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【寒い日SS】暑い/熱い日の願い

 ▼ 1 くだけ◆5oP7VYU6fg 17/08/09 20:51:01 ID:KyQo5oeE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── 特に寒い日だった。

三角錐の角のように尖った崖の先端に座り込み、景色を眺める。眩く輝き、昇る朝陽が、舞う雪を橙色に染め上げ、それを無限に広がる海が鏡のように写し出す。


「綺麗だな……」

「うん。綺麗……」


「俺は、太陽になる!!」


「は?」


急に立ち上がり、宣言するのは、背中に小さな火を宿す少年。ヒコザル。

ヒコザル「お前ら知ってるか!? 父さん達のチーム名。『トモシビ』の意味!」

「いや、知らないけど……」


ヒコザル「どれだけ暗くて、深い闇のなかでも……どんな暗闇の中でも、自分達が必ず照らす光になる。って意味だ」


「父さん達みたいに、すげぇ救助隊になって! 太陽になって、みんなを照らすんだ!」


輝かせる眼には、
迷うことない自信と、
希望が溢れていた。


「いいね、そう言うの……!」

「俺も!俺も救助隊になりたい!」

ヒコザル「へへっ、じゃあ! いつか……」


「いつか三匹で、チームを組もう!!!」



あの日俺たちは、三匹で太陽を見た。

そして今、三匹が揃うことは無くなった。


 ▼ 50 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 19:41:10 ID:E/Z85X7s [1/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ヒコザル「モクロー、大丈夫か?」

モクロー「うん、心配かけて、ごめんね。私はこれから、ブリガロンさんにお世話してもらうことになったんだ。パパと同じチームだった人で、すごく優しいの、だから……」

「大丈夫……!」


モウカザル「そっか……」


モクローの父さんが任務中に死んだ。


あの時もそうだ。

モクローは辛そうな顔で言った。

大丈夫な筈なんて無いんだ。


モクロー「うぅ、うぐっ……ぐすっ……」ヒコザル「……」

モクロー「ぱぱ……! ぱぱぁ……!」


俺らに見せないような場所で泣いたあいつを見て、

強くならなきゃって、

誰にも負けないくらい、


強く……。

 ▼ 51 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 20:11:35 ID:E/Z85X7s [2/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── 時は……




モクロー「頑張れ二人ともー!」


ヒコザル「行くぞ!!」

ワニノコ「か、かかってこいぃ!」


「試合開始!」


最初の一撃は即行、火炎放射と水鉄砲の撃ち合い。
炎は水に相性は悪い。悔しいけどその差はどうやっても埋められないんだ。ぶつかり合えばやっぱり炎を水がかき消してこっちに届く。

それをギリギリでかわし、急接近。
これは発射する系の遠距離技の特徴だ。
発射し終わってから、次の行動までの動きが遅い。


飛び上がった勢いのまま鋭い爪で引っ掻く。
直撃、少し怯んだ所を火炎放射で追撃、これも直撃。

ワニノコ「〜っ!!」

ヒコザル「まだだ!」


「そこまで!」


審判が腕をあげる。


「ワニノコ、戦闘不能、ヒコザルの勝ち!」


ヒコザル「……ふぅ、大丈夫か? ワニノコ」

ワニノコ「う、うん。それにしても、やっぱ強いなぁ」

ヒコザル「へへへっ、お前も頑張れよ」


負けたくなかった。いつも勝ち続けた。

父と同じように、みんなに見せないように、一人で頑張ろうって、一番であろうって思った。
 ▼ 52 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 20:12:00 ID:E/Z85X7s [3/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ヒコザル「……?」


「お前、今回も負けてたな!w」

「弱すぎて草ww」


ワニノコ「う、うるさいな……」


「ヒコザルに何も出来ずに負けてやんの!ww」

「やめてやれよヒコザルは俺たち同期で一番強いんだぜ?比べたら可哀想だろぉw」


「親はあんなに凄い人なのに、何でお前はそんな弱いんだ?」


ヒコザル「おい、おま」


ワニノコ「うるさい! 」

「!?」

ワニノコ「〜ッ! 俺だって強くなってやる! 今はまだ無理でも、いつか絶対ヒコザルにも勝つくらい! お前らなんか目じゃないからな!」


ヒコザル「……!!」


「あ……」


涙を目にためて叫ぶ。
いじめっ子達も呆気に取られた様子だった。
俺も驚いた。ワニノコにそんな勇気があるとは思わなかった。
 ▼ 53 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 20:12:37 ID:E/Z85X7s [4/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

その日の夜。たまたま出掛けたとき、ワニノコの姿が見えた。夜に出歩くような奴じゃないのに、何をしているんだろう……?


「俺だって……」


水が打ち付けられ、弾ける音。



ワニノコ「強くなれるんだ……」

ワニノコ「こうやって頑張って特訓しまくって続ければ、いつかは、ヒコザルだって……!」


ヒコザル「……」


少し、複雑な気分だった。

 ▼ 54 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 20:13:04 ID:E/Z85X7s [5/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── 行くぞー!!」

ヒコザル「おう!」


「試合開始!」


いつも通り、炎と水の撃ち合い、
結果も勿論いつも通り、そして引っ掻く攻撃。だが、これは違った。
腕をあげて胴体や顔への直撃を防いだ。


ヒコザル「……うお!?」

ワニノコ「毎回同じ手なんだから、これくらいは防げるよ!」


そのまま腕を弾き、動けない空中のヒコザルに反撃の水鉄砲。顔面に直撃する水の圧に呑まれて宙を舞う。

モクロー「おぉ!!」

だが何とか踵で地面を削りブレーキをかける。仰け反った体を立て直す勢いをバネに流れるように地を蹴り、もう一度急接近。


今度はシンプルなパンチを腹に撃ち込む。そのスピードも合わさって体にめり込むほど強力な一撃。


ワニノコ「ぐっ……かぁっ!!」


「ワニノコ、戦闘不能。ヒコザルの勝ち!」


ワニノコ「はぁ、また負けかぁ」

ヒコザル「あぁ、でも、前よりは強かったよ、ダメージ受けたし」

ワニノコ「俺は勝ちたい!」


モクロー「二人ともスゴいよ! 私なんかバトルはからきしだし」

ワニノコ「でも俺らより頭良いし」

ヒコザル「モクローだってきっと何か勝つ方法があるって」
 ▼ 55 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 20:14:11 ID:E/Z85X7s [6/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


余談をしていると、あるポケモンに声をかけられた。


ヤンチャム「次は俺様とバトルだぜヒコザル!! 今こそ俺様の最強のパンチがお前を打ち破るとき!」

ヒコザル「は?」

モクロー「いつも二番手じゃん」

ワニノコ「うわぁ」


ヤンチャム「なんだとー!! 今すぐバ─

「ヤンチャム戦闘不能。ヒコザルの勝ち!」


ヒコザル「勝てないんだから大口叩くのやめとけよ」


チョボマキ「お、おいこら! 今度の相手は俺だ!」

モクロー「えぇ」

ワニノコ「うわぁ」


チョボマキ「んだとー! いくらヒコザルでも連戦はき─

「チョボマキ戦闘不能。ヒコザルの勝ち!」


────


番付

一、ヒコザル
二、ヤンチャム
三、チョボマキ

十三、ワニノコ

二十、モクロー


────
 ▼ 56 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 20:16:46 ID:E/Z85X7s [7/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ワニノコ「何度も、何度でも、繰り返すんだ……!」


弾ける音が静寂の夜に響き続ける。


ワニノコ「もっと!!!」


── そしてまた。


「試合開始!」


いつものように火炎放射と水鉄砲のぶつかり合い、だが今回は明らかに少し水鉄砲が強力になっていた。

ヒコザル「く……っ!」

しかし、まだみてから対応できる。
いつもより少し早めに撃ち合いから抜け出し、急接近、飛び上がって左腕を振り上げる。引っ掻く構え。


ワニノコ「それは何度も受けたから知ってる!」

ヒコザル「って思うじゃん……!?」


「!?」


ギリギリで引っ掻く腕を引き、盾に振り上げた腕を空いたもう片方の右手で掴み、流れるように体を捻らせて一本背負い。

地面に叩きつけた。


ワニノコ「……!?」

ヒコザル「よっし!」


「ワニノコ戦闘不能! ヒコザルの勝ち!」


地面には綺麗に捩られた足跡。


ワニノコ「くそ! 何で……」

ヒコザル「へへっ、今回は作戦勝ちってやつだな。まぁ初見じゃ避けられないよ」

ワニノコ「……」



── その日の夜。
 ▼ 57 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 20:18:09 ID:E/Z85X7s [8/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

モクロー「……?」


ヒコザル「もっとだ!」


何かぶつぶつと呟きながら一本の木の周囲を飛び回ったり引っ掻いたりしている。


モクロー「ヒコザル君?」

ヒコザル「……!?」


ヒコザル「何だモクローか、どうしたんだ?こんな夜遅くに」

モクロー「こっちの台詞だよ、本返し忘れてたから返しにいったら家にいないんだもん」

ヒコザル「わるいわるい……」
 ▼ 58 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 20:18:31 ID:E/Z85X7s [9/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

モクロー「何やってるの?」

ヒコザル「しみゅれーしょんだよ、シミュレーション。ワニノコ、最近強いから」

モクロー「へぇー、まだヒコザル君の方が全然余裕に見えたよ?」

ヒコザル「戦ってみたらわかるよ、あいつ、凄い強くなってる。いつ追い抜かされるか……」


モクロー「最初から強いのにヒコザル君が更に強くなったら絶対追い付けないじゃん」

ヒコザル「逆だよ。最初しか強くないんだ。俺、強くなったって実感がないんだ……」


ワニノコの反応速度や、技の威力は以前より格段に上っていた。

だがそれに比べて俺は小手先で違うことをしてるから勝ててるだけで、元々ある自分自身の変化は一つもない。


ヒコザル「俺は負けたくない。一番でいなきゃいけない」

「だけどどれだけやっても変わらない。頭打ちなんだ。……もう強くなれないのかな」

モクロー「そ、そんなこと無いよ……! 何が言えるってわけじゃないけど……でも」


モクローは優しいから、何言っても否定せずに慰めてくれる。だけどそれがたまに逆効果だ。


ヒコザル「新しい技を覚えたいんだ。それで練習してるんだけど、それこそ、からっきし、で」

モクロー「て、手伝おうか!?」

ヒコザル「ダメだよ、強力な炎技だから危険だ」

モクロー「そっか……」


ヒコザル「だから羨ましいんだ。成長してるあいつが」

モクロー「……ヒコザル君も、味わえると良いね」
 ▼ 59 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:09:00 ID:E/Z85X7s [10/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── そして、放課後呼び出されたのは、この間ワニノコが特訓していた空き地。


「ヒコザルってさ、ずるいよな、最初っから一位なんだから」


隣に座ってワニノコは尖った口を更に鋭くして言った。


ヒコザル「どう言うこと?」

ワニノコ「俺みたいに必死に頑張らなくても一位が取れるじゃん」


……違う。思ったより世の中都合よくないらしい。現に俺は今、怖い。

ワニノコに抜かされるのが、

誰かに抜かされるのが、


みんな、伸びしろがあって今度こそ。って

俺に勝とうとする。


そんななかで、何度何をしても俺自身は何も変わっていない。どうすれば強くなれるのか、そんな質問をよくされるが、今じゃこっちが聞きたいくらいだ。

 ▼ 60 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:09:20 ID:E/Z85X7s [11/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ワニノコ「なぁヒコザル! いつか、絶対追い越してやるから! いつかお前より強くなってやる!!」


……!


ワニノコ「だから、俺が一番になったら! そしたら! 今度はお前が頑張って! 俺に追い付いて来いよ!!」


……偉そうに、まだ勝ててないくせに。


それが現実になりそうだから怖い。
やめてほしい。
だけど、俺には強がりしか言えなかった。


「あぁ」


ポケモンは、俺達を見て、こう言った。


「才能」



「努力」


それは世間が俺達の親に向けられた言葉と、

同じものだった。

 ▼ 61 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:09:57 ID:E/Z85X7s [12/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ヒコザル「何だよあいつ。まだ全然勝ててないくせに」

モクロー「まぁまぁ、私はワニノコ君の気持ちもわかるよ」

ヒコザル「えぇ〜何だよそれ」
 ▼ 62 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:10:25 ID:E/Z85X7s [13/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

───── 夜の森は、迷ってしまいそうなほど、暗くて、少し寂しい気持ちになる。


『その技! 格好良いー!』

『俺も! 覚える!』

『これは俺が生み出したオリジナルの技だ!難しいぞ?』


『出来るもん!』


ヒコザル「よし、やるか!」


そんな夜の闇に呑まれないように、切り裂くような閃光を放つ。体を回転させれば尻尾の炎が遅れるながらついてきて、渦を巻く。

火炎車。


その技はヒコザルが使えるなかでは一二を争うほどの威力。しかしそれでもまだ足りない。望むものはもっと強く、この炎を体にまとわせる。父だけの最高の炎技。

フレアドライブ。


ヒコザル「まだ、足りない。 これじゃ……勝てない……」


この時、トーナメントが残り一週間まで近づいていた。そこには他の強いポケモンも沢山現れるだろう。
きっと今のままでは勝てない。

一位には、なれない。

 ▼ 63 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:12:56 ID:E/Z85X7s [14/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──


ある日の試合。


モクロー「ヒコザル君が、押されてる……?」


ヒコザル「っ!」

ヤンチャム「どうしたヒコザル? 今日は調子が悪いのか?」

ヒコザル「くっそ!」


お前が強くなったんだよ!


内心で叫び、遠距離から炎を吐く。ヤンチャムは遠くの相手に攻撃する技を持っていないはず、遠くから攻撃されたら、近づくしか……


ヤンチャム「来たな! 悪の波動!」

「!?」


暗悪の光線が二本、無限の形に交差して炎の中を貫き、直撃。土煙がヒコザルを覆う。


ヒコザル「まさか、新しい技覚えてるなんて……」

ヤンチャム「遠距離攻撃のあとは隙が出来る!」


ヒコザル「……っ!!」


ヤンチャム「まだだ!」


視界が奪われた中での突っ張り、一発目は何とかギリギリでかわすが、追いの二撃目が腹に直撃し、煙の中から空へと押し出された。


チョボマキ「いっけー!」


ヤンチャム「これで終わりだー!!」



ヒコザル「……!!」


衝撃から目を回す。何とか気を保つが一寸先には既に迫り来る攻撃。


負ける。
 ▼ 64 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:13:19 ID:E/Z85X7s [15/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

光線が体を貫き、瞼が落ち、地面に倒れた。


モクロー「ヒコザル君! 大丈夫!?」


「ひ、ヒコザル、戦闘不能! ヤンチャムの勝ち!」


ヤンチャム「あ、あ……やったー!!!!」

「うおおおおすげええええ!!」

「まさか勝っちゃうなんて!」


思いもよらぬ番狂わせに沸くポケモン達。
何せ入学から一年以上、変わっていく環境のなか、唯一変わらなかった難攻不落の城を崩したのだ。当然の反応だろう。

しかし、その歓声はヒコザルには届かず、例外が三匹……。
 ▼ 65 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:13:47 ID:E/Z85X7s [16/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──────────────「まけた」


モクロー「ま、まぁ、そんなときもあるよ!」


そんな時もある。
くらいのことなら落ち込まない。

こんなこと無かった。


初めて、負けたんだ。


勝ち続けていたのに。


「絶対勝てた」のに。

これからは勝てないかもしれないんだ。


もう、すぐそこまで来てる。



胸の内に暗雲が立ち込めた。



「そろそろ次の試合よー!」


モクロー「次ってワニノコ君……?」


ヒコザル「俺は……」


モクロー「ヒコザル……?」


──────────── 俺は……
 ▼ 66 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:15:01 ID:E/Z85X7s [17/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「頑張れワニノコー!」


審判「試合開始!」


ワニノコ「俺だって、勝つぞ!」



「負けるわけにはいかないんだ」



ワニノコ「……っ!? ひ、ヒコザル……?」


酷い顔をしていたんだろう。
怯え、少し後ろによろめいていた。



ワニノコ「手加減なしだぞ……!」


スクリーンの中央に白く眩い光が差す。
その光は色を奪い、目の前を染め上げた。
押し寄せる水の攻撃にも気付かない。


ワニノコ「……!?」

モクロー「ヒコザル君……何で」


ワニノコ「何で……」


退きながらも立ち上がる。

拳を構えて前に進む。



「何で……!」

ワニノコ「何で避けないんだよ!」
 ▼ 67 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:16:32 ID:E/Z85X7s [18/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



何度、押し返されても。

立ち上がり続けた。

ゆらりと、揺らめく炎のように、

狂ったようにフラフラと、

目の前はもう見えない。

力も入らない。


しかし、それでも

「負けるわけには……いかないんだ」


ワニノコ「!!」

モクロー「何でそこまで……」


「俺は……!」


『俺にもっと、力があれば!』


「負けちゃ……」



思いとは裏腹に体は限界だった。

地面に伏せるのは二度目。


「ヒコザル、戦闘不能。ワニノコの勝ち」
 ▼ 68 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:23:50 ID:E/Z85X7s [19/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ヒコザル「……」


モクロー「待って! ヒコザル!!」


モクロー、か。
引き留めに来てくれたんだろう。


モクロー「あの、えっと……」

ヒコザル「ごめん。もう、いいんだ」

モクロー「あっ! でも……」


言葉が出てこない様子だった。
そりゃそうだろう。こんな俺にかける言葉なんて無い。

俺は……負けたくなかった。

一番でありたかった。


強くなりたかった。



立った場所は「進化の泉」

 ▼ 69 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:24:11 ID:E/Z85X7s [20/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ヒコザル「この水を飲めば進化できる」


普通なら、弛まぬ血の滲むような努力や、強い意思、特別な偶然が重なって起こる現象が、その泉の水は飲むだけで起こる。それほどの凄まじいエネルギーを持っている。

噂程度のものだった。

しかし、存在さえも疑ってしまうほどの透明度と、大人達が入ってはいけない。と立ち入り禁止の印とロープを張っていたことが、その事実を浮き彫りにしていた。


ヒコザル「これを飲めば……強くなれる」


強く……!

 ▼ 70 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:25:37 ID:E/Z85X7s [21/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── 「凄いじゃないか! 進化するなんて!」

「すっげー!」

「かっこいー!!」

「モウカザルか!」


「きっと今までに無い敗北の経験が、また一つ君を強くしたんだな!」


違う。だけど、そうだ。
俺は、強くなった。力が無限に湧き出るようだった。


ワニノコ「……」


感じた先へ目線をやるが、不機嫌そうなワニノコはもういなかった。


「その様子なら、トーナメントもきっと勝ち抜けるさ!」


救助隊になるためのトーナメント、その名もTKG。そこで三位以上の成績を残したものに、救助隊である証、救助隊バッジが与えられ、その者は順位関係なく、チームメンバーを二人選ぶことが出来る。

そう、勝てばワニノコや、戦闘成績は悪いモクローだって一緒に救助隊に……。


あれ?


モウカザル「二匹とも、何処に行ったんだ?」

 ▼ 71 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:26:20 ID:E/Z85X7s [22/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── 三匹の仲は回復しないまま、その日を迎えた。


トーナメント会場は、沢山の人で賑わう。
ヤジロンが倒れた方向にある番号で対戦カードが決まめられた。ギャラリーが沸き立つ中、ばったり鉢合ってしまう。


モウカザル「あ……」

ワニノコ「……」


気まずい。
 ▼ 72 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:26:35 ID:E/Z85X7s [23/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

モウカザル「じ、じゃあ俺は」

ワニノコ「負けないから、ヒコザル……モウカザルが、どれだけ強くなっても、俺だって、今日まで必死に頑張ったんだ」


仲が悪くなるきっかけがあった訳じゃない。
だから……望むのは、この試合が終わったら、また、あの日のように戻りたい。


『三匹で、チームを組もう!!!』


あわよくば、一緒に……。




── 一回戦! ヒコザルの勝ち!

二回戦進出!


圧倒的だった。
それもそうだ。モクローも言ってた。
元々圧倒的だったのに、更に進化して、強くなったから、負けることなく、止まることなく、勝ち続けた。



ヒコザル、ワニノコ、決勝戦進出。

モクロー、二回戦敗退。



そして、今回も……。


モクロー「モウカザルくんも、ワニノコくんも……頑張って!」


ワニノコ「ヒコザルが強くなったように、俺も強くなった」


だけどそれは……


ワニノコ「絶対、お前に勝つ!」


俺の力じゃない。


「試合開始!!」
 ▼ 73 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:30:29 ID:E/Z85X7s [24/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ワニノコ「くらえ!!!」

先手必勝の水鉄砲。当初とは比べ物になら無いくらいの威力。しかしこちらも更に力を増した火炎放射で応戦する。

中央での爆発。
威力は互角だ。


『強くならなきゃな……』


砂埃の中、反射して煌めく牙が見えた。
飛び出し、噛みつく攻撃。


モウカザル「バカ……」


振り上げた腕にわざと噛みつかせ、そのまま浮いた足をつかんで地面に押し倒す。逃げ場の無い中で口内に炎を含んだ。


ワニノコ「ん……がぁ!」

モウカザル「……しまっ!」


相手も考えることは同じ、強く噛みついて離さない口の中に蒼い輝きが覗く。しかし、押し寄せる水圧の方が数秒早く、空中に打ち上げられた。


モウカザル「早い……! 元々仕込んでたのか、だったら……!」


口の中の炎をその身の回りに渦を巻くように放つ。


ワニノコ「……来い!」


対抗するように水を使い、巨大な水流の尾を作り出す。


「アクアテール!!」

「火炎車!!!」
 ▼ 74 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:31:00 ID:E/Z85X7s [25/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

お互いが扱える最高威力のぶつかり合い、相殺され、弾かれる。だがそこからの動きが早いのはモウカザルの方。
急接近し、回り込んで尻尾を掴む。


モウカザル「大技は、溜めが長い!」


そのまま大きく回し、投げ飛ばした。
何とか着地し、立て直したところをすかさず接近するため、踏み込む。

ワニノコ「わざわざ投げ飛ばしたのは失敗だったろ」

「この距離なら、アクアテールが溜まる!」

モウカザル「……!」


尾を大きく振りかざし、体を捩った。
このタイミングなら接近したまさにその時、攻撃が当たる。しかし

「くらえ!!」


モウカザル「ッ!」


足でブレーキを掛け、そのまま後ろに跳ぶ。


ワニノコ「……なっ!」


かわした。反応できる距離ではなかった。反応できても対応が間に合うはずがなかった。

相手の動きを予想して、後ろに跳んだ。


モウカザル「これでどうだ……!!」


空中から渾身の火炎放射。巨大な炎がワニノコを津波のように呑み込み、その勢いから地面から押し返されるほど。

炎の余韻が消え、そこにはあまりの熱量から焼けた土。それでも尚戦意絶えず立つワニノコの姿。


モウカザル「もう……限界だろ……」


ワニノコ「はぁ……はぁ……」


激しい戦闘に沸いた時から一転、静まり返る観客。
 ▼ 75 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:31:53 ID:E/Z85X7s [26/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「まだ戦える……」


モウカザル「……!」


ワニノコ「負けられないんだ……!」


『俺は……』

『負けるわけには……いかないんだ』


俺たちは昔から、どこか似ていた。


『ちぇっ、また二位かぁ』


『親はあんなに凄い人なのに、何でお前はそんな弱いんだ?』


お前も、

俺と同じなのかな、

いつからか

「勝たなきゃ」って、

負けるのが許せなくなって……


── 『見返してやるんだ……!』
 ▼ 76 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:32:17 ID:E/Z85X7s [27/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ワニノコ「俺だって……強く……」


悔しかった。

お父さんは、越えたのに、

俺はいつまでたっても弱くて、目標、ヒコザルの足元にも及ばなくて……。


『父さんのチームの名前ってどうやって決めたの?』

『それはな……』


ワニノコ「『父さんのチーム名「スイセン」は、雨垂れ石を穿つ。って言葉から来てるんだ』」


モウカザル「……?」


ワニノコ「『どれだけ高い壁で、どれだけ小さな力でも、根気よく続ければいつか結果を残せるって意味だ!』」


「信じてきた」

「俺にはそれしか頼るものがなかったから」


いつか俺も、壁を越えられるんじゃないかって、必死に努力すれば……ヒコザルを越えられるんじゃないかって。

「お前はやっと追い付いた俺を、簡単に引き離して、また、強くなっていった」


ワニノコ「だけど、負けるわけにはいかないんだ! 諦めるわけにはいかない! お前がどれだけ強くても!」

「俺が負けたら、これまでの努力を、父の言葉を、否定することになるから……!」


無意味になってしまうから……!



── この力で、見返してやるんだ!


俺は、俺も、負けるわけにはいかないんだ!
 ▼ 77 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:33:24 ID:E/Z85X7s [28/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────── っ!!



ワニノコの周囲から渦を巻くような水流が生まれる。
初めてみる予備動作、ワニノコも一瞬驚いた素振りを見せて睨み直した。

本人も予想してなかった。

初めての状況、だがお互いこれから起きるのとの察しはついていた。


モウカザル「溜めが長いんだよ。バカ」


隙だらけだ、今のうちに攻撃してしまえば、きっと勝てるだろう。敵の攻撃が放たれても、少し離れているため、見てから避けられる距離だ。

しかし動けなかった。
今になって、迷っている。


モウカザル「あと、少しで、勝てる……」


念願の一番だ。

救助隊になれる。なのに……


いいのか?
 ▼ 78 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:33:45 ID:E/Z85X7s [29/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

これで勝って、みんなは俺を称えるだろう。


でもそれは俺の勝ちと言えるのだろうか。


その称賛は俺へ向けられた称賛じゃない。

進化した俺への称賛だ。

特に苦労もせずに、
水を飲んだだけで進化して得た強さ。


それは、俺の力じゃない。


進化しなきゃ、俺はどれだけ頑張っても、ワニノコに負けていただろう。ワニノコは強くなった。きっと俺には想像も出来ないほどの努力と、強い意思で手に入れた強さだ。

それを俺が否定出来るのだろうか……。


ワニノコ「くらえええぇぇぇぇぇ!!!」


「ハイドロポンプ!!!!」



俺は……
 ▼ 79 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:34:12 ID:E/Z85X7s [30/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

地面をも削るほどの勢いで押し寄せる巨大な水の塊。


『もっと、強くならなきゃな』


『あいつら一番じゃなくなったんだ』


『お前の親、救助隊なのに負けたんだろ』



『だから……大丈夫……!』


『ぱぱ……! ぱぱぁ……!』



俺はもう……
 ▼ 80 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:34:30 ID:E/Z85X7s [31/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




「負けるわけにはいかないんだ」



 ▼ 81 い◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:35:11 ID:E/Z85X7s [32/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

攻撃がぶつかれば、その威力から激しい爆発が起きた。

静寂の会場、全ての生物の注目が一点へ集まる。

しかしそこには……


ワニノコ「いない……?」



負けるわけにはいかない!

勝たなきゃいけない!

俺は一番でなくちゃいけないんだ!


進化の力に頼るか、迷って、使わなかった。

新しく覚えた技、マッハパンチ。

その名の通り、音速で繰り出される拳。


観客は勿論、ワニノコの目にも捉えられない。


モウカザル「勝つ!!!!」


相手には、突然目の前に現れたように見えただろう。それほどの速度で振られた拳が腹に突き刺さり、その体は止めてくれる壁にぶつかるまで宙を浮いた。

一瞬、見えたワニノコの瞳からは、涙が流れていた。


「ワニノコ、戦闘不能。モウカザルの勝ち!」


あの日、俺には、称賛の雨が降りかかった。

だが、表彰式に二匹は居なかった。
 ▼ 82 日はここまで◆5oP7VYU6fg 17/08/13 21:36:05 ID:E/Z85X7s [33/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




──────────────

────────────

──────────────



 ▼ 83 ロリーム@コダックじょうろ 17/08/14 02:39:44 ID:6p6dvGkk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まさに王道って感じのバトル
熱いね
 ▼ 84 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:27:46 ID:nvKMSC5E [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「それがあんたたちの過去、ね……」

ジュプトル「中々ハードな学校生活だったみたいだな」


モクロー「多分、ワニノコくんやモウカザルくんが知ってるのはそこまでなんですけど、実はもう少し、続きがあって……」

ブリガロン「……?」


──────────
 ▼ 85 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:28:07 ID:nvKMSC5E [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────

モウカザル「あの日きっとワニノコは進化の泉へ行って……」

ゴウカザル「翌日には行方不明になっていた。か」

モウカザル「やっぱりワニノコは奴等に連れていかれたのかな」


ゴウカザル「十中八九そうだろうな。今はもうジュペッタの手先の一人だろう」


モウカザル「!!」


「あの時俺が負けていれば、こんなことにはならなかったのかな……」


ゴウカザル「それはわからないさ、その時は、お前とワニノコが逆になっていたかもしれない」


モウカザル「俺のせいでワニノコは……」


拳を強く握り、涙を堪えようとする、だがその意思とは反して溢れ、止まらない。


ゴウカザル「ごめんな、モウカザル、俺が不甲斐ないから、お前に色んな思いをさせてきた」

モウカザル「そんなこと……」


ゴウカザル「俺も時々、俺がもっと強ければって思うんだ。そうすれば、バシャーモも死ななかったし、きっとまた別の時を過ごしてると思う」

ゴウカザル「だけどわかったんだ。後悔していてもどうしようもないって……」


「だからさ」

 ▼ 86 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:28:37 ID:nvKMSC5E [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────


ブリガロン「そんなことが……」

モクロー「いつも後悔するんです。あの時こうしてたら、って」


「パパが死んじゃったときも、それからも」


ジュプトル「悪かったな、お前の父さん、守ってやれなくて」


モクロー「いえ……ただ、最後にもっとちゃんと挨拶が出来てればなぁって……」


ブリガロン「じゃあ、もっと強くならなくちゃね」


モクロー「はい……!」



── 「これからは後悔の無いように生きろ」



刹那、モクローの体を白い光が包み込んだ。
 ▼ 87 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:28:56 ID:nvKMSC5E [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


モクロー「わっ!?」


ブリガロン「これって!」

ジュプトル「まさか……!!」


フクスロー「進化しました」


ブリガロン「あっ、あぁ……可愛かったのに」

「!?」


ジュプトル「面倒なことになってきたな」

「何故!?」


フクスロー「うむぅ……」

ブリガロン「き、きっと、あなたの思いに、体が反応してくれたのよ」

ジュプトル「ま、いつかはこうなるって思ってたがなぁ……さ、訓練の続きと行くぞ」


「体の汚れることは嫌です」


ジュプトル「はぁ?」

ブリガロン「…………」


ジュプトル「お前さっきあんなに意気込んでたろふざけんな! ○すぞ!」

フクスロー「ひぃ師匠に殺されますゥゥゥ!」

 ▼ 88 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:38:05 ID:nvKMSC5E [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── それからは、特訓の日々。


ゴウカザル「目指すはフレアドライブの修得だな」

モウカザル「それはいいんだけど、あんなに練習しても成功しなかったのに、そんな簡単に……」


ゴウカザル「教わるのと、自己流じゃあ、
ナマケロとオコリザルくらいの違いがある」

モウカザル「例えがわかりやすい」


ゴウカザル「フレアドライブを成功させるために必要なのは一つ。気持ちだ」

「俺たちの頭や尻尾にある炎は精神力の強さで大きさが変わる。それを利用した技が火炎車やフレアドライブだ」


モウカザル「でも俺のは口から吐いた火だったけど」


ゴウカザル「勿論それでも可能だが、威力が全然違う。フラべべとハガネールくらい違う」

モウカザル「微妙に分かりにくい」

ゴウカザル「バチュルとホエルオーくらい違う」

モウカザル「なるほど」


ゴウカザル「それに、フレアドライブは修得するだけじゃなくて、もう一段階上の使い方がある。まぁそれは後々説明する」



モウカザル「なるほど、気持ち、精神の強さ、あの時も、結構強かったと思うけど」


ゴウカザル「まだどこかに迷いがあったんだろう。だけどそれを振り払った今なら、きっと前より全然違うはずだ」


モウカザル「よしっ!」

 ▼ 89 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:38:47 ID:nvKMSC5E [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────


ジュプトル「甘いぞ! 後ろだ!」


「!? 消えた!?」


フクスロー「甘いのはそちらの方ですわよ!」

ジュプトル「後ろ……バレバレだ!」


フクスロー「ひぃぃぃ! 砂がぁ!?」


「やめてくださいよ汚れるでしょう!?」


ジュプトル「お前がそれに馴れるようにわざとやってるんだよ!」

フクスロー「酷い!」


ブリガロン「……こりゃ苦労しそうだ……」

 ▼ 90 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:39:04 ID:nvKMSC5E [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──────



ゴウカザル「そろそろ次の段階も視野にいれよう」

モウカザル「はい!」
 ▼ 91 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:39:36 ID:nvKMSC5E [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──



ドクロッグ「三種類の姿を使い分ける謎のポケモンがいるらしいんだ」

モウカザル「救助隊なんですか?」

ドクロッグ「元だ。何でも、三種類の中の本当の姿は誰も知らないだとか……」


モウカザル「おぉー! かっこいい!」

ドクロッグ「だろ!?」
 ▼ 92 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:39:52 ID:nvKMSC5E [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──────────── 月日は流れる。

 ▼ 93 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:40:33 ID:nvKMSC5E [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「そう言えば、あいつのことしばらく見てない。戦力アップの大事なポケモンなのに」


ガブリアス「必要ありませんよ、俺で十分……」

ボスゴドラ「救助隊の人、強いかな」


ジュペッタ「はぁ、これじゃ戦力全然足んないよ」


マニューラ「ハッ、よく言うよ、あんた一匹で救助隊なんて一掃でしょ?」


ジュペッタ「バカ、本番僕戦えないんだ。もっと集めないと……」

フーディン「オーダイルは何処です? あいつなら敵側の懐に潜れるのでは?」

ジュペッタ「あいつはねぇ、置いとく」


「? 何故です?」


ジュペッタ「本番に見てみたい対戦カードがあるんだぁ〜」


フーディン「……猿。ですか……」


ジュペッタ「彼らは最期に、楽しませてくれそうだよ」

ユキメノコ「じゃあどうなさるんです? 流石に我々だけでは少ないのでは?」


ジュペッタ「うーん、じゃあ〜」



「敵を減らす?」



ガブリアス「そうこなくっちゃ」

ボスゴドラ「はぁ……」


ジュペッタ「進軍」
 ▼ 94 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:41:35 ID:nvKMSC5E [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────


世界が闇に落ち夜に染まるとき、唯一輝く灯火のような月。それを映し出し、揺らめく湖。


モウカザル「……」


「お前の炎はまだ弱い。水をぶっかけられただけで消えてしまう』

『その意思が強くなったとき、たとえ炎を燃えることのできない水の中だったとしても、燃え続けることができるだろう」


フレアドライブ!!!



湖に勢いよく飛び込む。しかし、やはり水のなかで炎を絶やさず生かし続けることは出来ない。


モウカザル「……ダメだ。また消えた……!」


……あっ!

この湖……深い!!


「ボボボボボボ!!!」


どんどん地上が遠退いて……光が……見えなく……。誰か……助け……


── 「バカ! だから俺がいないときにやるなって言ったろ!」


モウカザル「ごめん、早くマスターしたくってさ」

ゴウカザル「はぁ、フレアドライブはもうほぼ完成してる。そんな急がなくても……」
 ▼ 95 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:42:11 ID:nvKMSC5E [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──!?


モウカザル「?」

ゴウカザル「な、なんだ……? この……!」


何かに引っ張られるように町の方を見る。

一瞬静寂が流れた。その間も、父の目は一点を見つめている。その顔からその理由が良くないことと言うのはわかった。しかしなにも起きず流れる沈黙に堪えきれず、聞かざるをえなかった。


モウカザル「どうし」



────────── 刹那

強い閃光とともに激しい爆発音と熱が突風になり吹き荒れた。

 ▼ 96 い◆5oP7VYU6fg 17/08/14 17:43:17 ID:nvKMSC5E [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゴウカザル「行くぞ!」

モウカザル「うん!」


纏わり付くような蒸し暑い風が吹き荒れる森のなかを駆け続けると徐々に見えてきた町の様子。既に何者かの手によって火の海と変わっている。

森を抜けた先には──


ボスゴドラ「あぁーあ、早くしてくれ……」

ガブリアス「弱いな……」


ゴウカザル「……あいつは!」

モウカザル「ボスゴドラ!?」


ドクロッグ「やっときたか! ゴウカザル!」

オーダイル「おせぇぞ!」


『俺は負けないさ、相手がどれだけ強くても』


バシャーモ……!!


ゴウカザル「フレアドライブッ!!!」


ボスゴドラ「……!?」


地面を蹴った瞬間、衝撃で土が浮き上がった。それほどの勢いで放たれた渾身の一撃がヒットする。倒れぬように体を支える足が地面にめり込んだ。


ボスゴドラ「誰?」


『お前らは先にその子を連れて逃げろ』

『俺たちが受けた依頼は救助』

バシャーモ『どれだけ深い闇のなかでも、照らし、助け出す光。それが、トモシビだ』


ゴウカザル「お前が殺したポケモンのチームメイト…」


「救助隊、トモシビのゴウカザルだ」
 ▼ 97 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:20:29 ID:yozeKMCg [1/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ボスゴドラ「ははっそうか、いい攻撃だ。もっと来いよ」

ゴウカザル「変わってないみたいだな、その感に触る性格は……!」

オーダイル「落ち着け! そいつは昔のお前らでも勝てないほど強かったんだろ? 闇雲に戦っても勝てやしない!」




モウカザル「何だ? この状況、町が壊れて、目の前には……ボスゴドラ!」


ドクロッグ「モウカザル冷静になれ、今のお前じゃ相手にならないどころか邪魔だ!」


モウカザル「だけど……!」


「へぇ」


ガブリアス「お前、ワニノコが言ってたやつか」

モウカザル「……!」

ガブリアス「あいつはこっちで強くなって、楽しくやってるよ。もうお前何かじゃ勝てないほどにな」



目を見開き、拳を握る。


頭のなかで、何かが切れた音がした。



モウカザル「黙れ!」
 ▼ 98 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:21:11 ID:yozeKMCg [2/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ドクロッグ「待て!」


安い挑発だった。
そんなものはわかりきっている。

しかし、無視することはできなかった。



ガブリアス「速いな、だけど俺には当たらないな」

モウカザル「あいつが、楽しんでるだと!?」


わかっていた。

今は引っ込んでるのが正しい選択だってことくらい。

それでも間違えずにはいられなかった。

体が勝手に動いていた。



ガブリアス「そうさ。だってあいつは強くなりたかったんだ! 進化の水で強くなって、泣いて喜んでたよ。何で泣いてたかは知らないがな」

モウカザル「……!!」


俺の、せいなんだ……。

俺が、あいつと向き合っていれば、一人で突っ走って、二人とも置き去りにして……」


ガブリアス「そうだよな。強さを求めるなら、やっぱ一人じゃないとな、俺も同じ考えだったよ」


「……!!!」


口に発していたのに気付かなかった。

一瞬、ゾクリと鳥肌がたった。
 ▼ 99 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:21:38 ID:yozeKMCg [3/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

モウカザル「お前は! 俺は……何を……!?」


ガブリアス「また仲良くしたいか? また懐かしい友達と、戻らなくなった日々を取り戻したいか?」

「……!」


嫌らしい顔で囁く。


ガブリアス「こちら側にこれば、かつてお前が望んだ強さも、今お前が欲する友達もどちらも手にはいるぞ?」

モウカザル「……」


ガブリアス「どうする? 俺たちに着いてくるか?」


俺のなかで、何かが揺らぐのを感じた。

次に、黒く染まっていった。

蝕むように……侵食していく……。



ドクロッグ「モウカザル、伏せろ!!」

モウカザル「!!」


ガブリアス「チッ!」


ハッと我に帰り、背後から迫る気配にあわせて屈んだ瞬間、巨大なエネルギー弾が破裂する。


ガブリアス「あぁ、やっぱ出来ねぇもんだな。ジュペッタはよくやるよ」

ドクロッグ「退け、モウカザル!」


モウカザル「は、はい!」

 ▼ 100 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:22:01 ID:yozeKMCg [4/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ボスゴドラ「ははっ、いいぞぉ! だいぶダメージ溜まってきた!」

ガブリアス「くそっ、流石に人数が多い、こりゃあちょっと不利か?」


ボスゴドラ「いやぁ、こっからがいいんじゃないか!」


明らかに敵の顔が曇ってきた。それもそのはず、相手は二体に対してこちらはトップクラスに強い救助隊が二組にドクロッグもいる。
このままなら勝てるだろう。


ゴウカザル「何だ? ビビってるのか?」

ガブリアス「安い挑発だな。悪いが俺達の目的は好き勝手暴れることじゃないんだ。全く、ジュペッタをこっちにこれば良かったのに」

ボスゴドラ「え? もう帰るの?」

ガブリアス「ある程度実力はわかっただろ。このままの俺たちじゃ勝てない。決着は火山でだ……フーディン!!」


「敗走か」


モウカザル「あ! ま、まて!」


ガブリアス「そうだ。お前ら今すぐ他の村に向かった方がいい。きっと大変なことになってるぞ」


「!?」


モウカザル「どういう……」



──── ッ!!

オーブが赤い輝きを放ち、甲高い警告するような音を鳴らした。初めて耳にする音。


ドクロッグ「緊急救助要請……!」

ゴウカザル「久しぶりに聞いたな、場所は」


「ジュウ村だ」
 ▼ 101 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:22:17 ID:yozeKMCg [5/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────────

────

────────

 ▼ 102 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:25:10 ID:yozeKMCg [6/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ジュプトル「ふう、今日はこれで終わりにするか」

フクスロー「はい!」


ジュウ村から少し離れた荒れ枯れた岩場。
そこが二匹の訓練場だ。今日も訓練を終え、疲れはてた二匹が座り込む。


ジュプトル「さて、ブリガロンも待っているだろうし、そろそろ」

フクスロー「あ、私はもう少し、ここにいます」


ジュプトル「……? そうか、まぁ、日が沈むまでには帰れよ。心配されるぞ、あいつ口うるさいからなぁ〜」

フクスロー「はい……」


残して去っていく。
多少難はあるが、本当に良い方だ。常に私のことを気遣ってくれるし、確実に私を強くするために頑張ってくれている。

一人ではきっとここまで頑張れなかった。いつも家で待ってくれているブリガロンも、本当にありがたい。


「それなのに……」


最近、戦いに集中できない。
戦いたい。意思は揺らいでない。
だけど、


汚れるのが嫌だ。
 ▼ 103 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:25:26 ID:yozeKMCg [7/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ふざけるなって思われるかもしれない。
実際自分でもふざけるなって思ってる。

ジュプトルやブリガロンは私のために頑張ってくれてるのに、私は下手な反抗期のような状態。


「どうすれば……」


「あ、汚れてるよ?」


フクスロー「!?」


後ろから誰かに触れられた。完全な油断していた上に、潔癖な為に二馬身ほど飛び退く。
そこには、長い髪の人間の女。

え?


フクスロー「人間!?」


噂だけは聞いたことがあった。
大昔に滅んだ人間、だが一人だけメスの人間が、現在も何処かに生息していると言う。だが


フクスロー「なぜ、ここに……? 誰? 何者?」
 ▼ 104 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:26:21 ID:yozeKMCg [8/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

自分と同じくらいの背丈的に子ども、なのだろうか。そもそも比べる対象がわからないためそれすら判断できない。


女「ごめんね、驚かせちゃって、ただ埃がついてたからとってあげようと……」

フクスロー「い、いえ、ありがとうございます」


羽についた埃を払い落とす。少し安堵してその場に座った。


フクスロー「ところで、あなたは何故ここに?」

女「わぁ! その眉お洒落だねぇ!」


フクスロー「あっ! でしょう!? 私もそうだと思って……みんなセンスがないんですよダサイダサイって……!」


口を鋭くする。
と言っても元々嘴のため尖っていた。
 ▼ 105 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:26:52 ID:yozeKMCg [9/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

女「何だか、悩んでるの?」

フクスロー「は、はい……」


女「私でよかったら、聞くよ……」


フクスロー「……大切な友達が、居なくなってしまったんです。喧嘩して、お互いが自分を責めて、背負い込んでた。私はそれがわかっていたのに、何も出来なかった……」


女「それで……?」


「友達を取り戻して、一緒にいるために強くなろうって決めたんです。でも……進化してからからっきしで……」

女「そうなんだ」

フクスロー「どうすれば良いんでしょう……」


女「うーん、でもスランプみたいな時期は誰にでもあると思うよ!」

フクスロー「でも、時間がないんです! いつまでもスランプのままじゃ……」



「進化すれば、変わるんじゃない?」
 ▼ 106 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:27:37 ID:yozeKMCg [10/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


フクスロー「……え?」


「フクスローって、みんなそういう時期があるらしいんだ。だけど進化したらみんな克服するの」


フクスロー「そうなんだ! でも、どうすれば……」


「進化の泉」


フクスロー「そうか、じゃあ、進化の泉の水さえあれば! 私!」


女「着いてきて、あなたを進化の水へと案内してあげる」


フクスロー「はい!」



「待て!!」


刹那、疾風のごとく現れたジュプトルがフクスローの羽を引く少女の手を切り裂く。


女「……!?」


「ひっ!?」

フクスロー「な、何をしてるんですか!? この人は!」


ジュプトル「こっちの台詞だ! お前こそ何してる!」

フクスロー「え?」
 ▼ 107 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:28:49 ID:yozeKMCg [11/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

気づけば空には月が昇り、暗くなっている。
ジュプトルと別れてから随分と時が過ぎてしまったようだ。


ジュプトル「この人間は誰だ!? お前はこいつの何を知って着いていこうとした!?」

フクスロー「……!!」

ジュプトル「あいつの手を見ろ! あの人間に実体はない! お前を誘い出すために作り出された幻だ!」


切り裂かれた手が砂のように風化していく。

フクスロー「そんな……」

客観的に見ればおかしい。
初めて出会った生物、それも人間に過去をすべて打ち明け、信じきってついていくなど。

おかしくなっていた。
それを認識し、背筋が凍り、寒い感覚に襲われる。

一種の洗脳のようなものなのだろうか。


フクスロー「だけど、誰がそんなこと……」

ジュプトル「よっぽどの化物出ないかぎりそんなこと出来るわけねぇだろ……」



睨み付けた先から一つのぬいぐるみが出てくる。


フクスロー「……まさか! そんな……」


ジュプトル「そうやって、ワニノコを連れ去ったのか」


ジュペッタ「すっかり騙されたろう? 彼女はとても優しく、誰でもすぐに心を許してしまうような素晴らしい女性だった」

ジュプトル「妄言は止せ、本物じゃなく変わり身の幻で出てくる辺り、案外恥ずかしがりだったか?」

ジュペッタ「生憎この体じゃ親しみやすいどころか怯えさせてしまうんでね、人間単位で美麗で可愛らしい、ポケモンにとっても目に入れても痛くない姿を使ったんだ」


その体はボロボロの布に縫い目だらけで、所々白い内蔵のような綿がはみ出ていた。しかし顔の部分だけは破れたり縫い直したりした形跡はない。
 ▼ 108 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:29:25 ID:yozeKMCg [12/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ジュペッタ「それに、恥ずかしがりやだなんて君には言われたくないなぁ」

ジュプトル「あ?」

「格好よく見せようとしないでさ、本当の姿を現したらどうだい?」


ジュプトル「何だと……!」



刹那、視界からジュペッタが消えた。



「冷静さを怠るな」

ジュペッタ「そうやってみんな死ぬんだよ?」


背後をとられた。

だがそれに誰も気づかない。

ダメージを受け、初めて気づく。

その圧倒的実力差、そして、師の本当の姿。


フクスロー「え?」

「っそ! 強すぎだろ……!」


ジュペッタ「正体が見えたな。その姿になるのは随分と久しぶりなんじゃないか?」


「ゾロア」
 ▼ 109 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:30:00 ID:yozeKMCg [13/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゾロア「……」

ジュペッタ「どんな気分だい? 恥ずかしい? 悔しい? さっきまであんなにカッコよかったのに、そんな可愛らしくなっちゃって!」


ゾロア「……ッ!」

ジュペッタ「黙れ! って顔だね。そんなに怒るかい? まぁそうだよね、その顔を見るに、今まで変身を解くことはほとんど無かったんだろう。それはダメージを食らわないから、まさか背後をとられて変身が解けるだなんて」


フクスロー「ジュプ……トルさん……?」


ゾロア「フクスロー! こいつの標的が俺にある間にさっさと逃げてブリガロンのところへ行け!」

フクスロー「は、はい!」


ジュペッタ「馬鹿だなあ、最初からずっと、彼女が狙い………………!」


追い掛けようとするジュペッタを攻撃で食い止めた。


ゾロア「時間稼ぎは長くは続かない! さっさと逃げて、なるべく戦力を集めろ! 隣町にゴウカザル達も居る筈だ!」

ジュペッタ「何秒持つかな……?」

ゾロア「自分が負けまでの秒数か?」



── 「はっはっ……」


夜の森を、

振り返ることなく、

ただ必死に前を向いて走った。飛んだ。


逃げなきゃ、死ぬ。


直感がそう告げていた。

やっと見えた町、急いで家に駆け込む。
 ▼ 110 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:30:39 ID:yozeKMCg [14/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


フクスロー「ブリガロン!!」

ブリガロン「……?」


フクスロー「ジュプトルが……!」



──── 追い付いた。


背後に現れた強烈な気配に気づき、振り向こうとしたときにはもう遅く。毒のような紫に煌めく衝撃波で家が内側から破裂するように爆発した。


ブリガロン「どうなって……!」

フクスロー「……ブリガロン……!」


ブリガロン「大丈夫?」


ジュペッタ「あれ? 二匹とも無傷?」


ブリガロン「そのつもりだったんだけどね……」



攻撃の瞬間、フクスローを庇い、背中の甲羅を盾に衝撃を受ける。そう簡単に突破される代物でもないはずだが、壊れはしないものの防ぎきれずに傷を負ってしまった。


フクスロー「た、戦うんですか?」

ブリガロン「逃がしてくれなさそう」


ジュペッタ「さぁ、やろうか」


ブリガロン「来るよ!」

フクスロー「ま、待って!今ので背中汚れて」

ブリガロン「言ってる場合か!」
 ▼ 111 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:31:44 ID:yozeKMCg [15/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ジュペッタ「はぁッ!」


目に見えず、波動のように空気を伝う攻撃、それを家が崩れて出来た瓦礫を盾に防いだ。


ブリガロン「お返し!」


そのまま巨大な瓦礫を砲丸投げのように投げつける。だが瓦礫は敵に触れる前に塵のように粉々になり、崩れ落ちる。


ブリガロン「!?」

ジュペッタ「その程度当たると?」


ぬいぐるみの二本の腕を重ねればその間に巨大なシャドーボールを生成する。


ブリガロン「いぃや……ッ!」

自らの拳を巨木に見立て、叩き付ければ影の塊は歪んで弾けた。そのまま本体へ殴りかかる。
だがその姿は寸先で影のなかに消えた。


ブリガロン「しまった! フクスロー!」

フクスロー「え?」


「うしろ」


かわせるわけもなく傷だらけで地を転がる。
痛みから立ち上がる力も出ない。


ブリガロン「フクスロー!」


ジュペッタ「隙!」


フクスロー「……」


気をとられたブリガロンを闇色の影を纏った爪が襲う。

体が動かない。

痛い。

ブリガロンが負ける。


逃げなきゃ、誰か、助けを……


立つのもままならない状態ではどうすることもできなかった。
 ▼ 112 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:32:26 ID:yozeKMCg [16/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ジュペッタ「まずは、お前からだ……」


ゆらゆらと揺れながらと歩く。


こっちに、来る。

怖い。

殺される。


「誰か……助け……」


ジュペッタ「……!」



それは、ゆらりと揺れた。


敵の影ではない。闇ではない。


炎。


奴との間に立ち、拳を構える。



フクスロー「モウカザル……?」


モウカザル「大丈夫か? 助けに来たぞ」
 ▼ 113 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:33:24 ID:yozeKMCg [17/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ジュペッタ「どいつもこいつも邪魔ばかりするなぁ」

モウカザル「大丈夫じゃなさそうだな、そこにいろ」


フクスロー「ダメ、モウカザル……殺される」


モウカザル「……! そう言えばお前進化して……まぁいいや。俺だけで来た訳じゃない」


ジュペッタ「……!!」


気づかぬ間に敵を囲うように並ぶポケモン達。トモシビ、スイセン、ドクロッグ、そしてモウカザル

モウカザル「俺合わせて8対1だ。負けねぇよ」


ジュペッタ「はははっ、面白くなってきた」


「笑ってられるのも今のうちだ!」


ジュペッタ「……!」


リザードンが背後から拳を降り下ろす。だがそれをわかっていたように影へと隠れ、かわした。

モウカザル「消えた!?」

ゴーストダイブは影に潜み、姿が見えない状態から奇襲する技。


「モウカザル、フレアドライブだ! それ以外は地面にしがみついてろ!」

ゴウカザル「隠れる場所なんて与えねぇ」

リザードン「無理矢理引きずり出してやる! 行くぞ!」

「ブラストバーン!!」


二体が拳を地面に叩きつけた刹那、枝分かれのように地割れを起こし、その狭間からマグマのように熱い光が吹き出した。地からわき出る強烈な光源が影を消し去り、隠れていたジュペッタを空中へあぶり出す。


モウカザル「見っけた……!」

ゴウカザル「行くぞモウカザル!」

「フレアドライブ!!」


宙で動けない状態の敵、二体が炎を纏い、渾身の一撃を放つ。今度は直撃、どれだけ強い敵でもただではすまないだろう。


ジュペッタ「っ!!」
 ▼ 114 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:35:07 ID:yozeKMCg [18/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「凄い……」


激しい戦闘を繰り広げる友を、憧れの対象を、ただ見ていることしか出来なかった。

何とか体を動かし、顔を起こす。


「あ、またよごれてる。いやだなぁ」


羽をもう一方の羽で丁寧に拭くと同時に、爆発音がなった。


モウカザル「はぁ……はぁ……ひっ!!」

ジュペッタ「まずは一匹だ」

ゴウカザル「逃げろ! モウカザル!」


あれ?

私、何をしてるんだろう。


みんなが、
ずっと支えてくれた家族が、
ずっと憧れていたポケモン達が、
ずっと一緒にいたいと願ったポケモンが、


怪我しながら、
血を流しながら、
泥だらけにもなっている。
それでも
ボロボロになっても敵に立ち向かっている。


それなのに、私は……。

何を……。

 ▼ 115 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:36:05 ID:yozeKMCg [19/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『実は、もう少し続きがあって……』


「あっ、ワニノコ……!」

── あの日、決勝戦の夜、私はワニノコが進化の泉に向かうのを見た。

だけど声をかけられなかった。


何て言えばいいかわからなくて、

モウカザルのことも、ワニノコのことも、
一番よく知っていたから……。

二人がどれだけ悩んで、苦しんできたか。

知っていたから……。

────


でも今では、悔やんでも悔やみきれないほど。

父さんが死んだときも……

今回もそうだ。

私のせいで、ブリガロンやジュプトルが、ゾロアが傷ついた。


決めたのに……!


もう……!


無いように生きるって……!


戦わなくちゃ……!


みんなと一緒に……!



私は、強くなったんだ!!

 ▼ 116 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:36:27 ID:yozeKMCg [20/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




もう後悔はしないって、決めたんだ!!!




 ▼ 117 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:36:45 ID:yozeKMCg [21/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──────── その瞬間

閃光のように煌めく光がフクスローの内側から溢れだした。姿が変化する。羽根は更に巨大に、足は長く。スラリとした細い出で立ちにへと。


「そうはさせない!」


光のなかから放たれた矢がジュペッタの顔面を貫いた。
 ▼ 118 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:37:16 ID:yozeKMCg [22/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ジュペッタ「!!」

ジュナイパー「……」


ドクロッグ「進化した……?」

モウカザル「すげぇ……」


ジュナイパー「父さんの、姿……」


手のひらを何度か握り返し、確認している。
今までの丸っこい姿ではなく、身軽で動きやすそうなシルエット。

その姿に皆が目を奪われていた。


たった一匹を除いては


ジュペッタ「……」

モウカザル「ッ!?」


肩を落とし、俯くジュペッタ。
 ▼ 119 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:37:54 ID:yozeKMCg [23/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



矢羽根は頭の口の部分に突き刺さり、

壊れたファスナーが力無く開かれた。


その中から出てきたのは、

生物らしい血でも、

ぬいぐるみに詰められた綿でもない。


ただサラサラと止むこと無く落ちる。

砂のような白い粉。


「あ、あ、ああぁ……」


そしてその場の全員がその姿に釘付けとなる。


無機質で、

熱のないその生き物が、


大粒の涙を流す光景。



「あぁ……ダメだ……」


「離れないで……!」


「お願い」

「外に出たら……あなたを……!」




漏れだしたその粉のようなものを必死に手で集める。だが無情にも風がそれを空へと送り出してしまった。
 ▼ 120 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:38:22 ID:yozeKMCg [24/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゆっくりと立ち上がる。
そこではじめて、気付いた。


ゴウカザル「モウカザル! ジュナイパー! 離れろ!!!」

モウカザル「え……?」


ゆらりと、無気力のようにも見えるその立ち姿。だが眼には黒い光が輝いていた。


ジュペッタ「許さない……」


モウカザル「……!」

何処を見ているのかもわからないその目に、恐怖を覚える。


ジュペッタ「彼女の時は今、動き出した」


胸の奥で何かが紫色の閃光を放った。
それと同時に魂のような青白い炎の子どもがいくつも現れ、ジュペッタを囲う。

炎は渦巻くように胸の光源に吸い込まれ、光は更に強く、目を開けていられないほどに広く、夜の世界を支配した。


光が途絶えた瞬間、ポケモン達が目を開ければそこには姿を変えたジュペッタの姿。


継ぎ接ぎの布の中から剥き出しとなったおぞましく巨大な爪と足が見え隠れし、体全体も以前より一回り巨大になった。



モウカザル「進化、した!?」

ゴウカザル「違う。覚醒したんだ……メガジュペッタ。くそっ、石を隠し持ってやがったな」


ジュペッタ「殺してやる。お前ら全員……!」
 ▼ 121 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:41:59 ID:yozeKMCg [25/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「まずは……」


ジュナイパー「う……っ!!」

ゴウカザル「させるか!」


襲い来る巨悪からジュナイパーを押し出して、何とか助ける。


ジュペッタ「邪魔をするな!!」


「!!」


その黒い殺意に満ちた桃色の刃は、

助けに入ったゴウカザルの腹を意図も容易く貫いた。


ゴウカザル「か……はっ!」


モウカザル「父さん!!!」


ジュペッタ「弱い。無力は罪だ……。悲しみしか生まない」


「こうして」
 ▼ 122 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:43:03 ID:yozeKMCg [26/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


モウカザル「大丈夫!?」


力無く膝から崩れ落ちたゴウカザルに駆け寄る。


貫かれた部分から血が止まること無く流れ続けていた。


まだ息はある。死んでない。



ゴウカザル「はぁ……はぁ……」

モウカザル「血が、早く!」


ゴウカザル「いや、もう、遅い……」


モウカザル「な、何言って……」


息が小さくなっていく。

頭の炎が、どんどん小さくなっていく。


ジュナイパー「嘘……」


モウカザル「そんな……! 嫌だ!」


ゴウカザル「モウカザル、覚えてるか?」

モウカザル「……?」



『トモシビ、のもう一つの意味?』

『と言っても、トモシビはバシャーモが考えた名前だから、これは俺が勝手に考えたんだけど……』



ゴウカザル「悪いな……。俺は、もう……ダメそう、だ」

モウカザル「……!!」


ゴウカザル「だけど、お前はまだ、生きてる……」

モウカザル「それじゃ意味ないだろ! 頼む! まだ……!」
 ▼ 123 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:43:45 ID:yozeKMCg [27/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


強く握った手から、

掠れ、途切れ途切れになる声から、

死が迫っているのを直に感じた。

痛いほどに。


だが一瞬、その手を強く握り返された。


ゴウカザル「だから、俺の火を、受け継いでくれ……! お前の炎はまだ、消えてないだろ……?」

モウカザル「……っ! そんなの……!」

「お前が、あの三匹で、救助隊になった姿、見て、みたかったな……」

ゴウカザル「託したぞ……モウカザル」




「どんな闇でも、必ず、照らす。光であれ……」
 ▼ 124 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:44:22 ID:yozeKMCg [28/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

モウカザル「ぱぱ……! ぱぱぁ……!」


動かない体に、溢れる涙が落ちる。

力を失い、ゆっくりと瞼を下ろした。
その手に昔優しく、安心させてくれるような温もりはない。


モウカザル「うっ……うぅっ……!」



ジュペッタ「時は、待ってくれない。どれだけ苦しくてもだ」


「黙れ」


涙を吹き、立ち上がる。
振り向いて目を合わせた二体。


ジュペッタ「お前が、俺と戦うつもりか?」


「俺は……受け継いだんだ」


モウカザル「『どれだけ暗くて、深い闇のなかでも……どんな暗闇の中でも、自分達が必ず照らす光になる』」


「トモシビの意味だ」
 ▼ 125 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:45:20 ID:yozeKMCg [29/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



『もう一つの意味?』


ジュペッタ「灯はもう、途絶えた。」


モウカザル「いや、まだ消えてない」


そうだ、まだ消えてない。

父さんの思いは、炎は。


『そうだ』


モウカザル「俺が受け継いだ……!」


だからまた、

俺の中で……。


『炎は、たとえ、水をぶっかけられて、どれだけ小さくなってしまっても……完全に消えない限りは──』



またもう一度、



熱く燃え上がることができる!
 ▼ 126 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:46:13 ID:yozeKMCg [30/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────────── 刹那

尻尾の先端についた火が何倍にも大きく燃え盛り、モウカザルの体を竜巻のようになり覆い隠す。


ジュペッタ「……!?」


炎は更に広がり、円を描くように地面に引火していった。熱は伝染し、街が一瞬にして熱気に覆われる。


ジュナイパー「モウカザル……!」


やがて炎は球体に収束し、弾け飛んだ。
その中から姿を現したのは、数秒前とは全く違う姿。


ジュペッタ「……」


「これが、本当の進化か……」


ゴウカザル「ダメだな……。父が死んで、故郷をめちゃくちゃにされて、憎い筈なのに、苦しい筈なのに、辛い筈なのに、どこか清々しい気持ちだ」

ジュペッタ「ふん、前とは違って自分の力とでも?」


ゴウカザル「いや、これは俺の力じゃない。だけど、それでいいんだ」


「この力でお前を倒す」



ゴウカザル「お前を倒して、ワニノコを取り戻す!!」
 ▼ 127 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:46:49 ID:yozeKMCg [31/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ジュペッタ「────」


「っ!?」



── その瞬間、正体不明の黒い波が起こり、一帯に重力がなくなったように体が浮き上がる。
吹雪のように冷たい暴風が起こり、風圧で押し返された。


ジュナイパー「な、何……?」

ゴウカザル「くっ……!!」



「うっ……! ぐあああああああ!!!」


頭を抱え、耳が引き千切れそうなほどに叫ぶ。


ジュペッタ「クウ……やっぱり俺は……」

「はぁ……はぁ……」


「お前が……居ないと……」


『これからは、ずっと一緒だよ!』




「堪えられない」
 ▼ 128 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:48:29 ID:yozeKMCg [32/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

抑えきれずに漏れだす。


開いたファスナーから、

縫い目から、

ぬいぐるみの綿を、

それを閉じ込めていた布を破り、


怨念が溢れだした。



ぬいぐるみは内側からバラバラに引き裂かれ、魂は器を失い、漂う。その姿はまるで、人間の子どものよう。


ゴウカザル「あれがジュペッタ……!?」

ジュナイパー「ぬいぐるみに宿った。『怨念』」



「違う」
 ▼ 129 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:49:30 ID:yozeKMCg [33/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「一つの魂が、怨念となったのだ」


「この世界が、そうさせた……」


半透明の人間、黒い髪は長く。白いワンピースを来ていた。


ジュナイパー「あの時声をかけてきた……」

『汚れてるよ?』


ゴウカザル「……」


ゆっくりと拳を構える。


「動くな」


「動けば死ぬ」


「止まればそのまま」


「醜い争いも、裏切りも、悲しみも」



「全てが止まる」

 ▼ 130 い◆5oP7VYU6fg 17/08/15 20:49:51 ID:yozeKMCg [34/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「止まれば、平和だ」

「今、この時は、二度と来ない」

「時は流れる」


「今、この瞬間を、保存しよう」



ゴウカザル「何を……言って……!」


「三日。三日後、氷火山で待つ」

「お前の友は、その頂上にいるだろう」


ゴウカザル「……! ワニノコ!?」



「待っているぞ」



念は渦巻いて空へと消えていった。


戦いは、終わった。
 ▼ 131 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:33:17 ID:3aysx65U [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ボロボロの家屋。死んだポケモン。
その夜、街に見えない雨が降る。


「父さん」

ジュナイパー「……」


ゴウカザル「大丈夫、悔やんでる時間なんてない……!」


父が眠る部屋を出て辺りを見渡す。ジュペッタにより、街は半壊した。家を失ったポケモン達や、家族を失ったポケモン。

だけど、止まっているわけにはいかない。

俺には、俺たちにはやらなければならないことがある。


ドクロッグ「三日後か、それまでに準備をしてろってことだろうな」

ゴウカザル「先に攻めればいいんじゃ?」


ドクロッグ「ダメだ。こっちも怪我してる奴が多い、戦力が足りなきゃ返り討ちだ」


ゴウカザル「でも、三日で回復するポケモンもそんな多くない」

ドクロッグ「あぁ、ギルドに頼んで他所にいる救助隊も出来るだけ集めるしかない」


ゴウカザル「なるほど……」


オーダイル「ゴウカザル君、改めて謝らせてくれ、すまない」

ゴウカザル「え?」


オーダイル「君の父にワニノコと君の関係の一部を聞いたよ。僕ら大人にも非があった。申し訳ない」

ゴウカザル「い、いや、そんなこと……」


オーダイル「ワニノコは、頂上で待っていると言ったな。我が子を苦しませた俺に息子を止める資格はない。頼んだぞ」


ゴウカザル「はい……!」

 ▼ 132 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:33:42 ID:3aysx65U [2/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──── そして、

空が少しずつ赤く染まる。


暁。



「気にしてるのか?」


ジュナイパー「少しね」

ゴウカザル「お前が悪い訳じゃない。お前が進化しなきゃ、俺は助からなかった」

ジュナイパー「そんな簡単じゃないでしょう。それに、ブリガロンやゾロアは私のせいで怪我した。三日じゃ完治しないって……」



ゴウカザル「そう背負い込むなって、お前、進化してだいぶ変わったな。しゃべり方も雰囲気も」


ジュナイパー「あなたが変わらなさすぎなのよ……」

ゴウカザル「懐かしいな」

ジュナイパー「そうね。こうやって日の出を三人で見た日、まるで昨日のよう」


「また、戻れるかな……あの時みたいに」

ゴウカザル「戻れるさ、戻るんだ。絶対……!」


「その為に強くなった」


 ▼ 133 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:34:08 ID:3aysx65U [3/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──── そして、時は来た。


聳え立つ凍った山。
この中心にフリーザーがいる。
そこへ向かうための道は二つだ。

ポケモンたちは三手に別れる。

火山の正面入り口とドクロッグが案内する裏道、そして全く別行動のゴウカザルが頂上へ向かうための道。


ドクロッグ「さて、同行できるのはここまでだな」

オーダイル「二匹とも、息子のことをよろしくな」

ゴウカザル「はい!」

ジュナイパー「そちらも、フリーザーを……!」


リザードン「ゴウカザル、これを渡す」

ゴウカザル「……?」


手渡されたのは、赤いスカーフの中央に炎模様のバッジが付いているもの。ゴウカザルには記憶に残っていた。


ゴウカザル「これって……」

リザードン「お前の親父がつけていた。トモシビの証だよ。お前にやる」

ゴウカザル「でも、これは……」

リザードン「受け継いだんだろ?」


ゴウカザル「……!」


スカーフを首に巻き、バッジが熱く輝く。


リザードン「やっぱ親子だな。よく似合う」

ゴウカザル「へへっ……」




「みぃつけたぁ」
 ▼ 134 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:35:13 ID:3aysx65U [4/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

刹那、首筋に冷たい息を吹き掛けられたような悪寒が走った。振り返るがそこには誰もおらず。後ろでクスクスと笑う声。


ゴウカザル「こいつ……?」

ドクロッグ「ユキメノコだ、氷とゴーストタイプ。厄介な変態だ」


ユキメノコ「あら、よくご存知で。あなたもかっこいいオスねぇ」


「おい、ユキメノコ勝手な行動をするな」


ジュナイパー「!?」


何もないところに突然現れた。瞬きしていれば見逃すほどの早さ。


フーディン「帰るぞ、遊んでる暇はない」

ユキメノコ「えぇ〜?」


ドクロッグ「待て、俺と戦おう」
 ▼ 135 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:35:28 ID:3aysx65U [5/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴウカザル「は?」


ユキメノコ「あら、ちゃんと用が終わったらたっぷり遊んであげるからねぇ」

ドクロッグ「戦力が足りないから?」

フーディン「……!? 貴様、何を知っている」


ジュナイパー「?」


ドクロッグ「知りたいか?」


フーディン「ユキメノコ、殺すなよ」

ユキメノコ「やったぁ! もちろんよ、元々観賞用に保存するつもりだったからぁ」


ゴウカザル「ま、まって! いくらドクロッグでも、相手は二人だ」


ドクロッグ「大丈夫、相性では有利だ」


ゴウカザル「はぁ!?」


フーディンはエスパー、
ユキメノコは本人が氷、ゴーストタイプと言った。両方格闘タイプを持つドクロッグにはどう考えても不利な相手だ。


ドクロッグ「さっさと行け!」

ゴウカザル「この人頭おかしくなったんじゃ……」

ジュナイパー「待って! ドクロッグ、敵のスパイなのに、何故相手に知られてないの?」

ゴウカザル「確かに!」



ドクロッグ「あぁ〜……」
 ▼ 136 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:36:02 ID:3aysx65U [6/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

フーディン「? どう言うことだ?」

オーダイル「何だ、まだ知らせてなかったのか」


ドクロッグ「まぁ、そろそろネタバラシしても良いか……」


ドクロッグ独特の嘲笑うような表情を見せ、少し前のめりになる。


ドクロッグ「お前ら、戦力が足りないんだろ?」

「それは、戦力をプレゼントしてくれるはずの味方が突然消えたから」

フーディン「何が言いたい?」


ドクロッグ「知ってるか?」


「三つの姿を持つポケモンを……!!」


ゴウカザル「……!?」


刹那、青を基調とした毒々しい体色はシンプルな黒色に、喉元にある巨大な毒袋は消え、代わりに長く伸び、炎を思わせる赤色のたてがみ。


「それが俺、ゾロアークだ」
 ▼ 137 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:37:00 ID:3aysx65U [7/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゾロアーク「驚いたか?」


ゴウカザル「う、嘘だろ。まさか今までドクロッグだと思ってたのが……」

ジュナイパー「だけど、ゾロアークの変身ってゾロアと同じで、強いダメージを受けると解けてしまうはずじゃ……」


ゾロアーク「何で今まで解けなかったかって?」

オーダイル「簡単な話、あいつが強いからだ」


フーディン「デリバード……まさか!」


ゾロアーク「そうだ。俺だよ」



ゾロアーク「気づかなかったか? こっちだって伊達にスパイやってないんだ」


ジュナイパー「凄い……!」


ゴウカザル「じゃあ、あの時……」


『俺のプレゼントもくれぇ!』

『全く君ら、親に似て無邪気で元気だな』

ゾロアーク「デリバードの姿の俺はお前らに頼まれてプレゼント配りながら目ぼしいガキを探せってな」

フーディン「なるほど、そういうことか……通りで帰ってこないわけだ」

ユキメノコ「今の姿も悪そうで好みね」


ゾロアーク「まさか気づかれてないとは思わなかったがな。さぁ、この姿なら相性超有利だ」

「お前ら、この二匹は俺に任せて行け」


ゴウカザル「わ、わかった!」

ゾロアーク「ゴウカザル! ジュナイパー! 友達取り返してこいよ!」

オーダイル「頼んだぞ!」


ゴウカザル「あぁ!」

ジュナイパー「はい!」
 ▼ 138 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:37:39 ID:3aysx65U [8/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──── ゾロアークに教わった別の道を使い、頂上へ向かう。冷たく、滑りやすい岩の洞窟の中を走る途中、ある予想が浮かんだ。


ゴウカザル「なぁ、ジュペッタはデリバードやドクロッグの正体を知っていたのかな」

ジュナイパー「……?」

ゴウカザル「だって、普通の道じゃあ、頂上になんていけないだろ? ってことは、今通ってるこの道を俺たちが知ってる。のを知ってるから言ったんじゃないか?」


ジュナイパー「確かに……考えすぎな気もするけれど、あんな恐ろしい姿見せられたら、何もありえないって言えなくなるわ」

ゴウカザル「フリーザーは、あれより強いのかな?」

ジュナイパー「考えたくないわね」


少し走った先、広めの空間に出た。
ずっと変わらない景色だったため、少し落ち着き、安堵する二匹。


ジュナイパー「あと頂上までどれくらいなのかしら」

ゴウカザル「結構ペース速かったから、だいぶ登った気がするけど」


「おい、お前ら!」

ジュナイパー「……?」


腰を下ろし、休憩してる合間に気づけば進行方向で立ち塞がるポケモンの姿。


マニューラ「どっちの方が速いポケモンだ?」


ゴウカザル「それはお」

ジュナイパー「私よ」
 ▼ 139 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:38:06 ID:3aysx65U [9/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゴウカザル「???????」


マニューラ「へへっ、そうか。楽しませてくれよ?」


「もちろんよ」


ゴウカザル「お、おい?」

ジュナイパー「あなたは頂上まで体力使っちゃダメでしょ。先に行ってて!」

ゴウカザル「そうだけど……」


友と万全の状態で対峙してほしい。って考えなのだろうが、見たところ相手はスピードタイプ。特に速いわけではない上に草タイプのジュナイパーでは、氷タイプのマニューラに不利だ。この状況では明らかに俺の方が適役だった。


ジュナイパー「お願い、私にやらせて」

ゴウカザル「わ、わかった」


ジュナイパー「ゴウカザル……」


「絶対、負けないでね。また私をあの日に連れてって!」


ゴウカザル「あぁ! 必ず!」


親指をたててグッドのサイン。
ニヤリと笑って敵を睨み直した。
親友に背を任せ、先に進む。


ジュナイパー「いいの? 追わなくて」

マニューラ「俺は速いやつと戦いたいだけで、ジュペッタやお前らの事情なんてどうでも良いからな」

ジュナイパー「意外と緩いのね。そちらの組織は、こっちは厳しすぎてグレるポケモンばかりよ」

マニューラ「そりゃ大変だ。じゃあお前にも期待して良いってことだよな?」


ジュナイパー「どうかしら……私は異端児だから」

 ▼ 140 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:38:52 ID:3aysx65U [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────



狭く殺風景な洞窟を走り続けた先、空から差す光が見えた。その中に飛び込めば封印から解き放たれたように世界が広がる。

不安や興奮、あらゆる感情が入り交じって自らの鼓動を早くした。そのきっかけは勿論、今仁王立つ一匹のポケモン。

「来たか」


ゴウカザル「久しぶりだな、ワニノコ……いや」

「オーダイル」


記憶の中の彼との大きな違い。しかし想定していたことだ。俺が強かったから、お前も強くなった。
俺が進化したのなら、お前も進化していてもおかしくない。


オーダイル「いつぶりだ?」


あれから一年も無いだろうか。
本当にこの短期間で沢山の事が起きた。
色んな事を知った。

これだけ強くなれたのは、お前のお陰に他ならない。


オーダイル「俺は変わった。あの時とは違う。進化の泉の水を飲み、強くなった。お前にも劣らないほどにな……!」
 ▼ 141 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:39:08 ID:3aysx65U [11/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゴウカザル「オーダイル、ずっと、謝りたかったんだ」

オーダイル「ふん、同情はいらない。俺がここに立っているのは、俺が弱かったからだ」


ゴウカザル「違う。それ以上に俺は弱かった。あの日、ヤンチャムに負けて、お前に負けた日、俺は進化の泉に行った」


オーダイル「……!!」


ゴウカザル「お前なら、わかるだろ? 負けたくなかったんだ。負けるのが怖かった。だから俺は進化の水を飲んだ」

オーダイル「お前……!」


目を見開いた。
酷く憤っている様子だった。
当然だ。わかっていた。

自分の力で強くなって、俺を目指していたお前の気持ちを踏み躙ることだから。

その力で、お前の信念を壊した。


ゴウカザル「ごめん。あの時、俺が進化していなかったら、お前が」

オーダイル「いいや、ありがとう。お前があの日俺に負けていたら、俺はここまで強くなれていなかっただろう」

ゴウカザル「……!」


オーダイル「お前に勝つため! それが俺が今ここに立っている理由だ!!」
 ▼ 142 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:39:42 ID:3aysx65U [12/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────


フーディン「ふん、相性で有利と言えど、二体相手には分が悪いのでは?」

ユキメノコ「はぁー……!」


ゾロアーク「……あられ?」


ポツリと氷が体に当たり、空を見上げれば、自分達の頭上にのみ雲が出来ていた。ユキメノコの業だろう。


ゾロアーク「雪隠れか」


ユキメノコ「そう、あなたに私の見えるかしら?」


特性雪隠れ。天気が雪、あられの時、姿を隠し、攻撃するのが困難となる。だが隠す。と言う意味ではこちらも似たようなものだ。


「なるほど、出てきたり消えたり、こりゃ当たらねぇわ」
 ▼ 143 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:40:23 ID:3aysx65U [13/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ユキメノコ「ふふふ……逃がさないわよ……!」

ゾロアーク「……!」


雪のなかを幻のように曖昧な姿で飛び回る。埒が明かないと雲の無い方へ移動しようとするが足を凍らされて動けない。


ユキメノコ「ふふっいいたてがみねぇ」


背後に回り、やさしく赤い髪を撫でた。
ユキメノコは気に入ったポケモンを凍らせて棲みかに隠すらしい。


ゾロアーク「相変わらず不気味な趣味してやがる」

ユキメノコ「あなたもすぐにそうしてあげるわ」

ゾロアーク「へぇ……」


フーディン「──っ! ユキメノコ! 離れろ!」

ユキメノコ「!?」


手を首もとに伸ばし、顎に手を当てた瞬間、ゾロアークの体が冷たく、白く変わり果て、雪のように崩れた。


「もう遅い」

ユキメノコ「まさか……!」


ゾロアーク「幻だ」


気づき、キョロキョロと見回すユキメノコの後頭部を掴み、雪の地面へと叩き付けた。


ユキメノコ「……っ!!」

ゾロアーク「特定の相手に幻を見せる。油断したな! くらえ!!」

フーディン「チッ!」



「ナイトバースト!!!」


掌から赤黒い深淵の衝撃波を放った。触れるだけで電撃のような苦痛が走る。それほど強力なドーム状の波が二匹を呑み込んだ。


ゾロアーク「まぁ相手が悪かったな。しかし、デリバードの件といい、案外年寄りで偉そうにしてる参謀のくせに、バカなのか? フーディンさん」

フーディン「くそっ、クソガキが……!」
 ▼ 144 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:41:00 ID:3aysx65U [14/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

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『私にやらせて』


とは言ったものの……


マニューラ「行くぜ!」


矢が全く当たらない。

敵が速すぎるからだ。

どれだけ打っても懐にはいられ、接近戦を強いられる。思い出すの、ゾロア達に教わったことを、何とか隙を見つけなければ勝てない。


『面と向かってバトルするなんて』


一対一の正面衝突はもっとも苦手とするところを、だけど、それを何とかするしかない。
矢を刃に変えて攻撃するリーフブレード。接近戦も教わっているため、そこそこ対応できた。


マニューラ「どうした? 動きが鈍いぞ!」


だが攻勢に移れない。防戦一方、このままでは押し負けてしまうだろう。考えてるうちに背後に回られ、反応しきれずに攻撃を受けた。


マニューラ「おせぇな。本当にお前あいつより速いのか?」

ジュナイパー「はぁ……はぁ……」
 ▼ 145 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:41:15 ID:3aysx65U [15/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

マニューラ「……あぁ、そうか、オーダイルか」

ジュナイパー「! ワニノコのことを知ってるの……?」

マニューラ「あぁ、こんなかじゃよく話す方でな、だからここを任された」

「来たばっかの頃はお前らのこともよく話してた。懐かしそうに、悩んでたみたいだな」


ジュナイパー「やっぱり……!」

マニューラ「そりゃそうだよなぁ、世界を敵に回す計画だ。だが、今は違う」


「説得しようとしても無駄だぜ、求めていた強さを手に入れたあいつは、友を捨てた」


ジュナイパー「……っ!!」


最後の言葉に反射するように体が動いていた。信じられなかった。信じたくなかった。
信じる意味もなかった。

もう一度、

三匹で笑い会える日々に。

戻りたいから。


今までの思い出を、否定されるなんて、

許せるわけない。
 ▼ 146 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:41:41 ID:3aysx65U [16/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


放たれた矢は、当然のようにかわすマニューラだが、一発は敵に当てる気は無い。

刺さったのは、敵の「影」

刹那、しばられたように動けなくなる。


マニューラ「なんだ!?」

ジュナイパー「影を固定したのよ」


影縫い。
影と地面を縫い合わせ、敵の動きを止めた。
そして、本命に繋げる。

エナジーボール、自然の力を集めた結晶を放つ。

もちろん直撃、爆発が起きた。


ジュナイパー「!!」


羽根を開いた状態から大きく羽ばたく。
その勢いで仕込んだ矢羽根が一斉に飛び出した。それぞれが影のようなオーラを纏い、意思があるかのように円形に整列する。


ジュナイパー「これで決める!!」



敵は今、黒き爆煙の中。
その中心に向かい、矢が一斉に放たれた。

ジュナイパー「いけ!」

それぞれ邪魔しないように宙を飛び回り、黒煙へと飛び込んだ。


ジュナイパー「……やった……?」
 ▼ 147 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:42:26 ID:3aysx65U [17/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

一瞬静寂が流れた。


「油断するな」


刹那、放たれた薄い水色の光線がジュナイパーの足下に当たる。


完全に油断していた。


ジュナイパー「足が……!」


動けない。

凍らされたことに意識を取られていた時、
マニューラが空を飛ぶポケモンに割かれる雲のように黒い爪に爆煙をまといながら飛び出す。


マニューラ「不意打ちは好きじゃないんだがな、今のは痛かったぜ」


ジュナイパー「しまっ!」


辻斬り、当たれば効果は抜群、ただではすまない。残った刃を抜こうとするが、間に合わない。

まずい。


マニューラ「死ね!!」


爪を振りかぶって上空から飛び込んだそれの腹が、勢いのまま鋭いなにかに突き刺さり、押し返される。


マニューラ「……!?!?」


「うっわぁ〜痛そう」

「ガッツリ入ったな……」


ジュナイパー「!? 二人とも……何で……!」


ブリガロン「悪い、遅れたわ」

ゾロア「今腹にグサッって……悶絶ものだぞ」


マニューラ「何だぁ? お前ら……」


ブリガロン「ジュナイパーのチーム。キスのメンバーよ」
 ▼ 148 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:42:52 ID:3aysx65U [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ジュプトル「おらよ」


ゾロアはジュプトルへと変身し、私へバンダナを渡した。中央には矢羽根を模したマーク。


ジュナイパー「これって……」


ブリガロン「やるよ、今度は独りじゃなく」

ジュプトル「救助隊キスのメンバーとして」


マニューラ「なるほど、三対一かこりゃあ使うしかないか」


ジュプトル「……?」



────
 ▼ 149 い◆5oP7VYU6fg 17/08/16 19:43:13 ID:3aysx65U [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゾロアーク「何だこの瓶、中に入ってるのは水か?」

フーディン「言うと思うか?」

ゾロアーク「へぇ……喋らないんだ。じゃあ無理矢理喋らせてやるよ……化ける幻で何でも見せられるんだ。覚悟しろよ」

ユキメノコ「進化の泉の水よ」


ゾロアーク「……! でも、何で効果は進化だけのはずじゃ?」


ユキメノコ「いいえ、それだけじゃない、そのエネルギーから、飲むだけで一時的に身体能力が強化される。ドーピングのようなものよ」

ゾロアーク「そんな力が……! 閉鎖するわけだな」

「ジュペッタはそのエネルギーと自らの魂を使って。フリーザーの体とそれ以上の力を我者にしようとしている」


フーディン「貴様情報を敵にペラペラと……」


ユキメノコ「今は私が飲んであなたをぶち殺してやりたいけどね……。よくもメスポケモンの顔面を傷だらけに」


ゾロアーク「悪かったって」




── 「相変わらず強力な力だぜ……」


瓶の中の透き通る水を全て飲み干した。


ジュプトル「まさか……!」

ブリガロン「進化の水」


マニューラ「はっはっ、これなら負ける気がしねぇ、さぁ来いよ」


ジュプトル「行くぞ」

ブリガロン「あぁ」

ジュナイパー「は、はい!」
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