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SS

ケンゴ「言えっ!どこだ!どこにいるんだっ!」

 ▼ 1 ドキング@マンキーのけ 24/02/04 15:41:10 ID:PMV.4m/. [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
男の右手のひらを無理矢理机に叩きつけ、その小指に拳銃を突き付けた。

「さあ、さあなぁ!今頃は…いひひひ」

ケンゴ「貴様っ!」

容赦なく引き金を引くと、男の小指が飛ぶ

「ぎゃはははははは!どこだろうなぁ!!」

今度は薬指に銃口を押し付け、さらにそれを弾き飛ばした

そんなことを繰り返し、10本の手指を部屋中にまき散らしても男はただ痛みに快感を得ているように大声で笑い叫ぶだけ。結局、最後に頭を打ち抜くまで、居場所を吐くことはなかった…
 ▼ 2 スイジュナイパー@かえんだま 24/02/04 15:42:40 ID:PMV.4m/. [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
数か月前…

ヒカリ「今日はお手柄だったみたいね」

明かりの消えた部屋の中、ヒカリが小さく呟いた

ケンゴ「ガーディがうまくやってくれただけさ」

照れ隠しするように、ヒカリに背を向ける

ヒカリ「謙遜しないの」

その背中にヒカリがそっと手を当て、頬を寄せる。彼女の温かさが伝わってくる

ヒカリ「ねぇ、ケンゴ」

ケンゴ「ん?」

ヒカリ「…先に言っとくね。私今度、転勤になるかもしれないから」

ケンゴ「え?」

驚きのあまり毛布を剥いで振り返ったケンゴの唇を、ヒカリが塞いだ

ケンゴ「ぇ?」

ヒカリがそっと唇を離す

ヒカリ「だから、今日は…お祝いしようか、お互いに」
 ▼ 3 イナン@サーナイトナイト 24/02/04 15:43:24 ID:PMV.4m/. [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
翌朝

『コトブキシティ郊外でポケモン同士による乱闘とみられる騒ぎが起きていると通報あり。現場近くを哨戒中の者は急行せよ』

ケンゴ「こちらK28、了解!」

走行させていたバイクの警察用無線から今日一つ目の仕事が発信され、ちょうど近辺をパトロール中だったケンゴがそれに答えた

ケンゴ「行くぞ、ガーディ」

現場方向へハンドルを切りながら、サイドカーに乗るガーディに呼びかける。職務上の相棒である。ガーディが「了解」と言わんばかりに吠えるのを確認すると、

ケンゴとヒカリは現在、警察に所属している。通称ジュンサーと呼ばれる女性警官が現場での主な任務を果たすものだが、近年の性別に関する社会の認識変化に順応して、男性警官の数も徐々に増え、ジュンサーという単語自体が死語となりつつあった

ケンゴが警官になろうと思ったのは、やはりヒカリに起因した。

ヒカリ『やっぱりさ、平穏なのが一番よ』

それぞれの旅を終え故郷に帰った時、ヒカリが言ったのはそんな言葉だった。

ヒカリ『平穏だからポケモンバトルができるし、平穏だからコンテストにだって出られる』

かつてのギンガ団による事件、ポケモンハンターとの闘い、旅の中でいくつもの苦難を乗り越えてきたヒカリ。ケンゴはその全てを知っているわけではないにしろ、とても強い意志があることをヒカリに感じた

ヒカリ『だからって、ケンゴまで警察に入ることないじゃない?』

その数年後、ヒカリに一年遅れて警察に就職したケンゴにヒカリは言ったものだった

ただ、一緒にいたかったから…その時のケンゴにはそれだけだった、それだけで良かった

ポケモンのことには詳しくとも、一般教養やらの勉学はからっきしのケンゴだった為、年に一度しかない採用試験に二人一緒に合格することは叶わなかったけれど
 ▼ 4 ミディグダ@ポイントアップ 24/02/04 16:09:58 ID:PMV.4m/. [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
現場は郊外にある小さな公園だった。到着すると、確かに野生ポケモン数匹同士が争っている

ケンゴ「ガーディ、とりあえず片方を抑えよう」

ガーディが頷くのを確認し、技の指示を出す。状況を見るに、近辺を縄張りとしているポケモン達に、どこかからの流れ者のポケモン達がくってかかっているようだった

片方のポケモン達を抑えている間に、応援の男性警官も到着し、同じく相棒のガーディがもう片方の抑え込みに入る

数分の攻防の後、事態は沈静化した。近辺を縄張りとしていたポケモン達は自分達のねぐらに戻り、流れ者のポケモン達はひとまずポケモンセンターへ搬送された

ケンゴの仕事は、大概いつもこんなものだった。大きな事件があるわけでもなく、ただ小さな騒ぎを毎日少しずつ解決していく。それだけこの町の治安が良いのだということもあるし、ケンゴもそんな毎日に満足していた

応援の警官に別れを告げ再びパトロールに戻り、しばらくバイクを走らせていると、警察無線が再び鳴った

『ケ…ゴ…ん…ね?』

しかし、平時とは違い、強いノイズ混じりで聴きとりづらい。ケンゴは音に集中しようといったんバイクを路肩に止めた

『ケンゴクんダね?』

無線機が不良を起こしているのかと思いながらも耳をそばだてて聴いてみると、若干の推測は入るが、途切れ途切れの言葉を頭の中で補完できそうだった

『このム線ハ君へのプライベートモードで発信していル』

自分のみ?なんとなく聞き覚えのある声、だが誰かまでははっきりとは分からない

『今カらイう場所に至キュウ急行して欲しイ。場ショは…』

そしてその声の主を思い出した時、無線は既に切れていた
 ▼ 5 ンシカイオーガ@うつしかがみ 24/02/04 16:22:23 ID:PMV.4m/. [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
言われた場所に到着すると、そこは昔に廃棄された研究施設だった

ケンゴ「確かナナカマド博士が昔使っていたっていうとこだよな」

ナナカマド博士がまだ若かった頃、研究者として駆け出しだった時代に入職していたという研究施設。今は売地となっているが、施設自体はそのまま残されていた

再びノイズ混じりの無線が鳴る

『ヨく来テくれた、なカへ入ってくレたまエ』

ケンゴ「本当に博士なんですか?」

試しに呼びかけてみる

『ナかへ入ってくレれバわかる』

応援を呼んだ方が良いのではないか?とも思ったが、その手段としての無線はこのプライベート通信に乗っ取られ操作がきかなかった

ケンゴ「仕方ない、よく注意して進もう」

相棒のガーディへ言い、二人は研究施設内へと踏み入った
 ▼ 6 ンフィア@ヤミラミナイト 24/02/04 16:42:25 ID:PMV.4m/. [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
同じ頃

ヒカリ「やっぱり、行かなきゃダメですかねぇ〜?」

上目遣いで、何度目ともわからない上司への転勤の取り下げを懇願する部下を見て、女上司は何度目ともわからないため息をついた

「これは決定したことなの。そんなに長くはかからないはずだから、行ってきなさい」

ヒカリ「でもですねぇ〜」

転勤先はオーレ地方。上司曰くやや大きな事件が起きたらしく、その事後処理で人員が不足しているとかで期間限定的に転勤ということだった

「何度も言うがこれは既に上が決めたことなの。他にもうちの部署から何人か行くんだから、一人だけ例外を出すわけにはいかないわよ」

ヒカリ「何人か行くんだったら、私一人行かなくても…」

左右の人差し指をこんこんと付け合わせながら小さく言うと、女上司がキッと目を剝いたので、ヒカリは観念したように後ずさりしながら自分のデスクに戻った

ノゾミ「またダメだったって?」

ヒカリ「あーあ、どうすれば丸め込めるのかなぁあの人」

ノゾミ「気持ちはわかるけど、今回はもうそのへんにしときなよ」

ヒカリ「ノゾミのいじわる」

同じ年に警察へ入ったノゾミに舌を出してあっかんべーをする

ヒカリ「だいたいあの人さぁ〜」

ノゾミ「はいはいおしゃべりはそこまで。早いとこ今日の分の仕事片付けて帰ろうよ。愚痴なら今日はゆっくり聞いてあげられるからさ」

ヒカリ「私今月ちょ〜っとだけピンチなのよねぇ」

ノゾミ「今日くらいは奢ってあげる」

ヒカリ「やったー!よぉしそれじゃあちゃちゃっと片付けちゃって、ちゃちゃっと飲みに行きましょう〜!」

ノゾミ「あんたの切り替えの早さを見習いもんだよ」
 ▼ 7 ェークル@ゾウドウのさび 24/02/04 16:57:55 ID:PMV.4m/. [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
その夜

ヒカリ「だ〜か〜ら〜、ち〜が〜い〜ま〜す〜」

ノゾミ「はいはい、そういうことにしといてあげるから」

次の店をどこにしようかと、二人は街中を歩いていた

ヒカリ「だいたいケンゴはさぁ〜」

ノゾミ「おっと。ねぇヒカリ、こっちに静かに飲める店があるんだけど、行ってみない?」

ノゾミが表通りから横道にそれた街灯の少ない道を指した

ヒカリ「へぇ、そなんだ」

ノゾミ「いわゆる“隠れ家的”な店ってやつ」

ヒカリ「へぇ、ノゾミ詳しいのね」

ノゾミ「先輩に一度連れてってもらったことがあってさ。凄く良いとこだったよ」

ヒカリ「うん、行く行く!」

二人はそのままその横道に入っていった。数分程歩いた所で居酒屋らしき看板が見えてきた

ヒカリ「確かに、なんか雰囲気良さそう」

ノゾミ「でしょ?さ、入ろっ…」

その時、何かが二人の背後に降り立つ気配がした。ハッとして振り返ったが、遅かった

ヒカリ「ノゾミ!!?」
 ▼ 8 ーケン@ポケモンのおとしもの 24/02/04 17:30:00 ID:PMV.4m/. [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
降り立った黒い何か、店の明かりに仄かに照らし出されてはいるものの、やはりその姿は黒く、はっきりと何者なのか認識できない。その何かの腕が、振り返りざまのノゾミの肩を裂き、赤い血が空中に弧を描いて飛び散った

ノゾミ「くっ…」

ヒカリ「しっかりしてノゾミッ!」

ノゾミ「わ、私は大丈夫…。それより、逃げるよっ!」

ノゾミは言い終わらないうちにヒカリの手を取り走り出す。が、肩の痛みで上手く走れず、ヒカリが代わりにノゾミの手を引き先導して走った。走りながらヒカリはポケッチで警察への通報ダイヤルをまわす。一度目のコールで繋がってくれた

ヒカリ「もしもし、こちらコトブキ署のヒカッきゃっ!!」

追ってきていた黒い何かはあっという間にヒカリ達に追いつき、今度はヒカリの肩を裂こうとしていた。間一髪のところでそれを避けた拍子に、二人は路肩の芝生に転倒してしまう

『もしもし!?どうしましたか!?』

転倒した拍子に後方に取り落としたポケッチの向こうで、警官が呼びかけてくる。しかし、黒い何かがまるで気づかぬ様子でそれを踏み潰しながらヒカリ達にゆっくりと近づいていくる。こんな時自分のポケモンがいればとヒカリは歯噛みする。規則上、職場には自分のポケモンを持ち込んではならず、訓練された警察ポケモンのみで業務にあたることになっている

ヒカリ(どうすれば…)

その瞬間、路肩に駐車されていた自動車が、突如として爆発した

ヒカリ「え…」

ただでさえ早鐘していた心臓がその爆音にさらに追い打ちをかけられる。黒い何かも足を止め、そちらに向き直った。バキッ、バキッと炎の中から破壊された車の残骸を踏みしめこちらに何かが近づいてくる音がする

ノゾミ「ぽ、ポケモン…?」

燃え上がる炎に照らされて、ヒカリはその姿をはっきりと認識できた

ヒカリ「ゴウカ…ザル?」
 ▼ 9 ガタブンネ@ソルガレオのおやつ 24/02/04 19:29:01 ID:IPuAjt.U NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
このらSSが面白いかどうかは置いといて、お前が龍が如く8やってるのはわかった
 ▼ 10 ニリッチ@アッキのみ 24/02/05 11:22:46 ID:0rrMRYqw [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それはほんの一瞬のことだった。

現れたゴウカザルが咆哮を上げると素早く黒い何かに飛びつき、そのまま自身が今現れた炎上する自動車へと放り投げた。炎に包まれた黒い何かが奇妙な悲鳴を上げる、瓦礫の間に挟まったらしく身動きが取れず蠢いている。

炎の照り返しによって、ヒカリはその黒い何かがポケモンであることをようやく認識できた。だが、通常知られているものとはどこか様子がおかしかった。目が赤く光り、身体の表面は原色とは異なり真っ黒なのだ。

ゴウカザルが再び咆哮を上げると、全身に真っ赤な炎を発生させる。炎の大玉となり、炎上する自動車目掛けて突貫した。燃え上がる黒いポケモンと激突する

ノゾミ「まずいよヒカリ!エンジンに…」

これから起こることを予測したノゾミがヒカリの手を引き立ち上がろうとしたが、遅かった。激しさを増した炎がついにエンジンに引火し、大爆発を起こした。強烈な爆風が周囲を襲う。周辺の建物のガラスは割れ、二人は芝生の上を何メートルも吹き飛ばされた

ノゾミ「うぅ…、大丈夫か?」

ヒカリ「え…えぇ、なんとか…」

吹き飛ばされた衝撃で身体のあちこちを打撲したらしく、うまく立ち上がれずにいた。改めて爆心地へ目を向けると、燃え上がる炎の中、再び足音が聞こえる。ゴウカザルが炎の化身のように、その中から現れた。

「………」

ゴウカザルと視線が合い、ヒカリは硬直した。次は自分なのだろうか?

「……」

数秒見つめ合うと、ゴウカザルはふっとどこかを振り返り、そちらへ向かって飛び去って行った

ノゾミ「助けて…くれた…?」

ヒカリ「………」

呆然とする二人の耳に、こちらへ急行してくる緊急車両のサイレンが届いたのは、それが現場へ到着してからだった
 ▼ 11 ドロクツキ@マルチアップ 24/02/05 11:46:38 ID:0rrMRYqw [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目が覚めた時、ケンゴは自宅のソファに横になっていた。ポケッチで時計を確認すると、既に深夜だった。

仕事を定時に終え帰宅する途中、『今日はノゾミと飲んでくるから遅くなるよ』というヒカリからのメールを確認した。今日の食事当番はヒカリなのにすっぽかしやがってと内心悪態をつきつつ、コンビニで適当に弁当を買って帰宅すると、それをちまちま食べ、風呂に入り、ヒカリが帰ってくるのを待っていようかとぼーっとテレビを見ていたら、いつの間にか眠っていたようだ

ケンゴ「それにしても…」

ケンゴは帰宅途中からずっと、『今日起きたこと』が気になっていた。いつも通り起床してヒカリと朝食を食べ、出勤し、いつも通りパトロールして、いくつかの揉め事を片付けて…。でも、どこか断片的に記憶が抜け落ちているような気がした。それがどこなのかは、思い出せない。その時、

ヒカリ「た…ただいまぁ…」

玄関が閉まる音と共に、ヒカリの憔悴しきった声が聞こえた

ヒカリ「あ、ケンゴ…起きてたんだ…」

声同様、表情も、それどころか全身が憔悴しきったヒカリがリビングに姿を見せた

ケンゴ「どうしたんだよ、服までそんなボロボロで?」

へへっと小さく微笑むとそのまま床にへたり込んだヒカリを見て、ケンゴは慌てて駆け寄り、ひとまず自分が今までいたソファに横にさせた

ヒカリ「ちょっと…ね?」
 ▼ 12 ブトロス@シンクロマシン 24/02/05 13:44:36 ID:0rrMRYqw [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌朝

昨夜の事件について、コトブキ署内でその概要通達が発信された

『通常とは異なる細胞組成を持つポケモンが出現し、突如当署所属警官へ暴行。しかし、野生とみられるゴウカザルがこれを制圧・焼死させた』

端末画面に表示された通達に目を通しつつ、昨日ヒカリから聞いたことと相違ないことをケンゴは確認した。

『なお、検出されたこの異常細胞組成は、過去オーレ地方にて確認された「ダークポケモン」のそれと非常に酷似したものと鑑識は見解している』

ケンゴ「ダークポケモンか…」

『当時のオーレ地方においては、特殊性能のモンスターボールを使用し捕獲することである程度その暴走を抑え、事件を終息へと導いたと記録されている。仮に他のダークポケモンがコトブキ・あるいはシンオウ地方に潜んでいる危険性を考慮し、現在オーレ地方支部とのリモートによる合同捜査本部を立ち上げている。署員は平時・緊急時を問わずこのダークポケモンの出現に厳重に注意されたし』

ケンゴ(そういえばヒカリの今度の転勤先もオーレ地方って言ってたよな…)

ヒカリの場合、今回の事件とは違う要件での期間限定転勤だが、言い知れぬ不安をケンゴは感じた
 ▼ 13 ボツボ@ニビあられ 24/02/05 14:24:02 ID:0rrMRYqw [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パトロールで巡回する場所はシフト制で、今日はハクタイシティ方面までバイクを走らせることになっていた。テンガン山を抜けもう少しでハクタイシティというところで、まるでケンゴの到着を見計らっていたかのように警察無線が鳴る

『ハクタイシティ中央広場付近でギンガ団残党と名乗る暴徒が発生中。周囲を哨戒中の者は急行せよ』

ギンガ団が解体されもう何年にもなるが、未だにその残党を名乗る者は後を絶たない。だがそれは、当時実際に所属していたものが地下へ潜り、しょうもない計画を立てては街で暴徒と化すか、“ギンガ団”という名を借りて目立ちたいだけのチンピラの類かのいずれかでしかなく、警察も左程手を煩わせているわけではない。ケンゴも、またいつものことだとため息をつきつつ、バイクの速度を上げた

ハクタイシティ広場に到着すると、二人組の男達が騒いでいた。片方はケンゴの二倍はありそうかという大きさの男で、広場のベンチやオブジェを力任せに破壊しまくっている。もう片方は細身で相方よりははるかに小さく、手に持ったムチで市民のポケモンを殴打しながら何かふんぞり返った戯れ言をほざいている

ケンゴ「止まれ!警察だ!」

ケンゴが警棒を構え彼らの前に躍り出る。相棒のガーディも彼らに激しく吠え威嚇した

「あぁ?なんだてめぇはぁ?」

「俺達“ギンガ団”に逆らっていいと思ってんのかよ?」

今回の場合は、どうやらただの目立ちたがり屋のチンピラのようだ

ケンゴ「聞こえなかったのか?今すぐその破壊活動を停止しろ。ポケモンも解放するんだ!」

「っるせぇんだよ!!」

細身の方がムチをケンゴに向けて振るう。相棒を守ろうとガーディがケンゴの前に飛び出しその殴打を受ける

ケンゴ「大丈夫かガーディ!?」

着地し、大丈夫と言うようにこちらを振り返りガーディが鳴いた

「よそ見してる場合かよっ!」

その隙をついてケンゴの後ろに回り込んでいたもう片方の大男が、ケンゴの頭よりはるかに大きな拳をケンゴ目掛けて振り下ろそうとしていた。咄嗟に警棒でガードするが、まるで小枝でも折るように拳が警棒を破砕し、ケンゴの頭部を殴打した

「大したことねぇなぁ〜警察さんよぉ〜」

衝撃で大きく吹き飛ばされたケンゴに、大男がのしのしと迫り、さらに拳を振り上げ殴打しようとする

背後でガーディのうめき声が聞こえた。細身の男に果敢に立ち向かっていたが、どうやら男のムチには電流を発する機能があるらしく、殴打された際にまともにそれを食らい倒れ伏してしまっていた

ケンゴ(ガーディ!!)

ただのチンピラだと甘く見ていた…自身の油断への後悔に歯噛みしながら、声にならない声が心の中で叫んだ。目の前では大男の拳が迫っている。

その時、ケンゴの中で何かが燃え上がる感覚がほとばしった
 ▼ 14 ガハッサム@かわらずのいし 24/02/05 14:52:06 ID:0rrMRYqw [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
燃え上がる感覚はケンゴの心を激しく、しかし冷静に燃やした

大男の拳を右腕で受け止める。受け止めた瞬間、その腕は鋼鉄のように固い筋肉へと変化した

「!?」

驚く大男の隙を見逃さず、今度は左腕で大男の腹部目掛けて拳を突き出す。ちょうどド真ん中にヒットする瞬間に、右腕と同じ筋肉の塊へと変化した

「なっ…!なんだてめぇ!」

大男がケンゴの拳に吹っ飛ばされたのに気づいた細身が、慌ててケンゴへムチを振るってくる。ケンゴにはその軌道がはっきりと見えた。屈みこんで軌道を避け、立ち上がり越しに右足で回し蹴りを繰り出す。それが細身の足をすくい上げる瞬間、やはり腕と同じく、筋肉の塊へと変化する

「ひっ…!」

ひっくり返った細身の顔目掛け、今度は左足を振り下ろす。踵が顔面を殴打する瞬間、左足も変化する

「てめぇぇぇぇぇぇ!!」

復活した大男が、今度はケンゴを取り押さえようと両手を広げながらその巨体を突進させてきた。ケンゴはわざとそれに捕まってやった

「さぁ!!!おあそびは終わりだぁ!」

ドヤ顔の大男がケンゴをホールドした腕に全力を込め、締め上げようとする。が、ケンゴは何の反応も示さず、じっと大男を見つめる

ケンゴ「……燃えろ」

ケンゴの言葉の意味を理解する前に、大男の身体は炎に包まれた

「あああああああああああ!!!!」

ケンゴから離れ、自分を覆う炎を消そうと大男は地面をのたうち回る

「お…おまえは一体…」

その横で腰を抜かした細身がケンゴへがくがくと指を向ける

ケンゴ「…警官だよ」

しかしその姿は、灼熱の炎を全身にまとった獣だった
 ▼ 15 ホミル@ニビあられ 24/02/06 08:24:50 ID:Vi8kDuyU [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ケンゴは元の姿へと戻り、失禁でズボンを濡らした男達をそのままハクタイシティの拘置所へぶち込むと、再びバイクを走らせた。一旦ガーディの回復の為にポケモンセンターへ向かう

さっきの戦いの中、ケンゴは昨日起きたことを少し思い出していた、ハンドルを切りながらその続きを思い出そうとする

『君は適性者として選ばれた』

『これは、君にしか託すことができないことなのだ。現段階では』

あの研究施設で、ケンゴはそう言われた

だが、まだ断片的に思い出せるだけだった。もう一度あの研究施設へ行き、確かめる必要があると思う

……

終業後、昨日訪れた研究施設に再び足を踏み入れた

エントランスは一面ガラス張りの吹き抜けになっており、差し込む夕日が埃まみれの施設内を赤く照らし出している。その中央に、昨日自分がつけたであろう足跡もはっきりと認識できた。その足跡に従って奥へ進む。進むたび、自分の革靴の音がこつこつと施設内にこだまする。エントランス奥に見える一本道の通路に入り、その最奥のドアの前で立ち止まる

「入ってきたまえ」

中から声がした。昨日聞いた声と同じ声

ケンゴは小さく息を吞んでからドアを開く。小さな研究室のような室内、その奥の壁際に置かれたデスクに小さなデスクライトが一つあるだけで室内は暗かった。そして、デスクには男が一人座っている

「実験は成功したようだな」

椅子をぐるりと回転させながら男の身体がこちらへ向きを変える

ケンゴ「博士…」

昨日聞いた聞き覚えのあるノイズ混じりの無線の声、記憶の中で薄っすらとしか思い出せなかった声、そしてケンゴの目の前にいるその男も、やはりナナカマド博士だった

ケンゴ「実験って…どういうことですか…?」

ナナカマド「君の獣化実験だ」

ケンゴは絶句した
 ▼ 16 ノムッチ@ようきミント 24/02/06 08:46:55 ID:Vi8kDuyU [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ケンゴ「獣化…?」

やっと絞り出したその言葉で、昨日起きたことの記憶が一気に想起していく

………昨日、自分はこの施設に無線で呼ばれた

そして同じようにエントランスを歩き、この部屋に辿り着き、ナナカマド博士と対面した

ケンゴ『ナナカマド博士!?どうしてこんなところに?』

数年前、旅から戻った際にその報告をして以来会っていなかったが、博士は相変わらず表情のないような面持ちのままだった

ナナカマド『久しぶりだなケンゴ君。このようなかたちで呼び立ててすまないとは思っているが、とりあえずかけたまえ』

ナナカマドが指し示した傍らの椅子にケンゴは腰かける

ケンゴ『どうしてこんなところにいるんです?』

ケンゴは同じ質問を繰り返す

ナナカマド『君に協力してもらう為だ』

ナナカマドはそれだけ言うと、自分のデスクに向き直り、何やらカタカタとキーボードを叩く。すると、博士の端末から壁面に向かってホログラム映像が投影される。そこには顔写真と氏名が1セットになったブロックがいくつも並んでいる

ケンゴ『これって…』

それはシンオウ地方の警察内職員データだった
 ▼ 17 ゲキッス@バックのかんづめ 24/02/06 09:14:36 ID:Vi8kDuyU [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナナカマド『君は適性者として選ばれた』

ナナカマドがブロックの一つ、ケンゴのものを拡大表示させる

ケンゴ『適性者?』

ナナカマド『生物はみな、個体毎に固有の塩基配列を持つDNAを有している』

拡大表示されたケンゴの情報の横に、DNAの塩基配列情報が映し出される

ナナカマド『私は、その塩基配列に別の塩基配列を組み合わせることで、互いの形質を共有できるのではないかと、ある者と研究を続けてきた』

ホログラム上の塩基配列に、別の塩基配列が組み合わさり、新たな螺旋を作り上げる

ケンゴ『博士、言ってることがよく…』

突然難解な化学の講義を始めるナナカマドにケンゴは戸惑い言葉を発するが、ケンゴの方を振り向いたナナカマドの顔の有無を言わせぬ厳格さにそれを仕舞った

ナナカマド『つまり、ヒトの塩基配列にポケモンのそれを組み込むとすると、どうなると思うかね?』

ケンゴ『え…?』

ナナカマド『ヒトの形質とポケモンの形質を併せ持った者…倫理性が著しく欠如したことだとは思うがね…』

少し委縮した声を出すナナカマドだが、表情は相変わらず堅い

ナナカマド『だが、どんな人間であってもポケモンの塩基配列を組み込めるわけではない。適性な塩基配列を持つ者と、それに適合するポケモンの塩基配列でなければならないのだ』

ケンゴ『……それが…僕だと?』

ナナカマドは頷いた
 ▼ 18 ガジュペッタ@サトピカZ 24/02/06 09:20:03 ID:jPQoLEOw NGネーム登録 NGID登録 報告
このケンゴはキレイなケンゴなん?
 ▼ 19 カヌチャン@ラルトスのおとしもの 24/02/06 09:40:12 ID:Vi8kDuyU [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナナカマド『君の塩基配列は、このポケモンとの適合値が異常な程高い数値を示している』

ホログラムにさらにポケモンの画像が映る

ケンゴ『ゴウカザル』

ナナカマド『君には適性者として、このポケモンとの形質共有を受けてもらう』

突然の告白にケンゴは動揺し椅子から勢いよく立ち上がる

ケンゴ『ちょっと待ってください!突然そんなこと!!だいたい何で博士が警察の個人情報データベースをっ!!』

ナナカマド『動揺する気持ちはよく分かる。質問には、一つ一つ答えよう』

強い剣幕でまくし立てようとするケンゴに、ナナカマドはやはり冷静に答える

ナナカマド『適性者の選定・形質共有には塩基配列の適合とは別に、強固な肉体とある程度の忍耐力が求められる。その要素を満たす者が多いと見込まれる組織は、常にその職務において肉体の鍛錬を必要とする警察だったのだ』

ケンゴ『だからって、個人情報データベースはどうやって…そもそも塩基配列だって』

ナナカマド『警察の上層部に昔馴染みがいてな。塩基配列の採取について言えば、健康診断だ』

ケンゴ『健康診断?』

確かに安全衛生法上定められた定期健康診断を、毎年一度受けている

ケンゴ『でも、DNAを採取できるような検査なんて…』

言いながら、今年の初めに受けた定期健康診断を思い出した。昨年から続いていた冬期インフルエンザの流行で署内でも欠員・人員不足が続いていた。その蔓延防止策として、受診者全員にPCR検査が行われた。その時、看護師がケンゴの舌を綿棒でこすったのを覚えている。ケンゴは少し力が抜け、再び椅子に腰かけた
 ▼ 20 ルトラネクロズマ@おしえテレビ 24/02/06 09:41:12 ID:uSIMrmbU NGネーム登録 NGID登録 報告
早くセレナをレしろよ
 ▼ 21 アコイル@ピカピカだんご 24/02/06 10:09:14 ID:Vi8kDuyU [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
察したようなケンゴの態度にナナカマドは満足したのか、ケンゴの次の質問を予想したように説明を始める

ナナカマド『そもそもこのような研究を私が始めたのは、あることを未然に防ぎ、制圧する為だ』

ケンゴ『あること?』

ナナカマドが頷き、ホログラムに新たな画像を映す。全身に黒いオーラをまとい、目を赤く光らせるポケモン

ケンゴ『ダークポケモン…』

警察内の情報データベースでしか見たことがなかったが、数年前オーレ地方にてポケモンの大量誘拐が発生した。事件を起こした組織はそのポケモン達に特殊な処置を施すことでダークポケモン化させ、オーレ地方を支配しようとした。しかし、ある者たちの活躍によってダークポケモン達は全て保護・清浄化された。組織もトップの死を以って解体されたとされていた。しかし、その数年後にまた同じ事件が発生、今度は別の者がその事件を解決し、組織も完全に壊滅したということだった

ナナカマド『今再びダークポケモンが確認されている。しかもそれはオーレ地方に限らない』

ダークポケモンの画像の横に地図が表示され、その上に番号付きの複数の赤い点が現れる

ナナカマド『ダークポケモンが確認された場所と順番なわけだが』

ケンゴ『シンオウ地方に、近づいてる?』

ナナカマドが頷き、続ける

ナナカマド『確認されている場所は複数だが、目撃者の証言を総合するとおそらく、こちらへ向かってきているダークポケモン自体は一体だと思われる』

ケンゴ『以前事件を解決したという人達は、動いていないんですか?確か、スナッチボールだとか』

ケンゴが閲覧した情報では、特殊なモンスターボールを使うことでしかダークポケモンは捕獲することができなかったという

ナナカマド『勿論彼らも動きはした。だが、これを止めることはできなかった。スナッチボールは、そのダークポケモンには通じなかったのだ…』
 ▼ 22 リアドス@サーナイトナイト 24/02/06 10:36:26 ID:Vi8kDuyU [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ケンゴ『通じなかった?』

ナナカマド『オーレ地方のスナッチシステム研究機関がその対策として強化型を開発しているところではある。よって、現段階でこのダークポケモンを止める術は、瀕死状態にさせることのみだ』

ケンゴ『その為に、僕が必要だと?』

ナナカマド『一体とは言えダークポケモンが現れたということはつまり、背後にはかつての、あるいは新たにダークポケモンを利用した企みを持つ組織が存在することは確かだ』

ケンゴ『警察や他の機関との連携は?』

ナナカマド『先程言ったように、警察の上層部には昔馴染みがいる。それとの連携で極秘に動き出しているところだ。この研究施設を利用しているのもその為だ』

ケンゴ『どうして極秘なんですか?』

ナナカマド『我々にはまだ具体的な打開策が見いだせていないのだ。そんな中警察内で情報共有を行えば、必ずそれは外部へと漏洩する。止める術のない凶悪で謎のポケモンがシンオウ地方に迫りつつあると知れれば、市民のパニックは避けられまい。幸いにも、今までダークポケモンが確認されている地点はいずれも辺境の砂漠地帯や人里離れた森の中ばかりで、関係者以外でこれを知る者はいない』

ケンゴはひとまずは現状の情報に納得はした。が…

ケンゴ『僕は、どうすれば良いんですか、どう、なるんですか…?』

ダークポケモンの発生と博士の今の研究、つまりそれは…

ケンゴ『僕がポケモンになってそいつと戦えと…そういうことですか…?』

ナナカマド『ポケモンになるのではない。あくまでも君は人間だ、その上でポケモンとしての形質を発揮して欲しいのだ』

自分の言ったこととの違いがケンゴには理解できない

ケンゴ『人間でありポケモン…化け物じゃないですか』

ナナカマド『今は倫理観の話をしている場合ではないのだ。…すまない』

言うと、ナナカマドは素早くケンゴの腕に注射器のようなものを突き立てた。ケンゴの身体から即座に力が抜けていき、椅子から転げ落ちる。遠ざかる意識の中で見たものは、ナナカマドの沈痛な表情だった
 ▼ 23 ジオ@エルレイドナイト 24/02/06 10:49:37 ID:Vi8kDuyU [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気づくと、ケンゴは手術台らしき物の上で両手足を拘束されていた

ケンゴ『博士、これは!?』

視界の隅に、手術用のヘアキャップとマスクをしたナナカマドが見える

ナナカマド『君にはいくら言葉を重ねて謝罪しても足りないだろう…しかし、これは、君にしか託すことができないことなのだ。現段階では』

ナナカマドは手元のチュープから注射器へその中身を移すと、ケンゴの左腕の制服をまくる

ナナカマド『しばらくは痛みが走るだろう。だが、どうか耐えてくれ…』

ケンゴの右腕に現れさせた血管に、注射針を射し、先程充填した液体を注入していく

ケンゴ『うっ…あ、ああああああああああああああ!!!!!』

初めは微かな痛みだけだった。それが段々と強さを増し、地獄の業火に焼けるような熱さと痛みが全身を覆い尽くす。拘束されているケンゴにはただ叫ぶことしかできなかった

ケンゴ『あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!』

どれくらいの間苦しんでいただろうか、ケンゴはいつの間にか気を失った
 ▼ 24 ーシィ@ヘイラッシャのヒゲ 24/02/06 11:26:31 ID:Vi8kDuyU [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
再び気づいた時、今度は暗闇の中にいた。全身にはまだ焼けるような痛みが微かだが残っている。手探りで周囲を検索すると、自分が夜闇の自動車の中にいるのだと認識できた。状況をひとまず理解できたことに安堵し、シートに背をもたせる

ケンゴ『もう…化け物になってしまったんだろうか』

ナナカマドが注入した液体、おそらくあれにはゴウカザルのDNAが入っていたはずだ。自分はこれからどうなるのだろうという不安がケンゴを強く苛む

その時、自動車の外から悲鳴が聞こえた

暗闇の中、窓の外に目を凝らすと、二人の人影と、それを追う大きな黒い影が見えた。まばらな街灯の明かりに照らされたその人影は…

ケンゴ『ヒカリ!?』

ノゾミの姿も見える、どうやら肩を負傷しているらしく、動きがぎこちない。黒い大きな影がその二人を追うようにのしのしと歩を進めていた

ケンゴ『あれは…』

全身の黒いオーラ、赤く光る目、間違いなくダークポケモンだと認識できた

ケンゴ『まさか、もうやってきてたのか!?』

ヒカリ達を助けようと自動車のドアから飛び出そうとする。その時、こちらの音に気づいたのか、ダークポケモンが一瞬振り返る

そこからは一瞬のことだった。ケンゴの心の奥底で、何かに火が付いたような気がした。一瞬合ったダークポケモンの視線、そこから猛烈な殺意と、怨念めいた何かがケンゴの中に流れ込んでくる。心の奥底でついた火がそれを取込み、さらにその勢いを増す。そして炎へと進化したそれは、身体へと伝わり…

ケンゴ『うああああああああああ!!!!!!』

叫びと共に全身が燃え上がり、変化していく。燃え上がった炎で自動車が爆発した

ヒカリ達がその爆発に気づいたのが視界の隅で分かる。だが、分かるだけだった。ケンゴは自分の意識なのか別の意識なのかもわからぬままにダークポケモンへ突っ込み、燃え上がった自動車へ放り投げる

ケンゴ『うああああああああああ!!!!!!』

自分のなのか別のなのかもわからぬ叫びを再び上げると、全身に炎の鎧をまとい、うごめいているダークポケモンに再び突撃する。エンジンに引火し大爆発する炎の中、さらに自分の炎を増大させ、ケンゴはダークポケモンを焼き殺した

ダークポケモンが死んだのを認識すると、炎の鎧が消え、炎上するその場から外に出る。そこで、呆然とするヒカリ達と目合った。だが、ただ目が合っただけ。それだけだった。ケンゴは誰の者とも思えぬ意識でその場を飛び去った

そしていつの間にか自宅に着いていて、深夜に目覚めたのだった
 ▼ 25 ラブルタケ@ヨロイこうせき 24/02/06 11:50:27 ID:Vi8kDuyU [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……想起した記憶から、目の前の現実に戻る

ケンゴ「…あれが、ポケモンの形質ということですか」

ナナカマド「思い出したようだな……そうだ」

一つの疑問が頭をよぎる

ケンゴ「なんで僕は、昨日博士にあった記憶や、その…獣化した記憶を忘れていたんですか?」

ナナカマド「それが今回の実験のもう一つの目的だったのだ」

ケンゴ「もう一つの?」

ナナカマド「今回の目的の一つ目は君のポケモンとしての形質の発揮、つまり獣化が成功するかどうか。二つ目は、ショック軽減のようなものだ」

ケンゴ「ショック軽減?」

ナナカマド「一度獣化に成功できれば、再度そうすることも可能となるはずだ。その証拠に、君は今日ハクタイシティでチンピラを獣化によって蹂躙した」

昼間のことを思い返す。確かにあの時は何の意識もなく獣化できていた

ナナカマド「だが一度目が上手くいかなければそうはならなかっただろう。納得のいかぬまま処置を受け、初めて自分の意識が持っていかれるような体験をした。そのショックの記憶が二度目の獣化の抑制材料となる可能性は充分に有り得る。だから一時的に断片的な記憶喪失を起こす薬を、獣化処置の際に併せて投与していたのだ」

ケンゴ「完全に獣化をものにした…と?」

ナナカマド「二度目は成功した、ごく自然に。たとえ記憶が戻ろうとも、君はもう、再度ごく自然に獣化できよう」
 ▼ 26 ンリキー@2ごうしつのカギ 24/02/06 13:59:44 ID:Vi8kDuyU [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
確かにごく自然に獣化できたし、だからこそ今日の騒ぎを鎮圧できた。だが…

ケンゴ「もう僕は、純粋な人間ではないんですね…」

ヒトでありながらポケモンを殺せる程の力をもつ化け物。一度目の獣化の記憶からケンゴの中ではその印象が強く心を締め付ける

ナナカマド「純粋な人間とは、どういうものだと思うかね」

ケンゴ「え?」

ナナカマド「ヒトは古来より、欲望、嫉妬、羨望、怨嗟…ヒトがヒトたる所以とも言えるこれらの要因から、その闘争心を燃やし多くの争いを繰り返してきた。それは未だ止むこともなく、この世界のどこかで今も常に憎しみの渦が戦火を燃やし続けている。ヒトというのは生まれながらにして、潜在的に闘いという本能を持つ種なのだと私は思っている」

ケンゴ「潜在的な本能…」

ナナカマド「勿論現代では全てのヒトが闘争を繰り返しているわけではないがね。君の言う純粋な人間というのは、そういう者達のことであろう?」

ケンゴ「はい…」

ナナカマド「君が憂慮することは分かる。だが、ヒトという種に関して言うならば、君は今純粋な人間と言えるのだ」

話を煙に巻かれているようでケンゴは少し苛立ちを含んだ口調になる

ケンゴ「僕は…哲学を話しているわけではありません」

ナナカマド「この任務が終われば、君を元に戻すことはできる。一度注入した塩基配列をサルベージする技術は既に完成している。だから、今はあまり深く考えこまずにいて欲しい」

ケンゴ「元に戻れるなら、それを先に言ってください!」

ナナカマド「ただ、時間はあまりない」

ナナカマドがキーボードを叩き、昨日と同じようにホログラムが投影される。ヒトの心臓と、ポケモンのものと思われる心臓が脈打っている

ナナカマド「ヒトの心臓が一生のうちに脈打てる回数には限度があると、知っているかね?」

ケンゴ「はい…」

ナナカマド「それはヒトに限らず、ポケモンも同じだ。そして…」

ナナカマドがキーを押すと、投影の中の二つの心臓がその脈打ちを速める

ナナカマド「ポケモンの心臓は闘争時、つまりポケモンバトルやそれに類する興奮状態にある時、ヒトの12倍の速さで脈打つのだ。その急激な血液の循環が、トレーナーからの指示等への瞬時の反応、技を繰り出す為のエネルギーの生産、受けたダメージによる痛みの軽減を可能としているのだ」

片方の心臓がもう一つとは比較にならない程尋常な速さで脈打っている

ケンゴ「つまり…」

ポケモンとなって戦う自分。だが肉体自体は人間。戦えば戦う程、ケンゴの寿命は確実に通常の人間より急速に消費されていく…

ナナカマド「だから、この任務は、ただ治安維持の為だけではない。君の為にも早急に完遂させなければならないのだ」

ナナカマドは椅子から立ち上がりケンゴの肩にそっと手を置く

ナナカマド「本当にすまないと思っている。だが、今回の任務は、君に託すしかないのだ…」
 ▼ 27 リーン@ポケモンボックス 24/02/06 14:18:15 ID:Vi8kDuyU [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
帰宅すると、ヒカリがキッチンに立って夕食の準備をしていた

ヒカリ「おかえりケンゴ。遅かったね?」

ケンゴ「あぁ…」

昨夜ダークポケモンに襲われたことなどどこ吹く風で、鼻歌混じりに調理している

ヒカリ「ん?どうかしたの??」

ヒカリの背中をただじっと見つめているだけのケンゴを訝しんでヒカリが尋ねる

ヒカリ「なぁに?昨日の食事当番すっぽかした分なら、今やってるんだからチャラでしょう?」

ケンゴはうんうんと首を横に振る

ヒカリ「じゃあ…あっ!もしかして私が冷蔵庫のプリン食べちゃったのバレちゃった!?」

またケンゴが首を振る

ヒカリ「え〜。じゃあ一体何な…」

言いかけるヒカリをケンゴは勢いよく抱きしめた

ヒカリ「のよ…」

ケンゴ「…ごめんヒカリ……ごめん…」

ケンゴはヒカリの肩越しに涙を流していた

ヒカリ「ど、どうしたの急に?何か嫌なことあった??」

困惑しながらも、落ち着かせるようにケンゴの背中に手を回し優しくさする。ケンゴはまたうんうんと首を横に振るだけだ

ケンゴ「…ごめん…本当にごめん…」

これから待つ戦いに…それによる命の燃焼に…“ヒカリとの時間の燃焼”に、ケンゴはただ謝罪したかった

ヒカリ「おっと、ごめん…お湯、吹きこぼれそう…」

ケンゴ「あ…あぁ、ごめん…」

コンロで煮立たせていた鍋が抱擁する二人に嫉妬するように沸騰の音を立て、二人をとりあえずその場から離した
 ▼ 28 ェリンボ@メェークルのはっぱ 24/02/06 15:31:45 ID:X2zs2OS. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
………ケンゴとヒカリが一緒に暮らし始めたのには、ほんの恣意的な理由からだった

お互いの旅が終わり、お互い警察に入ろうと頑張り、それは叶った時、

ヒカリ「ケンゴんちの方が近いんだから、別に良いじゃない?」

一年遅れで警察への就職が決まったケンゴに、ヒカリはそんな軽口で提案した

ケンゴ「なんで僕の家なんだよ、それならノゾミの家の方が近いだろ?」

ヒカリ「だってノゾミの家は親御さんいるけど、ケンゴんちはいない上に一人暮らしするには充分広いじゃない?」

ケンゴ「どうしてノゾミの家は“家”なのに、僕の家は“んち”なんだよ?」

ヒカリ「確かにそう言われてみれば……ま、どうでもいいじゃない?」

ケンゴ「なんだよそれ…」

おどけた表情で舌を出すヒカリにケンゴは肩をすくめた。嫁入り前の一人娘が付き合ってもいない男の家から仕事に通うとは何たることかと、まるで父親のような思考に陥る。だが一人の男としてのケンゴには、特にどうでも良い気がしていた

旅の途中、ヒカリと共に旅をするトレーナーに一方的な嫉妬心を抱いたこともあった。それを巡って勝てる見込みもないポケモンバトルを挑み敗北したこともあった。今となっては懐かしい思い出。だが、それ以降も旅を続けたケンゴは様々な人達と出会い、様々な価値観に触れ、成長した。他人を大切に想うことと、大切にすることは違うということを理解した。それは、ヒカリへの恋愛感情を否定することではない。ただ、ヒカリ自身が思うように生きていくことを見守ることが、自分にとってヒカリを想うということなのではないかと思ったのだった

だからケンゴは下心無しに、ヒカリの“ケンゴんち”への入居を許可した

一緒に起床し、朝食を食べ出勤し、帰ってきたらまた一緒に夕食を食べ眠る。家事は交代でやるし、眠る部屋も別々。そうやって日々を過ごしていくうち、二人の距離は物理的にだけでなく、自然と精神的にも近づいていった

ヒカリ「今日は一緒に寝よっか」

ある日のヒカリのそんな言葉で、二人の生活は少し変化した。その日ヒカリは仕事で嫌な目にあったらしく、その愚痴をいつも通り散々聞き、いつも通り慰めた日の夜だった。二人で入るには少し小さなベッドに二人で並んで入ると、当たり前だがヒカリのぬくもりと微かな良い匂いを間近で感じる。“男”としてのケンゴはその感覚に敏感に反応したが、男としてのケンゴは、ただ自分の家族と一緒に眠るような、懐かしい感覚に包まれた。もしかしたら、ヒカリもそうだったのかもしれない。二人は他愛のない言葉をいくつか交わすと、そのまま眠りについた

ケンゴにとってヒカリは、“慕う女性“というより"想う家族"へと変わり始めていた
 ▼ 29 ジャンボ@アーリーレッド 24/02/06 16:52:40 ID:X2zs2OS. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
………ヒカリがケンゴと一緒に暮らそうと決めたのは、ほんの恣意的な理由からだった

お互いの旅が終わりケンゴに再会した時、どこかたくましくなったその姿にヒカリは少し驚いた

警察に就職する為、ケンゴが勉学に勤しんでいる時、その真剣なまなざしにヒカリは少しどきりとした

だが、恋愛感情というものとは違うと、ヒカリは思うことにした。幼馴染なだけで、昔からピカリピカリと自分を散々いじり倒してきて、一方的な嫉妬心で旅仲間にバトルを挑んで敗北し、勝手に落ち込んで去っていった、そんな友達以上何か未満のケンゴに限ってそんあことはと

でも…昔とは違う大人び、成長したケンゴと過ごす日々が続く中で、ヒカリのその思い込みは少しずつ瓦解していっているような気がした。“女性”としてのヒカリの心が、惹かれていっているように感じ始めていた

だから、試してみることにした

ヒカリ「ケンゴんちの方が近いんだから、別に良いじゃない?」

旅の中、ケンゴが自分へ慕う気持ちを持っていてくれていたことは何となく分かっていた。もし今もそうなのなら、これはケンゴにとっても悪い提案ではないだろう。ただ、今のケンゴのヒカリに対する態度にそんな気配はあまり感じられないけれど…。

自分の日々高まっていく気持ちがもし本当ならば、共に暮らしていく中でごく自然にそれは完全に開花するのではないかと思うのだ。開花しないのならば、やはりただの思い過ごしだったのだと割り切れる。どうせ腐れ縁の幼馴染なのだし、他の男との同棲なんかよりは幾分も軽い気持ちで臨めるだろう

ノゾミ「ねぇ、恋愛の順序って知ってる?」

同棲の話題を出した時、ノゾミにはそう言われた。確かにこれが恋愛なら、順序は滅茶苦茶なのだろう

ヒカリ「そんなんじゃないわよ。ただの寄宿先よ。ノゾミこそ、シェアハウスって言葉知ってる?」

暮らし始めてみると。ヒカリの気持ちは開花してしまった

ヒカリ「今日は一緒に寝よっか」

ある夜、堪えきれずそう切り出すと、ケンゴは特になんともないように承諾してくれた。初めて二人で同じベッドに入った時、ヒカリの胸は爆発しそうなくらいの鼓動を刻んでいた。でも、ケンゴはただ他愛のない話をするだけだった

こんなものなのかな…と、冷静さを欠いたヒカリの思考は少しの会話の後あっさりと夢の中に消えた
 ▼ 30 ガハッサム@グラードンのおやつ 24/02/06 16:52:56 ID:X2zs2OS. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
………初めて唇を合わせたのは、ケンゴが仕事で手柄を立てた日、そしてヒカリのオーレ地方への転勤が正式に言い渡された日

転勤の話に驚き振り返ったケンゴの唇を、ヒカリが塞いだ

ケンゴ「ぇ?」

ヒカリがそっと唇を離す

ヒカリ「だから、今日は…お祝いしようか、お互いに」

何も起こらないのならそれでも良い。ただ、この家から離れる前に決着をつけておきたかった。ケンゴのお手柄のお祝い、そしてもし…今から何も起こらないのなら…自分の恋愛感情への卒業祝い…

ケンゴは突然のことに動揺した表情を見せながらも、優しくヒカリの肩に手を触れる

ケンゴ「ヒカリのお祝いって…?」

ヒカリ「転勤って言っても期間限定。つまり、充てにされてるってことでしょ?だから、私の出世街道開設に」

ケンゴ「そっか」

真剣な表情になったケンゴがそっとヒカリに顔を近づける。ヒカリは目を閉じ、ケンゴの唇を自分ので受け止める。数秒の沈黙の後、二人は顔を離した

ケンゴ「おめでとう、ヒカリ」

ヒカリ「うん、おめでとう、ケンゴ」

その時のヒカリにはもうそれだけで充分だった。そして、それで終わりだった
 ▼ 31 クガメス@じめんのジュエル 24/02/07 08:37:37 ID:TPkkjbhE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
二度目にナナカマドの研究施設を訪れた翌日

出勤すると、上司に呼ばれ「至急署長室へ向かうように」とだけ告げられた

君何かしたの?と言わんばかりの表情には答えないようにして、ケンゴはそのまま署長室へ向かう

昨日ハクタイシティの広場で獣化した際、周囲には数人の市民もいた。獣化したことを見られているのだ。そのことで「人間が突然ポケモンの姿に変化した!」などとメディアが報じるかと思い不安だったが、今朝の新聞もテレビも、ただ単に「チンピラが暴徒を起こしたが警察がこれを鎮圧した」というようにしか報じていなかった

署長室のドアをノックすると、中から「入りたまえ」という声が聞こえた。ドアを開け中に入ると、こじんまりとした書斎の奥に口髭を蓄えたコトブキ署署長が座っている

ケンゴ「失礼いたします。捜査課のケンゴであります」

デスクの前に立って慇懃に敬礼をしたケンゴに、署長は近くの応接ソファに座るよう指示した

「早速だが、ナナカマドから話は聞いているね?」

ケンゴ「では…」

どうやらナナカマドの昔馴染みというのは署長のことのようだ

「辞令を確認してくれたまえ」

署長がテスクの引き出しから封筒を取り出し、ケンゴの向かいの応接ソファに座るとそれを差し出してきた。ケンゴはそれを受け取り中身を確認する

『辞令 オーレ地方におけるダークポケモン出現の経緯の調査、及びこれに関与するとされる組織の殲滅』

記されていたのはそれだけだった

「内容は確認できたかね?」

ケンゴ「は…はい」

署長が改めて手を差し出してくる。辞令の返却なのだと察して封筒をそのまま手渡すと、署長はポケットからライターを取り出しそれに火をつけ、二人を挟む応接机上の灰皿に放り投げた

「無論、口外は厳禁だ。現在君が行っている業務の引継ぎはこちらで処理してある。オーレ地方へは民間航空会社にて近隣地方まで飛び、そこからはこちらで準備したホバー機能付きバイクで向かってもらう。調査費用の不足などが生じた場合は連絡を。要件は以上、早急に準備を始め、本日中に出発してくれ」

それだけ言うと署長は何事もなかったかのように自分のデスクに戻る

辞令の発行は通常、個人所有の端末へとデータとして上層部より送信される。が、昨日ナナカマドから聞いたように、あくまでも内密に事を進める必要がある為、紙での通知とし、さらにそれさえも今ここで焼失させたのだった

ケンゴ「私は昨日、ハクタイシティ広場で市民の目のある中獣化してしまいました」

「それについてもこちらで処理してあるので心配する必要はない。それはオーレ地方へ着いてからもだ」

自分の端末に目を移し作業を始めた署長の「もう話は終わりだ」という態度にケンゴはそれ以上何も言えず、ただ立ち上がって敬礼をすると、退室しようとドアを開けた

「吉報と、無事の帰還を期待している。武運を」

沈痛な表情でケンゴに謝罪するナナカマドを思い出す。やはり昔馴染みなのだなとケンゴは再び署長に敬礼し、部屋を後にした
 ▼ 32 ラーチ@とけないこおり 24/02/07 09:17:25 ID:TPkkjbhE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
捜査課へ戻る途中、ヒカリと鉢合わせた

ヒカリ「ね、署長になんて言われたの?」

どうやら署長室に向かうところを目撃され、出てくるのを待ち伏せされていたらしい

ケンゴ「そんなことより、仕事はいいのかよ?」

ヒカリ「ちょうどお手洗いの帰りだったから大丈夫大丈夫」

ケンゴ「そう」

ヒカリ「で?」

ケンゴ「いや、特には何も…」

ヒカリ「そんなはずないじゃない?署長室よ?」

ケンゴ「昨日ハクタイシティでチンピラに少しやり過ぎたことを注意されただけだよ」

ヒカリ「署長に?」

ケンゴ「そう」

ヒカリ「そういうのは直属の上司がやるもんでしょう?それとも何?よっぽど酷くやっちゃった?半殺しとか??」

ケンゴ「ま、まぁ……そんなところかな」

こめかみを搔きながら上手く話をはぐらかす為、そんなことよりも重要なことを告げる為、話題を切り替える

ケンゴ「それよりヒカリ。ごめん、急な出張が決まった、今日発たなきゃならなくなった」

ヒカリ「?そりゃあまた突然ね。何日くらい?」

ケンゴ「日程は出張先での進捗次第、ホントにごめん。すぐに帰れるとは思うけど…」

そんな見込みも保証もない

ヒカリ「今日からとなると、私の転勤と被るね。私は明後日出発だし。ケンゴの方が早く帰ってくるんじゃない?」

そんな見込みも保証もない

ケンゴ「そうかもな、ごめん…」

ヒカリ「なんでそんなに謝るのよ?仕事なんだし、仕方ないわよ」

ぽんとケンゴの背中を叩きながら、ヒカリは明るく言った

ヒカリ「頑張ってきてね!」

ケンゴ「あぁ」

帰れる見込みも保証もない。出発は今日。ヒカリと顔を合わせられるのは今日が最後かもしれないと思うと、目頭が熱くなてくる。同じ地方に行くのだから、もしかしたら奇跡的に鉢合わせるかもしれない。自分がさっさと敵を見つけてぶちのめして帰れれば、全て元に戻れるかもしれない。それでも、瞼にその姿を焼き付けたくてたまらず、ケンゴはヒカリを見つめる

ヒカリ「?どうしたの?あっ、やっぱり署長となんかあったんだぁ〜。特別任務とか??でも、まさかまだまだ新人で私の後輩のケンゴにかぎってねぇ〜」

言い当てるヒカリの表情があまりに可笑しくて、ヒカリの髪をくしゃくしゃに撫でまくって、二人で笑いあって、それぞれの課へと別れた
 ▼ 33 グノム@グッズケース 24/02/07 09:55:06 ID:TPkkjbhE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
捜査課へ戻り自分のデスクを適当に片付け、必要な備品をまとめると、上司へ出発の報告をした。どうやら既に通達されていたらしく、これまた適当に「いってらっしゃい」のあいさつを受けた。一体どういった通達が下りてきているのかはわからないが、とりあえず敬礼し、ケンゴはコトブキ署を後にした

オーレ地方近隣の地方への飛行機の中、ケンゴは改めて過去に二度に渡り起きたダークポケモン事件の資料データに再度目を通していた

事件は二度とも「シャドー」という組織によって引き起こされていた

一度目の事件は、組織幹部の一人だったワルダックが、オーレ地方南東の街フェナスシティの市長「バックレー」となって暗躍し、ダークポケモン量産の計画を企てたものだった。この事件は当時シャドーとの協力関係にあった「スナッチ団」の裏切り者によって解決されている。その裏切り者は事件解決後、自らダークポケモンを使用して市民に危害を加えたと報じられ、オーレ地方から姿を消したと記されている

二度目の事件はその数年後、その際は「シャドー」の総裁デスゴルドが直接現地に赴き、アイオポートという港町にて富豪「メチャリッチ」となって活動。ポケモンを多く乗せた客船の強奪、ダークポケモン工場の建設・運用により、ダークポケモンによるオーレ地方の支配を企てたものだった。こちらの事件は一度目と異なり、一人の幼い少年が中心となって活躍、スナッチ・リライブの研究機関・シャドーに見限られたスナッチ団等の協力もあってシャドー壊滅まで果たされていた

これらのことを踏まえ、ケンゴはこれから自分がどう動くべきなのか、頭の中で整理する

二つの事件に共通するのは、ダークポケモンのスナッチボールによる捕獲と、リライブと呼ばれる清浄化の行程。が、今回出現したダークポケモンに対しては現段階ではスナッチボールは通じないという。実際にケンゴは一度ダークポケモンを捕獲することなく殺害している。瀕死状態にすることはできても、ボールに入れられないダークポケモンをリライブすることはできるのだろうか?それともやはり殺害するしかないのか?その疑問は解決しておく必要があるだろう

ケンゴ「とりあえずは、研究機関を当たってみるか…」

スナッチ・リライブの研究を行っているという「ポケモン総合研究所」、二度目の事件を解決したという少年もそこに所属しているという。端末のディスプレイにオーレ地方の地図を呼び出し、西端にその位置を確認する。最初の目的地が決定した
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