【地の文有りSS】バンギラス「俺って、怖いか?」 グレイシア「怖いと思うわよ?」


1 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/04/30 18:47:13 ID:l70cZsRY 名前× NGID× 報告
曇り空を、見上げる。

さっきからの数分で急に空は圧倒的な黒雲に支配されつつあった。

気分は――最悪だ。

俺は、バンギラス。

岩タイプを含む俺は水気になかなか敏感だ。

だから、これからすぐ雨が降る、なんて予測は体が勝手にしてくれる。

ぽつり、と前に伸ばしてあった手に水が一滴。

それらはコラッタ算式、いやそれ以上のスピードで、空間を支配する。

住居である洞窟から手を伸ばしていただけの俺は手より先が濡れることはなかった。

もともと、雨くらいなら濡れても体が重くなるだけなのだが。

ザアアアアァァァァ……、と雨が打ち付ける音は、他人事のようにBGM以上のものとして耳には入ってこない。

そんなものはどうでもいいくらい俺は憂鬱だった。
145 : 況雑記◆Ju6JKuHffQ 17/06/25 22:36:03 ID:PgesFyRY 名前× NGID× 報告
【ほんとどうでもいいです無視推奨】
本当は今日ごっそり書こうと思っていたのですが
勉強→疲れてグダる
を繰り返していたら書けませんでした申し訳ない
一週間で13ってどう考えても少ないですよね……?

あとは自分で開催予定次のSS企画に向けて書こうかと構想を固めるもこっちを書いていると終わるというジレンマ(勉強も入れてトリレンマ?)
(無視推奨なら書くなのツッコミは厳禁の方向で)
146 : RIVER◆zFLCCAWaiw 17/06/26 11:31:34 ID:PHk3ea7o 名前× NGID× m 報告
(企画って夏休みらへんでしたっけ?)

支援
147 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/26 18:27:34 ID:eJsowa.A 名前× NGID× m 報告
>>146
(Yes! 夏休み真っ盛りです)
148 : オキシス@くっつきバリ 17/06/27 05:59:23 ID:339XdSC2 [s] 名前× NGID× m 報告
支援
149 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/02 20:59:03 ID:d20FXjoU [1/7] 名前× NGID× 報告
ミノマダムが叫ぶが早いが、私の視界を緑が埋め尽くす。

あまりにも唐突で、近距離も相まって抵抗するのは不可能に近かった。

あからさまに攻撃の意思を持ったそれは私の体を切りつけて無数の生傷を作っていく。

――これは……リーフストームね。

全身の痛みを堪えながら、私は口元に意識を集中した。

集めた冷気を前方に撒き散らす。

木の葉の大群に、氷雪混じりの突風が衝突する。

勢いの差は明らか。

一瞬で木の葉たちは失速した。
150 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/02 21:05:30 ID:d20FXjoU [2/7] 名前× NGID× 報告
「まぁ! 攻撃してきたわ! やっぱり悪者なのね……!!」

(頭おかしいんじゃないの? 脳みそあるのかしら)

しかし、口に出してしまえば勘違いは完璧なものとなるので、かろうじて堪える。

「攻撃してきたのはあなたでしょう」

「あ、あなたが近づいてくるから悪いのです!」

「そもそも、私は相殺しかしていないはずよ」

「何をふざけたことを! 私の大事なミノが凍ってしまっているのが見えないのですか!?」

目を凝らして見ると、下の方の葉っぱが霜がついたように凍っていた。

「その程度。私は傷だらけなのだけれど」

「悪者なのだから当然ですわ!」

私は諦めることにした。

自分は攻撃しても相手が悪者だからよくて、ちょっと凍った程度で糾弾するしてくるようなやつだ。

どう考えても頭が悪……よろしくない。
151 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/02 21:07:41 ID:d20FXjoU [3/7] 名前× NGID× 報告
嫌気がさした、というか軽くイラっとした。

少し本人へ八つ当たりでもさせてもらおうかしら。

「……ふふふ。よく見抜けたわね、その悪い頭と腐った目で」

「な、なんですって!?」

「喋るんじゃないわよ。不快だわ。黙ってちょうだい」

「や、やっぱり悪者じゃないですの!!」

「喋るな、って言ったの聞こえなかったのかしら。仕方ないわね、その小さな頭には綿が詰まっているんだもの」

「なんて極悪な……!」

「これでも食らって黙りなさい!」

こっそり集めておいた冷気を一気にミノマダムの真ん中へと放出する。

れいとうビーム。私が出せる最速の技。

ミノマダムは抵抗もできずに氷漬けになった。

溶かすための炎技もミノマダムでは弱点で使えないし、溶かすまでに苦労するだろう。

いい気味だ。

1つ嘲笑して、私はその場を離れた。
152 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/02 21:08:27 ID:d20FXjoU [4/7] 名前× NGID× 報告
「ねぇ、あのポケモンって」

「グレイシア、よね」

「グレイシアってこの前バンギラスが攫ってたっていう?」

「そうそう。恐喝に続いて何するつもりなのかしら」

「分からないけど……グレイシアは見た目可愛いし…………っていうことも」

「あー、あるかもしれないわね」

さっきから、木のざわめきに混じってささやき声が聞こえてくる。

私は足を止め、声のした方向をにらみつけた。

エルフーンとドレディアがわざとらしく目をそらしてそそくさとどこかへ行った。

「はぁ……」

今日何度目とも分からないため息をつく。

「なんであいつがこんなこと言われているのよ……」

小声でそう呟きつつも、理由は分かっていた。
153 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/02 21:09:05 ID:d20FXjoU [5/7] 名前× NGID× 報告
それは、自分。

ひそひそと話すのを聞いている限りだと、必ず私の名前が入っている。

つまり、バンギラスが色々言われている原因の一端は私が持っているのではないのか。

迷惑をかけていることを改めて認識してしまうと、もう頭はブルーな気持ちで埋め尽くされる。

立ち止まって、空を見上げる。

相変わらず空は太陽の光なんてかけらもないどん曇り。

しかし、雲の色から見ても、空気の湿度から見ても雨は降りそうにない。

いっそ雨が降ってくれたら、とそう思った。

私は上を向いたまま大きく息を吸い込んだ。

「――〜〜♪」

目を閉じ、ゆっくりと、歌い始める。
154 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/02 21:09:41 ID:d20FXjoU [6/7] 名前× NGID× 報告
言葉の一つ一つを発するごとに、空気が湿っていく。

なおも声を出しながら、空を見上げる。

さっきまで灰色一色だった空が圧倒的な黒雲に支配されていく。

ぽつり、と見上げていた額に水が一滴。

それらはコラッタ算式、いやそれ以上のスピードで、空間を埋め尽くした。

ザアアアアァァァァ……、と雨が木々の葉を打ち付ける音をBGMに、歌は終わりへと向かう。

「♪〜〜〜…………」

そして、雨音だけを取り残して他の音が消える。

雨が背中を打ち、体温を奪っていく。

私はなすがままにただ呆然としていた。

――これからどこに行こうか。

あの洞窟へ戻る、なんて申し訳なくてできない。

しかし、他に行くあてはない。

でも、戻るのは……。

私は、ループする思考を放棄してその場に立ち尽くした。
155 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/02 21:10:34 ID:d20FXjoU [7/7] 名前× NGID× 報告
「…………あ、れ……?」

気づけば私は、誰もいないあの洞窟の前に立っていた。

何故ここに来たのかわからない。

何も考えなかった結果、無意識のうちにここへ来てしまったのだろうか。

これではまた迷惑をかけてしまう。

しかし、ここで安心を求めている自分も確かにいた。

迷惑をかけると分かっていつつ、やっぱりここに戻って来た自分もいたはずだ。

自分勝手で、わがままでしかない行動。

「……最低ね」

嘲笑しながら呟いた言葉は、正確に自分自身の心をえぐる。

引き返す、という選択肢もまだあったはずなのに、私はそのまま洞窟へ入った。

体を震わせて水気を飛ばす。

そのまま私は崩れ落ちるように壁の端に横たわった。

奪われた体温を少しでも取り戻そうと、体を丸める。

そんな全身を脱力できる格好では、襲い来る眠気に耐えることなんて出来なかった。
156 : ンカラス@ドラゴンZ 17/07/02 21:17:03 ID:hU3pnT3s [s] 名前× NGID× m 報告
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157 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/09 21:00:41 ID:GdLBp3Ks [1/4] 名前× NGID× 報告
「おい、起きろ」

耳に突き刺さる、短くて大きな声。

たまらず私は飛び起きる。

すぐ目の前にはバンギラスの顔。

「っ! …………?」

一瞬自分の口元が綻ぶのを感じた。

しかし、バンギラスのこちらを睨みつけるような険しい表情を見て、笑みなんてものは跡形もなく消え去った。

「……な、何よ」

「出て行け」

「………………っ!?」

私は思わず息を詰まらせた。

心の奥底で予想はしていたのに、それでも信じられない言葉。

冗談ならそうだと早く言って欲しい。
158 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/09 21:01:00 ID:GdLBp3Ks [2/4] 名前× NGID× 報告
「聞こえなかったか? 早く出ていってくれ」

バンギラスは最大限怒りを抑えている風の声で私に迫る。

「……突然、なんで……?」

「見えねぇのか?」

「見える……?」

私はバンギラスの体を目を凝らして見た。

私と同じように、全身に小さな傷が走っている。

「これ、は……?」

「お前のせいだよ。分からねぇのか」

私は、はっと思い出した。

もちろん、分からないはずがない。

さっきミノマダムを氷漬けにしてしまったせいで、更に悪評が広まってしまったのだろう。

「だ、大丈夫……なの?」

「大丈夫もなにもねぇだろうが!」

バンギラスが声を張り上げ怒鳴った。
159 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/09 21:01:33 ID:GdLBp3Ks [3/4] 名前× NGID× 報告
空気がビリビリと震える。

グラードンにのしかかられるような圧倒的威圧感に、私は萎縮するしかなかった。

「っ……! でも……」

舌が動かない。

次の言葉を私が出すよりも先に、バンギラスは冷たく突き放してくる。

「知らん。早く出て行ってくれ」

「…………分かったわ、分かったわよ……っ!」

もうこれ以上は無理だ、と思った。

口の中を小さく噛んで身体の痛みをこらえ、脚を洞窟の外へ伸ばす。

頭をを振って躊躇を振り払う。
160 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/09 21:02:02 ID:GdLBp3Ks [4/4] 名前× NGID× 報告
そうして足早に洞窟から出て、一歩、二歩。

足が止まった。

早く離れないと、と思っているのに、足が動かない。

地面に顔を向けると、足元に一つ雫が落ちた。

地面に小さなシミができる。

(泣いてる……? なんで……)

振り払っても、すぐにまた視界がぼやけてしまう。

どうせ自分でも出て行ったほうがいいと思っていたから、丁度いいはずなのに。

いくら自分を説得してみても、目からは延々と涙が溢れては顔を伝う。

これ以上動かなかったら、もう動けないかもしれない……。

私は震える脚を無理やり動かして、濡れた地面を踏みつける。

地面を濡らし、その地面を踏みながら、私は走った。
161 : ッカニン@フライングメモリ 17/07/10 13:08:08 ID:oH8pXCYI [s] 名前× NGID× m 報告
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162 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/16 20:02:46 ID:y58mIZYo [1/5] 名前× NGID× 報告
気がつけば、光が全くない鬱蒼とした森にいた。

狂ったようにうねっている、不気味な木々。

西日だった太陽はいつの間にかいなくなっていて、中途半端に斜めの月光は全て木が遮ってしまっている。

当然こんな場所、知っているわけもない。

疲れなのか足に力が入らなくなって、私はその場にへたり込んだ。

下は湿った感触が気持ち悪い土だったが、そんなこと気にしてもいられなかった。

何もすることがなくて目を瞬かせていると、涙がとっくに乾いていることに気づく。

拭きすらしなかったせいで、顔の一部で涙が乾いた後の感触がこびりついている。

手近な木まで動いて、寄りかかる。
163 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/16 20:03:16 ID:y58mIZYo [2/5] 名前× NGID× 報告
はぁ……と溜息をついた瞬間、地面が激しく揺れ始めた。

動くことも出来ないような強い横揺れ。

私は伏せることくらいしかできなかった。

(なによこれ、早く止みなさいよ……!)

しかし揺れは一向に収まる気配はなく、それどころかその強さをどんどん増していく。

そんな中、私は意識が遠ざかっているのを感じた。

靄が掛かったように思考が出来なくなる。

そして、伏せていて元からほとんどなかった私の視界の光が完全に消え去った。
164 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/16 20:03:32 ID:y58mIZYo [3/5] 名前× NGID× 報告
「おい、グレイシア! 大丈夫か?」

体が揺さぶられる振動で、私は意識を取り戻した。

半目を開けて目の前の様子を確認する。

瞬間、頭にかかって思考を邪魔していたもやは綺麗さっぱり消え去った。

「……あなた、なんでここに?」

「居ちゃ悪いか。ここは俺の住処なんだが」

「すみか……?」

「んなことはどうでもいい。その傷はどうしたんだ?」

「…………これは」

「別に無理に聞こうとはしないが」

「……いえ。やっぱり話しておかないとダメね」
165 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/16 20:03:49 ID:y58mIZYo [4/5] 名前× NGID× 報告
私は時々考えて思い出しながら、経緯を説明した。

「……すまんな。迷惑をかけた」

「あなたのせいじゃないわ。それに、迷惑をかけたのは私も同じ」

「ん? お前は何かしたのか?」

「ミノマダムを凍らせちゃったもの。あれでは悪評が加速するわ」

「あんなやつは凍らされて当然だ。どうでもいい」

バンギラスが一緒に怒ってくれたのが、とても心強い。

「……ところで。あなたは怪我していたりしないの?」

さっきからバンギラスの体を見る限り、傷の類は全く見つからない。

さっき起きた時はあったのに。

「俺はな。とりあえず自分を心配しろ」

「え、えぇ。私は大丈夫だけれど……」

場所が洞窟に戻っていて、バンギラスの傷もなくなっている。

となると、可能性は。

(なんだ、夢だったのね。…………良かった)
166 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/16 20:04:49 ID:y58mIZYo [5/5] 名前× NGID× 報告
今日はここまでです
少なすぎるとは思いつつ時間が取れない悲しみ
しかし、祝日っていいですね
明日も更新できるかもしれません


喧嘩する夢を夢占いにかけると……?
(↑このレスはこれが言いたかった)
167 : ーみん 17/07/16 21:18:00 ID:cHqCo1ok 名前× NGID× 報告
支援
168 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:15:07 ID:I3LcFDhQ [1/9] 名前× NGID× 報告
 ◇ ◇ ◇

せっかく傷が治りかけて来たのにまた作って来やがって……。

このままだと大事なふっかつそうがまた切れちまうじゃねえか。

「本当に大丈夫なのか? 念のため使っとけ」

脚の傷を気にするグレイシアの前にふっかつそうを置く。

「え、いいわよこれくらい。勿体無いわ」

「いいから使っとけ。治るなら早い方がいいだろ?」

「……でも、あなたのところのを使うのは」

「これを取ったのはお前だろ。使えばいいんだよ」

「…………。分かったわ。お言葉に甘えさせてもらうわね」

渋るグレイシアを説得してふっかつそうを渡した時だった。
169 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:15:25 ID:I3LcFDhQ [2/9] 名前× NGID× 報告
「ここですわっ!」

俺のでも、グレイシアのでもない甲高い声がうるさく洞窟に反響する。

見れば、ミノマダムを先頭に草タイプだの水タイプだの格闘タイプだの、俺が軒並み苦手なタイプのポケモンが勢揃いしていた。

何十もの憎悪の目線が俺に突き刺さる。

「ちょうど取引現場ですわね!! 悪者どもが!!」

「……突然人の住処に押しかけてなんなんだ」

「なんなんだじゃないでしょう!? 強奪したもので取引なんてして……!」

「これは強奪したものなんかじゃないわ!」

「何を言うんですの! 仮にそれが奪ったものでなかったとしても、恐喝していたことには変わりありませんわ!! 皆さん、やってしまいましょう!!!」

それ以上俺たちが何かを喋る暇もなかった。

一斉にポケモン達が技を溜め始める。

あからさまな害意があればこちらからも攻撃はできる……とはいえ、この量を押さえるのは流石に難しい。
170 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:15:43 ID:I3LcFDhQ [3/9] 名前× NGID× 報告
「はっ、攻撃できるもんならしてみりゃいいじゃねえか!」

言い放って、それから俺は相手より早く岩雪崩を発動した。

ドガドゴッ、と地を揺らす轟音を立てて岩塊が立て続けに落下する。

一瞬で洞窟の入り口は閉鎖されてしまった。

直後、即席の岩の盾に数々の攻撃がぶつかる音が岩越しに聞こえてきた。

念のため二重、三重に岩を落としておく。

あの程度の攻撃ではそう早く突破はされないだろう。

「入り口を塞いじゃって大丈夫なの?」

「誰も入り口がここだけとは言ってない。付いて来い」

暗くては道も分からないので、溜めておいた松明用の木の一本に火をつける。

ポケモン達が岩を破壊しようとしている間に俺達は洞窟の奥へと走り出した。
171 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:16:13 ID:I3LcFDhQ [4/9] 名前× NGID× 報告
出たのは、さっきの入り口とは真反対の入り口だ。

ここなら外を回ってくればかなりの時間がかかるし、中を通って来たとしても迷っている時間は稼げるはず。

とりあえず安心していいだろう。

「走ったけど大丈夫か?」

「……傷は大丈夫よ」

「そうか。ならいい」

やっと一息ついて、俺は洞窟の壁に寄りかかる。

「お前は座らないのか?」

「……好きにするからいいわよ」

「そうか」

余裕ができたことで、頭が無駄なことを考え始めた。

「それにしても有志なのかなんなのか知らないが、よくあれだけ集まったな」

「……一番連携力が強くなるのは、共通の敵を持った時よ」

「敵、か。別に今更いいけどな」
172 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:16:31 ID:I3LcFDhQ [5/9] 名前× NGID× 報告
「…………ごめんなさい」

唐突に、グレイシアに謝られた。

声のトーンが、暗い気持ちを表していた。

「何がだ? 謝られるようなことはなかったと思うが」

「いいえ、あるわ。話したけれど、ミノマダムが襲ってきたのは私のせいだもの」

「いや。あいつは今に限らずうるさかったが」

「……でも、私のせいで実際に行動に移されてしまったのは事実のはずよ」

「……否定はできんが」

「ほら、ね? やっぱり、私がいると迷惑を掛けちゃうわよね……」

「こんなん迷惑ですらねえよ。むしろ俺がお前を巻き込んじゃうかもしれない」

俺が座っているおかげで俺とグレイシアの目線の高さが同じになっている。

しかし、グレイシアとは俯いていて目は合わない。

やがて、グレイシアは俺に表情を見せないで体を洞窟とは反対方向に向ける。
173 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:16:47 ID:I3LcFDhQ [6/9] 名前× NGID× 報告
二、三歩歩いてから、ふと思い出したようにグレイシアは顔だけで振り向いた。

何かが吹っ切れたような、そんな笑み。

「3日くらい、かしら? 助かったわ。ありがとう。でも、あなたに迷惑を掛けたくないから私はもう出て行くわ」

そのままグレイシアはスタスタと洞窟から離れて行く。

グレイシアの言葉が頭を巡る。

迷惑を掛けたくないという自分の意思だと主張したその言葉は、俺に有無を言わさないような言外の意味を含んでいる。

――つまり、何か言われると分かっていたということ。

確証はないが、もしそうだとしたら……。

顔を上げて見れば、もうグレイシアの姿はかなり遠くへ行ってしまっている。

俺は全速力で追いかけた。

ドス、ドス、と腹の底から響くような重低音が連続する。

それに気づいたグレイシアの足が速くなった。
174 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:17:10 ID:I3LcFDhQ [7/9] 名前× NGID× 報告
それでも、体格差か、俺の方が早かった。

「……おい、グレイシア!」

息急き切って走りつつ、叫ぶ。

ぴたり、とグレイシアが止まった。

「……なによ」

背中越しに発したその声は暗涙していたようにびしょびしょに濡れていて、さっきのカラッとした口調は見る影もない。

「別に出て行くって言うなら、俺は勝手にしてくれても構わない」

「じゃあ、なんで」

「だけどよ。行く先はあるのか?」
175 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:20:42 ID:I3LcFDhQ [8/9] 名前× NGID× 報告
「…………っ!!」

息を詰まらせる音が聞こえた。

「本当にあるなら、引き止めて悪かった。でも、もしないなら。勝手にされた余計な気遣いで出ていかれて野たれ死なれても寝覚めが悪ぃんだよ」

グレイシアの眉が驚愕に跳ね上がる。

そして、目の奥に怒りが具現化した炎が宿る。

「…………勝手にって、何よ。余計なって、何よ……!」

「事実だろ。俺は迷惑じゃないって言ってんだ」

「私は、あなたを心配して……!」

「それはこっちのセリフだ。行く当てもないのに相談もしないでただ出て行って」

「……でも」

「迷う者道問わず。寄る辺なんか自分だけで解決できると思うんじゃねえぞ。俺は問題ねぇからよ」

だんだんと、目の炎が涙に鎮火されていく。
176 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/17 22:21:03 ID:I3LcFDhQ [9/9] 名前× NGID× 報告
反応からして、推測は当たっていたらしい。

追いかけて来てよかった。

「……本当に、いいの?」

「さっきから良いって言ってるだろ」

「じゃあ…………もう少し、いさせて、ください」

「お前が嫌じゃないなら俺はいくらでも構わん」

「全く……せっかく綺麗に別れようとしたのに……恥ずかしいじゃない」

「自己犠牲は綺麗じゃねえよ」

「……そうね。…………ありがと」

少し濁音が混ざった声で、グレイシアは小さな小さな言葉を呟いた。
177 : ーフィ@フーディナイト 17/07/20 07:37:18 ID:hUMok1Uk [s] 名前× NGID× m 報告
支援
178 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/23 22:14:22 ID:Bpb2cR9Y [1/7] 名前× NGID× 報告
洞窟をもう一度抜け、いつもの場所へと戻ってきた。

諦めたのか、攻撃はもう止んでいる。

このままでは外に出られないので、尻尾を一振りして入り口を塞いでいる岩の山を突き崩す。

実は待ち伏せされていて……なんてこともなかった。

まだ完全に安心してはいけないのだろうが、ひとまず休むくらいはいいだろう。

ゆっくり腰を下ろして足の力を抜くと、洞窟全体が低く振動した。

その横に、グレイシアがちょこんと座る。

しかし、するようなこともなければ、特に話すこともなく。

何となく居心地のあまり良くない雰囲気が漂う。

誤魔化しに俺は洞窟の外を見上げた。

空模様は、淡い藍色が若干優勢なものの、空の真ん中で赤と青が拮抗している。

日没はもうすぐだ。

「……そういえば、晩飯食ってねえな」
179 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/23 22:14:39 ID:Bpb2cR9Y [2/7] 名前× NGID× 報告
座ったばかりで立ち上がるのは少々億劫ではあったが、空腹には勝てない。

洞窟奥へ向かおうとして、違和感に気づく。

グレイシアが何も言って来ないのだ。

振り向いて様子を確認しても、ぼんやりと思考に耽るように俯いて押し黙ったまま。

「おい、大丈夫か?」

声をかけると、慌ててグレイシアは取り繕い始める。

「あ、え、えぇ。大丈夫、よ」

「なんか食いたいもんないのか?」

「……ないわ。嫌いなもの以外なら」

「そうか。じゃあ適当に持ってくるぞ?」

「お願い、します……」
180 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/23 22:14:58 ID:Bpb2cR9Y [3/7] 名前× NGID× 報告
甘めの木の実を適当にチョイスして持って来て、グレイシアの目の前に置いた。

しかし、グレイシアは微動だにしない。

「…………食べないのか?」

「いえ、食べるけれど……」

そうは言いつつも、グレイシアは地面を超えてずっと地下を眺めているように俯いている。

さっきからずっとこの調子の理由なんて、一つしか思いつかなかった。

「なぁ、聞いていいか」

「……答えないかもしれないわよ。それでもいいなら」

予防線を張って来るところを見ると、やはり聞かれたくはないのだろう。

しかし、俺はあえて無視してそのまま続けた。

「なんで、行くあてがないんだ? 近くで火事が起こったなんて話も聞いてないが」

「…………!! あなたには関係ないわよ……っ!」

図星、だろうか。
181 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/23 22:15:29 ID:Bpb2cR9Y [4/7] 名前× NGID× 報告
しかし、このままでは話を聞いてもらえなくなる。

なので、俺は先にこちらの情報を開示した。

「じゃあ……なんで俺が冷凍ビームとか火炎放射とか、野生じゃ使えないような技を使えると思う?」

そっぽを向いていたグレイシアが、ものすごい速さでこちらを振り向いた。

その顔は余すところなく驚きに染まっている。

「…………まさか、あなたも、なの……?」

「もしかするとお前の言っているのと俺の過去が違うかもしれないけどな。……話してくれないか?」

なおも迷う素ぶりを見せるグレイシアだったが、最終的にこくりと一つ頷いた。

「……分かったわ。あなたなら」

今度こそ、説得が成功したようだ。

グレイシアは左上に目線をやりながら、訥々と喋り始めた。
182 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/23 22:16:00 ID:Bpb2cR9Y [5/7] 名前× NGID× 報告
 ◇ ◇ ◇

育て屋と呼ばれるポケモンを育てる施設の前で、一人の男が自転車を乗り回していた。

と、男が連れているファイアローが温めている5個の卵のうち一つが揺れ動いた。

「……やっとか。ったく、これだから孵化歩数の長いやつは」

悪態をつきながら、男はファイアローから卵を受け取って正面のカゴに乗せる。

そのまま、止まりもせずに自転車を走り回らせていると。

カゴの卵にヒビが入って、中から茶色の耳が飛び出した。

「ぶいっ! ぶぶい!」

生まれたばかりのイーブイはまん丸な瞳で男を見つめる。

しかしそんなことは意にも介さず、男は小さなモニターがついた機械をイーブイへ向け、

「……チッ、C抜けかよ。ゴミ個体が。これで何体目だと思ってる」

口の端に泡を溜めて、ブツブツと悪態をつく。
183 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/23 22:16:29 ID:Bpb2cR9Y [6/7] 名前× NGID× 報告
「ぶい? ぶ……ぶぶい!」

「うるせぇ! 黙ってろ!」

次の瞬間、イーブイは道のそばに投げ捨てられてしまった。

生まれたばかりで、しかも走っている自転車の上から、だ。

イーブイは全身に傷をつけながら数メートルをゴロゴロと転がる。

傍らに飛ぶファイアローは、しばらくイーブイに哀れみの目を向けていた。

しかし男はそんなものには目もくれず、ファイアローから次の卵を受け取っている。

同じように生まれてきたイーブイに、流れ作業で同じように事務的に機械をかざす。

「…………めざ炎理想キターーーーー!!!」

男が唐突に空を仰いで叫び始める。

唾がファイアローに掛かったのも気にも留めず、男は自転車を折りたたんでバタバタと育て屋の中へ走って行った。
184 : 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/07/23 22:17:09 ID:Bpb2cR9Y [7/7] 名前× NGID× 報告
一年の時を経て、生まれたイーブイはグレイシアへと進化させられていた。

「グレイシア、吹雪!」

「しあああああ!」

氷雪混じりの突風が、グレイシアの目の前にいる、ナットレイ、ボーマンダへと迫る。

しかし、吹雪は薄皮一枚、ギリギリで二匹の間だけを通り過ぎてしまう。

「ッチ……ナットレイにめざパッ!」

「……っ……しあっ!」

今度は、グレイシアが緋色に輝く光球を連射する。

それらは全てナットレイに命中してその体を炎で包んだ。

「4倍弱点だ。流石に――」

「ナットレイ、グレイシアにジャイロボール」

直後、赤い煙の中から銀色の物体がスピンしながら高速で飛び出てきた。

そんなものが空中で技を打って着地した直後のグレイシアに避けられるはずもなく。

まるで車に轢かれたようにグレイシアは向かいの壁へ勢いよく叩きつけられた。

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(画面No:2a)

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