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SS

【SS】忌まれた子供

 ▼ 1 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/01 17:46:59 ID:VJ2CsGJg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
寒く暗い闇夜に浮かぶ青白い半月。
それは深く黒い草むらを行く二匹をうっすらと写し出した。
クリーム色の体表に、青い耳と手足をもつそれは、一般的にマイナンと言う名で呼ばれている。
この二匹は夫婦である。そして、彼らが袋に入れて運んでいたのが、彼らの幼い息子であった。
彼らは原を抜け、……自らの子を捨てるのに丁度いい場所を見つけた。
顔を見合せ、どちらもなく頷く。
袋から取り出し、寒空の下に置き去りにしていった息子は、クリーム色の体表に、青でなく……青緑の耳と手足を持っていた。


 ▼ 143 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 08:00:18 ID:jlkDe26A [1/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン父 の メガトンキック!!

きゅうしょ に あたった!!

マイナン「!?」ズザザザ

マイナン父「お前を生んでから、俺達は苦労してきた!! 隣人に蔑まれ、ろくに食うことも出来ず、狭い思いをしてきた、この思いが分かるか!? あ!?」

マイナン「ゲホッ……そんなの知るか……苦労したかも知れんがな、ただ言えるのは、俺は知らねえってだけだ!!」

マイナン の メガトンキック!!


二匹とも地を蹴り、互いに蹴りの応酬を始めた。
火花が散り、血が吹き出す。顔を歪めながら睨み合う二匹は、間違っても親子とは思えず、それは、宿敵……いや、外敵との殺し合いだった。
 ▼ 144 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 08:11:28 ID:jlkDe26A [2/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
テールナー の かえんほうしゃ!!

マッスグマ の とっしん!!

マイナン母「くっ……」


かえんほうしゃが頬を焼き、捨て身の特攻が精神を擦る。
二匹の止むことの無い猛攻は、彼女、マイナンの母の神経を蝕んで行く。


テールナー「私の、私達のマイナンに、傷はつけさせない!!」

マッスグマ「僕らは彼に守られていた!! 今度は僕らが守るんだ!!」

マイナン母「黙って!! うるさい!!」


金切り声があたりに響く。
再び土手っ腹にマッスグマが突き刺さり、かえんほうしゃが全身を焼いた。
 ▼ 145 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:28:23 ID:jlkDe26A [3/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

チルット「これはプラスルの分!!」

チルット の かぜおこし!!

   バサバサバササッ

トゲデマル「あうあうあうあう」

プラスル「これはお姉ちゃんの分!!」

プラスル の スパーク!!

トゲデマル「あばばばばば」


二匹の攻撃が、疾風と電撃がトゲデマルを襲う。
因縁……というか恨みがあるプラスルは、殊更に苛烈な攻撃の雨を降らせた。


プラスル「よくも私達を虐めてくれたわね!!」

トゲデマル「そ、そんな……プラスルたんh

   ゲシッ

トゲデマル「いったああい!!」


容赦なく股間に決まる金的が、トゲデマルの理性も吹き飛ばした。
力なく倒れ込み、ひくひくと痙攣する変態を前に、チルットは風を起こした。丸いボディのトゲデマルは、風に吹かれて転がりだす。
 ▼ 146 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:29:00 ID:jlkDe26A [4/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「シュート!!」ゲシッ

トゲデマル「あひっ、あひっ」ゴロゴロ

マッスグマ「おわっ、こっち来る!!」

テールナー「身代わりよ身代わり!!」

   ゴスッ

マイナン母「痛っ!!」


勢い余ってマッスグマとテールナーの元へと蹴り込まれたシュートは、身代わりにされたマイナンの母へと見事に決まり、二匹とも大地に倒れ付した。それを喜ぶ四匹。


マッスグマ「やった!!」

テールナー「ナイスシュート!!」

チルット「よっ、MVP!!」

プラスル「えへへ……」
 ▼ 147 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:29:50 ID:jlkDe26A [5/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

   ガンッ ガンッガンッ  ガンッ

マイナン「ぐうっ……」

マイナン父「はあ……はあ……」


仲間達が勝利を喜んでいるなか、まだマイナンは父と殴りあっていた。
火事場の馬鹿力とでも言うべきか、マイナンの父の力はつきることなく、何時までも争いは続いている。


マイナン の かみなりパンチ!!

マイナン父 の スパーク!!


二匹の電撃が飛び散り、周囲が眩く光る。
明滅する視界の中に、マイナンは父の足裏を見た。
力強い蹴りが鳩尾に入る。勝った……マイナンの父はそう確信した。
刹那、マイナンの目が紫に光り、口角が、ニヤリと歪んだ。


マイナン の くさむすび!!

マイナン父「おわっ!?」ヨロッ
 ▼ 148 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:30:34 ID:jlkDe26A [6/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
仕込んでいた草の紐が。マイナンの父の足元を掬い上げた。
よろける父親の全身に、容赦ないラッシュが抉り込まれる。


マイナン「……終わりだあああぁあ!!」ダダダダダダ

マイナン の ばくれつパンチ!!

きゅうしょ に あたった!!


父親の五臓六腑を尽く破壊したマイナンは、その拳を解き、倒れ伏す父親を一瞥した。
もうピクリとも動かない父親に、嬉しいのか悲しいのか良く分からない視線を向けるマイナン。


マイナン父「」

マイナン「……さよなら、二度と出てくるな」


そう言い放つ。
マイナンの母がよたよたと起き上がり、父とトゲデマルを回収して消えていった。
マイナンに駆け寄るクラスメイト達。それを見るマイナンの目は、もう黒くなっていた。
 ▼ 149 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:39:18 ID:jlkDe26A [7/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その日の夕方の事だ。
マイナンは、学校の近くで待たされていた。
テールナーが、後でここに来いと言っていたのだ。


マイナン「……なんだい、急に呼び出して」

テールナー「あ……その、言いたいことあって」

マイナン「言いたい事って?」

テールナー「あの、その……あ……」

マイナン「……?」


もじもじとするテールナーに、訝しげな視線を向けるマイナン。
上手く言葉にできない苦しさに悶えながら、テールナーは思いの丈を紡ぎ出す。
 ▼ 150 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:40:09 ID:jlkDe26A [8/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
テールナー「す……き…………で……」

マイナン「……え?」

テールナー「だか……ら……その……」

マイナン「……」

テールナー「ああもう!! 好きだって言ってるのよ!!」

マイナン「え?」

テールナー「あっ、いや……」カアアア


勢い重視の告白に、マイナンは一瞬呆気に取られる。テールナーはそれを見て焦る焦る。
少しの間の後に、マイナンは返事した。


マイナン「……今は、答えられない。少し……考えさせて」スタスタ

テールナー「あ……」

 ▼ 151 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 09:41:37 ID:jlkDe26A [9/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナンは立ち去った。後に残るのは、何処か冷たく、湿った風だった。


テールナー「あーもう!! 私のバカ!! バカバカバカ!! 可愛く言ってアンポンタン!!」バタバタ


テールナーが悶えていたその頃、森の何処かで。


ハンター『なあ研究者、もうそろそろ奴を打ちのめしたいんだが』

研究者『まあ落ち着いて、これからもっと面白くなるわ』

ハンター『そう言われてもな……俺はじっとしていられない性分でね、観察は向かねえんだ』

研究者『ふーん……』

ハンター『……何だその目は』

研究者『……まあ良いわ、じゃあ貴方に仕事を与えるわよ……』

ハンター『仕事?』

研究者『――――をしなさい』

ハンター『……そうか、なるほど』
 ▼ 152 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 10:17:00 ID:jlkDe26A [10/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


今宵の月は雲に隠れていた。何処か湿った空気に何者かの足音が沈む。
何者かはプラスルの家へと侵入した。


プラスル「……zzz……」

プラスル姉「んっ……zzz……」

???「……」


何者かは音もなく彼女らに歩み寄り、プラスルの姉の首筋へと手を伸ばした。ゆっくりと、じっくりと、首を絞める。
 ▼ 153 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 10:17:23 ID:jlkDe26A [11/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「……っ……」グググ

プラスル姉「……っ……!?」

???「……」ググググググ

プラスル姉「あっ……や……っ……!?」

???「……」ググググググググググググ

プラスル姉「がっ……んっ……か……」

プラスル姉 は たおれた!!


彼女は死んだ。静かに死んだ。何者かは、冷たくなりだした彼女を一瞥して、無言でその場を立ち去った。
 ▼ 154 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 10:25:27 ID:jlkDe26A [12/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


……次の日になった。クラスメイト達が学校に集まって雑談していた中に、泣きながらプラスルが飛び込んできた。


チルット「プ、プラスル!? 一体どうしたの!?」

プラスル「うっ、ひっく、お姉、お姉ちゃんが……」

マッスグマ「お姉ちゃんが?」

プラスル「死、死んでた……」


プラスルの告白に周囲が凍りつく。
死者が出た、それも身内に。プラスルの足が尋常じゃないぐらいにガクガクと震え、今にも折れそうだ。


テールナー「え……」

チルット「嘘……」

マイナン「……!?」

ユンゲラー「何てこと……」
 ▼ 155 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 10:48:51 ID:jlkDe26A [13/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

彼らは直ぐ様プラスルの家へと向かった。
プラスルの姉は相も変わらず冷たくなって死んでいて、それを前に泣き崩れるプラスルに、誰も何も言えなかった。
彼らに出来るのは、遺体を火葬場に運ぶ事だけだった。


サマヨール「分かりました、御愁傷様です……」

プラスル「お姉ちゃんを……お姉ちゃんを、よろしくお願いいたします」

クラスメイト一同「「「「「「よろしくお願いいたします」」」」」」

サマヨール「分かっています、では……」

プラスル「……」

そこに吹くのは、何処か煙たい風だった。


ハンター『ふぅん……』

ゴルーグ「……」


ハンターは、木の陰でそれをにやけながら見つめていた。
傍にはあの研究者のゴルーグが立っていた。
 ▼ 156 ノノクス@しずくプレート 16/08/14 11:34:24 ID:pJMmRp42 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援ネ
 ▼ 157 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:36:21 ID:jlkDe26A [14/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ユンゲラー「……今日は、もう帰りなさい」


泣きじゃくるクラスメイト達を前に、ユンゲラーはそう述べた。
これ以上固まっていると、また何か起こるのではないか……そう考え、身震いしたからだ。
その場を立ち去り、家路を急ぐ彼ら。
死、死、死……訪れる狂気の連鎖は、ポケモン達を追い込んでいく。


マイナン「……」ピタッ

マッスグマ「……どうしたの?」

マイナン「いや、別に……少し一人にしてくれ」

マッスグマ「……うん……分かった。暗くなる前に……帰ってきてね」


マイナンの足下に、一つ、染みができた。
 ▼ 158 クラビス@アクアカセット 16/08/14 11:38:55 ID:pJMmRp42 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
見てるよ
 ▼ 159 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:44:03 ID:jlkDe26A [15/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


チルット「お母さん……」ギュッ

チルタリス「うんうん、辛かったね……泣いていいんだよ? うんと泣いて?」ギュッ


他より少し大人びて、ませていたチルットも、家に帰れば幼いポケモン。家に帰ると母に抱きつき泣き出した。
母の胸元で泣きつかれて、すうすうと寝息をたてだしたチルットと、それを見る母。


チルット「……zzz……」

チルタリス「チルット……貴女は、私が……」


このごろかなりチルットは辛い目に会ってしまっている。もう娘の涙は見たくない。
何があっても娘を守る、そう決意した母親にも、ジリジリと絶望が忍び寄る。
 ▼ 160 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:44:56 ID:jlkDe26A [16/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
   ザッ

チルタリス「あら、誰?」

???「……」

チルタリス「え、あ、あn

   グチャッ



何者かが立ち去ってゆく。後には……チルットの家には、血にまみれて真っ赤な、粗悪な鶏肉のミンチが、二つばかり、落ちているだけだった。
 ▼ 161 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:47:10 ID:jlkDe26A [17/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


その次の日。何時もと変わらず昇る朝日の下で、マッスグマは新たなショックを受ける。
そしてそれをマイナンへと伝えた。


マイナン「……zzz……」

マッスグマ「マイナン!! 起きて!!」ユサユサ

マイナン「え!? な、何!?」


マイナンを叩き起こしたマッスグマ。動揺するマイナンに、マッスグマは残酷な、あまりにも残酷な事実を伝える。


マッスグマ「チルットが……今度はチルットが!!」

マイナン「……!!」
 ▼ 162 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 11:55:10 ID:jlkDe26A [18/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


また死んだ。今度はチルットが死んだ。次は誰だ?
学校では、そんな話がされていた。
チルットと、その母の遺体は、もうチルットの父が葬ったらしい。
次は誰が死ぬ?


テールナー「私と……マイナンと……プラスルと……マッスグマと……先生」

プラスル「やだ……死にたく無い……」

マッスグマ「止めてよそんな縁起でもない!!」

マイナン「……」

ユンゲラー「皆……」

   ガサッ ガガガガサッ
 ▼ 163 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:19:00 ID:jlkDe26A [19/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
頭を垂れるポケモン達の、その前に、音を立てて現れたのは。
冷たく光る猟銃を提げ、腰には物々しい拳銃をセットし、その傍らには物々しい雰囲気を放つゴルーグを携えた、あの。
ユンゲラーを、キモリを殺した、あの。
ハンターだった。


ハンター『……』

ゴルーグ「コー……」

ユンゲラー「貴様……良くもまあノコノコと……!!」

テールナー「許さない……!!」

マッスグマ「ここで……!!」

ハンター『お、敵意剥き出しだな……ゴルーグ、取り合えず痛め付けろ』

ユンゲラー「……貴様のせいで……せいで!!」

ユンゲラー の サイ

ゴルーグ の シャドーパンチ!!

ゴルーグ「ホー……」ブンッ

   グチャッ

ユンゲラー「……っ……!!」
 ▼ 164 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:19:32 ID:jlkDe26A [20/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ゴルーグを止めようと声をあげたユンゲラーを、霊の拳が貫いた。飛び散る血飛沫がプラスルの頬を濡らす。
……穴の開いた腹を呆然と見たあと、その場に倒れ伏すユンゲラー。何が起こったのか把握出来ないクラスメイトを尻目に、マイナンは地を蹴ってゴルーグへと飛びかかった。


マイナン の ばくれつパンチ!!

マイナン「だああっ!!」ブンッ

   ズプッ

マイナン「!?」

ゴルーグ「……」

こうかは ないようだ……


思いきり、力の限り打ち込んだパンチは、確かにゴルーグにめり込んだ。いや、めり込んだのではない……すり抜けたのだ。ゴルーグは……ゴースト・じめんタイプである。かくとうタイプは、効かない。


ゴルーグ の ばくれつパンチ!!

   ドゴッ

マイナン「があっ!!」ググッ
 ▼ 165 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:19:54 ID:jlkDe26A [21/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
反撃と言わんばかりに叩き込まれた拳が、マイナンの腸を抉りに抉る。
弾き飛ばされて其処らの木に打ち付けられたマイナンは、大きすぎるダメージに身動きが出来なかった。


ハンター『ひゅー……やるなこのゴルーグ……良く育てられているんだろうな……』

ゴルーグ「コー……ホー……」

ハンター『んじゃ、ゴルーグ……ゴーストダイブ』


ハンターの指示で、ゴルーグが影へと潜り込む。揺れる地面、怯える三匹。それを力無く眺めるマイナン。
彼は、マイナンは考えていた。
自分の、初めての仲間、初めての友、初めての大切に思える存在。そして彼らとの思い出…… 失いたくない、大事な大切な思い出を、あんな奴等に汚されるのは御免だと。
守るためなら、例えこの体が捻れようが砕けようが構わない。でも、これまで自分の持った感情を無意味な物にされるのは堪らないと。
 ▼ 166 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:21:17 ID:jlkDe26A [22/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そう考えると、どこかから力が沸くような気がして。紫の刺激に、マイナンの元で忌まわしき過去がフラッシュバックする。それを振り払うと、見えてきた。ゴルーグの軌道、誰を狙っているか、狙われているテールナーはどうすれば逃がせるか、弱点は何処か、どの様に力を加えるのか、……全て見えてきた。
迷いはない。マイナンは地を駆けた。


ゴルーグ の ゴーストダイブ!!

マイナン「……!!」ダダダダ


迫り上がる大地、闇より顔を出すゴルーグ。マイナンはその手をありったけ伸ばして、思いきり力を込めてテールナーを突き飛ばした。


マイナン「えいっ!!」ドンッ

テールナー「え、きゃっ!!」ヨロッ

   ドゴゴォォッッツ!!

しかし あたらなかった!!

ハンター『あれっ?』
 ▼ 167 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:21:41 ID:jlkDe26A [23/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
さらにマイナンは、突き飛ばした勢いのまま体をひねり、紫の念動力を纏った拳で足先を潰した。さしづめサイコキネシス(物理)……と言ったところだろうか。
突然足元に襲いかかる衝撃に、ゴルーグは思わず下を向く。その見下ろした顔面に、マイナンの足裏が叩き込まれた。


マイナン の メガトンキック!!

ゴルーグ「ゴ……ゴォ!?」ヨロッ

マッスグマ「マイナン……!!」

プラスル「凄い……」


よろけるゴルーグに飛び掛かり、馬乗りになるマイナン。上手く立ち上がれず、無抵抗なゴルーグの胸の急所を何度も殴り付けて、ミシミシと音をあげさせる。
歪むゴルーグの輪郭、砕ける破片に木片、内部構造を掻き回す紫電に、ゴルーグは力を急速に失った。
 ▼ 168 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:22:11 ID:jlkDe26A [24/36] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴルーグ は たおれた!!

ハンター『っ……こいつは、どうしようもねえよ……撤退だ撤退……』

マイナン「っ……」

ハンター『取り合えずゴルーグを……』


焦るハンターを睨み付けるマイナン。その背にハンターは、何かもっと強大な、訳のわからない何かを見つけた。
これ以上ここにはいられないと察するハンター。


マイナン「……っ……」バタッ

プラスル「マイナン!!」


直後、糸が切れたように倒れ込んだマイナンに駆け寄るプラスル。テールナーとマッスグマも、マイナン、ユンゲラーの息を確認する。
その間に、ハンターはゴルーグに歩み寄った。


ゴルーグ「」

ハンター『あー……胸を中心にひしゃげてやがる……』コンコン

ゴルーグ「」

ハンター『うっへえ、マジか……本当こいつ何なんだよ……』ダッ
 ▼ 169 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:23:05 ID:jlkDe26A [25/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハンターは、壊れてもう動く事のないゴルーグを回収してその場を駆けた。
後ろからポケモン達の声が聞こえる。それは、泣いているようだった。


マッスグマ「先生!! 先生!?」ユサユサ

ユンゲラー「」

テールナー「先生は!?」

マッスグマ「……し……死んでる……」

テールナー「っ……プラスル!! マイナンはどう!?」

プラスル「まだ大丈夫みたい!! 誰か薬を!!」

マッスグマ「オッケー!!」ダッ


その場を駆け出すマッスグマ。それを見送りながら、テールナーとプラスルはマイナンを案じていた。
 ▼ 170 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:23:43 ID:jlkDe26A [26/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナンは、再びあの蒼い草の上に立っていた。
今度はすぐに、この場所が何なのかを理解したマイナンは、草原を歩き川を探した。


マイナン「……」


やはり川の水は澄んでいて、静かな川原に流水の音が響く。そんな中でマイナンは、川の向こうに目を凝らした。


マイナン「……そうだよね、うん」


やはり川の向こうには誰もいなくて、マイナンは一つ息を吐いた。
嫌になるほど澄みきった水は、今度は少ししょっぱかった。


 ▼ 171 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:25:28 ID:jlkDe26A [27/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


マイナン「っ……」

プラスル「?」

マイナン「ぅん……ここは?」

プラスル「あっ!!」

テールナー「起きた!!」


マイナンは、涼しい風の流れる木陰で目を覚ました。彼をずっと見ていた二匹は、彼の復活を喜んだ。
テールナーは、マイナンを治そうと薬草を取りに行っているマッスグマを急いで呼びに行き、プラスルはマイナンの元に残った。
草の上に並ぶ赤と緑。
今しかない……夕日が沈むのを眺めながら、プラスルは決意した。
 ▼ 172 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:27:51 ID:jlkDe26A [28/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「……あのね? こんなときに言うべきじゃ無いって、思ってるけど」

マイナン「……なんだい?」


ざわざわと木陰に風が流れる。
プラスルとマイナンの間に吹く、何処と無く爽やかな風は、まるでプラスルの背を押しているようだった。


プラスル「あのね……?」

マイナン「?」

プラスル「あのね? あのね? ……好きです。大好きです!!」カァァア

マイナン「えっ……」

プラスル「っ、こんなときに言うべきじゃ無いけど、でも!! ……一緒に、マイナンと一緒に、ここから……頑張りたいんだ」

マイナン「……」


全身が赤くなるプラスル。姉が死に、友が死に、師が死に、血にまみれて狂った日常のその中で明日を掴もうと、前を向いて生きたいと、彼女は願った。
マイナンは彼女を見つめる。
そして、軽く息をつくと微笑んだ。
 ▼ 173 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 12:28:39 ID:jlkDe26A [29/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……俺も好きだ。お前が好きだ」

プラスル「マイナン……///」

マイナン「だから、だからさ……頼みがある」

プラスル「……何?」


木陰に強く風が吹く。木の枝はぐらぐらと揺れて、木の葉を散らした。
マイナンは風の中、まだ赤いプラスルの目を見て、言った。


マイナン「……死んでくれ」

プラスル「えっ

マイナン の かみなりパンチ!!

   ブンッ
 ▼ 174 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 17:59:18 ID:jlkDe26A [30/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……間一髪、と言った所か。プラスルは、死の拳撃から身をそらす事に成功した。
急な出来事に処理が追い付かない頭を支えながら、マイナンを見つめてプラスルは問う。


プラスル「死んでくれって……一体……」

マイナン「大好きだ。お前も皆も大好きだ!!だから、だから終わらせるんだ!!」

プラスル「え、いや、どういう事なの!?」

マイナン「俺はっ!! マッスグマの父さんと母さんを殺した!! トレーナーを襲って物を奪った!! 全部俺がやっていたんだ!!」


半泣きでマイナンは吠える。その告白は、彼にとって自分を殺すことに等しかった。
プラスルの顔に焦燥の色が浮かぶ。


プラスル「っ……!! それは、それは……きっと記憶が無くなる前の事でしょ!?」

マイナン「ああ、そうさ!! そうだとしても!! 俺はこれを知られたら、もう誰とも友達でいられない!! 皆、きっと逃げる!!」

プラスル「そんな事無い!!」

マイナン「ある!!」

プラスル「無いよ!!」

マイナン「だとしても……もう俺は戻れない。お前の姉さんを殺したのも、チルットを殺したのも、俺なんだ……!! 俺は、俺はここで終わらせる……この思いが壊れる前に、無くなる前に、終わらせるんだぁっ!!」
 ▼ 175 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:00:43 ID:jlkDe26A [31/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナンの叫びがこだまする。マイナンが決意したのは、思い出が失われる前に、感情が無下にされる前に、終わらせる事だった。
自分で壊せば、それ以上は壊れない。


   ザッ

テールナー「止まってマイナン」

マッスグマ「もう、止めてよ……」


そこに現れたのは、マッスグマを呼んで帰ってきた二匹。状況は何となく理解しているようで、なんとかマイナンを諭そうとする。


マイナン「なあ……俺を攻撃するか?テールナー」

テールナー「私は、攻撃したくないから言ってるのよ……!!」

マイナン「俺は、動きたいんだ……もう終わらせたいんだ……」

マッスグマ「ねぇ止めてよマイナン!! もう、止めてよ!! 気にしないから!! マイナンが父さん母さん殺していたとしても、しても!! 僕は今のマイナンと一緒に居たいんだ!!」

マイナン「無理だ!! 俺が居られない!! 俺は、思い出した時から、お前の親殺した感触が、殴り殺した感覚が、この手から取れないんだ……!!」
 ▼ 176 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:22:08 ID:jlkDe26A [32/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
テールナー「マイナンが辛いなら、私達が一緒にいる!! ずっと一緒にいるから!! だから!!」

マイナン「もう止めてくれ!! ……俺だって。俺だってこんな事にはしたく無かったさ。でも、でも!!」

プラスル「マイナン!!」


三匹の必死の呼び掛けも、彼にはもう届かない。
マイナンは三匹を見回して一瞬目を閉じ、そして開けた。
それはまるで宣戦布告のような、それでいて現実を受け入れられないような、そんな目だった。


マイナン「なあ、どうして俺は普通に生きられ無かった!? 親に捨てられ人を殺して罪を重ねて狙われ襲われ虐げられて、俺は、俺は!! 俺だって、普通に……俺だって!! だから、俺は!!」

   カッ


感情が暴走したマイナンを中心に、紫電が迸る。溢れ出る絶望の奔流はマッスグマとテールナーを呑み込み、その命を素早くあの世へと浚っていった。
幸か不幸か電撃を逃れたプラスルは察する。もう彼は駄目だと。もう駄目なんだと。
 ▼ 177 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:22:53 ID:jlkDe26A [33/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「……マイナン……」

マイナン「俺は……俺は……」

プラスル「……」ギュッ

マイナン「……」


プラスルは逃げなかった。愛した者を、変わり果てた愛する者をひしと抱き、一筋の涙をこぼす。
帯電し紫に光る大地に、一つ染みができた。


プラスル「……大好きだよ。だから……」

マイナン「……」


マイナンは何も語らなかった。
一帯が紫に包まれた。
 ▼ 178 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:23:19 ID:jlkDe26A [34/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


それを見つめる人影が二つ。
ハンターと研究者だ。彼らは溢れ出る紫電を眺めて笑っていた。


ハンター『……ひゅー、すっげえな』

研究者『ね? 面白かったでしょ?』

ハンター『ああ、そうだな……そうかも知れねえな』

研究者『……良いわ、あれはあげる。好きにすると良いわ』スタスタ

ハンター『……いや、あれはもうどうしようもねえや。放置するよ』


その場を立ち去る研究者とハンター。
背後では、紫電の残光が瞬いていた。
 ▼ 179 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:24:06 ID:jlkDe26A [35/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……」


マイナンは空を見上げていた。
視界が段々と暗転して行くのが手に取るように分かる。


マイナン「はは……なあ皆、俺は、俺は間違ってるかも知れない。それでも、それでも……俺はこの結果を信じる。愛は終わる。だから終わる前に終わらせるんだ。壊れる前に、消える前に……」


大量殺人犯と化したマイナン。その動機は愛。
愛を守る為に愛を殺すという、彼の歪んだ呟きは、森の木々へと吸われていった。
闇夜には、あの日と同じ青白い半月が浮かんでいた。

【SS】忌まれた子供  完
 ▼ 180 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/14 18:26:31 ID:jlkDe26A [36/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


皆殺しエンド

一応補足しておくと、ハンターが言われたのはあくまで最後の、ゴルーグを引き連れた襲撃だけで、プラスル姉やチルットは、マイナンが殺しました。
ヤンデレっぽいなコイツ
 ▼ 181 ノヤコマ@ヒレのカセキ 16/08/14 20:43:10 ID:9JHLnKqs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 182 ーブル@うしおのおこう 16/08/14 20:48:34 ID:8JJRYew. NGネーム登録 NGID登録 報告
人間による環境破壊をテーマにしたSSを書いてほしい
この人なら上手く書いてくれそうだし
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https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=360427
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