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【SS】ポケモン不思議のダンジョン 花の盗賊団

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/03/27 23:18:48 ID:qk0Nxw9k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ






 ▼ 140 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:13:26 ID:gSqSiRdA [1/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一抹の不安を抱いたまま、僕はアジトへの道を辿る。

コスモッグがいないか、と捜しはしてみるものの、まあ、無理だろう。

きっと、僕だけじゃ足りない。

気付けば、空は夕闇が広がっていて、僕の吐き出すため息は黒の中に溶けて行った。

上弦の月が辺りを照らす。月の力を手に入れるかもしれないというコスモッグは、今、何を思っているのだろう。

特別な臭いは感じない。

辺りには、植物の臭いが充満するのみ。ビースト独特のあの臭いは、残念ながら、存在していなかった。

とぼとぼと、僕はアジトに帰り着く。

その日も結局、コスモッグは見付からず、僕たちは陰鬱な雰囲気の中夕食を済ませた。

あれ以来、心なしか会話も少なくなったような気がする。

サニーゴとヒドイデすら、その捕食関係に覇気がない。

……もっとも、明るく食べられようが、暗かろうが、あまり見たい物ではないのだけれど。
 ▼ 141 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:14:10 ID:gSqSiRdA [2/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「あー! みんな、そんな暗くなったって仕方ないだろう?! 元気だしな!」


そうやって声をあげるラランテスに、ミミッキュが小さく反応する。


ミミッキュ「そうは言っても……全然見付からないしコスモッグ」

ラランテス「だから捜してるんだろう? 腹が減ってちゃ何もできないよ!」

バクガメス「ラランテスの言う通りだ。とにかくみんな、食え。それとイワンコ」

イワンコ「はい」


そろそろ水を向けられるだろうなと予測していた僕は、慌てる事なく答えた。


イワンコ「ウルトラビーストにまつわる物語を聞かせてくれ、ですよね。でも、駄目です。あなたが調べた以上の情報“は”ない」
 ▼ 142 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:15:15 ID:gSqSiRdA [3/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「は、か」

イワンコ「はい。元エクリプスのメンバーで、現在は探偵をやっているジュナイパーと知り合いました。

     協力してくれるそうです。ウルトラビースト捜し。

     まず、ジュナイパーはサーカス団エクリプスの場所を探るそうです。

     と言っても、心当たりはあるらしいんですけど」

バクガメス「上出来だ。味方は多いに越した事ないからな」


怒鳴り声を聞かずに済んで、ほっと嘆息する。

そうしていると、ミミッキュが問い掛けて来た。


ミミッキュ「ねえ、そっちの方面から、ウルトラビースト、見付かりそう?」

イワンコ「わからない。今は、まだ」


どこかのタイミングでまた、ジジーロンの家に行かないといけない。

ジュナイパーと情報を共有するためにも。
 ▼ 143 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:16:22 ID:gSqSiRdA [4/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夕食を終わらせて、僕とミミッキュは床に就く。

それから空を見上げ、ため息を吐いた。


ミミッキュ「コスモッグ、どうしてるんだろ……」


空いたベッドに、未だ慣れない。

短期間とは言え、僕は、この3匹で一緒に寝ていた。ここに来てから、ずっと。


ミミッキュ「ねえイワンコ。あんたさ、コスモッグの事、なんか知ってんの?」


唐突な疑問符。僕は、え、と彼女を振り向く。

事情はすべて説明したはずだ。だとすると、彼女はそれ以上の何かを疑っているのだろうか。


ミミッキュ「ウツロイド見てあんた動揺してたけど……ねえ、ウルトラビーストなんでしょ? 記憶の手掛かり。

      だったら、イワンコの過去に何かある」

イワンコ「それはわかってる事だろ」

ミミッキュ「……だよね。けど、心配で。ねえ、あんたってさ――

      誰かと本気でつながりたいって思った事、ある?」
 ▼ 144 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:17:24 ID:gSqSiRdA [5/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「え?」


小さな疑問符に、彼女は声をあげた。


ミミッキュ「あんた、思い出そうともせず、探してばっかりなんだもの! もっと、こう、思い出そうと必死になってよ!

      手掛かりがなくったって、考えられるでしょ?!

      ……あたしも、考えてるけど、全然だから……」

イワンコ「どうしたの急に――」

ミミッキュ「知らない」


そう言って、彼女はこちらに背を向けて眠りに就いた。

どうしたのだろう。僕だって、真剣に考えてるし、それは彼女もわかってるはずなのだけれど。
 ▼ 145 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:19:16 ID:gSqSiRdA [6/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――誰かと本気でつながりたいって思った事、ある?






 ▼ 146 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:19:56 ID:gSqSiRdA [7/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目を覚まし、それから今日も、捜索を再開する。

昨日のケンカなどなかったかのように、ミミッキュは普通に話し掛けて来た。

きっと、不安定なんだ。コスモッグがいなくなって、彼女は、相当に堪えている。


ミミッキュ「イワンコ、今日も捜そう」

イワンコ「だな。でもちょっと、バクガメスさんに聞いてからにしないか?」

ミミッキュ「何かわかったかって? まあ、ずっと本読んで、ミリスの伝説に関して調べてはいるらしいけど」

イワンコ「うん。だから、その結果を聞きに、ね」

ミミッキュ「それもそっか。やっぱり、わかってる事は多ければ多い程いいしね」
 ▼ 147 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:21:00 ID:gSqSiRdA [8/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「アルセウス」

イワンコ「はい?」


尋ねた所、帰って来たのはその単語だった。

どこかで聞き覚えがある――と思っていると、解説が始まった。


バクガメス「創造神だ。けれど、今はもう、この世にいないらしいな。伝説では」

ミミッキュ「どうして? 関係あるんですか?」

バクガメス「あるかどうかはわからない。けどな、ビーストたちの世界の成り立ちも、遡ればそこに辿り着くんじゃねえかと思って。

      ビンゴだ。関連は、ありそうだぞ」

イワンコ「なんですか、それって」

バクガメス「詳しい事はわからんから言わん。もう少し詰めるためにも、今日は俺もUBを捜す。

      記憶の謎も、消えたコスモッグの謎も、全部、カギを握るのはUBだからな」

ミミッキュ「教えてください、途中でもいいから」


ミミッキュが即座に切り返す。バクガメスは、チラとそちらを見やった。
 ▼ 148 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:21:44 ID:gSqSiRdA [9/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
緊張が覆う。そして、バクガメスはふっと息を吐くと、言った。


バクガメス「駄目だ」

ミミッキュ「なんで?!」


バクガメスは、敬語にうるさい。それを知っていてなお、彼女はタメで迫る。

バクガメスは、顔をしかめた。


それから、何を思ったのか、彼は、ニヤリと笑う。


バクガメス「上に納得できなくてもキチンと抗える、そういうの、いいと思うぜ。

      ひとつ言うとするなら、お前らに余計なバイアスを植え付けたくない。それだけだ。

      ウルトラビーストは、敵なのか否か。先入観は、何も見せてはくれない。幻想だけだ。その先にあるのは」

イワンコ「何か、そんな過去が?」

バクガメス「それはタブーだ。イワンコ、もういいだろ。捜しに行け、コスモッグを」


僕の発言は、どうやら甘めには見てくれないらしい。
 ▼ 149 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:22:30 ID:gSqSiRdA [10/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「せめて、捜すヒントだけでも教えてください」

バクガメス「……ない。お前らは接触してるだろうが、俺はゼロだ。むしろお前らに聞きたいぐらいだ」

イワンコ「そうですか。わかりました。行こ、ミミッキュ」

ミミッキュ「だね」


頷き合って、それから僕たちは、アジトを飛び出していった。
 ▼ 150 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:23:18 ID:gSqSiRdA [11/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕たちは、森の外へと出張って行く。

ミミッキュは顔の表情を変えてしまった。自分の能力で布に顔を浮かび上がらせると言うが、なかなかにない能力だろう。

変装にはうってつけだが、残念な事に結局ミミッキュである事自体を隠せてはいない。

けれどまあ、しないよりはマシだろうか。

僕は嗅覚を頼りに辺りを探る。ウルトラビーストの臭いが紛れ込まないか。コスモッグの臭いは、残念ながら覚えていないけれど。

そして、もし見付けても、僕たちの実力じゃ撃退されて終わりだ。

だから、結局は助けを呼ばなければならない。


ミミッキュ「――ちょっと聞いて来てよ。一応、あたしはお尋ね者だからヤバいし」

イワンコ「うん」


その辺を歩いているポケモンに、僕は声を掛けた。

変わったポケモン見なかった? と。

返答は、芳しいものではなかった。

肩を落とし――落とす肩もないけれど――街を歩く。
 ▼ 151 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:23:49 ID:gSqSiRdA [12/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
後から合流して来たミミッキュは、お尋ね者なのにも関わらずあまりおどおどしていない。


ミミッキュ「むしろ平然としてればいいの。ミミッキュ、珍しいけどいなくはないし」

イワンコ「個体違いね。それを演出するための顔か」

ミミッキュ「まあね。あんま意味ないけど――」


その瞬間、悲鳴が聞こえた。

僕はミミッキュと顔を見合わせ、それから頷く。

何かあったのだ。もしかすると。

僕はその家、いや、レストランに立ち入った。


イワンコ「どうかしましたか?!」
 ▼ 152 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:24:33 ID:gSqSiRdA [13/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コック「ああ、どうしよう……食料を無駄にした……ただでさえ盗賊に狙われてメシ不足だってのに……」


申し訳ない。


イワンコ「無駄にしたって?」

コック「電気が止まったんだよ急に! 調理中で、ちょっとの火加減のミスが命取りだってのに……」

イワンコ「それは……ご愁傷様です」


とは言ったものの、停電か。

期待外れだ。ウルトラビーストの手掛かりがあるかもしれないと思っていただけあり、僕は正直気落ちした。
 ▼ 153 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:25:31 ID:gSqSiRdA [14/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「停電だって。まあ、すぐ収まるでしょ。なんたって、電気タイプのポケモンが非常時には頑張ってくれそうだし」


外に出て、僕は彼女にそう言ったけれど、ミミッキュは考え込んでしまう。

そのように見える、というレベルでしかないのだが、確かに彼女は考え込んでいた。


ミミッキュ「ねえ、発電って、どうやってやってるのかな」

イワンコ「え? そりゃ、ポケモンがやってんじゃねえの……ん?」


僕も遅ればせながら、違和感に気付く。

停電になんて、なるのだろうか。そう簡単にはなるはずがないだろう。

なにせ、自らの体を用いて発電しているのだ。純粋にバテるような欠陥システムは使われていないだろうし、だとすると……


イワンコ「発電所が襲われた」

ミミッキュ「そうなるよね。捜しに行こ、ボスかバクガメスさんを」
 ▼ 154 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:26:04 ID:gSqSiRdA [15/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幸いな事に、2匹はすぐ見付かった。

同時に行動していたのだ。

嗅覚を活かし、彼らの臭いを辿ると、当然ながらそこにいた。


イワンコ「停電らしいです。発電所が襲われたかもしれない。

     関係してるかはわからない。けど、あたる価値はありそうだと思いませんか」

バクガメス「……停電、電気が止まったのか」

ミミッキュ「急ぎましょう! 発電所、どこですか?!」

バクガメス「着いて来いラランテス!」

ラランテス「わぁってるよ! 行くよ!」


そう言って2匹は、僕たちを置いて駆け出した。

え、と慌てて追いかける。
 ▼ 155 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:26:50 ID:gSqSiRdA [16/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「ちょっと待って――」

バクガメス「来るな! お前らには、危険過ぎる」

ミミッキュ「だけど! コスモッグの手掛かりがあるとしたら? あたしも行かせてください!」

ラランテス「わかったよ! けど、自分の安全を一番に考えるように!」

バクガメス「おい!」


ラランテスに向かって彼は怒鳴る。

何バカな事言っているのだ。2匹で充分だろう。

それに対し、ラランテスは言い返す。


ラランテス「そうかい? あたいには、2匹とも、なかなかのセンスがあるように見えるけどね。

      危機察知能力の高いイワンコ、ばけのかわで攻撃を受け止め、その間に逃げおおせられるミミッキュ。

      もちろんあたいには及ばないにせよ、危険から離してるだけじゃ、あんたの目的も達成されないだろう?」

バクガメス「こいつらは違うだろ! ……とにかく、危険だ」


今、なんて言った? 目的?
 ▼ 156 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:27:31 ID:gSqSiRdA [17/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「だーかーら! 危険に対抗する能力はあるって言ってんだよ!

      それに、あたいを誰だと思ってるんだい?」

バクガメス「あーはいはい。ボスの仰せのままに」

イワンコ「あの、目的って――」

バクガメス「……お前には関係ない話だ」


そう言って、彼は前を向いて歩き始める。

僕はミミッキュと顔を見合わせた。彼女も、疑問符を頭の上に浮かべている。


ラランテス「置いてくよ! あんたたち!」

イワ・ミミ「あっ、はい!」


慌てて後を追う。
 ▼ 157 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:28:14 ID:gSqSiRdA [18/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
発電所は、森を離れた、街の北部にある。

道中、発電システムに関してバクガメスからの解説があった。


バクガメス「あそこには、電気タイプの野生が集まって来る何かがあんだ。

      それに目を付けたお偉いさんが、そこで発せられる電気を街全体へ供給するシステムを作った。

      蓄電も容易だ。どうやってんのか、てんでわかんねえが、すげぇ技術を持ったポケモンもいるってこった」

ミミッキュ「野生が集まる? ねえ、それってまさか……」

バクガメス「そのまさかだ。発電所は、不思議のダンジョンさ」


不思議のダンジョンを発電所にしてしまうその根性が尊敬ものだ。

けれど、そこが襲われたとするならば。


バクガメス「記述によると、電気を放つウルトラビーストがいるらしい。

      そいつのせいでショートしたか、あるいは電気を奪っているのか……。

      可能性は、ゼロじゃない。ゼロじゃない以上、行くべきだ」
 ▼ 158 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:29:08 ID:gSqSiRdA [19/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして、発電所……もといダンジョンの入口に到着した。

ガルーラ像が置いてある他、一般ポケモン立ち入り禁止の札も掲げられている。


ラランテス「さ、準備が出来次第行くよ。それとイワンコ」

イワンコ「はい?」

ラランテス「あんたの鼻は一級品。リーダーを務めてくれ」

イワンコ「はい?!」

ラランテス「なぁに! あたいが命を懸けて護ってやるから、安心しな! 危機回避能力を期待してるだけさ!」


そう直截的に言われるとそれはそれで傷付く。

けれど、実際ウルトラビーストと互角に張り合えるのは、ラランテスぐらいなものだ。

バクガメスは、どうだろうか。

ミミッキュは恐らく厳しいはずだ。僕も無理。


イワンコ「わかりました。骨は拾ってくださいよ」

ラランテス「ありがとね」
 ▼ 159 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:29:57 ID:gSqSiRdA [20/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「だ、大丈夫?」

イワンコ「ま、ボスの強さは知ってるし。言った事を翻すキャラでもないし」

バクガメス「無駄口を叩くな」


ダンジョンの中を進んで行く。

順番は、僕、ラランテス、ミミッキュ、バクガメス。

いざとなったら後ろからラランテスが敵に向けて攻撃をしてくれる事になっている。

僕はだから、敵の臭いを察知し、場所を入れ替わるだけでいい。

いいのだけれど、なんとも複雑である。

しかし、まあ僕は、ウルトラビーストも臭いで捜し当てられる……はずだ。

コスモッグは無理だったが、ウツロイドもフェローチェにも、似たような臭いを感じた。

今度の奴はどうなのか、それともウルトラビーストですらない何かなのか。

ラランテスが、また敵を倒した。

鮮やかなリーフブレードに、僕は何も言えなかった。
 ▼ 160 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:30:58 ID:gSqSiRdA [21/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「どうだい? ウルトラビーストがいる気配とか、感じないかい?」

イワンコ「どうでしょう……ない……あっ!」

ミミッキュ「どうしたのイワンコ?!」

イワンコ「ウルトラビーストの臭いだ……」

バクガメス「臭い、か。なんも変わってねえような気がするが……イワンコの嗅覚は大概のポケモンより優れてるってこった」

ミミッキュ「臭いなんて感じないのは、あたしもです」

イワンコ「じゃ、僕だけなのか……。近いっ!」


唐突に、その臭いが強まる。

気のせいか、ぱちぱちと何かが爆ぜる音もする。


ラランテス「のようだね。あたいもなんか、聞こえるよ」

バクガメス「最奥部。戦うにはちょうどいいじゃねえか」

ミミッキュ「イワンコ、下がって。攻撃を受けるのは、得意だから」

イワンコ「わかった」


女子に隠れるのもどうかとは思うけれど、事実僕は無防備だ。ここは大人しく、影から隙を狙った方がいい。
 ▼ 161 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:32:34 ID:gSqSiRdA [22/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「出て来いウルトラビースト! お前はもう包囲されている!」


バクガメスが声を張り上げ、ビーストを挑発する。

僕とミミッキュは彼の後ろに控えつつ、その様子を窺っていた。

ラランテスが追随して叫ぶ。


ラランテス「電気を奪うなんて、許された事じゃないよ!」


――ちなみに、僕たちは盗賊である。断じて警察ではない。


影から何者かが姿を現す。

黒い、コードのような体に、白い金平糖のような形の何かが頭に付随したフォルム。

そして、件のあの臭い。間違いない、ウルトラビーストだ。
 ▼ 162 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:33:24 ID:gSqSiRdA [23/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「ったく、なんすか。こんな大量に電気あるじゃん。

   ちょっとぐらい分けてくれたってバチは当たんないすよね」

バクガメス「ちょっとじゃないのが問題なんだ。てめぇ、どんだけ街の奴らに迷惑掛けたかわかってんのか?!」

ラランテス「コスモッグについても聞かせてもらうよ!」

???「コスモッグ……お前らっ!」


そいつは、5本のコードを大地に突き刺し、頭のあれから電気を放出した。

バクガメスの硬い甲羅がそれを辛うじて弾き、僕とミミッキュはそれに守られた。

被弾したラランテスはしかし、4匹の中から誰よりも早く立ち上がり、そして飛びかかった。
 ▼ 163 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:34:25 ID:gSqSiRdA [24/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「なっ! 早っ!」

ラランテス「いきなり電撃は卑怯じゃないかい?!」


そう叫んで、ラランテスはその鎌でそいつに斬りかかる。

それはラランテスめがけて電気の攻撃を放出した。

ラランテスの顔が苦悶に歪み、けれどそのまま攻撃を決めた。


ラランテス「……上手いね。ダメージを逃がしやがった」


何があったのかはわからないが、そう言うからにはそうなのだろう。


バクガメス「援護するラランテス!」


バクガメスが放つ『かえんほうしゃ』は、確かにそいつに届く。が、いかんせん、バクガメスは鈍足が過ぎる。

そいつはコードを地面から引き抜くと、寸前で回避してみせた。

その隙を狙い、僕は駆け出す。ミミッキュも一緒だ。

そしてそのまま僕はふいうち、ミミッキュはかげうちを繰り出す。
 ▼ 164 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:35:13 ID:gSqSiRdA [25/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それを見たそいつはコードを地面に突き刺す。

僕たちは攻撃を決めると――コードが衝撃を吸収したのか、感覚はあまりなかった――慌てて戻って行く。

もともと、そういう技だ。ある程度の射程がある。

そのお陰で、電撃の攻撃は大打撃にならなかった。けれど、それでも深手は負った。


イワンコ「うぐっ!」

ミミッキュ「イワンコっ!」


ばけのかわが全ての攻撃を受け止めたお陰で、ミミッキュは無傷だ。ただ、頭部がだらしなくこてっと倒れている。

ラランテス、バクガメスはそいつを見据えていた。


バクガメス「くらえっ!」


彼の頭部へ向けた攻撃を、そいつは回避する。
 ▼ 165 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:35:57 ID:gSqSiRdA [26/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「それから敵は体を5本地面に突き刺しそこから電気を吸収そして――

 ???「うるさいっすねぇ!」

      放出。こいつの攻撃のトリガーは地面に体を突き差す事ででもそうしていると敵の攻撃を回避できないだからその抜き差しの速度をあげて対処するつまるところこいつの生命線はスピードと――

 バクガメス「こんにゃろ……」

      足だよバクガメス! 足を狙うんだっ! 足さえ止めればもう何も怖くない!」

バクガメス「おうよっ!」


炎が噴き出し、そいつがコードを抜いた、その瞬間に直撃した。

最後まで地面に残るのは、足だ。末端部は、確かに狙い目だろう。

1本の足が焼け焦げていた。


???「うぐうっ?!」
 ▼ 166 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:36:48 ID:gSqSiRdA [27/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「今です!」

ラランテス「言われなくとも!」


僕が叫ぶ。ラランテスがそれに従い、跳んだ。

その鎌を振りかざし、1本に叩き付ける。地面と鎌で挟まれたその腕が、妙な音を立てる。


ラランテス「コスモッグに関して、聞かせてもらうよ」


???「どうやら形成不利っぽいっすね。しゃーなし。降参っす。

   コスモッグの何を知りたいんすか?」

ラランテス「あんたらウルトラビーストの狙いだよ。どうしてこっちに来た」

???「コスモッグじゃ……」

バクガメス「それもだ。答えろ」

???「えー! メシ食ってるとこに突撃されて、こんな扱いっすか?!」

バクガメス「そのメシの量が問題なんだ! 街中が電気切れで困ってるんだぞ!」

???「あー、それはすまんっす。もう、腹減って、腹減って。気付いたらここでこうやって贅沢に食べちまって」
 ▼ 167 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:37:22 ID:gSqSiRdA [28/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「まずお前、種族はなんだ」

???→デンジュモク「デンジュモクっす。ウルトラビーストの」


どことなくチャラい彼の名は、デンジュモクらしい。

彼はコードの体をくねらせ、それからラランテスの鎌から抜け出した。


デンジュモク「あらよっと。とりあえず、電気は返します」

バクガメス「いや、この戦いで放出された分で充分だ。後は勝手に蓄えられるしな」

デンジュモク「そっすか。よかったー」


安堵した声を出したデンジュモクに対し、ラランテスが鋭く言い放った。


ラランテス「地面から吸い取った分を放ってただけでもかい?」


ギクッ! と目に見える程動揺したデンジュモク。

彼は大人しく、電気を放出して行った。
 ▼ 168 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:37:55 ID:gSqSiRdA [29/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンジュモク「あー……どうすりゃいいんすか、俺のメシ……」

バクガメス「リンゴだ、食うか?」

デンジュモク「いや、電気が欲しいっす……」

バクガメス「ポケマメだ、食え」

デンジュモク「ん? ……それ、旨そうっすね」


ポケマメと言われたそれの臭いを嗅ぐと、それだけで気が遠くなりそうだった。

あまり強くはない臭いであるが、少し意識した途端余りのかぐわしさに興奮する。

口の中によだれが溜まっていたのを、慌てて飲み下した。

ポケマメ、いつかは食べてみたいものだ。


ミミッキュ「何あのおいしそうなマメ……」

イワンコ「ホントだよね……」

デンジュモク「うっまーーー! この世界こんなうめえもんがあるとか、アクジのおっさんにも教えたらねえと!」
 ▼ 169 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:38:39 ID:gSqSiRdA [30/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「アクジのおっさん?」

デンジュモク「ああ、ウルトラビーストは、8種類いて、今こっちには、1種を除いた7種各1匹が来てるんす。

       俺も、アクジのおっさんも、コスモッグもその内の1匹。アクジキングの事っすね」

イワンコ「ウツロイド、フェローチェ」

デンジュモク「ああ、そいつらもっす。後はカグヤさん、ツルギだな。

       正式名称、テッカグヤとカミツルギ。バカみたいにデカいのがカグヤ姉さん、そこに一緒にいる紙みたいに薄い剣がツルギっす。

       ほんっと、いつもいつもあいつらいちゃいちゃしやがって……」

バクガメス「それはいいんだ。お前らの目的はなんだ?」


バクガメスが、声色を変えて問う。デンジュモクは少し躊躇った後、こう言った。


デンジュモク「こんな旨いもんもらっちまって申し訳ないんすけど、それだけはダメっす。

       ここは、他のウルトラビーストの特徴を教えたって事で、手打ちにしてくれないっすか?」

ラランテス「どういう事だ――」

バクガメス「構わんよ」
 ▼ 170 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:39:40 ID:gSqSiRdA [31/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕とミミッキュ、それからラランテス。

3匹揃って一斉に、バクガメスを見やる。


バクガメス「その代わり、もう少し細かな特徴を教えてくれ。お前の他のウルトラビーストが、何に心を惹かれるのか」

ラランテス「あんた! 何言ってんだい!」

バクガメス「俺の推測が間違ってなきゃ、これが一番だ。それと、デンジュモク。コスモッグ捜しに協力してくれ。

      この2つだ。これをお前が誠意をもってやってくれるなら、目的に関して聞くのは勘弁してやる」

デンジュモク「助かるっす。コスモッグ捜しは……フェローチェが必死こいて捜してるっすけど」

ラランテス「知ってるよ。とにかく、バクガメスの質問に答えな」

デンジュモク「わかったっすよ! だから脅さないで欲しいっす!」


鎌をチラつかせるラランテスに、僕は苦笑を浮かべた。
 ▼ 171 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:40:14 ID:gSqSiRdA [32/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コスモッグ:つかみどころのない少年。友達が欲しい

ウツロイド:楽しい事を求める天真爛漫な少女

フェローチェ:美を追求する戦闘脳お嬢様

デンジュモク:省略

テッカグヤ:巨体。両腕に竹のような噴射装置を持っている。何を求めるかは不明だが、カミツルギといられればそれでいいのではないか

カミツルギ:小さい。全身が刃物のようになっている。テッカグヤと以下略

アクジキング:何でも食べる黒い塊。満腹感を求める


デンジュモク「一応マッシブーン……まだこの世界には来てないビーストも説明しとくっす」


マッシブーン:力を追及する筋肉バカ


イワンコ「ちなみにあなたの欲しいものって?」

デンジュモク「……光、っすね。この世界、太陽と月が綺麗っす。元いた世界には、そんなのがないっすから」
 ▼ 172 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:41:09 ID:gSqSiRdA [33/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「でも、コスモッグは将来、太陽か月の化身になるって……」

デンジュモク「ああ、でもあの2匹はあくまでも化身。初めて向こうに行った時にその力だけを受け入れただけっすから」


バクガメス「なるほどな。了解した。帰るぞ」


バクガメスは聞きたい事をすべて聞いたのか、振り返ろうともせずに歩き始め、それから言う。


バクガメス「腹減ったんなら、こっから西の方にあるエレキ平原にでもいったらどうだ?

      電気の野生がいっぱいいるし、困らねえぞ」

デンジュモク「あざーっす!」


と、この瞬間、ずっと歯噛みするような悔しげな顔を描き出していたミミッキュが言った。


ミミッキュ「ボス! これでいいんですか?!」
 ▼ 173 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:41:59 ID:gSqSiRdA [34/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、ラランテスは、黙って頷く。


ラランテス「……バクガメスになんか考えがあるみたいだ」

ミミッキュ「ボス!」

ラランテス「あたいたちが考えても仕方ないよ、ミミッキュ。行くよ!」

ミミッキュ「−−っ」

イワンコ「……もう、約束したんだ、仕方ない」

ミミッキュ「コスモッグ……どこにいるのよ……」


嘆きは、空に溶けていく。彼女の声は、泣いていた。
 ▼ 174 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:42:35 ID:gSqSiRdA [35/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幕章

スマホで、さっきのひずみを必死で調べていた。

何か、あたしを変えてくれるものがあるはず。

その一心で、検索を続ける。

アインシュタインの相対性理論で出るひずみは恐らく、消えてしまうものではない。

何か、空の裂け目のような感じだったのだ。

空の裂け目、で検索を掛ける。

すると、ひとつのゲームの話が出て来た。


――ポケモン不思議のダンジョン、空の探検隊。


いや、関係はないだろう……そう思いはするけれど、どことなくフィクションめいた何かの方が正しい気がするのだ。

いきなり現れて、消えてしまうひずみ。現実に起こり得るとは、到底考えられない。

あたしの幻覚か、超自然的な何か。
 ▼ 175 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:43:21 ID:gSqSiRdA [36/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日、その疑念をぶつける相手を持たないあたしは、今日も存在を消す。

ただ、視線だけは岩根君を追っていた。

彼は、またこちらを窺っているようだ。

このもどかしい関係性に終止符を打ったのは、図書室での事だ。

声を掛けたのはあたし。無視されても構わなかった。

ただ、あたしを無視する事を強要するメイングループは、きっとここには来ないはず。

おしゃれなカフェで恋バナしたり、ゲーセン言って遊んだり。本を読むという現実逃避なんて、彼らには不要なのだ。
 ▼ 176 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:43:57 ID:gSqSiRdA [37/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ねえ、岩根君」

「……やっぱり、気付いてたんだ、久瀬」


彼は、ぶっきらぼうに本を閉ざすと、あたしを向き直る。


「……怖くないの? あたしと話してるのバレたら、あんたもハブだよ?」

「怖い? むしろ面白いぐらいだよ。人をけなさないと立てない弱さを観察するのはね」


彼は、立ち上がると、本をかばんにそっと入れた。


「とりあえず、場所を移そう。部室に来てよ」

「何部?」

「文芸同好会」
 ▼ 177 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:44:34 ID:gSqSiRdA [38/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
部室で、あたしはずっと、黙りこくっていた。

話すという事が久しぶりだったのもあるけれど、彼も何も話さないのだ。

別に彼が好意を持ってくれているだなんて思っていない。

ないけれど、もう少し会話してくれるもんじゃなかろうか。


「何読んでるの?」

「ミステリー。この作者大好きでさ。この暗い雰囲気と、読後のカタルシスが半端ない」


タイトルをチラと見る。そして頭に叩き込んだ時。


「読む?」

「あ、いいの?」

「いいよ。その代わり、君が読んでる本見せてよ」

「わかった」
 ▼ 178 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:45:10 ID:gSqSiRdA [39/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしのお気に入り。どうにもならない運命を変えるため、フィクションのような世界へ旅立って行った少年の物語。

彼の最後の言葉が、どうしようもなく胸に響いたのだ。


「あー、なるほどね。作者は知ってるけどこれはスルーしてた」

「もったいない! ホント、感動もんだよこれ。ちょっと泣きかけたもん、普段泣かないけど」

「じゃあ、貸し借りって事でいい?」

「うん」


この本が、あたしのフィクション的世界観に対するハードルを大幅に下げていたのだ。

岩根君に貸した本の中の主人公は、自らの好きなゲームに少し似た世界を旅する事になる。

あたしは別にポケモンが好きな訳ではない。けれど、そんな事があったっておかしくない。

世界はいつだって、少し、不思議に出来ているのだから。
 ▼ 179 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:46:08 ID:gSqSiRdA [40/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……と思っていると、借りた本がまさにそう。S、Fを意識した物語だったのだ。

作者は、ドラ○もんが好きなのだろうか。

「ところでさ」とあたしは話を持ち掛ける。


「ポケモン、やってたりする?」

「いや……好きなの?」

「いや、別に。ただ、急に懐かしくなって」

「変なの。まあでも、好きな人なら、ひとり知ってる。ここの先輩、小林先輩が大好きだよ」

「へえ」


小林先輩。フルネームは、小林 久(ひさし)というらしい。

いずれ機会があれば、彼に尋ねてみたい。ポケモンにおいて、空の裂け目ってどんな感じですか?

そんなのを、あたし見たと思うんです。

バカにされるだろう。構わない。あたしはもう、慣れている。
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