ポプラ「武者修行、行っといで」ビート「えっ？」

ビート「……突然何を言いますかポプラさん。ジムチャレンジ開催まで残り１ヶ月弱、残されたオフシーズンはチャンピオンカップに向けて最後の仕上げに取り掛かろうという時に」

ポプラ「オフシーズン中に武者修行して来いって言ってんのさ」

ビート「ですからオフシーズンは最後の総仕上げ……まあいいですよ。で、何処に行けと？」

ポプラ「そんなの自分で考えな」

ビート「は？」

ポプラ「いいから行きなァ！ジムチャレンジ開催まで戻って来るんじゃないよ！！」

ビート「あーもう！分かりましたよ！！」

ビート「はぁ……なんなんだあのバアさんは、まったく、行先すら言わずに武者修行して来いなどと」

ビート（もちろんやりますが。ここで引き返そうものならどうなる？あのバアさんのことだ『アタシの指示がないと何もできないのかい？』とか嫌味言うに決まってる。僕がポプラさんならそうする。冗談じゃない）

ビート（ええ、やってやりますとも。思えばこの１年間、ポプラさんの課題とジムリーダーの仕事ばかりだった。当然エリートである僕は自主トレも欠かさなかったが、あくまで『課題を補う為の自主トレ』）

ビート（１から１０まで考えてはいなかった……だからそれを考えろ。自分で考え己を高めよ、それがポプラさんの狙い。残念でしたねバアさん、この僕はアナタの考えなどお見通しなのですよ！）

ビート（さて、とはいえ、どうやって修行しますかね。定番と言えばワイルドエリアに籠って特訓することですが……）




ジムスタッフ「ポプラ様より言伝を預かっております。ビート様はオフシーズン中はワイルドエリア立ち入り禁止とのことです」

ビート（あのババア）

ビート「ま、まぁ？もちろん分かってましたよ、ええ。ポプラさんに限って『ワイルドエリアに篭る』などと定番を許すはずもないでしょう。僕は見抜いていましたが？」

ビート（アラベスクスタジアムジムリーダー、エリートであるこの僕の修行になる場所は……ワイルドエリアの他はない）

ビート（強いて言うならめぼしい選手と戦うくらい、が、このオフシーズン中は皆総仕上げに入っている。チャンピオンカップ最大の敵となる僕に手筋を見せる者など、余程の自信家かただの馬鹿だけ）

ビート（よって修行場所は……もう無い。ガラル地方では）

ビート「……他所に行くしかありませんか」

ビート（そうなると思ってましたよ。ええ、僕は最初からこの展開を見抜いていましたよ。エリートだからね）

ビート「はぁ……」

ビート（行先どうしようか……）

マサル「あれ、ビートじゃん。よっす」

ビート「……貴方ですか。チャンピオンカップも近いのに呑気ですね」

ビート（マサル。同期の１人で現在無職）

ビート（……そして、チャンピオンユウリに最も近いトレーナーの１人）

マサル「で、何してんのよお前。ワイルドエリア手前で突っ立ってよ。入らないの？」

ビート「君には関係ないよ。僕は急いでるんで、精々遊び回って寝首掻かれないといいですね」

マサル「忠告どうも、お礼にこれやる」

ビート「…………ん？」

マサル「飛行機のチケット。ジムチャ始まるまで暇だろ？着いて来いよ」

ビート「…………は？」

ビート（半ば強引に押し切られ、僕も同行する事となった）

ビート「た、確かに暇ですけど……しかし武者修行の為の敢えて暇を取ったのであって、別に本当に暇というわけではなくてですねぇ……！」

ビート（誰も聞いていないのに、何故僕が言い訳しないとならないのか）

ビート（腹立たしい男だ、ジムチャレンジの時からマサルくんは苦手なんですよ……！）

ビート「……いいですけど、飛行機予約する手間も省けた。何処ぞの地方で武者修行しますとも」

ビート（行先を確認しますか……）

行先だよ
>>9だよ

支援

フエンタウン

フキヨセ

ビート「ホウエン地方、フエンタウン」

ビート（まあ、悪くないかな。ホウエンならそこそこバトル発展してるだろうし、修行になる）

ビート（そうでなくとも環境が変われば、視野も拡がる……この１年で僕はそれを思い知った）

ビート（ホウエンに限らずガラル以外の地方では、ジムリーダーやチャンピオンの他に四天王も存在する……僕の実力が四天王にどこまで通じるのか……否）

ビート（ガラル地方のジムリーダー、エリートである僕が四天王“程度”に負けるなど許されない。であれば僕の目標はひとつ）

ビート（ジムチャレンジ開催まで１ヶ月。僕はホウエン地方のチャンピオンを倒す）

ビート「翌日出発ですか。急すぎません？僕が断ったらチケット無駄になってましたよ」

マサル「ビートなら来てくれるって思ってた」

ビート「そんなに僕が暇に見えましたか」

マサル「捻くれてんなぁ。楽しく旅行しようぜ」

ビート「……白々しい」

マサル「ん？」

ビート（一晩考え思い至った事がある）

ビート「何が楽しく旅行ですか。わざとらしいですよ」

ビート「そのチケット、ポプラさんに貰ったんでしょう？」

ビート（武者修行して来いと追い出され、偶然ホウエン行きのチケットを持ったマサルくんに出くわす……こんな偶然があるものか）

マサル「いや、違うぞ」

ビート「とぼけなくてもいいですよ。僕は全て見抜いています」

マサル「いや、マジで違うが。なんでポプラさんが俺に飛行機のチケットなんてくれると思ってんだよ。そんな仲良くないし、ぶっちゃけ半年以上会ってすらいないぞ」

ビート「……えっ？」

マサル「ん？」

ビート「じゃあ……本当に偶然……？」

マサル「……何が？」

ビート（偶然らしい）

ビート（嘘を付いているようには見えない。とても白々しい話だが、本当に偶然……）

ビート（い、いや、そうじゃない。ポプラさんのことだ。マサルくんがホウエン行きのチケットを入手したと何処からか聞き、僕が誘われると見透し、だからこそ僕に『武者修行して来い』と……）

ビート（いやいや、さすがのポプラさんもそこまで考えてるはずはない。マサルくんが僕を誘う確証もなかった。そもそも僕が自主的に１から１０まで考え自主トレさせる為の武者修行なのに、マサルくんを噛ませては本末転倒……だがそれこそ僕の勘違いという可能性も……）

マサル「おっ、来たか」

ビート「えっ？」

マサル「言ってないっけ。俺とビートの他に、もう１人旅行仲間いるんだわ」

ビート「……聞いてませんよ」

マサル「おーい！こっちこっち！」

もう１人ね
>>17

カブ

サイトウちゃん

サイトウ「只今到着しました。お待たせしてしまい申し訳ございません」

マサル「いいよいいよ。俺らも今来たとこ」

ビート「サイトウ選手……」

サイトウ「もう１人誘うとは聞いていましたが、ビート選手のことでしたか。これから１ヶ月、どうかよろしくお願い致しします」

ビート「意外ですね」

サイトウ「意外……？」

ビート「ストイックな貴女ならばチャンピオンカップに備えガラル地方で万全を期するものと思ってました。よもやマサルくんの旅行に付いて行こうとは」

ビート（武者修行、と言えば聞こえはいいが、これは大勝負の前にすることでも無い。環境の変化というものは心身共に刺激があるからだ。良くも悪くも）

ビート（多くのポケモンは環境の変化に極めて敏感。強い陽射しで活性化する者もいる。火力が増す者、素早さが上がる者もいれば、それだけでダメージを受ける。天候に応じて姿を変える者、特定の環境でのみ進化に至る者）

ビート（更にはリージョンフォーム、気候や地形、風土によって他の場所で見られない変化を起こしたポケモン達。ガラル地方にも幾つか存在し、僕のギャロップもその一種）

ビート（これらは一例に過ぎず、目に見える分、比較的分かりやすい変化といえる。実際に環境の変化がポケモンに与える刺激は未だ殆ど解明されていないと聞く……）

サイトウ「だからこそです」

ビート「！」

サイトウ「来る決戦に住み慣れたガラルで臨む。王道であり正攻法、多くの選手はそうするし、私も去年はそうしました」

ビート「ならば、何故」

サイトウ「それだけでは己に克てないからです」

ビート「勝つ……ガラルカラテでは『勝ちたい』という欲望すらも雑念では無かったのですか？」

サイトウ「『勝利』と『己克』は同一ではありません」

ビート「何が違うのか……」

マサル「いいじゃないか。そういうビートだって大事なオフシーズンにガラル地方出るんだろ」

マサル「だから来てくれたんだろ、お前も」

ビート「…………」

ビート（それもそうか……あえて外に出るのは、僕も同じこと）

マサル「早く受け付け行こうぜ。金属探知機もある。あれは絶対大丈夫だと思っても５人に１人は引っ掛かるんだ」

ビート「そうですね。僕はまず大丈夫ですけど、お二人とも、何度も引っ掛かって僕に恥かかせないでくださいよ」

サイトウ「ご心配には及びません」


マサル（その後、ビートが金属探知機に３回引っ掛かった）

支援

ビート「環境の変化──一言に表しても一概には言えませんよね」

マサル「『僕に恥かかせないでくださいよ』」

ビート「特に天候は特性による強化、弱体化。進化条件に当てはまる。非常に奥深いと言えますよ」

マサル「『……何してるんですかマサルくん。僕言いましたよね？ちゃんと財布は鞄に入れろと。言っても分からないのですか君は』」

サイトウ「これがエンジン饅頭……甘いですね」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

ビート「……キバナさんはよくやってると思いますよ。試合中に何度も天候を変えるファイトスタイル、それをものともしないポケモン達……対戦相手への心身への負担は計り知れない。今はトップジムリーダーの名を預けるに相応しい」

マサル「『はぁ……マサルくんのせいで無駄に時間がかかりました。金属探知機もスムーズに渡れないなんて……』」

ビート「……とはいえ僕と僕のポケモンには通じません。今年のチャンピオンカップを以て僕がトップジムリーダー、ひいてはガラル地方のチャンピオンになってみせますがね！」

マサル「『ホウエンでは僕の足を引っ張らないでくださいね……』『ピンポーン（裏声）』」

サイトウ「ふふっ」

ビート「喧しいんですよ！！」

ビート「人の！失敗が！そんなに嬉しいですか！？/////」

マサル「いやだってさぁ、あれだけ啖呵切って。ビートバラエティ向いてるよ」

ビート「冗談じゃない！誰が好き好んで道化を演じなければならないのですか！」

サイトウ「あれが『前振り』というものなのですね。勉強になります」

ビート「余計なお世話です！！」

マサル（意外と話が弾んだ）

支援

面白い組み合わせだな

良チョイスだ。今後に期待したい

支援

支援

しえん

バラエティにも貪欲なサイトウかわいい