【超ポケダン】調査団の夜ご飯

http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=791714&l=1-

にて、読んでみたいという声が上がったので上げます。

――――――――笑って、ピカチュウ。



――――――――私は、ずっと見てる！



――――――――だから、………………………………！








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

昨日はある夢を見ました。


それは、私たちのおだやか村の光景。


それも、この世界で最も絶望した日の。







………私のパートナー、フォッコが消滅した日の景色でした。

「……………！」ｷｮﾛｷｮﾛ

フォッコ「Zzz……………………」ｽﾔｽﾔ


私は慌てて、部屋中を見渡しました。

そして、すぐ隣に暖かそうな毛玉が見えた時、思わず息を大きく吐き出しました。

その存在をしっかりと確かめるように、小さく黄色い手をそっと伸ばしました。





後、少しで手が届く―――――――――――――――――――――

フォッコ「ん……………あれ？ ピカチュウ、起きてたの？」

「！？ う、うん。なぜか早く起きちゃって………」

思わず手を引っ込めてしまいました。

まあ、夢オチじゃなかったから良かったけれど。

そんな事を考えている途中で、彼女の可愛らしい声が聞こえてきた。


「ピカチュウ！ 今日も頑張ろうね！！」

「―――――――――――――――――うん！」



その声が、どれほど暖かったのかは、私以外には到底分からないだろうと本気で思いました。

〜帰り〜


フォッコ「ふぅ、今日は疲れたね！」

ピカチュウ「とても疲れたようには見えないけど」

フォッコ「私だって疲れるよ？」

ピカチュウ「普段のフォッコを見てると、そうは見えないのが不思議だね」

フォッコ「むー！」ﾌﾟｸｰｯ



ピカチュウ「――――――――ねぇ、フォッコ」

フォッコ「ん？ どうしたの？」

ピカチュウ「……今日、帰ったら一緒にパン作らない？」

フォッコ「うん、いいよ！ それなら、早く帰らなきゃね！！」ﾀﾞｯ

ピカチュウ「えっ、ちょっと！ 待ってよー！」ﾀﾞｯ




彼女、こうなると私以上に速くなるんですよね……………

一応、私の種族って足が早いことで有名だったはずなのですが………

まあ、世の中にはいくらでも私よりも早いポケモンはいますから、気にすることでもないです。



彼女にはもう少しだけ、こちらを気にして欲しかったです。

〜調査団 食堂〜

「………」ｾﾞｪｾﾞｪ

フォッコに追いつくために、かなりの体力を使いましたが、休憩する時間はあまりありません。


早速、パンを作っていきましょう！！！


今日は、新しい種類も作ってみようと思います！


その名も『ミルクハース』です！！

フォッコ「ミルクハース？」

「このパンは、生地を水じゃなくてミルクで練る事からその名前がついたらしいよ」

フォッコ「そうなんだ………」

今日は、このパンを全部で五本程焼いていきます。ミルクハースはバケットみたいなパンなので丸かじりは流石に厳しいです。

バケット型のパンを作るのは実は初めてなので、綺麗にできるかは分かりません。少し不安です。

だからといって、このまま作らない選択肢はありません！

まあ、まずは始めていきましょう！

「今日の材料は、小麦粉、発酵酵素、砂糖、塩、モーモーミルクにバター」

フォッコ「………あれ？ ミルク以外は普段の丸パンと変わらないよ？」

「パンの材料は基本的に変わらないからね。他の材料を加えたり、焼き方を変えることはあるけれど」

フォッコ「そうだったんだ………」

前に作ったクロワッサンなんかも、何回も折り重ねて焼いたりと、丸パンとは作り方等が異なっています。焼き方一つで見た目や味わいが変わるのもパンの面白いところです。

でも、どのパンも根本的には全て同じです。






姿が変わっていても、その土台は確かに存在します。



―――――――――――――――どんな姿でも。

フォッコ「………………大丈夫、ピカチュウ？」

「！！ あ、ごめんごめん。ちょっとボーっとしてたよ」

フォッコ「もう、しっかりしてよね？」



……………気を取り直して、続きに移りましょう。

「まずは、ボウルの中でバター以外の材料を全てかき混ぜる」

この時に、均等に混ざる程度の力で続けていきます。そして……………

フォッコ「だんだん塊になってきたよー？」

「じゃあ、今度はそれを手でこねてくれる？」

フォッコ「分かった！」

流石に、私もフォッコも何回もこの工程をやっているので慣れてきました。最初の頃は、一人で作る回数が多かったけれど、今となっては誰かと一緒に作ることの方が格段に多くなりました。というより、一人で作る日がほぼ無いです。

それはそれで楽しいですけれどね！

フォッコ「すごい………いつの間にか表面がつるんってしてきたよ！？」

「うん、そのくらいでいいと思うよ。次は発酵させよう」

ここから時間にして35分程度。この待つ時間も料理の楽しみにすると、格段に美味しく感じられますよね！

特に、パンは発酵が重要なので慌てないで待つこともコツです。

「倍くらいに大きくなったら、もう一度丸め直す。そして、濡らした布を被せてまた10分休ませる」

フォッコ「また待つの！？」

「……生地をしっかりと休ませないと食感が良くならないよ？」


何事も辛抱が肝心ですよね！



「休ませたら、綿棒で広げて厚さを均等にする。そして、手前から3分の1を中心に向かってぎゅっと折り込む。上からも以下同文」

フォッコ「そして、それを半分に折るんだよね？」

「うん、そうだよ。よく分かったね？」

フォッコ「えへへ、何となくそう思ったんだ！」ﾆｯ





本当に楽しそうだな……………………。

「後は、15分仕上げに発酵させる」

「そして最後に、石窯で10分程度焼いて………出来上がり！」


あらかじめ切り込みを入れて置いた部分が整って、見た目も綺麗に出来上がりました！
焼き色も良いし、ボリュームもしっかりと出てる！

フォッコ「………おいしそう！！」



そして、それを涎を垂らしかけながらキラキラした目で見つめているフォッコ。

「…………味見してみる？」

「えっ？」

「――――――――少しくらいなら、大丈夫だよ」



焼きあがった内の1本を取り出し、輪切りにしていく。切り込む度に香ばしく甘い香りが鼻を抜けていった。十等分の内、二切れを取り出して、その一個をフォッコへと渡した。

「味見をするも、料理の楽しみの一つだよ」

フォッコ「………うん！ 」ﾓｸﾞﾓｸﾞ



「…………………どうかな？」

フォッコ「…………………………………………」




二人『……………………………………………』

フォッコ「―――――――――――おいしい、美味しいよ！ しっとりとしてて、甘くて、それで……………」

「無理に褒めなくても大丈夫だよ？」

フォッコ「ううん！ 本当に美味しいよ！ 初めて食べた味だよ！！」



………目を輝かせて、まだ纏めることの出来ない感想を懸命に伝えようとする彼女が、とても眩しく見えた。

「………………………///」ｶｧｧ

あまりに眩しすぎて、私の顔が真っ赤に熱されているのが分かる。それを隠すように、手に持っていた一切れを口に含んだ。

(………モーモーミルクの甘さとしっとりとした生地のバランスが良い。外側の香ばしく焼かれた部分も食べ応え充分。うん、美味しく焼きあがった！) ﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝｯ





しっかり堪能している内に、顔の熱りも引いてきた。



フォッコ「ねえ、ピカチュウ？」

「どうしたの？」

フォッコ「………やっぱり、一緒に作った料理って美味しいね！」ﾆｺｯ


「――――――――――――――――――――――――――――」


彼女は、いつも私を照らしてくれる。
前世も、前も、そして今も……………………………


「―――――――うん、その通りだよ！」ﾆｺｯ


自分に出来る最大級の笑顔で、彼女に返しました。

これで、伝わる。


私たちは、これまでにないくらいの暖かなムードに包まれていました。しかし、それもつかの間。あっという間に、元気な声の数々にかき消されてしまいました。

ｵﾔ､ｲﾂﾓﾄﾊﾁｶﾞｯﾀﾆｵｲｶﾞｼﾏｽﾈｪ
ｸﾝｸﾝ………ｱ､ﾀｼｶﾆ!
ｺﾚﾊ､ﾓｰﾓｰﾐﾙｸｦﾌﾝﾀﾞﾝﾆﾂｶｯﾃｲﾙﾖｳﾃﾞｽﾖ､ﾍﾟﾛｯﾊﾟﾌｸﾝ
ﾀﾞﾝﾁｮｰﾀﾁﾉﾊﾅﾖｽｷﾞﾀﾞﾛ………
ｲﾏｻﾗﾀﾞﾅ
ﾊﾔｸｼｮｸﾄﾞｳﾆｲｷﾏｼｮｳ!


タイミングが悪すぎるにも程がありますが、この位で大丈夫でしょう。これからも、彼女と仲を深めていく機会は沢山あります。だから今は、お腹をすかせた人達のために、今日の準備を済ませたいと思います。



もちろん――――――――――――――――――――



「フォッコ、盛り付けるのも手伝ってくれる？」

フォッコ「………もちろんだよ！」




最高のパートナーと協力して！！！

ピカチュウ (最初は、ただ自己満足のために始めた料理)

ピカチュウ (それは自分でも気づかないうちに、私たちの思い出を彩る材料の一つになっていた)

ピカチュウ (みんなと共に活動すること)

ピカチュウ (この事が、どれほど凄いのか)

ピカチュウ (今、この食堂にポケモン調査団のメンバー全員が揃っている)

ピカチュウ (この事が、どのくらい大切なのか)

ピカチュウ (――――――――私の隣に、最高のパートナーがいる事)

ピカチュウ (この事が、どれほどまでに幸せなのか)



ピカチュウ (決して、決して、言葉では表すことは出来ない)


ピカチュウ (それらを無理やり言葉で纏めるとするならば)





ピカチュウ (『ありがたいこと』 なんだと思う)

ピカチュウ (明日は、何を作ろう？ まだまだ作りたい料理は、みんなと食べたい料理は沢山ある)

ピカチュウ (でも、それを考える前に始めなければならない事がある)

ピカチュウ (みんなといるというこの現実を、改めて実感させる事を)

ピカチュウ (そう―――――――――――――――――)





デンリュウ「それじゃあ……………皆さん！」



『いただきまーす！！！！！』







調査団の、夜ご飯を！！！！！



〜完〜

おまけ


クチート「………何か申し開きはあるかな？」ｺﾞｺﾞｺﾞ



デンリュウ「…………………いえ」

ペロッパフ「…………………ありません」

ﾃｸﾃｸﾃｸ

フォッコ「おはよう、クチート！」

ピカチュウ「所で、そこの二人はなんで座っているんですか？」

ピカチュウ (話し終わったらすぐに、作りかけのプディングの仕上げをしなきゃ)

クチート「ああ、実はこのアンポンタン達がな………」

クチート「ピカチュウが前に作ってたプディングを全て平らげてしまったんだ」

ピカチュウ「」



〜今度こそ、完〜

以上で、このスレでの更新を終了します。

このようなガタガタにも程のある突貫作業の拙作にお付き合い下さり、本当にありがとうございました！

皆さんの支援と乙の嵐のおかげでここまで来ることが出来ました！！

この次は後書きでもやっていこうと思います。
もし質問があれば、お答えします！！

ありがとうございました！！！！！

>>143
乙！あの時読んでみたいってレスして本当に良かった！

>>144
おお！ 私の妄想に挙手をしてくれたのはあなたでしたか………！

あのひと押しのおかげでやり切りました！！！
本当に感謝です！！！

〜後書き〜

まず、このSSのタイトルはいろんな料理マンガに影響されたのが大きかったです。
(『ミスター味っ子』や『信長のシェフ』、『衛宮さんちの今日のご飯』など)

特に、三番目の作品はシリアスたっぷりのジャンルに料理を足してほのぼのになっていました。

ですから、ポケダンに料理を足せば………？
という所から私の妄想が生まれました。

>>146

ひとまず、今作では和洋中全てのジャンルを出せましたが上手く表現出来たかどうか不安でした。

なんせ、初めての試みだったので………

余談ですが、5番目のお話は半日で仕上げました←

リクエストしてくれた人、申し訳ありませんっ！！！

作る料理をどうやって決めたのか気になる

>>148

決まった順番としては、丸パン→うどん→ラクサ(シンガポールのスープ)→春巻き→ミルクハース→モッツァレラ です。

うどんは、ただクチートに栄養のあるものだけを食べさせただけでは止まらないので気軽につまめない料理として採用しました。

和洋中のバランスを取るために作ってもらいました。
油ハネは最大の敵です。

そして、最初がパンで始まったので、最後もパンで締めました。『パンに始まり、パンに終わる』です！

モッツァレラは、途中で発酵食品も見たいという声があったので比較的簡単なものとして書かせていただきました！

>>149
質問に答えてくださりありがとうございました！

このスレでの更新は終了しましたが、このシリーズも個人的に気に入ったので近々最新版を書くかも知れません。

見かけましたら、軽く覗きに来てくれると勢いで運命の塔を2週半します(嘘)

後、突然のステマですがエルフーンと女子高のSSもよろしくお願いしますね！

短いですが、後書きもここまでとします！

質問は受け付けますので、まったりとどうぞ！！

乙

乙です！
凄く面白かったです！
お腹が空くSSだ

ピカチュウとフォッコの組み合わせにしたのはなんで？
好きなポケモンだから？それともゲームで使ってたとか？

>>154

実はどちらの理由も入っています。

やっぱりどうせ書くなら自分の推しで書けば執筆のモチベーションも上がるかと思いました。

その結果、六話分書き上げたのでおおむね達成しました！

『ほうでん』と『ねっぷう』強いです

〜余談〜

私のゲーム内でも、
主人公→ピカチュウ(レモン)
パートナー→フォッコ(タルト)

ちなみにチーム名は『スイーツ』です。

……美味しそうですよね、あの2匹。

またいつかポケダンSSを描いてほしいな
>>156
いいNNとチーム名だ

>>157
頑張ります！！

37を書き込んでよかった。

心が満腹になるSSでした！
自分もポケダン超をやってたので物凄く楽しめました。
心から感謝！！そしてお疲れ様でした！