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ミヅキ「マツリカさんのヒモになりたすぎて困る」 マオ「ヒモ?」

 ▼ 1 退宣言 ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 22:55:53 ID:ox9ApJHU [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここは強者が集うポニ島はバトルツリー、その近辺にあるカフェテリア。
一見するとただのカフェですけれども、バトルに疲れた強者たちがゆったり休むだけに十分な広さのホールに、充実したメニューが備わっていてなかなか繁盛しています。そんなお店に、バトルを終えたとおぼしきトレーナーたちが二人……。


「っかぁ〜〜〜マジしんどい! バトルとかもう引退する!」

「ミヅキ、あそこ空いてるよ♪ なに飲む?」


一人はボブカットの髪型で帽子をかぶったキュートな女の子。もう一人は長い後ろ髪を二房にきゅっと結わえたフレッシュな女の子。
にぎわうお店の中で空白席を見つけた彼女たちは、一人はとぼとぼと、もう一人は軽い足取りで席に向かうのでした。


「今日も戦っちゃった……。私この年でバトルジャンキーになっちゃったよ……しくしく」

「おにーさん、モーモーミルク1つ、ミックスオレのハーフミルク1つ、あとアマサダ2つお願いしまーっす!」


他のお客にも応対する中で、カウンターの向こうにいる店員が明るく返事をしました。何人かの店員さんはみんな忙しそうですけれど、どこか楽し気な表情でドリンクや料理を作っているようです。
 ▼ 2 ーマネポケモン説 ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 22:57:27 ID:ox9ApJHU [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「私の手は血にまみれすぎている……。飢えた獣から人の道に戻るには、もう引退するしか……ってマオ!」

「ん?」

「他人の分までノータイムで注文するって、勇気ありすぎ!」

「えっ、ダメだった? マーマネは……いないかぁ。ミヅキが他のメニューにするなら、あたしが責任もって食べるから!」

「マーくんはマルノームかなにか? あの年でメタボ予備軍なんだからかわいそうだよ」

「ミヅキの方こそマーマネに失礼だよ。まあとにかく、疲れたんならお腹においしいもの入れてゆっくり休も♪」


にぱっと笑うマオの表情は、可憐な花が咲いたよう。一方で、ミヅキは力が抜ける心地でした。
わざわざ「中毒【ジャンキー】」とか「引退」という言葉を使ったのですが、相手はそうは真剣に受け止めてくれないようです。構ってほしくて過激な言葉を使っていたので、真剣に受け止められなくてもショックは小さくても、やっぱり傷つくミヅキでした。
 ▼ 3 しくて申し訳ない ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 22:59:34 ID:ox9ApJHU [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
注文したドリンクが届きました。マオはモーモーミルク、ミヅキはモーモーミルクとミックスオレが50-50でブレンドされたハーフミルクです。
ミックスオレを更にミックスしたこのメニューは、このカフェで密かな人気メニューでした。

「……で、ミヅキさ。引退するって本気?」


ミヅキの憶測に反して、マオは訝しげながらも、彼女の悩みに向き合ってくれるようでした。
ミヅキは、思わず感動してしまいました。同時に、構われたがってなんとなく投げた言葉に真剣に向き合ってくれたのが申し訳なくて、罪悪感にも苛まれました。


「マオさぁ」

「うん」

「あんた、ほんっっっっっっといい子だよね」

「そういうのいいから。本気なの? 本気じゃないの?」


モーモーミルクをストローで吸いながら、マオの瞳はミヅキをしっかり見据えていました。ミヅキは、少し怖い気持ちになりましたが、本音を言いました。


「……ほんの、少しだけ本気だったけど……どちらかというと、本気じゃない。1割の、半分くらい、本気だった」

「…………」


沈黙。普段は明るいマオが言葉を選んで逡巡しているのを見ながら、居たたまれなくなったミヅキは手元のハーフミルクを飲むしかありませんでした。
 ▼ 4 位の問題 ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 23:03:17 ID:ox9ApJHU [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……ねぇ、ミヅキ」

「……うん」

「一割の半分って、『五分』で合ってるよね?」

「……はぁぁぁぁ!?」


五分。5パーセント。一割の半分。
裏表の少ないマオの性格ですから、間違いなく天然で、微妙な間を置いた末にこの言葉を口にしたのだろうとミヅキは思いました。そして、マオが生み出した重苦しい空気に悩んだ1分前の自分を殴り飛ばしたくなりました。
先にマオを悩ませたのはミヅキなのですが、そんなことは頭からとっくに抜け落ちています。


「……こないだ、ポケベースの実況で打率が何割何分何厘、って言ってたからそれで合ってるはず」

「あ、そうなんだ♪ まあまあ、ミヅキだってそういうの考えることくらいあるよね。うん、ミヅキすごくがんばってるし、ちょっとくらい休みたくなるのも当たり前だよ!」

「あんたは私の彼氏かよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」


あんたは私の彼氏かよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! と思ったミヅキでしたが、うっかりこらえきれずに思いがそのまま飛び出してしまったのでした。
 ▼ 5 ツベイ@ネコブのみ 18/09/18 23:03:41 ID:d1igjki2 NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 6 恥心 ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 23:05:44 ID:ox9ApJHU [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「バトルに付き合ってくれて一緒にカフェ入ってバッチリな注文して悩み相談してポジティブな気持ちにさせてくれるとか、あんた私の彼氏かよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

「え、ミヅキって彼氏いたっけ?」

「いたらこんなことマオに言ってない〜〜〜〜〜〜! 彼氏に『バトルしんどい』つって慰めてもらう〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」


繁盛している店内ですが、大きな声はそれでも目立ちます。


「お客様、はしゃいでいただけるのは構いませんが、ドリンクがこぼさないようお気をつけください。……こちら、注文のアマサダです」


注文していたアマサダを持ってきたお姉さんに柔らかく注意を受け、ミヅキはとても恥ずかしい気持ちになりました。
 ▼ 7 候補 ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 23:09:44 ID:ox9ApJHU [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「彼氏じゃないけどさ、私マジで恋人欲しいの。キスとかしたいわけじゃなくて、傍にいてほしいときに近くにいてくれていっつも私のこと考えてくれてて辛いときは私を支えてくれる人がいい」

「そういう表現だと、ひたすら都合のいい人だね! 家族や友達は?」

「ママは好きだけど、親子だから恋人と比べても良し悪しだしー。友達も大事だけど、いつも私のこと考えさせるのは悪いじゃん。……ってか私のこといつも考えてる友達って絶対私のこと狙ってるし! 嬉しいのとヒくので半々だよ」

「恋人かー、確かにいたら楽しそう〜」

「実際にどうなるかは未経験だから知らないけどさ。欲しいものは欲しい……私は欲望の化身……」


気分が乱高下している向かい側の友人を見て、マオはなにかを考えながらアマサダを口に運びます。
そして、言いました。


「ねえ、あたしじゃダメ?」


マオは、アマサダをはむ、と咥えてミヅキの表情を覗き込んできます。その顔を見て、ミヅキは素直にかわいいな、と思うのでした。
 ▼ 8 ノムー@アイテムドロップ 18/09/18 23:10:39 ID:Kunkijew NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
セリフに
ミヅキ「なんたらかんたら」みたいに名前入れた方が良いと思いますよ
 ▼ 9 ロスター@ズアのみ 18/09/18 23:12:39 ID:LaJgoOXc NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
見てます
 ▼ 10 メ人間 ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 23:13:31 ID:ox9ApJHU [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミヅキもマオにつられてアマサダを齧りながら、マオの問いかけに応えました。


「マジメに考えると、マオは優良物件だよねー。かわいいし、料理できるし、スタイルいいし、バトルできるし、キャプテンで面倒見もいいし、優しいし私の彼氏っぽいし」

「わー高評価♪」

「でも、マオじゃダメなの。私が欲しい恋人はね、私がバトルで疲れてなんにもしたくなくなって10年くらい経っても、美味しいもの食べさせてくれるし遊びに連れてってくれるんだ。マオだと、あと7,8年待たないと遊ぶお金稼げなさそうだもん」

「あたし、ミヅキには死ぬまでお金渡さないようにするね」

「いや、お金って大事じゃん……。私たちって子どもだし、あそこで博士たちが食べてるようなZミックスパフェとか食べるのも躊躇しちゃう。……なんなら、ドリンク+マラサダだけでも『どちらか一つじゃないから』ってつまんない贅沢感じてるし」


視線の先では、ククイ博士は髪型のおかしな別の博士と談笑しながら山盛りのパフェを食べていました。
私のアマサダも美味しいからいいもん、と思うミヅキでしたが、この甘さも、あと数分で食べきってお別れだと思うと物悲しくなるのでした。

 ▼ 11 前のいい大人 ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 23:18:41 ID:ox9ApJHU [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「聞こえたぜ、ミヅキ。君には色んなことで世話になってるし、今日は一品くらい奢ってやるよ」


パフェをテーブルに置いたまま、ククイ博士が声をかけてきました。
肌に直接白衣をまとう涼しげな姿に、ミヅキはいつも彼が風邪を引かないかが心配でした。実際は、アローラの陽気のお陰で病気知らずな博士でしたが、まだまだ出会って月日の浅い彼女にはそれを知る由もありません。


「はかせー。チャンピオンのボーナスってことで、一品といわず百品くらい奢ってくださいよぅ」

「全部のメニュー5つずつくらい食べることになるよ?」


ククイ博士が、はっはっはと声を上げます。マオのツッコミに笑ったわけではなく、ミヅキの言葉に笑ったようです。


「こういう食べ物も、自分の力で手に入れたお金を使って食べるから美味しいのさ。近頃はレンタルバトルも流行っているけど、なんだかんだ自分の育てたポケモンたちでバトルに勝つと楽しいだろ? それと同じだよ」

「あーん正論でむかつくよぅ。マオ、なんか言い返して!」

「博士、それテイクアウトの注文でも大丈夫ですか?」

「ちくしょー! やっぱしマオじゃ彼氏は無理だー!」
 ▼ 12 キメノコ@ふしぎのプレート 18/09/18 23:22:21 ID:Dd4E6viM NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 13 トルファクトリー ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 23:26:19 ID:ox9ApJHU [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「レンタルバトルですか。懐かしいですね」


会話に混ざってきたのは、スーツが素敵な長髪の女性でした。顔つきは幼さが残っていますが、すらりと伸びる両手両足を包んだ長袖の黒がぴし、と決まっています。
ミヅキは、リラが急に声を挟んできたので、もしかしてずっと話に混ざりたかったのだろうか、なんて考えました。だって、カウンターの席に一人で座っていた彼女はさみしそうでしたから。


「リラさん。レンタルバトルに思い出があるの?」


マオがリラの声に応じます。いきなり割り込んできたリラに対応できるマオのコミュニケーション力に、ミヅキは舌を巻く思いでした。


「ええ、私の友人に………………」

「友人に?」

「……あれ? 友人が、そういった、レンタルされたポケモンだけの…………す、すみません」


言葉を淀ませたリラは、こめかみに手を当てて考えるような仕草を見せます。そのポーズに、頭痛でも起こしたと思ったのでしょうか、心配したククイ博士が声をかけました。


「どうかなされましたか? どこか、具合が……?」
 ▼ 14 前のいい子ども ◆Bt64IWMOO2 18/09/18 23:34:39 ID:ox9ApJHU [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一体なにが彼女に起きたのでしょう。博士とマオが気にしているところに、ミヅキが言いました。


「あ、大丈夫大丈夫。リラさん、今までのもろもろの事件や事情のせいでたまに記憶が"こんだく"しちゃうだけだから」

「それ重すぎるし、ミヅキは軽すぎる!」

「いきなりのヘビーボンバーにびっくりだぜ!」


驚いているマオたちにどう説明するか、リラが迷っている間にカフェのお姉さんがマラサダセット(アマ・カラ・シブ・ニガ・スッパサダが一つずつ提供されるメニューです)を持ってきてくれました。
これは、ミヅキがさりげなく注文していたものでもちろん博士の奢りです。
注文したときは「全部食べてやる!」と意気込んでいたミヅキでしたが、5つのマラサダを目にすると厚い脂肪を急に意識してしまいます。なので、気前のいいふりをして三人にもマラサダを分けながら話を続けました。
 ▼ 15 リムー@バシャーモナイト 18/09/19 06:14:55 ID:U3JgD8Sk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 16 ティアス@こだわりメガネ 18/09/19 18:32:21 ID:LON6pw5E NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
なんか良い、支援
 ▼ 17 えた100まんえん ◆Bt64IWMOO2 18/09/19 23:04:23 ID:qzxcnXes [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「博士! 正直なところ、恋人と過ごすうえでお金はめちゃくちゃ大事だと思うんですけどいかがでしょうか!」

「そりゃあ、二人で暮らすことを考えたら先立つものがないとなー。研究するにもお金は必要だ」

「でも博士、ミヅキは大人じゃないのにお金が欲しいっていうんですよ! それも、自分が何もしないで遊びたいからって!」

「そりゃよくないな。……ま、ミヅキがチャンピオンとしてがんばっている分はしっかり換算して親御さんに預けてあるから。将来遊びたくなったときに使いなさい」

「私は今を生きたいんですぅ〜! もー! リラさんに養ってもらうー!」

「はいはい」


ミヅキに泣きつかれながら、リラは、彼女にUB捕獲を助けてもらったときのことを思い出していました。
リラは、彼女に渡した多額の報酬が何に使われたのかを無性に知りたくなりましたが、聞けば後悔しそうな答えが返ってくる予感をひしひしと感じたので質問するのはやめました。
 ▼ 18 ャプテンの自己理解 ◆Bt64IWMOO2 18/09/19 23:08:54 ID:qzxcnXes [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そういえば、キャプテンってどのくらいお給料もらえるの? カキなんかバイトしてたよね」

「うん? ああ、試練の準備とか、必要な分はライチさんからもらえるけどお給料とかはないよ!」

「……マジ?」

「まじ」


意外な返答に、ミヅキは目から鱗が落ちる気持ちでした。自分の目から落ちる鱗はハート型であってほしいな、と彼女は思いました。
それに対して、博士が手を横に振りながら訂正を加えました。


「おいおい、子どもだからって報酬を支払わないなんてことはないぜ。年齢の問題があるし、マオたちが大人になった後にちゃんと還元される決まりだよ」

「あれ、そうだったの?」

「……マオ、キャプテンになる前に受けた説明を覚えているかい?」


首をかしげて苦笑しながら訊ねる博士に、マオはちょっぴりたじたじです。
少しの間考えこむふりをしてから、マオは元気よく言いました。


「えーと……ごめんなさいっ! 忘れてましたーっ」


マオは自分の頭をぽこっと叩いて、舌を出して笑っています。
ミヅキは、こいつ自分の可愛さを理解してやがる、と思いました。
 ▼ 19 板娘 ◆Bt64IWMOO2 18/09/19 23:16:59 ID:qzxcnXes [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ですが、カキくんは留学の費用に悩んでいるんですよね? 報酬の前借りは認められないの?」


二人のやり取りにリラが口を挟みました。アローラ地方の風習には詳しくない彼女でしたが、バトルツリーでしばしば顔を合わせる少年の身の上がちょっとだけ気になっていたみたいです。
今度は博士が先んじて疑問に答えます。


「報酬金額は、そう大きくないんですよ。常に島巡りのチャレンジャーがいるわけでもないですから、必然的に仕事をする場面も多くないわけで」

「なるほど。責任が発生する機会が少ない代わりですか。この地方のキャプテンは年齢制限もありましたよね? 子どもが仕事を任されるには、それをカバーする体制が必要なわけですね」

「あとねあとね、キャプテンやってると色んな人たちに顔を覚えてもらえるの♪ あたしなんか家が食堂やってるし、カキの家も牧場でしょ?」 

「……家業の宣伝になるってこと?」


リラの合いの手に、マオは元気よく頷きました。
 ▼ 20 っかり娘 ◆Bt64IWMOO2 18/09/19 23:24:32 ID:qzxcnXes [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「キャプテンはお金にならないけど、あたしたちが頑張ればそれだけ家も助かるんだってお父さんたちが褒めてくれるんだ♪ だからね、あたしキャプテンがんばらなきゃなーって思うの!」

「へえ。マオちゃんはしっかりしていますね」

「それほどでもー♪」


えへへ、と笑って照れるマオに、リラも博士もつられて微笑みました。三人の周りには和やかな雰囲気が出ています。


「そういえば、イリマ――ああ、メレメレ島のキャプテンなんですけどね」

「メレメレ……ククイさんの住んでおられる島ですよね」

「ええ。彼も、キャプテンになってから研究者や教育者たちに会える機会が増えたというんで喜んでるんですよ。……ま、僕という研究者はいつでもだれでもウェルカムだけどな!」


談笑する三人を見ながら、独りだけが何か考えている風でした。
 ▼ 21 はまだシンデレラさ ◆Bt64IWMOO2 18/09/19 23:33:01 ID:qzxcnXes [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あ……あの〜、ちょっといい?」


三人の会話を聞いていたミヅキは、絞り出すように言葉を紡ぎました。


「えっと、今の話だとさ…………言い方悪いけど、マオたち、コネや営業のためにキャプテンやってるってこと……?」

「そういうメリットがあるということさ」


博士の答えは迷いがありませんでした。


「大人の階段のぼる【しりたくなかったしんじつ】……!」


打ちひしがれているミヅキを横目に、博士は席を立ちました。
元々、パフェと話し相手から離れてミヅキたちの近くに来ていたわけです。話している内にパフェが食べかけだったことに気が付いて、元の席に戻ろうと思ったのでした。


「マオ。注文したいってのはどれだい?」

「これです。アマサダファミリーセット♪」


注文を聞くと、博士はその分のお金を置いて離れた席に戻っていきました。

 ▼ 22  ◆Bt64IWMOO2 18/09/19 23:41:42 ID:qzxcnXes [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「それで、どうしてお金の話になったんでしたっけ?」


四人が三人になってから、リラが話を続けました。博士と違って、彼女たちの手にはまだマラサダが残っています。


「ああ、ミヅキが恋人はお金をくれる人がいいって言うから……。あたしが立候補してみたら、いい感じだったけど『マオはまだお金稼げないからダメ』って言われたんです! ひどくないですか!?」

「えぇ? 本当にそんなひどいことを?」


手を口に当てて驚くリラに対し、ミヅキはうなだれ、力なく首を振りました。


「いや、マオは下手にお金稼ぐよりずっと凄いことしてるよ……。マオほんとやばい……心から尊敬する……」


そういうミヅキの様子は未だに打ちひしがれた……いえいえ、打ちのめされた様子です。
彼女を見て、何を考えたのでしょう。リラはにこやかに微笑みながら、ミヅキに問いかけました。


「ミヅキさん。私はどうですか?」


リラは片手を頬に添え、小首をかしげたようなポーズでミヅキを見つめていました。
 ▼ 23 手に花 ◆Bt64IWMOO2 18/09/19 23:48:33 ID:qzxcnXes [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
虚を突かれたミヅキは、空耳かと思って顔を上げました。リラは続けます。


「さっき『養って!』って言ってたでしょ? 私、どう?」


自分を試すような流し目に、ミヅキは不意に胸が高鳴りかけました。
かろうじて高鳴らずに済んだのは、彼女の口元についたスッパサダの黄色いソースが目についたお陰です。ソースがなければ、危ないところでした。


「え、これモテ期? やだ……私、私……」


頬を両手で覆ってわざとらしく身をくねらせるミヅキの姿に、マオは正直うっとうしいという気持ちを禁じえませんでした。リラも、自分の言葉に後悔しかけているところでした。


顔を上げ、きょとんとした目をしたミヅキにリラは続けます。

「養ってほしいんでしょう? 私、どう?」


自分を試すような流し目に、ミヅキは不意に胸が高鳴りかけました。高鳴らずに済んだのは、彼女の口元についたスッパサダの黄色いソースが目についたお陰です。ソースがなければ、危ないところでした。


「え、これモテ期? やだ……私、私……」


頬を両手で覆ってわざとらしく身をくねらせるミヅキの姿に、マオは正直うっとうしいという気持ちを禁じえませんでした。リラもまた、自分の不用意な言葉に後悔しかけているところでした。

 ▼ 24 ータス@マグマスーツ 18/09/19 23:56:43 ID:qzxcnXes [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そうだなぁ……。リラさん、きれいで、バトル強くて、ポケモンとすごく仲良しで、正義感もあってかっこいいけど……」


ミヅキの口からはリラへの褒め言葉が次々と出てきます。マオはなんでか不機嫌になっている自分がいることに気が付きました。


「そんなこんなでリラさんのこと好きだけど、ごめんなさい! 恋人は考えらんないですっ」

「あら、残念」


大げさに頭を下げるミヅキに、笑って返すリラ。マオだけが「どうしてー!?」と反対の声を上げました。


「どこがダメなのー? リラさんは大人だし、お仕事も……なにしてるんでしたっけ?」

「警察です」

「でもでも、アローラじゃないんですよね。どこの地方のおまわりさんなんですか?」


マオの純粋な質問に、リラの事情を知っているミヅキはどこまで彼女が話すのか、とても気になりました。
 ▼ 25 イドン@カメックスナイト 18/09/20 23:29:57 ID:HrOsPmJY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 26 ルフーン@しんかのきせき 18/09/21 07:50:58 ID:7Kt6JQBs NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 27 人のおまわりさん ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 18:47:52 ID:.KEEesow [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ごめんなさい。秘密を守るのも仕事ということで、ご容赦ください♪」


閉じた口元に人差し指を被せて「ナイショ」の仕草を見せるリラ。そのいたずらっぽい表情に、マオはなぜだか動悸が早まるのを自覚しました。
どきどきする自分がいることが気恥ずかしくなって、マオはミヅキに話題を向けます。


「と、とにかく! リラさんならミヅキの言うお金とかは大丈夫なんじゃないの? それに、ほら……リラさん、かっこいいし……」

「んーーー、リラさんは〜〜〜……」


彼女の立場をおもんぱかって、少し言葉を濁すミヅキ。先ほどはついついヘビーボンバーをかましてしまった彼女ですけれど、言っていいことと悪いことの区別だって多少はついています。


「……多分、みんなを守るために色々な場所に行って、家に帰る前にまた別の場所へ……って感じなんじゃないですか? すごく仕事できる人だし、地方を跨いで活躍してますよね?」

「それも、秘密です♪」 


リラはマオにしたのと同じように、ミヅキに対してあの仕草をしてみせます。それを見たマオは、この人、自分の可愛さを理解しているなと思いました。
 ▼ 28 海賊ですか・・・ ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 18:54:10 ID:.KEEesow [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「今の質問、否定も肯定もできないけれど……。ミヅキさんとしては、私が移動を繰り返していそうだからダメってこと?」

「私、好きな人には傍にいてほしいんですよ。同じ地方なら、飛行ポケモンに乗って会いに行けるけど世界をまたにかけるスパイが恋人だと……」

「世界をまたにかけるだけでスパイを連想しないでください」

「……え〜〜〜、七つの海をまたにかける海賊が……」

「どこから海が出てきたんですかっ」


スパイや海賊という言葉に、マオはそういう恋人もスリリングで魅力的だと思いました。ハードボイルドな世界、ロマンの世界で頑張る男の人たちを応援するのにもちょっぴり憧れます。
リラさんもそんな世界で頑張ってるのかなぁ……などと。
そこまで考えて、マオは、リラを男役のように妄想してしまったことに自分で戸惑ってしまうのでした。
 ▼ 29 ンカは外で ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 19:03:27 ID:.KEEesow [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そのとき、お店のドアを開けてカフェへ入ってくる人影がありました。
知り合いの来店に気付いた博士が、店員よりも早く彼らに声をかけました。


「アローラ、グズマじゃないか。今日はデートかい?」

「ケッ! プルメリ、帰るぞ!」

「そう。あたいはひと休みしてくから一人で帰んなよ」


店に入って即、帰ると言ったのはグズマと呼ばれた青年でした。白く染めた髪を無造作に爆発させて、ドクロ柄のシャツを着た姿は見る者に粗暴な印象を与えます。言葉遣いも見た目を裏切らず乱暴なものでした。
彼と一緒に入ってきた女の子も、目の下をフチどるメイクや玄が基調の服から似たような印象を受けますけれど、彼女はグズマに対してずいぶん理性的なようです。


「アンタもグズマにちょっかい出すな。二人して表に出るかい?」

「すまんすまん。ジョークだったんだ、本当にすまん」


グズマは、博士に対して聞こえよがしな舌打ちをしてから店内へ歩を進めました。

 ▼ 30 バナ気になる系女子 ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 19:13:09 ID:.KEEesow [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
空いたテーブルを見つけてグズマとプルメリは席をとります。プルメリは足を組み、グズマは椅子に寄りかかって足を大股開きにして座りました。


「かーっ、つまんねぇ。またあんときみてぇにスカル団でぶっ壊しまくりてぇな」

「なに言ってんの。モーモーミルクとハーフミルク、どっちにする?」

「俺の注文を勝手に決めんじゃねええええぇ。……エネココアのミルクブレンドだ」


すぐにメニューを決めた二人は店員のお兄さんを呼びます。別の客に対応中のお兄さんを待つ間に、離れた席から女の子の声が聞こえてきました。


「ねぇねぇ、ミヅキっていわゆるワルい人たちはどう? 不良っぽい男の人がかっこいいっていう子も結構いるよね」

「ワル?」

「そーそーっ。スカル団の人たちとかね!」


女の子の高い声は騒がしい場所で耳に届くものです。小さいけれどもしっかり聞こえてくる二人の声に、プルメリは苦笑しかけました。
さて、あいつらは何を言い出すだろうか。彼女たちの会話を気にし始めたプルメリに対して、グズマは椅子に背中全体を預けて気だるそうな様子でした。
 ▼ 31 演依頼待ってます ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 19:31:39 ID:.KEEesow [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「いやースカル団はマジでないって。あいつら、グズマさんから下っぱまでみ〜んな悪いことよりイキる方に夢中な奴らじゃん」


一から十まで、何から何まで、揺り籠から墓場まで。そんなノリで、グズマから下っぱAに至るまでスカル団全員がこき下ろされていしまいました。


「私的にはね、悪い人たちがモテるのってヤバい遊びや気持ちいーあれこれを知ってるからだと思うわけよ」


テーブルに両肘を立て、組んだ手であごを支えるミヅキ。気分はさながら、テレビ番組に出演中のコメンテーターです。


「思うにね、こう……思春期の……あー、若者のなんやかんやがひこう…………非行? を生んでいると……」

「ミヅキ、がんばりすぎないで!」


コメンテーターらしき恰好でいいことを言おうとしますが、咄嗟のことでは上手くはいきません。
二人のやり取りを聞いたリラが、ドリンクを口にしながらミヅキに訊ねました。


「世の中には『怖い人たちと交際している』と思っている中で、優越感や高揚感を覚える人もたくさんいますよ。ミヅキさんは、そういう人に共感したりします?」
 ▼ 32 力は正義 ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 19:42:31 ID:.KEEesow [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ぶっちゃけ結構共感するかも〜。私の会った悪い人って、大体はしょぼいかヤバすぎるかで魅力感じませんでしたけど」

「へぇー。スカル団はしょぼい方なんだ?」

「うん。あいつら、小金稼ぎといやがらせばっかやってて遊びにしても全然楽しくないじゃん? リーリエがさらわれたときなんか最高にイラついたし、あのとき私がカイリキーだったら、グズマたちを直接ボコボコにしてたよ! 絶対!」

「今日のミヅキはバイオレンスだね〜」

「あのときの私は本気だったよ! ボコボコだよ、ボコボコ! スカル団にいたくせに私やハウを責めてきたグラジオなんか、もう、顔の形が変わるまでれんぞくパンチだよ!」

「すっごいバイオレンス〜〜〜〜〜〜!」


ミヅキはシッシッとボクサー風の声を上げながらシャドーボクシングをしています。心はカイリキーなので、2本しかない腕を補うためにパンチの速度もいつもの2倍(のつもり)です。
 ▼ 33 調 ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 19:54:53 ID:.KEEesow [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「エーテル財団……は、一番上の人がヤバすぎたけど……あそこみたく、伝説のポケモンを追うくらいスケールでっかいワルなら、私もちょっぴり『いいかも?』って思ってたかも」

「え? ミヅキって、スケールの大きさとか気にするタイプ?」

「……い、いやいや! そんな気にするわけでもないよ。恋人とか、世界じゃなくてアローラをまたにかけるくらいで丁度いいと思ってるし……」


マオは、ミヅキの様子に微かな違和感を覚えました。なんとなくではありましたけれど、何気ない振りに対して彼女が少し慌てすぎているな、歯切れが悪いな、そう思ったのでした。


「まあ……あれだよ。…………アローラの中だけ、とか、自分の近くの人たちだけ、とかさ。……そういうの、視野が狭いっていうの? うまく言えないけど……そんな感じ」

「ねえミヅキ。あなた、今スカル団のことを言っているの?」


マオの声にミヅキは言葉を返しません。少し間をおいてから頷いた彼女が、目を合わせてくれなかったことがマオには気がかりでした。
 ▼ 34 クラップアンドビルド ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 20:02:32 ID:.KEEesow [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ね〜もうスカル団の奴らってのはね! 八つ当たりが趣味みたいな迷惑集団で、スケールも小さいしありえない! 今思い出すだけでもグラジオにビンタしたくなる!」


なんて話ししてんだ、あいつら。
耳に届いてくる嬌声に、プルメリは思わずグズマの方を見やります。彼は無言のまま身動き一つしませんでしたが、プルメリの傍に座っているのにミヅキたちの声が聞こえていないはずがありません。
「グズマ……」、プルメリがそう呼びかけようとした矢先に、グズマが声を発しました。


「こっからだよ。オレたち、こっから何もかもぶっ壊してくんだよ。分かってっか?」

「今までのオレたちさえも、だ。なあ、分かってっか、プルメリ」


最初と変わらず力のない恰好で座っているグズマでしたが、彼の言葉には確かな力が込められています。
癇癪を起こさなかった彼に驚いたプルメリでしたが、それすらも長い付き合いで慣れているのでしょうか。グズマを見くびっていた自分を鼻で笑いながら、すかさず返す言葉を投げかけました。
 ▼ 35 めん忘れてた ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 20:14:31 ID:.KEEesow [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「バカ。そこまで言っておきながら、『今まで』とかこだわってんじゃないよ」


グズマは相変わらず気だるそうな格好のままでしたが、プルメリの言葉に、確かに笑みを浮かべました。プルメリも、つられるように口角を上げます。
カフェのお兄さんも、空気を読んで二人にぎこちなく微笑みました。


「……あの、お客様? ご注文は…………」

「シブサダ1、カラサダ2、ミックスオレとモーモーミルク1つずつ」

「エネココアつったろうがプルメリィィィィィィィ!!!!」
 ▼ 36 けば出る ◆Bt64IWMOO2 18/09/21 20:32:32 ID:.KEEesow [10/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
書いても書いてもマツリカのマの字までしか出てこない。ヤバい。スレタイ詐欺になってしまう
次に続き投稿するときは頑張ってマツリカの名前くらいは出したい。いや出す。出るまで書く。うっかり出さないまま投稿することがないようにここに戒めておく
 ▼ 37 ッシブーン@やみのいし 18/09/22 13:55:25 ID:WdvwOZ6s NGネーム登録 NGID登録 報告
>>36
いくら遅くても完結すればいいから焦らない方がいい
支援
 ▼ 38 ークイン@しらたま 18/09/25 17:31:06 ID:XW0Ur6xc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 39 じゃないもん ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:08:27 ID:8Lq2nidI [1/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「エネココアつったろうがプルメリィィィィィィィ!!!!」


店内に響き渡るグズマの声。それを聞いて、ミヅキたちの胸に小さな罪悪感が芽生えます。


「ちょっとミヅキ、やばいよ。絶対さっきの聞こえてたって〜」

「…………全部博士からの受け売りってことにするから大丈夫。あの二人って因縁あるし、イケるって……多分」

「無辜の人に濡れ衣を着せるのは、どんな罪よりも重いものですよ」


リラの忠告に、ミヅキはまたも何かに気付いたような表情を見せます。このさりげない言葉が、ミヅキに大きな衝撃を与えるものでした。
 ▼ 40 界一位です ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:09:41 ID:8Lq2nidI [2/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……今、思ったんだけどさ。『この世で最も重い罪を背負った女』って肩書きさぁ……めちゃくちゃカッコよくない?」

「かっこよくない」

「いやいや冷静に考えようよ! 世界最重の女だよ? 鬼のようにカッコいいじゃん!?」

「背負っている罪、鬼のようにしょうもないですよ」

「あんたが私を大罪人にしたくせにー!」


わーん、と泣き出すふりをするミヅキ。内心では、やっぱりリラさんじゃ彼氏は無理だな、と考えています。彼女は裏切りに対して厳しい女の子でした。


「ちきしょー。どっかに理想の彼ピッピ落ちてないかな〜」


不満を紛らわすために口に運んだミルクオレが、ミヅキが頼んだドリンクの最後の一口でした。短い間ながら、うだうだと恋愛話に付き合ってくれた戦友を失った心地がしてミヅキは悲しくなりました。
 ▼ 41 みたいな口しやがって ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:11:37 ID:8Lq2nidI [3/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「今までありがとう。おいしかったよ、ごちそうさま♪」

「ミヅキ、誰と話してるの? ……もしかして霊能力目覚めちゃった?」

「誰がアセロラよ。あんな栗みたいな口、私にマネする力量ないし私にキャプテンは務まらないよ」

「口の形がキャプテンの資格なの……?」

「あぁ、二次被害が! ミヅキ、誤解を解いてあげなよ」

「リラさん、信じられないかもしれないけど、ウラウラ島の島キング、クチナシさんはロリコンでアセロラって名前の栗みたいな口してる女の子キャプテンにメロメロなんです」

「え……!? い、いやいや流石に嘘でしょ」

「そーです、ミヅキの嘘です! どうしてまたそんなこと言うのっ」

「嘘じゃなくてギャグだから。私とリラさんの仲だし、今みたいな反応も含めて私たちのコミュニケーションです、ね?」

 ▼ 42 ッ友 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:15:36 ID:8Lq2nidI [4/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミヅキは笑顔。リラは真顔。
数秒間の空白の後、リラも笑顔になって言いました。


「ふっ、ふふふ、当然です。あのクチナシさんが小児性愛者なんて……まさか……ね」

「これ心のどこかで本気にしてたやつだ! ミヅキが変なこと言うからだよ」

「ぐぬぬ。おのれリラさん、私に二重の罪を背負わせて〜〜〜……」

「ていうかミヅキさー。冗談でも他人の悪口なんて言ってると友達減っちゃうよ? やめなよ、真面目に」

「ごめんごめん。でもさ、マオならそれでもずっと友達でいてくれるでしょ?」


わざとらしく頭をぽりぽりと掻きながら、ミヅキはマオに目を合わせます。


「…………」

「ちょっ、なんで目ぇそらすん?」
 ▼ 43 ッ友 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:17:10 ID:8Lq2nidI [5/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「とりあえず、マオは私と違って『生まれた日は違えども死する日は同じく』と誓う無二の親友と思ってなさそうなことが分かったわけだけど」

「三国志?」

「これはつまり、私と恋人になることを諦めてないから今の段階で『一生ともだち』とは言えないってことだよね。それなら仕方ないや」

「ポジティブが過ぎる!」

「ミヅキさんの愛は重いですね……」

「そりゃもう、世界最重の女ですから」

「重いというより、今のミヅキはめんどくさい子だよ」

「えぇー?」


マオの指摘に、ミヅキは頬を膨らませて反論を試みます。
 ▼ 44 け舟は来ない ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:20:53 ID:8Lq2nidI [6/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「私さぁ〜、自分がきまぐれな性格だってのは自覚してるよ?」

「!」

「!?」


驚きの表情を示すマオとリラ。ミヅキは、内面について自覚のない女だと思われていたのでしょうか。
そんな評価を知って、なんだか泣きたい気持ちになってしまいます。


「でもね、自分で言うのもなんだけど、私って結構シンプルで分かりやすい子だとも思うんだ。ねぇ、リラさんもそう思うでしょ?」


わざとらしく小首を傾げながら、ミヅキはリラに目を合わせます。


「…………」

「ブルータス、お前もか!」
 ▼ 45 エルーワ ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:22:08 ID:8Lq2nidI [7/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「裏切りが連続して、本気で恋人見つけないとさみしくって死んじゃうよ私」

「ウサギかなにか?」

「リラさーん。理想の彼ピッピが群生している集落とか知りませんー?」


ミヅキはうー、と唸って両手と体をテーブルに投げだします。マラサダ3つにドリンクも飲んだ彼女は、お腹がいっぱいで普通の座り方さえ億劫に感じていました。


「うーん。教えてもいいんですけどね」

「は? そんな集落実在するんかよ燃えるわ〜」
 ▼ 46 海賊時代 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:23:56 ID:8Lq2nidI [8/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「その前に、ミヅキさんが恋人に求める理想像を聞かないと。私の知っている場所の中に、ミヅキさんの理想の子がいればいいんですが」

「聞いた、マオ? 世の中には私たちの理想の彼ピッピが山のようにいるみたいだよ。こりゃ七つの海をまたにかけてでも行くしかねぇ」

「お土産楽しみにしてるね♪」

「ついてこないんかーい! ……ってそうだ、理想の彼氏像ですけどね」


ミヅキは体をテーブルに投げだしたまま、ひ、ふ、み……と指で数をかぞえるように理想の彼氏像を語り始めました。


「優しくって、甘えさせてくれてー……」
 ▼ 47 海賊時代 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:27:19 ID:8Lq2nidI [9/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「でも、無条件に優しいんじゃなく私を思いやってくれてて、趣味がそこそこ合って、私にできない特技とか持ってて、ポケモンの話もできて、ちょっとくらいブラブラしてても大事なときに傍にいてくれる人。以上」

「お金は?」

「あ、忘れてた。私がチャンピオン引退してものんびり暮らせるくらいはお金持ってて、そんで私を大切にしてくれる!」

「ふぅむ。見た目や雰囲気にはこだわりはないの?」

「あんまりないですね。そりゃ、カッコいい方がいいに決まってますけど」


心理テストのようなやりとりにマオは微笑ましくなります。と、同時にミヅキが恋愛相手に求めるものをしっかり考えていたことが分かって、複雑な気持ちになりました。

ミヅキって、恋愛のことでここまで色々考える子だったっけ…………?

奥歯に魚の小骨が引っかかるような感覚とでも言いましょうか。マオの心にまたしても何かの違和感が芽生えるのでした。
 ▼ 48 先順位 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:31:19 ID:8Lq2nidI [10/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミヅキの理想を聞いたリラは、手元のシブサダをひとかじり。甘い中に広がる渋味になんともいえない表情を窺わせた後、それを飲み込みます。


「そんでリラさん、私の理想の彼氏が住まう楽園はどちらにあるんでしょうか!」

「マオちゃんは何かないの? 恋人になってほしい人の条件♪」

「えぇっ、あたし!?」 

「おーい、無視ですかー!?」


無視されたことに怒るミヅキ。ですが、それよりもマオの理想像が気になるミヅキはリラと一緒にマオへ視線を向けました。
催促する二人の瞳に、マオは少したじろぎながら答えます。


「っぇ〜、いきなり訊かれると困っちゃうんだけど……」


そうして、頬をほんのり赤らめてから、マオはひとこと。


 ▼ 49 子力の発現 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:32:35 ID:8Lq2nidI [11/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「……ベタだけど、あたしと一緒に、作った料理を笑顔で食べてくれる人……みたいな、」

「かわいいかよ〜!!!」


マオの言葉に、ミヅキは悶絶。リラはいかにも上機嫌という風に微笑んでいました。
 ▼ 50 は肉 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:41:54 ID:8Lq2nidI [12/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ってマオはさておき、リラさん! 私の彼氏くんがひしめき合う夢の場所の在り処を早く教えてください!」

「残念ですけど、ミヅキさんの言っていた条件にあたる人がいる場所は心当たりがありませんね」

「はぁ……。さらば酒池肉林…………」


テーブルに投げ出した体を動かしこそしませんが、ミヅキの返事からは更なる気怠さが伝わってきます。


「にしてもさぁ、ミヅキにしてはすごく具体的な条件だったね」

「私だって、たまには色々考えますぅ〜」

「……何かあったの?」


 ▼ 51 色 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:45:13 ID:8Lq2nidI [13/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「何かって?」

「ミヅキをそんなに考えさせるような、何か」

「…………」


あ、これさっきと同じ『間』だと。マオは直感します。
ミヅキがスカル団のスケール感について文句を言い、その口調にマオが突っ込んだときと同じものだと。


「うん。近ごろバトルに疲れちゃったから、私を大事にしてくれる人が欲しいなって、それで考えてたの」


その言葉が嘘か、真実か、両者を孕む灰色の答えなのか、マオにはいずれも分かりません。
ミヅキの表情は、本心から言っているようでもあり、渾身のポーカーフェイスを決めているようにも見えました。
 ▼ 52 け舟来たる ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:47:14 ID:8Lq2nidI [14/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マオも、ミヅキも何も話しません。話せません。
緊張が走りかける場面で、リラが二人に問いを投げかけました。


「ミヅキさん。先ほどの妙に具体的かつ多岐にわたる理想像、本当にただ『考えていただけ』なのでしょうか?」


軽く握った拳を口元に当て、二人へ交互に視線を配るリラ。芝居がかった口調といい、ミステリードラマの探偵さんのような趣です。
やけにかっこつけてるなと、ミヅキもマオも思いました。


「まず、年不相応に金銭面を気にしていたことが第一。続いて、『一緒にいてほしい』にも関わらず『アローラ内なら好きに移動されていても構わない』という旨の発言……。あなたの発言は具体性のみならず、詳細にわたった要素分析まで組み込まれています」

「いうほど細かいですかね?」

「ミヅキ、空気読んであげなよ」


リラは考え込むようなポーズのまま、わざとらしく視線を逸らしてみたりして自論を展開し続けます。なかなか堂に入った演技でした。
二人が、先ほどの微妙な空気を忘れてしまうくらいには。
 ▼ 53 ネ明かし ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:49:49 ID:8Lq2nidI [15/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……しかし、要求が細かいわりに、話しのレベルだとか趣味の範囲といった、日常を共にする上で不可欠な部分については『そこそこ』や『〜くらいの』といったアバウトさも見受けられました。細心と大雑把が両立しているというのは、恐らく、ミヅキさんの中で曖昧ながらも一定の基準が設けられている証拠でしょう」

「……な、なによ、他人の考えを決めつけて! あんたの言うことが正しいとしたって、私がどうだってのさ!?」


あまりにも空気を読んだミヅキの返しに、マオは感嘆を禁じえませんでした。


「つまり、ミヅキさん。あなたは『理想の彼氏像』が存在しているかのような物言いをしていましたが」

「あなた、本当は既に好きな人がいて、その人を『理想像』に当てはめて私に答えたのでしょう?」
 ▼ 54 事リラさん ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:51:31 ID:8Lq2nidI [16/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……ふ、ふふふ……」

「違いますか?」


それまでの考え込む仕草から一転、リラはミヅキへ視線を向けて笑いかけます。挑発的に、まるで己の勝ちを確信しているかのように。
彼女の笑みに対し、どこか投げやりに笑っていたミヅキは下を向いて言いました。


「……参ったな刑事さん。全部、アンタの言う通りよ」


負けを認めたのか、薄い笑みを浮かべながらうつむくミヅキ。そんな彼女の言葉を聞いたマオは、リラが探偵ではなく刑事という設定であったことに気付くのでした。
 ▼ 55 金こそパワー ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:53:25 ID:8Lq2nidI [17/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「で、ミヅキの好きな人って誰なの?」

「マツリカさん」

「即答だ!」


驚きはしましたが、マオもリラも慌てはしません。なぜなら、二人ともミヅキ・マツリカの両名と面識があるからです。
キャプテンという立場上、ミヅキともマツリカとも絡む機会が多いマオはなおさらでした。


「マツリカさんはいいよぉ〜。バトル強いし、絵が上手いし、性格も顔も可愛いし、優しいし、ポケモン好きだし、収入があるの」

「最後で台無しね……」


即答するほど好きなのに、お金ですかとリラはため息をつきます。呆れるというより、一貫しているミヅキの考え方に感心さえ覚えていました。
 ▼ 56 ヒな困 ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:55:38 ID:8Lq2nidI [18/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「私、彼氏でも彼女扱いでも構わないからマツリカさんの恋人になりたい! それで養ってもらう!」

「真剣な顔で言うことじゃないですよ」

「ほんと、マツリカさんのヒモになりたすぎて困る」

「ヒモ?」


聞きなれない単語に、マオが問い返します。一方で、リラは、悪い遊びを覚えた子どもへ優しく諭すように、次の言葉を慎重に考えなければなりませんでした。


「……ミヅキさん。『ヒモ』という言葉の意味、ご存じなのですか?」

「…………」


そのとき、ミヅキの脳裏にとある日の光景が思い浮かんでくるのでした……。
 ▼ 57 夫とは違うのよ ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:57:30 ID:8Lq2nidI [19/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある日の昼下がりです。暇を持て余したミヅキは、タイトルすら知らないままの恋愛ドラマの再放送を目的もなく見ていました。


『なによ、この変態! あんた、どうせあの女にたぶらかされて堕落した生活送ってるんでしょ。言い返してみなさいよ!』

『ちがっ……お前、誤解してるって!』

『何が違うのよ、クズ! ヒモ野郎!』


好奇心を刺激されたミヅキは、テレビの音を背中で聞きながらキッチンで作業中のママへ振り返って問いかけます。


「ねーママ。今ドラマで言ってた『ヒモ』ってどういう意味?」

「恋人にだらだら甘えて、食べ物や住む場所のお世話してもらっている男の人のことよ」

「主婦(夫)とは違うの?」

「ヒモっていうのはね、主婦と違って家事やおうちの切り盛りはしないダメな人がほとんどなの」

「ふーん」


私もヒモになりたいな、と思ったけれどもママには言ったらお説教されそうなので言えなかったことを、ミヅキは今でも覚えているのでした……。
 ▼ 58 生虫ミヅキ ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 11:59:49 ID:8Lq2nidI [20/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ヒモっていうのは、恋人に寄生して毎日ダラダラしながら遊んで暮らす、夢……じゃなくて、クズみたいな人間のことですよね?」

「予想外に完璧な答えだわ……!」


おののくリラを尻目に、マオはミヅキを見つめました。


「じゃあ、ミヅキはダメ人間になりたいの? マツリカさんを犠牲にして」

「人聞き悪いなぁ。恋人になれば、私はマツリカさんに好きで養ってもらえるし、マツリカさんは私を好きで養いたい気持ちを叶えられてwin-winでしょ?」

「ダメ人間だ〜〜〜〜〜〜〜〜!」


ヒモの意味を知らなかったマオでしたが、ミヅキのお陰で「ヒモは許してはいけない存在である」という認識を固くすることができたのでした。
 ▼ 59 いたら出た ◆Bt64IWMOO2 18/09/26 12:05:01 ID:8Lq2nidI [21/21] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アニメマツリカは画集をいっぱい出しているゲーム版と違って収入が少なそうな気はします。とりあえず名前だけでも登場させられてホッとした
 ▼ 60 ノハナ@たわわこやし 18/09/30 16:52:10 ID:qLF6dshU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 61 ョロネコ@メガリング 18/10/05 11:51:30 ID:TGvsZFbY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 62 ポエラー@オッカのみ 18/10/10 23:29:03 ID:LFQUXPWQ NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
いつスレ落ちるか分からないから保守として自己支援
すっごくペース落ちたけどのんびり書いてる
 ▼ 63 インディ@ナモのみ 18/10/11 17:03:43 ID:JWXIUQAY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3週間くらいはほっといても落ちないよ
支援
 ▼ 64 ルリル@こおりなおし 18/10/22 01:23:30 ID:2nN2EtvU NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
忘れないうちに自己支援〜
 ▼ 65 キカブリ@アロライZ 18/10/22 12:53:22 ID:jn6UPQaU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
続き待ってるよ
 ▼ 66 オッキー@バクーダナイト 18/11/05 18:32:03 ID:C.6wMiX. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 67 ルセウス@プレシャスボール 18/11/22 16:28:31 ID:vmgElvf2 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
いいとこだったのになぁ……
 ▼ 68 グマッグ@エレキブースター 18/11/22 19:54:55 ID:OHvwQJ7Q NGネーム登録 NGID登録 報告
楽しみに待ってます
 ▼ 69 ーナノ@あさせのかいがら 18/12/09 21:09:44 ID:Y9JQCLcs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 70 ドキング@タブンネナイト 19/01/13 09:38:19 ID:636M4R5k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 71 ーパ@メタルパウダー 19/01/13 09:53:38 ID:tDlkpM7w NGネーム登録 NGID登録 報告
このマオとミヅキは超美少女
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