【ホワイトデーSS】ア・ローラー・アンド・ホワイトデイズ

1 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 19:14:35 ID:bZ0mLC.2 [1/39] 報告






#1『考える男は青天白日の輝きを浴びる』




29 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:12:06 ID:bZ0mLC.2 [2/39] 報告







#3『悪事は白紙に戻せない』





30 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:14:22 ID:bZ0mLC.2 [3/39] 報告
「どうしようもない奴って、やっぱりいるんだねぇ」

「嫌ですわ、子供に悪影響なんかがあったらどうしましょ」

「早く消えてもらいたいものですわね」



また始まったか。負け犬の遠吠えだ。
お前らはどうしていつもいつも、洪水のように不快な声をまくしたてるんだ。

囁いてるつもりかもしれねぇが、お前らの声は聞こえてるんだよ。届いてるんだよ。
ふざけんじゃねぇ、馬鹿どもが。
31 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:16:04 ID:bZ0mLC.2 [4/39] 報告
群衆「ヒソヒソヒソヒソ ザワザワザワザワザワ」


スカル男したっぱ「グズマさん……俺、腹立ってきやした。こんなに色々言われるなんて────」


グズマ「落ち着け、テメェが今暴れたところで何も変わりゃしねぇよ。それよりもさっさとテメェらだけでもアジトに戻ってな」

男したっぱ「しかし」


グズマ「俺ァ、個人的な用事があるんだよ。護衛とかもう良いから、さっさと行け」


部下と別れた後、俺は商店街のど真ん中を闊歩し始めた。
スカル団と言やぁ、悪評三昧の不良集団だからな。
こんな人混みに行きゃ注目はされるだろうし、多少の罵倒なら覚悟してた。
32 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:21:38 ID:bZ0mLC.2 [5/39] 報告
だがここまであからさまに迫害されるとは思わなかったよ。

一人一人が突き刺すような冷徹な眼で睨んできたり、中にはこっちを向いてツバを吐くようなのもいたな。

まったくどっちが不良なんだか分かったもんじゃねぇ。


グズマ(やっぱぶっ壊れてるぜ、この世界はよ……)


いつも人間は、諸悪の根元とやらを探している。
そして何かを悪だと決めつけたその瞬間、それに対する全力の総攻撃が始まるのだ。


傷つけられた方が何を思うかなんてお構いなしさ。
とにかく人は、何かを壊せればいいと思ってる。
そこに意思なんか存在しねぇんだ。


グズマ「……こんな世界、いつか変えてやるからな」ボソッ
33 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:24:11 ID:bZ0mLC.2 [6/39] 報告
─────今日、俺はホワイトデーのお返しとやらを買いに来ている。

何? 似合わねぇだと? 余計なお世話だ。

スカル団は孤独でアウトローな奴等ばかりが集まる場所だ。
時にはこういう行事がとても大事になんだよ……。



まず、スーパーゲキヤスに着いた俺は粗方の菓子を購入。

そこで見知った餓鬼二人と出会った。
ホワイトデーのお返しで悩んでいるらしかった。


本当はアドバイスするとかいう性格じゃねぇンだが、ウジウジ悩んでる奴は嫌いでな。多少言葉をかけてやると、アイツラ阿呆面浮かべてこっちを見てたぜ。

何となくざまぁみろって気持ちになる。
34 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:29:10 ID:bZ0mLC.2 [7/39] 報告
グズマ「さて、次は……プルメリの分、か」

プルメリに買うものは既に決まっている。
俺が次の目的地に向かおうとしたその時だった。

アローラコラッタ「ラッタァ……コラッタァ」

グズマ「あン? 何だこのコラッタ」

よく見るとそのコラッタは足を怪我しているようだ。

グズマ「どうした、動けねぇンか。……ったく、ドン臭そうだなぁお前、ちと傷薬付けてや────」


子供「僕のコラッタに触るなスカル団!!」


グズマ「あ?」


子供「出ていけよ……は、早くこんなところから出ていけよ悪党!!」
35 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:36:30 ID:bZ0mLC.2 [8/39] 報告
「そうだ……何であんな奴がここにいるんだ」

「私たちの生活の邪魔をしないでよ……!」

「出ーていけ! 出ーていけ!!」



あぁ、始まった。

これだからこの島は嫌いなんだ……。
弱ぇ奴等が束になって俺たちみたいな集団に加わらない個人を徹底的に潰しに来やがる……!!

俺は、俺は……。



グズマ「グズマ……何やってるんだぁぁ……」ボソッ


こんな奴等に心乱してる場合じゃない。
そうだ、あのジジイも言ってたろ。
俺には、帰るべき場所がある────
36 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:44:06 ID:bZ0mLC.2 [9/39] 報告
グズマ(さっさと目的を済ませてこんな場所から離れてやる……!)


プルメリの分の買い物も済ませ、俺はポータウンへの帰路についた。
ふと振り返れば、さっきのコラッタが餓鬼に抱き抱えられ、まっずくな瞳で見つめている。




────やめろ、俺をそんな目で見るんじゃねぇ。

ポケモンが俺を同情してんじゃねぇよ。







俺は、確かに昔から跳ねっ返りの塊みたいな男だった。
悪事は腐るほど重ねてきた、そんな人生だった。
別にその事にウジウジ後悔するつもりはサラサラねぇ。




だけど、そのうちの少しでも……白紙に戻せないだろうか。
そんなことを考えた日があったのも……事実だった。
37 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:48:45 ID:bZ0mLC.2 [10/39] 報告
──
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───────
──────────


女したっぱ「わぁぁぁ……グズマさん、お菓子チョーあざす!!」


頭の悪い感謝の言葉だなと思いつつ、グズマはそんな部下達を好いていた。

こいつらには裏表ってもんが感じられねぇ。
まったく、可愛いもんだよ。

グズマ「おう、食い過ぎんじゃねぇぞぉ」




男したっぱ「グズマさん、ありがしゃす!」

グズマ「てめぇも食うのかよ!?」
38 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 21:56:22 ID:bZ0mLC.2 [11/39] 報告
屋敷の椅子に座り、菓子を頬張る部下達を見ていると、背後からプルメリの奴が現れ、俺に話しかけた。

プルメリ「随分と優しくなったもんだね。破壊が人の形をしてる男のくせに」

グズマ「うるせぇよ。俺は……」

プルメリ「ん……アンタ、街で何かあったのかい?」


プルメリめ……流石に察しが良いな。
俺の表情からなのか、声色からなのか、何かに勘づいたようだ。


グズマ「何も起きてねぇ。起きてたとしても些細なことだ、気にしてねぇよ」

プルメリ「そうかい……なら、深く聞かないよ」

グズマ「ケッ」
39 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:02:58 ID:bZ0mLC.2 [12/39] 報告
プルメリ「……そういえばアンタ、島キングのハラのところで特訓してるんだって?」


グズマ「ハァ……いつ聞いたんだよそれ」


プルメリ「フフ、アローラは狭い地域だからね。噂が運ばれてくるのも早いもんさ。どんな心境だい?」


どんな質問だよ。
心境だなんてそんな大したもん……いや、なくはないのか?


グズマ「……やり直してぇなぁとは……思ってる」
40 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:07:40 ID:bZ0mLC.2 [13/39] 報告
グズマ「……今まで俺がやってきたことをよ、今さら白紙になんて戻せねぇだろうし、そもそも戻す気もねぇ。……でも」

グズマ「これからの未来をやり直すことは何時だって出来るんじゃねぇかって。ある小僧どもを見てよ、そう思っちまったんだ」



プルメリ「……そうかい」
41 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:19:15 ID:bZ0mLC.2 [14/39] 報告
プルメリ「出来るさ、アンタなら」

グズマ「……カッ、当たり前だろ? 俺はグズマ様だぜ。過去の自分だって、ぶっ壊して、ぶっ壊して、ぶっ壊して、ぶっ壊しまくってやるよ!!」



少しして、グズマが身支度を整え出した。
気になったプルメリが口を開く。


プルメリ「どこへ行くんだい」

グズマ「散歩」


グズマ「あ、あと……椅子の裏、見とけ」

プルメリ「?」
42 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:27:31 ID:bZ0mLC.2 [15/39] 報告
グズマが外に出掛けた後、彼に言われた通りプルメリは椅子の裏を調べる。
そこにはビニール袋がこっそり置かれていた。

プルメリ「……あっ」

プルメリ「これ、アタイが欲しかった……」

中を覗いた瞬間、プルメリは声をあげて瞳をキラキラさせる。
それは、エンニュートの柄を模したバンダナだった。
いつの間にアイツはアタイが欲しかったものを知ったんだろう。
どこかでアタイのことを見てたのかな?

プルメリ「……」ギュッ

アンタなら出来る。必ず成し遂げる。
絶対にやり直すことができるはずさ。
だってアンタは────アタイが惚れたあの時のグズマから、何も変わってないんだから。



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ー数年前ー

グズマ「お前、行く場所ないのか?」

プルメリ「……」コクン

グズマ「だったらそんなとこに座ってないで、俺のところに来いよ」

プルメリ「え……」

グズマ「お前の欲しいもん、俺が何だって与えてやっからよ」

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43 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:29:42 ID:bZ0mLC.2 [16/39] 報告





『悪事は白紙に戻さない』

〜完〜



44 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:31:28 ID:bZ0mLC.2 [17/39] 報告






#4『貴方のことなんて、いっそ真っ白に忘れてしまいたかった』






45 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:35:15 ID:bZ0mLC.2 [18/39] 報告
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ー20年前ー


「聞いてくれるかルザミーネ! ついに、ついに謎が分かったんだ!! ようやっとウルトラホールについての論文が進む!」

あの人はいつも笑顔だった。
辛いことがあっても、悲しいことがあっても、常に笑顔でいようとした人だった。

私は、彼のそんなところが大好き『だった』のかもしれない。


「ハハハ、それにしても流石に度重なる実験で疲れたよ。もうクタクタだ」

ルザミーネ「それじゃあチョコなんてどうかしら? 脳みそに糖分を補給しておかないと」

「いや、これはありがたいな。私は特に甘いものに目がなくてね……! ハハハ。……おっ、こりゃ甘い! 君も一緒に食べたらどうだい?」


ルザミーネ「せっかくで悪いけど、私、あまり甘いものが得意ではないの。それよりはむしろ────」

懐かしい記憶。恋い焦がれ続けた思い出。
しかしそれは所詮、過去のものでしかないのだろう。

今の私は決して彼のことを好いてなど、愛してなど……いないのだから。

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46 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:41:53 ID:bZ0mLC.2 [19/39] 報告
グラジオ「────母さん、母さん……起きて」

ルザミーネ「……あら、グラジオじゃない。どうしたの?」

グラジオ「どうしたのじゃないよ。こんなところで寝てたら風邪引くだろ」

俺の母さんは結構無頓着なところがある。
今日も彼女は研究室の床で寝ていた様だった。

ルザミーネ「……フフ、グラジオは優しいのね」

グラジオ「っ///……そっ、そんなことよりもさ。ほら、これ受け取ってよ」

ルザミーネ「あら、これってホワイトチョコレート?」

グラジオ「うん、ホワイトデーのやつ。一応、お返し。……そ、それじゃ!」

ルザミーネ「あの子ったら……」
47 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:49:11 ID:bZ0mLC.2 [20/39] 報告
グラジオ「はぁ、とりあえず一つ返せたか。次に渡さなきゃならないのは……」

リーリエ「あれ、兄様? お帰りになってたのですか?」


グラジオ「リーリエか、ちょうどよかった。ほらこれ、ホワイトデーのお返しだ。バレンタインのチョコ美味しかったよ」


リーリエ「わぁぁ……ありがとうございます兄様!」


グラジオ「あぁ」
48 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 22:59:47 ID:bZ0mLC.2 [21/39] 報告
その日の殆どはホワイトデーのためのお菓子を包装紙に包み、郵送するという作業に没することになった。

疲れはあるものの、不思議と心地いい時間だ。
この数ヵ月でいろんな人と知り合うことができたのだなと、ふとした瞬間に感傷を覚える。


グラジオ(後はこれをペリッパー速達便で運んでもらうだけか……)

リーリエ「あ、兄さま。ここにいらっしゃいましたか。実はさっきまでハウさんがいらっしゃったんですよ。まだ多分、船着き場にいると思いますけど」

グラジオ「それはホントか?」

なら、ちょうどいい。
ペリッパー速達便に頼むにはまずこのエーテルパラダイスから出掛けないといけないのだ。

ハウと一緒の便の船で出ることにしよう、と俺は決めた。


リーリエ「あ、お菓子とっても美味しかったって私と母さまが言ってたと、ハウさんに伝えてくださいねー!」

出かける直前、リーリエがそう言ったので、俺は黙って頷いた。
49 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:06:08 ID:bZ0mLC.2 [22/39] 報告
船着き場に辿り着くとやはりアイツがいた。
ハウだ。いつもの屈託のない表情を浮かべている。

グラジオ「おい、ハウじゃないか」

ハウ「あれ! グラジオー!! 久しぶり、かな?」

グラジオ「久しぶりじゃないよ。数日前に会ってるだろ」

ハウ「あ……あははー、そうだったねー!」

……?
少し、様子が変だ。
笑顔に違和感がある。

グラジオ「ホワイトデーのお菓子を渡しに来たんだろ? リーリエと母さんとビッケ、とっても喜んでたよ」

ハウ「それは良かったよー」

グラジオ「大丈夫か? 疲れてるんじゃないのか。顔色も何だか悪そうだし」

ハウ「そ、そんなことないよー」

分かりやすく動揺している。
やっぱり無理しているな。
こうなると、俺の中にあるS心が多少はくすぐられるというものだ。
50 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:10:09 ID:bZ0mLC.2 [23/39] 報告
グラジオ「しんどそう」

ハウ「えっ?」

あたふたしている。見てて面白いと思うのは少々理不尽だろうか。
だが何時だか、俺のことを見て「しんどそう」とか言ったらしいからな。
そのお返しだ。


グラジオ「お前、いつも笑顔でいなきゃ笑顔でいなきゃって思ってるだろ。し ん ど そ う」


ハウ「そ、そんなことないよ!!」

グラジオ「……やっと本気で叫んだな?」ニヤッ

ハウ「う……///」

グラジオ「やっとお前に一杯くわせることが出来たよ。お前、なかなか隙を見せないからな。ほら、船が出るみたいだ」


ハウ「グラジオー……」ポロポロ

グラジオ「あっ!? 鼻水出したままくっつくなよ! 服が汚れるだろ!」

ハウ「グラジオー、俺、今日とっても疲れたんだよー!」

よーやっと一杯食わせたかと思ったらこれだよ。
ホントに俺、こいつのこと苦手だ。
……嫌いではないけどな。
51 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:16:41 ID:bZ0mLC.2 [24/39] 報告
それから俺たちは船から降りて、暫く二人で道なりに歩く。
他愛もない話をしつつ、リリィタウンに着いた頃、別れることになった。


ハウ「それじゃーねー!」

グラジオ「ああ、またな」


さて、ようやっと本題だ。
俺は真っ直ぐ、ハウオリシティにあるペリッパー速達便の下へと向かった。


──
────
───────
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52 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:22:03 ID:bZ0mLC.2 [25/39] 報告
スタッフ「はい、承りました。それでは本日中に速達でペリッパーがお届けしますので」

グラジオ「ああ、よろしく頼───────」




モーン「うん、その荷物私のだよ。輸入したポケ豆がやっと届いてよかったよぉ」

グラジオ「え……」


すぐ横に突然現れたのは、見覚えがある───いや、忘れてはならない顔だ。

モーン……俺にとって、そして特に母さんにとって、心を締め付ける呪縛のような人。
53 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:25:04 ID:bZ0mLC.2 [26/39] 報告
スタッフ「お客様、どうかされましたか? こちらの紙にサインしていただきたいのですが──────」

グラジオ「えっ、あっ……」




モーン「さて、帰るか」

あの人が行ってしまう。
俺は文字を大きく乱しつつ、慌ててサインを始めた。
そして、粗方の作業を終えた頃。


───周囲にあの人の姿はなかった。
54 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:30:56 ID:bZ0mLC.2 [27/39] 報告
何処に行った────!?
首を左右に振るもまるで無意味。

あの人の姿はやはり見当たらない。

グラジオ「あのっ、麦わら帽子を被った太めの男性がここを通りませんでしたかっ!?」

一般人「え、ああ……見かけたよ。確か、さっき出港したアーカラ便に乗ってたような」

グラジオ「アーカラ……!!」




もうこうなれば、苦肉の策だ。
俺はエーテルパラダイス行きの便の船に乗り、財団の一員である乗務員に頼み込んだ。


グラジオ「頼む、今からアーカラに向かってくれっ!」
55 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:35:43 ID:bZ0mLC.2 [28/39] 報告
グラジオ「はぁっ、はぁっ……! 急がないと駄目だ……」

半ば無理やりアーカラに辿り着いた俺は、尚も走り続けた。
どうしてここまで必死なのかって?

理由はひとつだ。

あの人には……ホワイトデーの今日だからこそ、聞いておきたいことがある!!




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グラジオ「え、あの人のところにバレンタインデーのチョコを送ったって?」

ルザミーネ「ええ、匿名でだけどね。あの人も突然チョコが届いて驚いてるかも」

グラジオ「……母さん」

ルザミーネ「別にお返しなんてなくていいのよ。あの人甘いものが好きだったから……気まぐれで贈ってみただけなの」

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56 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:37:12 ID:bZ0mLC.2 [29/39] 報告
モーン「〜ポッケ豆 ポッケ豆♪」

グラジオ「アンタ!!」

モーン「へ?」



グラジオ「アンタに……聞きたいことがあるんだ」

57 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:41:00 ID:bZ0mLC.2 [30/39] 報告
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〜エーテルパラダイス 研究室〜


バタンッ!!

突然、扉を開きルザミーネの下に現れたのは、すっかり疲弊しきったグラジオの姿だった。



グラジオ「ハァ、ハァ……。母さんっ……これっ」

ルザミーネ「ど、どうしたのグラジオ!? そんな汗だくになって帰ってきて……」

グラジオ「これ、食べてくれっ……!」

ルザミーネ「どうしたのこのマカロン」

グラジオ「母さんがこっそりポケリゾートまでチョコレーを届けてるあの人からだよ……!」

ルザミーネ「え……グラジオ、彼と会ったの?」

グラジオ「事情は後でゆっくり話すよ。ほら、手作りで焼きたてなんだ。冷めないうちに食べた方が良い」

ルザミーネ「……」

ルザミーネが恐る恐る手渡されたマカロンを食べる。
瞬間、彼女は両目を見開き、思わず驚愕した。

ルザミーネ「あ、この味って……」
58 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:41:29 ID:bZ0mLC.2 [31/39] 報告
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モーン「ハハハ、それにしても流石に度重なる実験で疲れたよ。もうクタクタだ」

ルザミーネ「それじゃあチョコなんてどうかしら? 脳みそに糖分を補給しておかないと」

モーン「いや、これはありがたいな。私は特に甘いものに目がなくてね……! ハハハ。……おっ、こりゃ甘い! 君も一緒に食べたらどうだい?」

ルザミーネ「せっかくで悪いけど、私、あまり甘いものが得意ではないの。それよりはむしろ……ビターなお菓子の方が好きかも」
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59 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:45:21 ID:bZ0mLC.2 [32/39] 報告
ルザミーネ「これは……本当にあの人の手作りなの?」

グラジオ「うん」

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モーン「ああ、バレンタインデーに届いたチョコかい? とっても美味しくいただいたよ。だが残念なことに、あれが誰から届いたものなのか分からないんだ」

モーン「私もお返しがしたくてね。ホワイトデー用にお菓子を手作りしてみたんだが───渡す相手がいないんじゃ作る意味はなかったかなぁアハハ」


グラジオ「あ……!!」

========

グラジオ「それは、あの人が作った愛の結晶だ」



ルザミーネ(……私は、あの人のことをいっそ忘れてしまいたかった。なのにあの人は……私からその記憶を消させてはくれないのね)


ルザミーネ「モーンったら……貴方って本当にずるいんだから」


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60 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:46:07 ID:bZ0mLC.2 [33/39] 報告
リーリエ「兄様、そのマカロンはなんですか?」

月が天高く昇る真夜中。
テラスに一人座っていると、背後からリーリエが声をかけてきた。
どうやら、俺が持っているマカロンが気になっている様子だった。

グラジオ「食べるかリーリエ?」

リーリエ「では一個だけ……いただきまーす」パクッ

リーリエ「……うっ、に、苦ーい!! 何ですかこれ!?」

顔を思い切りしかめて苦悶するリーリエを見て、思わず声を漏らしつつ笑ってしまう。

グラジオ「それな、ビターマカロンってやつなんだ。それもとっても苦い特製のな」

リーリエ「こんなに苦かったら美味しくないですよぉ」

グラジオ「それがそうでもないらしい。母さんは泣きながら美味しいって食べてたよ」

リーリエ「えっ、母さまが? うーん……よく分からないです」

グラジオ「そうだな……大人って、分からないもんだ」

今日はホワイトデー。
間違いなく大勢の人が贈り物をしたに違いない。
喜んだり、泣いたり、驚いたり、様々な反応があったに違いない。
それを思うと、どうしようもなく楽しい気分になって仕方がなかった……。
61 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:46:37 ID:bZ0mLC.2 [34/39] 報告
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モーン「こう見えて料理は趣味でね。今度君に苦めのお菓子を君に作ってあげるよ。そうだなぁ……ちょうど今、マカロン作りに凝ってるんだが、ビターなマカロンなんてどうだろうか?」

ルザミーネ「ウフフ、苦いマカロンなんて珍しいわね。作るの大変じゃない?」

モーン「確かにそうだな。だが君が喜ぶなら、私はどんな珍しいものだって作ってやるぞ。例えお爺さんになってボケかけたって、君の好きなものだけは忘れないでいてやるしな」

ルザミーネ「……ありがとう、モーン」


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62 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:47:43 ID:bZ0mLC.2 [35/39] 報告







『私のことを、真っ白に忘れてなんてほしくなかった』

〜完〜



63 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:48:31 ID:bZ0mLC.2 [36/39] 報告




#最終話『旅行く貴方に幸福のホワイトデーを』



64 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:49:13 ID:bZ0mLC.2 [37/39] 報告
これは、ホワイトデー数日前のことである。


ハウ「グラジオー! プレゼントの用意できた?」


グラジオ「そんな大きな声を出さなくても聞こえてるよ……。ほら、買ってきた。『アイツ』へのホワイトデーの贈り物だ」


ハウ「……えへへ、グラジオって普段は何だかんだ言ってるけど、本当はとっても優しいよね」


グラジオ「なっ、何だよ。急に変なこと言いやがって」


ハウ「とりあえず宅配の手続きをしよーか。えーと、送り先はカントー地方の……」


グラジオ「まったくアイツも忙しいもんだな。バトルの特訓でまさかカントーまで遠征に行くだなんて」


ハウ「何たってアローラのチャンピオンだからねー。世界中で噂になっちゃって、今ではたくさんの凄腕が戦いたがってるって聞くよー」

グラジオ「あ、リーリエからもプレゼントがあるんだった。ハウ、このクッキーも送り届ける荷物の中に入れといてくれ」

ハウ「あははー、リーリエからのお菓子もあるんだ。結局、島のほとんどの皆からの贈り物になっちゃったねー。ついさっきなんて、ウルトラ調査団の人達まで『贈り物をしたい』なんて言って、お菓子を持ってきたんだよ?」

グラジオ「しかし、すごい量の荷物になったもんだな。こんなにお菓子が配達されたら、普段は真顔なアイツでも流石にビックリするだろ」

ハウ「そうだねー、でも喜んでくれるといいなー」

グラジオ「ああ、折角のホワイトデーなんだ。皆が幸せにならなきゃ……意味がないからな──────」
65 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:50:01 ID:bZ0mLC.2 [38/39] 報告
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──────────

〜カントー地方 特別宿泊施設〜


ママ「……あら、もうこんな時間! あの子ったら今日はレッド君と特訓があるっていうのに……寝ぼすけなんだから!」

時計をふと見れば、もう朝の10時を過ぎる頃だ。
これはいかんぞ、と女性は頬を膨らませて立腹した。

ママ「ニャース、悪いけどあの子を起こしてきてあげて」

ニャース「ウミャア」



これであの子も起きてくるだろう。
と、安心しつつカフェオレに口をつける。
じんわりと広がる温かさと苦味は、不思議と心を安心させてくれた。

ピンポーン

少しして、チャイム音が鳴る。
窓から覗くと外にはゴーリキー宅配サービスの姿があった。

ママ「何かしら、お届けもの?」

ゴーリキー「ゴリキッ」

ママ「あらまぁ、ホワイトデーの贈り物? アローラから! 皆からの手紙までついちゃって、凄い量ね……」

届けられたのは何を隠そう、ハウやグラジオ達からのホワイトデーのお返しである。
段ボール箱にギッシリ詰まった色鮮やかなお菓子を見つめ、女性は思わず感嘆の息を漏らした。



ママ「そうかぁ、あの子はアローラでたくさんの人と仲良くなったのね……」

目頭が熱くなったのは決して気のせいではない。
自分の子供が今までどれだけの旅をして来たのだろうかと想像すれば、当然涙は溢れ出る。

ママ「ほらー! 早く起きなさーい!! 良いものが届いてるんだからー!!」


果てしなく続く青空に甲高い声が響く。
晴れ渡る絶景は、まるで幸福のホワイトデーを祝福しているかのようだった。
66 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/14 23:50:46 ID:bZ0mLC.2 [39/39] 報告








ア・ローラー・アンド・ホワイトデイズ

〜完〜






67 : ワイトデー無縁でした◆OSYhGye6hY 18/03/15 00:10:44 ID:XNiXGsIw 報告
完結しました
こちらはホワイトデー企画に参加しております
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=768396
メチャクチャ面白い作品ばっかりだから読んでね

私はホワイトデーはおろか、バレンタインデーも虚無で終わりました(事後報告)
68 : カシャモ@ちからのこな 18/03/16 19:48:39 ID:w4cQNhf6 報告