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【SS】深緑の戦争

 ▼ 1 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:30:29 ID:pkKUhS2s [1/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シンオウ地方某所にある、とある小綺麗なビルにて。
真っ黒なスーツを着用した、いかにも都会派な男達が、暗い部屋の中で会議をしていた。


スーツ1『……この議題についてはここら辺で終わらせて、次の議題に移りましょう。ハクタイの森の開発についてです。資料の9ページの19行目を見てください』

スーツ2『ほう……開発するのはハクタイの森に決まったのか』ペラッ

スーツ3『ええと、確かテンガン山を切り開く計画も有りましたよね』

スーツ1『あー、テンガン山の方は地元自治体の反対にあってしまい、計画倒れになってしまいました、申し訳ありません』

スーツ3『そっか……残念だねぇ』

スーツ4『それで、次点の候補だったハクタイの森、と……』
 ▼ 2 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:31:01 ID:pkKUhS2s [2/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
薄暗い会議室に響くスーツの男達の重々しい声。
都会に巣食う彼らは勿論、これから開発の手を伸ばそうとしている森がどんな物で、何がいるのかを、知りはしないし、知ろうとも思っていない。


スーツ1『はい、そうです。予定としてはハクタイシティ側から木々を伐採し、上手い具合に整地をして、わが社の系列のゴルフ場やホテルの類いの建設を予定しています』

スーツ2『成程……で、建設にはどのような物を?』

スーツ4『うちの方で重機は調達する手筈です』

スーツ3『人員は此方からも用意しますよ』


会議が進み、都会の眠らない夜が徐々に更けていく。
暗くなってゆく空は、街の光に邪魔されて、ここからは良く見えなかった。
 ▼ 3 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:31:29 ID:pkKUhS2s [3/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そして、その開発の刃物を突きつけられているハクタイの森では。


ロゼリア「森の洋館勢力の話はここまでにしましょうか。……では、次の議題に移りますか……最近、ここに訪れる黒い人間達についてですね」

ラッタ「あー、あれは人間曰くスーツって奴だ。そして、あれは恐らく……ここを壊しに来た連中だろう」

ドンカラス「そうか……とうとうここにも、開発か……」

アゲハント「おのれ人間め……許せない!!」


月明かりに照らされた空き地の一角で、このハクタイの森のリーダー役を担う4匹が、話し合っていた。
先程までの、森の洋館についての議題を終え、ここを最近訪れるようになった、不振なスーツの男達の話をしている。
 ▼ 4 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:31:55 ID:pkKUhS2s [4/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ラッタ「……さて、どうする?」

アゲハント「奴等にここを明け渡す訳にはいかない!! 開発なんて断固拒否して、俺達で迎え撃つ!!」


顔を紅潮させがなり立てるアゲハント。生来彼は攻撃的なポケモンであるが、今はかなりそれが顕著である。ばたつく羽が音を立てる。


ドンカラス「その気持ちは分かるが……人間と対面で勝負するのは余りにもリスキー。出来て妨害、では無かろうか」

ロゼリア「うーん、確かに……」

アゲハント「そうだなぁ……」

ラッタ「でもさ、どう妨害するんだ? 危険が伴うぞ」
 ▼ 5 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:32:38 ID:pkKUhS2s [5/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
人間による開発の妨害を提案するドンカラスと、それの詳細を問うラッタ。簡単に妨害なんて言ったものの、相手は人間、子供騙しは通じない。


ドンカラス「うーん……」

ラッタ「本当に残念だが……これは、避難してここを明け渡すのが一番人的被害は少ないかと」

アゲハント「んなっ、」

ラッタ「……勝てっこ無いんだよ……あいつらには……」

アゲハント「あ!? やる前から決めつけるのか!?」

ラッタ「やっちまったら被害が出るだろ!?」

ロゼリア「まあまあ、落ち着いて下さい……取りあえずこれは放置、奴等が来たらまた考えましょう?」

ドンカラス「ああ……そうだな」スタスタ
 ▼ 6 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:33:06 ID:pkKUhS2s [6/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
司会を受け持っていたロゼリアの一声を良い切っ掛けとばかりに、その場を立ち去るドンカラス。
アゲハントとラッタも睨み合うのを止め、互いに帰路へとついた。


アゲハント「……チッ」スタスタ

ラッタ「……時間は無さそうなんだがな……」スタスタ


 ▼ 7 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:34:08 ID:pkKUhS2s [7/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

森の中央近くの低木、そこがラッタの家だった。新築の一戸建てである。
眠気で少し足元に不安を覚えていたラッタが家の前のほうへ歩いていくと、家から一匹のライチュウが飛び出してきた。


ライチュウ「お帰りなさいあなた……遅かったわね。大丈夫?」

ラッタ「ああ、会議が長引いた……悪いな」

ライチュウ「一体何が……」

ラッタ「……人間だよ。また……人間だ」


ライチュウに支えられながら空を見上げるラッタ。今晩の月は、恐ろしいほど紅かった。
 ▼ 8 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:35:31 ID:pkKUhS2s [8/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


そして、場所は移ってとある施設。薄汚れて黄ばんだ壁には幾つものライフルが吊るされ、むさい男達が行き来している。
だが、ここは別にヤのつく自由業の方々の事務所等ではない。シンオウ地方の猟友会だ。
その猟友会にて、二人の男が話していた。


ホタル『え、任務ですか? とうとう僕も仕事出来るんですか?』

モクセイ『ああ、そうだ。今回の任務はハクタイの森にて労働者の安全を守ることだ』

ホタル『はい!! 頑張ります!!』
 ▼ 9 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:36:11 ID:pkKUhS2s [9/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
彼らのうち、若さと勢いが溢れている、身軽な格好の青年の方がホタル、筋骨隆々な肉体を持つ老練な猟師の方がモクセイだ。
二人は数日後に控えた仕事を前にして悩んでいた。だが別に、同じことを悩んでいた訳ではない。
ホタルはどうやって初仕事の時に動こうかと考えていた。彼は凶暴なポケモンから人々を守る正義の味方を志してこの猟友会に入ったのだ、こう考えるのは至って自然な事だった。


ホタル『モクセイさん!! 僕頑張りますよ!! 人々を守り抜いて見せます!!』ハリキリ

モクセイ『あ、ああ……』

ホタル『モクセイさんも頑張りましょう!!』
 ▼ 10 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:36:34 ID:pkKUhS2s [10/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モクセイは、そんなホタルを見ながら悩んでいた。モクセイは知っている、ホタルは夢を見ているのだ。もしこの仕事の闇を知り、決して正義の味方等ではないと知れば……きっと。モクセイはそればかり考えていた。
嫌なビジョンが頭を過る。それを押し込めるかのように、彼は手元ののコーヒーをグビッと飲み込んだ。
 ▼ 11 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:37:01 ID:pkKUhS2s [11/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


……その数日後。その日は良く晴れていた。
森の中で遊び回る子供達。そんな彼らの元に、人間の足音が近づいて来た。


幼ケムッソ「ん?なにあれ?」

幼ミミロル「私知ってる!! あれ人間って言うんだよ!!」


そんな会話を繰り広げるポケモン達の前に、楽しかった一時を終わらせる、鋭い破裂音が鳴り響く。


   パンッ

幼ミミロル「!?」

幼スボミー「な、何……?」
 ▼ 12 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:37:36 ID:pkKUhS2s [12/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
音を立てて飛来し、地面にめり込んだそれは銃弾。幼いポケモン達は怯んでその場を動けなくなる。
この一発の銃弾が皮切りとなり、人間の開発がスタートした。


   ブイイイイイイイイン

幼ケムッソ「木を……伐ってる……!!」

幼ミミロル「止めて!! 木が可哀想だよ!!」

幼スボミー「止め……て……」


開発を進める人間達を見つめるポケモン達。怖いけれど、人間を止めようか?そんな事を考え出したポケモン達のその前に、ズシリと大きい一匹のポケモンが立ちはだかった。
 ▼ 13 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:38:25 ID:pkKUhS2s [13/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クリムガン「おう餓鬼共、ここから先は人間が仕事してるんだ。往ね!!」

幼ミミロル「ひっ……!?」


それは、モクセイの手持ちポケモンであるクリムガンだった。主人と同じように隆々とした肉体を持つ、力強い個体だ。
そんな図体のでかいポケモンが叫んできたので、三匹の幼いポケモンは、先程までの恐怖心もあり、思わず後ずさりしてしまった。


幼ケムッソ「怖いよぉ……」ガタガタ

クリムガン「ならさっさと去れよ。家に帰りな」

幼ケムッソ「でも……家は……あっち側に……」

クリムガン「だったら諦めな。新しく探せよ」


そんな会話をしていたクリムガンの前に、羽音を立てて一匹の乱入者がやって来る。
一際攻撃的な目付きをした、あのアゲハントだ。
 ▼ 14 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:39:05 ID:pkKUhS2s [14/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アゲハント「ちっ、人間か……ここは俺達の住む森だ、帰れ!!」

クリムガン「んだと!? ここはもう人間の土地なんだ、お前らは出ていけ!!」

アゲハント「知るかよ!! ここは昔も今も未来も皆の森だ!!」

クリムガン「あ?殺るか? あ?」


唾を飛ばし合い罵り合いながら睨み合う二匹。これだけ見ていると勝負は五分五分の様にも見えているが、……アゲハントは背後で対戦車ライフルを構える中年の男を発見した。つまり二対一の構図だ。


クリムガン「あ? おら、かかってこいよ?」

アゲハント「ちっ、卑怯な真似を……良いか? 俺達は人間に屈したりしねえ、ここを去るのはお前らだ!!」
 ▼ 15 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:39:30 ID:pkKUhS2s [15/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そう叫ぶアゲハントだったが、流石にここで一騎討ちは厳しいと判断、結局幼いポケモン達と共に逃げるという事になってしまった。


アゲハント「……」バサバサ

幼スボミー「あ、あの……ありがとう」

アゲハント「……済まない」バサッ


か細く呟くアゲハント。
幼く純粋なポケモンの声を後にし、彼は今まで会議を行っていたあの広場へと直行した。そして、何時もの三匹を召集する。ポケモンを、この森を守るという信念が彼を突き動かした。
 ▼ 16 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:39:59 ID:pkKUhS2s [16/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
緊急事態、人間の侵入。この森を仕切る四匹は直ぐ様集まり、今後どうするかを話し合い始めた。


アゲハント「さて、来たな……人間が」

ロゼリア「案外、早かったですね……」

ラッタ「……そうだな」

ドンカラス「で、どうする?」

ラッタ「……取りあえず妨害してみようか。それで追い払えれば幸運、事業が止まれば御の字だ」

ロゼリア「成程……どうやって?」

ラッタ「まず、時刻は明日の深夜にしよう。人間は夜は眠っているからな……俺達は軍を引き連れて奴等のテリトリーへと侵入しよう。そこから――


夜が今日も更けていく。四匹を照らす星明かりは、酷く歪んで、まるで彼らを嘲笑うかの様だった。
 ▼ 17 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:43:25 ID:pkKUhS2s [17/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


……次の日の日中。


   ブイイイイイイイイン


チェーンソーの唸りが辺りに響く。バタバタと斬り倒される木々、起伏のあった地面を均す重機、それらをただ、幼いポケモン達は遠巻きに眺める事しか出来なかった。
そして、そのポケモン達を監視する二人は。


ホタル『……モクセイ……さん……?』プルプル

モクセイ『……』


モクセイはホタルに眼をやった。拳を握るホタルの目からは既に光が消えていて、モクセイはホタルの現在の心理を直ぐ様理解した。
 ▼ 18 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:43:55 ID:pkKUhS2s [18/28] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ホタル『……僕は、正義の味方を目指して、この猟友会に入りました。 ……でも、これ……正義なんですか?』

モクセイ『……』

ホタル『苦しむポケモン達を追い払い、悪いことをする人間を守るのが、僕らなんですか? そんなの……』

モクセイ『……依頼してきた人々を、この銃で守り抜くのが、邪魔な存在を排除するのが、俺達、猟師の正義だ。 ……決して、お前の夢見る正義の味方なんかじゃあ無いさ……』

ホタル『っ……』プルプル


相も変わらず震えるホタルを横目に、モクセイは遠巻きに此方をみるポケモン達に向かって一発威嚇射撃をした。
彼の表情は、嫌になるほど暗かった。
 ▼ 19 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:55:36 ID:pkKUhS2s [19/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


その日の夜。森の緑は宵闇に身を預け、冷たい黒が横たわる、人間に作り替えられようとしている大地にて。
どうやら、ここの工事の労働者は、プレハブ小屋で寝息を立てているようだった。見張りをする手筈だったホタルも、今は船を漕いでいる。


ラッタ「……今だ」

ロゼリア「ええ、行くわよ!!」

アゲハント「っしゃ行くぞ!!」

ドンカラス「さっさと済ませるぞお前ら!!」


茂みの中で様子を伺っていたポケモン達が、一斉に姿を現す。
ロゼリアと彼女の率いるスボミー軍団は、大地を踏みにじり木々を薙ぎ倒した重機や機械を、蔓や草で縛り上げ、アゲハント率いるケムッソ軍団にカラサリスやマユルド、ドクケイル等が、機械に糸を吹き込んで内部から破壊した。
 ▼ 20 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:56:02 ID:pkKUhS2s [20/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ホタル『ん……zzz……』

ラッタ「……」


ドンカラス率いるヤミカラスの大群や、ミミロル等の軍団は、地面を掘り返し地形を書き換えて、均された大地を耕した。
そしてラッタは、労働者の眠るプレハブ小屋の天井を破壊し、彼らを圧し潰して殺してしまおうと考えていた。


ラッタ「……」カリカリ

ホタル『……ん……あれ?』


ホタルは物音に目を覚ます。ぼやけた視界は、周囲の惨状を辛うじてホタルに伝えた。
彼は状況の理解に少し時間を要したが、何が起きたかは把握した。
彼は上司を叩き起こす。
 ▼ 21 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:56:27 ID:pkKUhS2s [21/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ホタル『モクセイさん、モクセイさん!!』

モクセイ『ん、何だ? 朝か?』

ホタル『あ、あれ!!』

モクセイ『んあ?』


指差す先に広がる惨状は、モクセイに助走をつけて殴ったかのような鋭い衝撃を与えた。これは不味いというのは、誰だって分かるだろう。
彼は素早く跳ね起きた。


モクセイ『まじかよっ……、馬鹿野郎!! 今晩はお前が見張りしておけと言ったろう!!』

クリムガン「グオオッ!!」

ホタル『すみませんっ!!』
 ▼ 22 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:57:06 ID:pkKUhS2s [22/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モクセイは手元の対戦車ライフルに弾丸を詰め、素早く構えて、何の躊躇いも無く、重機に群れるポケモンの近くにぶっぱなした。


   ズガンッ

ラッタ「目覚めたか!!」

ロゼリア「不味い!! 撤退するわよ!!」

アゲハント「ちっ!! 永遠に眠ってりゃ良かったのに……」

ドンカラス「急げ、撃たれるぞ!!」

ラッタ「……くそっ、間に合わなかったか……」


弾かれたように、わらわらと撤退しだすポケモン達。辺りに焦げ臭い硝煙の臭いが漂い、所々で起こる火花が、真っ黒な闇を一瞬だけ明るくした。
いくらかのポケモンは傷を負い、もうこの方法で妨害するのは無理だと判断された。
 ▼ 23 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:57:43 ID:pkKUhS2s [23/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
その次の日の朝。昨夜の騒動を知り、労働者達は己の仕事場を前に唖然とするしか無かった。
重機が壊れ、地は抉れ、辺りに木々が散乱し、ついでに自分達のプレハブ小屋まで破壊されかけていたのだ。
彼らはホタルを軽く睨み、一つ舌打ちをしてから、復旧を開始した。


労働者1『はあ……こんなにボコボコにされちまって……』

労働者2『機械もイカれてるわ……』

労働者3『はぁ……こりゃきっついわ……』


労働者達は、野性ポケモン達の残した爪痕に絶句し、肩を下ろす。
そして、これからは野性ポケモンがいたらすぐ、あのモクセイって猟師に始末してもらおうと思った。
 ▼ 24 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:58:03 ID:pkKUhS2s [24/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ホタル『……』


そして、ホタルは一人、せかせかと働く労働者達を眺めながら考えていた。これでいいのか?と。
隣ではモクセイが、夜の見張りに備えて寝袋に入っていた。今、彼の思考を邪魔する者は無い。
……彼は正義の味方を目指していた。だが現実はどうやら違うようだ。力が物を言い、弱者は踏みにじられる。それで良いのか?と。
いくら考えても、答えは出なかった。
 ▼ 25 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:58:26 ID:pkKUhS2s [25/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


その頃、森の中では。


アゲハント「絶対に許さない……絶対にだ!!」ガッ

ドンカラス「ああ。負けるわけにはいかない!!」


人間には決して屈すること無く、徹底抗戦を訴える二匹。彼らは間違いなく、自分達の故郷を守らんと義勇に燃える戦士であった。


ラッタ「……いや、避難しよう。犠牲は出せない」

ロゼリア「そうよ……あなた達も見たでしょう?向こうの状況を」


対してポケモン達の避難を訴えかける二匹。これ以上人間と争っても勝ち目はない、今の逃げれる時に逃げるべきだと唱える。
 ▼ 26 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:59:02 ID:pkKUhS2s [26/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アゲハント「なあお前ら、お前らは悔しくないのかよ!? いきなりやって来た人間に、訳もわからない破壊を受けて、黙ってすたこら退散だなんてどうかしてる!!」

ラッタ「俺も悔しいさ!! だが、これ以上の犠牲を出すのはもっと悔しい!!」

ドンカラス「……」

ラッタ「勿論さ、ここを追われるのは嫌だよ。でも、でも……」

アゲハント「……」

ラッタ「……悪い、今日は帰らせてくれ」トボトボ


ラッタは、他のメンバーより一足先に帰っていった。
人間の手による絶望が、じりじりと躙り寄っているのは、誰にも分かりきった事だった。
 ▼ 27 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 18:59:39 ID:pkKUhS2s [27/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


それから数日後。
切り倒された木々はとっくの昔に100を超え、大地は均され川は埋められた。
アゲハントとドンカラスは、変わりゆく森をただ眺める事しか出来ない。


モクセイ『奴から、絶対に眼を放すなよ……』

ホタル『……』


対戦車ライフルを構えるモクセイは、鋭く二匹を睨み付ける。
彼の横には屈強なクリムガンが立ち、今飛び込んでもアゲハントとドンカラスには勝ち目はない。


アゲハント「ちっ……帰るぞ」

ドンカラス「ああ」


二匹は、舌打ちを残して茂みへと戻っていった。
 ▼ 28 イックサレンダー◆ZSQq537Gzc 16/08/27 19:06:35 ID:pkKUhS2s [28/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それからさらに数日……森の住民達は外出の自粛を余儀無くされ、閉塞感に苛まれながら日々を過ごしていた。
ラッタの住むこの低木も、同様である。


ピチュー「おとーさん、おそと、いけない?」

ラッタ「ああ……すぐ、出られるようにしてやるから、……待っていてくれ」

ピチュー「いつ?」

ラッタ「……」

ライチュウ「……あなた……無理しないで」

ラッタ「俺がやらずに、誰が……誰がお前達を守れるんだ。誰が……」

ライチュウ「……」

ラッタ「行ってくる。手頃な木の板を用意しておいてくれ」


そう言いながら、ラッタは巣を後にした。
彼の背中には、家族を守るという義務感が、重く、重くのし掛かっていた。
そして、彼らの守るべき森は今。
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