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SS

【SS】不思議なバッジと救助隊

 ▼ 1 WaitStCgv. 17/01/29 00:02:44 ID:KUrKB8YE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

何も考えられなかった。

何も感じなかった。


私は考えることも感じることもない、ただの野生のポケモンだった。





貴方が私を闇の中から救い出してくれるまでは。



 ▼ 19 リゴンZ@キラキラメール 17/01/30 17:56:07 ID:RsL1Ta1k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 20 モンガ@ボロのつりざお 17/01/30 17:58:49 ID:xQMTR552 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>17
古豪復活、ってことか
 ▼ 21 WaitStCgv. 17/01/31 17:20:16 ID:BWb35u.o [1/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

最深部へ向かう道中。

ただ歩くだけではつまらなかったので、ピカチュウに話を振ってみた。


イーブイ「ねえ、ピカチュウ」

ピカチュウ「ん?」

イーブイ「さっきのバッジの話なんだけど……」

ピカチュウ「……うん」

イーブイ「寂しさを紛らわすためってどういうこと?」

ピカチュウ「………」


私が聞いた途端にピカチュウの顔つきが変わった。

少しの間、沈黙が流れる。


しばらくして、ピカチュウは声を喉から押し出すようにして言った。


ピカチュウ「……死んじゃったんだ」

イーブイ「……えっ?」
 ▼ 22 WaitStCgv. 17/01/31 17:21:21 ID:BWb35u.o [2/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ピカチュウ「ボクの住んでる村にいたポケモン……」

ピカチュウ「みんな、野生のポケモンに殺されちゃった」


イーブイ「………!」


あまりにも衝撃的な告白に、声が出なかった。

そんな私に目を合わせることなく、ピカチュウは震えた声で言った。


ピカチュウ「ボクは………独りぼっちなんだ」





私が感情を手に入れてから、どれくらいの時間が経っていたのだろう。

多分、まだ数時間程度だったと思う。

なのに、心臓を鷲掴みにされたような胸の痛みを感じた。
 ▼ 23 WaitStCgv. 17/01/31 18:12:03 ID:BWb35u.o [3/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ピカチュウ「……みんなはボクを置いて遠いところへと行ってしまったよ」

ピカチュウ「……ボクがもっと強ければ、村のみんなを助けてあげられたのかな」

イーブイ「……」

ピカチュウ「……独りは辛いよ」


彼の強さの秘訣が少しだけわかった気がした。

同時に、失ったものの大きさも。


ピカチュウ「だから、野生のポケモンが自分の意志を持って………友達になれたらと思って発明したんだ」


ピカチュウはバッジを握りしめた。

背中越しに語る彼の辛い過去を私は聞いていられなかった。

だから……

だから、私は思わず口が先走ってしまったのだった。


イーブイ「ピカチュウ。私はずっと一緒にいるよ」
 ▼ 24 WaitStCgv. 17/01/31 18:13:06 ID:BWb35u.o [4/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ピカチュウ「えっ……?」

イーブイ「私が一緒にいる。だからもう泣かないで?」

ピカチュウ「イーブイ……」

イーブイ「涙を拭いて。ピカチュウ?」

ピカチュウ「えっ………あっ?」


ピカチュウの赤い頬を透明の雫が伝っていた。

私はすぐに言葉を続けた。


イーブイ「私、ピカチュウのパートナーになるよ!」

ピカチュウ「………」

イーブイ「ダメ……かな……?」

 ▼ 25 WaitStCgv. 17/01/31 18:17:01 ID:BWb35u.o [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ピカチュウ「そんなことない…!」


首をブンブンと横に振るピカチュウ。

声にならない声で、また「ありがとう」と言うと、涙を拭った。


ピカチュウ「………ふつつかものですが、お互いにパートナーとしてよろしくお願いします」

イーブイ「ううん。こちらこそ…」




私たちは約束をした。

『ずっと一緒にいる』……と。






───私たちは更に下層部を目指した。

・・・
・・・
・・・
 ▼ 26 ルビル@かくとうジュエル 17/02/02 22:33:44 ID:NyQ4U7No NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 27 ーケオス@アロライZ 17/02/03 15:49:09 ID:I0EV2SvA NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
こっそり支援
 ▼ 28 WaitStCgv. 17/02/03 23:44:02 ID:zaXVUYP6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


──ダンジョンの半分くらいは進んだのだろうか。

野生のポケモンの数が少し増えた。

それを知ってか知らずか、ピカチュウは襲い来るポケモンを全て蹴散らしていく。

当然、私の出る幕はなかった。


イーブイ「そんなに電撃を使って大丈夫?」

ピカチュウ「うん。平気だよ!」

イーブイ「すごいなぁ……」


その様子から、強がりなどではないことは明白だった。

一方、私はというと……


イーブイ「ごめんね。全く戦力になれなくて……」


この通りだ。
 ▼ 29 WaitStCgv. 17/02/04 00:02:34 ID:wuPiH3bo [1/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ピカチュウ「大丈夫だよ。まだPPにも余裕があるし」

イーブイ「本当にごめん……」


自分の無力を申し訳なく思うと同時に、ピカチュウを頼もしく感じた。

とはいえ、あまりにも何もしてなさすぎる。

そこで、私は何か気が利く話でもできないかと考えを巡らせた。



イーブイ「あっ……」

ピカチュウ「どうしたの?」

イーブイ「そういえばね、ピカチュウ……」


ここまでの道中に考えていたことがあった。

バッジの活用法についてだ。
 ▼ 30 WaitStCgv. 17/02/04 00:04:51 ID:wuPiH3bo [2/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

イーブイ「そのバッジ、野生のポケモンを倒すと仲間になる……自我を持たせる効果があるって言ってたよね?」

ピカチュウ「う、うん。 まだ君以外には成功してないけどね」

イーブイ「それで私、思ったんだ」


イーブイ「そのバッジを使って、ピカチュウの住んでる村を再興できないかな……って」

ピカチュウ「!」

イーブイ「そしたら、賑やかな村で誰も寂しくない……」

イーブイ「みんな友達の村ができるんじゃないかな?」

ピカチュウ「………」


彼はしばらく黙り込んだが、答えてくれた。


ピカチュウ「……そうだね。諦めなければきっと出来ると思うよ」
 ▼ 31 WaitStCgv. 17/02/04 00:06:48 ID:wuPiH3bo [3/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

イーブイ「そしたら、そしたら、私やりたいことあるんだ〜!」

ピカチュウ「へえ〜…。教えてよ。どんなことがやりたいの?」

イーブイ「うん。私ね……」
















「救助隊っていうのをやりたいんだ」


 ▼ 32 WaitStCgv. 17/02/04 00:07:18 ID:wuPiH3bo [4/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ピカチュウ「救助…隊……?」

ピカチュウ「それは何?」


ピカチュウはとうとう歩く足を止めて、話に深い食いつきを見せた。

私は自分の心の変化について語った。


イーブイ「私ね、貴方に自我をもらうまで、ずっとポヤ〜っとしてたんだ」

イーブイ「からっぽっていうか……何もない感じ?」

イーブイ「とにかく、自分っていうのが存在しなかったの」

ピカチュウ「そうなの…?」
 ▼ 33 WaitStCgv. 17/02/04 00:12:55 ID:wuPiH3bo [5/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

イーブイ「でも、ピカチュウに自我をもらって、やっと自分を手に入れたっていうか……」

ピカチュウ「へえ……そんな感覚なんだ……」

イーブイ「うん。私、ピカチュウに救われたんだよ。」


そう。

私は救ってもらったんだ。

あの何も感じない、深い闇の中から。

……今も現在進行形で助けてもらってるけど。


イーブイ「だから私も、私みたいなポケモンを救ってあげたい」

イーブイ「救助隊になりたいの」


私は真っ直ぐに想いを伝えた。

ピカチュウは意外そうな顔をしたが、すぐに微笑んで返事をしてくれた。


ピカチュウ「いいんじゃないかな。面白そうだし」
 ▼ 34 WaitStCgv. 17/02/04 00:16:28 ID:wuPiH3bo [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ピカチュウ「それにしても、君は意外と前向きなんだね」

イーブイ「そうかな……?」

ピカチュウ「うん。君といるとボクも前向きになれる気がする」

イーブイ「そ、そうかなぁ〜……?」


私は少し照れてしまって、ほころんだ表情を見せる。

ピカチュウは気合を入れ直し、笑って言った。


ピカチュウ「さぁて。じゃあ村に帰ったらもっと研究して性能の良いバッジを開発しなきゃね!」

イーブイ「うん。期待してるよ、ピカチュウ!」





───私たちは下層部を目指して再び足を進めた。

・・・
・・・
・・・
 ▼ 35 ワンナ@ダートじてんしゃ 17/02/05 23:38:13 ID:SeL.I99Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 36 バルオン@がんせきおこう 17/02/12 17:28:21 ID:MKJAKiYs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 37 ンニュート@まんぷくおこう 17/02/20 09:24:42 ID:L7VjzfeI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 38 クシオ@はっかのみ 17/02/21 02:11:00 ID:zJKio4Lc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 39 テッコツ@シルバースプレー 17/02/22 02:42:24 ID:nGhkhPww NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 40 ボツボ@サンのみ 17/03/04 16:24:45 ID:4uf46c8M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 41 タモン@グッズケース 17/03/16 12:03:09 ID:hXsJ8idA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 42 ェローチェ@ピーピーエイド 17/03/27 11:59:21 ID:XVD9RBCQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 43 テラ@カイロスナイト 17/03/27 13:04:00 ID:xbfizI3. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 44 マガル@ゴツゴツメット 17/04/05 21:32:28 ID:448sieY6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 45 マカジ@ポケじゃらし 17/04/10 23:50:50 ID:EDDOe9oo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 46 WaitStCgv. 17/04/18 10:44:28 ID:zJxtWN46 [1/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

どれくらい進んだのだろう。

汗一つかかなかったピカチュウの顔に疲れの色が出始めた。


イーブイ「大丈夫?」

ピカチュウ「うん。もうすぐだからね」


私が声をかけると、彼は必ず笑う。

私は支えになれているだろうか。

支えになれていたらいいな。

そう思いながら彼の後ろをついて歩いた。
 ▼ 47 WaitStCgv. 17/04/18 10:47:01 ID:zJxtWN46 [2/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

イーブイ「村を作ったら何をしよう?」

ピカチュウ「そうだなぁ……」

イーブイ「みんなでピクニックなんてのはどうだろう?」

ピカチュウ「それ、すごくいいね!」

イーブイ「それから、みんなで星を眺めたり、海を見に行ったり……」


想像がどんどん膨らむ。

楽しい。

ずっとこうしていたい。


頭の中がそんな思いで埋め尽くされた。
 ▼ 48 WaitStCgv. 17/04/18 10:48:06 ID:zJxtWN46 [3/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告







でも、私は知ることになった。

その思いは叶わないのだと。





 ▼ 49 WaitStCgv. 17/04/18 10:48:40 ID:zJxtWN46 [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







・・・






 ▼ 50 WaitStCgv. 17/04/18 10:50:22 ID:zJxtWN46 [5/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


──…やっと、友達ができた。

研究の成果だ。

ボクはとうとう孤独から解放された。

パートナーができた。


「星を眺めたり、海を見に行ったり……」


彼女の顔を見るだけで元気が出る。

このためにずっと頑張ってきた。


この時の為だけに、ずっと………
 ▼ 51 WaitStCgv. 17/04/18 10:51:25 ID:zJxtWN46 [6/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


───…ダンジョンの最下層部、一歩手前までやってきた。


「ハァ……ハァ………」


息があがる。

少し無理をしすぎたかもしれない。

ボクはもうヘトヘトだ。


「大丈夫。あと少しで着くからね……」


心配そうにボクを見つめるイーブイをなだめる。

あと一回だけ下ればきっと最下層部だ。


ボクは残り少ない力を振り絞って歩いた。
 ▼ 52 WaitStCgv. 17/04/18 10:52:01 ID:zJxtWN46 [7/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




歩く。歩く。


部屋を転々と移動して回る。


強敵と戦いながら。罠をかいくぐりながら。


 ▼ 53 WaitStCgv. 17/04/18 10:53:56 ID:zJxtWN46 [8/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



そして、ようやくボク達は次の階段を見つけた。



「やった!」


喜びのあまり、階段へと駆け出すボク。

思えば、この不注意が全ての元凶だった。
 ▼ 54 WaitStCgv. 17/04/18 10:54:45 ID:zJxtWN46 [9/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告






"カチッ"




 ▼ 55 WaitStCgv. 17/04/18 10:55:54 ID:zJxtWN46 [10/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




「!」



足に響いた感覚。

何かを踏みつける感触。

それは、まぎれもなく罠だった。


不運なことに、マルマインの顔が映し出された地雷トラップだ。


ボクは全てを悟った。

自分はここで息絶えるのだと。
 ▼ 56 WaitStCgv. 17/04/18 10:57:15 ID:zJxtWN46 [11/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

その瞬間、走馬灯のように思い出が頭の中を駆け巡った。



今まで生きてきた記憶。



仲間との思い出。



もうすぐ自分も仲間の所へ行くのだと思うと、少し嬉しくもあった。



ああ、でも、イーブイには謝らなきゃ。
 ▼ 57 WaitStCgv. 17/04/18 10:58:10 ID:zJxtWN46 [12/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告









ごめんね。どうやらボクはここまでみたいだ。






 ▼ 58 WaitStCgv. 17/04/18 10:58:42 ID:zJxtWN46 [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







・・・






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