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【夏休みSS】友情の神隠し

 ▼ 1 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/22 01:40:05 ID:YOM2jr0U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



テッカニンの鳴き声が団地でも響き渡り、キマワリが嬉しそうに日光を浴びる、暑い夏。


市民プールは人で溢れ、観光地は賑わい、行楽へ出掛ける車で高速道路は大渋滞する、暑い夏。


みんなが待ちに待った夏休みは、僕にとって、憂鬱以外の何者でもない。



 ▼ 38 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:20:34 ID:j3qAgTLA [1/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

昨日の獣道を進む。


やはり途中から、なんとなく空気が変わったように感じ、そのうち、野生ポケモンの声が聞こえなくなる。


草木を掻き分けながら獣道を進むと、稲荷が見えてきた。


キュウコンは、昨日と同じように、社の屋根の上で、僕を待っていた。



 トモル 「こんにちは、キュウコン様!」

 イーブイ 「いぶぶぃ!」

 キュウコン <どうした、キュウコン“様”なんて>

 トモル 「だって、普通に呼ぶ訳には……」

 キュウコン <構わん。それに、我は それほど大それたものではない。“おじいさん”とでも呼ぶと良い>

 トモル 「えぇっ!? そんな罰当たりな……!」

 キュウコン <はっはっ。トモル、子供は子供の特権を使うべきだ。“おじいさん”で構わん>

 トモル 「じゃあ……はい。おじいさん、今日も特訓、よろしくお願いします!」

 イーブイ 「いぶ!」

 キュウコン <うむ>

 トモル 「あとコレ……、お猪口に注ぎますね」

 キュウコン <ほぉ、酒ではないか。よく持ってこれたな>

 トモル 「お墓参りって言って貰いました。今日は稲荷寿司は無いけど、飲んでください」


お猪口をティッシュで拭いて、貰った お酒を注ぐ。

無色透明な その液体は、ツンと独特な香りを社に漂わせ、小さな神棚に束の間の癒しを与えた。
 ▼ 39 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:21:08 ID:j3qAgTLA [2/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 トモル 「牛乳瓶入りで見てくれは悪いけど……、余ったお酒も置いておきますね」

 キュウコン <ありがとう。後でじっくり味わおう>


 イーブイ 「いぶ! いぶっぶぃぃ!」

 トモル 「ふふっ、イーブイ、やる気マンマンだね!」

 キュウコン <よし。“でんこうせっか”は昨日で筋を掴んだようだな。今日は応用系で、“とっしん”について手ほどきしてやろう>

 トモル 「はいっ!」

 イーブイ 「いぶぃ!」





こうして今日も、夕方まで、キュウコンの特訓は続いた。





“とっしん”。

“でんこうせっか”の強化版とも言えるワザとあって、頑張るイーブイには、昨日の特訓の成果が上手い具合に反映されている。

スピード、角度、そしてパワー。

自分より大きな相手を弾き飛ばす程の威力を生み出すノーマルタイプの大技に、イーブイは果敢に挑み続けた。



 ▼ 40 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:21:39 ID:j3qAgTLA [3/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そして次の日も。


午後に稲荷に向かい、僕とイーブイは特訓に励む。


“でんこうせっか”、“とっしん”に続き、3日目の今日は“かみつく”を極める。


小さく可愛らしいイーブイが、その牙を剥き出して攻撃する様は、ちょっとしたギャップだ。


キュウコンの厳しい指導の元、イーブイは、見違えるほど強く、めきめきと力を付けていった。







 キュウコン <そろそろ終わろう。イーブイ、お前さん、たった3日だと言うのに、随分と力が付いているようだな>

 イーブイ 「いっぶぃ!」


キュウコンの言う通り、イーブイのパワーは、僕も驚くほど強くなっている。

本気で特訓した成果だ。

いや、もしかすると、元々イーブイが秘めていたパワーを、僕が引き出し切れていなかっただけかもしれない。

そう考えると、キュウコンには感謝してもしきれない。


 トモル 「おじいさんのお陰です! また明日、よろしくお願いします!」

 イーブイ 「いぶぶぃ!」

 キュウコン <うむ。気を付けて帰るんだぞ>



キュウコンは昨日一昨日と同じように、社の屋根の上で、優しい瞳で、僕たちを見送ってくれた。


草木を掻き分けて獣道を進み、しばらくして社の方を振り向くと、昨日一昨日と同じように、そこにキュウコンの姿は無かった。


 ▼ 41 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:22:05 ID:j3qAgTLA [4/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 トモル 「凄いな、神様って。なんて言うか、神秘的」

 イーブイ 「いーぶぃぶ」

 トモル 「……なんでだろうね?」

 イーブイ 「ぶい?」

 トモル 「キュウコン。あんなに優しいのに、なんで神隠しを起こしてたんだろう?」


僕は疑問に思っていた。

キュウコンは、とても優しい。その姿も美しく、神秘的。


それなのに何故、神隠しを起こしてきたのか。

僕には分からない。あのキュウコンが人間やポケモンを消し去ってしまうなんて、とてもじゃないけど考えられない。


あの稲荷には近付かないようにと、集落には言い伝えられている。

一方、初めてキュウコンと会った時の話では、あの稲荷は昔、多くの参拝者が居たと言う。


もしかすると……、歴史の途中で、何かあったのかもしれない。


何か調べる方法は、無いだろうか……。


 ▼ 42 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:22:30 ID:j3qAgTLA [5/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 叔父 「神隠しの伝承を詳しく?」


その日の夕食の時、僕は叔父さんに聞いてみた。

勿論、僕が稲荷に行ったことや、キュウコンに会ったことは伏せて。


 トモル 「伝承ってことは、なにか記録が残ってるんですか?」

 叔父 「残念だが、神隠しのことは、俺が子供の頃から、親父に言い聞かされてたんだ。記録とかは知らねぇな」

 トモル 「そうですか……」

 叔父 「それに……だ。ここは小さな集落だ。そういう記録があったとしても、空襲でみんな焼けちまってるだろう」

 トモル 「空襲……、戦争ってこと?」

 叔父 「あぁ。この集落は、戦争で更地になってるんだ。記録なんざ、綺麗さっぱりだ」

 トモル 「そうなんだ……」

 叔父 「なんだ、神隠しが気になるのか?」

 トモル 「あっ……いや、自由研究になるかなーって思いまして」

 叔父 「ははっ、トモルは勉強熱心だな」

 叔母 「ねぇ。それなら隣の村の“分館”に行けば、なにか分かるんじゃないかしら?」

 叔父 「おぉ、分かるかもな」

 トモル 「分館?」

 叔母 「国の博物館の分館――えっと、メインのじゃなくて、村に作ってくれた小さな博物館があるの。そこのボランティアガイドの人で、確か戦争を経験した方が居たわよね」

 叔父 「そうだな。そいつに聞けば、伝承について何か分かるかもしれねぇ」

 トモル 「ホントですか!?」

 叔父 「お前、明日トモルを連れて行ってやれよ。俺は仕事休めねぇけど、お前なら1日くらい平気だろ」

 叔母 「そうね。トモ君、分館に行ってみる?」

 トモル 「はいっ!」

 叔父 「なら空いてる午前中が良い。自由研究なら、ちょうど良いんじゃねぇか?」

 叔母 「トモ君こっちに来て何処へも連れて行ってあげれてないし、たまにはお出かけしましょうか」

 トモル 「ありがとう! 叔父さん! 叔母さん!」

 ▼ 43 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:22:57 ID:j3qAgTLA [6/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


翌朝。



叔母さんの運転する車で、その分館とやらに向かった。

家を出て30分ほどで着いたその博物館は、お城の形をしていた。……言っても、時代劇やバカ殿様で見るような立派なものではなく、小さなものだけど。


 トモル 「凄い……、お城だ」

 叔母 「昔ここにあったお城を再建したものなのよ。さ、行きましょ」


再建なので、建物の中にお城っぽさは無いけれど(普通にクーラー付いてた)、この地域の文化財や武器、武具、当時の城主の歴史などが細かく展示されていた。


けど、僕が知りたかった神隠しについての伝承は、展示品の中には無かった。

やっぱり、戦争を経験したって言うボランティアガイドの人に聞かないとダメか……。



 叔母 「ほらトモ君。あのおじいさんよ」

 トモル 「えっ?」


叔母さんの目線の先に、腕章を付けたおじいさんが座っている。

髪の毛は無く、眉毛は白髪。でもピシッとワイシャツを着ていて、なんとなく格好良い。


 トモル 「あの……すみません」

 年老いたガイド 「おや、若いのが珍しいね。どうした?」

 トモル 「おじいさん、戦争を経験したんですよね?」

 ガイド 「あぁ。ワシは今年で92になるが、戦争のことは よーく覚えているよ」

 トモル 「じゃあ、神隠しの伝承について、なにか知っていますか?

 ガイド 「ふむ。隣の村の伝承じゃな」

 トモル 「空襲で記録が焼けちゃったらしくて。おじいさん、詳しいこと分かりますか?」

 ガイド 「そうさなぁ。その伝承自体は知っておるが、ワシの出身は別の村だから、詳しくは分からん」

 トモル 「そうですか……」

 ガイド 「ただ。神隠しする者と、神隠しから救う者。その二者が おったことは、聞いておる」

 トモル 「えっ!? それっ……詳しく教えてください!」
 ▼ 44 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:23:24 ID:j3qAgTLA [7/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ガイドの おじいさんは、「別の村の伝承だから、詳しいことは分からないし、必ずしも正しいとは限らない」と前置きしつつ、話してくれた。



その村には、昔から、神隠しを起こし、人やポケモンを消し去ってしまう「悪しき者」が存在した。

しかし、そんな「悪しき者」に立ち向かう「正しき者」も、また存在した。


「正しき者」は、神隠しに遭った者を、元の世界に導いた。

けれど、一度神隠しに遭ってしまった者は、記憶が抹消されてしまうらしい。その辺は、叔父さんが言っていた「空っぽの人間になっちまう」ってことと合致している。


その当時は、「神隠しに遭っても正しき者が連れ戻してくれる」と信じられており、時代もあってか、今のように恐れられていなかったらしい。


しかし事態が変わったのは、戦争だった。


空襲で村は壊滅。更地になってしまった。

多くの人やポケモンが亡くなり、その中には、神隠しから救う「正しき者」も含まれていたらしい。


「悪しき者」、神隠しを起こす者は、その力ゆえか、空襲から逃れた。戦争から生き残った。

「正しき者」が居なくなった今、「悪しき者」を止める術は無い。


神隠しが再び起こりはじめ、神隠しに遭った者は消え去り、二度と帰って来なくなった。


そんな事態に恐れを成した村人たちは、決まって神隠しが起こる稲荷への立ち入りを、固く禁じた。

そして年に数回、神道者が稲荷を管理することで、神隠しが再び起こらないよう、祈りを捧げているらしい。






 ▼ 45 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:23:53 ID:j3qAgTLA [8/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 叔母 「ガイドのおじいさん、親切だったわね」

 トモル 「うん……」



博物館の帰り、車の中で、僕は考える。


神隠し自体は昔からあったけど、稲荷に立ち入るなと言われ始めたのは、戦後になってから。割かし最近の話だ。

もっとも、本当は昔から稲荷には立ち入るなと言われていて、それが厳しくなったのが、最近なのかもしれない。


 トモル (あのキュウコンが……、悪しき者?)


僕にはそれが、信じられなかった。

ただ、状況証拠と言うか、話の筋は通っている。


キュウコンと言えば、九本の尾に妖力を宿していて、1000年も生きると言われている。

その妖力を持ってすれば、戦争を生き延びることは可能なはずだ。


そして、悪しき者――キュウコンによる神隠しから人々を救う存在である、正しき者。

ガイドのおじいさんにも、その存在が何なのか、詳しくは分からないらしいけど、正しき者が戦争で亡くなって、神隠しが再発した。


 トモル (ってことは、このままだと、僕も神隠しに遭うってこと……?)



いや、そんなはず無い!


キュウコン、あんなに優しいのに。

イーブイが強くなるために……、僕がこっちの子供と友達になるために、協力してくれてるのに。


キュウコンが悪し者だなんて……、何かの間違いに決まってる!


 ▼ 46 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 20:24:17 ID:j3qAgTLA [9/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


家に帰って、お昼ご飯を食べて。


僕とイーブイは、キュウコンの待つ稲荷へと向かった。



行くのに躊躇いは無い……と言ったら嘘になる。



あの優しさは、僕を油断させるための罠なのかもしれない。

本当は、僕とイーブイを、神隠しに遭わせようとしているのかもしれない。

「稲荷に立ち入るな」という伝承のせいで、村の人たちは稲荷に近付かない。すなわち、もう長いこと、神隠しは起きていない。

じゃあ、久々に稲荷に立ち入った僕は、恰好の獲物……なの?


 トモル 「いや違う! そんなこと、ある訳が無い!」

 イーブイ 「いぶっ!?」

 トモル 「……あぁごめんイーブイ。なんでもないよ」



ダメだダメだ。

こんなこと考えたら、キュウコンに失礼だ。



 トモル 「稲荷の入口。行こう、イーブイ」

 イーブイ 「いぶ!」


そうして今日も僕とイーブイは、稲荷へと続く獣道に、足を踏み入れた。




 ▼ 47 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:54:33 ID:j3qAgTLA [10/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 トモル 「……おかしい」


 イーブイ 「ぶぃ……」



僕とイーブイは、違和感を抱き始める。




 ▼ 48 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:54:45 ID:j3qAgTLA [11/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

なんとなく雰囲気が違う。


野生ポケモンの声が聞こえない。





これは、昨日も一昨日も感じたことなので、別に不思議では無い。





ただ、おかしいのだ。



いつまで歩いても、稲荷が、キュウコンが屋根で待っている社が、見えてこないのである。

 ▼ 49 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:55:05 ID:j3qAgTLA [12/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

鬱蒼と木々が立ち並ぶ、昼間でも薄暗い森。


足元を隠すように草木が生い茂る、先の見えない獣道。





それらは昨日も一昨日も通った、稲荷へと続く道。この道は、これが普通。




でも、おかしいのだ。



どれだけ歩いても、稲荷が、キュウコンが屋根で待っている社が、見えてこないのである。

 ▼ 50 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:55:19 ID:j3qAgTLA [13/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 トモル 「ねぇイーブイ……、これ、もしかして……」

 イーブイ 「いぶ……」





 神 隠 し 。





人やポケモンを神域に連れ去り、この世から消し去ってしまう、奇怪現象。



 トモル 「嘘……だよね、おじいさん? 嘘ですよね!?」



稲荷の神様である、キュウコン。


信じたくない事実が、僕に圧し掛かる。


やっぱりキュウコンは、僕たちを油断させていたの?


久ぶりに稲荷に立ち入った僕たちを、神隠しに遭わせるの?





博物館で聞いた、戦争を生き延びた「悪しき者」。


戦争で亡くなった「正しき者」が居ない今、神隠しを止める者は居ない。




 トモル 「嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だっ……嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 ▼ 51 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:55:31 ID:j3qAgTLA [14/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 イーブイ 「ぶっ……いぶぶぶい!」

 トモル 「えっ……」


と、イーブイが激しく威嚇を始める。

こんなに険しい表情のイーブイを見るのは、初めてかもしれない。



威嚇――、すなわち、相手が居る。


そこに、“何か”が居るのだ。



僕たちを優しく見守ってくれていた赤い瞳は、血に飢えた色だったのか。


僕たちを優しく見送ってくれた艶やかな九本の尾は、妖力を解き放つ時を窺っていたのか。



そこに居る“何か”の正体を、僕は……僕は、認めたくなかった。

 ▼ 52 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:55:42 ID:j3qAgTLA [15/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 「のぉぉわぁぁぁぁぁぉぉぉぉぉぉ」



 トモル 「えっ!?」



僕の耳に聞こえたのは、重々しくもあり、生々しくもある、まるで何かが這いずるような重低音だった。


顔を上げる。


顔を上げて、硬直する。



そこに居た“何か”は――。



 ヨノワール 「よのぉぉぉぉぉぉぉ……」



赤い一つ目と、腹に浮かぶ、黄色い不気味な模様。


あの世に連れてかんとする大きな手。


霊界からの指令を受けるとされている、頭に刺さるアンテナ。




通常よりも大きな悪霊、ヨノワールだった。

 ▼ 53 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:55:53 ID:j3qAgTLA [16/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 トモル 「そうか……」



僕の中で、全てが繋がった。



 トモル 「ははっ……、そういうことだったのか」



キュウコンの言葉。


集落に伝わる伝承。


博物館で聞いたこと。



 トモル 「そうだよ……、そうでなきゃおかしいもん」




神隠しの真実に、僕は辿り着いたのだ。

 ▼ 54 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:56:32 ID:j3qAgTLA [17/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ヨノワール 「のわぁぁぁぁぁ……」


 トモル 「クッ……、まずい!」



ヨノワールは、ゆっくりと こちらに近付いてくる。


赤い目を鋭く光らせ。


大きな手で あの世へと誘い。


腹の口を開けて魂を求め。



 イーブイ 「いっ……ぶぅぅぅぅい!!!」

 トモル 「あっ……ダメだイーブイ!」



イーブイが駆けだす。

襲い来る悪霊に立ち向かうべく。



  ― スカッ!


 イーブイ 「いぶ!?」


 トモル 「ゴーストタイプにノーマルワザは効かないんだ!」



“とっしん”を繰り出したイーブイだが、それは無残にも、ヨノワールの体を すり抜ける。

凄い勢いだったのに。当たれば相当な威力だっただろうに。

キュウコンと特訓した“とっしん”は、この一大事に、一切の効果を生み出さない。

 ▼ 55 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:56:45 ID:j3qAgTLA [18/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 トモル 「おじいさんは……、キュウコンは、神隠しなんて、していなかったんだ……」


これは一種の、答え合わせ。


 トモル 「むしろその逆で、キュウコンは……、神隠しに遭った人を救う、“正しき者”だったんだ……」



戦争を生き延びた「悪しき者」。

それは正しく、いま目の前にいる、ヨノワール。


戦争で亡くなった「正しき者」。

それこそ正しく、僕たちに優しく接してくれた、キュウコン――おじいさん。



少し考えれば、分かることだった。



いったいどうすれば、妖力をもって戦争を生き延びれると言うのか?

実体のないゴーストタイプなら、戦争を生き延びることくらい簡単だ。


神域に連れ去るのが神隠し?

霊界に連れ去ることこそ、本当に恐れられる神隠しと呼べる。



 『 キュウコン <構わん。我も こちらに帰ってきている間、お前たちの成長を見たいからな> 』



なにか引っ掛かっていた、キュウコンの言葉。

“こっちに帰ってきている間”――。


今は“お盆”だ。亡くなった魂が現世に帰って来る時だ。



そう。

戦争で亡くなった「正しき者」はキュウコンのことで、そのキュウコンが今、現世に、あの稲荷に、帰って来ていたのだ。
 ▼ 56 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:56:56 ID:j3qAgTLA [19/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キュウコンの体毛は、普通は黄金色だ。

でもあのキュウコン――おじいさんは、凛とした、白だった。

実体ではなく魂だけの姿だから、透き通るような純白だったのだ。


そもそも、普通のポケモンが、普通に喋れること自体、おかしかったのだ。

お盆で里帰りしてきた魂だからこそ、ああして僕と、コミュニケーションを取れていたのだ。





おじいさんは――、あのキュウコンは、この世の者では無かったのだ。





途端に涙が溢れ出る。

もう おじいさんに会えない悲しさ。やり場のない悲しさ。


そして、少しでも おじいさんを神隠しの元凶、「悪しき者」だと疑ってしまった自分が、酷く、酷く、情けなくて。



 ヨノワール 「のぉぉぉぉぉ!!!」
 ▼ 57 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:57:15 ID:j3qAgTLA [20/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨノワールの雄叫びに、僕は我に返る。


溜め込むような準備行動を取ったヨノワールが、イーブイ目がけ突っ込んでくる。

ダメだ、今は泣いてる場合じゃない!


 トモル 「避けて!」

 イーブイ 「ぶいっ!」


ギリギリのところで、イーブイはヨノワールの攻撃を回避。

今のワザ、準備行動を見るに、“しっぺがえし”か。


 トモル 「こんな神隠し……抜け出してやる! 抜け出して、おじいさんに謝るんだ!」

 イーブイ 「ぶい!」

 トモル 「行くよイーブイ! “でんんこうせっか”で背後を取るんだ!」

 イーブイ 「いぶい!」


たった3日だけど、僕とイーブイは、おじいさんの特訓を受けた。

たった3日だけど、イーブイは格段に強くなった。この逞しい顔を見れば分かる。


 トモル 「“かみつく”!」

 イーブイ 「いぶっ……ぶい!」


  ― ガキン!


 ヨノワール 「んのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


悪タイプのワザはヨノワールに効果抜群。

おじいさんとの特訓で強化された“かみつく”は、ヨノワールに大きなダメージを与えることに成功した。
 ▼ 58 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:57:35 ID:j3qAgTLA [21/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ヨノワール 「よのぉぉぉぉぉっ!」


しかし、これだけではヨノワールは倒れない。

赤い眼を更に鋭く光らせ、恨めしい声で僕たちを威嚇する。


 トモル 「クッ……」

 イーブイ 「……いっぶ!」


と、イーブイが声を上げ、森の奥を見つめる。


 トモル 「あれは……!?」


森の奥で、何かが光っている。

ユラユラと、オレンジ色の明かりが灯っている。


 トモル 「出口……なのか? 神隠しの?」

 イーブイ 「いぶ……」

 トモル 「考えるより行動だ! イーブイ“すなかけ”!」

 イーブイ 「ぶっ!」 ザザッ!


 ヨノワール 「のっ!?」


 トモル 「走るよイーブイ!」

 イーブイ 「ぶい!」
 ▼ 59 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:57:46 ID:j3qAgTLA [22/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


僕とイーブイは、その光を目がけて走った。

薄暗い森の中、草木を掻き分け、ヨノワールに追いつかれないように、全力で。





ユラユラと光る明かりが、だんだん大きくなってくる。





暖かい光の元に、だんだん近づいていく。







茂みの塊を無理矢理飛び越えると、森の中の開けた空間。







そこに、光りの正体があった。






 ▼ 60 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:57:57 ID:j3qAgTLA [23/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 トモル 「あぁっ……!」

 イーブイ 「いぃぶっ……!」





オレンジ色の炎を立てて、燃えているのだ。


バチバチと音を立てて、燃えているのだ。



熱気と、煙と、眩しさと。




稲荷の社が、燃えているのだ。




 トモル 「おじいさんっ……、おじいさん!?」

 イーブイ 「ぶい! いぶっ……いぶぶい!?」




 ― 「正しき者」は、神隠しに遭った者を、元の世界に導いた。



ふと、博物館で聞いた言葉を思い出す。


元の世界に導く――、この炎は、正しく、現世への道標ではないか。



この稲荷は、言ってしまえば、キュウコンそのものだ。

キュウコンは、おじいさんは、その身を挺して、僕とイーブイを、神隠しから救いだしてくれたのだ。




 トモル 「あうっ、うぐっ、ひっく……、おじいさああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 ▼ 61 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:58:07 ID:j3qAgTLA [24/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 カズサ 「うわ! やっぱ燃えてるじゃん!」

 チバオ 「はっ……トカイジン!?」


カズサとチバオの声が聞こえた。


 カズサ 「なんでトカイジンがココに居るんだよ!?」

 チバオ 「オレたち、近くの小川で釣りしてたんだ。そしたら炎が見えて……、これ、お前が燃やしたのか!?」

 カズサ 「って言うかこれ……、あの稲荷じゃねぇか!?」

 チバオ 「神隠しの……トカイジン! テメェなんて罰当たりなことしてんだよ!?」

 カズサ 「稲荷に近付いたら神隠しに遭う……、燃やしてヒーロー気取りか!? 元凶燃やして神隠しを封じたってか!? バカじゃねぇか!?」


 トモル 「違うっ!!!」


 チバオ 「なっ……」

 カズサ 「何が違うんだよ!? んなことより逃げねぇと! 神隠しが……」


 トモル 「おじいさんは! この御稲荷様は! 神隠しから僕たちを守ってたんだ! 神隠しの元凶だなんて! そんな侮辱許さないぞ!!!」


 チバオ 「なにをっ……」



  ヨノワール 「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



 カズサ 「はっ……なんだあのデカいヨノワール!? 野生か!?」

 チバオ 「しかもあれ……相当ヤバい怒り方してるぞ!?」
 ▼ 62 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:58:28 ID:j3qAgTLA [25/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 トモル 「あいつが神隠しの元凶だ」

 カズサ 「はっ?」

 トモル 「今までの神隠しは、あいつの仕業だったんdな! 御稲荷様は! この美しく燃えてる御稲荷様は!!! 僕たちを守ってくれてたんだよ!!!」

 カズサ 「トカイジンなに言って……」


 ヨノワール 「のぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉ!」


 チバオ 「ヤバい! カズサ頼む! オレのラッタじゃ、ヨノワールにダメージを与えられねぇ!」

 カズサ 「チッ……使えねぇなぁ! 出ろゴーリキー!」

 ゴーリキー 「りき!」

 チバオ 「って言うかゴーリキーの格闘ワザじゃ……」

 カズサ 「一応対策は ある! ゴーリキー、“はたきおとす”攻撃だ!」

 ゴーリキー 「りぃぃっき!」


  ― バシン!


 ヨノワール 「よのっ……」


 カズサ 「へへっ……、本来のタイプじゃねーけど、オレの鍛えたゴーリキーの攻撃力! けっこう痛手だろ!」

 チバオ 「さすがっ!」


 ヨノワール 「よのぉぉぉぉっ……のわっ!」


  ― クワッ!


 ゴーリキー 「りきっ!?」 ドクン


 カズサ 「どうしたゴーリキー!? 怯むな! 連続で“はたきおとす”!」

 ゴーリキー 「りきっ……りきりきぃっ!?」 アタフタ

 カズサ 「オイどうした!? なんで動かねぇんだ!?」

」
 ▼ 63 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:58:39 ID:j3qAgTLA [26/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 トモル 「“かなしばり”だ……」

 カズサ 「はっ!?」

 チバオ 「そんなっ……、唯一の有効打を!?」


 ヨノワール 「のぉぉぉぉぉっ!」


次の瞬間、ヨノワールの その大きな拳が青白く光ったかと思うと。


  ― バキィッ!


 ゴーリキー 「りっ!?」


冷気を纏った拳が、ゴーリキーを襲った。

その巨大な悪霊から放たれた打撃はゴーリキーを弾き飛ばし、大木に打ち付けた。


 カズサ 「ゴーリキー!?」

 チバオ 「ヤバいよ……! オレっ、まだ死にたくないよ!」


マズい。本格的にマズい。

おじいさんに、現世に引き戻して貰ったけど……、この状況、もはや僕たちには、どうしようも出来ない。


イーブイの“かみつく”で抵抗しようにも、“かなしばり”を受けたら終わりだ。


 イーブイ 「ぶぃっ……」

 トモル 「どうすればっ……、どうすれば良いんだよ!?」
 ▼ 64 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:58:50 ID:j3qAgTLA [27/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



  <諦めるのは、良くないな>




 トモル 「おじいさん!?」

 イーブイ 「ぶぶい!?」


 カズサ 「はっ? 誰も居ねぇぞ!?」

 チバオ 「うわぁぁぁぁっ、グスッ、おかあちゃぁぁぁぁぁん!!!」



  <トモル。イーブイ。強くなったお前たちに、我の全てを託そうじゃないか>



 トモル 「託すって……、どういうこと!? おじいさん!?」

 イーブイ 「!」


その時、イーブイが走り出した。


 トモル 「えっ……イーブイ!?」


向かった先は、激しく燃えさかる社。


 トモル 「……ダメだよイーブイ! 大火傷しちゃう!」


しかしイーブイは止まらない。


まるで、何かに引き寄せられているかのように。

まるで、何かの定めを受け入れたかのように。


 イーブイ 「いぶぅぅぅぅぅぅい!!!」


一切の迷いなく、炎の中に、飛び込んだ。


 トモル 「イーブイっ!?」
 ▼ 65 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:59:01 ID:j3qAgTLA [28/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

次の瞬間。



 トモル 「えっ!?」

 カズサ 「うっ……この光っ!?」



炎の中で、輝きが生まれた。


激しく燃える炎よりも明るく、暖かく、美しく。


この空間全てを眩く照らす、希望の光。



 ブースター 「ぶぅぅぅぅぃ!!!」



 トモル 「あっ……、ぁぁっ……、イーブイ……!?」

 カズサ 「進化……しやがった」



炎の中から現れたのは、一回り大きくなった、僕のパートナー。


オレンジ色の体、大きな耳、凛々しくなるも つぶらな瞳。

首回りと額には、ふわり気持ち良さそうな体毛。

尻尾のモフモフも艶やかで。



それはまるで――。



 トモル 「おじいさん……」



キュウコンの意思と姿を、受け継いだかのようで。

 ▼ 66 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:59:11 ID:j3qAgTLA [29/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ブースター 「ぶぅぅぅ!」


  ― ガキン!


 ヨノワール 「のわっ……!?」



ブースターの姿に見惚れていると、彼は自ら、ヨノワールに噛みついた。

進化して格段に上昇したパワー。先ほどイーブイが喰らわせた“かみつく”より、ダメージは大きい。


しかし――。



 ヨノワール 「よのぉぉぉぉっ……のわっ!」


  ― クワッ!



 ブースター 「ぶっ……!」


“かなしばり”が発動。

“かみつく”が封じられるてしまう。
 ▼ 67 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:59:22 ID:j3qAgTLA [30/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 トモル 「くっ……そぉぉぉ!」

 カズサ 「おいトカイジンなんとかしろ! もうお前だけが頼りなんだよ!」

 トモル 「そうは言っても!」


そうは言っても。

ブースターにとっても唯一の有効打である“かみつく”を封じられたら……。



 ブースター 「ぶぅぅぅぅぅぅっ……」 ゴォォォォl


 トモル 「ブースター!?」



けれど、ブースターは、諦めていないようだ。

ブースター自身が赤々と燃え上がり、その炎は、どんどん大きくなっていく。



 諦めるのは良くない。


 我の全てを託す。



おじいさんの言葉を思い出す。

おじいさんが……、身を挺して僕たちを助けてくれた、おじいさんの、最後の言葉を。



 トモル 「そうだよ。諦めちゃダメなんだ。ブースターも……諦めてないんだよね!?」

 ブースター 「ぶぅ!」
 ▼ 68 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:59:32 ID:j3qAgTLA [31/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

おじいさんの全て……。


燃えしきる炎と、特訓した“とっしん”。





今の僕たちなら――出来るっ!
 




 トモル 「ブースター!」

 ブースター 「ぶぅ!」



 トモル 「 フ レ ア ド ラ イ ブ ! ! ! 」

 ブースター 「ぶぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁっ!!!」





ブースターは、火球となる。


おじいさんの意思と魂を受け継いだ、神々しい光りを放ち。


激しく噴き出した炎を全身に纏い、オレンジ色に輝く球体となって、一直線に、ヨノワールに激突した。
 ▼ 69 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:59:44 ID:j3qAgTLA [32/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ヨノワール 「っがっ……!?」


その衝撃に、ヨノワールは声にならない音を上げる。

弾き飛ばされ、地面を抉りながら転がり、大きな岩にぶつかって、静止。

そして次の瞬間、ヨノワールから、大きな火柱が上がった。



 ヨノワール 「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおおおぉおおおおぉ!!!!!」



断末魔、って、こういうのを指すんだろう。


ブースターの打ち出した最大のワザが、ヨノワールを仕留めた。


もがき、苦しみ、のたうちまわったヨノワールは、炎と共に、その場からスッと消えて行った。


 トモル 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 ブースター 「ぶぅ……!」



 トモル 「やったぁぁぁぁ!!!」

 ブースター 「ぶぅぅぅぅぅぃ!!!」
 ▼ 70 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/23 23:59:54 ID:j3qAgTLA [33/33] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


僕の――、僕とブースターの――。


いや、僕とブースターと、おじいさんの掴んだ、勝利である。



 トモル 「ありがとうっ……グスッ、ありがとう、おじいさん」

 ブースター 「ぶぅ! ぶぅぃ! ぶぅ!」



 カズサ 「すげぇ……、トカイジンのやつ……」

 チバオ 「あいつ、あんなに強かったのか……」





ごめんなさい、おじいさん。

少しでもおじいさんが「悪しき者」だと疑って。


おじいさんの想い、意思、僕とブースター、しっかり受け継いだからね。

僕たち、おじいさんと特訓したこと忘れない。おじいさんと過ごした日々を、絶対に忘れない。


だからこれからも……、これからも、僕たちのこと、見守っててね、おじいさん!

 ▼ 71 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/24 00:00:11 ID:KUVIV3tw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






夏休みが終わるのは、あっという間だった。





燃えた社は、元には戻らない。


でも、あの炎はまわりの木々には燃え広がらず、社が燃え尽きると同時に鎮火した。

きっと おじいさんは、集落に被害が及ばないよう、自らの炎を消し去ったんだと思う。


おじいさんは、最後まで、集落を、僕たちを、守ったのだ。




 『1番線の列車、間もなく発車します。お見送りの方、列車から離れて下さい』



 カズサ 「じゃあな、トモル。また来いよ!」

 チバオ 「次にバトルする時は負けないからな!」

 トモル 「うん。カズサ、チバオ。元気でね!」

 ブースター 「ぶぅ!」



あれから今日まで、カズサとチバオとは、親友のように仲良くなった。

これも全部、おじいさんのお陰だ。



 トモル 「また来年! 絶対に来るから!」

 カズサ 「あぁ! 待ってるぜ!」

 チバオ 「今度は海とか連れてってやるからな!」

 カズサ 「楽しみにしてるよ!」
 ▼ 72 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/24 00:00:17 ID:KUVIV3tw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


神隠しの伝承は、きっと、訂正されると思う。


稲荷は、あの御稲荷様は、恐怖ではないと。

昔から集落を守っていた、素晴らしい、御稲荷様だと。




 カズサ 「じゃなトモル! 元気でなぁぁぁぁ!」

 チバオ 「待ってるからなぁぁぁぁぁ!!!」





僕は2人が見えなくなるまで、列車から手を振り続けた。



僕の憂鬱な夏休みは、こうして終わりを迎えた。



……あ、「憂鬱な夏休み」が、今年で最後ってことね。


来年の夏休みはきっと、素晴らしいものになるはずだ。



 トモル 「ね、ブースター?」

 ブースター 「ぶぅ♪」




   ――― 完 ―――



 ▼ 73 ジジーロン@のろいのおふだ 20/08/24 00:36:05 ID:1K9wC1Fs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!素敵な物語をありがとう
 ▼ 74 タチフサグマ@ナゾのみ 20/08/24 11:16:51 ID:KT4I1nSU NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 75 甲州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/24 23:23:23 ID:KUVIV3tw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



以上で完結です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


このSSは、<【SS企画】陣営戦!! 夏休みVSお仕事勝負!!!!!> の投票対象外作品(いわゆる応援枠)です。
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=1256846



― このSSのモデルとなった場所・事柄 ―


 ・トモルの家:横浜市内

 ・トモルが乗った列車:小湊鐡道(五井〜上総中野)

 ・叔母の家と集落:千葉県夷隅郡大多喜町、田代地区

 ・隣の村の博物館:千葉県夷隅郡大多喜町、大多喜地区「県立中央博物館大多喜城分館」

 ・御稲荷様の写真:兵庫県姫路市、書写山にあった稲荷堂

 ・戦争について:1945年6月10日、千葉空襲

 ・神隠しについて:千葉県市川市の「八幡の藪知らず」は、神隠しの伝承がある


 ▼ 76 ニャスパー@ノワキのみ 20/08/25 15:04:00 ID:l5FkQ1AA NGネーム登録 NGID登録 報告
ありがとう
 ▼ 77 ワニノコ@とけないこおり 20/10/03 17:47:40 ID:rdpQ48A2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!!
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1273432
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