【SS】イーブイ「あの子の元に帰るまで」:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】イーブイ「あの子の元に帰るまで」:ポケモンBBS

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【SS】イーブイ「あの子の元に帰るまで」

 ▼ 1 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:33:07 ID:NLVAUa2w [1/40] NGネーム登録 NGID登録 報告





私は、真っ青な夏の空を見上げていた……




澄んだ空に響き渡るのは、テッカニン達のオーケストラ……



何度拭っても溢れてやまない涙の向こうには、もう「あの子」の姿は見えなかった。






悲しさの中で私は、ただただ夏空の下で泣き続けた……





 ▼ 2 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:33:44 ID:NLVAUa2w [2/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





それは、ある街で起こった出来事……







とある街、人通りの多い騒がしい街の歩道を、一人の少女と一匹のポケモンが駆け回っていた。



少女「イーブイ! こっちこっち!」


イーブイ「ブイっ! ブイーっ!」



街を行く人々の波を上手に避けながら、今日も彼女らの小さな追いかけっこが続く……


 ▼ 3 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:34:34 ID:NLVAUa2w [3/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


少女「ほら! 置いてっちゃうよ!」


そう言いながら笑う少女は、ほんの少しも疲れる様子を見せない。


なんせ、少女は通っている小学校でも一番の早足が自慢で、かけっこが大好き。


だから、こうして毎日大好きなイーブイとかけっこをしていたのだ。






イーブイ「ブイっ……ブ……」


それに比べてイーブイは……少し苦しげに息を切らせ、なんとか追いつこうとして見える。


そう、実はこのイーブイ、かけっこが大の苦手。


しかし、大好きなご主人と遊びたいが故に、それだけの理由で毎日の追いかけっこを楽しもうとしているのだ。






大好きなご主人を思う気持ちが、苦手な物事を乗り越えさせる、不思議な力を与えている訳である。
 ▼ 4 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:35:17 ID:NLVAUa2w [4/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


イーブイを置いて、少女はどんどん駆けていく……



少女「イーブイ! 先行っちゃうからねー!」



その声にイーブイは焦る……置いていかれてしまうと……


イーブイ「ブ、ブイっ……」



既にご主人の姿は見えない……どこを見ても、見知らぬ人ばかりの大通り……



イーブイ「ブイっ! ブイーっ!!」



その足に踏まれぬ様、通行人の波を抜けて、時にはぶつかりながらもひた走る……




イーブイ「ブイーっ!」




不安になってご主人を呼ぶも、返事はない……


どんどん焦る……まだ、ご主人は見えない……



このままでは拉致が開かない……一旦この人混みから抜けるのが先と、イーブイは脇道に逸れ、人混みを飛び出した。
 ▼ 5 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:36:10 ID:NLVAUa2w [5/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


イーブイ「ぶ、ブィィ……」


息を切らせて人混みを飛び出す……ここは?


辺りを見渡した……ここは……車道?




バーーーーーっ!!!




大きなクラクション、そちらを向くと、もう目の前に大きなトラックが!



イーブイ「ぶっ! ブイっ!!」


急いで引き返そうとしたが……時既に遅し。

イーブイはトラックに跳ね飛ばされて宙を待った……


小さな身体は大きく吹き飛び……そして、隣を走っていたトラックの荷台にポスンと落ちた。


イーブイ「……」


ピクリとも動かないイーブイを乗せて……イーブイが乗っているとも知らずに、そのトラックは走り出す……



……



そんな一連の流れを見ていた一つの影……

信号機の上に腰掛けて、ニヤニヤと荷台に転げたイーブイを見つめていたが……



「けけっ、いい暇つぶしになりそうだ……」


そう笑ってトラックの荷台、イーブイの隣に飛び降りた。



二匹を乗せたトラックは、大きな街をどこまでも続く道……真っ直ぐに走って行った……
 ▼ 6 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:36:38 ID:NLVAUa2w [6/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告










第一話 意地悪な同行者








 ▼ 7 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:37:13 ID:NLVAUa2w [7/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告










う……うぅっ……



……? あれ? 私……






イーブイ「ん、んんっ……」



風を受け、目を覚ます……ここは……走行中のトラックの荷台?


イーブイ「あれ? 私、追いかけっこしてて……あれ? あれ?」


何が起こったのか……突然の事にパニックに……





……ダメだ。何一つ思い出せない。


 ▼ 8 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:38:07 ID:NLVAUa2w [8/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

頭を抱えたその時、イーブイは隣に寝転がっていた真っ黒いポケモンに気づいた。


イーブイ「っ!」


そのポケモンも、イーブイの方を見るなり身体を起こし……ニヤリと笑って返した。



?「おう、やっと起きたか……」



その声……その身なりは不気味ではあったが、何故か悪者にも見えない……

恐る恐るイーブイは問いかける。



イーブイ「あ、あなた……誰?」


?「俺か? 俺は……ジュペッタだ」


イーブイ「ジュペッタ……さん?」



その呼び方に、やや嫌そうな顔を見せた。



ジュペッタ「呼び捨てにしてくれ……気味が悪い……


イーブイは気怠く話すジュペッタのノリに、少しやりにくさを感じたが……


イーブイ「……あなたは誰なの? ここは? 私はなんで……」



そんなやりにくさよりも、聞きたい事が山程あった。



ジュペッタ「まぁ、そう急かすな」


ジュペッタは側にあったブルーシートの被さった木箱の山に手を突っ込むと、その中に隠されたオレンのみを一つ取り出し、イーブイに投げ渡した。




ジュペッタ「これでも食いながら、ゆっくり話そうぜ」

 ▼ 9 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:38:44 ID:NLVAUa2w [9/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



オレンのみはみずみずしく、イーブイの乾いた喉を潤した。



イーブイ「それで……ここは?」


ジュペッタ「トラックの荷台だ」


イーブイ「それはわかってるよ!」


その返しにジュペッタはニヤニヤしている……


ジュペッタ「ケケっ! 冗談だ。ま、そう怒るなって」



やはり不気味……そして、どこか信用が出来そうもない……

それでも、今はこのポケモンしかイーブイの事を知っていそうなポケモンは他にいない……



頼る相手も……他にはいない。




仕方ない。今は信じるしかなさそうだ。


 ▼ 10 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:39:23 ID:NLVAUa2w [10/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


二匹を乗せたトラックはトンネルを抜ける……

真っ暗なトンネルを抜け……また、真っ白い日差しに包まれる……



イーブイ「私は……あっ! そうだ!」



その日差しの刺激をきっかけに、イーブイの頭の中、ここに来るまでに何が起こったか……微かな記憶の扉が開いた。



イーブイ「私、リリちゃんと追いかけっこしてて……それで、トラックに……撥ねられて……」


ジュペッタ「そうだ。跳ね飛ばされたお前は、このトラックの荷台の中に落ちたって訳だ」



その一言にゾッとする……ふと遠くに見えた看板を見ると……聞いた事の無い地名……



イーブイ「じゃ、じゃあ早く戻らなきゃ!! リリちゃんが探してる!」


走るトラックの荷台から飛び降りようとしたイーブイの尻尾、ジュペッタがギュッと掴む……


イーブイ「うわっ!? はっ、離してよ! 早く戻らないと!」


ジュペッタ「リリちゃんだ? そいつがお前の飼い主か?」


イーブイ「そうだよ! 早く戻らなきゃ!」



イーブイの必死な顔を見て、ジュペッタはニヤっと笑った。




ジュペッタ「そいつは探してねぇよ。お前の事なんか」


 ▼ 11 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:40:20 ID:NLVAUa2w [11/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


イーブイ「っ! な、なんでそんな事言うのさ!」


ジュペッタ「俺にはわかる。そいつは最初こそ悲しむだろう……けど、すぐに次を見つけるさ。お前の代わりになるポケモンをなぁ……」



ジュペッタはオレンの皮を剥くと、それを放り投げ、丸呑みした。



ジュペッタ「人間ってのはぁ……そう言うもんさ。悲しいけど諦めな……ケケケッ!」




そのニヤニヤ顔を見ていると、無性に腹が立つ……




イーブイ「何さ! リリちゃんの事何にも知らない癖に!」


そう言って自慢のふさふさ尻尾を乱暴に掴むジュペッタの手に噛み付いた。


ジュペッタ「ぎっ、ぎぇぇえええっ!!?」



尻尾を掴む手が緩む……


イーブイ「じゃあね! さよなら!」




荷台から飛び降りる……着地した瞬間、イーブイは草原を勢いよく転げ落ち……見えなくなった。




暫くジュペッタは噛みつかれた手をさすっていたが……


ジュペッタ「……なんだよ。あいつ」



そう呟き、またオレンのみの皮を剥いて、丸呑みにした。



 ▼ 12 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:41:04 ID:NLVAUa2w [12/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告






うわぁぁぁぁああ!!






かなりの速度で走っていた車から飛び降りたせいで、イーブイは勢いよく道沿いの草の茫々と生えた坂道を転げ……


平坦な草地で、やっと止まった。



イーブイ「いっててて……おしり打ったよ……」 


痛む体をさすり、身体についた土を払って立ち上がる……


イーブイ「それにしても……」



先程のジュペッタ……その発言もその顔も、思い出すだけで腹が立ってきた。



イーブイ「あいつ……本当ムカつくよね! なにさ! リリちゃんの事何にも知らない癖に!」




「まぁまぁ、ムカつくなんてそんな酷い事言わないでくれよ」




イーブイ「え?」


声の方を見れば、いつの間にか隣にジュペッタが……


イーブイ「うわぁぁああっ!!」


 ▼ 13 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:41:29 ID:NLVAUa2w [13/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



飛び上がったイーブイを見てジュペッタはヘラヘラ笑う……


ジュペッタ「ケケケッ! いいリアクションだな!」


イーブイ「もうっ! 何さ! なんで着いてくるの!?」



怒るイーブイだが、ジュペッタは怯みさえしない……



ジュペッタ「そんなの決まってるだろ? ただの暇つぶしだ!」



その答えに怒りが振り切れたイーブイは、もう一言も言い返さずに、自分が転がり落ちてきた坂道を黙って登り始めた……


ジュペッタ「ケケケッ! 面白い奴だ!」


 ▼ 14 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:41:59 ID:NLVAUa2w [14/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


草花の生えた坂を登る……昨日雨でも降ったのか、足元の草葉は濡れ、日の光を浴びて輝いている……



イーブイ「……」


ジュペッタ「ケケケッ! ここら辺の地面、どうやら昨日の雨でぬかるんで滑りやすくなってるから気を付けろよ!」


イーブイはその忠告を無視して登り続けていたが……


イーブイ「っ!」



イーブイは泥を踏み、少し下まで滑り落ちた。


なんとか踏み締めて、先程の様に下まで転がり落ちる事は無かったものの、それを見ていたジュペッタはニヤニヤしている……



ジュペッタ「だから言ったのにな! ケケケッ!」


イーブイ「うるさいっ! あっち行ってよ!」


 ▼ 15 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:42:41 ID:NLVAUa2w [15/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


それから数分……なんとか登り終えたイーブイは、ヨロヨロと……



イーブイ「やっと……戻ってこれた」



自分が乗っていたトラックが走っていた、山道に作られた、コンクリートで舗装された大きな道……


車の通りは多くないその道……自分がやってきたのは……多分……



イーブイ「こっちだ!」


勘を頼りに右へと歩き始めた直後……



ジュペッタ「お前が向かうのは、あっちだぜ?」


また、いつの間にか背後に……ジュペッタは逆方向の左へと歩き出す……



イーブイ「っ! べ、別に間違ってないもん! そっち側だって、最初から気付いて……」


ジュペッタ「ん? いや、すまん。俺が間違ってたみたいだ。お前の行く方であってるぜ?」



ジュペッタはニヤニヤと……



イーブイ「〜っ!!」


怒鳴り散らそうとしたが……もう、疲れて元気も出ない……


イーブイは、ため息をつくので精一杯だった。

 ▼ 16 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:43:18 ID:NLVAUa2w [16/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


歩き出したイーブイ……その後ろをのそのそとついてくるジュペッタ……



イーブイ「……」


ジュペッタ「ケケケッ」


イーブイ「だから! なんでついてくるの!?」


ジュペッタ「言っただろ? 暇つぶしだって!」


イーブイ「もーーっ!! あっち行ってよ!!」




その時……


ぐぅぅぅ……




イーブイ「!」


ジュペッタ「おっ? 腹減ったのか?」


イーブイ「べ、別に……」


ジュペッタ「あーあ、あのままトラックに乗ってりゃあ……暫くは食い物に困らなかっただろうによ」


イーブイ「うるさいっ! だって降りなきゃリリちゃんに……」



ぐぅぅぅ……



それでも、イーブイのお腹は鳴るばかり……


 ▼ 17 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:43:41 ID:NLVAUa2w [17/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


イーブイ「うぅっ……おうちに帰りたいよ……」


ジュペッタ「……」



ぼやくイーブイ……ジュペッタはどこからともなくオレンのみを取り出し、その前に置いた。



ジュペッタ「さっきのトラックから一つだけくすねてきたんだが……そんなに食いたいなら食えよ」


イーブイ「っ! い、いいの?」


ジュペッタ「……ただし、条件がある」


イーブイ「……何さ」





ジュペッタ「これから始まるお前の旅……俺を連れて行け」


 ▼ 18 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:44:15 ID:NLVAUa2w [18/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


イーブイ「!」


驚き……その目を見てゾッとする……ニヤニヤと笑うその目……



しかし、野性で生きた事の無い自分に……家まで……飼い主の元まで戻るまでの間、この道を倒れずに歩き続ける事はできるだろうか?



さっきだって……トラックの上でも……このポケモンは一応、私を助けてくれた。




そして、今も……




……




何を考えているのかわからない。


悪さを考えてる可能性はある。



意地悪で、一緒にいても気分が悪いけど……




それでも……今は…………


 ▼ 19 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:44:47 ID:NLVAUa2w [19/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


イーブイはそのオレンのみにかぶりついた。


ジュペッタはニヤニヤと、その様子を見守る……



ジュペッタ「……取引き成立だな」



ジュペッタはふわりと飛び上がると、近くのガードレールに腰掛けた……


見上げる……夏の空……


テッカニンの鳴き声が煩く響く山道……その上に広がる雲ひとつない青空……



ジュペッタ「けっ……」





暫くは退屈せずに済みそうだ……





その呟きは、青空に響くテッカニン達の泣き声にかき消された……



続く



 ▼ 20 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 02:45:11 ID:NLVAUa2w [20/40] NGネーム登録 NGID登録 報告


一話目おしまい。

基本一日一話のペースでやってきますんでよろしくお願いしますっす。

自宅待機の人の暇つぶしになれば幸いっすわ。


って訳で、続きはまた明日や

 ▼ 21 ロリンガ@わざマシンケース 20/05/10 08:00:33 ID:VRkcuhHA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 22 ドシシ@こうかくレンズ 20/05/10 08:52:30 ID:O5OUeYZ. NGネーム登録 NGID登録 報告
凄い
 ▼ 23 ドレックス@フェアリーメモリ 20/05/10 10:51:09 ID:SwRgihSo NGネーム登録 NGID登録 報告
昔あったSSにそっくりで懐かしくなった
 ▼ 24 イル@メガイカリ 20/05/10 11:32:25 ID:pMH2EeR6 NGネーム登録 NGID登録 報告
超絶支援
 ▼ 25 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:37:34 ID:NLVAUa2w [21/40] NGネーム登録 NGID登録 報告


暑い日差しが照りつけると、アスファルトはその熱を吸収し……そして、放出する……


その熱は、長い長い道路を歩き続けるイーブイを衰弱させていた……




イーブイ「う、うぅ……暑い……」



陽炎で揺らぐ視界の中、遥か遠くまで続く道……あの街には、いったいどれだけ歩けば辿り着けるのだろうか?


ただ、この辺り一帯……どこまでも続く山……森……田畑……


開発されたあの街とは真逆の見慣れない風景に、イーブイの不安は加速するばかりだった。
 ▼ 26 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:38:10 ID:NLVAUa2w [22/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



イーブイ「(どうしよう……私、どこまで行けば……)」


ジュペッタ「ケケケッ!」


イーブイ「(なんだか今日は特別暑いし……うぅっ……)」


ジュペッタ「ケケケケケケッ!」


イーブイ「(私……帰れるのかな……)」


ジュペッタ「ケケケケケケケケケッ!!」


イーブイ 「……」


ジュペッタ「ケ……」




イーブイ「うるさいっ!!!」



 ▼ 27 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:40:58 ID:NLVAUa2w [23/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告









第二話 二匹での旅路








 ▼ 28 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:41:33 ID:NLVAUa2w [24/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


イーブイ「うるさいよ!! さっきから変な笑い方してっ!!」


ジュペッタ「仕方ないだろ? 癖だからな! ケケケッ!」


イーブイ「もーっ! 私の事馬鹿にするならあっち行ってよ!」


ジュペッタ「やーだよ! だってそう言う約束だろ?」



そう、先程ジュペッタからオレンのみをもらった時……そう、イーブイは約束してしまった。


これからの旅、ジュペッタが同行しても構わないと……



イーブイは耳を垂らしてしょげる……


イーブイ「(あの時は目の前のオレンのみが欲しくてつい……けど、やっぱり我慢すればよかった……)」



激しく後悔しても、時既に遅し……そして、イーブイの心を読んでいるかのように、ジュペッタはニタニタと……


そんなジュペッタを見て、またイーブイはため息を漏らす……
 ▼ 29 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:42:56 ID:NLVAUa2w [25/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


トボトボと歩くイーブイ……後ろからニヤニヤと付いてくるジュペッタ……



イーブイ「ねぇ、ジュペッタ……さん?」


ジュペッタ「さんをつけるなって言っただろ? 気味が悪い……」


イーブイ「あ……ごめん。ジュペッタ……?」


ジュペッタ「なんだ?」


イーブイ「いったい私、どこまで来たのかな……私のいた街って、あとどれくらいで着くのかな……?」


ジュペッタ「俺も詳しくは知らねぇが……結構遠くまで来てしまったとは思うぜ?」



イーブイはその答えにまた、耳を垂らしてしょげる……



イーブイ「うぅっ……でも、早く帰らないとリリちゃんが……」


ジュペッタ「だから言ってるだろ? お前の主人はお前の事なんか探してねぇよ。行くだけ無駄だって」


 ▼ 30 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:44:22 ID:NLVAUa2w [26/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

イーブイはギリリと歯を食いしばる……


イーブイ「……なんで決めつけるのさ」


ジュペッタは怒りに震えるイーブイなど気にせず、トコトコと短い足で追い抜く……



ジュペッタ「人間なんて、みんなそんなもんだ」



イーブイ「……」


ジュペッタ「その浮かれた妄想も、今のうちに捨てといた方が身のためだぜ?」



ジュペッタはどんどん歩く……その背中は陽炎に揺れ……



ジュペッタ「こんな腐った世界、それくらいじゃなきゃ生き残……ん」



ジュペッタはふいに立ち止まると、空を見上げる……




ジュペッタ「……いや、なんでもねぇや」




そう言って、またケラケラと……


イーブイ「(……意味わかんない)」



イーブイは言い返すかわりに、ジュペッタをなんとか追い抜いた。

 ▼ 31 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:45:39 ID:NLVAUa2w [27/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



歩く……歩く……



ただ、何も考えず……蒸し暑い車道の隅を……




アスファルトは酷く熱く、足裏の肉球が焼けてしまいそうだ……




イーブイ「……」




何も話さないでいると、森から聞こえてくるテッカニンの鳴き声が、やけに大きく聞こえる……


何故か、その鳴き声は体感温度を上げ……じわじわと汗をふきださせる。



それでも、たまに車道を走っていくトラックが巻き起こす風が涼しい……







まぁ、その涼しさの直後……すぐにモワッと蒸し暑さが蘇るのだが。




 ▼ 32 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:47:03 ID:NLVAUa2w [28/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

そうして、どれだけ歩いていたのだろうか?



何度も何度も休憩を挟み……その度にジュペッタに嫌味を言われ……


それでも、なんとか歩き続けたイーブイの脚は……もう、まるで棒にでもなってしまったかのように……



……気がつくと日は落ち……そして、月が昇っていた。



山と空の境……夕闇空が美しく、その側には一番星が輝いている……



生温い風の中、ジュペッタはそんな星を見てケケケと笑った。



ジュペッタ「そろそろ、ここらで野宿でもするか?」



その提案にイーブイが飛び上がる……


イーブイ「の、野宿!? 嫌だよ!」


 ▼ 33 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:47:30 ID:NLVAUa2w [29/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


何処かに家でも無いかと辺りを見回すが……ここは山道……辺りに民家など一つも……


ジュペッタ「ケッ……これだから野良での暮らしに慣れてないあまちゃんは……」



また嫌味……その馬鹿にした言い方に少し腹を立てたが……まさに言う通りのあまちゃんである事は、イーブイも今日一日で嫌と言うほどわかっていた。


言い返す事など出来ない。出来るはずも無い。



その言葉を素直に受け止めると、悔しくて……でも、認めたくなくて……




泣きそうになっていた。




ジュペッタはそんな気持ちを知ってか知らずか……ただ、ニヤニヤと笑いながら、闇へ向かって歩き出す。


ジュペッタ「ほら、ついて来な」


その暗闇に足を踏み入れる事すら、イーブイには怖くて……でも、ジュペッタと離れれば、ひとりぼっちで……




それが怖くて、イーブイは急いでジュペッタについて行った。
 ▼ 34 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:49:52 ID:NLVAUa2w [30/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


山沿いの車道から外れ、二匹の背の丈よりも大きな草をかき分けて歩く……


もう、ほぼ真っ暗になりつつある……暗闇の中でも、ジュペッタの目にはしっかりと見えているらしい。



イーブイ「ねえ、どこに向かっているの?」



問いかけても、ジュペッタの返事はない……



イーブイのお腹がなる……あの後、イーブイは何も食べていなかった。


歩き疲れた上の空腹に、途方に暮れそうに……その時、急にジュペッタが立ち止まった。



ジュペッタ「おっ、いいもん見つけたぜ」



イーブイ「いい物?」



二匹は草むらを抜けた……


ジュペッタ「ケケっ、あれだ」



ジュペッタが指差す先……小さな祠がある。


祠の前には、二匹のポケモンが見えた。



ジュペッタ「交渉してくる。ここで待ってろ」


イーブイ「え? う、うん」

 ▼ 35 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:52:27 ID:NLVAUa2w [31/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジュペッタは祠の前、集まるポケモン達に近寄ると、知り合いでもないポケモン達に馴れ馴れしく話しかけた。



ジュペッタ「おう。食い物は残ってるか?」


オオタチ「え? あぁ、まだ腐ってない物が少しだけだけど……」


ジグザグマ「君、ここらじゃ見ない顔だね。どこから来たの?」


ジュペッタ「わからねぇ。だいぶ遠くの街から訳あってトラックに乗ってな……これから街まで歩いて帰るところだ」


ジグザグマ「そりゃ大変だ! ほら、このオボンのみを持ってって!」



ジグザグマは祠に供えられていたオボンのみを一つ、ジュペッタに手渡す……



ジュペッタ「あー……すまん。もう一個貰えるか?」



オオタチは辺りを見回した……



オオタチ「どうして? 君、一匹だよね?」


ジュペッタ「すまん。寝床で仲間が一匹待ってるんだ。そいつの分」


ジグザグマ「わかった。じゃあもう一個ね」



ジュペッタはもう一つ、オボンのみを受け取った。
 ▼ 36 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:53:14 ID:NLVAUa2w [32/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジュペッタ「ありがとな。助かった」


オオタチ「いいよ。困った時はお互い様だからね」


ジグザグマ「長旅みたいだけど、気をつけてね!」


ジュペッタ「おう」



ジュペッタはだるそうに手を振ると、そのままイーブイの元に戻ってきた。



ジュペッタ「ほら、向こうで食うぞ」


イーブイ「うん」



イーブイは背を押され、ジュペッタとともに草むらの中を歩き出す……



祠の前のジグザグマとオオタチは、遠ざかるジュペッタにいつまでも手を振っていた……



 ▼ 37 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:54:46 ID:NLVAUa2w [33/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

真っ暗い草むらを二匹は進む……



イーブイ「祠のお供えなの? そのきのみ……」


ジュペッタ「おう」


イーブイ「そんなの勝手に取ってきて良かったの?」


ジュペッタは心配そうなイーブイを見て、やれやれと……



ジュペッタ「人間ってのはな? いるかいないかもわからねぇ『神様』って存在に、やたらと食い物を供えにやってくる。けど、あんな所にいる訳もねぇんだ。本物の『神様』ってのはな……」



ジュペッタは持ってきたオボンのみをかじった。



ジュペッタ「だから野生のポケモンってのは……ああ言った、神様のいない祠に供えられた食い物を皆で山分けして、協力しながら過ごしてんだよ。この野生の世界、どこにいるポケモン達だって野生なら皆、そうやって生きているんだ」



イーブイ「へぇ……ジュペッタは物知りなんだね」


その言葉に、ジュペッタは立ち止まる……目を細め、夜空を見上げていた……




ジュペッタ「物知りなんかじゃねぇ……俺も昔、一匹で旅をしていた時に教わっただけだ……」


 ▼ 38 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:55:54 ID:NLVAUa2w [34/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



草むらの開けた先にあった切り株……ジュペッタはそこに腰掛けた。



ジュペッタ「この星空……今日は雨も降らなそうだ……この辺で寝ようぜ」


ジュペッタはイーブイにもう一つのオボンのみを投げ渡す……


イーブイ「うわっ! 投げないでよ!」


慌ててなんとかキャッチしたイーブイを見て、ジュペッタはケケケと笑った。


ジュペッタ「さっさと食ってさっさと寝な。今日は疲れたろ?」


イーブイ「……そうだね」



イーブイは目の前のオボンのみにかぶりついた。

 ▼ 39 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:56:45 ID:NLVAUa2w [35/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

オボンのみを食べ終える……その頃には、明かりの無い山は真っ暗に……



イーブイ「うぅ……暗くなっちゃったね……」


ジュペッタ「俺は暗くてもよく見える目なんだが……お前は何も見えないのか?」


イーブイ「うん……なにも」


ジュペッタ「使い勝手の悪い身体だな……ま、仕方ねぇか」



ジュペッタは辺りをガサガサと……枯れ葉や折れた枝を集め……その指先から、小さな鬼火を飛ばした。



ジュペッタ「ほらよ。これでどうだ」



火がついて、小さな焚き火が出来上がる……


明るくなった闇の向こう、ジュペッタの不気味な笑顔が浮かび上がり、またイーブイは飛び上がった。



イーブイ「うわぁあ!!」


ジュペッタ「ケケケっ! いいリアクションだな!」


イーブイ「〜っ!!」



また、してやられた……イーブイは頬を膨らせた。


 ▼ 40 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:57:28 ID:NLVAUa2w [36/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


イーブイは仕方なく、あまり乗り気ではなかったが……そのまま地面に寝転がった。



いつも寝る時は、ベッドやフローリングの上……


けど、今日は冷たく湿った土の上……



まるで雲泥の差。気持ちが悪いったら無い……



居心地の悪さにそわそわしていると、切り株にかけてニヤつくジュペッタと目があった。



ジュペッタ「今のうちに慣れておきな。これから……いや、もしかすると一生……お前は野良って可能性も0じゃねぇからな」


イーブイ「うぅっ……そんなのやだよ……絶対帰る! リリちゃんの元に!」



改めての決心……しかし、ジュペッタはそんなイーブイを見てケケケと笑うだけだった……


 ▼ 41 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:58:05 ID:NLVAUa2w [37/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



パチパチと、小さな焚き火が音を立てる……


生暖かい風が吹き抜ける……


その暗闇の中で、イーブイは目を瞑った……



イーブイ「(……本当に、帰れるのかな)」



悩めば悩む程、不安は無くならない……


その不安が無くならない要因の一つは……



チラと目を開ける……切り株に腰掛けたジュペッタ……チャックの様なその口がキラキラと不気味に輝く……


イーブイ「……」



その怪しい輝きを見つめているイーブイ……その心は小さな焚き火の様に、ゆらゆらと揺れていた……


 ▼ 42 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 15:59:34 ID:NLVAUa2w [38/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





ジュペッタとは今日出会ったばかり……まだ、よくわからない。



出会ってすぐに馬鹿にしてきて、なんかムカついたけど……




……




けど、出会った時から……その……助けてくれた。



何が起こったかわからなくて、パニックになった私の相手をしてくれたし……なんだかムカつく言い方だけど、坂を登る時は注意してくれたり、変な約束の上でだけどご飯をくれた。



さっきだって……私一匹だったら祠でご飯を分けてもらえるなんて、野生ポケモンの生き方なんて知らなかったし……こうして、焚き火も作ってくれた。



……




もしかして……ジュペッタって、いいポケモンなのかも……



自分が悪いポケモンと、勝手に決め付けていただけかもしれない……




馬鹿にされて一方的に怒っていたのは、いつも私……





私がそう、思いこんでいただけなのかも……

 ▼ 43 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 16:01:07 ID:NLVAUa2w [39/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告




イーブイ「……ねぇ」



ジュペッタ「あ? なんだ?」



イーブイ「……その……今日はありがとう」




ジュペッタはその言葉を聞くと、しばらく返事がなかったが……




ジュペッタ「そうか」



……そう、一言返すだけだった。
 ▼ 44 1◆v1GnTfaqxg 20/05/10 16:02:18 ID:NLVAUa2w [40/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


予想外の反応に、少し気まずさが残る……


面と向かってのありがとうが少し恥ずかしかった事もあり……イーブイは話題を変えた。



イーブイ「そうだ……さっき祠でオボンのみを貰った時、ジュペッタ言ってたよね。『昔、一匹で旅をしていた時に……』って……」



ジュペッタ「っ……」


イーブイ「ねぇ、ジュペッタはなんで旅をしていたの?」




問いかけて、すぐに違和感を感じた。


ケケケっと笑って旅の話でもしてくれるかと思って話を振ったのだが……そんな様子では無い。


ただ、遠く遠くを見つめているその目は……一体何を思っているのだろうか……



まるで闇の様に光のない……真っ黒いその目……



不意にジュペッタがこちらをギロリと……



ジュペッタ「昔話でも聞きたいのか?」


イーブイ「えっ……」


突然聞かれて少したじろいでしまったが、なんとか頷くことができた。


ジュペッタはそんなイーブイを見てケケケと笑う……


ジュペッタ「寝る前に一つ、聞かせてやるか……」



悪いことでも聞いてしまったのだろうか……しかし、頷いてしまった以上は聞くしかない。


イーブイは少しだけ恐れながら……それでも、どんな話を聞けるか……ワクワクしていた。

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