【SS】花屋と七夕と願い事:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】花屋と七夕と願い事:ポケモンBBS

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【SS】花屋と七夕と願い事

 ▼ 1 目のワニノコ◆WaitStCgv. 16/07/07 21:30:12 ID:i3t..e6E [1/47] NGネーム登録 NGID登録 報告




昔、むかし、ある所に一匹のポケモンがいました。

名をジラーチといいます。


ジラーチは、アマノガワという所で平和に暮らしていました。



そんある日、ジラーチは一匹のポケモンに恋をしました。

その子の名を《…………》といいます。


ジラーチはそのポケモンに言いました。


「僕と結婚してください!!」


しかし、返ってきた答えは「NO」。

《…………》は結婚を拒否したのです。

まあ、初対面の者に求婚されて承諾する方がおかしいのですが。
 ▼ 3 WaitStCgv. 16/07/07 21:31:17 ID:i3t..e6E [2/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ですが、ジラーチは諦めませんでした。

毎日毎日、そのポケモンのもとへ行っては結婚を迫りました。


それが間違いだったのでしょう。


とうとう《…………》はジラーチに愛想を尽かし、ジラーチの前から姿を消してしまいました。


それでもジラーチは諦めませんでした。


せめて仲直りだけでもと、居なくなった片想いの相手を一途に探し続けたのです。



しかし、探せど探せど《…………》が見つかることはありませんでした……。

そして、その時のジラーチはまだ知らなかったのです。

自分がしてしまったのは叶わぬ恋であったという事に………───
 ▼ 4 WaitStCgv. 16/07/07 21:33:02 ID:i3t..e6E [3/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告








7月7日 『七夕』









 ▼ 5 WaitStCgv. 16/07/07 21:33:58 ID:i3t..e6E [4/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


そして、時は現代。

夏の日差しも厳しくなり始めた七月上旬。




とある街の、とある商店街。

とある花売りの店で、今日も二匹のポケモンが働いていました。




シェイミ「フライゴンさん、フライゴンさん、これは何ですか?」

フライゴン「ん?」
 ▼ 6 WaitStCgv. 16/07/07 21:34:54 ID:i3t..e6E [5/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


シェイミは店の傍らに立てられている植物を気にしながら訊ねました。

それは至って普通の笹でした。

その笹の近くには、色とりどりの短冊と紐が置かれています。


フライゴン「何だシェイミ。笹を知らないのか?」

シェイミ「ちっ、違います!」

シェイミ「何でこんな所に笹を立てているんですかと聞きたいのです!」


『笹を知らないなんて、花屋としての立場が危ない!』と思い、必死に弁解するシェイミでしたが……


フライゴン「ハハハ。そんな必死にならなくてもシェイミが笹を知ってることくらいわかってるよ」

シェイミ「むっ……」


しかし、フライゴンに茶化されたのを理解すると、シェイミは少し不満げな顔をしました。




フライゴン「この笹は、『七夕』に使うんだ」
 ▼ 7 WaitStCgv. 16/07/07 21:37:27 ID:i3t..e6E [6/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


シェイミ「たなばた?」

フライゴン「ああ。七月の行事さ」

シェイミ「なるほど!」


退屈だったのか、フライゴンはレジカウンターを離れ、花の水やりを始めました。

構わず、シェイミは質問を続けます。


シェイミ「それで、七夕とはどんな事をするんですか?」

フライゴン「えーと、まあ簡単に言えば、笹に願い事を書いた紙を結んで、願い事をするだけだ。」

シェイミ「お願い事……?」


「叶うんですか?」と、シェイミは更に付け足そうとしましたが、その前にフライゴンが言いました。


フライゴン「まあ、願い事って言っても願掛けみたいなものさ。『叶いますように』くらいの心持ちでな」

シェイミ「願掛け……ですか?」
 ▼ 8 WaitStCgv. 16/07/07 21:38:31 ID:i3t..e6E [7/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

フライゴン「まあ俺も深いことは知らないんだけどな。でも、風習みたいなもんだし、一応飾り付けもしておこうかと思ったんだよ」

シェイミ「大事な行事ならなおさらですね」

フライゴン「まあな………」



一旦会話が切れ、数分間の沈黙。

その後、シェイミは思い出したように話を切り出しました。



シェイミ「で、飾り付けというのは?」

フライゴン「ん………ああ、短冊の事か」

シェイミ「たんざく……この紙のことですか?」


シェイミは笹の近くに用意されている短冊を手に取ってみました。

赤、青、黄………

たくさんの色の縦長な紙です。
 ▼ 9 WaitStCgv. 16/07/07 21:40:22 ID:i3t..e6E [8/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


フライゴン「そうそう。この紙に願い事を書いて笹に結びつけるんだ」


そう言うと、フライゴンは一枚だけ短冊を手に取り、器用にペンを持ちました。

そして、短冊に『シェイミの願い事が叶いますように』と書きつけると笹に紐で結びつけて言いました。


フライゴン「こんな感じにな」

シェイミ「なるほど〜!」

フライゴン「シェイミもやってみたらどうだ?」

シェイミ「いえ、私はまだ願い事が決まってないので……っていうか何ですか、その願い事は!?」


シェイミのツッコミをフライゴンは軽く笑って受け流します。

今となっては慣れたものです。
 ▼ 10 WaitStCgv. 16/07/07 21:41:09 ID:i3t..e6E [9/47] NGネーム登録 NGID登録 報告



フライゴン「そうだ。七夕の昔話もしておこうか。」

シェイミ「?」

フライゴン「シェイミ。七夕がなんで7月7日なのかわかるか?」

シェイミ「さあ……?」

フライゴン「昔からの言い伝えがあるんだ。」

シェイミ「言い伝え? 何だか面白そうですね」

フライゴン「だろう?」


フライゴンはレジへと戻り、椅子に腰掛けると昔話を始めました。



 ▼ 11 WaitStCgv. 16/07/07 21:41:55 ID:i3t..e6E [10/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告




フライゴン「昔、織姫という娘と彦星という若者がいたんだ。」

シェイミ「人間ですね。」

フライゴン「ああ。その二人の人間はお互いに一目惚れをしたんだ」

シェイミ「………結ばれたんですか?」

フライゴン「どうだったと思う?」


シェイミ「何らかの障害に阻まれて結ばれなかったとか……ですかね?」

フライゴン「いいや。ちゃんと結ばれたよ」

シェイミ「えっ?」




フライゴン「だが、困ったことに、織姫と彦星は仲良くなりすぎて仕事をしなくなってしまったんだ」
 ▼ 12 WaitStCgv. 16/07/07 21:42:39 ID:i3t..e6E [11/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

フライゴン「それを見て、怒った神様が二人を引き離してしまったのさ……」

シェイミ「そんな……」


フライゴン「でも、あまりにも織姫が悲しむものだから、一年に一度だけ会うことを許したんだ」

シェイミ「あっ、それが……」

フライゴン「そう。7月7日ってわけ。」

シェイミ「なるほど……」


シェイミは納得したような、そうでないような気持ちでフライゴンに言いました。


シェイミ「でも、何だかハッピーエンドなのかバッドエンドなのかよく分からないお話ですね」

フライゴン「ああ。そう言われればそうだな……」

フライゴン「見方によってはハッピーエンドにもバッドエンドにもなるってことだな」
 ▼ 13 WaitStCgv. 16/07/07 21:43:59 ID:i3t..e6E [12/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


フライゴン「まあ、ざっと七夕って行事はそんな感じだ。」

フライゴン「あと、願い事はのんびり考えればいいぞ。願掛け程度のものなんだからな」


フライゴンはそう言うと、スタッフルームに戻っていきました。


ふと見ると、もうお昼です。

シェイミは、お昼休憩の間ずっと笹を見つめていました。



シェイミ「お願い事…………ですか………」





 ▼ 14 WaitStCgv. 16/07/07 21:45:36 ID:i3t..e6E [13/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告






その後、シェイミは願い事を書くことなく営業終了の時間を迎えました。

そして、花屋の二階にある住み込みの自宅へと帰りました。



その時に、シェイミは笹を持ち帰りました。

願い事を書こうと思ったのです。



しかしながら、辺りはすっかり暗くなり、夜になってしまいました。




 ▼ 15 WaitStCgv. 16/07/07 21:47:15 ID:i3t..e6E [14/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



シェイミ「何をお願いしましょう」


住み込みの自宅、リビングにてシェイミは笹を見つめて呟きます。

その前足には短冊とペンが握られていました。


シェイミ「えっと………」


シェイミは考えます。

考えて、考えて、悩むこと数十分ほど経ったでしょうか。



シェイミ「……………」zzz...



なんと!

願い事が決まらぬまま、シェイミは居眠りをしてしまいました。



 ▼ 16 WaitStCgv. 16/07/07 21:47:48 ID:i3t..e6E [15/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告








そして、シェイミはどんどん深い眠りへと落ちて………






 ▼ 17 WaitStCgv. 16/07/07 21:49:32 ID:i3t..e6E [16/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


シェイミ「………ううん…」


シェイミは目を覚ましました。

目が覚めると………そこは見知らぬ場所だった!


………なんてことはないのですが、シェイミはある事に気が付きます。


シェイミ「………これは夢ですね」


そう。目など覚めていませんでした。

ここはシェイミの夢の中です。

本人すらも自覚する程の明晰夢でした。

その原因の一つとして………



ジラーチ「…………」zzz...



知らないポケモンが目の前で眠っていたのです。
 ▼ 18 WaitStCgv. 16/07/07 21:51:13 ID:i3t..e6E [17/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


シェイミ「あなたは誰ですか?」

ジラーチ「ううん……うん?」


シェイミが声をかけると、そのポケモンは目を覚ましました。

と言っても、これは彼女の仮想空間が作り出した幻に過ぎませんが。


ジラーチ「僕………僕はジラーチ」

シェイミ「ジラーチさん?」


ジラーチと名乗ったそのポケモンは、眠たげに目を擦りました。


ジラーチ「あれれ………もしかして、今日は七夕……?」
 ▼ 19 WaitStCgv. 16/07/07 21:52:18 ID:i3t..e6E [18/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


シェイミ「は、はあ……まだ日が変わっていなければ七夕のはずですが……」

ジラーチ「そっか。もう今年の七夕がやって来たんだね」

シェイミ「?」


ジラーチはシェイミに何も説明せず、一匹でブツブツと呟いています。


シェイミ「あの、一体なぜあなたがここに……?」


混乱気味のシェイミはジラーチに尋ねました。


ジラーチ「おっと、ゴメンね」




ジラーチ「僕はジラーチ。ねがいごとポケモンさ」
 ▼ 20 WaitStCgv. 16/07/07 21:52:58 ID:i3t..e6E [19/47] NGネーム登録 NGID登録 報告



シェイミ「ねがいごとポケモン?」

ジラーチ「うん。何でも願い事を叶えるよ」

シェイミ「何でも!?」


ジラーチ「あっ、でも地球滅亡とか、世界征服とか、あまりにも規模の大きすぎる事は無理だよ」

シェイミ「は、はい………」



シェイミは驚きました。

願い事を何でも叶えるなんて、そんな夢みたいなポケモンが自分の目の前にいるからです。

夢なんですけどね。




シェイミ「ジ、ジラーチさんっ!!」
 ▼ 21 WaitStCgv. 16/07/07 21:53:42 ID:i3t..e6E [20/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

シェイミ「私の願い事を聞いていただけますか?」

ジラーチ「うん。いいよ」

シェイミ「ありがとうございます!」


あまりにも話がトントン拍子に進んでいくので、少し不安もありましたが、『夢だから』とシェイミは納得していました。


ジラーチ「ああ、でも、願い事は二つしか叶えられないんだ」

シェイミ「二つまでですか。わかりました」

ジラーチ「それと、もう気づいているかもしれないけど、これは君の中の夢で起こっていることだよ」

シェイミ「はい。気づいてました」


ジラーチ「でも安心して。この願い事は現実にも反映されるから。」

シェイミ「えっ!?」
 ▼ 23 リヤード@ブルーカード 16/07/07 21:54:46 ID:xCHXHu1. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
俺は支援する
 ▼ 24 WaitStCgv. 16/07/07 21:55:37 ID:i3t..e6E [21/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチ「だって、夢の中で願い事が叶ってもしょうがないじゃない」

シェイミ「それはそうですけど…」


このポケモンは一体何者なんだ、とシェイミは思います。

このやりとり自体が夢の中であるという事を認知しているなんておかしな事だからです。



シェイミ「じゃあ、私の願い事を……」

ジラーチ「うん。でもすぐに叶えたら味気ないからお話でもしようよ」

シェイミ「そうですね。ちょうど私も聞きたいことがあったんです」



シェイミとジラーチは改まってソファーに座り直しました。
 ▼ 25 WaitStCgv. 16/07/07 21:56:49 ID:i3t..e6E [22/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

ジラーチ「さて、願い事を叶えるのには少し時間がかかるんだ。その間にお話をしよう」

シェイミ「はい……」

ジラーチ「じゃあ、一つ目の願い事を言って?」

シェイミ「…………はい!」


シェイミはゴクリと唾を呑み、恐る恐る口を開きました。


シェイミ「この前、私がフライゴンさん……シェアハウスしているポケモンの大切なマグカップを割ってしまったんですが、直してください!」


願い事をしたシェイミは心配そうに呟きました。


シェイミ「叶いますか……?」


すると、自信満々にジラーチは言ったのでした。


ジラーチ「もちろん!」
 ▼ 26 WaitStCgv. 16/07/07 21:58:06 ID:i3t..e6E [23/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

ジラーチ「よいしょ……っと」


ジラーチはゆっくりと目を瞑りました。

すると、それと対照的にジラーチのお腹にある眼が開きました。


ジラーチ「さてさて、何から話そうか」

シェイミ「あ、質問いいですか?」

ジラーチ「うん? いいけど………」


目を瞑ったまま応答するジラーチ。

シェイミは気になっていた質問をしました。


シェイミ「ジラーチさん、あなたは一体………」

 ▼ 27 WaitStCgv. 16/07/07 21:59:25 ID:i3t..e6E [24/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチ「…………」

シェイミ「…………」


沈黙。

その質問を受けたジラーチは少し驚いた様に口を開けると、答えづらそうに笑いました。


ジラーチ「いきなりその質問をされるとは思わなかったよ……」

シェイミ「あの、答えたくなかったら別に答えなくても……」

ジラーチ「いや、説明するよ」



ジラーチは、やはり目を瞑ったまま話を続けます。
 ▼ 28 WaitStCgv. 16/07/07 22:00:28 ID:i3t..e6E [25/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチ「実は僕、本当はもうこの世には存在しない者でね………」

シェイミ「えっ……………?」



シェイミ「そ、それってつまり……………」


シェイミは恐る恐る口を開きました。

すると、ジラーチは一言。


ジラーチ「うん。幽霊なんだ」


憂いのある表情でその事実を明かしました。




シェイミ「えええええええええっ!?」

 ▼ 29 WaitStCgv. 16/07/07 22:09:30 ID:i3t..e6E [26/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチ「そんなに驚かないでよ〜」

シェイミ「驚かないでって言われても! 幽霊って……」

ジラーチ「本当は薄々気づいてたんじゃないの〜?」

シェイミ「いや、どう考えても幽霊だなんて思わないですよ。普通に会話してますし……」


シェイミは冷や汗を垂らしました。

と、その時です。

ジラーチのお腹の眼が閉じ、顔の目が開かれました。


ジラーチ「あ、終わったよ」

シェイミ「終わった……というのは……」

ジラーチ「うん。現実のマグカップは元通りのはず…」

シェイミ「す、凄いですね………ありがとうございます」
 ▼ 30 WaitStCgv. 16/07/07 22:10:18 ID:i3t..e6E [27/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチ「さあさあ。次の願いは何かな?」

シェイミ「次の願い……って言っても、もう願い事ないんですが……」

ジラーチ「………え?」


ジラーチは拍子抜けした声でシェイミを見やりました。

一方のシェイミは冷や汗を垂らしています。


ジラーチ「もうないの……?」

シェイミ「ないです」

ジラーチ「お金とか、名声とか……そうだ。振り向かせたい男だって虜にできちゃうよ!?」

シェイミ「うーん………いいです」


ジラーチ「えええ〜………」

 ▼ 31 WaitStCgv. 16/07/07 22:11:12 ID:i3t..e6E [28/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

ジラーチ「そんないい子ぶらないでさあ。もっとこう……」

シェイミ「いい子ぶってないですよ」


シェイミは静かに微笑み、目を瞑って言葉を続けました。


シェイミ「お金は自分達で稼ぎますし、名声なんて必要ありません。それに、私はちゃんと自分の力でフライゴンさんと付き合っていきたいですから……!」




ジラーチはポカンとした表情で、何も言えませんでした。



シェイミ「あっ、そんな事よりもお話の続きを……」
 ▼ 32 WaitStCgv. 16/07/07 22:12:29 ID:i3t..e6E [29/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

ジラーチ「話………ああ、僕についての……」


ジラーチはまだ驚きを隠せずにいましたが、シェイミが再び質問を投げかけます。


シェイミ「幽霊とは………?」

ジラーチ「幽霊だよ。地縛霊なのかな?」


落ち着きを取り戻しながらジラーチは続けます。


ジラーチ「僕には昔、好きな子がいたんだけど振り向いてもらえなくてね……」

ジラーチ「結局、僕は想いを伝えられずに死んじゃったんだ」


シェイミ「…………」

ジラーチ「こんな未練、女々しいかい?」

シェイミ「……そんなことないですよ。」
 ▼ 33 WaitStCgv. 16/07/07 22:13:16 ID:i3t..e6E [30/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチ「ちなみに、それからというもの、7月7日の七夕にだけ誰かの夢の中に現れるようになったんだ」

シェイミ「それで今年の七夕は私に……」

ジラーチ「そういうこと。で、僕は願い事を叶えてまた来年へと眠りにつくんだ」

シェイミ「そういう事だったんですか……」


ジラーチの話を真剣に聞くシェイミ。

ジラーチはすっかり心を許して、最後まで身の上話をしてしまいました。



それから、二匹は長い時間語り合いました。
 ▼ 34 WaitStCgv. 16/07/07 22:14:47 ID:i3t..e6E [31/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチ「………おっと、もうそろそろ七夕が終わっちゃう頃かな」

シェイミ「お別れですね……」

ジラーチ「……嫌だなぁ。せっかく心からの友達ができたのに……」


ジラーチは別れを惜しむように残念がりました。

すると、シェイミは何かを思いついたようにジラーチを呼びました。


シェイミ「そうだ! ジラーチさん!!」

ジラーチ「?」



シェイミ「私のもう一つのお願い事を聞いてもらってもいいですか?」
 ▼ 35 WaitStCgv. 16/07/07 22:16:38 ID:i3t..e6E [32/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチ「いいけど……」


訝しげに返事をするジラーチでしたが、特に困る様子もみせず、二つ目の願い事を引き受けました。



シェイミ「では、お願いしますね………」


シェイミはゆっくりと息を吸うと、ハッキリと言いました。






 ▼ 36 WaitStCgv. 16/07/07 22:17:05 ID:i3t..e6E [33/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告









「ねがいごとポケモン『ジラーチ』の願いを叶えて下さい」






 ▼ 37 WaitStCgv. 16/07/07 22:17:50 ID:i3t..e6E [34/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





ジラーチ「…………えっ?」


ジラーチは意表をつかれたようで、聞き返しました。


シェイミ「………ダメですか?」

ジラーチ「…………は……はは…」


初めてだったのです。

願い事を使って強欲な願いを叶えようとしない者が。

その願い事の枠を使って、自分の幸せを願ってくれる者が。


ジラーチは笑いました。



ジラーチ「………キミみたいなポケモンは初めてだよ。」
 ▼ 38 WaitStCgv. 16/07/07 22:18:30 ID:i3t..e6E [35/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告






ジラーチ「でも、ありがとう………」




シェイミ「…………!」






ジラーチは心から感謝しました。

シェイミはニッコリと笑って、感謝を受け取りました。


すると、まるで長年の呪縛から解放されるようにジラーチの身体を光の粒子が纏います。

 ▼ 39 WaitStCgv. 16/07/07 22:20:08 ID:i3t..e6E [36/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジラーチは最期に一言だけ言い残しました。







「僕達、ずっと友達だよね……?」









その言葉に、シェイミは笑みを絶やすことなく、ゆっくりと頷いたのでした。
 ▼ 40 WaitStCgv. 16/07/07 22:20:40 ID:i3t..e6E [37/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告








・・・









 ▼ 41 WaitStCgv. 16/07/07 22:21:20 ID:i3t..e6E [38/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告




シェイミ「………ん……」


「あれ。起きたのか」


目を覚ますシェイミ。

そこにはフライゴンの姿が。


シェイミ「ここは………」


もちろん、自宅です。

ただ、先ほどの夢と大した違いはなかったので変な感覚を覚えがちでしたが。

違いがあるとすれば、ジラーチがいない事くらいでしょう。



シェイミ「………夢から覚めたんですね」
 ▼ 42 WaitStCgv. 16/07/07 22:22:08 ID:i3t..e6E [39/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



シェイミは少し悲しくなりました。

いえ、どちらかと言うと悲しみよりも寂しさの方が強かったのですが、とにかく彼女は切なさを感じていました。


ジラーチの願い事は叶ったのか。

ジラーチは幸せになれたのか。


心配は募るばかりです。


シェイミ「………そもそも、ジラーチさんは何を願ったのでしょう」

フライゴン「………どうしたんだ? シェイミ。」

シェイミ「あっ、いえ。何でもないです」
 ▼ 43 WaitStCgv. 16/07/07 22:23:19 ID:i3t..e6E [40/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

フライゴン「もうすぐ七夕が終わっちゃうからな。星でも見ようぜ」

シェイミ「えっ? まだ終わってなかったんですか?」


特に驚く事でもなかったのかもしれませんが、シェイミは聞きました。


フライゴン「ああ。もうすぐ日をまたぐけど……」


フライゴンはそう言うと、「先に出てるぞ」とドアを開けて外へと出ました。

まだシェイミはさっき見た夢の余韻に浸っています。


シェイミ「……………あっ」


しかし、テーブルに目をやったシェイミはある事を思い出します。


シェイミ「短冊……!」
 ▼ 44 WaitStCgv. 16/07/07 22:23:56 ID:i3t..e6E [41/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


そうです。

まだ現実では何も願い事をしていませんでした。


無論、テーブルには置きっぱなしの短冊が。


シェイミ「日が変わっちゃう……!」


シェイミは急いでペンを持ち、短冊に願い事を書き込みました。

そして、フライゴンの後を追うように外へと急ぎます。



 ▼ 45 WaitStCgv. 16/07/07 22:24:40 ID:i3t..e6E [42/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

七月の外は少し涼しくて、でもやっぱり少し暑いような、夏の訪れを感じる気温でした。


フライゴン「遅いぞ、シェイミ」


外に出ると、フライゴンは一階と二階を繋ぐ階段で待っていました。

シェイミは駆け寄り、フライゴンの横に座りました。


フライゴン「ほら、星が綺麗だろ?」

シェイミ「本当ですね……」

フライゴン「ん………あれ?」


フライゴンは不思議な様子で星を眺めています。

シェイミがどうしたのかと聞くと、フライゴンは言いました。


フライゴン「星が二つ…」
 ▼ 46 WaitStCgv. 16/07/07 22:25:46 ID:i3t..e6E [43/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



シェイミもフライゴンの様に空を見上げると、確かにたくさんの星の中で特に煌めく星が二つほどありました。


シェイミ「………綺麗ですね!」

フライゴン「おかしいな。あんなに綺麗な星は一つしかなかった気がするんだけどな………」

シェイミ「……………」


シェイミはその言葉を聞いて、フライゴンにはわからないように笑みを浮かべました。


シェイミ「いいじゃないですか。ほら、織姫と彦星みたいで」

フライゴン「………そうだな!」


 ▼ 47 WaitStCgv. 16/07/07 22:27:11 ID:i3t..e6E [44/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





やがて、その星が本当に織姫と彦星に見立てられる事になるとは今の彼女らにはまだ知りません。



ただ、シェイミ達の遥か上空に現れたその新しい星は まるで


「ありがとう」


と言っているように、一際輝くのでした………───









 ▼ 48 WaitStCgv. 16/07/07 22:28:27 ID:i3t..e6E [45/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
【SS】花屋と七夕と願い事


〜 お し ま い 〜
 ▼ 49 WaitStCgv. 16/07/07 22:30:55 ID:i3t..e6E [46/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告




         友
         達
         の
     叶   願
     い   い
     ま   事
     す   が
     よ    
シ    う    
ェ    に    

 ▼ 50 WaitStCgv. 16/07/07 22:32:17 ID:i3t..e6E [47/47] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
【おまけ】


フライゴン「………ん?」


















フライゴン「……マグカップが直ってる」


〜完〜
 ▼ 51 バット@かわらずのいし 16/07/07 23:19:18 ID:BIDSJDm2 NGネーム登録 NGID登録 報告
お疲れ様〜
今回も安定のクオリティで面白かった
 ▼ 52 のまめ◆e4c9zWx4Mc 16/07/07 23:36:11 ID:M53cpLaI NGネーム登録 NGID登録 報告
お疲れ様
良い話だった
 ▼ 53 CSn9vcIqE6 16/07/08 07:47:31 ID:aFC8N0cU NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援&乙でした!
 ▼ 54 ルガルド@れいかいのぬの 16/07/08 13:15:36 ID:ic8gqb5c NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 55 ガサーナイト@コンテストパス 16/07/08 13:25:05 ID:iJ8bz34k NGネーム登録 NGID登録 m 報告
乙!
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