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【暑い/寒い・混合SS】バクフーン「君を助けるために僕は旅に出る」

 ▼ 1 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:11:53 ID:XCMBA3qQ [1/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私は、未知の世界を見に行きたかった。

天から降り注ぐ太陽光、熱のこもった砂浜、泳ぐと心地いい海、南国にしかいないポケモンたち。
本で情報だけは分かっていても、実物を見たことは一度もない。


そうだ、いつか、旅に出よう。
周りは私の計画に猛反対するかもしれない。

……確かに、旅先で死んでしまったというポケモンの話は、これまで幾度も聞いてきた。
でも、それでも、私の好奇心は疼いて止まらない。


それに、寒い日はもうウンザリなんだ。
一回だけでもいいから、【暑い】という現象を、この身体で感じてみたい……。
 ▼ 2 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:12:53 ID:XCMBA3qQ [2/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どの大陸からも遥か遠方、青く澄み渡る南海に、ひっそりと浮かぶ奇妙な孤島があった。

名を『アツイアツイアイランド』と呼ぶそこは、年間の平均気温36度。最低気温は30度を下回ったことがないとまで言われる灼熱の島だ。


ゆえに、島の住民の殆どが「暑さ」を好む炎ポケモンで構成されており、そこには他の地域ではまず考えられないであろう、特異な掟が存在していたのである……。


ブーバーン「この島には、決して犯してはならぬ一つの約束がある。『氷タイプのポケモンをこの島に入れる事は絶対に許されない』というものだが……何故か、分かるかね?」

ポニータ「……はい! 氷ポケモンは呪われた魂を持っており、何よりも忌むべき存在だからです!」


長老ブーバーンが島の広場で、周囲に居る子供たちにある質問を投げかけた。
ポニータは、得意げになってそれに応えた。
 ▼ 3 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:14:27 ID:XCMBA3qQ [3/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブーバーン「正解だ。氷タイプは、我々炎タイプとは対極の位置にいる種族。暑さに弱く、少しの熱を浴びればすぐに衰弱する──言うなれば弱者の象徴だ。それに加え彼らは、忌まわしき《冷気》を運んでくる厄介な一面も持ち合わせているのだ」


『冷気』という言葉を聞き、その場に居る何匹かはブルルッと身体を震わせた。
────恐怖ゆえの震えである。


年がら年中、真夏の快適な気候の中を過ごしてきた島の住民にとって、冷気────すなわち寒さという概念は、怖れの対象物以外の何物でもなかったのである。


ヒトカゲ「俺、冷気とかやだよ。寒いと身体中痛みながら死んじゃうんだろ?」

メラルバ「アタシ聞いたことある。寒いところにしかない雪っていうのに触ると、魂が呪われちゃうんだって!」


やがて、広場中にありもしない噂が乱雑に飛び交い始めた。

口々に言われる寒さの恐ろしさは、次第にその程度を過熱していくが、その中でたった一匹だけ、この狂騒を冷めた目で見つめるポケモンがいた……。
 ▼ 4 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:15:59 ID:XCMBA3qQ [4/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「……ちゃんと防寒すれば寒さで死ぬことはないし、雪は水が冷えて固まっただけのものだ……雪に触れて魂が呪われるなんてことはありえないよ。みんなちょっと無知が過ぎると思わないか、マグカルゴ」


マグカルゴ「またバク君は寒さのことを図書館で調べたのかい。アレに関する書物は基本閲覧禁止だろ?」

バクフーン「それだよ、寒さは何も恐ろしいものじゃない。なんで閲覧禁止にするんだろ?」





ブーバーン「それはお前のように寒さに興味を持つ者が出るのを防ぐためだよ」

いつの間にか、背後にブーバーンが立っている。
まるで突き刺さるかのような鋭い眼光を、バクフーンにジッと向けていた。



バクフーン「!!」


バクフーンは思わず驚いてしまい、ビクリと小さく痙攣した。
 ▼ 5 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:18:07 ID:XCMBA3qQ [5/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブーバーン「お前が何を言おうと、寒さは恐ろしいものだ。お前が読んだ本に『ちゃんと防寒すれば寒さで死ぬことはない』と書いてあったか? だとすれば、それは大いなる間違いである。……今のこの島の熱帯気候こそが、我々にとっての楽園なのだよ」


バクフーン「で、でも。氷ポケモンを島に入れないってルールは、かなり極端じゃ──」

ブーバーン「バクフーン!? 古来より続く神聖な掟にケチを付けるつもりか、お前!!」


バクフーン「古来から続くってのがそんなに凄いことなのかよ!! 古いルールはどんどん変えていくものだって、僕は思うのに……!!」


ブーバーン「もういい、十分だ……ああ、十分だとも!!」

ブーバーン「バクフーン!! お前はしばらくの間、図書館の出入りを禁止する!! 金輪際!! 寒さのことなど調べるなッ!!」

バクフーン「……っ!」


それから暫く、気まずい沈黙が巨大なヴェールとなって、その場を包み込んだ。

両者はまさに火花を散らすかのように睨み合い、熱く煮えたぎる怒りの感情をひた隠すような、そんなまどろっこしい事は一切しなかった。


そのヒリヒリした緊張感をようやっと断ち切ってくれたのは、広場に走ってくるクイタランの、まるで悲鳴のような声である────
 ▼ 6 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:20:05 ID:XCMBA3qQ [6/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クイタラン「大変だ〜っ! 六番地の方でゴウカザルとヘルガーが喧嘩さ起こしてるっぺ! 誰か止めてくんろっ!」


ブーバーン「な、何じゃと? これはイカン……急がねば」


ブーバーン含めた広場にいる殆どのポケモンは、それを聞くや否や一丸となって六番地の方角へと向かう。

バクフーンとマグカルゴだけが、広場にポツンと取り残された……。
 ▼ 7 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:21:15 ID:XCMBA3qQ [7/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「……」

マグカルゴ「長老とバク君……凄い口論だったねぇ。でもさ、あんまり長老に逆らうと、後が怖いよ?」


バクフーン「知ったことか。僕は、あんな馬鹿みたいなルールには従いたくない。ただそれだけなんだ」

僕の名前はバクフーン。

外の世界に少しだけ興味がある、ごくフツーのポケモンだ。

生憎、この島の基本方針は、僕の考えとは全く相容れないようで、そのせいでトラブルも度々起こしてしまっているけれど……。



バクフーン「いつか、僕はこの島を出て見に行くんだ。雪がある、氷がある、そんな世界を!」


マグカルゴ「うん、叶うといいね。周りは反対するだろうけど……俺は応援してるよ? バク君のこと」

バクフーン「うへへ、ありがとう」


マグカルゴは、僕の唯一の友達だ。
常識ハズレで変わり者──僕自身はそう思わないけど──そんな僕の言ってることを理解してくれる、唯一のポケモンでもある。


バクフーン「……今日は家に帰るよ。何だか疲れちゃったし」

マグカルゴ「うん。じゃあね、バク君」

バクフーン「さよなら」


いつもの何気ない日常が続いていた。
そう……この日までは。
 ▼ 8 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:22:59 ID:XCMBA3qQ [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ザザーン……ザザーン……

寄せては返す波の音が、鼓膜をくすぐる。

バクフーンは沿岸沿いに歩いて帰っていた。
キャモメが切ない声で鳴き、夕陽が水平線を赤く染めると、何となく寂しい気持ちになる……。



バクフーン「……外の世界、か」


バクフーンの両親は、いない。

彼がまだ物覚えすらついてないヒノアラシだった頃、父と母は外の世界にあるという楽園を求める旅に出て、二度と島には帰らなかったらしい。


……そのことで、父と母を憎むような気持ちは一切ない。
それどころか、両親をそこまで駆り立てた『外の世界』というものに、興味が湧いて仕方がなかった。
 ▼ 9 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:24:22 ID:XCMBA3qQ [9/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「雪ってどれだけ冷たいんだろう……氷ってどれくらい硬いんだろう」

書物で幾つかの情報は得た。

でも、実際に触れないと分からないことだらけなんだ。
いつか……いや、準備さえ整えば、今すぐにでも船に乗って旅に出たい……。


ふと、海を見た。
広大で、荘厳で、自分の存在が心許なくなるくらい果てのない海……。

その向こうには、いったい何があるんだろう……?



海を見ながらボーッと歩いていると、バクフーンは突然足元に違和感を感じた。

砂を踏んでいる感触ではない。

何か、堅いもの。それは、木材の破片だった。
 ▼ 10 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:25:56 ID:XCMBA3qQ [10/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン(……これは?)

木片だけではない。
大きな布、食べかけのリンゴ、ガラス片、あらゆる物が不自然に散らばっている。

────そして何よりも気になったのは、それらと一緒に小さな足跡が島の奥へと続いているということだ。



バクフーンは興味本位で、その痕跡を辿った。

岩場を抜け、谷の奥を進み、少し歩いて着いたのは、何の変哲もない洞窟。

しかし、そこは島の住民であるバクフーンですら、初めて見る場所だった。

まさか、こんなところがあったなんて……。


中は真っ暗で不気味そのものという感じだったが、今まで見たことのない謎の洞窟への探究心も相まって、バクフーンは覚悟を決めて、闇が続く穴の中へ入った。
 ▼ 11 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:27:59 ID:XCMBA3qQ [11/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
中は……とても冷える。

アツイアツイアイランドとは思えない程の低温だった。

冷えた大気が顔から背筋まで駆け抜けると、バクフーンは全身を二度三度大きく震わせた。



バクフーン「フェックシュ!」

くしゃみの音がうわんうわんと反響する。
すると、突如暗闇の中から、女性のか細い声が聞こえたのである。


?????「どなた……ですか?」


あからさまに怯えた震え声だった。

恐る恐る声のする方向に近づくと、バクフーンの背中の炎が、声の主の正体を暴いた。


グレイシア「あ、あの……」

最初、バクフーンの目に入ったのは、妖しく光る水色の綺麗な皮膚であった。
 ▼ 12 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:29:20 ID:XCMBA3qQ [12/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このポケモン、何者だ? ……今まで、見たことないぞ。


頭の中にある全ての知識を総動員しても、分からない。
この島に住んでいる者でないことだけは確かだ。


ふと気づけば、謎のポケモンの青く澄んだ空のような瞳が、バクフーンをじっと見つめていた。
彼は思わずドギマギしてしまう。


何だろうこの感情、無性に胸が高鳴る。

バクフーン「ぼ、僕はバクフーンって言うんだ。この島にずっと住んでて──ええっと、君はこの島のポケモンじゃないよね?」



上目遣いで、謎のポケモンは首を大きく左右に振った。
それにあわせて、横から垂れ下がる尻尾のような耳がフルフルと動いた。

グレイシア「私はグレイシアと言います。遠い場所から船で旅をしていたのですが、つい先日のことです──船が嵐に巻き込まれまして、私は漂流してしまったのです」
 ▼ 13 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:31:28 ID:XCMBA3qQ [13/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「漂流って……そんなことあるんだ」


グレイシア「命からがらこの島に流れ着いたのは幸運でした。しかも、この島に住んでいる方と出会えるなんて────」


グレイシアは瞳を輝かせながら、興奮ぎみにそう言った。
バクフーンはただひたすら、唖然とするばかりである。


バクフーン「それは、大変だったね……」

グレイシア「まぁ、大変は大変でした。私、氷タイプで暑さに弱いものですから。この島に着いた時も苦労の連続で────」



バクフーン「……え」

更なる衝撃の事実が、バクフーンを放心させた。
目の前にいるこのグレイシアというポケモンは────







     氷タイプ?




 ▼ 14 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:32:45 ID:XCMBA3qQ [14/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーンの口から衝いて出たのは、グレイシアへの警告であった。

バクフーン「き、君は……駄目だ。こ、ここにいちゃ駄目なんポケモンだ……!」

グレイシア「え……?」

バクフーンはグレイシアに語った。



この島の破ってはならぬ絶対的な掟のことを、氷ポケモンだけは島にいれてはならないということを、氷ポケモンは、この島では呪われた存在扱いされているということを……。


 ▼ 15 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/07 20:38:51 ID:XCMBA3qQ [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
http://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=633896

このSSは暑い日/寒い日SSの企画に提出予定のSSです。
とりあえず、今回の更新はここまで。
また後で会いましょうぞ。
 ▼ 16 ンヂムシ@こんごうだま 17/08/07 20:56:09 ID:i3MSa0OE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
っていうか混合ってありなの?
 ▼ 17 ンヂムシ@ドラゴンメモリ 17/08/07 20:57:27 ID:lAX.Cfo2 NGネーム登録 NGID登録 報告
タイトルであの小説思い出した
 ▼ 18 ーリキー@キズぐすり 17/08/07 22:18:00 ID:WM/Ge4sU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 19 ガース@シールいれ 17/08/08 00:10:40 ID:DNW/KHIk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援

>>16
ありだよ
 ▼ 20 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 18:33:56 ID:H2XfyYVg [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「そんな、ひどい偏見です……。氷ポケモンは呪われてなんかいません!!」

話を一通り聞き終えたグレイシアは、唾を飛ばすような勢いで口を開いた。

バクフーンは静かに頷き、彼女の言葉に賛同した。



バクフーン「僕もそれは分かってる……でもこの島じゃそれが『普通』の考え方なんだ」

グレイシア「もし、私がこの島にいると島中の方々にバレたら……私はどうなるんですか……?」


バクフーン「……良ければ、即刻島から追放されるだけで済むかもしれない。悪ければ……何らかの罰があるかもしれない。少なくとも、……僕は君のことを誰かにバラすつもりはない。でも、今すぐこんなところから逃げ出した方が良いのは確かだ」



深刻で重々しい沈黙が、その場にドッシリと腰を据えた。
グレイシアはしばらくの間、何かを迷っていたようだが、意を決して発言を試みた。



グレイシア「バクフーンさんは……島の掟があるのに、こんな私なんかを庇ってくれるんですか?」


バクフーン「あ……当たり前だ。タイプが違かろうが、僕らは同じポケモンなんだ……それに」


バクフーン「一度、貴女のようなポケモンに聞いてみたかったんだ……!! 氷ポケモンってどんなポケモンなのか、雪って、寒さってどんな感じなのか……!!」

グレイシア「……へ?」
 ▼ 21 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 18:35:49 ID:H2XfyYVg [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシアの予想もしなかった言葉が、バクフーンの口から発せられた。

バクフーンは驚く彼女に構わず、鼻息を荒くして話を続ける。


バクフーン「貴女がこの島から逃げ出すには、もちろん船は要るし、食料含めた物資もいろいろ必要だろう? 僕が全部準備するよ……その代わりに、と言ってはなんだけど、その……外の世界で貴女の知っていることを、いろいろ教えてはくれないだろうか……!」


グレイシア「外の世界のことを……?」


バクフーン「ああ、興味があるんだ……!!」
 ▼ 22 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 18:40:19 ID:H2XfyYVg [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシアはまたも迷う素振りを見せたが、バクフーンの提案を受け入れた。

それからというものの、バクフーンの日常は、見違えるほど明るくなったのである。



ひしめきあうように湧き起こる幸福感が彼の心を満たし、手足の先端にまで、それらが溢れてくるようだった。

バクフーンは毎日、容易に外出もできないグレイシアのために、木の実や果物を洞窟まで運んで行ったり、逃走するための船を探したり、逃走の準備を整えたりするなど────それなりに面倒な仕事を抱えることになったが、その見返りは大きかった。





グレイシア「雪にずっと触れていると、『しもやけ』って状態になったりするんです。しもやけになった身体は赤く膨れたりして、それにとにかく痒くなるんです」


グレイシアの話は何よりも新鮮で聞き応えがある。

バクフーンはいつも目を輝かせて、彼女の話をじっくり聞いた。
 ▼ 23 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 18:42:54 ID:H2XfyYVg [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「『しもやけ』かぁ……今まで読んだ本にはそんな情報は書いてなかった。やっぱり本物の氷ポケモンが話すエピソードは一味違うなぁ!」



グレイシア「……クスクスッ」

バクフーン「……え、何かおかしい?」


グレイシア「いえ、私の話をこんなに熱心に聞いてもらえるなんて、初めてで……嬉しいんです、私」

バクフーン「……!」


グレイシアから様々な話を聞き、多くの質問をした。

しかし、一つだけ。バクフーンにはどうしても分からないことがあった。
グレイシアと話していると、胸が真綿か何かで締め付けられるような感覚に陥るのだ。


この気持ちは、何なのだろうか?






その感情の正体を彼が知るのは、まだまだ先のことである────。
 ▼ 24 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 18:49:23 ID:H2XfyYVg [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、バクフーンとグレイシアの邂逅から、数日が経過した頃。
……運命の歯車を狂わせる異変が発生した。




グレイシア(……っ)

ふと、グレイシアの視界が微かに歪んだ。

額に手を当てると、そこはじんわりと熱を帯びていた。



現在、洞窟の中の気温は25度。
氷タイプであるグレイシアにとって、この温度の中を過ごし続けるのは、至難の業だったのである。



グレイシア(この洞窟は他の場所に比べて涼しいとはいっても……やっぱり限界があるんだわ。バクフーンさんに、このことを伝えるべきかしら……)
 ▼ 25 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 18:55:36 ID:H2XfyYVg [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「……やぁ、グレイシアさん?」

グレイシア「あ……バクフーンさん」


バクフーンがやってきた。

腕に十分な量の食材を携え、いつもの明るい笑顔を見せている。

特に今日は、何か嬉しいことがあったのか、普段以上にウキウキしているようだった。


バクフーン「グレイシアさん、逃走の準備なんだけどね、かなり順調なんだ。上手くいけば数日後にでもこの島を出られる!」

グレイシア「そう、ですか」


グレイシアは額が熱っぽいことをバクフーンに言わないことにした。

これ以上、彼に迷惑をかける訳にもいかないと思ったのもあるが、何より数日我慢さえすればいいんだと、ある程度の覚悟も決まったからである。



グレイシア(それに、洞窟の外はもっと暑いんだし、何にせよ私はこの洞窟に籠ってた方が良いはず……。少し暑くても、我慢くらいしなきゃ……)


グレイシア「……それで、逃げだす時はどんな経路を通って行くのでしょうか」


バクフーン「そうだな……今はちょうど夜だし、島のポケモンも殆ど寝てるはず……。ちょっとだけ、下見についてくるかい?」



グレイシア「え……」
 ▼ 26 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:07:49 ID:H2XfyYVg [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシアは多少悩みつつも、バクフーンと共に外に出ることを決めた。


案の定、外の気温は洞窟内とは比べ物にならないくらい暑かったが、それだけのことをする価値がある外出だ。

外の様子も一回くらい見ておきたいし────。



グレイシアはバクフーンの背後にピッタリついて歩いた。

やがて彼らは、多くの船が停泊する港らしき場所にたどり着いた。

しかしそこで、思わぬアクシデントが発生する。



エンブオー「うぃぃ〜……ヒック! あ〜飲み過ぎたァ〜……」


バクフーン「……っあ、ヤバい」

グレイシア「えっ……きゃっ!」


バクフーンは向こうからのっそり歩いてくるエンブオーの姿を見たその瞬間、グレイシアを強引に自分の方に引き寄せ、自らの大きな身体を活かして彼女を必死に隠した。


グレイシアはバクフーンに身体を密着させていた。
思わぬ出来事に、彼女の心臓はまるでタップダンスを踊るかのように跳ね回った。



グレイシア「あ、あの、その……///」

バクフーン「しっ! 喋らないで!」
 ▼ 27 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:09:54 ID:H2XfyYVg [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エンブオー「んあ〜……そこに誰かさんがぁ、いるのかいぃ〜?」


バクフーン「や、やぁ、エンブオーじゃないか」


エンブオー「何でぃ、変わり者のバクフーンか。……聞いたぞ? 図書館出入り禁止になったとか何とか」


バクフーン「ハ、ハハハ〜……」


エンブオー「氷ポケモンなんぞに憧れやがって、この阿呆がよ。アイツラは呪われた存在だろ? もし島にでもやってきたら丸焼きの刑にしてるところだぜぃ」

グレイシア(……ま、丸焼き……)


バクフーン「そ、それは言い過ぎじゃ……」


エンブオー「言いすぎも何もそれが島の掟だろ? 呪われた氷ポケモンがこの島に出入りすることを禁ずるってな……。ま、何にせよだ。余り調子に乗らねえ方が身のためだぜ? ……じゃあな、バクフーン……」
 ▼ 28 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:13:16 ID:H2XfyYVg [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エンブオーが千鳥足でユラユラと向こうへ去っていった。

バクフーンは心底安心し、長く大きいため息を吐いた。



バクフーン「……ようやっと行ってくれたか。だ、大丈夫? グレイシアさん」

グレイシア「……はい。大丈夫、です」


だが、グレイシアの様子は明らかに『大丈夫』からは程遠く、かけ離れたものだった。

顔はいつも以上に青ざめ、顔中から大量の汗を流している。

バクフーンは、「……洞窟に帰ろう」と言った。


グレイシアは声こそ出さなかったが、しかし、今までにないくらい強く頷いた。
 ▼ 29 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:16:51 ID:H2XfyYVg [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜洞窟内〜

バクフーン「無理に外に出してゴメン、グレイシアさん。まさかエンブオーがあんなところを歩いているなんて────」


グレイシア「いえ、本当に、大丈夫なんです……。ただ、この島では氷ポケモンは忌み嫌われてるっていうのは、本当のことだったんですね……。別に、バクフーンさんを信じてないわけじゃ無かったんですけど、でも、実際にああいう言葉を聞くと……」


グレイシアは途中で言葉に詰まったようだ。
今にも泣きだしそうなくらい、彼女の身体は恐怖で震えている。

バクフーンは、グレイシアを外に出してしまったことを深く後悔した。


バクフーン「……今日はもう寝た方が良い。船とか他にもいろいろ準備が終わったら、グレイシアさんに伝えに行くよ。それまで、待ってて……」


グレイシア「はい……」




グレイシアに別れを告げ、洞窟の外に出たバクフーンは自分の家に帰った。
その道中、怪しい二つの眼が、彼をじっと見つめ続けていたとも知らずに……。

ブーバーン(こんな夜遅い時間に帰宅か……。バクフーンめ……一体、何を企んでおる?)
 ▼ 30 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:21:44 ID:H2XfyYVg [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日。
バクフーンは木の実を大量に貯蔵した倉庫に向かい、グレイシアのための食料を選別していた。


バクフーン「今日はオボンの実でも持って行ってあげるか……。昨日はなんか元気なかったし、グレイシアさん……」

マグカルゴ「誰の話してるの?」


背後にはいつの間にか、マグカルゴがいる。

バクフーンはケロマツよろしくぴょんと飛び上がると、咄嗟の間に振り向いた。



バクフーン「う、うわわっ……な、何だマグカルゴか。……何でもないよ! 気にしないで!」

マグカルゴ(明らかに隠し事してる……でも、何を?)


バクフーン(とりあえず急いで彼女のところに行かないと……)


バクフーンはオボンの実、その他食料諸々を、背中に括り付けた籠に詰め込むと、そのまま例の洞窟へと向かった……。

マグカルゴが彼の大きな背中を心配そうに見つめる。


一方、長老ブーバーンもまた、睨むようにして彼の行く先を凝視していた……。


ブーバーン「……」
 ▼ 31 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:23:24 ID:H2XfyYVg [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜洞窟内〜

バクフーン「はぁ、はぁ……グレイシアさーん! 今日はオボンの実を持ってきたんだけど、食べ────」


いつも通り、バクフーンはグレイシアの下を訪れた。

昨日と何ら変わらぬ彼女が笑顔を浮かべて待っていてくれてる──彼はそう思っていた。




だが、そこで彼が見たのは……あまりにも衝撃的な光景。




グレイシアが……倒れている。

衰弱という域ではない、まさに重症。
頬を真っ赤に染め、全身から汗を流し、心なしか彼女は昨日より小さくなっているように見えた。



バクフーンは眼を限界まで見開き驚いた後、彼は慌てて彼女の隣に駆け寄った……。

バクフーン「グレイシアさん……グレイシアさん!?」
 ▼ 32 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:24:30 ID:H2XfyYVg [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「……バクフーン、さん……?」


バクフーン「ど、どうしたんだい、一体何が────」


グレイシア「ごめんなさい……バクフーンさん、私……もう、駄目みたい、です……」


バクフーン「な、何を言ってるんだ!」


グレイシア「暑さには、耐えきれなかったみたいで……。昨日から、異変は感じてた……。でも、今日、急に、体調が、悪くな、って……」


途切れ途切れの弱々しい声によって、グレイシアの悲愴感は更に増した。

バクフーンは唇を噛みしめて、彼女を見つめる。
 ▼ 33 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:26:11 ID:H2XfyYVg [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「……っ!!」


次の瞬間、バクフーンは考えるよりも先に行動を開始していた。
グレイシアに微かな負担すら与えないよう、彼女を自らの短い腕で静かに抱え上げ、洞窟を出る。

グレイシアが震えた声で言った。

グレイシア「もう、いいんです……私は、ここで、死ぬ、運命で…………」

バクフーン「そんなこと言うな!! 絶対に、君を助ける────何が、あってもだ!!」



グレイシア「……バクフーンさ、ん」


バクフーン「君はあらゆる意味でこの島にいちゃいけなかったんだ。今すぐ、ここから抜け出そう、僕と一緒に……!!」





そうして、覚悟を決めたバクフーンは勢いよく、洞窟の外に出た。
その先に、更なる障害があるとも知らずに────
 ▼ 34 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:28:16 ID:H2XfyYVg [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「……な、何で、アンタがここに」


太陽の光がギラギラと照りつく岩場の上、そこにいたのは────他ならぬ、ブーバーンであった。

ブーバーン「……お前の後をこっそりつけてきたのだ、バクフーン。……ところで、その腕にいるポケモンは何だ」


バクフーン「こ、この娘は、し、知り合いの炎ポケモンで」


ブーバーン「年の功を舐めるな。ワシのポケモンの知識は、お前以上だ。……そのポケモン、そのグレイシアは……氷タイプのポケモンだろう!?」


苦し紛れの嘘は直ぐに看破された。

ブーバーンは沸点に達した怒りゆえか、頬をぴくぴく動かし、歯を剥き出して咆えるように叫んだ。

噴火のようなその怒声にたじろいだバクフーンは、思わず二歩後退した。


バクフーン「……っ」


ブーバーン「渡せ」

ブーバーン「そのグレイシアをこちらに渡せ……!!」


バクフーン「い、嫌だ……僕はこの娘と……外の世界に行くんだ!!」


ブーバーン「バクフーンッ!! 貴様ァァァァァァァァァ!!」
 ▼ 35 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/08 19:28:56 ID:H2XfyYVg [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
本日の更新はここまで!
それではまた後日会いましょうぞ!
 ▼ 36 トウモリ@ひのたまプレート 17/08/08 21:18:16 ID:.IoUoPBE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 37 ィアルガ@こわもてプレート 17/08/08 21:56:06 ID:NGFNMMu. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 38 ガチャーレム@こだいのぎんか 17/08/08 22:23:52 ID:Q2USFFWk NGネーム登録 NGID登録 報告
面白い
 ▼ 39 日ゴロゴロンダ◆XTk1MeLTks 17/08/09 01:22:17 ID:KwETEyJg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 40 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:14:07 ID:iksKhmws [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────バフンッ!!


その時、奇妙な音と共に、黒い煙幕が辺りに広がった。

突如として視界を支配する漆黒。
バクフーンもブーバーンも混乱した。


すると、バクフーンのすぐ横で、何者かが囁いたのである。


?????「こっちだよ、バク君……」

バクフーンは声のする方を見た。

しかし、不思議なことに、そこには誰もいない。

だが、その方向だけ煙幕が他よりも薄くなっていた。


逃げるチャンスはここしかない────バクフーンは煙幕の薄くなっている方角へ、がむしゃらに、命懸けで走った。
 ▼ 41 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:16:11 ID:iksKhmws [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
走る途中、砂場に落ちた木片を踏んだ。

足の裏が悲鳴を上げ、涙をこぼすかのように鮮血を垂れ流した。

だが、走ることを止めては駄目だ。

急げ、急げ、港へ。

こんな狂った島からは、すぐにでも出ていかないといけないんだ。




バクフーンはやっとの思いで港に着いた。

船が何隻もある。どの船に乗ろうか、迷う暇もなかった。

最初に目についたラプラスをモデルにした船に、彼らは乗った。

オールで漕いで進むタイプのようだ。

バクフーンはしきりに後方を気にしながら、オールを動かし、前進した。





まだ、誰も追いかけてきていないようだ。
逃げろ、逃げろ、このまま逃げろ────!!
 ▼ 42 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:17:26 ID:iksKhmws [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから少しして、島のポケモン大勢を引き連れてきたブーバーンが、港の光景を見て愕然とした。

船が、無くなっている。

いや、もっと正確に表現するならば、船が一つ残らず、大炎上を起こして海へ沈んでいるのであった。



ブーバーン「船で……逃げたのか。バクフーンの奴……」

バオッキー「残った船がこの有様じゃあ、追跡も無理でしょうな……」

ブーバーン「あの馬鹿め……!!」



ふと、ブーバーンは昔のことを思い出していた。

バクフーンの両親が、まだ生きていたあの頃のことを……。
 ▼ 43 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:19:24 ID:iksKhmws [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
==========

バクフーン父「長老……。俺たち、旅に出るよ。【楽園】と呼ばれる世界を探しに行くんだ」


ブーバーン「な、何だと……? 息子のヒノアラシはどうする気だ」


バクフーン母「ヒノアラシはまだまだ幼いですし……一緒に旅に出るワケにはいきません。長老様、私たちがいない間……彼のことをよろしく頼みますわ」


ブーバーン「本当に、外の世界に【楽園】などあるのか? ……それに、【楽園】とは、息子を島に置いていってまで探し出すものなのか……?」


バクフーン父「長老……俺たち島の住民は、このままじゃ死に絶える運命だ。島で採れる食料も年々少なくなっているし、いつかジリ貧になるのは確実だろう」

バクフーン父「外の世界にある【楽園】と呼ばれる場所さえ見つけ出せば、俺たちはみんなそこに移住して、危機を逃れることが出来るんだ。……俺たちの旅は、全てこの島のためなんだよ」


ブーバーン「はぁ……分かった。……行ってくればいいだろう。……ワシは、この子の世話をしておくから……」
 ▼ 44 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:20:56 ID:iksKhmws [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして、数か月後……。

ブーバーン「え……バクフーン夫妻が……二匹とも、死んだ?」


コータス「うむ。つい先程、その知らせが届いた。【楽園】探索プロジェクトのメンバーは、全員で6匹いたわけじゃが、その9匹のうち、6匹が旅の事故で死んだという。生き残った3匹が辛うじて帰還して、この情報を伝えてくれたのじゃ……」


ブーバーン「そんな馬鹿な……」


ヒノアラシ「ちょーろー、何の話してるのー?」


ブーバーン「……っ」


ブーバーン「……ワシが必ず、お前を守ってみせるよ。ヒノアラシ、お前だけは、死なせるわけにはいかんのだ……」


ヒノアラシ「???」

============
 ▼ 45 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:22:28 ID:iksKhmws [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブーバーン「あの馬鹿者め……。両親と同じ道を行ってしまうとは……うぅ、うおぉ……ぐすっ……」

バオッキー「え、ちょ、長老?」

ブーバーン(せめて、生きててくれ……バクフーンよ)


まるで神に拝むように両手を合わせ、ブーバーンは静かに目を閉じた。


その後方で、息を切らしたマグカルゴがひっそりとその身を潜めていた……。

マグカルゴ(煙幕と船の炎上……俺のせいだとはバレてないみたいだ)

マグカルゴ(……バク君にどんな事情があるのか俺は知らない……。でも、君はいつも以上に真剣な顔をしてた。だったら俺に出来ることは、君を応援することだけだ……!)
 ▼ 46 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:23:50 ID:iksKhmws [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブーバーンとマグカルゴ。

二匹はバクフーンの無事と成功を強く願った。



……だが、現実はそう甘くなかった。




海へ出た、彼らのその後は……まさに苦難の連続だったのである。
 ▼ 47 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:25:50 ID:iksKhmws [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーンとグレイシアが島から逃亡して数時間。


彼らは今、未曽有の危機に晒されていた……。


バクフーン(まずい……波が、どんどん強くなっていく……!!)


嵐だ。
突然、バクフーンたちの船が、巨大な嵐に巻き込まれたのだ。

荒れ狂う自然の前では、あらゆる生き物は塵芥にも及ばない。

消える気配すら見えない嵐は、果てのない海上で吹きすさぶ。

風の音、雨のしぶき、更には稲妻の光までもが加わり、海はまさに地獄の様相を呈していた。




────そして、事件は起こった。
 ▼ 48 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:27:02 ID:iksKhmws [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ザパァン!!

高波が船を襲う。

刹那、バクフーンの天地がひっくり返ったのだ。



バクフーン(船が転覆する……!?)


甘かった。旅を、海を、自然を、全てを舐めていた。

この嵐は、甘い考えで島を出た自分に対する、天罰なのだろうか……。

でも、そうだとしても、グレイシアだけは守らないと────!!




ドボォン……!!
鈍い音を連れて、バクフーンはグレイシアを強く抱きしめたまま、海の中へ沈んだ。


――──どっちが上で、下か。
乱れ切った海流に翻弄されると、最早それすら分からなくなる。
脚をバタつかせるも、まるで無意味。

ゴポッ。気泡が一つ。ゴポゴポッ。気泡が二つ。
呼吸の限界が近づいてきた。

誰でもいい。僕らを救ってくれ、そう願ってしまう。
……肌に突き刺さるような冷たい感触も、底が見えない息苦しさも、意識と共にそれらは段々と薄れていく。

そして……バクフーンの、めのまえが まっくらに なった。
 ▼ 49 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:30:10 ID:iksKhmws [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ではまた後で更新しましょうぞ!
バクフーンとグレイシアのその末路や如何に!
 ▼ 50 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/09 20:45:02 ID:iksKhmws [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>44
誠に申し訳ないですが、訂正がございます

コータス「うむ。つい先程、その知らせが届いた。【楽園】探索プロジェクトのメンバーは、全員で6匹いたわけじゃが、その9匹のうち、6匹が旅の事故で死んだという。生き残った3匹が辛うじて帰還して、この情報を伝えてくれたのじゃ……」

の部分ですが、匹数について間違いがございました。


×【楽園】探索プロジェクトのメンバーは、全員で6匹いたわけじゃが

○【楽園】探索プロジェクトのメンバーは、全員で9匹いたわけじゃが

となります。
 ▼ 51 ワムラー@アゴのカセキ 17/08/09 22:37:35 ID:OVatnOrw NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 52 ートロトム@つららのプレート 17/08/10 20:39:55 ID:PRKeqseg [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「ん、んんっ……え……?」


グレイシアは目を覚ました。
暗くて、どんよりしてて、今にも壊れてしまいそうな、不安定な空間の中で。


グレイシア「ここ、どこなの……?」


グレイシアの疑問に答える者はいない。

彼女の声は静かに、闇の中へ融けていった。

そわそわと周囲を見廻しながら、暫し佇んでいたが、誰かが現れる様子もない。


仕方なく、グレイシアは歩き出した。

誰かと会うために。誰かと話すために。
 ▼ 53 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:41:34 ID:PRKeqseg [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……地面はぬかるんでいる。
ほぼ泥の上に立っていると言ってもいいだろう。


つと前方に視線を向けると、5メートルほど向こうに、黒い水が流れる大きな川があった。
その水面には小波一つすらなく、まるで眠っているかのように静かだ。


グレイシアは、その黒い川の上に小舟を見つけた。
更にそこで、影が二つ蠢いていることにも気づいた。


グレイシア「あっ、あの、すみませーん!!」


グレイシアの声はどうやら届いたようだ。
二つの影のうち、小さいほうがボソリと呟いた。


ヒトモシ「……ああ、浮かばれない魂がやってきたようですね」


それに反応して、大きいほうの影も唸るような低い声を出した。


ヨノワール「……仕事の時間か。よし、行くぞ……」


やがて、小舟はゆっくりと動き出し、グレイシアの目の前に止まった。
大きいほうのポケモンが彼女に向かって言った。


ヨノワール「我が名はヨノワール……現世と冥府の境目を迷いし魂を、あの世まで導く者なり」


グレイシア「……え」


ヒトモシ「オイラはヒトモシ。三途の川を渡る舟を漕ぐ係だ。……どうしたのお嬢さん? ボーッとしてないで、早く乗りなよ」


冥府、魂、あの世、三途の川────不穏な言葉を聞き、グレイシアはある予感を抱いた。
もしかして、私、死んだの……?
 ▼ 54 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:43:04 ID:PRKeqseg [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キャモー……キャモー……。

────声がする。
これは……キャモメの鳴き声だ。


僕は確か、海で溺れて……意識を失ったんだよな?
つまり、僕は死んだってことなんだよな?


何度も頭の中でその事実を確かめ、そして、僕はようやっとの思いで重たい瞼を持ち上げた。
全身が痺れ、頭が痛む。

待てよ……痛い?


おかしいな。
痛いって感覚があるってことは、僕はまだ生きてるってことなのか?


不思議な思いを感じながら、ふと前方を眺めた。


海が見える。空が見える。
雲一つ島一つ見当たらないその景色は、まるで青色が無限に続いているような────まさに壮観であった。
 ▼ 55 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:47:09 ID:PRKeqseg [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ぼーっとして眼の焦点が定まらない。
脳細胞が起きていないのは、火を見るより明らかである。


バクフーン「夢でも見てるのかな……」


?????「流石に夢ではないだろ」


バクフーン「そうか、これは夢じゃないのか……」


?????「ああ、そうだな」


バクフーン「……待って。今、僕と話してるのは……誰?」


?????「オマエ……案外、鈍い奴なんだな。……オマエは今、誰の上に立っていると思う?」


バクフーン「え……」
 ▼ 56 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:49:14 ID:PRKeqseg [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーンは足元を見た。
やっと気づく新事実。

僕は今、地面の上に立ってない……!!


眼に映るのは、テカテカ艶めく青色の皮膚。
バクフーンは今、巨大なポケモンの上にいたのである。


ホエルオー「オレの名はホエルオー。海難救助のエキスパートだ」


バクフーン「……! まさか、僕を助けてくれたのって……!!」


ホエルオー「おう、このオレよ。しかし昨晩は驚いたぞ、炎ポケモンのオマエさんがまさか海へ飛び込むとはな。たまたまオレが海底に沈むオマエラを助けたからいいものを」


ホエルオー「少しでも救助が遅れてりゃ、オマエもグレイシアも間違いなく逝ってた」


ホエルオーの言葉で不意に思い出す、グレイシアの存在。
シナプスが躍動し、昨日までの記憶が洪水のように溢れ出す。

感情を爆発させたバクフーンは、思わず叫んだ。


バクフーン「そうだ。グレイシアさん……グレイシアさんはどこに!?」
 ▼ 57 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:50:42 ID:PRKeqseg [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ホエルオー「そう急くな若僧。……彼女は今、俺の尾ヒレの方にいる」

バクフーン「……っ」

ホエルオーのその言葉を聞いた時には、バクフーンは既に思い切り駆け出していた。

心臓が自分よりも先に飛び出してしまいそうな緊張感を抱えながら、ホエルオーの尾ヒレの方へ着くと、そこには大きな鳥ポケモンがいた。



ペリッパー「おーや? アナータ、起きてたのデースか!」



鳥ポケモンはバクフーンを見ると、陽気な声を響かせて両翼を大きく広げた。

一瞬、呆気に取られたバクフーンは、数秒の沈黙を経た後、口をゆっくり開いた。


バクフーン「あ、貴方は……?」
 ▼ 58 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:51:42 ID:PRKeqseg [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ペリッパー「……ミーのこと知らないの? それはまた物珍しいデースね……。ミーは言わずと知れた『海上の奇跡』……その名も天才医師ペリッパーでースヨ!!」


バクフーン(言われても知らない)


ペリッパー「ところで、アナータに聞いておきたーいことがアールのですが?」


バクフーン「な、なんでしょうか」


ペリッパー「目を覚ました後、頭痛はありマースか?」


バクフーン「はぁ……多少は」


ペリッパー「ふぅむ……では、動悸、吐き気、眩暈、視力低下、胃痛、腰痛、食欲不振、手足の痺れ、イボ痔、キレ痔などは────」


バクフーン「そ、そんなことよりも! グレイシアさんは!!」
 ▼ 59 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:53:35 ID:PRKeqseg [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
妙なポケモンとの会話で、予定外の無駄な時間をとられてしまった。
早くグレイシアさんの顔が見たいのに────

下っ腹から上へ、上へ、と胃酸が湧き上がってるような焦燥感に囚われたバクフーンは、最早見境なく声を荒げる。


ペリッパーは「アナータの後遺症を確認してるダーケなのに……」と呟いた後、大きな翼を一点の方向へ向けた。

そこには、ひっそりと横たわるグレイシアの姿があった。



バクフーン「グ、グレイシアさん!!」

グレイシア「……スー、スー……」


グレイシアは息をしている。つまり、まだ生きているのだ。
だが、今の状況を決して朗報であると断ずることは出来ない。


グレイシアは規則的に胸を上下させ、静かに息をし続けていたが、その顔色は蒼白という表現には留まらない程に異常を来していた。


彼女は前よりも一回り縮んだように見えた。


それに加え、全身の色素がますます減って見える。


肌も唇も────何もかもが、薄くて、儚い。
少しでも触ると、はらはらと散ってしまいそうな状態だった。
 ▼ 60 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:54:48 ID:PRKeqseg [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ペリッパー「あまーり、良い状態とは言えまセーンね」


バクフーンの背後でペリッパーが呟いた。


良い状態ではないなんてこと、誰が見ても分かることだ!

バクフーンはそう言いそうになったが、ペリッパーは先程よりも冷静な口調で喋った。



ペリッパー「海へ入ったことによるダメージは完璧に治しまーした。ミー、何たって天才デースし? しかし、元々彼女は酷い病を患ってマーシたね」


バクフーン「酷い……病」


その事実を噛み締めるかのように、バクフーンは一文字一文字をなぞるようにして、ペリッパーの言葉を反復した。
 ▼ 61 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:55:37 ID:PRKeqseg [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ペリッパー「マグマボディ病……別名ヒードラン症候群。暑さに慣れていない氷ポケモンが、急に暑い場所で長期間過ごすと起こる病気デース」

ペリッパー「そもそも氷ポケモンは熱を内包しやすーい体質。故に、過剰な熱を浴び続けると、とんでもない量の熱エネルギーを体内に取り込んでしまーい、カラダがまるでマグマのように煮えたぎるのデース。そして……最期は、死に至る深刻なびょうきなのデースね……」



ペリッパーの言葉を聞いてると、グレイシアがまるで死刑宣告されたような気分になる。
バクフーンはココロの奥底にある全ての感情を吐露するように、口を開いた。



バクフーン「そ、そんな……グレイシアを、死なせたくない!! 彼女を治すには、僕は何をしたら……!!」
 ▼ 62 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 20:57:32 ID:PRKeqseg [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ペリッパー「……チーゴの実、オボンの実、幾つかの漢方薬……そして、『とけないこおり』をウマーい具合にブレンドするのデース。そうして出来た特別調合薬を飲ませれば問題解決でありマース」


バクフーン「じゃあ、材料さえ揃えば……!!」


希望の光が、絶望という名の厚い雲の合間から顔を覗かせたかのように思えた。
しかしその直後、ホエルオーがバリトンボイスを響かせながら喋り始めた。


ホエルオー「だが、現実はそう甘くない。生きることとは……薬のように、苦くて飲み込みにくいものなのだ」


バクフーン「え……?」


ペリッパー「実は、殆どの材料は揃ってるのデースね。漢方薬も木の実も、ミーの口の中にありマース。……しかし、唯一『とけないこおり』だけは持ってないのデースよ……」


ホエルオー「この『とけないこおり』というのがクセモノでな。かなり希少な物である上、それが何処にあるか知る者は少ない」


ペリッパー「勿論、ミーたちも『とけないこおり』が何処にあるのか知らないわけなのデース……」


バクフーン「そんな……」
 ▼ 63 タチ@2ごうしつのカギ 17/08/10 20:57:39 ID:S/gSK/Os NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
なんかスレタイ草なんだが
 ▼ 64 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 21:00:16 ID:PRKeqseg [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラとグレイシアの顔を見る。
彼女との思い出が、再び蘇り始めていた。


あれは、たった数日程度の出来事なのかもしれない。
だけど、あの時ほど、バクフーンは『生きてる』を実感したことはなかった。


もう一度彼女の話を聞きたい、もう一度彼女と話したい。
バクフーンは、大粒の涙を零しながら訴えた。


バクフーン「……死なせちゃダメだ。僕、何だってする覚悟だ……!! 絶対に、『とけないこおり』を見つけたいんだ……!!」


バクフーンの言葉を聞き、ホエルオーは目を閉じる。
そして、彼は、雄大で穏やかな海そのものであるかのように、静かに語った。


ホエルオー「……旅は道連れ世は情け、か。……良いだろう、大切な女を救う男の覚悟を見捨てる訳にはいかねぇ。ペリッパー、この男を……手伝うぞ」


ペリッパー「ミーはホエさんの指示に従うよ〜。へへっ、よろしーくね?」


バクフーン「……あ、ありがとうございます!!」





再び、運命の歯車が回り始める。



 ▼ 65 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/10 21:01:23 ID:PRKeqseg [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
本日の更新はここまで!
また後日、お会いしましょうぞ!
 ▼ 66 アームド@すごそうないし 17/08/10 22:25:56 ID:49WTVY.Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ぶつ森のジョニー思い出したw
 ▼ 67 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/11 15:20:22 ID:KD.gcA2U [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜三途の川〜

小舟が川を切り破るようにして静かに進む。
グレイシアは、ぎぃごぉと軋んだ音を出す櫓と、それを動かすヒトモシをボーッと見ながら言った。


グレイシア「私、このままあの世に行くんですね」


匙を泥沼の底にでも投げてしまったかのような不貞腐れた諦めが、彼女の心を支配する。

それを見たヨノワールは、慰めのつもりだろうか、明後日の方向を見ながら呟いた。



ヨノワール「正確に言うと、貴殿はまだ死んではおらん……命の危機にあることに変わりはないが。しかし、今のままの貴殿では、確実にあの世行き。現世には帰れんだろうな」


グレイシア「……げ、現世に帰れる手段があるんですか!?」


グレイシアは甲高い声で叫んだ。
対してヨノワールは、依然として冷静な口調で言った。


ヨノワール「貴殿は今、生と死の境目にいる。ヒトモシと我は、そんな中途半端な状態の魂を導くという役割を持っているのだ」


グレイシア「導く……」


ヨノワール「貴殿が現世に帰る方法を我々が教えるワケにはいかん。自分で考えろ……ただし、今の貴殿では決してその答えを見つけることは不可能だろうがな」

 ▼ 68 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/11 15:34:25 ID:KD.gcA2U [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨノワールはそれ以降、自分から喋ろうという意思を見せなくなった。


同じく、グレイシアの唇も微動だにしない。

空気が何か不純物を含んだかのように、重くなってくるのを感じた。

圧縮された沈黙……。
とても気まずかった。

グレイシアは、ヨノワールの言葉に隠された意味を何としてでも知ろうと、頭を働かせることにした。



グレイシア(今の私じゃ、現世には帰れない……それは、何で?)


やがて、沈殿しきったムードに耐え切れなくなったのか、ヒトモシが口を開き始める。


ヒトモシ「こんな重い雰囲気じゃ、折角の川渡りも楽しくないっすよぉ〜! アンタ、何かお話して欲しいなぁ〜!」


グレイシア「お、お話……?」
 ▼ 69 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/11 16:00:18 ID:KD.gcA2U [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒトモシは小さな子供のようなコロコロした笑顔を浮かべ、グレイシアを指差すように手を向けていた。


ヒトモシ「そうだなぁ〜……お話のジャンルは何でもいいっす! とにかく、面白い話をするっす!」


グレイシア「……」


突然の無茶ぶりに、グレイシアは些か呆気に取られていたが、暫くして何か思いついたのか、彼女は呼吸を整えた後、ゆったりとした口調で喋り始めた。




グレイシア「……これは、私自身の話です」

グレイシア「私は、年がら年中猛吹雪しか起きない、そんな特殊な気候の島に、住んでいました……」
 ▼ 70 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/11 16:06:59 ID:KD.gcA2U [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「私は、ワンパターンな日々が続くそんな故郷が、嫌で嫌で仕方がなかった……」






私は、未知の世界を見に行きたかった。

天から降り注ぐ太陽光、熱のこもった砂浜、泳ぐと心地いい海、南国にしかいないポケモンたち。
本で情報だけは分かっていても、実物を見たことは一度もない。


そうだ、いつか、旅に出よう。
周りは私の計画に猛反対するかもしれない。

……確かに、旅先で死んでしまったというポケモンの話は、これまで幾度も聞いてきた。
でも、それでも、私の好奇心は疼いて止まらない。


それに、寒い日はもうウンザリなんだ。
一回だけでもいいから、【暑い】という現象を、この身体で感じてみたい……。





グレイシア「そして私は、半ば家出同然のようにして、船で海に旅に出たのです……」

 ▼ 71 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/11 16:35:15 ID:KD.gcA2U [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「今思うと、あの時の私はあまりにも愚かでした」

グレイシア「旅に対して、十分な準備が出来てなかった。何より、覚悟が足りなかった」

グレイシア「あれは、そんな私への罰なのでしょうか。島から出て数日後……私の船は、想像の域を遥かに超える大嵐に巻き込まれたのです」



今さっきそこにあったかのように、はっきりと記憶に浮かび上がる恐怖の景色。

空にあったはずの星明りが暗雲によって隠され、やがて叩きつけるような風と雨が天から飛来する。
海は暴れ、波は猛り、船は惑う。


そして、神の所業の如く堆積された海水が、グレイシアの上に覆い被さってくるのだ……。

死んだ。間違いなく死んだ。

少なくとも、グレイシアはそう思った。




しかし……。


グレイシア「船は見事に沈みました。……でも、私は奇跡的に生き延びた。私は、ある島に漂流したのです……」


漂流した島。
そう、それこそがあの『アツイアツイアイランド』だった……。
 ▼ 72 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/11 17:06:30 ID:KD.gcA2U [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「私はその島で、ある殿方と出会いました。その方は────」



ドクン。




そこで、グレイシアの言葉は止まった。

……なんでだろう。


彼のことを考えると、息を忘れるくらい頭が一杯になる。

胸はしめつけられるように苦しくなる。

でもそれは心地良い苦しさ。

いくらでも耐えられる苦しさだ。



たった数日間しか一緒にいなかったのに、なんでこんな気持ちになるんだろう。
も、もしかして……


心の中にポッと灯がともる。
そう……彼女はようやっと、気づいたのだ。


────私はバクフーンさんに、恋をしている……。
 ▼ 73 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/11 17:07:55 ID:KD.gcA2U [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ひとまず更新はここまで。
 ▼ 74 かちう◆Xq21k6pIJA 17/08/11 17:49:49 ID:Btf/IIXI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 75 ックラー@とつげきチョッキ 17/08/12 08:36:42 ID:rQXdR7pY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 76 しー◆iTFigG3P7M 17/08/12 13:41:46 ID:zWREb0xg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
独特な設定と世界観が秀逸
支援
 ▼ 77 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 16:57:59 ID:Djx59vsY [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一方、バクフーン側。

ペリッパーとホエルオーの助けも借りつつ、彼は『とけないこおり』探しに奔走していた。

まず何よりも為すべきは『とけないこおり』の情報を得ること。
即ち聞き込み調査だった。



時には海にいる水ポケモンに……。


ドククラゲ「とけないこおり? うーん知らないねぇ」


バクフーン「そうですか……」


ドククラゲ「あぁ、でもこの近くに大きな島があるんだ。港には情報通のポケモンも集まってるし、そこに行けばもしくは……」


バクフーン「ホントですか!? その島はどちらに……」


ドククラゲ「この触手が指す方向だよ」


バクフーン(どの触手だよ……)
 ▼ 78 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 17:11:26 ID:Djx59vsY [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
時には港に出向き……。



ピカチュウ「とけないこおりの在り処、か……。ポワルンくん、君はどう思う?」

ポワルン「うーん、僕は知らないなぁ」

バクフーン「やはり知らないですか……」



ピカチュウ「そういえば、氷と言えば昔のことだが、リザードの尻尾の炎を使った氷のトリックがあってだね────」

ポワルン「はいはい、昔の自慢話はいいから。バクフーンさん……力になれなくてごめんね」

バクフーン「いえ、それはいいんですケド……」



ピカチュウ「この名探偵ピカチュウ様の話を遮るとは、ポワルンも良い度胸になってきたね……フン!」

ポワルン「もう……不貞腐れないでよピカチュウさん」



バクフーン(何だこのポケモンたちは……)
 ▼ 79 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 17:22:41 ID:Djx59vsY [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
時には大海原を航海するポケモンたちにも聞いた……。


キリキザン「『とけないこおり』のある場所か……耳に挟んだことはあるな」


バクフーン「ほ、ホントですか!?」



クズモー「おうおう、キリキザン様は聡明でいらっしゃるのだぞ!」

ズルッグ「キリキザン様に分からねぇことはねぇんだぞ!?」

ミミロップ「キリキザン様だいしゅき〜っ♪」



キリキザン「ええい、貴様ら少しは黙れないのかァ!!」



バクフーン(さっきから変なポケモンにしか会えてない気がする……)


キリキザン「まぁとにかく、俺の聞いた話では『とけないこおり』はここから北東にある『シバレル島』にあると聞く……。本当の情報かは判断しかねるがな……」


バクフーン「……!!」
 ▼ 80 ンゲラー@モーモーミルク 17/08/12 18:11:47 ID:vmNT5Tr. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援です
 ▼ 81 モリ@フーディナイト 17/08/12 19:22:46 ID:hnzqhetk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私怨
 ▼ 82 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 19:54:21 ID:Djx59vsY [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
紆余曲折を経て、バクフーンはやっと目当ての情報を手に入れることが出来た。

『とけないこおり』があるのは『シバレル島』……。

その情報をホエルオーが知ると、彼は相変わらずの重低音を響かせて言った。



ホエルオー「シバレル島か……全速力で行けば一日かからずに着く場所だ」

バクフーン「ホエルオーさん、島が何処にあるか知ってるんですか!?」


ホエルオー「んまぁ、そりゃあな。……いろいろな海を旅をしてきたから、それなりの知識はある」

バクフーン「すげぇ……!!」


決まり悪げに苦笑するホエルオーの顔には、明らかな照れがあった。
どこかこそばゆい様なそんな表情。

ペリッパーがそんな彼を見て、皮肉交じりに呟く。


ペリッパー「そりゃあホエさんは凄いポケモンに決まってるじゃナーイですか」


ホエルオー「あまりオレをからかうな……ほれ、目的地が決まったのなら早速出るぞ。目指すは……シバレル島だ!」
 ▼ 83 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 20:06:57 ID:Djx59vsY [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜三途の川〜


ヒトモシ「……おーい、アンタ……大丈夫っすか?」

ヒトモシの声が、夢の中にいるかのようにぼやけて聞こえる。

グレイシアは今、無意識のうちに涙をポロポロ溢していた。


グレイシア「……」



思えば、バクフーンというポケモンと自分の共通点は多い。

一つは、二匹とも変わった気候の島に住んでいるということ。
一つは、二匹とも島の殆どの住民から変わり者扱いされているということ。

そして、もう一つは……


二匹とも、外の世界に憧れを抱いているということだ……。


初めて会って、会話を交わしたその瞬間から、ある予感はあった。

私たちは、同じなんだ。

私たちは、初めて、お互いのキモチを理解しあえる大切なポケモンに出会えたのかもしれない。


そう思うと、彼女の中である感情がほとばしり始めた。

会いたい。会いたい。あの方に……もう一度会いたい……!!




グレイシア「私……生きたいっ……!!」
 ▼ 84 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/12 20:20:15 ID:Djx59vsY [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨノワール「……生きたい、か」


ヨノワールが突然口を開いた。

グレイシアはふと我に返り、涙や鼻水でぐしょぐしょになった顔を前脚で拭いた。


ヨノワール「誰かのために生きたい……そう思う感情こそ、現世に帰るのに最も必要なチケットなのだ。……後は『貴殿の運が良いか、悪いか』に掛かっている」


グレイシアは先程のヨノワールの言葉を思い出した。

========

ヨノワール「貴殿が現世に帰る方法を我々が教えるワケにはいかん。自分で考えろ……ただし、今の貴殿では決してその答えを見つけることは不可能だろうがな」

========

あの言葉の意味が、今ハッキリと分かった。
生きたいと思うキッカケを抱くこと。
それが何よりも重要なのだ……!



ヨノワール「三途の川はまだ暫く続く……。冥府の門に着きあの世に行くのが早いか、貴殿に幸運が訪れるのが早いか……。我々はただ、見守ることにしよう……」
 ▼ 85 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 12:08:17 ID:rjhstCNk [1/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──
────
──────
────────


バクフーン「フェックシュ!!」


突然、身体の芯まで貫く強烈な冷気が全身を覆った。

毛穴が一つ一つ萎縮し、魂までもが凍えるかのような寒さだ。

肺から熱い呼吸をする度、それは一瞬にして薄い霞となって、やがて消えゆく。
バクフーンにとって、これは初めての経験だった。

ふと、ホエルオーは動きを止め、じっと目を凝らし、そして独り言のように呟いた。


ホエルオー「あぁ、見えてきたな。あれがシバレル島だ……」

ペリッパー「こりゃ……ど、どうしようもなく寒いデースね……。ブルブルブル」


濃い霧の向こうに輪郭だけ見える巨大な島。

そうだ。あそこに『とけないこおり』があるのだ。

バクフーンは、自らの骨を異境の土に埋める覚悟を以て、ゆっくりと口を開いた。

バクフーン「行こう。グレイシアを……絶対に助けるんだ」
 ▼ 86 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 12:29:29 ID:rjhstCNk [2/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
案の定と言うべきか。

シバレル島は、まさに猛吹雪の真っ只中にあった。

ごうごうと唸り轟く大自然の叫喚。

白い砂漠と形容すべき雪原地帯。

空一面を支配する暴風雪は、あらゆる生命の余地を許さず、全てを断罪する程、荒れに荒れていた。

それらを眺めていたペリッパーが、いかにも不安げな表情を浮かべて口を開く。


ペリッパー「ホエさんは、海から出られないので、言うまでもなく島には入れまセーン。それに、ミーもここに留まって、グレイシアさんの看病をしなければなりまセーン……」

ペリッパー「それを踏まえると、島に入れるのはバクフーン。アナータだけになるのデース……」

ホエルオー「……本当にオマエだけで大丈夫か? こんな猛吹雪だ……油断すれば直ぐに命を落とすぞ」


彼らの言葉を聞いても、バクフーンは一切動じなかった。

彼は、悠然と首を縦に振った。


バクフーン「大丈夫です。絶対に、こおりを持ち帰ってきますから」
 ▼ 87 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 12:43:58 ID:rjhstCNk [3/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
旅の途中に寄った港で買った防寒具を装着し、バクフーンはとうとう島の中へ足を踏み入れた。


ホエルオー「絶対に、帰ってこいよ……バクフーン!!」

バクフーン「うん……!」


ホエルオーの激励を背負い、バクフーンは雪の上を歩き始める。

しかし、大自然の洗礼には容赦も無ければ慈悲も無い。

身体の底にまで浸透する冷気が、バクフーンを襲った。




────あぁ、痛い。痛い。痛い。


どうしてこうなってしまったんだろう。
どうしてここまで辛い思いをしなければならないんだろう。

そんなキモチが、心の片隅で体育座りをしている。

しかし、バクフーンはそれを無理矢理振り払うようにして、前進し続けた。



全ては、彼女のために────
 ▼ 88 ンバーン@おとどけもの 17/08/13 12:51:41 ID:Ol6s1oYE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今一番更新が楽しみなSS
 ▼ 89 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 12:53:15 ID:rjhstCNk [4/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから、どれくらい歩いたのだろう。

眼に映るのは雪、雪、雪だけだ。

『とけないこおり』の『と』の文字すら、見える気配はない。


バクフーン「本当に、『とけないこおり』なんて存在するのかよ……」

バクフーン(あぁ、駄目だ。弱気は良くない。良くないぞ……バクフーン!)


ワンフレームの諦観がココロの中を過る。

だが、バクフーンは尚も探索を続けた。

そんな彼の姿を、一匹のポケモンが見つめていたとも知らずに……。


ユキカブリ「あのポケモンは……」
 ▼ 90 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 13:04:31 ID:rjhstCNk [5/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン(……クソ、『とけないこおり』なんて全然見つからない。せめて、この島に住んでるポケモンにでも会えれば……)


動きを止めれば、寒さが全身を支配し、細胞を破壊してくる。

炎タイプであるバクフーンでも、この寒気は受け止めがたい環境であった。


バクフーン(誰か、いないのか……。この島に……ポケモンは……)


そんな彼の願いを、神は聞き届けてくれたのだろうか────

バクフーンの目の前に突如、ユキカブリの集団が現れたのである……。


ユキカブリ1「おい、そこのお前。止まれ」

バクフーン「え……」


しかし、その邂逅は、バクフーンにとって毒物にしか為り得ないものであった。


ユキカブリ2「お前、炎ポケモンだな? こんな島にやって来て何の用だ……。炎ポケモンはこの島に来ることは許されないのだ!」

ユキカブリ3「今すぐ、出ていけ!!」


バクフーン「……っ!?」
 ▼ 91 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 13:15:27 ID:rjhstCNk [6/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「ま、待ってください……。僕は、この島に『とけないこおり』を探しに来ていて────」


ユキカブリ3「『とけないこおり』だと!?」

ユキカブリ1「何故『とけないこおり』を欲しがるんだ……?」

ユキカブリ2「理由なんて知るか……。とにかく、アレを外部の者に渡すわけにはいかんだろ!」

ユキカブリ4「なんて怪しいポケモンだ……。しかも憎き炎ポケモンだぞ」


バクフーンの一言を火種にして、ユキカブリ達は爆発したかのように言葉を並べた。

そして、一匹のユキカブリが、バクフーンを軽蔑するかのような口調で言った。


ユキカブリ4「炎ポケモンよ。キサマに『とけないこおり』のヒトカケラすら渡すつもりはない。諦めて即刻島から出ろ。もし、そうしなければ……」


バクフーン「ど、どうしてもっ、『とけないこおり』が要るんだっ……!!」


ユキカブリ1「しつこい奴だなっ! もういい! 全員でこいつを仕留めるぞっ!!」

バクフーン「なっ……!?」



────ゆきなだれ!!!!
 ▼ 92 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 13:35:00 ID:rjhstCNk [7/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一旦休憩でありんす。
また夜辺り更新できれば幸い。
 ▼ 93 ィアルガ@でかいきんのたま 17/08/13 15:45:23 ID:3NDUoxKg NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 94 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 22:30:42 ID:rjhstCNk [8/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その時、地面がグラグラと揺れ始めた。

と、同時に、ユキカブリ達の足元から雪が一斉に躍り上がる。


大量の積雪は二,三度の弾みを取り、どっと天に伸びれば────次の瞬間には、反乱でも起こすかのようにバクフーンへ降りかかって行った。

その雪崩の凄まじさは、猛吹雪の勢いに勝るとも劣らない。


まるで隕星──まるで津波──


バクフーンは呆気なく、雪の大行進に飲まれてしまったのである……。


バクフーン「……っあ、は、ぁ……ぁ!」


呼吸ができない。

不用意に口を開こうとすれば体内に雪が入ってきてしまう。

そうすれば、間違いなく自分は死んでしまう……。





……どうすれば、いいのだ……。



 ▼ 95 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 22:59:54 ID:rjhstCNk [9/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ふと、頭の中を過ぎ去る複数の記憶。

ああ。

これは所謂、走馬灯というやつなのだろうか。


最初に思い出した記憶は、長老ブーバーンとの思い出だ。

今では口論ばかりのギクシャクした関係になってしまったが、昔は二匹笑い合いながら会話を交わしたこともあったんだっけ。

長老とは喧嘩別れのような最後になってしまったが、彼は自分にとって親と同等、いや、それ以上の存在なのかもしれない。




次に思い出したのは、マグカルゴと過ごした幸せな日々だ。

マグカルゴは自分にとって、初めての友だった。

『寒さに憧れる変わり者』と周りから揶揄され、いつも孤立してた自分に、唯一話しかけてきた信頼できる仲間……。

彼がいなければ、自分の生きる道は、今とは大きく変わっていたのかもしれない。



幾つもの映像と声が、シームレスで流れゆく。

そして、彼の頭の中で最後に浮かんだ記憶は……グレイシアとの、ある会話だった。



==========

バクフーン「ハハハ、グレイシアさんと話すのは楽しいなぁ……。僕の知らない知識がどんどん出てくるんだもの……」


グレイシア「私も貴方と話しててとても楽しいです」ニコッ

グレイシア「貴方みたいなポケモンと、出会えて良かった……///」ボソッ



バクフーン「……今、何か言った?」

グレイシア「あっ、いえ、何でもないんです! 何でも……」


バクフーン「……そういえば、グレイシアさんはどうして船で旅に出たの?」


グレイシア「私が、旅に出た理由ですか……?」

バクフーン「うん」


グレイシア「そうですね、私は……。……未知の世界を見に行きたかったんです。この世には、まだ私の知識にはない驚くべきことがたくさんあります。それを、探しに行きたかったんです……」
 ▼ 96 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 23:12:02 ID:rjhstCNk [10/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクフーン「……同じだ」

グレイシア「……え?」

バクフーン「僕も、いつか旅に出たいと思ってる。その理由は、グレイシアさんと同じだよ?」

グレイシア「……!」


バクフーン「未知の世界を知りたい。雪ってどんなものなんだろう。寒さって、どんなものなんだろう。僕も旅に出ることで、いろんな知識を得たいんだ」


グレイシア「クスッ……だったらいつか、一緒にいろんな場所をまわってみませんか? 一匹だけの旅って結構寂しいんです。でも、二匹で旅に出れれば────」


バクフーン「……」


グレイシア「……! あ、あの……変なこと言っちゃいましたね。ご、ごめんなさ────」

バクフーン「いや、確かにそうだね。二匹で旅に出れれば……絶対に楽しいに決まってるよね……!!」


==========




そうだ。

確か、そんな会話をしたはずだ。

……僕は、ここで死んじゃっていいのか?

暢気に走馬灯なんか見てる場合なのか?

違う。

違う。

生きなきゃ……生きなきゃ。

生きて、

彼女と一緒に……旅をするんだ!!
 ▼ 97 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 23:27:48 ID:rjhstCNk [11/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



バクフーン「うぉぉぉ……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


ユキカブリ達「な、何だ!?」


バクフーン「ブラストォ……バァァン!!」



刹那、真っ白な噴煙と水蒸気が天高く吹き上がる。

怒濤の如く林立するは、獣を想起させる炎柱。

バクフーンは今、猛々しく噴火する活火山と化していたのだ。
 ▼ 98 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/13 23:28:12 ID:rjhstCNk [12/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまで
明日の更新で最後かな……?
 ▼ 99 ントラー@めざめいし 17/08/14 10:18:57 ID:oQh2nyW. NGネーム登録 NGID登録 報告
熱い 支援
 ▼ 100 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 22:38:19 ID:.l.k/4yY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキカブリ3「ひ、ひぇぇ……」

ユキカブリ1「お、おい、そこ退けっ!」

ユキカブリ2「逃げる気かよテメェッ……!」



突然のバクフーンの反撃により、ユキカブリ達はすっかり統率を乱していた。

シバレル島には有り得ない熱気が、降り積もった雪を悉く溶かし、全ての視界を支配する濃霧を作り出す。

渦巻く焔の勢いは、止まることを知らない────


バクフーン「うぁぁぁ、ぁぁぁぁ……!!」


一方で、バクフーンも崖っぷちの精神状態にあった。

彼の意識は最早、一条の光すら見出だせない暗雲の真っ只中にあったのである。


紅の焔がユキカブリ達を追い払うのが先か、バクフーンが気絶するのが先か。


運命の女神が指し示すその道は────
 ▼ 101 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 23:08:20 ID:.l.k/4yY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────その、どちらでもなかった。




?????「……お前ら、この騒ぎは何事だ」


ユキカブリ2「あっ……ユキノオー様っ!?」


戸惑うユキカブリ達の前に現れたのは、彼等を束ねる首長、その名もユキノオーである。

ユキノオーの姿を見た瞬間、それまでバラバラだったユキカブリ達は、棒のように直立不動になった。


ユキカブリ1「ユキノオー様、これはそのっ」

ユキカブリが必死の形相で今の状況を説明しようとする。

しかし彼等の言葉は、ユキノオーの耳には一つとて届いていないようだった。


ユキノオー「……空気がイヤに暑苦しいな。……なるほど、あのバクフーンか」

ユキノオーはそう言うと、一切動揺することなく、バクフーンの方へ近づいた。


ユキノオー「おい、お前」


バクフーン「うぁぁ……」


ユキノオー「……お前は、何故こんな場所に来た? 何が目的だ?」
 ▼ 102 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 23:24:10 ID:.l.k/4yY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今や、霞のように薄くなった意識の中、ユキノオーの声が遥か遠くから微かに聞こえる。

バクフーンは、最後の力を振り絞るようにして口を開いた。


バクフーン「『とげないごおり』が、欲しい……」

ユキノオー「……」

バクフーン「グレイジアを……大切な彼女を……ま"も"りだいん"だ……!!」

ユキノオー「…………」


暫時の沈黙を経て、ついにバクフーンは倒れた。

全ての体力を使いきった。
これ以上、彼は動けない────


ユキカブリ4「今だっ……あの炎ポケモンを捕まえろっ!!」


ユキノオー「待ちな!!」

ユキカブリ2「えっ?」


ユキノオー「……『とけないこおり』をここに持ってこい。この男の覚悟……しかと受け取った!」
 ▼ 103 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 23:40:50 ID:.l.k/4yY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜シバレル島 海岸〜

ペリッパー「バクフーンさん、本当に大丈夫デショーか……」

ホエルオー「分からん…。今はただ、彼の無事を祈るのみだ……」

ペリッパー「……グレイシアさんの容態もここにきて悪化してきマーシた。このままデーハ……」


ホエルオー「……待て、向こうから誰か来るぞ」




ホエルオーの言葉を聞き、ペリッパーが島に目を向けた。

確かに、何者かがこちらに接近してくる。

しかも、複数。

一際巨大な影と、小さな影がいくつも蠢いていたのだ。



ペリッパー「あ、あれは……」

ホエルオー「……!!」


ユキノオー「……そこにいるホエルオーとペリッパー!! お前ら、このバクフーンの知り合いか!?」


巨大な影──もといユキノオーは、意識を失ったバクフーンを背負っている。

それに加え、ユキカブリ達は『とけないこおり』のカケラを大量に抱えていた。



あぁ、バクフーンは『とけないこおり』を持って帰ってきたのだ────

心の底から湧き上がる喜び。

止めどなく溢れる感涙。

ペリッパーとホエルオーは、顔をクシャクシャにしてバクフーンを迎えた。
 ▼ 104 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/14 23:50:59 ID:.l.k/4yY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日中に終わらなかった……。
明日こそ終わらせる!
 ▼ 105 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 08:38:12 ID:YD3lDlKA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だが、これで全てが丸く収まった訳ではない。

ユキノオーは背負っていたバクフーンを、ホエルオーの上に降ろす。

ペリッパーはバクフーンの状態を見て驚愕した。

全身に酷い凍傷。
体力の著しい低下。

今の彼は、グレイシアに劣らぬほどの重症であった。


ペリッパー「何としてでもこの二匹だけは救わネーバ……!! ミーはなんたって、天才医師なのですから!!」

だが、ペリッパーは諦めない。

バクフーンが見せてくれた奇跡。

それを無下にするようなことをするわけにはいかない────!!


ユキノオー「ユキカブリ、『とけないこおり』を持ってこのペリッパーを手伝ってやれ」

ユキカブリ「りょ、了解ッ!」

ペリッパー「バクフーンさんにまず発熱作用のある漢方薬を飲まさネーバ……、ユキカブリさん! アナータがたには薬の調合を頼みます! 混ぜる分量は────」




ホエルオー「……ユキノオー殿だったか。バクフーンをここまで運んできてくれたこと……感謝する」

ユキノオー「……礼は要らん。私はただ、このバクフーンという男の必死さに、応えてやろうと思っただけだ」
 ▼ 106 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 19:19:04 ID:E9SLFgf. [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
──
────
──────
────────

〜三途の川〜

ヨノワール「……時間切れ、か」

グレイシア「……」


グレイシア達の目の前に、巨大な黒い門が見える。

あれが、冥府の門。

あそこを潜れば、確実にあの世行き。

もう二度と、現世には戻れない。



「生きたい」
「バクフーンにもう一度会いたい」

ダイヤモンドよりも硬い意志は、確かにグレイシアの中にあったはずだ。

どうしてだ。どうしてだ。

どうして、現実はかくも理想を嘲笑おうとするのだろうか。



俯き絶望に浸るグレイシアの姿を見て、ヨノワールが今までになかった優しい声で彼女に語りかけた。

ヨノワール「さぁ、門の先へ行くぞ。なに、心配するな……あの世もそれなりに良い場所だから────」


小舟は無情にも前進し始める。

……その瞬間だった。




──シア……

────レイシア……!

──────グレイシア!!
 ▼ 107 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 19:49:48 ID:E9SLFgf. [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
自分の名を呼ぶ声が聞こえる。

懐かしい、優しい、頼もしい、そんな声。

グレイシアは声がする方向を見た。



────あぁ、バクフーンがいる……!



空中に浮かぶバクフーンの姿を見て、グレイシアは思わず泣き叫ぶ。

悲しいから叫んだのではない、嬉しいから叫んだのだ。

記憶の底の底から、じんわりと湧き出る夢のような喜び……。



だが、待て。
彼が今、ここにいる筈がない。

そうだ、あれは幻だ。

バクフーンに会いたいという思いが作り出した幻想に決まっている……!



バクフーン「幻じゃない。僕は、ここにいるよ」

グレイシア「え……」

バクフーンは満面の笑みを浮かべて、グレイシアの前脚を掴んだ。

すると不思議なことに、グレイシアの身体もまた、バクフーンと同じように空へ浮かび出したのである。


グレイシア(……バクフーンさん)

前脚にじわじわ伝わる暖かな感触。

とても、心地良い。



バクフーン「元の世界へ戻ったら、一緒に旅をしよう。一緒にいろんなものを見に行こう。そうだ、グレイシアさんの故郷もいつか見てみたいな」

バクフーン「やりたいことは……たくさんあるんだ」



バクフーン「じゃあ、帰ろ?」ニコッ

グレイシア「はい……」ニコッ
 ▼ 108 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 19:58:13 ID:E9SLFgf. [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
バクフーンとグレイシアは、徐々に天へと昇り──やがて、霧となって消えた。

ヨノワールとヒトモシはその光景を、ただ呆然と見つめていた。


ヒトモシ「行っちゃいましたねぇ……」

ヨノワール「……あぁ、そうだな」


ヒトモシ「あの世に行く直前の魂は……いつも嘆き悲しみ、それは見てられないもんがありましたけど……」

ヒトモシ「たまにはこういう奇跡も起きるものなんスねぇ……」




ヨノワール「……」

ヒトモシ「……ヨノワールさん、もしかして笑ってます?」

ヨノワール「……気のせいだろ」



ヨノワール「さぁ、仕事を続けるぞヒトモシ。迷子の魂は、まだまだたくさんあるんだ……」
 ▼ 109 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 20:11:33 ID:E9SLFgf. [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
……眩しい。

眼を閉じていても分かる。

太陽から放たれる限りない光。


私は、そんな光を感じながら、久しぶりに目覚めた。



バクフーン「……おはよう、グレイシアさん」

私の前脚をギュッと強く握るバクフーンさんが、すぐ横にいる。

グレイシア「ただいまです……バクフーンさん」



ペリッパー「おぉ、グレイシアさん、ようやく目を覚ましたんデースね! 良かっ────」

ホエルオー「ペリッパー。今は彼女と彼、二匹だけの時間だ。……今だけは口を挟んじゃいかん」

ペリッパー「……!」




バクフーンとグレイシア。

二匹はお互いそれ以上何も言わず、ただただ見つめ合い────そして、静かに額を合わせた。

伝わる気持ちの良い冷たさ。
伝わる気持ちの良い暖かさ。


バクフーンは眼を瞑り、言った。


バクフーン「じゃあ、これから何処に行こうか────」
 ▼ 110 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 20:33:20 ID:E9SLFgf. [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
ー10年後ー

〜シュンカシュートウ島〜


イーブイ「わぁぁ……雪だぁ!」

バクフーン「こらこら、イーブイ! 無闇に外に出ちゃいかん!」

イーブイ「うひゃあ、つ、冷たいっ」

グレイシア「もう……イーブイったら、おてんばなんだから」

バクフーン「しかし、もう冬の季節か。時が過ぎるのは早いなぁ……」



マグカルゴ「おーい! バク君!!」

イーブイ「あ、マグカルゴおじちゃん!」

マグカルゴ「おー、元気だったかイーブイ?」

ブーバーン「イーブイちゃん! ブーバーンお爺ちゃまもいましゅよー♪」

バクフーン「何だ、みんな来てたんだ」

ブーバーン「何だ? 来ちゃ悪いか?」

バクフーン「フフ、そうは言わないけどさ」



ブーバーン「数年前……お前が【楽園】を見つけたと言って、アツイアツイアイランドに帰って来た時は驚いたが……。確かにこの島は素晴らしいところだ」

マグカルゴ「ホエルオーさんとペリッパーさんにも手伝ってもらって、島のみんながこの島に移住したのがまだ昨日のことのようだよ」


ブーバーン「しかし本当に驚いたのは、バクフーンがこんなベッピンのグレイシアと子供をこさえていたという事実だ……! 全く、この世は何が起きるか分かったもんじゃないな……」

グレイシア「……えへへ///」

バクフーン「ハハハハ……」
 ▼ 111 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 20:54:06 ID:E9SLFgf. [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
今、僕たちは「シュンカシュウートウ島」という場所に住んでいる。

長い旅を経て、ようやっと見つけた、僕たちにとって理想郷と呼べる地だ。



────この島には、四季と呼ばれる現象がある。


四季の最大の特徴と言えば、何と言っても一年のうちに【寒い日】と【暑い日】の両方が存在するということ。


暑い日が終わると寒い日が訪れ、
寒い日が終わると暑い日が訪れる。


氷ポケモンと炎ポケモンが共に住むことが出来るそこは、まさに【楽園】だったのだ。




当初、アツイアツイアイランドからの移住の際、

シュンカシュートウ島には【寒い日】があるということに対し、渋い顔を見せた炎ポケモンもいたが、今では不満を言う者は一匹もいない。

それに加え、氷ポケモンと共同生活を営むうちに、彼等の心に根付く氷ポケモンへの偏見も見事に消え去ったのだ。





僕は気づいた。

そうか、未知とは恐怖なのだと。

アツイアツイアイランドの住民は、氷ポケモンのことを、寒さのことを何も知らなかった。

だから彼等は、それらが怖くて仕方がなかったのだ。






シュンカシュートウ島では今日も、多種多様なタイプのポケモンが、助け合いながら暮らしを営んでいる。


暑い日だけの生活なんてつまらない。

寒い日だけの生活なんてつまらない。


その両方があるからこそ、僕たちは生きることの輝きを知ることが出来るのだ────
 ▼ 112 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 20:54:29 ID:E9SLFgf. [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


お し ま い

 ▼ 113 機関銃◆/RChzaFlUA 17/08/15 21:01:58 ID:E9SLFgf. [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
以上で物語は終わりです。

この作品は暑い日/寒い日の企画に提出されます。

今企画には、私の作品の他にもたくさんの素晴らしい作品が提出されていますので、下のURLから読んでいただければ幸いでございます。

http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=633896#top
 ▼ 114 ッサム@おうごんのみ 17/08/15 21:02:23 ID:573cRD66 NGネーム登録 NGID登録 報告
気持ちよく読めた
乙!
 ▼ 115 ネコ@はかせのてがみ 17/08/15 21:15:42 ID:9mEjR4c6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オチが綺麗……
乙です
 ▼ 116 ャワーズ@ナモのみ 17/08/15 21:45:10 ID:H/k49V2U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
素晴らしかった……
乙です
 ▼ 117 ジョッチ@しめったいわ 17/08/15 22:04:37 ID:T.VqG116 NGネーム登録 NGID登録 報告
うおおおお
乙でした!
 ▼ 118 ーシャン@エスパーZ 17/08/15 22:07:53 ID:bZ4otGnM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
すんごく綺麗なお話でした
 ▼ 119 黒の災い◆N/pP1Xva6I 17/08/16 11:37:03 ID:KSGCBBxQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とても良かったです!
乙です。
 ▼ 120 ッツー@ひこうのジュエル 17/08/20 08:36:11 ID:DBF0dmms NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いまさらだけど読みました、良かったです
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=649572
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