【SS】ユキメノコ「……おや？」

ユキメノコ「…こんばんわ」


ユキメノコ「…どうして…ここへいらしたのですか？」


ユキメノコ「…なるほど。それは災難でしたね」

ユキメノコ「…それならば、ほんの少し…。
私の話相手になっていただけないでしょうか？」

ユキメノコ「…貴方様が、久方ぶりのお客様でして…」


ユキメノコ「…ふふっ。お優しいのですね」

ユキメノコ「………っと、何のお話をしましょうか…」


ユキメノコ「……ああ、それでは……

…昔、私が体験した…可笑しな話でも…」



ユキメノコ「…それでは、お聴き下さい」


───────

───あれは、ちょうど今日のような…


暗く、静かで……ひんやりとした夜のことでした。

私は、フリーザー様に招待されて…
氷タイプの皆様が集まる、とあるパーティに赴きました。


私以外にもフリージオ様やルージュラ様…。

ニューラ様…、バニリッチ様…。

それからウリムーちゃんやクマシュンちゃんも
いらっしゃいましたね。


私を含め、20匹の氷タイプの方々が老若男女問わず
パーティに参加されていました。

煌びやかなシャンデリアがとても美しい
立派なお城を貸し切って…

それはそれは夜遅くまで
皆様と楽しい時間を過ごすことができました。






ただ…、途中から雨が降り出したのです。

その雨は次第に激しくなり、やがて雷も鳴り始めました。


雨が苦手な方もいらっしゃったので…
すぐに全ての窓を閉めて、パーティは再開しました。

そして、大広間の大きな振り子時計が23時を指した頃でしょうか…。

突然、外が眩く光ったかと思うと

辺りに轟音が響いたのです。


煌びやかな照明は消え、お城は深い闇に包まれてしまいました。


…停電です。


きっと、先程の雷が原因でしょう。

皆様、とてもご乱心なご様子でした。

『フラッシュ』を使える方がいらっしゃれば良かったのですが…。

生憎…私を含め、ただ一人として…使えないご様子でした。

しかし、何も心配する必要はありません。

お城に限らず、公共の重要な施設には
緊急時であっても予備発電で電力を供給できるからです。

暫くすれば、停電は直る…





…はずなのですが…。



いったいどうしたのでしょうか。
電気がつく気配すらありません。

仕舞いには、不安に駆られて泣き出してしまうお子様まで…。

停電に耐えかねたクレベース様が
手探りで扉を探し、外へ出ようとしていたのですが…


…開かないんです。

どうやら、ロックがかかってるようで…。

それも、施錠の類いではなく…電動のロックです。

電気が止まってしまっては、どうすることも出来ません。




…そう、私たちは


…何も見えない暗闇の中に、閉じ込められてしまったのです。

支援

支援こ

…停電から、どれくらい経ったのでしょうか。


フリーザー様の提案で、私たちは大広間の中央に集まり

電力が回復するのを待つことにしました。


しかし、お互い姿が確認出来なければ
全員ちゃんと集まっているのか分からないのです。


そこで、私たちは一列に並び、点呼をとることにしました。


フリーザー様の『いち』という合図に応え
右端からカウントが始まりました。

『にい』


『さん』


『しい』


『ごお』

・
・
・

『じゅうはち』


『じゅうきゅう』






…『にじゅう』

…そう、20匹。

私たちは20匹でパーティを楽しんでいたのです。




















…『にじゅういち』。



その場が一瞬で凍りつきました。

その瞬間、まるで時が止まったかのように音が消えたのです。

窓を激しく打ち付ける雨すら聞こえないほどに。


そして、その静寂はすぐに
あらゆる悲鳴に掻き消されてしまいました。


ポケモンが出せる音量を、遥かに超えた絶叫。


バクオング様がいらしたら、大変驚かれたことでしょう。


それほどに、皆様取り乱していらっしゃいました。

さて、この場を再び収めたのは
やはりフリーザー様でした。

泣き喚くお子様を慈悲深く諭し
皆様に強い安心感を与えて下さったのです。

しかし、やはり不安や恐怖を完全に拭い去ることは出来ませんでした。

…そこで、私たちはもう一度…

点呼をとることにしたのです。



安全を、証明する為に…。

この雰囲気いいぞ

再び、フリーザー様の『いち』という合図に応え…


『にい』


『さん』


『しい』


『ごお』


『ろく』


『しち』


『はち』

・
・
・


『じゅうろく』


『じゅうひち』


『じゅうはち』


『じゅうきゅう』









…『にじゅう』

───そこで、カウントは止まりました。

皆様が一斉に安堵の笑みを浮かべました。

そして、先程の不可解な減少は何だったのだろう
という疑問を抱いたのです。


しかし、その疑問はすぐに解消されることとなりました。

こ↑わ→い↓こ↑わ→い↓

突然、眩い光が大広間を照らし出しました。

そう、電力が回復したのです。

劇的な明暗の変化に悶えながらも辺りを見渡すと…








…そこには、いつの間にか進化していたバイバニラ様の姿と

…泡を吹いて気絶しているクマシュンちゃんの姿があったのです。

私たちが20匹なのに対し、カウントが『21』までなされたのは恐らく…

無意識の内に進化していたバニリッチ様が2匹分カウントしていたのでしょう。

進化の際には多少の光が発生するものですが
雷と同時に進化されたのなら誰も気づけませんね。


ご本人様も、突然の停電でパニック状態に陥っていたご様子で
進化された自覚がなかったそうです。

そして、『21』回目のカウントを聴いて
クマシュンちゃんが倒れてしまったと…。

確かにあの子は人一倍怖がりさんですし、
それが特性にまで表れていますからね。…ふふっ。



全ての真相が分かると、皆様で顔を見合わせて笑ってしまいました。


…まさか、こおり状態にならない私たちが
一斉に凍りついてしまうだなんて…


…可笑しいでしょう？…ふふっ。

なるほど

読みやすいな

それと同時に、大広間の大きな振り子時計が0時を知らせる鐘を響かせました。


停電する前の時刻は確か…23時頃でしたので
永遠とまで感じた暗闇は僅か1時間程度のものだったのです。





そして、ずっと降り止む様子のなかった雨も
いつの間にか止んでいたのでした…。



──────

ユキメノコ「…後日、判明したのですが」

ユキメノコ「停電が長引いた原因というのも、お城の周辺に大量発生されていたエレブー様方が」

ユキメノコ「空腹のあまりお城の電気を食べていたそうです」



ユキメノコ「…全く、人騒がせな話ですね、ふふっ。」

ユキメノコ「…それにしても、何故どなたも雨が降り始めた時に

霰に変えてしまおうと思わなかったのでしょうね」


ユキメノコ「そうすれば雷も鳴らず、停電が起きることもなかったのでしょう…」


ユキメノコ「…まぁ、私は面白いものが見れたので満足でしたけれど…」




ユキメノコ「急に電気が消えた際の皆様の表情…
……ふふっ。…忘れられません」

───ぱちんっ




「……おや？」

支援

「…どうやら、また停電のようですね」



「…いかがなさいましたか？」



「…ご心配いりません。暫くすればまた点灯するでしょう…」



「…それより、お話を続けましょう？」




「…次の話は……そうですね…」

「…この館に迷い込んだ憐れな魂がどうなるのか…」


「…その末路について、お話しましょうか…」









「…ふふっ」

【SS】ユキメノコ「……おや？」

おしまい


ありがとうございました。

乙

乙

おつ

意味怖か
なかなか上手いな