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【SS】ポケモン不思議のダンジョン 花の盗賊団

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/03/27 23:18:48 ID:qk0Nxw9k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ






 ▼ 308 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:34:25 ID:mM/kAz2c [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしの信じていた何かが、脆く、砕けた気がした。

あの暖かい感情は、なんだったのか。

岩根君は、あたしを、「いじめられている悲劇のヒロイン」として、型にはめてしか見ていなかったのか。


「ごめん、ちょっと……考えさせて」


言葉をなんとか絞り出す。なぜか、酷く喉が乾いた。

カラカラなまま、あたしはまた、紙に向かった。

けれど、その日は結局、1行も書けないまま終わった。
 ▼ 309 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:35:07 ID:mM/kAz2c [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
家に辿り着き、どうしようもない吐き気に襲われ、あたしは、トイレに向かって、何度ももどした。

岩根君は、ただの取材で、あたしに近付いていた。

居場所なんて、初めからなかったのだ。

――あたしなんて、初めからいなかった。

そう思うと、もう、何もかも、どうでもよくなった。

そうだ。あたしは全部吐き出した、あたしは、空っぽ。空っぽだから、なんでも入れられる。

あたしは、虚ろ。中身なんて、何もない。

そうだ。そうなんだ。


「あは、アハハ、アハハハハハ!」


トイレの中で、あたしは一人、高らかに、笑った。
 ▼ 310 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:36:25 ID:mM/kAz2c [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしは、再びひずみの前に立つ。

そっと呼び掛けた。


「出て来ておいで、ウツロイド。あなたの事を、守ってあげる。

 あなたの好きなだけ、寄生させてあげる。だから、あたしに力をちょうだい」


もう、わかっていた。あたしは、完全に、寄生されている。

わかってはいるけれど、もはやそれは問題ではない。どのような末路を辿る事になっても構わない。

ウツロイド。あたしの力を、引き出して。空っぽなあたしを、お願い、満たして。

あなたの毒で、あたしを――
 ▼ 311 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:37:06 ID:mM/kAz2c [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日の事。

あたしはナイフを懐に潜ませ、学校に向かった。

これからしようとしている事は犯罪だ。それはわかっている。けれど、あたしはもう、止まらなかった。

授業中、すっくと立ちあがり、無視の主犯格の方へとまっすぐに歩き始める。

先生の制止の声も、あたしには響かなかった。


「何? 久瀬」


あたしは、ナイフを懐から取り出し、そのまま彼女ののどを一突きした。


「が……は……」


彼女は、血を吐いて、倒れる。

悲鳴があがった。あたしはナイフを引き抜く。彼女ののどから血が吹き出した。

頬にかかる血。彼女のうめき声。

あたしが、これをやった。そう思うと、何かのタガが、外れた。
 ▼ 312 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:37:48 ID:mM/kAz2c [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それからの事は、よく覚えていない。

気付けば、クラスには、いじめに関わったクラスメイトの死体と、それから岩根君だけが残されていた。

先生や、いじめに関与していない生徒は逃げ出して、助けを呼びに行ったのか。

あたしは、竦む岩根君に、声を掛ける。


――ねえ、岩根君。

――――誰かと本気でつながりたいって思った事、ある?


岩根君は、あたしに怯えていた。

――あたしは、空っぽ。何もできないから、せめて満たしてくれる存在が欲しかった。

彼の腹部から、滴る血。

――あなたは、そうだと信じてたのに。結局、裏切るんだ。


「久瀬……お前……」

「岩根君」


そして、彼は崩れ落ちた。
 ▼ 313 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:38:22 ID:mM/kAz2c [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしはそれを抱き上げると、ウツロイドを呼んだ。

ひずみが現れ、あたしは、彼とともにその中へ飛び込んだ。


あたしの名前は、久瀬美々華。

この世界には、存在していない。

それならいっそ、人間の存在しない世界へ。

すべての記憶を失って。

あたしの名前も、あなたの記憶も失って――
 ▼ 314 りもの湖◆1kfBK4rWHM 17/04/06 21:54:03 ID:mHM36cbY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 315 ミカラス@ピーピーリカバー 17/04/06 23:00:01 ID:fGozLbZM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 316 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:17:55 ID:RGqgKqVs [1/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







8章 ミミッキュの激白






 ▼ 317 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:18:26 ID:RGqgKqVs [2/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


バクガメス『ウルトラビーストを、だからもてなしてやるんだ。この世界は、共存に耐える。そんな世界だと教えるために』


その情報を携えて、僕らはジジーロンの家に向かった。

イワンコたちが戻って来た時、恐らくここが拠点になるだろう。

それに、まだ見ぬ協力者のジュナイパーも、ここでイワンコたちと情報を共有していたらしい。

情報を集めておくのは、だからここが最適だ。
 ▼ 318 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:18:59 ID:RGqgKqVs [3/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロン「……なるほど。イワンコたちは、盗賊じゃったのか」

チラーミィ「……でも、悪いポケモンではなかった。お尋ね者だったとしても。それは、間違いない」

ジジーロン「そうじゃの。ワシも、孫を助けてもらったのじゃ」

チラーミィ「彼らは、脱獄しました。もしやって来たら、ここで匿ってやってください。もちろん、解決の暁には、何かしらのお礼をさせていただきます」

ジジーロン「お礼など構わんよ。長年生きて来たが、こんな刺激的な事件に巻き込まれる事など初めてなのじゃ。

      正直、童心を取り戻して、ワクワクしておるよ」

チラーミィ「いえ、さすがに甘えすぎだと思うので。そこらへんのけじめは付けたいから、受け取ってください」

ジジーロン「まあ、そういうのなら仕方ないの」

ニューラ「……本題に入ります。ジジーロンさん。ジュナイパーと、もし来たらイワンコたちに伝えてください」


ウルトラビーストを歓待する事で、世界の平和を保つ。

それが正解だ。

だから、リアライズは、アクジキングの空腹を満たすため、黄金のリンゴを調査団から貰って来る。

そちらで何ができるかわからないが、そちらの状況を見て、歓迎の準備だけをしておいてくれ。
 ▼ 319 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:19:37 ID:RGqgKqVs [4/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「覚えきれますか? なんなら、書き留めますけど」

ジジーロン「いや、任せてくれ。こう見えてワシ、記憶力には自信があるからの」

ニューラ「わかりました。行こ、チラーミィ」

チラーミィ「だね。の前に、ちょっと気合い入れよ。行くよ」

ニューラ「オーケイ」

チラーミィ「リア!」

ニューラ「ライズ!」

リアライズ「ゴー!!」


僕たちの掌が、打ち合わされて、音を奏でた。
 ▼ 320 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:20:11 ID:RGqgKqVs [5/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


コスモウムはマッシブーンと共に、拘留所から4匹を助けたいと言いだし、顔が割れている僕たちは行けないからと2匹に別れを告げた。

それから、他に行くあてもなく、ジジーロンの家を目指す。


ミミッキュ「これで、本格的にお尋ね者だね。脱獄犯だもの」

イワンコ「だね。ほら、そろそろ着くよ」


辺りを見回しながら、僕はその家の扉を叩く。


イワンコ「すいませーん、ジジーロンいますか?」


ややあって、扉が開かれた。
 ▼ 321 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:20:42 ID:RGqgKqVs [6/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロン「おお! イワンコに、ミミッキュ! 伝言を預かっておるぞ。そして、ジュナイパーもちょうど帰って来た所じゃ」

イワンコ「ホントですか?!」

ジジーロン「とりあえず、速く入った方がええ。指名手配犯じゃからな」

イワンコ「はい」


臭いで確かめる。確かに、ジジーロンの家の臭いと、ジュナイパーの臭いだけだ。

ジュナイパーがこのタイミングで警察に突き出すようなKYでなければ、安全と見ていいだろう。
 ▼ 322 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:21:21 ID:RGqgKqVs [7/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
はたして、ジュナイパーは、少し言及しただけだった。


ジュナイパー「隠し事してるなとは思ったんだけど、盗賊だとはね。さすがに気付けなかったよ」

イワンコ「やっぱり、バレてましたよね、隠し事してる事は」

ジュナイパー「探偵を舐めないで欲しいな。で、まずは君たちから情報を聞かせてもらおう」

イワンコ「はい」


フェローチェとの戦いに関して全て隠さず語り、デンジュモクとの対決について語り、それからコスモッグについて語った。

ウルトラスペースで出会ったマッシブーンに関しても。要するに、ウルトラビーストにまつわるすべてを隠さずに伝えたのだ。

未だ、彼らの動機は把握できていない。けれど、充分に有益な情報だと思っていた。

が……。


ジュナイパー「……なるほど。それだけ?」
 ▼ 323 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:21:53 ID:RGqgKqVs [8/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「え、ああ、まあ」

ジュナイパー「ジジーロンさん、リアライズの2匹から何か伝言預かってますよね?」

ジジーロン「おお、そうじゃそうじゃ。タイミングを見計らっておった所じゃ」


世界の平和を保つため、ウルトラビーストを歓待する。

共存に耐える世界だとアピールするため。

脳内でいろいろと繋がり、僕はあっと声をあげる。


ジュナイパー「……参ったな。僕の出番、完璧に奪われた。

       僕が掴んで来た情報も、だいたいその中に含まれる。旅に掛けた時間が長いからなあ、安楽椅子探偵には負ける。

       ただし、最高の協力を手に入れた」


なんでも、テッカグヤとカミツルギ、2匹のウルトラビーストが、既にサーカス団エクリプスと友好関係を築いていて、挙句の果てに協力してもらっているという。

エクリプスの中の旧友と再会し、ジュナイパーはエクリプスとウルトラビースト、事件の鍵を握る2つのグループから協力を取り付けたのだ。
 ▼ 324 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:22:42 ID:RGqgKqVs [9/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「凄い……」

ジュナイパー「僕の手柄ではないけどね。アクジキングの空腹を満たすための黄金のリンゴ、か」

イワンコ「……僕たちも僕たちで、アクジキングを捜さないとですね」


僕の呟きに、ジュナイパーがフードを閉ざす。

何か、喋りかけてはいけないというような雰囲気を感じ、僕は息を呑んだ。

どうしたのだろう。


ミミッキュ「ねえ、イワンコ。……コスモウム、大丈夫なのかな」

イワンコ「え?」

ミミッキュ「コスモウム、ポケモンの事、嫌いになってたりしないよね」
 ▼ 325 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:23:14 ID:RGqgKqVs [10/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
考えを巡らせる。留置所での慟哭。あの叫びに、どれほどの憎しみがこもっていたのか。

僕たちを逮捕するようなポケモンなんて、消してしまえ。そんな考えに至ったりしないか。

コスモウムは、素早さが遅い。1匹でキレられても、ポケモンが力を合わせれば抑えられるだろう。

けれど、それでいいはずもない。


イワンコ「大丈夫……だとは思うけど、わからない」

ジュナイパー「いや、君たちは、記憶を取り戻すのが先決だ」


不意にジュナイパーが言う。

驚いて振り返ると、ジュナイパーが僕らを見据えていた。
 ▼ 326 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:23:58 ID:RGqgKqVs [11/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「記憶の中に、何か大事な物事が隠れているかもしれない。

       ウルトラビーストに対しての、過剰な怯え。君のポケ生の中で、何があったのか」

イワンコ「記憶の中に……」

ジュナイパー「アクジキングは、僕が捜す。君たちは、ウツロイドを捜してくれ」

イワンコ「……コスモウムに関しても、心配です」

ジュナイパー「……ああ、さっきの話の中に出て来た、コスモッグの進化形か。

       ……心配って、何が?」


先程の懸念を彼に伝えた。

彼は、しばし考えを巡らせるようにうつむくと、それから言った。


ジュナイパー「仕方ない、僕がそっちに行くよ。きっと、アシレーヌたちが見付けてくれる。君たちはやっぱり、ウツロイドだ」

ミミッキュ「わかりました。他に何かありますか」
 ▼ 327 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:49:55 ID:RGqgKqVs [12/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「いや、これぐらいだ。君たちの拠点は……ここより、うちに来ないか? 妻のアママイコも伝達してくれるけど」

ジジーロン「いや、構わんよ。ワシも、何かしたいからの。ここまで知っておいて、何もできないのは辛いのじゃ」

ジュナイパー「そうですか。わかりました、ありがとうございます。

       よし、じゃあ行きましょう!」

みんな「おー!」
 ▼ 328 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:51:09 ID:RGqgKqVs [13/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
という事で、僕らは再びアテのないウツロイド捜しに精を出す事になる。

あまり街中に出られないから、活動範囲も限定されてしまう。

それでも、捜すしかなかった。それが現状僕らに与えられた課題だから。


ミミッキュ「ねえ、イワンコ」


唐突に、彼女が口火を切る。


イワンコ「何?」

ミミッキュ「ウツロイドは、あたしが願えば、たぶん来る」

イワンコ「え、どうした急に」


しかし、それきりミミッキュは黙り込んでしまった。

訳がわからない。願えば、来る?
 ▼ 329 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:51:55 ID:RGqgKqVs [14/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし本当に、あの臭いが接近して来た。

僕らも纏うその臭いだが、さらに強度を増したのだ。


イワンコ「ホントに来た、ウルトラビーストが……」


ミミッキュは、それでも何も言わない。

初めからわかっていたと言うように、じっとそこに佇んでいる。


イワンコ「ウツロイド? いるのか?!」


僕の呼びかけに、答えるひとつの陰。


ウツロイド「久しぶりーイワンコにミミッキュ」
 ▼ 330 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:53:20 ID:RGqgKqVs [15/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「ホントに来たぁ?!」

ウツロイド「いやー、だって、スペースの強烈な臭いがするから、ビースト仲間いるのかなーって思ったんだもん。

      まさか、2匹だなんて思わなかったよー」

ミミッキュ「……初めから、感じてたクセに」

イワンコ「え? いや、僕もミミッキュも、最初はそんな臭いしてなかったけど」

ミミッキュ「イワンコでも感じられない程だったとしても、あたしは知ってる!

      あたしたち、初めからウルトラビーストと同じだったんだって!」

ウツロイド「……あー、もしかして、思い出したの? ミミッキュ」


この期に及んで、ようやく俺は違和感に気付く。

ミミッキュが、思い出した?


イワンコ「おま、記憶喪失だったのか?」
 ▼ 331 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:54:16 ID:RGqgKqVs [16/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、ミミッキュに声を掛ける。

ミミッキュはそのばけのかわを震わせた。

ふっと短く息を吐き出すと、彼女の本物の目はウツロイドを眺め、それから覚悟を決めたような表情を浮かべた。


ミミッキュ「……あたしも、あなたと同じだった。あなたと一緒に、あたしはこっちに来ていた」

ウツロイド「……ホールを通り抜けると、こんな事が起こるなんて、あたしビックリしちゃったんだ。

      ニンゲンが、ポケモンになっちゃうなんて」

ミミッキュ「ウツロイド。あなたは、殺したって言ったよね」

ウツロイド「そだよー」

ミミッキュ「本当に、“あなたが”殺したの?」

ウツロイド「……ううん。あたしに寄生された、ニンゲンがー」

イワンコ「なっ」


絶句する僕に、彼女は鋭く言い放った。


ミミッキュ「まだ思い出せない? イワンコ、ううん……岩根広大君!」
 ▼ 332 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:55:44 ID:RGqgKqVs [17/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
岩根広大。夢の中で聞いた、僕の苗字も、岩根だった。

けれど、まだだ。まだ、何も思い浮かばない。

ミミッキュが呆れたように僕を見据え、言った。
 ▼ 333 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:56:29 ID:RGqgKqVs [18/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



















ミミッキュ「あたしは……久瀬。久瀬美々華よ」
 ▼ 334 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:57:01 ID:RGqgKqVs [19/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「あ……」


その言葉を聞いた瞬間、記憶の扉の鍵が、かちゃりと音を立てて外れた気がした。


ミミッキュ「……思い出した?」

イワンコ「が……は……」


唐突な記憶の奔流に呑まれ、頭が割れそうに痛い。

うめき声が漏れる。

ああ、そうか。そうだったのか。




イワンコ「久瀬……」



ミミッキュ「久しぶり、岩根君」
 ▼ 335 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:57:57 ID:RGqgKqVs [20/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼女は、ばけのかわを、ひっぺがした。

その中には、何も入っていなかった。

「これが、あたしだよ」と、皮から聞こえる。

――あたしはまだ、空っぽ。


ウツロイド「思い出したみたいだねー」

ミミッキュ「うん。ウツロイド、初めから、最大級のヒントをくれてたんだ」

ウツロイド「まーねー。あれは、ほとんどあなたの感想。一生忘れないって、すぐに忘れちゃってるよねー」

ミミッキュ「何か別枠でしょ、それは」

ウツロイド「うん。昔っから、ホール通ったニンゲンって、記憶なくすことが多いんだー。姿まで変わっちゃうのは想定外だったけどー」
 ▼ 336 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:59:37 ID:RGqgKqVs [21/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕も、すべて思い出した。

久瀬の起こした乱闘。薄れゆく意識の中で、僕はひずみの中に入り込み、そして完全にすべてから解き放たれた。

再構成が始まる。僕は、人間から離れ、そして――

目が覚めたらポケモンになっていた。
 ▼ 337 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:00:18 ID:RGqgKqVs [22/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「……ウツロイド。教えて。あなたたちの本当の狙いは、調査なんでしょ? 人間の世界に行ったのも、その調査のため。

      この世界に現れたのも、同じ」

ウツロイド「……バレちゃったかー。うん。この世界は、いいとこだよー。きっと、みんな、一緒にいてくれると思うなー」

ミミッキュ「そっか。それと……アクジキングの場所、知ってる?」

ウツロイド「あっくん? うーんと、あたしはわからないけど、でもきっと、大食いの噂を辿ったらいると思うよー」

ミミッキュ「なるほどね。ま、それはみんな思い付くかな。あたしは、コスモウムと話したい」

ウツロイド「あたしも行くー!」

ミミッキュ「行こう、イワンコ。イワンコ?」


僕は、意識を投げ出して、どさりと大地に崩れ落ちた。
 ▼ 338 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:00:52 ID:RGqgKqVs [23/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


水の大陸はワイワイタウン。

その北部に拠点を構えるポケモン調査団の中で、僕たちはある2匹のポケモンと話していた。


ピカチュウ「なるほど……ウルトラビーストか。草の大陸今、大変な事になってるんだね」

ナエトル「みたいだね。それとサーカス団エクリプスか……」

ピカチュウ「あー、そういやあれか」

チラーミィ「あれって?」

ピカチュウ「いや、こっちの話。何年も前のクリスマスに、私たちの友達が、エクリプスに憧れてってサーカス団に入りに行ったんだよね」

ニューラ「まあ、それはともかくとして、お願い。黄金のリンゴを譲ってください」

ナエトル「……一応だけど、探検隊バッジを見せてくれませんか? 嘘を吐いてる可能性が0じゃない以上、確かめておきたくて」

ニューラ「なるほど。これ」

ナエトル「プクリンのギルド卒、探検隊リアライズ……」
 ▼ 339 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:01:36 ID:RGqgKqVs [24/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この発言を聞き、1匹のポケモンが声を掛けて来た。


デンリュウ「プクリンですか?」

ピカチュウ「あっ、ダンチョー! 知り合いなの?」

デンリュウ「ええ。プクリンとは、結構交流があるんですよ」

チラーミィ「へぇ、親方、調査団とも知り合いだったんだ」

デンリュウ「元ニンゲンのポケモンが他にもいるという事を聞き、時間の空いた隙を狙って話を聞きに行ったんです」


彼はここで、謎のポージングをした後、がっくり肩を落とす。


デンリュウ「……話になりませんでしたけど」
 ▼ 340 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:02:29 ID:RGqgKqVs [25/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「……でしょうね。ってあっ! あの時のデンリュウ!」

デンリュウ「あれ? 知り合いでしたっけ」

チラーミィ「いや、ギルドに来た時、僕たちまだいたんです」

デンリュウ「そういえば、いたようないないような……でも、プクリンのギルド卒業な以上、彼らの身分は私が保証します。

      ナエトル、ピカチュウ。協力してあげてください」

ナエ・ピカ「はい!」
 ▼ 341 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:03:39 ID:RGqgKqVs [26/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こうして、僕らは調査団の2匹の協力を得た。彼らは預かりボックスから2つのアイテムを引き出して、言う。


ピカチュウ「これが黄金のリンゴ……これ何年前からあったっけ」

ナエトル「腐ってる感じはしないし大丈夫でしょ。黄金のリンゴだよ?」

ピカチュウ「それもそうか。それとこれ」

ナエトル「満腹リングル。これを付けていると、お腹が減らなくなる。アクジキングにこれを付けさせたら、食害がでる事もなくなると思う」

チラーミィ「凄い、これ……超絶レアアイテムだよね?」

ナエトル「苦労したけど、世界のためだもん。それに、金塊積めばデスカーンが引き換えてくれるから」

ニューラ「……そのデスカーン、いったい何者?」

ピカチュウ「さー、どうやって入手してるのか、全然教えてくれないんだよね」

ナエトル「利益の問題もあるから仕方ないとは思うけど、確かに凄い。次はその謎を調査してみる?」

ピカチュウ「それもありかもね。とりあえず、リアライズさん」

チラーミィ「はい」

ピカチュウ「世界、救ってくださいね」

チラーミィ「はい!」

ニューラ「もちろんよ。プクリンのギルドの名にかけて」
 ▼ 342 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:04:14 ID:RGqgKqVs [27/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ナエトル、私たちもなんかできないかな」

ナエトル「うーん……ここまで来たら僕らにできる事はないと思うよ。せいぜいが……情報を発信する事ぐらい。世界中のコネクトを駆使してね」

ピカチュウ「そっか、つながりオーブ! ウルトラビーストと仲良くしてあげてって、発信できるんだ」

ナエトル「うん。普通なら、そんな異世界からやって来た生き物なんて歓迎したくない。けど、危険な生き物じゃないんだ。

     それを正しく伝えれば、世論を味方に付けられる」

ピカチュウ「えっと……どう伝える?」

ナエトル「考えるから、ちょっと待って」

チラーミィ「いろいろありがとうございます」

ナエトル「いえいえ」

チラーミィ「じゃ、もう行きますね。肝心要のアクジキングそのものもまだ見付かってないので」

ピカチュウ「頑張ってね! バイバイ!」

チラーミィ「さようなら!」


それから再びラプラス大陸便を使用し、草の大陸へ向かう。

まずはジジーロンの家で情報を整理させてもらおう。そしてそれから、アクジキングを捜さなければ。
 ▼ 343 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:06:04 ID:RGqgKqVs [28/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


イワンコ「う、うーん……」

ジジーロン「おお! 目覚めたぞ!」

ミミッキュ「イワンコ、おはよう」


ミミッキュの上半身に浮かぶ顔は心配そうで、僕はうつむいて、少し考え込む。

そして、考えても埒が明かないと顔をあげた。


イワンコ「……そうなんだよな。うん。逃げちゃ駄目だ。ミミッキュ、ごめん」

ミミッキュ「いいよ別に。もう、気にしてない」


嘘だ。彼女はまだ、満たされていない。

それとも満たされている事に気付いていないのか。

とにかく、彼女は未だ、根に持っている。だからこそ、中身が存在しないのだ。
 ▼ 344 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:06:36 ID:RGqgKqVs [29/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロン「何があったのかはわからぬが、とりあえず無事でよかった。そして、これからどうするのじゃ?

      ウツロイドを見付けたのじゃろ?」

ウツロイド「あたしここにいるもんねー」

イワンコ「とりあえず……留置所だ。コスモウムと、話そう」

ミミッキュ「わかってる。行こうイワンコ。

      ジジーロンさん、ありがとうございます」

ジジーロン「構わんよ。元気出しなされ!」

イワ・ミミ「はい」

ウツロイド「ほらー、もっと元気に」

イワ・ミミ「はい!」

ウツロイド「よろしー」


元凶であるというのに、彼女の天真爛漫さはどことなく懐かしささえ感じさせる。

苦笑しながら眺めていると、ミミッキュも同じ気持ちだったようで表情を苦笑いに変えていた。


ウツロイド「じゃ、レッツゴー」
 ▼ 345 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:08:05 ID:RGqgKqVs [30/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
留置所まで、気付かれないように進むのはさすがに骨が折れた。

他に気付かれないよう気を付けながらウツロイドがマッシブーンに合図を送ると、マッシブーンとジュナイパーがこちらへやって来た。


ジュナイパー「よくここまで無事に来られたね」

イワンコ「まあ、なんとか」

ジュナイパー「記憶、取り戻せた?」

イワンコ「はい。だけどたぶん、この事件そのものには関係ないかと。

     どちらかと言うと、この事件によって引き起こされた二次災害みたいなもんだったんです」

ミミッキュ「要約するとそうなりますね。手掛かりはないと見ていい」

ジュナイパー「そうか」

イワンコ「そっちの進捗は?」

ジュナイパー「さっぱりだ。コスモウムは、言葉を受け入れる気配もない」

マッシブーン「硬い殻に閉じ籠ってしまっているからな。我らの言葉さえ、今は届かないだろう」

イワンコ「……そうですか」


恐らく、そうだろうとは思っていた。彼が、今現在、一番危険なのだ。
 ▼ 346 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:09:03 ID:RGqgKqVs [31/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「君たちが思い出した以上、彼の説得には君らが適任だろう。

       となると、僕は、アクジキングや他のウルトラビースト……デンジュモクとフェローチェも念のために捜しておきたい」

ウツロイド「ジュモクっちはきっと、電気探してるよー」

ジュナイパー「電気……フェローチェは?」

ウツロイド「さー。でも、期限の時には、というよりフェロちゃんせっかちだから、もうそろそろミリスに着いて、どう身を隠すか悩んでるとこじゃないかなー」

ジュナイパー「集合場所は、やっぱりミリスか」

マッシブーン「あの場所が一番繋がりやすいものでな! この近辺もなかなかのものだが」

イワンコ「デンジュモクはたぶん、エレキ平原です。バクガメスが紹介してた」

ジュナイパー「了解。後は本当にアクジキングだけか……。アシレーヌたち、見付けてくれてるかな」
 ▼ 347 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:10:52 ID:RGqgKqVs [32/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マッシブーン「アクジキング殿は、隠れるのも苦手そうなのだがな」

ジュナイパー「なんでも食べる……となると、目撃証言があがっていてもおかしくはないはずなんだけど」

ミミッキュ「アクジキングって、悪食なの? この世界のおいしい食べ物を探して、物凄い美食家と化してたりしない?」

ウツロイド「どーだっけなー。マッシ君、わかるー?」

マッシブーン「そういえば、『ワシの舌を唸らせるメシがあるか、楽しみなもんじゃ!』なんて言っておったぞ!」

ジュナイパー「……なるほど。どうにかして、リアライズの2匹が持って来るであろうリンゴの存在を宣伝しないと」

イワンコ「でも、肝心の2匹がまだ……」

ジュナイパー「一旦戻ろうか。コスモウムは、まだ動く気配がない」


そう言われ、僕らはコスモウムを振り向く。彼は、じっと、そこに浮かんでいた。

確かに、一度リアライズと合流するのが得策に思える。僕は黙って頷いた。
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