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【暑い日SS】 僕の太陽

 ▼ 1 oxtmyvjwlY 17/08/12 15:12:22 ID:o6CJCPuc [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
太陽は偉大だ。

僕らに光を与えてくれる。熱を与えてくれる。
僕らは太陽の恩恵を受けて日々暮らしているんだ。

特にここアローラ地方では、年中太陽が燦々と輝いている。正直言って、暑い。暑すぎる。一年中夏だ。だけど、皆が太陽に感謝している。

光あるところに陰あり。
太陽は光と同時に陰を生み出す。

光の下で堂々と生きてる者もいれば、陰でひっそりと暮らす者もいる。
特に僕みたいなアローラ地方では必要とされていない存在は。

ヤトウモリ「だって僕は、嫌われものだからね……。」
 ▼ 2 oxtmyvjwlY 17/08/12 15:18:33 ID:o6CJCPuc [2/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
アローラ地方は島国だ。
この暑い地方にとって、海が近いというのは素晴らしいことらしい。海はいつでも人でいっぱい。

僕も毎日のようにビーチに行く。
夕方くらいに、海に沈んでいく太陽を見るのが大好きだ。

昼間に堂々と存在感を発揮し、役割を果たし終えた後はすっと身を引く。そんな勇姿が僕には眩しかった。
太陽は、僕にとって憧れの存在なんだ。太陽みたいになりたいとさえ思う。

ヤトウモリ「さて、そろそろ帰るか。」

太陽もすっかり沈み辺りは暗くなっていた。
日中は明るすぎるから、僕にはこれくらいがちょうどいい。

ヤトウモリ「そういえば、ごはんまだ食べて無かったな……。」

僕は野生のポケモンだから、自分の力で食べ物を手に入れなくてはならない。だけど、これがとても大変。

とりあえず食料を探すためにビーチを離れた。今なら辺りも暗いし、人に見つかる心配はなさそうだ。

ヤトウモリ「…………。」

とりあえず海とは正反対の方に歩いて来たけれど、食料になりそうなものは見当たらない。ここアーカラ島は森林も少なく、他の島に比べて食料が少ないらしい。僕自身はこの島を出たことがないけれど、そんな話をしているのを耳にしたことがある。

ヤトウモリ「……何かある!」

ふと食べ物の匂いが鼻を抜けた。見渡してみると、どうやら柵の向こうに木の実がたくさんあるようだ。

ヤトウモリ「ごちそうだ!!」

僕は思わず走って行き、柵の隙間をくぐって木の実の山にかぶりついた。

おいしい!!

栄養満点なオボンの実を始めとするありとあらゆる木
の実が揃っている。ここまで豪華な食事は久しぶりだ。

「ブモォ……!」

いやーまさかこんな豪華な食事が頂けるとは思ってもいなかったよ。……って、何か鳴いた?

恐る恐る後ろを振り返ってみると、たくさんのケンタロスやミルタンク達が僕の方を見ている。

ヤトウモリ「ゲッ……。」

本能的に体が動いた。僕は一目散に駆け出し、柵を通り抜け、来た道を戻っていった。柵を越えているからかさすがに追いかけて来なかったけれど、逃げ出すと同時に発せられた唸り声がまだ耳に残っている。
 ▼ 3 oxtmyvjwlY 17/08/12 15:19:13 ID:o6CJCPuc [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヤトウモリ「はあ、ビックリした〜!」

岩の陰に隠れ息をつく。しかし参った、あれはあそこにいるケンタロス達のご飯だったのか……。

しばらくそこでじっとしていると、ある声が聞こえた。

「ああそうか、だからそんなに興奮してたのか。」

人間の声だ!

声のする方を向いてみると、僕がさっきご飯を食べてしまった柵の中で、人間がケンタロスの頭を撫でている。

「そいつもお腹が空いてたんだろ。ほら、追加してやるからもう怒るなよな。」

こんなことは初めてだった。

僕は、なかなか食料が見つからないときにたまに人やポケモンから食料を取ってしまう。悪いって分かってるけれど、生きていくためには仕方ないんだ……。

今回もそうだ。気付かなかったとはいえ、ケンタロス達のご飯を食べてしまった。怒られて当然なのに、あの人は怒っていない。

僕は唐突にまた柵の方へ走って行った。そして、その人の前に行くと頭を下げた。ケンタロスが騒ぎ出す。ポケモン達はまだ怒っているみたいだ。

「もしかして、お前が木の実とか食ったのか?」

ヤトウモリ「ヤト……。」

「見た感じ反省してそうだし、もういいぞ。それに、わざわざ謝りに来るなんて偉いんだな。」

ヤトウモリ「……?」

偉い?この僕が?

他のヤトウモリにも、もちろん人間にも、そんなことを言われたのは初めてだった。僕はなんだが恥ずかしくなって、その場から逃げ出した。なんだか顔が火照っている気がする。おかしいな、今晩はやけに暑いな、なんて。

そのままお気に入りの寝床まで着くと、すぐに眠ってしまった。気持ちよく眠れたのも久しぶりだ。
 ▼ 4 oxtmyvjwlY 17/08/12 15:50:02 ID:o6CJCPuc [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

朝。

ヤトウモリ「おはよう……。」

気持ちの良い朝だな。よし、今日はジャングルへ行こうかな。

僕はビーチからそんなに離れたくなくて、普段はあまりジャングルへ近づかないんだけれど、今日はなんだか元気もあるし少しは冒険するのも悪くはないかな。

早速僕はジャングルに向かって走り出した。一旦街に入り、そこから北へ進むとまっすぐな道に出る。

途中で右へ曲がると人間がたくさん集まる場所があるけれど、そこを無視してさらにまっすぐ進む。すると、ジャングルはもう目の前だ。

今日も暑い。走ったから尚更だ。でも、ジャングルに入るとすぐに涼しくなった。木陰、樹と樹の間を吹き抜ける気持ちの良い風。ここってこんなに気持ちの良い場所だったんだな。今までの人生半分損した様な気分だ。

ジャングルというだけあって木々が生い茂っていて、その分木の実やキノコがたくさんあった。

ヤトウモリ「すっごい……!」

僕はそこら辺の木の実を頬張りながら奥へ奥へと進んで行った。キノコは毒が含まれてるかも知れないから、あまり近づかない。ポケモンの可能性だってある。

無我夢中で進んで行くと、行き止まりになっていた。他の場所とは雰囲気が違う。

周りを見渡すと、僕は何か入れ物のようなのを見つけた。覗いて見ると木の実がたくさん入っている。よく見ると、貴重なタネも!

ヤトウモリ「いっただっきまーす!!」

思わぬごちそうに早速食らいつこうとした時、何やら鋭い視線を感じた。

恐る恐る周りを見渡して見ると、前方に何かの姿が見えた。段々大きくなっていく。何かが近づいて来る。

「ララーーン!」

声が高く響いた途端、空から太陽の光がこれでもかと言うぐらいに差し込んだ。まぶしさに思わず目を細める。そんな細い目を通して僕に見えたのは、普通ではありえないくらいの大きなラランテスだった。

あまりの大きさに、僕は足が動かなかった。恐怖で心臓がバクバクする。逃げたい、逃げるべきだ。分かってるけれど、体が言うことを聞かない。

ラランテスが右手を上げた。その手先に光が集まってくる。

「ラッラーーン!!」

手先の光が段々と大きくなっていく。これでもかというくらいに輝きが増していく。そしてその右手を思いっきり振り落とした。

ヤトウモリ「うわああああああああ!」

その一撃は強力な物だった。僕は後方に激しく吹っ飛び、背中を打ってしまった。タイプのお陰で何とか持ち堪えたものの、次に食らえばどうなるかは分からない。

でも、吹っ飛ばされたおかげで体の硬直は解けていた。僕は体を翻し一目散にその場から逃げ出した。きた道を戻り、ジャングルを抜けてもなお走り続けた。

ヤトウモリ「はあ…はあ…はあ…。」

僕は自分の寝床に飛び込んだ。ここまで一気に走ってきたため、当然息が荒い。ベッドに倒れこむ。脚がガクガクする。

ヤトウモリ「何なんだよ全く…………。」

昨日から僕は走ってばかりだ。もう疲れた。しばらくそのまま横になり息を整える。

ヤトウモリ「うっ……。」

ジャングルの中でたくさん木の実を食べていたからか少し気持ち悪い。食後の運動はやはり体に良くない。
 ▼ 5 oxtmyvjwlY 17/08/12 20:07:26 ID:o6CJCPuc [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
しばらく横になっていると、いつの間にか寝てしまっていた。目が覚めた頃には夕方になっていた。

ヤトウモリ「ビーチ、行くか……。」

いつものように太陽を見に行く。今日も良い天気だ。夕焼けがまぶしい。

ビーチに着き、じっと太陽を見つめる。そうしていると自然と物思いに耽ってしまう。ラランテス、怖かったな。食事の直後に寝ると太るって聞いたことあったな……太るのは嫌だなあ。はあ……僕は…………。

「あれ、もしかして昨日のヤトウモリか?」

突然人間に話しかけられ、ビックリして飛び上がってしまった。

「おいおい、そんなに怖がるなよなあ〜。」

と言って、人間は僕の隣に座った。確かに、この人は昨日農場に居た人だ。

なんでこの人がここにいるのか、どうして僕の隣に座るのか。少し気になるけれど、僕はなんだが居心地が良く、気にも止めずにまた太陽を見つめた。

「……お前、太陽が好きなのか?」

その問いに、僕は黙って首を縦に振った。人間は、「そうか」とだけ言ってまた黙った。

僕たちはしばらく無言でただ太陽を眺めていた。
太陽の勇姿を目に焼き付けていた。

「なあ……。」

ふいに人間が言葉を発した。僕はその声に吸い込まれるように人間の顔を見た。

「太陽って、良いよな……。」

そうか、この人も太陽が好きなんだな。僕は勝手に親近感を抱いた。嬉しかった。

「あの、堂々とした態度が良いよな。こう、何て言うか、皆を優しく見守ってる感じとか!」

ヤトウモリ「ヤトヤト!!」

そう、そうなんだよ。この人は良く分かってる。
僕と同じことを思っている人がいたなんて。

「それでな、優しく見守ってる感じはするけど、でも一番熱い奴でもあるんだよな。存在感がたまらないよな!?」

「俺はいつかアローラの炎になりたいと思っている。それは変わらない。でもな、最近太陽こそ一番ハートが熱い奴なんじゃないかなあって思うんだ。」

「俺も、太陽みたいな存在になりたいなあ……。」

ヤトウモリ「ヤトヤト!!」

僕もだよ!僕も太陽みたいになりたいんだ!

言葉では通じないから、体でそれを訴えた。首を大きく縦に振り、喜びのあまり何度か跳ねた。

「そうか、お前もそう思うのか!!」
 ▼ 6 oxtmyvjwlY 17/08/12 20:09:53 ID:o6CJCPuc [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
――――――

――――

――

それから、僕達は太陽について熱く語りあった。
と言っても、人間が話して、僕がそれに同意しては興奮していただけだったけれど。そして、僕達は太陽が沈んだ頃に解散した。




その日から、僕達は夕方になるとビーチに集まり、太陽を眺めるようになった。

人間とこんなにも深く関わるなんて今まであるはずもなく、僕は最高に楽しい日々を送っていた。

太陽について熱く語りあったのは初日だけで、それからはただ、二人並んで太陽を眺めているだけだった。その時間が僕には幸せだった。
 ▼ 7 oxtmyvjwlY 17/08/13 10:37:26 ID:yTOh13QE [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


そんなある日――――。


ヤトウモリ「おはよう……。」

僕は普段通りに起きた。伸びをして外の空気を吸う。

ヤトウモリ「…………暑いな。」

もちろん毎日暑いのだけれど、今日は特に暑いと感じた。普段よりも少し気温が高いのだろう。

こんな日は木陰でゆっくりするのが一番だ。けれど、この前ジャングルに行ってからは近づいてすらいない。自分の中でトラウマになっているようだ。

ヤトウモリ「食料探しに行くかあ……。」

僕は家を出て、当てもなくフラフラと道を歩きだした。

「今日は本当に暑いわね〜。」

「全くだ。ポケモン達も少しバテているよ。」

やっぱり今日は暑いみたいだ。こんなに暑いのは僕だけなんじゃないかと不安に思っていたから少し安心した。人間達の会話を聞きながら、見つからないようこっそりと岩影を縫うように歩く。

「こんだけ暑けりゃヤトウモリらも出てこないだろ。作物がやられたらたまったもんじゃないからな。」

「さあどうかしら。あの子達ってほのおタイプよね?暑いのは平気なんじゃないかしら。」

「ああそうだなあ……。ケッ、来たら追い返してやる。2度と来れんようにな。」

ヤトウモリ「……。」

僕はそっとその場を離れた。
 ▼ 8 oxtmyvjwlY 17/08/13 14:55:18 ID:yTOh13QE [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
―――――

―――




「キャッ!!」

その叫び声にハッとして顔を上げると、小さな女の子が僕を見て震えていた。

お腹が空いていてフラフラ歩いてたせいで、女の子の存在に気付かなかった。僕は慌てて近くにあった岩の後ろに身を潜めた。

「どうしたの!?」

近くにいた母親らしき人が女の子に寄ってくる。

「ヤトウモリさんがいたからビックリしただけー!」

「ごめんね、ままが目を離してたせいで。何もされてない?」

「うん!でも、ヤトウモリさんどっか行っちゃった……。」

「そう、なら良かった。ヤトウモリは毒を持っているから気を付けるのよ。触っちゃ駄目よ。」

毒、か……。

確かに僕は毒を持っている。でもあまり出さないようにしている。だって、誰も襲うことはないし、その毒のせいで一度だけ作物を駄目にしてしまったことがあるから。

僕は元々バトルというのがどうしても苦手だ。強くなりたいとは思う。だけれど、いざ勝負となると怖くなってしまうんだ。だから、僕は仲間たちに馬鹿にされていじめられて逃げ出して、こうして一人お腹を空かせながら日々暮らしているわけだけど……。
 ▼ 9 oxtmyvjwlY 17/08/13 16:02:15 ID:yTOh13QE [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
親子が立ち去るのを待って、僕はまた歩きだした。
すると、木の実がなっている木があった。僕はその木に登って木の実をいくつか食べた。

幸い周りに人は居なかった。家の近くに生えていたから、その家の人の持ち物かもしれない。僕は家に向かって会釈した。

ヤトウモリ「一旦戻るか……。」

まだ少しフラフラする。とりあえず寝床に向かって足を進めた。

寝床に着くとすぐに横になった。
この寝床は自然に出来たと思われる岩壁の小さな穴で、藁を敷き詰めてある。太陽の光を遮ってくれるから、涼むには良い場所だ。


さっき変なことを考えてしまったからか、昔の嫌な記憶がフラッシュバックしてきた。

火山での暮らし。
エンニュート女王には嫌われ、仲間からは弱虫といじめられる日々。

人間に出会ってしまうと何もしていなくても追い払われる。害悪ポケモン。毒を持っている危険なポケモン。

ああ……なんて僕は価値のない生き物なんだろう。

皆から嫌われて、生きるのに必死で。生きる価値なんて何一つないのに。

唯一の楽しみである太陽を見るのも、ただの自己満足だ。現実逃避だ。
 ▼ 10 oxtmyvjwlY 17/08/13 16:21:15 ID:yTOh13QE [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………。

いつの間にか寝ていた。見ていた夢は酷いものだった。寝覚めは最悪。

外に出るとオレンジ色の光が射し込んできた。夕方か。僕はいつものようにビーチに向かった。


ヤトウモリ「……。」

あの人はまだ居なかった。

今日はやけに人が多い。今日は暑いから皆海に入りたくなったのだろう。



海って、気持ち良いのかな。



太陽が毎日帰る場所。



僕もそこに行けば、太陽みたいになれるのかな。



待って太陽。僕も行くよ!



吸い込まれるようにして海の方へ歩いて行った。右足が海の水に触れる。冷たくてが気持ちが良い。僕はそのまま太陽目指して歩いて行った。

足が付かなくなった。体が波に飲まれる。息が出来なくなる。それでも僕は懸命に体を動かして太陽の方へ泳いでいった。泳ぎ方は知らなかった。それでも、少しずつ太陽に近づいてる気がした。
 ▼ 11 oxtmyvjwlY 17/08/13 16:25:57 ID:yTOh13QE [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


お願い、待って………!


ねえ、逃げないでよ。


おい、逃げるなよ。


一番高い所で平等に光を与えているつもりだろうが、じゃあなんで僕は輝けないのさ。


僕を追い出す人間なんかが光の下で堂々と暮らしているのに、どうして僕は!!


憎い。


この弱虫でみじめな僕が、憎い!


人間が、他の仲間が、太陽が、人生が憎い!


もう嫌だ。


こんな生活は嫌だ。


このまま、嫌われたまま惨めな生活を送るなんて。


でも、もう大丈夫。


僕は太陽になるんだ。


このまま行けば、僕だって太陽の所に行ける。


そして、僕も太陽になるんだ。


そしたら、僕だって輝ける……


僕は……太陽に……!


―――――――

――――

――
 ▼ 12 oxtmyvjwlY 17/08/13 16:43:59 ID:yTOh13QE [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「…………ぃ。」

「おい!!しっかりしろ!」


目が覚めた。

あれ、僕は一体…………。

………そうだ、僕は太陽に向かって泳いでいたんだ。

でも、どうして。

「お前何考えてるんだ!?泳げない癖に海に入って、死にたいのか!?」

この声は……太陽が好きなあの人だ。

周りを見ると、ここはどうやらポケモンセンターのようだ。

「海で人だかりが出来てるから何かと思えばお前溺れてたんだぞ!?」

ヤトウモリ「ヤト………。」

僕は溺れていた所をこの人に助けてもらったらしい。
あの時の僕はどうかしていた。

「何であんなことしたんだ!?まさか、太陽が好きだからって太陽のとこに行こうとしたんじゃないだろうな?」

ギクッ。図星だ。
僕は渋々うなずいた。

「ったく……。そんなことしたって無駄だぞ?そもそも太陽は海に沈まんし。」

えっ!?太陽って海にお家があるんじゃないの!?

僕はガックリきて露骨に肩を落とした。

「そういえば、お前も太陽みたいになりたいって言ってたよな?」

僕はコクンと頷いた。

「だったらまずは昇れ!太陽みたいに高くな!」

「いきなり太陽と一緒に沈んでちゃ駄目だ!太陽だってまずは高くまで昇って役割を果たしてから沈んでるだろ!始めから沈んでてどうすんだ!?」

ヤトウモリ「………。」

確かに、この人の言う通りだ。
僕は何の努力もせずに、ただ漠然と太陽みたいになりたいと思っていた。でも、それじゃ駄目なんだ。

ヤトウモリ「ヤトヤト!」

「よし、少しは元気になったな。ほのおタイプはそうでなくちゃ。熱く行かなくちゃな!」

この人は本当にすごい。
こんな僕を見捨てず、認めてくれる。

僕は、この人とずっと一緒にいたい。

この人は、僕にとって太陽みたいな人だ。
 ▼ 13 oxtmyvjwlY 17/08/13 16:44:28 ID:yTOh13QE [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
それから僕は、毎日この人の農場に通うようになった。

その人や家族は僕を暖かく迎えてくれる。

ポケモン達は最初はまだ怒っていたけれど、段々そんなこともなくなっていった。

1度、その人が僕をゲットしようとしたけれど、それは僕から拒んだ。この、今までの距離感が丁度良いんだ。

そして僕は、太陽目指して特訓を始めた。

その人のポケモンとバトルの練習をするんだ。
怖いし大変だけど、でもとても楽しい。毎日が充実している。ついでにご飯も貰える。

存在を認めてくれて、僕と一緒に居てくれる。

それだけで充分なんだ。

僕も生きてて良いんだって、初めて思えた。


本当にありがとう。
あの時、僕を助けてくれて……。




【暑い日SS】 僕の太陽 ー完ー

 ▼ 14 oxtmyvjwlY 17/08/13 16:46:02 ID:yTOh13QE [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
駆け足&かなり短くなってしまいましたが、無事に完結しました、ありがとうございました!
 ▼ 15 ングラー@シルバースプレー 17/08/13 20:20:20 ID:ii9LfpRo NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です!
 ▼ 16 レイハナ@エドマのみ 17/08/13 22:54:04 ID:AKc/p2Jw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
 ▼ 17 ポエラー@ヘルガナイト 17/08/14 23:02:46 ID:I5BVhciY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 ▼ 18 ンキー@たんけんセット 17/08/15 21:26:16 ID:m8MAJTCg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 19 キカブリ@かおるキノコ 17/08/20 14:51:16 ID:SS2LrfYE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
いい話でした!
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