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この大地は腐っている。
皆解っているはずだ。
かつてここは、緑溢れる大地だった。私達の大地だった。
毎年春先オレンの実がたくさん取れて、私達ポケモンが、遠慮なく自由に食べることができた。夏には何の心配もなく、子供達は川で遊ぶことができた。秋には積もった落ち葉を布団にした。冬には積もった新雪に足跡をつける喜びを誰もが分かち合えた。
もう、ここにはない。
そんなものはない。
全て奪われてしまった。奴らのせいだ。奴らは私達の大地を切り開いた。木を薙ぎ倒し、水を汚し、空を曇らせ土を固め、私達の仲間を、家族を捕まえていった。
私には父がいた。毛並みの立派なツンベアーだった。その大きな腕で、私を抱き寄せてくれた。暖かかった。だがもういない。父を殺したのは母だった。私の母は奴らに捕まって、自我も朦朧とした様子で、その拳を振るっていた。父は反撃しなかった。ただ、ただ私を庇うだけ庇って、死んだ。
私だけじゃない。皆そうだった。
覚えているはずだ。あの目を。あの顔を。あの声を。人間の、あの残虐さを。
私は許さない。
私達は許さない。
私達は何としてでも。同胞の血を啜ることになろうと、この命を投げ捨てることになろうとも。忘れない。誓いを、誇りを、かつてここは私達の物だったという事実を。
私に続け。全ての同胞よ。私と共に歩むあらゆるポケモンよ。
この血を私達の未来に捧げることを誓え!!
──そう、彼女が言い終わるか、終わらないかのうちに、辺りはポケモン達の叫びで揺れ動いた。
数年前人口を増やした人間によって開拓された街、その隣の山の天辺近く、数少ない野生ポケモン達の安全地帯。そこは既に、憎しみと愛で埋め尽くされて、息もできないくらいであった。手を空に突き上げるもの。涙を流すもの。目を希望に輝かせるものも、目を悲壮感に曇らせるものも、誰もが、外敵への憎しみと、失ったものへの愛を、はち切れんばかりに抱えていた。ここは人間に復讐を誓う、ポケモンのレジスタンスだった。
彼は、それを眺めていた。
「なあ、コジョンド」
誰かが声を上げた。一際高い所に立って、演説をしていた彼女を、レジスタンスのリーダーを指差して。それからその指は少し逸れて、奥に控えていた彼を指差した。
「そこにいる人間は何なんだ? 祝杯代わりに頭でもカチ割るのか?」
そんな声を聞いて、彼は軽く身を竦めた。灰色のコートの襟に口元を隠す。その耳には、剥き出しの殺意が、いくつもいくつも叩きつけられ始めていた。
そんな声達を、コジョンドは制する。
「ああ、説明が遅れたな。彼はどう見ても人間だが、人間じゃない。私達の頼れる仲間だ。そうだろう、メタモン?」
「……あまり、こっちの言葉を、使わせないでくれ。声帯が崩れる」
「そうだったな、悪かった」
彼はメタモンだった。
もう何年も、人間のフリをしていた。