レッド「メガシンカ……か……」

……カントー地方とジョウト地方を繋ぐ巨峰"シロガネやま"。

そこは、屈強なポケモンばかりが生息する危険地帯。

余程の強者か物好きかでなければ、そこに足を踏みいれる者はいない。

「……………………」

……言葉なく雲を"見下ろす"少年がいた。

その少年が今立っているこの場所は……。

……シロガネ山の、山頂。

「……………………」

「ピカピッ」

「……………………」

少年は、肩にちょこんと乗ってるピカチュウのでこをすりすりと撫でる。

少年もピカチュウも、ダイヤモンドダストが舞うこの極寒の地に非常に慣れている様子であった。

もう数年はそこで過ごしているかのような……そんな貫禄さえ感じる。

「……相変わらず寒いなここは」

「おーい、"レッド"！」

たった今頂に登り詰めたもう一人の少年が、ピカチュウを連れた少年を"レッド"と呼んだ。

レッド「…………」

ピカチュウ「ピカァッ！」

ピカチュウは、突然現れたこの少年を歓迎した。

その様子をみると、どうやらレッドとこの少年は友人関係らしい。

レッド「……"グリーン"」

それまで無口だったレッドも、やっと口を開いて喋った。

レッドは、少年を"グリーン"と呼んだ。

グリーン「よっ！また飯持ってきてやったぜ」

そう言ってグリーンは、食べ物が入った密封パックを入れたレジ袋をレッドに渡した。

レッド「……いつもごめん、ありがとう」

レッドは、グリーンに申し訳なさそうに感謝する。

グリーン「ホントだぜ、いい加減こんな引きこもりみたいな生活辞めて、普通のポケモントレーナーに戻れよ」

レッド「…………っ」

グリーンの言葉を聞いて、レッドは耳が痛そうにした。

"良薬口に苦し"といったところか。

レッドはもう数年近く、このシロガネ山の山頂で自分のポケモンと一緒に住んでいる。

その理由は友人であるグリーンにも分かりえないことだが、グリーンはレッドの山頂での偏った食生活を心配して来る日も来る日もこの地へ足を運んでいるというわけだ。

レッド「……今更俺は普通のポケモントレーナーになんてなれない」

レッドは、心苦しそうに言葉を綴る。

レッド「結局、俺を越えられたポケモントレーナーはあのゴールドって子だけだった」

レッド「後の全部はもう圧勝、圧勝、圧勝」

レッド「俺はもう、戦うことに感情を持てなくなった」

レッド「もうこれからずっと俺は、ピカチュウ達と静かに暮らすんだ」

ピカチュウ「ピカー」

レッドは言いながら、ピカチュウをなでなで。

しかしその手はまるで、生涯において全てをやりきった老人が孫を撫でる時のそれのようだった。

レッドの心にはもはや、悲しみの諦観しかなかった。

グリーン「……なあ、レッド」

しかし、グリーンはそんなレッドの人生を救うべく……。

……とある一つの話を持ちかけた。

グリーン「お前、"カロス地方"ってトコ知ってるか？」

レッド「"カロス地方"……？」

レッドはそれを知らなかった。

グリーン「そこにはな、カントーやジョウト、シンオウにもかつてない……」

グリーン「……"未知のポケモンの進化"があるらしい」

レッド「……未知の……？」

レッドにとって進化とは、ポケモンが特定の条件下に達した時に姿を変えて大幅な成長を遂げる現象のこと。

しかし、グリーンが今言った"未知のポケモンの進化"とは、恐らくそのレッドの知識とは違うことを意味している。

レッドは好奇心に駆られ、いつの間にかグリーンの話に聞き入っていた。

段々、レッドの鼓動が興奮によって高鳴ってくる。

グリーン「それは、"進化を超えた進化……"」


グリーン「……"メガシンカ"」


レッド「……"メガ"……"シンカ"……」


……その時、レッドの目は輝いた。

恐らく、久方ぶりに。

最強のポケモントレーナーレッドにレーティングバトルをおすすめしたい(ゲス顔)

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支援ありがとうございます！

>>7
でんきだまピカチュウを実際にレートで使ってますが、SMのZワザでピカチュウの立ち回りがどう変わるか楽しみだったりします。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


"進化を超えた進化"……"メガシンカ"。

その言葉の響きは、レッドの胸中を強く揺さぶった。

それまで脱け殻のように覇気の無かったレッドが……。

……今再び、かつての"情熱"を取り戻そうとしている。

レッド「…………っ」

……しかし、グリーンの口頭だけではまだ"メガシンカ"の現実味は感じられない。

レッド「……"メガシンカ"って、具体的にはどんな進化なんだ？」

レッドは事の真偽を知るため、グリーンに"メガシンカ"についてより詳しく聞く。

グリーンは、まずはレッドの関心を引くことに成功し、"よし"と心の中でガッツポーズ。

そしてグリーンはその感情を態度に出すことなく、レッドの質問に答えた。

グリーン「まず"メガシンカ"ってのは全部のポケモンができるわけじゃあねえ」

グリーン「現在"メガシンカ"が確認されてるポケモンは、48種類だ」

レッド「ふむふむ」

レッドは頷く。

グリーン「そして、普通の進化とは決定的に違う点、それは……」

グリーン「……進化が"バトルが終わるまでの一時的変化"であるという点だ」

レッド「……"一時的"……」

レッドは少し狼狽えた。

だが、"メガシンカ"そのものさえ今日初めて知った人間なら、寧ろその反応は正しいといえよう。

なぜなら"進化"とは本来、一度してしまったらもう二度と進化前には戻れないのが普通。

それに対しメガシンカは、バトルの間だけの進化……。

これは、今までの"進化"に対する固定概念を覆しているのだ。

レッドが驚くのも無理はない。

レッド「……そんなものが本当にあるのか……？」

レッドは、あまりにも異質なメガシンカの特性に面食らい、その存在を疑心暗鬼してしまう。

だが確かに、とてもではないが言葉だけで信じられることでもあるまい。

勿論グリーンもその事は承知の上。

しかし、後少しでレッドが改心しそうだ。

もしメガシンカに興味を持ち、外の世界へ復帰してくれれば、友人であるグリーンも肩の荷が降りるというもの。

……こで引き下がるわけにはいかない。

グリーンは、"メガシンカ"の存在を裏付ける証拠を持ってして畳み掛ける。

レッドを、この山で"終わらせない"ために……！

グリーン「……レッド」

レッド「？」

グリーン「これを見てくれ」

そう言ってグリーンは唐突に、自身の腕につけられた"腕輪"をレッドに見せつけた。

鈍色に光るその腕輪には、翡翠の輝きを放つ玉がはまっている。

その風貌はどこか威風で、それでいて美しい。

レッド「……おしゃれな腕輪だね」

ピカチュウ「ぴかぴっ！」

レッドは、グリーンの突然の行為に特に戸惑うでもなく、率直にリングの感想を述べた。

グリーン「お、おう……さんきゅ」

グリーン「……じゃなくてッ！」

レッド「？」

一瞬照れかけたグリーンはノリツッコミ。

レッドとピカチュウは、そんなグリーンをきょとんと見る。

グリーン「これはタダの腕輪じゃあねえ」

グリーンはレッドに調子を狂わさせられてしまったが、それでもこれ見よがしに腕輪を掲げてアピール。

なんとかレッドの注意をこの腕輪に引き寄せた。

グリーン「これは"メガリング"ってやつでな」

グリーン「ポケモンを"メガシンカ"させるのに必要な道具なのさ」

レッド「！」

……レッドは勿論驚いた。

その、一見ファッションにしか見えない腕輪が、メガシンカするための必須アイテムだというのだから。

しかし、レッドは……。

……その事について詳しく聞くための時間を、グリーンに"与えられなかった"。


グリーン「でろ、ピジョット！」


ピジョット「ピジョオッ！」


グリーンは突然、ピジョットを繰り出した！

レッド「えっ……！？」

驚愕の連続。

次から次へとグリーンが謎の行動を仕掛けてくる。

レッドにはもはや何がなんだか分からなかった。

これからグリーンは何を始めようというのだろうか。

レッドは状況の把握もできないまま、ただ目の前で繰り広げられている事を見るだけだった。

……そして！


グリーン「……<メガシンカ>ッ！」


レッド「……！」

……グリーンの指先がメガリングの玉に触れたその刹那。

極光の輝きが、レッドとピカチュウの視界を覆った！

レッド「……これは……！？」

ピカチュウ「ピカピッ……！？」

レッド達は目を開けていられない。

目映い光の前では、ただ瞼を閉じて視力を守るしかなかった。

レッド「……………っ」

……そして暫時経ち。

やがて、閃光が止んでいく……。

レッド「……んっ」

レッドは、ゆっくりと目を開けた。

そこに眩しい光が無いことを確認したのち、半分しか開いていない目を完全に解放する。

レッド「……一体何が……」

レッドは辺りを見渡した。

……そして。

レッド「……ッ！？」

……"ソレ"は、すぐに見つかった。

グリーン「……どうだレッド」

グリーン「これが"メガシンカ"だ」

……グリーンの横にいたはずのピジョットは……。

「ピジョォォォッ!!!!!!」

……より、逞しく。

レッド「あ……ああ……」

……より、気高く。

ピカチュウ「……ぴかぁ」

……"進化"していた。

メガピジョット「ピッジョォォアアアッ!!!!!!」

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すこ

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レッド「…」

デデンネ「…」

レッド「……」

デデンネ「……」

レッド「………」

デデンネ「………」

レッド「…………」

デデンネ「…………」

レッド「……………」

デデンネ「今までの点は全部僕のうんこンネ」

レッド「アホかーーー!」

デデンネ「ギエデデンネー!」

支援

支援

支援

支援

支援ありがとうございます！

>>23
デデンネ可愛い！


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


突如として、レッド達の目の前に出現したピジョットの"進化形"。

その勇ましき容貌からは一切の邪心も感じられず、王の如き大いなる威厳を放っている。

このピジョットの精神はひたすらに研ぎ澄まされているようで、極限の寒さに達しているこの場に立っていても全く姿勢が崩れていない。

メガピジョット「…………ピジョッ」

レッド「！」

……ふと、ピジョットの眼光に照らされたレッド。

レッド「………………っ」

……レッドの右足が僅かに後ずさる。

数多のポケモン達と触れあってきた彼でさえ、その鋭さには思わず戦かざるを得なかった。

グリーン「マジだったろ？」

レッド「……うん」

グリーンはドヤ顔だった。

そしてレッドは、初めて見たメガシンカに度肝を抜かれていた。

レッド「……圧巻だなあ」

心からの感想。

彼にとって"メガシンカ"とは未踏の境地。

このまま山奥で外界と切り離された生活を送っていたら絶対に知り得なかった世界。

レッド「………………」

レッドは、ピジョットの凛々しき姿に呆然と目を奪われていた。

メガピジョット「ピジョォォォ……」

レッド「………………」

レッドの瞳は今、とても純粋な輝きに満ちている。

まるで、昔日の彼のように。

あの時はレッドも、無垢なる夢を見ていた。

レッド「………………」


レッドは少しずつ、思い出していく。

ポケモン達と過ごした冒険の日々を。


ゆっくりと、思い出していく。

ライバルと競い合った奮闘の毎日を。


そして、確実に思い出していく。

チャンピオンに挑んだ、激昂の瞬間を。


グリーン「……俺はこれからカロスへと旅立つ」

レッド「！」

グリーンが放っていく言葉の一つ一つが、あたかもパズルピースのようにレッドの眠れる記憶を埋めていく。


グリーン「お前も来い、レッド」

呼び起こされる、闘争本能。


グリーン「お前はここで終わらねえ」

蘇っていく、生存本能。


グリーン「俺と一緒にカロスに行って……」

グリーン「……また、あの時のように……」


……あの時のように……。


グリーン「……バカみたいに、張り合おうぜ」


……バカみたいに……。


グリーン「ライバル同士として」


……ライバル同士として……！

レッド「…………ッ!!!!!!」


……長きに渡ってレッドを縛っていた鎖。

それが、今……。


レッド「………………」


レッド「……分かった」


……ついに。


レッド「……行こう」

レッド「……ポケモン達と、一緒に……な」


……解き放たれた！

…………

……


……ある者はある時、レッドとそのポケモン達を、畏敬を込めてこう呼んだ。

"原点にして頂点"……と。

しかし、レッドは今この瞬間をもって、その座から降りた。

新たなるポケモンの可能性"メガシンカ"を追うために。

ゼロから、また踏み出し始める。

レッド「……"メガシンカ"……か」

レッド「……なんだか久しぶりだな、この感覚」

レッド「お前もそうだろ？ピカチュウ」

ピカチュウ「ピカピッ！」

……彼らはまた冒険の旅に出る。

初心に帰った気持ちで。

グリーン「そうと決まれば、こんなトコさっさと下山しようぜ」

グリーン「寒くていけねえや、ここは」

何重にも着てきたコートをより深く羽織るグリーン。

レッド達はその様をみて笑った。

レッド「はは、グリーンは寒がりだなあ」

ピカチュウ「ピカァー」

グリーン「いや俺は正常だから。お前らが異常なんだよ」

グリーンはツッコんだが、レッド達は気にせずそのまま下山し始めた。

グリーンは、釈然としないままそれに続く。

レッド「カロス地方……どんな所なんだろう」

レッド「……楽しみ……だな」

ピカチュウ「ピカピッ！」

レッド「はは、ピカチュウは元気だなあ」

……少年とポケモン。

あの日目指したあの夢。

それは、今と形は違えど。

その心は、きっとあの時と同じ。

レッド「……もう少しだけ、頑張ってみるか」

ポケモントレーナー"レッド"……ここに復活！

これは支援不可避

パーティはHGSSのレッドなのかな？

支援ゴ

面白い
支援するしかない

支援

支援
レッドの手持ち教えて、九割わかっちゃいるが一応

これは支援以外ありえない

支援
ゴールドって言ってたし初代じゃないの

>>42
ヒビキの事ゴールドいう人もおんで

>>40
HGSSなら初代御三家最終進化、ラプラス、カビゴン、ピカチュウ

支援ありがとうございます！

>>36、>>40
レッドさんの手持ちは今日投稿分で少し明らかにします。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……レッドがついに、長年居座ったシロガネ山を下り、再び冒険の旅に出ることを決意した運命の日。

そして、その日の夜も明け……。


……翌日となった。

今日、レッドとグリーンはカロス地方へと旅立つ。

新たなるポケモンの力……"メガシンカ"を求めて。

…………

……


レッド「……クチバシティか。懐かしいなぁ」

ピカチュウ「ピカー」

ほのかに潮の香りが漂う港町、"クチバシティ"。

カントーで唯一、外国船が行き交う船着き場がある所。

他の地方からやって来た人々で、港前の広場は常に賑やか。

活気に溢れる、カントーの玄関。

なぜレッド達はここに来たかといえば……勿論。

ここからカロス地方へ行く船に乗るためだ。

レッド達は海を渡るのである。

レッド「なんだか、海を見るのも随分久々な気がするなあ」

レッドは、視界にずうっと広がっている地平線を眺めながら呟いた。

グリーン「ずっとあの山の中で引きこもってたもんな、お前」

レッド「言わないで」

嫌味にも聞こえるグリーンのツッコミに、レッドも思わず耳を塞ぐ。

グリーン「ははっ」

……と、そんな他愛もない談笑をしている間に。


レッド「……あっ」

グリーン「……おっ」


汽笛の音が、段々と近づいてきた。

"ボォーー"……重低音がクチバシティに響き渡る。

レッド達は反射的に音のした方へと目をやった。

するとそこにあったのは……。


……一隻の、巨大な船。

その名は"サント・アンヌ号"。

その歴史、今年で20周年。

カントー地方が誇る、世界でも有数の豪華客船だ。

白を基調としたデザインは、シンプルな魅力を醸し出していて、背景の海にとてもよく映える。

そしてなにより圧巻なのは、その規模。

あの中には幾つもの客室があり、合計815室もあるのだとか。

レッドもグリーンも初めてこれを見たときは、そのあまりの大きさに驚いて腰を抜かしたほど。

そういう意味では、このサント・アンヌ号はレッド達にとって思い出の船と言えるだろう。

本日は、これに乗ってカロスを目指す。

……そして、サント・アンヌ号はついにクチバシティの船着き場に到着し、さっそく港まで橋が架けられる。

すると、船の中から続々と乗客達が下りてきた。

そして同時に、船着き場でこの時を待ちわびていた人々が殺到し乗船していく。

レッド達もそろそろ、乗り遅れぬ内に行かねばならない。

グリーン「……行くか！」

レッド「そうだね」

ピカチュウ「ピカッ！」

……踵を返した一行。


その一歩は始まりの証。


これから幕をあげる壮大な旅の序章。


全てはこの歩みから始動する。


各々の想いをそれぞれの胸に秘め。


沸き上がる勇気と共に。

レッド「……いよいよ、か」

グリーン「……ああ」

……サント・アンヌ号に、足を踏み入れた。

そして、汽笛は再び鈍く鳴る。

ついに出港の時。

未来ある若者達を乗せた船は、メガシンカ発祥の大地"カロス地方"へと向かう。

レッドは、少しずつ視界から消えていくカントー地方を窓から見届けて。

レッド「………………」

レッド(……またな)

……小さく手をふり、心のなかで別れを告げた……。

………………

………


グリーン「……そうだレッド」

レッド「？」


グリーン「今から、お互いどんなポケモン連れてきたのか教え合わねえか？」

レッド「え……」

……船内での、唐突な質問だった。

カントー地方を後にした余韻がまだ残るなかで、レッドはグリーンの問いに少し困惑する。

レッド「突然どうしたの？」

グリーン「いやさ、お前とは会うことはあってもポケモンバトルをすることはここ最近なかったからな」

グリーン「あれからパーティ変わったのかなー、なんてな」

レッド「ふぅん……」

……だが確かに、ライバルがどんなポケモンを連れてきたのか気になってしまうのは、ポケモントレーナーの性である。

レッドも、そんなグリーンの気持ちは分からなくもない。

レッド「……まあ、いいよ」

否定する理由も特にないし、雑談にはなるので了承した。

グリーン「そうこなくちゃな」

グリーン「じゃあ、まずは俺の手持ちから言ってくぜ」

グリーンは少し息を吸った後、言葉を続けた。

グリーン「まずは、シロガネ山で見せた"ピジョット"」

グリーン「んで、バンギラス、ウインディ、カイリキー、ギャラドス……」

……いずれも強力なポケモンであるが……

レッド(前と変わってないじゃん)

……そう。

ここまでは、いつもグリーンが決まって連れてるパーティである。

最後にレッドと戦った時も、このような編成であった。

そこへ"ドサイドン"というポケモンが入れば、6体が完全に一致するが……。

グリーン「……そして」

……次にグリーンが挙げた名前は。

……レッドの予想を裏切るものであった。


グリーン「……"サザンドラ"だ」

レッド「……！？」

流れが変わった。

ここまでカントー・ジョウト地方に生息するポケモン達だけで固められていたグリーンのパーティに、明らかに一際存在感を放っているポケモンが一匹。

サザンドラは、カントー・ジョウトから遠く離れた"イッシュ地方"という所に生息しているドラゴンポケモン。

全ポケモンの中で、最も進化させるのに根気を要すると言われるほど育てるのが大変なポケモンだが、その強さは折り紙つき。

ドラゴンタイプだけではなく悪タイプの技も使いこなせるので、カバーできる範囲がかなり広い。

レッド「…………へぇー」

いつの間にそんなのを捕まえてたのか、と、思わず感心。

そしてレッドは、サザンドラの加入によってますます旅が楽しみになってきた。

グリーン「へへ、驚いたろ」

レッド「まあね」

グリーンは、やはりドヤ顔だった。

グリーン「さ、次はお前の番だぜ」

レッド「分かった」

手持ちを晒すよう促されたレッドは、頭の中で少し情報を整理して……。

……そして纏めあげてから、話し始めた。

レッド「俺が連れてきたのは、まずピカチュウと」

ピカチュウ「ぴかぴっ！」

レッド「で、リザードンと、フシギバナと、カメックスだ」

……………。

……………。

グリーン「……ん？」

レッド「えっ？」


グリーン「後の二匹は？」

ピカチュウ、リザードン、フシギバナ、カメックス……。

……ここまで4匹。

だが、トレーナーが連れてけるポケモンの最大数は6匹。

駆け出しトレーナーや、ある程度手加減しなくてはならないジムリーダーとかならまだしも、レッドというポケモントレーナーが6匹フルで持ってこないのは理にかなっていない。

グリーンは確認も含めて、もう一度聞き直した。

……が、返ってきた答えは……。

レッド「……いや、こんだけだよ？」

……ますます意味が分からない。

レッドはまだ沢山の強力なポケモンを持っているというのに、なぜそれらを置いてきたのか。

グリーン「いや、だから……」

グリーンは再び聞こうとしたが……。

……その前に口を開いたのは、レッドだった。

レッド「……せっかくカロスに行くんだ」

レッド「メガシンカだけじゃなくてさ」

レッド「まだ見ぬポケモンも、捕まえてみたいと思ってな」

……つまり、レッドが2匹連れてこなかったのはそういうことだ。

あとの2枠は、カロス地方で新しく捕まえるポケモンのためにとっておいたというわけである。

グリーン「……なるほどな」

疑問を抱いていたグリーンも、ここでやっと納得。

謎が晴れてすっきりしたのか、小さく笑みを浮かべた。

レッド「ホントにこんなワクワクした気持ちは久しぶりなんだ」

レッド「"はやく着いてくれないかな"って……つい焦っちゃうくらいに、ワクワクしてる」

グリーン「……そうか」

……サント・アンヌ号は海を着実に進んでいく。


今はまだ、途方もなきスカイラインだけしか見えぬが。


これから見るであろう景色はきっと素晴らしいはず。


憧れの場所は、もうすぐだ……。

支援

ｼｴﾝﾈ