【感動のSS】あゆみんがオフ会で超絶美少女と出会い就職するまでの話

「いやあ…ここ択だなぁ…。剣舞読むんだったらドラン即引きが正解。ただ、馬鹿力を打ってきた場合このままサイキネ突っ張で死に出しで勝ち……。いやああああもうやだよぉ！勝ちたいよぉ〜。みんなぁ助けてぇええ！！いやでも待て待て待て待て！さっきの対面で技全部割れてぉる！割れとるぞ！羽ぇ、蜻蛉ぉ、剣舞ぃ、あとあれだ！バレパンだ！ここはドランバックで勝ちだ！行けるぞ！！」

戻れ！オーベム！
行け！ヒードラン！
相手のハッサムの羽休め！

「うおおおおおし！うおおおおし！きた！きたぁ！遂に2000にのるぞお！行け、ヒードラン！煉獄の海に沈めろぉおおお！！」

ヒードランの火炎放射！
ハッサムは倒れた！
ナプスタとの勝負に勝った！

「よっしゃあアアアアアアアアアアア！！！！みんなぁああああ！遂にやったよ僕やったよぉお2000だよお！！あゆみん俺嬉しいよぉおおおぐんんごぉおおおおおおおお！はあはあ…」

やったな
技外せばよかったのに
おめでとう
おめ！
バロリの下位互換ｗｗｗｗｗ
あゆみんの声で今日も抜きました！
引退マ？
陰毛マスター
banされろ
やべえ明日テストだ
なんで相手馬鹿力ねえんだよ
ダブルのセンスはゴミだけどシングルは強いなぁ
改造乙
キモ

〜缶〜

「馬鹿力は現環境ではあんま採用されてないからｗｗまあ僕が使ってる型がそれなんでね、お相手が環境に馴染み過ぎてたってところと僕自身のプレイングスキルがこの結果でしょうね〜ｗｗｗつーかお前らあれだぞ？相手の打った技くらい覚えてろやマジでぇ！俺が技割れてるか苦悩してた時に教えてくれよ本当にさぁ！もう今度からちゃんとメモを取って視聴するように！」

打った技忘れるとかあゆみん俺悲しいよ
どうせすぐ溶けるよ
臭くなってきた
そういえばあゆみんってドランに似てね？
テスト明後日だったわｗｗ
おやすみ
おやすみ
フレ戦やろうぜ
パーティ教えろ
晒せ

「まあパーティはね、次の動画でシーズンの反省会やるんでとりあえず今日はこれで終わりでーすおやすみなさい。よかったよかったｗｗ」


配信は割と楽な方だ。
試合厳選もせずそのままあげて後で広告をぶち込んでおけば丁度いい稼ぎにはなる。
ただ、レート戦のストレスやプレッシャーに押しつぶされないよう潜る、これが難しい。
視聴者を飽きさせないプレイングと緊張感。
ただゲームで遊んでいるだけだった子供の頃。でも今それを仕事に近い感覚でやるようになると、楽しみは少し減る気がする。

「歩ーまだ起きてるの？」

1階からお母さんの眠そうな起きたての声が響いてきた。ドランバックの時の歓声で目が覚めたのだろうか。

あゆみん最強！あゆみん最強！

支援

定期のあゆみんSSはなんなんですかね…

支援ﾈ

「いや、もう寝るぅー大丈夫ー」

「昨日も夜中まで起きてて…。大丈夫なの？動画も良いけど体調壊さないでね。インフル流行ってるんだから。それと、晩御飯はもう冷めちゃってるからチンしてね。」

「うんうん。わかったから大丈夫ー」

おそらく今日は火曜日だから晩御飯はチキンライスだったのだろう。
お母さんのチキンライスには肝心のチキンが入っていない。代わりにアサリが入っている。それも砂抜きしたような新鮮なものではなく、スーパーの缶詰コーナーにあるようなアサリだ。ケチャップはいつも多めで、混ぜきれなかった塊をつい飲み込んでしまい胃もたれを起こすのが定石だ。

「お母さんは寝るからね。ちゃんと食べなさいよ。」

「はいーおやすみなさいー」

面倒だ。
別に作ってもらわなくてもコンビニ弁当を買えるくらいは稼いでいる。
だがここで残してしまうと、チキンライスがシチューの具に入ったりトマトまみれのアサリが味噌汁にそのまま使われたりするから、どうしてもここは食べることが強いられる。

「食ってくるか…。ケチャップ…。」

部屋を出る前に濃いめのカルピスの残りを飲み干そうとしたら、ペットボトルの口から自分の口臭が漂ってきた。
ただ、お母さんのチキンライスよりかはずっとマシだなと思うと、「お袋の味」がとてつもなくしょうもない存在になってしまう気がした。
こういう時「あゆみん俺悲しいよ」と使うのかなと妙に納得すると、自然と苦笑いが込み上げてきた。

なかなか更新されないなとおもったら更新されててあゆみん俺嬉しいよ

あげ

ー翌日ー

胃もたれだ。
あゆみん俺苦しいよ。
反省会用の動画を編集するつもりだったが今日はもう無理だろう。
そもそも、今日は土曜日だから休みだ。ゆっくり起きて映画を観たり深夜アニメのブレンド・Sを視聴したりする日だ。
ニートだから毎日休みだと世間には思われがちだが、そこはその辺のニートとは格が違う。動画の収入で家計を支えている事実はそれすなわち「労働」
働く者には休息は必須。だから休んでも良し。ここを徹底しないと、よくわからないが経団連とかいう謎の組織が色々とどこかとモメるんだろう。

「歩！おはようー。ちょっとコンビニまでお使い頼んでもいい？」

人が何かをしようとするとそれを全力で阻止するのが保護者だ。
主人公に毎回邪魔されるなんちゃら団のボスとかは絶対自分には向かない職業だと改めて思う。

「ちょっと胃があれで…」

「チキンライスのせいで胃が苦しい」と言わないようにするのは、息子なりの母への配慮だ。有難いと思って欲しい。

「運動してないから体調も悪いのよ！外出て買い物がてらウォーキングしてきなさい。えーっと、何だっけ？そうそう！牛乳と切手お願いねー」

「あ…はい。行って参ります…。」

レート2000でも母親には逆らえない。
というか2000で威張れる機会って実況とスレ立て以外であるのだろうか？

「あとねーお昼とか好きなのあったら買ってきて良いから！よろしくー！」

絶対にトマト系ソースがかかった弁当は買わないと決心し、2週間ぶりに家を出た。
見慣れない日光の方が胃もたれよりもずっと新鮮な痛みだった。

近所のコンビニは歩いて10分くらいの所にある。以前行った時バイトの娘が可愛かったせいでアニメの限定クリアファイルを交換できなかった。それどころか、会計の時話すのが怖くて、そのコンビニにはしばらくは行けなくなった。
リア充に分類されるような人間だったらちょくちょく通って仲良くなろうとするんだろうが、自分は配信コケコ並みの臆病固定個体だったので、そんな力はなく素早さ特化の速さで家まで戻るのが精一杯だった。
お母さんの「コンビニで可愛い子いたけどやめたんだね」という数日前の一言がなかったら、今日家からは一歩も出なかっただろう。

往復20分の運動で体調が良くなるわけないと思いながらつま先を地面に落とす。
肌寒い季節が近づいてきたから肉まんとピザまんもやってるかなと思いながら店内へ入る。

「イラッシャイマッセー」

相変わらずの業務対応的挨拶。
それをかわしつつ、途中に並んだエロ本の如何わしい表紙を横目で追いながら陳列棚を目指す。

「とりあえず、『おいしい牛乳』で良いよな」

更新ﾏﾀﾞ-?

毎秒更新して?(はあと)

牛乳を買う時は奥の方からいつも取る。手前に並んでるものよりも賞味期限が長いことが多いからだ。
陳列棚から伝わる冷気を二の腕に感じながら牛乳パックの縁を掴む。と同時に、背後から聞き覚えのある声が耳に響いてきた。

「もしかして、歩くん？」

女子にしては低めだが、どこか可愛げのある少し媚びたような胸を打つ声。

「え…あっ…う…ああ！こんにちは…」

振り返ってみると、厚みのある唇にあどけなさの残る瞳。そして、肩まで伸びた艶やかな黒髪と褐色の肌がそこにあった。
高校の頃、同じクラスで隣の席にいた子、1番可愛いと思っていた子、姫奈だった。
緩めの服を着ているのは、当時、男子の間でDカップと噂された豊満な胸が目立つのを避けるためだろうか。

「やっぱ歩くんだった！久しぶりー！元気してたー？？」

「まっ…まあ、とりあえずは…なんとか普通に生きていっる感じです…」

「今何してるんだっけー？大学は卒業できたんだよねー？」

「そっそうですね！大学はオケなんすけど…今はなんか…探そ…探すぃ…探し中でして、仕事の方がっ…」

「あーそうなんだー！就職って何も準備できてないと遅れちゃって大変だよねー…」

「はいっ…そんな感じであれっすね…」

不意に遭遇した昔の同級生にパニクる。
しかも自分には職がない。
同級生しかも女子に極めて底辺な現状報告をしなければならないのは流石に萎える。萎えるどころの話ではない。

だが、それ以上に強い感情の高ぶりが、自分の中に浸透して支配していくのを感じていた。

「あたしは今、薬局で働いてるんだー。大学卒業して資格も取れて。そう、そんでねっ！来月籍入れることになったんだー。」

「え…………。そう、なん、です…か。いや、おめでとう…ございます…」

「式もあげる予定で、今日彼氏と一緒にこの辺の式場候補見に来てたんだ。歩くんもよかったら来てくれるとうれしいかなって今思ったー！」

「あ、そう…そうですね…」

高ぶっていた感情が金縛りにあったかのように微動だにしなくなった。

お菓子が並んだ陳列棚の向こうに若い男がいる。おそらくあいつがこの子の彼氏なんだろう。

「じゃあ、またね！仕事ちゃんと見つかるといいね！がんばれー！」

「あ…ども…した。お疲れ様…っす」

黒髪の流れと褐色の肌が残像になって脳裏に焼き付いた。
姫奈は彼氏の元へ笑顔で駆け寄って行った。
入店音を後にするリア充の後ろ姿が、異世界の桃源郷くらい離れて見えた。

「彼氏がいる…籍…入れる…か…」

金縛りになった感情が頭の中で停滞し、高校の頃の記憶が走馬灯のようにぼんやりと蘇ってきた。

にしても描写がいちいちリアルだな
まさかお前…！？

高校の頃、姫奈のことが好きだった。
理由は簡単。おっぱいが大きかったからだ。
青年期特有の単純な性の関心がそのまま好意に繋がったのだろう。
半年おきに行われる席替えで、姫奈が隣になった時、ふと横目で彼女を見ると、制服の白い生地がくびれに沿って真っ直ぐな直線を描いており、みぞおちの部分から肩にかけては机側に突出した膨らみをなぞる放物線が生まれ、降り積もる雪を纏った真冬の高山を連想させた。
間違いなく、デカイ。
そう思っていたのは他の男子も同じだったようで、例えば体育の時、バスケで走り回る女子の群れから姫奈を見つけると、皆、その豊満な二房がドリブルやシュートの度にぷるんと震える瞬間を捉えたいがために、目線を胸元一直線に向けて観戦していた。

初めて話したのは英語の授業の時だった。
帰国子女だったという英語教師が行う授業には、隣の席同士で教科書を1行おきに読むという謎の苦行イベントが毎回あった。
自分がキモいと思われいることを再確認あるいは発見する機会が常々担保される授業なんて吐きそうだった。
今まで隣になった女子は、微妙なわかりやすい作り笑いをするか、露骨に嫌そうな顔を一瞬みせるかのどちらかだった。だが、姫奈は違った。

「…レリ…メンベェラア…ザットピアノ…ソオディリ…ディライトフル…アン！ユジュアル…」

「………。」

「…リ…メンベェア…ザットピアノ…ソオデ…ディライトフル…アン！ユジュアル…」

「…ん…ふふっ…。」

「…リメンベェア…ザットピアノ…ソオディライトフル……アン！ユジュアル…」

「ん…ぐ…いやっ…ふふ…。あはははは！！」

「…え？い…僕どこか間違えてます…というかすみ…すみません…まちがえてま…すよね？」

「…いひっ！ふふふ…！！ううんっ。間違えててるとかじゃなくてね。ふふっ。」

「…？」

「unusual の''un''ところずっと''アン！''って！もう死ぬかと思ったよ！なんでそこだけ強く発音しちゃってるの？？」

「いやまあ…コレは生まれつきと言いますかですね…としご…年頃っと言いますか…」

「めっちゃ面白かったよ！謎の発音！アン！アン！アン！」

「う…でもなんか…あれ…面白くてごめんなさい…」

「ふふっ…ふふふっ…！unusual だよ！ふふっ！ちょっと、言ってみて？」

「え…んと…え…。unusual 。」

「ちょ…ふうあはははは〜！！！！そこはアン！って言わなきゃさー！！歩くんって面白い人なんだねぇー！！」

「う…そのぉ…ありがとうございます…」

たったこれだけの会話だった。
でも、こんなふうに「面白いね」と面と向かって言ってくる女子なんて初めてだった。
もしかすると、心の中では既に彼女は自分を住み分けていたのかもしれない。
けれど、嬉しかった。
交わした会話の中で聞いた甘くて悪気の無い低音。そしていつも見る大きなふっくらとした放物線。
いつかこの子とたくさん一緒に話したい。我慢して抑えた笑い声をもう一度聞きたい。胸を少しだけ揉んでみたい。
そんな欲求の高まった自分の高校時代には、夜になると彼女がいつも妄想と慰めの行為に現れた。
回数を重ねるうちにどんどん触りたく、話したく、好きになりたく、なってほしく、なっていった。
叶わないかもしれなくても。
無謀な望みだとはわかっていても。

面白い支援

支援
謎のリアリティ

時間が経てばこういう事になるのはわかっていた。
早目に自分から行けば良かったと後悔しても、それが正しい後悔だなんて可能性は0に近い。
そもそも、全然フラグなんて立たなかった。ただ単に「面白い人」。あの子の人生で俺の存在はそういう分類で完結していた。

最初から1人だったのに、何故か置いておかれたような不思議で孤独な感覚に襲われながら、牛乳と切手と肉まんを買った。
きっとあの子のおっぱいは、この肉まんよりもずっと暖かくて柔らかくて大きいんだろう。
そんな寂しい妄想を1人でしながら、1人の肌寒い帰り道を、少し早歩きに1人で進んだ。

上がらなくて人目になかなかつかないの悲しい

ー深夜実況ー

「…ということがあってですねぇー。僕としては本当にねぇ、まあ言葉にできない悲しみみたいなのはそりゃあありますよぉ。でもね、こんな、僕みたいなやつよりは、そりゃあ、相手の方がしっかりしてそうでしたし…。幸せになってね、くれるとね、うん…。そう…。ね………。……………………………………………………。でもなああああああああああ！！！！ひきづるわぁあーこれぇえええ！いやだあああああああああああああ！！！！まあ、お前らにはわからんだろうなぁ！！どうせオタクのハゲだし低レート乙乙の乙だしこんな感情なんてわからんやろ！どうせぇぇ！！！！」

はよ選出しろ
負けるぞ
バロリの劣化ｗｗｗｗｗ
キモい
相手のリザyかな？
バネブーのA種族値くらいあゆみんに同情する
負けろ
勝てても戻って来んぞ
餃子作ったら焦げたんだけどあゆみん氏ね

「うるせええええ！この低レート共！バネブーの種族値なんか知らんわぼけぇえ！あとyじゃねえよどうみてもxだわx！んじゃあ、あれです！あれですあれです。このリザがxだったらぁ、あの子とあのクソみたいな男が別れてぇ、俺と、結婚する。んで、もしyだったらぁ、そういうことは起きない。うん。そうしよう。それでいい。よし！！！ブチ殺すぞチクショおおおおお！！！」

yだぞ
yであれ！
彼氏の評価変わってて草
テストやっぱり今日だった。爆死したわ。
就職は？
普通にxじゃね？
カバ本当多いな
yこい
わかめしらす蕎麦食いたい
弱い
さっきペンドラーに3タテされた

「えー。ここはもう普通にxくるんでカバランドギャラで行きます。」


マッカランが勝負を仕掛けて来た！
行け！カバルドン！
マッカランはリザードンを繰り出した！


初手リザはy
オワオワリどぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜すｗｗ
餃子まずい
インフルで学級閉鎖だ
y降臨ｗｗｗｗｗｗ

「えーここは普通に引いてくるんで………まきましょうステロ。仮にあれだったとしても全然ランドで切り返せるんで…」


相手のリザードンのリザードナイトと
マッカランのキーストーンが反応した！
リザードンはメガリザードンYにメガシンカした！


yきたああああああああああ
オワオワリ
はい絶縁ｗｗ
ワロタ
Yやん

「……………ッチ…」

相手のリザードンのソーラービーム！！


「まあ耐えますんでね。切り返しは可能です…」


急所にあたった！
カバルドンは倒れた！


「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！！！！！！！！？？？？？？？？なんやこのクソゲーム！！大体あれやねん！yとかxとかなぁ！？選出で分からんようにしてるのおかしいだろ！！！！！！こいつ場合ただでさえ水技半減なってんのになんで草技覚えんの！？！？！？狂ってるわこんなん！！！！死ね！！！！」

あゆみん俺嬉しいよ！！！
今日はいい日だ
流石
草生えるは
急所を引いていくぅ〜
頑張れリザードンｗｗｗｗｗｗ

ゆけ！ランドロス！


「こいつはチョキなんで余裕です。裏のクレセ読んでトンボしてぇ、ギャラで積みます。」


相手のリザードンの目覚めるパワー！！
急所にあたった！！
ランドロスは倒れた！！！！


「んんんんんんんんぐぎぃいいぐうううああああああああああ！！！！ほんんもっちょとっっっっっっっぉおおおおおおおおお！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

草
映画化
ざまあああああ
元気出せよ
コレはひどい
ヌケニンのH種族値ぶん同情した





降参が選ばれました

こんな時間に更新とか不意打ちかよw
ありがてぇありがてぇ

「…なんやこれ…こんなん試合不成立やん！？！！！！好き放題やりやがってさあ！リザはyだし急所は引くし…。もう書いとけ、このポケモンとレベルの間のこの、この間にxとかyとか書いとけくそ！」

きっと君はこーなーいーー
あーあー
カビゴンのモノマネをしろ
女も奪われレートも奪われるあゆみんすこ
運ゲー
ワロタ
草

「…本当、もうぼくぽけもんやめようかなあああああああ…。なんも良いことないやん。就職も決まらん、結婚しちゃう、肉まんアツすぎて口内炎なる、全然だもん！」

引退か
引退引退はよはよ
お疲れ！
君のことはわすれないよ
ありがとう！
やめるのか
オフ会やろうぜ
元気でな！
やめるんだったらポケモン配布してくれますよね？
はははは
楽しかったよ
やっとかもう二度と帰ってくんな

「少しは止めろや貴様らｗｗｗまあうん、そうですね、オフ会ねー。じゃあこうしましょう婚活パーティー。あゆ活です。あゆ活やろう、もう。あの、よく僕お題箱に『付き合ってください！』とか『本気であゆみんさんのことが性的に好きになりました』とかめっちゃ言われるんですよ。そういう子だったらこの機会にぜひ参加してね、くれたら良いなって思いますねー………………。
ってなるかーーーーーい！！！！！
どうせネカマしか集まらんやろ。なんもおもろくないわ。女きてもどうせポケモンやってる女とかブスばっかやぞ。
というわけで、僕もうずっと不機嫌なんでぇ、君らには前のパーティも教えんし、一生独身でいられるよう呪い打っときます。
それじゃあ今日はここまで。…本当、クソゲームだわ」

オフ会のネカマ率はエグいくらい多い。
以前も一度だけオフ会なるものを開いたことがあったが、会場全体、男、男、男、男。コメント蘭やツイッターで「女子ですけどちょっと不安かも」とか言っていた奴もあの中に確実に混じっていただろう。女なんてこの世にいないんじゃないかというくらい、むさ苦しい空間が広がっていた。

「今日はもう寝よ。ほんとだりー。」

布団に転がり、天井に貼った今期の嫁と目を合わせながらスマホに手を伸ばす。
指紋認証でホーム画面を開くと、ツイッターのDMが来ていた。
ペリカンからだ。

《なんか、配信の罰ゲーム的なやつで婚活パ開くことになったんですけどあゆみんさん来る？》

ペリカン。
同じポケモン実況者。
だが、実力でいえば自分の方が間違いなく上だと思っている。というよりは彼の場合、普段のレート対戦で想定し得る悪いことが立て続けに起こるという不遇な運命こそが、自分よりもレートが劣る要因となっているのかもしれない。
それにしても、こいつは一体何をやらかしたんだろう。

【罰ゲーム？なんかあったんですか？そういう自分もオフ会開くかどうか今日の配信で話題になりましたがｗｗ】

《そうなんですか(笑) いや、普通に今日配信してて、負けたら真面目に婚活するっていう流れになって、そしたら、パルシェンのつらら針4回目で身代わり壊れ→最後の一発本体に当たってひるむ という感じで負けたんですよね》

やはり彼には不遇な運命に陥る何かが発動しているようだ。
いよいよお祓いを勧めるべきだろうか。

【それはお気の毒でしたね(笑) マジでやるんですか？】

《まあやりますけど。多分普通にオフ会やって帰る感じでしょうね。どうせ男しかきませんし。実況者同士の集まりだったらGカップの人も来ますけどね(笑)》

Gカップの人。
シャーレさんのことか。
メタゲームの女王と言われる実力は認知しているがあまり関わったことがない。

【なるほど(笑)んで いつです？やるの？】

《おそらく、今月の最終週の土曜くらいかな？》

【とりあえず動画で告知しときますかね。一応行きますんでよろしくお願いします】

《了解ですおやすみなさい》

流れで承諾した。
前のオフ会みたいまた自分の人生を語るなり動画再生数を伸ばすコツなり披露すればいい。
本当に女の子が来れば話は別だが、そんな確率は急所2連負けよりもずっと低いだろう。

「にしても婚活より就活の方が先なはずだよな、みんな」

周知の禁句を独り言で呟きながら、明日は告知用の動画を作ってみようと思った。

支援

じわじわ更新してて草
頑張ってください

ーオフ会当日ー

目がさめると10:30だった。
今日は確か9:00に集合だったはずだが、若干、いや、だいぶ寝過ごしてしまったようだ。
パソコンをみると告知用動画の概要欄に「遅刻厳禁！！遅れたら処す」の文字があった。
まさか作った自分が普通に遅刻するとは。

だらけきった重い体を起こして、ぐんと背伸びをしつつDMを見ると、ペリカンから通知が来ていた。

《遅いんでもう始めますね(・・)b》

奴が(・・)bの絵文字を使うときは半ギレの証拠だ。以前もモンハンでひたすら足を引っ張った時にこの絵文字が届いた事があったが、その時、普段は温厚な彼のツイッターには「あゆみん下手クソ出直してこい」の文字が出現していた。
温厚な人でも怖くなるモンハンが悪いのか、モンハン如きでキレるペリカンが悪いのか、当時自分の中で一躍話題になった議論だが、結局、たかがゲームでキレるとか大人気ないという結論になった。

盛大なブーメランかどうかはさておき、今はこの(・・)bが出現している状況、すなわち寝坊したが故に失った、彼の温厚な感情を取り戻すのが最優先だ。

「お母さん！ちょっ…もう俺行くわ！！！朝ごはん今日はいらない！お昼と一緒に食う！」

「そうなの？中々起きて来ないからてっきり11時からだと思ってたわー。だからあれほど早目に起きて準備しとけばっていつも言ってるのに…。気をつけていくのよー。」

中々起きて来ないのなら起こしに来るなりしてほしい。小学校の遠足もこんな具合で間に合わず、学校で一日中留守番していた事が何度もある。危機感が足りないという点では親子揃って似た者同士と言えるのだろう。

「うんうんわかった！じゃ…ちょもう…行くわ！うん！いっ行ってきます！！」

「あちょっと待ってー、歩。これー。みんなで食べてねー。」

おそらくお菓子か何かが入っているのだろう。お母さんが正方形の平べったい箱を抱えている。

「え…！い、いや、急いでるし…かさばるから！」

「でも、これ昨日安かったし、みんなで食べたら良いかなぁって、お母さん思ったんだけどー。だめだったかしらー。もったいないわねー。でも近所の早乙女さんにでも分けたらいいかしら？でもやっぱり歩の友達にもお世話になってるしー。ねえ？」

「ううううんんんっっっぐっ…わわわかったから！！！急いでるし！！もう、持ってく持ってく！！ありがとう！みんなで食べるわ！サンキューなっっ！！うん！じゃあもお行く！行って来ます！！！！！！」

かさばる箱を抱えながら、立て付けの悪い玄関の戸を開け、走り始める。
急いで詰めた3DSと充電器が、駆け足の度にカバンの中でガチャガチャ音を立てる。
吸い込んだ息を勢いよく吐き出すと、自分の蒸気が一瞬だけ目線の上に現れて、すぐさま消えていくのが見えた。
白い。
悠長に秋の終わりを感じている場合ではないが、確かに近づいて来ようとしている冬の空気に、少しだけ寂しさを感じた。

描写リアルだな…

何やってんだよあゆみん(・・)b

支援

支援

支援

支援

更新まだかなー

もう更新されないんか…？

あゆみんって名前しか知らないんだけど女だったの

>>46
これはちゃんと読んでないな

>>47
面白いのにもったいない

ーオフ会会場ー

以前はただのオフ会という告知だけだったが、今回は一応婚活パという名目で宣伝した。
そのせいか、入り口の窓から中を覗くと、以前よりも人が多めに集まっているのが確認できた。
だが、見渡す限り、男、男、男、男。
予想通り、見渡す限り、男、男、男、男。
「婚活パ」なのに、男、男、男、男。
3DSに向き合ってブヒブヒ言っている異様な光景が広がっている。やはり、地球上に女なんていないんだなとこの瞬間確信した。
まだ整わない息切れした呼吸のまま、会場のドアを開ける。
開けた瞬間、大勢の前で意気揚々と話をしているペリカンと目が合った。

「おおお…おお疲れ様です！！！！この度は本当に遅刻をして、してしまい、申し訳ありませんでしたぁああああ！！！！！」

新卒で職が決まらなかた時、お母さんに謝罪を放った時と同じ感覚だった。
とりあえず、必死に謝る。謝るのだけれど、多分きっと許してくれるだろうという感覚。
だからといって、形式的でもなく、機械的でもない半ば希望的観測に満ちた感覚をこういう場面ではいつも感じる。

「いえいえ！全然大丈夫です！少し前に始まったばかりですので！！それよりも、寒い中大丈夫でしたか？もう少し気温も暖かい日にすれば良かったんですけれど、僕の配慮が足りなくてこんな日にしてしまい、大変申し訳なかったです！！」

何かがおかしい。
普段なら「ああ、来たんですね。お疲れ様です。空いてるとこにどーぞ。」とテキトーに対応するはずだ。
彼の性格的にキレている感情を現実世界では出さないことはわかっている。こういうタイプの人間はその場で温厚なほど、丁寧な言葉で飾るほど「実はキレてましたよ」となる場合が多い。今日は彼の怒りを鎮めるために、できるだけ脇役になり切ろうと心に決めた。

更新キター！

なにこれリアル過ぎる…まさか本人！？なわけないか。

あゆみんにこのSS紹介しとくわ。

「さあ、気を取り直して行きましょう！それでは、皆さんにご紹介します！この人が実況者のあゆみんさんです！」

いやに紳士気取りな口調に警戒しつつ、促された自己紹介を始める。

「あ、どうも、あ、実況者のあゆみんと申す、ものです。今日はよろしくお願いしま…す。」

会場から、あゆみんさんだーあゆみんさんだーと声がわく。
普段はここでレートの数値や強者故に感じる苦痛を10分くらい語るのだが、今日は控えめに行くことにした。

「いやー本当に素晴らしい自己紹介でしたね！それではここで一旦座談会に入りましょうか！各自自由に交流する感じで行きましょう！今日は皆さんわざわざお集まり頂きありがとうございます！僕と話したい方いたら遠慮なくどーぞです！！」

自己紹介を終えるや否や、ペリカンは自分の自己紹介を気にも留めず、すぐさま主役に引き戻った。
やはり、こいつはキレている。相当。
そう確信した瞬間、ふと、お母さんに嫌々もらったかさばる正方形の箱を抱えているのを思い出した。

(そうだ！これだ！これで奴の機嫌を治してもらおう！名付けてペリカン釣り！！)

無駄なおせっかいをしたお母さんに、人類史に残るほどの感謝と感激を示そう。この時ばかりはそう思った。

「そ、そういえば、僕お菓子もらってましてー。はい。良かったらペリカンさんに食べてもらおうかなとか思ったんですけど…。」

「…え。あ、どうも。ありがとうございます。」

2人きりで話した途端、紳士気取りで張りのあった美声が崩壊し、隠キャ日本代表の称号を得られるほどの枯渇した肉声が鼓膜に響いた。

「んと…。じゃあ、僕あけますね。ペリカンさんに喜んで頂けたらなって思ったんですよ〜。」

下手な振る舞いのまま、丈夫な包装紙をゆっくり引き剥がしていく。お菓子の包装を開くのにここまで緊張感があったのは初めてだ。慎重にテープを剥がしていくと、包装紙の中から白い箱が姿を現した。この中にペリカン釣りのエサが入っている。

「いやー。それじゃあ、蓋の方オープンですねー。」

お母さんが持たせてくれたお菓子。
ペリカンを釣れるかもしれないお菓子。
希望に満ちた友情を繋ぐお菓子。
期待を込めて垂直に上辺部の蓋を開けた。

「………。」

「………。」

「…？」

「…？」

「………。」

「………。」

「「これは…」」

「「八ッ橋…？」」

「八ッ橋ですね…。はい。」

「八ッ橋…のようですね…。わざわざありがとう…ございます。」

数ある中でなぜお母さんは京都の修学旅行土産をチョイスしたのだろうか。
せめてお饅頭ならわかるが、なぜか八ッ橋。
不思議でたまらない、八ッ橋。
正真正銘の、八ッ橋。
頭の中がシナモンにまみれた三角形でいっぱいになった。

支援

支援

八つ橋美味しいよね。支援

「僕、あんこ、あんまり好きじゃなくてですね…。あゆみんさん、良かったら食べたら良いんじゃないですかね。」

お母さんの気の利いたお節介が、何の役にも立たない本物のお節介になった瞬間だった。あんこが無理だったなんて、あゆみん俺悲しいよ。

「そうですか。じゃあ、僕食べておきますね…。」

早々に八ッ橋をテーブルから撤退させ、整列した三角形の入った中身に目を落とす。
一応、生物だししばらく冷蔵保管できないからオフ会中に食い切らないと悪くなるな、と思う。

「それより、あゆみんさん！」

急に紳士的な口調が戻って来た。ペリカンの目が輝いている。

「ど、どうしたんすか。」

波のある彼の様子に警戒姿勢を強めながら聞き返す。

「女の子、いるんですよ、ほんとに！！」

「え…え！？」

会場には男しかいなかったはずだが、人に紛れて見えなかったのだろうか。

「僕も最初は驚いたんですけど、めちゃめちゃ可愛くてですね！ちょっとこの座談会の時間にその娘と話したいなって思ったんですよね！」

そういうことか。
こいつの口調が普段より好印象だったのはその女の子に気に入られるための算段だったのか。
ペリカンは八ッ橋よりもずっとランクが上のエサへ既に食いついていたようだ。ペリカン釣りは中々奥深い。
というか、そんな呑気な分析をしている場合ではない。女の子がいるという前代未聞の一世一代のチャンスが現実に起きている。お母さん以外の異性が、女の子が、この世界に、この空間に、いる。

「ちょっと今、話してくるんで、もう行きますね。あゆみんさんは八ッ橋でも食べて皆さんと交流してて下さい！じゃあ！」

「え…ちょ…ま…。ぼくも行きた…」

自分の希望が言い終わらないうちに、ペリカンは女の子がいると思われる方向へ尋常じゃない速度の早歩きで向かっていった。
遅刻して来たんだから文句言わず、手を出すなよ。そんな言葉が奴の後ろ姿から伝わってくるようだった。

シャーレ爆乳！シャーレ爆乳！

あゆみんもペリカン釣りの奥深さにようやく気付いたか

これは巧妙なペリカンアンチ

支援

あゆみんは俺が貰ってく

待ってるからな〜

面白い
支援

定期的に上げねば

支援

あげ。支援してるで

信じろ…
いつかまた更新される事を…

はよ更新しろやこのケムッソ

支援

ペリカンが雑踏の向こう側へ消えると周りには無残なポケオタしか残っていなかった。
メガネが薄汚れて歯並びが悪い者、悪質的な臭いを放つ者、寝癖が一生ついた早口の者、メタボレート2500の常時ポテチをほうばる者。
各々が自分に集い興奮気味で話しかけてくる。


「んあは…ぐん…あゆみんさ、あゆみんさん、いつうも見てますよぉおおお」

「どうも…2500のやつ…嘘ですよね…」

「前の動画のあの立ち回りは僕の考察からすると確実に向こうは交代読み草技が安定するんですからそれを読むことは可能ですよねそもそもそうなった時あなたのパーティは後出しに草技のとおりが良すぎた訳で居座りよりも交代の方がリスキーな択なわけでそしてなおかつ選出の段階でも…」

「あああ…おううん」

「あゆみんさんトイレどこですか？」

「顔晒してもいいですか？撮りまーす」


まさに魔境である。
そんな中でも紳士的な対応を迫られるのが実況者というもの。めげるわけにはいかない。

「いいっいやあ〜みなさん今日はありがとうございます〜。いつもみてくれてありがとう！確かに前の立ち回りはちょっとねー(笑)あ！トイレは下の右の所ですよー。顔はねー晒さないでねー。普段仮面つけてるとこから察しろよねー(笑)」

丁寧な言葉遣いはいつか役に立つだろう。
ここで好感度を上げておけば再生数をあげることにもつながる。

「え…レート2500は？ねえ…」

「個人的には選出の段階でランドロスを初手に持ってきた方が有利にサイクルを回せる気がしたのですがいかがでしょうかそもそもランドロスは当時の相手えふん失礼しましたお相手のメガ枠両方にささっているとみえなおかつスカーフなのですから氷技持ちが想定されても確実にとんぼがえりで対処できるわけですよはい」

「うっす了解でー。やべ漏れる漏れるｗ」

「マジかやっぱダメかー。まあ晒して誰得かは…なあ？ハハハハハハハwｗ」


これがとてつもない美少女だったら話は変わるのだが、現実はそうもいかない。
特に早口で長々と動画対戦を振り返るメガネにはムカついた。

「とりあえず、じゃあ、みなさん、僕と対戦とかしてみますかぁ〜？その他質問とかあったら答えられる範囲で答えたいなあとは思ってましてー(笑)」


「俺はいいや」

「え今日婚活パっしょ？なんで対戦？？」

「個人的な解釈とすれば当時の選出はランドロスチルタリス水ロトムが安定したでしょうおそらくバンギラスでゲンガーをみるのは厳しい気がしますねそれに圧倒的にミミロップに打点を許してしまうことからあの一戦はランドロスがお留守番なさったのは悪手といえるのでしょうはい」

「ああ…おお…うう」

「腹減ったからマックいくは」


人が優しく接すれば調子付いてしまうのが陰キャオタクの特徴だ。初対面の敬いや気遣いが全く感じられない。それ以前にどもったままのやつは論外だが。
オフ会とか婚活パよりも社会不適合者の集いと称した方がこれからはいいのかもしれないと思った。

「本日はありがとうございます。あゆみんがもしよろしければ僕と対戦をしていただきたいです。」

やっとまともな奴が出てきた。今日は仕方がないからこいつを相手にすることにしよう。

「あ、全然大丈夫ですよー(笑)よろしくお願いします〜(笑)」

これじゃあいつもと同じじゃないか。何が美少女だ婚活だ。3DSに付いた白い手垢を爪で払いながら、電源を力なく嫌々起動する。

「そういえば、ペリカンさんの狙ってる娘すごい可愛いらしいですよ。みんな、ペリカンさん妬んでるんで再生数心配っすねｗｗ」

自分も是非とも会いたかった。
でも今日はあいつの独壇場になってしまったのだ。
それにしても、可愛いとはペリカンも言っていたがここまで評判になるとはどこまで可愛いのだろうか。

「あ、それではあゆみさん！対戦よろしくお願いします！」

「あ、こちらこそ〜(笑)」

噂の美少女を頭の片隅に置いて、営業スマイルをキープしたままシングルバトルをスタートした。

実際オフ会ってこんなんなん？

お、更新きてた。支援！

支援や支援や

その後は結局いつも通りだった。
通信交換をしたり、対戦をしたり、パーティ相談にのってみたり、好感度が上がるような振る舞いはひと通りやった。
メガネの早口動画野郎とも対戦したが、雪崩外しで負けたので奴だけは呪われればいいと思った。

元々の目的が婚活パだったことはすっかり忘れられ、各々が3DSの前で叫んだり喜んだりしている。
ペリカンに女の子を取られたかどうかなんてきっと関係なく、本当は結婚なんてみんな本気で考えてるわけではなかったからなんだろう。ポケモンにハマり、ポケモンで関わりを持ってる以上、その先にある世間一般にいう幸せにはほど遠い位置にいることをきっと自覚している。
リアルな世界のおっぱいよりも5vやレート2000の方が現実味がある快感なのだ。ゲームの中にある現実とはずっと離れた空想の世界なのに、ずっとずっと現実味があるのだ。

皆が対戦にも飽き始め、雑談とお菓子の食い合いが風景に馴染み始めてきた頃、ペリカンが会場の前に戻ってきた。

「はい！！それではですね！座談会はここまでにしたいと思います！」

その目は完全に勝ち誇った目だった。おそらく、女の子と上手くいったんだろう。本物のペリカンも獲物を上手く捕えるとこんな目をするのだろうか。

「それでは、この辺で閉めようかなって感じですが…。今日の感想とかあったら言いたい人どうぞ！あ！あと好きな実況者とかいたらみなさん感想と一緒に教えていただけたらなあと思います！」
会場が静まりかえる。
オフ会の通例だ。感想を求めたり何かしらの反応を求めたりすると一気に静まりかえる。さっきまでポテチをほうばりながら、努力値ガー、ゲーフリガーとほざいていたデブも、3ヶ月間何も食べてませんみたいな寂しげな表情に変わる。

「無いようでしたら、僕の方で当てても良いですかねえ！」

安定の無茶振りが出るのも通例だ。
こういうとき、実況者側はすこぶる楽な状況となる。感想を受ける身であり、急に指名される恐怖がないからだ。
ペリカンがランダムで指名していく緊張感に
包まれた会場を傍観するなかで、ふと食べかけていた八ッ橋がまだ残っていたのを思い出した。
結局自分1人で食べることになった餡子の大軍から1つほうばると、先ほどの早口メガネが感想を言い始めていた。

「あああああああうんとのあれあsdjdkqswでふんとわわわわ個人てててて的にはですねっっやはり、うあ、やはり、あの時点での交代読み草zは流石に想定外とはいえ、いえ、交代の…」

「はい！ありがとうございます！楽しんでもらえて良かったですね！では次…」

流暢な早口がカミカミのテンパり状態になっている。きっと、確実にイタイやつとして奴は会場に存在感を示しただろう。人の立ち回りにケチを付けるからだ。ざまあみろ。
それよりも、ペリカンのスルースキルの方が中々エグいなと思いながら八ッ橋をもうひとつつまむ。程よい甘さもここまで食べると少しずつクドく感じてくる。

「それでは次ですね…あ！じゃあ、今日僕と話した女性の方！感想と好きな実況者どうぞ！」

静かだった会場がどよめき始める。
釣り合うか否かは別として、みんな可愛いとか美人とかには興味があるみたいだ。
だが、みんなもう遅いんだ。その娘は既に奴の手に落ちている。いくら、どんなに、騒いだって足掻いたって無駄なんだ。

「………………………………。」

ペリカンの呼びかけにざわめく会場の中、目的の美女の声が返ってこない。

「恥ずかしがらなくても、大丈夫ですよ！」

「………………………………。」

相変わらず返答がない。
八ッ橋を4つまとめて放り込んでみた。かなり弾力があり飲み込みづらい。

「もしかして、後ろの方だから聞こえづらいかな？今日僕と話してくれた白いワンピースの方ー！」

ペリカンの声が大きく会場に響くと、ざわめいていた会場がしんと静まりかえった。
沈黙した空間が5秒、6秒と経過し、ペリカンがもう一度呼びかけの声を放とうとしたその瞬間。水面へ垂らした一滴の雫が波紋を広げていくかの如く穏やかで、雪解け水の流れのようにか弱く、透き通った声が会場の空気を震わした。

「……は、はい…」

かなり後ろ側からの声だった。
声の方向を振り返ると、白いワンピースと肩にかけて伸びた黒髪がうっすら確認できた。

「ちょっと、マイクあった方がいいかな？前の方とかきてもらえますか！」

ペリカンの指示を受け、その少女は少しうつむきながら、顔の横に掛かる髪を頬に馴染ませ撫で下ろすと、ゆっくり前方へ歩行した。
歩行が進む度、少女の表情と体型がはっきりと視界に滲んでくる。

「はい！ありがとうございます！それでは今日の感想と実況者で好きな人いましたらどうぞ！」

マイクを少女が皆を背にして受け取り、ゆっくり振り返る。
振り向いた瞬間、会場の者全員が息を飲んだ。
華奢で引き締まった胴体。そして、つま先から腰骨までまっすぐに伸びた細い脚。胴体よりも脚の方が長く、身に纏う白いワンピースから僅かに透ける脚の付け根付近が、窓から入る光を反射している。
そのワンピースの純白に劣らず着色した皮膚の色は、透明感溢れる白い色だった。色白からなる顔の輪郭は手のひらで全て覆ってしまえるほど小さく、唇は薄めで朱色の面積が少ない。その唇より前方へ突出した彫りの深い鼻は、一直線に鼻筋を通して丸みを帯びた先端を作っている。等間隔に位置した横細めの目は、見つめると胸の奥を引き締められ、もう永遠にその目線にとらわれていたいと思ってしまうほど、鮮明に黒さを保っていた。
その整った深い彫りたちの小顔を大きく抱擁するように黒髪が肩まで艶やかに包みあげ、ワンピースの白と対照的な色彩を創造している。
美少女。
誰もが口を揃えてそう言えるほど、その少女は全てが整っていた。

「…あ、その…///」

華奢な体型がふるんと震え、目線が下がる。色白の肌が少しずつ紅潮していく。

「緊張しなくて、大丈夫だよ！好きな実況者さんとか教えて！」

おそらく確信犯だろう。
ペリカンはここで「ペリカンさんです！」と言って欲しいのだ。
そしてそのままゴールインして持ち帰ってしまう予定なんだ。
そう思うと腹が立つ。
なんの茶番だ。俺よりもレート低いくせに。
残り7つになった八ッ橋を苛立ちに任せて一気にほうばる。
くちゃくちゃととてもかみづらい。

「…ああ、あの………その…///」

「大丈夫！大丈夫だよ！」

会場が美少女への関心とペリカンへの嫉妬で包まれる。
多めに放り込んだ八ッ橋が喉に詰まりそうになった。
しかし飲み物がない。

「…あの…/// わた、わたしは…///」

「うん！うん！」

なんとか唾液で押し込もうとする。
おそらく八ッ橋1個分は飲み込めた気がする。

「わたし…は///」

会場の目線が美少女に集まる。
ペリカンが獲物を捕らえる寸前の目で美少女を見つめる。
八ッ橋が2つ喉元を通り抜ける。

「わ、わ、わたし、わたしは！！！！！あゆみんさんのことを！！！！心から！！！心から！！！！！！愛しています！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

八つ橋にまぶしたシナモンが、咽せ吐いた咳と共に鼻から吹き出し、潮吹きをするように空中へ飛び散った。