【SS】ルリ「キョウヘイくんのせいだよ」:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】ルリ「キョウヘイくんのせいだよ」:ポケモンBBS

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【SS】ルリ「キョウヘイくんのせいだよ」

 ▼ 1 ーフィ@ソニアのほん 21/01/23 13:47:11 ID:rTnwiHW2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
10月31日



今日はハロウィン。街中は仮装に身を包んだ人々で賑わっている。

普段は仕事や学業に縛られ内に秘めた自我を解放し、羽を伸ばす絶好の機会だ。今日という日を待ち望んでいた人も多いことだろう。

しかし皆が皆そうではない。誰かが楽しむためには別の誰かが苦労しなければならない。

休日に遊園地で遊べるのは遊園地で働いているスタッフのおかげ。友人や親戚から年賀状を受け取れるのは配達してくれる人がいるから。

皆が休んだり遊んでいる時に活躍する仕事だってたくさんある。例えばポケドルだってその一つだ。



マネージャー「お疲れ様!後でもう一本収録あるから、それまで休憩ね」

ルリ「はい!」



だから不幸だなんて思ったことはないけれど。好きな仕事だし。

自分が頑張ることで誰かが楽しんだり笑顔になってくれる。忙しいけど…ポケドルはすごく遣り甲斐のある仕事だ。

仕事の合間の息抜きだってある。ライブキャスターで人と話すこと。

ライブキャスターを開発した人は天才だと思う。遠く離れた場所にいる人とも、まるで目の前で対面しているかのように会話し喜怒哀楽を共有できる。

こっちに越してきたのは最近で通話相手が少ないのはちょっと悲しい。

弟にでも掛けてみようかな?……ウザいって言われそう。



ルリ「…あれ?」



ない。ライブキャスターがない。

どこかに置いて忘れてきた?落とした?

そんな…これから私はどうやって生きていけば…

 ▼ 167 イコウオ@リザードナイトY 21/01/28 12:57:37 ID:nwiQLKFU [1/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カトレア『アタクシに聞きたいこと…何かしら?』

キョウヘイ「怒らないでくださいね」

カトレア『ええ』

キョウヘイ「カトレアさんの胸のサイズってAとBのどっちですか?」

カトレア『Bよ』

キョウヘイ「Bですか…ありがとうございます」

カトレア『…キョウヘイ』

キョウヘイ「何ですか?」



バリンッ!!



キョウヘイ「!?」



僕の背後にあった茶碗が…突如粉々に破壊された。



カトレア『今度下らない質問したら…貴方もただじゃ済まないわよ』

カトレア『ごきげんよう』プツッ



こうして、カトレアさんとの通話は終了した。



キョウヘイ「怒るなって言ったじゃん…」

キョウヘイ「まあいいや。Ⓑを決行しよう」
 ▼ 168 ンバット@しっぽのくんせい 21/01/28 12:58:15 ID:nwiQLKFU [2/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
11月28日



キョウヘイ「おはよう」

ヒュウ『何だ?何かあるのかよ?』

キョウヘイ「ヒュウってさ、ルッコちゃんのこと好きだったよね」

ヒュウ『オマエからその名を聞くことになるとはなッ!!』

ヒュウ『で?ルッコちゃんがどうした?握手会に行きたいのか?』

キョウヘイ「へ〜!握手会なんてやってるのか」

ヒュウ『ああ!CDを買うとチケットが付いてきてさ!一枚につき一回参加できるんだぜッ!』

キョウヘイ「ヒュウは行ったことあるの?」

ヒュウ『ない』

キョウヘイ「ないの!?」

ヒュウ『緊張するだろ…キモいとか思われたら耐えられねえし』

キョウヘイ「そういうことなら…僕が一緒に行ってあげようか?」

ヒュウ『オマエッ…!なんて良いヤツなんだッ!!』

キョウヘイ「その前に一度僕が単独で握手会に行っておこう」

キョウヘイ「そして場の雰囲気を掴んでおき、それを踏まえてヒュウがルッコちゃんと問題なく話せるように対策を練るんだ」

キョウヘイ「これでどうだ?」

ヒュウ『最高だ…!感謝するぜッ!!』

キョウヘイ「よし。近いうちに乗り込んでみるよ」

ヒュウ『ああ…!頼んだぜ!親友!』



ヒュウに親友認定され、通話は終了した。

多少強引だったけど相手はヒュウだし問題ない。



キョウヘイ「さて…女物の服を用意しておかないとな」
 ▼ 169 ジョン@ヘルガナイト 21/01/28 12:58:52 ID:nwiQLKFU [3/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
12月1日



作戦は成功した。隠し事は消滅し、僕たちは晴れて本当の友達となったわけだ。

しかしルリちゃんを怒らせてしまった。そのせいで僕は今おつかいをさせられている。



キョウヘイ「カレーの材料は…後はじゃがいもだけ」

キョウヘイ「シンオウ産のちょっと高いやつを買おう。お詫びの印」

キョウヘイ「これで機嫌を直してくれるといいな」



スイーツを買ってもいいのだが、ルリちゃんはアイドルなのでちょっと危ない。

甘いものを控えているならば食べることはできず機嫌を直してくれないだろう。

そもそもヤンヤンつけボーを頼まれているしそれで十分だ。



キョウヘイ「あれ?」



ヤンヤンつけボーがない。お菓子コーナーにも、レジ前にも。

なんで?置いてあるからついでに買って来いって言ったんじゃないの?



キョウヘイ「あの女…」



ここに置いていないことを知っていて、僕を困らせるためにわざと…

やることが陰湿すぎるぞ。相当怒ってたんだな…

これ程までにヤンヤンつけボーで頭がいっぱいになったのは生まれて初めてだ。

ありとあらゆる販売店のお菓子コーナーの記憶を辿ってみるが、普段ヤンヤンつけボーなど目もくれないため…売っているお店を特定できない。



キョウヘイ「…手当たり次第に探すしかないか」



結局七軒ほど探し回り、ようやくヤンヤンつけボーを発見できた。

お腹が空いたのでご馳走してもらえることを期待していたが…家には上げてもらえなかった。
 ▼ 170 ーディ@くろいてっきゅう 21/01/28 12:59:32 ID:nwiQLKFU [4/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
12月10日



キョウヘイ「もうすぐヒュウの誕生日だね」

メイ「何贈るか決めてる?」

キョウヘイ「まあ…大体は」

メイ「え〜?あたしまだ何も考えてないよ…」

キョウヘイ「それなら提案があるんだけど」

メイ「何?」

キョウヘイ「ルッコちゃんって知ってる?」

メイ「誰それ…知らない」

キョウヘイ「売り出し中のポケドル。ヒュウが大ファンらしい」

メイ「…マジ?」

キョウヘイ「そして彼女との握手会が誕生日の前日に開催される」

キョウヘイ「僕とヒュウはこの握手会に参加する予定なんだ」

メイ「なんでアンタも行くの?」

キョウヘイ「ヒュウの奴がさ、一人じゃ心細いんだって」

メイ「かわいい」

キョウヘイ「メイも一緒に来てみないか?」

メイ「ええ…?何で?」

キョウヘイ「いいか?ヒュウは大大だーい好きなルッコちゃんとの初めての会話&握手で大いに緊張しているんだ」

キョウヘイ「そこに僕たちがついて行って緊張を和らげてあげる」

キョウヘイ「そうなればヒュウは僕たちをどう思うか。『こんなに優しい友人を持ってオレは幸せ者だぜッ!!』となるに違いない」

メイ「ふむふむ」

キョウヘイ「これはヒュウにとって一日早い誕生日プレゼントになり得る」

キョウヘイ「当日に贈るプレゼントがしょぼくても受け入れてくれるに違いない」

メイ「成程。名案ね」

キョウヘイ「よし。こいつを渡しておく」

メイ「何これ?CD?」

キョウヘイ「ルッコちゃんのニューシングルさ。一応試聴しておけ」

メイ「はーい。あたしの好みに合うといいなあ」
 ▼ 171 ャラランガ@ナゾのみ 21/01/28 12:59:58 ID:nwiQLKFU [5/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブーーーッ、ブーーーッ



キョウヘイ「失礼。ライブキャスターが鳴っている」

キョウヘイ「はい。何か用ですか?」ピッ

グズマ『変なチケット送られてきたんだが。これ送ったのお前だよな?』

キョウヘイ「そうです」

グズマ『どういうことか説明しろ』

キョウヘイ「ルッコちゃんの握手会に行けるチケットですよ。興味ないんですか?」

グズマ『そういう話ではなくてだな。何故俺に断りも入れずに送った?』

キョウヘイ「記憶を取り戻すきっかけになればと思いまして」

グズマ『なるのか?これで?』

キョウヘイ「何がきっかけになるかなんて誰にもわかりませんよ」

グズマ『………』

キョウヘイ「そういうことなんで。まあ有効に使ってくださいまし」

グズマ『ちょっ…』



プツッ。



メイ「誰からだったの?」

キョウヘイ「愉快なお兄さん」
 ▼ 172 ニスズメ@きあいのタスキ 21/01/28 13:00:34 ID:nwiQLKFU [6/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
12月18日



キョウヘイ「あれがルッコちゃんだよ」



ルリ「こんにちは!今日は来てくれてありがとう!」

グズマ「え…?あ、握手すればいいのか…?」

ルリ「あはは…だって握手会ですから…」



キョウヘイ「ちゃんと来てるし…」

ヒュウ「はああああああ!!!ドキドキするッ!!!」ガタガタガタガタガタ

メイ「少し落ち着いて?変な目で見られたらどうするの」

ヒュウ「ルッコちゃんになら変な目で見られたいぜッ!!」

キョウヘイ「でもキモいとは思われたくないと…面倒だな」

キョウヘイ「じゃあ行く順番を決めようか」

ヒュウ「二番目がいい!」

キョウヘイ「一番手は論外だし最後だとそれはそれで緊張する…ってことか」

ヒュウ「流石は親友!わかってるなッ!!」

メイ「なんかキャラ変わってない?」

キョウヘイ「なら僕が一番手かな?」

メイ「アンタが発案者だし…そうなるよね」

キョウヘイ「OK.。早速並ぼうぜ」

ヒュウ「待ってくれ!心の準備が…」

メイ「そろそろ怒るよ?」
 ▼ 173 ワンテ@ぎんのおうかん 21/01/28 13:01:32 ID:nwiQLKFU [7/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
12月19日



ルリ「あ…そろそろ帰らなくちゃ」

ヒュウ「!!」

メイ「忙しいんだもんね。明日も仕事?」

ルリ「うん」

ヒュウ「そんなッ…!忙しいところを!オレなんかのために…!!」

ルリ「いやいや!良いんだよ、私も楽しかったんだから」

キョウヘイ「ヒュウくんよ、そこはまず『ありがとう』というべきだぜ」

ヒュウ「ありがとうございます!!」ゲシッ

メイ「土下座!?」

ルリ「こちらこそ…呼んでくれてありがとうね」

ルリ「ヒュウくん。改めて誕生日おめでとう」

ヒュウ「#)#)#)#)#)#)#)!!」

ルリ「!?」

メイ「ヒュウが壊れた」

キョウヘイ「ルリちゃん。あんまりヒュウを刺激しないで」

ルリ「ええ!?」
 ▼ 174 ッギョ@みどりのはなびら 21/01/28 13:01:48 ID:nwiQLKFU [8/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「暗くなっちゃったね。女の子を一人で帰すわけにはいかないな」

キョウヘイ「どうするヒュウ?ルリちゃんを送っていくか?」

ヒュウ「」

キョウヘイ「…駄目だ。肝心な時にこの男は…」

メイ「じゃああたしが送っていく!」

キョウヘイ「メイも女の子だが…」

メイ「やだ…キョウヘイがあたしのこと女の子扱いしてる!」

メイ「明日は乱気流かも!」

キョウヘイ「女の子扱いしなかったことある?」

メイ「やだ!変な目で見ないでよ!」

キョウヘイ「詰んでるじゃん!」

メイ「まあでも任しといてよ!ポケモンもついてるしね!」

メイ「いいかな?ルリちゃん?」

ルリ「うん。嬉しい」

メイ「じゃあ送っていくね!お邪魔しましたー!」

ルリ「お邪魔しました」
 ▼ 175 ックル@チーゴのみ 21/01/28 13:02:15 ID:3nnEy1ZY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グズマ?!
 ▼ 176 タシラガ@だっしゅつパック 21/01/28 13:02:19 ID:nwiQLKFU [9/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「おいヒュウ。せっかくの二人きりで帰れるチャンスだったのに」

ヒュウ「…オマエは何か勘違いをしている」

キョウヘイ「?」

ヒュウ「オレはな、あの子のことが一人の人間として好きなんだ」

ヒュウ「あの子の生き様が!価値観が!強さが好きなんだ!」

ヒュウ「オレ自身があの子とどうなろうとか…そんなこと考えちゃいない」

キョウヘイ「そうか。勘違いして申し訳ない」

ヒュウ「これが『推し』というものだッ。覚えておけ」

キョウヘイ「安っぽく言い換えるの止めて?」

ヒュウ「さて…ルリちゃんに貰ったサイン。こいつも金庫の中に入れておかないとな」

キョウヘイ「………」

ヒュウ「…あれ?」カチャカチャ

ヒュウ「金庫が開かねえ。番号は合っているはず」カチャカチャ

キョウヘイ「番号って何文字よ」

ヒュウ「四文字…」

キョウヘイ「ルッコちゃんの誕生日でも入れてみたら開くんじゃない?あはは…」

ヒュウ「どれどれ…」カチャカチャ

ヒュウ「うお!開いた!」ガチャン

ヒュウ「そうか!オレは推しを想うあまり…無意識のうちに暗号に設定してしまっていたんだな…!」

ヒュウ「無意識にまで干渉する。それだけルッコちゃんが魅力的ってことだよなッ!」

キョウヘイ(馬鹿だこいつ)
 ▼ 177 ダンギル@エスパージュエル 21/01/28 18:01:52 ID:nwiQLKFU [10/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
12月31日



世間は大晦日。街行く人々は皆慌ただしい。

だが今僕がいるのはネジ山だ。人の気配など殆どない。

PWTが近いため、人との交流を絶ちポケモンたちと向き合う時間を設けたのだ。

他人を排除することでありとあらゆる相対評価は消失。存在するのは己と己が信じて共に歩むポケモンたちのみ。

自分たちの実力と向き合い、勝つために今何ができるのかが見えてくる。



キョウヘイ「…寒いな」

ウォーグル「ウォー」



しかしここは寒すぎた。

明日からはもう少し暖かい場所で行おうか…
 ▼ 178 マタマ@ヤドランナイト 21/01/28 18:02:42 ID:nwiQLKFU [11/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブーーーッ、ブーーーッ



キョウヘイ「…着信拒否するの忘れてたな」

キョウヘイ「はい。何の用?」

メイ『よかった。まだ繋がった』

キョウヘイ「これから着信拒否するつもりだったんだけど」

メイ『その前にさ…ルリちゃんに今の状況伝えたの?』

キョウヘイ「伝えてない」

メイ『やっぱり!ちゃんと伝えなきゃ駄目でしょ?』

メイ『ルリちゃんが心配するじゃん』

キョウヘイ「伝えないし…しばらく連絡はしないつもり」

メイ『は?』

キョウヘイ「少し親密になり過ぎた。距離を置く」

メイ『どういう意味?まさかアンタたち…』

キョウヘイ「ただの友達だよ。変な想像するな」

メイ「だったらどうして?距離を置く理由がない」

キョウヘイ「僕がいなくてもヒュウとメイがいるじゃん」

キョウヘイ「なら僕は必要ない」

メイ「アンタ…最初からそのつもりであたしたちを紹介したの?」

キョウヘイ「それだけじゃないけどね。ヒュウのためでもあったし」

キョウヘイ「二人がいればルリちゃんも仕事が捗るだろう。それで十分」

キョウヘイ「何度か会話してみてよくわかった。ルリちゃんは純粋で心優しい人なんだ」

キョウヘイ「僕と関わって悪影響を及ぼしてしまうのはまずい。何せポケドルだからね」

キョウヘイ「人格面に影響が出れば仕事でも確実に支障をきたす」

メイ『またそういうこと言う。いい加減意地張るの止めなよ』

キョウヘイ「意地を張っているんじゃない。事実を述べただけだ」
 ▼ 179 ルー@エレベータのカギ 21/01/28 18:03:56 ID:nwiQLKFU [12/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイ『…キョウヘイ』

キョウヘイ「何?」

メイ『ごめんね。大変な時、何も力になれなくて…』

キョウヘイ「僕が意図的に隠していたんだ。謝ることではない」

メイ『でもさ、あたしもヒュウも…ずっと後悔してる』

メイ『ゲーチスのこととか、全部キョウヘイに押し付けちゃった』

メイ『そのせいで…キョウヘイだけ恨まれて…それで…』



メイが涙声になっている。

実際後ろめたい気持ちはあったのだろう。ヒュウもメイも…責任感が強くて優しい人なのだ。

ルリちゃんも含め、僕の友人はみんな超お人好しだ。



キョウヘイ「間違えたのは僕だ。メイとヒュウに落ち度はない」

キョウヘイ「そもそもメイは当事者ですらないんだぞ」

メイ「だからこそだよ!何の助けにもなれなかった…!」

メイ「何も知らないままだった…!」

メイ「友達なのに…」

キョウヘイ「もう一度言うが二人は何も悪いことはしていない」

キョウヘイ「責任なんて感じないで」



今にして思えば、ヒュウが異常なまでに僕を尊重するのも…負い目から来るものなのかも。

悪いのは僕なのに…でも僕が謝ると二人はさらに責任を感じて悪循環に陥るのだ。
 ▼ 180 ルメタル@むしよせコロン 21/01/28 18:04:20 ID:nwiQLKFU [13/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイ『…あのさ!最後に一つだけ言わせて』

キョウヘイ「どうぞ」

メイ『ごめん!やっぱり二つ!』

キョウヘイ「何さ…」

メイ『あたしは…ルリちゃんならアンタを助けられると思っているの』

キョウヘイ「どういうことだ」



別に要救護状態じゃないんだけど。



メイ『あとさ…自己犠牲の精神はもちろん立派だと思うんだけど』

メイ『仮にあたしが幸せになれたとしても、代償としてキョウヘイが不幸になっちゃったら…全然嬉しくないよ』

メイ『だから自分のことはどうでもいいとか…もう言わないで』

キョウヘイ「メイ…」

メイ『例えばあたしがNさまと結婚できたとしても、代償としてキョウヘイが禿げちゃったら素直に喜べないし悲しい』

キョウヘイ「因果関係がわからないんだが」

メイ『それだけ!元気でね!』プツッ

キョウヘイ「おい…」



わだかまりが残ったまま、メイとの通話は終了した。



キョウヘイ「大会前に最悪の雑念ブチ込まれたな…」

キョウヘイ「着信拒否忘れていた僕が悪いんだけど」
 ▼ 181 ロバット@フェアリーメモリ 21/01/28 18:05:59 ID:nwiQLKFU [14/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
1月29日



修行を開始してから一カ月経つ。

今日がPWTの開催日だ。既に会場には多くの人が集まっている。



N「やあ」

キョウヘイ「Nさん?出場するの?」

N「ああ。ボクはかつてチャンピオンを超えた。出場を認めてくれるそうだよ」

N「ポケモン勝負を見せ物にする舞台…そう考えてあまり気は進まなかったけどね」

N「何事も挑戦だ。チャンピオンとそのポケモンたちがどのように絆を深め、繋がっているのか…とても興味がある」

N「組み合わせ表は見たのかい?ボクは一回戦からアデクと戦うことになってね」

キョウヘイ「うわ…気まずそう」

N「そんなことはない。独善的な考え方で暴走したボクを…アデクは止めようとしてくれた」

N「そして罪を許してもらった過去がある」

N「だから今日は成長したボクをカレに見せるつもりなんだ。ボクなりの感謝と恩返しさ」

キョウヘイ「成程。なんかこう…感無量だな」
 ▼ 182 チニン@ウイのみ 21/01/28 18:06:24 ID:nwiQLKFU [15/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「キミはどうだ?今日は誰か勝負したいトレーナーはいるのかな」

N「それとも…キミの活躍を見せたい相手とか」



ヒュウやメイ、それからルリちゃんの顔が浮かぶ。

でもやっぱり…一番見せたいのは母かもしれない。もう見せることはできないけれど。



キョウヘイ「まあ…いるにはいますね」

N「…いいね!ポケモン勝負に於いて理想を胸に抱くことはとても重要だ!」

N「キミのポケモンたちの声が聞こえる。早く戦いたくてウズウズしているようだ」

N「随分と丁寧に特訓を積んだようだね。心が澄み切っているのを感じるよ」

キョウヘイ「すげーな…そんなことまでわかるんすか」

N「キミともぜひ勝負したい…が、今のボクがアデクに勝てるかどうか…」

キョウヘイ「え?前は勝ったんじゃないの?」

N「そうなんだが…ボクが勝利する未来が見えないのさ」

N「いや!余計なことを考えるのは止めよう!」

N「今はただカレと向き合うことに集中だ」

N「お互い分かり合うため…この時間を大切にするよ」



そう言ってNは去っていった。いつも通り、早口でマイペースな人だった。



キョウヘイ「僕も行きますか…」
 ▼ 183 レイハナ@レトルトカレー 21/01/28 18:07:42 ID:nwiQLKFU [16/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
大会は長引いた。

長期戦が多かったのだ。特にNが仕掛けた『すながくれ』による回避戦法。あれは観客からもブーイングを喰らっていた。

だがNという男はブーイングを気にするトレーナーではない。何故かとても愉しそうで、対戦相手のアデクさんは苦笑いを浮かべていた。

組み合わせの妙というのか、僕は相性の良いトレーナーと当たり続け決勝まで勝ち進んだ。

素直に喜ぼう。相性が良いとは言っても…チャンピオンたちと対等に戦えているのは僕たちが強いからだ。



審判「決勝戦!アデクvsキョウヘイ!」



アデクさんもここまで勝ち上がってきた。

新しくチャンピオンとなった僕。かつてチャンピオンとして君臨し、若者に席を譲り渡したアデクさん。新旧チャンピオン同士の決戦だ。



アデク「良い目をしておるな。心配はなさそうだ」

キョウヘイ「人の心配より自分の心配をしたらどうですか」

アデク「わはは…!相変わらず生意気な童よ!」

キョウヘイ「貴方には負けたくないのでね」



そう言って、僕はアデクさんに向かって睨むように微笑んだ。



アデク「応!儂もお前さんに負ける気は毛頭ない!」

アデク「では始めようか!胸が高鳴るわい…!」
 ▼ 184 クロー@カードキー 21/01/28 18:08:35 ID:nwiQLKFU [17/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「サザンドラ!あくのはどう!」

サザンドラ「ゴギャアアアアアッ!!」ドウッ

シュバルゴ「グッ…」ビリビリビリ



あくのはどうの追加効果でシュバルゴが怯み状態になる。

一見タイプ相性では不利に見えるが…スピードで攪乱すればいくらでも誤魔化せる相手だ。



アデク「考えに考え抜いて選んだ技ならそれでよい!」

キョウヘイ「かえんほうしゃ!」

サザンドラ「ゴアアアアアアッ!!」ゴッ



むしタイプが主力のアデクさん相手にサザンドラを選出した理由はここにある。ほのおタイプの技を叩き込めば、タイプ不一致とはいえただでは済まない。

ついでに『いわなだれ』も覚えている。できれば最後のウルガモス用として取っておきたい技だ。



アデク「かわしてメガホーン!」

シュバルゴ「シュバッ!」サッ

シュバルゴ「シュババババッ!!」ギュンッ



ドシュッ!!!



サザンドラ「ギャーーーーッ!!」ミシミシミシ



もちろんリスクは大きい。早速こうかばつぐんの技を喰らってしまった。

これは痛い…もう体力は僅かだろう。

想定とは違うが…ここが使い時だ。
 ▼ 185 オスバメ@こだわりメガネ 21/01/28 18:09:09 ID:nwiQLKFU [18/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「いわなだれ!」

サザンドラ「ゴギャアアアアア!!」カッ



ドドドドドドドドドド……!!!



シュバルゴ「シュバッ!?」

アデク「何っ!?」



無数の岩石が襲い来る。サザンドラからこの技が放たれるのは想定外だったことだろう。



アデク「岩を砕き切れ!」

シュバルゴ「シュバババッ!!」シャッ



ゴシャッ!!バコッ!!



やはりそう来るか。こんな攻撃、ぶつり技に強いシュバルゴなら簡単に迎撃できる。

だがな…本命はそっちじゃないんだよ。
 ▼ 186 ーブイ@するどいツメ 21/01/28 18:09:47 ID:nwiQLKFU [19/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「ここだ!かえんほうしゃ!」

サザンドラ「ゴアアアアアッ!!」ゴッ



サザンドラの口から発射された高熱の炎が、一直線にシュバルゴの元へ伸びる。



アデク「なんの!横に回避だシュバルゴ!」

シュバルゴ「シュバ!」サッ



ジュワアアアアアアア!!!



シュバルゴ「ギャッ…!?」ジジジジジ

アデク「!?」

キョウヘイ「あっはは!引っ掛かった!」



かえんほうしゃは一方向に放たれる技だ。横や上に回避すればまず当たることはない。

だが今は状況が違う。シュバルゴの周りには未だ中に浮いた無数の岩石。

放たれた炎は周囲の岩石に勢いよく衝突し、様々に方向を変えて全方位に流れ出した。

そしてシュバルゴの周囲すべてを焼き尽くしたのだ。



シュバルゴ「……シュバ」ドサ

審判「シュバルゴ戦闘不能!サザンドラの勝ち!」

審判「次のポケモンを出してください!」

アデク「………」

キョウヘイ「よし…このまま行くぞ。サザンドラ」

サザンドラ「ガギャ!」
 ▼ 187 ラセクト@パワーバンド 21/01/28 18:10:20 ID:nwiQLKFU [20/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドギュルルルルルルルルルルル!!!!



サザンドラ「ギャアアアアアアア!!?」メキメキメキ

キョウヘイ「ああっ!?サザンドラーーー!!」

アデク「これで1vs1!振り出しに戻ったな!」

ウルガモス「ぷひいいいいいいっぷ!!」



アデクさんの最後のポケモンはやはりウルガモス。繰り出されて早々にむしのさざめきで攻撃してきた。

凄まじい威力だ。風圧で顔の皮膚が千切れそうになる。



キョウヘイ「不意打ちとは卑怯ですね」

アデク「油断していたお前さんが悪い!まったく…試合中に高笑いしおって」

アデク「それにな、儂も本気で勝ちたいのだ」

キョウヘイ「よーし。なら僕も相棒で迎え撃つとしますかね」

キョウヘイ「出番だぜ!ウォーグル!」

ウォーグル「ギャオオオオ!!」ボン
 ▼ 188 タフリー@ミクルのみ 21/01/28 18:10:53 ID:nwiQLKFU [21/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お互い機動力が高い。それ故に攻防は激しいものとなる。

懐に潜りこみたいウォーグルに対し、ウルガモスは中・長距離を保ちたい。



キョウヘイ「右から回り込め!」

ウォーグル「ギャオッ!」シャッ



しかしそうなると有利なのはウォーグルだ。

ウォーグルはウルガモスの攻撃を一つずつ丁寧に回避してその隙に反撃の技を放てるが、ウルガモスは一度懐に入られると為すすべがない。



キョウヘイ「ブレイブバード!」

ウォーグル「ギャオオオッ!!」ギュン



ゴシャッ!!!



ウルガモス「……ッ」ミシッ



先に攻撃を命中させたのはウォーグル。これで優位に立てたはずだ。
 ▼ 189 ースター@カイスのみ 21/01/28 18:11:54 ID:nwiQLKFU [22/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ(…いや。何かがおかしい)



何だこの違和感は。

アデクさんが全く動じていない。こうかばつぐんの一撃を受けたというのに。

まさか…誘いこまれた?



ウォーグル「グウウ…」ガクッ

キョウヘイ「ウォーグル!?」

アデク「…上手くいったようだな」



やけど状態だと!?ほのおのからだか?

いや違う…!さっきの違和感はこれか…!



キョウヘイ「ブレイブバードが命中しウォーグルとすれ違う瞬間」

キョウヘイ「その一瞬に…『おにび』を打ち込んだのか」



アデクさんの策はそれだけではない。

迫り来るブレイブバードの風圧を羽で受け止め、その力を利用して後退。

後方に移動したことでブレイブバードの衝撃を和らげ、ダメージを抑えた…



キョウヘイ「流石は百戦錬磨のポケモントレーナーですね」

キョウヘイ「僕のポケモンにはまだ真似できない早業だ。あの一瞬で戦況をひっくり返すとは」

アデク「お前さんはお前さんで儂の対策を考えてきたのであろう。サザンドラの『いわなだれ』…ウルガモスを返り討ちにするべく仕込んだ技と見た」

アデク「だがそれは儂とて同じこと。ウォーグルを倒す方法…しっかりと考えていたのだよ」

キョウヘイ「それがやけど状態ですか。完璧な解答だと思います」



そもそもアデクさんは…二回戦でもメタグロスをやけど状態にして勝利していた。

遠目では特性が発動したようにしか見えず気が付かなかった。しかしいざこの場で受けてみるとはっきりわかる。

ウォーグルの攻撃力を削ぎ、ダメージを与える会心の一手。これは正しく大ピンチだ。
 ▼ 190 ネッコ@のどスプレー 21/01/28 18:13:01 ID:nwiQLKFU [23/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「一旦離れろ!」

アデク「逃がさんぞ!だいもんじ!」

ウルガモス「ぷひいいいいい!!」クワッ



ゴアアアアアアアア……!!!



熱い!何という熱気だ。

こんなものを喰らったらその時点で勝負が決まってしまう。



キョウヘイ「上空へ移動!」

ウォーグル「ウォーーーーッ!!」ヒュオッ



無理やりにでも距離を取らなければ。次の策を考える時間が欲しい。



アデク「もう一度だいもんじ!」

ウルガモス「ぷひーーーーーッ!!」カッ



くそっ!甘いこと考えるとすぐに看破される。

アデクさんは攻撃の手を緩めてはくれない。僕が策を弄する時間を与えないつもりだ。

攻撃をかわし続けるのみではやけどにより体力が減っていくだけ。何か手を打たなきゃいけないのに…!



キョウヘイ(…ルリちゃん?)



ウォーグルを上に移動させ、それを目で追った僕は…視界の端に友の姿を発見した。

来ていたのか。仕事で忙しいと思っていた。



キョウヘイ「……フッ」



ルリちゃんだけじゃない。ヒュウもメイも見ていることだろう。だったら…かっこいいところ見せないとな。

ここからの逆転劇…!目に焼き付けるがいい!
 ▼ 191 ニゴーン@たわわこやし 21/01/28 18:14:10 ID:nwiQLKFU [24/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「ブレイブバードだ!」

ウォーグル「ギャオオオオ!!」ギュン

アデク「かわしてだいもんじ!」

ウルガモス「ぷひっ!」サッ

ウルガモス「ぷひいいいいいっぷ!!」ゴオッ



僕たちは再び技の応酬を開始した。攻撃と反撃の繰り返し。距離の探り合いだ。



アデク「覚悟は決まったようだな!」

アデク「いいぞ!それでこそイッシュのチャンピオン!」

アデク「失敗を恐れず攻め続けるその心意気や良し!受けて立とう!」

アデク「ウルガモス!ちょうのまい!」

ウルガモス「ぷひいいいいいっ!」ブワッ

キョウヘイ「くっ…」



ちょうのまい。限られたポケモンしか使えない超強力なへんかわざ。

とくこう、とくぼう、すばやさを同時に上昇させる…ウルガモスの切り札だ。
 ▼ 192 ダンギル@ハバンのみ 21/01/28 18:14:39 ID:nwiQLKFU [25/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「だけどな…隙だらけだぜウルガモス!」

キョウヘイ「ブレイブバード!」

ウォーグル「ギャオオオオオ!!」ギュン



ちょうのまいを使用するために、ウルガモスは一旦攻撃を中断する必要があった。

ウォーグルにとってそれは絶好の攻撃チャンス。



アデク「好機…と思ったか?」

アデク「甘いわ!」



ウォーグルとウルガモスの距離が遠すぎる。

その位置からブレイブバードを撃つのなら…見切るのは容易い。



アデク「ウルガモス!かわしてだいもんじだ!」
 ▼ 193 ォッコ@みどりのプレート 21/01/28 18:16:32 ID:nwiQLKFU [26/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バキャッ!!!!



ウルガモス「ぷひぃっ…」

アデク「何ッ!?」



衝突の直前…ウォーグルの姿が消え、ウルガモスのだいもんじは外れた。

そして次の瞬間にはブレイブバードが炸裂していた。



キョウヘイ「っしゃあ!いいぞウォーグル!」

アデク「…ふはは!わかっていても引っ掛かってしまうものだな!」



この攻撃は僕とウォーグルの十八番。リョウさんとのバトルでも使った技だ。

ブレイブバードが直撃する寸前…相手の目の前で一度切り返し、死角へ移動。

そこからもう一度ブレイブバードを発動し攻撃する。要するにフェイントだ。

やっていることは筋力任せの力技だが効果は覿面。

何せ衝突寸前で突然切り返すのだから、トレーナー視点で見るならともかく…喰らうポケモンからしたらウォーグルが突然消えたようにしか見えないだろう。

指示の方法は「イントネーション」!技の指示を出す際の『ブレイブバード』のイントネーションを二通り使い分け、ウォーグルに切り返しの有無を伝えているのだ。

並外れた筋力と強靭な体幹。鍛え抜かれた肉体を持つ僕のウォーグルにしかできない離れ業だ。



キョウヘイ「今ので仕留めたかったが…まだ体力が残っているか」

ウルガモス「ぶひっ!」

ウォーグル「ギャウゥ…」

キョウヘイ「「やけど状態が効いているな」

キョウヘイ「とはいえダメージは大きい。鳴き声でわかる」

アデク「ここまで来れば最早小細工は要らぬ」

アデク「ウルガモスの最大火力をお見舞いしよう」

キョウヘイ「!!」



お互いに体力は僅か。次で勝負が決まる!
 ▼ 194 ガサーナイト@しあわせタマゴ 21/01/28 18:16:53 ID:nwiQLKFU [27/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「これで最後だ!!むしのさざめき!!」

ウルガモス「ぷひいいいいいいいいいッ!!」ドウッ



ぎゃりりりりりりりりりりりりり!!!!!



ちょうのまいにより強化された圧倒的破壊力。前方広範囲を吹き飛ばす必殺の一撃だ。

上にも横にも逃げ場はない。



キョウヘイ「回避は不可能か」

キョウヘイ「しかし逃げられないなら向かうまで」

アデク「!」

キョウヘイ「ウォーグル!ブレイブバードだ!」

キョウヘイ「低空飛行!地面スレスレを抜けろ!」

ウォーグル「ギャオオオオオオッ!!」ギュン



多少の接触は覚悟だ。力ずくでむしのさざめきを攻略する。

ウルガモスは浮遊しているため…どれだけ広範囲の技を繰り出しても、地面との間に僅かな隙間ができてしまう。

そこを狙う。衝撃波との接触をゼロにすることは不可能だが、最小限のダメージで掻い潜れる可能性が高い。



ウォーグル「ギャオーーーッ!!」バシュッ

ウルガモス「ぶひっ!?」



上手くいった。地を這うが如く、むしのさざめきを切り抜けたのだ。

後は反撃の一撃をブチ込むだけ。



キョウヘイ「これで終わりだ!!」

ウォーグル「ウォオオオオオオ!!」



ゴシャッ!!!!
 ▼ 195 ノムー@ドラゴンのホネ 21/01/28 18:17:21 ID:nwiQLKFU [28/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウルガモス「……ッ!?」ミシミシミシッ

ウォ―グル「ギャオオオオオオッ!!」



ブレイブバードが完璧に決まり、ウルガモスが吹き飛ばされた。



審判「ウルガモス、戦闘不能!ウォ―グルの勝ち!」

審判「よって勝者…キョウヘイ!!」

キョウヘイ「……ふうっ」

キョウヘイ「お疲れ様。よくやってくれたよ…ウォーグル」

ウォーグル「ギャオオオオオオオ!!」



ウォーグルが雄叫びを上げた。

僕たちにとってはこれがPWT初優勝だ。ウォーグルもそれを理解しているのかもしれない。
 ▼ 196 ビット@ゴールドスプレー 21/01/28 18:17:57 ID:nwiQLKFU [29/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「…負けたわ!天晴れであったぞ…二人とも!」

キョウヘイ「ウォーグルだけではなくみんな頑張ってくれました」

アデク「わかっておる!いやあ…本当に清々しい戦い振り!」

アデク「正に天下無双なり!強くなったな、キョウヘイ!」

キョウヘイ「アデクさんだってすごいじゃないですか。他地方のチャンピオンを倒してここまで来たんですよ」

アデク「うむ。確かに強敵であった。本来なら負けていたかもしれぬ」

アデク「しかしあの男…ホドモエでエメラルドが採れることを直前に知ってしまい、試合どころではなかったらしい」

キョウヘイ「そんなことがあるんですか…!?」

アデク「ああ…儂もポケモントレーナーとしてまだまだということだな!」

キョウヘイ「それはお互い様です。僕もまだまだ」

アデク「そうだな。これからも高みを目指し共に歩もう!」

アデク「とはいえ今は祝おうではないか!優勝おめでとう!」

キョウヘイ「ありがとうございます」



僕とアデクさんは固い握手を交わす。すごくガッチリして、重い手だった。
 ▼ 197 ドン@ロックメモリ 21/01/28 18:18:24 ID:nwiQLKFU [30/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
インタビューに雑に答え、僕は帰路に就く。

酷く疲れた。今すぐ家に帰りたい。



キョウヘイ「そういえば…ルリちゃんは?」



観客席の方を見ると、マネージャーらしき人物と共に帰り支度を始めていた。

彼女にも挨拶くらいしたいな。でも声を掛けたら知り合いであるとバレてしまう。



キョウヘイ(カメラマンは周囲にいない)

キョウヘイ(会場設置のカメラからも死角のはず)



安全を確認した後、僕は彼女に手を振った。

驚いた様子だったので、きっと気付いてくれたのだろう。
 ▼ 198 ブライカ@おうじゃのしるし 21/01/28 18:19:37 ID:nwiQLKFU [31/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「…何してるんだろ。僕」



家に直行するつもりが、優勝したテンションで何故かジャイアントホールまで来てしまった。



キョウヘイ「へっくし!」

キョウヘイ「やっば…風邪引いたかも…」



ブーーーッ、ブーーーッ



キョウヘイ「…はい」

N『やあ。良い勝負だったよ』

N『優勝おめでとう』

キョウヘイ「ありがとうございます」

N『ん?ジャイアントホールにいるのかい』

キョウヘイ「ええ」

N『ボクも定期的に赴くのだが…まだキュレムは姿を見せてくれない』

N『ヒトを恐れ警戒しているのかもしれない』

キョウヘイ「あんな事件がありましたからね」

N『そうだね。でもいつかは分かり合えるようになりたいな』

N『ポケモンとヒトの懸け橋になってみせる。それがボクの理想だから』

キョウヘイ「僕も同じ思いですよ」

N『ああ。そしてキミならゼクロムにもきっと認められる』

キョウヘイ「………」

N『急ぐ必要はない。ボクとトウヤは少し早すぎただけさ』

N『ではボクはこれで。風邪を引かないようにね』



プツッ。



キョウヘイ「風邪引くな、か。手遅れかもしれないなあ…」

キョウヘイ「…ぶえっくしょん!」
 ▼ 199 スマス@リニアパス 21/01/28 18:20:16 ID:nwiQLKFU [32/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
家に帰るとすぐに、ルリちゃんから着信が入った。



ルリ『ごめんね?こんな遅くに』

キョウヘイ「僕も今帰ったところだから」

ルリ『優勝おめでとう!すっごくかっこよかったよ!』

キョウヘイ「僕とポケモンのベスト過ぎるコンビにかかればこんなものさ」

ルリ「うんうん!すごかった!」

ルリ『私にはよくわからなかったけど、色々なこと考えて探り合って…それでキョウヘイくんが上回ったんだよね』

ルリ『すごい…本当にすごいよ』

キョウヘイ「フッ…今度ヒウンアイスを買いに行ってみよう。またブームになるかもしれない」

ルリ『そうだね!飛ぶように売れると思う!』



…ツッこんでくれない!?

全肯定モード?逆に怖いんですけど。
 ▼ 200 ヒダルマ@キズナのタヅナ 21/01/28 18:21:26 ID:nwiQLKFU [33/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「何か良いことあった?機嫌よくない?」

ルリ『あはは…何言ってるの』

ルリ『キョウヘイくんが優勝したのは良いことだよ』

ルリ『でもそれ以外なら…この前自動販売機でミックスオレを買ったらね、当たりが出てもう一個貰えたことがあったんだ』

キョウヘイ「あれって本当に当たり出るんだね…」

ルリ『えへへ…すごいでしょー?』

キョウヘイ「そうか…僕も今度挑戦してみよう」

ルリ『…二人の時だったら分けてあげられたのに』

キョウヘイ「えっ」

ルリ『………』

ルリ『また一緒に遊園地とか行こうね!キョウヘイくん!』

キョウヘイ「うん…そうだね」
 ▼ 201 ャオブー@ライトストーン 21/01/28 18:22:17 ID:nwiQLKFU [34/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
心臓の鼓動が高まるのを感じる。

女の子に想いを寄せられるのはいつ振りだろうか。

恋をする人間の想いを歌う曲や詩は多いが、恋される人間の想いを歌ったものはあまり見ない。

だけど恋される側の心境にも共通項はあるもの。奇妙な高揚とむず痒さ、そして切なさ。

ライブキャスター越しに見たルリちゃんの表情が忘れられない。真っ直ぐに僕を見つめる好意に満ちた眼差しが…脳裏に焼き付いている。

出会ってから今まで散々悪戯を仕掛け、ヒュウへのサプライズのため好き勝手に利用し、挙句の果てに着信拒否で連絡を絶ち嫌がらせてきたはずだ。好意を寄せられる理由がない。

なんで僕なんだ?好きになるならヒュウにしておけ。何ならメイでもいいぞ。

僕なんか…ただの屑なのに。
 ▼ 202 トツキ@するどいツメ 21/01/29 12:25:01 ID:H0CIgqXg [1/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
知り合ってすぐの時、彼女はこっちに越してきたばかりで友達が少ないと言っていた。

だからヒュウとメイを紹介した。ヒュウを喜ばせることもできるし都合がいい。

この二人は善い人達だ。二人と仲良くすれば幸せになれる。仕事もプライベートも充実したものになるはず。

僕は舞台装置に過ぎず、それ以上の価値はない。

これでは駄目なんだ。僕はもう不要なのだから、仲良くする必要はない。寧ろ仲良くしない方がいい。



キョウヘイ「どうして思い通りにならないんだ?」



思い通りにならない?何という身勝手な台詞。

そもそも他人の境遇・心情を勝手に慮って理解したつもりになり、施しをして善いことをした気分になるなんて…傲慢すぎる。有難迷惑だったかもしれないじゃないか。

僕は人のために動いているつもりだったが、その実自分の都合しか考えていなかったのだろうか。

人助けをしているつもりになって…罪を許された気になりたかったのだろうか。

何一つ変わっていない。僕は今も昔も自分勝手な屑ということだ。

良い機会だ…思い出してみよう。僕が犯した罪を。

一年前。チャンピオンを目指してイッシュを旅していた頃の記憶。
 ▼ 203 モルー@パスタ 21/01/29 12:25:30 ID:H0CIgqXg [2/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
*****





キョウヘイ「また僕の勝ちだね」

ヒュウ「勝たせてやれなかった…!」

ヒュウ「この悔しさ…心に刻み込んだッ!」

キョウヘイ「でも…ヒュウは強いな」

ヒュウ「ならオレに勝ったオマエはもっと強いってことだッ!」

キョウヘイ「まあね。僕たちは強いよ」

ヒュウ「オレより強いオマエになら、オレの手伝いを任せることができる」

キョウヘイ「手伝い?」

ヒュウ「じゃあオレ先に行くからな!オレはまだまだ強くなってみせる!」

ヒュウ「オマエももっと強くなっておけよッ!」ダダダ

キョウヘイ「あ!待てって…」

キョウヘイ「行っちゃった…忙しないな」
 ▼ 204 ィアンシー@こだいのぎんか 21/01/29 12:26:03 ID:H0CIgqXg [3/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は昔から頭が良かった。

同年代の子と比較しても飛び抜けてIQが高く、ヒオウギでは神童扱い。将来は学者にでもなるんじゃないかと期待されていた。

でも僕が一番興味を抱いたのはポケモン勝負だった。

小さい頃テレビの前で見たポケモントレーナーの姿。今でもはっきり覚えている。

相棒のポケモンと信頼し合い、共に窮地を乗り越える姿は…あまりにも美しく、いっそ芸術的ですらあった。

僕もあんな風に信頼し合うパートナーが欲しかった。共に歩んで強くなり、いつかイッシュのチャンピオンになってみたいと思った。

イッシュの頂点とはどのような景色なのか。すごく興味があったのだ。



キョウヘイ母「行ってらっしゃい。気を付けてね」

キョウヘイ「うん。行ってきます」



チャンピオンを目指す理由は他にもある。母への恩返しだ。

父は僕が物心つく前に他界したそうで、母は女手一つで僕を育ててくれた。

それはとても大変なこと。苦しい時もたくさんあったはずなのに、母が僕の前で辛そうな表情を見せることは全くなかった。

だから恩返しがしたい。

有名になりたいんだ。できる限りたくさんの偉業を成し遂げたい。そして僕の名を世界中に轟かせたい。

そうすれば母は「偉人を育てた」母親だ。

母が僕を育ててくれたこと、僕のために尽くしてくれたことは正しかったのだと証明したかった。肯定したかった。

僕なりの親孝行というわけだ。まだ本人には話していないけど。
 ▼ 205 ワパレス@ラティアスナイト 21/01/29 12:26:31 ID:H0CIgqXg [4/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイ「あのギアステーションって、地下鉄の中でポケモン勝負ができるの!」

メイ「でね!腕試しに来たらなんとサブウェイマスターがいたの!」

キョウヘイ「サブウェイマスターって…ギアステーションで最強の?」

メイ「そう!そうだよ!すごくない?」

メイ「しかも2vs2なら特別にここで相手してくれるって!」

キョウヘイ「それは魅力的だね」

メイ「すっごいチャンスでしょ!お願い!ここで一緒に戦って?」

キョウヘイ「いいよ。寧ろこちらからお願いしたい」

メイ「ありがとう!」

メイ「あっ!あたしの名前はメイ」

メイ「サブウェイマスターを超える最高のペアになろうね!」

キョウヘイ「うん…よろしく」

キョウヘイ「そして目の前にいるのがサブウェイマスター…ノボリとクダリか」



ノボリ「このような場所での勝負はイレギュラーですが…これも何かの縁」

ノボリ「戦うことで見える景色、わかることもあるでしょう」

ノボリ「ではクダリ。何かございましたらどうぞ!」

クダリ「ルールを守って安全運転!」

クダリ「目指すは勝利!出発進行!」
 ▼ 206 ルミーゼ@やすうりポン 21/01/29 12:27:06 ID:H0CIgqXg [5/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ノボリ「ブラボー!!」

ノボリ「あなたがたとポケモンのコンビネーション!素晴らしいです」

クダリ「ぼくクダリ」

クダリ「君たちに負けちゃった」

クダリ「だけど面白かった!また遊ぼうよ!」



メイ「強かった…!さすがサブウェイマスター!」

キョウヘイ「舐めた真似しやがって。全然本気じゃなかったぞ」

メイ「うん!もっと鍛えていつか本気のサブウェイマスターと戦いたい!」

メイ「キョウヘイ!あたしと組まない?」

キョウヘイ「マルチの話?」

メイ「うん!アンタ滅茶苦茶強いじゃん!これからも手伝ってよ!」

キョウヘイ「やだ」

メイ「何で!?」

キョウヘイ「マルチは苦手だ。できれば僕一人で戦いたい」

メイ「そんなこと言わないで?ほら…二人で助け合ったりとかさ、マルチならではの奥深さがあるじゃない」

キョウヘイ「僕が君に助けられるって?冗談きついな。そんなこと起こり得ない」

キョウヘイ「何故わざわざ足手纏いを連れて行かなければならないんだ?」

メイ「はあああああ!?何それ!!」

メイ「アンタって…めっちゃ嫌なやつだね!!」

キョウヘイ「僕は事実しか言ってない」

メイ「聞き捨てならない!アンタ…もうちょい付き合って!」ガシッ

キョウヘイ「おい…」グイッ
 ▼ 207 ミッキュ@ドクZ 21/01/29 12:27:53 ID:H0CIgqXg [6/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイは僕を連れ回し、およそ6時間のマルチバトルを強いられた。



メイ「やったね!ノーマル制覇だよ!」

キョウヘイ「サブウェイマスターとの再会早すぎだろ…気まずかったじゃん」

メイ「でも楽しかった!段々とコンビネーションも合うようになってきたし!」

メイ「そりゃまあ…アンタがたくさん助けてくれたからだけど」

キョウヘイ「そうだな。気を遣わなきゃいけなくて大変だった」

キョウヘイ「だが…逆に君に助けられることも皆無ではなかった」

メイ「そうだっけ?」

キョウヘイ「自覚無いのかよ!」

メイ「必死だったし。でもそれなら…次も組んでくれるよね?」

キョウヘイ「ああ。君が強いことはよくわかった」

メイ「『君』って呼ぶの止めて?あたし偉そうな男とか無理」

キョウヘイ「ああん?だったら『メイくん』って呼んでやろうか?」

メイ「呼び捨てで呼びなさい。あたしもキョウヘイのこと呼び捨てで呼んでるんだから」

キョウヘイ「わかったよ…」

キョウヘイ「よろしくな。メイ」

メイ「それからね、アンタもう少し笑った方が良いと思う!ずっと不機嫌そうな顔で何か嫌」

キョウヘイ「注文が多いな…笑えって言われても急には笑えない」

メイ「笑顔って大事よ。知ってる?笑顔ってストレスを軽減したり辛さ苦しさを和らげる効果があるんだって!作り笑いでも効果アリ!」

キョウヘイ「…努力するよ」
 ▼ 208 ーフィ@オニゴーリナイト 21/01/29 12:28:25 ID:H0CIgqXg [7/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕とポケモンたちはメキメキと力を付けていった。

元々ポケモン勝負は好きだったが、旅に出て思う存分バトルができるようになると…その愛が爆発した。

仲間になったポケモンのことは徹底的に調べ尽くし、公式大会の戦闘記録を掻き集めてポケモン勝負における活躍の幅を学ぶ。

ポケモン勝負への情熱、そして天賦の記憶力が掛け合わされたことで、これらの膨大な知識は余すところなく僕の頭脳にインプットされていった。

バトル中もこの頭脳は大いに役立ち、情報把握能力、分析力、並行処理能力においては他のトレーナーの追随を許さない。故に上達が早く機転も利く。

誰よりも才能があると思っていた。誰にも負ける気がしなかった。実際誰にも負けなかった。

そして強くなればなるほど…僕はどんどん傲慢になっていった。
 ▼ 209 ゲデマル@リゾチウム 21/01/29 12:28:51 ID:H0CIgqXg [8/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒュウ「…また負けたッ!!」

キョウヘイ「相手が悪かったのさ。ヒュウじゃ僕には勝てないよ」

ヒュウ「言い返せないな…オマエには結局一度も勝てていない」

キョウヘイ「だけどヒュウは強いよね。チョロネコだっけ?妹さんのポケモンを取り返すために…こんなに一生懸命になれるんだから」

ヒュウ「何だよ急に…」

キョウヘイ「僕は弱い奴を見ると無性に苛々するんだ」

ヒュウ「弱いヤツ?」

キョウヘイ「ヒュウも見たことあるでしょ。ポケモン勝負で負けるとポケモンのせいにしたり、運のせいにしたりする奴」

キョウヘイ「あるいは…負けた途端に『楽しむことが大事!』とか言って言い訳したり開き直ったりする奴」

キョウヘイ「そしてこの手の連中は揃いも揃ってクソ弱い」

キョウヘイ「弱い上に見苦しいとか…キモくない?」

ヒュウ「………」

キョウヘイ「どうしたの?」

ヒュウ「オマエ…滅茶苦茶に性格悪いな…」

キョウヘイ「えっ」
 ▼ 210 ンゴロ@けいけんアメM 21/01/29 12:29:20 ID:H0CIgqXg [9/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒュウ「まあ気にするなよ!性格悪いからって悪いヤツとは限らないもんな!」

ヒュウ「オマエは性格悪いけど良いヤツだし!」

キョウヘイ「」

ヒュウ「ジムバッジを集めていけばいずれポケモンリーグに挑戦できる」

ヒュウ「ポケモンリーグの四天王とチャンピオンならオマエを苛々させることなんかないって!ハイレベルで楽しい勝負ができるはずッ!」

ヒュウ「下ばっかり見てないでさ、上を見るようにしようぜッ!」

ヒュウ「ほらそんな仏頂面してないで!口角上げろ!」グイッ

キョウヘイ「むぐっ」ギュム

ヒュウ「よし。口角が上がれば…心も上向きになるし、下じゃなく上を見るようになるよなッ!」

ヒュウ「じゃあな!頑張れよッ!」ダダダダ

キョウヘイ「………」

キョウヘイ「僕って…性格悪かったのか…」
 ▼ 211 チュール@カプZ 21/01/29 12:29:52 ID:H0CIgqXg [10/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドブみたいな性根の持ち主の僕は、プラズマ団のことも大嫌いだった。

弱いし群れるしウザいし。

何より気に入らないのが人のポケモンを奪っておいて全く悪びれもしないところだ。ポケモンがトレーナーと共に育んだ絆。あいつらはそれを平気で踏みつけにする。

だからヒュウの目的には喜んで力を貸した。僕の手で壊滅に追い込んでやるつもりだったのだ。



ヒュウ「……悪い」

ヒュウ「頭の中がグチャグチャで……どうしていいかわかんねーよ」

レパルダス「グルルゥーッ!!」

ヒュウ「やっと会えたのに…こいつオレを睨み付けてる…」

ヒュウ「なんでだよ…!!」

ダーク「お前…そのポケモンは返してやる」

ダーク「ゲーチス様がこれから成されることを考えれば…そいつはもう用済みだ」

ヒュウ「………」

ヒュウ「なあ…キョウヘイ…」

ヒュウ「あいつらプラズマ団の思い通りにさせたら…」

ヒュウ「チョロネコやキュレムみたいに悲しいポケモン増えるよな…」

キョウヘイ「…そうだね」

キョウヘイ「僕がヒュウに対してできることはもうない」

キョウヘイ「だがこれから生まれる悲しみを阻止することはできる」

ヒュウ「キョウヘイ…」

キョウヘイ「後は任せろ」

キョウヘイ「あいつら…ブッ潰してやる」

ヒュウ「…気を付けろよ」

キョウヘイ「大丈夫。僕が負けるわけないんだから」
 ▼ 212 ラエッテ@トポのみ 21/01/29 12:30:22 ID:H0CIgqXg [11/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲーチス「おや?アナタのモンスターボール…震えていますね」

ゲーチス「もしかしてアナタのポケモンは怒りに震えているとか?」

ゲーチス「否!そんなことあるわけがない!」

ゲーチス「たかが道具に感情や湧き上がる思いなどないのです」

ゲーチス「さあ!キュレムに挑みなさい!」

ゲーチス「ワタクシはアナタの絶望する瞬間の顔が見たいのだ!」

ゲーチス「イッシュを守るため戦う!アナタのような端役には勿体無いとっておきの舞台を用意してあげたのです!」

ゲーチス「負けて華々しく散れ!」

キョウヘイ「端役はお前の方だクソモノクル。首回すぞ」

キョウヘイ「伝説のポケモンだろうが、僕と僕のポケモンには及ばない」
 ▼ 213 メラ@ノーマルZ 21/01/29 12:30:44 ID:H0CIgqXg [12/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲーチス「まさか!せっかく用意したブラックキュレムが!」

ゲーチス「何と忌々しい!消えたキュレムをまた確保せねばならんではないか!」

ゲーチス「やはり目障りなトレーナーはワタクシが手を下しましょう!」

ゲーチス「今度こそ!誰が何をしようと!ワタクシを止めることはできない!」

キョウヘイ「諦め悪いぞ!力量差すらわからないのか?」

ゲーチス「ええわかっていますとも!だからこそ言ったのです!『止めることはできない』と!」

キョウヘイ「そうかい。だったら現実を教えてやるぜ!」
 ▼ 214 ェークル@スパイスセット 21/01/29 12:31:21 ID:H0CIgqXg [13/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲーチス「………?」

ゲーチス「どういうことなのだ?計算が狂っているぞ!?」

キョウヘイ「歯ごたえがないな。拍子抜けしたよ」

キョウヘイ「科学力でポケモンの力を引き出すのも、絆の力でポケモンの力を引き出すのも…強さへのアプローチとしてはどちらもアリだ」

キョウヘイ「だがお前にはどちらもない。そのサザンドラ…『やつあたり』なんて覚えさせて…」

キョウヘイ「不協和音を聞いているような気分だ。不愉快」

N「…父さん」

N(二年前より力が落ちている?あのトウヤすら苦戦した強さは何処へ…)

N(まさか…衰えているのか?)

ゲーチス「あり得るか!いいやあり得ぬ!!」

ゲーチス「あり得てはならぬ!!」
 ▼ 215 ントル@ねらいのまと 21/01/29 12:31:54 ID:H0CIgqXg [14/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「このまま決着では興がないよね」

キョウヘイ「こういうのはどうだ?出てこいジヘッド!」

ジヘッド「ギャウッ!」ボン

キョウヘイ「サザンドラの進化前のジヘッドだ。この子になら勝てるかもな?」

ゲーチス「舐めた真似をっ…!」

N「キミ!妙な真似はよせ!」

N「早くゲーチスを倒すんだ!これ以上刺激してはまずい!」

N「このヒトは…追い詰められると何をしでかすかわからないんだ!」

キョウヘイ「…わかりましたよ」

ゲーチス「サザンドラ…!かみくだく!」

サザンドラ「ギャオオオオ!!」バッ

キョウヘイ「かわしてドラゴンダイブ」

ジヘッド「ギャウウッ!!」ギュン



ゴシャッ!!!
 ▼ 216 イリキー@ルガルガンZ 21/01/29 12:33:13 ID:H0CIgqXg [15/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲーチス「認めるか…!あり得るか…!」

ゲーチス「一度ならず二度までも無名のトレーナー如きに…!」

キョウヘイ「はは…惨めだな」

ゲーチス「何…!?」

キョウヘイ「だってそうだろ?完全なる支配者のゲーチスさん」

キョウヘイ「これだけ人を馬鹿にして!貶めて!蔑んで!」

キョウヘイ「こんなにも素晴らしいポケモンたちを!道具扱いして!」

キョウヘイ「肝心のお前自身がこの程度とは!あははははははは!!」

ゲーチス「………!!」

N「父さん!わかってください」

N「ポケモンは道具ではないのです」

N「ポケモンとヒトはお互いを高みへと誘っていける素晴らしきパートナーなのです!」

N「それをわかっているヒトたちもいるのです!」

N「だのに!」

ゲーチス「………」

N「…父さん?」
 ▼ 217 ルキー@あかしのおまもり 21/01/29 12:34:15 ID:H0CIgqXg [16/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダーク「ゲーチスさまは…もう正気では…」

ダーク「ここは私たちが…」

N「待ってくれ」

N「父さん…どうして何も喋らないんだ?」

ゲーチス「………」



ダーク「…お前」

キョウヘイ「ん?僕?」

ダーク「私たちはお前を許さない」

キョウヘイ「気色悪い」

ダーク「………」

ダーク「……では」
 ▼ 218 リムガン@ユキノオナイト 21/01/29 12:34:39 ID:H0CIgqXg [17/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラズマ団を打ち倒し、イッシュの平和は守られた。

そして僕も…ゲーチスに裁きを下した気分ですっきりしていた。



ヒュウ「オレは…チョロネコを妹に返すッ…!」

ヒュウ「まだモンスターボールから出すなんてムリだけど…」

ヒュウ「オマエはどうする?」

キョウヘイ「僕はポケモンリーグへ行こうと思う」

キョウヘイ「ジムバッジも集まったからね」

ヒュウ「それはいいな!だって今のオマエ、イッシュで一番強いだろ!」

ヒュウ「それを証明してこいよ!」

キョウヘイ「もちろんだ。近いうちに新チャンピオン誕生のニュースがイッシュ中を駆け巡るだろうぜ」
 ▼ 219 トツキ@ピンクのバンダナ 21/01/29 12:35:16 ID:H0CIgqXg [18/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
23ばんどうろに到着し、僕はチャンピオンロードへ向かった。



キョウヘイ「あそこか…」



チャンピオンロードの入り口が見えてきた。

その時だった。



ダーク「旅は順調に進んでいるようだな」

キョウヘイ「!!」



突如…ダークトリニティが姿を現した。



キョウヘイ「何の用だ?」

ダーク「お前に伝えておきたいことがある」

ダーク「私たちはゲーチス様を保護し、身を隠した」

ダーク「だがゲーチス様は…既に精神をやられてしまっていた」

ダーク「私たちが目を離した一瞬。ゲーチス様は発狂し、自ら命を絶った」

キョウヘイ「!!」

ダーク「お前がゲーチス様を侮辱し、追い詰めたのが原因だろう」

ダーク「何か言うことはあるか」

キョウヘイ「…僕は悪くない」

キョウヘイ「ゲーチスが勝手にやったことだ。僕のせいじゃない!」



僕は動揺していた。まさか命まで絶つとは思わなかったからだ。

自分が放った言葉の刃で人の命が奪われた。この事実を受け入れられず、震えていた。



ダーク「…そうか」

ダーク「では面白いものを見せてやろう」
 ▼ 220 レズン@むげんのふえ 21/01/29 12:35:58 ID:H0CIgqXg [19/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ド ゴ ン ! ! !



キョウヘイ「!!?」



凄まじい爆発音。

これはまさか…ヒオウギの方角!?



キョウヘイ「お前…」

ダーク「お前の自宅に爆弾を仕掛けた」

ダーク「大した威力じゃない。家一つが全焼する位の力はあるがな」

ダーク「そして中にはお前の母親もいることだろう」

ダーク「残念ながらもう助からない」



ダークトリニティは表情一つ変えずに告げる。



ダーク「自分のせいではないと言ったな」

ダーク「しかしお前が余計な口を挟んでいなければ…ゲーチス様は生きていたかもしれない」

ダーク「そうなれば私たちがこのような凶行に走ることもなかった」

ダーク「対立はしたものの…お前たちはイッシュを守ろうとしただけ。憎む道理はない」

ダーク「だがゲーチス様を侮辱する必要はなかったはずだ。私たちはそれが許せない」

ダーク「お前は私たちの大切な人を奪った」

ダーク「だから私たちもお前から大切な人を奪う」

ダーク「お前の母親は犠牲となった。お前のせいで」



そう言って、ダークトリニティはモンスターボールを取り出した。



ダーク「私と戦え。憎しみも怒りもすべてお前にぶつける」

ダーク「お前もお前で…私のことは憎んでいるのだろう」

ダーク「だからお前も、その憎しみを私にぶつけるといい」

ダーク「人殺し同士、共に堕ちよう」
 ▼ 221 ャモメ@ふしぎのプレート 21/01/29 12:36:22 ID:H0CIgqXg [20/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後のことはよく覚えていない。

僕も僕のポケモンも怒りで目の前が真っ赤になり、荒ぶる感情に身を任せてダークトリニティを打ち倒したのだと思う。

ヒオウギに戻ると、もう一人のダークトリニティが待ち伏せていた。

そいつも倒し、二人を警察に引き渡した。

残る一人は発見できなかった。そもそもこの襲撃には関与していないのかもしれない。

こんな状況だ。三人の中でも意見が分かれたのだろう。



キョウヘイ「………」

ヒュウ「…キョウヘイ。あのさ」

キョウヘイ「ついてくるな」

ヒュウ「………」
 ▼ 222 ロア@ピカチュウZ 21/01/29 12:37:10 ID:H0CIgqXg [21/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「……ん?」

キョウヘイ「…アデクさん」



これから何をすればいいのかわからず、フラフラと歩いていると…アデクさんに出くわした。



アデク「おお!どうした?こんなところで!」

アデク「ポケモンリーグへ向かうのではなかったのか?」

キョウヘイ「………」

アデク「…聞いたよ。痛ましい事件だった」

アデク「すまなかったな。今のお前さんに旅を続けろというのは酷だった」
 ▼ 223 バット@ヒウンアイス 21/01/29 12:37:30 ID:H0CIgqXg [22/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「いえ。僕は今からポケモンリーグに向かいます」

キョウヘイ「ここで折れたら、それこそ母が浮かばれない」

アデク「待てい。今はゆっくり休め」

アデク「ポケモントレーナーは繊細だ。心を強く保っておらねば、その揺らぎがポケモンにまで伝播し…悪循環に陥ってしまう」

アデク「生き急いではならんぞ」

キョウヘイ「僕は負けたことがない。ポケモンリーグでもそれは同じだ」

アデク「勝ち負けの話ではないのだ。そもそもポケモントレーナーに『勝った方が正義』は通用しない」

アデク「それを考えてくれ。正しく歩むということを…」

キョウヘイ「貴方にだけは言われたくないな」

キョウヘイ「相棒のポケモンを喪い…心の隙間を埋めるためリーグを放り投げてイッシュを放浪」

キョウヘイ「その結果Nを止められなかった貴方には!」

アデク「…言い返せんな!まったく手厳しいものよ」

アデク「だが今だけは話を聞いてくれい。お前さん程の聡明なトレーナーならわかるはず」

アデク「否。もう本心では気付いているのではないか?」

キョウヘイ「………」
 ▼ 224 ソクムシャ@ぼうじんゴーグル 21/01/29 12:37:58 ID:H0CIgqXg [23/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「よし!ではこうしよう」

アデク「今から儂とポケモン勝負をしよう」

キョウヘイ「は…?」

アデク「儂が勝ったら一旦旅を中断。儂のところへ来い。面倒を見てやる」

キョウヘイ「なんで!?」

アデク「もちろんお前さんが勝ったらリーグへ向かうなり好きにするがいい」

アデク「もっとも…今のお前さんに後れを取るほど四天王もアイリスも軟ではないが」

キョウヘイ「勝った方が正義は通用しないって…自分で言ったばかりですよ」

アデク「そうだな!しかし具体的な証拠がなければお前さんも納得できぬだろう」

アデク「既にチャンピオンを引退した儂に勝てぬようでは…ポケモンリーグを勝ち抜くことなど不可能というもの!」

キョウヘイ「…わかりました。受けて立ちます」
 ▼ 225 チム@おおきいマラサダ 21/01/29 12:38:24 ID:H0CIgqXg [24/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
接戦だった。過去に例のない程の。

何かがおかしい。いつものように指示が出せない。



キョウヘイ「ウォーグル!いわなだ…」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ダーク『お前の母親は犠牲となった。お前のせいで』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


キョウヘイ「………ッ!」

ウォーグル「ギャウ…?」



ウォーグルが心配そうに僕の方を見る。僕の様子がおかしいことに気付いている。



キョウヘイ(僕のせいで…お母さんが…)



僕のせいで人の命が奪われた。

僕のポケモンたちはみんな素晴らしい力を持っている。そして優しい心を持っている。

この妙妙たるポケモンたちへ指示を出す資格などあるのだろうか。こんな最低の人間に…
 ▼ 226 ルマッカ@いかずちプレート 21/01/29 12:38:52 ID:H0CIgqXg [25/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「だいもんじ!」

ウルガモス「ぷひいいいいいいいっぷ!!」カッ



ゴアアアアアアアアアアッ!!!



ウォーグル「ギャッ…」ジュウウウウ

キョウヘイ「ウォーグル!!」



完敗だった。言い訳のしようもないくらいに。

傍から見れば接戦にも見えたかもしれない。

だけど…ポケモンとの信頼関係、状況判断能力、勝利へ向かう意思。どれを取っても、僕はアデクさんに負けていたのだ。
 ▼ 227 ルガー@いいキズぐすり 21/01/29 12:39:29 ID:H0CIgqXg [26/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「負けるのは初めてか」

キョウヘイ「………」

アデク「負けるというのは…辛いだろう」

キョウヘイ「…はい」

アデク「だろうな。負けるというのは…今までの自分を否定されることでもある」

アデク「これまで培ってきたものが否定され、自分も…自分のポケモンも信じられなくなることすらあるだろう」

キョウヘイ「……!」

アデク「お前さんなら、もう儂の言いたいことに気付いているのかもしれんな」



僕は弱い奴が嫌いだった。

自分の不甲斐無さから目を背け、周りのせいにするようなやつが。

でも彼らは…ずっとずっとこんな辛い思いをしていたのだ。

一度は目を背けながらも、このどうしようもない辛さを乗り越え…前に進む。全然弱くなんかないじゃないか。



アデク「前に言っておったな。弱い者が嫌いだと」

アデク「しかし彼らも彼らで…言葉に表せぬ程の苦しみと向き合って生きている」

アデク「その結果自分のポケモンを責めてしまうのは褒められたことではないが…」

アデク「しかしどうだ?彼らもただ愚かなだけではないし、苦しみと向き合いながら一歩ずつ一歩ずつ強くなっている。それはわかったのではないか?」

キョウヘイ「………」
 ▼ 228 ョロトノ@ライブキャスター 21/01/29 12:40:05 ID:H0CIgqXg [27/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は何ということをしていたのだろう。

負けて苦しむ敗者を労わらず、尊重せず、只管見下し蔑む。

弱い奴には僕のことなど理解できないと思っていた。でもそれは逆も然り。僕も負けた相手のことを理解できていなかった。

愚かなのは僕の方だったし、馬鹿なのは僕の方だったんだ。



キョウヘイ「………ううっ!」

キョウヘイ「あああああああああああああ……!!!」



僕は絶叫するように泣き喚いた。

悲しいのか、悔しいのか、憎いのかもわからない。或いはその全てか。

ポケモンたちにも母にも友にも申し訳ないと思った。

何も…何も理解できていなかったのだ。

何も理解しないまま…大切な人を喪ってしまった。



アデク「何も信じられなくなっているのだろう。自分も、他人も、ポケモンのことすらも」

アデク「これからゆっくり向き合っていこう」

アデク「大丈夫。お前さんの傍にはポケモンがいてくれる」

キョウヘイ「ヒュウ……メイ……」

キョウヘイ「ウォーグル……みんな……」

キョウヘイ「お母さん……ごめん」

キョウヘイ「ごめんなさい…」
 ▼ 229 ラチーノ@アクZ 21/01/29 12:40:34 ID:H0CIgqXg [28/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「………」

アデク「…大丈夫か?」



涙は止まったが、相変わらず心は壊れたままだ。

心を強く保つには…どうすればいい?

そういえばヒュウとメイが言っていたな。こういう時は笑えばいいのだ。



キョウヘイ「……ふふ」



口角を上げると、連動して沈んだ心も持ち上がる気がした。

作り笑いでもいい。笑うことで…副交感神経が優位になってストレスホルモンの分泌が減少する。

お母さん。僕はまだ大丈夫そうだよ。

笑顔でいれば…まだ生きていられる気がする。

お母さんの分まで…精一杯生き抜いて見せる。



キョウヘイ「大丈夫です。心配をお掛けしました」



僕はアデクさんに向かって微笑んだ。これからずっと…この笑顔を忘れずにいよう。

僕が僕であるためにも、みんなを心配させないためにも。



アデク「うむ。今はそれで良い」

アデク「よし!ちょいと鍛えてやろう!」

アデク「儂についてこい!」
 ▼ 230 ザード@ざいりょうぶくろ 21/01/29 12:57:11 ID:H0CIgqXg [29/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バシュッ!!



キョウヘイ「!?」

アデク「!?」



何だ?空間に穴が開いた。

あんなもの見たことがない。ポケモンの技か何かか?



グズマ「ぐあっ…!」ドサ

マッシブーン「マッシ!?」ドスン



そしてその穴から…一人の大男と謎のポケモンが放出された。
 ▼ 231 リトドン@ホズのみ 21/01/29 12:57:50 ID:H0CIgqXg [30/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「何なんですかこの人たち」

アデク「知らんわ」



僕もアデクさんも困惑している。

人間が空から落ちて来るだけでも不思議なのに、見たことのないポケモンまで引き連れている。



キョウヘイ「図鑑にもデータがない。新種のポケモンか?」

アデク「おい…しっかりせい。大丈夫か…?」

グズマ「ぐっ…何処だよここは」

アデク「サンギタウンだ」

グズマ「サンギタウンって何だよ」

アデク「まさかお前さん…イッシュの人間ではないのか?」

アデク「弱ったな…」



どうやらこの人はれっきとした人間のようだ。会話が成立する。



アデク「お前さん、名前は?どこから来た?」

グズマ「ああ?オレさまの名前か?」

グズマ「オレは…」

グズマ「俺は……誰だ?」

アデク「!?」
 ▼ 232 タージャ@かけたポット 21/01/29 12:58:29 ID:H0CIgqXg [31/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「記憶喪失?」

アデク「そのようだな」

グズマ「教えてくれ!俺は一体誰なんだ!」ブンブン

マッシブーン「マッシ…」ユサユサ

アデク「ポケモンに聞いてどうするのだ…」

キョウヘイ「ポケモントレーナーなのは確かですね。モンスターボールを持っている」

アデク「うむ。試しに出てきてもらおう」シュッ

グソクムシャ「ムシャ!」ボン

キョウヘイ「グソクムシャ!アローラ地方のポケモンですよ!」

アデク「まだアローラのトレーナーだとは断定できぬ。アローラ以外でも生息しておるからな」

グソクムシャ「ムシャ…?」

キョウヘイ「主人がおかしくなって困惑していますね」

キョウヘイ「こういう時ポケモンの声を聞くことができるNさんがいると助かるんだけど…」
 ▼ 233 ガメタグロス@なつきポン 21/01/29 12:59:03 ID:H0CIgqXg [32/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「呼んだかい?」

キョウヘイ「いた!?」

N「たまたま通りすがっただけさ。そのポケモンは?」

アデク「親のトレーナーが記憶喪失のようでな。ポケモンの方から何か情報が得られると助かるのだが」

N「任せて。どれどれ…キミの声を聴かせてもらうよ」

グソクムシャ「ムシャ」



Nはいつものように、ポケモンに近づいて耳を済ませていた。



N「情報が多いね。一つずつ丁寧に説明していこう」

N「まず…カレの名前はグズマ。アローラ地方のトレーナーだ」

アデク「そうか…グズマ」

キョウヘイ「やはりアローラの人なんですね」

N「そしてカレはスカル団なる組織のリーダーを務めている。部下からはとても慕われている」

アデク「スカル団?聞き慣れぬ組織名だ」
 ▼ 234 ジスチル@ゴーストZ 21/01/29 12:59:38 ID:H0CIgqXg [33/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「エーテル財団という組織と手を組み、ウルトラホールからウルトラメガロポリスへ向かってネクロズマを倒そうとした」

N「だが戦いの最中に別の次元に飛ばされて彷徨い、気が付いたらここにいた」

キョウヘイ「知らない単語が次々と…」

キョウヘイ「ちょっと待ってください。一回整理します」



アローラ地方には二つの組織があり、そのうち一つ…スカル団のボスがグズマ。

ウルトラホール?というのがイマイチよくわからないが、ウルトラメガロポリスという場所でネクロズマと戦った。

まあ場所名なんてどうでもいい。問題はネクロズマというポケモンの方。

そいつには…僕たちが戦ったキュレムのようにアローラに災厄をもたらす力があり、災厄を防ぐべくネクロズマと戦ったと推察される。

意味がわからないのは「別の次元に飛ばされる」という現象。そんなことあり得るのか?

……いや!事実僕たちは…グズマが何もない空中から飛び出してくるのを目撃している。

ということは先刻彼らが放出された穴…あれがウルトラホールか!



キョウヘイ「何となく理解しました。次に進んでください」
 ▼ 235 ィ@デボンのにもつ 21/01/29 13:00:15 ID:H0CIgqXg [34/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「早く戻らなければまずい…と言っているね。ネクロズマは相当に強力なポケモンらしい」

キョウヘイ「ウルトラホールが出現しなければどうしようもありませんね」

キョウヘイ「そもそも時空の移動って…単に場所を変えただけじゃない、パラレルワールドの世界なのかも」

アデク「アローラへ送り届けたところで解決には至らない、というわけか」

キョウヘイ「アララギ博士に連絡しましょう。アローラ地方のククイ博士とコンタクトを取ってもらう」

キョウヘイ「グズマさんが行方不明になっているのならすぐにわかります」

N「アララギ博士に連絡する…か。ボクにやらせてくれないかな」

キョウヘイ「どうして?」

N「カノジョには酷いことをした。かつてボクはカノジョの研究を一方的に悪だと決めつけ、侮辱してしまった」

N「それを謝りたかったんだ」

キョウヘイ「じゃあ僕のライブキャスターで繋ぐので。Nさんが応対してください」
 ▼ 236 マゲタケ@だっしゅつパック 21/01/29 13:00:53 ID:H0CIgqXg [35/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アララギ博士はすぐにククイ博士とコンタクトを取ってくれた。

Nはアララギ博士と数分間会話し、少し出かけてくると言い出した。

何でも…アララギ博士はNに見せたいものがあるらしい。それを見せてもらいに行くそうだ。



アデク「結局、我々の世界では…グズマの行方不明事件は起こっていないということか」

キョウヘイ「つまりこの世界にはグズマさんが二人存在するということに…」

グズマ「その話…本当なのかよ…?」

キョウヘイ「残念ながら事実です」

グズマ「そんな…俺はこれからどうしたら…」

アデク「………」

アデク「よし!事が進むまでは…グズマの面倒は儂が見てやろう!」

グズマ「え?」

アデク「ちょうどキョウヘイの面倒も見てやるつもりだったからな!どうせなら賑やかな方が良いだろう!」

グズマ「そんな勝手に!俺はただ記憶を取り戻したいだけなんだって!」

アデク「自覚は無いだろうが…どうもお前さんには倒さなければならない相手、守らなければならぬ仲間がいるらしい」

アデク「来るべき決戦の時までに力をつけておいた方が良いだろう」

グズマ「………」

アデク「二人とも!ついて参れ!」



こうして…僕とグズマさん、そしてアデクさんの奇妙な修行生活が始まった。
 ▼ 237 ッチャマ@かわらのかけら 21/01/29 18:13:43 ID:H0CIgqXg [36/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「ここは…」

アララギ「コミケ会場よ」



Nはアララギに連れられ、何故かコミックマーケットの会場へ足を運んでいた。



N「そうか…これがコミケなんだね…」

アララギ「コミケを知っているの?」

N「ああ。ボクはプラズマ団の王として七賢人から様々な知識を与えられた」

N「コミケのことも当然知っているよ」

アララギ「そうだったの」

N「様々な価値観と性癖が混ざり合い、美しいハーモニーを奏でる灰色の世界」

N「それがボクなりのイメージかな」

アララギ「概ね合っているけど、一つだけ訂正させて」

アララギ「灰色の世界じゃない。虹色の世界よ」

N「虹色の…世界」

アララギ「白と黒の二種類では分類し切れない数多くの性癖がここには存在しているの」

アララギ「それらは混ざり合い、でも決して互いを排斥しようとはせず…お互いに尊重し合って共存している」

N「面白い!俄然興味が湧いてきたよ…!」

N「オススメのジャンルはあるのかい?」

アララギ「私のオススメは寝取られかな」

N「ネトラレ…!?」

アララギ「自分の好きな人が他の人と性的関係になる状況を楽しむジャンルのことよ」

N「いや…それは知っている」

アララギ「あらそうだったの。話が早い」

アララギ「すごく興奮するわよ!貴方もぜひ手に取って読んでみてほしいな!」
 ▼ 238 クノシタ@マメかん 21/01/29 18:14:15 ID:H0CIgqXg [37/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「…寝取られか」

N「性的興奮と悲哀の関係に疑問も持たず、第三者からの略奪で主人公を苦しめ、性欲という存在を理解したつもりになる…」

N「そんな寝取られが許せないのだが、アナタは何を考えているんだ?」

アララギ「あら…何だかデジャヴ。随分と嫌われているようね」

アララギ「だけど貴方の意見も一つの考え方なら、私の願う所も同じく一つの考え方よ」

アララギ「旅に出て気付いたのでしょう?異なる考え方を受け入れ、共存することの大切さに」

N「………!!」

アララギ「少しずつでいいから、寝取られの魅力を知ってほしいな」

N「…わかった。努力するよ」

アララギ「ありがとう!さあさあ、あっちに行きましょう!」



Nとアララギは連れ添い、ブースの巡回を開始した。
 ▼ 239 ズマオウ@ポイントアップ 21/01/29 18:14:35 ID:H0CIgqXg [38/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グズマ「…いつまでこれを続けるんだ?」

キョウヘイ「身に付くまで…じゃないですか?」



僕とグズマさんの特訓内容は大体同じ。

主に指示の出し方の練習だ。それも基礎ばかり。

攻撃の指示はどうするか、逆に攻撃を受けたらどう立て直すか、あるいは状態異常になったらどう対処するか等。今更やることではない。

ポケモンたちも同じで、足腰の強化などの肉体作り、基礎練習がメインだ。

だが…僕だけはさらにもう一つ課題を与えられた。
 ▼ 240 ネコロロ@げんきのかたまり 21/01/29 18:14:57 ID:H0CIgqXg [39/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「儂とグズマを各30回、驚かせろ」

キョウヘイ「はい…?」



何とも奇妙な要求だ。

特訓期間中、どんな方法でもいいのでアデクさんとグズマさんをそれぞれ30回ずつ驚かせろというのだ。



キョウヘイ「驚かすって…どうやって?」

キョウヘイ「背後から大声出すとか?」

キョウヘイ「…試してみるか」
 ▼ 241 ナッキー@のこされたボール 21/01/29 18:15:24 ID:H0CIgqXg [40/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グズマ「………」

グズマ「俺って…何者なんだろ?」

グズマ「スカル団のボスって何だよ…話聞く限りただの迷惑集団じゃねえか」

グズマ「…なんかココア飲みたくなってきたな」

キョウヘイ「わっ!!!!」

グズマ「わああああああああ!?」ビクッ



僕はグズマさんの背後を取り、大声を出して驚かせた。

これで1回。あと29回か…



グズマ「何なんだよお前ッ!?」

キョウヘイ「驚かさなきゃいけないので。お許しください」

グズマ「クソ…なんで俺まで…」

グズマ「何考えてんだあのじいさん…」
 ▼ 242 ーナイト@ポイントカード 21/01/29 18:16:18 ID:H0CIgqXg [41/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「さて…こいつをどうする?」

マッシブーン「マッシ?」

キョウヘイ「ククイ博士の話によると…そのポケモンはウルトラビーストという生命体」

キョウヘイ「一応ポケモン扱いらしいですが謎多き存在」

キョウヘイ「なおそのポケモンは未登録のため正式名称なし」

キョウヘイ「エーテル財団に引き取ってほしいところですが…外交関係の観点でクソ面倒臭いらしいのですぐには引き取れないと」

アデク「うむ。そもそもウルトラスペースが生息地だからな」

アデク「では我々が預かることにしよう」

アデク「しかし名前はどうする?何か呼称がないとやりにくい」

キョウヘイ「名前ねえ…」
 ▼ 243 ョロネコ@やすうりポン 21/01/29 18:16:28 ID:H0CIgqXg [42/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「待たせたね」

キョウヘイ「Nさん。ちょうどいいところに」

アデク「こやつから名前を聞き出してくれぬか?」

マッシブーン「………」

N「わかった。ではキミの声を聴かせてもらうよ」



Nは先刻同様にウルトラビーストの声を聴き始めた。

しかし…



N「ぐっ…」

アデク「どうした?」

N「これは…」



マッシブーン『봐라!나의 근육!』

N「ボクの知らない言語だ…リカイできない…!」
 ▼ 244 ッキング@おしえテレビ 21/01/29 18:17:05 ID:H0CIgqXg [43/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マッシブーン『너!어떤 근육이 기호이다?』

マッシブーン『상완이두근?대퇴사두절?』



N「ぐうっ…頭が痛くなる…!」

N「すまない。これ以上は無理だ…」

アデク「そうか…ありがとう」

キョウヘイ「僕たちで勝手に決めちゃっていいんじゃないですか?」

アデク「そうだな。何か良い名を…」

マッシブーン「マッシ♪」

グズマ「筋肉…マッスル…」

グズマ「『マスキート』なんてどうだ?」

マッシブーン「マッシ!?」

キョウヘイ「良いと思います。割としっくりくる」

アデク「よし。ではマスキートと名付けよう」

グズマ「よろしくな。マスキート」

マッシブーン「マッシ…」
 ▼ 245 ラオラ@スピードボール 21/01/29 18:18:14 ID:H0CIgqXg [44/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
修行生活三日目。二人を驚かせるべく、今日も僕は悪戯を仕掛ける。



アデク「グズマ。朝食ができたから座れ」

アデク「お前さんは体が大きいからな…少し量を増やしておいた」

グズマ「あざす」

アデク「お礼や挨拶はしっかり丁寧に述べた方が良いぞ。『ありがとうございます』と言うべきだ」

グズマ「ありがとうございます…」

アデク「それで良い!言う側も言われる側も気持ちがいいだろう!」

アデク「ところで…キョウヘイはまだ起きぬのか…?」
 ▼ 246 ッポウオ@ちいさなキノコ 21/01/29 18:18:31 ID:H0CIgqXg [45/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バコンッ!!!



グズマ「ぐはっ!!?」

アデク「!?」ギョッ



椅子に座った瞬間、グズマの尻が爆発して轟音が響いた。



グズマ「痛ってえ…」

グズマ「……キョウヘイ!!出てこいや!!」

キョウヘイ「びっくりしました?」ヒョコ

グズマ「ああびっくりしたわ!何なんだよこれ!?」

キョウヘイ「ブーブークッションです。火薬を入れて音を強化してみました」

キョウヘイ「押し潰されると電流が流れて着火する仕組み」

キョウヘイ「音だけのつもりでしたが…普通に爆発しちゃいましたね」

キョウヘイ「危険なので良い子は真似しないでください」

グズマ「危険だってわかってんじゃねえか!」

グズマ「というかそれもうブーブークッションじゃねえし!ただの爆弾だろ!」

グズマ「何やってんだお前!?程度を考えろ!」

アデク「キョウヘイ。それはやり過ぎだ」

キョウヘイ「…すみません」

グズマ「ほら見ろ!ズボンが破けちまった!」

キョウヘイ「男の尻なんか見たくないんですけど」

グズマ「誰のせいだと思ってんだ!」

アデク「うむ…椅子も破損しておるな」

アデク「よし!弁償!」

キョウヘイ「」
 ▼ 247 マタマ@しんぴのしずく 21/01/29 18:18:58 ID:H0CIgqXg [46/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
特訓開始から二週間が経過した。

とうとう二人を30回驚かせることに成功し、卒業試験に臨むこととなった。



アデク「さあキョウヘイ。かかってくるがいい」

キョウヘイ「ウォーグルとウルガモスの一本勝負…ですよね?」

アデク「ああ」

キョウヘイ「勝てば合格ですか?」

アデク「それは勝負の内容次第だ」

キョウヘイ「わかりました」

キョウヘイ「ウォーグル、いけるか?」

ウォーグル「ウォーーーーーッ!!」



僕とウォーグルが組んで全力で戦うのも二週間振り。

ウォーグルはかなり気合が入っているようだ。
 ▼ 248 ルキー@ゴールドコロン 21/01/29 18:19:29 ID:H0CIgqXg [47/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「ウルガモス!むしのさざめき!」

ウルガモス「ぷひいいいいい!!」ゴオッ



やはりすごい威力だ。回避するのがベターだろう。



キョウヘイ「上空に回避!」

ウォーグル「ギャオオオオ!!」シャッ



ウォーグルが上昇したその時、近くにある太い樹木が目に入った。

あれを使えば…



キョウヘイ「木の枝を掴め!」

ウォーグル「!? ギャウッ!」ガシッ

キョウヘイ「回転してブレイブバード!」

ウォーグル「ギャオオオオオ!!」ギュン



枝を支点にしてウルガモスの方向に素早く方向転換。

そのままブレイブバードを放った。



バゴッ!!!



ウルガモス「………ッ!」ギシッ

アデク「…いいぞ!」

アデク「それでいい!もっとガンガン来い!」
 ▼ 249 ガルガン@ひこうのジュエル 21/01/29 18:19:57 ID:H0CIgqXg [48/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「不思議な感覚だ…」



相手を欺くためのアイディアが湧き出るように浮かぶ。

それが有効かどうかも瞬時に判断できる。

修行中二人を驚かせるための悪戯を考えていた時のように…



アデク「修行は上手く昇華できたようだな」

アデク「二週間の修行中、お前さんは儂とグズマがどうすれば驚くか考え続けた」

アデク「その成果が出ているのだ」

アデク「今のお前さんなら…どんな窮地も逆境も好機に変えられる」

アデク「そしてお前さんのポケモンたちも、基礎トレーニングを通して体を鍛え続けた」

アデク「お前さんの突飛なアイディアにもすぐに応じて実行できるだろうよ」



アデクさんが課した修行の意味を実戦でようやく理解した。

僕たちは勝負の中で悪戯を仕掛け続け、その結果相手を欺き勝利することができるのだ。
 ▼ 250 ガディアンシー@すごいキズぐすり 21/01/29 18:20:24 ID:H0CIgqXg [49/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「いわなだれ!」

ウォーグル「ウォオオオオ!!」バッ



ガラガラガラガラ……!!



ウルガモス「ぷひッ…!」ゴシャ

ウルガモス「………」ドサ



止めの攻撃が命中し、ウルガモスは倒れた。



アデク「…ふう」

アデク「戦い終わり、儂の心に爽やかな風が吹き抜けた…」

アデク「良い戦い振りであったぞ!二人とも!」

キョウヘイ「ありがとうございます」

ウォーグル「ギャオオオオオ!!」



ウォーグルはとても嬉しそうだ。

僕も嬉しい。久し振りに…ポケモンと心を一つにして戦うことができた。
 ▼ 251 ダリン@エネコのシッポ 21/01/29 18:20:54 ID:H0CIgqXg [50/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「グズマ。今の勝負を見て…お前さんはどう思った?」

グズマ「…すごかったよ。あんな風に次々と奇策を仕掛けられたら…対応できる気がしねえ」

アデク「そうだな!キョウヘイは頭の回転が非常に早い!」

アデク「だからこそ次々と策を考え出せるのだ。こんな戦い方ができる者は他におらぬ」

アデク「誰よりも自由に戦い、誰にも予測できないバトルスタイル!」

アデク「キョウヘイ!お前さんたちだけの戦い方なのだ!」

キョウヘイ「僕たちだけの…」

アデク「修行は終わりだ!よく頑張ったな!」

アデク「ポケモンリーグへ向かうといい。今度こそ誰にも負けんだろう!」

キョウヘイ「はい……はい!」

キョウヘイ「ありがとうございました!」
 ▼ 252 ワンテ@ボロのつりざお 21/01/29 18:21:34 ID:H0CIgqXg [51/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アデク「今のキョウヘイとアイリスが戦ったならば…どのような戦いになるのだろうな?」

アデク「後でレンブに話を聞いてみるとするか…」

キョウヘイ「あ〜誰かに悪戯したいな…」ウズウズ

グズマ「おい師匠。あいつをこのまま野放しにしたらやばいんじゃねえの?」

アデク「何故だ?」

グズマ「強くなったのは良いけどよ…悪戯大好き人間が生まれちまったぜ」

グズマ「この調子じゃ会う人みんなに悪戯して回るかもしれねえ」

アデク「それはいかんな!おいキョウヘイ!」

キョウヘイ「?」

アデク「程々にしておけよ?」

キョウヘイ「はい!」

グズマ「もう少し厳重に注意しろ!」

キョウヘイ「グズマさんはまだ修行ですか」

グズマ「俺はまだ基礎が足りてないからな」

グズマ「記憶なくしたせいでバトルの知識も飛んだみたいだし」

アデク「焦るでないぞ。今は辛抱の時だ」

アデク「お前さんが開花するのは…記憶が戻った時なのだ」

グズマ「記憶が?」

アデク「ポケモンを見ればわかる。記憶をなくす前のお前さんは…相当な強さを持つポケモントレーナーだったのだろう」

アデク「この修行で培った基礎と、本来の実力が融合する」

アデク「その時…お前さんは天下無双の強さを得るのだ!」

グズマ「おおっ…!そいつはすげえな!」

グズマ「キョウヘイ!記憶が戻ったら俺と戦え!」

グズマ「一回くらい勝ってみたいからな!」

キョウヘイ「いいですよ。負ける気はありませんけどね」

グズマ「へっ…その生意気面ごとブッ潰してやるよ」

アデク「わかったな。では修行を続けよう!」

アデク「キョウヘイ!達者でな!」

キョウヘイ「はい!アデクさん!グズマさん!」

キョウヘイ「お元気でー!」
 ▼ 253 ノハナ@あかいいと 21/01/29 18:22:25 ID:H0CIgqXg [52/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
修行を終えた僕はポケモンリーグに挑戦した。

その結果は存外あっけなく、目立った苦戦もないままチャンピオンを倒してしまった。修行を乗り越え、僕たちは最強となっていたのだ。

儀式や祭典を一通り済ませ、僕はヒオウギに帰還した。



キョウヘイ「久し振りに帰って来たな…」

キョウヘイ「お母さんに報告しないと」

ヒュウ「キョウヘイーーーーッ!!!」ガバッ

キョウヘイ「どわあああああ!!ヒュウ!?」



突然現れたヒュウが、僕に飛び付いてきた。



ヒュウ「オマエッ…最近全然姿見せなくてさあ…!!」

ヒュウ「急に現れたと思ったら…!!チャンピオンになりやがってッ!!」

キョウヘイ「ライブキャスター使えばよかったじゃん」

ヒュウ「連絡し辛いだろうがッ!!」

キョウヘイ「ごめん…そうだったね」



ヒュウには『ついてくるな』と言い残し、そのまま帰らなかったのだ。

最悪の結末も想像していたことだろう。そう考えると非常に申し訳ない。



キョウヘイ「本当にごめんな?この通り…僕はもう大丈夫だ」

ヒュウ「…キョウヘイ?オマエ…雰囲気変わったか?」

キョウヘイ「何が?」

ヒュウ「いや…オマエっていつも真顔だったから」

ヒュウ「そんなにニコニコしてる奴じゃなかっただろ?」

キョウヘイ「イメチェンさ」

ヒュウ「え…?」

キョウヘイ「笑顔の方が良いって言ったのはヒュウだぜ。忘れちゃった?」

ヒュウ「覚えてるよ。だけどオマエ…」

ヒュウ「いや…何もないならいいけどよ」
 ▼ 254 メール@オニゴーリナイト 21/01/29 18:23:07 ID:H0CIgqXg [53/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「お母さん。帰って来たよ」



僕は母の墓前に立っている。報告することが山ほどあるんだ。



キョウヘイ「チャンピオンになったんだ。イッシュ最強のトレーナーさ」

キョウヘイ「すごくない?つまりお母さんは最強のトレーナーの母親なんだぜ」

キョウヘイ「これからもっと強くなって、もっと有名になってみせるよ」

キョウヘイ「そうしたらお母さんも…」

キョウヘイ「………」

キョウヘイ「…ごめん。馬鹿みたいに燥いじゃって」

キョウヘイ「生きていないと…脳みそがないと知覚できない。何の感情も湧き上がらない」

キョウヘイ「僕が何を成し遂げようと嬉しくなんかないよね」

キョウヘイ「何もしてあげられなくてごめん…」

キョウヘイ「僕のせいで全部台無しだ…」
 ▼ 255 ガミュウツーX@リザードナイトY 21/01/29 18:24:24 ID:H0CIgqXg [54/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「ゼクロム…ダークストーンをキミに託すよ」

キョウヘイ「ゼクロムを…どうして?」

N「キミには英雄の資格がある。そう思ったからだよ」

キョウヘイ「でも僕は人殺しだ」

N「ゲーチスの件は気にしなくていい。あれはキミのせいではない」

キョウヘイ「でも…!」

N「ゲーチスはもう手遅れだったんだ。もはや改心する余地はなかっただろう」

N「これ以上の悲しみを生まないためにも…誰かが引き金を引かなければならなかった」

N「そしてそれは息子であるボクの役目だった」

N「だのに…キミに引かせてしまった。キミに背負わせてしまった」

キョウヘイ「………」
 ▼ 256 ギルダー@いかずちプレート 21/01/29 18:24:45 ID:H0CIgqXg [55/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
N「誰かが誰かを傷つければ、他の誰かがそれを憎み、更に他の人を傷つける」

N「憎しみの連鎖だ。人が人を憎む限り…この連鎖は続いていく」

N「ゲーチスは多くの人に憎まれていた。そして紡がれ継承されていった憎しみの連鎖…そのアンカーがキミだったんだ」

N「そしてそれがまた憎しみを生み、今度はキミが傷つけられた」

N「でもキミは…憎しみの連鎖を自分で終わらせようとしている。新たに人を憎み傷つけることをせず、自らの行いを悔い改め…それで終わらせようとしている」

N「わかってほしい。それは誰にでもできることではないんだ」

N「ボクが『変える』英雄でトウヤがそれを『阻む』英雄だったのなら…キミはきっと『終わらせる』英雄なんだろう」

N「無関係のキミを巻き込んでしまい申し訳ないと思う。だけどキミなら…プラズマ団が生み出した憎しみの連鎖を終わらせることができる」

キョウヘイ「…何言ってるのかわからないんですけど」

N「わからなくてもいい。ボクがキミに言いたかったことを言っただけだから」

キョウヘイ「そんな勝手に…」

N「うん。何を言っても、キミはこれから苦悩し続けるのだろうね」

N「だってキミは…すごく責任感が強くて優しい人だから」

キョウヘイ「違います。身勝手なだけの人間です」

キョウヘイ「Nさんだって見ていたじゃないですか…」

N「今はそう思っていても…いつか考え方が変わるときがくる」

N「キミにはたくさんの仲間がいる。その仲間が、きっとキミを助けてくれる」

N「そしてキミは…いつかキミだけの理想を見つけ、輝く未来を掴むだろう」

N「ボクに見えるのはそんな未来だ」

N「また会おう。ポケモンを信じ、頑張りたまえ!」

キョウヘイ「………」
 ▼ 257 ガリザードンY@ドラゴンジュエル 21/01/29 18:25:32 ID:H0CIgqXg [56/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ようやく辿り着いた玉座。イッシュの頂きは…思いの外空虚なものだった。

頂から見渡したところで、何の夢も希望も見えてはこない。



キョウヘイ「僕に幸せな未来なんてない」

キョウヘイ「僕が守りたいものはすべて奪われた」

キョウヘイ「僕の力で幸せにしてあげたかった人はもういない」

キョウヘイ「だったらせめて…残された人だけでも」



僕にはまだ大切なものが残っている。

友達、ライバル、そしてパートナーのポケモンたち。



キョウヘイ「僕自身の幸せなんか要らない」

キョウヘイ「幸せになる権利なんかないから」



僕の人生すべてを捧げ、大切な人すべてを幸せにする。

それが僕の理想だ。

その結果僕が壊れてしまったとしても一向に構わない。

僕は幸せになってはいけない。誰かの幸福のためだけに生き続ける人間なんだ。





*****
 ▼ 258 ンバット@きよめのおふだ 21/01/29 18:37:14 ID:H0CIgqXg [57/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
2月3日



あの後…無事に風邪を引いた。

でも一日寝たら治った。若いって素晴らしい。

PWTを終えて燃え尽きてしまったのか、最近は部屋に引き籠ってテレビばかり見ている。

ライブキャスターも着信拒否中だ。今は誰とも話したくない。

英気を養うことも大事。数日経てば戦いたくてウズウズしてくることだろうし、今はとりあえず何も考えないことにした。

しかしそうは問屋が卸さない。PWT優勝者へテレビ番組への出演依頼が殺到するのは当たり前。

レッドさんは優勝経験ありすぎるので例外らしいけど…



キョウヘイ「また出演依頼来てる…やだ…」

キョウヘイ「風邪引いて寝込んでるってことにしちゃお」

キョウヘイ「………」

キョウヘイ「このメールに『パンツ』って返信したら…どうなるかなあ…」

キョウヘイ「うへへへへへ…」



今の僕はIQが50くらい下がっている。

マジで何も考えたくない。
 ▼ 259 グマッグ@ばんのうごな 21/01/29 18:37:56 ID:H0CIgqXg [58/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「あ…そろそろチャンネル変えなきゃ」

キョウヘイ「ルッコちゃんが出るんだよね」ピッ



僕はタレントチャンネルに切り替えた。

ルリちゃん…ポケドルのルッコが画面に映る。



キョウヘイ「うん…良い機会だ」

キョウヘイ「IQを下げた状態で視聴すれば…より楽しめるかもな…」

キョウヘイ「ルッコちゃんぺろぺろ…ぐへへへへ…」

キョウヘイ「………」

キョウヘイ「…止めよう。次会った時に恥ずかしくなる」
 ▼ 260 ネコロロ@ヨロギのみ 21/01/29 18:38:33 ID:H0CIgqXg [59/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「ポケドルってすごいよなあ…」

キョウヘイ「眺めているだけでも元気になれるし」

キョウヘイ「どうしてだ?彼女の人柄が為せる技か」



ルリ『ホミカさんのライバルっていらっしゃいますか?』

ホミカ『ライバル?いないけど』

ホミカ『だってそうでしょ!歌って勝ち負けじゃないもん!』

ホミカ『あたしたちの歌を聞いていいなって思ってくれる人やポケモンがいたら、それだけで充分じゃん!!』

ルリ『ホミカさん!』

ルリ『だけど負けたくない気持ちだって大事だと思うんです!』

ルリ『今よりもステキな歌になればみんなも喜んでくれるかなって』



キョウヘイ「はは…素が出てる」

キョウヘイ「今度会った時に弄ってやろうっと」

キョウヘイ「あー…でも仕事のこと弄ったら怒るかな?」

キョウヘイ「………」
 ▼ 261 スラオ@シルクのスカーフ 21/01/29 18:39:13 ID:H0CIgqXg [60/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「…羨ましい」

キョウヘイ「こんな風に…他人の良いところを見てあげられる性格が」



ただ只管に、目の前の相手を真っ直ぐ見つめる純粋無垢な眼差し。

そこには相手を欺こうとか、蔑もうとか、虐げようとか…そんな気持ちは微塵も介在しない。

濁りのない透き通った輝き。なんて美しい眼なのだろう。僕にはどんな宝石よりも美しく魅力的に見える。



キョウヘイ「だからなのかな?この子を見ると元気になれるのは」

キョウヘイ「僕だけじゃない。彼女から元気を貰っている人はきっとたくさんいる」

キョウヘイ「彼女のお蔭で生きる希望を持てた人だっているかもしれない」

キョウヘイ「人を傷つけ、命を奪ってしまった僕とは真逆…誰かの人生すら救っている」

キョウヘイ「…僕もこのくらい善い性格だったらな」

キョウヘイ「大切な人を喪うことはなかったのかも…」
 ▼ 262 ラミドロ@ラグラージナイト 21/01/29 18:39:50 ID:H0CIgqXg [61/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「彼女は恐らく僕に想いを寄せている」

キョウヘイ「身に余る光栄だ」

キョウヘイ「僕は彼女と個人的に会って会話することができる」

キョウヘイ「そしてその度に彼女から元気を貰うことができる」

キョウヘイ「これはとても幸福なことだ」

キョウヘイ「僕には勿体無いくらいのね」

キョウヘイ「雲泥の差とは正にこのこと」
 ▼ 263 ィアンシー@くちたたて 21/01/29 18:40:18 ID:H0CIgqXg [62/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「こんなにも光栄なのに…気分が悪い」

キョウヘイ「不釣り合いだからだ。僕とルリちゃんでは」

キョウヘイ「なんかこう…例えばゲーチスとシロナさんが結婚したら嫌じゃん?」

キョウヘイ「そういう類の不快感だな」

キョウヘイ「僕には彼女と一緒にいる資格はない」

キョウヘイ「幸せになってはいけない人間だからだ」

キョウヘイ「あの子の傍に居る人間は無条件で幸せになってしまう」



僕は他者を幸せにする。ただそれだけのために存在する人間。

それ以上の価値などない。
 ▼ 264 グレー@ピッピにんぎょう 21/01/29 18:41:14 ID:H0CIgqXg [63/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
2月7日



ルリ「いつ見ても素敵な眺めだよね…」

キョウヘイ「…うん」



僕はまたルリちゃんと会っている。そんな資格ないって再確認したはずなのに。

この子といると…自分まで善い人間になれたみたいで心地良いのだ。



ルリ「キョウヘイくん。受け取ってくれる?」

ルリ「ちょっと早いけど…」スッ

キョウヘイ「…おおっ!?」



バレンタインチョコ!?

まだ一週間前だぞ。本当に早いな。

そもそも距離置くつもりだったし貰えるとすら考えていなかった。
 ▼ 265 ルガモス@Zパワーリング 21/01/29 18:41:46 ID:H0CIgqXg [64/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリちゃんが作ってくれたのはブラウニーだった。

包装紙を剥がした途端に甘い匂いが鼻を抜け、何だか懐かしい気持ちになる。



キョウヘイ「食べてみてもいいかな?」

ルリ「うん。食べて」



僕はブラウニーを頬張った。チョコレートの濃厚な味わいが口一杯に広がる。

美味しい!と感じる前に、僕は酷く驚愕した。



キョウヘイ(チョコチップが入っているな)

キョウヘイ(ココアは少し多めに入れてある)



僕はこの味を知っている。

母が昔よく作ってくれていたブラウニー。その味と瓜二つだったのだ。
 ▼ 266 チュル@マチスのサイン 21/01/29 18:42:32 ID:H0CIgqXg [65/65] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラウニーというのは…誰が作っても同じ味になるものなのだろうか?

そんな筈はない。使う材料も人に依るしレシピの幅が広いことくらい知っている。

ならどうして同じ味?同じ材料?もちろん偶然だろう。

だけど…噛み締める度に、母の優しい笑顔が脳裏を過る。



キョウヘイ「…あれ?」

ルリ「!! どうしたの!?」



僕は涙を流していた。

これはまずい。ルリちゃんを不安にさせてしまう。せっかく作ってくれたのに。



ルリ「え?え…?なんで?」

ルリ「辛かった?辛かったの!」

キョウヘイ「……ふふっ、辛いわけないでしょ」



涙を止めろ。取り繕え。言い訳を探すんだ。



キョウヘイ「涙が出るほど美味しかったのさ。ただそれだけのこと」

ルリ「ほ、本当に…?」

キョウヘイ「ああ。本当に美味なるものを食べた時、人は涙を流すんだね!」

キョウヘイ「初めて知ったよ…」



こんな言い訳で納得するはずがない。ルリちゃんの表情は晴れなかった。

やってしまった…あまりにも申し訳ない。

逆に気を遣わせてしまうなんて…
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