【旅SS】女「ポケモン達とぶらり旅」

1 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:50:23 ID:WB.XOoew 報告
『さぁてスタートラインにならぶはそうそうたる面々。皆様レースへの意気込みがうかがい知れるというものです』
 
 
 
女(初めて参加する私にもわかる。ここにいる人たちの覚悟は、生半可なものじゃない)
 
女(でも、私がそれに負けているか、と聞かれれば、違うと言える)
 
女(そうだ、この日のためにリサーチを重ねたのだから)
 
女(選手達のコンディション、例年の記録、あらゆる場面での立ち回り。果ては日常のなかのささいなクセまでをも調べあげた)
 
女(すこしたりとも研究を怠るようなマネはしなかった)
 
 
 
『今年は例年よりも参加人数が多く、白熱の戦いが予想されます!』

 

女(ライバルがいくら多かろうと関係ない。私は私の持てる限りを尽くし、この戦いに勝利する)
 
 
 
『みなさんお待ちかね、ポケモン水上レースは間もなくスタートですよー!』

『栄えあるアルトマーレグラスの優勝メダルは誰の手に?』

 
 
女(優勝賞品がなにかなんてことはどうだっていい。私の目的はそんなところにあるのではないのだから)
 
女(メダルやトロフィー、杯よりも重要なものが、このレースの果てにはある) 
 
 
 
 
ネイティ「ポゥ」

ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ヨォー!」
 


───水しぶきを上げ、水上レース参加者たちが飛び出していく。
 
 

こわもての男「始まったな」

こわもての男「アルトマーレ、ポケモン水上レースが!」

217 : ンファン@フラットコール 17/12/15 22:41:26 ID:2bqvXMY2 m 報告
超絶支援
218 : ゴーム@ドクZ 17/12/15 23:09:45 ID:y41i4cZ2 報告
支援
219 : ガギャラドス@つきのいし 17/12/16 05:20:32 ID:XQOfkG7U 報告
こんな展開になるとは……。
支援です。
220 : ガカメックス@キーのみ 17/12/16 05:59:53 ID:7qtfRXH2 報告
おもしろいです( 〃▽〃)

支援です!
221 : レキッド@パワーバンド 17/12/24 10:58:53 ID:HrLoetAA m 報告
あげ
222 : ギギアル@ネットボール 17/12/31 11:58:13 ID:wyHEFgLQ 報告
支援
223 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:29:08 ID:hfsbgMA6 [1/30] 報告
女「よっ、と」ガチャン
 
女「駐輪無料か」
 
女「でっ───かい建物」ホエェー

 
 
女「」ウィーン
 
女(ドームみたいな建物の中には、人がいーっぱい)
 
ロボット『』ポーン
 
ロボット『ようこそお越しくださいました』
 
ロボット『ここは、ポケモンセンターセントラル』
 
ロボット『これからのポケモンセンターを担っていく新しいジョーイ、ドクターの育成に力を注ぐ場所であるとともに』
 
ロボット『初心者トレーナー用ポケモンの養育、最先端医療研究を行う、ポケモンセンターの総本山』
 
ロボット『ポケモントレーナーの未来、その基盤を支える場所です』
 
ロボット『本日は、どのようなご用件でしょうか』ポン
 
女「見学に来ました」
 
ロボット『』ブブッ
 
ロボット『もう一度、お申し付けください』
 
女「」
 
女「け ん が く し た い で す」
 
ロボット『』ポン
 
ロボット『かしこまりました』
 
ロボット『入館証を発行します』ピピッ
 
ロボット『恐れ入りますが、コントロールパネルの指示にしたがって、必須項目の記入をお願いします』
 
女「」カキカキ
 
ロボット『クリア』
 
ロボット『見学のガイドとなるジョーイ、ドクターを呼び出します』
 
ロボット『なお、お客様のガイドは研修中のジョーイ、ドクターが担当する場合がございます』
 
ロボット『研修項目のひとつであるため、何卒ご理解くださいますよう、お願い申し上げます』
 
ロボット『当該ガイドが到着するまでの待ち時間、今回の見学に当たっての注意事項を説明させていただきます───』
 
 
 
女(オートメーション化が進んでるなぁ……さすがはポケモンセンターの総本山)
224 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:30:23 ID:hfsbgMA6 [2/30] 報告
女「?」
 
女(ロボットの側頭部にパンフレットが)ペラリ
 
女(見学だけじゃなくて、一般向けに講習会やったり、外部の人も受けられるような講座を開いたりもしてるんだ)
 
女「大学っぽいな」
 
女(御三家譲渡もやってるのか)
 
女(でも、みんなそれ目的でここに来ることはあんまりなさそうだよな)
 

 
───各地方にはそれぞれ名物となっているような博士がいる。
 
トレーナー志望者のほとんどは、縁起を担いでその研究所に行くことが多いのだ。

それにしても。  
 
 

女「お客さんいっぱいだ」
 
女「ん?」
 
 
 
ポッチャマ「」オロオロ
 

 
女「……迷子かな」
 
女「」テクテク
 
女「こんにちは」シャガミコミ
 
ポッチャマ「ポチャ!?」ギョッ
 
女「トレーナーさんと、はぐれちゃったの?」
 
ポッチャマ「ポチャ……」オドオド
 
女「だいじょうぶ、取って食いやしないよ」ニッコリ
 
ポッチャマ「……」ジー
 
女「」ニッコリ
 
ポッチャマ「……」 
 
ポッチャマ「ちゃま」
 
女「うん」
 
女「じゃ、一緒に探してあげるね」
225 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:32:20 ID:hfsbgMA6 [3/30] 報告



ジョーイ「お待たせいたしました」

ニューラ「ニュラ、ニューラ」
 
ジョーイ「本日、ガイドをさせていただきます、キリネ、といいます」タドタド
 
キリネ「研修中なので至らない点もあるかと思いますが、今日1日、よろしくお願いします」ペコリ
 
女「はい、よろしくお願いします」ペコリ
 
女「それで早速で申し訳ないんですけど、このポッチャマ、トレーナーとはぐれてしまったみたいで」
 
女「この辺にはいないみたいなんですけど。トレーナーを探すことって、できますか?」
 
キリネ「え」
 
キリネ「えっと、その……申し訳ございません」
 
キリネ「普段だったら、館内アナウンスで呼び出しができるんですけど……」
 
キリネ「今、その設備がメンテナンス中で。」
 
女「あぁ……」
 
女「メンテナンスって、どれくらいかかります?」
 
キリネ「昼までには終わるはずなんですけど……」
 
女「ちなみに、迷子センターは……」
 
キリネ「ありますけど……ちょっと遠いですね」

キリネ「お客様のお手を煩わせるわけにはいきませんし、わたしどもの方で預かりますよ」ス
 
ポッチャマ「ポチャッ!?」ビクッ
 
キリネ「」
 
女(うおーう、きまずーい)
 
女「インフォメーション───あのロボットのところでは?」
 
キリネ「あのロボットは、受付業務担当なので、迷子預かりは……」
 
女「そ、そうですか」
 
女「……ちなみに、ここって、端から端までどれくらいかかるんですか?」

キリネ「全方向エレベーターを使って、5分ほど」

女「………………歩きで?」
 
キリネ「…………3時間ほど」
 
女(広ェ……)ゲンナリ
226 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:34:57 ID:hfsbgMA6 [4/30] 報告
キリネ「……?」
 
キリネ「????????」
 
 
 
女「アナウンスの予約とかって、できますか?」
 
キリネ「えっ、あ、はい!」
 
キリネ「予約……というか、メンテナンスが終わったらしてもらう、という感じでしたら、たぶん」
 
キリネ「内線してみますね」
 
 
 
女(ポッチャマのトレーナーはエントランスにはいそうにない)

女(1ヶ所でじっとしてるよりはまだ、アナウンスの時間まで連れて歩き回った方が、会える可能性高そうだな)
 
キリネ「お待たせしました」
 
キリネ「終わり次第アナウンスを、ということで、話が通りました」
 
キリネ「それまでは、その……」
 
女「はい、大丈夫です」ダキッ
 
ポッチャマ「ぽちゃ?」
 
女「探すついでに見学、でお願いします」

キリネ「」キョトン
 
キリネ「は、はい、わかりました」
 
キリネ「おそれいります」ペコリ
 
キリネ「では、こちらにどうぞ」
 
女「………ん?」
 
女(あれ? そういえばこのジョーイさん、見覚えがあるような………)

キリネ「……………あっ!」クルッ

女「……………あ」

女&キリネ「「あのときの」!!」

ニューラ「……ニュラ?」
 
 

───小綺麗なジョーイの制服と、色々成長したようすで、しばらくまったくわからなかった。
 
いつかの昔に、ポケナビを盗んだ少女だった。
227 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:36:09 ID:hfsbgMA6 [5/30] 報告
「───見違えたね」
 
キリネ「お、おう、じゃなかった……はい」
 
キリネ「色々、ありましたから」
 
女「タメ口でいいよ。たぶんそんな歳離れてないし」
 
女「素の口調のが、あなたっぽい」ムフ
 
キリネ「は……お、う」
 
キリネ「あんたも……けっこう変わったな。なんか白いし」
 
女「イメチェンした」ハハッ
 
 
 
ムクホーク「ぴぃぴる(ああ、あん時の盗人どもか)」 
 
ムクホーク「ぴぴるるぴ(ずいぶん変わったじゃねえか、お前ら)」

ムクホーク「……ぴぃ(お前もマシなツラになってんな)」

ニューラ「ニューラ(そうか? 自分じゃわからん)」
 
ニューラ「にゅ(お前のトレーナーも、ずいぶん派手にイメチェンしたな)」
 
ニューラ「にゅう……(もっと暗い感じだったがよ)」

ムクホーク「ぴぃー(形から入るタイプなんだよ。あいつは)」
 


キリネ「……こういうこと、よくあるのか?」
 
女「こういうこと=H」
 
女「どこかであった人と、また会うとか?」
 
キリネ「そうそう」
 
女「いや───初めてだなぁ」
 
キリネ「そうか……そっか」
 
女「??」
 
 
 
女「ん、ここは……」
 
キリネ「あ、ああ。こほん」
 
キリネ「こちらの部屋では、研修生たちが講義を受けています」
 
キリネ「専門知識、技術の課程は一通り修了しているんですが、実際に現場で仕事をするにあたってのマナーや心構えを、あらためて勉強しているんです」
 
女「」
228 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:37:59 ID:hfsbgMA6 [6/30] 報告
キリネ「お医者さんは接客業ですからね」
 
女「」キョトン
 
キリネ「……単位に関わるんだよ」
 
女「マジメ」フフッ
 
キリネ「〜……//////」
 




 
キリネ「こちらでは、新薬の開発と、既存のおくすりの改良を目的とした研究を行っています」
 
キリネ「ここでは昨日治らなかった病が今日治るようになる───そんな革命が毎日起きているんですよ」
 
女「実用にいたるまでに、どれだけの試験を重ねているのでしょうか」ハーイ
 
女「また、その際の被験者は?」マガオ
 
キリネ「イヤミなマスコミ取材者みたいな聞き方しやがって」ジト
 
キリネ「……こほん」
 
キリネ「基本的に、おくすりの試験が実施されるのは、組成情報や主作用、そして副作用がどれだけの効果と幅───個人差、個体差と言ってもいいです───で現れるか、のカタログスペックを具体的に記したレポートを提出して、それが受理された場合だけです」
 
キリネ「この審査がとても厳正で、完成した試薬の70%はここでふるい落とされてしまいます」
 
キリネ「そうやってなんとか受理された試薬の治験は、人間用であれば協力者の募集をして」
 
キリネ「ポケモンであれば、対象の病気を発症している個体を確保した場合はそのポケモンに投与して経過を観察する、という運びです」
 
キリネ「親のいるポケモンの場合は、書類審査の段階で提出したものと同じ内容を、ポケモンの親に説明して、許可がもらえた場合のみ治験を行います」
 
キリネ「保護した野生ポケモンでも決して短絡的に試験を行ったりはしません」
 
キリネ「やはり、健康被害などのリスクがあるものですから、開発も試用も、慎重に、慎重に進めています」ニコ

女「ポケモン愛護団体から抗議が来たりすることはないのですか?」ツーン
 
キリネ(そのスタンス続けるのかよ)
 
キリネ「無視してます。彼らの主張はこちらの踏んでる過程を無視してますし。相手するだけ不毛なんで」
 
女「つよーい」
 
ポッチャマ「ちゃぁ〜♪」ハムハム
 
キリネ「……何食わせてんの」
 
女「フリーズドライのパパイヤ」
 
キリネ「お、おう」
 
キリネ「……あ、そうだこれ」ゴソゴソ
 
女「ジュース?」
229 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:40:08 ID:hfsbgMA6 [7/30] 報告
キリネ「試供品だよ」
 
キリネ「ポケモンと人間とを問わずに飲めるんだ」
 
キリネ「おくすりだけでなく、こういったものも作っています。ご賞味ください≠チて」
 
女「ふーん」チューチュー
 
女「あ、おいしい」
 
 



 
キリネ「こちらのホールは、会員制ではありますが、一般にも開放しています」
 
女(大きい体育館)
 
キリネ「見学に来ていただいたお客様も利用できますよ」
 
女「スポーツはからっきしなんだ……」アハハー
 
キリネ「バトルフィールドもあります」
 
女「おー」
 

 
イケーマタドガス!!
 
ミセテヤルゼ、オクノテ!
 
ドーブル、サイコブースト‼
 
 
 
女「やってるやってる」
 
キリネ「……あたしたちもどうよ?」クイッ

女「」キョトン
 
女「……うん、やろうかな」
 
  

女「」ムー
 
キリネ「何悩んでんだ?」
 
女「あ、うん。だいじょうぶ」
 
女「大したことじゃないよ」

女「……出ておいで」ポン
 
キリネ「おぉー」

キリネ(ムクホークでくるかと思った)
230 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:41:36 ID:hfsbgMA6 [8/30] 報告
ニューラ「にゅう……」
 
キリネ(こいつもムクホークとやりたかったみたいだし)
 
オノノクス「フー……ッ」
 
キリネ(よく育てられて───ていうか)
 
キリネ(モチベ、普通のバトルのそれじゃないな)
 
キリネ(目ぇ据わってるし)
 
キリネ「こわもてなポケモン好きなのか?」
 
女「わりとね」アハハ
 
キリネ「そんじゃまぁ……」
 
キリネ「やろうか」キリッ
 
女「おうとも」
 
ニューラ「ニュウ!」
 
オノノクス「ォンッ」
 
女「アイアンテール!!」
 
キリネ「こごえるかぜ!」
 
ニューラ「!!」ヒョオオオオ
 
オノノクス「ォンッ…」ビュウウウ
 
女「距離あっても動けるタイプか」ボソッ
 
オノノクス「」ダッダッダッ
 
女「1段」
 
オノノクス「!!」キィィン
 
オノノクス「ノッ……ス!!」ブンッ
 
ニューラ「にゅう!」ヒョイッ
 
キリネ「だましうち」
 
ニューラ「」フッ
 
オノノクス「?」
 
ニューラ「───ニュ!」ゴッ
 
オノノクス「ッ…」キッ
 
オノノクス「オォンッ」ヒュンッ
 
キリネ「こおりのつぶて!!」
231 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:43:15 ID:hfsbgMA6 [9/30] 報告
ニューラ「」タンッ
 
ニューラ「にゅう、ら!!」バババッ
 
オノノクス「……ッ」ビスッ
 
女「飛び退りながらつぶてとか、器用だね」
 
女「オノノクスが見失うくらい速いし」
 
キリネ「だろ?」ドヤッ
 
ニューラ「」ニィ
 
オノノクス「……」スッ
 
女「ダブルチョップ、構え」
 
オノノクス「ッ」フォンッ
 
女「だましうち警戒しつつ距離詰めて」
 
女「死角からくるよ=v

キリネ「」ニ
 
ニューラ「」フッ
 
オノノクス「」グッ
 
オノノクス「!!」ズンッ
 
ニューラ「にゅら……?」メキッ
 
ニューラ「〜ッ」タジッ
 
女「視線誘導とフェイント、ダッシュの緩急、それらの総合動作で相手の死角に入り込んで、強打を打ち込む」
 
女「オノノクスみたいな体格差がある相手だと、すごくやりやすいでしょ」

キリネ「」
 
キリネ「ウン」
 
オノノクス「」ガシッ
 
ニューラ「!?」
 
女「もう一発が残っております」
 
オノノクス「バオン!」ズガン!!
 
ニューラ「!!!」ドシャッ
 
ニューラ「にゅう!」ゲシッ
 
ニューラ「〜ッ!」タン、ヒュッ
 
女「退くのはやい……」
232 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:44:46 ID:hfsbgMA6 [10/30] 報告
オノノクス「」ギンッ
 
ニューラ「」タジッ
 
キリネ(オノノクスの圧が気になりがちだが)チラ
 
女「?」
 
キリネ(相性不利でなお平静でいるこいつも、けっこう不気味なんだよな)
 
キリネ(とはいえ、中距離からつぶてでネチネチやるのも性に合わないから)
 
キリネ「ニューラ、たたみかけるぞ!」
 
ニューラ「にゅあっ!!」ダッ
 
女「ダブルチョップ、かまえて」
 
オノノクス「」フォンッ
 
 
 
ポッチャマ「ぽちゃぁ……」ホワァ
 
 
 
───ダブルチョップをいつでも打ち出せる体勢に入るオノノクスに、ニューラが迫る。
 
だましうちを尽くしてオノノクスに攻撃を叩き込んでいく。
 
背後から、真正面から、と、死角か否かを問わず、手数で攻め立てる。
 
 
 
ニューラ「にゅあ!?」ガツンッ
 
オノノクス「バオンッ」ギッ
 
 
 
───対して、 駆け回るニューラを目で捉えた瞬間、オノノクスは片腕でその身を撃ち据えた。
 
体をくの字に折るニューラ。
 
しかし、そこから持ち直すのが早い。
 
2撃目を食らうよりも早く、オノノクスの間合いから飛び退いた。



女「こごえるかぜ、効いてる」
 

 
───実際、こごえるかぜのせいでオノノクスの動きはいくらか精細さを削がれている節がある。
 
ならば。
233 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:45:57 ID:hfsbgMA6 [11/30] 報告
キリネ「ニューラ、もう一回こごえるかぜ!」


 
───ニューラがこれをあまり得意技にしていないのはとっくに割れているだろうが、しかし、主に力を削ぐ方向性で使うには申し分ない。
 
オノノクスの動きがにぶる。


 
キリネ「もっと早くやっときゃよかったな……」 
 
キリネ「行くぞ」
 
ニューラ「にゅう!」ダッ
 
 
 
女「それじゃ、やってみようか」
 
女「アレ=v 
 
  
オノノクス「!!」ボッ
 
キリネ「!?」
 
ニューラ「!!」
 
 
 
───驚きのあまり、ニューラはその足を止めた。
 
トレーナーの掛け声の直後、オノノクスの姿は見るだけで危険だ≠ニ思わされるような異様となっていたのだ。
 
キバ、両腕、そして尻尾が淡い光をまとい、そのシルエットは巨大化していた。
 
まるで、足と胴以外の場所に鎧でも装着したかのようだった。
 
 
 
キリネ「まさかそれ、わざを全部……」
 
オノノクス「───ッ!!───ッ」ギチッ
 
女「───あ」
 
女「ごめん」
 
 
 




 
 
女「降参で」ニガワライ
 
キリネ「は?」
234 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:48:27 ID:hfsbgMA6 [12/30] 報告
女「動けなくなっちゃったみたい」
 
キリネ「……えぇー」
 

 
 
女「ハサミギロチンと、ダブルチョップ、アイアンテールの同時発動を練習してるんだけど……」
 
女「なかなかうまくいかないね」
 
キリネ「〜……」ムゥ
 
キリネ「正直、形になってるだけでもすごいとは思うけどさ」
 
キリネ「体に悪そうだぞ、アレ」

女「うん、私もそう思う」シュン 
  
キリネ「あんなムチャクチャやるくらいなら大技覚えさせりゃいいじゃん」

キリネ「りゅうせいぐんとか、おぼえられるくらいなついてるだろそいつ」

女「………そう、なんだけど」

女「オノノクスね。前に、盛大に技をはずしちゃったことがあって」

女「その技も、それに所縁があるから避けてるんだけど」

女「その時からしばらく、スランプになっちゃって」
 
女「明けてからずっとこんな感じ」

女「発案はオノノクス、練習指導は私、て感じで、やってみてる」

キリネ「あんなずっと、追い詰められたような感じなのか?」
  
キリネ「張り詰めすぎるのは、危ないだろ」

女「うん」

女「無理を止めなきゃいけないのはわかってる、けど」

女「まだ、この子がやってるのは無茶≠フ範疇だと思うし」

女「がむしゃらにやることが、今はオノノクスに必要なんだと思ってる」
 
キリネ「───ほどほどにしろよ」
 
女「ありがとう」









235 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:50:10 ID:hfsbgMA6 [13/30] 報告
ポッチャマ「」シュン
 
女(近場の迷子センターに寄ってみたけど、トレーナーはいなかった)
 
女(まったく見つからないまま、こんな時間になっちゃった)
 
女「昼……だけど」
 
女「館内アナウンス、まだ復旧してないみたいだね」
 
キリネ「そう……だな」
 
キリネ「悪い」シュン
 
女「そんな縮こまらないで」
 
女「メンテナンスしてるのはあなたじゃないんだし」
 
女「予定通りいかないなんてよくあることでしょ」
 
キリネ「……あぁ」
 
キリネ「すまねぇ」
 
女(さっきからこんな感じだな)
 
女(落ち込んでいる、というか、焦っている、というか)
 
女(ガイドはちゃんとしてて楽しかったけど)
 
女「お腹すいたね」
 
キリネ「ん、あぁ」
 
女「お昼にしようよ」
 
キリネ「ん、あぁ……っと」ソウダ
 
キリネ「食堂いこうぜ。なんか好きなもんおごってやるよ」
 
女「え?!」
 
女「そんな、悪いよ」
 
キリネ「いいから。おごらせろ」ムスッ
 
女「あ、ありがと」






キリネ「……」
 
女「」モグモグ
 
女?「」ハムハム
 
キリネ「おい、そいつって……」
236 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:51:27 ID:hfsbgMA6 [14/30] 報告
女?「?」
 
女「私はこっちー」
 
キリネ「うおっ」
 
女「この子、人に化けるのが好きなんだ」
 
女「今日は私の日だね」ハハハ
 
キリネ「」
 
キリネ(ムクホーク、オノノクスに加え、ラプラスドリュウズシザリガー、と、人に化けてる……メタモンとかか?)

キリネ(大所帯なんだな、こいつ)
 
女「でも、ほんとにいいの? みんなの分まるまる出してもらっちゃったけど……」
 
キリネ「いいよ、大したもんじゃない」
 
キリネ「気にすんな」
 
女「う、うん」
 
ポッチャマ「」ホエー
 
ムクホーク「ぴぃるるぴぴ」
 
ポッチャマ「ポチャ?」
 
ムクホーク「ぴぃぴぴるる」
 
ポッチャマ「ぽちゃ……」ホワァ
 
女「なに話してるんだろ」
 
キリネ「そりゃ、お前の手持ちのことだろうよ」
 
キリネ「すげーよな。よくこんなに育てられてるもんだ」
 
女「うん、けっこう奇跡的に育てられてる」ハハッ
 
女「……あなたも、すごいよ」
 
女「ジョーイさんになるのなんて、並大抵の頑張りじゃできないことでしょ?」
 
キリネ「まだ研修生だよ。本物じゃない」
 
女「それでも。あと一歩じゃない」
 
キリネ「あr……いや、誉められるほどのことじゃないんだ」
 
キリネ「あたしひとりじゃ、ここまで来れなかっただろうしな」
 
キリネ「あたしを助けてくれたみんなのおかげなんだよ。こうしてられるのは」
 
キリネ「謙遜なんかじゃない、本当だ」

キリネ「あたしは、本当にろくでなしだったからさ」
237 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:52:38 ID:hfsbgMA6 [15/30] 報告
女「そんな卑下しないでよ」
 
女「大事なのは昔より今でしょ?」
 
キリネ「そう、だけどさ……」 
 
女(印象も人当たりのよさも、本当に別人みたいだ)
 
女(胸部の破壊力もすごい)ムム…
 
キリネ「……」ウーン
 
女「どうしたの? 箸、止まってるよ」
 
女「そば、のびちゃう……」
 
キリネ「ポケナビを盗んだこと、謝ってなかったよな」
 
女「え……うん、そうだね」
 
キリネ「ごめんなさい」
 
女(しまった、思わず。)
 
女「気にしてないよ、昔のことだし」
 
キリネ「……悪い」
 
キリネ「気にしてるのは、あたしなんだ」
 
女「?」
 
キリネ「少し、説明させてくれないか」
 
女「うん、どうぞ」
 
キリネ「………………」フー…
 
 
キリネ「あんたに助けてもらったあの後」
 
 
キリネ「あんたみたいに旅をしようって思って、あたしは町を出た」
 
 
キリネ「でも、結局まともに続けることもできなくて、流れ着いた街で盗みを続けたんだ」
 
 
キリネ「場所が変わっただけで、あたしはなにも変わらなかった。そのくせ、世の中なんてそんなもんだって、達観したつもりになって世界を見てた」


キリネ「旅は俺に向いてない。肌に合わないことをやろうとしたのが間違いだった≠ニか考えててさ」ハハッ

 
キリネ「そんなあたしを気にかけて引き取ってくれた人達がいたんだ」
 
 
キリネ「奇特なやつらだって、いい根城ができた、都合のいい拠点を手に入れた、くらいにしか思わなかった」
238 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:54:39 ID:hfsbgMA6 [16/30] 報告
キリネ「この期に及んであたしはろくでなしだった。スリに加えて、財布から金を抜くとか、ケチな窃盗だとかを何回も繰り返した」

 
キリネ「何回も何回も、私を引き取ってくれた2人を裏切るようなことをした」

 
キリネ「それでも、何回も何回もあの人たちはあたしを叱って、許して、チャンスをくれた」

 
キリネ「根気強い人達だった。しつこいって何度も思った」
 
 
キリネ「うっとうしいって思ってた」
 
 
キリネ「そう思いながら、それなのに、悪いことばっかやってさ」
 
 
キリネ「でも、ちょっとずつ、そういうことができなくなってくんだ」

 
キリネ「あたしが捕まって、2人が迎えにくるたび、2人に顔を合わせられなくなってく」

 
キリネ「そうやって迎えにこられるのが、つらくなってくるんだよ。でも、あの人たちは絶対来るんだ」

 
キリネ「そうやって根気強く、あたしみたいなクズを受け入れて、ひたむきに向き合い続けてくれた」

 
キリネ「嬉しかった」

 
キリネ「嬉しくて、2人の真心に応えられないひねくれた自分が不甲斐なくて、情けなく感じるようになってた」

 
キリネ「生まれてはじめてだった。心のそこから他人に感謝したのは」

 
キリネ「あの人たちのおかげで、あたしは今、いくらかまともな人間になって、ここにいられてるんだ」

 
女「……よかったね」
 
 
女「いい人達に出会えて」


キリネ「でも、元はといえば、それもあんたのおかげだ」

 
キリネ「ポケナビを盗んだあたしを、あんたは助けてくれた」
 
 
キリネ「助ける価値もないクズを見逃して、ケガの治療費を恵んでくれた。思い返せば、助言だってしてくれてた」
 
 
キリネ「月日が経てば経つほど、あたしがこうしていられるのは、あんたのおかげなんだって実感が強くなって、それで……」
239 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:56:01 ID:hfsbgMA6 [17/30] 報告
キリネ「あの時、なんで言おうともしなかったんだろうっ……て」

 
キリネ「後悔が……、どんどん強くなっていくんだ」

 
キリネ「あの時のあたしは、あんたにどれだけの恩赦をもらっていたのか、全然わかってなかった」ボロボロ

 
キリネ「あんたが助けてくれたから、あたしは……」

 
 









キリネ「パパとママに出会えた」

 









 
キリネ「あなたに、ずっと言いたかった」






キリネ「ありがとう」

 
 











女「」

女「……そっか」
240 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:57:51 ID:hfsbgMA6 [18/30] 報告
女「なんだか、安心した」
 
 
 
女?「」ニッコリ
 
女(なにわろてんねん)
 
女「なんて」
 
キリネ「……」ズビ
 
女「ほら、食べよう?」
 
キリネ「ああ……」コクン
 
 
 
───やはりそばは伸びていた。
 

 
キリネ「悪いな、なんかひとりで熱くなっちまって」グシグシ
 
女「いいっていいって。こっちもご飯おごってもらっちゃってるし」
 
女「後味悪かった思い出が払拭されて、いい気分だし?」
 
キリネ「……ありがとな」
 
女「ご両親は、どんな人たちなの?」
 
キリネ「絵本作家とおまわりさん」
 
女(……なんか、おまわりさんは何かと縁があるな)
 
キリネ「世界一の両親だよ」
 
キリネ「あんたは?」
 
キリネ「両親、どうなの?」
 
女「」キョトン
 
女「よく電話するよ。関係は良好です」
 
女「旅してること、すごく心配されるけど、超応援してもらってる」

女「世界一のお父さんとお母さん」

女「たまーに、弟に顔見せに帰ってあげなきゃいけないのがしがらみだけどねー」アハハ
 
キリネ「へぇー。弟さん、いくつ?」
 
女「5つ」
 
キリネ「生意気盛りじゃない?」
 
女「人懐っこいから、全然」
241 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:59:41 ID:hfsbgMA6 [19/30] 報告
女「生まれたこのかたずっとかわいい」
 
キリネ「うわ、姉バカだ」
 
女「かわいいものはかわいいからしかたないね!」
 
キリネ「そうかよw」
 
キリネ「……そいつはよかった」フフッ
 
キリネ「こほん」
 
キリネ「こちらは、初心者用ポケモンの育成を行っている区画です」
 
女「ヒトカゲ、ヒノアラシ、アチャモ、ヒコザル、チャオブー、フォッコ……ほのおタイプばっかりだね」
 
キリネ「各部署がタイプごとに育てる方が、育て方も近いんで効率いいんだ」スッ
 
キリネ「ここのポケモンは、協調性やパートナーシップを重視して育てられています」

キリネ「初めて自分のポケモンをもらう人が、トレーナーとして自信を持つことができるように。相棒として、友達として、仲間として円滑にやっていけるように育てているんです」

女「?」

女「あのフォッコは?」

女(輪から離れて、黙々とトレーニング?をしてる)

キリネ「あぁ、あいつか」

キリネ「ああやって毎日ひたすらに、技の研鑽を続けてるんだ」

キリネ「協調性に欠ける、といってしまえばそれまでなんだけれど……実はあいつみたいなのは少なくないんだ」

キリネ「こうして、何十匹と一斉に育てていると、必ずああいうタイプの子が出てくる。突出した個性を持つがゆえに、孤立してしまう子はいる」

キリネ「グループからのいじめや迫害があるわけじゃない……必ずしも」
 
キリネ「彼も別に、馴れ合いを嫌っているわけじゃない」

キリネ「ただ、性質がどこかストイックなんだ。純粋な強さを追い求めているような───鋭利で、脆い」

キリネ「ソリの合うトレーナーと出会えることができたら、いいんだけど」

女「難しいよね」

キリネ「……わかるか」

女「駆け出しのトレーナーは、良くも悪くも未熟だからね」

女「あのフォッコみたいなストイックさは、彼らにとって自分の言うことを聞かない、不都合なポケモンとして捉えられてしまうかも」

キリネ「すっげ。ベテランの風格だな」

女「そんな」イヤイヤ

女「7年くらいだもん。まだまだ若輩者だよ」
242 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:01:53 ID:hfsbgMA6 [20/30] 報告
 

 
ぴん ぽん ぱん ぽーん。
 
 
 
女「お」
 

『本日は、ポケモンセンターセントラルにお越しいただき、まことにありがとうございます』
 
『午前中から実施していた館内アナウンスのメンテナンスが完了しました』
 
『ご用命のありましたお客様には、大変なご迷惑をおかけしましたことを、お詫びさせていただきます』
 
『インフォメーションより、迷子のお知らせです』
 
『カナワタウンからお越しの───』
 

女「けっこうかかりそうだね」
 
キリネ「見学、いいのか?」
 
女「待つよ」ニコ
 
ポッチャマ「ちゃまっ」フンス
 
 
 
 
 
『続きまして、お知らせいたします。係員が、迷子のポッチャマを保護しております』
 
『心当たりのあるお客様は、第4迷子センターにお越しください』
 
 
 
 
女「……まだ来てないのかな」
 
女(というか、放送で係員が、と言っていたけれど)
 
女(ひょっとして、保護した段階で、近場の職員さんに任せてしまった方がよかったのでは)
 
ポッチャマ「ぽちゃま!」
 
ムクホーク「ぴいるる」
 
ポッチャマ「ぽっちゃ!」
 
女「……元気そうだからいっか」ボソッ
 
女?「」コツン
 
女「ん、どうしたの?」


243 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:02:56 ID:hfsbgMA6 [21/30] 報告
「あ、いたぁ」


「さがしたんだよぉ」

 

女「」クルッ

 









 
コータス「……こぉ?」

 
 
女「コー……タス」

 
 
 



























 
女の子「ポッチャマ!」

ポッチャマ「ぽちゃあ!」ピョン
244 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:04:18 ID:hfsbgMA6 [22/30] 報告
女の子「よかったぁー。やっと会えたよぉ」ホワホワーン
 
ポッチャマ「ちゃま! ぽっちゃ、ちゃまま!」ウキウキ
 
女の子「なんか、全然元気ねぇー」ホエー
 
女の子「コータス、スッゴい心配してたんだから」
 
コータス「こぉー!」プンスカ
 
 
 









































女「」
 
キリネ「よかったな、見つかって」
 
女「……あ、うん」
 
女「そう、だね」
245 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:06:40 ID:hfsbgMA6 [23/30] 報告
女の子「ありがとう、ジョーイさん」
 
女の子「ポッチャマ見つけてくれたのねぇ」
 
キリネ「いいえ。わたしはお手伝いですから」ニッコリ
 
女(一瞬で猫被った)
 
キリネ「見つけたのは、こちらのお姉さんなんです」
 
女の子「そうなの?」
 
女「うん」
 
女の子「」ホエー

女の子「おねえちゃん、天使さんみたいだね」

女「」カァー
 
キリネ「ま」
 
女(浮世離れしてると言われたことはある)

女の子「ポッチャマが落ち着いてたのも、おねえちゃんのおかげなんだね」
 
女の子「ありがとう」ニー
 
女「君たちがまた会えたこと、私も嬉しいよ」
 
女の子「」フンス
 
女「」チラ
 
コータス「こっふ?」

女「……コータスのこと、好き?」

女の子「あんまり好きじゃないの」
 
女「あらっ」ズテッ
 
女の子「パパがくれたんだけど、言うこと聞かないし、とってもオラオラだし」

女の子「スッゴく強いんだけど、ほんっと振り回されっぱなし」

女「あははっ」

コータス「こーったす?」
 
女「ふふふっ」
 
女「ひどい言われようだね、君」ボロボロ

女の子「」

キリネ「」

女「……」グシグシ
246 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:09:25 ID:hfsbgMA6 [24/30] 報告
女「ポッチャマもそうだけど、コータスも大切にしてあげてね」ニコッ

女「その子もきっと、あなたのことを大切に思ってるよ」
 


───女の子と、少女は、別れた。
 
その後は何事もなく、文字通りトラブルや浮いた出来事もなく、ゆるゆる見学は進行し、つつがなく終わった。
 
 
 
キリネ「以上を持ちまして、ご案内の締めくくりとさせていただきます」
 
キリネ「本日はポケモンセンターセントラルへお越しいただき、まことにありがとうございました」
 
女「」パチパチパチ
 
キリネ「どーも」ニハ
 
女「素敵なガイドさんだった」
 
女「キリネは、きっといいジョーイさんになれるよ」
 
女「猫を被ったままでいられれば。」
 
キリネ「言うな」

女「ふふふ……」
 
女「よし」
 
キリネ「行くのか」
 
女「うん、行く」

女「今日は楽しかった。ありがとう、ジョーイさん」
 
キリネ「……」
 
キリネ「なぁ、教えてくれ」
 
キリネ「あんたは、なんで旅をしてるんだ?」
 
キリネ「どうして、旅を続けてる?」

女「どうして、って」

女「うーん……」
 
女(前にも、こんなこと聞かれたな)

女「……うん」
 


 
 
247 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:11:00 ID:hfsbgMA6 [25/30] 報告



「いろいろ理由はあるよ。動機もあるし、目的もある。信念もある。ほかにもたくさん」

「1番なのは、うーん……」
 
「やっぱり旅を続けたいから、かな」
 
「足を止めたくないから、旅をしてる」
 
キリネ「それ、なんか違うのか?」
 
「……同じだね」
 
キリネ「じゃあ、目的は何だよ」
 
「当面の目的としては……次のカロスリーグに挑戦しようと思ってる。ジムのある町を巡ってる」

「私は弱いから」

「強い人間になりたい」
 
「そのために、いろんな人、いろんなポケモンに出会って、見れるかぎりのものを見て、自分の知ってること、持ってるものを増やしたい」

「自分の幅を広げて、引き出しを増やすために、がんばってる」

「いつか、何にでもなれるように、今できることを、したいって思ったことを全部やるつもり」

「人生80年、それだけあれば、なりたいものだって、したいことだって、イヤでも見つかるだろうし」

「私は私の誇れる、私になりたい」

キリネ「……何言ってんのかわかんないけど、欲張りなんだな」フフッ

「うん」
 
キリネ「なぁ、アドレス、教えてくれないか」

「えー」

キリネ「な、なんだよ」

「いいよ」ニコ
 
キリネ「なんなんだよ」クフッ

「」ピポパ
 
「はい、これ」
 
キリネ「さんきゅ」ポチポチ
 
キリネ「カロスリーグ、優勝できたらいいな」
 
女「うん、がんばる」
 
キリネ「そしたらあたしも自慢できるしさ。友達がチャンピオンって」
 
女「調子いーんだ。さすがバッドガール」
248 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:11:49 ID:hfsbgMA6 [26/30] 報告
キリネ「やめて」
 
キリネ「いいじゃんかそれくらい」
 
キリネ「……そういえば、名前聞いてなかった」

「あれ、言ってなかったっけ」

「私の名前は───」

 
 

 























 
「よし、と」

「次はどこに行こうかな」
249 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:12:59 ID:hfsbgMA6 [27/30] 報告




とある女の子が、目的を持って旅をするようになるまで、という大筋は、これでおしまいです。
 
ここまで起きた、でも語られていない彼女の話や、これからの彼女の話は、またどこかで書くかもしれない、書かないかもしれない。
 
とりあえず、おしまい。
250 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 23:52:07 ID:hfsbgMA6 [28/30] 報告

「」ノソノソ
 
「あら」
 
「ん」
 
「はじめまして」

「……そうだねぇ」
 
「あなたは私のことを知らないだろうけど、私は知っているのよ?」
 
「いいや。僕も知ってるよ」
 
「そうなんだ、なんで?」
 
「僕が君を見たのは、あの子≠フ夢越しだ」
 
「しょっちゅう夢に出てくるんだから、いやでも覚えるよ」
 
「……そっか、あの子≠ヘまだ、私のことを忘れないでいるんだね」
 
「少し嬉しい」
 
「少し申し訳なさそうだねぇ」
 
「……うん」
 
「別に、もう気にすることもないんじゃなぁい?」
 
「あの子はあれで、好きにやってるだろうしぃ」
 
「……察してくれるうえに、慰めてくれるんだ」
 
「ほんと、不思議だね。あなた」
 
「そいつ……」
 
「チチチッ」
 
「うん、ずっと一緒」
 
「……だろうねぇ」
 
「あなた、まだまだ時間はあるでしょ? せっかくだから、もっとお話ししようよ」
 
「いいよぉ」ノソッ

「ていうか、付き添い以外でポケモンがここに来るのは初めて見たの。やっぱりあなたは特別なんだね」
 
「まぁ、だろうねぇ。僕はてっきり、無に落ちると思ったけど」
 
「……地獄じゃなくて?」
 
「うん、どっかに行くんじゃなくてぇ、消えるんだ」
 
「天命を全うできず」
 
「命の管理も仕損じて」
251 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 23:53:39 ID:hfsbgMA6 [29/30] 報告
「波風立てながら浮世をさまよったあげく、気まぐれに子どもを助けて、その代償で死んだ」
 
「こんな間抜け、僕だったら消す」
 
「でも、愛らしいよ?」
 
「はぁ?」
 
「守りたいもの、つらぬきたい意思があって、そのために必死にあがいたけど結局果たせず、でも思わぬところで心のよりどころを見つけられて」
 
「案外悪くないやって思いながら死ぬの。……愛すべき隣人って感じじゃない? あなた」
 
「人間と僕を一緒にしないで欲しいなぁ」
 
「でも、あなたの晩年は人情にあふれたものだったわ」
 
「素敵な終生だったように思うなー」
 
「……まぁ、悪くないとは思ってるよ」
 
「僕にわかれを告げにきたあの子が、僕がもう長くないと告げた友達が、不思議と幸せそうだった理由がわかった」

「あんまり認めたくはないけれど僕はきっと、彼女のように、死にたくなっちゃったんだろうねぇ」
 
「」フフッ
 
「君は散々だったみたいだけれど」
 
「まぁね……あんまり思い出したい最期じゃないなぁ」
 
「でも、そんなに思い残すこともないのよ」
 
「ふーん」
 
「なにその興味なさげなカオ」
 
「うすうす予想はつくからさぁ」
 
「だって、あの子がああやって歩いていく姿をここから見てるだけで、なんだかほっとするんだもん」
 
「まぁね」
 
「きっとこれからもあの子はたくさん失敗するだろうし、落ち込むこともたくさんあるだろうけど」

「……でも、今のあの子なら歩き続けてくれる」
 
「それを助けるやつらもいる」
 
「頼もしい仲間がいっぱいだよねー。立ち上がるのに苦労しないよねー!」
 
「いいなぁ」
 
「そうやってなんだかんだ、ポケモン達とぶらり、旅をしながら生きていくの」
 
「そう思うとほら、なんかこう……希望がわいてくるでしょ?」

「……うん」
 
「……」
252 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 23:54:16 ID:hfsbgMA6 [30/30] 報告

 

「がんばれ」

 
そのあと、ずっと、ずっと。
 
かれらは、大好きなあの子をずっと見守っていた。
253 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 18/01/02 17:55:21 ID:Cs4SkTP. 報告
最終的な着地のしかたを整理したいのと、意図的に説明をぶん投げていた部分がやはりわかりづらかったかと思ったので、補足と解説をさせていただきます。


まず、時系列を想定して書いていたものについて。「←」がついてるのが、以前並べた時からの追加分。

コータス旅に出る
←コータス巡遊記
主人公卒業
コータスと主人公合流
←ムックルゲット
←ムックルとコータスのいさかい
ラプラスゲット
オノンドゲット
モグリューゲット
ヘイガニゲット

〜パーティーメンバー成熟後〜
ライモンシティ編
シャンデラ編
←ミアレシティ編
←アルトマーレ編
←サイクリングロード
←ポケセンセントラル




1スレ目>>920での主人公が自転車に乗れるようになった話の時系列は、アルトマーレ編の後です。ハイパーボールはコータスの入っていたもの。



キリネが登場するのは、1スレ目>>778の治安の悪い街の話。旅に出たキリネがどんな経緯でどんな場所に居着いたかについては、書きたかったのですがここの流れで語ることではない、と考え、http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=631648で投稿しました。


キリネが登場する話を投稿した段階で、見違えた元不良少女と再会して、昔あった後味の悪い思い出を更新してすっきりする話≠書こう、と考えていました。

更生してから獲得した夢の1歩手前のところまで来ているキリネに対して、主人公はどのようになっているか、を考えた結果、具体的な目標を掲げているがまだ途上の身、とすることにしました。

時系列的にはアルトマーレ編の後、かつ大筋の終わり部分に置きました。



アルトマーレ編は、いつかやろうと初期からざっくり構想を考えていたストーリーに

登場人物を多めにして物語を展開させる

ここを主人公の一番の転機になる場所とする

伏線を大量にばらまいて全部ここで回収する

という課題を据えて書き出したものです。
254 : ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 18/01/02 18:02:31 ID:NFLU/Hfg m 報告
コータスがこのような結末を迎えたのは、自分が見守っていたものを守り抜くことができなかった、という過去を、


もう少し人間のことをわかっていればいくらかマシな最期にできたかもしれない


と引きずっているところがある一方で


結局はこうなるものだったのだ


という納得もあるところだったのを、主人公に機会を与えたことで


救いをさしのべた責任を果たす


という目的を得て、それに殉じつつ、かつての彼の友達のように、すっきりと後腐れのない(とコータスが考える)最期を迎えたかったから、(コータスの自分勝手で)こうなることを選んだ、という運びのつもりです。



ラティアスが仲間となるかどうか、家族の獲得については


・仲間とならない、家族になる提案も断るルートであんなに欲しいと焦がれていたのにもう手にすることは叶わない。けれど、今後の自分の鍵になる精神を獲得した。手元に残るものはないかもしれないがなんとしても進む≠ニ、個人的に好きなハード寄りの結末にするか

・仲間となる、家族も得るルートで自分が獲得した精神の証となるものを得て、自分自身を追い込もうとしていたところを温情にも救われた。彼らに支えられながら、その後押しに応えるためになんとしても進む≠ニ、少し救いのある結末にするか


という二択で決めかねていました。

結局、ここまでさんざん恣意的にヒドい目に遭わせたので「いい加減少しは救いを」と後者にしました。



りゅうせいぐんについて。
なつき度を最大にしたドラゴンタイプポケモンだけがおぼえられる技。

トレーナーに最高になついたドラゴンポケモンだけ≠ェおぼえられる技。

ここだけを強調して書いたつもりです。

それをはっきり描写してしまうと、主人公の「だったらいいのに」が、「そうにちがいない」になり、悪役としてあからさまに半端になるな、と思ったので、匂わせる程度にしました。



女≠ニ統一して書いている主人公の本名は、コータスが名付けたものです。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
255 : 人◆ZZ9zuXJ0Gw 18/01/07 00:25:35 ID:qWVmyQ3. [s] 報告
更新、お疲れ様です

初めてこの掲示板に訪れた際
とあるミミロップとバシャーモのSSを見つけて以来
あなたの書く文章に魅了された者です

心理描写や細部まで作り込まれた設定、ストーリー
トレーナーとポケモン達の関係や距離感など
全部が大好きでした!

本当に、本当に素敵なお話をありがとう!
あなたの作るお話にまた出会う機会が訪れることを
心待ちにしています。(*,,°^°,,)
256 : ルガレオ@カロスエンブレム 18/01/12 01:36:12 ID:SJ5iN0xE 報告
完結記念 (*,,>ω<,,)b