コハル「いってきまーす」

その日コハルは帰ってこなかった
代わりに研究所のポストに一通の手紙が入っていた
『コハルを返して欲しければ現金1000万を振り込め』という誘拐犯からの要求だった

次の日
ジュンサーさんの懸命な捜索により誘拐犯は捕まり、コハルは見つかった


コハル「ぐすっぐすっ…こわかったよぉ…」

サクラギ「…っ！　すまないコハル、もう大丈夫だからね！」


そのとき、ダダダダダと廊下を走る音が響き、勢いよく扉が開いた


サトシ「コハルが見つかったってほんと！？」

ゴウ「コハル！」


コハルの姿を見るやいなや
サトシは安堵の表情を見せ、ゴウはコハルを強く抱きしめた


サトシ「よかった……俺たち、めちゃくちゃ心配してたんだぜ」

ゴウ「もう離さないからな…！」

コハル「ふふっ、もうゴウってば…」


少し大袈裟にも見えるゴウの行動に気が緩み、笑みが溢れる

1時間後

サトシ「…」

サクラギ「…」

コハル「あの…ゴウ？　そろそろ長くない？」


真剣な表情で抱きしめるゴウ
困惑が勝り始め、ついに口を開いたコハル
嫉妬やら何やらが入り混じった微妙な表情のサクラギ
無表情のサトシ
それぞれの想いを抱えた4者が次のゴウの一言で動く


ゴウ「絶対離さないからな！」

コハル「！？」

サクラギ「な、なにぃ！？」

サトシ「ははっ」

草
狂気期待

コハル「いやいやいや！　ちょっと一旦離れて！」

サクラギ「娘から離れろォ！」

ゴウ「嫌だ！」

サトシ「はははっ！」


コハルとサクラギは言葉の意味を理解し、ゴウを引き剥がそうとする
ゴウは決して離れまいとより強く抱きしめ、
サトシはそんな状況を楽しみ始めた


サクラギ「ゴウ貴様、トイレや風呂でもそうしているつもりかぁ！」

コハル「ちょっ、やめてよお父さん！　お父さんの口からそういう話聞きたくない！」

ゴウ「当たり前だ！　絶対離すもんか！！」

コハル「当たり前なの！？」

サクラギ「サトシィ！　笑ってないで君も手伝え！」

サトシ「わかった！」


サトシがゴウの腕を掴むとミシミシと音が鳴った
あまりの痛みにゴウは絶叫し、ついにコハルから剥がすことに成功した


サクラギ「ゴウ、気持ちは分かるけどね、物事には限度というものがあるんだ」

ゴウ「ごめんなさい…」

次の日

コハル「いってきまーす」

その日、コハルは帰ってこなかった
代わりに研究所のポストに一通の手紙が入っていた
『コハルを返して欲しければ現金2000万を振り込め』という誘拐犯からの要求だった

三日後
ジュンサーさんの懸命な捜索により誘拐犯は捕まり、コハルは見つかった


コハル「ぐすっぐすっ…こわかったよぉ…」

サクラギ「…っ！　なぜウチの娘ばかりが…！！　すまないコハル、もう大丈夫だからね！」

ゴウ「コハルー！！」

ゴウはコハルを強く抱きしめた

コハル「げっ…」

ゴウ「もう離さないからな…！」

コハル「…」

サクラギ「…」

サトシ「おっと〜？」

それはそれでコハル喜んでそう

全員言葉の意味は既に理解している
サトシに言えばすぐに剥がせることも分かっている
しかしコハルとサクラギは動けずにいた

コハルは助けてよ！と目で訴えるが口には出せない
サクラギも助けたいのは山々なんだが…と目で返す


サトシ「ふぁ〜あ、コハルも帰ってきたことだし、そろそろ寝るよ」

サクラギ「ま、待ってくれ！」

サトシ「？」

コハル（お父さん…！）

サクラギ「……いや、なんでもない…お休み」

サトシ「？　おやすみなさーい」

コハル（お父さん！？）

サクラギ（すまないコハル、私には無理だったよ…）


唯一の対処法がベッドに向かう
一度サトシが眠ってしまえば10時間は起きない
このチャンスを逃せばコハルはこの状態で10時間以上過ごすことになる


コハル「サトシ！」

サトシ「なんだ、コハル？」

コハル「ゴウも連れて行ってあげて！」

自分のためではなくゴウのため、というスタンスで頼みづらい状況を打破する
またもサトシは怪力を発揮した
こうしてゴウを引き剥がすことに成功した


次の日、コハルは誘拐され、三日後に帰ってきた


コハル「…ただいま」

サクラギ「…おかえり、心配したよ」

サトシ「あ、コハル、おかえりー」


コハルはもう泣いてすらいない
サクラギも心配を全面に出せず微妙な表情だ
サトシはもう誘拐などなかったかのように接する
そして──


ゴウ「コハルー！！」

コハル「…」

ゴウ「もう離さないからな！！」

こわひ

サクラギ「なぁコハル」

コハル「…」

サクラギ「もうそのままでいた方が──

コハル「やめて！　監禁中に割と本気で思ってたこと言わないで！」

コハル「こんな状態じゃまともに生活できないよ！」

サクラギ「ならせめて登下校の間だけでも…どうだ？」

コハル「……」

コハル「…友達に見られたら……」

コハル「……いやでも誘拐…」

コハル「…………んんんん〜〜〜〜……」

コハル「………わかった…」

こうして登下校の間のみ、ゴウが張り付くことになった

さすがにハグしたまま登下校はないだろうな
手繋いでる程度だろ……？

サトシの方が怖い