SS スイレン「嘘から出たまこと」with ウソッキー

俺の名前はウソッキー。ポケモンスクール近くの森で、木に擬態して毎日を過ごしている。

自分で言うのもなんだが、俺の擬態の技術は天下一品。

毎日多くの子供がこの森を通るが、気付かれた事は一度もない。

疑っているのか……？ならば、今まさに森に入ってくるあの子供達を使って実証してみせよう。

私の名前はスイレン。趣味といえば、釣りとバルーンの練習。それから、嘘をつく事。

今、私達はスクール横の森の中にいる。

サトシが「今度こそアゴジムシを捕まえる」って意気込んでて、みんなで一日中探したけど結局見つけられなくて……最後にここだけ探してみようって。

いつも明るいサトシもさすがに落ち込んじゃって、ちょっと空気が重い……

こんな時こそ、私の大好きな嘘でみんなを楽しくさせてあげたい……だけど……どんな嘘を……

森……木がいっぱい……ポケモン……嘘……

…………そうだ！

「ねぇ……みんな……」

「どうしたの？スイレン？」

「もしかして、もう帰らなければいけない時間とか……」

「そうなの？もしそうなら、僕送って行くけど。」

「随分遅くなってしまったからな……それが良いだろう。」

「ゴメンな、スイレン。付き合ってもらっちゃって。」

「ううん……そうじゃなくて……みんなに聞いて欲しい事があるの……」

「「「「「？」」」」」

「実はね……誰にも知られてないんだけど、この森にはウソッキーっていう珍しいポケモンが住んでるんだよ……？」

気付かれた事は一度もないと言ったが訂正しよう……この小娘には気付かれていたようだ……

この森で、俺以外のウソッキーを見かけた事は一度もない。

この小娘が言うウソッキーとは間違いなく俺の事だろう。

だが、まだだ……まだ負けた訳ではない。

今この場で、この小娘を欺ききれば……それで俺の勝ちだ……

擬態のスペシャリストとして、この勝負……絶対に負けるわけにはいかない……

「え！？ほんとに！？」

「わたくし、ウソッキーというポケモンは初めて聞きました。」

「ウソッキーかぁ、見てみたいなぁ……。」

「確かに興味はあるが……擬態していると聞くぞ……？見つけられるのか……？」

「どこにいるか分かるのか？スイレン？」

よし、みんなが乗って来てくれた……これで目的はほぼ達成なんだけど、どうせなら最後までやり切らなくちゃ……

ここからの流れは……

適当な木を指差す。

木に向かってハイドロポンプ。

あれ？ただの木じゃん。

ウソッキーがいるっていうのは……嘘です（てへぺろ

もう〜スイレンったら〜

……………………いける……！

「ウソッキーはね……あの木……！」

私は、みんなの真後ろに立つ少し小ぶりな木を指差す。

「これが……？ただの木にしか見えないけどなぁ……」

「わたくしにも、ただの木にしか……」

「僕も……」

「俺もだな……」

「う〜ん……俺もみんなと一緒だ……」

みんなそう言って首をひねる。ただの木なんだから当たり前なんだけど……

「待ってて、今見せてあげる……！」

「アシマリ！ハイドロポンプ！」

ちょっと待て……

今、この小娘は確かに俺を指差した。

俺のこの完璧な擬態を、この小娘は看破したと言うのか……？

しかも、それだけじゃない……

傍にいるアシカに、ハイドロポンプを指示した……

俺に対して、水技を打とうと言うのか……？岩タイプの俺に……？

やめろ……やめてくれ……やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！！

バシャァァァァァァァァァァ！！

ウソッキー「」ドサッ

「あっ……」

※ウソッキーは、この後ちゃんとポケモンセンターに運びました。

〜完〜