【旅SS】女「ポケモン達とぶらり旅」


1 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:50:23 ID:WB.XOoew 報告
『さぁてスタートラインにならぶはそうそうたる面々。皆様レースへの意気込みがうかがい知れるというものです』
 
 
 
女(初めて参加する私にもわかる。ここにいる人たちの覚悟は、生半可なものじゃない)
 
女(でも、私がそれに負けているか、と聞かれれば、違うと言える)
 
女(そうだ、この日のためにリサーチを重ねたのだから)
 
女(選手達のコンディション、例年の記録、あらゆる場面での立ち回り。果ては日常のなかのささいなクセまでをも調べあげた)
 
女(すこしたりとも研究を怠るようなマネはしなかった)
 
 
 
『今年は例年よりも参加人数が多く、白熱の戦いが予想されます!』

 

女(ライバルがいくら多かろうと関係ない。私は私の持てる限りを尽くし、この戦いに勝利する)
 
 
 
『みなさんお待ちかね、ポケモン水上レースは間もなくスタートですよー!』

『栄えあるアルトマーレグラスの優勝メダルは誰の手に?』

 
 
女(優勝賞品がなにかなんてことはどうだっていい。私の目的はそんなところにあるのではないのだから)
 
女(メダルやトロフィー、杯よりも重要なものが、このレースの果てにはある) 
 
 
 
 
ネイティ「ポゥ」

ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ヨォー!」
 


───水しぶきを上げ、水上レース参加者たちが飛び出していく。
 
 

こわもての男「始まったな」

こわもての男「アルトマーレ、ポケモン水上レースが!」

120 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:26:22 ID:DYiiEyI. [1/3] 報告
───ビジュアルからみずタイプっぽい、と思ったが、はがねらしさ、かくとうらしさ、むしらしさも感じる。
 
シザリガーを攻撃した技はこうかがばつぐんだった。
 
なら、むしかかくとう、が妥当なところだろうか。
 
考える。
 
考える。
 
どうしていきなり攻撃されている?
  
なぜあのゴンドラ?
 
このポケモンはなんだ?
 
そういった考えをなんとか頭のすみに追いやりながら────優先順位を整理しながら───追いやろうとしていて。
 
オノノクスが殴り付けた敵のポケモンが突然、ボールに戻った。


 
女「?!」
 
船頭「いけ」
 
メタグロス「メッタァ!」ドシン
 

 
───トレーナーのアクションはなかった。
 
なのになぜ、突然入れ替わった?
 
未知のとくせい?

未知のどうぐ?
 
もしくは未知のわざ?
 
いったいどんなポケモンだったんだ。
 
メタグロス、たしかホウエンチャンピオンも使っている。
 
じしんを撃てば抜群だが、しかしここでそれはまずい。
 
道路自体がそんなに広くないし、下手をすれば近所の家に被害が出てしまう。
 
今いるのは人目のない場所だが、壁一枚を隔てた向こうには家があって、そこに暮らす人がいる。
 
誰かの暮らしが息づいているのだ。
 
安直に強力なわざを撃つことはできない。
 
この男の正体は?
 
目的は?
 
と、そんな風に。
121 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:28:06 ID:DYiiEyI. [2/3] 報告
すみに追いやろうとした考えは、突然の事態への対応とぶつかり合って、頭のなかでメチャメチャにとっちらかってしまった。
 
現実時間にしておよそ2秒ほどの停止。
 
致命的だった。
 
 
 
船頭「コメットパンチ」
 
メタグロス「メッ───タァ!!!」
 
オノノクス「ガフッ……」
 
女「……!」
 
 
 
───殴り飛ばされたオノノクスは、その軌道上で頭が真っ白になっていた※※※※※を巻き込み、もつれるように水路に落ちた。
 

 
女「あがっ……ごぼっ」


───オノノクスがぶつかるときにうまくやってくれたおかげか、はたまたパニックによるものか、その時点では強烈な痛みなどはなかった。

しかし、彼にのしかかられるような形で川に落ちてしまった。
 
身動きできない。
 
ろくに息を吸う間もなかったこともある。
 
彼女の意識は、そう長くは持たないだろう。
 
途切れるまでのわずかな時間。
 
オノノクスの背中越しに見えた光景。
 
何かで打ち据えられたように全身をびくり、と震わせ倒れる自分≠フすがた。
 
そうか、あの男の目的は最初から……。
 
 
 
女(待っ………て………)

女(ラティ………ア………)



───ごぼ、と、水を大量に飲み込んだのを最後に、彼女の意識は水の底へと落ちていった。
 

 
122 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:29:16 ID:DYiiEyI. [3/3] 報告



つづく。
123 : ケンカニ@ジュペッタナイト 17/11/14 22:45:37 ID:KBh/sv6M [s] m 報告
待ってました!続きも楽しみにしてます
(,,°^°,,* )
124 : ーケン@むげんのふえ 17/11/23 19:20:39 ID:01sfepNQ 報告
あげ
125 : ズゴロウ@スペシャルアップ 17/11/23 23:55:16 ID:eZKfmDZc m 報告
大支援
126 : ルミル@ありふれたいし 17/11/28 10:59:28 ID:TlascxM2 報告
支援です
127 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:29:48 ID:UOXsFT12 [s] [1/6] 報告
たんぱんこぞう「ストライク! いあいぎり!」
 
ストライク「しやぁ!」
 
コータス「イテッ」
 
女「コータス、ストーンエッジ」
 
コータス「………ふわぁ」
 
ストライク「フワァ」
 
女「えっ」
 
ムックル「?」
 
たんぱんこぞう「なんだ、言うこと聞かねえんじゃん!」
 
たんぱんこぞう「ストライク!シザークロスだ!」
 
女「こうかはいまひとつ=vボソッ
 
女「コータス、かえんほうしゃ」
 
コータス「───こぉ」ボボッ
 
ストライク「」ワタワタ
 
たんぱんこぞう「ひ、ひのこじゃんか……」
 
たんぱんこぞう「いあいぎりだ!」
 
ストライク「ストラィ───?」フラッ
 
ストライク「」コテン
 
たんぱんこぞう「ストライク!? どうしたんだ?」
 
ストライク「zzz……」
 
たんぱんこぞう「ね、ねてる……なんで……?」
 
女「……」
 
女「コータス、かえんほうしゃ」
 
コータス「こぉー」ボボボボボボボボボボボボボボ
 
ストライク「」死ーん

女「」
 
ムックル「」ムッ






 
128 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:31:18 ID:UOXsFT12 [s] [2/6] 報告
女「ここは……」
 
コータス「道がふたつに別れてるね」
 
女「右も左も、同じような道」ボソッ
 
女「看板もないから、運に任せるしかないのかな。それとも、他の人が通るのを待って聞いてみるか……」
 
女「方向的には、どっちも目的地にまっすぐすすんでるわけじゃなさそう。どっかで曲がってる……か」
 
コータス「どん詰まってるかもねぇ」ノソノソ
 
女「なんで、そっちに行くの?」
 
コータス「経験則〜」
 
女「」
 
女「行くしかないか」
 
 
 
女「」ボロッ
 
女「いつまでも目的の方向に向かわない……ハズレだこれ」
 
女「ここらで野宿の準備しよう」ハァ
 
コータス「〜」ノソノソ
 
ムックル「」ムッ
 

 
女「点かない……」
 
コータス「たかが火を起こすくらいで、なに手間取ってんのさぁ」
 
女「そんなこと言ったって、燃料チップが湿気ってるんだから……」
 
コータス「」ボッ
 
女「」ボンッ
 
コータス「これでいい?」
 
女「こふっ」マックロクロスケー
 
焚き火「」パチパチパチッ
 
女「………いいです」
 
ムックル「」ムカムカムカッ



129 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:33:08 ID:UOXsFT12 [s] [3/6] 報告

 
 
女「………zzz」
 

 
ムックル「」ベシッ
 
コータス「?」
 
ムックル「ぴぃ」
 
コータス「はぁ?ツラ貸せ=H」
 

 



コータス「なぁに? ぼく、眠いんだけどぉ」
 
ムックル「お前、黙って見ていりゃ何だ?」
 
ムックル「バトルは適当、というか今日なんかは陰湿ななぶり殺しみたいなことをしやがる」
 
ムックル「前はバトル始まった瞬間、指示も無視してストーンエッジぶっぱなしてやがったな」
 
コータス「勝ってんだからいいじゃん」
 
ムックル「分かれ道で根拠もなく道を選んだかと思いきや、間違ってたら悪びれる様子もねぇ」
 
ムックル「火を起こすときだって、無駄にデカイ炎であいつを黒焦げにしやがった」
 
コータス「調節しくじっただけだよぉ」
 
ムックル「火の粉出してたじゃねぇか」
 
ムックル「───お前らの旅に付き合いはじめてからそんなのばっかだ」
 
ムックル「あいつもお前に何か言うかと思ったが、全然だしよ」
 
コータス「……」
 
ムックル「何のつもりのあてこすりか知らねぇが、パートナーなんだったらそれ、やめろ」
 
ムックル「旅が続かねえぞ」
 
コータス「どうしようと僕の勝手でしょ」
 
ムックル「なに?」
 
コータス「僕は、この旅に付き合ってやってるだけだからさぁ」
 
コータス「別に、パートナーって感じじゃないし」
 
コータス「そういうのは、君がやればいいんじゃん?」

130 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:34:56 ID:UOXsFT12 [4/6] 報告
ムックル「」ビキビキ
 
ムックル「知らねぇようだから教えてやるがな」
 
ムックル「俺ぁテメェのようなやつは気に入らねえんだよッ!」バッ
 
コータス「こー」ボォッ
 
ムックル「んぐっ……」
 
ムックル「ぐぅっ……このっ……」パタパタパタッ
 
コータス「こっ」ボォォオオ
 
ムックル「むぎゅう」ベシャ
 
 
 
コータス「大して強くもないのに、無理しない方がいいよ」
 
ムックル「」キッ 
 
ムックル「!!」バッ
 
コータス「」ガキンッ
 
ムックル「!!??!!」ゴッ
 
ムックル「」ベシャ
 
ムックル「」死ーん
 
コータス「〜♪」ノソノソ
 
 

───翌日。


 
ムックル「」ドン☆
 
コータス「………なに?」
 
ムックル「昨日の続きと行こうや」パタパタッ
 
コータス「」ガキンッ
 
ムックル「!!」ガッ
 
コータス「〜……」ヤレヤレ
 
ムックル「ピィイ!」バッ
 
コータス「!」
 
ムックル「その顔蜂の巣にしてくれるッ!!」ツツクッ
131 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:36:05 ID:UOXsFT12 [5/6] 報告
コータス「」ボッ
 
ムックル「ぶっ……」
 
コータス「」ボォォオオオオオオオオ
 
ムックル「〜…ッ」ポテッ
 
ムックル「」死ーん
 
コータス「」フゥ
 

 
ムックル「!!」バッ
 
コータス「は?」
 
ムックル「!!」ツンツンツンツンツン
 
コータス「痛ででででででで」
 
ムックル「ぴぃいいい!!」ベシッベシッ
 
コータス「」ムカッ
 
コータス「!!」ゴッ
 
ムックル「ぎゃふんっ」ゴチンッ
 
ムックル「ずつき……だとう……」死ーん
 
コータス「……何なの、こいつぅ」ゲンナリ
 

 
───ムックルの夜襲は連日に及んだ。
 
どうにもこうにもコータスの日中のふるまいが気に入らないらしく、夜になってはケンカをふっかけてくるのだ。
 
コータスからすれば大したことのない相手なのだが、なにしろしつこい。
 
彼の人生上、ここまでしつこく食い下がる敵には会ったことがなかった。
 
だいたいは1回殴ってしまえば尻尾を巻いて逃げ出すか、ノックアウトできてしまう。
 
それが2、3回は殴らないと気絶しない上、最近では必ずこちらに攻撃を通すようになってきた。
 
それも、飛び回れるのをいいことに数回は、つついたりはたいたりをくりだしてくる。
 
たいしたダメージではないが、うっとうしいことこの上ない。
 
そのうち諦めるだろう、と踏んでいたが、そうこうしているうちに、事態は(彼にとって)まさかの展開を迎えた。
 

 
女「コータスって、ちょっと自分勝手すぎると思うの」
 
コータス「」
132 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:39:39 ID:UOXsFT12 [6/6] 報告
女「今までコータスと2人きりだったし、パートナーとしてあなたしか知らなかったからわかってなかったけど」
 
女「ムックルはだいたい言うこときくし、変なイタズラしないし、旅の妨げになるようなことしないし、バトルの時もまじめにやってる」
 
女「ていうか、最近毎朝ムックルボロボロだけど」
 
女「コータス、いじめたりしてないよね?」
 
コータス「はぁあ?」
 
女「あんまりコータスがふまじめすぎると、こっちも相応の対応するからね」ムスッ
 
コータス「えぇ……」
 
 
 
───自己中心的にふるまっていると、自然とそのむくいを受けることになるらしい。
 
コータスはすこしおとなになった。


コータス(この僕に、忠実なペットになれってか)ゲンナリ
 
 
 
───しもべのように、と協調的に、とは別のことなのだが、それを理解するのも、間をとれるようになるのも、もう少しだけ先のことになるのだった。
 
 



 
ムクバード「ぴぴるぴ(おら、今日もやんぞ)」
 
コータス「それでも君は来るんだねぇ」ケッ
133 : キノオー@しろいビードロ 17/11/30 22:37:21 ID:74z4eT52 報告
楽しみにしてました!
134 : ルガモス@グラウンドメモリ 17/12/01 21:59:11 ID:/KdTbw0w [s] 報告
(支援…っ)
135 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:46:03 ID:8ehk2lp2 [1/15] 報告
女「」
 

 
───見知らぬ天井を見上げていたのは、これで4回目だ。
 
ひどく、体が重い。
 

 
女「……なんで」
 
 
 
───こんな風にしているんだったか。
 
それを考えた瞬間、頭の中を閃光が弾けるように、意識が途絶える直前までの記憶が駆け抜けて。

力なく倒れる自分≠フ姿を思い出して。
  

 
女「……なにしてんだ」
 

 
───他の誰でもない。
 
自分に向けて吐き捨てた言葉だった。
 
 
 
目が覚めて10分ほどした頃だろうか。
 
ジョーイが彼女の元を訪れた。
 
ジュンサーをともなって。

体の状態を説明されたうえで、命に別状はないこと、今日いっぱいは安静にしているよう言い含められた。
 
10分だけですからね、と連れに釘を刺して、ジョーイは席を譲った。 
  
 
 
ジュンサー「こんにちは、はじめまして」
 
女「こんにちは」
 
ジュンサー「心苦しいかもしれないけど、あなたが溺れる前のことを、聞かせてもらえるかしら」
 
女「どうして」
 
女「いったい、何が」
 
ジュンサー「そうね、まずはことのあらましを説明しましょうか」
 
ジュンサー「あなたたちは、ポケモンハンターに襲われたのよ」
 
ジュンサー「奴はあなたを水路に突き落とし、ラティアスを捕まえ、そして連れ去った」
136 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:47:08 ID:8ehk2lp2 [2/15] 報告
ジュンサー「現段階では、これだけ」
 
ジュンサー「これだけしか、わかっていないの」
 
ジュンサー「だから、あなたの証言がわたしたちにとっては頼みの綱」
 
ジュンサー「だから、教えて」
 
ジュンサー「あなたを襲ったハンターについて。その状況について」
 
ジュンサー「できるだけ、細かに」
 

 
───ジュンサーは、端的に、ゆっくりと、こちらが理解できるよう注意して言ってくれたようだった。
 
あの、ゴンドラ船頭の男。
 
あの男がハンターで、ラティアスを連れ去った。
 
それを聞いた瞬間、頭の中で散らかっていた情報がするするとまとまって。
 
自分に起きたことのいきさつを、彼女は理解するに至った。
 
そして、彼女は自分のおろかさを思い知った。



ジュンサー「……なるほどね」カチッ
 
ジュンサー「ありがとう。これで捜査に進展が望める」
 
ジュンサー「ゆっくり、休んでね」スック
 
女「……あの」
 
ジュンサー「?」
 
女「ラティアスのこと……知ってるんですか?」

ジュンサー「もちろん。アルトマーレの守り神だもの」
 
ジュンサー「みんな知っているわ」
 
ジュンサー「公然の秘密ってやつ」ウィンク
 
女「」
 
ジュンサー「だから、待ってて」
 
ジュンサー「ラティアスは、わたしたちが絶対に救い出してみせるから」
 
 
 
───ジュンサーは、口をきつくむすんで、足早に病室を出ていった。
137 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:51:02 ID:8ehk2lp2 [3/15] 報告
4日前。
 
溺れた少年を助けた時。
 
あのときから、異常は始まっていたのだ。
 
あの時近くにはゴンドラ船が一隻いた。
 
普通のゴンドラ船だったなら、普通の船頭であったなら、少年の一大事に気づき、たすけ船をよこしていたに決まっている。
 
だのに、少年を助けたのは自分とラプラスだけで。
 
救出が終わったとき、いたはずのゴンドラ船は、影も形もなくなっていた。
 
思うに、あれはほかならぬハンターの擬装船で、アルトマーレの景観にとけこんで自分達を見張っていたのだ。
 
間の悪いことに子どもが溺れているところにはちあわせてしまったものだから、慌てて別の水路に退散したのだろう。
 
そして、不自然だったことは他にもある。
 
ここ数日、やたらとバトルを挑まれたことだ。
 
最初はそういう日もあるか、と割り切っていたが、不自然だ、と思うに足る根拠はあった。
 
バトルした青年が言っていた言葉。
 
『俺なら勝てる、と思っていたんだが………』
 
その場ではなんとなく流してしまっていたが、考えてみれば、他の対戦相手にもそんなことを言っていた人がいた。
 
自分のことを誰かに聞いた、という様子の人が。
 
おそらく、ハンターの男が自分のことを吹聴して広めていたのだ。
 
凄腕のトレーナーがいる、とか適当なことを言いふらして、アルトマーレのトレーナー達を誘導した、という運びだろう。
 
なぜか?
 
決まっている。戦力分析のためだ。
 
ラティアスといつも一緒にいるトレーナーが、どの程度腕が立つのか
 
それを観察されていたのだ。
 
しかし、あの男の姿には、ゴンドラ船頭以外では見覚えがない。
 
ならば、どうやってこちらを監視していたのか?

バトルをしていたのは、ゴンドラが進入できるような水路沿いばかりではない。
 
中には、周囲を完全に建物で囲まれたエリアでのバトルもあった。
 
場所を問わず、対象を監視できるような手段。

この街では何度も見た。
 
ドローンだ。
 
すっかりおとなりさんのものだと思っていたドローンだが、自分の近くを飛んでいたのは、ハンターのものだったのだろう。
138 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:53:26 ID:8ehk2lp2 [4/15] 報告
ドローンを使い、擬装船を使い、こちらの戦力分析を済ませたハンターは期を窺い、絶好のタイミングで襲撃をしかけてきたのだ。
 
能天気に数回バトルをして、疲労していた自分たちを。
 
予兆はあった。
 
不自然だ、と考えるに足る材料もあった。
 
だのに、まったく備えられず、予想すらできず、敵の予定通りに打ち負かされて、大事なものを奪われた。
 
ラティアスを、連れ去られてしまった。
 
満たされた日々にかまけて、普段当たり前にしていた警戒をおろそかにした。
 
なんて、役立たずで、おろかで、怠惰で、間抜けで、お花畑で、イタい奴なのだろう。

こんなにも、後悔と自己嫌悪にさいなまれたのは、生まれて初めてだった。
 
重い体が、能天気な自分自身が、このていたらくが。
 
憎たらしかった。
 
 
 
 
───再び、来客があった。
 
 
 
「こんにちは」ペコリ
 
女「こんにちは」

「私はボンゴレといいます」

女「博物館のガイドさん……ですよね」
 
ボンゴレ「ん、ご案内したことがありましたかな?」
 
女「いえ、でも前行ったとき、お見かけしたので」

ボンゴレ「そうでしたか。いかにも、普段は博物館のガイドと、ゴンドラ船の修理工をやっております」

ボンゴレ「……だが、今日ここに来た私の立場は、そうではないんだ」
 
ボンゴレ「私の一族は、アルトマーレでのラティアス達の保護区域の管理もしている」

女「保護区域……あの庭≠ナすか?」

ボンゴレ「ああ、君も入ったのだったね」
 
女「すみません、勝手に入ってしまって」
 
ボンゴレ「別にいいんだよ。あそこは秘密の園だが、ラティアスやラティオスが気に入った人間を連れてくることもある」
 
ボンゴレ「彼らの案内なしに、秘密の園にはいることはできないからね」

ボンゴレ「そこは、ラティアス達の良心に任せている。悪しきものが入り込むことなど、滅多にない」

女「」キョトン
139 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:55:43 ID:8ehk2lp2 [5/15] 報告
ボンゴレ「つまり君は、お客様だ。気にしないでくれていいんじゃ」
 
女「……ありがとうございます」
 
ボンゴレ「では、本題に入らせてもらおうか」
 
ボンゴレ「私は、君に謝罪するために来た」

女「……………………………はい?」
 
 
 
───謝罪?
 
何のこと?
 
何についてのこと?
 
 
 
ボンゴレ「………いち観光客であり、街の事情に無関係の君を、トラブルに巻き込んでしまった」
 
ボンゴレ「トラブルの予防に、人事を尽くせていなかった我々の落ち度だ」

女「はい………?」
 
ボンゴレ「たいへん申し訳ない」
 
女「───」
 
女(なんで、頭下げて……しゃざい……謝罪?)
 
女「やめ、て……ください」
 
女「頭なんか、下げないで……」

ボンゴレ「君をあやうく、死なせてしまうところだった」

 

───何を言っている。 
 
 
  
ボンゴレ「管理者として、できるだけの償いはする」
 
女「だから、だから……ッ!」

ボンゴレ「私達は、君を傷つけ、不快な思いをさせてしまったことを、重く考えている」
 
ボンゴレ「これは我々の落ち度なのじゃ」
 
ボンゴレ「決して、決して、」
 
ボンゴレ「どうか、ラティアスやこの街を、恨まないでほ──」
 
女「私なんかに、頭を下げないでください!」
140 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:57:42 ID:8ehk2lp2 [6/15] 報告

 
 
 
 

 
女「……違い、ます」 
 
女「違う……違う、違います、違うんです」

女「巻き込まれたとか、そんなんじゃ………私が好きで一緒にいたんです」

女「それが楽しかったから……楽しくて、楽しくて……一緒にいたのに」
 
女「一緒にいた私だから、できたはずのことだったのに、考えるのを怠ったから……ラティアスはっ」ボロボロ

女「誰も………誰もッ!」ヒグッ
 
女「悪くないんです……私が……私の、せい……」グスッ

女「ごめん……なさい」
 
女「私のせいで……ラティアス、が……っ」

ボンゴレ「」
 
ボンゴレ「……そうか、それは……すまなかった……てっきり私たちは」

ボンゴレ「……君は、ラティアスを好いてくれているのだね」
 
ボンゴレ「ありがとう」グッ…

 

───ラティアスやラティオスについての話。
 
アルトマーレと彼らの縁。
 
秘密の庭に安置されていたもの。
 
そんな、部外者になど話せないようなことを、ボンゴレ氏は不思議とあっさり語ってくれた。
 
ありがたく、そして、申し訳なくて、消えてしまいたかった。



女「……何を思い上がっていたんだろう」

女「ハンターが現れたとき、私なら、私なら守ることができるかもしれない、だなんて、あのとき、確かにそう思っていた」

女「とっくのとうに、敵の手のひらの上だったのに」
 
女「それで……………それで、このザマだ」

女(やっぱり、私なんかじゃ、ダメだ)

女(私なんかに、あの子は助けられない)

女(私、なんかに……)ジワ
141 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:58:57 ID:8ehk2lp2 [7/15] 報告
───一度は信じかけた自分自身は、やはり信じるに値しない、と思うしかなかった。

事実が、現実が、現状が、この様を物語っていた。
  
絶望して、無力さにうちひしがれて、力なく泣いた。

泣いて泣いて、泣き果てて。
 
涙を出し尽くした彼女が最初に思ったのは、宿に連絡しなければ≠セった。
 
 
 

























 
ムクホーク『………………』
 
ムクホーク『』ム カ
142 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:00:23 ID:8ehk2lp2 [8/15] 報告



女「ポケナビ、水没して壊れたから、電話」テク、テク…
 
女「公衆電話、探さなくちゃ」
 
女(丸一日部屋を空けてしまった)

女(宿代、もったいないなぁ)
 
女(そろそろ、チェックアウトしなきゃ)
 
女(これ以上、私がここにいても、なんにもならない)
 
女(どうしようもない)
 
女(どうしようもないことは……)
 
「わ」クワッ
 
女「?」
 
「わっ……うわっ……おか、おかおかおかっ」
 
女(小さい子にまでビビられるほど、ひどい顔をしているんだろうか)
 
少年「おかあさん!」
 
女(泣いて逃げられるまでフルコン……あれ)
 
女(この子、どっかで………)
 
 
 
少年「おかあさん! この姉ちゃん!」
 
少年「ラプラスの姉ちゃん!!!」
 
 
 
 
女「…あ」
 
 
 
───4日前、溺れていたところを助けた少年だった。
143 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:02:29 ID:8ehk2lp2 [9/15] 報告
母「その節は、本当にありがとうございました」ペコリ
 
女「いえ、私は、その………当然のことをしただけ…なので、そんな」
 
少年「ラプラスはいないの?」
 
女「え、う、いる」
 
 
 
───中庭に出て、ラプラスを見せてあげた。
 
 
 
少年「ありがとうラプラス、命の恩人感謝永遠に!」
 
ラプラス「(困惑)」
 
母「ごめんなさいね、あの子すっかり、ラプラスが好きになってしまって」
 
女「いえ、ラプラスも子どもは好きですし」
 
女「好きなだけかまってあげてください」
 
母「……あなた」
 
女「?」
 
母「何かあったの? 入院もそうだけど、目の腫れがひどいわ」
 
母「怪我だってしているんでしょう?」
 
女「」ヒタ
 

 
───頬を押さえていた。
 
右側の頬と、胸、そしてももに青アザがある。
 
オノノクスとぶつかったときのものだ。
 
胸部のアザはやや外側で、これがもっと中心に寄っていたらショック死していた可能性もあったらしい。
 
今回は運よくそういった即死に至るような事故にならず、骨折もなかった。
 
オノノクスの機転と、幸運の証。
 
そして、自分の不手際のむくい。
 
それはまだヒリヒリと痛み、心をさいなんでいた。
 
目の腫れは、溢れてしまった後悔の残滓だ。



女「ただの、自業自得……なので」
 
母「……どうか、元気を出して」
144 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:05:02 ID:8ehk2lp2 [10/15] 報告
母「あの子に笑ってあげてくださいな」
 
母「あなたたちは、私たちのヒーローなのよ?」
 
女「私は、そんな大した人間じゃありません」
 
女「居合わせただけ」
 
女「私がいなくても、誰かが助けてた」
 
女「たまたまなんです。たまたま助けられた」
 
女「水がもう少し浅かったら、ラプラスじゃ掬い上げられなかった」
 
女「シザリガーを行かせたら、力加減を失敗して大怪我をさせてしまうかもしれなかった」
 
女「たまたまあそこで居合わせたから、つれていたポケモンがあの状況に即してたから、私は彼を助けられた」
 
女「そもそも、私個人には………誰かを助けられる力なんて、ないですから」
 
母「だから何?」
 
女「?」
 
母「あの子を助けたのは、あなた」
 
母「他の誰でもない、あなた」
 
母「あなた以外の誰も、息子を助けてはくれなかった」
 
女「でも、あの場に居合わせていたなら、誰だって……」
 
母「ちがう」
 
母「だって、いたのがあなたじゃなかったら、息子は助けられなかったかもしれない」
 
母「息子は、当然のように′ゥ捨てられていたかもしれない」
 
母「いたのはあなた。あなただから、助かったの。あなたじゃなかったら、息子は助かってなかった」
 
女「」
 
母「そんな風に、自分を傷つけないで」

母「何があったのか知らないけれど、何が、あなたの心を折ってしまったのか、わたしにはわからないけれど」

母「どうかお願い」
 
母「胸を張って」
 
母「あなたは、立派よ」
 
 
 
───親子は帰っていった。
 
今日が退院日だったらしい。

それ以外に持ち合わせがなかったからだろう、ひどく申し訳なさそうに、えびせんと板チョコを残して。
145 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:07:09 ID:8ehk2lp2 [11/15] 報告
今度会ったらごちそうするから、と言って。
 
少年はそんな菓子類などまったく持っていなかった(し、彼女ももらおうだなんて思っていなかった)が、手作りのメッセージカードをくれた。

会えたら渡そう、と用意していたそうだ。
 
帽子をかぶった人間とラプラスの絵の下に、デカデカと『ありがとう ラプラスのねえちゃん』と書いてある。
 

 
女「……かさばる」
 
女(申し訳ないな……こんなもの、私には)

女「……あ」
 
女「電話」 
 
 
 

 
───公衆電話のある場所に来た。
 
宿に電話を、と受話器に手をかけてそのまま、固まった。
 
この状況をどう説明したらいいのだろう。
 
一緒にいたラティアスがハンターに連れ去られ、自分はその際に溺れて、今までベッドの上だった。
 
これを説明するためには、妹だと言っていた少女がポケモンだった、と真実を明かす必要がある。
 
つまり、自分がついた嘘の、謝罪をしなければならない。
 
それは同時に、自分が宿の人々との間にしていた線引きの告白ともなってしまう。
 
ラティアスのことを知った客たち、あるいは宿屋さんやバイトのおねえさんが、自身の利益のためにラティアスの害になるような何か≠するかもしれない。
 
はじめの頃に抱いていた、そういう悪意ある人間かもしれない=Aという警戒心の告白を。
 
それを、彼女は躊躇していた。
 
そうやって警戒していた人達と、この数日間で築いた信頼があるばかりに。
 
彼らからの信頼を───情を裏切るのが、怖かったのだ。
 
 
 
女「……自分のせい、なのにね」

コータス「」
 
女「こんなに苦しいのも、こんなに後悔してるのも、全部、全部……」
 
女「私が失敗したから」
 
女「私が、お門違いの考えで、間違った方を選んだから」
 
女「私なんかが……」ポンッ
146 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:09:31 ID:8ehk2lp2 [12/15] 報告
女「───え」
 
ムクホーク「」バッ
 

ばっしぃい!!
 
 
女「───ッ」ドタッ
 
女「!????!??」
 

 
───ひっぱたかれた。
 
 
 
ムクホーク「ケーーーーンッ!!!」
 
女「」ボウゼン

コータス「何してんの? 立てるんでしょ?」

コータス「折れてるヒマ、あるの?」

女「ヒマ……て」
 
コータス「ラティアスのこと。このままでいいの?」
 
女「……ジュンサーさん達がもう探し始めてるよ」

女「私が動いても、足を引っ張るだけだよ」

女「警察はこの道のプロなんだから」

女「私なんか邪魔になるよ」

ムクホーク「ケーーーーンッ!!!」

ムクホーク「」ガツン

女「痛でっ」ズテッ

コータス「気持ちがわかる薬なんてなくても、わかるでしょ?」

コータス「いじけてんな。立て」

女「………」
 
女「……わかってるよ……こんな風にしてるのなんて、時間の無駄でしかないこと、くらい」ヨタ……ッ
 
女「でも、動けない……動けないんだ」
 
女「失敗するのが怖い。私が動いたせいで、もっと悪くなるんじゃないかって、もっと酷いことになるんじゃないかって、もっと、取り返しのつかないことになるんじゃないか………って」

女「……私には、そうなっても責任をとることができないから」

女「私の考えが、うまくいくだろう、なんて、能天気に………考えられない」
147 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:12:51 ID:8ehk2lp2 [13/15] 報告
コータス「……たしかに、君は考えすぎるせいで、空回りしちゃうこととか、しょっちゅうだよねぇ」
 

コータス「今はそれも最悪にぐるぐるしてるし」
 

女「ッ……」ズキッ
 

コータス「でも、君が思ったままにやったことってさぁ」

 
コータス「案外、うまくいったりしてるよ」
 

女「うまくいってるときを、自覚してないだけってこと……?」

 
コータス「ちがうよ」

 
コータス「君が、こうする方がいい、とか、こうするべきって、考えた時じゃなくて、こうしたい≠チて思った時のことさ」
 

コータス「たとえば、ほら」
 

コータス「飛んでった風船、女の子に返してあげたよね」


女「……この前の?」

 
コータス「そのときの。」

 







  
コータス「ラティアスは、あの時の君を気に入ったんだよ」


コータス「だから、次の日は君のところへ来たんだ」
 

女「───」
 
  



 


148 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:15:34 ID:8ehk2lp2 [14/15] 報告
女「………………なん、で」
 
コータス「だって、あの子はそういう子でしょお」
 
女「そっ、そういうことじゃなくて……ッ」
 
女「なんで、コータスがそんなこと知ってるの?」
 
コータス「話したからねぇ」
 
女「えっ」

コータス「んで、さっきの溺れた子」
 
女「も?」
 
コータス「彼をとっさに助けにいった君を見たとき、ますます好きになっちゃった≠チて、それに」

コータス「このところの散歩は、君もあの子も楽しそうにしてたよねぇ」
 
コータス「心が通じてるのがわかって、嬉しかった≠チて」
 
コータス「そう言ってたよ」

女「」ポロッ
 
コータス「君がやったことは、多かれ少なかれ、誰かを救って、誰かの心に残ってるよ」

コータス「それは、君自身の救いになってるだろ」
 
女「」
 

 
───手書きのメッセージカード。
 
かさばる、などと呟いたが、もらったとき、本当は嬉しくてたまらなかった。
 
自分が何をやっているのかがわからない真っ暗闇のなかで、手を握ってもらえたような。
 
自分でも半信半疑だったことを、それでいいんだ≠ニ肯定してもらえたような。
 
救われたような、気がして。



コータス「それを忘れるなよ」
 
コータス「たった何回かの失敗で、かすんじゃうようなものじゃあないだろ」

女「……」コクン
  
コータス「それにさぁ」

コータス「そんな風に、下を向いて」

コータス「君は彼≠ノ、胸を張れるの?」

女「!!!!」
149 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:17:12 ID:8ehk2lp2 [15/15] 報告
女「」カタカタカタカタ
 
女「」プルルルル
 
女「………あ、もし、もし」
 
 
 
───意を決してコールボタンを押した彼女はしかし、声の震えを隠せないでいた。
 
どんな風に覚悟を決めても、それでも、これから行う、自分がついた嘘の告白が、怖くて怖くてたまらなかったのだ。


150 : ズレイド@いんせきのかけら 17/12/09 10:21:22 ID:6zK5H6Oo 報告
支援です
151 : ンド@きいろいバンダナ 17/12/09 12:14:57 ID:KibrHpls 報告
支援
152 : キメノコ@あやしいおこう 17/12/09 20:49:25 ID:wGFeAKzk m 報告
支援
153 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:09:24 ID:7q.AajNM [1/6] 報告
『はい、お電話ありがとうございます。宿屋ペリッパーのクチバシです』
 
 
『! ※※※※※さん!』
 
 
『無事だったんですね! ……え、お宿代……延長の分……?』
 
 
『そんなこと……! 気にしなくていいんですよ』
 
 
『君が無事だということがわかったんです。みんな喜びます』
 
 
『……はい。はい。えぇ、大変でしたね』
 
 
『大丈夫ですよ。案じこそすれ、君に怒っている方はいません』
 
 
『わたしも安心しました』
 
 
『……はい……おふたりに? ……はい、はい。かしこまりました。少々お待ちを』
 

 
 
 
 
『もしもし』

 
『※※※※※ちゃん?』
 
 
『……宿屋さんに聞いたわ、今、病院なんでしょう?』
 
 
『本当によかった……命あっての物種だもの』
 
 
『わたしたち、お迎えにいこうか? 妹さんは、大丈夫?』
 
 
『………どうかしたの?』
 
 
『……大丈夫、焦らないで』
 
 
『整理ができたら話すで、いいからね?』
 

 
女「……ごめんなさい」


女「私、嘘をついていました」
154 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:11:08 ID:7q.AajNM [2/6] 報告


 
女「あの子は、妹じゃないんです」
 
女「信じてもらえないかもしれないけど、あの子は、ラティアスで」
 
女「私に、化けて……ただけ」
 
女「私、は、ラティアスのこと、を言って、広めてしまったら……そのっ……あのっ……」
 
女「ラティアスが、トラブルに巻き込まれるかもしれない……っておもってっ……思い、ました」
 
女「だから、妹だ……って、嘘を」

女「みんなを、だまそうとか思ったんじゃ、ないんです……ただ、言わない方がいい、って、思って」
 
女「そう思って……嘘をつきました」
 
女「……ごめん、なさい」
 
 
 
『そっか……』
 
 
『不思議ね……なんだか、納得しちゃった』
 
 
『あの子がポケモンだった……うん』
 
 
『言われてみたらそうね』フフッ
 
 
『人見知り、とも、なにか違ったもの』
 
 
『すっかりだまされちゃった』
 
 
『……でも、だからって、あなたに失望とかがっかりなんてしないわ』

 
『あなたは、当たり前のことをしただけ』

  
『悪気がないことくらい、わかっているわ』
 
 
『ありがとう、本当のことを教えてくれて』
 

 
女「〜……っ」グスッ…ヒック…ズビ…
155 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:12:41 ID:7q.AajNM [3/6] 報告

 

───自分たちを襲ったのが何者か。
 
どうして襲ってきたのか。
 
その結果、自分がどうなって。
 
ラティアスがどうなったのか。
 
すべて、語った。
 
その語り口に何を感じたのか。
 
返ってきたのは、問いだった。
 
 
 
『……警察に、任せるんだよね?』
 
女「……」

『君はこれからここに戻ってくる』
 
『それで、わたしたちと、警察の知らせを待つ』
 
『そう、だよね?』
 
『これはその連絡、なんだよね?』
 
女「……ッ」ギュッ

『相手は手強くてずる賢い、大人なんでしょ?』
 
『悪いやつだからって、君が責任を感じているからといったって』
 
『わたしたちは、いってこい、なんて言えない』
 
『言いたくないよ』
 
『だって、万が一、それで、君と会えなくなってしまったら』
 
『わたしたちは、言わなければよかったって、絶対、一生、後悔する』

『お願い』
 
『帰ってきて』
 

 
女「……だと、しても」
 
女「私は、あの子を助けたい」
 
女「あの子と一緒に、あなたたちのところに帰りたい」
 
女「私ひとりで、あなたたちのところに帰るのを、私の仲間たちは許してくれない」

女「私自身がそれを望んでいないのを、みんな……わかっているんです」
156 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:15:33 ID:7q.AajNM [4/6] 報告
ムクホーク「」キッ

女「」
   
女「ありがとうございます」
 
女「ごめんなさい」
 
女「いってきます」
 
 
 
───返答を待たず、受話器を置く。
 
勢いにでも任せないと、そのまま受話器を握りっぱなしになってしまいそうだったからだ。
 
早く行かなければ、と、その思いだけに集中して、それ以外を頭から叩き出して、受話器を置こうとした。
 
通話が切れるまでの、そのわずかな一瞬。
 
その声は、受話器が耳から遠ざかっていても、はっきりと聞こえた。
 
 
 
「「いってらっしゃい」」
 
 
 
女「」ガチャン
 
女「………ッ」
 
女(ふたりとも、涙声だった)
 
女「……いこう」

ムクホーク「ぴぃ」
 
 
 
 
女(まだ、警察に話せていないことがある)

女(考え直して、検討した推測)
 
女(ハンターの潜伏場所)
 
女(その候補)

女(───いた!)
 

 
───警察署にやってきてすぐ、受付で呼び止められたので、自分の聴取をしたジュンサーの名前を出して通り抜けた。
 
所属を聞いて、そこに向かっている次第だったが、件のジュンサーはあっさりと見つかった。
 
 
 
女「ジュンサーさん!」
157 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:17:38 ID:7q.AajNM [5/6] 報告
ジュンサー「あら、あなたは!」

ジュンサー「今日1日、絶対安静じゃなかったの?」
 
女「それは大丈夫です。回復しました」キッパリ
 
ジュンサー「そ、そう」
 
女「それで、実はまだ言っていないことがあって……」
 
ジュンサー「大丈夫よ。事件はもう解決したも同然だから」
 
女「え、それは……どういうことですか?」
 
ジュンサー「ハンターの足取りがつかめたの。目撃者から通報があってね」
 
ジュンサー「実動班がもう向かったから、じきにハンターは捕まるわ」
 
女「そう……ですか」
 
ジュンサー「わたしも実動班に参加したかったんだけど、残されてしまって」
 
ジュンサー「でも大丈夫よ。辛抱して待ちましょう?」
 
女(なんだ)
 
女(なんだ?)
 
女(ひっかかる……何が?)
 
女(何≠ェ、引っかかってる?)
 
女(……嫌な予感がする)
 
女「あの」
 
ジュンサー「なにかしら」
 
女「実動班が向かった場所って……」パタパタパタ
 
ジュンサー(アルトマーレの地図)
 
女「ここと、ここと、ここ」
 
女「……の、どれかですか?」
 
ジュンサー「……えっ」

ジュンサー「ど、どうしてそれを知っているの?」
 
ジュンサー「通報された場所とまったく同じ……あっ」ウグッ
 
ジュンサー(しまった)
 
女「実動班は分かれてこの3ヵ所に同時に向かった……そうですね」パタパタパタッ

ジュンサー「えぇ、そんなところね」
 
ジュンサー(ほんとはあともう2ヵ所ある……けれど、これを言うわけには)
158 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:18:51 ID:7q.AajNM [6/6] 報告
女「」ダッ

ジュンサー「あっ、ちょっと!」
 
ジュンサー(まずい!)

ジュンサー(なぜこの子がハンターの潜伏場所を突き止めているのかわからないけれど、このままほうっておいたら)
 
ジュンサー(間違いなく、今指し示したどこかに行く!)

ジュンサー「待ちなさい!」ダッ
 
 
 
















159 : ルマユ@ディフェンダー 17/12/10 22:19:25 ID:Z0yZQRcA m 報告
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