【都市伝説】メタモンから生まれた少女【SS】

あらゆる姿に変わり、あらゆるポケモンとタマゴを作ることのできるメタモン。
　
そんなメタモンが、『人間』の姿になり、人の生殖器まで完全に再現できたとしたら……。

もしかしたら、あなたの身の回りにいる人の中にも『片親がポケモン』なんて人がいるかも知れませんね。

もしくは、あなた自身がそうだったりして。

《とある短大生(１０代女性)の記録》

私は現在、ポケモンセンターのジョーイさんを目指して、短大でポケモン看護の勉強をしています。

ですが先日、父の書斎で『奇妙な物』を見つけてしまいました。

それは、私の『遺影』だったのです。

「なに……これ」

身に覚えのない写真でした。
遺影の私はトレーナーズスクールのものだと思われる制服を着ていて、満面の笑みで笑っています。

ちなみにですが、わたしがトレーナーズスクールに通っていたことは人生で一度もありません。
もちろんその制服も見覚えのないものです。

さらにその遺影が入っていた引き出しの中には、『手紙』がいくつも保管されていました。

その手紙を見て、思わず鳥肌が立ちました。
差出人のところに、全て『わたしの名前』が書かれていたからです。

これもまるで身に覚えのないものでしたが、昔自分が書いたのを忘れているだけの可能性もあったので、その中の一つを恐る恐る読んでみることにしました。

内容は以下の通りです。

『拝啓、親愛なるお父様へ。いかがお過ごしでしょうか。

わたしは今、一人前のポケモントレーナーになるためスクールで勉強の毎日です。

次の試験に合格することができれば、いよいよ実戦的なバトルの演習が始まります。

今まで勉強してきたことが活かせるか不安ですが、スタジアムでわたしがバトルしているところを早くお父様に見ていただきたいので頑張ります！

最近寒くなってきたので、お身体にお気をつけてください。　敬具』


ゾッとしました。
何回も言いますが、わたしがトレーナーを志したこと、スクールに通っていたことは人生で一度もありません。
父のことも「お父様」などと呼んだことはありません。

この『遺影』と『手紙』の存在が、『もう一人のわたし』が存在していたことを訴えかけているようで、背筋が凍る思いでした。

そしてその時、ふと『あること』を思い出しました。それは今から一年ほど前の話です。

とある町のポケモンセンターで研修をしていた頃、見知らぬ男性に話しかけられたことがあったのです。

その男性はどうやらわたしのことを知っていたらしく、

「お前、〇〇か……？　なんで……どうして……！」

と泣きそうな顔で詰め寄ってきて、怖かったので警備員さんに連行してもらいました。

今思えば、あの男性は『もう一人のわたし』の知り合いだったのかも知れません。

わたしはこの『遺影』と『手紙』のことを父に問い詰めました。
すると父は、突然震えだし、情けなく泣き出してしまったのです。

「許してくれ〇〇……許してくれ……」

厳格な父のこんな姿を見たのは初めてで愕然としました。

３０分くらい経って落ち着いたのか、父は全てを話してくれました。

＊

わたしの父はとある私立病院院長の後継として生まれました（今はもうその病院はありませんが）。

父には愛する人（後のわたしの母親です）がいましたが、なかなか結婚を認めてもらえなかったそうです。

母の目が不自由だったこと、母が施設育ちだったこと、父に政府のお偉いさんの娘との縁談話があったがあったことが原因です。

そこで二人は、結婚を認めてもらうため、強引にも子供を作ることで抵抗しました。

これに対して祖父は大激怒。
父と母をそれぞれ別の部屋に監禁しました。

しかし、父と母には『秘策』がありました。

監禁される前に、二人は『影武者』を使っていたのです。つまり、実際に祖父に監禁されていたのは影武者の方で、本当の二人は遠い町に逃げていました。

二人が使った影武者、それが『メタモン』です。

二匹のメタモンをそれぞれ自分たちの姿に変化させ、置いていったのです。

見事駆け落ちに成功した二人は、遠い町で無事子供を出産し、幸せな生活を送っていました。

ところがある日、そんな二人のもとに祖父から使いがきました。

そして、祖父からの『信じられないような内容の伝言』を聞かされたそうです。

「お前の女に化けたメタモンが人間の赤子を産んだ。至急実家に戻れ」と。

その言伝は事実で、祖父の病院には、自分たちの子どもと見分けがつかないほどソックリな赤ん坊がいました。

「この赤ん坊は人の子か？それとも化け物（メタモン）か？」

前例の事態に、その場にいた全員が怯えたそうです。

おそらく、メタモンは母に化ける時に、『胎内の赤ん坊まで正確に再現してしまった』のでしょう。
つまり、遺伝子レベルで同じどころか、全く同じ赤ん坊が２人産まれてしまったのです。

父は、自分のしでかした罪の大きさに気がつき、涙に暮れたそうです。

そこで祖父がこのような提案をしました。

「今ここにもはや容姿では判断できない領域にある赤子が二人いる。この中で、お前の女が産んだと思う方を連れていけ。さすれば、二人の結婚を認めよう」

つまり『二人のうち一人を置いていけ』という命令でした。

父はそれに従う他ありませんでした。
どれだけ遠くに逃げても、今回のようにすぐに居場所を突き止められてしまうだろうから、逃げるのは無駄だと判断したのだとか。
　
そして、父は片方の赤ん坊を抱え、その場を後にしました。
それが今の『わたし』です。

もう片方の赤ん坊は祖父に引き取られ、その後スクールに通うようになり、ポケモントレーナーを目指していましたが、二年ほど前に事故で亡くなってしまったそうです。

父は定期的に彼女と手紙のやり取りを何十年も続けており、年に一回だけ会うことが許されていたそうです。

遺影も手紙も、その彼女のものでした。

そうして、父は全てをわたしに語ってくれた。
だが、全てを聞いて『新たな疑問』がわたしの中に生まれました。





はたして
『メタモンから生まれた赤ん坊はどちらだったのだろうか？」
　　



今となっては、誰にも分かりません。

fin.

昔書いたＳＳのリメイクなので読んだ覚えがある方もいるかも知れません。
お目汚し失礼致しました。

面白かった

なるほどそういうことか
乙やで

なんか考えさせられる(小並)

面白かった
乙

面白かった
乙です

すこすこのすこ