【バレンタインSS】イーブイ「ブースターになりたい」

"キーンコーンカーンコーン…"


「はい、今日はここまで。気をつけて帰るんだぞ」


とある小さな学校の一部屋。

鐘の音を聞いた先生がそう言った。

放課後だ。

クラス内はざわめきだし、楽しそうな喋り声が教室に響く。

その理由は言うまでもない。



「あ、明日はバレンタインデーだな」



そう。今日は2月13日。

バレンタインデーを翌日に控えているからである。

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次の日の教室は、いつもより騒がしいような、そうでもないような雰囲気だった。

シャワーズはいつも通り、窓の外を見つめてはイーブイの姿を探している。


「えーい。そりゃあ！」


……今日もイーブイはいるようだ。

彼女はそれを確認すると…


コノハナ「オラのチョコ、受け取ってください！」

シャワーズ「嫌です。っていうか立場逆でしょう…」

コノハナ「」


いつも通り、冷えた態度で興味もない告白を断っていた。

そしてあっという間に時は過ぎて放課後。

シャワーズはチョコを片手に校庭へと赴いた。

そこでは、まだイーブイが特訓していた。


イーブイ「すてみタックル！」


"ドゴッ…！"


イーブイ「いてて……」




「随分と熱心ね？」

イーブイ「わっ！？」

シャワーズ「感心、感心……」

イーブイ「もう、驚かさないでよ…」

シャワーズ「今のすてみタックル、なかなか良かったじゃない」

イーブイ「そうかな……」

シャワーズ「突進技を練習してるのは、フレアドライブの予行演習ってのが見え見えだけどね」

イーブイ「う……バレてた……？」


イーブイは照れくさそうに笑うと、身体中についた砂埃を振り落とした。

そんな彼を姉のような心持ちで見つめるシャワーズ。

ひと呼吸おいて、持っていたチョコを差し出した。


シャワーズ「はい。約束のチョコレートよ」

イーブイ「やった〜！」

シャワーズ「ちゃんと特訓してたご褒美なんだからね？」

イーブイ「うん、ありがとう！」


イーブイは綺麗にラッピングされたチョコレートを受け取り、満面の笑顔をみせた。

その無邪気な笑顔に、シャワーズは直視できず目を逸らす。


イーブイ「今食べてもいいかな？」

シャワーズ「ええ。むしろ今食べてちょうだい」

イーブイ「じゃあ今食べる！」


彼は少し乱雑にチョコレートの包装を解いた。

顔を出したチョコレートは、綺麗なハート型にかたどられていた。


イーブイ「なんか恥ずかしいね〜」

シャワーズ「バカ。早く食べなさい！」

イーブイ「えへへ……いただきま〜す！」



パク……

モグモグ……

………ゴクン。



イーブイ「………」

シャワーズ「どう？」

イーブイ「………」



心なしか、イーブイの顔は引きつっていた。

シャワーズ「………どうなのよ？」

イーブイ「………オイシイヨ」

シャワーズ「………本当の事をおっしゃいなさい」

イーブイ「………」


数十秒間の沈黙が走る。

シャワーズの鋭い視線に観念したのか、遂にイーブイは口を開いた。


イーブイ「………まずい。何か変な味がするような……」

彼の顔が一気に苦虫を噛み潰したような、露骨な表情になった。

直後、シャワーズは言った。


シャワーズ「ごめんなさいね。でも、それでいいのよ」

イーブイ「えっ？ それって……」


「どういうこと」と、彼が続けようとしたところに、突然二匹の前に新たなポケモンが現れた。


「お〜やおやおや。こんなところで何をしているのかな〜？」

シャワーズ「貴方達は……！」


そこにいたのは、かつてシャワーズをいじめていたポケモン。


モロバレル「お熱いねぇ〜」

ノクタス「シャワーズさん、そんなお子様なんかよして、ボクのものになっておくれよ…」


モロバレルとノクタスだった。


彼等は二匹とも草タイプと毒タイプに所属するポケモンで、シャワーズの得意とする水タイプの攻撃は全くと言っていいほど通らない。

更に都合の悪いことには、こおりタイプの技を習得しなかったシャワーズにとって最悪の相手だった。

彼女がいくら抵抗しようと、手も足も出ないのだ。


イーブイ「お前ら……！」


イーブイはシャワーズを庇うように二匹と対峙した。

ノクタス「上級生に対して『お前ら』呼ばわりとは度胸があるじゃないか」

モロバレル「前にボコボコにされたこと、もう忘れちまったみたいだな」

イーブイ「う………」


後ずさるも、ジリジリと距離を詰められるイーブイ。

やがて、後ろに控えていたシャワーズに身体がぶつかった。


シャワーズ「………」

イーブイ「悪いね。シャワーズさん」


彼はシャワーズを見つめながら言った。


イーブイ「オレ、本当はフレアドライブの為にブースターになりたいんじゃないんだ……」



イーブイ「オレがブースターになりたいのは……なりたい本当の理由は………」

「アンタを守るためだったんだよ」

───イーブイがそう告げた瞬間、奇跡は起こった。


イーブイ「これは……！」


なんと、どこからか現れた光の粒子が彼の身体を包み始めたのだ！


ノクタス「一体何が起こっているのですか！？」

モロバレル「クッ……止めろ！」


阻止しようと突っ込む二匹。

しかし、時すでに遅し。

イーブイを身体一杯に包み込んだ粒子は弾け飛び、イーブイは進化した。


体格が大きくなり、首周りの体毛は、より一層モフモフに。

赤い胴体に赤い四肢。

そう。イーブイはブースターへと進化したのだ。

ブースター「力が溢れる……」

シャワーズ「……進化おめでとう」


二匹は、同じくらいの体格になって、目線の高さが揃った。

そんな二匹に対する、もう二匹。


モロバレル「クソッ！ どうなっていやがる！」

ノクタス「ブースターへの進化は炎の石が必要なはず……！」


信じられないといった表情で顔を歪ませる二匹に、シャワーズは一言。


シャワーズ「愛の力……ってとこかしらね」



そう呟いてやった。

シャワーズ「さあ、ブースター。貴方の力を見せつけてやりなさい！」

ブースター「ああ！」


もう一度立ちはだかるブースター。


ブースター「行っくぞおぉぉぉ！！！」


彼は足に力を入れ、正面の二匹に向かって走り出した。


ノクタス「クッ……マジカルリーフ！」

モロバレル「キノコのほうし！」


それぞれ、技を繰り出す。

放たれた技と、ブースターの距離、その差わずか5m。

距離は徐々に縮まっていき、技がブースターに襲いかかるその瞬間だった。



"ボウッ……！"



ブースターの身体が炎に包まれた。

その炎はどんどん大きさを増し、マジカルリーフを、キノコのほうしを焼き尽くした。



ノクタス「ひっ！？」

モロバレル「そんなのありかよ！？」


ブースター「うおおおおぉぉ！！」




距離が、縮まる。

ノクタス「うわあぁぁぁ！！」

モロバレル「来るなぁぁぁぁ！！！」


二匹の叫びも虚しく、ブースターは炎に包まれながら思い切り突進した。


"…………！"


その衝撃はどんな音だったのだろうか。

ドカーン……とも、ズガーン……とも表せないその音は、校庭に鳴り響いた。

そして、二匹の身体を遠く、遠くへと吹き飛ばしたのだった。


「ちくしょ〜〜〜！！！」

「覚えてろよぉぉぉ！！！」

シャワーズ「…………」


シャワーズは思った。


イーブイの特訓を誰よりも見てきたのは自分だ、と。

その努力は誰よりも知っている、と。

わかっていたのだ。


ブースターの最終技……

フレアドライブが既に習得可能な領域にまで鍛えられていたことを。


彼女は目を軽く瞑り、小さく呟いた。


シャワーズ「………お見事……ね」

やがて、ブースターがシャワーズに歩み寄ってきた。


ブースター「ハァ、ハァ、ハァ……」

シャワーズ「お疲れ様……」

ブースター「やった……やったぁ………！」


険しい表情が無邪気な笑顔に変わる。

ブースターはシャワーズの顔を見ると、嬉しそうに微笑んだ。


ブースター「オレ、やったよ……！！」

シャワーズ「ええ、ちゃんと見てたわ」


珍しく、彼女も素直に笑った。



ブースターが言った。


ブースター「これからはオレがシャワーズさんを守るよ」

ブースター「……いいかな？」


首を傾げて尋ねるブースター。

シャワーズはゆっくり頷いて……


シャワーズ「……ええ、よろしくお願いします」


と、言ったのだった。




─
──
───

時は少し進んで、その後の帰り道。

夕日に照らされた道を二匹のポケモンが歩いていた。


「シャワーズさん」


片方のポケモンが語り掛ける。

もう片方もそれに耳を貸した。


「……何？」

「オレさ、シャワーズさんのこと好きだ」


足を止めずに会話は続けられた。


「そう………。」



「あの……オレ……オレと……」

「オレと付き合って……ください……！」

その返事を、片方は即答しなかった。

しばらく……

しばらくの間を空けてから。


「ええ。喜んで………」


水色の頬を赤く染めて、そう返事をしたのだった。








「これからは敬称はいらないわ。シャワーズって呼んで頂戴」

「うん。よろしくね、シャワーズ！」

夕暮れ染まるバレンタインの帰り道。

二匹の新しいカップルが誕生した。



「そういえば、シャワーズってお菓子作るの苦手なの？」

「…………バーカ」

「えっ！？ 何だよ〜！！」

「ほら、行くわよ……！」

「待ってよ！ ねぇってば〜！」



その二匹は、チョコレートよりも甘〜いカップルだと学校でも評判だったとさ………───

【バレンタインSS】イーブイ「ブースターになりたい」

〜 おしまい 〜

乙です！

乙

自分から唯一王になりにいくのか(困惑)

乙です(=ﾟωﾟ)ﾉ

乙でした！

チョコに炎の石混ぜたんだろうけど妙にリアルで草

最優秀賞おめでたです

おめです！( ’ω’ﾉﾉﾞ☆ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

おめです！

おめでとうございます

おめでとうございます！

最優秀おめでとうございます

おめでとうございます

乙です。最優秀賞おめでとうございます

>>44
なるほど……

何か懐かしい連中が溜まっとる...

乙