SS ヒビくコトのネ。ギラギラ銀色ホウエン旅情

~ワカバタウン~

シルバー ｢ ……本当に済まない。もう一度言ってくれ ｣

コトネ ｢ 仕方ないなぁ。もう一回だけだよ？ ｣

シルバー ｢ あぁ ｣

コトネ ｢ あのね。ホウエン旅行のペアチケットが当たったの ｣

シルバー ｢ あぁ ｣

コトネ ｢ で、あたし達明日出発するから── ｣

シルバー ｢ あぁ ｣

コトネ ｢ シルバーも明日までに荷物作っといてね ｣

シルバー ｢ なんでだよ ｣

~30分後~

ｷｬｱｧｧｧｧｧｧｧｧ……ｹﾞﾎｯ! ｺﾞﾎｯ！

コトネ ｢ ……よし来たぁ！ ついに悲鳴が収まった！ ｣

…………ｽﾞｼﾝ

コトネ ｢ ……っていうか、ポケモンも咳き込むんだ。初めて見た ｣

……ｽﾞｼﾝ

コトネ ｢ いやいや！ そんな事より捕獲捕獲！ ｣

ｽﾞｼﾝ……！

コトネ ｢ よっしゃ行って！ ビリビリ── ｣

ズシン！！



コトネ ｢ …………え？ ｣








？？？ ｢ ( o дo)<ｷｴｪｪｪｴｴｪｪｪ！！ ｣

~更に10分後~

~シダケタウン・ポケモンセンター前~

ヒビキ ｢ あ！ おーいコトネ！ こっちこっち！ ｣ﾌﾘﾌﾘ

コトネ ｢ ……やぁ、ヒビキくん ｣ｽﾞﾀﾎﾞﾛ

ヒビキ ｢ いや、うん。姿が見えた瞬間からずっと気になってたけどさ ｣

ヒビキ ｢ ……なんでそんなボロボロなの？ ｣

コトネ ｢ お、そこ聞いちゃう？ ｣

ヒビキ ｢ うん ｣

コトネ ｢ いやね、あの後しばらくしてシルバーの言う通り悲鳴がおさまってさ ｣

コトネ ｢ よっしゃこれはチャンス！ って捕まえる体制に入ったら── ｣

コトネ ｢ 奥の方から、進化系とおぼしきやたらとイカついポケモンが出てきてその場で暴れ始めちゃって ｣

ヒビキ ｢ えぇ… ｣

コトネ ｢ そんで、これが強いのなんの ｣

コトネ ｢ 岩投げてくるわ、隙あらば『はかいこうせん』撃って来るわでこっちはもう逃げるしかなくて ｣

コトネ ｢ で、逃げてる途中で砕けた岩が当たったり土埃かぶったりした結果が── ｣

コトネ ｢ 今のこの状態って事ね ｣ｽﾞﾀﾎﾞﾛ

ヒビキ ｢ ……そりゃ大変だったね ｣

ヒビキ ｢ ん？ って事は、結局捕まえられなかったの？ ゴニョニョ ｣

コトネ ｢ ……まぁ、そうだね。ゴニョニョはね ｣

ヒビキ ｢ ……そっかぁ ｣



コトネ ｢ ところでさ、あたしも姿が見えた時から気になってたんだけど ｣

ヒビキ ｢ ん？ ｣





コトネ ｢ ……シルバーはどうしたの？ ｣

ヒビキ ｢ ……あぁ、やっぱりそこ気になっちゃう？ ｣

コトネ ｢ そりゃあまぁ ｣

ヒビキ ｢ だよねぇ…… ｣

ヒビキ ｢ ……とはいえ、うーん。どう説明したらいいものか ｣

コトネ ｢ ……普通に起きた事を教えてくれれば良いよ？ ｣

ヒビキ ｢ ……ほんとにそれで良いの？ ｣

コトネ ｢ え？ ｣

ヒビキ ｢ 多分話の9割位信じられないと思うけど── ｣

ヒビキ ｢ ほんとにそれでいい？ ｣

コトネ ｢ …………うん ｣



ヒビキ ｢ そっか。それじゃあ話すよ ｣

ヒビキ ｢ あれは、20分位前かな── ｣

……………………

~シダケタウン コンテスト会場前~

ヒビキ ｢ ……大丈夫かなぁ ｣

シルバー ｢ なにがだ ｣

ヒビキ ｢ コトネだよ。一人で置いてきちゃったけど、大丈夫かなって ｣

シルバー ｢ ……あれだけノリノリで置き去りにしといて今更それを言うのか ｣

ヒビキ ｢ うぐっ！ ｣

シルバー ｢ ……まぁ大丈夫だろう。あいつは基本的にオレ達より連れてるポケモンも強いし、余程の事でもない限りは── ｣







｢ うぉー！ ルッチー！ 俺を彼氏にスカウトしてくれー！！！｣







ヒビキ&シルバー ｢ …………なんだ？ ｣

ルチア ｢ う~ん。それは無理かなー☆ ｣

モブ ｢｣

ルチア ｢ そんな事より、今回もやっちゃうよー！ ｣

ルチア ｢ きらきら~！ くるくる~？ ｣

ルチア ｢ ミラクル☆ルチアの！ コンテスト スカウトー！ ｣



モブ ｢ うぉー！ 俺をスカウトしてくれー！ ｣



ルチア ｢ ちょっと黙って ｣

モブ ｢｣



ルチア ｢ んー。そうだなー ｣ｷｮﾛｷｮﾛ

ルチア ｢ ……あ！ キミが良い！ キミをコンテストにスカウトしちゃう！ ｣ﾋﾞｼｯ！







シルバー ｢ ……………………は？ ｣

ルチア ｢ おや？ 聞こえなかったかな？ ｣

ルチア ｢ キミをコンテストに── ｣

シルバー ｢ 断る ｣

ルチア ｢ …………え？ ｣

シルバー ｢ コンテストだか何だか知らんが興味が無い ｣

シルバー ｢ スカウトがしたければ他を── ｣

ルチア ｢ んー。それは困るなー ｣

シルバー ｢ ？ ｣

ルチア ｢ わたし、一応『スカウトした人は皆大成する』でお馴染みだからさ ｣

ルチア ｢ ここで断られちゃうと、そのイメージに悪影響が── ｣

シルバー ｢ 知らん ｣

ルチア ｢ そこを何とか ｣

シルバー ｢ 断る ｣

ルチア ｢ …………ここまで頼んでもダメかぁ ｣

ルチア ｢ ……それなら ｣

ルチア ｢ アイドル☆腹パン！ ｣

ﾄﾞｺﾞｫ!



シルバー ｢ おごっ！？ ｣ｶﾞﾊｯ

草

ﾄﾞｻｯ…！

シルバー ｢｣

ヒビキ ｢ ……シルバーを一撃で昏倒させた！？ ｣

ヒビキ ｢ この娘、一体何者なんだ……！ ｣



ルチア ｢ ふぅ。これで良しと ｣ﾋｮｲ

ルチア ｢ それじゃあ、明日この会場で彼をコンテストデビューさせるから！ ｣

ルチア ｢ 皆！ 絶対来てねー！ ｣ﾀﾞｯ！



モブ共 ｢ うぉー！ 絶対行くぜルッチー！ ｣



ヒビキ ( ……凄い！ シルバーを抱えてあんなスピードで走れるなんて！ )

ヒビキ ｢ ……て、違う！ こら待てー！ ｣ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ！

……………………

コトネ ｢ ……で、結局逃げ切られたと ｣

ヒビキ ｢ 面目ない ｣

コトネ ｢ ま、仕方ないよ ｣

コトネ ｢ ヒビキくん、後からスタートしたシルバーに負ける位には足遅いもんね ｣

ヒビキ ｢ ……くっ！ ｣

コトネ ｢ ……それはそれとして、シルバーは一体何なの！？ ｣

コトネ ｢ 行くとこ行くとこでトラブルに巻き込まれて！ ヒロインなの！？ ｣

ヒビキ ｢ ……そこは主人公だろ。ってシルバーのツッコミが聞こえて来る様だよ ｣

コトネ ｢ だって主人公って感じではなくない？ シルバーって ｣

ヒビキ ｢ ……分からんでもないけどさ ｣

コトネ ｢ なんかこう、魔王を倒しに行くよりは囚われの姫のが似合う── ｣

ヒビキ ｢ そんな事よりこれからどうするの？ シルバーを探す？ ｣

コトネ ｢ 探さないよ？ ｣

ヒビキ ｢ ……え？ ｣

コトネ ｢ 明日この会場に来るのが分かってるなら、わざわざ探す必要ないじゃない ｣

ヒビキ ｢ ……それはそうかもしれないけど ｣

コトネ ｢ それに、シルバーのコンテストデビューちょっと興味あるし ｣

ヒビキ ｢ ……なるほど ｣

ヒビキ ｢ ……しかし、そうなると今度はアレが問題になってくるね ｣

コトネ ｢ どうやって明日まで時間潰すか。でしょ？ ｣

ヒビキ ｢ その通り ｣

コトネ ｢ まぁねー。シルバーが出るならコンテストは初見の状態にしたいから今日は見に行けないし ｣

コトネ ｢ かといって、他に時間潰せそうな施設もない ｣

ヒビキ ｢ ホテルに入るにはまだ時間がはや過ぎるし ｣

ヒビキ ｢ さっきご飯食べたばっかりだからレストランも気乗りしない ｣

コトネ ｢ ……八方塞がりだなぁ ｣

ヒビキ ｢ ……仕方ないから、コンテスト会場の中でも見てみる？ ｣

コトネ ｢ ん？ ｣

ヒビキ ｢ いや、もちろんコンテスト自体は見ないよ？ ｣

ヒビキ ｢ ただ、これだけ注目されてる大イベントがどんな会場で行われてるのか興味あるなーって ｣

コトネ ｢ ………… ｣

コトネ ｢ ……ま、他に何も思いつかないしね ｣

コトネ ｢ いいよ。入ってみよ？ ｣ｽﾀｽﾀ

ヒビキ ｢ やったぜ ｣ｽﾀｽﾀ

支援

~コンテスト 受付ロビー~

ｳｫｰ！ｲｹｰ！

ﾏﾀﾞﾀﾞ！ﾏﾀﾞｲｹﾙ！

ｺﾝﾄﾞｺｿｷﾝｦﾂｸﾙﾝﾀﾞｰ！



コトネ ｢ ……ほぇー。ここは単なるロビーなのに、何やら凄い熱気だねぇ ｣

ヒビキ ｢ 熱気の正体はあの機械囲んでる人達みたいだけど、一体何してるんだろ？ ｣

ヒビキ ｢ 4人1組で、ひーふーみー……5組か。しめて20人も1箇所に群がって ｣

コトネ ｢ ……シルバーがいれば解説してくれたんだろうけど、残念ながら不在だからねー ｣

コトネ ｢ 仕方ない。ちょっと行ってくるよ ｣

ヒビキ ｢ 行ってくるってどこ── ｣

コトネ ｢ すいませーん！ 何してるんですかー！？ ｣ﾀﾀﾀｯ！



ヒビキ ｢ ……凄まじいコミュ力 ｣

~数分後~

コトネ ｢ たっだいまー！ ｣

ヒビキ ｢ お帰り。で？ どうだったの？ ｣

コトネ ｢ そりゃもうバッチリ！ 聞いてない事から聞いてない事まで全部教えてくれたよ！ ｣

ヒビキ ｢ それは逆に『全部』ではなくない？ ｣

コトネ ｢ まず、あの機械ね。『きのみブレンダー』っていうやつらしくて、早い話がきのみをお菓子に加工する物なんだって ｣

ヒビキ ｢ ほう ｣

コトネ ｢ なんでもコンテストに挑む前には、アレで作った『ポロック』ってお菓子をポケモンに食べさせてコンディション整えるのが基本なんだとか ｣

ヒビキ ｢ ……要はアレだ。ジョウトで言うところの『ボンシェイカー』と『ボンドリンク』みたいなもんだ ｣

コトネ ｢ そうそう、そんな感じ！ ｣

ヒビキ ｢ なるほどねぇ。地方は違ってもやっぱり似たような事を考える人は── ｣





？？？ ｢ プッ……w ボンシェイカー…ww ｣

コトネ＆ヒビキ ｢ ？ ｣

キモオタ ｢ ボンシェイカーw 名前ダサすぎ……w ｣

キモオタ ｢ どうせ、きのみブレンダーの足元にも及ばない性能なんやろなぁ……w ｣

ヒビキ ｢ んー。それはまぁそうかも ｣

コトネ ｢ 機械じゃないから性能もクソも無いしね ｣

キモオタ ｢ 今時機械ですらないのかよ！w 原始人かな？ ｣

ヒビキ ｢ ……なんでもかんでも機械化すりゃ良いってもんでも無いと思うけど ｣

コトネ ｢ 実際、ボンシェイカーで作るドリンクの品質は機械で作るジュースより良いしね ｣

キモオタ ｢ 偉そうに言ってるけど作った事ないんやろなぁ…… ｣

コトネ ｢ あるけど？ 更に言えばお前より上手く作れる自信あるけど？ ｣

コトネ ｢ なんなら対決するか？ いま、この場で ｣

キモオタ ｢ よしやろう ｣

コトネ ｢ ボンシェイカー置いて来てたの忘れてた。今回は見送る事にする ｣



キモオタ ｢ プッ……w 逃げたww 雑魚乙！w ｣ｽﾀｽﾀ

コトネ ｢ ……ふぅ ｣

ヒビキ ｢ ……なに今の ｣

コトネ ｢ ねー。急に絡んで来て一体何のつもり── ｣

ヒビキ ｢ あぁ、いやいや。それもそうだけどそっちじゃなくて ｣

コトネ ｢ ん、あぁ。さっきのセリフの話？ ｣

ヒビキ ｢ そう。……あれ、今考えたの？ ｣

コトネ ｢ いやいやまさか ｣

コトネ ｢ いくらあたしが、基本なんでも出来ちゃう天才超絶美少女でもそれは無理だよ ｣

ヒビキ ｢ そう…… ｣ﾄｵｲﾒ

コトネ ｢ 反応が冷たい！ え！？ なんで！？ ごめん！！ ｣

ヒビキ ｢ うん ｣

コトネ ｢ ……えっと、さっきのはアレだよ。前にポケスロン会場で聞いた会話をアレンジしたの ｣

ヒビキ ｢ ほう ｣

コトネ ｢ その時あたしは、パワーコースに出るためのポケモン選んでボンドリンク作るために走り回ってたんだけど ｣

コトネ ｢ そしたら、ボンドリンク屋さんの真ん前でオジサン2人が── ｣

『 スピードコースに出るなら、マルマイン ビリリダマ ヒマナッツが最強なんだよなぁ… 』

『 エアプ乙。オニスズメ オニドリル ディグダが最強だから 』

『 ポケスロン参加したこと無いやつがなんか吠えてる 』

『 あるけど？ 更に言えばお前より強い自信あるけど？ 』

『 なんなら対戦するか？ スピードコースで 』

『 よしやろう 』

『 チームを組んでる途中だったの思い出した。今回は見送る事にする 』



コトネ ｢ って話してたのね ｣

ヒビキ ｢ なんだその不毛な会話 ｣

コトネ ｢ ちなみに、後で聞いた話だと2人とも一回もポケスロン出たこと無かったんだけど ｣

ヒビキ ｢ えぇ…… ｣

コトネ ｢ まぁ、オチがそんなんだから凄く印象に残っててさ ｣

コトネ ｢ で、さっきあの人が『作ったこと無い~』とか言い出した時に、これはあの件使う場面では！？ と咄嗟に思いついて── ｣

ヒビキ ｢ ……あの絡みに至る。と ｣

コトネ ｢ そういうこと ｣

ヒビキ ｢ ……話は分かったけどさ、あの人がすぐ立ち去ってくれたから良かったようなものの── ｣



？？？ ｢ いやはや！ 素晴らしい！ ｣



ヒビキ ｢ ……今度は誰だよ ｣

ジジィ ｢ ワシか？ ワシは通りすがりのジジィじゃ ｣

ヒビキ ｢ あ、はい ｣

ジジィ ｢ ……そっけない反応じゃが、まぁ良いじゃろう ｣

ジジィ ｢ それよりも、ワシはさっきのそこのお嬢さんの発言に感銘を受けた！ ｣

コトネ ｢ ？ ｣

ジジィ ｢ 他人に聞かされたあのやり取りを咄嗟に流用するセンス！ まるで若い頃のワシを見ておるようじゃった！ ｣

コトネ ｢ ……はぁ ｣

ジジィ ｢ ……突然こんな事を言われて戸惑っておるな？ ｣

ジジィ ｢ 宜しい！ ならば、少し昔話をして差し上げよう！ ｣

コトネ ｢ いや、いりませ── ｣

ジジィ ｢ 実はワシも、婆さんにプロポーズする時あの件を利用してな── ｣



コトネ ｢ あぁ……。始まっちゃった ｣

~70年前~

若かりしババァ ｢ ……楽しかったですね。今日のデート ｣

若かりしジジィ ｢ あぁ ｣

若かりしジジィ ｢ ……ところで、今日は君に聞きたいことがあるんだ ｣

若かりしババァ ｢ なんですか？ ｣

若かりしジジィ ｢ 君は、将来的に結婚とかは考えてるの？ ｣

若かりしババァ ｢ ……正直よく分かりません ｣

若かりしババァ ｢ 私なんかと結婚して、相手の方が幸せになるとも思えないですし ｣

若かりしジジィ ( ここだ！ )

若かりしジジィ ｢ なるけど？ 更に言えばこの世の誰より幸せになる自信があるけど？ ｣

若かりしジジィ ｢ なんなら式挙げるか？ そこの教会で ｣

若かりしババァ ｢ 今すぐには結婚する気ないの思い出した。今回は見送る事にする ｣

~現在~

ヒビキ ｢ いや、フラれるんかい ｣

コトネ ｢ 絶対上手くいく流れだったでしょいまの ｣

ジジィ ｢ ……世の中そう甘くは無いのじゃ。クソガキ共 ｣

ヒビキ ｢ 勝手に話しといてキレるのやめなよ ｣



ジジィ ｢ ……フッ。年長者にタメ口か。ワシも舐められたものじゃな ｣

ヒビキ ｢ あ、すいませ── ｣

ジジィ ｢ 良いじゃろう。ポロック作りで打ちのめして貴様らに身の程を分からせてやるわ！ ｣ｽﾀｽﾀ

ヒビキ ( ……どういう理屈なんだ )

コトネ ( こっち来てから、やたら変な人に絡まれてるなぁ )



ジジィ ｢ ──何をしておる！ さっさと来んか！ 小娘！ ｣



コトネ ｢ あ、あたしなんだ ｣

ヒビキ ｢ ……さっきまでお嬢さんって言ってたのに ｣

ヒビキ ｢ ま、それはともかく……どうする？ ｣

ヒビキ ｢ 無視して帰るって道も普通にあるけど ｣

コトネ ｢ ……でも、それやると枕元に立たれそうだしなぁ ｣

コトネ ｢ 仕方ない。行ってくるよ ｣



コトネ ｢ ……心底行きたくないけど ｣ｽﾀｽﾀ

~5時間後~

コトネ ｢ いやー。疲れた疲れた ｣ﾎｸﾎｸ

ヒビキ ｢ ……って、言ってる割には随分ご機嫌だね ｣

コトネ ｢ そりゃもう ｣

コトネ ｢ あのお爺さん滅茶苦茶変な人だけど、それと同じ位ポロック作りが得意だったみたいでさ ｣

コトネ ｢ まぁ、有り得ないほど上質なポロックがポンポン出来た上に『ワシに勝った褒美』とかで貴重な── ｣

コトネ ｢ と、その辺の話は後でじっくりするよ ｣

ヒビキ ｢ ほう ｣

コトネ ｢ ……だから、とりあえず先にご飯屋さん探さない？ ｣



コトネ ｢ あたしお腹空いちゃった ｣ﾆｯｺﾘ

~飯屋~

コトネ ｢ ──と、まぁそんな感じで色々貰ったわけ ｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ

ヒビキ ｢ なるほど ｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ

コトネ ｢ ………… ｣

ヒビキ ｢ ………… ｣

コトネ ｢ ……間が持たない ｣

ヒビキ ｢ 会話を回してくれる人がいないからね ｣

コトネ ｢ だねぇ ｣

ヒビキ ｢ うん ｣

コトネ ｢ ………… ｣

コトネ ｢ ……言ってて思ったんだけどさ ｣

ヒビキ ｢ ん？ ｣

コトネ ｢ シルバーがあたし達と普通に過ごしてるって、何気に凄い事じゃない？ 昔のアレの性格を考えたら ｣

ヒビキ ｢ 分かる ｣

コトネ ｢ なんせ酷かったからねぇ。あたし達が出会った頃のシルバーは ｣

ヒビキ ｢ ポケモンは盗むわ、物は盗むわ、突然人に殴り掛かるわ…… ｣

コトネ ｢ 普通に犯罪者だったよね。いま捕まってないのが不思議なレベルの ｣

ヒビキ ｢ ウツギ博士が大分頑張ったらしいよ。聞いた話だと ｣

コトネ ｢ へー ｣

ヒビキ ｢ 最後にはオーキド博士まで出てきたとか ｣

コトネ ｢ ……大事件だね。そこまで来ると ｣

ヒビキ ｢ ほんとに大事件だったよ。コトネが知らないのが信じられない位には ｣

コトネ ｢ えへへ/// ｣

ヒビキ ｢ いや、褒めてな── ｣

コトネ ｢ まぁ、でもあれだね ｣

コトネ ｢ それだけ色々やらかしてるシルバーの悪行の中でも特に酷かったのは── ｣

ヒビキ ｢ ……それはやっぱり ｣



コトネ&ヒビキ ｢ ラジオ塔事件 ｣

コトネ ｢ 漆黒の生地にドデカいRのワンポイントを拵えた衣装を纏った無垢な少女 ｣

コトネ ｢ 赤毛の少年は、少女を無慈悲に押し倒すと── ｣

コトネ ｢ そんな格好止めちまえ！ と叫び散らし、少女を包む衣服を強引に剥ぎ取り始める ｣

コトネ ｢ 目に涙を浮かべ、止めてくれと必死に懇願する少女の言葉に一切耳を貸さず少年は全ての布を剥ぎ取ると ｣

コトネ ｢ そのまま、誰にも踏み荒らされていない少女の花── ｣

ヒビキ ｢ ……そこまで来ると誇張が過ぎる気もするけど、まぁ確かにそんな感じの事件だったね。うん。誇張が過ぎる気もするけど ｣

コトネ ｢ ……世間一般的には物盗んだりする方が酷いのかもしれないけど── ｣

コトネ ｢ 少なくとも、あたしの中ではアレがぶっちぎりだなー。やっぱり ｣

ヒビキ ｢ 大丈夫。ぼくもそう思うよ ｣

ヒビキ ｢ ……流石に無いよね。人前で女の子を裸に剥こうとするのは ｣



コトネ ｢ ……なんか、自分は関係ありません。みたいな感じ出してるけどさ ｣

コトネ ｢ あの時はヒビキくんも大概酷かったからね？ ｣

ヒビキ ｢ え？ ｣



コトネ ｢ だって、ヒビキくんあの時それを見ながら── ｣

ヒビキ ｢ それ以上はいけない ｣

~2時間後~

~宿屋周辺~

コトネ ｢ ふぃー。食べた食べた ｣ｽﾀｽﾀ

ヒビキ ｢ ………… ｣ｽﾀｽﾀ

コトネ ｢ 美味しかったし楽しかったねー ｣

ヒビキ ｢ ………… ｣

コトネ ｢ ……どしたの？ ｣

ヒビキ ｢ 2時間近く繰り広げられたコトネの言葉責めによって、心を抉られたんだよ ｣

コトネ ｢ なんでよ。前はこういう時『言葉責めか。悪くない……///』とか言ってたじゃない ｣

ヒビキ ｢ それはそうだけど…… ｣

コトネ ｢ あ、そこは認めるんだ ｣

ヒビキ ｢ ただ、ほら。この前ホテルで某お目付け役にボコボコにされた事がきっかけで── ｣

ヒビキ ｢ そういう癖が消滅したみたいなんだ ｣

コトネ ｢ どういうシステムなの？ ｣

ヒビキ ｢ ……まぁ、一時的な物だとは思うけどね ｣

コトネ ｢ だから、どういうシステムなの？ ｣

~宿屋前~

コトネ ｢ ま、それは良いや ｣

コトネ ｢ それより、今夜の部屋割りはどうする？ ｣

ヒビキ ｢ ……どうするとは？ ｣

コトネ ｢ そりゃもちろん、一緒にするか別々にするか。だよ ｣

ヒビキ ｢ んー。別々……かな ｣

コトネ ｢ あら意外 ｣

コトネ ｢ シルバーがいない今がチャンス！ 今夜はあんな事やこんな事を~。とか言うかと思ってた ｣

ヒビキ ｢ ……さっきも言ったけど、今はそういう欲求も消し飛んでる状態なんだよね ｣

ヒビキ ｢ 絶対いずれ戻るとは思うけど ｣

コトネ ｢ だから、それどういうシステムなのって ｣

ヒビキ ｢ ……それは聞くも涙── ｣

コトネ ｢ あ、そうだ。そんな事よりさ ｣

ヒビキ ｢｣

コトネ ｢ シルバーが出場するの大体何時くらいか分かってるの？ ｣

ヒビキ ｢ 全然 ｣

コトネ ｢ ……マジ？ ｣

ヒビキ ｢ うん ｣

コトネ ｢ ……じゃあ、仕方ない。とりあえず明日は朝8時位からずーっと会場に張り付いてるしかないね ｣

コトネ ｢ シルバーはコンテストは一日中やってるって言ってたけど、まさか真夜中に出場するって事はないでしょ ｣

コトネ ｢ 攫って行った子が『みんな見てねー』とか言ってたんなら尚更 ｣

ヒビキ ｢ ほう ｣

コトネ ｢ ……そういう訳だから、明日は7時起きでロビー集合ね！ ｣

コトネ ｢ それじゃ！ おやすみ！ ｣ｽﾀｽﾀ

~翌朝~

~ヒビキの客室~

コトネ ｢ ………… ｣

ヒビキ ｢｣ｽﾔｽﾔ

コトネ ｢ ……おーい ｣

ヒビキ ｢｣ｽﾔｽﾔ

コトネ ｢ ……ヒビキくーん ｣

ヒビキ ｢｣ｽﾔｽﾔ

コトネ ｢ ………… ｣

コトネ ｢ ………… ｣ｺﾞｿｺﾞｿ



ﾊﾞｼｬ……！



ヒビキ ｢ ぐあぁぁぁぁぁぁぁ！ 目が！ 目がぁぁぁぁぁぁぁ！！ ｣

~数分後~

コトネ ｢ おはよ！ ヒビキくん ｣

ヒビキ ｢ ……おはよう ｣ﾑｽｯ

コトネ ｢ ……あれ？ なんか機嫌悪い？ 寝起き悪いタイプだったっけ？ ｣

ヒビキ ｢ ……熟睡してる時に、目元に得体の知れない液体かけられて激痛で目覚めて寝起き良い人なんか居ないと思うんだ ｣

ヒビキ ｢ ……っていうか、アレ何だったの？ ｣

コトネ ｢ ノワキ汁 ｣

ヒビキ ｢ ……はい？ ｣

コトネ ｢ ほら。昨日お爺さんに貴重なきのみ色々分けて貰ったって言ったでしょ？ ｣

ヒビキ ｢ うん ｣

コトネ ｢ その中にノワキのみもあったから、昨日のうちにすり潰して液体にしといたの ｣

コトネ ｢ 目とか鼻に入ると割とシャレにならないらしいから、逆に目覚ましになるかなって ｣

ヒビキ ｢ その発想になるのは割とサイコ野郎だと思うよ ｣

コトネ ｢ まぁまぁ。そうカッカせずに発想を逆転させるんだよヒビキくん ｣

ヒビキ ｢ ？ ｣

コトネ ｢ こう考えるの！ もしも、あたしがあの時ノワキ汁ぶっかけてなかったら── ｣

コトネ ｢ 今頃ヒビキくんの目と鼻は抉れて無くなってたんだって！ ｣



ヒビキ ｢ どういう事なの…… ｣

コトネ ｢ おっと。そんな事言ってる場合じゃなかった ｣

ヒビキ ｢ む ｣

コトネ ｢ 急いで支度してヒビキくん。今、7時35分だから予定より大分遅れてるの ｣

ヒビキ ｢ ……本当に？ ｣ｺﾞｿｺﾞｿ

ポケギア ｢ 7時36分やで ｣

ヒビキ ｢ ……本当だ ｣

コトネ ｢ ね？ ｣

コトネ ｢ 本当は7時丁度に起こしに来ても良かったんだけど、まぁちょっと位の寝坊は許してあげるかって事での今ね ｣

コトネ ｢ あたしの優しさに感謝して咽び泣くと良いよ ｣ﾄﾞﾔｯ

ヒビキ ｢ 本当に優しい人は寝てる人の目にノワキ── ｣

コトネ ｢ はいはい。早く着替えて支度して。5分ね！ ｣

コトネ ｢ 5分過ぎたら、また顔面にノワキ汁お見舞いしちゃうよ。ﾌﾌﾌ… ｣



ヒビキ ｢ ……悪魔め ｣

~数十分後~

~コンテスト会場~

ｻﾞﾜｻﾞﾜｻﾞﾜｻﾞﾜ……

参加者C ｢ ﾊｧ…ﾊｧ… ｣



司会者 『 さぁ、残り時間もあと僅か！ ここまで全くいい所のないC選手！ ここから少しでもアピールを── 』



ヒビキ ｢ ……辛辣すぎない？ ｣

コトネ ｢ ……まぁ、先に出てきた2人に比べて明らかに見劣りするからね。仕方ないね ｣



参加者C ｢ ｸｿｯ！ 舐めやがって！ 見せてやる。俺がこの日のために血反吐を吐いて完成させて来た、究極にビューティフルで完璧にエレガントな── ｣



ﾋﾞｰｯ！！



司会者 『 あーっと！ ここで無常にもタイムアップの合図だー！ なんとC選手、貴重な残り時間をくだらないお喋りで使いきってしまったー！ 』



ヒビキ ｢ ……いや、やっぱ辛辣すぎない？ ｣

コトネ ｢ まぁ、実際クソみたいなお喋りだったからね。仕方ないね ｣

支援

ｻﾞﾜｻﾞﾜｻﾞﾜｻﾞﾜ……

司会者 『 ……えー。本来ならばこの後審査員の方々の評価諸々あるのですが、我々コンテスト運営一同は今回に限り不要と判断致しました 』



ヒビキ ｢ えぇ…… ｣



司会者 『 と、いうわけですのでさっさと次の選手を呼び込みたいと思います！ 』



コトネ ｢ 完全に投げやりだね。仕方ないけど ｣



司会者 『 皆様、御安心ください！ これから入場してくる人物は必ずやこのクソみたいな雰囲気を一変してくれる事でしょう！ 』



ヒビキ ｢ これは酷い ｣



司会者 『 なぜならその人物は、あのルチアさんがその才能を見出しスカウトした逸材だからです！ 』



ﾜｧｧｧｧｧｧｧｧ！！



ヒビキ ｢ お ｣

コトネ ｢ って事は、来るかな？ ｣



司会者 『 それでは行きましょう！ シルバー選手の入場です！ 』



ｳｵｫｫｫｫｫｫｫｫ!！

ヒビキ&コトネ ｢ ｷﾀ━(ﾟ∀ﾟ)━! ｣




シルバー ｢ ………… ｣ﾀｯﾀｯﾀ！

シルバー ｢ みんなー！ 今日は来てくれてありがとー！！ ｣

シルバー ｢ シルバーだよ！☆ ｣




ヒビキ&コトネ ｢ ………………んん？ ｣

いいぞいいぞ

コトネ ｢ ……えーっと。あれは本当にシルバーなのかな？ ドレス着てる様に見えるけど ｣

ヒビキ ｢ ……信じられない気持ちは分かるけど、残念ながらシルバー選手ってハッキリ言ってたからなぁ ｣

コトネ ｢ うーん…… ｣

コトネ ｢ シルバー世代の超新星アキコさんを略してシルバー。とか ｣

ヒビキ ｢ 略し過ぎだし、どう見てもシルバー世代じゃないし ｣

コトネ ｢ ぐぬぬ…… ｣

ヒビキ ｢ ……うん。まぁ仕方ないよ。諦めて見守ろうよ ｣

コトネ ｢ …………うん ｣

~シルバー目線~

シルバー ( ……くそっ！ 何故オレがこんな格好を！ )

シルバー ( いや、一万歩譲っておかしな格好は良いとして── )

シルバー ( なんなんだ、この痛々しいキャラ設定は。絶対必要ないだろ！ )



司会者 『 ……シルバー選手？ 既に演技時間は開始していますよ？ 』



シルバー ( ………… )

シルバー ( ……やむおえんか )



シルバー ｢ ……え、えっと、出てきて！ カチカチ！☆ ｣

ﾎﾞﾑｯ！

カチカチ(ハガネール) ｢ カチカチ ｣



シルバー ｢ いっくよー！☆ アイアンテー…………！？ ｣

コンテスト衣装シルバーきゅんたまらん

>>210
かわ