【SS】殺し屋の男

俺は殺し屋。読んで字の通り、人殺しをする仕事だ。

今日の標的は旅人。ピカチュウを連れているらしい。

標的は子供だがそんなことは関係無い。結局死ぬのは変わらないんだからな。

俺は愛用の長距離銃を鞄から取り出す。

組立式の物で改造しており、3Km先までならば安定して命中する優れ物だ。

更に銃口には防音の仕掛けがあるので、誰も俺の狙撃には気づかない。

獲物の調子を確認した俺は望遠鏡を覗く。

10ｍ程の建物の上から1km先でポケモンに餌を与えている旅人の姿はすぐに確認できた。

辺りには人が多い。通報を恐れて人が少ない時間帯を選ぶのは愚の骨頂だ。

万に一つ、失敗した際に人混みに隠れて安易に逃走できる時間帯を選ぶべきだ。

俺は銃に弾を込め、旅人に狙いを定める。

そしてｰｰｰｰｰｰｰ

貫いた。

「ぎぃぃぃ...ッ!?」

俺の指が。背後から何者からによって狙撃されたのだ。

瞬時に物陰に隠れて狙撃相手を確認する。視界に映ったのは鳥だった。

赤い鳥、ファイアローである。

恐らくはあの旅人のポケモンだろう。俺とした事が、子供相手だからと言って侮っていた。

ポケモンを使う殺し屋も、ポケモンに護衛させる旅人もいるのだ。

俺はすぐに包帯で傷の応急処置を済ませた。幸い出血は大したこと無い。

次のエアスラッシュを食らう前に建物を飛び出し、人混みに紛れる。

安心はしていられない。追撃を食らう前に逃げ切る必要がある。

そうだ、あそこが良い。廃れた地下鉄が近くにあったはずだ。

俺は全速力で目的地に滑り込む。流石にここまでは追ってくるのは至難だろう。

しかし、あの旅人は何者だ。俺の動きは完璧だったはずだ。気づかれる訳が無い。

だとすると今回の依頼人と旅人が内通していた可能性がある。

「クソ...しくじった...!」