【SS】体験版のアイツを、本編に連れて来た:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】体験版のアイツを、本編に連れて来た:ポケモンBBS

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【SS】体験版のアイツを、本編に連れて来た

 ▼ 1 z936HaPNeY 17/01/30 21:37:32 ID:D/XoDQ6o NGネーム登録 NGID登録 報告



 ポケモンはかせの ククイとの
 勝負に 勝った!



 ▼ 104 z936HaPNeY 17/03/16 19:39:49 ID:omyiUb4M NGネーム登録 NGID登録 報告
「コッコ……カプッ!」

「コウガ……!」

 此処は、彼らにとって“狭すぎる”――自然と答えは、己の内に現れた。

 いい場所なのだ……だが、果てしない夢を追うには、アローラは優しすぎる。昔から共にいた己だからこそ、告げるべき言葉は分かっていた。

 海を渡れば、また違う世界がある……未だ輝きを秘めている原石を磨くのに適した世界が、アローラの外には確かに存在する。

「カプッ――!」

 躊躇いはあった……望むのなら、いつまでも傍にいて欲しい。やっと知ったトモダチの存在に、手放したくないと思うのは必然だ。土地神としての力を使えば、それが叶うことも分かっていた。

 だけど己は願うのだ……果てしない夢を叶えた彼らの輝きを、見てみたいと――!
 ▼ 105 z936HaPNeY 17/03/18 20:01:53 ID:0S1AZgEY [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告



 彼がアローラを出ることに、反対する者はいなかった。既に島巡りを達成した彼に向けられた期待は大きく、口添えをしたのが己ならば尚更だった……。

 そうして旅立つ朝、いつもと同じように窓辺にやってきた己に、彼もいつものように笑って迎えてくれた。そんな日々が、明日からはできなくなってしまうと思えば、心なしか元気の抜けた鳴き声になってしまう。

「……ありがとな、僕達のことを紹介してくれたのお前なんだろ?」

「カプッ……!?」

 突然の感謝に、驚きに目を見張る。確かに島キング達に話を通したのは己だ……仮にしなかったとしても、結果は変わらないと思っていた。

「アイツと島巡りをして、お前に色んな景色を見せてもらった……楽しかった。毎日が驚きの連続で、ずっと続けばいいって思ってた――」

 それは己も同じだった……だけど、顔を見れば分かる。
 ▼ 106 z936HaPNeY 17/03/18 20:02:46 ID:0S1AZgEY [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「――だけど、心が叫ぶんだ。こんな所で立ち止まってる場合じゃないって、僕の知らない僕が急かすんだ……だから、決めた」

 水平線から太陽が昇る――それは、アローラを照らす灯火だ。

「あの僕に恥じない僕になる! いつか思い出した時に、誇れるような男になる!」

 そう誓った彼の姿を、美しいと思った……自然と身が引き締まるのを感じる。

『ナマエ、オクリタイ……!』

 テレパシーを送った。目を丸くしている彼に、己は祝福を与える。

 土地神として、アローラの加護を、これからの旅路が幸せであれと、祈りを込めて……。

 己と彼を照らす光に……浮かんだ音が、穏やかに紡がれる。
 ▼ 107 z936HaPNeY 17/03/18 20:04:14 ID:0S1AZgEY [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告



 記憶を無くした少年は、名前すらも無くした。

 それを不幸に思うことは無く、島巡りの最中も不便に感じることは無かった。

 それは彼の在り方が、出会う人すべてに影響を与える程に、印象を残したからだ。

 正しく光――故に、その名が与えられたのは、必然なのかもしれない。


 ▼ 108 z936HaPNeY 17/03/21 23:45:33 ID:TD/9Q1u2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告





 命に別状はない……そう聞いて、やっと張りつめた力を抜くことが出来た。

 ホッとため息をつくヨウの隣で、同じように一先ず安心した様子のポケモンが二体――現状を報告しているジョーイさんの視線が、落ち着かないように向けられているが、仕方ないと割り切ってもらうしかない……心配だったのは、土地神も同じなのだから。

『――とにかく無事でよかった。ビースト達の引き渡しは明日でも構わないから、今はゆっかり休んでくれ』

 ハンサムの提案を、ヨウは素直に受け入れた。安心したと同時に、湧き上がる無力感……本人が聞いたら否定するだろうが、それでも守れなかったと自らを責めてしまう。特にゲッコウガの様子は深刻だ……カプ・コケコが哀しそうな様子で聞いているが、立ち直るには時間が必要だとヨウは判断した。
 ▼ 109 z936HaPNeY 17/03/21 23:46:05 ID:TD/9Q1u2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「来てくれてありがとう。おかげで助かったよ……でも、どうして?」

 何故、アーカラ島に来てくれたのかとカプ・コケコに聞けば、腕をゲッコウガに向けて答えにした――話を付けていたのは、ゲッコウガだったらしい。意外なつながりに、少し目を丸くしていると、以前に遺跡で再会した時と同じように、頭の奥で響く声がした。

『アイツラ、ノコッテル……チカラニ、ナリタイ……!』

「それって……!?」

 コクンと頷くカプ・コケコに、顔が綻んでいくのを自覚する……実力は申し分無い、それ以上に嬉しいと言う気持ちが大きかった。アローラを守りたいという想いに、応えようとしてくれる姿を見て、やる気が湧き上がるのは当然だ。

「頼りにするよ……よろしく!」

『マカセロ……!』
 ▼ 110 z936HaPNeY 17/03/24 23:26:22 ID:OdPugvcM [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告



 負傷者が出た所で任務を中断すれば、それ以上の被害が……今度こそ、取り返しのつかない事態になるかもしれない。感情論を捨てて考えれば、土地神ポケモンの協力を得られたことは、ククイ博士の離脱を痛手にしても、結果としては上々なのかもしれない。

 ウラウラ島に出現した二種類のウルトラビースト、後に“テッカグヤ”と“カミツルギ”と呼ばれることになる彼らに、ヨウは勇敢に立ち向かった――バトルしたことはあるが、いざ手を組んでみれば、中々の相性だったようで、元々の自力がある今、互角以上の戦いを繰り広げた。

 そもそもアローラ最強のトレーナーと、メレメレ島の土地神が手を組んだ時点で、不安要素は無い……故に注意を向けるべきは、もう片割れのチームだ――。
 ▼ 111 z936HaPNeY 17/03/24 23:26:57 ID:OdPugvcM [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告



「……そろそろ、行きますか」

「コウ……!」

 カプの村の外れ、廃墟になったスーパーが見える海岸線――ビーストの注意を引きつけたリラが選んだ場所に、人気は無かった。実に好都合……思わず笑みを零すくらいには、気分が良かった。

 同じ境遇として、助けたい思いはあるが……強いポケモンを前にして、生粋のトレーナーと自覚しているリラの闘争本能が動き出す。
 ▼ 112 z936HaPNeY 17/03/24 23:27:29 ID:OdPugvcM [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
 瞬きの内にボールから繰り出したパートナーと、不思議なゲッコウガ――トレーナー無しで高い実力を持つ彼が、リラのチームに加わっているのはゲッコウガ自身の提案だった。今まではビースト達の引き付け役だったが、実際に戦うのがヨウ一人だけでは負担が大きい……余り無理をさせたくないと思うハンサムだが、残るビーストは少ないと判明した今、それが最善の策だと誰もが理解していた。

 やがて現れた……山の様に巨大なビースト“テッカグヤ”を見据えて、リラは凛とした声で指示を下す。目撃者のいない……されど、壮絶と言うにふさわしいバトルが繰り広げられる予感を、誰もが感じていた――。

「……!」

 物陰から見つめている視線が違和感を捉える……これ程の脅威を前に、何故アイツは彼と共に居ないのだという疑問を抱えた誰かは、静かに観察に徹する――。

 嫌な予感が当たると、どこか受け入れながらも……杞憂であってほしいと思いながら。
 ▼ 113 z936HaPNeY 17/03/27 23:12:37 ID:bD5xkpU. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告



 捕獲自体は無事に完了した……元々“実力のある”トレーナーだと知っていた上、少しの時間で連携を構築してみせたリラの指示は的確だ。今度こそ油断なく、沈黙したビーストボールに注意を向けていると、安心させるように口を開く――。

「大丈夫ですよ……施設に届けるまで、油断しませんから」

 分かってますと言いたげな口ぶりに、少し申し訳ないと言う気持ちが芽生えた……あれが事故だと理解しているが、また起きてしまうかもしれないという不安を拭い去れないのもあった。

 バトルが始まった頃は、真上から日差しが降り注いでいたが、今は茜色の空……おそらくヨウ達の方は、既に決着を付けている筈だろう。意味も無く夕焼けの空を眺めていれば、少し驚いた様子の声が聞こえて来た。
 ▼ 114 z936HaPNeY 17/03/27 23:13:17 ID:bD5xkpU. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あれは……貴方の知り合いですか……?」

「……コウ?」

 それを合図に、背後に誰かいることに気付いた――気配を全く感じさせなかったことに、静かに驚きが浮かび上がる。

「――!」

 しかし考えてみれば、知っている気配だと分かる。そもそもこの場所自体、アイツの住処の傍なのだ――その上で、こんな芸当ができるのはアイツ以外に考えられない。

 振り返り、下を見れば――。

「ミミッキュ……!」

 いつかの……仲間が、立っていた。
 ▼ 115 色狐◆7yYkDV/Lvk 17/03/27 23:41:04 ID:oh05Tdj2 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 116 z936HaPNeY 17/03/30 19:00:54 ID:XwtdiKWc [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
 事情を察したのか、いつの間にかリラの姿は無かった。仲間のポケモンが付いているのだ……必要以上の心配はいらない筈だ。

 それよりも――。

「……」

「……」

 今、漂っている沈黙が痛い……何も言わず、ただこちらを見ているだけの姿に、ゲッコウガの心情は複雑だった。責められるべき理由はある。そのことを否定するつもりは無いし、むしろ責めてくれた方が楽だったと思ってしまうくらいだ。

 でも、きっと……責めることは無いだろう。お互いの立場を入れ替えたとしても、同じ結論に至る筈だろうとゲッコウガは思う。

「コウガ……」

 拙者が何を言ったところで、ただの言い訳にしかならない……だから、守れなかったとしか言えないで御座る――淡々と、事実だけを口にした。

「……?」

 何故、謝るの? そう言い、首を傾けた相手は、まるで気にしていないというように振る舞う――同じ仲間として、それくらいのことなど分かっているからだ。
 ▼ 117 z936HaPNeY 17/03/30 19:01:36 ID:XwtdiKWc [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
 間が悪かった――もし自分が、その場面にいたとしても、同じ結果だろう……。

「――!」

 やっぱり、僕も一緒に行くよ――!

「コウガ……!?」

 主ポケモンの役目は、良いので御座るか……!?

「……!」

 大丈夫、君達と再会できた時から決めていたから……もう、引継ぎはできてるよ!

「……コウガ」

 拒む理由は無い……素直に嬉しいと、ゲッコウガは思う。

 孤独では無かったが、それでも自分以外は知らない事実を前にして、辛くないと言えば嘘になる……誰にも話せない。相談できる相手がいない数年間は、知らず知らずのうちに負担になっていたらしい。

 初めてではない……互いの為に、成すべきことの為に、仲間達から離れたことはあるが、それでも約束と言う灯火があった。だけど今回は違う……帰れる保証は無い。出口のない迷路の中で、気付かずの内に疲れ果てていたのかもしれない……身体では無く、心が。

 だからこそ、ヨウとの島巡りは楽しかった――それも、彼が結び付けてくれた出会いだ。

 忘れてしまったとしても、根っこの部分は変わらずに在る……なら、拙者だって諦めない。

「コウ、―――!」

 そうだよな、―――!
 ▼ 118 z936HaPNeY 17/03/30 22:02:23 ID:XwtdiKWc [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告





「日頃の研究の成果でしょうか……相変わらずの回復力ですね」

 呆れながら言うジョーイさんに、罰が悪そうに笑うしかなかった。何も好きで電撃を浴びに行く趣味は無いが……動いてなかったら、被害は自分だけで済まなかっただろう。だから、悪いとは思わないし、悔やむことも無いだろう。

 ただ……少しでも躊躇していれば、僕はこのままでいられたのかもしれない。

「どうかしましたか……?」

 顔に出ていたのか、いつもと違う様子に気付いたジョーイさんが、心配そうに訊いてくる。

「夢を見てました――とびっきりの、良い夢だった」

 なのに……胸に込み上げるのは、楽しさとか、ワクワクするような明るいものではなかった。申し訳ないという罪悪感……忘れていたのは、大切で掛け替えのない思い出。

 変わらずに傍にいてくれたアイツに、早く会いたいと願う……。

 だが、会った所でどうする……今更、どうするというのか。素直に行動に移すには、時間が経ってしまった――この地で積み上げた関係を、あっさりと割り切るなんてできない。
 ▼ 119 z936HaPNeY 17/03/30 22:03:08 ID:XwtdiKWc [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
 女々しいと思いながらも、何も行動に移すことができないまま……気が付けば、ポケモンセンターの外で、ぼんやりと立ち尽くしていた。

 時間にすれば数時間……夕日は彼方に沈み、夜の世界に姿を変えている。そんな中、近付いてくる気配に気付いて、目を静かに見開いた。

「ゲッコウガ……!」

 月の光を背にして、歩いてくるゲッコウガの姿は影の様に映っていた。傍らには小柄なポケモンの姿……ソイツに合わせている為に、迫る速さは変わらないようだ。

 一定の距離まで迫った所で、ゲッコウガの脚が止まる。そして連れ添いのポケモン――ミミッキュも、同じように動きを止めた。

 今まで見たミミッキュよりもはるかに大きな個体に、思わず視線を奪われてしまう……噂に聞く、主ポケモンだろうかと、以前ヨウから聞いた話を思い出していた。

「コウ、ガ……!?」

 絞り出すようなゲッコウガの声に、意識が揺さぶられた。

 信じられないものを見たかのように、これでもかと目を見開いている……驚愕どころか、何らかの奇跡が起きたかのような表情だ。

 少し考えて、納得できたのは、偶然じゃないだろう――。

「そっか……そうだよな……」

 どんなに遠く離れても繋がっている――だから、俺の考えていることなんて、気付くに決まっていた。




 そう……僕達の夢は、最初から叶っていたんだ――。
 ▼ 120 z936HaPNeY 17/04/01 19:10:20 ID:0QbjB4nQ [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告





 ポニ島の外れ、エンドケイブ――。

 残るウルトラビーストは一体。そして残った目撃情報は、この場所のみ……ハンサムとリラによる誘導が功を奏し、人が寄らない最深部に追い込むことに成功していた。

 国際警察の裏事情をハンサムから聞いていたヨウは、リラをサポートに置くことを承知している……何度もビーストに接触している為に、体調を崩していることも知っていた。

 一歩間違えれば命の危機――それでも最善の策は、ヨウ単独で挑むことだった。信じるのは大切で、頼れるポケモン達……チャンピョンになった時と同じメンバーで、油断なくビーストが待つ奥地に、ヨウは進んだ。
 ▼ 121 z936HaPNeY 17/04/01 19:11:37 ID:0QbjB4nQ [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告



 それでも、最強のビーストは強大だった――。

 どれだけ攻撃しても、効果が無いと思ってしまう程の巨体。未だに弱る気配を見せることなく、敵意を全開にしてヨウを見据えていた。手持ちの半分は倒れ、ボールの中に納まっている。追い込まれていると、否応なしに理解させられている……。

 倒すだけなら良かった……だが、消耗させるのはヨウの実力をもってしても困難だった。彼らを捕獲するためのビーストボールだが、絶対の効力では無い――結果、長期戦を強いられている。

 一つでも判断を誤れば、そこが己の死に際だとヨウは理解している……段々と少なっていく勝機を、諦めずに追い続けていた。

 だが、足りない――全力で殺しにかかるビーストに対し、倒してはならないと抑えているヨウでは、勝ち負けなど最初から決まっていたのだろう。

 逃げ場はなく、いくら身重な巨体だろうと、少年一人に追いつけない程の素早さはある……残ったジュナイパーが倒れた時が、ヨウの最期だ。
 ▼ 122 z936HaPNeY 17/04/01 19:13:47 ID:0QbjB4nQ [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……!」

 ボロボロになった体を動かして、りゅうのはどうを受けるジュナイパー。その後ろには、ヨウが悔しさを隠さずに、ビースト――アクジキングを睨んでいる。

 二発目のはどうを放とうとするアクジキングに、ジュナイパーは再び立ち上がろうとするが――その直前、赤い光に包まれる。

「ジュナ……!?」

 その光をジュナイパーは知っている。嫌な予感を肯定するように、ヨウはモンスターボールをジュナイパーに向けていた。

「ありがとう……助けが来るまで、待ってて」

「ジュナ――!?」

 必死にやめてくれとジュナイパーは叫んだ。この状況で、誰がヨウを守ってくれると言うのか……己がボールの中に入れば、数秒の内にウルトラビーストの矛先は、マスターの身体を捉えるに違いない――。
 ▼ 123 z936HaPNeY 17/04/01 19:20:27 ID:0QbjB4nQ [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
 それでもヨウにとっては、大好きな相棒が傷つく方が嫌だった……ただ、そう思っただけの話。

「――!!」

 声にならない叫びを響かせて、モンスターボールは役目を果たした。それを横目にして、迫るはどうの群れをヨウは挑むように睨みつけた。

 その不屈の闘志に、最後まで諦めることを由としなかった若きチャンピョンに――。

『マタセタナ……!』

 アローラの神が、逆転の風を吹かせに来ていた――。

「カプ・コケコ……!?」

 両手の殻をシールドにして、アクジキングの攻撃を防ぎ切ったのは、つい先日戦友になったばかりの守り神――カプ・コケコ。

 突然の救援に、目を丸くしたまま固まるヨウ……気が付けば自身の左右に、知っている気配を感じ取っていた。
 ▼ 124 z936HaPNeY 17/04/01 19:23:23 ID:0QbjB4nQ [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「よくやったな、後は俺達に任せろ……!」

「コウガ……!」

 そう言ってカプ・コケコの前に出るククイ博士とゲッコウガは、アクジキングと戦うつもりだ……そこまで認識した所で、ヨウは思わず止める為に声を挙げる。

「待ってください! そんな病み上がりの身体じゃ――!」

 それ以上の言葉は出なかった。ただ振り向いたククイ博士の顔を見た瞬間、浮かび上がった様々な心配が消えてなくなった。

 背中越しに、不敵な笑みを浮かべて……少し子供っぽく見えたのは、錯覚かもしれないが――。

「大丈夫さ、俺達は負けない――!」

 ゾクリとするような、その闘志に、心を震わせた……。
 ▼ 125 z936HaPNeY 17/04/03 22:07:19 ID:AVQrZFoQ [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告



 忘れもしないポケモンリーグの頂上で、ヨウはククイ博士とポケモンバトルを繰り広げている。その時の戦い方は、今も鮮明に思い出せる自信があった……。

 だが目の前で繰り広げられているポケモンバトルは、ヨウの知るそれとは全く別物の戦い方だった。

「止まるな! スピードで攪乱しろ!」

 その指示に従って脚を止めることなくゲッコウガは、アクジキングの周囲を離れることなく動き続けている。相手の出方を窺うように仕向けているのはヨウでも分かる……だが、堅実な戦い方では無い筈だ。

 ヨウの知っているククイ博士のバトルスタイルは、念密に計算されたものだった。相手の戦い方を把握し、それに合わせて対応してくる――つまるところ、こちらの弱点を徹底的に攻めてくるイメージだった。
 ▼ 126 z936HaPNeY 17/04/03 22:07:55 ID:AVQrZFoQ [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
 確かに相手はウルトラビースト……いつものやり方は難しいかもしれないが、丸ごと戦い方を切り替えるなど、本来あり得ない。

 だが、それでも――。

「かわして、“いあいぎり”だ――!」

「コウガ――!」

 トレーナーとポケモンが、共に力を合わせてバトルする――基本にして極意であるそれを、これ程のレベルで実行できるコンビが、このアローラに何組いるのだろうか?

 少なくともヨウの知る限りでは……いや、できないことはない筈だ。少なくとも普通のバトルなら、ヨウだって心掛けていること――。

 それでも、この状況じゃヨウには無理だ。

「もう少し待ってくれ……頼むぜ、ゲッコウガ!」

 命を懸けたバトルなのに、アローラの未来が懸かったバトルなのに――。

(笑ってる……楽しんでいる……!)

 旅立った頃のワクワクをそのままに、ポケモンバトルに挑んでいることが、ヨウには恐ろしく感じて……同時に、羨ましいと思った。
 ▼ 127 z936HaPNeY 17/04/03 22:09:02 ID:AVQrZFoQ [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
 戦況は変わらず……アクジキングの猛攻に、ゲッコウガは回避を優先して動いている。無理な反撃はせずに、動きを観察するようにしている。共に島巡りをした仲だ……彼らの狙いを、ヨウは分かっている。

 そろそろと、思ってみれば……ニヤリと笑みを浮かべたククイ博士が、勝利の道筋を掴み取った。相手にすれば恐ろしいが、味方にとってこれほど頼もしいことは無い。

「行くぞ、ゲッコウガ――!」

「コウガ――!」

 全体重を武器に変えて押し潰そうとしたアクジキングの巨体が、突如吹き上がった激流に弾き飛ばされる。その中心にいるのは“絆”を宿したゲッコウガ――。

 その姿が、かき消える……。

「――!?」

 声にならない驚きをアクジキングが挙げたと思えば、その巨体には切り裂かれたような跡が三本……次の瞬間には幻だったように無くなるが、何が起こったのかを察するには十分だった。

 青い軌跡だけを残して、アクジキングに絶え間ない攻撃を浴びせ続けている……ルザミーネの時よりも速さを増したゲッコウガの動きは、ヨウの目をもってしても捉えることはできないくらいだ。

 どんなに素早さを上げた所で、自身の反射神経まで上がることはない……誰にも見えない程の速度だと言うなら、持て余すか、自滅するのが関の山だろう。
 ▼ 128 z936HaPNeY 17/04/03 22:10:08 ID:AVQrZFoQ [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「踏み込んで、つばめがえし――!」

 だが、此処に例外が存在する――。

「コウ――!」

 ゲッコウガの視界には、自身の見ている音さえ置き去りにした視界と共に、戦況を把握している主の視界が映っている。自身と相手の両方を映しているそれを、ゲッコウガは最大限に活用して戦っているのだ。

 それは並大抵の技量では済まされない……人間よりも身体能力に優れたポケモンであろうと、視界に映る自分を思い通りに動かすなんて離れ業は、まず不可能だ。

 だが、ゲッコウガはやり遂げた――月の下で交わした誓い。誰も知らない高みへ共に行く為に、不可能を可能に変えた訳だ。

 それを誇示することなく、驕ることも無く、必要だと感じたから……ゲッコウガに聞けば、そう答えるに違いない。どんなに困難なことだとしても、挫折する理由には成し得ない――誓いの為に、鍛え続けるのみだ。
 ▼ 129 z936HaPNeY 17/04/03 22:11:07 ID:AVQrZFoQ [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「――!?」

 白銀に輝いた手足が、アクジキングの身体を捉え殴り飛ばした――この瞬間、アクジキングは己の敗北を確信した。勝機を掴み取ることを諦めた……それでも勝ちを望むのならば、そこまで考えた果てに、一つの行動を感じ取った。

 それは卑怯と罵られるかもしれないが、確かに唯一の勝機だったのだろう――。

「――!!」

「なっ……!?」

 気付いた時には遅すぎた。アクジキングが選んだのは、トレーナーの排除――ゲッコウガを無視して、指示を出しているククイ博士に向けて“りゅうのはどう”を放ったのだ。この場にいた誰もが、その考えに至らなかった……訳では無い。

「コウ……!」

 アクジキングから距離を取りつつも、ゲッコウガはそれ以上の行動を起こさなかった。その素早さをもってすれば、彼らに迫る攻撃を追い越すくらい造作もないだろう……しかし、ゲッコウガは一声上げただけで、既に己の役目は終わったと判断していた。
 ▼ 130 z936HaPNeY 17/04/03 22:12:03 ID:AVQrZFoQ [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……久しぶりのバトルだが、行けるな――?」

 ククイ博士は知らない。あの夜に、ゲッコウガと“彼”がどんな会話をしたのかを――“今度こそ必ず、守ってみせる”と、決意を新たにした彼らの事を知らない。

 それでも臆することなく立っているのは、彼らへの信頼あってこそ……傍で控えていた彼のことを、誰よりも信じているからこそ――。

「ッ……!」

 勢いよく飛び込み、りゅうのはどうを受け止めた影がひとつ……汚れた布を気にすることなく、何事も無かったかのように現れたポケモンは、ヨウも知っていた。

 忘れもしない……ヨウが島巡りの中で、唯一リベンジをするまでに至ったポケモンだ。

「ミミッキュ……!?」

 ぶるっと身体を震わせて、気合を入れるように一歩前に進んだ彼……何かを待っているような素振りを認めて、ククイ博士が構える。

『イクゾ……!』

 カプ・コケコが自ら持つ特性を発動し、辺り一面に電気を発生させる……守り神は動かない。これ以上は無粋であり、求めるのは彼らの放つ……全力の輝きに他ならない。

「ああ……これが、俺達の全力だ――!」

「――!」

 一心同体、繰り出す構えは雷……彼の放つ“でんき技”を全力の力を持って、更なる高みに至らせる――。

 其れは、積み上げた旅路と絆が生んだ一端に過ぎず……されど、その場にいた全て者に、唯一の輝きを刻み付けるに違いない……!

「スパーキングギガボルト――!」
 ▼ 131 z936HaPNeY 17/04/03 22:12:36 ID:AVQrZFoQ [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告



 視界を金色に染め上げる程の閃光が収まり、辺りを見渡せるくらいに回復した所で、ヨウはアクジキングの姿を探した。気を抜くことはできない……決着を感じ取った時から、利き手に用意しているビーストボールを確かめつつ、一面を見渡した。

「ああ……よかった」

 安堵からくるため息が、ヨウの心境を物語っていた。戦闘不能になったアクジキングの傍には、ゲッコウガが腕を組んで見張っている……視線はヨウに向けられており、“さっさと捕まえてくれ”と言外に促している。
 ▼ 132 z936HaPNeY 17/04/03 22:13:13 ID:AVQrZFoQ [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「後は、任せていいか……?」

「ククイ博士……!?」

 背後から掛けられた声に振り向けば、カプ・コケコに支えられる形で座り込んでいる彼ら……立ち上がろうにも上手く力が入らない様子に、ヨウは心当たりがあった。

「久しぶりのZわざに、力み過ぎちまったぜ……情けないが、頼む」

 無茶した子供のように笑いながらも、心配ないように託すことが出来た大人のように振る舞うククイ博士に、ヨウはただ無言で頷いた。

「……」

 最後のウルトラビーストは、こうして捕獲された――。
 ▼ 133 ザリガー@ムシZ 17/04/03 23:21:47 ID:EE96Xq7s NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
ミミッキュいつの間に電気技覚えたんだ
 ▼ 134 z936HaPNeY 17/04/04 21:52:10 ID:NpJfgSeM [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告





 ボールを投げたあの時、ヨウの瞳は無心に行方を見守っていた……ボールの動きが止まっても、リラやハンサムに任務終了の報告をしている時も、どこか他人のような気分で行動していたようだった。

 それはチャンピォンとして……いや、トレーナーとしては極めて自然の感情だった。やがて己の結論にたどり着いた時、獲物を見つけた様な高揚感を覚えることになる。

 同時に、衝動の赴くままに動くには……ヨウの置かれた立場は、身軽では無かった。アローラの頂点と言う誰もが羨む立場でありながら、本人からすればハリボテのようにしか思えなかった……あの時からヨウの心は、挑戦者のそれに戻っていた。


 ▼ 135 z936HaPNeY 17/04/04 21:53:10 ID:NpJfgSeM [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告



 ウルトラビーストの騒動が収まって数か月……幾度も現れた挑戦者達を打ち破り、アローラチャンピォンの椅子は、未だにヨウが持ち主だ。

 皮肉にも挑戦者のそれに戻った心の在り方が、少年であるが故の成長速度を大いに刺激したことで、日を追うごとに実力を引き延ばしていったのだ……それを追うように、近しいライバル達も同じようなことが起きており、アローラの将来は明るいと勝手に安心する島キングやクイーンもいるが……。

 それでもヨウの待っている人物はリーグに現れなかった……曰く“自分で作ったリーグでチャンピォンになるつもりは無い”とのことで、他のバトル大会に現れることはあっても、此処に挑戦することは無かった。


 ▼ 136 z936HaPNeY 17/04/04 21:54:21 ID:NpJfgSeM [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告



 結局の所、二人の再会はこの場所以外に、あり得なかったのだろう……。

 ポニ島の裏側にそびえる“バトルツリー”――此処で競われるのは、純粋なトレーナーとしての実力……特殊な結界の影響で、ポケモンの能力に制限が掛かる此処なら、たとえチャンピォンのポケモンであろうと、対戦相手と同じレベルまで下げられる。

 故に試されるのはトレーナーの技量、判断、戦略……彼が研究の一環で、訪れることをヨウは把握している。とは言っても、ポケモンリーグの人気は留まることを知らない――島巡りを達成した者だけが挑める場所……多忙な日々の中、やっとの思いで確保した一日を、ヨウはこの場所にあてた。

 何の前触れもなく現れたチャンピォンに衝撃が走ったのも束の間、半日を待たずに蹂躙されていくトレーナー達……条件を対等にしたところで、ヨウの実力は並大抵のトレーナーじゃ、叶うはずもなかった。

 全ての相手に敬意をもって、それでも全力を引き出すには至らずに……選抜した三体のポケモン達を率い、バトルツリーを登り続けたのだった。
 ▼ 137 z936HaPNeY 17/04/04 21:55:54 ID:NpJfgSeM [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「おっ、此処じゃ初めてだな……リーグの方は、落ち着いたのか?」

「今も忙しいですよ……博士の望んだとおりに、挑戦者で溢れて大変です」

 見知った姿を前にして、ヨウの心は意外にも落ち着いていた……バトルが始まるまでの僅かな時間、爆発しそうな闘争心を抑え込んで言葉を交わす。

 ヨウにとって、目標にするトレーナーの一人なのだ――今も、気持ちは変わらない。それ以上の思いに変わったのは、あの時の輝きを目の当たりにしたからだ。

「そんな中、折角の休みを此処で使うか? 俺が言えたことじゃないが、もう少し身体を大事にした方がいいぜ」

「健康管理は置いといて……此処に来たのは、目的があったからです――それも今、叶いそうなんですけどね」

 軽口の中に入れた本心は、真っ直ぐに届いた。少し表情を変えた男は、目をパチパチさせながらヨウに聞き返す。
 ▼ 138 z936HaPNeY 17/04/04 21:56:42 ID:NpJfgSeM [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「目的って……俺、なのか?」

「トレーナーになって、島巡りをして、チャンピォンになって……それでもまだ、やり遂げていないことを思い付いたんです」

 その答えが、目の前にいる男と……控えているであろう彼だ。

「この世界に連れて来てくれた博士と、隣に居てくれた先生――本気の貴方達に勝てなきゃ、チャンピォンを名乗れない……!」

 もうヨウは気付いていた。男が探そうとしたトレーナーは、男自身だったのだと……そうじゃ無ければ、あの時のバトルは証明できない。ヨウが憧れた輝きが、偽りのものである筈が無いのだから……。

 アローラの頂点――本当の意味で、そこに立つ為に……越えねばならない壁がある。
 ▼ 139 z936HaPNeY 17/04/04 21:57:16 ID:NpJfgSeM [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「勝負です。ククイ博士……いや、――さん!」

 瞳に刻んだ名前を言った。

 ヨウの思いを聞き、男は帽子を後ろに回す……それは大勝負の前に気合を入れる行動で、知っているポケモン達が見れば、歓喜に等しい衝動が湧き上がる。ポケモン博士では無く、ただ一人のトレーナーとして、バトルに臨むことを決めた証だ。

「分かった。行くぜ、ヨウ――!」




 ▼ 140 z936HaPNeY 17/04/04 21:58:05 ID:NpJfgSeM [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告



 ポケモントレーナーの サトシが
 勝負を しかけてきた!



 ▼ 141 z936HaPNeY 17/04/04 21:58:35 ID:NpJfgSeM [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
完結です。ありがとうございました。
 ▼ 142 ョッキドリュ◆kp2LpSN2cc 17/04/04 22:25:00 ID:f8In/QgU NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 143 ーマルド@けむりだま 17/04/05 01:55:29 ID:JjK9LvHY NGネーム登録 NGID登録 報告

面白かった!
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