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【SS】孤高のストライク

 ▼ 1 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:53:14 ID:ZWkgif7. [1/21] NGネーム登録 NGID登録 報告










「誰かを傷付けるのが俺の運命であるならば─────」











「───俺は一生、孤独だって構わない。」










 ▼ 2 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:53:52 ID:ZWkgif7. [2/21] NGネーム登録 NGID登録 報告


ザシュッ・・・・・・。


容赦なく腕を振る。

先程まで必死に動いていたそれは、二度と動けないものとなった。



「悪いな、許せ。」



もう動くことはないそれに向かって呟く。

目が眩むほどの赤色がちらつく。

俺はそれに向かって、躊躇わずに口をつける。

貪り、飲み込んだ。


ストライク「・・・・・・お前が弱いからだ。」


一言吐き捨てると、その場を飛び去った。

 ▼ 3 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:54:15 ID:ZWkgif7. [3/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

腕に塗られた赤が乾いてしまわぬようにと、急いで飛ぶ。

だが、風が強いのか飛ぶのが速いのか。

湖に着く頃には、すでにそれは乾き腕に張り付いている。


ストライク「毎度毎度、面倒だ。」


腕を湖に突っ込む。

こびりついたそれを懸命に落とす。



赤色は、嫌いだ。

 ▼ 4 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:54:36 ID:ZWkgif7. [4/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

綺麗になると、水が乾くのを待たずに俺は木の枝に腰かける。

俺はここから見る景色が好きだ。


湖の透き通る青。

空の青。

森の緑。

雲の白。


腕だけでなく心も洗われていくようだった。

今の今まで酷いことをしていたことも忘れ、

俺はこの景色をしばらく眺める。


ここは良い場所だ。

何せ人間が居ない。

そして、俺はこの森の王者だ。

俺より強いものは存在しない世界。

俺は誰よりも嫌われていて、誰からも恨まれていた。

それが、俺の望みだった。

 ▼ 5 ーナンス@むらさきはなびら 18/05/02 17:54:47 ID:lp5eBJq6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私怨
 ▼ 6 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:54:58 ID:ZWkgif7. [5/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

ポケモンを瀕死以上に追い込み、殺す。

生きるためには仕方がないし、これが世界の掟だ。

俺はそれを食って生活している。

他の生を犠牲にして、俺は生きている。

それはとても残酷なことで、でも俺は止められなかった。

死にたくない。

俺は、とても弱い生き物だ。

鍛えて強くなったつもりだった。

だがそれは、殺す技術が上がっただけに過ぎなかった。

根本的解決では無かった。

俺が毎日嫌いな赤色を見続けることに、変わりは無かった。

 ▼ 7 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:55:19 ID:ZWkgif7. [6/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

そんなことをひたすら考えたって無駄だ。

俺は生きるのに必死なんだ。

誰かを殺してでしか生きていく術が無いのなら、誰とも仲良くする権利はない。

俺は悪だ。

世界の敵だ。

俺は死ねなかった。

飢えには勝てなかった。

だから許せ。

なんて、言える立場では無いが。

許してくれ。

 ▼ 8 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:55:45 ID:ZWkgif7. [7/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

何もせずじっと座っていると、変なことを考えてしまって駄目だ。


ストライク「少し、動くか。」


木から飛び降り、ふらふらと歩く。

途中、茂みががさがさと揺れた。

俺は最強だ、怖れることはない。

真っ直ぐその茂みを見据えると、ポケモンが頭を出した。

ポケットに入らない程には成長した、子供のガルーラだ。

子供は嫌いだ。

俺はすぐに視線を外し、その場を立ち去った。

なんて無防備な奴だ。

親も親だ。

だから嫌いなんだ。

自分の身くらい自分で守れ。

怪我してもしらないぞ。

 ▼ 9 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:56:03 ID:ZWkgif7. [8/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

下手に動けば嫌な物を見る。

俺はまた枝の上に戻り、目を閉じた。

さっき子供を見たせいか、暗闇の中に声が聴こえる。

人間の、子供の、鳴き声。

慌てて目を開ける。

一生忘れることのない記憶。

ふとした時に甦る記憶。

俺というポケモンは、この記憶の上に成り立っている。

最悪な記憶。

もし、俺にこの記憶がなければ、今俺は何をしているだろうか。

恐らく、何も変わらないだろう。

その時に起きなくても、のちのち起きていたであろう事故。

 ▼ 10 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:56:27 ID:ZWkgif7. [9/21] NGネーム登録 NGID登録 報告


今日は嫌な日だ。

顔でも洗ってスッキリしよう。

俺は再び木から飛び降り、湖に頭を突っ込む。

息を止める。

しばらくして苦しくなると、勢いよく顔を上げた。

頭を降って水滴を飛ばす。

こんな腕じゃ、ろくに水も掬えない。

呪われた手だ。

たやすく触れることすら許されない。

俺が何をしたって言うんだ。

 ▼ 11 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:56:46 ID:ZWkgif7. [10/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

俺はいったい、いつまでもこんな生活を続けるのか。

今までどれほどの月日が経ったのか。


分からない。


分からない。


今日は本当に駄目な日だな。

変に頭を使ったせいで、またお腹が空いてきてしまった。


森へ行こう。

何か食べなくてもいい。

気晴らしにはなるかもしれない。


俺は飛んだ。

 ▼ 12 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:57:06 ID:ZWkgif7. [11/21] NGネーム登録 NGID登録 報告


ストライク「・・・・・・静かだ。」


おかしい。

もう少しポケモンの鳴き声が聴こえてもいいはずだ。

森の中をゆっくりと歩く。

鳴き声だけでなく、姿さえも見えない。

おかしい。

もう一度そう思った時だった。



パンッ。

威力とはかけ離れた軽い音が鳴る。

銃声。

ドサッと何かが倒れる音がする。

俺。

打たれたのは、俺だった。

迂闊だった。


「・・・・・・殺しはしないさ。」


人間だ。

俺は声のする方に顔を向けようとした。

目の前が暗くなる。

人間の姿を確認する前に、俺は意識を手放した。

 ▼ 13 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:57:28 ID:ZWkgif7. [12/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

目を覚ました時には、俺はすでに動けなかった。

両手両足は引っ張られるように鎖で繋がれ、

宙に吊られていた。


「久しぶり、だよな?」


人間。

まだ若そうな大人。

その人間を睨むように観察する。

長身だが、ひょろっとしているわけでもない。

声は優しく作っているようだが、顔は反面厳しそうだ。

そして、

左腕が無い。


左腕が、無い。



心臓が激しく鼓動する。

視界が揺れる。

目の前に見える。

赤く染まった道。

聴こえる。

子供の泣き叫ぶ声。

見える。

見える。

転がった左腕。

俺が切断した、あいつの左腕。

 ▼ 14 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:57:53 ID:ZWkgif7. [13/21] NGネーム登録 NGID登録 報告


「覚えててくれたみたいだね。」


「目を見開いちゃってさ、大丈夫かよ?」


「いやあ、あの時はびっくりしたよね。」


「俺はお前と遊びたかっただけなのにさ。」


「手を伸ばしたら切っちゃうんだもん。」


「本当、参っちゃったよ。」



忘れもしない最悪な記憶。

俺が初めて、血を見た日。

俺が初めて、腕の刃を使った日。


差しのべられた手。

笑顔。

俺はそれに答えるため。

握手というものをするため、

腕を伸ばしたんだ。

手を繋ぐために、近づけたんだ。

刃を。


 ▼ 15 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:58:28 ID:ZWkgif7. [14/21] NGネーム登録 NGID登録 報告


「俺今さ、ポケモンハンターやってんの。」


「どうだ?お前と同じく格好いいだろ?」


「すぐ楽にしてやるからさ、とりあえず我慢してよ。」


そう言った直後、俺の体に電流が走った。

今まで感じたことのない痛み。


ストライク「あ"ぁ"……ヴ……ガハッ……!」



「どうだ、痛いだろう? 」

「でも体が切れるよりはましかな?」

「まあしばらくの辛抱だ。瀕死になる前に止めてやる。」


ストライク「……ッ!……ア゛……ア゛ア゛……。」


 ▼ 16 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:58:47 ID:ZWkgif7. [15/21] NGネーム登録 NGID登録 報告


「・・・・・・まあこんなもので良いだろう。」


止まった。

体から力が抜ける。

前のめりになりそうになったが、腕が引っ張られる。


「それで、と。」


あの子が俺の腰に何かを取り付けた。

冷たくて、重い。


「さてと、もう楽にしていいぞ。」


俺に向かって何かが投げられる。

それが俺に当たると同時に、俺は拘束から解放され、

モンスターボールの中に収まった。


「案外簡単だな。」


 ▼ 17 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:59:11 ID:ZWkgif7. [16/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

ボールの中は暗くてよく見えなかった。

捕まったという事実を受け入れるのに時間を要した。

腰に巻きついた鋼が痛い。

これのせいでろくに身動きも取れない。

少し揺れる。

恐らく俺が入ったボールを持ってどこかへ移動しているのだろう。


カチッと音がして動きが止まった。

何かにはめられたような音だ。

ボールをどこかにセットしたのかもしれない。


「目当ての物は持ってきたか?」

「ああ、確かにここにいるぜ。」

「こちらもだ。」

「お互い、ずるは無しで。穏便に。」

「ああ。・・・・・・では、取引開始だ。」


 ▼ 18 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:59:33 ID:ZWkgif7. [17/21] NGネーム登録 NGID登録 報告


ぶるるんと機械が動く音がする。

ボールがカタカタと揺れる。

突如、暗かったボールの中が青白く光った。

腰の重みが消えていく。

中が狭くなる。

なんだか、力がみなぎったような心地がする。


「取引成立だ。」

「ああ。大切にさせてもらうよ。」


何が起きたんだ。

また再びボールの中が暗くなり、確認が出来ない。


「よし、今日からは俺の元で働くんだぞ、ハッサム。」


さっきとは違う別の誰かが、再び俺を運ぶ。


 ▼ 19 oxtmyvjwlY 18/05/02 17:59:52 ID:ZWkgif7. [18/21] NGネーム登録 NGID登録 報告


「出てこい、ハッサム!」


そう呼ばれて出てきたのは俺だった。

俺はもう、緑の体をしていなかった。

憎い、赤色をしていた。


体が固くなり、手は丸くなっている。

もう俺の腕は刃ではなかった。

進化したのだ、ハッサムというポケモンに。


動こうとした時、今檻の中にいるのだと気づく。


「仕事は明日からだ。今日はそこで過ごしとけ。」


彼は部屋から出ていった。

 ▼ 20 oxtmyvjwlY 18/05/02 18:00:17 ID:ZWkgif7. [19/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

もう一度の俺の体を見る。

大量の返り血を浴びたように赤い。

今まで殺してきたポケモン達の分赤いのではないか。

これはそいつらの恨みではないか。

そんなことを考えた。


今までの残骸が目に浮かぶ。

残虐な俺がやったんだ。

俺は最強だった。

俺は最低だった。

孤高という立場で自分を守ってきた。

それももう、終わりにしよう。

俺は決意した。

居なくなるだけでは足りない。

完全に消えなければ平和は訪れない。


 ▼ 21 oxtmyvjwlY 18/05/02 18:00:37 ID:ZWkgif7. [20/21] NGネーム登録 NGID登録 報告

俺は慣れない腕に力を溜める。

そして一気に、檻に向かって腕を振った。


凹んだ。

それは切れることなく、大きく歪んだ。

俺は何度も何度も腕を叩きつけた。


「な、何事だ!?」


さっきの奴が慌てて戻ってくるがもう手遅れだった。

檻に大きく穴を開け、俺は逃げ出した。


天井に突っ込み、外に出た。

スピードが下がった気がするが、その分力はより強力になったのが分かる。


俺はある場所を目指してひたすら飛び続けた。

 ▼ 22 oxtmyvjwlY 18/05/02 18:01:24 ID:ZWkgif7. [21/21] NGネーム登録 NGID登録 報告



しばらく飛んだだろうか。

目の前に煙が上がっているのが見える。

初めて来たが、中々に迫力がある。

火山。

真っ赤な炎を内に溜めた山。

ふつふつと燃え上がっている。


もう迷いは無かった。

最低な孤高者は消える。

俺は最強だ。

最強のまま、身を退かせてもらおう。

こんなに赤く染まった体にもはや未練などない。

俺は火口に飛び込んだ。

俺は体に宿る火を、

真っ赤に燃える命の火を、






消した。




【SS】孤高のストライク 〜完〜
 ▼ 23 ュレム@エレキシード 18/05/02 18:04:02 ID:lp5eBJq6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
二回支援するのってええんかしら
 ▼ 24 ロベルト@うすもものミツ 18/05/02 18:04:52 ID:GdwZnsgQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンネ
 ▼ 25 ピナス@ネクロプラスソル 18/05/02 18:05:45 ID:GdwZnsgQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
してたら終わってた
 ▼ 26 ノアラシ@アブソルナイト 18/05/02 18:06:03 ID:GdwZnsgQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スマンネ
 ▼ 27 ダイトス@ちりょくのハネ 18/05/03 10:48:21 ID:rPxMg7JI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

悲しいな
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