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【人♂×ポケ♀】神と少年

 ▼ 1 ゲキ@ヒメリのみ 20/12/16 22:51:28 ID:8qQICRC. NGネーム登録 NGID登録 報告
現代社会とポケモン世界のブレンドです
 ▼ 95 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 10:41:43 ID:GNzURlB2 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
男「それ俺に言ってんのか?」

コケコ「さぁ」

男「お前さぁ、出会いを大切にだとか何だとか言ってるけど俺達の出会いって最悪だからな?」

コケコ「奇抜で良いと思う ったんだけど」

男「奇抜すぎてもはやコントなんだよ」


男とコケコのくだらない会話が周りに聞こえることは無いが、もし周りからコケコが見えていたとしたら、2人を出会って1ヶ月も経っていない程度の関係とは思わないだろう。


男「お、見ろよこれ」


ポケモン向けの雑貨屋で立ち止まり、目に止まった空色のスカーフを手に取る。


男「これお前に似合いそうだぞ」

コケコ「私に?」

男「ほら、首元……はここで合ってんのかな」

コケコ「こういうのは着けたことないからよく分からない」

男「見た目は派手な癖してこういうのには無頓着だよなお前らって」

コケコ「ポケモンの間ではこういうのが流行ってるの?」

男「流行ってるっていうか……トレーナーの趣味だな」

コケコ「前に主の部屋で見た番組に出てたポケモン、確かこういうの着けてた気がする」

男「バトルでも良く愛用されてるんだよな」

コケコ「……これを着けた私は……主にとってどう映ってるの?」

男「ん?似合ってると思うぞ」

コケコ「……そう」

男「何だよ微妙な反応だな」

コケコ「私の事を見てくれてるって事が分かって嬉しいだけ」

男「嬉しいって顔してないけどな」

コケコ「顔に出すのが苦手なの」

男「ま、お前はいつもそうか」

 ▼ 96 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 11:09:44 ID:GNzURlB2 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告



男「お前はさ、表情には出ないけど意外と感受性は豊かだよな」

コケコ「そう?」

男「今楽しそうにしてるのは伝わってくるぞ」


コケコは先程男からプレゼントされたスカーフを身につけたまま、男が手に持っているクレープを見つめていた。


男「これブルルが好きなんだよ」

コケコ「ふぅん」

男「ほら、半分やる」

コケコ「……なけなしのお小遣いで守り神に甘い物を奢るなんて随分お人好しね」

男「要らないなら俺が目の前で一口で食ってやるぞ」

コケコ「それはダメ」

男「素直に欲しいって言えや」


──とはいえ、よく考えてみれば俺がこいつへの施しをする義務なんて無いはずだ。

──財布を持ってない?デートだからこそ奢る?いや、もっと単純明白な理由があるはずだ。


コケコ「……甘い」

男「……単に、嬉しそうにしてる姿を見ると俺も嬉しい……ってだけなんだよな」

コケコ「何?」

男「いや、こっちの話」

コケコ「そう」

男「頭のそれピヨピヨしてるな」

コケコ「風に吹かれてるだけ」

男「今日は風は無いはずだぞ」

コケコ「…………」

男「うんうん、そうだよなー。幸せな時は落ち着かずに居られないよな、わかるわかる」


誘いを受けてよかった。そう思わせてくれるような反応だった。

直感で分かるが、おそらくこんな反応を他に見せたことは無いのだろう。

心から楽しそうにしてる姿は珍しい以前に、男の目には年相応の女の子と変わらずに写っていた。
 ▼ 97 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 11:27:59 ID:GNzURlB2 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
コケコは男の反応など構わず、男の手から直接クレープを貪る。

男 (こうして見るとその辺に居るポケモンと変わらないな)

夢中になっている姿には思わず愛らしさを感じてしまう。

男「美味いか?」

コケコ「うん」

男「そりゃ良かった」

コケコ「こういったことは凄く久しぶりだったから……嬉しい」

男「供え物か?まぁ島の守り神やってたのはかなり昔だもんな」

コケコ「ううん、それより後にも……」

男「……ん」

コケコ「なんでもない」


コケコは軽く応える。

供え物と言っても、こういう現代の甘味は味わったことが無いのだろう。

神への供え物というと、どうしてと堅苦しい印象になってしまうのは仕方ないと思っている。

男 (俺も昔は供え物とか用意したなー……)


──神もれっきとした生き物なのだから、やはり調理された物の方が嬉しかったりするのかな。

昔に何度も野菜を供え物として貢いだことはあるが、今思えば周りのポケモン達に餌を与えていただけな気もする。


コケコ「ねえ、主」

男「どうした?」

コケコ「今日は……凄く楽しい」

男「そーか」


思わず顔が綻んでしまう。

女の子とデートして喜んでもらえた時も、こんな風に嬉しいと思えるものなのだろうか。ここまで特別と感じられるのだろうか。

いや、これは確かに ”特別” だ。

自覚はあった。

だからそこそ──


男「俺も楽しいよ」


──俺はこいつに対して、形容し難い情を抱いている。
 ▼ 98 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 11:53:10 ID:GNzURlB2 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
見上げた空はほんのりと夕日の色が混じっていた。

時刻は17時を半周した頃。世界が赤く染まる合図だ。


男「楽しかったな」

コケコ「うん」


帰り道、特に会話をすることも無く明後日の方向に視線を向けながら呟いた。

今日1日のデートを終えて、コケコのことを深く知れたことは良かった。

だがそれ以上に、男はコケコに自分を守るという強い意志を感じられたのが何よりも嬉しく感じた。

守り神としての使命ではなく、1匹の神──ポケモンとして。

再び空を見上げれば、数匹の鳥ポケモン達が巣へ戻る準備をしている。


男「……あっという間だったな」


明日はバイトか、と考えると不思議と心が沈んでくる。世間で言えば日曜の夕方のような感覚だろうか。

──うーん。そう考えるとだるくなってきた。

ボーッとしていると、肩に何かが落ちてくる感覚がした。


男「……ん、うわ、鳥ポケモンの糞かよ……」


せっかくのデートの帰り道なのに最悪だ──が、自分で重い空気を生み出していたからか、笑い話が出来たと思うと自然と何かが込み上げてきた。


コケコ「くす、運が悪いのね」

男「神にでも祈っときゃ良かったか」

コケコ「そのままでも似合ってると思う」

男「うるせえ」


軽くいがみ合っていると、何かに気付いたかのようにコケコが言葉を切り出した。


コケコ「……神?」

男「ん?あぁ、お前が神だよな」

コケコ「……ぁ、うん」


何故だか歯切れの悪い反応を見せる。


コケコ「今……私は……私は、貴方の……」
 ▼ 99 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 12:03:54 ID:GNzURlB2 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
男「どうした?変な反応して」

コケコ「……ごめんなさい」

男「あー、今のか?いや別に大したことじゃないぞ?守り神だって生き物なんだし、全部の不幸から守ろうなんて……」

コケコ「……違う」


コケコは困惑していた。


コケコ「…………」

男「変な奴だな、行くぞ」

コケコ「ま、待って」

男「……どうしたんだよ、お前らしくないぞ」

コケコ「今は……私は……」

男「……?」

コケコ「……今の私には……貴方を……」

男「まぁいいや、帰ったら話聞いてやるよ。ほら早く帰るぞ」

コケコ「ぁ……待って……!」


これは後の教訓だが、道を歩く時はしっかりを前を見ないと危険だということ。

自分の数歩後を行く女の子──もとい守り神を気にしていると言えど、歩行者は常に自分よりも大きな移動手段を使っている者に対して細心の注意を払わなくてはならない。

例えば、車。デート中なら尚更のこと。

いくら自分に守り神が取り憑いていたとしても、全てから守ってもらえるとは限らないのだ。


大きく響くクラクション。

そして、急ブレーキの音。


男「……は?」
 ▼ 100 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 12:18:04 ID:GNzURlB2 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
今まで聞いたことがないくらい間近な音。

ふと顔を上げれば自動車が迫っていた。

思わず身体が怯む。


──あ、やばい。

──死ぬ。


スピードが落ちていたのが幸いか。

だが、人生で味わったことの無い体験だ。

自分の生涯が終わってしまうように感じた。


──最悪だ。


最高の日の最後は、最悪の出来事で終わってしまうのか。

コケコの顔は見えない。だが雰囲気だけは感じ取れる。

こいつに実体が無くて良かった。こいつに被害が無くて良かった、と。

最後の瞬間になるかもしれないと言うのに、男は自分の守り神のことばかり考えていた。


──もし俺がこのまま終わったら、ピクシーへの土産はこいつに渡して貰おう。あとは、俺の部屋にある見つかっちゃいけないモノとかの整理……


くだらない事ばかりを考えながら、反射的に目を閉じる。

車の圧力と存在感を身体で感じ取れる距離だった。

世界が割れる。

痛みな不思議と感じない。

そうか。最後の瞬間というのは身体までが悟りを開くのか。

確かに、男の視点から見た世界は赤く染まっていた。

夕方はこんなに鮮やかに赤くなるものだろうか。

身体が連れ去られる準備なのか、心地よい感覚が広がっていた。


霧──

いや、もしかしたらもう雲の上なのかもしれない。

気温も低くはない。霧など発生するはずもない。

これが──終わりの匂いか。
 ▼ 101 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 12:57:49 ID:GNzURlB2 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
コケコの顔は一瞬だけ確認できた。

今まで見たことの無い──何と表現すべきなのだろうか。それすらも分からない。

今の男に思考を巡らせることなど、到底不可能だった。

赤い世界はゆっくりと扉を閉じる。

このまま──


「駄目だ!!」


巡らない思考を遮られる。

そうか、この霧は──



コケコ「ぁ、ぇ……主……」

レヒレ「待て!!」

コケコ「………ぁ」

レヒレ「お主は近付くな!」

コケコ「で、も……」

レヒレ「お主が、神で無くなる……!」

コケコ「っ……」



話し声が聞こえる。

近いのに、遠い。

終わりなのは分かってるけど──終わりたくないな。

出来ればコケコのことをもっと知りたかった。

最高の日を最高のまま終わらせることが出来れば──




・・・・・

・・・

 ▼ 102 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 21:40:49 ID:a0I2u9BU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告




昔から健康児だったせいか、清潔すぎるくらい白い部屋にはあまり慣れていない。

鼻を突くような薬の匂いが部屋に充満し、改めてここが病室なのだと実感する。


男「あー……俺、本当に入院したのか……」


目が覚めた時にはピクシーと母が傍に居て、ピクシーなんかは今にも泣きそうな顔をしていた。

男は丸一日、目を覚まさなかったという。

むしろ丸一日で済んだのか奇跡とでも言うべきか。

奇跡的な生還というのが相応しい。

特に何かをすることも無くボーッとしていると、病室の扉がゆっくりと開く。


ピクシー「ぴっ」ヨッ

男「お、来たか」


今日もピクシーが見舞いに来てくれた。

手には母親から預かったのか、小さな手提げ袋を抱えている。


男「えーっと、本と……お、CDじゃん。これ借りていいの?」

ピクシー「ぴぃ」コク


1つ気がかりな事があった。


男 (今日もアイツらは居ないか……)


入院以降、男は守り神達の顔を見ていなかった。

守り神としての使命を全う出来なかったから目の前に現れなくなったのか、はたまたただの気まぐれなのか。

少し寂しさを感じてしまうのは、あの騒がしい空間に慣れてしまったからか。

何よりも──目の前で事故を見ていたコケコが気になって仕方がない。

こちらとしては、事故など無かったかのように普段通りの気まぐれな姿を見せてくれるのが1番安心するのだが。


男「…………」


事故直前のアイツの表情を思い出す。

まるで──何かを悟ったような表情をしていた。
 ▼ 103 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/26 22:17:57 ID:a0I2u9BU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ピクシー「……ぴ?」

何かに気付いたかのように、ピクシーが辺りを見渡す。

男「ん、どうした?」

男もつられて部屋中を見渡すが、目立ったものは何も無い。

ポケモン特有の感覚なのか、そこに隠れている何かを探しているようだった。

男「……そういえば」

きっと事故の後だから気配に敏感になっているだけだろうと思い、自分でも触れずにいたが、先程から何かの物音は感じていた。

よく耳を澄ませてみれば、ヒソヒソとした声も聞こえる

男「おいおい勘弁してくれよ……」

──この病室で生涯を終えた霊でも居着いてるのか?

よく聞いてみれば、男が身体を預けているベッドの下から物音は聞こえていた。

ピクシーも同じ場所から気配を感じていたらしく、ベッド下から視線を離していない。


男「っ………」


息を飲み込み、そっとベッド下を覗き込む。

事故で負った傷がズキリと痛むが、今はそれどころでは無い。


男「お、おい……そこに何か……」


ブルル「おはよーございまーすご主人様ーーーっ!!」

男「おああああああっ!?」


 ▼ 104 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/27 06:44:09 ID:bO0sqRSE [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告



ブルル「お、オー……申し訳ありませんご主人様……びっくりさせてしまいましたか……?」

男「大声上げたら看護師が駆け寄ってくるこっちも身にもなってみろ……」


驚いた拍子に傷口が開いてしまった気がしなくもない。

若干痛みつつある頭を抑えていると、傷のある部分をブルルと一緒に隠れていたテテフが柔らかい手つきで撫でてくれる。


テテフ「お、お姉ちゃん達と相談したのですけど……やっぱり心配で……」

男「なんか悪いな、俺の不注意だったってのに」

ブルル「あ、レヒレ姉様も来てますよ!」

男「ん?どこに……」

レヒレ「ぉーぃ」



ふと窓の方に目を向けると、見覚えのある顔が窓をドンドンと叩いていた。


ピクシー「ぴ」ガララ

レヒレ「おぉ、すまない……外からじゃ開かぬものでな」

男「お前なぁ……身体くらい隠せよ、てか勝手に入ってこれたろ」

レヒレ「お主を驚かせないためだぞ」

男「………」


ついでに窓の外を覗き込んでみるが、やはりアイツの姿は見えない。


テテフ「どういたしましたか……?」

男「あ、いや……何でも……」

レヒレ「コケコの事か?」

男「っ……」


流石は長女。勘が鋭い。


レヒレ「吾輩は後で顔を合わせてくるつもりだが……何か言伝でもあれば預かっておくぞ?」

男「いや……今は無いよ、単純に心配なだけだ」

レヒレ「……そうか」
 ▼ 105 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/27 15:41:48 ID:bO0sqRSE [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
正直に言えば、少しでも話をしたかった。

コケコがどういう思いで自分の前に現れないのかは、男には分からない。

だからこそ、余計にアイツの事を知りたいという気持ちが強かった。


レヒレ「寂しがっている……とだけでと伝えてやろう」

男「まぁ間違ってはないからいいかな」

レヒレ「それとも……どうだ、お主には吾輩が話をするか?」

男「……? それってどういう……」

ブルル「お、おぉ……私達からコケコ姉様には……」

テテフ「はい……少し難しいかと思われますわ……」


把握。今から顔を合わせていない双方に話を付けるつもりなのだろう。

確かに、コケコの性格を考えるとブルルやテテフから話を切り出すのは難しいとも思える。


男「……あのさ」

レヒレ「む?」

男「姉妹とは関係ない俺が言うのもおかしいけどさ、悪い方向には……」

レヒレ「安心せい、ちゃんと分かっておる」


普段はお子様としか感じられない長女の言葉が、今日ばかりは頼もしく感じられた。

どうしてここまで男がコケコに対し情を移すことが出来るのか、まだ理解は出来ていなかった。

ただ、あのデートの日に一瞬感じた ”一緒に居てやりたい” という感情。

今こそその時ではないのだろうか。

 ▼ 106 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/27 16:10:45 ID:bO0sqRSE [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
レヒレ「だが……コケコをあまり刺激しすぎるとこちらが吹き飛ばされる可能性も否定は出来ないのだがな」

男「責任は取れないから程々で頼む」

レヒレ「無事に戻った時の土産は何が良い?」

男「報告」

レヒレ「面白みのない男じゃのう……まぁ良い、丸ごと持ってきてやろう」


任務を遂行しに行くかのように、レヒレは迷いも無く実体を無くし窓をすり抜けて行った。


男 (アイツ最初からああやって入ってこいよ……)


ピクシーも空気を読んだのか、こちらに向かって軽く手を振り病室を後にしていた。

──なんだかんだよく出来た男だよな、ピクシーは……


テテフ「え、えーっと……」

ブルル「ぁ、あーはー……」


少しの沈黙が流れる。


男「お前ら改まった話に慣れて無さすぎだろ」

ブルル「こ、こういうのはやっぱ苦手でございますー!」

テテフ「わ、ワタクシよりもこういうのはブルルちゃんの方が向いて……!」

ブルル「だ、ダメでございますよテテフ姉様!一緒に当たって砕けましょう!」

男「砕けちゃダメだろ」


──なるほど、確かにこいつらをコケコの前に出すのは良い判断とは言えないな。

当たって砕けるどころか爆散してるかもしれない。


ブルル「あー、コホン!えー……まずはですね、ご主人様がご無事で何よりといいますか……あー、あー……!」

男「……無理して導入を作ろうとしなくて良いからな?」

ブルル「す、すみませんです……」

男「直球でいいんだよこういう話ってのは」

ブルル「は、はい!えっと、それでは……」


改めて、ブルルとテテフは男に姿勢を向け直した。
 ▼ 107 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/27 16:32:01 ID:bO0sqRSE [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ひとつの軽い咳払いとともに、話は切り出された。


ブルル「まず、あの場にレヒレ姉様が居なければ……ご主人様は助かっておりませんでした」

男「…………」


予想通り、なのだろうか。

事故に遭った直後のことは、僅かだが男の脳内には残っている。

意識が朦朧とする中で、レヒレは男を抱き締めていた。

共に訪れる霧は普段通り心地よく、事故で痛むはずの全身も不思議と心地よい感覚へと変わっていった。


テテフ「えっと、レヒレお姉ちゃんは……こういうことが起こるかもしれないというのを予測出来ていたんです」

男「レヒレが?」

テテフ「はい、恐らく長女の経験といいますか……勘が鋭いのだと思いますわ」


参った。女の勘というのもおちおち馬鹿に出来ないな。


男「……ん?ということはアイツ俺らのデートにずっと着いて来てたのか?」

テテフ「そ、それは……!しーっ、ですわ……!」

男「ほー……?」

ブルル「で、でも!恐らくですけど、レヒレ姉様は生命に敏感なので……それで、ご主人様のピンチを嗅ぎつけてやって来た可能性の方が高いです!」


助けてもらった身なのだから、今更どうこうは言えないか。

それよりも、ひとつ気になったことがある。


男「コケコじゃなくて、レヒレ……なんだな」


あの時男の1番近くに居たのはコケコのはず。

そのコケコに助けられたのではなく、予め事故を予測していたレヒレが男を守った。

これを理解するのに、さほど時間は掛からなかった。
 ▼ 108 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/27 19:08:09 ID:suNwxgt. NGネーム登録 NGID登録 報告
ブルル「不思議だと……思いませんか?」

男「……あぁ」


何故レヒレは男の近くにコケコが居るにも関わらず、それが無いもののように男を助けたのか。


テテフ「レヒレお姉ちゃんが事故を予測できたのも……理由があるのです」

ブルル「はい、本来ならばコケコ姉様はご主人様を助けることは出来ました」


普段ならば男の不幸に対して、手早い行動をしていた。

だが、事故の気配には気付くことが出来なかったか。

それが何を意味するか──


テテフ「答えは単純で……それがコケコお姉ちゃんには出来なかったんです」

男「……アイツが」


男の知っているコケコは、もっと気まぐれで人間臭くて、傍から見ればふざけたような奴だが、男を守るという指名は何があっても忘れない──言わば神の手本のようなものだった。

男は事故直後にうっすらと聞こえていたコケコとレヒレの会話を思い出す。


『お主が、神では無くなる』──

思えば、これが全てだったのだ。


ブルル「一言で言わせてもらいますと……」


緊張感のせいで、部屋が凍るような感覚がする。


ブルル「コケコ姉様は───」



・・・・・

・・・

 ▼ 109 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/27 22:22:04 ID:bO0sqRSE [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告




コケコ「…………」

レヒレ「お主は何故毎度毎度構って欲しそうな雰囲気を醸し出しておるのだ」

コケコ「……別にそんなつもりは無い」

レヒレ「全く、いつになったら素直になるのだお主は……」

コケコ「…………」

レヒレ「男に会ってきた」

コケコ「っ……!」

レヒレ「寂しがっておったぞ」

コケコ「嘘ね」

レヒレ「つまらぬ妹だ」

コケコ「こんな時に面白みを求めないで」

レヒレ「傷心中の妹を慰めてやろうとしただけではないか」

コケコ「……話をしに来たんでしょ」

レヒレ「うむ」

コケコ「……どうぞ」

レヒレ「単刀直入に言わせてもらう」

コケコ「……っ」

レヒレ「お主は……神としての力を失いかけている」

コケコ「……そう」

レヒレ「いや……力はほぼ残っていないと言って良いだろう」

コケコ「知ってた、小さな不幸から主を守れなかった時から……」

レヒレ「うむ、だからこそあの事故も……」

コケコ「神の力を失った私はもう──」

レヒレ「待て、言ったであろう?何があっても吾輩はお主を責めるつもりは無いと」

コケコ「でも」

レヒレ「これはたまたま不幸が重なって起きたものと考えて良い」

コケコ「……今日は随分優しいのね」

レヒレ「愛する妹の ”ぴんち” というやつだからのう」
 ▼ 110 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/01/28 05:55:43 ID:bYPAF/yo NGネーム登録 NGID登録 報告
コケコ「分かってる、これは私の招いた不幸ではないってことくらい」

レヒレ「ならば……」

コケコ「でもね、怖いの」

レヒレ「コケコ……」

コケコ「もし私が彼の近くに居て、力を失って彼を守ることが出来なくなった私の元に再び不幸が訪れたら……って考えると」

レヒレ「…………」

コケコ「もしそうなったら、今度こそ私はあの人の中から消えてなくなりたくなってしまう」

レヒレ「お主の気持ちを考えれば……妥当じゃな」

コケコ「正直、今すぐ彼に会って1秒でも早く顔を見たい」

レヒレ「ならば……」

コケコ「それでも……!」

レヒレ「っ…………!」

コケコ「私は……彼を傷付けたくない」

レヒレ「……のう、コケコ……偶然だとは思うがな」

コケコ「……?」

レヒレ「ご主人も同じことを考えておるぞ」

コケコ「……でしょうね」

レヒレ「ご主人は……お主を傷付けることを怖がっていた」

コケコ「…………」

レヒレ「コケコ、そろそろ話してやったらどうだ」

コケコ「っ…………」

レヒレ「お主が……ご主人の守り神として再びこの世界に降り立った理由を」

コケコ「でも……」

レヒレ「そのために……あの男の前に現れたのだろう?」

コケコ「……私は…………」

レヒレ「うむ、吾輩が助言出来るのはここまでだ」

コケコ「…………」

レヒレ「お主の決断が……吾輩達にとっての幸福なのだからな」
 ▼ 111 ードル@おきがえトランク 21/01/31 19:34:54 ID:c9twlsR2 NGネーム登録 NGID登録 報告
楽しみ
 ▼ 112 クーン@まんたんのくすり 21/02/01 16:30:06 ID:orEo8cSw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
時刻は午後8時を過ぎ、光の少ない病院の庭側に建て付けられている窓からは、景色は見えなくなっていた。

病院の窓から得体の知れない何かが……といったホラーを聞いた事はあるが、流石に現代でそういう事は無いと思いたい。が……


男「……さっきからなんか気配を感じるんだよな……」


普段はそういった現象に興味を持っていなくとも、一度想像すると妙に意識を働かせてしまうのは全人類共通だろう。

大丈夫、きっとゴーストポケモンが悪戯でもしにきたのだろう。即座に捕まえて説教してやろう。

内心ドキドキしながらも病室の窓を開ける。大丈夫、何も居るはずがない……

男「……あ」

コケコ「…………」

居た。

男「……どうしたよ」

コケコ「こんばんは」

男「挨拶しにきただけだってんなら絞めるぞ」

コケコ「駄目、入れて」

男「素直に入りたいって言えよ……」


若干拍子抜けした気がしなくもないが、叫ぶ羽目にならずに済んだことに安心感すら覚えた。


コケコ「この部屋の匂い……あんまり好きじゃない……」

男「そのうち慣れるって」

コケコ「……布団からは貴女の匂いがする」

男「嗅ぐな変態」

コケコ「別にそういう事じゃ……」

男「あ、そう……」

コケコ「………」

男「………」


暫し沈黙が流れる。


男(き、気まずい……!)
 ▼ 113 ッフロン@ハンサムチケット 21/02/04 21:09:39 ID:G1fcMWRo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 114 ェリム@スキルコール 21/02/05 00:51:01 ID:0Hb6Yvhc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 115 ライオン@むらさきはなびら 21/02/07 18:45:38 ID:jGRwfrV6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 116 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/02/08 16:08:54 ID:2AYQNrmA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
変な気まずさを感じ苦しんでいる男に対し、コケコは至って普段通りといった様子で明後日の方向を見つめていた。


男「……数日会ってなかったけど、いつも通りのコケコで安心したよ」

コケコ「……いつも通り?」

男「なんだよ、表には出さないだけで悩み事でも抱えてるってか?」

コケコ「その通り、何も分からないのね」

男「お前なぁ……」


言ってることが真逆に感じられるほど平常運転のコケコに若干呆れつつも、先日の出来事が重荷になっていないか気にしていた。


コケコ「貴方が思うほど私は強くないから」

男「……つまり?」

コケコ「ジムノペディ、ね」

男「あぁ、今流してる曲か?ピクシーが持ってきてくれたんだよ」

コケコ「……良い相棒を持ったのね」

男「まぁな」


平常運転とは言ったものの、気が気でない程には男にはコケコが小さく見えていた。

こいつは確かに守り神だ。

だが、今の男にはそう感じられないくらい──ありふれたポケモンの1匹に見えてしまう程だった。


コケコ「貴方は……この曲からどういう雰囲気を感じ取ってる?」

男「ん?そうだな、ありきたりだけど……しっとりした夜のイメージ……かな」

コケコ「そう……間違ってはいないけどね、この曲はそんなに綺麗なものじゃないの」

男「そうなのか?」

コケコ「ジムノペディ──第1番は『ゆっくりと苦しみをもって』、第2番は『ゆっくりと悲しさをこめて』、第3番は『ゆっくりと厳粛に』……」

男「…………」

コケコ「代弁、されてるみたい」

男「……俺と居る時くらいはマイナスな感情なんて全部捨てて欲しいんだけどな」

コケコ「貴方が楽しませてくれるの?」

男「頑張るよ」

コケコ「……うん、期待してる」
 ▼ 117 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/02/08 16:23:25 ID:2AYQNrmA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
コケコ「……ごめんなさい」

男「……何に対して謝ってんのか知らないけどさ、俺はお前に謝られるような事なんてされてないぞ」


あくまでいつも通りに。

正直、こいつが今どういう感情なのか知りたいという気持ちは大きかった。

だが、それで傷付けたらどうだろうか。

良くない事が立て続けに起こるにしろ、男はコケコに嫌われるようなことはしたくはなかった。


コケコ「でも……」

男「よし分かった。じゃあこのループを切るために俺から全部言わせてもらうけど、まず最初にお前は悪くない。お前は謝っちゃいけない」

コケコ「…………」

男「それでも気が済まないって顔してるから……じゃあ代わりに一つだけ質問に答えてほしい」

コケコ「……質問?」

男「『神として相応しくない感情』って何だ?」

コケコ「っ………」


一瞬、確かにコケコの表情が歪んだ。

不意を突かれたかのような、こいつにしては珍しい驚いたような表情だった。


男「念の為に言っておくと、俺はブルル達から全部話を聞いた」

コケコ「……そう」

男「俺がこうなったのはお前が神の力を失ったせいで、”たまたま” 襲ってきた不幸から俺を守ることが出来なかった……そうだろ?」

コケコ「わざわざ強調しなくてもいいのに」

男「心配なんだよこっちは」

コケコ「……うん、ありがとう」


硬いコケコの表情が少しだけ緩む。

まず大きな錘は外すことが出来たと、少しだけ安心してしまう。
 ▼ 118 オチルドン@カクトウZ 21/02/12 17:07:08 ID:OvX.W26c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 119 ュウ@メガストーン 21/02/15 12:12:35 ID:gRygBcko NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 120 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/02/15 16:52:29 ID:JfAgajDM NGネーム登録 NGID登録 報告
だが、それも一瞬だった。

ポーカーフェイスかと思うが、よく見てみればこいつはコロコロ表情を変える。

少しの間共に過ごしただけでも、男には表情の変化などお見通しだった。

例えば、今のように寂しそうな表情を見せたり。


コケコ「でもね、教えたくないの」

男「……一応大事な話だからな?お前が ”神に相応しくない感情” を抱いたがために、神の力が失われつつある……俺にもどうにか出来るかもしれない」

コケコ「ううん、それは無理」

男「……何でだ?」

コケコ「私がその感情を消し去るためには、貴方を無かったことにするしかない」

男「それは……怖いな」

コケコ「何より、私がそれを望んでない」

男「好かれてるんだな、俺って」

コケコ「本当は……分かってるんじゃないの?」

男「…………」

コケコ「……図星?」

男「そうじゃない、ただ……」


あまり指摘されたくはなかった。

こういうのはあまり実感が湧かないからだ。


男「今まで考えたこと無かったから」

コケコ「……うん」

男「もう少し考えさせてくれ、まだ何も言わない」

コケコ「勿論」


男の頭はパンク寸前だった。

神にそぐわない感情、神の力──

これらを全て繋ぎ合わせても、『もしかしたら』という男の思考の終着点は一つにしかならない。

これを──素直に受け止めて良いのだろうか。
 ▼ 121 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/02/17 15:50:12 ID:C0sUQFDo NGネーム登録 NGID登録 報告
──こいつは何を思っているのだろうか。

コケコが男に何かを隠しているのは間違っていない。だが、それはコケコが男に対して抱いている感情ではなく、その先──もっと大切なものがあるのではないか。

病室に沈黙が流れる。

不思議と気まずいとは感じなかった。

沈黙の中に影を潜めるように流れるジムノペディの旋律のおかげだろうか。


コケコ「早く休んだ方がいいと思う」

男「……そうだな」

コケコ「……おやすみ、主」

男「あぁ、おやすみ」

コケコ「……ねぇ」

男「ん?」

コケコ「今日……会えてよかった」

男「……俺もそう思う」


そう言い残すと、コケコは窓を開け、暗闇の中へ颯爽と姿を消した。

何となくベッドの柵に触れると、パチッと季節外れの静電気が流れる。

コケコがここに居た名残だ。

近いうちに……明日にでも会えるはずなのに、何だか寂しささえ覚えてしまう。

1つ、男の中に答えが出た。


──アイツがもし守り神でなくなったとしても、今までと何も変わらない。

──ポケモンとして……大切な存在として、近くに居てくれるだけでいい。

──ここまで感情が動いたのもアイツのせいだ。

──アイツが……まるで初めて会ったような素振りを見せないから。

──ほんの少しでも、情が傾いてしまうのも仕方ないんだ。



 ▼ 122 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/02/19 16:12:17 ID:C5/EmOWI NGネーム登録 NGID登録 報告


男「……暇だなー」

ブルル「暇でございますねー」

テテフ「あ、あはは……」

男「……じゃあなんでお前らは病室に居るんだよ」

ブルル「えー?だってご主人様と一緒じゃないのは寂しいですよ?」

男「……まあ1人よりかはマシだけどさ」


昨晩コケコと就寝の挨拶を交わして以来、何となくやるせない気持ちになっていた。

もうずっと同じことしか考えていない気がしてならない。暇だとは言ったものの、コケコの事が気になって何をするにも身体が動かなかった。

事実、当然のように見舞いに来てくれたブルルとテテフをもてなす力が出ないほど。


テテフ「(……ちょ、ちょっとブルルちゃん……主様が何だか気分が晴れないみたいですわ……)」

ブルル「(オー、これはユーウツというやつですねー)」

テテフ「(お、おそらく原因は……)」

男「おい、何コソコソしてんだお前ら」

テテフ「ひぃっ!?」

男「そんなにビビらなくても良くないか……?」


──まあ、急に声を掛けられて反射的に驚いてしまうのは無理はない……が、仮にもこいつは俺の守り神なんだよな……?

ほんの若干ショックを感じていると、何かを思いついたようにブルルが声を上げる。


ブルル「そーですご主人様!暇なら昔話でも聞かせてあげましょう!」

男「昔話ぃ?」


こいつに面白い話なんて出来るのか?と、疑問を1つ。


テテフ「あ、おの……あんまり余計な話はしない方が……」

ブルル「ノープロブレム!むしろこれくらいしないと一向に話が進まないのですよ!」

男「……?」

ブルル「ご主人様!」

男「はい?」

ブルル「ご主人様は……ラブストーリーにご興味をお持ちですか?」

男「……はぁ」
 ▼ 123 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/02/25 15:51:12 ID:QloIEzkc NGネーム登録 NGID登録 報告
ブルル「えー、むかーしむかしある所に……」

男「待て、少女漫画でも読んだか」

ブルル「ちょーっと思いついただけでございますよ?ね、テテフ姉様?」

テテフ「はぇ?ぁ、は、はい……」

男「…………」

ブルル「コホン……あー、むかーしむかしある所に、ひとりぼっちの神様がおりました!」


何だか無理やりすぎるように思えなくもないが、諦めてブルルの語り出す話の情景を思い浮かべることにする。


ブルル「神様は、音も色もなーんにも無い世界をあてもなく彷徨っておりました」

男「……ん?」

ブルル「その世界はとても退屈で、あてもない程広いのになんだか窮屈で……自分がここに居るという証明もなく、とても寂しかったそうです」


どこかで聞き覚えがある話だとすぐに分かった。

少なくとも、男の知らない話では無いだろう。


ブルル「神様にバチが当たった訳ではありませんよ?これが運命だったのです!こうなってしまうのは仕方ない……でも、そう思えば思うほど神様の寂しさは膨らんでいきます」


あの時、河川敷でコケコから聞いた言葉を思い出す。

『何も無い世界で、虹を見ている』──きっと、そんな感覚なのだろうか。


ブルル「もうお気づきかもしれませんが、これは例のごとく『居場所を失った神』のお話でございます!」

男「だろうな」

ブルル「神様として生きるポケモンも、人と同じように……きどあいらいく?の感情を持っております」

テテフ「ぶ、ブルルちゃん!喜怒哀楽!き、ど、あ、い、ら、く!」

ブルル「わーおそうでした!」

男「頼むからスムーズに進めてくれ」

ブルル「てへ!」

男「テテフ、話の続き分かるならこいつの代わりに話して貰えるか?」

テテフ「え、あ、は……はいっ、ワタクシで良ければ……」

ブルル「ほわっ……ご主人様!?」
 ▼ 124 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/03/01 15:59:31 ID:vT5YGM5E NGネーム登録 NGID登録 報告
テテフは咳払いをし、脱線しつつあった話を戻す。

テテフ「コホン、えー……ブルルちゃんの話の続きから……なんですけど、主様にとって『初めての存在』に当てはまる方はいらっしゃいますか?」

男「……それはどういう意味で?」

テテフ「え、あっ!そういう意味じゃなくて……いやあの、そういう意味でもいいんですけど……ぁー……た、例えば、初めて捕まえたポケモンとか……」

男「それならピクシーが最初で最後だよ、俺にとってあいつは相棒みたいなもんだからな」

テテフ「それです!」


何かを閃いたように声を上げる。


テテフ「大切……ですよね?」

男「勿論」

テテフ「今話した神様にも……そういう風に大切な存在が現れました」


居場所を失った神にとって大切な存在……男はしばらく考え込む。

だが、誰にも知られる事のない神が他人に特別な感情を抱くことなど、まずありえない。

仮にそれが有り得た話だとすれば……


テテフ「……目を背けずに正面から存在を肯定してくれた人が居たんです」

男「…………」

テテフ「人間の男の子だったのですが……今考えてみれば、その男の子もそこに何かが居るという確信を持っていたわけではなかったと思います」


聞き覚えがある──というよりは、心当たりがあった。

それも、ハッキリとした記憶がある。


テテフ「勿論神様にもそれは分かって居たんですけど……相手に確かな存在の証明ができないとしても、居場所を失った神にとって……そういう人って、とても貴重なんです」

男「……だろうな」

テテフ「それが毎日続きます、その男の子は今日あった出来事を楽しそうに話してくれたり、お休みの日にはお供え物なんかを持ってきてくれたり……まるで友達みたいですよね」


──そうだ。その人間の男の子とやらの気持ちになれば……確かに子供の頃の自分だったら、同じことをしてただろう。


テテフ「話は通じないとしても……感情ははっきりと伝わります。男の子はきっと、神様の存在を感じ取っていたのでしょう」


──思い返してみれば、俺にも同じような事があった。

木漏れ日が差し込む世界に感じたあの感覚。

あの時感じ取ったものは──
 ▼ 125 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/03/01 17:33:39 ID:hdXEJ4eE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
テテフ「互いが大切な存在になりつつあるのは……きっと気づいていたと思います」

男「まあ……毎日こうやって顔を見せてりゃな」

テテフ「それで終わり……だと思ってたんです」


若干の緊張感を含む声色で話が遮られる。


テテフ「そうやって毎日毎日……確信を持てないにも関わらず自分の存在を肯定してくれる男の子に対して……神という存在にそぐわない感情を抱いてしまったんです」



思わず固唾を呑みこむ。

これが、知りたかった答えなのだろうか。



テテフ「神様は……あろう事か、人間の男の子に恋をしてしまいました」


男「…………!」

テテフ「普通はありえない事だと思うんです……度重なる偶然から、まさか神様が本来ならば抱くことの無い感情がこんなにもあっさりと生まれることなんて」


唐突に心臓が跳ね上がった。

周囲の音が、やけに遠くに聞こえる。


テテフ「種族も全く違う相手に対してこういう感情を抱くのは罪深い事だとしても……神様はこの感情を無かったことになどできませんでした」


敢えて視線を外していたつもりだった。

今まで守り神達から聞いた話は、何かに誘導されるようで……それも全て心当たりのあるもので。


テテフ「きっかけが些細なものだとしても、人を好きになるって……ワタクシは凄いことだと思います」


男の脳内には、コケコの顔が浮かんでいた。

──全てが結びついた。

──初対面の割に、慣れたやり取りができたのも。

──ポーカーフェイスな割に、やたらと俺に対して感情を表に出してきたのも。


その答えが、これか。
 ▼ 126 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/03/01 17:58:31 ID:hdXEJ4eE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
テテフ「……お話はここまでです、まだ続きはあるんですけど……」


テテフには焦った様子も、大きく動揺している様子もない、


テテフ「主様には、もっと別の形で答えを知って欲しいんです」

男「……ああ」

テテフ「あの……念の為、お聞きしていいですか……?」


テテフは男の様子を伺うように問いかける。


テテフ「今のお話を聞いて……何か……1つでもいいんです、何か思い当たることはありませんか……?」

男「……悪い」


敢えて目を背けていたが、限界だった。

何に対して動揺しているのかも分からない。

とにかく、今は冷静に取り繕うしかなかった。


男「正直に言うと、考えはまとまらない」

テテフ「……そうですよね、はい、分かりました」


恐らくテテフは男の答えが欲しかったのだろう。何故だか、少し急いでいるようにも聞こえた。

申し訳ないとは思っているが、少しでも考える時間が欲しくて。


男「近いうちにまた話をさせてくれ」

テテフ「はい、待っております」


保留は良い変事とは言えない……が、今はこうするしかなかった。

少なくとも、今ここにいるテテフとブルルに対して出していい答えだとは思わなかったから。

この昔話が、ただの暇つぶしのために用意されたものではないことは気づいていた。

だからこそ……ここで俺がすることは、覚悟を決めることだと思った。

『いいお話です……』と映画でも見たかのように泣いているブルルに少々冷たい視線を送りながら、小さくため息をつく。


少し──外の空気を吸いたい気分だ。
 ▼ 127 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/03/02 15:50:16 ID:FKdQg/eA NGネーム登録 NGID登録 報告


男「……あー、外の空気が気持ちいい……」


テテフとブルルが病室を後にしてすぐに、遠出をしないという条件付きで外出の許可を得た。

入院してから大して日も経っていないが、外の世界が久しぶりに感じてしまう。

インドア派であることは自覚しているが、やはり久しぶりに日を浴びるのは気持ちいい。

……とは言ったものの、男の知っている晴天は霧など発生しないはずだ。

発生源と思われる付近の草むらを適当に掻き分ける。


レヒレ「あ」

男「おい」

レヒレ「……バレてしまっては仕方がないのう」


自分では隠れていたつもりだろうが、あまりにも草むらが不自然な揺れ方をしていたがためにバレバレだ。


男「ビビらそうとすな、病人だぞ」

レヒレ「尾行しておったのだ」

男「悪趣味だな」

レヒレ「うむ、よく言われる」


相変わらず生意気なほど開き直った態度だが、どうにもそんなレヒレに安心感を覚えてしまう。


男「なぁ、お願いがあるんだ」

レヒレ「聞いてやろう」

男「ちょっと話に付き合ってほしい」

レヒレ「ほう、でぇとのお誘いか?」

男「ちげーよバカタレ」

 ▼ 128 トツキ@ねがいぼし 21/03/07 22:48:43 ID:0G3ce6hw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 129 木めぇーぐる◆LUgX5keOhk 21/03/11 14:37:20 ID:Fi0Ip2Yc NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ある程度書き溜めることにしたからもう少し待ってね
 ▼ 130 ロリーム@シールいれ 21/03/18 20:41:26 ID:kYJcnqTI NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 131 ツケラ@ツメのカセキ 21/03/22 22:38:20 ID:TW3g969A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 132 ラエッテ@においぶくろ 21/03/29 17:42:55 ID:qTZcPyQg NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 133 クシー@ジメンZ 21/04/06 16:20:01 ID:S4IgwuXg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 134 ャワーズ@おとどけもの 21/04/19 20:12:53 ID:fwCYX1HM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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