【SS】割れ窓のホワイトフォレスト:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】割れ窓のホワイトフォレスト:ポケモンBBS

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【SS】割れ窓のホワイトフォレスト

 ▼ 1 耶無耶 15/09/25 23:05:30 ID:wCLf0w12 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
イッシュ地方には都会での生活に疲れた人々を癒すホワイトフォレストという森が存在する。
以前、この森はそんな人々で賑わっていた。しかし人の心は移ろいやすく元の都会での生活と収入を求め、彼らはいつの間にか去り、この森に生息していたポケモン達も姿を隠した。
現在、ホワイトフォレストにはポケモンセンターと一軒の民家だけが存在している。その民家には村長の老人が一人で暮らし、今日もまた日課を始める。
「今日も精が出ますね」勤め先であるフレンドリィショップの休憩時間に僕は村長の老人に声を掛ける。
「もうすぐ道路の舗装が終わるよ。そういや、君は明日でホウエンに帰っちゃうんだって?」
「ええ、任期ってやつです。村長さんが作った新しいホワイトフォレストが見れなくて残念です。それに、寂しい思いをさせてしまって申し訳なくて…。」
村長はいつもの明るい笑顔で僕に語りかける。「心配はいらないよ。来週から育て屋さんの夫婦と見習いのジャッジの女の子が引っ越してくることが決まったんだ。きっと賑やかになるさ。」村長は思い出したかのようにポケットから何かを取り出して僕に渡した。
「君にこれをあげよう。私の故郷に伝わる魔除けの光るお守りと安産祈願の丸いお守りだよ。君が所帯を構えるときのためにね。」
「はは、そうですか。大事にしますね。」僕は2つのお守りを村長から頂き翌日、イッシュを後にした。
村長には計画があった。それはホワイトフォレストを市民公園として再生する計画だ。まず、環状に道路を舗装してサイクリングやジョニングを楽しむ人々に解放し、手作りのベンチやテーブルを設置して休日の家族連れがそこでお弁当を食べてホワイトフォレストを憩いの場として利用してもらうことだ。
更にイッシュの中央以北には育て屋がないこともあって3番道路まで行けない人々には重宝される。自宅を売店に改装して手製の光るお守りと丸いお守りを売り、森の維持管理費に捻出する。
そして、新生したホワイトフォレストは静かに始まった。村長の計画通り朝晩にサイクリングやジョニングを楽しむ人々が集まり、休日ともなればピクニックに訪れた家族連れがお弁当やバドミントンを楽しむ健全な憩いの場所となった。そう、あのツイートが出るまでは。
 ▼ 2 耶無耶 15/09/25 23:06:21 ID:wCLf0w12 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「えっ、またポケモンのタマゴですか!」僕は育て屋の老人に問いかける。
「左様。どういう訳かお前さんのポケモンからはタマゴがよく見つかるんじゃ。
そして、色違いも生まれるというからもうわけがわからん。」育て屋のお爺さんは首をかしげる。
「そうですよね。僕にもよくわかりません。でも、このタマゴ、大切に育てようと思います。」そう言うと僕は育て屋さんを後にして夕方の117番道路を歩く。
シダケの家に帰る途中、もしや村長さんから貰ったお守りのせいなんじゃなかろうかとそんなことを考えているときボールの中のタマゴが孵った。
「また、色違いのポケモンだ…。いや、そんなことより、生まれてきてくれてありがとう!ヒノアラシ!」僕の顔には笑顔がほころび、ヒノアラシは不思議そうな顔で僕を見つめる。
「そうだ!写真撮ってツイッターに上げよう。色違いのヒノアラシが生まれました。
先月のデデンネに続いて二匹目です。イッシュでもらった丸いお守りと光るお守りのせいなのかな?送信っと。」家に帰り、デデンネと一緒に夕飯の準備に取り掛かろうとしたときに何気なくツイッターを開くと何件か返信が来ていた。「どうせ、ステマうぜえとかかな。」
しかしそれは違った。そのほとんどがお守りの入手先だった。とりあえず、僕は「ホワイトフォレストの村長さんから頂きました」とだけ答えた。
 ▼ 3 耶無耶 15/09/25 23:07:24 ID:wCLf0w12 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ここ最近のホワイトフォレストは妙に殺気立っている。というのも、売店で名物特産品として売られている2つのお守りにはポケモンのタマゴが見つかりやすくなる効果と色違いのポケモンに出会いやすくなるという噂が広まったからだ。人々はこぞって買い求め、それを巡り奪い合いの暴力沙汰も頻発し、ネットオークションで倍の額で取引されるようにもなった。
育て屋の存在もそれに拍車を掛けた。お守りのタマゴ発見の回転率上昇と色違いの効果をアテにした、俗に言う廃人トレーナー達が環状に舗装された道路を孵化ロードとして利用出来ることを発見したのだ。彼らのマナーは著しく悪く、ゴミを平気で捨てれば一般の利用者達とのトラブルも後を立たなかった。
ポケモンセンターも例外ではなかった。ポケモンの個体能力を測定するジャッジはその勤務内容から男性が一般的だが、珍しく若い女性のジャッジが研修としてホワイトフォレストに赴任した。ここならトレーナーも少なく経歴を積むのに最適だと判断されたのが理由だった。しかし、彼女のルックスの良さも相まって「可愛すぎる新人ジャッジ」とメディアで報道されると瞬く間に男性ファンが押しかけ、イベントも開催されるに至った。
「はーい!みんな元気ー?いつものあれいくよー!」可愛らしい衣装を着てステージに立つジャッジの彼女は声を上げる。
「例え火の中、水の中、草の中、森の中、土の中、雲の中ー?」彼女の声を追うように男性ファンたちも声を上げる「あの娘のスカートの中―ッ!」
その時だった。こともあろうか最前列の一人の男性ファンがスマートフォンで彼女のスカートの中を撮影していた。
彼女の悲鳴が森に響き渡った。
お守りを巡る暴力沙汰、廃人トレーナー達によるゴミを始めとするトラブルの数々、そしてジャッジイベントの騒ぎ。
村長の老人も最初は取り締まりに動いていたが、取り締まっても別の場所で別のトラブルが発生し、とうとう手に負えない状態になってしまった。
ポケモンセンターは撤退、一般客はライモンへ、育て屋夫婦はカロスに、ジャッジの女性は度重なる盗撮で精神異常を患いオカルトマニアとなった。最後に残った村長も覚悟を決め泣く泣く森を後にして豊穣の社へ移り住んだ。
 ▼ 4 耶無耶 15/09/25 23:08:20 ID:wCLf0w12 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
割れ窓理論をご存知だろうか。建物の割れた窓が放置され続けるとそれが管理されていない場所という事件や犯罪を誘発するシンボルになり、犯罪が犯罪を呼び最後にはその一帯がスラム街になるという理論だ。
人によっては「風が吹けば桶屋が儲かる」と同等の論理の飛躍だと言うかもしれないがそれがホワイトフォレストで起きている。
村長が最初の割れ窓である廃人トレーナーや良識のないファンに対して強く出れば良かっただけかもしれない。もしくは育て屋やジャッジを招き入れなければ良かったかもしれない。しかし、村長はそれが出来なかった。孤独が怖かった。人が去るのが怖かった。孤独な老人の心が割れ窓だった。
その後のホワイトフォレストの荒廃は止まらなかった。
ガラの悪い人間だけが集まると、堅気の道から外れた人間も集まる。彼らを客とする裏稼業の者たちも次々と集う。薬物、武器、暴力、売春…。
スラム街と化したホワイトフォレストはブラックフォレストと呼ばれるまでに至った。何度かの機動隊の介入もあったが失敗に終わってしまうほどに荒廃は深かった。
しかし、ある出来事がブラックフォレストに終止符を討った。それは、プラズマ団復活の噂だった。
 ▼ 5 耶無耶 15/09/25 23:09:07 ID:wCLf0w12 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼らが復活したらどうなるか。それを敏感に感じ取ったのはブラックフォレストの住人たちだった。間違いなく彼らは完全に公権力が及ばないこの森を制圧して拠点とするだろう。
警察等の公権力が及ばないこの無法地帯は格好の標的だ。簡単に手中に収めることができるからだ。それに住人たちもならず者とは言え、イッシュ制圧をあと少しで達成しようとしたプラズマ団の力に敵うわけがないし、この空白期間に以前よりも力を持ったかもしれない。生きることが常に念頭にある彼らは我先にと森を後にした。
 ▼ 6 耶無耶 15/09/25 23:10:05 ID:wCLf0w12 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
変わり果てたホワイトフォレストに村長と呼ばれた老人が彷徨っている。
土に還ることのないゴミの平原と抉られた土、傾いたバラック小屋、糞尿…。自分の不甲斐なさが、弱さが、森を変わり果てた姿にしてしまった。
泣き崩れる村長。悔しさ、怒り、悲しみ、自責、全てが溢れ出た。
どの位の時間が経っただろうか。村長の背後に身の丈3mはあろうかというやつれた大男が立っていた。村長は彼に気付くと驚きのあまり硬直した。
「人の欲に傷つけられた大地、あの時と同じか」大男は呟いて背負っていた背嚢から小さな苗の入った瓶を取り出し地面を掘り返して埋めて更に呟いた。
「永遠の命を持った花のポケモンがこの地を訪れるときのためにこの苗をどうか守ってほしい」
大男は村長に伝えるとゲートの向こうへと消えた。村長は立ち尽くすことしかできなかった。彼の足跡に虹色の光が揺らめくのを見ながら。
 ▼ 7 耶無耶 15/09/25 23:10:38 ID:wCLf0w12 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
僕はまたホワイトフォレストに戻ってきた。荒廃したホワイトフォレストの再出店とフレンドリイショップの緑化活動事業に僕は名乗り出たからだ。滞在経験があることが評価され抜擢されるとすぐにホワイトフォレストに向かい、村長と再会した。
「あんなことをしなければこんなことに…」俯く僕に村長は声をかける。「気にしなくていいさ。私の不甲斐なさが原因だ。それに君じゃなくてもほかの誰かがお守りの効果に気づいたかもしれないしね。」村長は語りかけると後ろから、声がした。
「私たちも手伝わせてください。」見るとたくさんの人々が集まっていた。
彼らは過去にホワイトフォレストを去った人々だった。彼らは森と村長を見捨てた責任を償いたいとのことだった。
森の再興はすぐに始まり、その間もあの苗は成長した。気が付けば苗は大樹へと成長し、その内部は樹洞になっていた。森に集った人々の中からその樹洞のフロアトレーナーと森の自警団を兼任する人も出てきた。
森が本来の姿に戻ってからどのくらいが経っただろうか。今日もまた優しい風がホワイトフォレストを吹き抜けて変わらない穏やかな一日が始まる。
 今日の違いを強いて言うならヒオウギから来たというポケモン図鑑を携えた若者が訪れたことぐらいか。

終わり
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