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SS

【SS】不完全な完全さ。その脆さ。【ぷ】

 ▼ 1 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:18:54 ID:lg0XqrSw [1/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 父は居ない。だからだろうか? オレ達家族三匹は、他の家族よりも仲が良い気がする。友達のゾロアークなんて家族はあってないようなものの様だ。


 不完全だからこそ強くなるものは意外と多い。


 きっとこれからもずっと仲の良い家族であり続けるだろう。

 そんな事を、母のニンフィアと妹のイーブイが仲良く二つの木の実を二匹で半分半分に分け合って食べている様を見て、オレ、サンダースは漠然と感じていた。
 ▼ 22 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:43:15 ID:lg0XqrSw [2/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ほら、襲ってこいよ」


 ゾロアークがせっついてくる。


「っておい! ほんとにやんのか?」

「当たり前だろ」


 そう言ってニヤリと笑うゾロアークは無駄にいい笑顔だ。

なるようになれ、と遠くのロコンに気付かれないように遠回りしながら素早く近付く。
 ▼ 23 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:44:52 ID:lg0XqrSw [3/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
ロコンはゆっくりと歩いていた。目の前に立ってロコンに絡みにかかる。


「ちょっと待ってよ」


 イカン。なんだかあまり格好が付いてない気がするぞ。


「? ……はい?」


 ロコンが顔に疑問符を浮かべる。



 まだ少し幼さが残っている為か、中性的な顔立ちと僅かに高い声をしている。

その声に濁りは無くどこまでも透き通っている気がして、すっと耳に通った。一瞬聞き惚れてしまう程だ。

 大きな目に、すっと取った鼻筋。半面マズルは小さい。額にある毛並みはそれが至極モフモフであることが見て取れる。

 成程。遠目で見ただけでゾロアークが一目惚れするのも充分に頷ける。
 ▼ 24 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:46:10 ID:lg0XqrSw [4/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「き、君可愛いね。ちょっとこっち来なよ」


 もうどうにでもなれ、だ。困惑が増すロコンの頭のモフモフを軽く咥え、引っ張る。


「え、ちょっと」


 ロコンが抵抗しようとした時。


「ちょっとまったー!!」


 満を持してゾロアークの登場だ。


「その子を離しな」

「誰だぁテメェ」


 よし、いいぞ。段々と乗ってきた。


「問答無用!」

 ていっ、と掛け声をあげゾロアークが飛び蹴りをかましてくる。もちろん技でも何でもないただの飛び蹴りだ。
 ▼ 25 ガルガン@すごいつりざお 17/04/28 20:46:47 ID:7.ECNMUU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 26 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:46:48 ID:lg0XqrSw [5/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 頬に足が触れたぐらいの所で後ろに飛びのく。派手に飛ばされたように魅せる迫真の演技だ。


「大丈夫かい? お嬢さん」


 ゾロアークがロコンに話しかける。

 イカン笑ってしまいそうだ。引き攣る口角を意志の力で強引にねじ伏せる。

 ベタベタな展開だが、ロコンの反応はというと……当然沈黙&当惑。
 ▼ 27 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:50:14 ID:lg0XqrSw [6/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……えっと。なに、してるんですか?」


 この返しに今度はゾロアークが当惑する。


「何って……君を助けようと」

「でも、君達友達ですよね?」


 ゾロアークが固まる。


「ど、どうしてそれを?」

「どうしてって、よく一緒に笑ってましたし」


 成程。こちらからロコンが見えていたのと同じく、ロコンからもこちらが見えていたのか。考えてみれば当然だ。
 ▼ 28 ォッコ@ダウジングマシン 17/04/28 20:50:18 ID:5mAke52E NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 29 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:51:02 ID:lg0XqrSw [7/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 吹き飛ばされたまま寝そべっていたオレは立ち上がりゾロアークの隣に立つ。


「悪かったね。変なことに付き合わせて。こいつが君と友達になりたいっていうから仕方なくさ」

「オレを売るのか!? 薄情者!」

 隣でゾロアークが睨んでくるが素知らぬ振りだ。

 それを見ていたロコンが笑った。


「あはは。それならそうと普通に言ってくれたら良かったのに」


 ロコンの敬語が抜けた。警戒が緩んだのだろう。
 ▼ 30 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:52:05 ID:lg0XqrSw [8/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ボクでよければ友達になろうよ」

「じ、じゃあ。よ、よろしく……って『ボク』?」


 気のせいでなければオレにもそう聞こえた。


「え? ……ボクはオスだよ? もしかして勘違い……」


 驚愕の事実だ。まさかロコンちゃんがロコン君だったとは……なんだかここまでずっとベタベタな気が。


「じ、じゃあ後は二匹で仲良くな。オレはお邪魔のようだから退散するぜ」


 言い残してその場を去る。


「おいこら待て! 逃げるな! 裏切者ぉーー」


 ゾロアークの悲痛な叫びを背中で受け流し、友の検討を密かに祈った。
 ▼ 31 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:56:07 ID:lg0XqrSw [9/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ゾロアークといつもいる、木陰のある野原まで逃げていくと、見慣れた先客がいた。

 あれは、イーブイ? 珍しいな。こんな外まで出てくるとは。


「おーい。イーブイ」

「あー! おにーちゃん」

「イーブイ聞いてくれよ。ゾロア──」

「そんなのいいの!」


切羽詰まった様子で話を遮ってくる。やはり最近少し生意気だ。


「そんなのって──」


 また、遮られる。


「おかーさんが」

「ん? 母さんが?」

「とにかく! はやく!」


 イーブイが涙ぐんでいる。話の要領は得てないが、ただ事ではないらしい。
 ▼ 32 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:57:28 ID:lg0XqrSw [10/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ニンフィアのもとへ駆け付けると、異臭が鼻を突いた。酸いたツンとした臭いだ。


「母さん!」


 臭いのもとへ急ぐ。

 ニンフィアは、自らが嘔吐したと思われる汚物を自分で処理していた。吐いたようだ。


「あ、サンダース。ごめんね。心配かけちゃったかな? イーブイには大丈夫だって言ったんだけど聞かなくて」


 僅かに笑みを湛えているニンフィアに短く尋ねる。


「どう、したの?」

「ちょっと咳して吐いちゃった。でも、大丈夫だから」
 ▼ 33 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:58:41 ID:lg0XqrSw [11/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「本当に? ちょっと遠いけどポケモンセンターにでも」
「ポケモンセンターはケガを治す所よ。体調不良は『病院』ってところに行くの。それも、トレーナーが付いてないと駄目ね」

「えっ! そうなの」

「えぇ、まぁ使えないんだから知らなくてもいいけれどね」


病院っていう病気を治す所にはトレーナーが必要。野生のポケモンは自力で何とかするしかない。


……いや、あるじゃないか! オレ達が病院を利用する方法が。
 ▼ 34 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 20:59:27 ID:lg0XqrSw [12/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「母さん。ゾロアークに頼もう。ゾロアークならヒトに化けられる」

 ゾロアークは幻影を作り出し、他のポケモンの目を欺くことができるポケモン。それはポケモンに限らずヒトの目すらも欺ける。


「いいって。もう、心配し過ぎよ。ゾロアーク君にも迷惑だし」

「でも、このままだとイーブイも心配しちゃうしさ」

「うーん、でも」


 もう一押しだ。


「母さん!」

「ふふ、わかったわ。その内、ね」


 これで言質は取れた。早速ゾロアークの方へ向かう。
 ▼ 35 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:02:51 ID:lg0XqrSw [13/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ゾロアークは、あの野原の木陰でロコンと座っていた。なんだかんだで仲良くなったようだ。


「ゾロアーク!」


 ゾロアークが気付いて振り向く。


「あ、おいサンダース。よくも逃げやがったな」

「そんなのいいから! ロコンちゃん……じゃなくてロコン君、ちょっとゾロアーク借りてくね」

「あ、お、おいっ」


 戸惑うゾロアークを引っ張る。
 ▼ 36 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:03:32 ID:lg0XqrSw [14/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「離せって」


 ゾロアークがオレを振り払った。


「なんなんだよ」

「母さんが吐いた。で、病院ってのに連れていきたいんだがトレーナーが必要らしい。だからヒトに化けてくれないか? 頼む」

「母さんって、おばさんが? そんなに大変なのか」

「大変だろ! 吐いたんだぞ」

「落ち着けって。吐くことくらいたまにはあるだろ。一回冷静になれって」
 ▼ 37 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:04:13 ID:lg0XqrSw [15/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ゾロアークに宥められ、一回深呼吸をする。

 確かに、吐くことくらいたまにはあるかもしれない。イーブイが慌てていたのに流されていただけなのかもしれない。……『かもしれない』


「確かに、ゾロアークの言う通りかもしれない」

「だろ?」

「でも、そうじゃないかもしれない。とにかく付き合ってくれ」

「……ハァ。わかったよ。全く、お前らの家族は本当に仲が良いというかなんというか」


 ゾロアークが了承してくれた。なんだかんだ気の良い奴だ。早速ニンフィアのもとへ連れていく。
 ▼ 38 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:09:28 ID:lg0XqrSw [16/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「母さん。ゾロアーク連れてきたよ」

「え!? 本当n」


 言い切る前にニンフィアが咳をした。イーブイがニンフィアの隣で心配そうにしている。

 それを見てゾロアークは病院へ連れていくことを快く了承してくれた。早速連れていくためにニンフィアを負ぶる。ニンフィアは渋っていたが関係ない。

 オレ達が住処にしている民家はヒトの町から少し離れている。幼いイーブイは住処に置いていくことにした。当然それも難航したが。
 ▼ 39 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:11:00 ID:lg0XqrSw [17/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ニンフィアを担いでヒトの町へ降りるのには大体一時間くらいの時間を要した。その間ニンフィアはオレの背中で時々に咳をして、ぜーぜーと呼吸をしていた。


 さて、いざヒトの町へ着くと思ってもみない問題が生じた。──文字が、読めない。

 金銭はゾロアークの幻影でどうにかするつもりだったのだが、文字が読めない、喋られないというのは、文字に溢れた人の町において丸裸同然だ。

 が、これは案外簡単に解決した。


 ヒトとポケモンはある種の共生関係にある。

 ポケモンは衣食住を提供され、その代わりに労働力をヒトに提供する。

 何を言いたいのかというと、ヒトの町にも案外ポケモンは多いのだ。

 道行くポケモンに尋ねる。


「この辺にポケモンの病院はあるか?」

「病院? お前あんな所に行きたいのか? 一番近い所だとこの道を曲がってすぐだけど、……あそこは」

「この道を曲がってすぐだな? ありがとう」


 礼を言って、教えられた道を行く。
 ▼ 40 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:12:04 ID:lg0XqrSw [18/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 恐らくこれだろう、と思われる建物を見つけた。

読めないが〔金ポケモンクリニック〕と印字された看板があり、その建物内に人影はない。

院内に入ると一人の男が居た。

ヒトに化けたゾロアークがニンフィアを抱え、男に見せる。


「? 症状は?」


 尋ねられ、ゾロアークは喉を指さし口の前でバツ印を作る。話せないというジェスチャーだろう。


「とにかく、こちらの用紙をご記入下さい」


 医者の男が紙とペンをゾロアークに差し出す。当然書けない。

 ゾロアークが幻影で作った札束を医者に差し出した。
すると、医者の目の色が変わる。


「し、少々お待ちを」


言いつつニンフィアをゾロアークから受け取り、奥へと連れて行った。どうやら面倒臭い手続きはしなくてもよい様だ。
 ▼ 41 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:16:32 ID:lg0XqrSw [19/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
少し待つと医者が出てきた。


「ケンネルコフという感染症ですね。本来ポケモンの生命力で罹るのは珍しいのですが。また、それによって免疫が低下して肺炎も発症しています」


 呪文のようで何を言っているかよくわからない。ゾロアークも同じようだ。

 ただ、ポケモンの生命力では罹りにくいというのは分かった。ということはつまり、ニンフィアはそれに罹ってしまうほど弱っていたというのか。

 医者がにたりと笑う。


「この薬が少々高額でしてねぇ。頂いた分だと少し足りないんですよ」


 すでに説明を聞くことを放棄していたゾロアークに、小さな声で金が足りてない様だ、と伝える。

 ゾロアークが再び作り出した札束を医者は引っ手繰るように受け取り、薬とニンフィアを差し出した。ニンフィアを抱きかかえ、薬を受け取り、病院を後にする。
 ▼ 42 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:21:11 ID:lg0XqrSw [20/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ゾロアークに礼を言って別れ、早速住処で薬をニンフィアに与える。

しばらくしてニンフィアが礼を言ってきた。


「ありがと、サンダース。だいぶ良くなったわ」


 その呼吸は、依然としてぜーぜーと乱れていた。


「礼はゾロアークに言っといてよ」

「うん、そうだね」

 そう言ってまた、咳をする。
 ▼ 43 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:22:06 ID:lg0XqrSw [21/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 それから三日間、ニンフィアの容態は一向に良くならなかった。むしろ悪くなる一方だ。薬もなくなった。

 もう一度病院へ行こう。そう提案するもニンフィアは聞き入れない。もう良くなってきているの一点張りだ。

 それでも、と強引にニンフィアをもう一度病院に連れて行った。もちろんゾロアークも連れて。
 ▼ 44 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:22:58 ID:lg0XqrSw [22/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 前に訪れた病院に再度向かうと、そこには前と同じように男が居た。

 その男がニンフィアを見て、はっとしたように叫ぶ。


「お前は……金返せ!」


 しまった、と思った。

 ゾロアークの幻影は所詮幻影だ。時間が経てば消えてしまう。札束が偽物ということなんてすぐにバレただろう。

 慌ててその場から逃げ出す。

 ニンフィアが言う。


「やっぱり悪い事は駄目だよ。本当に、もう大丈夫だから」


 果たして住処に戻ることになった。
 ▼ 45 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:26:34 ID:lg0XqrSw [23/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 せめて体に良いものを、と食卓には体に良いものが並ぶようになった。今ニンフィアは日当たりの良いニンフィアの部屋で寝かせているので食事を用意するのはオレの役目だ。

 今まで食事の準備、所謂木の実取りだが、それはニンフィアに全て任せていたので勝手が全く分からない。

 取ってくる木の実は熟れ過ぎていたり若かったりと、ちょうど食べ頃を選ぶのは難しい。

 ラム、オボン、オレン、モモン等を用意するもニンフィアは日に日に弱っていく。

 症状は主に発熱、咳、咳に伴う嘔吐等だ。
 ▼ 46 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:27:22 ID:lg0XqrSw [24/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 オレやイーブイのように健康だと罹らないらしいが、それでもニンフィアは罹った。でもそれもわかる気がする。

 毎日の木の実取り、掃除、それに加えてそれぞれの排泄物の処理(トイレなんて野生にはない)、掃除、イーブイの世話。やることは沢山ある。

オレがいつも外に出ている間に、毎日ニンフィアはこれ等のことをこなしていたのだ。

たった数日だが、音を上げたくなる。
 ▼ 47 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:28:04 ID:lg0XqrSw [25/35] NGネーム登録 NGID登録 報告



 それは、本当に突然だった。



 ぜーぜーというような呼吸と咳。それが酷くなりニンフィアが突然もがきだした。

 口から白い泡を吹き、パタッと、まるで糸が切れた人形のように動きが止まる。

 荒かった呼吸が急に静かになった。


 オレは息を吸い込んで、それにより自分が息を詰めていたのだと知る。
 ▼ 48 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:28:29 ID:lg0XqrSw [26/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 冗談だろ、と思った。それは目の前で起きた筈なのに、理解が追い付かない。

それほどまでに突然で、あっけなかった。
 ▼ 49 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:28:52 ID:lg0XqrSw [27/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ピクリともしないニンフィアに尋ねる。


「母さん? ねぇ! 母さん!」


 あぁ噓だ。だってこんなの、あり得ない。だってそうだろ? 薬も効かない。木の実も駄目。こんなことってない。
 ▼ 50 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:30:07 ID:lg0XqrSw [28/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>49

産業目の文字化け

あぁ嘘だ

です。
 ▼ 51 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:30:52 ID:lg0XqrSw [29/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そもそも健康だと罹らないんじゃないのか? 何で。ニンフィアはなんで疲れたと言って休まなかったのか。

ただ一言「疲れた」って言って休むだけで良かったのに。

 俺たちは仲のいい家族だったんじゃあないのか? 疲れたの一言はそんなに難しいのか?
 ▼ 52 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:31:25 ID:lg0XqrSw [30/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そこまで思考が回って、ようやく気付く。

 『衝突なんてした事の無いほど、仲の良い家族』そんなものは有り得ない、と。

 オレ達は家族というものに甘えていたんだ。

 衝突しないんじゃない。衝突を避けていた。ただ、それだけ。家族だから、気を遣い、家族だから空気を悪くしないように、心配かけないように。

それが、ニンフィアから『疲れた』の一言を奪った。
 ▼ 53 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:38:51 ID:lg0XqrSw [31/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 もし、父が居れば、こうはならなかったかも知れない。負担を分かち、相談もできる。そんな父が居れば。

 数週間前、感じたことを思い返す。


──不完全だからこそ強くなるものは意外と多い。


 そんなことない。少なくとも家族はそうじゃない。不完全なものは不完全だ。それは結局、脆く、儚い。

 事実、ニンフィアは泡のように儚く、冷たく亡った。
 ▼ 54 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:39:32 ID:lg0XqrSw [32/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
「おにーちゃん?」


 オレの声を聞きつけたのだろうイーブイが、部屋にやってきた。ニンフィアを見て言う。


「おかーさん、息、静かになったね。もう辛くないのかなぁ」


 やっぱりこいつは最近生意気だ。こんな時にそんなことを言うなんて。そんなの、決まってるじゃないか。
 ▼ 55 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:40:03 ID:lg0XqrSw [33/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 オレはイーブイを前足で抱きしめた。強く、強く、抱きしめた。イーブイが苦しい、と声をあげる。

 近くで泣き声が聞こえた。遅れてそれが自分の声だと気づく。
 ▼ 56 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:40:29 ID:lg0XqrSw [34/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
 イーブイを抱きしめて、声をあげて泣いた。視界が滲んでいく。

 その滲んだ視界は、日当たりの良いニンフィアの部屋に差しこむ光のせいで、残酷なほど輝いていた。


────了
 ▼ 57 しー◆iTFigG3P7M 17/04/28 21:41:05 ID:lg0XqrSw [35/35] NGネーム登録 NGID登録 報告
このSSはブイズSS(しあわせのかたち。ぜつぼうのいろ。)の関連作品というか過去編です。是非合わせて見てください(宣伝)


さて、恐らく「この程度でサンダースが医者を、ある種異常なほどに毛嫌いするか?」という意見が来るんじゃないか、と思うので、さきに言っときます。

確かに、最初に医者を偽金で騙そうとしたのはサンダースだけど、お金に関する倫理観というのは野生のポケモンにおいてかなり薄いと考えます。

それよりも、「医者からもらった薬は効果が無く、ニンフィアを喪った」という方がサンダースに強烈な事実として残るでしょう。

そうなるとサンダースが「ヒトの医者は信頼できない」と思うのも頷けると思います。



それと実はこの医者(作中では金までしか名前が出てない)は別の作品少しだけ出てます。探して見てね(露骨な宣伝)

本名は金欲蔵です。
 ▼ 58 メパト@カクトウZ 17/04/28 21:54:30 ID:7njtmYLI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
 ▼ 59 ウワウ@おとどけもの 17/04/28 22:21:48 ID:Qm9xTXJc NGネーム登録 NGID登録 報告

面白かった
 ▼ 60 ガラグラージ@ハガネールナイト 17/04/28 22:57:57 ID:CiZFAiwQ NGネーム登録 NGID登録 報告
今回短編かー

 ▼ 61 ママイコ@シャドーメール 17/04/28 23:11:50 ID:clWhyxoc NGネーム登録 NGID登録 報告
いつの間にか始まってていつの間にか終わってた

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