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【SS】孤独な博士とタブンネの心

 ▼ 1 ワパレス@オニゴーリナイト 16/01/09 18:55:46 ID:zUIFWbq. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




──…ある所に、独りの発明家がいた。


その発明家は天才的すぎるゆえに、近所の人に酷く気味悪がられていた。


これは、そんな独りの発明家と一台、いや、一匹の織り成す『心』の物語…───





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ▼ 38 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/13 20:22:31 ID:LeWI9eaE [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

・・・


それは、私が幼少の頃だった。

私は学校の授業中にも休み時間にも発明を考え、設計図を書いていた。

授業なんて聞かなくても理解できるし、休み時間も発明を考えるのが一番楽しかった。

しかし、発明の事しか頭にない私は人間関係を怠った。


「やい!何やってんだよ根暗!お?何だこれ」バッ

「や、やめてよ…!」

「おーい!この根暗野郎、変な設計図持ってるぜ!!」ヒラヒラ


「マジかよ!お前、設計図とかキメェなぁ!」

「破いちゃえよ!」


「だっ、ダメだよ!それは僕の「破きまーす」ビリビリィ!


いじめの標的にされた私は、いつもキモイと馬鹿にされ、発明の邪魔をされた。
 ▼ 39 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/13 20:23:43 ID:LeWI9eaE [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

男子からはもちろん、女子からも軽蔑の眼差しを向けられた。



「やだ、アイツが来るよ…」ヒソヒソ

「こっちに来ないで欲しいね…」ヒソヒソ

「ほんと、キモイんだから…」ヒソヒソ

「自覚してんのかな…」ヒソヒソ


「うぅ…」



わざと聞こえるように言っているのではないかと思うくらいに悪質な会話だった。

弱者の立場にある私は、言い返すこともできずにただ登校と下校を繰り返すだけの毎日を送った。



学校での私の居場所はどこにもなかった。
 ▼ 40 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/13 20:27:02 ID:LeWI9eaE [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

しかし、私の居場所は家にもなかった。


「おいコラ。テメェまた授業中に落書きしてたらしいじゃないか」

「え?それは落書きじゃなくて…」

「うるさい!言い訳をするな!」

「…」

「返事をしろ!!」バキッ

「…はい」

「…ふん。いつもなら飯抜きだが今日に限って食わせてやる。さっさと食え」

「…はい」


両親が離婚して父親と二人暮らし。

優しい母などいるわけも無く、暴力的な父に私は抵抗することも、ましてや家出など怖くて考えられなかった。

何せ、自分の子供を「テメェ」と呼ぶような親だったからな。


私の居場所は学校にも家にもない。

どこにもなかったのだ。
 ▼ 41 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/13 20:31:07 ID:LeWI9eaE [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

・・・


『そんな…こんなにも博士は優しいのに…』



「…世間とはそういうものだ。…私は今もなお近所の住人から気味悪がられている。」

『そんな…そんなことって…』


「…お前と過ごした時間。お前は何も感じていなかったかもしれないが、私は嬉しかった」

「誰かと共に過ごす時間というのが、これほどまでに幸せなものだとは思わなかったよ。」


博士の痩けた頬を一筋の涙が伝った。


『だったらこれからも博士と一緒に…!』


「タブンネ。よく聞いてくれ。」
 ▼ 42 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/13 20:31:59 ID:LeWI9eaE [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「独りではなく、誰かと共に過ごす事がどれだけ幸せな事か。私は気づいた。」

「だからこそ、お前はここにいてはいけないんだ」

『何故です…!』




「…私が死ねばお前はどうなる?」

『!』

「お前は独りになり、誰と共に過ごす事もなく、ガラクタになってしまう…」



「私は…私の唯一の家族に孤独を味わってほしくないんだ…」
 ▼ 43 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/13 20:34:55 ID:LeWI9eaE [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

『でも!博士を治療できれば「もう無理なんだよ!!」


「…自分の身体は自分が一番わかってる。ここから治癒するのは不可能だ…」

『なら病院に通いながらここで暮らし続ければ…』

「…やめてくれ。別れが寂しくなるだろう…」


『でも…!』


「ありがとう、タブンネ。お前は他人の気持ちがわかる最高の介護ロボットだ」


「さあ行け。充電器を忘れるなよ」



『…っ!必ず…』

『必ず帰ってきますからね!』ダッ


タブンネは渡された充電器と荷物を持って家を飛び出した。
 ▼ 44 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/13 20:42:33 ID:LeWI9eaE [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ベッドからタブンネを見送ると、一人残された博士は呟いた。



「…家族…か…」



「…私は一体何がしたかったんだろうな…」



「…考えてもわからない…」



「…ひとまずは、少しでも長生きできるように眠るとしよう」



「…いつか帰ってくる、大切な家族を待つためにも…な…」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ▼ 45 ノハナ@せんせいのツメ 16/01/14 00:23:35 ID:I9MHYRrI NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
 ▼ 46 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/14 19:13:14 ID:XD8mZfOs [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告














そして、数ヶ月の時が過ぎた。










 ▼ 47 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/14 19:14:20 ID:XD8mZfOs [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


【〇〇病院に新しい看護師が雇われたんだが…】

【〇〇病院に天使あらわる!】

【〇〇病院に一緒にいるだけで癒される看護師がいた】


評判はたちまち街中に広まり、誰もがタブンネを一目見てみようと病院を訪れた。

当のタブンネは今日も優しい笑顔で介護をしている。


『(博士は元気ですかね…)』


しかし、頭の隅では常に博士の事が気にかかっていた。


『…』

「タブンネさん!手ぇ空いてる〜?」

『は、はい!ただいま!』
 ▼ 48 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/14 19:14:58 ID:XD8mZfOs [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

毎日、病院に寝泊りして、家には帰らなかった。

いや、帰れなかったのかもしれない。


人の気持ちがわかる様になったからこそ、

《博士は自分の帰宅を望んでいない》

そう思えて仕方がなかったのだ。



『(私はどうすれば…)』

「タブンネさん。今日もお疲れ様」

『あ、看護師さん。お疲れ様です』


「どうしたの?浮かない顔してるね」
 ▼ 49 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/14 19:15:59 ID:XD8mZfOs [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

『あれ?私、顔に出てましたか?』

「うん。出てたよ(笑)」

『お恥ずかしいです…///』

「んで、どうかしたの?」

『…いえ、何も…』


内心では、このモヤモヤとした気持ちを吐き出したかったが、タブンネは博士の事を話そうとはしなかった。


「…何か隠してるなぁ?…いいじゃない。女同士なんだからさぁ…」

『…大事な事なので』

「ふ〜ん。人間関係絡みなの?」

『え?ま、まぁ…』
 ▼ 50 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/14 19:17:52 ID:XD8mZfOs [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「私、タブンネさんの事あまり知らないけどさ…人間関係なら一つ言っておきたいんだ」

『?』


タブンネは不思議そうに首を傾げた。


「人間関係は終いにゃスッキリさせな!」

『…!』

「…私のおばあちゃんの受け売りだけどね。私はいつもそう言われてたんだ 。」

『おばあちゃん…ですか…』

「これがすごく頑固な人なんだけど、今では家で寝込んでる毎日で…私が介護するって言っても《一人で死ぬ》とか言い出すんだ…」

「そのせいってわけじゃないけど、最近ではあまりおばあちゃんに会ってないの」

『…』

「でもね、私もうすぐおばあちゃんの所に行ってみようと思う」
 ▼ 51 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/14 19:19:07 ID:XD8mZfOs [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「だって、寂しいじゃん?一人で死ぬなんてさ」

『…!』



無邪気に微笑みながら言った女看護師の言葉に、タブンネは心当たりを感じた。

自分の経験に照らし合わせたのだろう。

タブンネの脳裏を博士の姿がよぎった。


「あっ、ごめんね!私の愚痴みたいになっちゃった!」


『…行かなきゃ』

「え?」

『すみません!今日でお勤めを辞めさせて頂きます!』ダッ

「えええ!?どうしたの急に…あっ!タブンネさん!!」


女看護師の抑止も虚しく、タブンネは走って病院を後にした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ▼ 52 ツバゲンガー 16/01/14 22:32:06 ID:qSk/Mj2Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>34
なんかすいません…
 ▼ 53 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 15:50:03 ID:qlz0j1BA [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



私は走った。

機械でできているはずなのに、胸が張り裂けそうだった。

それでも、私は博士の元までノンストップで走った。


どんなに突き放されようと、私は博士の元に居ることに決めた。


博士はこんな私になんと言うだろうか。

泣くのだろうか。笑うのだろうか。

それとも、怒るのだろうか。


そんな事はどうでも良かった。

今はただ純粋に、博士の元に居たいと思った。
 ▼ 54 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 17:14:23 ID:qlz0j1BA [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

〜博士の家〜


ガチャッ


『博士!!』


「…タブ…ンネ…」


博士は蚊の鳴くような声で私を呼んだ。

その姿は、見るに耐えないほど弱っていた。

それを目の当たりにした私を、胸を突き刺す様な感覚が襲った。


『…っ…!』

『(…ダメ。目をそらしてはダメ…!)』



「おか…え…り…」ニコッ


『…っ!』
 ▼ 55 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 17:15:19 ID:qlz0j1BA [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「おかえ…り…タブ…ネ」

『…』ツゥ…


涙など出ないはずの私の目から、透明な水が流れた。

親愛なる者の死を覚悟した時、人は言葉で言い表せない気持ちを秘めるのだろう。

少なくとも、私は自分でも整理のつかない気持ちを機械の心に秘めていた。


『博士…ただいま…帰りました…』


人間でいう所の嗚咽というのだろうか。

私は苦しさのあまり、言葉を紡ぎ出すことが難しかった。



「タブ…ンネ…」

『…はい…何でしょうか』
 ▼ 56 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 17:16:24 ID:qlz0j1BA [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「私は…もう…長くない…」

『…はい』

「私を…家の裏庭…まで…連れて…行ってくれ…」

『…わかりました』



博士がもう長くないのはスキャンしてわかっていた。

だから、どんな頼み事でも引き受けるつもりだった。

しかし、最後の頼み事は《裏庭まで連れていけ》との事だった。



『すぐ…行きましょう…』

「あり…がとう…」
 ▼ 57 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 17:19:01 ID:qlz0j1BA [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



私は博士を車椅子に乗せて、裏庭まで連れていった。

その時も、博士は笑っていた。

私はこんなに悲しいのに、博士は笑っていた。



「ここ…でいい…」


博士の言われるままに裏庭に着くと、そこには信じられないような景色が広がっていた。



『(…嘘…なにこれ…)』

「綺麗…だろう…?」

『なんでこんなに……』


家が研究所並に大きいから、いつもは見えなかった裏庭。

そこは、たくさんの桜が咲き乱れ、草花が生い茂った、まさに幻想的というのがふさわしい場所だった。
 ▼ 58 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 17:20:50 ID:qlz0j1BA [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



『なんで…こんなにたくさん…どうして…』

「植えた…んだ…」


「お前…と…一緒に…見たくて…」

『…私…と?』



博士は微笑みながら言葉を紡いだ。



「ようやく…わかった気がする…」

「私は…お前に…介護をして欲しかったわけじゃない…」

「私は…優しい…家族が欲しかった…」


「ただ…それだけだったんだ…」
 ▼ 59 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 17:24:53 ID:qlz0j1BA [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「ただ…それだけのことに…」

「こんなにも…時間がかかってしまった…」


『博士…』


「すまない…タブンネ…」

「そして…ありがとう」


「お前は…優しいロボット…いや、家族だ…」

『…うぅ…』グスッ


「本当に…ありがとう…」


『…そんなこと…言わないでください…』ポロポロ
 ▼ 60 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 17:25:27 ID:qlz0j1BA [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「…ああ…最後に…一つ聞いてくれ」


『なん…ですか?』


「お前を…抱きしめたい…」

『…博士…』




ギュッ…



「…今日は…最高の日だ…」

「…可愛い娘と…一緒に桜を…見れるなんて…」



「今まで…本当に…」



「あり…が…とう…」
 ▼ 61 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/16 17:26:01 ID:qlz0j1BA [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


『…博士…?』

「…」




博士はゆっくり、ゆっくりと目を閉ざした。

その表情はとても優しく、私を見守るような笑顔だった。



『はかせぇ…』ポロポロ



博士は笑顔のまま、安らかな眠りについた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ▼ 62 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 14:01:19 ID:u19sUKw2 [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告










一週間後








 ▼ 63 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 14:01:53 ID:u19sUKw2 [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


〜裏庭〜


裏庭の小さな墓の前で、タブンネは座りこんで言った。


『…博士、見てください』


タブンネがタブレット端末を指さした。


【速報:タブンネちゃん、ロボットだった】

【悲報:タブンネちゃんを作った天才科学者、既に死去】

【介護ロボのタブンネを作った人、偉大な天才科学者だった件】



『こんなに色んな人達が博士に注目していますよ』

『…博士は認められたんですよ』


『…今更かも知れませんけど…』
 ▼ 64 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 14:02:32 ID:u19sUKw2 [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


『…それにしても、本当に色々ありましたねぇ…』


『…憶えてますか?博士が黙れって言った時に私がスリープモードに移行したこと…』クスッ


『あの時は、博士の気持ちなんて全く理解出来ませんでしたよ』


『怒りではなく、命令として受け取ってしまって…』


『そこは普通は謝る所ですよね。スリープモードって…』クスッ



『他にも、心のない私を色んな所に連れて行ってくれたり、試してくれたり…』


『博士には感謝してもしきれません。』
 ▼ 65 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 14:03:27 ID:u19sUKw2 [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

『…私、博士に作ってもらえて嬉しかったです♪』


『博士以外の人に作られていたら私はこんなに情緒豊かになることは出来ませんでした。』


『…博士。私からお願いがあるんです』


『…ただのロボットである私が言うのは変かもしれませんが…』


『呼んでいいですか?』



タブンネはゆっくりとその言葉を紡いだ。



『…おとうさん』


そして、ゆっくりとその目を閉ざした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ▼ 66 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 14:59:30 ID:u19sUKw2 [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「う〜んと…ここかな…?」


研究所の前で私服の女看護師は呟いた。


「まさかタブンネさんがロボットだったなんてね。本当にポケモンかと思っちゃった…」


女看護師は手に持っていた地図をしまうと、研究所の中に足を進めた。


・・・
 ▼ 67 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 15:00:05 ID:u19sUKw2 [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


・・・


「あれ?誰もいない…?」



しばらく研究所の中を探してみるも、誰も見つからない。


「書き置きでも残して、また後日訪れよう…」


無人の研究所を不思議に思いながら帰ろうと外に出た女看護師。

すると、入り口付近に車輪の跡を見つけた。


「薄い…車輪の跡…?」


横道に繋がっている車輪の跡を不自然に思った女看護師は、荷物を置いて横道に入った。
 ▼ 68 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 15:00:43 ID:u19sUKw2 [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



横道は、進めば進むほど草が生い茂っていて、コンクリで作られた道は途中から土になっていく。


そして、土にも車輪の跡が残っているのを見た女看護師は進み続け、遂に車輪の跡の終わりを見つけた。




「なに…これ…」



女看護師は目を疑った。

それもそのはず、そこは草花が生い茂る幻想的な場所。


しかし、女看護師を驚かせたのはそれだけではなかった。
 ▼ 69 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 15:02:46 ID:u19sUKw2 [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「なんで…桜が…」


そこにあったのは、もう散っているはずの桜。

それも一本ではない。五本、六本、いや、もっとたくさんの桜が満開に咲いている。


「あ…」


「タブンネさん!」


女看護師は一本の桜の下にタブンネの姿を見つけた。
 ▼ 70 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 15:03:48 ID:u19sUKw2 [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


すぐに駆け寄り、座り込んでいるタブンネに声をかける女看護師。


「タブンネさん!起きて!」

『…』


目を瞑ったタブンネを揺すって起こそうとする。

しかし、タブンネは返事をしなかった。


「タブンネさん!!」

『…』


何故起きないのか、女看護師が考えを巡らせていると、ふとタブンネが寄りかかっていた横の墓石と、片手に持っている千切れた充電器に気がついた。


「…!」
 ▼ 71 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 15:05:03 ID:u19sUKw2 [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



女看護師はそれを見て全てを悟った。


「…そう…」

『…』


ロボットのはずのタブンネは、優しい表情でその墓石に寄りかかっていた。


「…なんて優しい顔…」



見上げると、綺麗な青空で博士とタブンネが一緒に笑っているような気がした。






「…お幸せに…」



 ▼ 72 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/01/17 15:05:53 ID:u19sUKw2 [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




天才すぎて大切な心を見失った孤独な博士。



ロボットのはずなのに心が芽生えたタブンネ。




もう博士は孤独ではない。



心優しい一台、いや、一匹の大切な家族がいるから…──




ー完ー
 ▼ 73 ッキー@ピジョットナイト 16/01/17 16:11:51 ID:q/S6DLYo NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
とても素敵な作品でした。
 ▼ 74 ツバゲンガー 16/01/17 21:41:26 ID:viGZnJOU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(´;ω;`)ウッ…
 ▼ 75 ピナス@アブソルナイト 16/01/17 21:45:39 ID:gXBBKJvE NGネーム登録 NGID登録 報告
おつです

あえて、タブンネを病院に行かせるのがもう……
 ▼ 76 シギソウ@ふたのカセキ 16/01/18 11:48:14 ID:.iSG.9Pg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 77 CSn9vcIqE6 16/01/27 03:15:54 ID:9DL7xglo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
色々考えさせられる話やった…

乙でした!
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