オンバーン「弟卒業したい」

オンバーン「進化してから結構経ったし、後輩もできたし、そろそろ弟卒業しようと思う！」

ズルッグ「！？」

ドンファン「え？弟って卒業できるものだっけ？」

オンバーン「できるかできないかじゃない！するの！」

ドンファン「後輩……ってオーキド研究所にはいないよね？」

オンバーン「いないけど……でも、できたのは本当だから！」

ズルッグ「ファイアローとルチャブルがいやになったの？」

オンバーン「そんなことないよ！ふたりとも好きだよ！でも……」

〜回想1〜

オンバーン『いてっ』

ルチャブル『オンバーン！？どうした！？怪我をしたのか！？』

オンバーン『大丈夫だよルチャ兄。枝でひっかいただけだし』

ファイアロー『ああ、かすり傷だな。舐めときゃ治るだろ』

ルチャブル『いや、駄目だ！オーキド博士に看てもらうぞ！ほら早く！』

ファイアロー『えっはやっもういない』

オンバーン『……おれ全然平気なのに……』


〜回想2〜

ファイアロー『よ、オンバーン。美味そうなきのみ見つけたからやるよ』

オンバーン『これ……甘いきのみ！本当にいいの？』

ファイアロー『もちろん。お前のために取ってきたんだし』

オンバーン『ありがとう、アロ姉！』

ルチャブル『よし、俺もこれをやろう』

オンバーン『わ、ありがと……って多すぎるよー！』

〜回想終〜


ズルッグ「うーん、たしかにカホゴかも……？」

ドンファン「というかルチャブルが重症だね」

オンバーン「うん……気にかけてくれるのは嬉しいんだけど、おれ、もうオンバーンだし……」

オンバーン「それに、オンバットの頃より強くなったと思うんだ。だから、『弟』じゃなくて、『ひとりのポケモン』として認めてほしくて……」

ドンファン「なるほどねえ」

ズルッグ「……オンバーンの気持ち、わかるよ。おれ、まだ進化してないからみんな面倒見てくれるけど、もうこどもじゃないもん」

オンバーン「ズルッグ……！」

ズルッグ「ドンファンは思ったこと、ない？」

ドンファン「ないことはないけど……オンバーンの言葉を借りるなら、僕は自然と弟卒業したのかも」

オンバーン「どういうこと？」

ドンファン「サトシにとって初めてのタマゴだったし、ゴマゾウの頃はみんな可愛がってくれたと思うよ。でも、その後にヨーギラスって子が生まれたんだよね」

オンバーン「今はシロガネ山にいるっていう……？」

ドンファン「そうそう。それから新しいポケモンもたくさんゲットしたし、進化もしたし……今は弟って思われることの方が少なくなってきちゃった」

ズルッグ「たしかに」

ドンファン「だから、ちょっとオンバーンが羨ましいかな」

オンバーン「そうだったんだ……ごめん、おれ、ドンファンの気持ち知らなくて」

ドンファン「わっ謝らないで！尊敬するポケモンに認められたい気持ちは僕もわかるから！」


ドンファン「だからさ、どうやったら弟卒業できるか考えようよ」

ズルッグ「おれもてつだう！」

オンバーン「……うん！ふたりともありがとう！」

好き
支援

しえん

オンバーン「……で、どうしたらいいかな」

ズルッグ「やっぱり、見た目がだいじだと思う」

ドンファン「でもオンバーンって外見は大人っぽいよね」

オンバーン「そ、そうかな」

ズルッグ「……ちょっと笑ってみて」

オンバーン「？」ﾆｺｰｯ

ズルッグ「ね？」

ドンファン「あー……」

オンバーン「え！？何が！？」

ドンファン「うーん……オンバーンは表情が豊かだから……顔つきが大人っぽくても幼く見えるんだよなぁ……」

オンバーン「そ、そんなあ」ｳﾙｳﾙ

ズルッグ「ほらまた」

オンバーン「はっ！しまった」

ドンファン「それがオンバーンの良い所ではあるんだけどね……」

オンバーン「ど、どうすれば」

ズルッグ「だいじょうぶ。大人っぽいポケモンのマネをすればいい！」

オンバーン「なるほど！そうだね…………ジュカインさん、とか？いつもキリッとしてるし」

ズルッグ「うん。落ち着いてるし、いいね」

ドンファン（失恋して技が出せなくなったことは黙っておこう）

オンバーン「よし！やってみるね！」


オンバーン「……！」ｷﾘｯ


ドンファン「わ、すごく大人っぽい！」

オンバーン「えっほんと？」ﾊﾟｯ

ドンファン「あっダメになった」

オンバーン「あっ」

ズルッグ「でも、いいかんじ。今日一日これで過ごしてみよう」

オンバーン「らじゃー！」

＊

ルチャブル「オンバーン、ちょっといいか」

オンバーン「どうしたの、ルチャ兄」ｷﾘｯ

ルチャブル「……？」

ルチャブル「オンバーン、お前……」

オンバーン（！ルチャ兄、気づいてくれた！？）

ルチャブル「そんな険しい顔をして……体調でも悪いのか？ケンジを呼んできてやるからお前はここで寝ていろ」

オンバーン「……へ？」

ルチャブル「ちゃんと暖かくしているんだぞ。このきのみも食べておけ」

オンバーン「あ、うん……ありがとう」

オンバーン「…………」

オンバーン「…………あれ？」

＊

オンバーン「……作戦その一、失敗です……」

ドンファン「過保護っぷりに磨きがかかっちゃったね……」

ズルッグ「どんまい！」

支援

支援

オンバーン「見た目作戦、いけると思ったんだけどなぁ……」

ドンファン「進化前からの影響力って大きいね」

ズルッグ「次はどうしよう？」

オンバーン「誰かに意見を聞いてみようか？例えば……」

＊

ルカリオ『……それで突然電話してきたのか？』

オンバーン「だって一番歳が近いし、同じ境遇じゃないかなって思ったんだ」

ズルッグ「ルカリオはどお？」

ルカリオ『……俺は特に兄とか弟とかは思ったことないな』

オンバーン「えっそうなの！？」

ルカリオ『こっちはマイペースな奴らが多いからな……リオルの頃は多少年下扱いされていたとは思うが』

ドンファン「ポケモンそれぞれだねぇ」

オンバーン「そっかぁ……」

ルカリオ『……』

ルカリオ『……俺は、見た目じゃなくて、内面の成長が大事だと思う』

オンバーン「……内面？」

ルカリオ『目標に近づけるよう自分を磨く、とか』

オンバーン「……！」

ルカリオ『…………あ、そろそろ出発みたいだ。月並みな意見で悪い』

オンバーン「ううん！すごく参考になったよ！ありがとう！」

ルカリオ『それならよかった。今度そっちに行った時はぜひ成果を見せてくれ』

オンバーン「もちろん！」

＊

オンバーン「自分磨きかぁ……うん、よし！」

ドンファン「どうするの？」

オンバーン「……おれの目標はね、ルチャ兄やアロ姉に並ぶくらい強くなること！……だから、」

ズルッグ「おやすいごよう！」

オンバーン「えっ？まだ何も……」

ドンファン「聞かなくたってわかるよ。強くなったところをファイアローとルチャブルに見せたいんでしょ？」

ズルッグ「特訓ならいつでもつきあうよ！」

オンバーン「……ありがとう！じゃあ早速……いくよ！」

ドンファン「どんとこーい！」

支援

支援

支援

支援

オンバーン「昨日はいっぱい特訓できたし、自分磨きは順調だね！」

オンバーン「という訳で、今日も作戦いってみよー！」

ズルッグ「おー！」

ドンファン「……」

オンバーン「あれ？ドンファンどうしたの？」

ドンファン「……いいお知らせと悪いお知らせがあります」

ズルッグ「！」

ドンファン「どっちから聞きたい？」

オンバーン「え、じゃあ、いいお知らせから……」

ドンファン「……特訓がすごく楽しかったので、今日もやりたいです！」

ズルッグ「……わかる！」

ドンファン「普段バトルしない相手と特訓するのって勉強になるんだよね」

ズルッグ「ドンファンのパワー、オンバーンのわざ、どっちもすごかった！」

オンバーン「おれもアロ姉やルチャ兄以外と特訓する機会ってあんまりないかも」

オンバーン「……へへ、みんなの役にも立てたならよかったな」

ズルッグ「それで、わるいニュースは？」

オンバーン「はっ忘れてた」

ドンファン「……うん……ヨルノズクに教えてもらったんだけど、昨日の特訓をルチャブル達が見ていたらしくて……」

ズルオン「！」


〜回想〜

ワルビアル『……おい、あれを見ろ！』

ルチャブル『！』

ヘラクロス『！』

ルチャブル『……オンバーン達が、自主練を……！？』

ヘラクロス『……あのさぁ、こう……年下のポケモン達がわちゃわちゃしてるのってさぁ……』

ルチャブル『みなまで言うな、ヘラクロス……』

ワルビアル『ああ……』

全員『……めっちゃ癒されるな……』

〜回想終〜


ズルッグ「まさか……」

オンバーン「お、お、弟力が、上がってしまった……！？」

ズルッグ「しかもおれたちまで……」

ドンファン「……今回も失敗だね……」

支援

支援

支援

支援

支援

支援

オンバーン「……態度で示すんじゃやっぱりだめだ……！こうなったら……！」

オンバーン「ルチャ兄、アロ姉呼びを……やめる！」

ズルッグ「！」

ドンファン「そ、それは……！」

オンバーン「『弟っぽさ』を手っ取り早く薄めるためには、もうこの方法しか……！」

ズルッグ「……中身の成長は、もういいの？」

オンバーン「自分磨きはもちろん続けるよ！でも、でも、その成長を認識してもらうためには……はっきり言わないとだめだって、わかっちゃったもん……」

ドンファン「う、まあ……否定はできない」

ズルッグ「でも……いいの？」

オンバーン「……うん。おれ、決めたよ！」

ドンファン「オンバーンが決めたなら何も言わないよ」

ズルッグ「がんばって！」

オンバーン「行ってきます！！」


ドンファン「……心配だから見に行こうか……」

ズルッグ「さんせーい」

＊

オンバーン（あ、ルチャ兄……じゃなくてルチャブルと、ファイ、アローが木の上で並んで、喋ってる！ちょうどよかった！）

オンバーン（このまま、自然に、近づいて……）ｽｰﾊｰ

オンバーン「ルチャブル、ファイアロー、こんにちは。こんな所で何してるの？」

ファイアロー「おー、オンバーンか……って、え？」

ルチャブル「今、なんと」

オンバーン「あのね、ファイアローとルチャブルがよければ特訓に付き合ってほしいんだ」

ルチャブル「」

ファイアロー「それはいいけどよ……」

オンバーン「最近ね、ドンファンやズルッグとも技の練習してたりするんだよ。だからルチャブルとファイアローにも見てほしくて……」

ルチャブル「」ﾌﾗﾘ

ファイアロー「おい、オンバーン、ちょっと待てって！オンバーン！」

ルチャブル「」ｽﾞﾙｯ


オンバーン「……え？」

オンバーン「わぁぁぁぁーー！！！ルチャ兄ーーーー！！！！」

ズルッグ「木の上で何かしゃべってるね……」ｺｿｺｿ

ドンファン「ここからじゃよく聞こえないな。もう少し木に近付いてみようか……」ｺｿｺｿ


ｶﾞｻｶﾞｻｶﾞｻｯ!!


ドンファン「？何の音……ってわ！？」


ルチャブル「」ﾋｭｰ


ズルッグ「ルチャブルが落ちてきた！？」

ドンファン「受け止めなきゃ……！」


ﾀﾞｯ ｶﾞｼｯ


ズルッグ「ないすきゃっち！」

ドンファン「ギリギリだったけどね……」

オンバーン「あ……ふたりとも……！どうしようどうしようおれのせいでルチャ兄が……！」

ドンファン「見た感じ意識失ってるだけだから平気だと思うけど……」

ズルッグ「なにがあったの？」

オンバーン「そ、それより早く博士に見てもらわないと！おれ、ルチャ兄連れてってくるから！」

ドンファン「……行っちゃった」

ファイアロー「ったく……なんだってんだオンバーンのヤツ」

ズルッグ「あ、ファイアロー」

ファイアロー「……なぁ、オンバーンの様子がおかしいのと、最近コソコソおまえらが何かやってんの、関係ある？」

ドンファン「……ば、ばれてた」

ファイアロー「舐めてもらっちゃあ困るな。弟のことならなんでもお見通しなんだぜ？」

ズルッグ「うーん、実はそのことでいろいろあって……」ｶｸｶｸｼｶｼﾞｶ

大好き

支援

自上げ保守
書きため中ですすみません

好き

支援

オンバーン「ケンジはすぐ目を覚ますよって言ってたけど、大丈夫かなぁ…」ｳﾛｳﾛ

オンバーン「目を覚ましても、どんな顔で会えばいいんだろう……」ｳﾛｳﾛ

オンバーン「はぁ……」

ファイアロー「……研究所の入口で何うろちょろしてんだ？」

オンバーン「……アロ姉！？」

ファイアロー「ん？呼び捨てするのはやめたのか？」

オンバーン「えっと、それは……っ」

ファイアロー「なんてな！冗談だよ。事情はドンファン達から聞いた」

オンバーン「！」

ファイアロー「オレとしては弟分の巣立ちは嬉しいもんだからさ、呼び捨てでも全然気にしねーよ？それに……」

オンバーン「？」

ファイアロー「弟卒業ってことは、これからはバトルも手加減抜きってことだろ？腕が鳴るぜ！……ってオレ腕ないけど」

オンバーン「……うん！こちらこそ、よろしくお願いします！アロ姉！」

ファイアロー「……ま、好きに呼べばいいよ」ﾀﾊﾊ

ファイアロー「……それにしても盗み聞きたぁ、森のチャンピオンが聞いてあきれるなぁ！」

オンバーン「えっ」

ルチャブル「なんだと！？」ﾊﾞｯ

ファイアロー「……ったく単純だなぁお前は 」

オンバーン「あ……」

ルチャブル「……」

ファイアロー「……ま、あとはふたりの問題だし、オレは行くぜ。じゃあな！」ﾊﾞｻｯ

オンバーン「……」

ルチャブル「……」

オンバーン「あ、あの」

ルチャブル「すまなかった……」

オンバーン「えっ？」

ルチャブル「お前が、俺を兄と呼びたくなかったなんて気付かず……俺は……」

ルチャブル「俺は、兄失格だな……」

オンバーン「……そんなことないッ！！」

ルチャブル「ッ！？」

オンバーン「おれがあなたを嫌いになるなんて、そんなことあるはずない！だって、おれを見つけてくれた、おれに居場所をくれた、大事なひとなんだから！」

オンバーン「だから、おれだって大事にしたいよ！守りたいのに！……でも、いつもおれは庇われてばっかり……！」

オンバーン「おれ、そんなに力不足？おれにも守らせてよ……！」

ルチャブル「オンバーン……」

オンバーン「」ｸﾞｽｸﾞｽ

ルチャブル「……すまなかったな」

オンバーン「！」

ルチャブル「俺は、既に背中を任せているつもりだった。お前が力不足だなんて、思ったこともない」

ルチャブル「……だが、お前にそれが伝わらなかったのなら、やはり……兄失格だな」

オンバーン「……ッ」

ルチャブル「……だから、もう一度、兄弟になろう」

オンバーン「！」

ルチャブル「俺はお前の背中を守る。そして俺も……お前に背中を預けたい」

オンバーン「……！」

ルチャブル「これからは兄弟として、切磋琢磨していきたいと……そう思っている」

ルチャブル「……勿論、お前が良ければ、だが」

オンバーン「……うん、うん……！」

ルチャブル「もう一度、俺を兄と呼んでくれるか」

オンバーン「うん……ルチャ兄……！これからもずっと、おれの兄ちゃんでいてね……！」

＊

ファイアロー「一件落着、か？」ｺｿｺｿ

ズルッグ「よかったね！」ｺｿｺｿ

ドンファン「あれ？オチは？」ｺｿｺｿ

ズルッグ「ないよ！！！」

〜完〜

さくっと終わらせるつもりだったのに無駄に長引いてしまい申し訳ない
SSをコンスタントに書ける人は本当にすごい
支援やコメントしてくれた方々ありがとうございました
サトシのポケモンはいいぞ

よければ好きなサトシのポケモンの組み合わせとか書いていってください
次またSS書くことあれば参考にするかもしれないです

乙です