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【SS】ひと夏のレンジャースクール

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:53:58 ID:qb7EOz/Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

アルミア地方、ビエンタウン郊外。

ポケモンレンジャー養成学校、レンジャースクール。


 リーフ 「行くよチーちゃん! あなたに決めた!」

 チコリータ 「ちこー!」


緑と青の制服に身を包んだ彼女の名前はリーフ。

レンジャースクールの生徒で、パートナーポケモンはチコリータ。

ポケモンと気持ちを通わせるためにポケモンレンジャーが使用する道具――、キャプチャ・スタイラーを構え、彼女は動く。


チコリータのアシストを受けながら、野生のダグトリオをスタイラーでグルグル囲み……、キャプチャ――、ポケモンと気持ちを通わせることに成功した。


 ヒトミ 「凄いよリーフ! スピード記録更新したんじゃないの!?」

 リーフ 「えへへっ」

 ミナミ 「まったく。あんなに大人しかったリーフが、こんな立派になるなんてねー」

 ヒトミ 「うんうん。私もクラスメートとして嬉しいよ」

 リーフ 「大袈裟だよ2人とも」

 ハジメ 「いや、野生のダグトリオ相手に、今のキャプチャは凄いと思うよ」

 ナツヤ 「無駄がない動きだったぜ。オレも もっと特訓しないとな!」

 リーフ 「ふふっ。ありがとう」
 ▼ 243 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:33:34 ID:xxdMnKSM [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ホクト 「カロスリーグ直後の謎の災害のせいで、話題は続きませんでしたが……」

 スラン 「あったわね、変な植物が街を襲ったやつ」

 ホクト 「600族であるバンギラスとメタグロスに打ち勝ったピカチュウ。大いに注目されていましたよ」

 カムイ 「……思いだした。優勝した奴より話題になったよな、そのピカチュウ」

 ホクト 「えぇ。そんな凄いピカチュウを育てたサトシ……、気になって過去の戦績を調べたことがあります」

 ソウヤ 「オレも調べた。最初はセキエイ大会のベスト16から始まって……」

 ホクト 「ジョウト、ホウエン、イッシュの各リーグでベスト8、シンオウリーグではベスト4まで勝ち進んでいます」

 ソウヤ 「あとアレだ。アローラに作られたポケモンリーグっぽいイベントで優勝してるんだっけ」

 ホクト 「マサラタウンのサトシ。まさか、こんな所で出会えるとは……」



待って、ちょっと頭が追いつかない。

サトシ君は今まで、6つの地方のポケモンリーグに出場しているの?

と言うことは、ジムバッジは48個? 48人ものジムリーダーに実力を認められてるってこと?



 サトシ 「オレたち、けっこう知られてるんだな」

 ピカチュウ 「ぴか?」


 エルム 「ヤバい奴ってことは分かったわ。けど! 私たち5人で かかれば余裕でしょ!」

 カムイ 「だな。ビビることねーぜ!」

 スラン 「そうよ。私たちから優勝を奪った恨み! しっかり晴らさせて貰うわよ!」


 ホクト 「待てと言ってるだろ!」

 ▼ 244 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:37:37 ID:xxdMnKSM [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 エルム 「なによ……」

 カムイ 「ビビるなよホクト。数の差で負ける訳ねーだろ」

 ホクト 「馬鹿者! ポケモンリーグ準優勝……、実力あるトレーナーに対しては、敬意を払い正々堂々バトルするべきです!」

 スラン 「敬意とかマジで言ってんの?」

 ホクト 「当然です。……そして、我々の実力では、サトシには及ばないでしょう」

 ソウヤ 「悔しいけど、その通りだな。さっきの決勝戦で見ただろ。オレたちとは、戦略の立て方が まるで違う」

 カムイ 「どうしたんだよホクト! ソウヤ! このまま引き下がるって言うのかよ!?」

 エルム 「私たちプエル学園に泥を塗られたのよ!?」

 ホクト 「泥を塗ったのが彼――サトシであるのなら、それは名誉なことでしょう」

 カムイ 「はぁ!?」



そう言うと、ホクトと呼ばれている彼は、サトシ君の元へ歩み寄る。


サトシ君は、多少は身構えているものの、無言で彼の様子を伺っている。



 ホクト 「サトシ、ピカチュウ。一度会ってみたかった」

 サトシ 「それはどうも」

 ピカチュウ 「ぴか」

 ホクト 「僕らプエル学園は、アルミア地方で最もバトルが強い学校であると自負しています」

 サトシ 「確か、4年連続優勝……だったか」

 ホクト 「えぇ。しかし、アルミア地方には、ポケモンリーグと言う制度が存在しません。優勝と言えど、ジムリーダーに実力を認められた訳ではなく、あくまでアルミア地方独自の文化です」

 サトシ 「アローラと同じ感じか」

 ホクト 「僕らにとって、ポケモンリーグ出場者というのは、それだけで尊敬に値します。そのうえ準優勝となれば、僕らとは格が違う。実力は天と地の差です」

 サトシ 「そうか」

 ホクト 「サトシ。君と決勝戦を戦うことができたこと、光栄に思います」
 ▼ 245 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:40:29 ID:xxdMnKSM [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「ホクト……だよな。お前のボスゴドラ、強かったぜ。オレだけの力じゃ、とても勝てなかった」

 ホクト 「有難い言葉です」

 サトシ 「オレが勝てたのは、ここに居る みんなの頑張りがあったからだ。お前たちが散々バカにしてきた、レンジャースクールみんなの力があったからだ」

 ホクト 「えぇ。フィールドを活用したサトシとピカチュウの戦略、見事でしたよ」

 サトシ 「……みんなの頑張りを、認める気は無いってことか」

 ホクト 「残念ながら、弱いトレーナーには興味ありません」

 サトシ 「オレのこと尊敬してくれることは、素直にサンキューな。けど、スクールのみんなを認めないって言うんなら、これ以上、お前と話すことは無い」

 ホクト 「それは残念ですね」

 サトシ 「みんなは、決して弱い訳じゃない。ポケモンレンジャーになるために、日々勉強してるんだ。バトルより、ポケモンたちの平和を望んでるんだ」

 ホクト 「そうですか」

 サトシ 「そんな みんなをバカにする奴、オレは絶対に許せない。それが友達であっても、尊敬してくれる人であってもだ」


サトシ君は、力強い口調で言った。

怒りを露わにするような素振りは見せず、淡々と、けど言葉には重みを込めて。


 ホクト 「僕らは、バトルが弱い奴らと仲良くする気はありません」

 サトシ 「これ以上、話しても無駄ってことか」

 ホクト 「……しかしサトシ。君のレンジャースクールに対する想いは、少しだけ理解しました」

 サトシ 「どういうことだよ」

 ホクト 「今後、レンジャースクールとは関わらないことを約束します。僕らだけでなく、プエル学園の全生徒に徹底させます」
 ▼ 246 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:42:33 ID:xxdMnKSM [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 カムイ 「おいホクト!?」

 スラン 「そんな勝手な約束しないでよ!」

 エルム 「だいたい私たちの口約束で、全生徒が守るワケ……」

 ソウヤ 「守るだろうな。他の生徒たちも」

 エルム 「はぁ!?」

 ソウヤ 「あの決勝戦を見れば、レンジャースクールに対する意識も変わるはずだ。サトシのことに気付いた生徒も多いだろうな」

 カムイ 「その程度のことで……!」

 ソウヤ 「それに加えて、学園でトップレベルの実力のホクトが呼びかければ、案外簡単なことだぜ?」

 スラン 「そんなの認めないわよ!」

 エルム 「そうよ! そんな勝手なこと!」

 ソウヤ 「お前ら勘違いしてるぞ。学園でバトルが強い奴ほど、サトシの名前は知ってるし、ホクトの呼びかけにも応じるはずだ。お前ら敵に回ることになるけど、それで良いのか?」

 カムイ 「っ……!」

 スラン 「なによそれっ……! こんな生意気な奴にっ……!」

 エルム 「はぁぁ。従えば良いんでしょ従えば」

 ソウヤ 「別に仲良くする必要ねぇよ。関わらなければ それで良い。簡単なことさ」


 ホクト 「サトシ、約束します。今後プエル学園は、レンジャースクールを馬鹿にしたり、喧嘩を吹っ掛けることは ありません。ただし、仲良くすることも ありません」

 サトシ 「……分かった。今はそれで十分だ」

 ホクト 「では……失礼しますよ。またいつか、君とバトルできることを楽しみにしています」

 ソウヤ 「あばよサトシ。次は負けねーからな」



プエル学園の人たちは、プエルの街へと去って行った。


私たちは、そんな彼らの背中を、無言で見つめることしか出来なかった。





 ▼ 247 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:39:47 ID:n8mo53Go [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「これで一件落着……かなぁ?」

 ピカチュウ 「ぴぃか?」



ビエンの森に静けさが戻ると、サトシ君は そっと呟いた。

そんな彼の声を聞いて、ようやく私の、私たちの緊張の糸が ほぐれてくれた。


 リーフ 「一件落着だよ、サトシ君」

 フライゴン 「りゃぁ!」

 サトシ 「けどコレ、プエル学園の奴らとは、もう和解できない感じだぞ……」

 ミナミ 「いいのよサトシ。あんな奴らと、今さら仲良くなんてゴメンよ」

 ヒトミ 「うん。関わらないのが一番。最高の落としどころじゃないかな?」

 ナツヤ 「って言うかサトシ! カロスリーグ準優勝? そんな凄いことしてたのかよ!?」

 ハジメ 「他のリーグでも凄い成績残してて……、あいつらが言ってたこと、全部本当なの!?」

 サトシ 「へへっ。カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス。今まで旅して、ジムを巡って、ポケモンリーグに挑戦して。成績も、あいつらが言ってた通りさ」

 ナツヤ 「すげぇ……!」

 ミナミ 「もぉ〜! なんて教えてくれなかったのよ〜!」

 サトシ 「いや、自慢するみたいでアレかなって」

 ハジメ 「道理で決勝戦まで進めた訳だよ。僕たち、とんでもないトレーナーに特訓して貰ってたんだから」

 ヒトミ 「うんうん! 凄いよサトシ! 本当に!」

 サトシ 「いや、それは みんなの実力だぜ? みんなの想いに、ポケモンたちが応えてくれた――、それだけさ」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」
 ▼ 248 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:40:35 ID:n8mo53Go [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そう言ってサトシ君は、ピカチュウを撫でた。


私たちの想いに、ポケモンたちが応えてくれた――か。

そうだよね。チーちゃんも、みんなのポケモンたちも、しっかり特訓に ついてきてくれたもんね。

バトル経験なんてほとんど無かったのに、決勝戦まで勝ち進んで、優勝まで掴んで。みんな頑張てくれたもんね。


本当に、サトシ君って凄いな。

私たちのこと、ポケモンたちのこと、しっかり考えていてくれて。

プエル学園の人に尊敬されるほどのバトルの実力を持っていて、それでいて、毅然とした態度で話し合いを進めて。



 リーフ 「格好良いよ、サトシ君……」



 サトシ 「そうか?」

 リーフ 「えっ? ぁっ、そのっ……!」


嘘っ、今の、私、声に出しちゃってた?


 ミナミ 「あらあらリーフ、素直になったわねー」

 ヒトミ 「そうだよね。サトシ、格好良かったもんねー」

 リーフ 「ぁぅぅ……///」

 サトシ 「サンキューな、リーフ」

 リーフ 「あっ……うん。えへへっ ///」

 フライゴン 「ふりゃっ♪」
 ▼ 249 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:41:35 ID:n8mo53Go [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「そうだ。さっきからフライゴン、リーフに凄い懐いてるじゃん?」

 リーフ 「うん。一緒に戦ってくれる流れだったし、ありがとね、フライゴン」

 フライゴン 「ふりゃ!」

 サトシ 「ゲットしてあげたらどうだ?」

 リーフ 「えっ? 私が……フライゴンを?」

 フライゴン 「ふっりゃ!」 コクッ


フライゴンを見ると、笑顔で頷いてくれた。

確かに私は、フライゴンを助けてあげたけど……。


 ナツヤ 「良いじゃん! ゲットしてやれよリーフ!」

 ミナミ 「あなたが助けて、心を通わせたんだもん。ゲットしてあげないと!」

 リーフ 「でも、フライゴンって最終進化系で、レベルも高いんだよね。今さら私なんかにゲットされたら、窮屈な思いしちゃうよ」

 サトシ 「もしフライゴンが窮屈に思ってるなら、ポケモンセンター出た時点で、どっかに飛び立ってると思うぜ?」

 リーフ 「ぁっ……」

 ハジメ 「そうか。わざわざ僕たちが送らなくても、フライゴンくらいのポケモンなら、問題なく野生に帰れるはずだよね」

 ヒトミ 「うん。なのにフライゴン、今までずっとリーフにピッタリだったもんね」

 サトシ 「そう。フライゴン、リーフのこと気に入ったんだよ、きっと」


 リーフ 「私のことを……。そうなの……かな?」

 フライゴン 「ふっりゃぁ♪」


嬉しそうな表情で、ふわりと舞ったフライゴン。

これは……、そういうことで良いんだよね?
 ▼ 250 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:42:44 ID:n8mo53Go [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「ほら。このモンスターボール使えよ」

 リーフ 「えっ、良いの?」

 サトシ 「あぁ。たくさん持ってるし」

 ナツヤ 「さすがポケモントレーナーだな」

 ミナミ 「ホントね。私たちボールなんて持ってないわよ」

 リーフ 「ありがとうサトシ君」

 サトシ 「ほら。フライゴン待ってるぞ」


モンスターボールを使うなんて、いつ以来だろう。

チーちゃん以外のポケモンは持っていないし、ポケモンを捕まえると言ったら、キャプチャのイメージだし。



 リーフ 「えっと……」



投げるんだよね?

でも、フライゴンに ぶつけるのは可哀想じゃないかな……。



そんなことを考えながら、ボールを持って焦っていると――。



 フライゴン 「りゃぁ!」 カチッ!

 リーフ 「あっ!?」


フライゴンが自ら、ボールのボタンにタッチした。


赤い光となってボールに吸い込まれたフライゴン。

私の手の中で数回揺れたかと思うと、ボールは すぐに大人しくなった。
 ▼ 251 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:44:06 ID:n8mo53Go [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「これで……ゲット、だよね?」

 サトシ 「あぁ! フライゴンの奴、相当リーフのこと気に入ったんだな!」

 ヒトミ 「ホントね。自分からボールに入ったし」

 ハジメ 「バトルで弱らせて〜ってイメージだけど、こんなゲットもアリなんだな」



自分からゲットされに行く――、そんなことあるんだね。


私の人生で2匹目のポケモンは、とっても素敵な出会いとなった。



 リーフ 「出ておいで、フライゴン」

 フライゴン 「りゃぁ!」

 リーフ 「なんだか情けないゲットの仕方だったけど、こんな私と一緒に居てくれるかな?」

 フライゴン 「ふりゃぃ♪」

 リーフ 「……ふふっ。これからよろしくねっ、フライゴン!」

 フライゴン 「ふりゃ!」


フライゴンは、ふわりと舞って元気よく鳴いた。


ありがとうフライゴン。

あなたに相応しいトレーナーになれるように、私、頑張るからねっ。
 ▼ 252 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:50:18 ID:n8mo53Go [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ナツヤ 「さてと。リーフの戦力が爆上がりしたところで、スクールに急ぐとしますか!」

 ミナミ 「そうね。全員揃って優勝報告!」

 ハジメ 「プエル学園との関係も一段落ついたし、最高の1日だったね」

 ヒトミ 「全部サトシのお陰だよ、ホントに!」

 リーフ 「うん!」

 サトシ 「オレは大したことしてないって」

 ミナミ 「なに言ってんのよ。サトシの存在自体が、プエル学園をギャフンと言わせてやったのよ。ねっ?」

 ナツヤ 「確かにな!」

 サトシ 「へへっ。まさか体験入学のオレが、こんなに役に立てるとはな〜」

 ピカチュウ 「ぴぃか!」


 ナツヤ 「ほら行こうぜ! 帰ったら祝賀パーティーだ!」

 ミナミ 「先生たち、そろそろ待ちくたびれてるわよ」

 ヒトミ 「しっかり報告しないとね。サトシとリーフの大活躍!」

 ハジメ 「そうそう!」

 サトシ 「じゃあオレは、みんなの本気のバトルを熱く報告するぜ!」

 ミナミ 「“バーン!”とか“ズドーン!”とか禁止よ」

 サトシ 「ぇ、それ厳しくないか……?」

 ナツヤ 「はははっ!」


 リーフ 「ふふっ。行こうフライゴン。私たちのレンジャースクール、紹介してあげるね」

 フライゴン 「りゃぁ!」



私たちは、賑やかに駆けだした。


夕闇に染まる大空のもと、私たちの学び舎、レンジャースクールへ。



 ▼ 253 ラルポニータ@もえぎいろのたま 21/11/29 09:53:22 ID:ZWQodKLk NGネーム登録 NGID登録 報告
とても好き支援
 ▼ 254 ナアーラ@ラッカのみ 21/11/29 10:50:49 ID:VOssUB3. NGネーム登録 NGID登録 報告
俺も好き
支援
 ▼ 255 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/30 23:09:03 ID:DkLgb1BY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



     【 * 】



レンジャーユニオン・アルミア地方本部――。



 シンバラ 「もしもし」

 ― オーキド 「おぉ、シンバラ君。レンジャースクール優勝おめでとう」

 シンバラ 「ありがとう。ユキナリの言う通り、サトシ君は凄いトレーナーじゃな」

 ― オーキド 「あいつはバトル好きじゃからの。そっちの生徒たちを上手く まとめてくれると思ったが――大成功だったようじゃな」

 シンバラ 「あぁ。本当にありがとうユキナリ。お前さんに相談して正解じゃったわい。生徒たちを大会に出場させる方法をな」

 ― オーキド 「限られた時間であれば、同年代のトレーナーをコーチ役に するのが一番じゃからな」

 シンバラ 「体験入学制度を活用できたのも大きかったな。一時は どうなるかと思ったが……」

 ― オーキド 「確か、生徒たちとアルミアのトレーナーは、何やら溝があったらしいな。サトシは すぐに打ち解けたのか?」

 シンバラ 「最初は折り合いが悪かったと聞いておる。じゃが、すぐに仲良くなったそうじゃ。サトシ君のコミュニティ能力の高さには脱帽じゃよまったく」

 ― オーキド 「トレーナーもレンジャーも、ポケモン好きに変わりはない。サトシは人一倍ポケモン好きじゃからな、きっと生徒たちにも伝わったんじゃろう」

 シンバラ 「そうじゃろうな。お陰で生徒たち、バトルに関しても自信が付いたようじゃ」

 ― オーキド 「それは素晴らしい。サトシの奴、大活躍じゃな」

 シンバラ 「それと、優勝したお陰で、レンジャースクール入学の問い合わせを十数件貰っておる。この時期に問い合わせがあるなんて普通は有り得んのに」

 ― オーキド 「普通は願書受付の……12月頃か? レンジャースクールの優勝は、それだけインパクトがあったんじゃな」

 シンバラ 「ユキナリ、改めて礼を言う。本当にありがとう」

 ― オーキド 「礼ならサトシに言ってやってくれ。ワシは何もしとらんよ」

 シンバラ 「サトシ君には、最終日に きちんとお礼させて貰おう」

 ― オーキド 「そうか。講習の最終日まで、あと2日……。あっという間じゃのぉ」

 シンバラ 「この短い期間で、優勝を掴むほどにまで生徒たちを特訓してくれたサトシ君……、いま考えてみると、只者では無いな」

 ― オーキド 「それもあるが、若いほど成長が早いと言うじゃろ。生徒たちの伸びしろも、相当なものだったようじゃな」

 シンバラ 「これだから若者の成長を見るのは楽しみじゃな!」

 ― オーキド 「うむ」

 シンバラ 「それじゃあユキナリ、近いうちに礼を兼ねて呑みに行こうではないか」

 ― オーキド 「よし来た。後でスケジュールをメールしておく」

 シンバラ 「よろしく頼むぞ。じゃあな」
 ▼ 256 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/30 23:09:28 ID:DkLgb1BY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 イマチ 「……教授。お電話終わりましたか」

 シンバラ 「おぉ、イマチ広報担当。待たせたの」

 イマチ 「なんだかご機嫌ですね。やっぱりレンジャースクールの優勝は嬉しいですよね!」

 シンバラ 「うむ。優勝した生徒たちの自信に満ち溢れた表情……、あれは良い」

 イマチ 「広報担当の僕にも取材の申し込みが ひっきりなし なんですよ〜」

 シンバラ 「入学の問い合わせも、既に十数件来ておる。しばらく忙しくなりそうじゃな」

 イマチ 「そうそう、それで、取材の日程のことで、教授にご相談がありまして」

 シンバラ 「分かった。すぐに向かおう」

 イマチ 「よろしくお願いします」


 シンバラ 「夏季講習の終了まで――、サトシ君がスクールに居るのも、あと2日か」

 イマチ 「生徒さんたち、寂しいでしょうね」

 シンバラ 「うむ。優勝に導いてくれたコーチじゃからな、サトシ君は」

 イマチ 「……取材は、サトシ君が帰ってからの方が良いですかね?」

 シンバラ 「……そうじゃな。ゴタゴタ取材を受けるより、生徒たちには、残り短いサトシ君との時間を大切にして欲しいのぉ」

 イマチ 「では、その方向で調整しましょう」

 シンバラ 「頼んだぞ」

 イマチ 「おまかせあれ。それと、広報誌に使えそうな写真を、レンジャースクールから貰いたいんですが――」

 シンバラ 「うむ、なら事務担当の――」





     【 * 】




 ▼ 257 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/05 00:16:35 ID:.hxARvk2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





アルミア学校選抜バトル大会は、この特別講習の、言わば締めのイベントだ。


元々この講習は、大会の出場に合わせてスケジュールされていたらしい。

レンジャースクールは もう長いこと出場辞退してきたから、日程は いくらでも変えられたはず。

にも関わらず日程が変更されなかったのは、いつか大会に参加する年が訪れることを、先生たちは願ってたんだと思う。きっと。


お陰で私たちは、一旦は出場辞退を決めていたのに、大会に参加することが出来た。

そして、優勝と言う最高の栄誉を掴むことが出来た。


サトシ君と、チーちゃんと、仲間たち、ポケモンたちと掴んだ、優勝と言う宝物。

特別講習を、最高の形で終えることが出来たのだ。





最高の形で終える――。



そう、終わってしまう――。





大会から2日経って。


とうとう、講習の最終日が訪れてしまった。




 ▼ 258 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/05 00:21:58 ID:.hxARvk2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 校長 「――大会の優勝も含めて、講習の経験は、必ずや、皆さんの成長をサポートするでしょう。この経験を活かし、週明けからの新学期の授業も、頑張って行きましょう」

 教師A 「気を付け! 礼!」



講習の修了式。

校長先生の長い話が終われば――。



 教師A 「以上で終了式を終わります。あとは自由行動だ。しっかり休んで しっかり遊んで、万全の状態で新学期を迎えるようにな!」

 教師B 「明日から他の生徒たちが帰って来るから、部屋の片付け、ちゃんと しておいてね」



特別講習は、幕を閉じた。


長いようで短かった、私たちの特別講習。

夏の終わりの入道雲が、なんとなく、寂しげに見えた。



 教師A 「じゃあサトシ、荷物まとめて来い」

 サトシ 「はい!」

 ピカチュウ 「ぴっか」


 ▼ 259 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/05 00:25:18 ID:.hxARvk2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

今日は金曜日。

私たちは、土曜と日曜の休みを挟んで、来週の月曜日から新学期。普段通りのスクールライフが再開する。


サトシ君とは、今日で お別れだ。

明日になれば、休んでいた他の生徒たちがスクールに戻って来るから、今日お別れしなければならないんだ。



 ミナミ 「ねぇ。プエル港まで行きましょうよ。サトシの見送り」

 ナツヤ 「おう。そのつもりさ」


サトシ君が荷物を纏めに行っている間に、プエル港まで お見送りすることを決めた。

みんな、サトシ君には感謝している。少しでも長くサトシ君と一緒に居たいよね、やっぱり。



 ヒトミ 「……リーフ。このままで良いの?」

 リーフ 「えっ? このまま……って?」

 ヒトミ 「サトシに伝えること、あるんじゃないの?」

 リーフ 「ぁっ……///」

 ミナミ 「まったく。大会終わって2日間あったのに、リーフったら、なんにも しないんだから」

 リーフ 「それはっ……! だって……」

 ナツヤ 「オレは良いコンビだと思うけどな。リーフとサトシ」

 ミナミ 「そうよ。ポケモン想いの2人、お似合いよ?」

 リーフ 「でも……」

 ヒトミ 「ふふっ。あとはリーフ次第だよっ」

 ハジメ 「そうだね。僕たちは これ以上、なにも出来ないよ」

 リーフ 「うん……///」



私次第、か――。

私は、どうしたいんだろう。


講習を通じて、間違いなく私は、サトシ君に惹かれていった。


この気持ちを、私は、どうしたら良いんだろう……。


 ▼ 260 チゴラス@ほのおのジュエル 21/12/06 07:41:07 ID:SuVkAFZo NGネーム登録 NGID登録 報告
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もうすぐラストか…
 ▼ 261 ブキジカ@イリマのノーマルZ 21/12/09 16:18:48 ID:jVAQ0Zbg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンネ
 ▼ 262 オガラス@ラブタのみ 21/12/12 15:13:55 ID:yEPgaNY. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 263 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/13 01:45:22 ID:PGR6D.co [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



サトシ君とピカチュウは、先生たちや世話焼きおばさんに、丁寧に挨拶してまわった。


講習の短い間だけだったけど、サトシ君はレンジャースクールの大切な一員だ。

みんな別れを惜しんでいた。

先生たちは“いつでも転校してきて良いんだぞ?”なんて、冗談か本気か分からないこと言ってたし、本当にサトシ君は、レンジャースクールの みんなに親しまれていたんだね。





スクールを出発して、ビエンタウンへ。

あんまり時間が無いから、プエル港まではバスで向かう。



このバスの中で、私は初めてサトシ君と出会ったんだよね。



バスで私を助けてくれたサトシ君。

思い返せば、あの時から私は、サトシ君に惹かれていたような気がする。

その当時は“普通の男の子とは違うな〜”程度の印象だったけど、講習の日々を共に過ごすにつれて、サトシ君の優しさとポケモン想いの心を知れて。

いつの間にかサトシ君のことを、“格好良いな”って思っていて――。


大会の決勝戦で見せてくれた、サトシ君の決して諦めない闘志。

私の中で芽生えていた“格好良いな”って感情は、もっと別の、深く、暖かい感情だと気が付いて――。



男子が苦手な私にとって、そんな感情が生まれるのは奇跡みたいなものだった。


こんなに素敵な人と出会えたのに、もうすぐ お別れになってしまう。


サトシ君と、お別れになってしまう……。



 ▼ 264 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/13 01:47:14 ID:PGR6D.co [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



プエル港に到着し、サトシ君は乗船手続きを済ませた。


船の出航まで、あと1時間くらい。

私たちは時間まで、客船ターミナルの屋上で過ごすことにした。



澄み切った青空と、穏やかに揺れる青い海。

キャモメは悠々と空を舞い、マンタインは放物線を描くように飛び跳ねる。



そんな穏やかな光景を眺めながら、私たちは、サトシ君との最後の時間を過ごす。



 ナツヤ 「あっという間だったよな」

 ミナミ 「ホントね」

 サトシ 「キャプチャの授業以外は、ほとんどバトルの特訓だったもんな〜」

 ハジメ 「充実した日々だったよ」

 ヒトミ 「うん。バトルも案外悪くないかなーって」

 サトシ 「へへっ。ポケモンたちが頑張ってる姿を見るのも、けっこう良いものだろ?」

 ナツヤ 「だな。サトシの特訓、忘れないようにするぜ」

 ハジメ 「優勝校に恥じないように、これからもバトルを続けるよ」

 サトシ 「おう。頑張れよ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」


 ミナミ 「でも、寂しくなるわね」

 ヒトミ 「うん……。ピカチュウとも会えなくなっちゃうの悲しいよ」 ギュー

 ピカチュウ 「ちゃぁ〜♪」

 ミナミ 「リーフも寂しいでしょ?」

 リーフ 「うん……。サトシ君には、色んなことを教えて貰ったのに。もう お別れなんて……」
 ▼ 265 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/13 01:48:04 ID:PGR6D.co [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「……あ! ねぇ、サトシのお土産! みんなで買いに行きましょうよ!」

 ナツヤ 「お、そうだな。アルミア名物をサトシに持たせてやらないと!」

 サトシ 「お土産なんて……、そんな気にしなくていいんだぜ?」

 ミナミ 「ううん。私たちの ほんの気持ちだから」

 ナツヤ 「そうそう。みんなで選んでくるから、サトシは ここで待っててくれよ」

 ヒトミ 「あ、リーフは残ってててね。サトシの お話相手で」

 リーフ 「えっ!?」

 ミナミ 「サトシに話したいこと、あるんじゃないの〜?」

 ヒトミ 「そうだよ〜」

 リーフ 「それはっ……///」

 ハジメ 「まぁ現実問題、決勝戦のラストを飾ったサトシとリーフは、ちょっとした有名人だからね。あんまり人が多い所に行かない方が良いよ」

 ヒトミ 「そういう訳だからさっ。サトシとリーフは、ここで待っててね」

 ナツヤ 「アルミアらしいの選んでくるから、楽しみにしといてくれよ」
 
 サトシ 「おう。サンキューな!」

 ヒトミ 「ピカチュウも一緒に行こっ。好きなポケモンフーズ買ってあげるよ」 ダキッ

 ピカチュウ 「ぴっか♪」

 ミナミ 「頑張ってねリーフ」

 リーフ 「もぉ……///」
 ▼ 266 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/13 01:50:23 ID:PGR6D.co [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

まるで示し合わせていたかのように、みんなはターミナルの売店へ行ってしまった。

確かに、サトシ君への お土産は必要だし、決勝戦で話題になった私とサトシ君は大人しくしてるべきだけど……。



 サトシ 「お! 見ろよリーフ! あそこ、ホエルオーが居るぞ!」



サトシ君は、私と2人きりになることに特に疑問は抱いていないみたい。

遠くの海上に顔を出すホエルオーを見つけて、子供のように はしゃいでいた。


 リーフ 「本当だ。ここから見ても大きいね」

 サトシ 「あんなのゲットしたら、世話するの大変だろうなぁ」

 リーフ 「ふふっ。場所も無いし、ご飯いっぱい食べそうだもんね」


みんなでビエンの森を通った時も、サトシ君、こんな感じだったっけ。

ポケモンが大好きで、ポケモンのことに夢中になって、ポケモンのために動ける――、それがサトシ君。



そんな素敵なサトシ君と、いま私は、2人きり。



みんなが作ってくれた、サトシ君と2人だけの時間。

みんなが用意してくれた、サトシ君と2人だけの舞台。



みんな気付いちゃってるんだよね。私がサトシ君のこと、どう思っているか。


ピカチュウも居ない、みんなから貰ったチャンス、無駄にするわけには いかないよね。
 ▼ 267 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:34:25 ID:AvHA3d8o [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「なぁ」
 リーフ 「あのっ……」


 サトシ 「ん? どうした?」

 リーフ 「あっ……ううん。サトシ君こそ どうしたの?」

 サトシ 「いや、チーちゃんとフライゴンにも、サヨナラしたいなって」

 リーフ 「うん、そうだよね。出て来て」


 チコリータ 「ちこっ」

 フライゴン 「ふりゃぁ」


 サトシ 「2人とも、今日で お別れだな。リーフのこと、しっかり支えてやってくれよ」

 チコリータ 「ちこりっ」

 フライゴン 「りゃぃ!」

 サトシ 「チーちゃん、決勝戦よく頑張ったな。お前のガッツと芯の強さがあれば、これから もっと成長できるぜ」 ナデナデ

 チコリータ 「ちこりぃ♪」

 サトシ 「フライゴン。リーフに ついていこうって お前の判断、正しいと思うぜ。リーフすげぇ良い奴だから、よろしく頼むぜ」

 フライゴン 「ふりゃ!」



サトシ君は、チーちゃんとフライゴンに語り掛けている。

2匹と目線を合わせ、優しく語り掛けるその姿は、本当にポケモン好きなんだなと改めて感じた。
 ▼ 268 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:36:53 ID:AvHA3d8o [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「……ふふっ」

 サトシ 「ん? どうした?」

 リーフ 「ぁっ、ううん。サトシ君、本当にポケモンが好きなんだなぁって」

 サトシ 「あぁ! 色んなポケモンと出会って、仲良くなって、そのポケモンの特徴とか性格を知るの、すげぇ楽しいからな」

 リーフ 「分かるな、そういうの。私がポケモンレンジャーを目指すキッカケも、そういうところだったもん」

 サトシ 「そうなのか」

 リーフ 「うん。私って元々ね、大人しくて、内気で、男子と喋るのも苦手で……。でもポケモンは大好きで、将来はポケモンに関わる仕事がしたいって、ずっと思ってたんだ」

 サトシ 「へぇ〜。でも、それでレンジャーを目指そうって思うのは凄いな」

 リーフ 「そう?」

 サトシ 「ポケモンに関わる仕事なら、ブリーダーとか、研究者とか、ドクターとか、色々あるだろ?」

 リーフ 「うん」

 サトシ 「なのに、知識とか体力が必要で、危ないミッションもあるレンジャーを選ぶってのは、かなり勇気がいることだと思うぜ?」

 リーフ 「うーん……、いま考えてみると、確かに私、無茶な選択だった……かな?」

 サトシ 「ははっ。やっぱりリーフは勇気あるよ。フライゴンを助けた時も言ったけどさ、もっと自信持った方が良いぜ」

 リーフ 「ふふっ。ありがとうサトシ君」

 サトシ 「それにリーフ、男子と喋るの苦手――とは感じないけどな」

 リーフ 「それは……」



それは、相手がサトシ君だからだよ。


内心ドキドキだけど、サトシ君となら、なぜか普通に話せるんだ。

男子と話すことがこんなに楽しいなんて、サトシ君が初めてだもん。



ねぇサトシ君。

サトシ君は、私のことどう思ってるの?

今の私は、ドキドキが止まらない。恥ずかしいけど、嬉しくて、楽しくて。


サトシ君も、私と話すことを楽しいって感じてくれてるのかな。

私みたいに、ドキドキしてるのかな。
 ▼ 269 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:38:40 ID:AvHA3d8o [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「リーフなら これからも大丈夫さ。チーちゃんとフライゴンも一緒だしな」

 チコリータ 「ちこり!」

 フライゴン 「りゃぃ!」



 リーフ 「サトシ君は……、これからどうするの?」

 サトシ 「オレか……」

 リーフ 「サトシ君、ポケモン想いだし、キャプチャも上手いし、ポケモンレンジャーに向いてるよ。先生たちも言ってたけど、ポケモンレンジャーの道とか……、どうかな?」

 サトシ 「確かに、レンジャーの道も興味あるよ。ポケモンと一緒に自然とか平和を守るって、すげぇ遣り甲斐あると思う」

 リーフ 「うん。大変だけど、本当に遣り甲斐は大きいよね」

 サトシ 「けど、オレには夢があるんだ」

 リーフ 「夢……?」

 サトシ 「世界一のポケモンマスターになる。それがオレの夢なんだ」

 リーフ 「ポケモンマスター……」

 サトシ 「あぁ。もっともっと強くなって、リーグで優勝して、チャンピオンを超えてさ」

 リーフ 「サトシ君、今でも すっごく強いのに」

 サトシ 「まだまだだよ。ポケモンマスターになるには、もっと特訓して、強くなって。ピカチュウたちと一緒に、更なる高みを目指すんだ!」

 リーフ 「そっか。凄いんだね、サトシ君の夢――!」


サトシ君の夢は、とってもスケールの大きいものだった。

ポケモンリーグで優勝、チャンピオンを超える強さまで登り詰めると言う、男の子らしい、大きな大きな夢。


あわよくばサトシ君が、このままポケモンレンジャーを目指してくれないかな――、なんて考えた私が失礼だった。

まだサトシ君と一緒に居たいと言う私の我儘は、サトシ君に対して、あまりにも失礼なことだった。


ダメだよ私。


サトシ君に告白する勇気が無いからって、サトシ君をポケモンレンジャーの道に引きずり込んじゃ。

サトシ君は、とっても大きな、とっても素敵な夢を持ってるんだから。
 ▼ 270 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:40:46 ID:AvHA3d8o [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「リーフは夢とかあるのか?」

 リーフ 「夢か……。まずはポケモンレンジャーになること……だけど、その先のことは分からないな」

 サトシ 「そっか。けど、夢は焦って決めるモノじゃないからな。色んなこと経験して、じっくり考えて、リーフなりの道を見つけてくれよ」

 リーフ 「うん。ありがとうサトシ君」

 サトシ 「ポケモンレンジャーになるんなら、やっぱり最初の目標はトップレンジャーとか?」

 リーフ 「うーん……、私に出来るかなぁ」

 サトシ 「出来るよ、リーフなら。フライゴンを助けた、あの勇気があるんだからさ!」

 フライゴン 「ふりゃ!」

 リーフ 「……ふふっ。もぉ〜、あんまりそのこと言われると恥ずかしいよ」

 サトシ 「誇れることだよ。なぁ?」

 フライゴン 「りゃっ!」

 チコリータ 「ちこりぃ♪」

 サトシ 「ほら!」


サトシ君の問いかけに、チーちゃんとフライゴンは、笑顔で頷いた。

サトシ君もまた、笑顔を私に向けてくれた。

純粋で眩しい彼の笑顔は、いつも私をドキドキさせてくれる。



 リーフ 「ありがとう、サトシ君。本当に、今まで」

 サトシ 「オレの方こそ。リーフが居てくれたから、大会で優勝できたんだ。ありがとな、リーフ」 スッ

 リーフ 「ぁっ……///」 ドキッ



サトシ君が差し出した右手。


私は恐る恐る、自分も右手を差し出した。


 ▼ 271 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:44:04 ID:AvHA3d8o [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「リーフの勇気、きっと みんなに良い影響を与えると思うぜ」 ギュッ

 リーフ 「ありがとう。サトシ君も、ポケモンマスターの夢、頑張ってね」 ギュッ



サトシ君の手は、私よりも大きくて、ガッチリしてて、とっても男の子らしくて。

ギュッと握りしめてくれた温もりに、私の鼓動は早くなる。


好きな人と触れ合うことの嬉しさ、恥ずかしさ、心地よさ、少しの緊張。

それらが私の体を駆け巡って、顔を赤くする。体を熱くする。ドキドキが止まらない。



サトシ君は、私に勇気があるって言ってくれたけど、全然そんなこと無いよ。


もし私に勇気があったら、今ここで、サトシ君に、私の想いを伝えてるもん。





貴方のことが好きです――って。


異性に好きという感情を抱いたのは、貴方が初めてです――って。





 サトシ 「頑張れよ、リーフ!」

 リーフ 「うん。私もサトシ君の夢、応援してるからねっ」



告白する勇気は私には無かったけれど――。


私はサトシ君に、たくさんの勇気を貰った。

勇気だけじゃない。自信、誇り、強さ。そして、フライゴンと言う新しい仲間。



ありがとう、サトシ君。


私を変えてくれて、本当にありがとう、サトシ君。





 ▼ 272 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 23:00:32 ID:AvHA3d8o [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





     *





  ― ボ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ !





別れを惜しむかのような、長い長い汽笛。


サトシ君を乗せた船は、アルミアから去って行った。



みんなで手を振って。


サトシ君とピカチュウも、船のデッキから手を振ってくれて。



船が見えなくなるまで、私たちは、サトシ君とピカチュウを見送った。





 ▼ 273 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 23:01:07 ID:AvHA3d8o [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ナツヤ 「行っちまったか」

 ミナミ 「あっという間だったわね」

 ハジメ 「なんかさ、講習の間だけだったけど、サトシを中心に回ってたよね、僕たち」

 ヒトミ 「うん。最初は あんなに険悪なムードだったのに」

 ナツヤ 「そりゃぁ、命がけでチルットを助ける姿を見せられたからな」

 ミナミ 「あれには感動したわ。大会の出場と優勝も、サトシの特訓のお陰だし」

 ヒトミ 「あんなに凄い人、なかなか出会えないよ」

 ハジメ 「だね」

 ヒトミ 「リーフは……、良かったの?」

 リーフ 「えっ?」
 
 ヒトミ 「サトシに気持ち、伝えなかった……よね?」

 リーフ 「うん。ちょっと勇気、足りなかったかな……」

 ミナミ 「せっかくリーフが心を開いた男子だったのに」

 ナツヤ 「サトシみたいな凄ぇ奴なら、リーフが惚れてもおかしくないよな、うん」

 ハジメ 「僕は割と最近になって知ったけど、相手がサトシなら納得だよ」

 リーフ 「もぉ……、恥ずかしいよぉ……///」

 ミナミ 「ふふっ、ごめんねリーフ。でも私たち、リーフが一歩成長できたこと、ホントに嬉しいんだから」

 ナツヤ 「そうだな。男子が苦手なリーフが、サトシと一緒だと、あんなに楽しそうだったもんな」

 リーフ 「ぇ……、そんなに分かりやすかったの?」

 ミナミ 「うん」

 ナツヤ 「少なくとも、オレたちクラスメートの男子には見せたこと無い雰囲気だったぞ」

 ヒトミ 「そうそう。バレバレだったよリーフ。……なかなか気付かなかった人も居るみたいだけどー」 チラッ

 ハジメ 「うるさいなぁ」

 リーフ 「ごっ、ごめんなさい。ナツヤ君たちが嫌いって訳じゃないから……!」

 ナツヤ 「ははっ。分かってるよ、そんなこと!」

 ミナミ 「サトシは特別よね〜」

 ヒトミ 「うんうん!」

 ハジメ 「サトシには敵わないよ、まったく」
 ▼ 274 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 23:02:10 ID:AvHA3d8o [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ヒトミ 「って言うか、サトシも鈍感だよ。こんなに分かりやすいのに、リーフの気持ちに気付かないなんて」

 ミナミ 「ホントそれ。教えちゃえば良かったかしら?」

 リーフ 「だっ、ダメだよそんなこと……!」

 ミナミ 「冗談よ」

 ヒトミ 「勿体ないなぁサトシ。こんなに良い子が好きになってくれたのに」

 リーフ 「もぉ……///」





私の気持ちが みんなに ばれちゃってたのは恥ずかしいけど――。


サトシ君との出会いは、私を大きく変えてくれた。


勇気や強さだけじゃない。

誰かを好きになると言う、私にとって初めての気持ちを、私に教えてくれた。





素敵な出会いだったな。



そして、素敵な時間だったな。



サトシ君と過ごした、新鮮で、楽しくて、刺激的な夏――。





 リーフ 「私の ひと夏の思い出――。絶対に忘れないもん」

 チコリータ  「ちこりぃ♪」





   ―――   完   ―――



 ▼ 275 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 23:02:51 ID:AvHA3d8o [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



当SSは、夏のコンビSSコンテストに参加していました(大遅刻)

【SS企画】夏のコンビSSコンテスト!【7/24(土)〜8/22(日)】

https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=1485181


ポケモンレンジャー・バトナージは個人的名作ですので、興味のある方は是非プレイしてみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



 ▼ 276 ポエラー@あさせのしお 21/12/22 23:35:05 ID:x77o/sfw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
リーフちゃん可愛いしサトシがいい塩梅にカッコいいです
サトシが出てくる話でこのクオリティはありがたい…
また作者さんのお話が見たいです
 ▼ 277 ッタイシ@ナナのみ 21/12/23 07:45:03 ID:9tLEhr6c NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 278 ンドロス@ダウジングマシン 21/12/25 10:59:04 ID:2cIsSkXQ NGネーム登録 NGID登録 報告

リーフSS少ないから面白かった
 ▼ 279 ーナイト@かわらずのいし 22/01/14 16:16:05 ID:DJNIlroQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
otu
 ▼ 280 ワムラー@ずぶといミント 22/01/14 21:46:24 ID:fSG6dh9Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完結してたのか
おつ
 ▼ 281 シャマリ@イワZ 22/02/08 00:51:07 ID:tPDgI6y2 NGネーム登録 NGID登録 報告
良いSSを見つけた。乙
 ▼ 282 ロア@だいちのプレート 22/02/11 20:02:19 ID:0BQo94Nc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ようやく全部一気読み出来た。このssは上手いなぁと思う反面オチが最初から予想できる作りで最後までドキドキする展開もない所がちょっと物足りなかった。
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