▼  |  全表示55   | << 前100 | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】ハルカ「ポッキーゲームやりましょ!」

 ▼ 1 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 08:30:27 ID:3PSApGZk [1/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
※時間軸はAGバトフロ編のどこか
※がっつりサトシ×ハルカ。苦手な人はブラバ推奨




 ****

 バトルフロンティア完全制覇、そしてグランドフェスティバル出場を目指し、カントー地方の旅を続けるサトシ達。現在四人はとある街のポケモンセンターにて、疲労回復目的の休息を行っている。

 徒歩で各地を回っているサトシ達は勿論、連日の試合や特訓でポケモン達も相当な疲れが見えていた。そこで四人は旅を一時中断し、このセンターで一泊することにしたのだ。



サトシ「……暇だなぁ…」


 二段式ベッドが二つ入ったシェアルームにて、サトシは力なく呟く。
 ピカチュウを含めたサトシのポケモン達は今、ジョーイの元で回復を受けている。しかしピカチュウ達の疲労蓄積は予想以上に大きく、長時間を要していた。常日頃からバトルに夢中で特訓に性を出し、ポケモンと触れ合うサトシにとって、この待ち時間は気持ちの良いモノでは無い。

 早く元気に戻ってきてくれ
 そう願いながら、サトシは退屈なストレッチに性を出していた。
 ▼ 16 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 09:33:44 ID:3PSApGZk [2/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

ハルカ「さ、マサト行くわよ」
マサト「……うぅ…」

 ハルカが最初に指名した相手はマサトだった。理由は主に二つ。
 一つはやり慣れている相手である為、ウォーミングアップやサトシへの見本として丁度良かったこと。そしてもう一つ……ハルカが勝てる確信を持つ相手だったからだ。

 彼女は弟とポッキーゲームを行う際、絶対に折らない。それはマサトからの口づけを求めている故……という訳では勿論無く、"マサトは絶対に折る"と確信している故である。強引にやらされてる上、相手は実姉なのだから当然と言えば当然なのだが……。


 そしてその思惑通り、マサトは必ず先に折る。負ける。そして姉へ煽られる。そんなテンプレが過去何度も繰り返されてきたのだ。


マサト「(だから嫌いなんだよ、このゲーム…)」

 マサトは恨めしく溜息をつく。しかし、ここまで来てはもう引けなかった。


タケシ「それじゃ行くぞ、よーい……はじめ!」


 タケシの合図を皮切りに姉弟はゆっくりと、本当にゆっくりと、ポッキーを食べ始めた。
 ▼ 17 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 09:36:57 ID:3PSApGZk [3/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

サトシ「………」

タケシ「………」

ハルカ「………♪」

マサト「…っ…///」


 タケシの合図から数秒が経過した。両者共に膝をつき、見つめ合っている現状。ペースは遅いが、確実に二人の間は狭まっている。
 ハルカは余裕綽々の笑みを浮かべている。それに対し、マサトの顔は今にも大爆発しそうなほど赤くなっている。目も細めている。さながらソルロックのようだ。

サトシ「なぁタケシ、マサトの顔真っ赤だぞ。熱でもあるんじゃないか?」
タケシ「いいから黙って見とけ」

マサト「……////」
ハルカ「(……ふふっ…)」
 ▼ 18 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 09:52:10 ID:3PSApGZk [4/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ハルカがポッキーゲームを好む最大の理由。それは対面相手のリアクションだった。
 胸の鼓動を高ぶらせ、ジリジリと自身へ向かってくる異性を見ることは、お年頃のハルカにとって痛快な愉悦となったのである。無論それは、交流を積んだ親しい仲という前提があってのことだが。

 中でも弟が自身に見せる、羞恥心と背徳感に呑まれた赤面が彼女は大好きだった。
 普段、聡明なスマートボーイを気取っているマイブラザーの皮が剥がれ、丸裸になるその瞬間が、ギャップを肌で感じるその瞬間が。面白おかしく、何より可愛く、ハルカは大好きだったのだ。


 故にハルカは今、幸福を噛み締めていた……否。噛み進めていた。


タケシ「(ハルカのヤツ……折らないな)」


 そんな彼女を見つめ、タケシはニヤリと笑みを浮かべる。
 一方、顔がソルロックと化したマサトの心境は最悪だった。


マサト「(……クソッ…!なんでお姉ちゃんはいつもいっつも折らないだよ!? 僕からの口づけ求めてるの!?!? 馬鹿なの阿保なの!?そんなの出来るわけ無いじゃん……!!)」
 ▼ 19 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 09:55:26 ID:3PSApGZk [5/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 
 最悪な心境であるにもかかわらず、何故マサトは今なお折らないのか。何故このゲームに参加したのか。そもそも何故、ハルカのワガママに今まで付き合ってきたのか。無理やり断ることはできたはずだ。拒絶する機会などいくらでもあったというのに……。

 それには極めて単純かつ、確かな理由がある。


マサト「(……ほんと僕って…、お姉ちゃんのこと好きなんだな……)」


 マサトはハルカが大好きだった。
 普段散々軽口を叩いている相手だが、喧嘩も数多く重ねてきた相手だが、それでも彼の心の奥底では、常に彼女は"最高のお姉ちゃん"だったのである。

 故に断れず、故に簡単に折る事が出来ず、ゲーム自体は嫌いであるにもかかわらず、本心では"負けたくない"とマサトは思っていたのだ。


 しかし、ハルカが折る気の無いことをマサトは分かっている。
 今回もどうせ負ける、絶対に勝てないのだと察していた……その刹那。


マサト「(……!!)」


 マサトの脳内に電撃が走る。

マサト「(……いや、待てよ…。一つだけある……負けない方法が…)」
 ▼ 20 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:08:02 ID:3PSApGZk [6/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

 ……現在、姉弟の顔の距離はジリジリと縮まり、ついに互いの前髪が触れるほど接近している。そんな状況になっても尚、両者はポッキーを折っていなかった。


マサト「……////」

ハルカ「(緊張してるマサト面白いわ……どうせまたギリギリで折るんでしょ?お姉ちゃん知ってるかも…)」


 余裕の笑みを浮かべていたハルカにも流石に羞恥心が出てきたのか、頬は微かに高揚し、汗が滲み出ている。それでも口角は上がったままであった。


サトシ「お、おいタケシ、アイツら近すぎないか…?」

タケシ「……」

 サトシは人生で初めて見るゲームの情景に目を丸めている。
 タケシは声を出さず、静かに二人を見守っている。
 そしてマサトは……。

マサト「(クソッ…どうする…?どうすれば良いんだ!?)」
 ▼ 21 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:09:50 ID:3PSApGZk [7/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 マサトは今、僅か七年しか生きていない人生で五本指に入る葛藤に悩まされていた。"その行為"を行えば、初めて姉に勝つことができると考えたのだ。しかし、その行為は容易くない。


マサト「(……)」


 しかし余裕の笑みで自身を見下す姉は、彼にとって癪でしか無かった。大好きな姉を嫌いになりたくない。見返してやりたい、後悔させてやりたい。仲間が見ているこの状況で、一度で良いから打ち負かしてやりたい。そんな想いが溢れていた。

 
 マサトは悩み、悩み、悩み抜いた末……。


マサト「(……もう良いや。やってやろ…)」


 決断を下した。
 ▼ 22 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:12:33 ID:3PSApGZk [8/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハルカ「(……ちょ、ちょっとマサト…? 今回いくらなんでも粘り過ぎじゃない……? もう私のセーフティゾーンは超えてるかm…)」


 刹那。


マサト「……!////」
「……」
「…………」
ハルカ「……ッッ!?////」

 ハルカの口は、ポッキーではないモノを捉えた。マサトの口は、柔らかく鮮やかな膨らみに特攻を果たしていた。今、二人の間に存在したポッキーは消えている。即ち……二人は唇を交えていた。

 二人は姉弟でありながら、口づけを交わしてしまったのである。


サトシ「っ!?! おい!?」

 思わずサトシは声を上げる。無理もない。
 ▼ 23 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:18:13 ID:3PSApGZk [9/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハルカ「…っ…////」

マサト「…んっ!////」


 マサトは二秒ほど接物させた唇を離す。


ハルカ「……ま、まさと…?////」

マサト「……ハァ……ハァ……フンッ…、カップルでもないポッキーゲームで折る気の無い馬鹿っ……お姉ちゃんしかいないよ……っっ……お姉ちゃんの馬鹿ッ!!////」


 マサトは立ち上がり、姉を罵倒し……部屋を飛び出した。


サトシ「お、おいマサト! どこ行くんだよ!?」
タケシ「行くなサトシっ!!」

 サトシは追いかけようと立ち上がるが、それをタケシが静止する。


タケシ「……行くな。今は一人にさせてやれ…」
 ▼ 24 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:20:48 ID:3PSApGZk [10/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

 弟と口づけを交わしたハルカは放心状態に陥っていた。頬はアチャモの如く真っ赤に高揚し、ポッポが豆鉄砲を喰らったかのように、目を真ん丸に見開いている。これまた無理も無い。
 彼女は向こうが絶対に折ると確信していたのだから。マサトが向かってくるなど、想像の遥か彼方だったのだから。

ハルカ「……////」

タケシ「……気分はどうだ? ハルカ」


 そんな彼女にタケシが詰め寄る。


タケシ「あの様子から察するに……初めてだろ? マサトが折らなかったの。ゲーム上のルールでは痛み分け……だが、一本取られたな」

ハルカ「……///」
 ▼ 25 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:23:41 ID:3PSApGZk [11/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 今ハルカの脳内には、しっかりと敗北の屈辱が沁み込んでいた。意図的に折らない選択を選んだ報いを、後悔を、肌で感じ取っていた。長年敗れ続けた姉に対し、マサトは見事リベンジを果たしたのである。

 "血縁者への接物"という禁忌を破ることによって。


タケシ「口や態度ではあんなに乗り気じゃなかったのにな。ギリギリまで楽しんだ挙句、まさかキスまでするなんて……マサトはよっぽどハルカの事が好きなのさ。ハハッ」

ハルカ「……////」

タケシ「……弟を持つ身としては羨ましいよ」

ハルカ「……ふふっ…////」


 ハルカは思わず笑みを零す。


ハルカ「……なんか、いけない事のハズなのに…嬉しくなっちゃったかも…。マサトったら、私が思ってたよりずっとやり手じゃない…///」

タケシ「……弟の成長は、俺達が思うよりずっと早いからな」

ハルカ「もう今後、あの子を無理やり誘うのは止めにするわ……あーあ」


 ハルカは仰向けに倒れ、静かに呟いた。


ハルカ「……楽しかった。チョコと唇ご馳走様……マサト」
 ▼ 26 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:26:46 ID:3PSApGZk [12/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

タケシ「……それじゃ、気を取り直して次行くとするか」

ハルカ「サートシー、早くこっち来てよー」

 先程までのアクシデントが無かったかのように、切り替えた二人は新たなポッキーを取り出していた。ハルカを片手でポッキーを振りサトシを誘い、タケシは相も変わらずノリノリに進めている。


サトシ「…っておい!? マサトほったらかしで良いのかよ…」

ハルカ「どうせポケモン達の様子を見に行ったのよ。あの子、恥ずかしくなるとすぐ一人になりたがるんだから」

タケシ「それにポケモンセンターの外へ出たならジョーイさんから連絡が入る。なーに、お腹が空いたら戻って来るさ」

ハルカ「そうそっ、マサトもポッキー自体は大好きだしね。私達3人で続き楽しみましょ♪」

サトシ「……ったく…」
 ▼ 27 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:29:00 ID:3PSApGZk [13/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 弟が姉と口づけを交わすなど、並大抵の姉弟であれば絶縁になってもおかしくない事柄である。そんなことがあっても尚、ハルカはいつも通りの笑みを零し、マサトを理解している言動を発していた。

 そんな彼女にサトシはやや呆れつつ、微かな安心感を持ったのだった。


サトシ「……まぁ、本気で怒っては無さそうだったしいっか」

 サトシは立ち上がり、ハルカの隣へ向かう。


サトシ「(去っていったマサトの顔は……笑顔だったからな)」
 ▼ 29 ョロゾ@こうこうのしっぽ 22/11/11 10:31:15 ID:5kGk0p/k [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトハルかと思ったらまさかのハルマサ
 ▼ 30 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:32:07 ID:3PSApGZk [14/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

サトシ「……よっこらせっと」

 ペタンと女の子座りをしているハルカの正面にて、サトシは胡坐をかく。ほんのり日焼けした肌と色白の素肌。ガッシリした漢の体格と、繊細で女性的なボディライン。正反対な互いの衣服カラーも重なり、非常に対比的な雰囲気を醸し出している。

 そんな二人を見つめ、タケシは胸が高まっていた。


タケシ「(二人とも、俺を楽しませてくれ…。ポッキーゲームは見てる方も楽しめるのが強みなんだからな……)」

 
 タケシから見れば、姉弟のゲーム情景も充分刺激的ではあった。とはいえ、その過程のほとんどでハルカが余裕を持っていた。即ち、"互いにドキドキし合っている"超絶美味な過程を、彼は物足りなく感じていたのである。

 サトシにとって、初体験となるポッキーゲーム。勿論その相手となるハルカにとっても、サトシは初めての相手。余裕などあるはずが無い、互いの羞恥心が激突する情景が、面白い過程が、きっと見れる……。

 タケシはそのように予想していた。故に胸が高まっていたのだ。

 当然、そんな彼のやましい心境などサトシとハルカは知る由もない。
 ▼ 31 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:33:46 ID:3PSApGZk [15/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 一方、向かい合ったサトシとハルカは火花を散らしている。

サトシ「ハルカ、一応言っとくけど……ちゃんと折る気は持っとけよ」

ハルカ「分かってるわよ。勝つ前提なの辞めてくれる? そっちこそちゃんと折ってよね、口づけなんてしたらただじゃ置かないから」

サトシ「するわけねーだろ……んじゃ、やるぞ」

ハルカ「う、うん……」


 ゲーム参加に消極的なサトシであったが、勝負事に参加した以上、そして相手がハルカである以上、簡単に負けるつもりは微塵もない様子であった。彼にも先輩トレーナーとしてのプライドがあるのだ。そしてハルカも同様に、負けるつもりは毛頭ない。

 サトシとハルカ、負けず嫌いな者同士が初めて行うポッキーゲーム。

 それが今、幕を開ける。


タケシ「それじゃよーい……はじめ!」
 ▼ 32 ジョット@ネストボール 22/11/11 10:35:15 ID:xj6cGOp6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ええやん
 ▼ 33 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:35:34 ID:3PSApGZk [16/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

サトシ「……」
ハルカ「……」

 タケシの合図から数秒が経過した。両者共に膝をつき、見つめ合っている現状。ペースは遅いが、確実に二人の間は狭まっている。
 先のマサトとの対面時とは打って変わり、今ハルカの表情に余裕は存在しない。神妙な面構えでサトシの瞳を見据え、じんわりと汗が流れ出ている。それでも頬は高揚しておらず、その瞳は闘志にメラメラ燃え上がっていた。私は負けない、と。


ハルカ「(行けるところまで来てらっしゃい…!)」


 "結果なんてどうでも良い"など、よくも言ったものだ。さながらコンテスト二次審査のスパート時である。


サトシ「(………)」


 一方、サトシの表情に変化はない。頬の高揚も汗の噴出も起きず、タケシが期待していたリアクションとは程遠い希薄な反応であった。
 ▼ 34 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:36:55 ID:3PSApGZk [17/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
タケシ「(……まぁ仕方ない…か…)」


 やはりサトシに、異性への特異感情と言うモノは存在しないのだろう。常日頃からバトルに夢中で特訓に性を出す、只ひたすらに貪欲な、病的な程のバトルジャンキー。熱血鈍感ポケモン馬鹿。何よりも誰よりもポケモンを愛す、チャレンジトレーナーの鏡。それがサトシなのだ……。

 タケシはそんな落胆と唖然と、僅かな尊敬も混じった複雑な想いを胸に秘め、期待も捨て去り、二人の行く末を見守ることを決める。


 しかし数秒後、タケシは自身の認識が誤りであることに気付くのだった。
 ▼ 35 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:38:41 ID:3PSApGZk [18/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

サトシ「……っ…」

ハルカ「(……サトシ…?)」

タケシ「……ん?」


 タケシの合図からさらに数秒後、サトシの足元に数滴の雫が落ちていた。


タケシ「(!? サトシ、お前…) 」

 タケシはそれを見て衝撃を受ける。それはなんと……彼の冷や汗だった。季節は現在冬のはじめ。室内の温度も決して高くはない。にもかかわらず、サトシの額には汗が溢れ出ていたのである。

 そして、ハルカがさらに顔を凝視すると……


ハルカ「(……っ…!?)」
 ▼ 36 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:40:39 ID:3PSApGZk [19/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 彼の頬は、微かに染まっていた。薄く鮮やかに、しかし確実に、ハルカよりも早く。どれだけ美しい女性にも反応を示してこなかったサトシの顔が、熱血鈍感ポケモン馬鹿の頬が、ヘイガニの殻カラーに紅潮していたのである。

 当然、彼のそんな表情を彼女は初めて見た。


ハルカ「(…まさかサトシもこんな反応するなんて……いや期待はしてたけど……期待以上かも……ドキドキ…してるの…かしら……? え、誰に……私に……?)」


 サトシの表情につられたのか、ハルカの頬にもほんのりと紅潮が生まれる。


ハルカ「(……ちょっと暑くなってきたかも……なんなのよ……今まで私にそんな顔向けたこと無いじゃない……私は……。私は……サトシを…どう見てるのかしら……?)」
 ▼ 37 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:41:51 ID:3PSApGZk [20/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ハルカにとって、サトシは尊敬対象だった。いつも激しく、暖かく、背中を強く支えてくれる存在。自身がピンチの時は真っ先に駆け付けてくれる、時には情熱的なバトルで胸を熱くさせてくれる、そんな頼もしいマイヒーロー。かけがえのない兄貴分だった。

 しかし、彼女がサトシを恋愛対象と見たことなどは皆無だった。


サトシ「………////」

ハルカ「…っ…////」

タケシ「(……良いぞ…良いぞ二人とも…!)」


 ハルカは今、明確にサトシを異性として意識している。

 タケシは今、期待通りの情景に幸福を噛み締めていた。
 ▼ 38 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:42:46 ID:3PSApGZk [21/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシ「(……クソッ…なんなんだ…? これ……)」


 そしてサトシは今、己の未知の感情に動揺が抑えられずにいた。バトル中に感じる緊張感とは全く異なる、異様な緊張。心臓の鼓動の加速。それが今、彼を苦しめている。自身でも分からない情緒に冷静になれず、それでも時間は止まらず、ゆっくり向かってくる彼女の唇を直視できずにいる。


サトシ「(ハルカに対しての想い……なのか……? いや違う…)」


 サトシにとって、ハルカは妹のような存在だった。技の指示もポケモンゲットもできなかった初心者時代から、今に至るまでの成長をずっと見守り続けてきた、初めての後輩仲間。長所も短所も知り尽くした、一緒にいると元気を貰える、可愛い魅力的な女の子だった。だが……それだけである。

 サトシにとって、ハルカは友達、かけがえのない大切な仲間の一人であり、それ以上でも以下でもない。サトシはずっとそう思っていた。タケシが年上の女性へ向けるような、特異感情を抱いたことなど皆無だった。
 ▼ 39 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:44:22 ID:3PSApGZk [22/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシ「(……なのに……なんでだ…? なんなんだよ……どうしたんだよ俺は……病気にでもなったのか…!? 畜生っ……)」


 しかし先述したサトシからハルカへの認識は、全て"今までの"話である。サトシは今この瞬間、明確に、ハルカを異性として意識している。本人がどう否定しようとも、意識し切っている。彼女で頭が一杯になっている。そうでなければ、彼の現在の不安定な情緒は説明がつかないのだから。


ハルカ「……////」

サトシ「………////」

 そんなサトシの不安定な情緒は表情に現れ、確実にハルカへと伝染していた。故に今、意識したことのない男女二人が、初めて互いを意識し合っている。何故こんなことになってしまったのか。


 その原因は明白だった。
 ▼ 40 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:46:06 ID:3PSApGZk [23/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
タケシ「(……正直、侮っていた……このゲームにここまでの力があったとは…)」

 たとえ意識対象外の異性であったとしても、思わせぶりな言動をされれば、少なくとも"その瞬間は"意識せざるを得ない。それが未成熟な少年少女と言うモノなのだ。そしてポッキーゲームは、その”思わせぶりな言動”に充分値する。サトシとハルカはまさに、その体現者となっていた。


 異性間にキッカケを生み、新たな絆の形を育む。それこそがポッキーゲーム最大の可能性であり、醍醐味なのである。

 それを今、タケシは改めて痛感したのだった。
 ▼ 41 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:49:41 ID:3PSApGZk [24/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

 ……現在、二人の顔の距離はジリジリと縮まり、ついに互いの前髪が触れるほど接近している。そんな状況になっても尚、両者はポッキーを折っていなかった。

サトシ「…………////」

ハルカ「……っ…////」

 サトシとハルカ、共に頬は染め上がっている。ハルカの整っていた前髪は乱れ、サトシの額は汗で滲んでいる。もはや二人はポッキーの甘味など感じていない。
 ▼ 42 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:50:39 ID:3PSApGZk [25/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハルカ「(ちょっとヤバいかも……サトシ近すぎっ…どこまで粘るつもりなの…!?)」

 感じているのは確かな羞恥心と

サトシ「(……あぁもうッ!! お前いつ折るんだよ…!?)」

 肥大化する焦燥と

「「(早く先に折って……!!)」」

 断固たる双方のプライド。

 そして……異性への興奮のみであった。

サトシ「……////」

ハルカ「………////」


 そして刹那。


ハルカ「……っっ……ひゃッ!?/////」

サトシ「……ッッ……!/////」


 流星の如く、二人の唇は一瞬……重なるのだった。
 ▼ 43 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:54:16 ID:3PSApGZk [26/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

ハルカ「……ハァ……ハァ……/////」

サトシ「………/////」

 二人の間に存在したポッキーが消えてから数秒後。ハルカはサトシから身を離し、切らした息を必死で整えている。一方、サトシは感情が抜けたかのように天を仰ぎ、無気力状態となっていた。無論両者共に、頬は染まったままである。


タケシ「(……嘘…だろ……)」


 そして、本日二度目の接吻観測者となったタケシは今、自身の見た光景を疑い続けていた。


タケシ「(まさか……まさか2人の口づけを見れるなんて思わなかった……。こんなの予想できる訳無いだろ……俺は夢を見ていたのか…? いや夢じゃない……。一瞬、本当に一瞬だ…。僅かな、流れ星のようなその一瞬を……俺は確かに見た…。2人の唇が重なるのを……)」


 タケシが激しく動揺するのも無理はない。期待していた情景の遥か彼方の情景を、彼は見届けたのだから。
 ▼ 44 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:55:19 ID:3PSApGZk [27/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシ「………////」

ハルカ「……////」

タケシ「(……さて…どうしたものか……)」


 三人が座る室内は今、悪寒が走るほどの静寂に包まれていた。実に気まずい空気が流れている。起こった事が事なのだから仕方がない。こんな時マサトがいれば、間違いなくサトシとハルカを弄り、弄ぶのだろう。空気を明るくするのだろう。しかし現在、マサトは不在だった。
 ▼ 45 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:56:23 ID:3PSApGZk [28/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
タケシ「(……そもそも、なんでサトシは折らなかったんだ? なんでハルカは折らなかったんだ? 口づけをする羽目になると分かってたじゃないか……結果なんてどうでもいいかも、なんて言ってたじゃないか……まさか忘れていたとでも言うのか……? 二人とも馬鹿なのか……!?)」


 答えは否である。
 サトシとハルカは共に、ポッキーを折らず食べ続ければどうなるのか分かっていた。羞恥心と焦燥はそれ故に生まれていたのだから。しかし、では何故二人は折らなかったのか?


 答えは単純である。
 サトシとハルカは、無意識に求めていたのだ。相手が折るのをではなく、相手に口づける行為を。互いに、互いを大切な存在と認識しているにもかかわらず、普段は一切異性意識が芽生えることのない相手。そんな相手に対し、サトシとハルカはあの瞬間、心の奥底で、本能で、求め合っていたのだ。マサトが行ったような熱き接吻を。絆の証明を。故に、互いの体が反射的に、その刹那へと導いたのである。


 そうでなければ、説明がつかない。それはタケシも分かっていた。
 ▼ 46 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:57:27 ID:3PSApGZk [29/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
タケシ「(……いや、これ以上考えるのは止そう……あの二人は普段から仲が良い……。遊んでる最中に起きた事故だ。事故なんだ……そう考えよう…)」


 タケシは床に積まれたポッキーを一本取り出し、口に運ぶ。


タケシ「(……甘いな…)」

 そして二人へ言い放つ。

タケシ「あのー…お二人さん? 大丈夫だ、これは遊戯。遊びだから。ノーカンだノーカン、な?」


 二人は赤面のまま、静かに頷くのだった。
 ▼ 47 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:58:33 ID:3PSApGZk [30/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

ハルカ「(……なんで私は折らなかったのかしら…。まさかサトシにまで口づけされるなんて……あんな鈍感で、意地っ張りで頑固で、女の子の気持ちなんて全く分からないサトシに……もう…最悪かも……)」

 ハルカは想いを整理しつつ、元いた場所へゆっくり戻る。

ハルカ「(でも……楽しかったから良いわ…。普段味わえない緊張の堪能、これがポッキーゲームの目的だもの……ちゃんと果たせたから良し…!)」


 ハルカの高揚していた頬が今、正常値に戻る。


ハルカ「(それに…サトシの事は好きだから平気…。友達として、ね……)」

サトシ「……なぁ」

 そんな彼女に間髪入れず、サトシは優しく語りかけた。
 ▼ 48 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 10:59:36 ID:3PSApGZk [31/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハルカ「!? ……な、何…?////」

 彼女の頬が再度高揚する。

サトシ「(俺……ハルカがこれをやりたがってた理由、分かった気がする……。あんなピリピリの緊張感、胸の高まり……初めて味わったぜ…)」


 サトシは穏やかな笑みを浮かべ、やや照れ臭く呟いた。


サトシ「……楽しいな、ポッキーゲーム」

  
 その言葉に、ハルカは満面の笑みで頷くのだった。
 ▼ 49 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 11:00:59 ID:3PSApGZk [32/33] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ****

 ポッキーゲームを通し、新たな絆の芽生えを体感したサトシ達。
 彼らの旅は、まだまだ続く。


タケシ「さぁハルカ……今度は俺とも一勝負だ。勿論、俺も負けるつもりは無いぞ!」

ハルカ「う、うん!!」

サトシ「(……マサトに二箱とっとこ…)」


 続くったら、続く……。


〜Fin〜
 ▼ 50 ◆o3RYTFWRa6 22/11/11 11:03:02 ID:3PSApGZk [33/33] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

ハルカ「ポッキーゲームやりましょ!」

https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=1548511

……1年前に書いたSSのリメイクでした。地の文が増えて前より読み辛くなってたかもしれません。しかし自分は満足してます。書いてて楽しかったです。

ご閲覧してくれた方、ありがとうございました。
 ▼ 51 パー@フーディナイト 22/11/11 11:05:17 ID:5kGk0p/k [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!…して、マサトは?
 ▼ 52 ングラー@ジャポのみ 22/11/11 11:20:36 ID:xj6cGOp6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
描写が細かく内容がスッと入ってきて楽しめた

ただ…

マサトどうした?
 ▼ 53 ガサメハダー@ありふれたいし 22/11/11 11:53:00 ID:NBDU/UEc NGネーム登録 NGID登録 報告
酔ってるねぇ
 ▼ 54 ミラミ@ながながこやし 22/11/11 12:37:15 ID:zK6sLoxg NGネーム登録 NGID登録 報告
素晴らしい…
 ▼ 55 レッグル@おとなしいミント 22/11/11 14:25:18 ID:7PHw9Q42 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>28
このページは検索エンジン向けページです。
閲覧&書き込みは下URLよりお願いします。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1802592
(ブックマークはこちらのページをお願いします)
  ▲  |  全表示55   | << 前100 | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!

(消えた画像の復旧依頼は、お問い合わせからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼