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【SS】 彼女はクイーンに帰り咲く

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:46:30 ID:cl0gaXH. [1/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

【SS】 サトシ(18)「同窓会?」
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=645958&l=1-


上記SSの続編です。

サトシのカロス旅から5年後をイメージしており、サトシ、セレナ、シトロンは18歳、ユリーカは13歳の設定です。

あらすじをご覧いただければ、上記SSを読む必要はありません。

なお、上記SSの「140レス目以降」は あらすじとして短く纏めることが困難だったため、当SS冒頭に再掲します。

 ▼ 2 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:47:50 ID:cl0gaXH. [2/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

   〜 あらすじ 〜



カロス旅の後――。


サトシはゼロからのスタートとして、トウエツ地方(架空)のジムを巡り、トウエツリーグで念願の優勝を手にした。

その後、トウエツ地方イフクタウン(架空)のイフクジムで、ジムリーダーのリュウゴ(架空)がトウエツ四天王入りを果たし、ジムリーダーが1つ空くことに。


そこで、トウエツリーグ優勝者であるサトシが、新ジムリーダーに推薦された。


単にリーグ優勝者だから、と言う訳では無く、サトシのこれまでのリーグ成績も、当然勘案されている。

そして何より、ホウエンチャンピオンのダイゴ、シンオウチャンピオンのシロナ、カロスチャンピオンのカルネ、以上3名がサトシのジムリーダー推薦に前向きな姿勢を示したため、話が早く進んだ。

“3人のチャンピオンに推薦されるサトシは何者なのか”とポケモンリーグ協会内で話題になったのは、余談である。


当然この話を、サトシは快諾した。

ジムリーダーになると言うことは、彼の夢、ポケモンマスターに近づくことは明白で、かつ、バトル好きなサトシが断る理由は無かった。


ただ、ジムリーダーと言っても、仕事はバトルだけでなく、報告書や定例会議など事務作業も多数ある。

当然サトシも それを把握しており、説明を受け、その上でジムリーダーと言う職に就いた訳だが、現実は、思ったほど簡単なことではなかったらしい。


ジムリーダーとして、熱いバトルを繰り広げるサトシのスタンスは、チャレンジャーから大好評であるものの、“バトル以外”の部分では大苦戦。特に書類関係の事務作業については、期限を遅れることが常態化していた。

ジムリーダー協会からもたびたび注意を受けており、自分がジムリーダーに向いていないのではないかと思い悩むサトシ。


それを心配したタケシ(20)が、サトシのために、これまでの仲間を集めた同窓会を開いてくれた。

会場は、サトシの旅の原点、オーキド研究所。

集まったのは、タケシ、カスミ、シゲル、トオル、ナナコ、ヒロシ、ハルカ、ヒカリ、デント。

メンバーの近況、その地方で出会った面子の現在の姿を聞き、語らい、仲間たちと触れ合ったサトシは、グッと前向きな気持ちになり、この先もジムリーダーを務めて行く決意を誓った。



一方、飛行機の遅れで到着が遅れていた、カロスからのメンバー、シトロンとユリーカは、同窓会が お開きになってからの到着となってしまった。

カスミ、トオル、ナナコ、ヒロシ、ハルカ、ヒカリは既に帰路についており、この場に居るのはサトシとシゲル、デントの3人。


サトシの同窓会・第二部が、始まろうとしていたが……。


 ▼ 3 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:49:40 ID:cl0gaXH. [3/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

【 T 】



 シトロン(18) 「ごめんくださいーい」

 ユリーカ(13) 「こんばんはー!」

 
 サトシ 「おぉ……シトロン! ユリーカ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」

 ユリーカ 「わはっ……サトシ! ピカチュウ! 会いたかった―!」

 デデンネ 「でねねねぇ!」

 シトロン 「サトシ! お久しぶりです!」


シトロンとユリーカが、研究所に到着した。

飛行機の遅れによって、すっかり暗くなってからの対面だった。


シトロンは、特徴的な髪型とメガネは変わらないが、どことなく男らしくなったと言うか、堂々とした出で立ちになっていた。

ユリーカは、もうポケモンを持てる年齢だ。当時はキープだったデデンネのトレーナーに晴れて なれたのだろうが、ポシェットに連れてる姿は当時のままだ。
 ▼ 4 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:50:10 ID:cl0gaXH. [4/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
 シトロン 「初めまして、シトロンです。この度はサトシの同窓会に誘って頂いて、ありがとうございます」

 タケシ 「こちらこそ、遠い所ありがとう。長旅お疲れさま」

 ユリーカ 「あれ? ソムリエの人だ!」

 シトロン 「えっ……デントもサトシの仲間だったんですか!?」

 デント 「久しぶりだね、シトロン、ユリーカ。まさかこんな形で再会できるなんて思わなかったよ」

 サトシ 「えっ? 知り合いなのか?」

 デント 「あぁ。ミアレシティの釣り大会と、地下鉄、それにプリズムタワーを見に行った時に出会ったんだ」

 シトロン 「なんだぁ。あの時サトシの知り合いって知っていれば、もっと色々話せたんですけどね」

 ユリーカ 「でも凄い偶然だね!」

 デント 「うんうん。正にファンタスティックなテイストだね」


シトロンとユリーカが、デントと知り合いだったことに、サトシは驚いた。

遠く離れたカロス、イッシュ地方の旅仲間が、偶然、遠い地で知り合っていたのだから。

そんな奇跡とも言える繋がりに、ある種の世間の狭さを感じつつも、サトシは一つ、気になることがあった。
 ▼ 5 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:50:41 ID:cl0gaXH. [5/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「それで……、カロスからは、2人だけか?」

 シトロン 「あっ……はい。けっこう急な話だったので、みんな都合が付かなかったみたいで……」

 ユリーカ 「サトシ、やっぱり気になるよね、セレナのこと」

 サトシ 「んっ……まぁな」

 タケシ 「セレナ――。その子もサトシの旅仲間だったのか」

 サトシ 「あぁ。ポケモンパフォーマーの、お洒落な女の子だよ。そっか……やっぱり忙しいよな、セレナは」

 デント 「パフォーマー……、トライポカロンと言えば、カロス地方で衰えない人気を誇る、ポケモンとトレーナーの祭典だね」

 サトシ 「オレ、カロスを旅してる時、色々セレナに世話になったんだよな。……忙しいのは仕方ないけど、会いたかったなぁ」

 タケシ 「サトシが そこまで残念そうにするの、珍しいな」

 デント 「うん。助手のケンタ君と電話が通じなかった時とは、雲泥の差だね」

 シゲル 「って言うより、鈍感なサートシ君が、女の子に対して“会いたかった”なんて言うこと自体、驚きだよ。むしろ別の意味を疑いたくなるねぇ」

 ユリーカ 「ふふ〜ん。そうだよね〜。だってサトシ、セレナと お別れの時に……」

 サトシ 「おいおいここで言うなよユリーカ」
 
 シゲル 「ん? なんだいなんだい?」

 デント 「気になるね。カップルの意味すら知らなかったサトシが、そのセレナって子と何かあったのかい?」

 ユリーカ 「実はねぇ〜」 ニヤニヤ

 ▼ 6 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:51:00 ID:cl0gaXH. [6/17] NGネーム登録 NGID登録 報告



   * * * * *





2年前のことを、サトシは思いだす。


トウエツ地方を一人旅していたサトシ(当時16歳)は、ポケモンセンターのテレビニュースで、新たなカロスクイーンが誕生したことを知った。

それは即ち、エルが防衛戦で敗退したことを意味するのだが、彼にとって、注目すべき点は そこでは無かった。

新カロスクイーンとしてインタビューに映し出された少女が、サトシの よく知る人物だったからである。



  インタビュアー 『新カロスクイーン、おめでとうございます!』

  セレナ 『グスッ……ありがとうございます。夢みたいです!』

  インタビュアー 『ヤシオプロダクションにスカウトされて、一躍期待されてきましたが、ファンの皆さんに向けて、一言お願いします』

  セレナ 『はいっ。あのっ、こんな私を今まで応援してくれて、本当にありがとうございました。皆さんの声援、すっごく嬉しかったですし、励みになりました!』

  インタビュアー 『長きに渡ってクイーンの座を守り抜いてきたエルさんに勝利して、どんなお気持ちですか?』

  セレナ 『ずっと憧れてきたエルさんと同じステージで戦えたことが、まず誇りに思えますし、そのっ……なんて言ったらいいか……、テールナー、ヤンチャム、ニンフィア、みんな頑張ってくれたお陰でっ……、本当に、本当に嬉しいです!』

  インタビュアー 『ふふっ。息の合ったパフォーマンスでしたもんね』
 ▼ 7 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:51:20 ID:cl0gaXH. [7/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「セレナ! カロスクイーンになれたのか!」

 ピカチュウ 「ぴぃかぁ〜!」


テレビ画面のセレナは、嬉し泣きしていた。

頬を赤くして、涙を流しながら、けれど笑顔でインタビューに答えるセレナの姿に、サトシは思わず釘付けになる。

以前一緒に旅していた仲間が、こうして偉業を成し遂げた――、それはサトシにとっても、堪らなく嬉しいことだった。



  インタビュアー 『新クイーンになれたこと、誰に伝えたいですか?』

  セレナ 『えっと、私の夢を応援してくれたマ……母に伝えたいですし、それにっ、一緒に成長してきたライバルたちにも!』

  インタビュアー 『セレナさん、ライバルの子たちとも仲が良いですからね』

  セレナ 『はい! ……でも、一番に伝えたいのは、以前、一緒に旅した仲間です』

  インタビュアー 『旅仲間ですか!』

  セレナ 『きっと今も、何処かを旅してると思うんです。ピカチュウと一緒に。私の“目標”の……その人に、伝えたいなぁって』

  インタビュアー 『素敵ですね。ピカチュウを連れた その子も、きっと喜んでくれるでしょうね』

  セレナ 『ふふっ……はいっ!』
 ▼ 8 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:51:40 ID:cl0gaXH. [8/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「セレナ……!」

 ピカチュウ 「ぴかぁ〜」


恐らくこのインタビュアーは、ニュアンス的に、セレナが言う“ピカチュウを連れた人”を、女の子だと思い込んでいるようだ。

けどそれは、紛れもない、サトシのことだった。


 サトシ 「すげぇぜセレナ。カロスクイーンに……、夢、叶えたんだな」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」


サトシの脳裏に、旅の最後、空港での出来事が蘇る。

薄れていた記憶が、鮮明に呼び覚まされてくる。色付いてくる。


自分のことを“目標”にしてくれたセレナ。

“もっと魅力的になる”と、自分に誓ったセレナ。

そして別れ際、セレナはエスカレーターを駆け上がって、唇を、そっと重ねてきて――。
 ▼ 9 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:52:00 ID:cl0gaXH. [9/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「あれからもう、3年か……」


その当時は鈍感だったサトシも、成長するにつれ、“そういう知識”も身についてきた。

あの時のセレナの行動が、恐らく自分への最大限の好意の表現であるということを、サトシは最近になって確信した。


 サトシ 「3年前……、けどセレナ、まだオレのこと、想っててくれたんだな」

 ピカチュウ 「ぴか」


インタビューのセレナの発言から、サトシは そう言う風に実感した。

3年。

年頃の女の子なら、疎遠になった男なんかより、身近な男に心移りしても おかしくない。

けれどセレナは、3年間ずっと、自分のことを目標として見てくれていた――。

それはサトシにとって、嬉しく、どこか恥ずかしく、そして自らを奮い立たせた。


 サトシ 「……セレナは夢を掴んだんだ。オレたちだって負けてられないぞ!」

 ピカチュウ 「ぴっか! ぴかちゅう!」


まずは今回こそリーグ優勝。

そしてポケモンマスターと言う夢に少しでも早く近付けるべく、バトルの特訓に全力を尽くそうと、サトシは誓った。
 ▼ 10 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:52:30 ID:cl0gaXH. [10/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「……そうだ。セレナに何か、お祝いしてあげたいな」

 ピカチュウ 「ぴっか」

 サトシ 「けど、セレナの連絡先とか知らないし、実家の住所も知らないし……。あ、ミアレジムなら住所調べられるから、シトロンに頼むか」

 ピカチュウ 「ぴかちゅぅ」

 サトシ 「……いや待てよ。ヤシオプロダクションって言ってたよな。ってことは、そこに贈ればセレナに届くよな!」

 ピカチュウ 「ぴぃか!」


ヤシオが元カロスクイーンであって、これまで何人ものカロスクイーンを世に送り出して来たプロデューサーであることは、サトシも知っている。

サトシは確信し、早速パソコンを借りてギフトを検索する。


 サトシ 「って言っても、どんなもの贈れば喜んでくれるかな〜」

 ピカチュウ 「ぴか〜」

 サトシ 「流石に洋服とかは好みがあるだろうし……、リボンくらいの小物なら良いんだろうけど、カロスクイーンのお祝いに小物って言うのもなぁ」





   ― セレナ 『きっと、サトシが選んだものなら、ピカチュウ達、なんでも喜んでくれると思うんだ』





 ▼ 11 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:52:50 ID:cl0gaXH. [11/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「あっ」

 ピカチュウ 「ぴか?」

 サトシ 「……自分の直感を信じろってことだよな」



サトシはオンラインショッピングのギフトの中から、花束を選んだ。

セレナをイメージした、ピンク系統で まとめられた、可愛さと華やかさを併せ持つ花束。

そこに青いリボンとメッセージカードを添えて、ヤシオプロダクションのセレナ宛てに、ギフトを注文した。


 サトシ 「セレナ、喜んでくれると良いな!」

 ピカチュウ 「ぴかちゅ〜!」





   * * * * *


 ▼ 12 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:53:20 ID:cl0gaXH. [12/17] NGネーム登録 NGID登録 報告


 ユリーカ 「サトシ、セレナにキスされたんだよね〜」

 シゲル 「わお」

 デント 「それはそれは。ファンタスティックだねぇ」

 サトシ 「おいユリーカ」

 タケシ 「キスって……、それ、そのセレナって子がサトシのこと好きだったってことなのか?」

 ユリーカ 「うん。もう明らかにね」

 シトロン 「まぁ、思い返してみれば、セレナの言動には、サトシへの好意が見て取れましたね」

 シゲル 「なんだいなんだサートシ君。君を好きになる女の子が居たとはねぇ」

 サトシ 「ま、まぁ、そんなことよりさ。他のカロスのメンバー、みんな何してるんだ?」

 シゲル 「話題を逸らすとは……、照れてるのかい?」

 サトシ 「うるせぇ」
 ▼ 13 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:53:50 ID:cl0gaXH. [13/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
 シトロン 「まぁ、あんまりこの話題ばかりじゃアレですもんね。まずショータは……」

 ユリーカ 「ショータはダイゴさんの手伝いしながら大学に通ってるよ。トロバはポケモンカメラマンの道を勉強し始めて、ティエルノはポケモンとのダンスユニットを作っちゃって。サナは変わらずにパフォーマーでカロスクイーンを目指してて、ミルフィはポフレの専門店をオープンしたの。あーあとビオラさんとザクロさんが婚約するんだって! それでサトシぃ! セレナとは連絡とってるの?」

 デント 「えらく簡単にまとめちゃったね」

 シゲル 「ユリーカちゃん、サトシとセレナのこと、そんなに興味あるのかい?」

 ユリーカ 「うん! だってセレナ、旅の間、ずーっとサトシのこと気になってたんだよ。セレナったら乙女なんだから、私、いつ告白するのかなーってキュンキュンしながら眺めてて、もうそれだけで毎日が楽しくて、あ、勿論みんなとの旅も楽しかったけど、セレナの……」

 シトロン 「ほらユリーカ。ちょっと喋りすぎだよ」

 ユリーカ 「だって〜」

 シゲル 「でも僕も気になるね。サトシとセレナの仲は」

 タケシ 「オレもだ。サトシは色んなメンバーで旅してたけど、サトシに明確に好意を持つ相手って、今まで居なかったんだ。それだけで大ニュースだぞ」

 サトシ 「大ニュースって……なに言ってんだよタケシまで」

 ユリーカ 「それでどうなの? セレナとは連絡とってるんでしょ?」

 サトシ 「……最後に連絡取り合ったのは、半年くらい前になるかな」

 シトロン 「半年……ですか」

 ユリーカ 「えぇぇぇ半年!? なんで!?」

 サトシ 「なんて言うか……、連絡しにくかったんだ」


 ▼ 14 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:54:31 ID:cl0gaXH. [14/17] NGネーム登録 NGID登録 報告



   * * * * *





半年前――。


サトシがジムリーダーに就任して、1週間が経った頃だった。


 職員A 「失礼します。サトシさん宛てに荷物が届いてますよ」

 サトシ 「オレにですか?」


ちょうど、前ジムリーダーからの引継ぎが終わって、“ジムリーダー・サトシ”としてオープンする間近。

色々な準備があり、サトシは連日ジムに寝泊まりしていたが、自分宛ての荷物がジムに直接届くのは、この時が初めてだった。


 職員A 「これ……、差出人は女の子の名前ですね。ふふっ、彼女さんですか?」

 サトシ 「いやオレに彼女なんて いませんよ」

 職員A 「それじゃあファンの子ですかね?」

 サトシ 「いやそれこそ違いますよ。まだジムリーダーとして正式にデビューも してないですし」

 職員A 「またまたー。サトシさん格好良いですし、何より、一般トレーナーからジムリーダーに昇格した希望の星、なんて言われてるじゃないですか。早くからファンが付いても不思議じゃありませんよ?」

 サトシ 「そういうものなんですかね、ジムリーダーって」

 職員A 「前ジムリーダーのリュウゴさんにも、ちょくちょくファンの子から手紙や荷物が届いてましたし、割と そういうものですよ」

 サトシ 「なんだか、それもそれで落ち着きませんね。……それで、なんて子からですか?」

 職員A 「これは……、アサメタウンのセレナって子からですね」

 サトシ 「えっ……セレナから!?」

 職員A 「あ、知り合いなんですね」

 サトシ 「はい。以前一緒に旅してた仲間なんです」

 職員A 「そうだったんですか。じゃあ私は失礼するので、プレゼント確認してくださいねー」

 サトシ 「あ、ありがとうございます」
 ▼ 15 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:54:50 ID:cl0gaXH. [15/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
テーブルの上に置かれた箱は、30センチ四方くらいある、そこそこの大きさだが、重さは無く、“割れもの注意”のシールが貼られている。

サトシは早速、箱を開ける。

梱包のプチプチを取り出し、綺麗な包みを開けると、そこには沢山のクッキーとマカロンが入っていた。


 サトシ 「おぉ!」

 ピカチュウ 「ぴか?」

 サトシ 「見ろよピカチュウ。セレナからクッキーとマカロンが届いたんだ」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」

 サトシ 「……ポケモンたちの形してる」


クッキーを取り出して よく見ると、ピカチュウ、ゲッコウガ、ハリマロン、テールナーなど、旅してた頃のポケモンが模られていた。ポケモンたちみんなで食べてねってことだろう。

マカロンは、旅の途中よくセレナが作ってくれいたこともあり、懐かしさが込み上げてくる。


そして、箱の底に封筒が入っているのを、サトシは見つける。


 サトシ 「手紙……か」


封筒の中には、ピカチュウシルエットの可愛らしい便箋が入っていた。

そこに並ぶ綺麗な文字。
 ▼ 16 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:55:30 ID:cl0gaXH. [16/17] NGネーム登録 NGID登録 報告



サトシへ。


お久しぶりです。

ジムリーダー就任、おめでとうございます。

サトシがジムリーダーに就任したと聞いて、なにか お祝いしたいと思って、クッキーとマカロンを作りました。

みんなで食べて下さいね。


それと、遅くなってしまいましたが、私がカロスクイーンになった時、花束を贈ってくれて、ありがとうございました。

あの時はサトシの連絡先が分からなかったので、やっと直接お礼を伝えることができました。

サトシからプレゼントを貰ったのは、リボンに続いて2回目ですね。

ファンの人からプレゼントを貰うことはありますが、サトシから貰うプレゼントは格別です。

とっても嬉しかったですし、その後の励みにもなりました。


ジムリーダーとして、これから大変かと思いますが、頑張ってください。

最後まで諦めない心と、リーグ優勝を果たした実力があれば、絶対に大丈夫ですよね。


私も頑張ります。

絶対にカロスクイーンに帰り咲いて、サトシに負けない存在に、なってみせます。


それでは。

サトシのこと、いつも応援しています。


P.S.
カロスクイーンに再び なれたら、会いに行っても良いですよね?



 ▼ 17 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:56:00 ID:cl0gaXH. [17/17] NGネーム登録 NGID登録 報告


 サトシ 「セレナ……、大丈夫かな」

 ピカチュウ 「ぴぃか」


敬語で綴られている手紙と、文章のニュアンスに、サトシは何処か、セレナを心配に思った。

特に最後の一文は、何故か弱々しいイメージを受ける。強いはずのセレナのイメージとは、なんとなく似つかない。


 サトシ 「後でみんなで食べるとして……、なんて返事しようか」

 ピカチュウ 「ぴか」


サトシは返事に悩む。

送り主の住所、即ちセレナの自宅が分かったので、これでセレナとの連絡手段は確保した訳だが、どうしても、返事の文面に悩んでしまう。



……この少し前。



セレナはカロスクイーンとしての初めての防衛戦で、チャレンジャーに破れてしまったからだ。





   * * * * *


 ▼ 18 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:06:59 ID:pIWA7cR. [1/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


 サトシ 「……それで、その時の返事は、当たり障りないことを書いたっけな」

 シトロン 「確かに……。防衛戦に敗れたと言う現実の前に、あまり無神経なことは書けませんからね」

 ユリーカ 「私は逆に! サトシがセレナを元気付けてあげるべきだと思うけどな」

 サトシ 「その方が良かったかもしれないかな……」

 デント 「いや。手紙は本心まで伝えることは不可能だから、サトシの判断は正解だったと思うよ」

 タケシ 「あぁ。特にそういうデリケートな時期なら尚更だ」

 ユリーカ 「それで……、セレナから返事は?」

 サトシ 「あぁ。“応援ありがとう。私もこれから頑張ります”的な内容だった」

 シゲル 「それ以外に書けないだろうね、この場合」

 サトシ 「この場合?」

 シゲル 「そのセレナって子は、サトシのことが好きなんだろ?」

 サトシ 「それはっ……」

 ユリーカ 「好きだよ」

 シゲル 「好きな相手に、自分の失敗を伝えるのが、どれだけ勇気のいることか。出来れば黙っておきたいはずだよ」

 シトロン 「えぇ。特にセレナの場合、防衛戦に敗れたと言うニュースが出回ってしまいましたから、改めての報告と言うのは、ちょっと勇気がいりますね」

 シゲル 「だからセレナは、サトシに報告するのを、躊躇ってたと思うよ」

 タケシ 「だな。むしろ、サトシがジムリーダーになったのをキッカケに、覚悟を決めたんだろう」

 デント 「そうだね。サトシを お祝いするには、自分のことも話すことになる――。セレナは、サトシを祝うために勇気を出したってことだよ」
 ▼ 19 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:07:29 ID:pIWA7cR. [2/10] NGネーム登録 NGID登録 報告

 サトシ 「……オレと同じだったのかな」

 ユリーカ 「えっ?」

 サトシ 「セレナがエルさんに勝って、カロスクイーンになったって聞いた時、オレすげぇ嬉しかったんだ。思わず花束贈ったくらい」

 シゲル 「へぇ。サートシ君が女の子に花束ね〜」

 ユリーカ 「ふふっ。セレナ喜んでたよ。私にもメールで、“サトシから花束貰っちゃったー!”って はしゃいでたもん」

 サトシ 「そりゃ良かった。……それで、セレナが夢を叶えたのに、オレ、何やってんだろうって。その時は まだトウエツ地方を旅してる最中でさ。オレ、このままで良いのかって」

 シトロン 「サトシは旅の経験を通じて強くなってるんです。悩むことじゃないですよ」

 ユリーカ 「そうだよ」

 サトシ 「サンキュー。でも その時のオレ、まさに今のセレナみたいだったな」

 タケシ 「まぁ、仲間が夢を叶えたって聞いたら、焦っちまうものだよな」

 サトシ 「でさ、オレ、トウエツリーグで優勝して、ジムリーダーのオファーを貰って。ようやくセレナに恥ずかしくない立場になったと思ったら、セレナが防衛戦に敗れちまって……。上手く行かないよな、世の中」

 シトロン 「サトシは夢に一歩近づいて、セレナは夢から遠ざかった……。複雑ですよね」

 デント 「恋に障害は付き物とは言うけれど、こうも上手く行かないとねぇ……」

 サトシ 「いや恋とか違うからな」

 シゲル 「ふ〜ん」

 サトシ 「なんだよ」
 ▼ 20 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:08:00 ID:pIWA7cR. [3/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ユリーカ 「……ねぇサトシ。ユリーカのお願い、聞いてくれない?」

 サトシ 「ん? お願いって?」

 ユリーカ 「サトシにね、セレナを励ましてほしいの」

 サトシ 「あぁ。そのくらいなら お安い御用だけど、でもどんな風に切り出すか……」

 ユリーカ 「違うの。セレナと直接会って!」

 サトシ 「えっ!?」

 ユリーカ 「セレナ、最近なんだか暗いの。防衛戦で負けちゃったこともあるけど、なんだか他のワケも あるみたいで……」

 サトシ 「他のワケ?」

 ユリーカ 「うん。でも私には話してくれないの。サナやミルフィにも聞いてみてってお願いしたんだけど、2人にも話してくれなくて……」

 シトロン 「ユリーカ、僕が知らない間に、けっこうセレナたちと連絡取り合ってたんだね」

 ユリーカ 「だってお兄ちゃんは向こうが忙しいし」

 シトロン 「まぁそうだけど」

 サトシ 「向こう?」

 シトロン 「追って話します」
 ▼ 21 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:08:20 ID:pIWA7cR. [4/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「けど、ユリーカやサナたちでも聞き出せないことを、オレに話してくれるかな? さっきの話じゃないけど、立場的にも……」

 ユリーカ 「会っちゃえば話すって。セレナ、サトシと会いたいはずだよ?」

 サトシ 「オレもセレナとは会いたいけど、気まずくなっちゃアレかなって」

 シゲル 「ほぉ。やっぱりサトシは、セレナが気になってると」

 サトシ 「なっ……仲間としてな! 当然だろ」

 シゲル 「へぇ〜」

 ユリーカ 「ふふ〜ん。サトシもセレナと会いたいんなら決まりだね!」

 サトシ 「けど……、いや、勿論セレナと会いたいし、セレナを励ましたいけど、ジムリーダーって立場があるから、そう言う理由で休んで良いのかなって……」

 ユリーカ 「もー! サトシはセレナと仕事、どっちが大事なの!?」

 サトシ 「そりゃ仲間を大切にしたけど……」

 デント 「はははっ。なんだか彼女に せがまれるようなシーンだね」

 タケシ 「ユリーカ。サトシの考えも分かってやってくれ。ジムリーダーは責任ある職なんだ。これが身内の危篤とかだったら話は別だけど、正当な理由なく長期間 休むのは、何かと難しいんだよ」

 ユリーカ 「それは分かってるけど……」

 デント 「ジムリーダーの代理が居れば、話は別なんだけどね」

 ユリーカ 「じゃあお兄ちゃん。シトロイドをサトシのジムに呼んじゃおうよ!」

 サトシ 「いやそれはダメだろ」

 シトロン 「ダメですね」

 ユリーカ 「そんなぁ……。じゃあセレナは……」
 ▼ 22 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:09:10 ID:pIWA7cR. [5/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 シトロン 「……ですが、正当な理由を作ることは可能ですよ」

 ユリーカ 「ホント!?」

 サトシ 「出来るのか!?」

 シトロン 「考えてみてください。僕もサトシも、同じ電気タイプのジムリーダーです」

 サトシ 「あぁ」

 シトロン 「そして、サトシはジムリーダーになったばかりの初心者です」

 サトシ 「そうだな」

 タケシ 「……なるほど」

 サトシ 「どういうことだ?」

 シトロン 「サトシが“ミアレジムを視察”すれば良いんですよ」

 サトシ 「オレが……視察?」

 デント 「なるほどね」

 シトロン 「視察と言うと少し硬いかもしれませんが、要するに、新人ジムリーダーであるサトシが、勉強のために僕のジムを“見学”するってことです」

 タケシ 「ジムリーダーが他のジムを見に行くって、けっこうメジャーなんだ。勿論、ジムを休む正式な理由にもなる」

 サトシ 「そうなのか!」

 シトロン 「ですのでサトシは、明日以降もジムをクローズにする手配を取ってください。カロス地方ともなれば、5日くらいは休めるでしょう」

 ユリーカ 「流石お兄ちゃん!」

 サトシ 「サンキュー! じゃあちょっと事務方に連絡して来る。明日の朝一でカロスに出発だ!」

 ユリーカ 「おー!」
 ▼ 23 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:09:40 ID:pIWA7cR. [6/10] NGネーム登録 NGID登録 報告

サトシは部屋の隅に移動して、事務員に連絡を入れた。

急な休み拡大であるが、長年アニポケを見ている方なら分かるように、ジムは割と簡単に休みに出来てしまうものである(笑)


 シトロン 「……ちょっと待ってください。もしかして、カロス行きの深夜便、間に合ったりしません?」

 ユリーカ 「えっ? こんな時間でもカロスに行く飛行機あるの!?」

 デント 「いま調べてるよ。……22時55分に、エールカロス航空の便があるみたいだね」

 ユリーカ 「やったぁ!」

 シゲル 「……けど、もう20時になるよ。国際線は手続きが面倒だし、マサラからのリムジンバスって終わってるんじゃないか?」
 
 ユリーカ 「えぇぇぇぇっ!?」

 タケシ 「仕方ない。オレの車で空港まで送るぜ」

 シトロン 「本当ですか!?」

 タケシ 「あぁ。サトシの仲間のためとあれば、協力するしかないだろ?」

 シトロン 「ありがとうございます!」

 ユリーカ 「ありがとうタケシさん!」
 ▼ 24 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:10:10 ID:pIWA7cR. [7/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 シゲル 「ははっ。急な展開ですね」

 デント 「そうだね。でも、サトシの仲間らしいじゃないか」

 シゲル 「えぇ。サトシの人脈は、たまに僕も見習いたいですよ」

 タケシ 「デント……どうだ? もし良かったらニビジムに泊まらないか?」

 デント 「それは助かるよ。あのとき以来だし、積もる話もあるしね」

 タケシ 「そうだな」

 シゲル 「なら今日は、これでお開きですね。片付けは僕が済ませますから、皆さんは空港に急いで下さい」

 タケシ 「悪いなシゲル」

 デント 「すまないね。散らかしておいて、片付けだけ押し付ける形になってしまって」

 シゲル 「構いませんよ。2人には、おいしい料理を ご馳走になりましたしね」

 ユリーカ 「ありがとうシゲルさん」

 シトロン 「助かります」
 ▼ 25 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:10:40 ID:pIWA7cR. [8/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


 サトシ 「連絡してきたぜ。とりあえず明日からの休みはOK」

 タケシ 「よし。それじゃあ急いで空港だ」

 サトシ 「え?」

 ユリーカ 「夜の飛行機に間に合うの! 早く早く!」

 サトシ 「夜のって……、あとどれくらいあるんだ?」

 シトロン 「22時55分の便ですよ」

 デント 「手続きがあるから、実質あと2時間も無いね」

 サトシ 「それ間に合うのか!?」

 タケシ 「だからオレが車を出すんだ。サトシ、一旦 家に寄りたいだろ?」

 サトシ 「おう……そうだな。荷物もあるし、母さんにも言わなきゃアレだし」

 ユリーカ 「じゃあ急ぐよサトシ!」

 シゲル 「サートシ君。ちゃんとセレナを励まして来るんだよ」

 サトシ 「あぁ。サンキューなシゲル。ドタバタしちまって」

 シゲル 「気にすること無いよ。まぁ、ジムリーダーとして大変だろうけど頑張れ。次に会う時は、良い知らせを待ってるよ」

 サトシ 「シゲルも大学、頑張れよ。あと、ポケモンたちも よろしくな」

 シゲル 「任せといてくれよ。……あー、あとユリーカ」

 ユリーカ 「なぁに?」

 シゲル 「サトシとセレナの顛末、メールで良いから教えてね。これアドレス」

 ユリーカ 「……ふふっ。オッケー!」

 サトシ 「おい」

 タケシ 「さぁさぁ時間無いから行くぞ!」

 ユリーカ 「レッツゴー!」

 ▼ 26 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:11:10 ID:pIWA7cR. [9/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


タケシの車に乗り込んだサトシたちは、一旦サトシの家へ。

サトシはハナコに事情を話して急いで荷造り。

その間、タケシたちはハナコに挨拶。シトロンとユリーカは、あの電話から5年越しに、サトシの家に訪れることが出来たことになる。



そうしてすぐに、一行はマサラタウンを後にした。

夜の高速道路を ひた走り、空港に着いたのは、21時半頃。出発まで1時間以上あるが、国際線であることを考えればギリギリだ。



 タケシ 「それじゃあ、気を付けて行って来いよ」

 サトシ 「あぁ。サンキューなタケシ。同窓会を仕切って貰った上に、空港まで送って貰っちまって」

 タケシ 「良いってことよ。それより、ちゃんとセレナを元気付けて来いよ」

 サトシ 「あぁ!」

 デント 「サトシ。レディーの心は繊細だから、変に空回りして傷付けないようにね」

 サトシ 「分かってるさ」

 デント 「うん。……おっとユリーカ」

 ユリーカ 「なぁにソムリエさん?」

 デント 「サトシとセレナが どんな感じになったか、メールで良いから教えてね。これアドレス」

 ユリーカ 「ふふっ。はーい!」

 サトシ 「デントもかよ!?」

 シトロン 「ほらサトシ。急がないと」

 タケシ 「そうだぞ国際線なんだから」

 サトシ 「……ったく。 じゃあ行ってくるよ」

 タケシ 「頑張れよ!」

 デント 「また会おうね!」


 ▼ 27 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/28 00:11:30 ID:pIWA7cR. [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



続きは後日。


 ▼ 28 レッフィ@ひのたまプレート 20/03/28 09:26:45 ID:lFiko4bw NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
まじめなサトセレになるんだよね?
 ▼ 29 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 00:56:01 ID:rOVwVPc6 [1/13] NGネーム登録 NGID登録 報告

【 U 】



定刻、22時55分。

サトシたちを乗せたカロス空港行きエールカロス航空293便が、カントーの地を飛び立った。


 シトロン 「いやぁ、ドタバタしましたけど、なんとか落ち着きましたね」

 ユリーカ 「まさかカントーに来て6時間で帰るなんて思わなかったな〜」

 シトロン 「そうだね」

 サトシ 「これからセレナに会えるのか……」

 ユリーカ 「嬉しい?」

 サトシ 「嬉しい……って言うか懐かしいな。5年ぶりだし」

 ユリーカ 「ねぇサトシ。聞いても良い?」

 サトシ 「ん?」

 ユリーカ 「旅が終わって、空港でセレナにキスされた時、どんな感じだった?」 ワクワク
 ▼ 30 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 00:56:50 ID:rOVwVPc6 [2/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「ぶっ……。ユリーカどんだけオレとセレナの関係に興味あるんだよ!?」

 ユリーカ 「だって〜、一緒に旅してた仲だし〜、最後に勇気出したセレナのこと考えると〜、やっぱり気になっちゃうもん!」

 シトロン 「僕も あの時は衝撃を受けましたね。あんなに大勢の人が居る空港で、いきなりキスですからね」

 ユリーカ 「そうそう! 奥手だったセレナが! 恥ずかしさを放り出してキスしたんだよ! 分かる、サトシ? どれだけ凄いことか?」

 サトシ 「そりゃぁ……」

 ユリーカ 「サトシももう鈍感じゃないでしょ? セレナの気持ちに、ちゃんと答えてあげなよ」

 サトシ 「分かってるよ。確かに あの時のオレ、セレナのキスに深い意味とか考えなかったけど……」

 ユリーカ 「えぇぇぇどう考えても深い意味でしょ!?」

 シトロン 「ちょっ……ユリーカ静かに」

 サトシ 「いやほら。感謝の気持ちを込めたキスとか、あるじゃん? それにカロスとかだと、キスなんて挨拶レベルなのかな〜って思ったりもしたし」

 ユリーカ 「私いままで挨拶みたいなキスしたことある!?」

 サトシ 「……無かったな」

 ユリーカ 「でしょ! も〜ホントに鈍いんだから!」
 ▼ 31 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 00:58:00 ID:rOVwVPc6 [3/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「いや……だからさ、セレナのキスの意味に気付いた時、なんて言うか、すげー急に恥ずかしくなったよ」

 ユリーカ 「セレナは その恥ずかしさを押し殺してサトシにキスしたのに……」

 サトシ 「まぁ……うん。でも あの時はセレナすぐホウエンに行っちまったし、セレナがカロスクイーンになった時には気付いてたけど、わざわざそのことを掘り返すのもアレだし……」

 ユリーカ 「言い訳は いらないっ。セレナに会ったら、ちゃーんと返事してあげてよ! あれ、告白みたいなものなんだから!」

 サトシ 「告白……か」

 シトロン 「ユリーカ……、あんまりセレナが居ない所でペラペラ喋るのは良くないよ」

 ユリーカ 「分かってるけど……」


 サトシ 「なぁ、ジムリーダーってモテるのか?」

 シトロン 「いきなりですね。まぁ名誉ある立場ですし、一般トレーナーの憧れですから、まぁモテるでしょうね」

 ユリーカ 「って言うより、ジムリーダーのほうから“好きです”って行けば、90%以上はOK貰えると思うよ?」

 サトシ 「う〜ん……」

 シトロン 「5年ぶりに会う身としては、サトシの口から“モテる”なんて言葉が出たことに驚きですよ。何かあったんですか?」

 サトシ 「いや、実はオレのジム、チャレンジャーの男女比が同じくらいなんだ」

 シトロン 「それは珍しいですね。普通、男性の方が多いものですよ」

 サトシ 「あぁ。事務方の人も珍しいって言ってたな。なんでも、ジムリーダーがオレに変わってから、女性チャレンジャーが増えたって」

 ユリーカ 「……それって、サトシ目当ての女の子が来てるってこと!?」

 サトシ 「やっぱ そういうことだよなぁ」
 ▼ 32 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 00:59:10 ID:rOVwVPc6 [4/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ユリーカ 「なにそれ!? サトシにはセレナが居るのに!」

 シトロン 「ユリーカ。その辺はサトシの問題ですから」

 サトシ 「ついでに言うと、ジム戦 終わってから、食事に誘われたり、あと……プライベートで会いたいって手紙も貰ったな」

 ユリーカ 「それ“デートしたい”ってことでしょ!? ダメだよサトシ! そんな誘惑に負けたら!」

 シトロン 「だからそれはサトシの問題だからね。ユリーカが怒る所じゃないからね」

 サトシ 「安心しろよ。ジムの仕事が忙しくて、それどころじゃないからさ」

 ユリーカ 「……ってことは、忙しく無かったら、デートするってこと?」

 サトシ 「そういう訳じゃないけど……」

 ユリーカ 「もぉ〜。サトシはセレナがキープしてるんだよ? そういう実感サトシには無いの!?」

 シトロン 「ユリーカ。恋人関連で“キープ”って、悪い意味で聞こえるからね」

 サトシ 「落ち着けてってユリーカ。大丈夫。セレナを悲しませるようなことは してない。断言するぜ」

 ユリーカ 「そういう問題じゃないのに」



 CA 「失礼致します。お食事サービスになります。和食と洋食をお選び頂けます」


 シトロン 「ほらユリーカ、この話は終わり。 では僕は洋食を頂きます」

 ユリーカ 「じゃあ……私も洋食お願いします」

 サトシ 「オレは和食で」

 CA 「かしこまりました。それでは ご準備致します」
 ▼ 33 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:00:00 ID:rOVwVPc6 [5/13] NGネーム登録 NGID登録 報告


座席のテーブルが広げられて、トレーに乗せられた夕食が3人の元に準備された。

シトロンとユリーカが選んだ洋食は、チキンソテーがメイン。それにパンとサラダ、コーンスープ、チーズとチョコレートケーキが付く。

サトシが選んだ和食は、牛肉の胡麻味噌和えがメイン。スモークサーモンのサラダが加わり、ご飯とパン、味噌汁、チーズとチョコレートケーキが付く。


 サトシ 「和食なのにパンも付くのか。炭水化物、半端ないぞ」

 シトロン 「カロスの航空会社ですからね。けど、エールカロス航空のパンは美味しいって評判なんですよ」

 サトシ 「へぇ〜」

 ユリーカ 「いただきまーす!」



 サトシ 「って言うかさ、そろそろ2人のことも聞かせてくれよ」

 シトロン 「あぁ、そう言えば まだでしたね」

 ユリーカ 「じゃあ まずは私から」

 サトシ 「おう」
 ▼ 34 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:00:50 ID:rOVwVPc6 [6/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ユリーカ 「サトシたちとの旅が終わった後、私は しばらく、ジムの お手伝いしてたの」

 シトロン 「旅に出る前から、ユリーカにはジムの手伝いを して貰ってたんです」

 サトシ 「へぇ〜」

 ユリーカ 「ジムをお手伝いしながらポケモンのこと勉強してね、12歳になって、デデンネと一緒にカロス地方を旅したんだ」

 サトシ 「お、ユリーカも旅したのか! でも、なんで12歳まで待ったんだ?」

 シトロン 「勿論、10歳なりたてで旅させるなんて危ないからですよ! トレーナーズスクールでポケモン学やトレーナーの基本を学んでからでないと、一人旅なんて許せません」

 ユリーカ 「こうなの。私もサトシたちとの旅で色んなこと学んだから、大丈夫だって言ったのに」

 シトロン 「そういう訳にはいきませんよ。ユリーカは女の子なんですから! 本当なら一人旅も させたくなかったんです」

 ユリーカ 「過保護」

 サトシ 「ははっ。まぁ、シトロンはユリーカのことを思ってくれてるんだぜ?」

 ユリーカ 「分かってるけど、なんだかね〜」

 シトロン 「……それと、将来的にユリーカには、ミアレジムのジムリーダーを継いで欲しいと思ってるんです。その辺の勉強も兼ねて、2年間待ってもらった訳ですよ」

 サトシ 「お、ユリーカもジムリーダーになるのか!」

 ユリーカ 「うん。って言っても、もうしばらく先だけどね」

 シトロン 「まぁ、最初はシトロイドのサポート的な立ち位置を考えてるんですが」

 サトシ 「そっかシトロイドか」

 ユリーカ 「だからなんでサポートなの? 私もジムリーダーとして……」

 シトロン 「カロスリーグの結果」

 ユリーカ 「ギクッ」
 ▼ 35 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:03:10 ID:rOVwVPc6 [7/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「ん?」

 シトロン 「ユリーカですが、カロスを旅して、8つのバッジを集めることは出来たんです」

 サトシ 「そうなのか! 初めての旅はバッジを集められないで断念するトレーナーが多いって聞くけど、ユリーカ優秀じゃん!」

 シトロン 「えぇ。その点は僕も認めてるんですよ。ただ……」

 サトシ 「ただ?」

 シトロン 「各地のジムリーダー……、ザクロさんやウルップさん、コルニたち、僕たちのこと、かなり印象に残ってるみたいなんですよね」

 サトシ 「あぁ、一緒にフレア団の暴走を止めた訳だからな」

 シトロン 「なので、なんというか……、ユリーカの“頑張り”を評価して、バッジを渡したケースがあったんですよ」

 サトシ 「……それはジムリーダーとして間違いじゃないだろ?」

 シトロン 「勿論。ですが“頑張り”と“実力”は違います。特に、リーグに挑戦するトレーナーたちは、本気で挑んで来ますからね」

 ユリーカ 「……てへっ。1回戦で負けちゃった」

 サトシ 「あらら」

 シトロン 「流石に僕も優勝しろとは言いませんが、まだまだ未熟なユリーカを、ジムリーダーにする訳にはいきませんよ」

 サトシ 「なるほどな」

 ユリーカ 「でも、良い経験したもん。次こそはデデンネと一緒に優勝するんだから!」

 サトシ 「その意気だぜユリーカ!」

 ユリーカ 「けど、今年はトライポカロンに挑戦するんだー!」

 サトシ 「……ははっ。そうだよな。ユリーカはトレーナーとパフォーマー、両方を目指してるんだもんな」

 ユリーカ 「うん。デデンネと一緒にね!」

 デデンネ 「でねぇ」
 ▼ 36 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:04:10 ID:rOVwVPc6 [8/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「シトロンは最近どうなんだ?」

 シトロン 「実は僕……」

 ユリーカ 「お兄ちゃんね、リリアさんと付き合ってるんだよ」

 サトシ 「リリアさん?」

 シトロン 「覚えてませんか? 旅の途中で出会った、ミミロルを連れていた女性です。オレンジロゴの社長令嬢の」

 サトシ 「んー……」

 ユリーカ 「もー。ホント、サトシって女の子に興味無いんだから!」

 サトシ 「仕方ないだろ5年前だぞ……」

 シトロン 「仕方ないですよね。それでまぁ、リリアさんと正式に お付き合いさせて貰ってるんです。お互いの両親も公認で」

 サトシ 「そうなのか。ユリーカのシルブプレに真っ赤になってた頃が嘘みたいだな」

 ユリーカ 「お兄ちゃん変わったもんね」

 シトロン 「えぇ。サトシを見習って、僕も強く生きて行こうと心に決めましたから」

 ユリーカ 「強く生きてく内容が“リリアさんと付き合う”ってなんだかね〜」

 シトロン 「僕は真剣なんです!」
 ▼ 37 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:05:00 ID:rOVwVPc6 [9/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「ははは。……ん? じゃあユリーカをジムリーダーにする理由って」

 シトロン 「あくまで将来的な話ですけど、僕がリリアさんと結婚したら、オレンジロゴを継ぐことになるかもしれません。そうなると、ジムリーダーはユリーカに任せるしか無いですからね」

 ユリーカ 「お兄ちゃん、もう結婚のことまで考えてるんだよ」

 サトシ 「ホント、あの時のシトロンからは考えられないな」

 シトロン 「僕ももう18歳です。それくらい考えて普通ですよ」

 サトシ 「……いや、早いと思う」

 ユリーカ 「でも、リリアさんは20歳だし、数年後〜って考えれば ちょうど良いかもね」

 サトシ 「へぇ〜。リリアさんの方が年上になるのか」

 シトロン 「はい。旅の途中に会った時は、そこまで深い話は出来ませんでしたが、お付き合いしてみて、とても優しい、素晴らしい女性だって実感しました」

 サトシ 「へぇ〜」

 ユリーカ 「うん……そうだよね。リリアさんの母性って言うか、お兄ちゃんの恥ずかしいことも受け入れる優しさ、ちょっと引くくらい凄かったもんね(オネショとか裸でアーボックとか)」

 サトシ 「引くくらい?」

 シトロン 「えっ……なんのことだいユリーカ?」

 ユリーカ 「あ、気にしないで。5年も前のことだから」
 ▼ 38 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:05:50 ID:rOVwVPc6 [10/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「シトロンとユリーカも成長してるんだなぁ。……他にカロスで目ぼしいことって何かあったか?」

 シトロン 「知り合い関連は、さっきユリーカが粗方 喋ってしまったので……そうですねぇ」

 ユリーカ 「ビオラさんとザクロさんの結婚式、来年って言ってたっけ?」

 シトロン 「そうだね。6月の日が良い日に挙げるらしいですよ」

 サトシ 「あの2人が結婚か……。考えてみると、ジムリーダー同士の結婚って初めて聞いた気がするな」

 シトロン 「そうですよね。あの当時から仲良さげでしたし、無事にゴールインってところですかね」

 ユリーカ 「サトシもセレナとゴールインするんだよね?」


 サトシ 「……例の負のエネルギー的な奴って、まだ残ってるのか?」

 ユリーカ 「ねぇサトシっ!」

 シトロン 「分かりませんが、少なくとも人間界への被害は聞かないですね」

 サトシ 「そっか。ゲッコウガとプニちゃんが頑張ってるってことだよな」

 シトロン 「えぇ。あの巨石が暴走した距離は かなりのものですから、負のエネルギーは相当な範囲に拡散してると思われます。それを全て駆逐するのは、そう簡単では無いでしょうし、まだゲッコウガたちが影で活躍してくれていると見るべきでしょうね」

 ユリーカ 「もー。鈍感が治ったと思ったら一気に奥手になっちゃうんだから!」
 ▼ 39 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:06:40 ID:rOVwVPc6 [11/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 シトロン 「まぁまぁユリーカ。サトシは久々にセレナと会うから緊張してるんだよ」

 サトシ 「いやいや。旅仲間と会うのに緊張なんてする訳ないだろ」

 ユリーカ 「じゃあ なんでセレナの話に、そんなに素っ気ないの?」

 サトシ 「いや、それはほら。セレナとキスしたこと思うと、なんか気まずいような気がして……」

 ユリーカ 「セレナが勇気を出してキスしたのに、気まずいなんてサトシひどいよ」

 サトシ 「いや勿論そんな悪い意味じゃないぞ。ただ……」

 ユリーカ 「はぁ。言い訳しない分、5年前のサトシの方が格好良かったな」

 サトシ 「うぅ……」

 シトロン 「だからユリーカ。サトシとセレナの問題に僕たちが首を突っ込んじゃダメだって」

 ユリーカ 「私はただ、落ち込んでるセレナに元気になって欲しいだけだもん」

 サトシ 「そこは安心しろって。ちゃんとセレナを励ますからさ」

 ユリーカ 「……頼むよサトシ」

 サトシ 「あぁ」

 ユリーカ 「ホントにホントだよ?」

 サトシ 「任せとけって。オレだって、セレナと話したいこと沢山あるからさ」
 ▼ 40 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:08:01 ID:rOVwVPc6 [12/13] NGネーム登録 NGID登録 報告
 シトロン 「……そうだサトシ。カロスの変化と言われて、これは話しておくべきかもしれません」

 サトシ 「どうした?」

 シトロン 「例の負のエネルギーとの関連性は低い……と言うより、僕は無関係だと思っていますが、今カロスで、ちょっとした事件が起きてるんです」

 サトシ 「事件?」

 シトロン 「はい。実は、極端に衰弱したポケモンが、多く見つかっているんです」

 サトシ 「衰弱したポケモンが……見つかる? どういうことだ?」

 シトロン 「その通り、森の中など人気(ひとけ)の無い所で、極端に衰弱したポケモンが保護されるんですよ」

 サトシ 「野生ってことか?」

 シトロン 「野生です。一応」

 サトシ 「“一応”?」

 シトロン 「順を追って話します。そもそも、野生ポケモンが衰弱した状態で保護されるのは、何も珍しいことではありません。野生に住む宿命みたいなものですから」

 サトシ 「あぁ。そんなポケモンたちを保護するために、ポケモンレンジャーが活動してるんだもんな」

 シトロン 「はい。……ですが、最近そのように保護されたポケモンが、明らかに、人工的な危害を加えられているんです」

 サトシ 「それって……ポケモン虐待ってことか!?」

 シトロン 「……言い方は悪いですが、虐待の方が、まだマシかもしれません」

 サトシ 「えっ?」

 シトロン 「保護されて、ポケモンセンターに運び込まれたポケモンの症状が……、遺伝子異常なんです」
 ▼ 41 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/29 01:08:30 ID:rOVwVPc6 [13/13] NGネーム登録 NGID登録 報告



続きは後日。



 ▼ 42 ルペコ@ももぼんぐり 20/03/29 06:10:22 ID:JHv6.CHE NGネーム登録 NGID登録 報告
おもしろ支援
 ▼ 43 ルビー@けいけんポン 20/03/29 16:12:13 ID:l6PkWZdY NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 44 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:47:40 ID:6E1cZumI [1/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「遺伝子異常……」

 シトロン 「先天性なものでは無く、明らかに人工的に引き起こされたものなんです」

 サトシ 「どうして分かるんだ?」

 シトロン 「保護された遺伝子異常のポケモン全てに、注射針の痕があったらしいんですよ」

 サトシ 「注射針って……、それ絶対に人間が絡んでるだろ!」

 シトロン 「えぇ。捜査も その前提で行われているようですが、未だに解決の糸口も見出していないみたいで……」

 サトシ 「その事件って、いつ頃から起こってるんだ?」

 シトロン 「確か……、1年くらい前からだったと」

 ユリーカ 「去年の夏だよ。セレナが防衛戦で負けちゃった頃だから、変によく覚えてる」

 サトシ 「そうなのか。1年以上も捜査して手がかり掴めないって、何か悪の組織的なのが絡んでるのかもな」

 シトロン 「そう考えるのが自然でしょうね」

 サトシ 「フレア団の連中は、まだ逮捕されたままだよな?」

 シトロン 「はい。5年で出てこられるような罪では無いですから、フレア団は無関係と見て良いでしょう」

 サトシ 「実はフラダリが復活した――、とかも無いよな?」

 シトロン 「考えたくありませんね」

 ユリーカ 「大丈夫だよ。あんなインパクトある おじさん、復活したら絶対に見つかっちゃうって」

 サトシ 「あ〜、確かにな」
 ▼ 45 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:49:10 ID:6E1cZumI [2/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 シトロン 「いずれにしても、この事件の犯人は、かなり用心深いと見れますね」

 サトシ 「そうだな。1年以上もポケモンを遺伝子異常にしてるって、普通じゃ何かしら足が付くはずだし」

 シトロン 「問題は、犯人は なにが目的で、こんなことをしているかです」

 ユリーカ 「そうだよ。今まで保護されたポケモンたち、みんな苦しんでるんだよ! こんなこと絶対に許せないよ!」

 サトシ 「オレも許せない。ポケモンの命をなんだと思ってるんだ!」

 シトロン 「えぇ。犯人は言わば、人体実験を している訳ですからね。何の罪もない野生ポケモンを使って」

 サトシ 「ホント、何が目的なんだろうな」

 シトロン 「遺伝子異常と注射痕――、ここから考えられることは、ポケモンに“何か”を注入して、“何か”を引き出そうとしているんじゃないでしょうか」

 サトシ 「何かを引き出す?」

 シトロン 「えぇ。例えば、“本来覚えないワザを覚えさせる”とか、“本来とは違うタイプを持たせる”とか」

 サトシ 「なるほど。なら、“強制的にポケモンの能力を上げようとした”とか、“強制的にポケモンの成長を早めた”とかも考えられるな」

 ユリーカ 「じゃあじゃあ、“メガシンカしないポケモンをメガシンカさせようとした”とかも有り得るよね?」

 シトロン 「そうだね。いずれにせよ、科学が進歩した現代なら、それらの実現が可能かもしれません。けどそれには、実験が必要です」

 サトシ 「科学で実現させるってことは否定しないけどさ、だったらちゃんと手続きを踏むべきだろ。勝手に実験して、実験の被害に遭ったポケモンを捨てるとか、正気の沙汰じゃない」

 シトロン 「同感です。仮に科学に携わる者が犯人だとしたら、科学を愛する者として許せません」

 ユリーカ 「私も絶対に許さない! ……デデンネがメガシンカ出来るかもって言うなら、ちょっと気になるけどね」
 ▼ 46 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:50:40 ID:6E1cZumI [3/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 シトロン 「今は警察の捜査を待ちましょう。一応、カロスのジムリーダーたちにも通達が来てて、何か気になることがあれば情報提供することになってるんです」

 サトシ 「そうなのか。……オレはまだ、そういう状況には遭ってないな」

 シトロン 「遭わない方が良いですよ。平和ってことですからね」

 サトシ 「確かにな」

 ユリーカ 「うん。平和が一番だよ」



サトシは座席に座り直して、一息つく。


いまシトロンから知らされた、野生ポケモンの遺伝子異常事件。

犯人の目的は分からないが、少なくとも1年以上前――、セレナが防衛戦に敗退した頃から起きているらしい。

しかし未だに、犯人は特定されていない。


野生ポケモンに対する虐待とも言える行為に、サトシは強い怒りを覚えた。

彼の性格やポケモンを好きな気持ちから、その怒りは当然のものだが、サトシは今、ジムリーダーという立場にいる。

チャレンジャーのバトルの腕前を評価することは勿論だが、こうしたポケモン絡みの事件の捜査に協力する面もあることから、2つの意味で、サトシは犯人を許せなかった。
 ▼ 47 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:51:29 ID:6E1cZumI [4/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



夕食が片付けられ、機内の照明が少し落とされた。消灯時間と言うことだろう。


 シトロン 「さぁ、そろそろ寝ましょう。カロスまであと10時間ほどありますが、時差の関係で、到着は朝の4時半ですからね」

 サトシ 「うぉ朝早いんだな」

 ユリーカ 「でも いっぱい寝れるから大丈夫だよ。夜ごはん美味しかった、朝ごはんも楽しみだね」

 シトロン 「そうだね。……あ、サトシ。座面ポケットに、アイマスクと耳栓が入ってますよ」

 サトシ 「あぁ、サンキュー」

 シトロン 「それじゃあ、おやすみなさい」

 ユリーカ 「おやすみー」

 サトシ 「おやすみ。明日は よろしくな」



シトロンとユリーカは、耳栓とアイマスクを装着して、座席をリクライニングし、眠る体勢に入った。


しかしサトシは まだ眠くないようで、イヤホンを取り出し、座面モニターの機内エンターテイメントサービスを試してみることに。

音楽やショッピングには興味が無いようで、映画の項目を手元のリモコンで眺めてみたが、洋画ばかりで、サトシの知っているタイトルは ほとんど無かった。
 ▼ 48 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:52:30 ID:6E1cZumI [5/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
結局サトシは、男子高校生と女子高校生の体が入れ替わってしまう、その当時大ヒットを喫したアニメ映画を見ることにした。


岐阜に彗星の破片が墜落して大惨事となる現実を、男女が協力して被害を最小限に食い止めるストーリーだが、なぜ女子と折り合いが悪かった彼女の父親が糸守に避難(訓練)指示を出したのか、当時は分からなかった。

しかし小説版を読んで納得、彼女の父親には、それなりの葛藤があったのである。

彼女の父親が、どのように彼女の母親と恋に落ち、結ばれ、そして、家を出て行ったのか。映画では語られなかった彼の内心は、非常に繊細なものだった。



そんな当時の記憶を呼び覚ましながら映画を流し見するサトシだが、不意に、服の袖が引っ張られた。



 ユリーカ 「ねぇサトシ……」

 サトシ 「ん……ユリーカ?」


サトシはイヤホンを外して隣を向く。

さっきまで眠る体勢だったユリーカは、アイマスクと耳栓を外して、静かにサトシを見つめていた。

シトロンは眠っているようで、どうやらユリーカは、兄が寝落ちるのを待っていたらしい。
 ▼ 49 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:55:01 ID:6E1cZumI [6/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ユリーカ 「サトシ、冗談抜きにさ、お願い」

 サトシ 「どうした?」

 ユリーカ 「セレナのこと……、お願い。セレナのこと、ちゃんと元気付けてあげてね」

 サトシ 「あぁ、分かってるよ」

 ユリーカ 「私ね、セレナとは、ちょこちょこ会ってたの。セレナがホウエンから帰って来てから、ずっと」

 サトシ 「そうだったのか」

 ユリーカ 「それでね、セレナ、ホウエンで いっぱいパワーアップしてきたみたいで、はじめの頃はね、すっごい活き活きしてたの」

 サトシ 「うん」

 ユリーカ 「帰って来て、ヤシオさんのところで いっぱいレッスンして。セレナすっごく頑張ったから、エルさんに勝って、念願のカロスクイーンになれたんだ」

 サトシ 「あぁ。オレもニュースで知ったよ」

 ユリーカ 「セレナね、クイーンになれたのもそうだけど、サトシから花束を貰って、すっごい喜んでたよ。“今までで一番嬉しい花束だよ”って、花を枯れなくする肥料みたいなのも買って、最後まで大事に飾ってたし」

 サトシ 「そっか。そんなに大切にしてくれたんなら、オレも送った甲斐あったな」

 ユリーカ 「でね。セレナ、“これでサトシに誇れるんだ”って。“サトシに相応しい、魅力的な女性になれた”って、本当に嬉しそうにしてたの」

 サトシ 「セレナ……、そんなこと言ってくれてたのか」

 ユリーカ 「うん」
 ▼ 50 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:56:30 ID:6E1cZumI [7/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「オレもさ、セレナに負けないようにって。セレナが夢を叶えたんだからオレも追いつこうって。そう思い続けて、ジムリーダーになれたんだよな。やっと一歩進んだよ。けど……」

 ユリーカ 「そのタイミングで、セレナ、防衛戦で負けちゃったんだよね……」

 サトシ 「あぁ。それでもセレナ、オレに お祝いしてくれて……。研究所でも言ったけど、複雑って言うか、セレナの気持ち考えたら、なんだか居た堪れないよな……」

 ユリーカ 「セレナ、ずっと元気ないの。近くに居ないと分からないと思うけど、本当にセレナ、ずっと落ち込んでるみたいで……、私、セレナのこと心配」

 サトシ 「そうだよな。セレナとユリーカ、姉妹みたいに仲良かったもんな」

 ユリーカ 「私が励ましても、セレナ全然変わらなくて……。もうサトシが励ますしか無いって思ってるの。だから私ね、同窓会に招待して貰えて、サトシをカロスに連れてきちゃおうって、お兄ちゃんには内緒だけど、考えてたんだ」

 サトシ 「そうだったのか」

 ユリーカ 「ごめんねサトシ。無理言っちゃって。それに……ありがとう」

 サトシ 「それを聞くのは、セレナを元気にさせてからだぜ?」

 ユリーカ 「……うん。そうだねっ」

 サトシ 「へへっ。オレに任せとけよ。……じゃあユリーカも早く寝た方が良いぞ。カントー来てトンボ帰りなんだし、疲れてるだろ?」

 ユリーカ (セレナがサトシを こんなに好きな理由、今なら私にも分かるかよ?)

 サトシ 「ん?」

 ユリーカ 「なんでもない。おやすみなさい、サトシ」

 サトシ 「あぁ。おやすみユリーカ」
 ▼ 51 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:57:51 ID:6E1cZumI [8/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


ユリーカがアイマスクと耳栓を付け、再び眠りにつくのをサトシは見守って、意識を映画に戻した。



黄昏時、山の頂上の御神体で、時空を超えて対面した少年と少女。

2人は互いに名前を忘れないようにと、ペンで手のひらに名を書こうとしたが――、その瞬間、黄昏時は終わってしまう。

けれども、やることを悟った彼女は山を駆け下り、糸守の集落に急ぐが、勢い余って転んでしまい、そうして目を向けた手のひらには――、“好き”という文字。



  サトシ (好き……、か)



ユリーカの言葉を聞いて、サトシの頭に映画の内容は、ほとんど入って来なかった。

セレナは5年経った今でも、サトシのことを想い続けている。会うのを楽しみにしている。

そんな彼女が今、ポカロンの防衛戦で敗退し、カロスクイーンの座を奪われ、落ち込んでいる。思い詰めている。

サトシに相応しい女性になれたと喜んだ期間は僅かだった訳で、その後、サトシがジムリーダーと言う地位に就いたことからも、セレナが どれだけ落ち込んでいるかは、想像するに容易い。


  サトシ (オレだって、カロスクイーンのセレナに恥じないようにって、頑張って来たんだ。……でもそれって、オレもセレナのこと、好きってことなのかな)
 ▼ 52 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:58:50 ID:6E1cZumI [9/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシにとって、セレナとの あのキスは、大きな出来事だった。

鈍感だった当時に考えていた意味合いとは全く別、異性に対する興味、知識が付いてきたからこそ、あのキスは、セレナを意識させずには いられなかった。


  サトシ (とにかく、これからセレナに会うんだ。セレナを励まして、久々に話して……、考えるのは、それからだな)


サトシはモニターの電源を落とすと、耳栓をはめて、座席をリクライニングさせた。


これから自分は、セレナに会う。

5年ぶりに、セレナと顔を合わせる。

けれど そのセレナは、防衛戦の敗退で、思い詰めている。

もしかすると、パフォーマンスがスランプになっている可能性もある。


そう考えると、サトシの中で、早くセレナに会いたいと言う感情が大きくなっていく。

あれだけ強いセレナが、ユリーカが言うほど落ち込んでいるというのは、サトシが想像している以上に、深刻なことなのかもしれない。



  サトシ (セレナ……)



そうして いつの間にか、サトシは眠りに落ちていた。



セレナとの再会まで、あと数時間――。




 ▼ 53 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/30 20:59:10 ID:6E1cZumI [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



続きは後日。



 ▼ 54 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/31 22:23:28 ID:BG26C8mY NGネーム登録 NGID登録 報告

< 訂正 >

>>50

 誤:ユリーカ (セレナがサトシを こんなに好きな理由、今なら私にも分かるかよ?)

 正:ユリーカ (セレナがサトシを こんなに好きな理由、今なら私にも分かるよ?)

 ▼ 55 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 22:43:30 ID:PM6UjWwY [1/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


【 V 】



翌日、午前4時半。



 サトシ 「着いたー! 懐かしのカロス地方!」

 ユリーカ 「私たちは1日ぶりだね」

 シトロン 「時差を考えると1日も経ってないけどね」


サトシたちを乗せた飛行機は、無事にカロスに下り立った。

手続きと荷物回収を済ませても、まだ朝の5時。空港なので人の動きは活発だが、まだまだ街は眠っている時間だ。


 シトロン 「とりあえず、僕たちの家に行きましょう。セレナと会うのは、もう少し時間を置いてからでないと」

 サトシ 「そうだな。……あ、でもこんな朝早くから行くの、リモーネさんに悪いよ」

 ユリーカ 「大丈夫。パパは今ね、電気工事の大きい仕事があるからって、家に居ないんだ」

 サトシ 「そうなのか?」

 シトロン 「えぇ。仕事場はミアレ市内なんですけど、規模が大きい工事なので、1週間くらい、現地で寝泊まりしてるんですよ」

 サトシ 「そうなのか。大変だな」

 ユリーカ 「だから遠慮いらないよサトシ」

 サトシ 「サンキュー。じゃあ、ちょっと お邪魔させて貰うぜ」
 ▼ 56 ロッパフ@するどいキバ 20/04/01 22:56:51 ID:xg26r8G6 NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシがんばれ。そのまま一気にシトロンに唇を奪うんだ
 ▼ 57 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:47:02 ID:PM6UjWwY [2/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ユリーカ 「タクシー乗り場あっちだよ! ふふっ、ピカチュウ競争!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」

 デデンネ 「でねねぇ!」



 サトシ 「相変わらず元気だなユリーカは」

 シトロン 「毒舌も増しましたけどね」

 サトシ 「ははは……」

 シトロン 「そうだ。一応サトシに、これを渡しておきますね」


タクシー乗り場へ駆けて行くユリーカを確認し、シトロンはサトシに、小さな紙袋を差し出した。


 サトシ 「なんだこれ?」 ガサゴソ

 シトロン 「久しぶりにカロスに来た記念です」

 サトシ 「……いや待てよ。流石にこんなもの受け取れないぞ」

 シトロン 「まぁまぁ。持っていて損は無いでしょう」


  ユリーカ 「サトシー! お兄ちゃーん!」


 シトロン 「いま行きますよー! ほらサトシ」

 サトシ 「あぁ」


 ▼ 58 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:48:03 ID:PM6UjWwY [3/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



シトロンの家に着いたサトシたちは、簡単な朝食を食べながら、リビングで寛ぐ。

他愛の無い会話、旅をしてた頃の話や、ミアレジムの話など、現地に着いてからも、久しぶりの再会であれば話題は尽きない。

そうこうしているうちに、時刻は9時をまわる。



 ユリーカ 「……じゃあ、そろそろ行こうよ」

 シトロン 「そうだね」

 サトシ 「いよいよセレナと会えるんだな」



前日、飛行機に乗る前、ユリーカはセレナと連絡を取っていたらしい。


もともとユリーカは、この日、同窓会でサトシに会いに行くことを、セレナに伝えていた。

例の理由でセレナは同窓会への参加を見送ってしまったようだが、彼女にとって、サトシの近況は、とても気になることだろう。

そこでユリーカは、“カントーのお土産と、サトシに関する土産話”を渡す名目で、セレナに会う約束を取り付けていたのだ。


それが今日、これから。
 ▼ 59 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:50:25 ID:PM6UjWwY [4/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「まさか こうやってカロスで4人集まるなんて、考えてもみなかったなぁ」

 シトロン 「サトシもジムが忙しいですからね」

 サトシ 「あ、ミアレジムの視察って名目だから、ジムにも行かないとな」

 シトロン 「そうですね」

 ユリーカ 「でもでも、サトシはミアレジムに挑戦したことあるんだから、ちょっと見れば分かるでしょ? セレナとの時間を大切にしないと!」

 サトシ 「あぁ。……4人で旅した時の話で盛り上がりたいけど、まずはセレナを元気付けないとな」

 シトロン 「はい。そのためにサトシが一緒なんですから」

 ユリーカ 「」 ニヤッ


 サトシ 「それで……、セレナが ここに来るのか?」

 ユリーカ 「ううん。カフェで待ち合わせしてるんだ」

 サトシ 「カフェか。有名なところなのか?」

 シトロン 「有名では無いですが、隠れた名店だと思いますよ。リリアさんと一緒に行ったんですけど、そこのカフェラテが絶品でしたから」

 ユリーカ 「セレナって元カロスクイーンだから、人目を気にするみたいなの。だから、あんまり有名なお店より、知られてない所の方が良いかなって」

 サトシ 「確かにそうだよな」

 シトロン 「以前 僕たちが行った時は貸切状態でしたから、今日も この時間なら誰も居ませんよ」

 サトシ 「そっか。なら安心だな」

 ユリーカ 「ふふっ。ジムリーダーが2人と、元カロスクイーンが来るなんて、お店の人もビックリしちゃうね」

 シトロン 「そうだね。けど、マスターも その辺は分かってるみたいだから、普通に接してくれると思うよ」

 サトシ 「それじゃあ早く行こうぜ、そのカフェに!」
 ▼ 60 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:51:35 ID:PM6UjWwY [5/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


シトロンの家を出て、タクシーを走らせること約10分。

メインの通りから路地を入って しばらく。ビルの一角に、そのカフェは あった。


植木とプランターに囲まれた、見落としてしまいそうな入口。

そこに大きな看板は無く、木目調のドアのガラスに、コーヒーカップが描かれただけの店。

シトロンが“隠れた名店”と言ったことも頷ける、ひっそりと佇むカフェだった。


 サトシ 「ここか」

 シトロン 「はい。雰囲気出てると思いませんか?」

 サトシ 「あぁ。よくこんなとこ見つけたな」

 ユリーカ 「ホント。お兄ちゃんね、リリアさんと お付き合い始めてから、急に こういうとこマメになったんだよ」

 シトロン 「そりゃぁ、男として良いとこ見せたいですし」

 ユリーカ 「サトシ。ここだけは お兄ちゃん見習わなきゅダメだよ?」

 シトロン 「“ここだけ”は無いだろユリーカ」

 ユリーカ 「ふふ〜ん。……あ、そうだサトシ。入る前に、ちょっと良い?」
 ▼ 61 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:52:29 ID:PM6UjWwY [6/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 サトシ 「どうした?」

 ユリーカ 「セレナにはね、カントーの お土産を持って行くって伝えてあるの。……セレナのことだから、お土産よりサトシに会った感想の方を楽しみにしてると思うけどね」

 サトシ 「あぁ」

 ユリーカ 「でもユリーカ、カントーの お土産、買ってないんだ」

 サトシ 「そっか。2人はトンボ返りだったもんな」

 ユリーカ 「だからサトシ。カフェに入ったら、そ〜っとセレナに近付いて、驚かしちゃおうよ」

 サトシ 「驚かす……。うーん、アリっちゃアリだけど、落ち込んでるセレナに対して、いきなり驚かすのは……」

 ユリーカ 「別に“わっ!”とか そういう驚かし方じゃないよ。 “振り向いたらサトシが居た”って、最高のサプライズだと思わない?」

 シトロン 「なるほど。それがユリーカの考える“お土産”ですか」

 ユリーカ 「そういうことっ」

 サトシ 「へへっ。良いぜ。ユリーカのシナリオに任せるよ」

 ユリーカ 「ありがとう。それじゃあ、サトシはセレナに○○○して、私が…………」



 シトロン 「これはセレナの反応が楽しみですね」



 ▼ 62 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:53:27 ID:PM6UjWwY [7/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
入口のドアを開ける。

外観の割に、中は そこそこの広さがある。カウンターが5席と、テーブル席が4セット。

テーブルの間には観葉植物が置かれていて、ちょっとした個室のような雰囲気もある。ある意味“お忍び”に もってこいだ。


正面のカウンターで、白髪のマスターがコーヒーカップを磨いていた。

マスターは、サトシたちと一瞬だけ目を合わせると、優しそうな表情で会釈し、またコーヒーカップに手を戻した。

決して不愛想とかでは無く、極力干渉しないと言うか、“客のプライバシーを大切にします”と語っているようだった。



そして、観葉植物に囲まれた、一番奥のテーブル席。

こちらに背を向けて座っている、1人の少女。


 サトシ (セレナ……)


思わず声が出そうになったところを、サトシはグッと抑える。サプライズが台無しになるところだった。

ユリーカがニヤリと笑みを浮かべ、そっとセレナに近付く。


サトシもユリーカに続く。


そして作戦通り、セレナの背後から手を伸ばして、彼女を目隠しした。
 ▼ 63 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:54:34 ID:PM6UjWwY [8/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 セレナ 「ぇっ!?」


一瞬ビクッとするセレナだが、すぐにユリーカがフォローを入れた。


 ユリーカ 「だ〜れだ?」

 セレナ 「……ふふっ。も〜」


あぁ、これじゃあ、まさか自分が後ろに居るとは思わないだろうな――とサトシは思う。

そして、これから振り向くであろうセレナを、どんな表情で迎えればいいか、少し考え、けれど、あの頃と同じが一番だと気付き、ユリーカと目配せした。



 セレナ 「お帰りユリーカ。サトシの同窓会、楽しかっ――」



サトシの手を するりと抜けて振り向いたセレナは、硬直した。

人間は本当に驚いた時、思わず動けなくなるんだと、その時サトシは実感した。


 ユリーカ 「セレナ、約束通り、“お土産”持ってきたよっ」 ニヤニヤ

 シトロン 「いやぁ、どんなお土産が良いか、悩みましたもんね〜」 ニヤニヤ


棒読み感がワザとらしいなとサトシは思ったが、久しぶりに対面したセレナの前では、そんな茶番なんて どうでもいい。

彼女の姿を目にしたサトシの中に、様々な感情が溢れ出て来ているからだ。
 ▼ 64 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:56:20 ID:PM6UjWwY [9/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


 サトシ (セレナ、大人っぽくなってる……)


声のトーンは、5年前と変わらない。

綺麗な金髪も、5年前と変わらないショートボブ。ただ、ニュースで見た1年前の彼女はロングヘアだったので、最近になって切ったのだろう。

顔はと言うと、サトシの第一印象は、“大人っぽい雰囲気”。

幼さは薄れたが、ふわっとした可愛らしさは当時の面影を残し、艶のある頬は、何とも言えない色っぽさを出している。



それはもう、間違いなく、“魅力的な女性”だった。



 セレナ 「ぇっ……ぁっ、うそっ……サトシ……?」


 サトシ 「あぁ。久しぶりだな、セレナっ!」




   ― 続く ―


 ▼ 65 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/01 23:57:00 ID:PM6UjWwY [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



前作の再掲ここまで。

続きは後日。



 ▼ 66 ーランド@ずがいのカセキ 20/04/02 11:02:00 ID:4xwwn9Rg NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 67 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 02:53:18 ID:0Nr.Lxcc [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告





 話は、1週間ほど前に遡る。





 ▼ 68 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 02:54:18 ID:0Nr.Lxcc [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告


【 1 】



 セレナ(18) 「はぁ……」

 テールナー 「てんな……」

 ヤンチャム 「ちゃむ!」

 ニンフィア 「ふぃぁぁ」

 セレナ 「……ごめんね、みんな。せっかく優勝したんだから、喜ばないとダメだよね」


私は今、ポケモンセンターのベッドに横たわっている。


ベッドの下で、テールナー、ヤンチャム、ニンフィアが、心配そうに私を気遣ってくれている。

この日、私はコボクタウンで開催されたトライポカロンに出場して、優勝した。

これでプリンセスキーは3つ。マスタークラスへの出場権を手に入れることが出来た訳だけど……。


それでも私は、憂鬱だった。


あの頃に――、サトシたちと一緒に旅していた、5年前に戻りたい。

カロスクイーンになるって言う夢を追いかけていた あの頃に。

大好きなサトシと一緒に旅して、新鮮でドキドキだった あの頃に。


かと言って、サトシに会いたいかと聞かれれば、会いたくない……ううん、“会えない”、“会わせる顔が無い”が正解かな。

だって私は、もう、カロスクイーンに なれないかもしれないから……。
 ▼ 69 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 02:56:12 ID:0Nr.Lxcc [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
去年、私はトライポカロンのマスタークラスに出場して、カロスクイーンのエルさんに勝利した。

ずっと憧れてたエルさんにパフォーマンスで勝利して、晴れて私は、夢だったカロスクイーンの座に立つことができた。


あの時は本当に嬉しかった。

嬉し涙を流して、一緒に頑張ってくれたテールナー、ヤンチャム、ニンフィアと抱き合って、エルさんとも抱き合って……。


夢を叶えたことで、私は多分、サトシに誇れる女の子になれたと思う。

サトシの隣に立つのに恥じない存在に、私は なれたと思う。

カロスクイーンになれたのと同じくらい、それは私にとって嬉しいことだった。



でも……。

私の人生の歯車が、そこから狂い始める。


とあるポケモン研究グループが、私に接触してきた。

10代後半から20代前半の、まさしく私と同年代のメンバーから成る若い研究グループ。


私は そのグループに、弱みを握られてしまった。

世間に知られたら、それこそカロスクイーンを続けられることが出来なくなるような、大きな弱みを。



そんな状態で、最高のパフォーマンスなんて、出来る訳がなかった。



 ▼ 70 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 02:57:26 ID:0Nr.Lxcc [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

今年――って言っても、もう半年前のことだけど、私はカロスクイーンとして、初めての防衛戦に挑んだ。

トライポカロン・マスタークラスの決勝戦に勝ち進んだパフォーマーと戦う、去年のエルさんの立場。



……結果は最初から見えていた。



悩みを抱えた状態のパフォーマンスなんかじゃ、みんなを笑顔にすることは出来ない。

普通レベルのパフォーマンスじゃ、みんなを感動させることなんて出来ない。



私は、カロスクイーンの座を守れなかった。

挑戦者に破れて、たった1年で、カロスクイーンの座から去ることになった。


私がクイーンとして最高のコンディションで活動できたのは、ほんの短い間で終わってしまった。
 ▼ 71 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 02:58:54 ID:0Nr.Lxcc [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
それから間もなくして、サトシがジムリーダーに就任したというニュースが飛びこんできた。


サトシは とある地方のポケモンリーグで優勝して、そのタイミングでジムリーダーの欠員が出たから、サトシに声が掛かったみたい。

そのこと自体は とっても嬉しいけど、なんだか ますます自分が情けなくなって、私は ずっと複雑な気持ちで居る。


サトシに負けないように頑張ろうにも、不安が募るばかりで、パフォーマンスの練習にも身が入らない。

次のマスタークラスに向けてポカロンに出場して、それなりのパフォーマンスは出来るけど、満点とは決して言えない。

現に今、3回目のポカロン優勝を果たしたけど、これまで5回も敗退している。

これは元カロスクイーンとして、褒められる戦績では無かった。



そうして私がスランプに陥っている間に、サトシのジムリーダーとしての評判は、グングンと上がって行った。

“リーグ優勝からジムリーダーにスカウト”と言うサトシの経歴は、正に一般トレーナーの希望の星。

そこにサトシの熱いバトルとなれば、評判が上がるのは当然のことだった。



とある雑誌のアンケートコーナーでは、次のような結果まで出ている。


 ▼ 72 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 02:59:51 ID:0Nr.Lxcc [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

<アンケート>(抜粋)


◆ 男子に人気のジムリーダー、ベスト5!

 1位 : フウロ

 2位 : スズナ

 3位 : アカネ

 4位 : ツクシ

 5位 : ミカン


◆ 女子に人気のジムリーダー、ベスト5!

 1位 : マツバ

 2位 : ミクリ

 3位 : サトシ

 4位 : デンジ

 5位 : トウキ


◆ 熱いバトルのジムリーダー、ベスト5!

 1位 : アスナ

 2位 : サトシ

 3位 : コルニ

 4位 : スズナ

 5位 : マキシ


◆ ミステリアスなジムリーダー、ベスト5!

 1位 : ゴジカ

 2位 : アーティ

 3位 : マツバ

 4位 : ナツメ

 5位 : マーシュ
 ▼ 73 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 03:01:00 ID:0Nr.Lxcc [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
◆ 一緒に働いてみたい(門下生になりたい)ジムリーダー、ベスト5! <男女混合回答>


 1位 : サトシ

 ┗ とにかく熱いバトルが気持ち良い。こんな人と特訓して強くなりたい!

 ┗ リーグ優勝からのスカウトは、まさしく一般トレーナーの希望の星!

 ┗ 熱いバトルに可愛いピカチュウのギャップにキュンとしちゃう!


 2位 : カミツレ

 ┗ ジムが遊園地って最高!

 ┗ モデルのジムリーダーなんて斬新だし素敵!

 ┗ 魅力的なボディからのダジャレは笑う。


 3位 : コルニ

 ┗ メガシンカと深い関わりを持つ由緒正しきジムだから。

 ┗ ルカリオとの深い絆を見て、自分もそんな風になりたいって思った。

 ┗ 強さ、熱さ、活発さが揃ったコルニは、まさにジムリーダーって感じ!


 4位 : ホミカ

 ┗ バンドのジムは盛り上がる!

 ┗ 毒ポケ使いの女の子ってのがシビれる!

 ┗ チャレンジャーにモモンの実を提供する優しさに惹かれました。


 5位 : マーシュ

 ┗ バトルフィールドの大型スクリーンが幻想的。

 ┗ 振袖が可愛い! 私も振袖でバトルしたい!

 ┗ ポケモンと話せるようになれるかも!


 ▼ 74 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 03:01:51 ID:0Nr.Lxcc [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告


まだジムリーダーとしての経歴が浅いサトシは、女子からの人気が急上昇しているらしい。

それは私を、たまらなく不安にさせる。


だってサトシは、私の憧れの人。初恋の人。

サトシ以外を好きになるなんて考えられないのに、サトシに興味を持っている女の子は、沢山居る――。

そのことは、ただでさえ思い悩んでいる私の精神を、さらに追い詰める。


勿論、サトシが他の女の子を好きになるのは自由だし、私にそれを止める権利は無い。

でも、私はサトシが有名になる ずっと、ずーっと前から、サトシに憧れていた。一緒に旅もした仲だ。

それなのに、それなのに……。



  スマホ ≪ピッカチュ ピッカチュ ピッカッチュー♪≫


 セレナ 「……メールだ」

 ▼ 75 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 03:03:42 ID:0Nr.Lxcc [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
メールの相手は、ユリーカ(13)だった。


ユリーカとは、旅が終わってからも連絡を取り合っている。

私がホウエンから帰って来た後は、頻繁に会って女子トークに花を咲かせている。

相変わらず私とサトシの関係を つついてくるけど、私がスランプに陥ってからは、そういう話はトーンダウン。

有難いような、気を遣わせちゃって悪いようなで、こういう所でも、私は複雑な気持ちに ならざるを得なかった。



 “明日会えない?”



メールには、短く、それだけ書かれていた。

今日はコボクタウンに泊まるけど、それはポカロンの開催時間の都合で、明日の朝一には家に帰ろうと思っていた。

高速バスを使えば昼前にはミアレに着くだろうし、一緒にランチかな。


 セレナ 「“じゃあ、明日の12時半くらいに、どこかのカフェで会う?”――送信っと」



ユリーカと“頻繁に”会えている理由は、私がミアレに住んでいるから。


去年カロスクイーンになった私は、色んなお仕事が入るから、ヤシオさんの勧めで、ミアレで一人暮らしをしている。

防衛戦に敗れてしまった今も。

実家に帰ったら甘えちゃいそうだし、それに、たった1年で夢が崩れてしまって、ママに会わせる顔が無いからだ。
 ▼ 76 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 03:04:52 ID:0Nr.Lxcc [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告


 『さて! 続いてのコーナーは、いま話題沸騰中の新カロスクイーンが登場です!』

 『彼女がカロスクイーンになるまでの軌跡を、密着独自取材! 華々しい活躍の裏に隠された苦労と努力とは……?』

 『そして、新たなパフォーマンスをスタジオで披露して貰うコーナーも!』



テレビでは、今日も新カロスクイーンの特番が組まれている。

キラキラした笑顔が眩しい彼女は、ちょっと天然で、誰からも好かれるタイプの子。バラエティーやクイズ番組でも見かけることがある。


去年の私も色んなメディアから取材を受けたけど、彼女は私以上にメディアに露出している。

恥ずかしがってバラエティーを断った私とは大違いだ。



  スマホ ≪ピッカチュ ピッカチュ ピッカッチュー♪≫



ユリーカからの返信を確認して、私は早めに眠りについた。



朝、目が覚めた時、全てが解決してくれていれば良いのに――。


そんな虚しい願望を抱くの、今日で何日目だろうか。


 ▼ 77 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/04 03:05:20 ID:0Nr.Lxcc [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告



続きは後日。



 ▼ 78 ザード@イワZ 20/04/05 14:16:02 ID:p6k..8f2 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
セレナきた
 ▼ 79 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/05 15:15:32 ID:/mmostDY [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


ミアレシティ、ローズ広場。

カフェ・紅葉の泣きあと。



 ユリーカ(13)「美味しいピザだったね」

 セレナ 「うん。良いカフェ見つけたわねユリーカ」

 ユリーカ 「えへへっ」


内装が赤でまとめられた新しいカフェのおすすめメニュー、新鮮トマトのピザは、絶妙な焼き加減の香ばしさとトマトの甘みがマッチして、とっても美味しかった。

美味しいものを食べると自然と笑顔になれる。こうしてユリーカと一緒にランチするのは、今の私の数少ない楽しみでもあった。


 ユリーカ 「それでね、セレナ。今度の日曜日って空いてる?」

 セレナ 「日曜日? どうだったかな……」

 ユリーカ 「とっても素敵な お話があるの!」
 ▼ 80 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/05 15:18:48 ID:/mmostDY [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
私がスケジュール帳を確認している間にも、ユリーカは会話を続ける。

素敵、という表現を裏付けるように、目をキラキラさせながら。


 セレナ 「素敵な?」

 ユリーカ 「うん。……セレナ、サトシに会いたいよね?」

 セレナ 「えっ……どうしたのユリーカ急に」

 ユリーカ 「ふふーん。実はね、今までサトシと一緒に旅した仲間で集まろうって、連絡が来たの」

 セレナ 「えぇっ!? サトシから!?」

 ユリーカ 「ううん。ソムリエさん……ってセレナは知らないよね」

 セレナ 「ソムリエさん?」

 ユリーカ 「私たちも たまたま知り合ったんだけど、その人が実はサトシと旅したことがあって、集まろうって連絡くれたんだ」

 セレナ 「そうなんだ」

 ユリーカ 「ソムリエさんの感じだと、サトシの仲間が いっぱい来るらしいよ。ねぇセレナっ。今度の日曜日、行くでしょ?」


サトシの旅仲間が集まる……同窓会みたいなものかな。

ユリーカが急に私と会いたいって言ったのは、サトシの同窓会に誘ってくれるためだったのね。


でも……。

 ▼ 81 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/05 15:23:09 ID:/mmostDY [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

 ユリーカ 「ちょっと急な話だけど、久々にサトシと会えるチャンスだよ」

 セレナ 「でも私……、こんな状況じゃ、会えないよ……」

 ユリーカ 「なに言ってるのセレナ! こんな状況だから気分転換も必要だよ。サトシと会えるなんて、セレナにとって最高の気分転換でしょ」

 セレナ 「そうだけど……」

 ユリーカ 「迷うようなことじゃ無いよ〜」

 セレナ 「……でもね。私、サトシと約束したの。“次に会う時は、もっともっと、魅力的な女性になる”って」

 ユリーカ 「覚えてるよ。キスまでしたんだから」

 セレナ 「キっ……言わないでユリーカ。あれホントに恥ずかしかったんだから ///」

 ユリーカ 「ふ〜ん。じゃあやっぱり行かないと。キスの感想、ちゃんとサトシに聞かないと〜」

 セレナ 「ダメ。だって私、まだまだ魅力的な女性になれてないもん」

 ユリーカ 「セレナすっごい魅力的だよ! 綺麗だし、優しいし、胸も おっきくなってるし」

 セレナ 「違うの。カロスクイーンから落ちちゃったばっかりで、サトシに会わせる顔がないよ……」

 ユリーカ 「もー。サトシは そんなこと気にしないって。セレナも分かるでしょ?」

 セレナ 「そうだけど……」
 ▼ 82 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/05 15:26:43 ID:/mmostDY [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

サトシと最後に連絡を取り合ったのは、半年くらい前になる。

サトシが新ジムリーダーになったって知って、お祝いにクッキーとマカロンを送った。手紙を添えて。


でもその時の私は、カロスクイーンの防衛戦に敗れた直後で。

弱みを握られた例のグループの問題も、全然解決の糸口が見えなくて。

不安で、悔しくて、情けなくて、本当は手紙を送ることさえ躊躇ったけど、でも、サトシがジムリーダーになったお祝いをしたいって気持ちが僅かに勝って、勇気を出して手紙を送った。


サトシはジムリーダーになった。サトシの夢に、一歩近づいた。

私はカロスクイーンから転落した。私の夢は、儚く潰えてしまった。


手紙を書くペン先が震えたのを、今でも覚えている。


サトシから返事は貰ったけど、それ以降、サトシと連絡は取っていない。

サトシの当面の所在――トウエツ地方イフクジム――が分かったのだから、連絡することも、それこそ会いに行くことだって可能だけど、出来なかった。

こんな情けない私の姿、サトシに見せる訳にはいかなかった。


魅力的な女性になるって、誓ったはずなのに。
 ▼ 83 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/05 15:27:23 ID:/mmostDY [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ユリーカ 「セレナ、最近なんだか暗いんだもん。リフレッシュしないとダメだよ」

 セレナ 「うん……」

 ユリーカ 「防衛戦で負けても、また勝てば良いんだよ! だからセレナ、またポカロンに参加してるんでしょ」

 セレナ 「そうだけど……ダメなの」

 ユリーカ 「ダメ?」


弱みを握られていることは、たとえ親しいユリーカでも、話すことは出来ない。

当然、サナにも、ミルフィにも。


 セレナ 「本当にごめんね、ユリーカ。ありがとう。わざわざ誘ってくれて」

 ユリーカ 「セレナ……」

 セレナ 「ユリーカだけでも楽しんで来てよ。サトシのお話しを聞かせてくれるだけで、私は満足だから、ね」


 ▼ 84 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/05 15:28:46 ID:/mmostDY [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告



家に帰り、ベッドに横たわり、私は溜め息をついた。



どうして、こんなことになってしまったんだろう。

どうして、私がこんな目に遭わなくちゃいけないんだろう。


私は、夢に向かって歩んで来ただけなのに。

私は、魅力的な女性になることを目指していただけなのに。



1年半前。

エルさんに勝利して、新カロスクイーンの仕事や立ち振る舞いに、ようやく慣れてきた頃だった。



そんな私を襲った出来事は――、

今もなお、私の意思を、私の心を、雁字搦めに縛りつけている。





 ▼ 85 トーボー@くろぼんぐり 20/04/05 21:22:13 ID:MKjsMxZE NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
フレア団関連か?
 ▼ 86 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/06 01:53:25 ID:rSMQxeNw [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


【 2 】



ホウエン地方から帰って来た私は、ヤシオさんの元――ヤシオプロダクションを訪ねた。


あの時――初めてマスタークラスに挑んだ後。

サトシたちとの旅を遣り遂げて、納得できる答えを見つけたいという理由で、私はヤシオさんの誘いを断った。


「元カロスクイーンであり、数々のパフォーマーを世に送り出した伝説のプロデューサー」と呼ばれるヤシオさんの誘いを断るなんて、罰当たりも良いところだったけど、ヤシオさんは、私の意思を尊重してくれた。

そして、ホウエンから帰って来た私を、迎え入れてくれた。


ヤシオさんの指導のもと、厳しいレッスン、パフォーマンスのイロハ、カロスクイーンたる心構えなど、色々なことを教わった。

時に辛く、挫折しかけたこともあったけど、自分がエルさんと同じ道を歩んでいると考えれば、挫ける訳にはいかない。

テールナーも、ヤンチャムも、ニンフィアも、厳しいレッスンに ついてきてくれた。


そうして迎えた、トライポカロン・マスタークラス。

その大舞台で、私は遂にエルさんに勝利して、新カロスクイーンの座に立つことが出来たのだ。


私の夢が叶った瞬間だった。

サトシたちと旅したことで見つけた私の夢を、自分の手で掴んだ瞬間だった。
 ▼ 87 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/06 01:56:20 ID:rSMQxeNw [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
新カロスクイーンとなった私は、一人前のポケモンパフォーマー。

毎年行われるマスタークラスの防衛戦に加えて、各地でのエキシビジョンや、CM撮影など、忙しい日々になる。


ヤシオさんは、パフォーマーのプロデュース、すなわち“カロスクイーンになるまで”が仕事だから、私はヤシオさんの元を離れることになった。

それはエルさんも同じ。今でもエルさんは、ヤシオさんのことを「先生」と呼んで、近況報告しているらしい。


余談だけど、エルさんはポケモンスタイリストに転向して、第二の人生を歩んでいる。

元々20歳までにスタイリストになるという目標を持っていたらしく、きちんと人生設計しているエルさんは、やっぱり尊敬できる。



事後処理や、関係者へのお礼参りを済ませて、私がヤシオプロダクションを退所する日。

まさしくそのギリギリのタイミングで、私宛に、花束が届いた。


 ヤシオ 「あら、素敵な花束ね。ファンからかしら?」

 セレナ 「まだまだ私は……えっ!? サトシから!?」

 ヤシオ 「一緒に旅してた子だったわね」

 セレナ 「はい! そっか……サトシ、私がカロスクイーンになったこと、見ててくれたんだ」

 ヤシオ 「貴方の活躍は、他の地方でもニュースになってるわ。長年カロスクイーンだったエルに勝利した――それって偉業なのよ」
 ▼ 88 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/06 02:01:07 ID:rSMQxeNw [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


バラ、ガーベラ、カーネーション、トルコキキョウなど、ピンク系統の可愛らしい花をアレンジメントした花束。

そこに青いリボンと、メッセージカードが添えられていた。





 セレナ、カロスクイーンおめでとう!

 とうとうセレナの夢を叶えたんだよな。

 これからクイーンとして大変だろうけど、セレナなら大丈夫。頑張れよ!

 オレもポケモンマスター目指して突き進んでいくぜ!





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 ▼ 89 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/06 02:05:42 ID:rSMQxeNw [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


この日から私は、ミアレシティで一人暮らしすることになる。

アサメタウンのような田舎だとクイーンとしての仕事に不便だからって、ヤシオさんが勧めてくれた。


サトシから貰った花束は、しばらく、リビングで私の心を癒してくれた。


お礼をしたかったけど、花束はネット注文のもので、何を勘違いしたのか、サトシ、送り主の欄にもヤシオプロダクションの住所を書いていて、肝心のサトシへの返事元が分からなかった。

けど、ネット注文のギフトと言うことは、サトシは何処かを旅してるってことだと思う。

サトシも夢に向かって頑張っている。

私だって、カロスクイーンになれたことがゴールじゃない。

私たちのパフォーマンスを通じて、たくさんの人を笑顔にさせたい。エルさんみたいな“与える存在”になりたい。


もっともっと、頑張らないと。

これまで以上に、頑張らないと。


そして、魅力的な女性にならないと。

鈍感なサトシが振り向いてくれるくらい、魅力的な女性に――。
 ▼ 90 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/06 02:10:50 ID:rSMQxeNw [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告



いま思うと、この時が、一番幸せな時だったかもしれない。

カロスクイーンになれて、サトシに相応しい女性に一歩近付けたと喜んだ、この時が。


この3か月後に、私の日常は、一変してしまった。



 ▼ 91 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/06 02:11:11 ID:rSMQxeNw [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告



続きは後日。



 ▼ 92 トベター@フリーズカセット 20/04/06 08:35:18 ID:mUAE2cWU NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
しえん
 ▼ 93 ニガメ@オッカのみ 20/04/06 15:48:13 ID:xTJUthiI NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 94 カルゲ@サイキックメモリ 20/04/07 16:47:54 ID:j6HQPDSM NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 95 マガル@ちからのねっこ 20/04/08 17:28:44 ID:9XnEWiXU NGネーム登録 NGID登録 m 報告
しえん
 ▼ 96 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:15:25 ID:8P4IHSdg [1/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



カロスクイーンになって3カ月。

クイーンとしての仕事、立ち振る舞いにも、だいぶ慣れてきた頃だった。


この日、私は とある大学の学園祭で、パフォーマンスを披露した。勿論、お仕事として。

そのパフォーマンスは無事に終わり、控室で帰る準備をしていると、女の子が1人、入って来た。


 *** 「あのっ、セレナさん!」

 セレナ 「はい……なんでしょう?」

 *** 「私、サミコって言います。この大学の新1年生で、セレナさんのステージ、最高でした!」

 セレナ 「ふふっ、ありがとうございます」

 サミコ 「実は、急なことで申し訳ないんですけど、セレナさんに お願いがあるんです」

 セレナ 「お願い……ですか?」

 サミコ 「私、とあるポケモン研究グループに所属しているんです」

 セレナ 「研究グループ? この大学のサークルですか?」

 サミコ 「いえ。色んな大学のメンバーで構成されてる……有志の研究グループです」

 セレナ 「凄いですね。有志の研究グループなんて」

 サミコ 「それで、その研究グループに、是非ともセレナさんを招待したいなって」

 セレナ 「私を?」

 サミコ 「私たち、ポケモンのメガシンカについて研究してるんです」
 ▼ 97 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:16:04 ID:8P4IHSdg [2/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼女――サミコさんは、研究について話を続ける。



何故ポケモンはメガシンカするのか。何故メガシンカするポケモンがいるのか。

メガシンカするポケモンの多くは、最終進化系や、元から高い能力を持っている。

何故、元から強いポケモンが、さらに強くメガシンカするのか――、そのメカニズムを明らかにしたい。

そして、それが明らかになれば、現在メガシンカが発見されていないポケモンも、メガシンカできるようになるのではないか。

弱者に分類されるポケモンであっても、メガシンカすれば強くなる。生態系の下位のポケモンも、強くなることができる。

これまで強者に怯えて暮らして来た弱者の野生ポケモンが、もう怯えなくて済む。縄張り争いや食糧調達に苦労しなくて済む。

全てのポケモンが平等に暮らしていける環境を実現させたい――。


研究グループの目標は、“全てのポケモンをメガシンカさせること”である。



 ▼ 98 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:18:50 ID:8P4IHSdg [3/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 セレナ 「確かにメガシンカするポケモンって、元から強いポケモンが多いですもんね」

 サミコ 「メガシンカのメカニズムを明らかにして、全てのポケモンをメガシンカさせる。そして、野生ポケモン達に平等な生息環境を提供する――。これを目指してるんです」

 セレナ 「凄いです。本当にポケモンのためを思った研究なんですね」

 サミコ 「けど……、現実は、そんなに簡単ではないんです」

 セレナ 「えっ?」

 サミコ 「私たちは、あくまで有志の研究グループです。スポンサーもいなければ、公的な補助も受けていません」

 セレナ 「そっか……、研究には、お金がかかりますもんね」

 サミコ 「いやらしい話ですけど、セレナさんのような有名人が研究グループに入ってくれれば、スポンサーがついてくれるかもしれません。研究費が沢山あれば、この研究は、もっと捗ると思うんです」

 セレナ 「なるほど……」

 サミコ 「勿論、無理にとは言いません。あ、良かったら見学だけでも来て貰えませんか? 大歓迎しますよ!」


メガシンカの研究と聞くと、サトシたちと旅していた頃を思いだす。

たびたび顔を合わせたプラターヌ博士も、メガシンカの研究をしていて、私たちにも研究のことを話してくれた。


 セレナ 「それじゃあ、少しだけ見学しても良いですか?」

 サミコ 「えぇ、喜んで!」


だから私は、サミコさんたちのメガシンカ研究に、とても興味が湧いてきた。

私と同じ世代の研究グループということも興味深いし、応援してあげたい。カロスクイーンと言う私の立場が研究の役に立てるなら、それも誇らしいことだ。
 ▼ 99 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:27:24 ID:8P4IHSdg [4/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


一旦家に帰って、再びサミコさんと合流する。


私は――と言うか、カロスクイーンやジムリーダーと言った有名人がプライベートで外出する時は、変装しなければならない。エルさんもそうだったように。

変装と言っても、帽子とダテ眼鏡くらい。パフォーマンスの衣装のイメージが強いから、私服にまで拘ることは無いし、ミアレのような都会だと、道ゆく人は他人に無関心だ。


 サミコ 「じゃあ、行きましょうか」

 セレナ 「はい。よろしくお願いします」



私は てっきり、ここミアレシティの中に研究施設があると思ったけど、そうではないらしい。


サミコさんに案内されたのは、ミアレを出た14番道路の森の中。いわゆる“街道”から離れて、滅多に人が通らないような獣道を進んで行く。


 セレナ 「こんな森の中で研究してるんですか……?」

 サミコ 「あはは……。少しでもお金を節約するためなんです」


 ▼ 100 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:32:15 ID:8P4IHSdg [5/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


そうして辿り着いたのは、鬱蒼とした森の中に佇む、古い屋敷。

レンガ調の2階建て、外壁はボロボロでツタが張っているけど、昔は立派な お屋敷だったと感じられる出で立ちだ。

ただ、その周囲は工事用のフェンスで囲まれている。


 サミコ 「ここです」

 セレナ 「ここって……」

 サミコ 「驚きましたよね。ほぼ廃墟だった家を借りてるんです。見た目はアレですけど、中は普通ですよ」



なんだか見覚えのある お屋敷だな――なんて考えていると、サミコさんはフェンスの隙間から敷地内に入っていく。

慌てて追いかけ、屋敷の扉を開けると。


 セレナ 「わぁ……」

 サミコ 「ようこそ。私たちの研究所へ」


外観からは想像できないほど、室内は綺麗だった。

玄関ホールの絨毯は鮮やかな赤、正面の階段は手摺までピカピカ、左手に見えるドアは塗り直したのか、艶のある木目調。


 セレナ 「凄く綺麗ですね。ビックリしました」

 サミコ 「綺麗好きで几帳面なメンバーが居るんです。研究部屋は左です」
 ▼ 101 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:40:53 ID:8P4IHSdg [6/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
サミコさんがドアを開けると、そこは まさしく研究施設と言った感じだった。

元は大広間だったのか、柱の無い広い空間に、デスクとパソコンが並んでいる。その奥にはよく分からない機械が沢山置かれていて、起動音が微かに聞こえる。

水回りの傍には、試験管やビーカー、顕微鏡や薬品が並んでいて、理科実験室のようだ。


そんな研究部屋に居たのは、白衣を着た男性が2人と女性が1人。

みんなサミコさんと同い年くらいで、大学生の有志の研究グループというのは本当だった。


 スワミ 「あなたがセレナね。噂は聞いてるわ。私はスワミ」

 カツマ 「僕はカツマ。この研究グループの事務全般を受け持ってるんだ」

 サミコ 「カツマのお陰で、この研究所は いつも綺麗なんですよ」

 セレナ 「セレナです。よろしくお願いします」

 スワミ 「まさかホントにカロスクイーンが来てくれるとはね」

 セレナ 「メガシンカの研究と聞いて、私も興味があったので。凄いですね、皆さん若いのに」

 スワミ 「あ、あそこでパソコンやってるのがオカヤよ。ほら挨拶しなさいよ!」


 オカヤ 「ちょっと待って。いま遺伝子配列の確認中……」


 スワミ 「まったく研究オタクは……」

 サミコ 「オカヤは研究熱心で、メガシンカしないポケモンをメガシンカさせたいって考えたのは、彼なんです」
 ▼ 102 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:50:22 ID:8P4IHSdg [7/10] NGネーム登録 NGID登録 報告

 オカヤ 「正確には、“全ての水タイプのポケモン達を”メガシンカさせたい、だよ」


パソコンの手を止めて、オカヤと呼ばれた男性が口を開いた。


 オカヤ 「初めまして、オカヤです。セレナさんの活躍は、スワミから聞いてます」

 セレナ 「あっ、ありがとうございます」

 オカヤ 「突然だけど、水タイプのポケモンって美しいとは思いませんか?」

 セレナ 「美しい……?」

 オカヤ 「そう! 水も滴る良いポケモン! 水のように滑らかで、しなやかで、変化に富んだ生態と能力。透き通るような声、透明感のある艶やかな佇まい、凛とした雰囲気。水タイプこそ、生命の幻術さ!」

 セレナ 「あっ、確かに、水タイプのポケモンは綺麗な子が多いですよね。ミロカロスとか、ジュゴンとか、アシレーヌとか」

 オカヤ 「そう! セレナさん良いセンスしてる!」

 セレナ 「あはは……」

 オカヤ 「僕はね、そんな美しい水タイプのポケモンを、さらに美しく! さらに芸術的に! まさしく完璧な姿へと導くために、メガシンカの可能性を探っているんだ」


  サミコ (オカヤの話は、聞き流して大丈夫です)

  セレナ (それは失礼な気がしますけど……)
 ▼ 103 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:50:51 ID:8P4IHSdg [8/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 オカヤ 「メガカメックス、メガラグラージ、メガギャラドス、メガサメハダー、メガヤドラン。皆、元から美しい、強い、魅力的なポケモンではあるけど、メガシンカすることで、さらに美に磨きがかかるんだ。なら見たみたいとは思わないかい? 他の水ポケモンたちがメガシンカしたら、どれほど美しい姿に生まれ変わるか……」


  スワミ (オタクは得意分野になるとマシンガントークだから、マジで適当に頷いとけば大丈夫よ)

  セレナ (でも、夢中になれることに全力で取り組むって、良いことだと思いますよ)


 オカヤ 「水ポケモンたちは皆、メガシンカする可能性を秘めている――。それに気付いた僕は、4年間の研究を経て、ようやく完成に至ろうとしているんだ。あぁ、早く美しい姿を目にしたい! 僕の水ポケモンたちを、さらに魅力的に生まれ変わらせてあげたい!」

 セレナ 「凄いですね。4年間も研究を重ねて……、それで、その、メガシンカしないポケモンをメガシンカさせる技術が、完成したんですか?」

 オカヤ 「75%と言ったところさ。これも全て、カイド君のお陰だ。僕の研究に着目して、素晴らしさを共感してくれて、全面的に協力してくれたんだから」

 セレナ 「カイド君……?」

 オカヤ 「僕の研究を支えてくれる青年さ。そして、僕の研究の正しさを、証明しようとしてくれている!」

 セレナ 「正しさ? 証明?」










  『ビギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!!』







 ▼ 104 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:56:26 ID:8P4IHSdg [9/10] NGネーム登録 NGID登録 報告

 セレナ 「えっ……なに!?」


突然響き渡った、悲鳴のようなポケモンの鳴き声。

2階から聞こえた気がするけど……、おかしい。



 スワミ 「また失敗かしら?」

 オカヤ 「だから言ってるだろ。水タイプ向けの研究だって」

 サミコ 「またカツマの仕事できちゃったわね……」

 カツマ 「まぁ、綺麗にするのが僕の役目だからね」



こんな尋常じゃない悲鳴を聞いたのに、サミコさんたち、ここに居る4人は、平然な顔をしているのだ。



失敗?

水タイプ向けの研究?

カツマさんの仕事?

綺麗にする?



ねぇ待って。

これらから連想することって、一つしかないよ……。

 ▼ 105 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:57:01 ID:8P4IHSdg [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



続きは後日。



 ▼ 106 ロリーム@メガグローブ 20/04/16 20:26:09 ID:4Z3ou3Bk NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 107 ガボスゴドラ@ガルーラナイト 20/04/16 21:37:24 ID:8ypwZYBo NGネーム登録 NGID登録 m 報告
しえん
 ▼ 108 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:08:02 ID:CZtQaDVw [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告



 *** 「お、セレナじゃん」


白衣を着た男性が、部屋に入って来た。

彼も20代前半と思われる若い人。ワックスで決めた茶髪と、耳にはピアス。あまりにも白衣が似合わない。


 スワミ 「カイド、またダメだったの?」

 オカヤ 「だから水タイプ向けだって。他のタイプで試そうとしないでくれよ」


カイドと呼ばれた彼は、モンスターボールを手にしていた。

そしてそれを、カツマさんに渡す。


 カイド 「じゃあこいつ、よろしく」

 カツマ 「OK。処分しておくよ」


 セレナ 「処分……?」

 カイド 「新カロスクイーン、セレナ。歓迎するぜ」
 ▼ 109 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:08:34 ID:CZtQaDVw [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 セレナ 「どういうこと? 有志でメガシンカの研究してるって聞いたのに、処分?」

 カイド 「研究には犠牲が付き物。これ常識」

 セレナ 「犠牲って……」

 カイド 「聞いてるだろ。オレたちの研究目標は、“全てのポケモンをメガシンカさせる”ことだ」

 セレナ 「えぇ。全てのポケモンを平等に暮らせるように」

 カイド 「んなの建前に決まってんだろ」

 セレナ 「………」

 カイド 「オレたちは、ポケモンをメガシンカさせる薬を作ってるんだ。メガストーンも、絆も関係なしにな」

 セレナ 「薬……」

 カイド 「言っちまえば、ポケモンを強化させる薬だよ。一時的に肉体を刺激して、パワー、スピード、闘争心もアップさせる。メガシンカに匹敵するくらいにな」

 セレナ 「………」

 カイド 「元々はオカヤの独自研究だったんだ。水タイプのポケモンの、メガシンカの可能性を調べるってテーマでな」

 オカヤ 「その通り。僕は4年前に見たあの美しい姿を忘れられなくてね。それ以来ずっと、水タイプのメガシンカについて研究を続けてきたんだ」

 スワミ 「それにカイドが注目して、全てのポケモンをメガシンカさせる研究に発展させたのよね」

 カイド 「水タイプのポケモンで出来ることなら、全てのポケモンでも出来るはずだろ? そんでこの研究チームを作って、ずっと研究してきたワケよ」

 オカヤ 「カイド君たちの手助けは有難かったよ。こんな研究施設を用意してくれて、金銭面でも、かなり助けてくれたからね」

 スワミ 「ま、ここは廃墟をリフォームしただけだから、実質タダよね」

 オカヤ 「そして、ようやくポケモンをメガシンカさせる試薬の完成に目途がついたんだ。まずは水タイプ向けだけど、全タイプに使えるよう、実験を続けてるんだ」


 セレナ 「実験……、それって要するに、ポケモンを使った人体実験、ってこと?」


 ▼ 110 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:09:14 ID:CZtQaDVw [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 カイド 「ビンゴ。その試薬をポケモンに投与して、メガシンカと同等の反応を得られるかをチェックしてるんだ。……まぁ、先は長そうだけどな」

 オカヤ 「実験を通じて、問題点を探り、改良し、再度実験する。研究とは、その繰り返しなのさ」

 スワミ 「まぁでも、実験台には困らないのよね。この辺の野生ポケモンを使えばいいだけだし」

 セレナ 「そんなの……、間違ってる! ポケモン保護法違反だし、野生ポケモンが可哀想だと思わないの!?」

 カイド 「実験には犠牲が付き物って言っただろ。それに処分っつっても、殺す訳じゃねぇ。ここの足が付かない場所に捨てるんだ。そうすればレンジャーに保護されて、死ぬことはねぇからな」


カイドたちは、淡々と言う。あまりにも淡々と。

全てのポケモンをメガシンカさせたい――という研究テーマは良いと思う。

でも、完成されていない、安全も確認されていない薬を、野生ポケモンを実験台にするなんて許せることじゃない。さっきの悲鳴を聞く限り、薬によって野生ポケモンが傷つけられていることは明らかだ。

しかも、その野生ポケモンを捨てに行くなんて……。


 スワミ 「そんな怒ることじゃないでしょ?」

 サミコ 「そうですよセレナさん。この薬が完成したら、私たち、一生に困らないですよ」

 セレナ 「どういうこと?」

 スワミ 「決まってるでしょ。この薬で一儲けするのよ」
 ▼ 111 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:09:49 ID:CZtQaDVw [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 セレナ 「お金のため……!? 学会で発表とかじゃなくて!?」

 カイド 「んなことしたら後が面倒だろ。この薬は、裏ルートで売り捌くんだ」

 セレナ 「裏ルート……」

 カイド 「全てのポケモンをメガシンカ……すなわち、どんなポケモンでも強化できるんだ。欲しい奴は山ほど居るだろ? ハンターとか、マフィアとかな」

 セレナ 「そんな……!」

 カイド 「この薬の効果を見れば、高値で売れるだろうな。そういう連中、金は持ってるから、良い商売になるぜ?」

 スワミ 「そしたら遊んで暮らせるわよ」

 オカヤ 「まぁ、僕は水ポケモンをより魅力的に進化させることが出来れば、金なんて関係ないけどね」

 カイド 「へへっ。オカヤの研究はヤベェよ。メガシンカしたポケモンの遺伝子配列を分析して、それに近付ける遺伝子操作を、薬で出来るようにしたんだからな」

 オカヤ 「通常は、“遺伝子を含むDNA断片を分離し、遺伝子を切り出して、他のDNAの部分に導入する”って手順を踏む必要があるけど、この薬を投与すれば、対象のポケモンの遺伝子が、勝手に変化していくんだ。メガシンカに見られる配列にね。メガシンカして姿が変わり、能力が格段に上昇し、さらにはタイプまで変わる現象は、そのポケモンの遺伝子が一時的に変異すると考えられたから、それを応用したまでさ」

 カイド 「それを注射1本で可能とか、ホント、研究オタクは凄ぇよ」


有り得ない……こんなの有り得ないよ!

野生ポケモンの実験だけでも許せないのに、その目的が、お金儲けだなんて!

しかも、ハンターやマフィアに売る? 反社会勢力を強化するようなこと、絶対に許せない!
 ▼ 112 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:10:41 ID:CZtQaDVw [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 カイド 「それで……だ。サミコから話は聞いてるよな?」

 セレナ 「なんのこと?」

 カイド 「お前をウチの研究チームに誘った理由だよ。カロスクイーンのセレナさんよぉ」

 セレナ 「……スポンサー。私の名前を使えば、研究に使う お金が、たくさん手に入るってことね」

 カイド 「そうだ。この試薬は まだ完全なものじゃない。何パターンもの試薬を大量に作って、実験を繰り返す必要がある。すなわち金が必要なんだ」

 サミコ 「セレナさんの協力があれば、この研究は更に加速します。薬が完成すれば、本当に、一生困らないですよ」

 スワミ 「この歳で遊んで暮らせるなんて最高だと思わない?」


 セレナ 「ふざけないで!」


 カイド 「は?」

 セレナ 「まっとうな研究だと思ったから見学に来たのに、お金儲けのために野生ポケモンたちを傷付けて、そんなの協力できる訳ないでしょ!?」

 カイド 「ふん。それがお前の答えか」

 スワミ 「バカね。楽して暮らせるチャンスを、自分から捨てるなんて」

 セレナ 「失礼するわ」


もう、この人たちに関わる必要はない。

何と言われようとも、人の道を外すようなこと、私には出来ない。


 カイド 「待てよ」
 ▼ 113 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:11:30 ID:CZtQaDVw [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 セレナ 「なに?」

 カイド 「お前、この研究のことチクるつもりだろ」

 セレナ 「……当然よ。野生ポケモンへの虐待、許されることじゃないわ」

 カイド 「で、オレらの研究を潰そうって訳か」

 セレナ 「当たり前じゃない! こんな研究を知って、黙って見過ごす訳には いかないわ!」

 スワミ 「チッ!」

 サミコ 「残念です、セレナさん」

 カイド 「お前さ、勘違いしてねーか?」

 セレナ 「勘違い?」

 カイド 「セレナ。お前が“この研究所に居た”事実は、もう変わらないんだぜ?」

 セレナ 「……どういうこと?」

 カイド 「お前がこの件をチクるって言うんなら、“セレナもこの研究に加担してた”って、オレらは答えるぜ」

 セレナ 「なっ……!?」

 カイド 「カロスクイーンの不祥事……、マスコミは喰い付くだろうなぁ?」

 セレナ 「そんな……そんなデタラメ通用しないわよ! 私は正々堂々と否定するわ!」
 ▼ 114 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:12:23 ID:CZtQaDVw [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 スワミ 「分かってないわね、マスコミの怖さ」

 カイド 「否定すれば良い。けどよ、“疑惑”は人間にとって最高のネタなんだぜ?」

 スワミ 「“カロスクイーンが、ポケモンの違法な研究に携わっていた。本人は否定”――。皆が皆、信じると思う?」

 カイド 「そんなヤバいこと、普通は否定するよな。けど、それを証明する術は無い。現にお前、この研究所に こうして居るんだからよ」

 セレナ 「っ……!」


確かに、考えてみればその通りだ。

いくら否定したって、それを証明できる術は……無い。カイドたち全員が“私もメンバーの一員だ”って言えば、そっちの方が信憑性がある。


 カイド 「もう一度、聞いてやる。オレらの仲間になれ」

 セレナ 「……嫌よ! こんな研究に加担するなんて、絶対に出来ない!」


でも私は、自分の信念を曲げるつもりは無い。

ダメなことはダメ。これは犯罪。ポケモン虐待だ。
 ▼ 115 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:13:10 ID:CZtQaDVw [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 カイド 「そうか。じゃあテメェには用は無い。とっとと帰れ」

 スワミ 「そのまま返すワケ!?」

 カイド 「馬鹿だな。痛めつけたりしたら“オレらの仲間”って言えなくなるだろ」

 スワミ 「あぁ、なるほどね」

 カイド 「セレナ。お前は無事に帰してやる。けど覚えとけよ。このこと言いふらしたら、カロスクイーンの立場は消え去るからな」

 セレナ 「っ!」


私はカイドたちに背を向ける。


 スワミ 「って言うか、パフォーマー資格剥奪されてもおかしくないわね」

 カイド 「そんくらいの処分は有り得るな。あばよセレナ。賢い選択を期待するぜ」


そして、研究所を後にした。

カイドたちの冷たい言葉を、背中に受けながら。


 ▼ 116 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:13:59 ID:CZtQaDVw [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告



 セレナ 「どうしよう……」


家に帰って、私は、ことの重大さを再認識した。


悔しいけど、カイドたちの言う通りだ。

いくら私が“無関係”と叫んでも、私があの研究所に居た事実がある以上、その疑惑を晴らすことは不可能に近い。

カロスクイーンと言う立場の人間の疑惑……、ひとたびマスコミに知れ渡ったら、それを払拭する術は無い。

そして、“世間を混乱させた”という名目の元、カロスクイーンから降ろされ、最悪、パフォーマーとしての資格を剥奪されてしまうかも……。


 セレナ 「どうすればいいの……」


ヤシオさんにも教えられた。

カロスクイーンと言う立場は、芸能人のようなもの。スキャンダルは避けなければならない、と。


 セレナ 「グスッ、なんで、こんなことに……」


憧れのカロスクイーン。

夢だったカロスクイーン。

やっとサトシに相応しい存在になれたと思ったのに……。
 ▼ 117 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:14:37 ID:CZtQaDVw [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告





その日から、私はスランプに陥った。



悩みがある状態のパフォーマンスでは、人を感激させることは出来ない。



テールナーたちも、私の不安を汲み取って、パフォーマンスに身が入らない。





私の初の防衛戦は、散々な結果で終わってしまった。





私はもう、二度と、カロスクイーンになれないかもしれない。




 ▼ 118 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:14:59 ID:CZtQaDVw [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告



続きは後日。



 ▼ 119 ブライカ@あかぼんぐり 20/04/17 22:35:56 ID:NYBsy3f2 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 120 グマッグ@プレシャスボール 20/04/20 23:40:11 ID:G9sg41xw NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
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 ▼ 121 オラント@こおったきのみ 20/05/04 00:40:42 ID:AasYstt6 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 122 ングラー@ねばねばこやし 20/05/21 01:35:30 ID:VaLYElmU NGネーム登録 NGID登録 m 報告
応援してます。
頑張ってください!
 ▼ 123 ラマネロ@パイルのみ 20/06/11 06:26:25 ID:bOjAdeC6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
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 ▼ 129 タチ@ともだちてちょう 20/11/21 20:37:43 ID:z3V2XNdk NGネーム登録 NGID登録 報告
超支援!甲州街道さんのssは僕の中で公式と同じ
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