ゲスは死んだ:ポケモンBBS(掲示板) ゲスは死んだ:ポケモンBBS

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ゲスは死んだ

 ▼ 1 クリン@ホイップポップ 16/08/27 09:29:33 ID:xhlNkTIw [1/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゲスは死んだ

ゲスは死んだ!
ゲスは死んだままだ!

我々がゲスを死なせたのだ!
あらゆる英雄の中の英雄である自分たちを、我々はどう讃えればよいのか?
 ▼ 2 ーバーン@ミュウツナイトY 16/08/27 09:30:15 ID:xhlNkTIw [2/25] NGネーム登録 NGID登録 報告


「それでですねぇ、どうしても高い段差があってその家の人のところにお邪魔したことなかったんですよぉー」

少女は何気ない話を本当に楽しそうに僕に語りかけた。
相槌を打ってやると、水を得た魚のようにまた言葉を続ける。

「でもでも! この前、雪が積もってる季節に街に行ったら、なんと! 段差が雪に埋もれてお宅訪問成功です! もう一体いつもどうやってお家に帰っているんでしょうねぇ?」
「鳥ポケモンに運んでもらってるんじゃないのかい?」
「そっか! さすが、Nさん! 頭いいです」

ぽんっとまるで漫画の一コマのようなオーバーリアクションで手を叩いてみせた。
あんぱんを二つ載せたような自身の髪型と同じくらい間抜けな仕草だ。
彼女は頭がお世辞にもいいわけでも、バトルが圧倒的に(かの英雄のように)強いわけではない。
にもかかわらず、彼女こそが、あの伝説の英雄たる少女の後継者であり、現チャンピオンであるということに、どこか納得しうるところがある。

少なくとも、あの日ボクが王様になれた未来よりもずっと。

そんなボク達がなぜ、このようにカフェで二人でお喋りなんてしているのかといえば、それは純粋にさっき偶然にばったり出くわしたからにすぎない。
お互いに時間にもお金にも自由がきく、悠々自適の人間である。

チャンピオンはリーグの季節以外は放浪も自由、給金も悪くないようである。
一方僕はといえば、プラズマ団が完全に解散したのち、関係者への償いの旅を続けていた。プラズマ団や、現在失踪中のゲーチスのお金は差し押さえられたものの、ボクのところにあったものや城に残ったものはボクの管理下にある。それゆえ、生活自体は特にひどく困窮しているわけでもなかった。

たまたま会ったからとりあえずお喋りをしている。
何を話していいかわからないために、こんなよくわからない世間話を続けている。
 ▼ 3 クタス@ハンサムチケット 16/08/27 09:30:26 ID:l60U2NpY NGネーム登録 NGID登録 報告
45れば、ええんやで
 ▼ 4 シギバナ@おちゃ 16/08/27 09:30:39 ID:xhlNkTIw [3/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そういえばですね、Nさん」

また相変わらず大したことない話を続けるのかと思って、ぼんやり耳を傾けていたところ大変な爆弾を落とされた。

「ダークトリニティの三人組に、定期的に会っていたんですけど」

聞いていない。

「彼らと最近全然会えなくって」

聞いていない。

「一体どうしちゃったんでしょう?」

聞いていない。

「キミそれって本当かい?」

思わず勢い良くテーブルを叩いてしまった。
驚いた彼女はおどおどと話し始める。

「す、すみません。最初からそれが言いたくて話しかけたんですけど……、なんか切り出しづらくて……」
「まぁ、そうだよね」
「定期的に会ってるって言っても、それはなんか偶然を定期的に繰り返しているだけで!!」
「そう」
「はい‥‥」
 ▼ 5 ンボラー@あさせのかいがら 16/08/27 09:31:00 ID:xhlNkTIw [4/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
けれど、それにしても、ダークトリニティが姿を見せていたことは興味深い、急にどこかに消えてしまったのも興味深い。
プラズマ団としての贖罪を進めることがあったとしても、あの人達とはもう関わらないつもりでいた。
それはあの日の決別の結果である。
僕はあの人の子供ではなくなってしまったということだ。
お互いに縁は断ち切られた。

「ダークトリニティの皆さん、ゲーチスさんと一緒にいるみたいで。私のこと見るたびに突っかかってバトルしてくるんですよ。お前のせいとか言って」

それはそうだろう。
本当にそれを伝えたい相手はきっとボクなんだけど。

「あ、でも。最後に会った時は違くて、えっとなんて言ってたんでしたっけ」

自慢の髪の毛をぐじゃぐじゃとかき回して考える。
ボクはじっとその様子を見つめ、答えを待つ。

「そうだ。



 神は死んだ。



 って」
 ▼ 6 ーランド@アブソルナイト 16/08/27 09:31:28 ID:xhlNkTIw [5/25] NGネーム登録 NGID登録 報告


神は死んだ!
神は死んだままだ!

我々が神を死なせたのだ!
あらゆる殺害者の中の殺害者である自分たちを、我々はどう慰めればよいのか?

 ▼ 7 ンカラス@むしのジュエル 16/08/27 20:52:32 ID:xhlNkTIw [6/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
神とは一体何者であろうか。

伝説に、神話に生きるポケモンがこの世の中にはたくさんいる。
その中でも、ついこの間、東方の国において『創造神』かつ『唯一神』たるポケモンが発見されたともいう。

全てを作り上げた神たる存在。
それをポケモンという枠に当てはめていいのか。

そのような考察は僕の役目ではないのでやめておくが、ダークトリニティの言った神というのはきっとこのようなものではないだろう。
もっと個人的な信仰。
それに値する人物。

おおよそ1名しか出てこない。

神が死んだことで、彼らは完全に解放された。
それゆえ、もう英雄の前に姿を現さなくなった。
そういうことだろうか。
 ▼ 8 ンクルス@あくのジュエル 16/08/27 20:53:06 ID:xhlNkTIw [7/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
神は死んだ。

死の定義とは何か。

それは命の鼓動を止めることだろうか。
それは生きることを止めることだろうか。

本当に彼が死んだとしたら、ボクは。



確かめずにはいられなかった。
もう彼らと関わることはないと思っていたが、こうなってしまえば仕方がない。
縁は切れたはずであっても、ボクらは。


ボクらは何者かであったはずなんだ。
 ▼ 9 ツハニー@パワフルハーブ 16/08/27 20:53:37 ID:I5n0nnAI NGネーム登録 NGID登録 報告
なんだこれ?
 ▼ 10 ーゴート@トロピカルメール 16/08/27 20:53:41 ID:xhlNkTIw [8/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
まず最初に、どこかの医療機関にかかっていないかを調べた。
ただ、考えてみれば、国際警察から指名手配中の分際である。
正攻法で彼が病院に行くことはできない。

そこで、僕はちょっとだけこの能力を悪用することにした。
ポリゴンというポケモンがいる。
電脳世界を駆ける能力を持つポケモンだ。
イッシュではあまり姿を見ることのないポケモンだが、どうにかして彼とトモダチになりキョウハンになってもらうことにした。

そこからは一瞬だ。
彼が偽名を使ってある違法な病院に入院していることがわかった。ただそこまでだ。


ポリゴンの力をもってしても、なぜ入院しているのかはわからなかった。
 ▼ 11 メテテ@ねむけざまし 16/08/27 20:54:08 ID:xhlNkTIw [9/25] NGネーム登録 NGID登録 報告


ボクはこの情報を手に入れ、すぐにお見舞いに行く支度をした。
あれほどまでにもう関わらないと決めていたはずなのに、いざ死ぬとなったらやはりどうにも放っておけなかった。
ボクは他人にはどうやらなれないらしい。
あの人が、僕をあっさり切り捨てたことを思うと、少し悔しい。

ボクだけがこんにあの頃から停滞している。

 ▼ 12 ガジュペッタ@プレミアボール 16/08/27 20:54:53 ID:xhlNkTIw [10/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
病院は見たところ、いたって普通の病院だった。
闇医者とかそういう怪しいものではどうやらなさそうだ。

受付に行くと、訪問届けをもらえた。
患者との関係の欄に平然と息子と書き、名前を書いた。
看護師は苗字が違うことに少し怪訝な顔をしながらも、珍しい黄緑の髪を見て納得した。
引き換えに首から下げるお見舞い客用のカードをもらい、ボクは一直線にゲーチスの病室を目指した。

病室の前にはいつかゲーチスがひきつれていた、そしてメイが定期的に会っていたというダークトリニティの一人が番をしていた。

ボクがさも当然という体で中に入ろうとすると、すぐさま呼び止められた。

「お前、どのツラを下げてここにきた」
「息子、だよ。ボクはそう思っている」
「ゲーチス様はそうは思っていない」
「だけどボクは息子だ」
「本物ではないと知っている」

咄嗟にダークトリニティは声を荒げる。

「ここは病院だ。静かにしたほうがいいと思わないかい? それにゲーチスが起きたら困るだろうね」

そういえばもうどうにも言い返せないだろうと、ボクはタカをくくっていた。
それは実際に正解であった。
ただ、ダークトリニティは自嘲するように笑った。

「……お前も中で確かめてみるがいい」

それだけ言うと、あとはだんまりだった。
ただ背を壁に凭れかけ、部屋に入っていくボクを静かに見送った。
 ▼ 13 ビィ@ちからのこな 16/08/27 20:55:15 ID:xhlNkTIw [11/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
部屋は個室だった。
心臓の鼓動を測る機械の音だけが鳴り響く部屋。
中に入るとダークトリニティの残りの片割れが窓を背に、荷物置きの脇の椅子に座っていた。
こちらを一瞥すると、舌打ちをし、そしてこちらに来ようとするのを制して言った。

「手をしっかり洗え」

どうやらもう、ここに来たこと自体に突っかかられることはないらしい。
なんだか不気味だが指示通り、部屋の中の方に入っていく前に、入り口脇の手洗い場で丁寧に手を洗った。

「荷物はないか?」

ボクが首を振ると、

「ならいい。あとは好きにしろ。ただ、手を握ったりゲーチス様やそのベッドにはあまりベタベタ触るな」

やっと入室の許可が出たみたいだ。
恐る恐るベッドに近寄っていくと、いつかの姿からもさらに衰えた骨ばんだ足が見えた。
あと少し嫌な薬の匂いがした。

けれども、ここまで来てしまった以上、中へと一歩一歩歩いていく。
 ▼ 14 レセリア@ハーバーメール 16/08/27 20:56:01 ID:xhlNkTIw [12/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゲーチスは鋭い眼光を隠すように瞼を下ろし眠っていた。
もともと白かった肌は、いよいよ青白く、もともと骨と皮しかなかったような腕はもうほとんど骨の形がくっきり見えた。
威圧するように伸びていた髪の毛はしおれてしまったかのように垂れ下がり、いつもは派手な服でごまかしていた肉体の衰えを初めてくっきりと見た。
そして何よりも首が、もう首がずっと細かった。
触っただけで折れてしまいそうなくらい。
それでも必死で呼吸をしようと喉が絶えず動いている。
鼻で息をするのが辛いのか、ずっと口で息を吸って吐いてを繰り返しているのだ。

生きていた頃の輝きは見当たらなかった。
もう何が何だかわからない。
嫌な臭いはもう気にならなくなっていた。
それ以上に気味が悪かった。

このまま帰ってしまおうか。
もう見舞いに来たのだから十分だろう。
しかしながら、どうにもボク自身が今何もしないということに納得できなかった。

ダークトリニティがボクを招いたわけがわかったような気がした。

「ボクだよ。N。久しぶり、とうさん」
 ▼ 15 ンムー@ポイントマックス 16/08/27 20:56:42 ID:xhlNkTIw [13/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
空いていない瞳を見つめ、語りかける。

「きました。ボクがきました。ボクは今、元気に何とかやっています。
 とうさんのやったことは正しいなんて絶対に思わないので、頑張って贖罪の旅をしています。
 いろんな人が、いろんなポケモンが、いろんな関係がありました。
 いろんな世界がありました。
 それを知るたびにボクは、ボクが歩いてきた道がなんて恥ずかしくて無知の上に成り立っていたのか、
 そしてポケモンと話せる能力を持つというだけでのぼせていたボクがなんて無力だったかに気づきました。

 ボクは今歩いています。
 トモダチとともに歩いています。
 ゲーチスには、そんな人、いましたか?」

ゲーチスが瞼をゆっくりと開く。
奇跡が起きた気がした。

ダークトリニティも異変に気付き、慌てて近寄ってくる。
 ▼ 16 ッツー@シルフスコープ 16/08/27 20:57:10 ID:xhlNkTIw [14/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
焦点の合わない緑の瞳。
何が一体見えているのだろうか。
本当にボクが見えているのだろうか。


「……ああ」


言葉にならない声がこぼれ落ちる。
ボクたちはじっと耳を傾ける。


「…いぇ………ううぅ……………」


カサカサと乾いてしまった唇が小刻みに動く。


「バ………ケモ…………ノ……………」


ゾッと心が一気に冷えていく。
ああ、ボクは何をしに来たのか。
さっき役目に気づいたなんて思ったが、何だったのだろうか。
こんな役目を果たすためにボクはここに来なくてはならなかったのなら、それはなんていう運命だろうか。


ただあの日と一つ違うことがあるとすれば、あの日の力強さはもう彼に残っていなかったことだ。
 ▼ 17 ダック@プロテクター 16/08/27 20:57:51 ID:xhlNkTIw [15/25] NGネーム登録 NGID登録 報告


ゲスは死んだ!
ゲスは死んだままだ!

我々がゲスを死なせたのだ!
あらゆる英雄の中の英雄である自分たちを、我々はどう讃えればよいのか?


 ▼ 18 ロアーク@ヒウンアイス 16/08/27 20:58:18 ID:xhlNkTIw [16/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
あとは言葉にならない唸り声をひねり出しては口を閉じひねり出してはといった風であった。
やっと口を閉ざしたかと思うと今度はまた眠りの方へと体を任せていく。

その一連の姿をじっと眺めていた。

元気とは言えなかったが、まだ生きていた。
会話はできなかったが、言葉は聞けた。
これはまぁ良かったことかもしれない。
それ以上に悪いことがぐさりと胸に突き刺さっている。

そろそろこの場を離れようと背を向けたところで、ガタンという音がした。
思わず振り返る。
ゲーチスの腕がバタンバタンと暴れていた。
一人でに震え大きな音を立て跳ねていた。

なんだこれは。
これは人間なのか。
本当に。

筋肉というバネが狂ったように腕を動かす。
バタンバタン。
ダークトリニティ、一体これはと話しかけようとするが、彼は何事もないように座っている。
いつも、こうだ、ということか。
 ▼ 19 ーナンス@ばんのうごな 16/08/27 20:58:56 ID:xhlNkTIw [17/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
神は死んだ。

とダークトリニティは言い残したと聞いた。
神とは何か。

彼らの神とは何か。

それはボクには全くわからないものだけれど、ただ失ったことの重みを胸に感じた。


今度こそ一刻も早くこの場から逃げ去った。
足早に部屋を出ようとすると、ダークトリニティは入った時と同じ口調でこう言った。

「手をしっかり洗え」
 ▼ 20 バルドン@こぶしのプレート 16/08/27 20:59:40 ID:xhlNkTIw [18/25] NGネーム登録 NGID登録 報告



ボクはこの時ある決意をした。
いいや、決意なんてものではない。
使命だ。

ボクは共犯者をこの場に連れてこなくてはならない。

 ▼ 21 ーブシン@ピーピーエイド 16/08/27 21:00:23 ID:xhlNkTIw [19/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
ボクは定期的にゲーチスの下を訪れるからわら、彼女を探し続けた。
またポリゴン2に頼んだりもしたが、彼女を捕まえるのにはネットの輪だけでは不十分だった。なんとか渡航履歴から現在イッシュんどこかにいることだけは探し当てた。
あとは、可能な限りの会った人に、彼女と遭遇したら連絡するよう頼むことを無心に繰り返した。
顔をどうにも合わせづらいチェレンやベルをはじめとした彼女の知り合い、そして贖罪を続ける女神たちに。もちろんメイにも同じことを頼んだ。
ただ、その誰にも彼女を探す真の理由については伝えなかった。
一つは、それを伝えたら彼女を探す協力をしてくれなくなってしまうかもしれないという危惧からだが、それ以上に誰にもゲーチスが死んでいくことについて根掘り葉掘り聞かれたくなかったからだ。
なぜ聞かれたくないのかはわからないが、ひたすらに嫌悪感があった。

神が死んだことを、ある人は論理立てて民衆に伝えなければならないと考えたらしい。しかし、彼は残念ながら誰にも受け入れられず、人里離れた世界に一度戻ってしまった。
絶対視された存在が失われたことを、信じるのは難しい。それこそ賢者だけが彼の言葉を受け入れた。
決して民衆は愚かだと言いたいわけではない。
ただ、神の死はあまりにも受け入れがたい出来事だった。
ボクにはそれを説明することができないし、ボクも未だ神の死を認められない民衆に過ぎないのだ。
 ▼ 22 リデプス@エレベータのカギ 16/08/27 21:01:12 ID:xhlNkTIw [20/25] NGネーム登録 NGID登録 報告


神は死んだ!
神は死んだままだ!

我々が神を死なせたのだ!
あらゆる殺害者の中の殺害者である自分たちを、我々はどう慰めればよいのか?


 ▼ 23 ルキー@ながながこやし 16/08/27 21:01:38 ID:xhlNkTIw [21/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
やっと彼女を見つけた、その連絡が来たのはあの日から二週間も経った頃であった。彼女が見つかるのが先か、ゲーチスが死ぬのが先かと怯えていたがなんとか間に合った。
彼女を見つけたのはやはりメイであった。
メイと彼女の間に面識はなく、見つけたのはボクの教えたわずかな情報と直感によるものであった。何か引き合うものがあったのか、やはり偶然出くわしたらしい。

「でも、全く奇妙な話よねー。だって、私あの子のことなんてそれはもう新聞で名前を聞いた事あるくらいで、あの子だって同じなのよ」
「そうだろうね」
「ええ、そうなの。まぁだから逃げきれなかったんだけど」
「逃げてたのかい?」
「逃げてた。何もかもから」

二人で病院に向かいながら何気ない会話を繋げていく。無言というのもさすがに気まずいから場を濁す程度の意味しかない。

「私さ、英雄になったじゃん」
「そうだね」
「でも、別に私フツーに旅してるだけだったじゃん。私にはイデオロギーも理想も真実もなかったわけよ。あんたと違って」
「そういえばキミはあの頃から何も主張しなければ、何もしなかった。ただ、ポケモンバトルが強いだけだった」
「そ。それだけ。なのにさぁ、みーんな私がチャンピオンになるとかうんとかうるさいわけよ。すっごく。耐えられなくって。逃げちゃった。アデクさんもいたし」

何てことない風にとんでもないことを言うのは、彼女もメイも同じだと思った。
 ▼ 24 タッコ@パワーベルト 16/08/27 21:02:45 ID:xhlNkTIw [22/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
「一度逃げちゃうと、自分を知っている人に会うのが怖くなって、そこからは悪の無限ループ。誰にも会いたくなくて逃げ回ってた。イッシュに帰ってきたのも、親に顔見せるためだけだったしね」
「親……か」
「まぁ放っておけないの。どうしても。ただやっぱりさ、故郷が一番落ち着く場所みたい。どこにいっても結局私は他人にしかなれなかったの」

少し寂しそうに笑う彼女は、もうきっとバトルだけを愛したあの日の少女とは違う存在になってしまったのかと気づいた。

もうあの日の共犯者の少女はどこにもいない。

ピュアでイノセントな英雄たちがゲーチスを倒した。
彼らは心のそこから信ずるイデオロギーも熱意もなかった。普通に生きてきた結果彼らはゲーチスを倒した。
普通に生きるとは、それはその人らしく、その人のできるようにまっすぐに生きるという意味だ。それ以上でも以下でもなく。
ボクの人生も、彼女の人生も、一般から大きく外れ普通とは言えないだろう。
けれども、ボクらはその瞬間瞬間の最善を選び取った。そこにはただ今を「普通に」生きている以上の考えはなかった。

ボクは彼女を病院に連れていくことをやめた。
それに意味がないと気づいた。

彼女とはちょっとお喋りをしただけで別れた。


その日ゲーチスは死んだ。
 ▼ 25 ュシュプ@バトルレコーダー 16/08/27 21:03:44 ID:xhlNkTIw [23/25] NGネーム登録 NGID登録 報告


ゲスは死んだ!
ゲスは死んだままだ!

我々がゲスを死なせたのだ!
あらゆる英雄の中の英雄である自分たちを、我々はどう讃えればよいのか?


 ▼ 26 イチュウ@チーゴのみ 16/08/27 21:04:25 ID:xhlNkTIw [24/25] NGネーム登録 NGID登録 報告
葬式はゲーチスの手持ちたちとダークトリニティの三人、そしてボクだけで行われた。
イッシュでの普通の葬式とは違い、その場には神もいなければ、神の言葉を語るものもいなかった。
まぁ当然と言えよう。
ボクらにとって神は二人いても無意味である。

最後はサザンドラが棺に入った遺体を燃やし切った。
この時ばかりはボクもポケモンの言葉を聞いたりしなかった。それは無粋なことだとよくわかっていた。
あれほどに恐ろしく強大であった存在は一瞬にして灰へかえり、全てが終わった。
 ▼ 27 ビィ推し◆3FwOd6PnI. 16/08/27 21:04:40 ID://a1bgeU NGネーム登録 NGID登録 報告
SS…なのか
 ▼ 28 レッグル@ダートじてんしゃ 16/08/27 21:04:55 ID:xhlNkTIw [25/25] NGネーム登録 NGID登録 報告



神は死んだ!
神は死んだままだ!

我々が神を死なせたのだ!
あらゆる殺害者の中の殺害者である自分たちを、我々はどう慰めればよいのか?




終わり
 ▼ 29 ドリーノ@チルタリスナイト 16/08/27 21:09:06 ID:zqEWn4kw NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
拍手する
 ▼ 30 ートロトム@ラティオスナイト 16/08/27 21:09:19 ID:SdgW6JsA NGネーム登録 NGID登録 報告


ビッパの口調マネようと思って開いたら予想外に面白いのがあってビックリ
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