ。いや、めり込んだのではない……すり抜けたのだ。ゴルーグは……ゴースト・じめんタイプである。かくとうタイプは、効かない。


ゴルーグ の ばくれつパンチ!!

   ドゴッ

マイナン「があっ!!」ググッ
 ▼ 165 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:19:54 ID:jlkDe26A [33/48] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
反撃と言わんばかりに叩き込まれた拳が、マイナンの腸を抉りに抉る。
弾き飛ばされて其処らの木に打ち付けられたマイナンは、大きすぎるダメージに身動きが出来なかった。


ハンター『ひゅー……やるなこのゴルーグ……良く育てられているんだろうな……』

ゴルーグ「コー……ホー……」

ハンター『んじゃ、ゴルーグ……ゴーストダイブ』


ハンターの指示で、ゴルーグが影へと潜り込む。揺れる地面、怯える三匹。それを力無く眺めるマイナン。
彼は、マイナンは考えていた。
自分の、初めての仲間、初めての友、初めての大切に思える存在。そして彼らとの思い出…… 失いたくない、大事な大切な思い出を、あんな奴等に汚されるのは御免だと。
守るためなら、例えこの体が捻れようが砕けようが構わない。でも、これまで自分の持った感情を無意味な物にされるのは堪らないと。
 ▼ 166 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:21:17 ID:jlkDe26A [34/48] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そう考えると、どこかから力が沸くような気がして。紫の刺激に、マイナンの元で忌まわしき過去がフラッシュバックする。それを振り払うと、見えてきた。ゴルーグの軌道、誰を狙っているか、狙われているテールナーはどうすれば逃がせるか、弱点は何処か、どの様に力を加えるのか、……全て見えてきた。
迷いはない。マイナンは地を駆けた。


ゴルーグ の ゴーストダイブ!!

マイナン「……!!」ダダダダ


迫り上がる大地、闇より顔を出すゴルーグ。マイナンはその手をありったけ伸ばして、思いきり力を込めてテールナーを突き飛ばした。


マイナン「えいっ!!」ドンッ

テールナー「え、きゃっ!!」ヨロッ

   ドゴゴォォッッツ!!

しかし あたらなかった!!

ハンター『あれっ?』
 ▼ 167 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:21:41 ID:jlkDe26A [35/48] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
さらにマイナンは、突き飛ばした勢いのまま体をひねり、紫の念動力を纏った拳で足先を潰した。さしづめサイコキネシス(物理)……と言ったところだろうか。
突然足元に襲いかかる衝撃に、ゴルーグは思わず下を向く。その見下ろした顔面に、マイナンの足裏が叩き込まれた。


マイナン の メガトンキック!!

ゴルーグ「ゴ……ゴォ!?」ヨロッ

マッスグマ「マイナン……!!」

プラスル「凄い……」


よろけるゴルーグに飛び掛かり、馬乗りになるマイナン。上手く立ち上がれず、無抵抗なゴルーグの胸の急所を何度も殴り付けて、ミシミシと音をあげさせる。
歪むゴルーグの輪郭、砕ける破片に木片、内部構造を掻き回す紫電に、ゴルーグは力を急速に失った。
 ▼ 168 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:22:11 ID:jlkDe26A [36/48] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴルーグ は たおれた!!

ハンター『っ……こいつは、どうしようもねえよ……撤退だ撤退……』

マイナン「っ……」

ハンター『取り合えずゴルーグを……』


焦るハンターを睨み付けるマイナン。その背にハンターは、何かもっと強大な、訳のわからない何かを見つけた。
これ以上ここにはいられないと察するハンター。


マイナン「……っ……」バタッ

プラスル「マイナン!!」


直後、糸が切れたように倒れ込んだマイナンに駆け寄るプラスル。テールナーとマッスグマも、マイナン、ユンゲラーの息を確認する。
その間に、ハンターはゴルーグに歩み寄った。


ゴルーグ「」

ハンター『あー……胸を中心にひしゃげてやがる……』コンコン

ゴルーグ「」

ハンター『うっへえ、マジか……本当こいつ何なんだよ……』ダッ
 ▼ 169 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:23:05 ID:jlkDe26A [37/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハンターは、壊れてもう動く事のないゴルーグを回収してその場を駆けた。
後ろからポケモン達の声が聞こえる。それは、泣いているようだった。


マッスグマ「先生!! 先生!?」ユサユサ

ユンゲラー「」

テールナー「先生は!?」

マッスグマ「……し……死んでる……」

テールナー「っ……プラスル!! マイナンはどう!?」

プラスル「まだ大丈夫みたい!! 誰か薬を!!」

マッスグマ「オッケー!!」ダッ


その場を駆け出すマッスグマ。それを見送りながら、テールナーとプラスルはマイナンを案じていた。
 ▼ 170 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:23:43 ID:jlkDe26A [38/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナンは、再びあの蒼い草の上に立っていた。
今度はすぐに、この場所が何なのかを理解したマイナンは、草原を歩き川を探した。


マイナン「……」


やはり川の水は澄んでいて、静かな川原に流水の音が響く。そんな中でマイナンは、川の向こうに目を凝らした。


マイナン「……そうだよね、うん」


やはり川の向こうには誰もいなくて、マイナンは一つ息を吐いた。
嫌になるほど澄みきった水は、今度は少ししょっぱかった。


 ▼ 171 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:25:28 ID:jlkDe26A [39/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナン「っ……」

プラスル「?」

マイナン「ぅん……ここは?」

プラスル「あっ!!」

テールナー「起きた!!」


マイナンは、涼しい風の流れる木陰で目を覚ました。彼をずっと見ていた二匹は、彼の復活を喜んだ。
テールナーは、マイナンを治そうと薬草を取りに行っているマッスグマを急いで呼びに行き、プラスルはマイナンの元に残った。
草の上に並ぶ赤と緑。
今しかない……夕日が沈むのを眺めながら、プラスルは決意した。
 ▼ 172 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:27:51 ID:jlkDe26A [40/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「……あのね? こんなときに言うべきじゃ無いって、思ってるけど」

マイナン「……なんだい?」


ざわざわと木陰に風が流れる。
プラスルとマイナンの間に吹く、何処と無く爽やかな風は、まるでプラスルの背を押しているようだった。


プラスル「あのね……?」

マイナン「?」

プラスル「あのね? あのね? ……好きです。大好きです!!」カァァア

マイナン「えっ……」

プラスル「っ、こんなときに言うべきじゃ無いけど、でも!! ……一緒に、マイナンと一緒に、ここから……頑張りたいんだ」

マイナン「……」


全身が赤くなるプラスル。姉が死に、友が死に、師が死に、血にまみれて狂った日常のその中で明日を掴もうと、前を向いて生きたいと、彼女は願った。
マイナンは彼女を見つめる。
そして、軽く息をつくと微笑んだ。
 ▼ 173 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:28:39 ID:jlkDe26A [41/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……俺も好きだ。お前が好きだ」

プラスル「マイナン……///」

マイナン「だから、だからさ……頼みがある」

プラスル「……何?」


木陰に強く風が吹く。木の枝はぐらぐらと揺れて、木の葉を散らした。
マイナンは風の中、まだ赤いプラスルの目を見て、言った。


マイナン「……死んでくれ」

プラスル「えっ

マイナン の かみなりパンチ!!

   ブンッ
 ▼ 174 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 17:59:18 ID:jlkDe26A [42/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……間一髪、と言った所か。プラスルは、死の拳撃から身をそらす事に成功した。
急な出来事に処理が追い付かない頭を支えながら、マイナンを見つめてプラスルは問う。


プラスル「死んでくれって……一体……」

マイナン「大好きだ。お前も皆も大好きだ!!だから、だから終わらせるんだ!!」

プラスル「え、いや、どういう事なの!?」

マイナン「俺はっ!! マッスグマの父さんと母さんを殺した!! トレーナーを襲って物を奪った!! 全部俺がやっていたんだ!!」


半泣きでマイナンは吠える。その告白は、彼にとって自分を殺すことに等しかった。
プラスルの顔に焦燥の色が浮かぶ。


プラスル「っ……!! それは、それは……きっと記憶が無くなる前の事でしょ!?」

マイナン「ああ、そうさ!! そうだとしても!! 俺はこれを知られたら、もう誰とも友達でいられない!! 皆、きっと逃げる!!」

プラスル「そんな事無い!!」

マイナン「ある!!」

プラスル「無いよ!!」

マイナン「だとしても……もう俺は戻れない。お前の姉さんを殺したのも、チルットを殺したのも、俺なんだ……!! 俺は、俺はここで終わらせる……この思いが壊れる前に、無くなる前に、終わらせるんだぁっ!!」
 ▼ 175 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:00:43 ID:jlkDe26A [43/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナンの叫びがこだまする。マイナンが決意したのは、思い出が失われる前に、感情が無下にされる前に、終わらせる事だった。
自分で壊せば、それ以上は壊れない。


   ザッ

テールナー「止まってマイナン」

マッスグマ「もう、止めてよ……」


そこに現れたのは、マッスグマを呼んで帰ってきた二匹。状況は何となく理解しているようで、なんとかマイナンを諭そうとする。


マイナン「なあ……俺を攻撃するか?テールナー」

テールナー「私は、攻撃したくないから言ってるのよ……!!」

マイナン「俺は、動きたいんだ……もう終わらせたいんだ……」

マッスグマ「ねぇ止めてよマイナン!! もう、止めてよ!! 気にしないから!! マイナンが父さん母さん殺していたとしても、しても!! 僕は今のマイナンと一緒に居たいんだ!!」

マイナン「無理だ!! 俺が居られない!! 俺は、思い出した時から、お前の親殺した感触が、殴り殺した感覚が、この手から取れないんだ……!!」
 ▼ 176 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:22:08 ID:jlkDe26A [44/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
テールナー「マイナンが辛いなら、私達が一緒にいる!! ずっと一緒にいるから!! だから!!」

マイナン「もう止めてくれ!! ……俺だって。俺だってこんな事にはしたく無かったさ。でも、でも!!」

プラスル「マイナン!!」


三匹の必死の呼び掛けも、彼にはもう届かない。
マイナンは三匹を見回して一瞬目を閉じ、そして開けた。
それはまるで宣戦布告のような、それでいて現実を受け入れられないような、そんな目だった。


マイナン「なあ、どうして俺は普通に生きられ無かった!? 親に捨てられ人を殺して罪を重ねて狙われ襲われ虐げられて、俺は、俺は!! 俺だって、普通に……俺だって!! だから、俺は!!」

   カッ


感情が暴走したマイナンを中心に、紫電が迸る。溢れ出る絶望の奔流はマッスグマとテールナーを呑み込み、その命を素早くあの世へと浚っていった。
幸か不幸か電撃を逃れたプラスルは察する。もう彼は駄目だと。もう駄目なんだと。
 ▼ 177 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:22:53 ID:jlkDe26A [45/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「……マイナン……」

マイナン「俺は……俺は……」

プラスル「……」ギュッ

マイナン「……」


プラスルは逃げなかった。愛した者を、変わり果てた愛する者をひしと抱き、一筋の涙をこぼす。
帯電し紫に光る大地に、一つ染みができた。


プラスル「……大好きだよ。だから……」

マイナン「……」


マイナンは何も語らなかった。
一帯が紫に包まれた。
 ▼ 178 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:23:19 ID:jlkDe26A [46/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


それを見つめる人影が二つ。
ハンターと研究者だ。彼らは溢れ出る紫電を眺めて笑っていた。


ハンター『……ひゅー、すっげえな』

研究者『ね? 面白かったでしょ?』

ハンター『ああ、そうだな……そうかも知れねえな』

研究者『……良いわ、あれはあげる。好きにすると良いわ』スタスタ

ハンター『……いや、あれはもうどうしようもねえや。放置するよ』


その場を立ち去る研究者とハンター。
背後では、紫電の残光が瞬いていた。
 ▼ 179 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:24:06 ID:jlkDe26A [47/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……」


マイナンは空を見上げていた。
視界が段々と暗転して行くのが手に取るように分かる。


マイナン「はは……なあ皆、俺は、俺は間違ってるかも知れない。それでも、それでも……俺はこの結果を信じる。愛は終わる。だから終わる前に終わらせるんだ。壊れる前に、消える前に……」


大量殺人犯と化したマイナン。その動機は愛。
愛を守る為に愛を殺すという、彼の歪んだ呟きは、森の木々へと吸われていった。
闇夜には、あの日と同じ青白い半月が浮かんでいた。

【SS】忌まれた子供  完
 ▼ 180 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:26:31 ID:jlkDe26A [48/48] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


皆殺しエンド

一応補足しておくと、ハンターが言われたのはあくまで最後の、ゴルーグを引き連れた襲撃だけで、プラスル姉やチルットは、マイナンが殺しました。
ヤンデレっぽいなコイツ
 ▼ 181 ノヤコマ@ヒレのカセキ 16/08/14 20:43:10 ID:9JHLnKqs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 182 ーブル@うしおのおこう 16/08/14 20:48:34 ID:8JJRYew. NGネーム登録 NGID登録 報告
人間による環境破壊をテーマにしたSSを書いてほしい
この人なら上手く書いてくれそうだし
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=360427
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