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【SS】アユミ「ブルーさんが亡くなった!?」

 ▼ 1 ハネッコ@ネットボール 21/05/03 20:00:44 ID:MDz.hY1Y [1/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カントー地方、ハナダの洞窟。

限られた強者のみ立ち入ることの許される聖域。荘厳な雰囲気を放つカントー屈指の名所だ。

棲みついたポケモンたちは皆強力で、凶暴な性格の個体が多い。

そんな魔窟にも久方振りの訪問者が現れた。しかも二名。



アユミ「…本当にここに居るんですか?」

ブルー「さあね」



それがこの私…帽子がトレードマークの少女アユミと、アホ毛がトレードマークの少女ブルーさん。

一見すると姉妹にも見える私たち二人は、あろうことかこの魔境に足を踏み入れていたのである。
 ▼ 2 ゴチルゼル@タブンネナイト 21/05/03 20:02:03 ID:MDz.hY1Y [2/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「もし居なかったら立ち入り損ですよ。こんな怖いところ来たくなかったのに…」

ブルー「ついて来いなんて言ってないんだけど」

アユミ「ブルーさんをこんな危険な場所へ一人で行かせるなんて考えられません!」

ブルー「…きみも面倒臭い子だねえ」

アユミ「危なくなったらすぐに逃げますからね!あなぬけのヒモもけむりだまも沢山用意してきましたから」

ブルー「今すぐ使って一人で逃げれば?」スタスタ

アユミ「ああっ…待って!置いて行かないで!」
 ▼ 3 ゲンシカイオーガ@みどりのはなびら 21/05/03 20:04:06 ID:MDz.hY1Y [3/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブルーさんがハナダの洞窟に向かうと言い出したのはつい昨日のことだ。

以前この洞窟でミュウツーに遭遇し、戦闘になったらしい。強いポケモンを探し仲間にしようと奮闘しているブルーさんは、当然ミュウツーのことも捕まえようとした。

この人はカントー屈指の実力者だ。あのレッドさんやグリーンさんとも張る程。

その実力を以て、見事にミュウツーを捕獲寸前まで追い詰めたという。

だが一瞬の隙を突かれ、ミュウツーは逃亡。捕獲することは叶わなかった。

今回はそのリベンジらしい。前回の失敗を元に、絶対に逃がさぬようさらに作戦を練って臨む…と息巻いていた。

武装すらせずにこんな軽装で単身伝説のポケモンに挑むなんて…私にとっては考えられないことだった。

なので話を聞き終えると間髪入れずに自分も同行する、と申し入れた。

案の定疎まれたが、このまま放っておけば私の心臓がもたない。



ブルー「ここが最深部なんだけどな」

アユミ「前回はここで遭遇したんですよね?」

ブルー「うん」

アユミ「でも今日は影も形もない…」



岩石が宝石の如く光り輝く洞窟の最深部。

いかにも何かが棲んでいそうな雰囲気だが、生物の気配をまるで感じない。



ブルー「仕方ない。今日は諦めようか」

アユミ「そうですね」



顔にも口にも出さなかったが、私はホッと胸を撫で下ろし、安堵していた。
 ▼ 4 メブキジカ@アブソルナイト 21/05/03 20:06:03 ID:MDz.hY1Y [4/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私たちはあなぬけのヒモを使い、来た道を辿って洞窟から脱出した。



ブルー「あんまり時間経ってないし警戒されているのかもね。一月くらい置いた方が良いかも」

ブルー「じゃあね。バイバイ」

アユミ「あっ…はい」

アユミ「さようならー!」



洞窟を出るとすぐに、ブルーさんは何処かへ消えていった。

相変わらず行動が早い人だ。



アユミ「もう少しゆったりじっくり行動してもいいと思うんだけどな…」

アユミ「でも…何事もなくて良かった」
 ▼ 5 メガバシャーモ@ゴスのみ 21/05/03 20:08:21 ID:MDz.hY1Y [5/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私はブルーさんのことが好きだ。

友愛感情ではなく、れっきとした恋愛感情だ。ついでに言うと初恋だ。

同性に恋をするのは変だと思う人もいるかもしれない。でも私の抱くこの感情はそんなレベルの話ではない。

同性愛とかそういう話ではない。ブルーさんが女性だから好きなわけではない。私が女だから好きなわけではない。

性別の問題ではないのだ。一人の人間としてあの人が好きなのだ。

ポケモントレーナーとしての高い実力。それを裏付ける強さへの貪欲さ。

傍から見れば自分勝手にも見える唯我独尊の振舞いも、私の目には輝いて見えた。

実力も貪欲さも強気な振舞いも…引っ込み思案な私にとっては喉から手が出るほど欲しい憧れの存在だからだ。

私が『あんな風になりたい』と感じる要素を、あの人はすべて持っていた。

尊敬と憧憬は膨れ上がり、いつしか単なる『好き』では済まされない重々しい感情に発展していた。

出来る限り長くブルーさんの傍に居たいし、ブルーさんを見ていたい。沢山お話ししたい。

可能なら私のことも見てほしい。興味を持ってほしい。

だからブルーさんが危険に晒されそうな事態には人一倍敏感。今回恐怖心を抑え付けてミュウツー探しに同行したのは、ブルーさんへの好意故だ。

私がいればミュウツーの攻撃から守れるかもしれないし、何か役に立てば褒めてもらえるかもしれない。そうすれば私に興味を持ってくれるはず。
 ▼ 7 ハンテール@イーブイZ 21/05/03 20:10:01 ID:MDz.hY1Y [6/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少し前に本人には告白した。本人の前で好きだと明言した。

その結果…秒でフラれた。

そもそも相手にされていない…というより冗談だと思われているのかもしれない。告白の前後で全く態度が変わらなかったのだ。

普通なら告白されてフッた相手にはよそよそしくなったり避けたりするものだが、そういう変化が一切なかった。

少なくとも眼中にない、ということは確かだ。だからこそ…何らかの形で私のことを認めさせなければならないのだ。



アユミ「一月後か…遠いなあ…」

アユミ「でもそれまでに強くならなきゃ。ブルーさんの役に立てるように…!」
 ▼ 8 クレッフィ@ソクノのみ 21/05/03 20:12:03 ID:MDz.hY1Y [7/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハナダの洞窟での冒険から一ヵ月が経過した。

ブルーさんならもうそろそろ活動再開するかもしれない。

期待と不安が入り混じった複雑な心境のまま、私は悶々として日々を送っていた。

その時だった。



プルルルルル……



アユミ「!」



固定電話が鳴っている。母は外出中。家の中には私一人だけ。

必然的に、私は受話器を取った。



アユミ「はい。…はい。そうですが」

アユミ「…………」

アユミ「…え?」

アユミ「ブルーさんが…亡くなった?」
 ▼ 9 フシギバナ@ピンクのリボン 21/05/03 20:12:37 ID:Yho.GXCs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 10 ネオラント@わすれもの 21/05/03 20:14:02 ID:MDz.hY1Y [8/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あまりにも突然すぎる訃報。私は電話を切ると、そのままペタリと座り込んだ。



アユミ「……どうして?」

アユミ「まさか…私に黙ってミュウツーのところへ…?」



だとしてもおかしい。

怪我くらいならするかもしれないが、伝説のポケモンが相手とはいえ…ブルーさん程の実力者が命まで落とすとは考えにくい。

電話では死因は教えてもらえなかった。親族でもないし初報でそこまで詳しく話すのも変な話なので当然ではあるが。



アユミ「ブルーさん…」



気が付くと、私は涙を流していた。

正直な話、まだ実感は湧いていない。

悲しいとか寂しいとかそういう感情的な要因ではなく、単に強いショックを受けたことと、突然流れ込んできた膨大な情報量による負荷が原因の涙だった。
 ▼ 11 イベルタル@しゅんぱつのハネ 21/05/03 20:16:02 ID:MDz.hY1Y [9/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
葬儀は後日、関係者数名が集められ…粛々と執り行われた。

ブルーさんの親族は行方知らず、そもそも親族が存在するのかすら不明なため、レッドさんとグリーンさんが葬儀を取り持っていた。



グリーン「つってもオレたちそこまで親しかったわけじゃないんだけどな」

レッド「………」



そう口にしたのはグリーンさんだ。

流石にいつものおちゃらけた雰囲気は鳴りを潜めているが、口元には穏やかな笑みを浮かべている。



アユミ「それでも…ブルーさんのために色々準備してくださいました」

アユミ「本当にありがとうございます」

グリーン「まあな!オレさま情に厚い男だし?」

グリーン「まあなんでアユミから礼言われてるのかはよくわからんけど…」

レッド「………」

カケル「アユミはブルーさんに懐いてましたからね」

シン「オレたちは会ったことすらないんだけどな…」



カントー地方チャンピオンのカケルくん、そのライバルのシンくんも出席していた。



カケル「なんで俺たちまで呼ばれたんですかね?」

グリーン「いっぱい来てくれた方があいつも喜ぶと思ってさ」

レッド「ブルーにそれを嬉しいと感じる情緒が備わっているかは甚だ疑問ではあるがな」

グリーン「まあ…それは確かに」
 ▼ 12 コータス@あかいいと 21/05/03 20:18:04 ID:MDz.hY1Y [10/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「ブルーさんはどうして亡くなってしまったんですか?」

グリーン「焼身さ。火事に巻き込まれたらしい」

グリーン「当時の詳しい状況は不明だけどな。今警察が捜査を進めている」

グリーン「発見されたのはあいつの遺体ともう一体…身元不明の遺体」

アユミ「………」

グリーン「そういうわけで遺体はかなり損傷してる」

グリーン「お別れの顔合わせとかできる状態じゃないんだ」

グリーン「だから…ごめんな。挨拶だけしに行こうぜ」

グリーン「アユミが来てくれたら…あいつもきっと喜ぶだろうから」
 ▼ 13 ホウオウ@タウンマップ 21/05/03 20:20:06 ID:MDz.hY1Y [11/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
葬儀はあっさりと幕を閉じた。参列者が少ないからだ。



グリーン「そうだ…これやるよ」

アユミ「?」



グリーンさんは6つのモンスターボールを取り出し、私に差し出した。



アユミ「これは何ですか?」

グリーン「あいつの…ブルーの手持ちポケモンさ」

アユミ「! ブルーさんの?」

グリーン「ああ。お前が引き取ってくれ」

アユミ「どうして?レッドさんやグリーンさんが持っていた方が良いんじゃ…」

グリーン「この場にいる人間の中でお前が一番ブルーのことを慕っていたからさ」

グリーン「だからあいつのポケモンのことを大切にしてくれると思ってな。それにお前は強いし、今後もしっかり面倒見てやれる」

グリーン「ブルーの思いを継いでやってくれ。あいつにそんな高尚な感情が備わっているかは」

グリーン「今となってはもうわからない…けどな?」

グリーン「どうした…?」

アユミ「………」グスッ



ブルーさんのポケモンたちを見て、ようやく実感が湧いた。湧いてしまった。

失われた命は戻らない。回帰しない。理解していたつもりでその実他人事のように考えていたの事実が、今になって重く重くのしかかってきたのだ。

とめどなく溢れる涙を必死に拭いながら、私は6匹のポケモンたちを抱きしめた。
 ▼ 14 ガントル@きゅうこん 21/05/03 20:22:06 ID:MDz.hY1Y [12/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ母「アユミー!ご飯出来たよー!」

母「……アユミ?」

アユミ「………」



自宅へ戻った私は、茫然自失の状態に陥っていた。

初恋の人を最悪の形で失ってしまった。喪失感と虚しさ、そして悲しさで頭がおかしくなりそうだった。

何も考えたくないのに…嫌な記憶や感情ばかり脳内に雪崩れ込んでくるのだ。

視界が回り、焦点が合わずぼやける。酷い耳鳴りで頭が痛い。

今にも壊れて消えてしまいそうな私の心を繋ぎ止めているのは…ブルーさんが残したポケモンたちの存在。

そして…グリーンさんから貰ったもう一つの形見。



アユミ「…どうしてこれだけ残ったんだろう?」



ブルーさんの頭頂部から生えていたアホ毛。

本体は焼き尽くされてしまったというのに、何故かこの数本の毛だけは難を逃れて生還したらしい。

グリーンさんは『有効に使えよ』と言っていた。有効にって…どういう意図で言ったのか。

故人の髪…常人の感性なら不気味に感じることだろう。

しかし今の私にとっては堪らなく愛おしい。ブルーさんの面影を少しでも感じられるのならそれだけで十分なのだ。
 ▼ 15 ムクホーク@ウタンのみ 21/05/03 20:24:06 ID:MDz.hY1Y [13/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
母「アユミ。気をしっかり持って」

母「悲しくて辛いのはわかる。でもちゃんと食べなきゃ」

アユミ「………」

母「ブルーさんが心配するよ。安心して成仏できなくなっちゃう」

アユミ「成仏なんかしなくていい」



母の言葉を遮り、私は乱暴に言い放った。



母「アユミ…」

アユミ「私を心配して成仏できない?もしそれが現実ならどれだけよかったか…!」

アユミ「心配なんかするわけないじゃん。ブルーさんは私のことなんかどうでもいいって思ってるし」



ブルーさんのポケモンたちは、食事の時以外はボールから出てこない。もちろん私のいうことなんか聞きもしない。

私のことを信用できない人物だと考えているのだろう。

ブルーさんも、ブルーさんのポケモンも、私のことなど眼中になかった。



アユミ「この際怨霊でも何でもいい。私の傍で…私を見てさえくれればそれでよかったのに」



呪詛の言葉が溢れ出る。堰き止めていた本心が弾け飛ぶ。

ただならぬ様子の私を見て、母の顔には恐怖の色が浮かんでいた。それを目撃した私はハッと我に返る。



アユミ「…ごめん」

アユミ「しばらく一人にさせて」バタン

母「!? 待ちなさいアユミ!」



母の返事を待たずに、私は自室に閉じこもった。
 ▼ 16 ピチュー@フーディナイト 21/05/03 20:26:24 ID:MDz.hY1Y [14/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「…ブルーさん」

アユミ「どうして私を置いていったんですか?」

アユミ「そんなに私が邪魔ですか?」

アユミ「そんなに私が嫌いですか?」

アユミ「私が苦しんで…満足ですか?」



意思能力を持たない、そもそも生き物ですらない髪の毛に向かって、私は恨み言を飛ばし続けた。

私に何も伝えず、私の知らないところで命を落とし、私を置いてきぼりにしてこの世を去った。この事実が耐えがたい程に悔しい。



アユミ「私はあなたのことをこんなに愛しているのに、あなたは全く私を見てくれなかった」

アユミ「私はこんなに苦しんでいるのに…どうして助けてくれないんですか?」

アユミ「あなたと出会わなければ…私が辛い思いをすることもなかったのに」

アユミ「今私が苦しんでいるのはブルーさんのせいなんですよ。責任取ってください」



ブルーの形見は何も答えない。アユミの恨み言を、そよ風が吹いたかのように平気で聞き流している。
 ▼ 17 チュリネ@なぞのすいしょう 21/05/03 20:28:08 ID:MDz.hY1Y [15/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「…答えてくれないんですね」

アユミ「だったらもういいですよ。私は私にできることをしますから」

アユミ「あなたが勝手をするなら私も勝手をするまでです」



そう言って、私はブルーさんのアホ毛を口に入れた。

比ゆ表現ではない。本当に口に入れた。



アユミ「ううっ…」グニュッグニュッ



口の中で不快な感触が暴れ回る。

食べてはいけない、飲み込んではいけない…と体中が拒否しているのがわかる。

でも大丈夫。髪の毛2,3本程度なら平気なはず。大量に飲み込んだら危ないらしいけど…



ごくん。



アユミ「うっ……く」

アユミ「飲み…込んだ…!」



ブルーさんの体の一部を飲み込んだ。

これで私とブルーさんは一つになれる。つまり私はブルーさんでありブルーさんは私なのだ。

私はブルーさんが好き。だからブルーさんも同じ気持ち…私のことが好きなはずだ。

私の望みは叶えられた。夢にまで見た両想いだ。



アユミ「どうですかブルーさん?大嫌いな相手に身も心も支配される気分は」

アユミ「これからずっと…私が死ぬまでいっしょですからね」

アユミ「ふふふふ……」



私は一時的な満足感を獲得し、そのまま部屋から出ずに眠りに落ちた。
 ▼ 18 ケララッパ@ラブラブボール 21/05/03 20:30:02 ID:MDz.hY1Y [16/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その夜、私は夢を見た。

ビリッ、ビリッ、ビリッ…と、何かを破くような音が延々と耳に木霊する夢だ。

微かに人影は見えるが、暗くて誰なのかわからない。



ビリリッ……ビリッ!

バリバリバリバリバリ……!!



段々と音が激しく、大きくなり、不快感と不安が煽られていく。


そこにいるのは誰なの?

耳障りだよ…止めて。



ビリビリビリビリビリ……!!



答えはない。止める気配もない。

結局、この謎の音は一晩中私の耳を襲い続け…私はただ耐え凌ぐ他なかった。
 ▼ 19 ストリンダー@おちゃ 21/05/03 20:32:02 ID:MDz.hY1Y [17/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「!!」カッ



私は目を覚ました。全身にびっしょりと汗を掻いている。

悪夢を見ていたためだろう。動悸が激しく、異様に体が重い。



アユミ「はあ…」



私はため息をつき、自らの行いを振り返った。

冷静になった今ならわかる。昨日の私はどうかしていた。

傷心中だったとはいえ、やることが稚拙で身勝手すぎた。

私がどんなにブルーさんのことを好きでも、同じ気持ちをブルーさんに強要するのは間違っている。

あの人はもうこの世にはいない。本当にあの人のことが好きなら…心も魂も安らかに眠らせてあげるべきなんだ。

それを私は…髪の毛を飲み込むなどという異常な行為に手を出し、ブルーさんの面影に縋り続けた。

そもそも前提から間違っていたんだ。人体は髪の毛を吸収できない。飲み込んだところでそのまま排出されるだけ。

今更どう足掻いても…もうブルーさんと一緒にはいられない。

私が本当にするべきこと…それはブルーさんのポケモンたちの心を開くこと。

ブルーさんだってポケモントレーナーだ。ポケモントレーナーにとって自身のポケモンは我が子も同然。下手したら自分の命より大切な存在なんだ。

だから代わりに私がこの子たちの面倒を見る。

ブルーさんもそれを望んでいるはず。そのためにはまず私に心を開いてもらわなければ。



アユミ「お母さんにも謝らないとな…」



一旦気持ちの整理がついた私は、部屋を出て母の元へ向かった。
 ▼ 20 バリコオル@ゴーゴーゴーグル 21/05/03 20:34:05 ID:MDz.hY1Y [18/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「…おはよう」

母「あらアユミ。おはよう」

母「さっきね、シンくんが来てくれたの」

母「アユミは大丈夫かって…気にかけてくれてたよ」

母「相変わらず善い子ね。後で連絡してあげて」

アユミ「うん…」

アユミ「お母さん。昨日は…」

母「シンくんが心配!なんちゃって…あはは!」

アユミ「………!?」



母の言葉を聞いて、アユミは動きを止めた。

思わず母の方を向いて見つめる。



母「どうしたの?」

アユミ「あなた…誰?」
 ▼ 21 テラキオン@あつぞこブーツ 21/05/03 20:36:04 ID:MDz.hY1Y [19/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私は強い違和感を感じていた。

確かに…私のお母さんは陽気だしよく冗談も言う。

だけど自分の娘が昨晩まであんなに落ち込んでいたのに、すぐ切り替えて明るく振舞えるような性格ではない。私にはよくわかる。

私の勘が、経験則が、この人は偽物だと言っているのだ。



母「ええ…?何を言っているの?」

アユミ「とぼけないで。あなたは誰なの?」

母「あなたの母親だよ。しっかりしなさいアユミ」

アユミ「じゃあ質問。『マサラ事変』とは何か答えよ」

母「!?」



マサラ事変。去年の夏に起きた大事件のことだ。

あれは確か初夏…カケルくんの家庭で第二子が誕生。女の子だった。『チコ』と命名されたらしい。

母体が快復した後、家族ぐるみで仲良しのシンくんの家にチコちゃんを見せに向かった。

だがカケルくんのお母さんが玄関から立ち入った時…事件は起こった。

偶然だったのだが、その日はシンくんが家に帰って来ていた。旅の疲れを癒すためお風呂に入っていたのだ。

夏場なので暑かったこと、自宅ということもあり安心していたこともあって…シンくんは全裸の状態で風呂場から出てきた。

その瞬間…訪問してきたカケルくんのお母さん、それからチコちゃんと出くわしてしまったのだ。

カケルくんのお母さんは思わず「ごめんなさい!」と言って目を逸らしたが、チコちゃんはそんな気遣いなどできるはずもない。

シンくんの股間を凝視し、それから何故か…笑い始めた。

シンくんは逃走。自室に引き籠った。多大な精神的ダメージを負ってしまったのだ。

人伝にこの話を聞いた私とカケルくんは爆笑してしまったけど、当の本人は年頃の男の子だ。立ち直るのにしばらく時間がかかった。

そしてチコちゃんは…チコちゃんではなくなった。改名されたのだ。まだ正式に申請してなかったのは不幸中の幸いといったところか。

何故改名されたのかというと…この事件のせいで『チコ』という名前を聞くとアレを連想してしまうからだ。

この一連の事件は(シンくんのいないところで)度々会話のネタに用いられ、通称『マサラ事変』と呼ばれている。
 ▼ 22 ローブシン@みどりのプレート 21/05/03 20:38:03 ID:MDz.hY1Y [20/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私のお母さんなら絶対にマサラ事変を知っている。実際会話の話題にしたことあるし。

もし知らないのなら…



母「………」

母「…何のことだったかしらね。忘れちゃった」



この期に及んでまだしらばっくれる。呆れる程の往生際の悪さだ。



アユミ「忘れるはずないでしょ。つい最近話したばっかりだもん。この前の日曜!」

母「そうね…確かに何か話したのは覚えているけど」

アユミ「はい嘘言わない!この前の日曜は私家にいなかったもん!一言も会話してないよ!」

母「!!」

アユミ「いい加減観念して。あなたは一体誰なの?」
 ▼ 23 マシェード@レトルトめん 21/05/03 20:40:05 ID:MDz.hY1Y [21/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
母「………」

母「そうかい。バレちゃあ仕方ねえな」



バサッ!



とうとう観念したのか、母の偽物は変装を止めた。



アユミ「あなたは確か…ロケット団の…!?」

ラムダ「俺様を知っているとは驚きだな。初対面のはずだが」



その正体はロケット団幹部のラムダ。カケルくんやシンくんとも戦った変装の達人だ。



アユミ「ロケット団は解散したんじゃないんですか?」

ラムダ「さあね。別に教える義理ねえし」

ラムダ「お前…最初は俺が偽物だって気付かなかっただろ?」

ラムダ「あの事件以降…けっこう練習して鍛えたんだぜ?」

ラムダ「変装技術は極めたと思ったのにな。何がまずかったのかねえ?」

アユミ「人の姿を真似ることはできても、人の心までは真似ることはできませんから」

ラムダ「ははは!正論だな!恐れ入ったぜ」
 ▼ 24 マッギョ@タブンネナイト 21/05/03 20:42:05 ID:MDz.hY1Y [22/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「母はどこにいるんですか?」

ラムダ「教えて欲しいか?それなら俺のお願いを聞いてくれよ」

アユミ「何ですか?」

ラムダ「ブルー?とかいう小娘のポケモン…お前が預かっているんだろ?」

アユミ「!!」

ラムダ「それを寄越せ。大人しく渡せばママの居場所も教えてやるよ」



どうしてこの人がそれを知っているのだろう。

ブルーさんのことはごく一部の人間しか知らないはず。そしてブルーさんのポケモンのことを知っているのは私とグリーンさん、それからお母さんのみ。

だとすれば…お母さんから聞き出した?どうやって?

まさか…拷問?

最悪のケースが頭を過る。彼ら…ロケット団ならどれだけ残酷な行いでもやりかねない。

怒りで忘れていた悪人への恐怖心が蘇り、私の脚はガクガクと震え始めた。
 ▼ 25 ダイオウドウ@ピーピーマックス 21/05/03 20:44:06 ID:MDz.hY1Y [23/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラムダ「さあ早く渡せ。俺の望みはそれだけさ」

アユミ「………」

ラムダ「所詮他人のポケモンだろ。愛着なんか持ち合わせていないはずだぜ」

ラムダ「さっさと渡してお前もママも無事。それでめでたしめでたし万々歳だろうが」

アユミ「…渡しません」

ラムダ「!」



怖い。怖くて仕方がない。

だけどブルーさんのポケモンを渡すわけにはいかない。ロケット団の手に渡ってしまえば…待ち受けるのは破滅のみだ。

ブルーさんの尊厳を守るためにも、ポケモンたちの平穏を守るためにも…ここで引くわけにはいかない。



ラムダ「おいおい…ママがどうなってもいいのかよ?」

アユミ「問題ありません。ポケモンバトルで…力尽くで聞き出しますから」

アユミ「イーブイ!おいで!」

イーブイ「ブーイ!」タタタ



私はイーブイを呼び出し、さらにモンスターボールに手を掛けた。

臨戦態勢だ。私の全戦力を以てこの人を倒さなければ。



ラムダ「…参ったな。カケルやシンと違って話のわかる奴だと思ったのによ」

ラムダ「ここで面倒事は避けたかったが…やむを得ないな」



ラムダもモンスターボールを出した。言葉とは裏腹に、望むところと言いたげな様子だ。



ラムダ「生意気なガキに大人の恐ろしさってやつを教えてやらねえとな」
 ▼ 26 パッチラゴン@リンドのみ 21/05/03 21:12:35 ID:VTJ2aDOw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 27 ガチゴラス@ゴツゴツメット 21/05/03 21:37:25 ID:M5/EX2fY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援

>>11
レッド喋ってて草
 ▼ 28 ポッチャマ@きぼりのかんむり 21/05/04 09:37:51 ID:mxrIDvsU [1/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「イーブイ!めらめらバーン!」

ラムダ「こっちはヘドロばくだんだ!」

イーブイ「ブイッ!!」ゴオッ

マタドガス「ドガス!」ボッ



私はイーブイ。相手はマタドガス。

戦況は互角だ。私が攻撃指示を出せばあちらも指示を出し、互いに一撃ずつ被弾する。さっきからこの繰り返し。

圧勝できればそれが一番だったけど…渡り合うことさえできているのなら問題ない。どこかで必ず大きな隙が生まれる。

私のイーブイはその一瞬の隙を見逃さない。素早く懐に入り、渾身の一撃を加えられるはずだ。



ラムダ「ジャイロボールだ!」

マタドガス「ドガッ!!」ボッ

アユミ「かわしてイーブイ!」

イーブイ「ブイーーッ!」サッ



ジャイロボールは全身を弾丸にして撃ち放つ技。攻撃後の態勢が不安定になりやすく、そこに隙が生じる。



アユミ「そこだ!びりびりエレキ!」

イーブイ「ブイイイーーッ!!」ドムッ



バチチチチッ!!!



マタドガス「………!」ビリビリビリ



戦闘開始以来、初めて戦況が動いた。

渾身の一撃が突き刺さり、私たちは優位に立ったのだ。
 ▼ 29 アズマオウ@ハバンのみ 21/05/04 09:40:54 ID:mxrIDvsU [2/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「ブイ…!?」ガクッ

アユミ「!? イーブイ!!」



突然、イーブイが倒れ込んだ。

毒状態?いや違う!単純に…ダメージを受け過ぎたんだ。

しかし何故?相手のマタドガスはピンピンしているのに。



アユミ「…何をしたの?」

ラムダ「何も小細工はしてねえよ」

ラムダ「レベル差。それだけの話だぜ」

アユミ「レベル…差」

ラムダ「俺のマタドガスはお前のイーブイよりずっとレベルが高いってことさ」

ラムダ「だからお前の攻撃はほとんど効かないし、こちらの攻撃は一撃一撃が大ダメージになる」

ラムダ「元々はカケルやシンに対抗できるように鍛えていたからな。前回よりめちゃくちゃレベル上がっているんだぜ」

ラムダ「まっ、この調子ならあの二人とも良い勝負できそうだし…安心した」

アユミ「………」

ラムダ「わかったか?お前じゃ俺に勝てねえよ」
 ▼ 30 アノプス@あなぬけのヒモ 21/05/04 09:42:23 ID:mxrIDvsU [3/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私は…カケルくんやシンくんのようにバトル主体のトレーナーではない。普段は図鑑埋めや生態調査に従事している。

とはいえ私もあの二人の同期だ。それなりに腕に自信はあった。ロケット団なんかに後れを取るはずがないと。

事実これまでも、ポケモンについての知識を活用して格上の相手にだって度々勝利してきた。

だけど今は違う。経験や知識では埋め難い…圧倒的な力の差。

どれだけ戦術で上回っても、どれだけ奇策を用いて攻撃を命中させても、マタドガスには殆どダメージを与えられず、戦況は好転しないのだ。



ラムダ「さすがにもう諦めただろ?」

ラムダ「ほらほら!観念してポケモンを渡してくれよな」

アユミ「………!」グッ



…弱気になるな!

あの二人だって何度も窮地に立たされてきた。その度にポケモンとの絆で限界を超え、強敵を退けて勝利してきたんだ。

イーブイを信じるんだ。そうすればきっとどんな強敵にも抗うことができる。

一か八か…イーブイの最大火力をぶつけて勝負を決める。



アユミ「…イーブイ!」

アユミ「すてみタックル!!」

イーブイ「ブイーーーーッ!!」ゴオッ



バゴッ!!!
 ▼ 31 コアルヒー@ルナアーラZ 21/05/04 09:44:14 ID:mxrIDvsU [4/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「……ブイ?」ギギギギ

マタドガス「………」ニヤ

ラムダ「よしよし。しっかり防御できたな」

アユミ「…そんな」

アユミ「こんなことって…!」



イーブイの最高火力である『すてみタックル』。切り札であるこの一撃を…マタドガスは悠々と受け止めて見せた。



ラムダ「勝てないって言っただろ。聞き分け悪いな」

ラムダ「どくどく!!」

マタドガス「ドガ!」バシュ



ドクンッ…



イーブイ「イブッ…」ゴポッ

アユミ「イーブイ!!」



『どくどく』が命中し、イーブイは猛毒状態に。

時が立つ程ダメージを増していく邪悪な毒。一刻も早く回復させなければ危険だ。



ラムダ「抑え込め」

マタドガス「ドガ!」ガッ

イーブイ「……ッ」ギチッ



マタドガスはイーブイを地面に押さえつけて拘束。

拘束から逃れられなければ、毒が回って苦しんだ末に戦闘不能となってしまうだろう。
 ▼ 32 ミノマダム@アンノーンノート 21/05/04 09:46:06 ID:mxrIDvsU [5/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
猛毒状態のまま動きを封じられてしまった。

今の力量差なら攻撃して戦闘不能にすることくらい容易なはず。なのにわざわざ毒を使って倒そうとしている。

これはつまり…より苦しむやり方を取ったということだ。



ラムダ「どうする?このままだとイーブイは長く苦しんで力尽きることになるぜ」

ラムダ「これが最後のチャンスだ。ポケモンを渡せ」

ラムダ「そうすればイーブイは解放するし、母親の安全も保障する」

アユミ「………!!」



この人にポケモンを渡せば…間違いなく悪事に利用されてしまう。

それは絶対に阻止しなければ。でも拒めばイーブイが辛い思いをする。お母さんもどうなるかわからない。

状況を打破するにはマタドガスを倒して拘束を解く他ない。だけどイーブイですら全く歯が立たなかった相手にどうやって対抗しようというのか。

私のポケモンたちではどうしようもない。火力不足だ。

一体どうすれば…早くしないとお母さんが…

イーブイが…ブルーさんのポケモンが…!

…待てよ?



アユミ「カメックス!聞こえる!?」

アユミ「お願い!私に力を貸して!」

ラムダ「!? お前…何してやがる」



私はブルーさんのポケモン…カメックスに対し、ボール越しに呼びかけた。

私のポケモンでは歯が立たない。しかしブルーさんのポケモンならどうか?

カントー屈指の実力を持つトレーナー…その相棒のポケモンたちなら、あのマタドガスを打ち負かす程の力を備えているはずだ。

今勝たなければロケット団に引き渡される。彼らもそれは嫌なはずだ。利害は一致している。



アユミ「カメックス!もし負けたらあなたたちはロケット団のポケモンになってしまう!」

アユミ「私はそんなの嫌!ブルーさんだって望んでない!だから…」

アユミ「ボールから出てきて!力を貸して!」
 ▼ 33 フクスロー@クラボのみ 21/05/04 09:48:05 ID:mxrIDvsU [6/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「………」

ラムダ「………」



叫びに近い私の訴えも虚しく、カメックスは何の反応も返さない。

ポケモンたちは恨めしい程に完璧に訓練されていた。恐らくブルーさん以外の命令は一切受け付けないよう教え込まれているのだろう。

自分たちが窮地に在っても、その教えを破ろうとはしなかった。



ラムダ「万事休すってやつか」

イーブイ「………」

アユミ「…イーブイ」



私はイーブイに視線を遣った。

毒が回り、抵抗する力すら残っていないのだろう。虚ろな目で力なく項垂れている。

目を背けたくなるような痛々しい惨状だった。



アユミ「ブルーさん…」



本当に…どうして逝ってしまったんですか。

あなたがいれば…イーブイがこんなに苦しむことはなかったのに。

あなたのポケモンを預かってしまったばっかりに…私は今残酷な二者択一を突き付けられている。

それでも守ろうとしました。必死に抗いました。

でもどうしようもなかった。どうにもならなかった。



アユミ「ブルーさん…責任取ってよ…」

アユミ「イーブイを…お母さんを…」

アユミ「私のこと…助けてよ…!!」



私は無我夢中であの人の名前を呼び、縋りついた。

その時だった。
 ▼ 34 クマシュン@みずたまリボン 21/05/04 09:50:03 ID:mxrIDvsU [7/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
がくん。



アユミ「!?」



視界が遠くなる。世界が暗くなっていく。

眠りに落ち、意識を失う時と同じ感覚だ。私は気絶しようとしているのだろうか。

私は闇の中に溶け込み、一体化して薄くなっていく。

そしてそのまま、私の記憶は途絶えた。
 ▼ 35 テッポウオ@スピアナイト 21/05/04 09:52:04 ID:mxrIDvsU [8/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「………」

ラムダ「?」



なんだ?気を失ったのか?

先刻まで錯乱して泣き喚いていたというのに。ストレスに耐えかねた逃避行為か?



アユミ「…ふふふ」

アユミ「お日様の光。新鮮な空気。そして心臓の鼓動」

アユミ「何だか懐かしいな」



アユミの気配が変わった。口調も変化し、先刻までとは打って変わって落ち着いている。



ラムダ「何言ってんだお前。イカれたか?」

アユミ「イーブイ…もう戦えない状態じゃん」

アユミ「助けてあげる義理はない。でも利用はできそうだね」

アユミ「ウツボット。出ておいで」シュッ

ウツボット「ツボ!」ボン



アユミはウツボットを繰り出した。マタドガスと同じどくタイプだ。



ラムダ「成る程な。毒には毒を…ってわけか」

ラムダ「望むところ!ヘドロばくだん!」

マタドガス「ドガッ!!」ボッ



繰り出されたばかりのウツボットに対し、マタドガスは容赦なく攻撃を加える。



アユミ「パワーウィップ」
 ▼ 36 ソルロック@まんたんのくすり 21/05/04 09:54:03 ID:mxrIDvsU [9/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ズギャッ!!!!



ラムダ「……は?」

マタドガス「ギャッ…」

イーブイ「イブッ…」



パワーウィップがヘドロばくだんを打ち消し、そのまま二体に直撃。

二体は揃って戦闘不能となった。



ラムダ「おいおいおい…マジかよ」



何だこれ?訳が分からない。

立場が逆転した。マタドガスをあっさりと倒す驚異的なパワー。

相当なレベル差…実力差のある相手だ。

そもそもあのウツボットって…ブルーとかいう小娘のポケモンじゃないのか?なんであんなに自然に扱えるんだ?

一分前までは言うこと聞かなくて困り果てていたくせに。



ラムダ「…次のポケモンを」

アユミ「させないよ。ウツボット!」

ウツボット「ツボッ!!」シャッ



ガシッ!!



ラムダ「!? ぐうううッ…」ギリギリギリ



ウツボットは素早く蔦を伸ばし、ラムダを拘束した。
 ▼ 37 ムクバード@マチスのサイン 21/05/04 09:56:03 ID:mxrIDvsU [10/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「聞きたいことがある」

ラムダ「くっ…母親の居場所だろ!?」

ラムダ「わかったわかった!俺の負けだ…ちゃんと解放するから!」

アユミ「それは後回し。聞きたいことはもう一つある」

ラムダ「!?」

アユミ「ブルーのポケモンがここで預かられているって話。知っているのはごく少数」

アユミ「母を揺さぶって聞き出したのかな?いや…そんなことをすれば私が気付く」

アユミ「そもそもこの家に来た動機は何だ?母と会う前にネタを掴んでいたとしか思えない」

アユミ「そうなると残るはグリーンだけ。だがグリーンがお前程度にやられるはずがない」

アユミ「事実を知る人間全員に疑いの余地がないんだよ。だから解せない」

アユミ「この話を誰に聞いた?答えなさい」
 ▼ 38 デンジュモク@しんかのきせき 21/05/04 09:58:04 ID:mxrIDvsU [11/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラムダ「………」

ラムダ「…それは言えねえなあ」



ギシッ…!!



ラムダ「ぐああああっ…!」ギリギリギリ



蔦の締め付けが更に強くなり、ラムダは苦悶の表情を浮かべた。



アユミ「言いなよ。でないともっと苦しくするよ」

ラムダ「誰が言うか!」

ラムダ「お前みたいなガキに口割られるくらいなら死んだ方がマシだっつーの!」

アユミ「じゃあ死ぬより苦しい思いをさせればいいのかな?」

アユミ「何にせよ…もっと強く締め上げないとね」

ラムダ「………っ!!」



どうなっていやがる。

イーブイが力尽きる直前…こいつは突如豹変し、忽ち俺を圧倒してみせた。

しかも性格や言動まで一変した。先刻までの優しさと慈しみに満ちた目はもうそこにはなく、冷徹で合理的、無機質さを感じる瞳にすげ変わっている。まるで人が変わったように。

…人が変わった?ということはまさか…!



ラムダ「…成る程。お前の正体…おおよそ見当がついたぜ」

ラムダ「それなら尚更ここで口を滑らせるわけにはいかねえな。必ずこの拘束から逃れ…お前のことをボスに伝える」

アユミ「へー。やっぱり上の人間がいるんだね。そいつに命じられてここに来たのかな?」

ラムダ「………」

アユミ「早速口滑らせてない?大丈夫?」

ラムダ「…うるせえよ。黙ってろ」
 ▼ 39 トルネロス@フライもりあわせ 21/05/04 10:00:09 ID:mxrIDvsU [12/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アユミ「それにしても…意外と忠誠心あるんだね」

アユミ「簡単に口割ると思っていたんだけど。なかなかどうしてしつこい」



私に代わってから5分が経った。残り時間は25分か。

あまり時間は掛けられない。もう少し聞き出したいところだけど…やることをやってからだ。



アユミ「ウツボット。そいつに『ねむりごな』」

ウツボット「ツボ!」ファサ

ラムダ「お…」ガクッ

アユミ「よし。これで暫く動けないよね」



朝食として置いてあったコーンスープ。あの中には恐らく睡眠薬が混ぜられている。

アユミちゃんを眠らせ、その隙に部屋から私のポケモンを持ち出す計画だったのだろう。

保険として母親を人質に取ることもできるし都合がいい。だが…アユミちゃんに見破られ計画が狂った。



アユミ「この状況下で私が私のためにできることは…」

アユミ「ウツボット。“私に”ねむりごな」

ウツボット「ツボ!」ファサ

アユミ「………!」グラ

アユミ「」ドサ



アユミは自ら『ねむりごな』を受け、眠り状態に。

人二人、ポケモン二体が気を失い、辺りは静寂に包まれていた。
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