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SS

【SS】ピィ「メテノ君大好きっ!」

 ▼ 1 ガラティオス@コインケース 17/01/15 20:16:48 ID:5cJs5Ac. [1/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピィ「ううっ、寒い寒い……」


 テンガン山、外壁。

 常に雪の覆う、白銀の世界。

 神話が息づくその山では、しかし、厳しい寒さに命を落とす者も多い。

それは、例え野生ポケモンでも例外ではない。

エサをとれなくなったポケモンは、寒さに身動きを取れなくなったまま、あられによるダメージを受け、そのまま死に至ってしまう事もあるという。

 これは、そんな厳しい自然の中で起きた、奇跡の物語。
 ▼ 5 ルロック@トレジャーメール 17/01/15 20:18:38 ID:5cJs5Ac. [2/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メテノ「……君は、色違いなんだ」

 これが、彼の最初の言葉。

 あたしは、愕然として首を横に振った。

緊張と照れで真っ赤になっているだけだ。もともとはただのピィ。

色違いのポケモンをあたしは1匹知っているけれど、異分子であるからというだけでここから爪弾きにされてしまった。

 それを知っているから、そんな風に、バイアスを掛けてあたしを見て欲しくない。


メテノ「え、違うの」

ピィ「絶対違うよ! ちょっと、今体が熱くて……」


 慌てて否定すると、メテノ君は、落胆と安堵が入り混じった、微妙な表情を浮かべた。
 ▼ 6 ァイアロー@しろぼんぐり 17/01/15 20:19:34 ID:5cJs5Ac. [3/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピィ「ところで……」

メテノ「何」

ピィ「君、ホントはこんなとこにいないよね」

メテノ「まあね。僕、捨てられてさ。僕だけじゃない。もっと、これからこの山に僕たちメテノが押し寄せる」

ピィ「へ? どういう事?」

メテノ「色違いが、生まれないから」


 ――厳選。その言葉が持つ裏の意味を知ったのは、この日だった。
 ▼ 7 タモン@グラスシード 17/01/15 20:20:05 ID:5cJs5Ac. [4/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピィ「そんな、人間って――」


 あたしは、あまりに身勝手な行いに憤りながら、メテノ君に声を掛けた。


ピィ「ねえ、一緒に暮らさない? お願い、あなたが、心配なの」

メテノ「大丈夫だよ。僕、空気中の塵を食べれば充分だし」

ピィ「でも、ここは、寒いよ。飛行タイプでしょ、寒いの辛くない?」

メテノ「それは……」

ピィ「あたしたちの住処に来れば、寒さもしのげるよ」
 ▼ 8 ンペルト@エレベータのキー 17/01/15 20:20:37 ID:5cJs5Ac. [5/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メテノ「でも、悪いよ」

ピィ「気にしないで。困ってるポケモンがいたら助けなきゃ。食べたり食べられたりは当然あるけど、でも、なるべく木の実食べて、分け合って。

    あたし、助けたいの。あなたを、助けたいの」


 メテノ君に近付きたい、という打算も、もちろんある。これを否定したら、あたしはただの嘘吐きだ。

けれど、それだけでない、何かの感情が、あたしの中に生まれていた。


メテノ「そこまで言ってくれるなら、お言葉に甘えて」


 その言葉を聞いた時、あたしは短い腕でガッツポーズをした。
 ▼ 9 ーバーン@どくのジュエル 17/01/15 20:21:09 ID:5cJs5Ac. [6/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 幸い、メテノ君はパパとママのお眼鏡にも適ったらしく、すんなり受け入れられた。

食事が不要、というのも大きかったように思う。とにかく、ポケ柄的にも、実際問題的にも、メテノ君が家族になる事に、何の問題もなかった。


メテノ「ありがとうございます、こんな僕のために」

ママ「いいのよメテノ君。なんもないけど、好きにしてくれて」

パパ「ピィ。メテノ君にこう言ったんだ。しっかり仲良くしてあげるんだぞ」

ピィ「もっちろん!」


 あたしは、メテノ君を見て、頬をまた赤く染めた。


ピィ「あっ、これは違うから! パパ、ママ、違うからね!」


 クスクス笑う両親に向かって、あたしは叫ぶ。
 ▼ 10 グトリオ@りゅうのウロコ 17/01/15 20:21:40 ID:5cJs5Ac. [7/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 さて、と呟いて、あたしはメテノ君を見据えた。


ピィ「まず、テンガン山の案内でもしよっか」


 もともと天然の迷路だというのに、さらにニンゲンの手も加わったせいで、長年住んでいるあたしですらその全貌は把握出来ていない。

けれど、生きていくのに必要な分のマップは頭に叩き込まれている。

その分を、まずは説明しなければならない。


ピィ「ホントに複雑だから、覚悟してね」
 ▼ 11 ックウザ@ジメンZ 17/01/15 20:22:34 ID:5cJs5Ac. [8/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 テンガン山の、洞窟から外に出ると、空にはキラキラと星が瞬いていた。

 空気の冷たいこの一帯では、澄んだ空気の下、輝く星空を堪能できる。


ピィ「まずここが木の実畑。美味しいよ、食べる?」

メテノ「いや、いい」


 案内という関係上外せない場所で、けれどメテノ君は、上の空だった。

空の光景に見とれている。

あたしも彼の気持ちがわかったから、その彼に声を掛ける。


ピィ「綺麗でしょ。星空。でも、もっと凄いとこがあるんだよ」


 この程度で満足してもらっては困る。あたしは、星を眺める事に関してはかなりの自信があるのだ。


メテノ「そうなんだ」
 ▼ 12 ッコウガ@はいぶくろ 17/01/15 20:23:09 ID:5cJs5Ac. [9/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピィ「ほら、お楽しみは後にとっておこうよ。まずは案内だよ」


 それからあたしは、地下の霧に包まれた湖、熱を出した時用の雪を調達するルート、その他さまざまな「生活の知恵」を授け、それから言った。


ピィ「んじゃ、行こう。星空を眺めに」
 ▼ 13 ンクルス@プテラナイト 17/01/15 20:23:40 ID:5cJs5Ac. [10/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 あたしは、丸岩を飛び越え、細い道を進んだ。

と、不意に開けた空間に出る。

そこを上目指して歩き――


メテノ「上行くのめんどくさくない? よかったら、乗る? 僕に」

ピィ「えっ、いいの?」

メテノ「うん。助け合い、でしょ?」


 お言葉に甘える事にした。

 メテノ君の冷たい殻は、けれど、ともすれば火照ってしまうあたしの体を冷ましてくれる。


ピィ(メテノ君が……こんなに近くに)


 思わず赤面してしまう。ああ、神様、こんな幸せをくださり、あたし、もう死んでしまいそうです……。
 ▼ 14 ガヤンマ@ヒメリのみ 17/01/15 20:24:12 ID:5cJs5Ac. [11/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 メテノ君に乗りかかり、そしてメテノ君は飛び上がる。

あたしの先程までの熱は、驚きに塗り替えられた。


ピィ「うわっ、凄い凄い!」

メテノ「落ちないように、気を付けて。あっちから光が見えるけど……」

ピィ「そっちで合ってるよ!」

メテノ「了解」


 加速度的に上昇していく。

今までに感じた事のない快感が、あたしを襲った。


ピィ「風きり音……。飛ぶって、こういう事なんだ」


 あたしは、茫然と呟いた。
 ▼ 15 ネコロロ@イナズマカセット 17/01/15 20:24:54 ID:5cJs5Ac. [12/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 メテノ君と体を密着させている、という事実を不意に思い出し、あたしは慌ててメテノ君から目を逸らした。

 空気が、急激に冷えて行く。

外の風が聞こえて来た。


メテノ「ううっ、寒」

ピィ「あたしも……。でも、寒いのなんて忘れるぐらい綺麗だから」


 外に出る。落ち窪んだ場所で、ここは、少し狭い。

 そこを抜け出し、ようやくあたしのお気に入りスポットへ到達した。


ピィ「ようこそ」
 ▼ 16 レビィ@きんりょくのハネ 17/01/15 20:25:27 ID:5cJs5Ac. [13/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 ちょうど、あられもやんでいる。

月も今日はなく、満天の星が浮かんでいるのを、あたしたちはただただ眺められた。

強く輝きを放つ一等星の周り、微かに息をする6等星。

白銀の闇夜で、煌めく星は、どこまでも美しかった。


メテノ「凄い……」


メテノ君も、ただただ息を呑んでいた。
 ▼ 17 ツハニー@ダイゴへのてがみ 17/01/15 20:26:03 ID:5cJs5Ac. [14/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピィ「あ、雪……」


 はらはらと、雪が舞い始める。

星と折り重なり、淡い光を放つ雪。

けれど、雪が降ったら、戻らないといけない。

すぐにあられに変わり、体力を奪って行くからだ。


ピィ「戻ろ、メテノ君」


 そう声を掛けた瞬間、メテノが被せるように言った。


メテノ「ねえ、あれ」


 メテノ君が示した先に、すっと横切る流れ星。

あたしは、それを目に焼き付けた。
 ▼ 18 ルネアス@あまいミツ 17/01/15 20:26:54 ID:5cJs5Ac. [15/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピィ「願い事、した?」

メテノ「秘密」


 戻りがてら、あたしたちはこんな話をした。


ピィ「あたしはね、間に合わなかったんだ」

メテノ「だろうね。ごめん。もっと早く気付けてれば」

ピィ「いや、もっと早くって無理でしょ。流れ星なんて、ホント一瞬なんだもん」

メテノ「それもそうだけど。まあ、流れ星に願いを掛けても、何が変わる訳でもないだろうしね」

ピィ「でも、したんでしょ? 秘密って事は」

メテノ「まあね。してもしなくても一緒なら、してもいいかなって」

ピィ「ふふ」


 思わず、あたしは笑った。

なんだか、凄くいい。メテノ君、凄くいい。
 ▼ 19 トベトン@チーゴのみ 17/01/15 20:27:37 ID:5cJs5Ac. [16/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――


 これが、数か月前の思い出。

ピィは、ともすれば零れそうになる涙をグッと堪え、歩き続ける。

住処を追い出され、手に残るメテノの殻以外、全てを失い。

けれど、ピィの足は、迷いなく、ある場所を目指していた。


ピィ「大丈夫。あたしは、死なないから」


 ふと、耳元に声を感じた。

振り返っても、誰もいない。

風の音に、彼女は、何かを探した。

 開発。ニンゲンにとってもまごう事なき迷宮であるテンガン山を貫くトンネルを建設する計画。

それは、そこに住むポケモンにも、容赦なく牙を剥く。

彼女は、住処を奪われる。
 ▼ 20 ガジュカイン@あかいかけら 17/01/15 20:28:17 ID:5cJs5Ac. [17/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 出会いから数か月、開発が始まる前の事。

 ギンガ団が、テンガン山を舞台に、世界を再創生した時の事。

 当然それは、テンガン山に暮らすポケモンにも一定の影響を与えた。

それはもちろん、ピィやメテノにとっても例外ではない。
 ▼ 21 リープ@ヤミラミナイト 17/01/15 20:28:47 ID:5cJs5Ac. [18/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――

 ズン、とお腹に響く振動音で目が覚めた。

なんだなんだとパパとママが騒ぐ。


メテノ「これ……ニンゲンの気配。嫌な予感がする」


 メテノ君がそう呟いたのを、あたしは聞き逃さなかった。


ピィ「ニンゲン……?」

メテノ「うん。危ない。ピィ、逃げた方がいいよ」

ピィ「メテノ君も逃げよ、一緒に」

メテノ「ううん、僕、様子を見るよ」


 あたしは、その発言を一瞬流し掛けた。

そして、すぐに聞き咎めた。


ピィ「ちょっとメテノ君! 何言ってるの逃げようよ! パパ、ママ! 危ないかもしれないんだよ? 逃げないと!」
 ▼ 22 ーロット@きんのいれば 17/01/15 20:28:56 ID:jaNBnJI6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援C
 ▼ 23 リーパー@ブロムヘキシン 17/01/15 20:29:39 ID:5cJs5Ac. [19/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 同意を得るつもりで声を掛けたパパとママ。

 けれど、ママたちは、予想だにしない内容を続けた。


ママ「メテノ君、あなたは……ピィをよろしくお願いします」

パパ「俺たちで、ちょっと様子を見て来るから」

メテノ「……わかりました」

ピィ「パパ、ママ!」

ママ「大丈夫よ。ここでじっとしてて。お母さんたち、こう見えて結構強いのよ?」

パパ「なぁに、心配するな。死にやしない」

ピィ「大丈夫……なの?」

パパ「ああ。危なくなったらすぐ帰って来るさ」


 パパは笑みを浮かべた。そのまま2匹とも住処を離れた。
 ▼ 24 ーダイル@スチールメモリ 17/01/15 20:30:16 ID:5cJs5Ac. [20/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 あたしは恐怖と不安がないまぜになった感情を持て余し、メテノ君に声を掛けた。

 帰って来るよね。

 メテノ君はこう答えた。

 わからない。大丈夫だとは思うけど。

 あたしは、メテノ君に近付いた。

そうしていないと、あたしは押し潰されそうだったから。

メテノ君の殻の冷たさが、あたしを支える。


ピィ「メテノ君」

メテノ「何」

ピィ「ありがとう。あたしといてくれて」


 メテノ君は、心配する事ないよ、とジェスチャーをする。

あたしも笑った。




 ――両親は、帰って来なかった。
 ▼ 25 ウオウ@タラプのみ 17/01/15 20:30:54 ID:5cJs5Ac. [21/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メテノ「捜しに行こう。いくらなんでも遅過ぎる」


 不意に、メテノ君が口火を切った。

 あたしも、薄々感付いてはいた。何かしらの異常が起きたのだ、という事実に。

 けれど、とあたしの中で葛藤が始まる。

 捜し始めてしまうと、それは、事実として定まってしまう。

ここで待っている内は、まだ、信じていられるから。


メテノ「……でも、行くべきだ。ダメならダメで、すぐにこのテンガン山から逃げないといけない。

     どっちみち、ここでじっとしてる選択肢はないよ、もう」


 わかっている。逃げるポケモンたちの姿も、気付いている。隠れた巣から、それを眺めているから。


ピィ「わかった。行こう」


 何よりも、メテノ君が言っている。それだけで、あたしは、信じてしまった。

 あたしたちは、住処を脱出した。
 ▼ 26 ンキー@おとしもの 17/01/15 20:31:41 ID:5cJs5Ac. [22/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 ママもパパも、すぐに見付かった。

緑の体毛を頭からのみ生やした似たような顔の集団に襲われているのだ。

必死に抵抗している。けれど、劣勢なのは間違いなかった。

 あたしは、生唾を飲み込む。その光景を、あたしは到底、見ていられない。


ピィ「どうしよう、どうしようメテノ君」

メテノ「……戦う、しかないよ」

ピィ「でも、あたしが出て行っても、足手まといにしかならないよ……」

メテノ「……僕が行く」

ピィ「えっ、でも……」

メテノ「いいから。任せてよ」


メテノ君は、飛び出して行った。

変なニンゲンたちの前に、飛び出して行った。

そして、メテノ君は、そのまま叫んだ。


メテノ「パワージェム!」
 ▼ 27 イル@ヒールボール 17/01/15 20:32:14 ID:5cJs5Ac. [23/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 不意を突いた攻撃に、敵は怯む。

メテノ君は慌ててこちらに戻り、そしてパパとママを呼んだ。

傷だらけのパパとママはけれど、俊敏に反応し、逃げ戻って来た。


パパ「礼は後だ。逃げるぞっ!」


 皆頷いて、足を速めた。

 しかし――
 ▼ 28 カタンク@ていきけん 17/01/15 20:33:11 ID:5cJs5Ac. [24/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メテノ「うっ」

ピィ「どうしたのメテノ君?!」

メテノ「くろい……まなざし?」


 見ると、ゴルバットが飛んでいた。

その目を、しかとメテノ君に向けて。


メテノ「逃げて、僕なんかを気にせず。こいつなら、倒せる」

パパ「そんな事できる訳――」

メテノ「いいから! 足手まといなんです、傷だらけでいられると」


 メテノ君は強く言う。

パパも察したらしく、「わかった。生きて、生きて帰って来い」と言って、ママとあたしを促した。
 ▼ 29 ュプトル@ギンガだんのカギ 17/01/15 20:33:42 ID:5cJs5Ac. [25/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
けれど、あたしは拒んだ。


ピィ「そんな……そんな事言わないでよっ! 僕なんかなんて、そんな悲しい事言わないでよっ!」

メテノ「パワージェム! ピィ……」


 ゴルバットが、効果抜群の一撃を受け、けれど、しぶとく飛び続ける。


ピィ「お願い、メテノ君。あたし、あなたと残らせて」

メテノ「お願いだから、逃げてよ。ピィ……」

パパ「メテノ君にも迷惑がかかるだろう! 逃げるぞピィ!」


 あたしは、腕を引っ張るパパに抗いきれず、その場から逃げ出した。
 ▼ 30 イティオ@GBプレイヤー 17/01/15 20:34:12 ID:5cJs5Ac. [26/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 巣の中から、メテノ君の無事を祈る。

 戦いの音は、ここまで聞こえてくる。その事が、戦いの激しさを伝えている。

 けれど、と思う。パパとママ、2匹がかりで勝てない相手に、メテノ君が1匹だけで、勝てるのか。

 ――無理に決まっている。

 あたしは、駆け出した。


パパ「おいピィ!」

ピィ「大丈夫だから!」


 制止の声を振り切り、走った。
 ▼ 31 サイハナ@ネコブのみ 17/01/15 20:34:23 ID:GD8eTicA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 32 ワムラー@くろぼんぐり 17/01/15 20:34:42 ID:5cJs5Ac. [27/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 そこで行われていたのは、激しすぎる戦いだった。

 殻を脱ぎ捨て、真っ赤な体躯を晒すメテノ君。赤い帽子を被り、ドダイトスと共に緑髪と戦うニンゲン。

 大地が揺れた。ドダイトスの地震だ。あたしにも、その衝撃が届く。

その揺れは、敵を一掃した。残ったゴルバットやドーミラーを、メテノ君とドダイトスで仕留めて行く。

完勝だった。


ピィ「メテノ君!」

メテノ「やったよ、追い払えた。このニンゲンのお陰でね……」


 メテノ君はそう言って笑った。
 ▼ 33 ッスグマ@ノメルのみ 17/01/15 20:35:51 ID:5cJs5Ac. [28/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドダイトス「ありがとな、協力してくれて」

メテノ「うん。うぐっ……」

ピィ「ねえ、ちょっとメテノ君大丈夫?!」

メテノ「……ダメだ。コアが剥き出しのままだと、僕は、消えてしまう」

メテノ「ええっ?!」


 唐突な告白。あたしは、動揺して、大声をあげてしまう。
 ▼ 34 ネネ@グラシデアのはな 17/01/15 20:36:29 ID:5cJs5Ac. [29/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドダイトス「コウキ、どうだ、図鑑は」


 その届かないであろう声に、けれどコウキと呼ばれたニンゲンが何かを行う。

 機械的な音が響き、コウキは頷いた。


ドダイトス「……ボールに入れれば、回避できるらしい。お前の消滅は」


 ボール。モンスターボール。ニンゲンが生み出した、ある種の兵器だ。

 けれど、それが、メテノ君の命を救うかもしれない。

 あたしは、心を決めた。


メテノ「ピィ……」

ピィ「ねえ、あたし……」
 ▼ 35 メイル@ゴールドスプレー 17/01/15 20:37:23 ID:5cJs5Ac. [30/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告







ピィ「メテノ君大好きっ!」






 ▼ 36 ックラー@けむりだま 17/01/15 20:37:54 ID:5cJs5Ac. [31/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピィ「大好きだから、あなたに死んでほしくないの」

メテノ「大……好き?」

ピィ「うん、あなたの事、大好き。だから、死なないで。自分なんか、なんて言わないで」

メテノ「……本当?」

ピィ「ホントよ! ねえ、メテノ君……」


 目から涙がこぼれ落ちた。別れを察して、あたしは、止まらない。


ピィ「あたし、あなたの事好きだから。

    好きだから、好きだから……」
 ▼ 37 テノ@スピアナイト 17/01/15 20:38:27 ID:5cJs5Ac. [32/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メテノ「僕の願い事。君に好かれたい、だったんだ」


 え、とあたしは顔を上げる。


メテノ「捨てられて、僕は、誰かに愛されたかったんだ。

     君に、愛されたかった」

ピィ「……そう、だったんだ。あたし、ずっと、ずっと……。

    メテノ君。死んじゃいや。ねえ、ドダイトスさん、メテノ君を、捕まえて」

メテノ「僕からも、お願い……ピィがいるから、死にたくない」

ドダイトス「わかってるよ、お二匹さん。おいコウキ」
 ▼ 38 リーザー@ほのおのジュエル 17/01/15 20:39:12 ID:5cJs5Ac. [33/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 ドダイトスはコウキのズボンを引っ張る。

彼は、察したように、ニコリと微笑みながら、頷いた。

その手には、紅白のボール。

それを、メテノ君に軽く押し当てた。


メテノ「かけらを、形見にして」


 それが、別れの言葉だった。
 ▼ 39 カチュウ@カシブのみ 17/01/15 20:39:45 ID:5cJs5Ac. [34/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――


 彼女は、メテノのかけらを拾い集めた。

 それから、彼女は、それを形見に生きて来た。

 ずっと、それを頼っていた。

 そして、テンガン山の開発が始まる。それが、今。

 メテノとの思い出が残る住処が、潰される。

 メテノが戻る場所は、消える。

 ピィは、急いでここを離れようと言う両親に断って、最後に一度、寒空の下、あの場所を目指す。


ピィ「寒い……」


 彼女は、そう愚痴りながら、2匹で星空を眺めたあの場所へ辿り着いた。
 ▼ 40 ソッキー@りゅうのプレート 17/01/15 20:41:02 ID:5cJs5Ac. [35/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピィ「ほら、メテノ君。星だよ」


 手にもつかけらに話し掛ける。

 メテノ君。元気でいる?

 穏やかな目でかけらを眺め、それから、視線を移した。

 星が、綺麗だ。澄み切った空に、瞬く星。

けれど、彼女は、すぐに、その星を眺められなくなってしまう。

涙が、その瞼を覆ったから。


ピィ「メテノ君……」


 ピィは、それを拭き取って、空を見上げ続けた。
 ▼ 41 キノオー@リザードナイトY 17/01/15 20:41:41 ID:5cJs5Ac. [36/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





 ――ねえ、あれ。


 メテノ君が示した先に、すっと横切る流れ星。




 ▼ 42 ワーク@ハートスイーツ 17/01/15 20:42:14 ID:5cJs5Ac. [37/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







【SS】ピィ「メテノ君大好きっ!」 完






 ▼ 43 ガバシャーモ@きちょうなホネ 17/01/15 20:43:26 ID:5cJs5Ac. [38/38] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
お読み下さり、ありがとうございました
質問等ございましたらお気軽にどうぞ

ピィ・ムーン版図鑑
そのシルエットから おほしさまの うまれかわりと しんじられている。
なぜか メテノが だいすき。

メテノ(コア)・ムーン版図鑑
コアが むきだしの ままだと じきに しょうめつ。
いそいで ボールに いれれば いきながらえると いう。
 ▼ 44 マワル@ゴーストZ 17/01/24 09:03:09 ID:XDJa.lwc NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
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