【SS】ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く:ポケモンBBS

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【SS】ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く

 ▼ 1 ルーラJr 19/07/15 18:03:01 ID:HfLwEi9I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
皆さんこんにちは。ガルーラJrと申します。

あと4ヶ月もすればポケモン剣盾が発売されるので今更感もありますが、個人的にどうしてもチャレンジしてみたかったポケモンSMのお話を書かせていただきたいと思います。

基本的にゲーム本編に準拠したお話になりますが、以下の点を予めご了承ください。

1:登場人物
 ゲーム編では例えば男主人公を選ぶと女主人公は出てきませんが、
このSSでは両方のキャラクターをヨウ、ミヅキとして登場させます。

2:登場人物の手持ち
 登場人物の手持ちは基本的にゲーム本編に準拠しますが、中には
1匹か2匹入れ替えを行ったり、また、ゲーム本編で例えば
最大5匹しか手持ちを持っていない人物には1匹追加したりします。

3:本編の補足的なストーリーの追加
 本編では語られていないストーリーを私なりに考えて追加しています。
特にグラジオ、ルザミーネについてはそれが顕著です。

4:形式
 地の文を用いた形式で書かせていただきます。

皆さんに楽しんでいただけるよう最後まで頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。
 ▼ 735 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/06 20:12:59 ID:PIDETjT6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「マーレインさん…。もしかして、私の録音を聴いてますか?」

「うん。それでわかったよ。マシンがなんであんな問題を出したのか」

リーリエは恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にした。

「…大丈夫。彼と何があったのか詳しくはわからないけど、録音のこの部分は消しておくし、マシンの問題からも削除しておくよ。録音のスイッチを切り忘れた僕にも責任があるからね」

「…ありがとうございます…」

「…いつか、自分の口から言えるといいね。応援してるよ」

マーレインはリーリエに優しく笑いかける。

「…はい」

リーリエは短くそう言うと、マーレインに感謝しながら部屋をあとにした。
 ▼ 736 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/06 20:18:21 ID:PIDETjT6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第49話はここまでです。
次回はマリエシティでヨウとリーリエのデートの話を挟んで、ヨウの新戦力ゲットのお話に移ろうと思います。
このウラウラ島でヨウのパーティー6体を揃えます。
それではまた。
 ▼ 737 ーリキー@しずくプレート 20/03/06 21:22:35 ID:ao5gc3Sg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 738 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:11:44 ID:zbRkBu4A [1/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第50話ができましたので投下します。
予告通り、ヨウとリーリエのデートの話になります。
 ▼ 739 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:12:38 ID:zbRkBu4A [2/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 50 好みのタイプ


「これがデンキZだよ。そして、その力を引き出すポーズがこれ」

マーマネはヨウに黄色のZクリスタル、デンキZを渡す。そして、体の正面で、腕で稲妻の形を作るようなポーズを見せる。

「ありがとう、マーマネ」

ヨウはデンキZを受けとると、マーマネにお礼を言ってマーマネの自室を出ようとした。ヨウはふと、マーマネの部屋の出入口の前で立ち止まり、振り返った。

「…あのさ、マーマネのポケモンたちと、僕もいつかバトルしてみたい」

ヨウがそう言うと、マーマネは嬉しそうに笑った。

「もちろん!僕も楽しみにしてるよ!ヨウさん、この先の試練も頑張ってね」

ヨウはマーマネに笑いかけると、部屋をあとにした。マーマネは小さく手を振り、ヨウの背中を見送った。


マーマネの部屋を出ると、そこにはリーリエがいた。

「リーリエ、待っててくれたの?」

「…はい。ぬしポケモン…、初めて見ましたけど、すごいんですね。通常の個体よりもかなり大きいですし、戦闘力もすごく高い…。ヨウさんたちは、あんなすごいポケモンを相手に戦ってきたんですね…。」

リーリエはヨウたちがぬしポケモンを倒したことに感嘆の声を上げる。

「私、知りませんでした…。島巡りの挑戦者が、あんな強いポケモンを相手に戦ってるなんて…。本当に、トレーナーも戦っているポケモンさんたちも、すごく尊敬します」

「そんな風に言われたら、何だか照れるな…。でも、勝ててよかったよ。リーリエの目の前で負けたくなかったし…」

「え…?」

「あ…」

ヨウはつい失言をしてしまったと慌てる。リーリエの目の前ではかっこいい自分でありたいと言っているようなもので、半ば彼女への想いを告白したようなものだとも受け取られかねない。ヨウは慌てて話題を変えることにした。

「リーリエはこれからどうするの?僕はポケモンを回復させたら一度マリエシティに戻って、それから次の試練に向かおうと思うんだけど、リーリエはハウやミヅキの試練の様子も見ていく?」

ヨウがリーリエに尋ねると、リーリエは質問を返してきた。

「…私も、迷惑でなければヨウさんについていってもいいですか?」
 ▼ 740 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:13:09 ID:zbRkBu4A [3/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨウは断りきれず、リーリエとマリエシティに戻ってきた。ポケモンセンターで回復してもらったが、ぬしのクワガノンの攻撃は強烈で、オシャマリとチョンチー以外のポケモンは明日1日はバトルをさせないように言われていた。
ヨウはマリエシティに戻ってきたはいいが、これからどうしようかと考えていた。時間は夕方にさしかかる頃で、次の試練の地に向かうにはやや中途半端な時間でもあった。

「うーん…。今から次の試練に向かうのも、中途半端な時間かな…。今日はマリエシティで過ごそうかな…」

ヨウがロトム図鑑の時計を見ながらそう言うと、リーリエがある提案をしてきた。

「…あ…あの…ヨウさんっ」

「どうしたの?リーリエ」

「その…よかったらなんですけど…、今日は移動しないなら、私と街を回って遊びませんか?」

ヨウはリーリエの提案に驚く。

これって、デートみたいなもの…だよね?あれ?でもリーリエには恋人がいるんじゃ…

「えっと…リーリエはいいの?その…僕とで…。リーリエって、付き合ってる人がいるんじゃ…」

ヨウは思わず尋ねた。リーリエはそれを聞き、顔を真っ赤にして反論する。

「もしかして、カンタイシティでのことを言ってるんですか?あれはバーネット博士と会っていただけです!…その…私には付き合ってる人なんて……いません…。やっぱり…迷惑でしょうか…?」

リーリエはだんだん声が小さくなり、上目遣いでヨウを見つめながらもじもじと両手の指を絡め合う。その姿にヨウは思わず舞い上がってしまった。

うわ、かわいい…。しかも、カンタイシティでのことは僕たちの勘違いだったんだ…。というか、こんな風に誘ってもらえるなんて、もしかして結構脈ありだったりするのかな…?
 ▼ 741 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:13:40 ID:zbRkBu4A [4/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「め…迷惑なんかじゃないよ…。リーリエが僕と一緒でいいなら、僕は全然構わないから…」

リーリエと二人きりというシチュエーションはメレメレ島、アーカラ島でもあったが、ここまではっきりとリーリエに誘われたことはなかったので、ヨウは期待で今にも心臓が飛び出して踊り出しそうだった。



ヨウとリーリエはマリエ庭園に来ていた。ヨウがマリエ庭園を訪れたことがなかったため、行ってみたいと言い出したためだ。ヨウとリーリエは茶店で抹茶と団子を口にしながらまったりと過ごしていた。

「このお茶、おいしいですね。いつもはロズレイティーなど、紅茶が多いのですが、緑茶もなかなかいけますね…」

「甘いものと合わせると、特においしく感じると思うよ。団子を食べたあとに飲んでみて」

ヨウにそう言われ、リーリエは団子を一つ口にした後で抹茶を飲んでみる。団子の甘さに抹茶のやわらかな苦みと渋みが溶け合い、団子の甘みの印象をより強くしながら、その後に口の中がすっきりと後味のよい苦みで締められる。あまりのおいしさにリーリエの頬が緩んだ。

「…本当ですね…!すごく美味しいです。ヨウさん、教えていただいてありがとうございます」

ヨウはリーリエの満面の笑顔が眩しくて、つい目を逸らしてしまった。

「いや…。気に入ってくれたならよかったよ…」

ヨウはそう言いながら次の団子に手を伸ばす。そのとき、リーリエも次の団子に手を伸ばそうとしており、ヨウとリーリエの手が触れあった。
 ▼ 742 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:14:05 ID:zbRkBu4A [5/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「「あっ…」」

ヨウとリーリエは思わず目を合わせる。そして、互いに顔を赤くしながら視線を逸らした。

「ご…ごめん、リーリエ…」

「…いえ…。私の方こそごめんなさい…」

…食い意地の張った女だと思われたでしょうか…

リーリエはちらりとヨウの様子を伺った後、抹茶を一口飲んで気持ちを落ち着かせようとした。ヨウも同様に、抹茶を飲んで心を落ち着かせようとしていた。おやつタイムを終え、ヨウは伝票をとってレジへと向かった。ここの代金はヨウがすべて支払うつもりでいた。
…その…こういうのって、女の子に支払わせると好感度が下がっちゃうんだよね…。ここは気前よく支払ってしまおう…。

「リーリエ、ここの代金は僕が支払うから」

「いいんですか?…すみません…」

茶店でおやつを食べた後、ヨウはリーリエに尋ねた。

「リーリエ、今度はリーリエの行きたいところに行こうよ」

「私の行きたいところ…ですか?」

「うん。初めは僕が行きたい場所にしてもらったから、今度はリーリエの番」

ヨウがそう言うと、リーリエは考え込んだ。

「…うーん…それなら…。ヨウさん、ついてきてもらってもいいですか?」

リーリエはヨウを連れて街の中心部に向かっていった。
 ▼ 743 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:14:53 ID:zbRkBu4A [6/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「あー、なるほど…」

ヨウはリーリエとマリエシティのブティックの前にいた。

「確か、ハウオリシティでは気に入った服はあったけど、サイズが合わなくて断念しちゃったんだよね」

「…はい…。買い物に付き合わせて申し訳ないのですが…」

「いいよ。行こう」

ヨウとリーリエは店の中へと入っていった。

「いらっしゃいませー、ごゆっくりご覧ください」

マリエシティのブティックの中は、ハウオリシティのブティックとはまた違ったものを置いてあった。リーリエは早速服を物色し始める。

…ヨウさんの好みだと…、脚のきれいな人がいい…でしたっけ…。

リーリエはここでマオの服装を思い浮かべる。マオもショートパンツから健康的な美脚を惜しげもなくさらしており、非常に活発な印象を与えていた。

私も…ショートパンツやミニスカートの服を着て似合うでしょうか…。ヨウさんは私の脚を…その…綺麗な脚だと思ってくれているようですし…

ここで、リーリエはふとハンガーで吊り下げられているある服が目に止まった。
フード付きのセーラー服のような白い服。下は水色のラインが入ったミニスカートが合わせられている。

あれなら、私でも着ても問題ないかも…。ちょっとスカートが短すぎる気がしますが…

「リーリエ、よさそうなのあった?」

ヨウが尋ねると、リーリエは言った。

「はい…。あそこのハンガーにかかってる服がよさそうだなと…」

ヨウはリーリエの指さした服を見る。
 ▼ 744 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:16:02 ID:zbRkBu4A [7/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「確かに、かわいいデザインだよね…」

ヨウはリーリエをちらりと見ながら、この服をリーリエが着たところを想像してみる。

スカート、かなり短いよね…。それはそれで似合いそうだけど…

「ちょっと、試着室の中で合わせてみますね…」

「…う、うん…」

リーリエは服を手に取り、試着室へと入っていった。

「…ちょっとちょっと」

ここで、ブティックの店員の女性がヨウに声をかけてきた。

「君、島巡りの子?」

「え?そうですけど…」

「随分綺麗な彼女連れてるのね?二人で旅してる感じ?」

店員の女性はにやにやしながら言った。ヨウはぶんぶんと首を横に振った。

「い…いえ…!僕は彼女とそういう関係じゃ…。それに、他にも友達がいますし…」」

「あら、そうなの?でも、あなたたち、どこからどう見てもデートしてるみたいな感じだったから…。ふふ、あんな綺麗な子といっしょに島巡りしてたら、楽しくて仕方ないんじゃない?」

「…それは…」

ヨウが口をもごもごさせていると、店員の女性はにっこりと笑って言った。

「あなた、あの子に気があるのね?あの服、そんなに高いものではないけど、縫製もしっかりしてて、値段の割にはなかなかいい服よ?彼女に似合いそうだし、一押ししてくれないかしら?」

店員の女性がそう言っている間、リーリエは試着室の中で鏡を見ながら服を自分の身体に合わせていた。

…うーん…。サイズはいいですが、やっぱりスカートが短い…。これ、太ももとかかなり見えますよね…。ヨウさんはこういう服が好みなのかもしれませんが、ちょっと勇気が持てそうにないです…

リーリエはこの服はやめておこうかと考え、試着室から出てきた。
 ▼ 745 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:16:30 ID:zbRkBu4A [8/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「リーリエ、どうだった?」

ヨウは試着室から出てきたリーリエに声をかける。

「えーと…。サイズはよかったんですが…、私にはちょっと派手というか…」

ヨウはリーリエがこの服をやめておこうと考えているようだと察する。

「…そうかな…?僕はリーリエにすごく似合うと思うんだけど…。それに、店の人から聞いたんだけど、その服、値段の割に縫製も強く作られてるし、それ一点しか残ってないんだって。これも何かの巡り合わせかもしれないし…。それに、リーリエがその服を着たところ…僕も見てみたい……かも…」

最後はぼそぼそとした感じで言ってしまったが、リーリエにはしっかりと聞こえていた。

「……ヨウさんが…そこまで言うなら…」

リーリエは新しい服で口元を隠すようにし、上目遣いでヨウを見つめた。ヨウはリーリエの様子に目を奪われる。結局、リーリエはその服を買うことにした。

「ありがとうございました〜。二人とも、ずっと仲良くね〜♪」

店員の女性は最後に余計な一言を加えてヨウとリーリエを見送った。ヨウとリーリエは顔を赤くしながらブティックを後にした。
 ▼ 746 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:16:58 ID:zbRkBu4A [9/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…明日は…カプの村…。アセロラさんの試練の地に向かうんですよね…?」

リーリエはポケモンセンターに向かう道の途中でヨウにおずおずと尋ねた。

「…うん…。そのつもりだけど、リーリエも一緒に来る?」

「…ヨウさんが迷惑でなければ…」

「…迷惑なんかじゃないよ…」

ヨウは頬をかきながら答えた。リーリエはぶらぶらと宙を泳ぐヨウの左手を見つめる。そして、思わず彼の左手に自分の右手を伸ばそうとした。

「…リーリエ」

ヨウに声をかけられ、リーリエは慌てて伸ばそうとした右手を引っ込めた。彼に気づかれたかと思ったが、ヨウはリーリエの手が自分の手に伸びようとしていたことに気づいてはいなかった。

「…リーリエの今着てる服って、リーリエのお母さんが選んだものって言ってたよね?」

ヨウはハウオリシティのブティックの前でリーリエが言っていたことを思い出していた。

「…はい…」

「その服…初めてリーリエ自身が選んだ服ってことになるの?」

「…そうです」

ヨウはリーリエと目を合わせることができなかった。

「…そっか。きっと似合うと思うから、自信を持ってよ、リーリエ…」

本当は彼女に面と向かってそう言えればいいのだろうが、ヨウには恥ずかしさを感じてしまい、それができなかった。だが、リーリエには彼の顔こそ見えなかったが、嬉しさで声が弾んだ。

「…はいっ」

いつか、今日伸ばしかけた手が、あなたの元に届きますように…

リーリエはそんなことを願いながらヨウの後ろからポケモンセンターへと向かった。
 ▼ 747 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/08 19:18:11 ID:zbRkBu4A [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第50話はここまでです。
次回はホテリ山の地熱発電所を舞台にヨウの新戦力ゲットのお話を描きます。
それではまた。
 ▼ 748 ックラー@やけどなおし 20/03/08 19:36:32 ID:XruU45E2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
良いねぇ
 ▼ 749 チエナ@マッハじてんしゃ 20/03/08 22:18:53 ID:KTPsITgE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
がんば化フラグ
 ▼ 750 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:19:43 ID:WuIIashQ [1/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第51話ができましたので投下します。
 ▼ 751 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:21:18 ID:WuIIashQ [2/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 51 トゲデマルVSサイホーン!ホテリ山の縄張り争い



「よし、行こうか、リーリエ」

「はいっ」

マリエシティでぎこちないながらもデートをして過ごした日から一夜明け、ヨウとリーリエは次の試練の地、カプの村を目指し、出発しようとしていた。その様子を遠くからうかがっている男女二人組がいた。

「…ボス、ターゲットはこれからカプの村に向かうと思われる。青白シャツの帽子小僧も一緒だ」

二人組のうちの男のほうが通信機に向かって話すと、通信機から男の声がした。

「わかった。そのまま泳がせろ。一時間後にまた報告しろ」

ボスと呼ばれた男、グズマは通信を切る。グズマは今、アーカラ島8番道路のモーテルを訪れていた。

「…邪魔するぜ」

「…グズマ…?珍しいな。おまえがここに来るとは」

グズマはグラジオの部屋に入り、土産のサイコソーダをグラジオに渡す。

「…仕事の依頼か?」

グラジオはサイコソーダを受け取ると、グズマに尋ねる。

「まあな。グラジオ、おまえ、この小僧とちょっとした因縁があるらしいな」

グズマは端末にヨウの写真を表示し、グラジオに見せる。

「…こいつを叩きのめしてやってくれ。こいつを3日以内にポータウンに誘い出す。ポータウンでこいつを迎え撃て」

グラジオはグズマがなぜそのようなことを言うのか訝しむ。

「…何か企んでるな、グズマ。何をするつもりだ?内容によっては協力しかねるぞ」

グラジオはグズマの真意を問いただすまではこの依頼を受けてはならないと直感的に感じていた。
 ▼ 752 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:22:31 ID:WuIIashQ [3/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…なんてこたあねえよ。うちの子分どもがこいつにマリエシティでやられちまってよ。今まで通り、スカル団に手を出すとどうなるのか、わからせてやってくれって話だ。…そしたらたまたま、プルメリからおまえとこいつが因縁のある相手同士だって聞いてよ。それなら、俺もおまえとこいつが本気で戦えるように舞台を整えてやろうかって思っただけだ」

グズマはグラジオが自分の言葉を信じてはいないとわかっていた上で、さらに続けた。

「…まあ、おまえは用心棒で、別に俺の部下でもなんでもねえ。協力する、しないはおまえの自由だ。けどよ、おまえもトレーナーの端くれなら、この小僧ときちっとケリをつけてえんじゃねえか?いい返事を期待してるぜ」

グズマはそれだけ言うと、モーテルを後にした。グラジオは去っていくグズマの姿を目で追いながら考えていた。

「…決着…か…」

確かに、ヨウときちんと決着をつけたいという思いはある。しかし、グズマの態度はやはり解せなかった。

「…行ってみなければわからないこともある…か…」

グラジオは意を決し、ウラウラ島のスカル団の本拠地、ポータウンに向かうことにする。ここはグズマに乗せられてやろう。ただし、奴が本当に狙っているものは何なのか、乗せられたように見せかけて探り出してみせる。
グラジオはテーブルの上に置かれた2個の空のモンスターボールを腰のベルトにつける。

…ルカリオ…、ギャラドス…。御守りなんて信じてるわけではないが、力を貸してくれ

グラジオは心の中でそう言うと、ウラウラ島へと向かった。
 ▼ 753 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:25:10 ID:WuIIashQ [4/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨウとリーリエはカプの村へ向かう途中、ウラウラ島の火山、ホテリ山にある小さな温泉街に来ていた。

「はー…疲れた足に染みるな〜」

ヨウは足湯に浸かりながら恍惚の息を漏らす。それに加え、ヨウはすらりと伸びたリーリエの綺麗な脚と、普段は靴下に覆われていて見ることのない裸足の足をちらちらと見ていた。リーリエはヨウが自分の脚をスケベな目で見ているとは思わず、足湯の気持ちよさに満足気な声を漏らす。

「ふあ〜。気持ちいいですねえ〜…。でも、いいんでしょうか…。カプの村に急がなくて…」

リーリエがそう言うと、ヨウはここへ来た目的をリーリエに話し始める。

「リーリエ。ホテリ山に来たのは、新戦力としてあるポケモンをゲットするためなんだよ」

ヨウはロトム図鑑を取り出すと、ターゲットとするポケモンのデータを表示する。

「…トゲデマルさん…ですか?」

「マーマネのバトルで初めて見たけど、見た目に反してなかなかやり手のポケモンだと思ったんだ。しかも、調べていくと、特性や使える技もなかなか強力なのが揃ってるから、捕まえておいて損はないと思ってね」

「レアな特性ロトが、ヨウは特性、頑丈のトゲデマルを狙ってるロト。…見つかればいいロトが…」

ロトムが補足説明をすると、ヨウは足湯から足を上げ、タオルで拭き始める。

「…トゲデマルは、この先にある地熱発電所の周辺に生息してるらしい。必ずゲットしてやるぞ…」

ヨウは靴を履き、地熱発電所を目指すべく立ち上がる。リーリエもそれにつられていそいそと足を拭き始める。

「あ、リーリエはゆっくりしてても大丈夫だよ?僕たちだけ行ってもいいし…」

と、ここでヨウはリーリエが足を拭こうと片膝を立てている姿を目の当たりにする。リーリエの体勢のせいで左脚の太ももが大きく露出し、お尻のすぐ近くまでスカートが捲れていた。

「いえっ…。私もいろいろな所に行ってみたいですし、ついていきます…ひゃあ!?」

リーリエは靴下を履こうとしてバランスを崩し、後ろ向きにごろりと転がった。もちろん、リーリエの履いている下着もヨウに丸見えになる。

「リーリエ、大丈夫?」

ヨウはリーリエに駆け寄り、手を差し伸べるが、リーリエは顔を真っ赤にしてヨウを見つめた。

「…だ…大丈夫です…。…見ました…よね?」

「…え?何を…?」

ヨウはとぼけて見せるが、リーリエが自分の下着を見られたことを言っているのはわかっていた。

「…私の……その…下着です…」

「…うん…。あれだけ派手に転がったらね…」

ヨウはリーリエから目を逸らしながら言った。リーリエも顔を赤くしながら、ヨウと顔を合わせることができなかった。
 ▼ 754 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:26:41 ID:WuIIashQ [5/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨウとリーリエがホテリ山の地熱発電所の前に着くと、「この先立ち入り禁止」の看板が立てられていた。

「立ち入り禁止…?なんで…」

リーリエはすんすんと周囲の匂いを嗅いでみる。

「…火山活動が活発になっているから…という理由ではなさそうですね…。硫化水素の匂いもほとんどしませんし…」

ヨウはこの先にトゲデマルの生息地があるとわかっているのに、そこに行けないと知りがっくりとうなだれる。と、ここでヨウの目になにやら電光のような光が飛び込んできた。立ち入り禁止の看板のずっと先の方からだ。

「…?何だ?」

「あれはね、縄張り争いをしてるんだよ」

ヨウが声のした方を向くと、地熱発電所の職員と思しき中年男性がいた。その後ろにエーテル財団の職員の男女二人組を連れている。
リーリエはエーテル財団の職員を見てビクッとしたが、財団職員たちはにこやかにヨウとリーリエに挨拶をした。

「やあ、アローラ」

「アローラ。…縄張り争いって、どういう意味なんですか?」

ヨウが発電所職員に尋ねると、発電所職員はやれやれと首を振りながら答えた。

「実は、この発電所の周辺に、どこから来たのかサイホーンが現れるようになってね。この周辺にもともと住んでいたトゲデマルたちと縄張り争いをするようになったんだ。あの電光はトゲデマルたちがサイホーンと戦ってるときに見られる。危険だから、周辺を立ち入り禁止にして、エーテル財団の人達にサイホーンを捕獲してもらうことにしたんだよ。彼らの縄張り争いで発電所の設備が壊されても困るしね」

「サイホーンはアローラには本来住んでいないポケモンだ。財団で一旦保護して、それからサイホーンの住んでいる土地へ転送して、野生に帰そうと考えてる」

「あなたたちは島巡りのトレーナーでしょ?この地方では見ないポケモンと聞いたらゲットしたいかもしれないけど、かなり手強い相手みたいだから、ゲットしようなんて思わずに私達に任せて」

そう言い残し、発電所の職員とエーテル財団の職員は立ち入り禁止の看板の奥へと向かっていった。
 ▼ 755 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:28:00 ID:WuIIashQ [6/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…なんかメレメレ島でも似たようなことがあったな…」

ヨウがヒトモシをゲットしたときのことを思い出しながら呟くと、リーリエが口を開いた。

「ヨウさん、ここはおとなしく引き下がりましょう。あの電光を見る限り、かなり激しく争っているみたいですよ」

リーリエがそう言ったところで、再びバチバチと電光が宙を走るのが見えた。

「ぴゅいっ、ぴゅい〜!」

すると、ほしぐもちゃんが飛び出し、立ち入り禁止のエリアにも構わず飛び込んでいった。

「ほしぐもちゃん!行ってはダメですよ!」

ほしぐもちゃんはリーリエの制止を振り切り、電光の発生した方向へとすっ飛んで行く。

「ええい、仕方ない!追いかけよう!」

「は…はいっ!」

ヨウは看板の向こうへと足を踏み入れ、リーリエも仕方なくその後を追った。



ヨウとリーリエが進んでいくと、トゲデマル3匹とサイホーンが1匹争っているところを遠目に目撃した。ほしぐもちゃんがその上空でトゲデマルたちとサイホーンの戦いを見つめており、近くの草むらではエーテル財団の職員が身を潜めてサイホーンの様子をうかがっていた。

「あれがそうか…。さすがにトゲデマルたちの方が分が悪そうだな」

サイホーンは地面、岩タイプなのでトゲデマルの電撃が通用しない。トゲデマルは電気、鋼タイプなので鋼技で弱点を突くことはできるが、サイホーンの巨体を存分に活かした戦い方には苦戦しているようだった。
 ▼ 756 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:29:34 ID:WuIIashQ [7/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「アブリボン、ほしぐもちゃんを連れ戻してきてくれ」

「ブリッ」

ヨウはアブリボンを出すと、ほしぐもちゃんを連れ戻すように頼む。アブリボンはほしぐもちゃんに向かって静かに飛んでいった。アブリボンがほしぐもちゃんを連れ戻してくると、リーリエはヨウに尋ねた。

「…ヨウさん。私達が立ち入り禁止のエリアに入らなくても、アブリボンさんにお願いすればよかったのでは…」

ヨウはリーリエの言葉に聞こえないふりをした。

「…もしかして、ほしぐもちゃんが飛び出したのを立ち入り禁止エリアに入る口実にしたんですか?」

リーリエはヨウをじと目で見つめると、ヨウは白状した。

「…だって、トゲデマルはゲットしたかったし、あわよくばサイホーンもゲットできるかもしれないじゃん?」

「…もう!後で怒られても知りませんからね!」

リーリエは呆れて肩をすくめる。ヨウはリーリエに構わずトゲデマルたちとサイホーンの様子をうかがっていた。

「グルル!」

サイホーンは3匹のトゲデマルのうちの1匹にドリルライナーで突撃する。トゲデマルはサイホーンの攻撃の直撃を受けた。ヨウはこれを見て、いくらなんでも一撃KOだろうと思った。だが、トゲデマルは踏みとどまり、まだ立っていた。

「耐えた!?まさか…」

「どうやら、特性は頑丈みたいロト」

ヨウは思わぬターゲットの発見に、興奮で鼓動が早くなる。サイホーンは渾身のドリルライナーを耐えられたことに少々驚いたようだが、すぐに追撃の体勢に入る。

「グオオッ!」

サイホーンはトゲデマルに対して突進を敢行する。しかし、先程のトゲデマルとは違う個体が立ちはだかり、背中のトゲを立てて防御体勢を取った。サイホーンの突進は止められ、サイホーンはトゲに接触したせいかダメージを負ったようだった。
 ▼ 757 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:31:22 ID:WuIIashQ [8/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「今のはニードルガードですね…。接触技を防御すると相手にダメージを与えることができるんです」

リーリエはトゲデマルの使った技を解説する。

「マッキュ!」

続いて、3匹目のトゲデマルがミサイル針を放つ。しかし、サイホーンの硬い表皮には効果が薄いようだった。トゲデマルたちはサイホーンを相手に立ち回るが、じりじりと追い込まれていた。
サイホーンが再び突進を仕掛けると、トゲデマルたちは散開してかわす。サイホーンはそのままヨウ達のいる方向へとすごい勢いで走ってきた。

「げっ!こっちに来る!」

「ヨウさん!逃げましょう!」

ヨウとリーリエが慌てふためくと、目の前に巨大なポケモンが立ちはだかり、サイホーンの突進をブロックした。
ヨウとリーリエが自分たちを庇ったポケモンを見上げる。それはギャラドスだった。ギャラドスはリーリエの顔を見ると、一瞬驚いたような顔をした。

「まったく、忠告を聞かずに来たのか!」

エーテル財団職員の男性がヨウたちの方へ走ってくる。そして、もう一人の女性職員もサイホーン捕獲のためポケモンを繰り出す。

「ルカリオ、行きなさい!」

女性職員はルカリオを繰り出し、サイホーンはギャラドスとルカリオに挟まれる形となった。ルカリオはサイホーンを相手に闘志を燃やすが、ある人物の姿を見て凍ったように動きを止めた。

「クワン…」

ヨウとロトムはルカリオの様子がおかしくなったことに気づく。
 ▼ 758 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:32:31 ID:WuIIashQ [9/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「あのルカリオ…。誰に話しかけてるロト…?…お久しぶりです…?」

「ルカリオ!ボーッとしないで!」

女性職員の声にルカリオは我に返る。だが、ルカリオの目の前にサイホーンが迫っており、ルカリオはドリルライナーの強烈な一撃をもらってしまう。

「ルカリオ!」

ルカリオが弱点を突かれてダウンすると、ギャラドスを繰り出した男性職員が叫ぶ。

「ギャラドス!サイホーンの動きを止めるぞ!氷の牙!」

「ギャオオオッ!!」

ギャラドスが咆哮を上げると、その牙に白く冷気が走る。ギャラドスは氷の牙でサイホーンの弱点を突こうとする。冷気をを纏った牙がサイホーンの体を捉え、サイホーンは苦しそうな声をあげる。

「よし、この調子なら…!」

しかし、男性職員がモンスターボールを構えた瞬間、サイホーンの身体に変化が起こる。

「進化…!?」

ヨウとリーリエは目を見開く。サイホーンの身体は光に包まれて変化し、後ろ足での二足歩行の姿になる。頑丈な角はドリルのように変化し、硬い皮膚は更に硬度を増し、鉄壁の鎧と化す。

「グオオッ!!」

サイホーンはサイドンに進化し、咆哮を上げた。そして、ギャラドスに向かってストーンエッジを繰り出す。

「ギャッ…!?」

その攻撃はギャラドスの急所を捉えたようで、ギャラドスの巨体が地響きを立てて崩れ落ちる。サイドンはギャラドスが倒れたのを確認すると、ヨウとリーリエに向かって歩いてきた。
 ▼ 759 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:33:47 ID:WuIIashQ [10/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「くっ…」

ヨウがオシャマリのボールを掴むと、先程倒れたギャラドスが体をなんとか持ち上げ、ヨウとリーリエを庇うように再びサイドンの前に立ちはだかった。

「…ギャラドス…さん…?」

「……!」

ギャラドスは鳴き声を上げる力も残されていないようだったが、それでもサイドンをそれ以上進ませまいと自身の身体をサイドンにぶつける。
サイドンは太い腕でギャラドスのタックルをガシッと受け止めると、少し後ずさりしたものの、ギャラドスをすぐに投げ捨てた。ギャラドスは再び倒れ、サイドンの進撃が始まった。

「マキュッ!!」

すると、先程までサイホーンと戦っていたトゲデマルたちが乱入してきた。

「トゲデマル!?…ここは共同戦線といくか…!オシャマリ、頼むぞ!」

「しゃまッ!!」

ヨウはオシャマリを繰り出す。

「しゃま!しゃまっ!」

「…!マキュッ!マキュ!!」

オシャマリがトゲデマルたちに共闘を呼び掛けると、トゲデマルたちも納得したようで、4匹でサイドンを取り囲むように陣取った。サイドンにはオシャマリの水技を一撃でもくらわせれば致命的と言っても過言ではないダメージを与えられるはずだ。逆に、トゲデマルたちの攻撃ではサイドンにはほとんど効果はないだろう。
サイドンもそのことをわかっているのか、オシャマリを狙って攻撃を開始した。

「グオオッ!」

サイドンは再びストーンエッジを使い、オシャマリを攻撃してきた。
 ▼ 760 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:35:55 ID:WuIIashQ [11/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「オシャマリ、アクアジェットでジャンプだ!」

ヨウの指示で、オシャマリはアクアジェットを使ってジャンプし、ストーンエッジをかわした。その隙にトゲデマルたちはミサイル針による集中砲火をサイドンに浴びせるが、サイドンにはほとんど効き目がないようだった。

「グル…!」

サイドンはトゲデマルたちに構わず、オシャマリに狙いを定める。ヨウはこの隙に、トゲデマルのうちの1匹に駆け寄った。

「トゲデマル、さっきの戦いで受けたダメージの応急処置をする。少し染みるかもしれないけど、辛抱してくれよ」

「マキュ?」

ヨウはすごい傷薬を取り出し、ドリルライナーを受けたトゲデマルに薬液を吹きかける。少し染みたが、トゲデマルはキズが癒え、ダメージが回復するのを感じた。このとき、ロトムはトゲデマルをスキャンし、覚えている技を確認する。

「…ッ…マキュッ!」

トゲデマルは元気を取り戻し、上がっていた呼吸を整える。

「よし、これで万が一サイドンから一撃をもらっても大丈夫だ」

野生のポケモンはダメージを与えすぎると捕獲できなくなる。ヨウはこのトゲデマルを捕獲したいと考えているため、サイドンに一撃をもらっても大丈夫なように体力を回復させたのだった。

「ヨウ、このトゲデマル、アンコールを覚えているロト。野生のポケモンがヨウの指示を聞くかはわからないロトが、うまく使えればサイドンに決定的な隙を作れるかもしれないロト」

「…アンコールか…。いい技を覚えてるな。トゲデマル、あのサイドンを捕獲するのに、君の力を貸してくれ」

ヨウはトゲデマルの体を撫でると、トゲデマルは呼吸を整えてサイドンへと向かう。
ここで、サイドンは非常に危険な技を使ってきた。サイドンの角がドリルのように回転し、ギュイインと甲高い音を鳴らし始める。
 ▼ 761 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:37:07 ID:WuIIashQ [12/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…角ドリルか…!」

「グオオッ!」

サイドンは角を回転させた状態で再びオシャマリへと突撃する。

「オシャマリ!アクアジェットで避けろ!」

オシャマリは再びアクアジェットでジャンプし、サイドンの攻撃をかわす。

「今だ!トゲデマル、アンコールでサイドンの攻撃を縛ってくれ!」

「…!マキュッ!」

ヨウから治療されたトゲデマルは、サイドンにアンコールを仕掛ける。

「グオッ…!?」

サイドンは角ドリルしか技を出せない状態になり、再び攻撃を仕掛けてきた。

「トゲデマル!サイドンをブロックしてくれ!」

「マキュッ!?…マキュッ!!」

トゲデマルは驚いたが、ヨウに言われた通りサイドンの攻撃の前に立ちはだかった。サイドンの角ドリルは自分の体にかすり傷ひとつつけることはなかった。

「特性、頑丈には一撃必殺技が通用しない。トゲデマル、君のおかげでこの勝負はもらった。オシャマリ!アクアジェットでサイドンを攻撃だ!」

「しゃまあっ!」

オシャマリはアクアジェットでサイドンに突っ込む。地面、岩タイプの共通の弱点を突かれ、サイドンはたまらず地面にダウンした。

「今だ!オシャマリ、歌うで眠らせろ!」

「しゃま!しゃま〜♪」

サイドンはオシャマリの歌を聞き、眠気を催す。うつらうつらとするサイドンに向かって、チャンスとばかりにヨウはモンスターボールを投げる。サイドンはボールに吸い込まれ、何の抵抗もなくボール内に収まった。
 ▼ 762 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:38:54 ID:WuIIashQ [13/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「よし!サイドンゲット!」

ヨウはサイドンの収まったモンスターボールを拾う。その様子を見て、エーテル財団の職員たちが声をかけた。

「…お見事。君にはやられたな」

「…やれやれ、私たちは任務失敗か…。でも、ルカリオの様子がおかしくなったのはなぜなのかしら…?」

女性職員の声に、ロトムが答える。

「何か、誰かに向かってお久しぶり…とか言ってたロト」

「…どういうことなのかしら…?」

ここでリーリエは元気の欠片を取り出し、女性職員に声をかける。

「ルカリオさんに直接聞いてみるしかなさそうですね…。これを使ってください」

「ありがとう。恩に着るわ」

女性職員がルカリオに元気の欠片を与えると、ルカリオは目を開いた。

「…クワン…?」

「大丈夫?ルカリオ?」

女性職員がルカリオに声をかけると、ルカリオはリーリエに視線を送った。ルカリオが小さく声を上げると、ロトムが通訳を始める。

「…お久しぶりです。私のことがわかりませんか?あなたに最後にお会いしたのは、私が進化する前でしたから、無理もないかもしれませんが…」

「……?」

リーリエはロトムの通訳を聞いても、何のことかわからなかった。

「…私は波動の力を失ったので、人間に直接語りかけることはもうできませんが、あなたのお兄様にはお世話になりました…」

ここまで言われたら、リーリエにはこのルカリオが何者なのかすぐにわかった。だが、ここで下手にこのルカリオと話すと、エーテル財団の職員達が自分の正体に気づくかもしれない。リーリエは断腸の思いでルカリオとの会話を打ち切ることにした。
 ▼ 763 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:40:32 ID:WuIIashQ [14/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…すみません…。あなたの言っていることはよくわかりません…。他のどなたかと思い違いをしているのではないでしょうか…?」

「………!」

ルカリオはリーリエにそう言われ、大きなショックを受けたような顔をした。

「…ルカリオ、昔の知り合いに会えたと思ったの?残念ながら別人みたいよ?」

女性職員はルカリオをボールに戻した。財団職員たちがその場を立ち去ろうとすると、リーリエは最後に質問をした。

「あの…。あなたのルカリオさん…、いつからあなたのポケモンになったんですか?」

女性職員はリーリエがなぜそのような質問をするのか不思議に思いながらも、答えた。

「この子とは、2年くらい前に出会ったの。相方のギャラドスと一緒に、浜辺で倒れてるのを見つけて保護したのよ。この子もギャラドスもひどいダメージを受けてたわ。特にこの子は波動を使う能力を失って…。どうやらギャラドスがこの子を守りながら必死に泳いで、ウラウラ島までたどり着いたようなのよ。で、それから副支部長直々に、この子たちをウラウラ島のエーテルベースで保護して、回復したら自分たちのポケモンとして使えって命令が出たのよ」

「…まあ、どう考えても野生のポケモンじゃあないよね。助かってよかったけど、正直、怪我がひどいからってトレーナーが見捨てたのなら、そのトレーナーを僕たちは許せないよ。…サイドンゲットおめでとう。じゃあ、僕たちはこれで」

財団職員たちは小さく手を振り、今度こそ立ち去った。ヨウにはなんとなくわかっていた。リーリエは恐らく、あのルカリオと何らかの面識がある。それなのに嘘をついたのだと。

「…リーリエ、あのルカリオのこと、正直に話してくれる?」

ヨウはリーリエを問いただそうと口を開いた。
 ▼ 764 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/14 20:44:20 ID:WuIIashQ [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第51話はここまでです。
この話にたどり着くまで長かった…。
次回はカプの村のお話にするつもりです。
次回もよろしくお願いします。
 ▼ 765 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:21:15 ID:ypMA6gOc [1/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第52話ができたので投下します。
カプの村にて、ゴーストの試練の前日談になります。
 ▼ 766 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:21:47 ID:ypMA6gOc [2/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 52 カプの村


「リーリエ、あのルカリオのこと、正直に話してくれる?本当はあのルカリオのこと、知ってるんでしょ?」

ヨウはリーリエを問いただすように言うと
リーリエは静かに答えた。

「…あのルカリオとギャラドスは…元は兄さまのポケモンです」

「グラジオの?」

ヨウはリーリエの回答に驚く。そして、今度はリーリエがヨウに質問してきた。

「ヨウさんが兄さまとバトルしたとき、繰り出してきたポケモンを覚えていますか?」

「…メレメレ島でバトルしたとには、ズバット、ニューラ、ポリゴン、そして…ヌルとか呼ばれてた、見たこともない合成生物みたいなポケモンだったよ」

「…そうですか…。ルカリオとギャラドスはいなかったのですね…。あのルカリオとギャラドスは、兄さまが初めてゲットしたポケモンなんです。兄さまの性格からすると、ケガをしたポケモンを見捨てるなんてことはありえません。なぜ他の人の手に渡っているのでしょう…」

リーリエは考え込む。リーリエは2年前のグラジオの脱走の際、何かあったのではないかと思い始めていた。それに対し、ヨウは再びリーリエを疑い始めていた。

なぜリーリエはルカリオに嘘をつく必要があったんだ?…そういえば、メレメレ島のブティックのときも、急に服を見たいとか言い出したのはエーテル財団が絡んだときだったような…

「マキュ…」

と、そこにさっきまでともに戦っていたトゲデマルがやってくる。

「ヨウ、トゲデマルが話しかけてるロト」

ヨウはルカリオのことに気を取られ、トゲデマルを捕獲するという本来の目的をようやく思い出した。
 ▼ 767 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:22:27 ID:ypMA6gOc [3/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…?どうしたの?トゲデマル」

「俺たちの縄張りを守るのに、協力してくれて感謝している、と言ってるロト」

「まあ、僕もおかげでサイドンをゲットできたからね。こちらこそお礼を言わせてよ」

「マキュッ、マキュッ」

「…もうひとつ、俺はあんたにケガを治療してもらった。俺はこの大恩に報いる必要がある。そのために俺にできることは何でもやろう。遠慮なく言ってくれ、と言ってるロト」

「…トゲデマル、君はすごく義理堅いんだね…。それなら、僕たちと一緒に旅をしてほしい。いろんなポケモンとバトルすることになるけど、それでもいいなら君の力を貸してくれ」

「…マキュ…!」

ヨウにはトゲデマルが自分の言葉に頷いてくれたように見えた。

「…わかった。これからよろしくな、兄弟。…と言ってるロト」

こうして、ヨウは変なキャラだがお目当てのトゲデマルもゲットでき、カプの村へと向かうことにした。
 ▼ 768 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:23:12 ID:ypMA6gOc [4/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カプの村。ここはかつては大大試練の場、ラナキラマウンテンへの入り口としてカプ神たちが現れ、栄えた場所だった。しかし、今は村人もほとんどおらず、荒れてしまっていた。

「…なんだか寂しい感じの場所だな…」

ヨウは村をぐるりと見回す。
「アセロラさんは、この村のはずれにあるエーテルハウスに来てほしいと言ってましたね」

リーリエがそう言うと、ヨウは施設の名前からエーテル財団と何か関係があるのかと思い、疑問を口にする。

「エーテルハウスか…。エーテル財団と何か関係のある場所なのかな?」

すると、ロトムがタウンマップの情報をヨウに伝えた。

「エーテルハウスは、エーテル財団が設立した児童保護施設だロト。何らかの理由で親と暮らせない子供たちを保護しているロト」

「いわゆる孤児院みたいなものか…。アセロラもそこで暮らしてるのかな?…まあ、僕が心配しても仕方ないけど…。とりあえずポケモンセンターに行こう」」

ヨウたちはとりあえずカプの村のポケモンセンター向かうことにする。そして、中に入ると、そこにはアセロラがいた。

「あっ!アローラ!ヨウくん!リーリエちゃん!」

「アローラ、アセロラ」

「マーマネの試練は無事突破したんだね!いよいよアセロラの試練だね!」

アセロラは無邪気な笑顔で言った。

「うん。…それにしても、カプの村って、こんなに寂れた場所なんだね…」

「ここはね、かつてカプの怒りに触れて破壊された村なんだ。昔はたくさんの人で賑わって、ハイナ砂漠を渡るための準備とか、ラナキラマウンテンで大大試練を受ける前の準備とかのために、大きな市場もあったんだけどね」

ヨウがカプの村に対する感想を口にすると、アセロラはポケモンセンターの窓から外を見ながら言った。言葉こそはきはきとしているものの、その眼にはどこか寂しさを宿しているように感じさせた。
 ▼ 769 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:24:06 ID:ypMA6gOc [5/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…アセロラも手持ちの回復?」

ヨウは話題を変えると、アセロラはにこっと笑って頷いた。

「うん!アセロラも、ポケモントレーナーとして腕を磨いてるんだよ!最近、よくバトルの練習相手をしてくれる人がいるんだけど、すごく強いんだ!今日はなんとか勝てたんだよ!」

「そうなんだ。僕も機会があったら挑んでみようかな」

「それがいいよ!その人、今はライドのサメハダーのトレーナーをしてるんだけど、元はアローラ以外の地方で有名なトレーナーだったんだって!」

「へー、別の地方で有名なトレーナーかあ…」

「あと、たまにエーテルハウスの子供たちとも遊んでくれるんだよ!特にトランプを使ったゲームが好きみたいで、アセロラもポーカーとか、ブラックジャックとか、バカラとか教えてもらったんだー!他にも、サイコロをカップに入れて丁か半かを当てるゲームとか…」

ヨウとリーリエはそれを聞いて唖然とした。トランプのゲームもサイコロのゲームもカジノや賭博場で行われるもので、明らかに子供に教えるような内容ではない。

「アセロラ!それ、絶対に子供たちの教育に悪いよ!」

「そうですよ!そもそも、それ全部賭け事でよく行われるヤツですよ!」

ヨウとリーリエの言葉にアセロラは驚いて口を開く。

「ええっ?そうなのー?」

「そうだよ!その人の真似をしてたら、子供たちがギャンブラーになっちゃうよ!」

「ふぁー!アセロラちゃんお口あんぐり!ギーマさん、いい人だと思ってたのにー!」

「…え…?」

ヨウとリーリエはアセロラが言った問題人物のものと思しき名前に一瞬言葉を失った。
 ▼ 770 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:25:25 ID:ypMA6gOc [6/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ヨウさん…ギーマって…」

「…イッシュ地方の四天王の名前…。まさか、同名の別の人だよね…?…いや、でも、アセロラのバトルの稽古相手で、すごくバトルが強いっていうのは…」

と、そこに幼い子供たちの声が割り込んできた。

「あー!アセロラ姉ちゃんだー!」

「おーい!アセロラ姉ちゃん!」

ヨウたちが声の方を向くと、小さな男の子と女の子と、もう一人の人物がいた。子供たちと一緒に、ややくすんだ白い着流しの男性がポケモンセンターに入ってきたのだ。白髪交じりの髪、やややつれた感じの痩身の男性。黒いマフラーを身につけ、少し擦りきれた革靴を履いている。

「おや、アセロラさん。さっきぶりだね」

ヨウとリーリエは驚いて口を開いた。見間違えるはずがない。ずいぶん見た目は変わったが、イッシュ四天王の一人、ギーマその人だった。

「…イッシュ四天王……ギーマ…」

ヨウが思わず声を漏らすと、ギーマはふっと笑った。

「…元…だけどね。君たちは島巡りのトレーナーかな?私のことをご存じとは、光栄だよ」

「えー?ギーマさんって四天王だったのー?」

「はは。さっきも言ったが、元四天王だよ。隠しておくつもりはなかったんだが、特段話すべきことでもないかと思ってね。今の私はライドサメハダーのトレーナーだ。もうイッシュのポケモンリーグとは何の関係もない」

ギーマはそう言うと、自分の手持ちをポケモンセンターのお姉さんに預けた。

「さっきアセロラさんにはこっぴどくやられたからね。手持ちの回復には少し時間がかかるかな」

手持ちを預け終えたギーマがヨウたちのそばにやって来ると、アセロラはギーマをびしっと指差して言った。
 ▼ 771 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:26:03 ID:ypMA6gOc [7/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ギーマさん!ギーマさんが教えてくれたゲーム、本来は賭け事としてやるものだって本当!?」

「本来…というのは語弊があるかな。ゲーム自体には何の問題もない。決められたルールの中で、相手よりも強い役を作って勝とうとしたり、自分の予想が当たるかどうかで遊んでいるだけのこと。賭け事に結びつけるかどうかはその後の話だよ」

ギーマが否定とは取れない発言をしたので、アセロラは眉をつり上げてギーマを非難した。

「じゃあ、賭け事として行われるゲームっていうのは否定しないんだね?ギーマさん!これからはエーテルハウスには立ち入り禁止だよ!子供たちがギャンブラーになっちゃう!」

そう言われたギーマは一瞬目を丸くするが、言葉は落ち着いていた。

「おやおや、穏やかではないね。皆も楽しんでいたし、何より賭け事として行わなければただのゲームじゃないか。まあ、君がそう言うなら、今後エーテルハウスには立ち入らないようにしようか」

「えー?ギーマおじちゃん、もうエーテルハウスに来ないのー?」

「やだー!ギーマおじちゃんにいろいろなゲーム教えてもらうのー!」

どうやらギーマはエーテルハウスの子供たちにとても懐かれているようだ。アセロラはため息をついて頭を抱えた。

「ふふ。まさか子供たちにこんなに好かれるとは、以前の私には想像もできなかったことだな。さて、君たちはこれからアセロラさんの試練に挑むのかな?」

「…そのつもりです」

ヨウがそう言うと、ギーマはふっと笑った。

「そうか。アセロラさんの試練はなかなか手強いぞ。さて、私は仕事に戻るとするよ。幸運を」

ギーマはそう言い残し、ポケモンセンターを後にした。ギーマの姿が見えなくなると、ヨウははーっと大きくため息をついた。
 ▼ 772 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:26:31 ID:ypMA6gOc [8/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…アセロラ、すごい人と知り合いなんだね。まさか、イッシュの元四天王と会えるなんて思ってなかったよ」

「アセロラちゃん、知らなかったよ!ギーマさんがイッシュの元四天王だなんて!いつもバトルの稽古をつけてくれて、そのときから強いトレーナーなんだろうなとは思ってたけど。でも、なんで四天王やめてアローラに来たんだろ?」

「それは僕も気になるなあ」

「まあ、それよりも、ヨウくんはゴーストの試練に挑むんだよね?」

「うん。ただ、今日は手持ちを安静にさせるように言われてるから、明日挑もうと思ってる」

「そっかー。じゃあ、今日はここにお泊りかな?明日は何時ごろ試練に挑むつもり?」

「そうだな…。朝の10時頃とかでもいい?」

「うん!いいよー!じゃあ、その時間にポケモンセンターで待ち合わせしようか!案内してあげる!」

「わかった。ありがとう、アセロラ」

アセロラはヨウと約束を取りつけると、エーテルハウスの子供たちを連れてポケモンセンターを出て行った。

「明日はアセロラさんの試練ですね…。でも、ヨウさんならきっと大丈夫です!頑張ってください!」

リーリエはヨウに激励の言葉を送る。ヨウはその言葉を聞き、ゆっくりと頷いた。

「ありがとう、リーリエ。新しい戦力も加わったし、きっと大丈夫さ」

ヨウは明日のアセロラの試練を楽しみにしながら、窓から差す夕日を見つめていた。
 ▼ 773 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/22 21:28:15 ID:ypMA6gOc [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第52話はここまでです。
次回はゴーストの試練、その後はゲームとは違い、ヨウとリーリエがハイナ砂漠を渡り命の遺跡に行くお話にするつもりです。
それではまた。
 ▼ 774 ビビール@ロトムのカタログ 20/03/25 19:15:40 ID:hT.gw56Y NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 775 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:44:13 ID:cC627oL6 [1/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第53話ができたので投下します。
ゴーストの試練の前編となります。
 ▼ 776 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:45:26 ID:cC627oL6 [2/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 53 ぬしを見つけろ!ゴーストの試練


カプの村に着いてから一夜明けた。ヨウはポケモンセンターの前で大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出した。

「…よし。皆、今日はアセロラの…ゴーストの試練だ。頼むぞ」

ヨウはベルトについたモンスターボールをポンポンと叩く。今回の手持ちはオシャマリ、ヒトモシ、ハリテヤマ、アブリボン、トゲデマル、サイドンというパーティーだ。

「さっそくトゲデマルとサイドンを連れて行くロトね。パーティーのバランス的にもいいと思うロト!じゃあ、ヨウ!頑張ってくるロト!」

ロトムはそう言うと、そそくさとリーリエの陰に隠れようとする。それを見たヨウはすかさずロトムへと手を伸ばす。

「ちょっと待った」

ヨウはロトムをガシッと掴んで自分のもとに引き寄せた。

「なんで君は行かないことになってるの?」

ヨウにギロリと睨まれ、ロトムは少しビクッとした。

「こわ……いや、今日はリーリエと一緒に、命の遺跡に行く手段がないか調べようと思ってるロト。ほしぐもちゃんを元の世界に返す手掛かりを得るには、やっぱり一度遺跡に行ってみるべきだと思うロト!」

「……そう。じゃあ、ゴーストの試練をクリアできたら、その後命の遺跡に向かってみようか。僕も行くよ。それで問題はないかな?」

「ヨウさん…、いいんですか?」

ヨウの言葉にリーリエは驚くとともに、嬉しそうな顔をする。反対にロトムは今日はヨウから離れる口実を失い、絶望の表情を浮かべた。

「ヨウ!命の遺跡は砂漠を越えないと行けないロト!ボクとリーリエでハイナ砂漠を越えるルートを調べたり、必要なものを買ったりしておくロト!」

ゴーストの試練に行きたくないがためにロトムは悪あがきをするが、次のリーリエの一言でロトムは奈落へと落とされる。
 ▼ 777 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:46:32 ID:cC627oL6 [3/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ロトムさん…。お気持ちはありがたいのですが、ルートを調べたり物資を買ったりするのは私に任せてください。ロトムさんはヨウさんをサポートしてあげてください」

「リーリエ!空気を読んでほしいロト!」

ロトムが抗議を続ける中、アセロラがやって来た。

「アローラー!ヨウくん、準備はいいみたいだね?」

「アローラ、アセロラ。いつでも大丈夫だよ」

ヨウは逃げようとするロトムを掴みながら笑顔で言った。アセロラはうんうんと頷くと、その場でくるりと一回転して拳を晴れた空へと突き出した。

「よーし!じゃあ、さっそく試練へレッツゴー!」

ヨウはロトムを握りしめたままアセロラの後をついていった。



「じゃーん!ここが試練の地、スーパーメガやす跡地だよ!」

アセロラに案内された先にはアーカラ島のロイヤルアベニューにあったスーパーマーケット、メガやすと同じデザインの店舗だった。大きさではこちらの方がひとまわり大きく感じる。ただ、こちらは営業はしておらず、見た目もボロボロで中も荒れ果てていた。

「…アセロラ…、このお店は…?アーカラ島のロイヤルアベニューに同じお店があったけど…」

ヨウの疑問にアセロラが答える。

「うん!ここはスーパーメガやすの1号店!ロイヤルアベニューにあるのは2号店だよ!」

「ここが1号店?なんでこんなボロボロに…」

ヨウは店の中の様子をよく見ようと覗き込む。明るい時間なのに中はかなり暗い。真っ暗闇よりもかえって不気味な感じがした。アセロラは小さく深呼吸すると、この店で何があったのかを話し始めた。

「…ここにはね。大昔、カプを奉ってた小さな祠があったの。でも、それを知らずにお店を建てちゃって、祠は壊されたんだ。それでカプの罰を受けて、お店は破壊されたの。今はゴーストポケモンたちの住み処になってるんだよ」

「…そうなんだ…」

ヨウはアセロラの言葉にそう返すことしかできなかった。カプ・コケコは橋から落ちた自分を助けてくれたが、本来カプは必ずしも人間の味方ではない。彼らはアローラの守り神であって、人間の守り神ではない。ヨウはその事実を、今形として見せられていた。
 ▼ 778 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:47:15 ID:cC627oL6 [4/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…よし、そろそろ試練を始めよっか!試練の内容は簡単!ここに住んでるぬしポケモンをポケファインダーで撮影して、その後バトルで倒すこと!途中でゴーストポケモンたちがいたずらをしてくるかもしれないけど、頑張ってね!」

「…うん!」

ヨウはこの期に及んで自分からそーっと離れようとしていたロトムを取っ捕まえ、スーパーメガやす跡地へと足を踏み入れた。


「…うわあ…広いなあ…」

スーパーメガやす跡地の中は非常に広かった。跡地とはいえかつて栄えていたであろう痕跡は残されており、ポケモンのための道具の他にも食料品、衣類、生活雑貨などさまざまなものが置いてあった。どうやらカプの罰を受けた後は中の商品は放置されていたようで、野生のポケモンに食料品は食べ尽くされ、衣類や生活雑貨は野生ポケモンたちの争いか遊びに巻き込まれたようで、散乱していた。

「この中広い空間の中からぬしを見つけないといけないのか…。ロトム、よろしくね?」

「…もうどうにでもなれロト…」

ヨウはロトムが逃げ出さないように左手でガシッと強く掴んでいた。日の高い時間だが誰もいないスーパーマーケット内はかえって気味が悪く、ところどころ暗い場所からは野生ポケモンのものと思われる鳴き声が時折聞こえてきた。
ヨウは食料品のエリアに足を踏み入れると、沈黙していたはずのレジの電源がいきなり入った。

「何だ?」

ヨウはロトムが逃げ出そうとするのを感じ、左手に力を込めた。レジに設置されたベルトコンベアがカタカタと不気味な音を立てながら動いている。

「…ヨウ、ポケモンの気配がするロト…」

ロトムにそう言われ、ヨウはポケファインダーを起動した。ロトム図鑑のカメラ越しにレジを映すと、そこにはゴースの姿があった。

「…ゴースか…。そう言えば、アセロラからここのぬしポケモンは何なのか聞いてなかったな。あのゴースがそうってことはないだろうけど…」

ヨウは気になり、一応ポケファインダーでゴースを撮影した。

「…キュリア!!」

すると、ゴースが突然肉眼でも見えるようになり、ヨウに向かって襲いかかってきたのだ。

「くっ!」

ヨウは驚いて身をかがめ、ゴースをやり過ごす。しかし、ゴースは方向転換し、再びヨウへと迫ってくる。
 ▼ 779 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:48:10 ID:cC627oL6 [5/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ハリテヤマ!はたき落とせ!」

「ドスコイ!!」

ヨウはハリテヤマを繰り出して攻撃を指示する。ハリテヤマは向かってきたゴースを思いっきりはたき落とした。

「ギュリ…!!」

ゴースは一度床面に転がり、そのままいずこかへと逃げ去った。

「…よし…。とりあえずは大丈夫か…」

ヨウは周囲が静まり返り、ポケモンの気配がないことを確認する。すると、お菓子売り場の棚の陰から一匹のポケモンが自分の様子を窺っているのが見えた。

「…ピカチュウ?」

ヨウはそのポケモンをピカチュウだと認識した。尖った耳に赤いほっぺた、そしてギザギザの尻尾。首には赤いリボンを巻いていた。ヨウがそのピカチュウに近づこうとすると、そのピカチュウはお菓子売り場の棚の陰に隠れるように逃げていく。

「あっ、待って!」

ヨウが後を追いかけてピカチュウがいたと思われる通路を見ると、そこにはピカチュウの姿はなかった。

「…?もうどこかに逃げたのか?すばしっこい奴だな…」

ロトムは先程ピカチュウがいたと思われる辺りを調べていたが、どうも変だと思っていた。
 ▼ 780 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:49:06 ID:cC627oL6 [6/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ヨウ、何かおかしいロト。この周辺にはそもそもピカチュウは生息していないロト。それに、ピカチュウなら微弱な電磁波が検知されるはずロトが、それも検知できないロト」

「そっか。ロトムも電気ポケモンだから、ピカチュウの電磁波とかを検知できるのか…」

「…何だか、この試練は嫌な予感がするロト。ヨウ、十二分に気をつけるロト」

「…ああ…」

ヨウはロトムの忠告に一度帽子をかぶり直す。確かに、どこからポケモンに襲われてもおかしくはない。ヨウは暗がりを警戒しながらぬしポケモンを探した。

カランッ…カランッ…

ビクッ

ヨウは衣料品コーナーの暗闇から何かが動いた音を察知し、目を向けた。

「…ロトム…」

「オーケーロト」

ロトムはポケファインダーを起動し、カメラで音のした方向を映す。そこにはゴーストがおり、商品陳列のためのバーにかかったハンガーで音を鳴らして遊んでいた。

「…ぬしはあいつか…?」

ヨウがポケファインダーでゴーストを撮影すると、ゴーストも先程のゴース同様に襲いかかってきた。
 ▼ 781 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:49:59 ID:cC627oL6 [7/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「くそっ、写真撮影くらいで怒るなよ!」

「仕方ないロト!人間だって勝手に写真を撮られたら怒るロト!なんとか権っていうやつロト!」

「肖像権ね!ハリテヤマ、あいつもはたき落としてやっつけてくれ!」

「ドスコイ!」

ヨウは再びハリテヤマを繰り出す。しかし、ゴーストは催眠術を放ってハリテヤマを眠りに誘った。

「こいつ…!催眠術を覚えてるのか!ハリテヤマ、大丈夫か!?」

「…ド…スコイ…」

ハリテヤマは、睡魔に襲われて意識が朦朧としていた。ヨウはここでハリテヤマを倒されてはまずいと考え、ポケモンを交代させる。

「ハリテヤマ、交代だ!トゲデマル、頼むぞ!」

「マッキュ!!」

ヨウはハリテヤマに代わってトゲデマルを繰り出す。トゲデマルはとげを逆立ててゴーストに対して臨戦態勢を取った。

「ギュア…!!」

不気味な鳴き声を上げてゴーストがトゲデマルへと向かってきた。ゴーストの目が妖しく輝く。ヨウはゴーストが再び催眠術を仕掛けてくると読んだ。

「トゲデマル!ニードルガード!」

「マキュッ!!」

トゲデマルは背中のトゲを逆立てゴーストの方へと向け、防御体勢を取った。催眠術を防ぐと、ゴーストは手だけをトゲデマルの方へと射出し、トゲデマルを空中へと抱え上げた。
 ▼ 782 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:50:32 ID:cC627oL6 [8/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「マキュ!?」

「ヨウ!まずいロト!」

ゴーストの手の中から逃れようとトゲデマルはもがくが、ゴーストはトゲデマルを放そうとはしなかった。そして、ゴースト本体とトゲデマルの目が合う。ここで再びゴーストは催眠術を仕掛けようとした。

「ゴースト、それは悪手だ」

ヨウは黄色のZクリスマスをZリングにはめる。そして、両手で稲妻を描くようなポーズを取った。

「ギュアッ…!?」

ゴーストは目の前のトゲデマルの体から光が溢れるのを見て、眩しさに思わず目を逸らした。

「スパーキングギガボルト!」

ヨウが叫んだその瞬間、ゴーストは訳もわからないうちに強力な電撃に飲み込まれた。ゴーストは大ダメージを負って動けなくなり、地面に落下した。ヨウはゴーストの手から解放されたトゲデマルを、地面にぶつかる前にボールへと戻す。

「お疲れ様、トゲデマル。…こいつもぬしじゃなかったみたいだな」

ヨウがゴーストが戦闘不能になったことを確認すると、別のエリアへと向かおうとした。そのとき、先程の赤いリボンのピカチュウを再び見つけた。
 ▼ 783 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:51:19 ID:cC627oL6 [9/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「あっ、さっきのピカチュウ!?」

「…え…?」

ロトムはピカチュウの姿を確認しようとするが、ピカチュウらしきものは再び物陰に隠れてしまう。ヨウは再びそのピカチュウを追うが、ピカチュウが隠れた物陰にその姿はなかった。

「…あれ…?おかしいな…」

「…ヨウ、本当にピカチュウだったロト?」

ロトムは確認するように言った。ヨウは息を軽く整えてから答えを返した。

「…うん。ピカチュウだった…と思う」

「…やっぱり電気ポケモンの痕跡はないロト」

「…そう…。なんでだろ…。とにかく、進んでみよう」

ヨウとロトムは再びぬしを探して歩き始める。そして、ヨウが玩具エリアへと足を踏み入れたとき、ポケモンのぬいぐるみがふわりと宙に浮いた。さすがに三度目となればヨウもロトムも慣れたもので、ヨウは冷静にポケファインダーを構えた。

「もう種はわかってる。さあ、お次は誰かな?」

ポケファインダー越しにぬいぐるみを映すと、そこにはゲンガーがおり、両手でぬいぐるみを掴んで持ち上げていた。

「…ゲンガーか…」

ヨウは写真を撮らずにサイドンを繰り出した。
 ▼ 784 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:52:16 ID:cC627oL6 [10/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「サイドン、あの浮いたぬいぐるみの間に、ドリルライナーで突っ込んでくれ」

「グオ」

ゲンガーはまだヨウたちをおどかそうとぬいぐるみを手で動かしていた。そこにサイドンがドリルライナーで突撃し、その攻撃はゲンガーに直撃した。ぬいぐるみが置かれていたカートが派手な音を立てて倒れ、その上にあったぬいぐるみが散乱する。目には見えなかったが、サイドンは見えない何かに攻撃が当たった手応えを感じ、周囲の様子を窺っていた。

「よし、よくやったサイドン。…ごめんね、ゲンガー」

再びポケファインダー越しにゲンガーがいたところを映すと、ゲンガーはサイドンの攻撃によりノックアウトされていた。
ヨウがサイドンをボールに戻すと、どこからか視線を感じた。ヨウが辺りを見回すと、また赤いリボンのピカチュウが物陰からヨウの様子を窺っていた。

「またピカチュウ…?」

ヨウがピカチュウのいる方向へと一歩踏み出すと、そのピカチュウは走って逃げ、玩具コーナーのはずれにある扉の中へと消えていった。ヨウとロトムが扉に近づくと、扉の奥から何やら不気味な気配がした。

「…ヨウ、入るロト?この部屋、なんだか嫌な感じがするロト…」

「……」

ロトムの言うことはヨウにも理解できていた。半開きになった扉の隙間からは奥の部屋の様子は見えず、物音もせず、ただ無限の闇が広がっているような感じさえした。

「…あのピカチュウがこの部屋に入ったのは間違いない。…行ってみよう」

ヨウは意を決して部屋の中へと入っていった。
 ▼ 785 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:53:02 ID:cC627oL6 [11/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨウが入ったのは何に使われていたのかもよくわからない小部屋だった。特に事務所のように机や椅子、オフィス機器があるわけでもなく、物置として使われていたような形跡もない。スーパーマーケット内にそのような部屋があるとは、ヨウにはにわかには信じられなかった。それよりも驚いたのが、その小部屋の壁にピカチュウの写真や、昔流行したピカチュウを連れた少年のアニメのポスターなどが大量に貼られていたことだった。

「…何だこの部屋…」

そこでヨウは少し頭がぼやけるような感覚に陥る。足下を見ると、ピカチュウが一匹ヨウを見上げていた。

「…さっきのピカチュウか…。ここはおまえの部屋なのかい?」

ヨウは自分の脚に体をすりつけるピカチュウを抱き上げた。そして、そっと頭を撫でる。

「ピッカ!ピカチュウ!」

ピカチュウは嬉しそうに声を上げる。ヨウはピカチュウを抱いたまま改めて部屋の写真やポスターを見回す。ポケモンに自分の写真や姿が描かれたものをコレクションする習性があるのかヨウにはわからなかったが、このピカチュウにはそういう習性があるのだろう。ヨウは自分になつくピカチュウがかわいくて、背中や頭をなで続けた。
だが…

「ヨウ!そいつはピカチュウじゃないロト!!」

ロトムが大声を上げ、ヨウの頭に体当たりした。その痛みでヨウははっと気づく。自分が抱き上げているポケモンはピカチュウではない。ピカチュウに似せたぼろ布をかぶり、ギザギザの尻尾も木でできた偽物だ。ヨウが見たピカチュウとの共通点は、首の部分に巻いた赤いリボンだけだった。

「うわ!?なんだこいつ!?」

ヨウは思わずそのポケモンを放してしまう。そのポケモンはヨウの足元に背中から落ちた。

「…ミ………タ……、ミ……タ……」

ピカチュウの胴体部分にこのポケモンの本物の目と思われるものがあり、それがギラリと赤く光る。そして、しばしの静寂の後、そのポケモンは一際大きな金切声を上げた。

「ミタアアアァァァーッッ!!!???」

ヨウは恐怖のあまり小部屋を飛び出し、ふり返ってモンスターボールを構える。そのポケモンは小部屋からずるりと這い出るように姿を現し、これまでのぬしと同様にオーラをまとった。
 ▼ 786 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/25 19:57:35 ID:cC627oL6 [12/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第53話はここまでです。
次回は対ぬしミミッキュの決着編です。
今回のぬしポケモン戦はこれまでとは違う終わり方にしようと思っています。
それではまた。
 ▼ 787 レセリア@ハートスイーツ 20/03/26 06:32:44 ID:AgLgHb1s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 788 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 18:53:12 ID:3a4gNyQM [1/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第54話ができたので投下します。
ゴーストの試練の決着編となります。
 ▼ 789 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 18:54:10 ID:3a4gNyQM [2/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 54 ミミッキュの願い



「ミタアアアァァァッ!!!???」

ピカチュウに似せたぼろ布を被ったポケモンがオーラをまとう。その姿を見て、ヨウはこのポケモンがこの試練のぬしであると気づいた。

「…こいつがぬしか!」

「ヨウ!このポケモンはミミッキュ!ピカチュウに擬態して人間や他のポケモンを油断させ、襲いかかるロト!」

「なんにしても、こいつを倒さないと試練達成にならないんだ。頼むぞ!」

ヨウはモンスターボールを右手に取り、投げる。ボールの中からはハリテヤマが現れた。

「ハリテヤマ!はたき落とす!」

「ドスコイ!」

ハリテヤマは右手に黒いオーラをまとわせ、振り下ろす。しかし、ミミッキュはハリテヤマの攻撃をするりとかわす。

「ミッキュ!!」

そして、ミミッキュは反撃に出た。ハリテヤマの懐へ素早く飛び込むと、まるでじゃれつくような仕草で連続攻撃を仕掛けてきた。ハリテヤマはミミッキュの爪による切りつけや木の棒による打撃を浴び、その場に倒れた。

「フェアリータイプの攻撃技、じゃれつくだロト!」

「ハリテヤマ!大丈夫か!?」

ハリテヤマは弱点のフェアリー技で大ダメージをくらい、動けなかった。

「くっ…!ここは攻撃力を下げるべきか…。ヒトモシ、鬼火だ!」

「モシッ!」

ヨウはヒトモシを繰り出し、鬼火を指示する。ヒトモシはボールから飛び出すや紫色の妖しい炎を撒き散らす。

「ッキュ!?」

「よし、当たった!」
 ▼ 790 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 18:55:15 ID:3a4gNyQM [3/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨウはヒトモシの鬼火がミミッキュに命中したのを見てガッツポーズを取る。
これでいくらか楽に戦えるはず…!

だが、ミミッキュはここでゲームコーナーの棚に向かって手を伸ばした。その手にはラムの実が握られていた。

「ラムの実!?」

「ミッキュ!」

ミミッキュはラムの実をムシャムシャと食べると、鬼火など何事もなかったかのようにヒトモシに襲いかかる。

「くそっ!そうか…。このスーパー全体が、こいつに有利なフィールドなのか…!」

ヨウは、恐らくこのミミッキュはスーパー内の様々な場に先程のような木の実を隠しているのだろうと読んだ。

「ミッキュ!」

ミミッキュはシャドークローでヒトモシに襲いかかる。ヒトモシは棚の影に隠れるが、ミミッキュは力任せに棚を倒してヒトモシをあぶり出そうとした。

「モシッ…!」

ヒトモシは倒れた棚の隙間から這い出す。その上からミミッキュが鋭い爪を広げて襲いかかった。ヒトモシに鋭い爪の一撃が命中する。

「ヒトモシ!」

シャドークローの一撃にヒトモシは倒れそうになるが、気力で踏みとどまる。しかし、ミミッキュはヒトモシにとどめを刺しきれていないとわかると、先ほどのシャドークローとは反対の手で追撃を加える。
ヒトモシは吹き飛ばされ、玩具コーナーのレジのテーブル側面に叩きつけられた。
ヒトモシがずるずると床に落ちると、ミミッキュはヒトモシにとどめを刺したと思ってヨウの方へと再び向いた。
だが、ヒトモシはまだ踏みとどまっていた。ヒトモシは意識が朦朧としていたが、ミミッキュの注意が自分から逸れていることに気づいていた。そして、チャンスとばかりに最後の攻撃に出る。
 ▼ 791 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 18:58:04 ID:3a4gNyQM [4/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…モシッ…!!!」

ヒトモシの頭の炎が大きく燃え盛る。

「キュ!?」

ミミッキュがヒトモシの方へと再び振り向いたときには、ヒトモシによる最後の力を振り絞ったオーバーヒートの爆炎が自分に迫っていた。

「キュ…!!」

ミミッキュは真っ赤な炎に飲まれ、被っているぼろ布に引火する。ヒトモシは地面を転がり、火を消そうと躍起になっていた。

「キュ…!!キュッ…!!」

ミミッキュはなんとかぼろ布についた火を消した。ピカチュウの首の部分がぽきりと折れていたが、ミミッキュ本体にはダメージは与えられていないようだった。

「…!?オーバーヒートを受けてダメージがほとんどないのか?」

ヨウが驚いていると、ロトムが答える。

「ヨウ、ミミッキュは特性、化けの皮によって攻撃技のダメージを一度だけ防げるロト!一度攻撃をを当てれば、その後の攻撃は問題なく当てられるロト!」

「一度だけ攻撃を無効化するのか…。それはすごいな…」

ミミッキュがぼろ布についた火をなんとか消し、再び戦闘体勢をとると、首のリボンがはらりと落ちた。先ほどのオーバーヒートの熱で焼け焦げ、ボロボロになっていた。

「…ッキュ…?」

ミミッキュはリボンが落ちたのを見て、動きを止めた。

「……?」

ヨウはミミッキュの様子がおかしくなったことに気づく。
 ▼ 792 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 18:59:03 ID:3a4gNyQM [5/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ッキュ……ッキュ……」

ミミッキュはすすり泣くような声を上げる。そして…

「アアアアアアアァァ!!!!!!」

ミミッキュは突然激昂し、倒れる寸前のヒトモシに鋭い爪を剥き出しにして襲いかかった。

「キュア!!キュアアァァァ!!!」

ミミッキュは怒りのままに、シャドークローと影うちによる容赦ない連続攻撃を加える。ヒトモシが完全に倒れようとも攻撃の手は緩まなかった。

「ヒトモシ!くそっ!戻れ!」

ヨウはヒトモシをボールに戻し、ミミッキュの攻撃から救出する。ミミッキュはヨウの方をくるりと向く。胴体からのぞく目がギラリと赤く光った。

「…ッキュ…!キュアアァァァ!!!」

怒りで我を忘れたのか、ミミッキュはヨウに向かって襲いかかってきた。ヨウは驚いて腕で攻撃をガードしようとする。

しかし、ミミッキュの爪がヨウにとどくことはなかった。

「…しゃま…!」

「…オシャマリ…」

気がつくとオシャマリがボールから出ており、レジのテーブルの向こうに吹き飛ばされたミミッキュをにらみつけていた。

「…オシャマリ、助けてくれたのか?ありがとう…」

オシャマリはボールから飛び出すやいなや、渾身のアクアジェットでミミッキュに突撃したのだった。
ミミッキュはレジのテーブルの向こうからずるりと這い出るように姿を現し、オシャマリを威嚇するように両手の爪を広げた。
 ▼ 793 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 18:59:57 ID:3a4gNyQM [6/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ミッキュ…ミッキュ…!」

ミミッキュは何か話しているようだった。ロトムがそれを聞き、ミミッキュの言葉を訳し始める。

「…許さない…。あのリボンは、アセロラにもらった宝物だったのに…と言ってるロト」

「…アセロラからもらった…?」

ミミッキュがオシャマリに襲いかかろうと身構える。そのとき、オシャマリの身体を進化の光が包みこんだ。

「…しゃま…!」

「進化…!?」

オシャマリの体躯が巨大化し、体色も上半身が白、下半身が青のツートンカラーに変化する。水色の髪の毛が伸び、それが水でできた泡のリングで束ねられる。

「…アシレーヌ…」

「しゃる…」

オシャマリはアシレーヌへの進化を終え、ミミッキュと再び対峙する。アシレーヌは美しい鳴き声に反した獰猛な目でミミッキュをにらみつけた。

「キュアアァァ!!!」

ミミッキュはアシレーヌに向かって突撃してくる。アシレーヌは水のバルーンを作って自身とミミッキュの間に設置した。
ミミッキュはバルーンの中に突っ込み、動きが鈍る。

「今だアシレーヌ、泡沫のアリア!!」

「しゃるな!!」

アシレーヌが歌うように吠えると、ミミッキュを閉じ込めたバルーンが破裂し、その衝撃でミミッキュは天井に叩きつけられる。

「これでとどめだ!」

ヨウはミミッキュにとどめを刺すべくミズZをZリングにはめる。流れる水のような舞を踊り、アシレーヌにZパワーが注がれる。
 ▼ 794 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 19:01:06 ID:3a4gNyQM [7/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「スーパーアクアトルネード!!」

「しゃるッ!!」

アシレーヌは巨大な水の渦を起こし、ミミッキュはその中に飲み込まれる。そして、そのまま激流の中で力尽き、最後は床の上に転がって動けなくなった。

「…ありがとう、アシレーヌ。助かったよ」

ヨウはミミッキュを倒したことを確認すると、アシレーヌに歩み寄り、首筋を撫でた。

「…危ないところを助けてもらったしね…」

ヨウはミミッキュが自分めがけて攻撃してきたとき、オシャマリが飛び出して守ってくれたことを思い出していた。

「しゃる…」

アシレーヌは目を閉じ、ヨウの手の感触に嬉しそうな声を上げた。そのときだった。

「……キュ……」

ヨウとアシレーヌがミミッキュの声に驚き、再び戦闘体勢を取る。ミミッキュは腕を床につき、なんとか立ち上がろうとしていた。その手にはアセロラからもらったと言っていた、7ボロボロの赤いリボンが握られていた。

「…そのリボン、よっぽど大切なものなんだね…」

「…キュ…ミッキュ…」

ヨウがミミッキュに話しかけると、ミミッキュも何かを話そうとしているようだった。

「…これは、自分が試練のぬしに選ばれたときに、アセロラからもらったものだ、言ってるロト」

ロトが訳してくれていることに気づいたミミッキュは、倒れたままさらに言葉を続けた。
 ▼ 795 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 19:03:20 ID:3a4gNyQM [8/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…アセロラは、忌み嫌われている私と仲良くしてくれた人間…。私たちの種族は個体数も多くはなく、寂しい思いをしながら生きている。…かつて人気になったピカチュウに擬態すれば、人間や他のポケモンとの距離が縮まるのではないかと思ってこのような被り物をしている…。アセロラは私を受け入れ、共に過ごしてくれた。私は彼女のためにぬしとして戦い続けた…」

ヨウはハッとした。ミミッキュがなぜピカチュウの擬態をしているのか。それは人間を油断させて襲うためではなく、自分たちの寂しさを埋めるために人間との距離を縮めたいがためであったのだ。

「…おまえたちは私を倒した。私の写真を撮ってここを出ていくがいい…」

どうやらミミッキュは立ち上がることをあきらめたようで、そのまま動かなくなった。ヨウはアシレーヌをボールに戻すと、ミミッキュに近づいていった。

「…ヨウ…?どうするつもりロト?」

ヨウはミミッキュの前で片膝をつくと、元気のかけらと傷薬を取り出した。

ミミッキュは自分の体に体力が戻るのを感じる。目を覚ますと、試練の挑戦者が自分の傷を治療していた。

「…ミッキュ…?」

「とりあえず、最低限は動けるようになったかい?」

ミミッキュは驚いていた。自分を治療する挑戦者など初めてだったからだ。

「…ミッキュ…?ミッキュ…!?」

「…何をしている?私を治療して、また襲われたらどうするつもりだ?」

ロトムがミミッキュの言葉を訳すと、ヨウは笑って言った。

「大丈夫。君はそんなことしないって確信があったし、仮に襲われてもまたやっつけてやるだけさ。僕のポケモンたちを甘く見ないでほしいな」

ヨウが笑うと、ミミッキュは戦意を失った。
 ▼ 796 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 19:04:10 ID:3a4gNyQM [9/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…もう歩けるかい?ついておいでよ。ミミッキュ」

「…キュ…?」

ヨウはミミッキュに自分についてくるように言った。ミミッキュは立ち上がり、ヨウについていく。ヨウはスーパーメガやすの出入り口へ向かっていた。
ヨウは出入り口で一度立ち止まると、アセロラの名前を呼んだ。

「おーい!アセロラー!」

「はーい!何かな?」

アセロラが元気よく入ってくる。ヨウは自分の後ろにミミッキュがいることを確認し、言った。

「…アセロラ、あのミミッキュを、正式に君にゲットしてほしい。ぬしポケモンって、確か野生のポケモンなんだよね?」

「…キュ…!?」

ヨウの言葉にアセロラもミミッキュも驚いていた。

「…え?え?あの子…この試練のぬしだよね?どうして…」

「…ロトムが、あのミミッキュの願いを僕に教えてくれたんだ。ミミッキュがピカチュウの擬態をするのは、そうすることで人間と親しくなれると思っているかららしい。アシレーヌのZ技で大ダメージを受けてるのに、それでも君のために戦い続けようとしたり、バトルの途中で君にもらったリボンが燃えたら激怒したり…。きっと、本心ではアセロラと一緒にいたいんじゃないかな?」
 ▼ 797 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 19:04:44 ID:3a4gNyQM [10/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ッキュ……」

ミミッキュはヨウの陰から恐る恐る姿を現し、アセロラを見つめた。アセロラはあんぐりと口を開けたままミミッキュを見つめていた。

「…ミミッキュ…。アセロラと一緒にいたいの?」

アセロラが尋ねると、ミミッキュはこくりと被り物の首を縦に振った。

「…そっか…。わかった!」

アセロラはモンスターボールを取り出し、ミミッキュの前に置く。ミミッキュはモンスターボールのボタンを押し、中へと吸い込まれていった。

「…よかったね、ミミッキュ」

ヨウが一言呟くと、アセロラはヨウに向き直った。

「おめでとう、試練達成だね!まさかこんな形で試練を達成する人が現れるなんて、思ってなかったけど!」

アセロラは称賛と驚きの言葉を口にする。ヨウはふと、これからの試練はどうなるのかと気になっていた。
 ▼ 798 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 19:05:13 ID:3a4gNyQM [11/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ぬしをゲットしちゃったけど、今後の試練はどうなるの?」

アセロラは少し考え込むような仕草を見せるが、ふにゃっとした笑顔で答えた。

「それは大丈夫!他に何か考えるから!」

おそらく明日にはハウが来るのではないかと思ったが、ヨウはそれは黙っておくことにした。

「さて、試練を達成したヨウくんに、ゴーストZをプレゼントだよ!」

アセロラは紫色のZクリスタル、ゴーストZをヨウに手渡す。

「そして、ゴーストZの力を引き出すポーズはこれ!」

アセロラはゴーストZのポーズをヨウに披露する。

「ひゅ〜…どろどろ…ばあッ!!ってね」

アセロラは笑顔でゴーストZのポーズを取る。キョンシーのように両手を下から上へと動かし、顔の前で腕を開いて顔を突き出すようなポーズだった。

「ふふふ。アセロラも新戦力をゲットできたし、これから楽しみ!じゃあ、村に戻ろうか!」

アセロラは上機嫌で歩き出した。ヨウはアセロラのあとをついていこうとする前に、ロトムにお礼を言った。

「ありがとね、ロトム。ロトムのおかげだよ」

「ロト?ボクは別に…」

「もしロトムがあのミミッキュの言葉を訳してくれなかったら、今までと同じで、ぬしを倒してそれで終わりだったと思う。あのミミッキュの寂しい、アセロラと一緒にいたいって気持ちに気づかないままね」

ヨウはロトムにニッと笑いかける。

「ロト!やっとボクの価値をわかってくれたロトか!これからはもっと丁重に扱ってほしいロト!」

「はいはい。頼りにしてるよ」

ヨウはロトムとハイタッチをし、アセロラのあとを追ってカプの村へと向かった。
 ▼ 799 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 19:11:38 ID:3a4gNyQM [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第54話はここまでです。
ミミッキュもかわいくて大好きなポケモンです。
ゲームの四天王戦でアセロラが使ってこなかったことにびっくりしましたけど。
このSSの四天王戦ではアセロラの手持ちとして、このミミッキュが再び立ちはだかります。

次回はヨウとリーリエは命の遺跡を目指し、その一方でミヅキがスカル団の暗躍に巻き込まれていくお話になります。
それではまた。
 ▼ 800 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/27 20:48:05 ID:3a4gNyQM [13/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>791
申し訳ありません。訂正です。


誤:ミミッキュは真っ赤な炎に飲まれ、被っているぼろ布に引火する。ヒトモシは地面を転がり、火を消そうと躍起になっていた。

正:ミミッキュは真っ赤な炎に飲まれ、被っているぼろ布に引火する。ミミッキュは地面を転がり、火を消そうと躍起になっていた。
 ▼ 801 ナヘビ@ビビリだま 20/03/28 23:28:10 ID:s7HQXNC. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とうとう最終形態か
 ▼ 802 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:07:36 ID:bZSw5yLA [1/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、ありがとうございます。
第55話ができましたので投下します。
今回と次回で、実りの遺跡とスカル団の暗躍のお話を描きます。
まずは実りの遺跡のお話です。

>>799にて遺跡名前を間違えていました。
申し訳ありません。

 ▼ 803 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:09:12 ID:bZSw5yLA [2/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 55  実りの遺跡


ヨウ、ロトム、アセロラがゴーストの試練を終えてカプの村に戻ってくると、リーリエ、ハウ、ミヅキが二人を迎えた。

「ヨウさん!」

「おーい、ヨウー!」

「リーリエ、ハウ、それにミヅキも!」

ヨウは3人に駆け寄る。

「マーマネの試練は、2人とも無事にクリアしたんだね?」

ヨウはハウとミヅキに尋ねると、2人は笑顔で頷いた。

「うん!ヨウはアセロラちゃんの試練はクリアしたの?」

ミヅキに尋ねられ、ヨウは自慢げにアセロラからもらったゴーストZを見せる。

「ほら、この通り」

「やったねー、ヨウ。ヨウはこれから大試練を受けるの〜?」

ハウに尋ねられ、ヨウは首を横に振る。

「その前に、実りの遺跡に行ってみようと思ってるんだ。リーリエも一緒にね」

「はい…。ヨウさんが一緒に行ってくださるということなので、お言葉に甘えることにしました…」

リーリエは嬉しそうだった。実りの遺跡でほしぐもちゃんの手がかりが得られればいいなとヨウは思っていた。
 ▼ 804 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:10:01 ID:bZSw5yLA [3/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
翌日、ハウとミヅキは午前と午後に分かれてゴーストの試練に挑戦することに、ヨウとリーリエはハイナ砂漠を越え、実りの遺跡に向かうことにした。

「じゃあ、行ってくるよ」

「うん、気を付けてね」

ヨウとリーリエは砂除け、日差し除けのためのフード付きのマントを被り、水を多めに持ってハイナ砂漠へと向かった。ハウとミヅキはヨウとリーリエを見送り、自分たちは試練に備えることにした。午前中はハウが試練を受け、午後からミヅキが試練を受けることになった。アセロラはハウが試練を受けている間、エーテルハウスで子供たちと遊んでほしいとミヅキに頼んだ。その様子を建物の陰から窺っている者がいた。

「…ボス、奴らが分かれた。ちょんまげのがきんちょがゴーストの試練に向かうようだ。帽子のガキとターゲットはハイナ砂漠へ向かった。どうやらもう一人のニット帽のガキは、エーテルハウスの方へ向かうみたいだな」

「OK。すぐにそっちに向かう。作戦開始だ」」

グズマは見張りの通信を受けてにやりと笑った。


ハイナ砂漠。ここは実りの遺跡へと続く砂漠地帯だ。昼間はかなり暑く、ときおり砂嵐も起こる。生息しているポケモンも乾燥に強いポケモンがほとんどだ。ヨウとリーリエがハイナ砂漠に足を踏み入れた時には快晴で砂嵐は起きておらず、穏やかな天気だった。

「よく晴れてるな。結構暑いけど、これなら実りの遺跡までそう苦労せずに行けそうだね」

ヨウがそう言うと、リーリエがハイナ砂漠の地図を見ながら言った。

「実りの遺跡に行くには、砂漠内に建てられている石のモニュメントをたどっていけばいいそうです。ほら、あれです」

リーリエが石が何段も積まれたような形のモニュメントを指差す。確かに、それがある一定の間隔で砂漠内に建てられているのが確認できた。

「地図を見る限りだと、砂地だけじゃなくて、結構岩場も通るんだね」

「私が地図を買った人は、もし途中で砂嵐に見舞われたときや、日差しが強すぎるときに日陰で休めるようにと、わざと岩場の方を迂回するルートになっていると言ってました。ハイナ砂漠では、予期せぬ砂嵐も起こるそうなので…」」

「そっか…。そのルートで行くのが、少々遠回りになっても安全かな」

ヨウは照りつける太陽を見ながら言った。
 ▼ 805 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:10:49 ID:bZSw5yLA [4/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モニュメントをたどってしばらく歩き、ヨウとリーリエは砂地から岩場のエリアにさしかかった。

「ねえリーリエ、ちょっと日陰で待っててくれる?僕はちょっとこの砂漠で捕まえたいポケモンがいるんだ」

「捕まえたいポケモン?何ですか?」

「…このポケモン」

ヨウがロトム図鑑からデータを出す。そこに載っていたのはナックラーだった。

「ナックラーさん…ですか?」

「うん、僕の今のパーティーをさらに強化するために、地面タイプの攻撃を無効にできて、かつ岩、炎、電気に強いポケモンが欲しいなと思ってたんだ。サイドンも悪くはないんだけど、素早いポケモンももう1体くらい欲しいし、ナックラーを捕まえてフライゴンに進化させようと思って」

ナックラーの最終進化系、フライゴンは地面、ドラゴンタイプのポケモンだ。特性、浮遊により地面タイプの攻撃技を受けず、技のレパートリーも豊富である。テクニカルな戦い方をするヨウにはぴったりなポケモンだとリーリエも思った。あ、

「確かに、パーティーのバランスはかなりよくなりそうですね」

「この砂漠にはガブリアスに進化するガバイトもいるロトが、今のパーティーに地面タイプのポケモンを足すなら、恐らくフライゴンが実戦では戦いやすいと思うロト。さあ、ヨウ!ボクがついているからには、とびっきりいい個体をゲットさせてあげるロト!」

「ありがとうロトム。期待してるよ」

ヨウはロトムを連れて砂地の方へと向かっていった。岩場を吹き抜ける風の音が大きくなりつつあり、リーリエは少しの不安を抱き始めていた。
 ▼ 806 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:11:44 ID:bZSw5yLA [5/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨウが砂地をうろうろしていると、砂の中を泳ぐように移動しているポケモンがいた。尖った背鰭が見えている。

「……あれ…?もしかしてガバイト?」

「そうみたいロト。捕まえるロトか?」

「そうだね。捕まえよう」

ヨウとロトムは砂の中を泳ぐガバイトをつけていく。ヨウもロトムもガバイトを追うのに夢中になるあまり、岩場からどんどん離れていった。

ヨウとロトムはしばらくガバイトをつけていくと、砂漠に吹く風がだんだん強くなっていることに気づいた。

「ヨウ…。風が強くなってきたロト。そろそろリーリエのところに戻った方が…」

ロトムがそう言うと、ヨウも歩みを止めた。

「…確かに…。なんだか嫌な風だね…」

と、そこに、ヨウの足下に突然すり鉢状の流砂が発生した。

「うわっ?何だ!?」

ヨウが流砂の中心を見ると、そこにはナックラーがいる。ガバイトはヨウたちの追跡に気づいており、追手を撒くためにナックラーの巣におびきよせたのだ。

「ナックラーの巣に入ったか…!アブリボン、頼む!」

「ブリッ!」

アブリボンがボールから飛び出し、巣の中心を目掛けてムーンフォースを叩き込む。
ナックラーは慌てて地面に潜り、ムーンフォースをかわした。
 ▼ 807 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:13:06 ID:bZSw5yLA [6/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ヨウ、今のうちに這い上がるロト!」

ヨウはナックラーの起こした流砂から這い上がり、そこから離れようとする。だが…

ズ…ウゥゥゥン…!!

突然地面が揺れ、ヨウはその場に倒れてしまった。

「くっ…!」

「地震だロト!!恐らく、あのナックラーが起こしてるロト!」

「こいつ…!そんなにやる気なら相手になってやる!」

ヨウは風が強くなりつつある中、ナックラーを捕まえてやろうとムキになってしまった。ナックラーは地面から顔を出すと、大きな鳴き声を上げる。すると、周囲の砂が巻き上がり、それは砂嵐と化した。

「くっ…!砂嵐か…!」

「ブリ…!!」

アブリボンは強風と巻き上がった砂の粒に煽られ、非常に飛びにくそうだった。アブリボンが一度地面に降りると、そこにナックラーが襲いかかる。

「アブリボン!ナックラーが来るぞ!」

アブリボンはナックラーに噛みつかれ、捕まってしまう。ナックラーはそのままアブリボンを押さえつけ、食べてしまおうとしていた。

「ブリッ…!!」

アブリボンはナックラーに捕まった状態で、口の中にムーンフォースを叩き込む。ナックラーは吹き飛ばされ、砂の上にひっくり返った状態になった。アブリボンもムーンフォースの反動を受けて砂の上で倒れていた。

「今だ!」

ヨウはナックラー目掛けてモンスターボールを投げた。ナックラーはボールに吸い込まれ、しばらく抵抗したがあえなくボールに収まった。
 ▼ 808 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:14:54 ID:bZSw5yLA [7/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「アブリボン、よく戦ってくれたな」

ヨウはアブリボンを傷薬で手当てすると、ボールに戻した。ナックラーを捕まえたが砂嵐は止まず、ヨウは自分がどこから来たのかよくわからずにいた。

「…うっ…、石のモニュメントはどこだ…?」

ヨウは実りの遺跡へ続くモニュメントを探そうとするが、砂嵐のせいで視界が悪く、方向が掴めない。一方、岩場でヨウの帰りを待っていたリーリエは、ヨウがなかなか戻ってこないことき不安を覚えていた。

「…ヨウさん…大丈夫でしょうか…」

リーリエは岩のくぼみの中に隠れていた。風はさらに強くなり、砂地の砂が岩場に吹き付けて来ていた。

「…これはすぐに砂嵐が来ますね…。ヨウさん…」

「ぴゅい…」

バッグの中からほしぐもちゃんが顔をのぞかせる。どうやらリーリエと同様、不安を覚えているようだった。

「大丈夫ですよ、ほしぐもちゃん…」

リーリエはヨウを探しに行くべきかと考えていた。だが、下手に動けば自分が遭難してしまう。今は信じて待つしかない。リーリエはほしぐもちゃんを抱きしめ、ヨウの帰りを待った。

「くっ…!本格的に砂嵐になったな…!」

ヨウはナックラー捕獲後、リーリエの待つ岩場に戻ろうとしていたが、砂嵐の中で全く方向が掴めずにいた。ヨウは仕方なく小さな岩の陰に腰を下ろし、砂嵐が去るのを待つことにした。
 ▼ 809 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:17:38 ID:bZSw5yLA [8/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ヨウ!これはかなりまずい状況だロト!」

「わかってる。でも、今はこの砂嵐をやり過ごすしかない…」

ヨウは岩陰で身をかがめ、砂嵐が去るのをひたすら待った。しばらくして風が弱まり、砂嵐が去った。ヨウは立ち上がって周囲を見ると、砂地のど真ん中にいた。

「…参ったな…。リーリエのいる岩場はどこだ…?」

ヨウは周囲を見回すが、どこも同じような景色で、どれがリーリエのいる岩場かわからなかった。どうやらガバイトを追いかけ、ナックラー捕獲後に砂嵐の中を無理に移動したせいで迷子になってしまったらしい。

「ヨウ…。下手に移動しないほうがいいかもしれないロト」

「だけど、リーリエと合流しなきゃ…。それに、この炎天下の中じゃ干物になっちゃうよ。最悪でもどこか日陰に行かないと…」

ヨウは水筒の水を飲み、一番近いであろう岩場に向かって歩きだした。そのまましばらく歩いていると、足が急にふらつき、力が入らなくなった。

「うっ…?」

「ヨウ!?どうしたロト!?」

ロトムはヨウが急に倒れたのを見て、慌ててヨウに近寄る。ヨウは足が痙攣し、動けなかった。ヨウは喉の渇きを感じていなかったため、先程から水を飲んでいなかった。

「…くっ…。これは…?」

ロトムは、慌ててヨウに声をかける。

「ヨウ!しっかりするロト!すぐに助けを読んでくるロト!」

とは言うものの、ロトムも現在位置をよくわかっておらず、右往左往していた。
そこに、一頭のバンバドロが近づいてくる。

「砂漠では喉が渇いていなくても水を飲んでおくべきじゃ。ほら、一緒に塩も舐めておけ」

バンバドロから降りた人物は、ヨウに塩と水を与える。ヨウは痙攣が治まり、なんとか立ち上がった。
 ▼ 810 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:18:14 ID:bZSw5yLA [9/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「助かったよ…。ありがとう、ハプウ」

ヨウを助けた人物はロイヤルアベニューで別れた少女、ハプウだった。

「おぬしじゃったか。遠目に人影らしきものが倒れるのが見えて、何事かと近づいてみたら…。運がよかったのう。わらわが通りかからなかったら、日干しになっていたところじゃったぞ。とりあえず、バンバドロに乗れ」

ハプウはヨウをバンバドロに乗せると、自分もまたがってバンバドロを歩かせ始める。

「この砂漠は思っているより険しいぞ。おぬし、何をしにここへ来たのじゃ?」

ハプウが尋ねると、ヨウが答える。

「実りの遺跡に行こうと思って。はじめは石のモニュメントに沿って向かってたんだけど、途中でポケモンを捕まえようと思って岩場から離れたら、砂嵐に巻き込まれてね…。本当にありがとう、ハプウ」

「…まあ、何事もなくてよかった。わらわも実りの遺跡に行こうと思っておったところでの。共に行くとするか」

ハプウはバンバドロをモニュメントのある岩場へと向かわせる。ヨウは岩場につくと、リーリエの名を叫んだ。

「おーい!リーリエー!!」

「ヨウさん!」

岩のくぼみからリーリエが姿を現す。ハプウはリーリエを見てほーっとため息をついた。
 ▼ 811 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:19:22 ID:bZSw5yLA [10/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「なんじゃおぬし。こんな美しい伴侶がおったのか…」

「は…伴侶って…!私とヨウさんはまだそういう仲では…!」

「…そ…そうだよハプウ!何言ってんの!」

ヨウとリーリエが顔を真っ赤にすると、ハプウはニヤニヤと笑って言った。

「ほーう…、勘違いしてすまなかったな。わらわはハプウ。ポニ島の住人じゃが、訳あって独自に島巡りのようなことをしておる。ヨウとはアーカラ島で一度会ったことがあってな。まさかこのような所で会うとは思っておらんかったぞ」

ハプウはリーリエと握手をする。

「よろしくお願いします。リーリエです」

「おぬしら、ライドギアにバンバドロは登録しておるか?」

ヨウが首を横に振ると、ハプウはライドギアを出すように言った。

「ライドギアを貸してみろ。バンバドロを登録してやる。わらわのばあ様がライド用バンバドロのトレーナーをしておってな。砂地や岩場でもパワーにものを言わせてぐいぐい進めるぞ」

ヨウはハプウにバンバドロを登録してもらい、そのままバンバドロを呼び出してみる。大きな蹄と太い脚に支えられたたくましい巨体が目の前に現れた。

「近くで見るとすごい迫力だな…。ねえハプウ、バンバドロって、二人で乗っても平気?」

「愚問じゃな。二人などバンバドロにとってはわけもない重さじゃ」

ヨウはハプウの答えを聞くと、リーリエに言った。

「二人乗りでも大丈夫みたい。リーリエ、僕の後ろに乗って」

「…はいっ…」

ヨウは自分が鞍にまたがると、リーリエを引っ張って自分の後ろに乗せる。リーリエはヨウの腰に腕を回そうとしたが、彼のリュックが邪魔になってうまく腕が回らなかった。なんとか腕を回してしがみつくと、ヨウが口を開いた。
 ▼ 812 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:20:22 ID:bZSw5yLA [11/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…リーリエ…。そんなに力を込めなくても大丈夫だよ?別にどんどん走らせるわけじゃないし…」

「…そ…そうですよね…。すみません…」

リーリエが慌てて腕の力を緩め、ヨウの腰の部分を掴む。その様子を見たハプウがからかうように言った。

「リーリエ、ヨウは口ではそう言うとるが、顔は真っ赤になって緩んでおるぞ?本当はおぬしに抱きつかれて嬉しいらしい」

「ちょっとハプウ!」

ヨウが文句を言うと、ハプウはニヤニヤしながら自分のバンバドロを歩かせ始める。

「はっはっは。すまんな。さて、イチャイチャするのもほどほどにして、出発するかの。ついて来い」

ヨウは少しぶすっとした顔をしながらも、ハプウを追ってバンバドロを歩かせ始めた。



「ここが実りの遺跡…」

ヨウ、リーリエ、ハプウは実りの遺跡にたどり着いた。ウラウラ島の守り神、カプ・ブルルの居城である。

「カプ・ブルルは温厚じゃがものぐさでもあり、滅多に人前に姿を見せん。おぬしらの望むようになればよいがの…」

ヨウ、リーリエ、ハプウは遺跡の中に入り、中を見回す。アーカラ島の命の遺跡と同様に、ほしぐもちゃんを元の世界に戻すための手掛かりらしきものはぱっと見ではありそうになかった。

「ぴゅいっ」

突然、ほしぐもちゃんがバッグから飛び出し、遺跡の奥へと向かっていった。

「あっ!ほしぐもちゃん!」

リーリエがほしぐもちゃんを追うと、ハプウは驚きで目を丸くしていた。
 ▼ 813 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:20:57 ID:bZSw5yLA [12/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「なんじゃ…?あれは…もしかして星の子…!?」

ヨウはハプウが星の子という言葉を知っていることに驚く。

「ハプウ、ほしぐもちゃんのことを知ってるの?」

「仮にもポニ島の先代のしまキングの孫じゃからな…。その話はあとじゃ。追いかけるぞ!」

ヨウとハプウもほしぐもちゃんとリーリエを追い、遺跡の最深部、カプ・ブルルを祭る祭壇にたどり着く。ほしぐもちゃんはカプ・ブルルの祭壇の周りを飛び回っていた。

「カプ・ブルルさんの祭壇ですか…。ほしぐもちゃん!いたずらをしてはいけませんよ!」

リーリエがそう言うや否や、祭壇に祭られた像から謎の光が放たれた。

「…ブルル…」

そして、聞いたことのない鳴き声が祭壇の部屋の中にこだまする。像の光が弱まり、そこに一匹のポケモンが姿を現す。赤い帽子を被ったような頭の上に角を生やし、鼻輪のような装飾をつけた黒い身体のポケモン。人間の腕のような先には蹄がついている。

「カプ・ブルル…」

ハプウが思わずその名を口にした。
 ▼ 814 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/29 19:24:03 ID:bZSw5yLA [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第55話はここまでです。
次回はカプ・ブルルからほしぐもちゃんの情報をもらうお話しと、
スカル団の暗躍のお話になります。

それではまた。
 ▼ 815 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 18:57:00 ID:ThjMTn1Y [1/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第56話ができたので投下します。
予告通り、ミヅキがスカル団の暗躍に巻き込まれるお話です。
 ▼ 816 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 18:58:07 ID:ThjMTn1Y [2/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 56 スカル団、急襲


「カプ・ブルル…」

ハプウが姿を現した守り神の名を口にする。カプ・ブルルはほしぐもちゃんをちらりと見ると、ヨウたちの脳内にテレパシーで語りかけた。

「…星の子か…。久しいな」

カプ・ブルルはヨウたちに敵意を見せることはなく、ほしぐもちゃんを見つめていた。

「こんな辺鄙なところにやってくるとは、ずいぶん物好きな人間もいたものだ。私に会いにきた…というわけではないだろうが、まあ歓迎しよう」

カプ・ブルルはそう言うと、ヨウ、リーリエ、ハプウへと順に視線を移した。

「カプ・ブルルさん…。もし知っているなら、教えていただきたいことがあるのです。ほしぐもちゃん…星の子はどこからやって来て、元の世界に戻す方法はあるのかを…」

カプ・ブルルはそれを聞き、ふるふると首を横に振った。

「お嬢さん、残念だが、それは私が答えられる質問ではないな。星の子がどこから来たのかなど知る由もない。知っているのは、ソルガレオとルナアーラがこのアローラの地で会い、その後残されるものであるということだけだ。ソルガレオ、ルナアーラについてすら、私たちはどこから来たのかなど知らないのだから」

リーリエはカプ・ブルルすらそれを知らないとなっては、ほしぐもちゃんを元の世界に戻すことについては八方塞がりであるように感じていた。

「…私たち…。つまり、アローラの守り神たちは、全員今のリーリエの質問には答えられないんだね?」

ヨウがそう言うと、カプ・ブルルは頷いた。

「そうだな。コケコ、テテフ、レヒレも答えられないだろう。私たちはソルガレオ、ルナアーラと、恐ろしい闇の怪物を相手に戦ったことがあるが、ソルガレオ、ルナアーラ、闇の怪物は皆同じように空に穴を開けて現れていた。もしかしたら、その穴の先に彼らが元いた世界があるのかもしれないが、確かなことは何一つ言えない」

ヨウはカプたちにとってほしぐもちゃんは大切な存在なのだろうということはわかったが、肝心の元の世界に戻す方法はカプの遺跡を調べてもわかりそうにないと知り、どうしたものかと考えていた。

「…さて、私はそろそろお暇させてもらうとしようか」

カプ・ブルルはそう言うと、姿を消した。
 ▼ 817 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 18:59:00 ID:ThjMTn1Y [3/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「守り神に会えたはいいけど…肝心なことは何もわからないままか…」

ヨウはカプ・ブルルが消えると大きなため息をついた。ハプウはその様子を見て、ヨウとリーリエに尋ねた。

「おぬしら、星の子を元の世界に戻す…とか言っておったな?何をしようとしているのか、話してくれんかの?」

ハプウに尋ねられ、リーリエは自分の目的を話した。彼女の家族がほしぐもちゃんに大きく関わっていることは伏せていたが、ハプウはそれを聞いて考え込むような仕草を見せる。

「…ふーむ…。星の子がカプの遺跡に興味を持つのがなぜかはわからんが、他に手がかりになりそうな場所となると…やはりポニ島かのう…」

ハプウはヨウとリーリエにポニ島について話し始めた。

「おぬしら、ポニ島に日輪の祭壇という場所があるのは知っておるか?そこには異世界に繋がる扉が開かれるという伝説があり、時折ソルガレオが姿を現していたらしい。星の子がソルガレオとルナアーラに関係するものなら、一度は訪れてみてもいいかもしれんぞ」

ハプウにそう言われ、ヨウとリーリエはポニ島に行くことを心に決める。

「ありがとう、ハプウ。ウラウラ島の大試練をクリアしたら、ポニ島に向かうよ」



その頃…

「よし、作戦開始だ」

カプの村のはずれ、エーテルハウスの周囲を数人のスカル団員が取り囲んでいた。スカル団のボス、グズマは団員たちに指示を送る。団員たちは指示を受け、エーテルハウス内に突入していった。

ガシャーン!!

突然窓ガラスが割れる音がし、中にいたミヅキははっとして周囲の様子を窺った。先程までエーテルハウスの子供たちとポーカーで遊んでいたミヅキだったが、子供たちに隠れているように言った。
 ▼ 818 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 19:00:02 ID:ThjMTn1Y [4/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ここはお姉ちゃんに任せて、あなたたちは隠れてて」

ミヅキは立ち上がると、部屋を出ていった。

エーテルハウス内にはスカル団員が乗り込んで来ており、大混乱になっていた。

「…!スカル団!?」

スカル団員のうちの一人がミヅキの姿を確認すると、周囲の仲間に向かって叫んだ。

「ターゲット発見!行くぜおまえら!」

三人のスカル団員がミヅキのほうに向かってポケモンを繰り出す。ミヅキもポケモンを繰り出して応戦した。

「ドククラゲ!ヘドロウェーブっ!!」

ミヅキはドククラゲにヘドロウェーブを指示し、ポケモンごとスカル団員たちも毒の濁流に飲み込む。団員とそのポケモンたちはヘドロウェーブに流され、窓ガラスを破って外に弾き出された。

「おーおー、派手にぶっ壊してくれるな」

グズマはその様子を見てニヤリと笑う。そして、ミヅキの前に姿を現した。

「よお。マリエシティでは世話になったな」

「…!グズマ…!」

ミヅキはグズマの姿を見て声を荒げる。

「一体どういうつもり!?」

「どういうつもりも何も、おまえをぶっ壊しに来たんだよ。おまえだけじゃねえ。あのヨウって奴と、それからハウもだ。一人ずつ、絶望を味わわせてな…」

グズマはそう言うと、モンスターボールに手をかける。ミヅキもそれに応じるように自分のモンスターボールを握りしめた。

「やっぱりスカル団ってのはクズの集まりね!力ずくがお望みなら、力ずくで叩きのめしてやる!」

グズマはミヅキのその様子を見て、ニヤリと笑った。
 ▼ 819 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 19:01:19 ID:ThjMTn1Y [5/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨウとリーリエはカプの村に戻ってくると、ハプウと別れた。ハプウはマリエシティに向かい、ヨウとリーリエはポケモンセンターで手持ちの回復をすることにした。

「リーリエ。ウラウラ島の大試練が終わったら、ポニ島の日輪の祭壇に行ってみよう」

「ヨウさん…。いいんですか?」

「守り神たちは誰もほしぐもちゃんを元の世界に戻す方法を知らないらしいことはわかった。あとは僕たちでなんとか見つけるしかない。…やっぱり、ウルトラホールが鍵なんだろうな…」

ヨウが自分の推測を述べると、そこにハウとアセロラがやってきた。

「ヨウくん!探してたんだよ!」

アセロラが慌てた様子でポケモンセンターに飛び込んできたのを見て、ヨウは何かあったのかとアセロラに尋ねる。

「アセロラ?どうしたの?」

「ヨウ!とにかく、エーテルハウスに一緒に来て!」

アセロラと一緒にハウもいた。二人の慌てぶりからして、ただ事ではないのはヨウも理解できた。リーリエも何があったのか気になり、エーテルハウスに向かった。


ヨウたちがエーテルハウスに着くと、施設がところどころが破壊されているのが目に入った。

「何があったんだ…?」

ヨウが施設内の様子を見ながら歩いていると、施設の職員の女性が声をかけてきた。

「…あなたたち、赤いニット帽の子の友達…?」

「…赤いニット帽…、ミヅキのことですね?一体何があったんですか?」

ヨウが尋ねると、職員の女性は何があったのかを話し始めた。

「…スカル団のボス、グズマと数人の団員が現れて、ここを襲ってきたのよ…。アセロラとハウくんが試練に行ってる間に…。ニット帽の子が皆を守ろうと戦ってくれたんだけど、グズマには敵わなくて…。しかも、その子、負けたあとスカル団に連れていかれたわ…。そして、あいつらこんな書き置きを残していった…」

ヨウは職員から書き置きを受けとり、それを読む。そこにはこのように書かれていた。
 ▼ 820 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 19:05:09 ID:ThjMTn1Y [6/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
親愛なるハウ、そしてヨウへ。マリエシティでやられたお礼に、お前たちの仲間を一人預からせてもらった。返して欲しければポータウンに来い。そこでケリをつけようぜ。グズマより

「ポータウン…。スカル団の根城だよ…。ヨウくん、ハウくん…、行くつもりじゃないよね?」

アセロラに尋ねられ、ヨウとハウは無言だった。ただし、二人が無言だった理由は対照的である。ハウは、スカル団がこんなことまでするとはと驚き、たじろいでいたことによるものだった。それに対して、ヨウはいとこを人質にとるという彼らの行為に頭に血を上らせ、書置きをぐしゃりと握りつぶした。ヨウが怒り心頭になっていると気づいたアセロラは、慌ててヨウに忠告する。

「行っちゃダメだよ!絶対罠を張られてる!」

しかし、ヨウは聞いてはいなかった。

「…ハウ、手持ちが回復し次第、ポータウンへ行こう」

「…ヨウ…」

ハウはヨウが怒りに満ちていることをわかっていた。しかし、アセロラはなおも食い下がる。

「ヨウくん!アセロラの話聞いてた!?」

「聞いてたよ。アセロラの言うとおり、罠を張られてる可能性は高い。僕が先行するから、ハウは僕から少し離れてついてきて。もし罠を仕掛けられてたら、サポートを頼む」

そこに、施設の子供たちが現れた。子供たちは施設を襲撃された恐怖にまだ体を震わせていたが、それでもこれだけは伝えようと声を絞り出した。

「…兄ちゃんたち、ミヅキ姉ちゃんを助けに行くの?」

「ああ、そのつもりだよ」

「…それなら早い方がいいよね?ギーマおじちゃんにライドのサメハダーを使わせてもらえないか、頼んでおくよ。サメハダーに乗って、15番水道を行けばポータウンへの近道だから…」
 ▼ 821 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 19:06:19 ID:ThjMTn1Y [7/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…わかった。ありがとう。ロトム、ポータウンへの地図を出して」

「…ヨウ、本当に行くロト…?」

「…ミヅキは大切ないとこだ。放っておけない」

「…わかったロト…。地図データでは、島の北西部、15番水道からウラウラの花園を抜けると、その先がポータウンロト。手筈通りサメハダーを借りれればいいロトが…」

「とりあえず、ポケモンセンターで手持ちを受け取ろう。行こう、ハウ」

「…うん…」

ヨウとハウはミヅキの救出のため、ポータウンに向かうことにする。ポケモンセンターで回復させている手持ちを受け取りに行こうとする二人に、リーリエが声をかける。

「ヨウさん、ハウさん…」

「悪いけど、今回はリーリエは連れていけない…」

ヨウがそう言うと、リーリエは首を縦に振った。

「それはわかっています。戦えない私が行っても、足手まといになってしまいますから…。だから、ここでお二人を信じて待っています」

「…ごめん、リーリエ…」

ヨウはなぜかリーリエに謝ってしまった。本当は、リーリエもミヅキのことが心配でたまらないだろうに、ここで待っていることしかできない。それが悔しいのだろうなと、ヨウはリーリエが拳を握って震わせているのを見て思った。そして、ヨウとハウはエーテルハウスを出て行った。二人の背中を見ながら、アセロラはため息をつく。

「もう…!全くアセロラの言うことを聞かないんだから…。リーリエちゃん、アセロラもちょっと出かけてくる。ウラウラ島のしまキングに、このことを伝えないといけないから!」

アセロラもそう言い、エーテルハウスを出て行った。
 ▼ 822 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 19:07:17 ID:ThjMTn1Y [8/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨウはポケモンセンターで手持ちを受け取ると、手持ちのポケモンを全員をボールから出した。彼のパーティーのメンバーはいつもと違うヨウの様子に、何事かと様子をうかがっていた。

「…皆、これから向かうのはスカル団の根城、ポータウン。ミヅキが連れ去られた」

ヨウはパーティーのメンバーに向かってこれから向かう先について口を開いた。ウラウラ島でパーティーに加わったトゲデマルとナックラーは今一つピンと来ないようだったが、メレメレ島からの付き合いであるアシレーヌ、ヒトモシ、ハリテヤマ、アブリボンは驚いていた。

「これから、連れ去られたミヅキを取り戻すために、スカル団の本拠地でケンカをふっかけることになる。かなり危険だと思うけど、皆の力を貸してほしい」

ヨウの声は静かであったが、スカル団に対して腸が煮えくり返るような怒りが込められていることはトゲデマル、ナックラーも含めて彼の手持ち全員がわかっていた。
ヨウの怒りに同調するようにアシレーヌ、ヒトモシ、ハリテヤマ、アブリボンの目付きが険しくなる。トゲデマルとナックラーもどうやらただ事ではないということだけは理解したようで、同様に目つきが険しいものに変わった。

「…よし、行こう」

ヨウは手持ちをモンスターボールに戻すと、帽子を深くかぶり直して歩き出した。
 ▼ 823 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 19:08:07 ID:ThjMTn1Y [9/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
15番水道にあるライド用サメハダーの訓練所に、ヨウとハウの目当ての人物、ギーマがいた。

「エーテルハウスの子供たちから話は聞いたよ。…その表情…、戦いに行くようだね」

「…はい」

ヨウはギーマに対して、スカル団への怒りの気持ちを隠そうともしなかった。

「……老婆心ながら、一言だけ言わせてくれ。怒りや慢心に飲まれないように気をつけることだ。特に、絶対に負けられない戦いに挑むときはね」

ギーマはそれだけ言い、ヨウとハウのライドギアにサメハダーを登録した。
ヨウがギーマに礼を言って立ち去ろうとしたとき、ギーマはハウを呼び止めた。

「…君は、彼と違って怒りに飲まれてはいないみたいだな」

「…うん。スカル団のボスはおれの昔の知り合いなんだ。だから、怒るよりも、なんでこんなことをするのかって気持ちの方が強くて…」

「…そうか…。彼は今危険な状態だ。何をしでかすかわからない。本当に危ないときは、君が彼を止めてくれ」

「…うん…」

ハウはあまり自信が持てなかったが、ギーマの言葉にこくりと頷いた。
ヨウとハウはサメハダーに乗り、15番水道を北上する。

「…ミヅキ…、必ず助ける」

ヨウはサメハダーのハンドルを握りつぶさんばかりに握りしめていた。
 ▼ 824 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/03/30 19:10:07 ID:ThjMTn1Y [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第56話はここまでです。
次回はポータウンの戦いのお話です。
それではまた。
 ▼ 825 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:27:39 ID:.ObciHBs [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第57話ができたので投下します。
予告通り、ポータウンの戦いのお話です。
 ▼ 826 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:28:14 ID:.ObciHBs [2/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 57 強襲!ポータウン


ポータウン。ここはスカル団の拠点。かつては普通に暮らしている人もいたが、今や町はスカル団に占拠され荒れ果てていた。誰も寄り付かなくなった孤独な町。それはもしかしたら、スカル団のメンバーの孤独を映しているのかもしれない。

廃墟で雨宿りをしながら、グラジオはそんなことを考えていた。

「グラジオ、見張りからの報告だ。おまえの客は順調にこちらに向かっているらしい」

「…そうか…」

グラジオはそっけなく言った。報告に来たスカル団員は舌打ちをしながらその場を去った。
グラジオはふと考えていた。グズマはあいつを、ヨウをこの町におびき出すと言っていた。一体どうやって?普通の島巡りのトレーナーなら、ポータウンに用などないはずだ。
考えれば考えるほど不自然に思われた。スカル団はならず者の集まりだが、組織だった目的なんてものはない。構成員たちは試練の地を荒らしたり、ポケモン泥棒などをしてはいるが、それはグズマやプルメリの指示によるものではない。ボスのグズマにしてもまとめ役のプルメリにしても、このアローラの社会で何らかの原因でつまはじきにされ、目的を見失っている者には違いない。そんな者たちが面白半分や悪ふざけでこのようなイベントを企画するのだろうか。

何だこの違和感は…

グラジオの左手がブルっと震えた。自分にポータウンに来いと言ったグズマの目が思い出される。あいつは感情が表に出やすい。その点では、あまり感情を表に出さないプルメリよりもわかりやすい。仮にプルメリが依頼をしに来たなら、このような違和感も抱かずにいたかもしれない。グズマの目、あれは明らかに何か他に目的がある目だった。
先ほどから降っている雨が、少しずつ強くなっていく。その雨音は、まるで決戦の時が近づく足音のようだとグラジオは思った。


「…静かだな…」

ヨウ、ハウは15番水道からポータウンを目指して歩いていた。途中、スカル団の襲撃や罠があるものと思っていたため、ヨウが先行し、ハウがヨウを見失わない程度の距離をとって後からついていったが、敵の罠や襲撃の気配は感じられなかった。
 ▼ 827 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:29:15 ID:.ObciHBs [3/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ヨウ…。ポケモンの気配もないロト。途中でスカル団が待ち伏せをしてるんじゃないかと思っていたロトが、今のところはそれもなさそうだロト」

「…まだ油断はできない。ポータウンに近づいたら、そのときに襲撃される可能性はある。ポータウンに戦力を集中させてるということも考えられるけどね…」

時折、ヨウは自分の腰のモンスターボールが揺れるのを感じていた。手持ちたちも緊張しているらしく、ボールの中でいつでも戦えるよう臨戦態勢をとっていた。

「…皆、今はまだ落ち着いていてくれ。ポータウンに着いたら否が応でも戦うことになる」

ヨウは腰のボールを撫で、武者震いを繰り返す手持ちたちを落ち着かせようとする。

「ヨウ、真正面から戦うつもりロト?」

ロトムに尋ねられ、ヨウは首を横に振った。

「まさか。正々堂々と戦う気なんて一切ない。あいつらが汚い手を使うなら、こっちだって何でもやってやる」

その冷たい言葉に、ロトムは何か嫌な予感がしていた。

「ただ、この戦いの目的はスカル団の殲滅じゃなくて、あくまでミヅキの救出だ。ロトムにも敵の偵察とかで協力してもらうこともあるだろう。その時は頼むよ」

「…わかったロト…」

ロトムにはヨウの考えていることがなんとなくわかっていた。口でこそミヅキの救出が第一と言っており、それは間違いではないのだろうが、おそらくヨウは可能であればスカル団を殲滅する気でいる。どのような戦いになるのか、ロトムは背筋が凍るような感覚を覚えた。

ウラウラの花園を抜け、ポータウンに近づくまでヨウたちはスカル団による襲撃や罠による攻撃を受けることはなかった。
どうやらヨウの読みが当たっているようだ。スカル団はおそらく、ポータウンに戦力を集中させて待ち構えている。

ヨウがしばらく歩くと、雨が降り始める。そして、非常に大きな人工物が見えてきた。それは町を覆う巨大な壁だった。
 ▼ 828 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:30:35 ID:.ObciHBs [4/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ヨウ、あれがポータウンだロト…」

ロトムの言葉に、ヨウは足を止める。今のところスカル団員は見当たらないが、ここからは森に入って慎重に近づいた方がよさそうだ。そう思ったヨウはハウの図鑑に通信を入れる。

「ハウ、僕は森から迂回して近づく。ハウは高台から町のほうを見張ってほしい」

「わかった。何か動きがあれば知らせるよ」

「ありがとう。基本的には僕が囮になってスカル団を引き付ける。ハウはその隙にミヅキを探して助け出してほしい」

「…ヨウ、あんまり無茶しないでね」

「……」

ヨウは無言で通信を切る。そして、ロトムに声をかけた。

「ロトム、壁の向こうの様子を見てきてくれないか?できるなら写真も撮ってきてほしい」

「了解ロト」

ロトムは壁の上へと上昇し、壁の内側の様子を撮影する。
壁の内側ではスカル団員たちがバリケードを築き、ヨウを迎え撃たんと待ち構えていた。数枚の写真を撮ってロトムはヨウのもとへと戻った。

「何枚か写真を撮ってきたロト。ついでに壁の外周も少し見てきたロトが、外側には団員たちはいないみたいロト」

「そっか…。じゃあ、壁の外までは堂々としててもさほど問題はないのか…」

ヨウは森から出ると、高い壁をじっと見つめる。入口らしきものはあるが、それは鉄の扉で固く閉ざされている。
 ▼ 829 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:32:52 ID:.ObciHBs [5/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ここが入り口か…。で、ロトムの写真だとこの向こうに敵の大群が控えている、と…」

ヨウは雨に濡れながら独り言をつぶやく。そこに、一人の中年の男性が現れた。

「よお、あんちゃん。島巡りのトレーナーかい?」

灰色の髪に赤い目、そして、アローラでは珍しく白い肌の男性だった。警察官の制服らしきものを着ているが、服の前をはだけ、その下には赤いTシャツを着ており、なんだか胡散臭い雰囲気である。

「……」

ヨウが答えずにその男性を見つめていると、その男性は続けて質問した。

「…ただの島巡りのトレーナーなら、スカル団の根城になんかに用はねえよな?何しに来た?」

「…何しに来た…?」

ヨウはアシレーヌを繰り出した。

「…アシレーヌ、壁の向こうに敵の大群がいる。挨拶がてら、掃除はできないか?」

ヨウがそう言うと、アシレーヌは歌うような声で旋律を奏でる。アシレーヌの歌は巨大な水のバルーンを作り、それは降り続く雨の助けもあってか、ポータウンの壁の高さも超えるほどに膨れ上がる。
壁の中から巨大な水の塊が膨れ上がるのを目撃したスカル団員は戦慄した。

「おい!壁のそばから離れろ!!」

「アシレーヌ、攻撃開始だ」
 ▼ 830 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:33:54 ID:.ObciHBs [6/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「しゃるッ!」

アシレーヌは巨大な水のバルーンをトスするように、壁の向こうに放り込む。壁の向こうで水塊がはじけ、それは激流となりバリケードも待ち構えていた団員達も押し流す。

「うわああああ!!」

「ぎゃあああああ!!」

壁の向こうは大パニックになっていた。高台から様子を見ていたハウは、ヨウとアシレーヌの容赦ない攻撃に口を閉じることができなかった。ヨウは続いてナックラーを繰り出す。

「ナックラー、この壁に穴を空けることはできるかい?」

「ナック!」

ナックラーは地面に潜ると、地震を起こす。その衝撃で壁に亀裂が入り、ついには壁の一部がガラガラと崩れ去った。

「…キレてやがるな…。あんちゃん…」

「今頃気づいたんですか?」

ヨウは中年男性をそっけなくあしらい、壁の中へと足を踏み入れる。ハウはしばしぼーっとしていたが、ヨウが敵を引き付けている間にミヅキを探そうと高台から駆け下りた。
ヨウがポータウンに入ると、そこには先ほどのアシレーヌの攻撃で押し流されたと見られるバリケードの跡や、ずぶ濡れのスカル団員が両手を地面について呼吸を整えているのが目に入った。

「うう…くそ…」

スカル団員が何とか立ち上がろうとし、モンスターボールを手に取ろうとするが、ヨウは冷たい目でその団員をにらみつける。
 ▼ 831 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:35:16 ID:.ObciHBs [7/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「このクソガキ…!!ぶっ潰してやる…」

スカル団員はコラッタを繰り出す。しかし、その瞬間地面が崩れ、コラッタはその中に飲み込まれる。

「何だ?」

「ナックラー、片付けろ」

ヨウが指示すると、ナックラーはコラッタにかみついてそのまま投げ飛ばす。コラッタは近くの廃屋の庭先に野球ボールのように飛んでいった。

「おまえ、この町にさらわれた女の子がいることは知ってるな…?」

ヨウが氷のような目でにらみつけると、スカル団員は恐怖のあまり逃げ出した。

「しッ…知らねえ!そんなこと俺は知らねえ!!」

ヨウはポータウンの中を見回す。奥に巨大な屋敷の跡が見える。他の廃屋は散々荒れ果てており、人の気配はしそうもない。そうなると、あの屋敷に向かうのが一番ミヅキを見つける早道だろう。ヨウはそう考え、屋敷跡に向かって歩き出した。


先ほどヨウがいた場所にアセロラが駆けてくる。アセロラは先ほどヨウの会った中年男性の姿を見つけると、声を上げた。

「おじさーん!!」

「アセロラか…。遅かったな…」

中年男性は壁の方を指差す。アセロラはポータウンの壁が破壊され、その奥にバリケードの跡と思われるガラクタが散乱してることに驚き、あんぐりと口を開ける。。

「あの帽子のあんちゃん、なにもんだ?スカル団にこんだけ憎悪をぶつける奴も珍しいぞ」

アセロラはこれをやったのがヨウだと知り、衝撃を受ける。
 ▼ 832 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:36:16 ID:.ObciHBs [8/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「あのあんちゃんの連れてるアシレーヌとナックラーがあれをやった張本人だ。一体何があった?」

アセロラは中年男性にエーテルハウスであったことを話した。中年男性はそれを聞き、チッと舌打ちをした。

「スカル団も、ポータウンの中で好き勝手やってるだけならまだいいんだがな…」

そこに、ハウが高台から駆け下りてきたハウがやってくる。

「ハウくん?」

「あっ、アセロラ!ごめん、おれ急いでるから、また!」

ハウもポータウンの中に入っていく。中年男性はその背中を見ながら口を開いた。

「さっきの帽子のあんちゃんの仲間か…。仕方ねえ、おじさんも行くとするかね…」

中年男性はゆっくりと歩き出す。アセロラもその後をついていった。


グラジオは先ほどの水塊による攻撃と、町を覆う壁の一部が壊されたことに驚いていた。グズマはヨウをこの町におびき寄せると言っていたが、どうやら相当な怒りを買ったらしい。そうでなければあのような攻撃をするはずがない。
グラジオは周囲にいるスカル団員たちに向かって言った。

「おまえたちは下がっていろ。俺があいつを止める。他の団員たちにもそう伝えておけ!」

グラジオには、スカル団員たちが束になって戦ってもヨウを止められるとは思えなかった。それどころか、団員たちのポケモンが無駄に傷つくだけであろう。グラジオは先ほど攻撃のあった場所へ向かって走り出した。
 ▼ 833 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/04/01 20:37:17 ID:.ObciHBs [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第57話はここまでです。
次回はハウによるミヅキ救出とヨウVSグラジオの戦いのお話です。
それではまた。
 ▼ 834 メノデス@メガブレス 20/04/01 21:02:51 ID:G9tc4I5w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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