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SS

【SS】殺さずの混色

 ▼ 1 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:32:54 ID:XSWUElLY [1/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『色』は、

お互いに助け合い、美しくなる。

それは『人間』も同じ。

どの色を殺しても駄目なのだ。


──どの色も、生かさなければ。


                 - 武者小路実篤 -
 ▼ 2 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:33:15 ID:XSWUElLY [2/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──ハァ、ハァ……。


「奴がいたぞ、捕らえろッ!」

「生かすワケにはいけない、必ず……仕留めなくてはッ!!」


アローラ地方 ウラウラ島のマリエシティ。
いつもならばその街は、カントーやジョウトだとかいったオリエンタルな雰囲気を醸し出し、そのため観光客や地元民が足を運び、大いに賑わっているのだ。

……しかし、今はそうではない。

既に、時刻は夜の2時を回っている。
照らす役目を終えた太陽は朝の始まりを静かに待ち侘び、欠けた月が寂しげに夜天に佇む、そんな光景。


「しつこ過ぎるぞ……諦めてくれ」


そして謎の男たちに追われているのは、これまた謎だらけの男。
黒帽子と黒いコートを身に纏い、その帽子からは、黄緑色の縮れた前髪を覗かせている。


《フリソス》


それが、彼の名前であった。
一部の“輩”に広くその名が知られつつある、彼の名前であった。
 ▼ 3 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:33:42 ID:XSWUElLY [3/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おい、出番だぞ……相棒」

フリソス、一個のモンスターボールを懐より取り出す。
どこかしら幾何学的な装飾が施された、そのボールからは……。


ポ ン ッ !


「……行けっ、ズガドーン!」

『ボッボボーママッシュッ!!!』

奇怪な鳴き声を唸らせ、その細身の、まるで道化師のような風貌のポケモンが、姿を現した。

「お前たちはなぜ、俺を追いたがるんだ?」

「UB(ウルトラビースト)を繰り出したぞ……『Fall』めッ!!」

誰もフリソスの疑問には応じず、一斉にポケモンを繰り出し臨戦態勢に入る。

「『Fall』、か。何と呼ばれようが別に構わないし、その意味も知らんが……。聴くたびに感じるのは、あまり良い響きじゃないなってことだ。……“シャドーボール”ッ!!」

フリソス、ズガドーンに指示を出す。
 ▼ 4 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:34:02 ID:XSWUElLY [4/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『マーママッ……スママーシュ!!』

ズガドーンの掛け声と共に、世の怨念が篭ったかのような黒色の念弾が、“輩”目がけて発射された。

「迎え撃て、ラッタ!」

「交わして奴に“かぜおこし”だ、ピジョン!」

流石にこの程度の攻撃では“輩”は怯まず、各々のポケモンに指示を出すが。


……コロ、コロ…………。


「ん、なんだこりゃ?」

「ボール、いや……これは、今のUBの……と う  ぶ」



 ボ オ ォ オ ン ッ ! ! !



「!!!?」


しかし突然に、その爆発は起こったのだ。
 ▼ 5 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:34:22 ID:XSWUElLY [5/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「“ビックリヘッド”」


フリソスが、その技名を口に出す。

先程の“シャドーボール”は、この技を繰り出すための囮である。
“輩”が気を取られている内に、ズガドーンの頭部を“輩”の元に転がし、爆破させたのだ。


『マァボー……』

「そうだな、あまり連続してこの技は使えない。……さぁ、退こうッ!!」


──バササッ。


「うぅ……。鳥ポケモン……逃げられた、か……」

「我ら『RRR』をまたもや出し抜くとは……クソッ、“ボス”に報告だ!」


数刻も経てば また太陽が昇り、一日の始まりを告げるだろう。
月は役目を一旦終え、また、夜空に輝く。



……果たして“太陽”や“月”は、“彼ら”を照らしてくれるのだろうか。
 ▼ 6 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:34:42 ID:XSWUElLY [6/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アローラ有数の都市であるカンタイシティでは、社会の出来事の様々な報道・批判が連日飛び交う。
そして今、人々の注目を惹きつけている話題がある。

……それは、かつてカントーの某企業を占拠したとされる、ポケモンマフィア ロケット団。
とあるトレーナーによってその野望は阻止されたハズだが、組織の残党一派が団を再編し、今度はアローラ地方に宣戦布告を行ったのだ。


《我らは、『R(リボーン)R(レインボー)R(ロケット団)』! メレメレ島を RRR に明け渡せ!! さもなくば……》


「さもなくば? なんだと言うのだ……クソッ!」

……その赤髪の青年は、眺めていた新聞を握りしめ、突然にも口調を荒げた。

「相棒、君はロケット団の話題になると感情的になるな。……君の境遇はわかるが……」


青年を相棒と呼んだのは、彼とは対象的な年輩の男性。
常夏のアローラにも関わらず 薄茶色のコートを身に纏い、その腕にモーモーミルクとアローラ名物のマラサダを抱えている。少し昔の刑事風な出で立ちだ。


「あぁ、“ハンサム”さんよ。アンタには分からないだろうさ」

「……“ダンディ”」

「あと、そのコードネームで呼ぶなッ!!」

顔を赤らめ、青年は再度 口調を荒げる。
 ▼ 7 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:35:04 ID:XSWUElLY [7/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「しかし、あの“事件”から……ちょうど5年だ。そしてそんな磁気に、またもやRRR……いやロケット団……」

「あぁ、『嫌な予感』……ベタだけど、な。アイツらはこの5年を節目に、このアローラで何か しようと企んでいる……」


赤髪の青年と年輩の男性は、共に『国際警察』のメンバーだ。

年輩の男性のコードネームは、“ハンサム”。自称だが、皆がそう呼んでいるから……だとか。
青年の方のコードネームは……先程の通りである。ハンサムが命名したらしい。


「……決して許すワケには、いけない」

ハンサムは、古びたモンスターボールを握りしめる。

「そうか。アンタの相棒も……あの事件の被害者だったよな」

「あぁ。殉職だ。二階級昇進さ。私より、お偉い立場になってしまった──」


“相棒”……。
そのモンスターボールは、かつてハンサムのポケモンがそこに入っていた、いわば形見なのだ。


「……ハンサムさん。ちょっと休もうか。ほら、そこに喫茶がある。それにあまりプンプンと警察のオーラを醸し出していても、街の住人や観光客に引かれるぜ」

「お、おぉ。済まない。私は、そんなに力んでいたか……」

(ポケモンを持たないアンタを護ることも、俺の役割だからな)
 ▼ 8 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:35:28 ID:XSWUElLY [8/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして二人は喫茶にて一息つき……。


「この事件も、気にならないか?」

青年が先程くしゃくしゃにした新聞を広げ、ハンサムは青年に言った。

「ウラウラのマリエで、深夜に謎の爆発音……」

「まぁこれも、ロケット団による仕業かもしれないが……何か、引っかかるな」

「あぁ。奴らが何のメリットもない行動をわざわざ起こすとは考えにくい」


そんなやり取りを、二人がしていた時だった。


「ん、ハンサムさん。大事なボール……落としてるぜ」

「む……?」


二人が座るテーブルの下に、一個のモンスターボールが転がっている……。


「いや、私はちゃんと持っている。……誰かの忘れ物ではないか?」

「その誰かには悪いが、ちょっと、開けてみようか……」


ポ ン ッ !
 ▼ 9 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:35:52 ID:XSWUElLY [9/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『ドダァーーーッ!!』


「ウオォッ……!?」

「このポケモンは……ドダイトス……?」


ボールの中から表れたのは、威勢の良い鳴き声を挙げる巨大なポケモン。
これはまた珍しいポケモンだな、と。青年が思った時。


「おじさんたち、観光に来たのー?」


「!!」


二人はその声の方を、見上げる。
そう。見上げたのだ。……ちょこんとドダイトスの甲羅に、その声の主は腰掛けていた。


「このアローラ……案内しよっか? でも値段は張るよー。ね、“ヴァース”♪」

「君は……」


声の主は、一人の少女だった。
齢は10歳前後といったところだろうか。

どちらかと言えば痩せ型の体型で、白のハットとワンピースの服装。無邪気な瞳をこちらに向け、おどけたようにニコリとはにかむ。幼いながらに、整った顔つきだ。
銅色掛かった可愛らしいショートヘアは、ふんわりと風でたなびいている。
 ▼ 10 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:36:15 ID:XSWUElLY [10/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……君、いつから」

ハンサム、一番の疑問点を彼女に問うが。

「“どうちゃん”って、呼んで」

「え……?」

二人揃って言葉を詰まらし。

「髪の毛が銅色だから、どうちゃん。ま、それだけだけど……。ほら、お互いにさ、まだ何もわかってないワケだし! ニックネームで呼び合うのが、友好を深めるのにもいいかなー……って!!」

「はぁ……」

頷くことしか出来なかった。

「じゃ、じゃあ私たちも……。私はハンサム」

「俺は、ダン……いや、シルバーだ」

「……わぁ! もうニックネーム、考えてくれたの?」

「い、いや、俺のシルバーってのは、本名だけど」

そして彼女のペースに翻弄される男たちである。

「そ、それでは ど、どうちゃん……。私たちは『国際警察』の者なのだが……」

「けいさつ……?」


……その時。
彼女の朗らかだった表情が、何故か、曇った。
 ▼ 11 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:55:03 ID:XSWUElLY [11/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(ハンサムさん……?)

おいおいこんな初対面の少女に、突拍子もなく警察だと打ち明けるなよと思う。しかも“国際”……そんなのいきなり信じられないだろう。
シルバーは危惧する。

「私たちは今、RRR なる組織を追っている。新聞……名は知っているだろ? しかし今、奴らの居場所の手がかりは……全くと言っていい程 0 なんだ」

「……こくさい、けいさつ」

「なにか知っていれば……どうちゃん、教えてほしいんだ」

(あーあー)


ほら見ろ、“知らないよ”って顔で、まるで『怪しげな性癖もち』で『ハァハァ言ってる変態男』を見るような目つきになっているじゃないか。

こんな所でこの少女に通報でもされて、変に騒ぎでもなったらどうするんだ。


「知ってるよ、ロケット団のこと」


「!!」


しかし“どうちゃん”の返答は、そんなシルバーの心情に反していた。


「知っているのか……どうちゃん! 何でもいいのだ……些細なことでも、私たちに教えてほしい──」

「……でも、ダメ」

「え……?」
 ▼ 12 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:55:19 ID:XSWUElLY [12/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「アタシ、いや、アタシとヴァースは……あ、ヴァースってこのドダイトスのことね……。警察の人、キライなの」

『ダァ……』

ヴァースもまた、同調するかのように鳴き声を挙げる。

「そ、そう、か……」

「……行こうぜ、ハンサムさん」

──二人は会計を済ませ、また、先程の席へと戻る。

「あ、あぁ……じゃあどうちゃん、私たち……は……。
 ……え?」


声を掛けようと、少女とドダイトスの方を見ると……。
そこにはもう、彼女らの姿は無かったのだ…………。


「既に、立ち去ってしまったか……」

「もう俺たちに会いたくないってことなのかもな」

「私はただ、警察だと打ち明けただけなのだが……」


この仕事は些細なことであっても、気に病むことばかりだ。しかし、そこで挫けていては、精神的に参ってしまうぞ。
難しくは考えないこと、敢えての『記憶力の欠如』も、この仕事……警察には、大切なのだよ。


(ハンサムさん、アンタが俺にそう言ってくれたんだぜ。しっかりしろよな)

シルバー、ハンサムの肩に手をポンとやる。
そして二人は、カンタイのとあるホテルへと入室した。
 ▼ 13 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:55:45 ID:XSWUElLY [13/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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「俺、ただ、その……『フリソス』って男に頼まれて……。金を渡されて……船に。客の情報……漏らすワケに……は」

「だってさ、“エゾ”」

「そうなの、“ギグ”」


少し前。ウラウラ島 マリエシティの船場にて、状況は動いていた。
とある傷だらけの船乗りらしき男が、三人の男女に囲まれている。


「エゾにギグ。コイツがフリソスを船に乗せ、ウラウラから逃走させたんだってことはわかるな。でも、『今はヤツはどこだ?』とか、『他に仲間はいたか?』とか、ありきたりな質問をするのはムダだから、やめろよな」


エゾと呼ばれたのは、黒ずくめの衣服を纏った少年。一方のギグもまた、同じような出で立ちの少女。
彼らの衣服には、『R』の装飾が施されていた。

二人の顔は良く似ている。なぜなら、二人は双子の姉弟なのだ。


「俺たち“RRR”の下っ端では、奴を捉えるのは無理だった……。ならば、俺たちが直々に動く他にないだろう。あぁ面倒くさい」


エゾとギグに語りかけているのは、強面の男性だ。
ギョロりとした目つきをサングラスの奥から覗かせ、オールバックの黒髪を手で整える。黒の迷彩柄を主とした服装であった。


「だから、このRRRの暫定首領“バーベナ”が、テメェ如きに直々に質問をしてやるんだ。……『死にたくないだろ?』」

………
……
 ▼ 14 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:56:01 ID:XSWUElLY [14/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《……》


事実上の拠点であるホテルにて、ハンサムとシルバーは、“国際警察”の指示を受けることとなる。
指示は、ビデオテープとして郵送されていた。……が。


「このビデオ……何も映らないのだが」

「からかっているのだろうか……。お偉い方々は、何も手かがりがないというこちらの事情を知っているのだろうか……?」

「何も知ってなどないだろうさ。このヤマが成功すりゃあ最低限の報酬を、失敗すりゃあクビを刎ねればいいだけなんだろ?」

「あまり目上の者を悪く言うべきではないぞ」


二人が不可解に感じていた、その時。


《ピンポーン……》


「ん……?」

……部屋のインターホンが鳴る。

「おいおい、俺たちの居場所を知ってる奴なんて……」

「シルバー、ポケモンを繰り出しておけ……」


敵かもしれない。
二人は用心しながら、扉を開けた……。
 ▼ 15 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:56:18 ID:XSWUElLY [15/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「やっ、お二人さん!」

『ドダ〜』

「おいおい、お前は……」


扉の前に居たのは、あの喫茶での少女“どうちゃん”。
ついでに、ヴァースも……。少女は案の定、ヴァースに乗っている。


「なぜ、ここが」

「さっきはごめんねー。アタシ警察は嫌いだけど、あなたたちのことはなんだか、好きになれそうな感じだったからさー」

「君は……情報を提供しに来てくれたのか? そしてなぜ君は、警察を嫌っているのだ?」

「……」

少女、一度 口をつぐむが。


「いいよ、話したげる……アタシは──」


「えっ……?」


二人とも、その先の“告白”に、唖然となる。
 ▼ 16 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:56:38 ID:XSWUElLY [16/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「“幽霊”、なの」


「……!!?」


しばらくの間、その沈黙は続き。


「その証拠にさ、ほら、アタシ……どこでもいいから、触ってみて」

「お、おぅ……」


しかし二人の手は、スカ、スカと、少女の虚像をすり抜ける。


「……ほ、本当の、ようだ」

(他の地方のタワーとか、森林地帯の廃墟とかで幽霊の目撃自体は確認できていた。しかし、この目で実際に見るのは──)

「ね、初めてでしょ! 幽霊を見るのは……さ♪」

少女、おどけた口調を崩さず。

「どうちゃん……君はなぜ、そんなことに……?」

その口調に安心感を覚えてか、ハンサムの方が、疑問を素直に投げかけた。


「……『カントー地方 地下通路爆破事件』、知ってる?」

「!」
 ▼ 17 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:56:54 ID:XSWUElLY [17/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女が口にした、その事件は。
そして先ほど二人が“あの事件”と呼んだ、その事件は。

……ハンサムが相棒のポケモンを失った、『カントー地方 地下通路爆破事件』だ!

ハンサム「よく、知っているよ……。本当に……」


5年前、カントーでロケット団が引き起こした凶悪犯罪。
地下通路に爆発性のあるポケモンを埋め込み、歩行者やポケモンを16人と9匹殺傷した……全地方でも類を見ない、テロ行為である。


「当時ハンサムさんも、地下通路に居たんだ。ハンサムさんは……相棒を……」

「私のことは、いい……シルバー。それより、君も……つまり」

「うん。あの時爆発に巻き込まれて……。こんなんになっちゃった。でも、ヴァースの甲羅にね、地縛霊として存在してるワケなの♪」

(……こんな少女まで)


シルバーは、複雑な感情を抱く。
彼とロケット団には、とある“因縁”があったからだ……。


《ピンポーン……》


「あ、来たみたい」

「……え」


その時、またもやインターホン。
 ▼ 18 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:57:14 ID:XSWUElLY [18/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「また、誰が……」

二人は顔をしかめ。

「アタシの、お・と・も・だ・ち♪」

「……」

更に、眉間のシワが深くなる。
二人は念を入れて、冷蔵庫や本棚の影に姿を潜めた。

「警察なんて、信用できないから……」

(……?)


そして扉を開け、とある男が名を名乗り、部屋へと上がり込む。


「おい、ラーメ、俺だ、フリソスだ。おぉ? お前幽霊のクセに、おいおい、どうやってこんな高そうな部屋借りたんだ」


「あんまりさ、名前、呼ばないでよ。おーい、ハンサムさんとシルバーくん。ほら、このコ、フリソスって言うの」

「えっ!」

フリソスと名乗る男は、ちょいと素っ頓狂な声を挙げ。

「はぁ」

ハンサムとシルバーは反応に困った挙げ句、投げやりな返事をすることにした。
 ▼ 19 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:57:34 ID:XSWUElLY [19/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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「お前が呼んだからさ……。普通、警察なんて居るワケないって思うじゃんか。あぁそうだよお二人さん! 俺がRRRから逃れるために、ウラウラで爆発を起こしたんだ」

「フリソス……とか言ったか。確か、どこかの言葉で“金”を意味するな。で、君たちに対する疑問が山積みだ。一旦整理しておくとしよう」

「まず、フリソス……お前はどこから来た? なぜRRRに追われている? そして“どうちゃん”にも……警察をなぜ嫌う? なぜカントーで亡くなった君がアローラに居る? フリソスや、そのドダイトスとの関係は?」


《ようやく……揃ったか》


「!!!」


その時。
テレビ画面に、《国際警察》からの指示が映し出された。


「さっきのビデオが……映った……?」

「まるで、狙いすましたかのように……」


《“金”のフリソス、“銀”のシルバー、“銅”のラーメ……君たちに指令を与える。RRRを統率している、幹部三人を打ち倒せッ!!》

………
……
 ▼ 20 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:57:54 ID:XSWUElLY [20/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
数刻後、誰も知らないとある場所。
あの三人は どこか楽しげに──


「よぉ、エゾとギグ。状況はまた動いたぜ。“因縁”の三人が、俺たちを倒しに来るんだ」

「そうなの? バーベナ」

「そうなんだよ、ギグ! コイツはメッチャ面白くなってきただろう? 境遇も思想もてんでバラバラなこの三人が、だ。まぁ、共通点は……その……“因縁”、だな」

「……z z Z」

ただ一人、少年 エゾは、呑気に腕枕の姿勢でうたた寝だ。

「おいおい、エゾよぉ。テメェ……遊び疲れたか? 寝る前の遊びは止めておけってよ……アレほど」


グ ジ ュ ッ !


「あぁぁ ぁあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ あーーーーッ!!!」


フリソスをメレメレまで運んだ、船乗りの男。その男の身体は何らかの手段によって、アメーバのように、ドロドロに溶かされている。
バーベナは、その身体を弄びながら……。


「言ったのによぉ。こんなにしてよぉ……。全くだぜ。もう『カンタイに居る』って情報は引き出せたから良いものの。用済みだから良いものの。せっかくの玩具をよぉぉぉおおーーーーッ! 遊びすぎだ、 可愛コちゃんめ!!」

「と言ってもこの人、もう、脳(考えること)とお口(喋ること)と……あと感覚(痛がること)か。ぐらいしか残ってないよ。ねー、壊れたおもちゃはさー」


「──捨てちゃおうよ」
 ▼ 21 ンメル@はいぶくろ 19/06/13 16:05:49 ID:0peU3eFE NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 22 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:11:30 ID:XSWUElLY [21/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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《君たちで、全ての元凶である RRR を討伐するのだ! 奴らの足取りを掴めた……今はジェードジャングルに、奴らはいる!!》


「よくはわからない……。手がかり一つなかったのに、なぜ、上層部はこうもあっさりと……」

「ハンサムさん、指令にはこうもある。『ハンサムはバックアップに回れ』、と……」

その指示を受けた時、ハンサムとシルバーは困惑し。

(なぜ、国際警察とやらが俺のことを……。俺も“知らぬ”、過去を……)

フリソスも同様だった。
とにかく三人で、ジャングルに向かったのだ。

****

「あっついねー、ここ。幽霊がこんなこと言うのも変なんだけど」

「ラーメ……一体、どういうことなんだ?」

「……警察は嫌いだけど、ロケット団は……もっと嫌いだったから。あえて、ね。言うことを聞くことに……したの」

「お二人さん、なんか変な感じだが……まぁ、とにかくこれは指示だ。よろしくな。えっとだ。俺はシルバー……。さて、その」


『『奴らを探そうか』……かな? 『尻尾巻いて帰ろうか』かな?』


「!」


──謎の、声。
 ▼ 23 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:11:47 ID:XSWUElLY [22/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「オーダイルッ!!」

『ダオダーーッ!!!』


シルバー、パートナーのポケモンを繰り出す。


(敵の位置……どこだ)

「……シルバーとか、言ったっけ? まずは、“足”だ」


……ビチュッ!


「……っ!?」


予測もできぬ方角から、シルバーの左足に謎の液体が振り注がれ……。


「……うわあぁぁぁぁあッ!!!」

「!? ……シルバーッ!!」


シルバーに激痛が走り、絶句。その液体は、毒液だったのだ。
フリソスはその悲痛な声に反応し、辺りを警戒する。


「……心配するな、フリソス。俺がポケモンを繰り出したのは……」
 ▼ 24 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:12:07 ID:XSWUElLY [23/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「こんな事態を、想定しているからだ……。なぁ、オーダイル……」

『ダァ♪』

(フン……その余裕ごと、ドロドロに溶かしてやる。そら、次はもう一足……もう一発)


……ビシュッ。


「オーダイル、“ふぶき”だっ!!」

「!!」


コオォォォォ……。


敵もまた、予想だにもしていなかった戦法。
吹雪く冷気が、飛来する毒液を凍てつかせ……。


カチィッ!!


「毒液が凍って……氷柱状になった。そら……オーダイル、投げ返せッ!!」

『フダァーッ!!!』


凍った毒氷柱を、飛んできた方向に打ち返す。
 ▼ 25 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:12:23 ID:XSWUElLY [24/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ギャアッ!!」

悲痛な叫びが、ジャングル内に響く。

(クソ……擬態が解ける)


ボワァ〜……。


「……つまりお前が、敵か」

「……チッ」


ジャングルの背景に擬態し、同化していたのは……。
一人の少年と、一匹のポケモン……ゲッコウガだったのだ。

しかし、そのゲッコウガは……。


『ガコココォォウ……』


(このゲッコウガ。普通の個体より……凶暴性が、増している)

シルバーと。

(まさか、何者かに改造されて……?)

ここまで身構えていたラーメの二人が、推測する。
 ▼ 26 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:12:39 ID:XSWUElLY [25/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「なぁなぁなぁ……なんで溶けてくれないんだよぉ〜〜〜……」

その少年、“ギグ”は声を荒げる。

「楽な遊び……と思ってたんだよぉ……。雑魚三匹を溶かすだけの、単純な──ってよぉ。なのに、溶けねぇ……じゃねぇか。思いっきり、ムカつきってのがよぉ! ……湧いてくるぜーーーーッ! ゲッコウガ!!」

『ガァーーゲガァーーーッ!!』


ベロォン……。


「なっ……」


ゲッコウガが伸ばした舌の先には、『毒』の刻印が施されていたのだ。


「オーダイル! ズガドーン!! ドダイトスッ!!!」


危機を察知した三人、各々のポケモンに回避命令を繰り出す。


「『毒舌』……オラァアアアーーーッ!!!」


その舌を回転させて、周りの森林を破壊した……。
 ▼ 27 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:12:57 ID:XSWUElLY [26/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
………
……


シルバーの父親は、旧ロケット団の“頭領”であった。
悪事の限りを尽くすロケット団。そして父。

そんな出生の自分を呪い、自暴自棄になり、かつてポケモンを盗んだこともある。
その時の罪は赦され、正式に譲り受けたのが今のパートナー、オーダイルだ。

シルバーが国際警察に所属した理由は三つ。
そんな自身自身への贖罪のため。
そんな旧ロケット団をかつて解散し、行方知れずの父を探すため。

そして、『地下通路爆破事件』の主犯が何者なのかを突き止め、ソイツに鉄槌を喰らわせるためなのだ。

------------------------

薙ぎ倒された木々を見て、ラーメは言う。


「あなたの『ボス』、何者? ポケモンを改造できるだなんて」

(あぁ、そうだ……そんなヤツ、一体誰なんだ)

シルバーは、ラーメの意見に同調する。

「……え、俺のボス? えーと、もしかしてバーベナのこと……。あ! これ言っちゃあいけなかったんだっけ」

(バーベナ……!)


シルバーはその名を、存在を知っていた。
かつてのロケット団員、バーベナのことを……。
 ▼ 28 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:13:20 ID:XSWUElLY [27/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「まぁ、でも……お前らの口を封じれば……溶かせば……いいだけだ! 喰らえ、毒舌──」

『ゲッガァーーーッ!!!』


……カポッ。


「え゛」


──ボオォンッ!!


ギグとゲッコウガが、爆炎に包まれた。


「ズガドーンの“ビックリヘッド”。お前さんらが口を開くのを待ってたんだぜ。体内は、無防備だろうからな……」

「う、うぅ……」


一瞬にして死に体。もはや戦闘不能は明らか。
しかしギグは、その目は未だ、ギロリとシルバーたちを睨んでいる。


(……。どうして、だ。なぜ、そんなに哀しい目をしているんだ……)


シルバーは思う。
かつて孤独だった時の、自分の目に似ている……。いや、それ以上である、と。
 ▼ 29 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:13:41 ID:XSWUElLY [28/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(なにを……この少年にしたというのだ、『バーベナ』!)

シルバーの表情は、怒気に満ちていた。
そしてシルバー。ギグに近づき、その主張を聞く。

「バーベナが……言ってたんだ……。全ては『Fall』の仕業だって……。俺の、父さん……母さんが……。死んだのは……。『Fall』のせいなんだって……」

「……Fall ?」

(……Fall)

フリソスはまたもやその名を聞いた。
ロケット団員たちが自分に対し言っていたその単語の意味も、ましてや彼らが自分を追う意味も、彼は『分からず仕舞い』なのだ……。


──その時。


ボ ン ッ ! !


「!!!」


……ゲッコウガの身体が爆裂し、飛散した!


「馬鹿な! 今のはビックリヘッドなんかじゃない……もっと大きな威力……。まさかッ、このゲッコウガの身体には……」

元々爆弾か何かが埋め込まれていて、遠隔で爆発させられた。
そう、推測できる。
 ▼ 30 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:14:01 ID:XSWUElLY [29/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そ、ん……な……。ゲッコウガ……」

「恐らくは……お前のボス、バーベナの仕業だ。なぁ、お前。お前は……バーベナに言いように」


「う わ あ ぁ ぁ ぁ ぁ あ ッ ! ! !」


「お、おい……」


曲がりなりにもパートナーを失った哀しみからか。
信頼していた男に裏切られたやりきれなさからか。
ギグの乾いた叫びは、やがて途切れ……その場に彼は、ドサッと倒れ込んだ。


「このコ……どうやら、気絶しちゃったみたいだよ」

「シルバー……どうする? 一度、ホテルに戻るか……」

「あぁ、そうしよう。どうちゃん、ドダイトスにコイツも載せてくれ……」


一同はギグを連れ、ハンサムの元へ帰還した。
 ▼ 31 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:15:37 ID:XSWUElLY [30/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

……
………

「えー、ギグ。負けちゃったのぉ? つまんなぁい」


──返答、なし。


「あっ、そっかぁ。バーベナ、出かけてるんだっけ。つまり今までの、アタシの独り言か。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」


------------------------

その少女エゾは、弟ギグと共にあの『爆破事件』に巻き込まれ、両親を失っている。そこを恐らくはバーベナに拾われ、何かしらの洗脳を施されて、二人は歪んだ性格となってしまった。

「その爆破事件を、なつてバーベナたちが引き起こした物ともしらずに、な」

ハンサム、複雑な思いを抱え、二人に同情する。

「バーベナはともかく、そんな二人を『討伐』しろだなんて……。上層部は、本当に何を……」

「……」

一同は、しばらく沈黙し。

「──話は変わりますが。『Fall』とは……何だ? ハンサムさん。ギグは両親を失ったのはそれの所為だと唆されていた。俺は新参者だから知らなかったが……。国際警察の一部のメンバーはその意味を知っているとか」


「……『ウルトラホール』を通り、この世界に来た者の、総称だ……」


「!!!?」
 ▼ 32 マタマ@かざんのおきいし 19/06/13 17:16:29 ID:zez2p04E NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 33 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:55:30 ID:XSWUElLY [31/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……私はとある事件でその言葉を知った。別世界からやって来た人間……。フリソス、君ももしや、そうなのではないか?」


「──ウルトラメガロポリス」


「?」

「そこから来たと言うことだけは、覚えている。それ以外に、俺の記憶はないんだ……。後は相棒のこのズガドーン……通称 UB らしいが。それだけだ」

フリソスの告白に対し……。

「違うでしょ、フリソス。アタシと出会ったんでしょ……この世界で、ね。アタシもいるから……フリソス。一人だと、思わないで」

「……ラーメ」

「ちょっと言いか、フリソス」

シルバー、そこに口を挟む。

「アンタも、あの爆破事件に関わったのか?」

「……それを、覚えていないのだ……。情けないことに。だから警察さんのウソかホントウかもわからない。従うしか、ないさ」

「いや、俺たちはウソなんて……。多分、だけど……」


──その時。


《諸君! 諸悪の根源の一人、エゾはせせらぎの丘に潜伏中!! 気を引き締めて挑むように!!!》


「……というワケ、か。向かうしか……ないよな」
 ▼ 34 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:55:50 ID:XSWUElLY [32/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アーカラ5ばんどうろから一同は、この水辺 せせらぎの丘 に到着した。


(……)


気配を、感じる……?


「どうした……?」

「いや、なにか──」


《ブクブク……》


「ん?」



「バ ァ ッ ! ! !」



「うぉッ!!」


水面から飛び出て来たのは、水着姿の少女だった。
 ▼ 35 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:56:12 ID:XSWUElLY [33/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ぷはー。ね、苦しかったんだよ! アンタらが来て急いで潜って、出てくるまで潜ってるのって、疲れるんだから……。しんどいんだから、ホントに」

「ハァ……そうかい」

「まぁ驚かすのに意味はないんだけど。ねぇ、ギグは……どうしたの?」

「案の定、お前が、エゾ……か。アイツは今、こっちで療養してもらっているよ。少なくとも拷問や尋問なんてことはしないさ」

「……」

(姉弟なのに、『良かった』とも言えなくなっているのか……)

シルバーもまた、彼女に同情すると……。

「良かった……」

「お」


「新しいオモチャを、壊せるから……マフォクシーッ!!」

『フォグワァアアアーーーッ!!!』


「そうかい……シルバー、俺の右に! ラーメは背後だッ!!」

「大丈夫、アタシだって戦える……“じしん”ッ!!」

『ドダーッ!!』

そう言いドダイトスは、地面を揺らしに掛かるのだが……。
 ▼ 36 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:57:10 ID:XSWUElLY [34/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「マフォクシー……“マジカルフレイム”」

「!」


七色に光り輝く炎の渦がドダイトスを包み、その動きを制限する。


『ド…ダ……ッ!!』

「ドダイトス!」

「アタシのポケモンも、改造されてるってワケ。さぁ、次は……」


「“ビックリヘッド”だ、ズガドー……」

「“サイコキネシス”ッ!!」

『フォォオオオオーーーッ!!!』


ボンッ!!


しかしその時、ズガドーンの頭が消し飛んだ。


「なっ……」

「そのクレイジーなアタマが厄介だからさ。念の力で先に消し飛ばしといた♪ しばらく使えないでしょ……後はアンタだよ、シルバー」

「ぐぅ……」


一気に劣勢に追い込まれる、一同。
 ▼ 37 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:57:34 ID:XSWUElLY [35/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(あの炎が厄介だ……。本体を叩こうにも、とにかく……)

十八番を封じられたフリソス、思案し……。

(……走るんだッ!!)


フリソス、マフォクシーの元に駆け出した。


「え……フリソスッ!?」

(バカな……勝算もないのにッ!?)

ラーメとシルバーの二人、驚愕する。


(え、ヤバい──?)


しかし意外なことに、エゾ、本能的に己の“危機”を察知した。


------------------------

少し前の出来事。
これは、フリソスがアローラ地方に辿り着いた際の出来事。
記憶を失っている者は、普通ならば、なぜ自身が見知らぬ地に居るのか……と感じることだろう。

(……)

しかし彼の場合は、“違って”いたのだ。
 ▼ 38 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:58:15 ID:XSWUElLY [36/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
懐かしい──?


そう、彼は感じていたのだ。
遠い先祖の記憶だろうか。初めて来た土地だと言うのに……。


※※※※

「あなた、私が幽霊って言ったら、信じる……?」

「ずいぶんはっちゃけた幽霊もいたもんだな……。なんだって信じるさ」

「え、意外ー」

「……幽霊っぽくない反応なんだよな、なんだか」


ある日、ふと少女 ラーメに知り合った時も、彼はてんで戸惑わなかった。

それが、自分自身を取り戻す、きっかけとなるのなら……。
彼はそう、思い続けた。


「うふふ……。あなたって、どこか他人に思えないんだよね」

「バカ言え。俺は生きているぞ。幽霊に知り合いが居た訳がない……」


フリソスとラーメの交流は続き、いつしか二人の間に、ある種の信頼関係が築かれる。

……だからこそ、ラーメは心底、奇行とも言える彼の行動に戸惑っているのだ。
 ▼ 39 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:58:38 ID:XSWUElLY [37/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(シルバーを守るための、撹乱……? わからないけど、アタシの何かがヤバイって言ってる。仕留めないとッ!!)

エゾ、“マジカルフレイム”をフリソスに向け、発動するが。

「“ハイドロポンプ”ッ!!」


……シュウゥウッ!!


「!」

シルバーのオーダイルと、エゾのマフォクシー。
互いのポケモンの攻撃がぶつかり、相殺し合った。

「守られる程ヤワじゃない。なぁお嬢ちゃん。摩訶不思議な技も……タイプ相性には勝てないんだ」

「あっ……」

マフォクシー、退避するが。


キイィ……。


「!」

見えぬ壁に、マフォクシーの身体がぶつかった。

(え、これは……!)
 ▼ 40 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:59:31 ID:XSWUElLY [38/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そうーー“ひかりのかべ”ッ!!」


フリソスは、奇行に乗じて四方八方に、ズガドーンの“ひかりのかべ”を展開していたのだ。
そして、その壁がマフォクシーの元に集結し……。


ガシュインッ!!


(アタシのマフォクシーを、包み込んだ……!!)

「炎攻撃には、大量の酸素が必要だろう? そんな密閉空間で炎を燃やせば、あっという間にその酸素は不足し──」


……シュウゥウ。


フリソスが語る途中、“マジカルフレイム”が消失した。


「も、もう一度……」

「ありがとう、フリソス……その時間がほしかった。ここは水場だから、水は十分にあるから……」

(!)

シルバー、オーダイルに今一度、命令を繰り出す。


「“なみのり”だ、オーダイルッ!!!」
 ▼ 41 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 17:59:46 ID:XSWUElLY [39/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『ダォラァーーーーッ!!!』


ビヂャァァァァァアッ………!!


オーダイルは周囲の大量の水を操り、渾身の全体攻撃を放った──


『フォッガレァ……!!』


そして攻撃を受けたマフォクシーの身体が、ドスンと音を立てて倒れ込む。


「そんなに濡れていては、マフォクシーの爆破は起きないぞ……安心しろ、エゾ」

シルバー、うずくまるエゾに語りかける。

「アタシ、負けた、の……? でも、なんでアナタは、アタシのことを……」

「そりゃあ、気にかけるさ。パートナーを失う悲しみは……」

ーーーー

『グレッグル、お前の無念は、きっと私が……。きっと、このハンサムが……』

------------------------

かつての上司の悲痛な言葉を想い返し。

「もう、誰にも味わいさせたくはないんだ……」
 ▼ 42 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 18:00:20 ID:XSWUElLY [40/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そうか、アタシは……捨てゴマだったのね……」

「?」

エゾ、シルバーに……。

「ほら、ラーメちゃん……いないでしょ? 今の闘いの隙に、アタシたちのボス、バーベナがさらっちゃったの」

──驚愕の事実を伝える。

「!」

「なんだと、ラーメ……いつの間に……!!」

そう言い終えると……。

「うっ……」


フラッ……。


エゾは、倒れ込んでしまった。


「気絶……している。ハンサムさんの所に、また運ばなくては。そしてラーメのことを、報告しなければ」

「クソッ、ラーメ……俺が至らないばかりに」

(しかし、なんなのだ、この……胸騒ぎは…………)

………
……
 ▼ 43 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 18:01:52 ID:XSWUElLY [41/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして、一同がホテルへと戻ると……。


「ハンサムさん、エゾを連れて来た……。ん、ハンサムさん?」

「シルバー、何かが変だ! なんだ……書き置き?」


そこにハンサムの姿はなく。
書き置きらしき紙が、テーブルに置かれていた。


《ラーメ、そしてハンサムは私が預かった。
 返してほしければ、ポケモンを持たずに二人で来い。
 これは、命令だ》


「罠だとしても、行くしか……卑劣な手を」

「恐らく……というか絶対にバーベナとやらの仕業だよな。シルバー、バーベナを知っているのか?」

「あぁ、バーベナはかつて、旧ロケット団の幹部格だった男さ……」

------------------------

人々やポケモンに残虐行為を繰り返し、あまりの酷さにロケット団内からも反発の声が多かった。
そして俺の父とよく反発し、旧ロケット団から追放されたハズだったのだが……。

「新たにRRRを結成し……。何故かお前と……後は、旧ロケット団の負の存在ともよべる俺を始末したがっているんだろう」

(ラーメ、すぐに助けるからな……!!)
 ▼ 44 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 18:31:38 ID:XSWUElLY [42/42] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

……
………


二人は指定場所の、とあるビルの一室に訪れる……。


(なんだここは、まるで病院の部屋のようだ、が……)


「フリソス、シルバー! 来ちゃ、ダメだったのに……」


その時 ラーメの声が、二人の脳内に響いた。


「ラーメ!? この声、どこから……。……!?」


部屋に、居たのは。


「フフフ、よくぞ来た。サカキの息子、シルバーに……。“ロンズディ”の息子、フリソスよッ!!!」

「!!!」


とある男の隣に立つハンサムと。
なぜか医療用のベッドで何かしらの処置を施されているラーメと。



……あろうことか、国際警察の装具にその身を包んだその男、バーベナの姿であったのだ。
 ▼ 45 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 19:59:41 ID:LIhA/yNY NGネーム登録 NGID登録 報告
「もしや貴様が、今まで俺たちに、指令を……? それに、その、名……。……うわあぁッ!!?」


フリソス、絶句。


「え、フリソス……どうしたんだ!?」

「思い出したんだろうさ。父親ロンズディの名一つで、己の過去を、な。そして聞かせてあげよう。君たちの、全てをッ!!」

------------------------


フリソスの父、ロンズディはかつて国際警察のリーダーを務めていた。

私バーベナは、表向きはロケット団員だったのだが、実のところ、国際警察の二重スパイでね。
サカキに疑惑を持たせるため、ロケット団を一気に壊滅させるために、あの地下通路事件を考案し、引き起こしたのだ。


「お前が、元凶だったのか……!」

シルバー、口調を荒げる……。


──私の口からそれを聴かされたロンズディは、こう言ったよ。


「お前、なんてことを……。どれだけの命があの事件で奪われたのか、わからないのか!?」

「……『正義に』犠牲は付き物なのですよ、我らがリーダー……クックッ」
 ▼ 46 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 20:11:40 ID:SqKwDSko [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「今すぐにこの事実を公表しな け  れ  ば」


……ドカッ!


公表しようとしたロンズディを鈍器で殺害し、その死体の処理を……ハンサム、君に任せたんだったな。


「……」

「ハンサム、さん……?」


「許して、くれ……。身寄りがなかった私を、バーベナが育ててくれたのだ。バーベナが私を国際警察に……。最初から、私は……」

「ククッ、そしてそのフリソスは……」


フリソスは爆破事件の際、偶然にもウルトラホールの亀裂が空間に生じ、彼はこのアローラに迷い込んだのだ。しかし……。

ロンズディもまた故郷に嫌気が指し……。ウルトラメガロポリスを捨てて……家族を捨てて、このアローラに来訪した存在だったのだ。
そして一から登り詰め、国際警察のトップに立った!!


「そしてロンズディには、この世界に来てから作った子どもが居た。それがこのラーメだ。事件に巻き込まれた最愛の娘にロンズディは、延命処置を施したのだ」

二人の元に幽霊状態のラーメが来て、言う。

「つまりあれは、アタシの身体なの。アタシ、実は生霊だったの。アタシのことは、あれからバーベナがお金を出してくれて……逆らうことが……できなかったの……」
 ▼ 47 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 20:26:20 ID:SqKwDSko [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「実に面白い、戯れだったよ……。邪魔になったエゾとギグを、倒してくれたしな……。まぁ、殺すまではしてくれなかったが……」

(邪魔に? コイツ、それだけの、理由で……許せないッ!!)

シルバー、憤怒。

「そしてここで、無防備なる君らをなぶり殺し、俺は改めてこのアローラに宣戦布告を行うッ! 俺が……RRRッ、いや世界の頂点にッ、君臨するのだッ! さぁ……ブリガ──」


「ご高説のようだが、バーベナよ。これは……なんだろうか?」


「……!?」


ハンサムが、何かの装置を手に抱えていた。


「かつてとある地方の王が創ったとされる、“最終の兵器”。RRRが裏のルートで不完全に再現し、この力で、エゾやギグのポケモンを改造したのだろう? だが、この力を貴様に向ければ……」

「いつの間にーーハンサム、やめろ! お前はこの世界に……やめろ!! せ、世界における、真の王が誰かを理解していない!! や、や、やめろッ!!!」

「──王だったら、ポケモンを殺したって良いのかね……」


ピ カ ア ァ ァ … … !


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!!?」



装置から放たれる虹色の光線が、バーベナに直撃した。
 ▼ 48 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 20:27:44 ID:SqKwDSko [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
キラァ──


今程の余波なの……だろうか。
七色の眩きが、一同を包み込んだ。


「う、うーん……。……え!?」

「ラーメ!?」


なんと処置を受けていたラーメの身体が、起き上がったのだ。


「この最終兵器の眩きには、治癒効果があるのだろう……。ラーメ、おめでとう、本当に、本当に……」

「フリソス、シルバー……」


『リガァ……』

「? あの、ポケモン……」


倒れ込むバーベナの元に、ポケモン ブリガロンが寄り添っている。


「繰り出す暇がなかったバーベナのポケモンか。安心しろ、ブリガロン。出力を抑えたから、バーベナは気絶しているだけだ」

『リィ……?』


「もう誰にも……愛するパートナーを失わせたりしない……絶対に、な」


「ハンサムさん……」

………
……
 ▼ 49 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 20:28:07 ID:SqKwDSko [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
その後、エゾとギグは、国際警察に加入した。


「ギグ、行くよー。今回の任務はね」

「ま、まってエゾ! 俺、まだ着替えのとちゅ……」


落ち込んでいたギグを励ましたのは、他ならぬ、姉であるエゾであった。

時間と共に洗脳も解け、性格も丸くなり。
きっと二人は、良い戦力になるだろう。


「ここが、故郷……」

「ウフフ、フリソスのそんな表情……初めて見るかも」

『ドダァー♪』


フリソスとラーメはドダイトスの背中に載って、旅を続けている。
たまに俺たちのケータイに写真を送ってくる。


えっと、ここは、どこだろう?
ウルトラメガロポリスとやら、だろうか?



そして、俺とハンサムさんは……。
 ▼ 50 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 20:28:32 ID:SqKwDSko [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
『ギガガァ……』

「ハハハ、ヤングース……可愛いなぁお前は」


アローラ地方で、俺はヤングースを捕まえていた。
それをハンサムさんに譲渡した。新しい彼のポケモンになる。

進化すれば、張り込み等で更に頼れる存在となることだろう。


「ガラル地方でなんちゃら団が暴れているらしいぜ……行こうか、ハンサムさん」

「あぁ、相棒ッ! いやさ、“ダンディ”ッ!!」

「あぁ、もう、その名前でいいよ……」


──今日もまた、事件、事件だ。


………
……
 ▼ 51 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 20:28:52 ID:SqKwDSko [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
混わりし色は、時に、虹の如き輝きを放つ──

------------------------

………
……


殺さずの混色 − 完 −
 ▼ 52 ーデリア@きのはこ 19/06/13 21:22:01 ID:W4CgLc.Y NGネーム登録 NGID登録 報告

面白かった
 ▼ 53 ンファン@ノメルのみ 19/06/14 00:21:44 ID:1prM5cOk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!!
いいお話
 ▼ 54 ンバーン@あかいウロコ 19/06/14 00:25:18 ID:AWlk3GP6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 55 ミツルギ@おおきなキノコ 19/06/14 06:33:44 ID:0y.osMUE NGネーム登録 NGID登録 報告
おつです
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