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北に広大な花園を持ち、東に厳かなテンガン山を臨む長閑な田舎町。
この町に俺はひと月ほど前、あまり広くない一軒家を借りた。
急な転勤のために慌ただしい引っ越しになってしまったが、この町のゆったりとした雰囲気はすぐに俺を受け入れてくれた。
越してきてしばらくは忙しく過ごしていたものの、やがて落ち着いて周りのことに気を向けられるようになると、様々なものが目につき始めた。
澄んだ川のせせらぎや、草原で波を立てながら吹くそよ風。思い思いに日々を暮らす人やポケモン達の姿。
とりわけ町の至る所で咲いている花は、今が見ごろで、馥郁とした空気を町全体に送り出していた。
陽はゆるく照っていて、行き場を失った水のようにのろのろとした時間が過ぎていく。
そんな景色の中で俺はふと、ある一匹のポケモンの奇妙な行動を目の当たりにした。
俺の住んでいる家は、交差する道の角に建っていて、裏手には小さな庭がある。
その庭の先、隣の民家の塀の手前にレンガ造りの小ぢんまりとした花壇があり、そこへ盛られた土の上に、綺麗な赤い花が数本並んで咲いている。
ある朝仕事の準備を終えた俺は、なんとはなしに裏手の窓から庭の先を覗いてみた。
すると、庭に面した道の先から、一匹のニャルマーがこちらへ向かって歩いてくるのが見える。
この辺りでは見かけないポケモンだな、などと考えるよりも先に、俺の意識はそのニャルマーが口に咥えている小さなジョウロに向けられた。
ジョウロはたっぷりと水を湛え、ニャルマーの口元で陽射しを受けて銀色に輝いている。
不思議に思ってその光景を眺めていると、ニャルマーは花壇の前で足を止め、おもむろにジョウロを掲げると、花壇の端の一本の花の近くに寄って、器用にジョウロの水を花壇に注ぎ始めた。
ニャルマーが花壇の縁を歩くのにつれて、赤い花弁と根元の土に潤いが与えられていく。
俺があっけにとられているうちに、やがてニャルマーは水やりを終え、ジョウロを咥えたままそそくさとその場から立ち去ってしまった。
仕事のことを思い出し、俺が慌てて外へ出たときには、もうニャルマーはいなくなってしまっていた。
それ以来、毎日のようにニャルマーは現れ、花に水をやってはどこかへ帰っていった。
雨が降る日にやってきて、しばらく花壇の様子を見ていたこともある。
そんなニャルマーの行動に、俺は次第に興味を覚え、いつしかそれを見ることが俺の朝の日課になっていた。