【SS】サザンドラ「白い悪魔、桜色の天使」

真っ暗な闇の中、遠くから声が聞こえる……




……ら



……なら……



うまく聞き取れないその声が、だんだんとはっきり聞こえてきた……



さよなら……


元気でね……



？「なんでだ？　なんでお別れなんだ？」



その声は、だんだんと遠くに行ってしまう……



ごめんね……



？「おい、待てよ！　俺が何をした？　お前が何をしたってんだ！？」



……




？「なんで……なんで……」

ニンフィア「……」


ニンフィアの首からのびたリボンがサザンドラを優しく包んだ……



ニンフィア「悲しい顔しないで？　私がいるから……私はずっとサザンドラ君のそばにいるから……」


サザンドラ「……約束してくれるか？　お前は……俺を置いてどこにもいかないって……」


ニンフィア「うん！　約束するよ！　私はずっとずっとずーっとサザンドラ君と一緒にいる！！」

ニンフィア「私は嬉しかった……一緒にいればいる程、サザンドラ君がだんだんと私の事を好きになってるのがリボンを通してわかったから……」


サザンドラ「……」


ニンフィア「でもね？　その嬉しさよりも、私は悔しかったんだ……」


サザンドラ「悔しい？　なんで……」



ニンフィア「サザンドラ君の心の奥の奥のずーっと奥……かすかに感じていたの……サザンドラ君が私の知らない誰かを強く愛している気持ち……」


サザンドラ「！」



ニンフィア「今、わかったよ……サザンドラ君の心の奥にいた、私じゃない大好きな誰かが……それは、あの人間……サザンドラ君の飼い主さんなんだね？」

サザンドラ「ちがうっ！！」



ニンフィアはリボンをサザンドラの左腕に巻きつけた。



ニンフィア「私に嘘はつけないよ？　……わかるもん……この左腕にずっとボロボロのモンスターボールを持っているのも……いつか飼い主さんが帰ってきてくれるって待ってたからだよね？」



サザンドラはしばらく黙っていたが……ニンフィアのリボンが巻きついた左腕を見て呟いた……



サザンドラ「……そうだ」

ニンフィア「なら、行ってきなよ……あの人間はサザンドラ君とずっと一緒にいたいって心から思ってるよ？　ほら、洞穴の外で大好きな飼い主さんが待ってるよ？」


サザンドラ「……嫌だ……行きたくない……」



サザンドラは静かに涙を流していた……



サザンドラ「あいつのもとに帰ったら……お前と……お前とお別れになってしまうだろ……？」



すすり泣くサザンドラにニンフィアはいつものように笑って見せた。



ニンフィア「私なら大丈夫だよ！　だって、サザンドラ君にいっぱい愛を貰ったもん！　サザンドラ君が何にも知らなかった私にいっぱい教えてくれたもん！」

サザンドラ「俺は……まだ、お前と一緒にいたいのに……ずっとそばにいてくれって約束したのに……まさか……いなくなるのは俺の方だったなんて……」



ボロボロと涙を流すサザンドラをニンフィアがリボンで撫でてくれた……



ニンフィア「泣かないの！　ほら！　笑顔笑顔！」


サザンドラ「俺は……おまえに何もしてやれなかったのに……」


ニンフィア「私こそ、何にもしてあげられなくてごめんね」


サザンドラ「俺は……」



ニンフィアがリボンでサザンドラを抱きしめた……



ニンフィア「忘れないで？　私は……私はいつまでもサザンドラ君の事……大好きだから……」


サザンドラ「ニンフィア……」

ニンフィアはサザンドラからそっと離れると……洞穴の外へとリボンをのばした……


リボンを引っ張ると……あの女性が手を引っ張られて洞穴に引き寄せられた……



女「サザンドラ……」


サザンドラ「……ご主人」



サザンドラは女性を見つめる……



彼女の顔は、昔の幼さがもう無くなっていたが……どこか懐かしさが残る、優しい顔だった……

女性はポケットから小さなケースを取り出して、サザンドラに見せた……



女「私、あれから各地のジムをまわったの……人から貰ったポケモンだからあなたの力をうまく抑える事が出来なかったってわかって……何年もかかっちゃったけど……」



そのバッジケースの中には……輝く８つのジムバッジが……　


サザンドラ「ご主人……俺のために何年も……」


女「私達の勝手な判断であなたをこの山に逃がしてごめんね……でも、今なら……今の私なら、あなたを苦しませる事なく一緒にいれると思うの」



女性がサザンドラに手をさしのべた……



女「あなたが決めて……あなたのこれからを……」

更新来てた！
支援！！

サザンドラはニンフィアを見た……



ニンフィアは静かに頷いた……



サザンドラはその顔を見て、また泣きそうになったが……なんとか笑顔を返した……



サザンドラ「俺の入るボール……こいつは返しておく」



サザンドラは左腕の口を開き、女性の左手に傷だらけのモンスターボールを置いた……



女「！」



そのボールを見て……女性は目に涙を浮かべ……サザンドラを抱きしめた……



女「サザンドラ……ありがとう……」



ニンフィアはそんなサザンドラ達を見て、静かに微笑んでいた……

洞穴の外……



女「それじゃあ帰ろうか……私達の家に……」



サザンドラ「……」



サザンドラはニンフィアを見た……



女「？」



サザンドラは女性から離れると、ニンフィアのもとに近寄った……



ニンフィア「よかったね、サザンドラ君」


サザンドラ「ニンフィア……俺は……」


ニンフィア「私はいつもここにいるから！　サザンドラ君との思い出が詰まったこの洞穴に……」


サザンドラ「また……遊びに来るからな……」


サザンドラはニンフィアに顔を寄せて……




サザンドラのドレインキッス……？


ニンフィア「！」


ニンフィアにこうかは……



ニンフィアは泣きそうな顔をしていた……



ニンフィア「……ありがと」

サザンドラはニンフィアから離れると、女性のもとに向かう……



サザンドラ「……」


ニンフィア「サザンドラ君……」



女性がサザンドラの背にのった……



女「私の家……覚えてる？」



サザンドラは黙って頷くと、バサリと飛び上がった……



女「じゃあ、帰ろっか」



サザンドラはバサリバサリと不気味な翼で街へと飛び始めた……

ニンフィアが遠くなる……



だんだんと小さくなるニンフィアに、何度も何度もサザンドラは振り返る……



ニンフィア「サザンドラ君！！　元気でね！！」


サザンドラ「ニンフィア！！　ありがとな！！　絶対また遊びに行くからな！！」



ニンフィアはまた、泣きそうな顔をして……




ニンフィア「ずっと！！　ずっと！！　ずーっと待ってるからねーっ！！　約束破ったら許さないんだからーーっ！！」



ニンフィアのハイパーボイス！


サザンドラ「ぎゃあああああ！！」


サザンドラにこうかはばつぐんだ！


サザンドラはたおれた！



女「きゃあああああ！！」



サザンドラは女性をのせたまま、まっ逆さまに森に墜落した！



ニンフィア「あ……」



ニンフィアは森に向かって駆け出した。

森の中……




茂みの上に女性とサザンドラが倒れていた……



女「いてて……茂みがクッションになって助かった……」


サザンドラ「(この痛みも……もう最後なのか……)」



そこにニンフィアがかけてきた。



ニンフィア「ごめん！　大丈夫！？」


サザンドラ「お、おまえ！」



ニンフィアがサザンドラに駆け寄る……



サザンドラ「おまえなぁ……いい加減にしろよ……」


ニンフィア「ごめんごめん……いつもの癖で……えへへ」

女性も寄ってきた……



女「あなた達はお友達どうしなの？」


ニンフィア「お友達だよねっ！」


サザンドラ「///」



サザンドラはそっぽを向いた……



女性はカバンからモンスターボールを一つ取り出して、ニンフィアの前に差し出した……



女「よかったらだけどさ……あなたも私達と一緒に来ない？」


二匹「！」


　
ニンフィアは突然の事に驚き……サザンドラの顔を見た……



サザンドラ「……俺もお前と……その……一緒にいたい……」


ニンフィア「サザンドラ君……」



ニンフィアだってそうしたかったので、迷う事などなかった……



ニンフィアは前脚で女性の持つモンスターボールのスイッチを押して、ボールに吸い込まれた！

行っちゃうのか………
支援

支援！！

女性は微笑むと、ボールのスイッチを押した。



女「出ておいで！　ニンフィア！」



ボールから飛び出したニンフィアがサザンドラに抱きついた！


ニンフィア「サザンドラ君っ！！」



ニンフィアのたいあたり！


サザンドラ「ぎゃあああああ！！」


こうかはばつぐんだ！


サザンドラはたおれた！




女「えっ！？　サザンドラ大丈夫！？　ねぇってば！！」



女性は倒れたサザンドラを揺するが……サザンドラは目覚めない……



女「ぽ、ポケモンセンターに連れて行かなきゃ！！　行くよっ！　ニンフィア！」


ニンフィア「はーい♪」



女性はサザンドラをボロボロのモンスターボールに戻すと、ニンフィアを連れて走り出した……

あの山の洞穴……




空っぽになった洞穴……




残されたのは、とある二匹のポケモン達の思い出だけ……




空っぽの洞穴の中に暖かい春の風が吹き込んだ……




風にのって、一枚の桜の花びらが……

おまけ　二匹で紡ぐ未来

あれからもう、何年たっただろうか……







とある山の麓の森……






桜の花びらが舞う、美しい森にて……



一人の女性の後ろを二匹のポケモンがついて行く……

女「二匹とも桜が好きだよねー。毎年春になると桜を見たいってこうして外に私を連れ出してさ……ま、私も桜が好きだからいいけど」

　

暖かい春風が吹くと、ニンフィアは体全体でその風を感じながら……大きく深呼吸した……



ニンフィア「これまでいろんな桜を見てきたけど……やっぱりここの桜が一番綺麗だと私は思うな……」


サザンドラ「俺は……おまえがいるならどんな桜だって大好きだ」


ニンフィア「もー、サザンドラ君ったら！」


サザンドラ「……///」

ニンフィア「！」



ニンフィアが突然走り出した！



サザンドラ「おい、どこに行くんだ？」


ニンフィア「ちょっとついて来て！」


サザンドラ「……」



サザンドラはだるそうにニンフィアのあとを追った……



女「あっ、二匹ともあんまり遠くに行かないでねー！」

ニンフィアが走った先にあったのは……あの日、二匹で見た大きな桜の木……



ニンフィア「よかった、まだあったんだ……」


サザンドラ「変わらないな……この木は……」



二匹は静かにその桜の木を見上げた……



サザンドラ「……俺達は……どうだろうか」


ニンフィア「変わってないよ、全然」


サザンドラ「そうか？」


ニンフィア「そうだよ！」



サザンドラはそう言って笑うニンフィアを見て微笑んだ……



サザンドラ「……そうか」

突然に強い風が吹いて、桜の花びらが舞った……


桜吹雪の中、ニンフィアが不意に振り返った……



ニンフィア「そう言えばサザンドラ君ってさ……私の事が大好きなのに、大好きって言ってくれた事、一回も無いよねー」


サザンドラ「……な、なんだよ」



ニンフィアがサザンドラに駆け寄り、サザンドラを見上げた……



ニンフィア「言ってよ！　今！　大好きって！」

サザンドラ「……」



サザンドラはしばらくニンフィアを見つめ……そして、ため息をついた……



サザンドラ「嫌だ」


ニンフィア「もー、照れ屋さんなんだから！」



そう言って、ニンフィアは遠くに見えるご主人のもとに歩いていった……



ニンフィア「私は、こんなにこんなに……こーんなに大好きなのになー……」

サザンドラ「……」



サザンドラは頭をポリポリとかき……遠ざかるニンフィア目掛けて小さく呟いた……




サザンドラ「俺も、お前と同じくらい…………だ……」




ニンフィア「！」



ニンフィアが振り返った……



サザンドラ「今日はこれくらいで勘弁してくれ……」


ニンフィア「もー！　今日はね！」



二匹は顔を見合わせ笑うと、ご主人のもとへ向かった……

こんな関係が一番いいんだろうなと思う今日この頃……



俺は……俺はあの日、こいつと出会って本当によかったって思っている……



こうしてまた、ご主人に会う事が……一緒に暮らす事が出来たから……



それに、俺は言葉では言えないが……お前の事が大大大好きだ……



お前と……ご主人と……みんなと暮らせる今が、俺はとても幸せだ……





ただ……一つだけ……一つだけお願いがあるんだが……

その日の夜……






ニンフィア「がぁぁあ！！　ごぉぉお！！」


女「ぐぉぉ！！　ぐがぁあ！！」



ニンフィアとご主人のいびき！


サザンドラ「ぎゃあああああ！！」


こうかはばつぐんだ！


サザンドラはたおれた！

寝る時のいびき……もう少しどうにかしてくれ……








おしまい

ってわけで、Bルート完結です。


こっちの結末の方が好みです。


今回のSSはとあるギャグマンガのバカップルを見て、ちょっと書いてみたくなって手を着けてみましたが……正直もう二度とバカップル物はやりたくないです……


なんだかんだで自分の中で新しいジャンルとか安価とか切り開けたから個人的に満足です！


ここまで読んで下さった方々……ほんとありがとね。


もしもまた、ここでSS書きとして会えたら……その時はよろしくね。


ではでは。

乙
最高だった！！

乙！

>>290
こっちがハッピーエンドだったんですね
凄く良かったです！！乙

乙

乙やで

乙です

乙です。

絶対にりゅうのはどうのほうがハッピーエンドだと思っていた。意外な結果でした。本当にお疲れ様でした！

どちらもハッピーエンドだろう。Aの方は最後の最後にサザンドラの本音が聞けた。Bは主人と再開、更にニンフィアも一緒、こんな幸せはあるのかと思った

どちらのルートも思わず涙が出るほど素敵な作品でした！またいつかssの方お願いします。本当にお疲れ様でした