【SS】体験版のアイツを、本編に連れて来た:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】体験版のアイツを、本編に連れて来た:ポケモンBBS

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【SS】体験版のアイツを、本編に連れて来た

 ▼ 1 z936HaPNeY 17/01/30 21:37:32 ID:D/XoDQ6o [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告



 ポケモンはかせの ククイとの
 勝負に 勝った!



 ▼ 4 z936HaPNeY 17/01/30 21:39:57 ID:D/XoDQ6o [2/11] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 それもすぐに霧散する……他ならぬアイツなら、それを聞いた所で断るに決まっている。そう思える程に、彼との付き合いは長い。

 いや、その言い方では足らない……この場に刻まれたどのポケモンよりも、アイツとの付き合いは長い――ヨウにとって、最初のポケモンなのだから。

 それでも、最後まで彼はヨウを主とは認めなかった。信頼を預けられるパートナーにはなれたかもしれないが、これ以上は無粋だと言うように……ヨウの成長を認めた後は、あっさりと別れを告げた。

 駆け出しトレーナーだったヨウにとって、師匠であり、友達であり、そしてライバルだった。最初にあった憧れは、いつからか超えたいという想いに変わり……その想いが、ヨウをこの場所まで連れてきた。
 ▼ 5 z936HaPNeY 17/01/30 21:40:29 ID:D/XoDQ6o [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 チャンピォンになったって言った時、アイツはどんな顔をするのだろうか……?

 いつもと変わらない糸目で、喜んでくれるのか……それとも、瞳を見開く程に驚いてくれるのか……そう考えているヨウの顔は、実に楽しそうに“彼ら”には見えた。

「おーい、ヨウ? 聞いてるかぁ……意識が“そらをとぶ”だな」

「コウガ……?」

「おっ、来たか――仕方ない。先に準備を進めとくか……新チャンピォンが、戻ったらすぐに始められるようにな!」
 ▼ 6 z936HaPNeY 17/01/30 22:10:21 ID:D/XoDQ6o [4/11] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





 新人トレーナーのヨウが、最初のポケモンを手にしたのは、儀式の祭壇でも、研究所でも無く――自宅のポストだった。

 一個のモンスタボールと、一枚の手紙――差出人不明のそれに書かれていたのは、ボールの中にいるポケモンのことだった。

“ヨウへ 手紙を読んでいるということはアローラ地方に到着だな! 引っ越しお疲れ様! 君に託したポケモン ゲッコウガは元気かい? あいつはあついのが好きだからな! あついアローラであついポケモン勝負を頼むぜ!”

 その場で何度も読み返したヨウは、やがて深い溜息を吐く……思い出したのは生まれ育った地“カントー地方”で過ごした最後の夜だ。
 ▼ 7 z936HaPNeY 17/01/30 22:11:01 ID:D/XoDQ6o [5/11] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
『すまん! 君に用意するはずだったポケモンだけど、手違いで別の研究所に送られてしまった! 悪いけど代わりのポケモンを用意した……僕よりもしっかりしてる奴だから、困った時は遠慮なく頼ってくれ!』

 画面越しに両手を合わせている男は、これから向かうことになるアローラ地方のポケモン博士……ククイと名乗った男が映る画面には、先程から子犬のようなポケモン――イワンコと言うらしい――が動き回っていた。

 少なからず落胆したヨウだが、一概に博士を責める気は無かった……仕方ないことだと割り切ると共に、代わりに用意されたポケモンにヨウの関心は移る。

 そして今――ヨウにとって最初のポケモンが、この手の中で待っている。
 ▼ 8 z936HaPNeY 17/01/30 22:11:35 ID:D/XoDQ6o [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ッ!」

 手に取ったボールは思ったよりも軽かった……この中に自分のポケモンが入っていると思えば、無機物な筈のボールが熱く感じた。

 意を決してボールを宙に投げる――まばゆい光と共に、彼は姿を現した。

「コウガ――!」

 すらりとした身体は蒼と白、水を司るポケモンということはすぐに分かった……射貫くように向けられた視線の強さに、自然と足が下がる。新人トレーナーのヨウでも、直ぐに理解した――とんでもない奴が、来た……!

 ポケモンの名は、ゲッコウガ――ヨウが初めて手にした、パートナーだ。
 ▼ 9 z936HaPNeY 17/01/30 23:04:37 ID:D/XoDQ6o [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告



 最終進化を遂げたポケモンは、もれなくレベルが高い……そしてレベルが高いポケモンは、トレーナーにも一定のレベルを求める。その証となるのが一般的にはジムバッジであり、アローラ地方なら島巡りのスタンプが該当する。

 そしてレベルが低いとポケモン側が判断すれば、トレーナーの指示に従うことはほとんどなくなる。特に他人から譲り受けたポケモンだと、その傾向が強い。

 トレーナー本人がその事実を受け止め、成長し、ポケモンに認められればいいが……心を折り、挫折する場合も少なくない。特に島巡りの風習が根強いアローラ地方では、試練に苦戦するトレーナーが、最後の手段とばかりにレベルの高い育成済みポケモンを譲り受けるケースが多く、その結果は言うまでも無い……。
 ▼ 10 z936HaPNeY 17/01/30 23:05:09 ID:D/XoDQ6o [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そんな大多数が巡る末路とは逆に、ヨウとゲッコウガの島巡りは順調な滑り出しだった。ククイ博士が『困った時は遠慮なく頼れ』とは言っていたが、そのアドバイスは正しかった……主従関係では無く、どちらかといえばゲッコウガの方が保護者のポジションに収まっていたのが理由なのかもしれない。

 遠く離れたアローラ地方に来てから、島巡りに出たのは数日の出来事であり、新人トレーナーの上に、土地勘さえない状態……情報面は図鑑のロトムが支えていたが、旅路における実践的な教えはゲッコウガから教わっていた。

 そんな奇妙な関係が破綻しなかったのは、年相応の反抗心が無く、素直な性格だったヨウの在り方か……トレーナーでは無く、弟子として見ていたゲッコウガの優しさか……お互いの在り方を無意識に受け入れたのが、功を奏したのかもしれない。
 ▼ 11 z936HaPNeY 17/01/30 23:05:39 ID:D/XoDQ6o [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「何か先生みたいだよな、ゲッコウガ」

「コウガ……?」

 最初の島“メレメレ島”の大試練を無事に乗り越えた頃、ククイ博士から本来受け取る筈だった初心者用ポケモンを仲間に加えたのを見届けて……ゲッコウガはバトルを辞退するようになった。

 遂に、この時が来てしまったのかと身構えるヨウだったが、数日経てば杞憂だということに気付く。ヨウ自身の実力を高める為に、一線から退いた訳だ……言葉は交わせないが、ゲッコウガの素振りを見れば、自ずと答えに辿り着くのは早かった。
 ▼ 12 z936HaPNeY 17/01/30 23:06:26 ID:D/XoDQ6o [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 野生のポケモンや、トレーナーとのバトルは勿論……その頃になれば、自身が選んだモクローを含めて、仲間に加わったポケモン達がいた――自分以外の仲間に目を向けろと言うように、ゲッコウガはヨウとは離れて行動するように心がけていた。

 それでも窮地に陥れば――例えばスカル団みたいな、誰かに危機が訪れた時には、すぐさま助けに来てくれる。それを甘えにすることも、頼りにすることも無く……ヨウは自身の向上心に繋げた。

 認められたい――いつか、彼と並べるようなトレーナーになりたい。
 ▼ 13 z936HaPNeY 17/01/30 23:06:57 ID:D/XoDQ6o [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 その一心で、第二の島“アーカラ島”を駆け巡った……順調な旅路とは言えない上、所々で不穏な気配が見えたりもあったが、三つの試練と大試練を乗り越えた時には、頼れる仲間達に、そして自分自身への信頼が確かな形となっていた。

 相変わらずと言うか、一定の距離を保ったまま見守るゲッコウガに少しだけ不安はあったが……ちょっとは褒めてくれても、認めてくれてもいいじゃないかと、ぼんやりとヨウは思っていた。

 それがヨウの勘違いであって、彼が意外と不器用だったことを知らなかった故の誤解だと気付いたのは、次の目的地で遭遇した事件……やがて巻き込まれていく、アローラ全てを巻き込んだ大事件の始まりだった。
 ▼ 14 ムリット@タウンマップ 17/01/30 23:09:36 ID:n0OuWXuY NGネーム登録 NGID登録 報告
面白い
サトシとはどういう関係なんだ?
 ▼ 15 ミツルギ@マグマのしるし 17/01/30 23:10:04 ID:ett.DWlI NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 16 ジョフー@あかいウロコ 17/01/31 21:58:56 ID:GH8N6D6s NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 17 z936HaPNeY 17/02/01 20:15:32 ID:wlwLecpI [1/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



「戦うって、言ってるのか……?」

「コウガ……!」

 突如現れた謎の生命体――ウルトラビーストの出現を前にして、ヨウ達を庇うように飛び出したゲッコウガが姿勢を低くして構える。口から咄嗟に出た疑問に、間髪入れずに答えるゲッコウガ……その声音は、強くて優しいものだった。

 島巡りの証は、トレーナーにとって旅路の証であり……強さの証でもあるんだよ――。

 脳裏を走る島クイーンの言葉に、ヨウは理解した。いつものバトルと同じように、仲間達に向けるのと同じ声音で、高らかにゲッコウガに向けて“指示”を出した――!
 ▼ 18 z936HaPNeY 17/02/01 20:16:03 ID:wlwLecpI [2/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「先手必勝だ! “みずしゅりけん”!」

「コウガ――!」

 もう駆け出しじゃない。守られる立場でも無い。ただ対等の存在として、共に戦うポケモントレーナーだと、認めてくれた瞬間だった。

 そう分かった時のヨウの嬉しさは、天にも舞い上がるような心地だった……だからこそ、仕方なかった。

「――!?」

 底冷えするような笑みを浮かべたルザミーネの笑みに、ゲッコウガだけが気付いていた。



 ▼ 19 z936HaPNeY 17/02/01 20:16:39 ID:wlwLecpI [3/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 アローラ地方は有名な観光地である……注釈をつけるなら“観光地としては”であり、それ以外の面では、あまりにも独特な場所である。

 島巡りという独特な文化、リージョンフォームと称されるポケモン達と、アローラだけの特徴があるのにも関わらず、島の中だけで完結している状態だ。

 主な要因として、ある人物が目を付けたのが――。

「アローラで最も高い所……そこにポケモンリーグを造りたいんだ!」

 この地に住む人、ポケモンの素晴らしさを世界に――そう語るククイ博士の瞳は、子供の様に輝いていた。夜空に輝く星々の様に、見出した夢の輝きは尊い……それを追い求める素晴らしさを、ヨウも最近になって知ったからだ。
 ▼ 20 z936HaPNeY 17/02/01 20:17:09 ID:wlwLecpI [4/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「リーグを造る……?」

「ああ、島で生まれ、島に骨を埋める……多くの人々が、そうやって生きてきた。それが悪いとは思わないけど、アーロラの素晴らしさを世界はまだ知らないと思うんだ。ヨウだって、此処に来る前はほとんど知らなかっただろ?」

 そう聞かれてしまえば、返す言葉が無い。実際アローラ地方に来るきっかけと言わば、母の思い付きなのだから――確か、覆面レスラーのバトルに惚れ込んだとか、なんとか……。

「そういう僕もアローラ以外の所なんて全然知らないまま、外に飛び出しちゃった口だけどな……いやぁ、あの時は大変だったよなぁ」
 ▼ 21 z936HaPNeY 17/02/01 20:17:43 ID:wlwLecpI [5/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 揺れるボールの気配――外に出ることなく同意を示すゲッコウガに少し驚く。そして失礼だと思うが、ククイ博士以上にゲッコウガの苦労は大きかっただろうと思った。

 そう考えて、彼らの関係に興味が湧いていた事にヨウは気付いた。第三の島“ウラウラ島”に辿り着いた頃には、ゲッコウガがアローラのポケモンでは無いことは知っている……カロス地方の御三家ポケモン、図鑑は対応してなかったが、パソコンからの情報で知ることは容易だった。

 カロス地方の初心者用ポケモンと、アローラのポケモン博士……研究の中で、接する機会があったのだろうと、その時のヨウは思い込んでいた。
 ▼ 22 z936HaPNeY 17/02/01 20:18:35 ID:wlwLecpI [6/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 そんな予想が覆されるのは、想像以上に早かった――。

「久々のバトルだ……いくぞ、ゲッコウガ!」

「コウガ――!」

 試練を終えて、何と言えばいいか分からない届け物を預かってマリエ庭園に戻ってきたヨウは、一触即発の修羅場に踏み入れてしまっていた。

 待ち合わせの相手であるククイ博士が対峙している相手はスカル団のボス……“グズマ”と懐かしむように口にしたククイ博士に、グズマはいやらしい笑みを浮かべながら――それでいて、敵意を露わにしながら――ポケモンを繰り出す。

 図鑑の説明を聞きながら、躊躇う足を叱咤して彼らの元に向かうヨウだったが、それを追いこして飛び出す光――ゲッコウガが、ククイ博士の隣に並んでいた。急に現れた姿にも関わらず、一瞬だけ視線を向けただけでククイ博士はグズマに視線を戻した。
 ▼ 23 z936HaPNeY 17/02/01 20:19:07 ID:wlwLecpI [7/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 そして始まったバトル……先手必勝とばかりに仕掛けたグズマの指示と共に突撃したグソクムシャが、突如湧き上がった激流に阻まれる――!

「ゲッコウガの、姿が……!?」

 再び姿を現したゲッコウガの姿に、驚いたヨウの声が響く。それが耳に入ったのか、サプライズが成功したかのようにククイ博士は笑った。

 背中に手裏剣を携え、より青みがかった体色に染まった姿――そう認識できた所で、ゲッコウガの姿が“消えた”。

「チッ……!」

 グズマの舌打ちと共に、吹き飛ばされたグソクムシャが地面に叩きつけられる。何が起こったのか、ヨウには全く見えなかった。一瞬で付いた決着に、グズマが叫ぶ――そして忌々しさを隠さずに、ククイ博士に言う。
 ▼ 24 z936HaPNeY 17/02/01 20:19:42 ID:wlwLecpI [8/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「これがアンタの本気か……これ程の強さを持って、俺と同じようにキャプテンになれなかったアンタが、何でポケモンリーグなんて造ろうとする!?」

「島巡りを終えて、キャプテンにならなかった僕はカントーを旅した……凄かったよ、知らないポケモン、見たことの無いわざ、そしてポケモンリーグ――ジムを勝ち抜いた歴戦のトレーナー達が繰り広げる熱いバトルの数々に、僕は感動したんだ――」

 そう語るククイ博士の顔は、あの時を思い出しているのか本当に楽しそうに見えた。いつの間にか隣に戻っていたゲッコウガも、普段と変わらない表情ながら……どこか懐かしむような顔に見えた。

「――なあグズマ、島巡りがくだらないって君は言ったな? それはゴールが曖昧だからじゃないかな? 大大試練を終えた時、これから先のことなんて僕は何も考えてなかった……何となくキャプテンみたいに、誰かを応援するような人になりたいとしか思ってなかった」
 ▼ 25 z936HaPNeY 17/02/01 20:20:13 ID:wlwLecpI [9/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 それを自分に置き換えて、ヨウは少なからず不安になった。このまま何も無ければ……いや、いつか必ず島巡りは終わりを迎える。その時、自分は何を考えているのかと、考えてしまう。

 今は隣に目標がいる。それでその先は、と問われれば……答えが無かった。

「答えは自分で見つけるもの――だから僕は、外にそれを求めた。そして気付いた! 他の地方に負けないくらいに、アローラは素晴らしいものを持ってる! それをみんなに伝えたい……なら、その場所を造ればいいと思ったんだ!」

「それが……ポケモンリーグか」

「ああ! ポケモンの強さを競う……その点に置いて、これ以上のものは無いだろう? それだけじゃない。リーグを通して、アローラの素晴らしさを世界に伝える……そしてほかの地方の魅力を、みんなに知ってもらいたいんだ! 可能性に溢れる“島巡りをしている”挑戦者達にね!」
 ▼ 26 z936HaPNeY 17/02/01 20:20:46 ID:wlwLecpI [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そう言ってククイ博士が見たのは、その島巡りをしているヨウだった。追いかけるように視線を向けたグズマは、少しの間をおいて口を開く。

「お前、名前は?」

「ヨウ……です」

「そうか……何の為に、島巡りをしてるんだ?」

 グズマの雰囲気は、先程よりは穏やかだった……少なくとも、敵意は無いだろうとヨウは思った。だからこそ、今感じているままに答えた。

「それを探しています……ポケモン達と、みんなで……!」

 今思えば、これがグズマと普通に会話できた最初で最後の機会だった……これ以降、巡り合わせが悪いのか、それとも運命の悪戯か、スカル団の悪事に巻き込まれていくことになったからだ。

 その裏にあった……恐ろしい計画にも――。
 ▼ 27 グトリオ@ナナのみ 17/02/01 23:06:12 ID:sfkU6AKM NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 28 ラス@ミックスオレ 17/02/01 23:28:48 ID:MntXyLcM NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
体験版ゲッコウガ送ってストーリーやればよかった…
今更ながら後悔
 ▼ 29 リッパー@りゅうのプレート 17/02/03 23:42:04 ID:0d3vp9Lc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 30 z936HaPNeY 17/02/04 20:58:49 ID:AQuc9H0U [1/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 悪いことは重なるのが常なのかもしれない……理由の分からない苛立ちを前に、ヨウは解決策を見つけられないでいた。

 姿を変えたゲッコウガ――実際にやってみせたククイ博士さえ、未だに仕組みが分からないと言う謎の現象……それでも嫉妬のような感情を持ってしまうくらいに、ヨウにとっては羨ましいとしか思えない存在だった。

 だからこそ無意識だったのかもしれない……認めてもらえたことで、舞い上がってしまったのかもしれない。他の仲間達を見なくなっていたヨウに、ゲッコウガは複雑そうな視線を送っていた。

 廃墟になったスーパーの跡地で行われた試練――ヨウにとって初めての挫折だった。しかも考える限りで、最悪の結果となってしまった。
 ▼ 31 z936HaPNeY 17/02/04 20:59:33 ID:AQuc9H0U [2/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 各地のキャプテンが監督者として見守るとは言え、相手は強力な野生のポケモンだ。絶対に安全とは言えない上、事故が起きないということも無い。そんな現状が受け入れられているのは、アローラ地方の風習だから……なのだろう。

 力尽きたポケモン達を庇いながら、なんとか脱出しようとしたヨウだが……そう簡単に逃がしてくれるほど、彼らは甘くなかった。キャプテン曰く、いつもなら脅かす程度で済ましてくれるらしいが、そんな話を聞いた所で結果は変わらない。

 そしてゲッコウガが、殿を引き受けて……姿を消した。
 ▼ 32 z936HaPNeY 17/02/04 21:00:35 ID:AQuc9H0U [3/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 どんな時でも、どんな失敗をしても、絶対に見捨てることはしなかった……そんなことに、今更気付いたとヨウは悔やんだ。仲間達の回復を待つ間、今まで以上の孤独に震えていたヨウに、キャプテンのアセロラが笑顔を見せる。

「大丈夫だよ、ミミッキュはそんなことしない子だから」

 主ポケモンは、二回りも大きなミミッキュだった。仲間を呼ぶことも無く、己自身の実力だけでヨウのパーティを壊滅に追い込む実力……思い出すだけで震えが起こる程、ヨウにトラウマを刻み付けていた。

「みんなが元気になったら、もっかい挑戦しよ! 今度は私も一緒に行くから!」
 ▼ 33 z936HaPNeY 17/02/04 21:01:18 ID:AQuc9H0U [4/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「アイツは――」

 ヨウはやっと気付いた……無意識の内にゲッコウガに頼っていたことを、あの変身した姿に目を奪われていたことを、知らずの内に仲間達を蔑ろにしてしまったことを。

「――気付いていたんだ。それでも、何も言わなかった……いつか気付いてくれるって、信じてくれたから……トレーナーとして、認めてくれたから!」

 戸惑いは、もう無かった……回復した仲間達と繋がりを取り戻した次の朝、ヨウは再び試練の廃墟に足を踏み入れる。

 二度目ということと、事態の重さを見て同行したアセロラの案内の下、主が待ち構える部屋に辿り着くのは早かった――。
 ▼ 34 z936HaPNeY 17/02/04 21:01:59 ID:AQuc9H0U [5/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「あれ、こんな部屋あったかな……?」

「え……!?」

 何の疑いも無く入った最奥の小部屋が、主ポケモンが待っていた場所だった……冷静になってみれば、異様な気配を感じる……気がした。

 ミミッキュというポケモンは、正体が分からないポケモンである。図鑑によればあまりにもおぞましい姿を見られない為に布を被り、そして友達が欲しいからと人気ポケモンであるピカチュウの姿を模倣した――と言われている。

 そう思えば、部屋の状態にも理解できる――圧倒されるのは、避けられないが……。
 ▼ 35 z936HaPNeY 17/02/04 21:04:03 ID:AQuc9H0U [6/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「うわぁ……こんなにたくさん」

 ピカチュウに、ピカチュウと、ピカチュウで、ピカチュウ……壁一面に張られたピカチュウの写真に、二人は口を開けていた。よくぞここまで集めたものだと、こんな状況でなければ感動していたかもしれない……。

「コウガ……!?」

「ッ……!?」

 天井から聞こえた声は、ヨウが探していたもの――縋るように見上げれば、同じように目を丸くしているゲッコウガの姿があった。何故か驚いた様子のゲッコウガは、手に持っていた何かを懐に仕舞おうとするが……既にそれは宙に落ちていた。
 ▼ 36 z936HaPNeY 17/02/04 21:04:46 ID:AQuc9H0U [7/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「何だ、これ……?」

 導かれるようにヨウの手元に着地した写真――ピカチュウと少年が、満面の笑みで映っている――を見るが、特に意味のあるものとは思えなかった……。

「古い写真だけど……全然知らないお兄ちゃんだよ?」

「ミミッキュ――!」

 視界の隅で動く尻尾が見えた――。

「ん、何か鳴き声が聞こえたような……?」

 勝手に起動したロトム図鑑が、ポケファインダーにセットされる。

「……そういえばお兄ちゃん、試練の内容は覚えてるよね?」

「うん……」

 ゴーストポケモンを撮影して、場合によってはバトルして勝利すること――それがこの試練の内容だ。
 ▼ 37 z936HaPNeY 17/02/04 21:06:06 ID:AQuc9H0U [8/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 そして主ポケモンも、その例外ではない――先程からパンパンと、飛び跳ねているような音が背後から聞こえている。

「こういうときって……大体どこにいるかは決まっているよね」

 段々とアセロラの顔が、青くなっていく――気配が数段濃くなった気がする。

「コウガ……」

 諦めろと言いたげに肩を叩くゲッコウガ――覚悟を決めて、振り向いた……!



「ミタアーッ!?」
 ▼ 38 z936HaPNeY 17/02/04 21:06:48 ID:AQuc9H0U [9/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
 待っていましたとばかりに両手(?)を広げるミミッキュ……心の準備が全くできないままバトルに突入した。

 控えめに言って……滅茶苦茶怖かった。



 それでも、また一つ……強くなれた気がした。



 だからって……またいなくなるなんて、ひどいじゃないか――!
 ▼ 39 z936HaPNeY 17/02/06 18:48:13 ID:OvjJ.23I [1/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 ゲッコウガの様子がおかしいと思ったのは、それが起こる少し前からだった……。

 連れ去られたポケモンを助けるために、スカル団の本拠地に突撃し、グズマと死闘を繰り広げて、助け出したポケモンと一緒に戻れば、リーリエが連れ去れていて……置いて行かれないように必死で着いていけば、エーテルパラダイスに戻ってきた。

 その合間、船の中で……ヨウはゲッコウガが大切そうに何かを見ているのに気付いた。

「それって、ミミッキュの試練で見つけた――」

「コウガ――!?」

「――写真だよな? ピカチュウと男の人が映ってるやつ」

 アセロラが言うには、ミミッキュはゲッコウガに何もしていないらしい……実際、消耗していたとはいえ、それは最初のダメージが残っているだけだとヨウは思っている。
 ▼ 40 z936HaPNeY 17/02/06 18:48:46 ID:OvjJ.23I [2/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 むしろミミッキュと仲良くしていた方が予想できる――なんやかんやで野生のポケモンと打ち解けるのは、己より得意な奴なのだゲッコウガは。

 そして持ち帰って写真を、ゲッコウガは結構な頻度で見ている……こういったら失礼だが、昔の恋人を見るような感じに――もう会えないと諦めているような、そんな雰囲気だ。

「……もしかして、知っている人なのか?」

「コウガ……!」

 多分だけど、そういうことなんだろうと……勝手に、結論を出した。
 ▼ 41 z936HaPNeY 17/02/06 18:49:16 ID:OvjJ.23I [3/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 何を間違えたのか分からない。そもそもそんなことないと、アイツが聞いていたら言っていたかもしれない……自然と膝をついたヨウは、それでもと、拳を床に叩きつけた。

 ウルトラビースト、“ほしぐもちゃん”改めコスモッグ、異次元への扉、リーリエの母の目的――次々と明らかになる事実に、冷静さを保つだけで精一杯だった。

 目の前の空間に、少し前までは確かに開かれていた扉――それに飛び込んでいったルザミーネ、グズマ……そして、ゲッコウガ。

 本当なら、吸い込まれていたのはヨウの筈だった……その運命を変えたのは、咄嗟にボールから飛び出したゲッコウガだった。扉に一番近かったせいで、浮かび上がった身体を、突き飛ばす形でリーリエ達の元に戻した――そして反動で、ゲッコウガの姿は、扉の向こうに消えた……。


 ▼ 42 z936HaPNeY 17/02/06 18:50:03 ID:OvjJ.23I [4/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 方法は残ってると、リーリエは探し出していた。バッグの中で眠っている“ほしぐもちゃん”の力を使えば、扉を出現させることができる――ルザミーネの時みたいに、無理矢理なやり方では無く、きちんとした儀式が存在すると言っていた。

『そうか……とんでもないことに巻き込まれたな。僕としてはみんなが無事なら、これ以上の無茶はしないでほしいと言うべきなんだけど……そういう訳にもいかないか』

 ポケモンセンターで、リーリエが辞退を伝えている相手は、ヨウにゲッコウガを託してくれた人だ――刹那の間、顔が強張ったように見えたのは、決して見間違いでは無い筈だ。

「勿論です! お母さま達を助け出す為に、私は諦めません!」

 画面を介してリーリエが話している相手は、ヨウにとって今一番会いたくない人だった――ゲッコウガとの繋がりを、それなりに知っているからこそ……申し訳ない気持ちで、押し潰されそうだった。
 ▼ 43 z936HaPNeY 17/02/06 18:50:39 ID:OvjJ.23I [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
『それなら僕は何も言えないな……大丈夫さ、リーリエ。ゲッコウガもいるんだ。どんなことが起ころうとも、二人を守ってくれる筈さ!』

「ククイ博士……どうして!?」

 どうして、こうも簡単に、信じられるのか……ヨウはまだ、理解できなかった。思わず画面に割って入ったヨウに、ククイ博士は胸に手を当てて笑った。

『僕とゲッコウガは一心同体だからね! 離れていたって、心は繋がっているんだ……だから、大丈夫だって分かるんだ!』

 そうだと確信しているククイ博士の笑顔に、ヨウは何も言えなかった……もしかしたら、アイツなら、そんな可能性を信じたいと思っていた。
 ▼ 44 z936HaPNeY 17/02/08 23:46:43 ID:KTZTS0RY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 第四の島“ポニ島”に着いて、ヨウとリーリエは共に行動するようになった。異次元への道を再び開くために……目的は同じだった。その途中で、後の島クイーンになるハプウとの出会いはリーリエを強くした――信念を持った強い女性に変わっていく姿に、ヨウが惹かれたのはこの時だったのかもしれない。

 友達として、一緒にアローラ地方を旅して来た。男だからと、守らなくちゃって格好付けたこともある……それもこれも、仲間だからだと思っていた。

 満月が浮かぶ夜、立ち寄った孤島の洞窟で雨宿りをしていた時……漸く、本当の想いに気付いた――リーリエのことが好きで、だからこそ力になりたいと願った。

 それは友達とか、仲間とかじゃなくて……もっと深い何かで、熱い感情だった。
 ▼ 45 z936HaPNeY 17/02/08 23:47:15 ID:KTZTS0RY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 大切な誰かを守りたいと思った時こそ……人は、ポケモンは、強くなれる――!



 勇気のある少年――ヨウを知る人達に、真っ先に言われる長所だ……オニスズメに襲われているほしぐもちゃんを身を挺して庇った時や、引っ越し早々に島巡りに旅立った所や、得体の知れないウルトラビーストに真っ向勝負を挑んだこととか、スカル団のアジトに(ほぼ)単身で乗り込んだり……思い当たる節が、結構あるとヨウは思い返す。

 でも、それは、違うと――ヨウは言い切る。

 リーリエの声が無かったら、ククイ博士が誘わなかったら、アイツの信頼が無かったら、自分よりも小さな子供達の涙が無かったら……きっと、動くことは無かっただろう。
 ▼ 46 z936HaPNeY 17/02/08 23:48:04 ID:KTZTS0RY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 目の前に迫る――変貌したルザミーネに、ヨウは欠片も恐れを抱かなかった。

 今逃げたら、背後にいるリーリエはどうなる……?

 その時点で、ヨウから“逃げる”という選択は無かった……例え、戦えるポケモンがいないとしても、それは変わらない。

 バトルには勝てた……だが、妄執に取りつかれたルザミーネは、敗北を認めることは無かった。

「ヨウさん――!」

「消えなさい――!」
 ▼ 47 z936HaPNeY 17/02/08 23:48:37 ID:KTZTS0RY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 リーリエの悲鳴と、迫るルザミーネの触手に……ヨウが思い浮かべたのは、結局の所アイツの背中だった。

 走馬灯のように過る、アイツと一緒に旅立った頃の思い出……素人以下の自分と、歴戦の最終進化ポケモンのコンビに、負けは付きものだった。

 それでもアイツは決して見捨てなかった。博士に頼まれたからでは無く、いつか成長するであろうヨウに期待していた――認められていないこと自体が勘違いで、最初からアイツはヨウを“見ていた”……トレーナーとして、背中を預けていた。

 絶対に、諦めない――僅かでも可能性があるのなら、ヨウはそれを信じて待つ。
 ▼ 48 z936HaPNeY 17/02/08 23:49:07 ID:KTZTS0RY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告



「――ッ!」

 触手を阻むように、地面に突き刺さった……蒼の手裏剣。

「コウガ……!」

 音も無く、静かにヨウの前に立った……変身したゲッコウガに、ヨウは頷いた。

 言葉を交わす必要は無く、成すべきことは互いに分かっている。

 “彼女達”を救う――その想いが、彼らを繋ぐ……!
 ▼ 49 ルシアン@クロスメール 17/02/09 02:07:08 ID:rLirwZ8Q NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
支援
確かに体験版の手紙はククイが送ってきたものとも読めるね
 ▼ 50 z936HaPNeY 17/02/10 00:16:21 ID:ihZ73KwE [1/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 “きずなへんげ”――彼のゲッコウガに宿った唯一無二の特性は、無限の可能性を秘めている。その全てを引き出せるのは、彼と心を通わしたトレーナーただ一人……例外はない。

 それでも……今だけは、ヨウの覚悟を力に変えて、ゲッコウガは広大な世界を駆け抜ける――周囲から迫りくる触手を、己と……そして、ヨウの視界を用いて、回避していく。

 その姿は一条の蒼き流星と成り、見守るリーリエは勿論、追いかけているルザミーネも、帰りを待つ伝説に数えられるポケモンも、その姿を追うことは叶わない。

 光の領域まで踏み込んだゲッコウガを認識しているのはヨウだけだ……胸に宿る高揚感と、明鏡止水の冷静さを両立させて、着実に勝ち筋を見出していく。
 ▼ 51 z936HaPNeY 17/02/10 00:16:52 ID:ihZ73KwE [2/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 両手に握る苦無で触手を逸らしながら……それがゲッコウガの身体を掠める度に、ヨウの身体にも激痛が走るが、そんなことはどうでもいいと無視する――少しだけ躊躇ったゲッコウガだが、ヨウの覚悟を知った次の瞬間、踏み込む速度を上げた。

 その刃が影を切り裂き、この手がルザミーネの身体を捉えたのは、それからまもなくのことだ――それを見届けた所で、身体を押し潰す様な疲れが、ヨウに襲い掛かった。

 視界が暗闇に飲み込まれる直前――。

「ヨウさん――!?」

「コウ……!」

 あんなに目を丸くしたアイツの姿、初めて見たな……そんなことを、ヨウは思った。
 ▼ 52 z936HaPNeY 17/02/10 00:17:24 ID:ihZ73KwE [3/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 次に目が覚めたのは、ポケモンセンターの病室だった――。

 隣で待ってくれていたリーリエの話を聞いたヨウは、全てが終わったことを知った……無事にルザミーネを助け出し、崩壊する空間から脱出したこと――隣のベッドで眠る姿を見て、素直に安心したのは意外だった――現在は、兄さんが財団の混乱を立て直すために頑張っているそうだ……。

 そして……彼らが祭壇の頂上で、待っていることを聞いた――。


 ▼ 53 z936HaPNeY 17/02/10 00:17:55 ID:ihZ73KwE [4/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「これまで一緒に旅して来たんです。考えていることは、すぐに分かりました!」

 そう胸を張るリーリエに同意するように頷いたのは、真の姿になった“ほしぐもちゃん”だ……この世界に戻ってきた後、思い出したかのように立ち止まった様子に、リーリエはその決意を読み取った。




 一緒に旅をした――。

 素晴らしいものを、この目で見た――。

 強い想いが、掴み取った奇跡を、全身で感じ取った――。

 もう子供ではない……強く優しき、天に輝く光の化身として、在りたいと願った。

 その力は、彼女には不要であり……共に歩むべきは、彼であると理解した。
 ▼ 54 z936HaPNeY 17/02/10 00:18:27 ID:ihZ73KwE [5/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「いいのか? 俺なんかが、お前のトレーナーになって……?」

 首を振って、一歩前に進む“ほしぐもちゃん”……それが戦闘態勢になったことを知り、ヨウの手は自然と懐のボールに伸びる。

 たとえ相手が伝説のポケモンだろうと変わらない――従えるに足る実力を示す為に、自らバトルを挑む姿に、ヨウの躊躇いは吹き飛んだ。ここまで来れば、いつも通りに、全力で立ち向かうだけ……超えるべきは、己の限界だ。
 ▼ 55 z936HaPNeY 17/02/10 00:19:07 ID:ihZ73KwE [6/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「ヨウさんも、ほしぐもちゃんも、頑張ってください!」

「コウガ――!」

 祭壇の上で共に待っていたゲッコウガが、審判役を引き受ける……伸ばした腕が振り下ろされた次の瞬間、周囲を覆う結界のような空気に、表情が固まるのを感じた。

 嘗ての面影は微かに、伝説に相応しい重圧を放ちながら対峙する巨体に、ヨウは相棒と共に挑んだ……ただ、全力をぶつけ合う為だけに。

 その先に、共に歩む未来を描きながら――。
 ▼ 56 z936HaPNeY 17/02/10 00:19:40 ID:ihZ73KwE [7/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





 別れの時は、唐突だった。

 何処かで感じ取っていたのかもしれない……不思議と驚くことは無かった。あの時、ほしぐもちゃんが収まったボールを手にした瞬間、自分の役目は終わったのだと決めていたからなのかもしれない。

 その時からここまで、ゲッコウガがボールに戻ることは無かった――。

「ここで、お別れなのか……?」

「……コウガ」

 後ろを振り返らずとも、ゆっくりと頷いたことは分かった……トレーナーの持つことができるボールは六つ――既にゲッコウガが戻る場所は、ヨウの元には無い。
 ▼ 57 z936HaPNeY 17/02/10 00:20:12 ID:ihZ73KwE [8/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 この先に待つのは、最後の試練“ポケモンリーグ”……挑むのなら、ヨウが自らの手で繋がりを結んだポケモン達が相応しいと、ゲッコウガは判断したのだ。

 今のヨウは、旅立った頃の新人トレーナーではない。試練を突破し、四つの島を走破し、アローラの危機を防いだ……一人前のポケモントレーナーだ。

 だからこそ、同じ道を歩む必要は何処にも無かった。

 ゲッコウガのトレーナーはただ一人……それはヨウでは無い。例え自身の全力を引き出せたとしても、満月の下で交わした誓いは変わらず、彼の胸に刻まれている。
 ▼ 58 z936HaPNeY 17/02/10 00:20:44 ID:ihZ73KwE [9/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「ありがとう……お前が居たから、俺はここまで来れたんだ」

 ラストスパート――後は、一気に頂点に駆け上がるだけだ。

「見ていてくれ……俺達の、島巡りの集大成を……!」

「コウガ――!」

 “行って来い――!”と、背中を押す声が聞こえた。

 最後まで振り返る事は無かった……駆けだした足は止まる事無く、ラキナラマウンテンに進む――その奥で待つ、ポケモンリーグに向けてヨウは急ぐ。
 ▼ 59 z936HaPNeY 17/02/10 00:21:23 ID:ihZ73KwE [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



 アローラの初代チャンピォンが降臨したのは、それから間もなくのことだった――。


 ▼ 60 タドガス@ひみつのコハク 17/02/10 01:10:10 ID:v40q2FHE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 61 z936HaPNeY 17/02/12 23:29:41 ID:OE6vh0W2 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 己の夢を叶えてからも、やりたいことは沢山ある……もう一つ、絶対に成し遂げなければならないことが残っている。

 今、胸にある達成感を燃料に変えて、再び歩み始める――より強く、より深く、全力で向かっていくのだ。



 ▼ 62 z936HaPNeY 17/02/12 23:30:25 ID:OE6vh0W2 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 アローラ地方に設立されたポケモンリーグ……そこに君臨する初代チャンピォンが決まってから数日が経過した。

 関係者だけとは言え、アローラ地方のキャプテンや島キング、島クイーン、凄腕トレーナー達が集結したお祭りの後、“でんこうせっか”の勢いで、リーグに関する手続きを進めたククイ博士にも、ようやくいつもの生活サイクルが戻ってきた。

 目まぐるしく変化の連続だった日々だが……いざ終わってみれば、少しばかり寂しさを感じる。だが、アローラらしいのんびりとした過ごし方はククイ博士の望む所で、数日もすれば元通りだろうと軽く考えていた。
 ▼ 63 z936HaPNeY 17/02/12 23:30:55 ID:OE6vh0W2 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 変わらない筈なのに、少しばかり広くなった気がする自宅兼研究所――事件の後遺症が残っているルザミーネの為に、カントー地方に向かったリーリエのせいだろう――で、パソコンのデータを“にらみつける”と、呼び鈴の音が耳に入った。

「コウガ……?」

 腰を浮かせたククイ博士だが、既に玄関まで辿り着いている“相棒”の姿を見て、元の位置に戻す。研究所にいるということは、時間は昼頃なのだろうと予想を付ける……朝方は自主鍛錬で、島の何処かを走っているからだ。

「おじゃましまーす……って、ゲッコウガ!?」

「ん、ヨウか?」

 驚いた様子の声に、ククイ博士は身体を向けた……珍しいと思いながらも、驚くことは無かった。研究所からヨウの家までは、そんなに距離はない。一度遊びに来たこともある……今度会ったら、渡そうかと思って用意していた物を思い浮かべながら、中に入ってきたヨウに笑みを向ける。
 ▼ 64 z936HaPNeY 17/02/12 23:31:43 ID:OE6vh0W2 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「久しぶりだな……と言っても、そんなに経ってないか“チャンピォン”?」

「アハハ……全然、実感無いんですけどね」

 苦笑いして、やんわりと遠慮するヨウだが、その実力をククイ博士は認めている――アローラの頂点に君臨するに相応しい実力と人柄を、兼ね備えているとバトルを通して感じ取ったのだ。

 後は、自信さえ付けてくれれば完璧なんだけどなぁ――そう頭の片隅で思いながら、此処にやってきた要件を考えてみる。まさかこっちから呼ぶ前に“みらいよち”でもしてきたのだろうか……いや、いくらチャンピォンでも、それはない。
 ▼ 65 z936HaPNeY 17/02/12 23:32:58 ID:OE6vh0W2 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「此処に来る前に、知らない人に渡されたんですけど――」

 そう言って見せて来た黒い手紙のような何かに、スッと意識が切り替わる……只ならぬ事態の予感が、体中を駆け巡っていく。

 相棒も同じ反応らしい――鋭い眼光の矛先は、やはりヨウの持ち物だ。

「――家の前だったから、俺のことを知っているのは間違いないです。ただ……見るからに怪しくて、ちょっと怖くて……開けてもらってもいいですか?」

「……手紙自体に変わった所は無さそうだ。でも、念には念を入れた方がいい――ゲッコウガ、頼むぜ」

「コウガ……!」
 ▼ 66 z936HaPNeY 17/02/12 23:33:31 ID:OE6vh0W2 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
 ヨウから、ククイ博士を通して、ゲッコウガに渡った黒い手紙――居合切りの要領で具現させた小太刀を用意して、ゲッコウガは外に出た。
 万が一の可能性を考えて――例えば開けた瞬間に、爆発する類とか――の行動だが、数秒の内に戻ってきたゲッコウガに、ヨウとククイ博士は胸を撫で下ろす。

「――招待状みたいな、ものでしょうか?」

「僕が送るなら、せめて目的くらいは書いておくけどなぁ……行くのか?」

 場所と、そこに来てくれとだけ書かれた手紙……ククイ博士の問いに、ヨウは少しだけ悩むそぶりを見せたが、手紙の文章を何度か読み返した所で、顔付きを変えた。
 ▼ 67 z936HaPNeY 17/02/12 23:34:02 ID:OE6vh0W2 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「手紙の送り主は、俺に助けを求めてる……チャンピォンなら、行くしかないでしょう!」

 “チャンピォンだから”とは言っているが、それだけの理由で行こうとは思っていないだろう……この後の予定を浮かべて、今日の分を他に回せることをククイ博士は確認する。

 アローラ最強のトレーナーとは言え、自分より一回りも二回りも年下の少年を、単身で行かせる訳にはいかない――そう考えた大人一人と、ポケモン一匹が頷き合う。

「僕も、付き合うぜ!」

「コウガ……!」
 ▼ 68 z936HaPNeY 17/02/14 21:30:13 ID:ekG5ZGd2 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 アローラ地方の各地に点在するモーテル――手紙で指定された場所は、アーカラ島にあった。警戒しつつ向かったヨウとククイ博士を待っていたのは、初めて見る男女二人組……少なくとも、ヨウに手紙を渡した男の姿はない。

「――いや、君に手紙を渡したのは私だよ……中々の変装だったと思っていたが、こうして生の反応を聞くのは気分がいいなぁ!」

「国際警察……?」

「ッ――!?」

 そう笑う男は国際警察のハンサムと名乗った。国際警察の言葉が出た瞬間、顔色を変えた同行者に、視線を送っているのはもう一人の待ち人――。
 ▼ 69 z936HaPNeY 17/02/14 21:30:45 ID:ekG5ZGd2 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「私は反対だったんですけどね……いらない警戒心を招く恐れがありますから。最低限の人員で、任務を進めたかったのですが……」

「それは危険だから……って意味ですか?」

 ハンサムの上司と名乗るリラの言い方に、ククイ博士は冗談めいた口調で聞き返す。気軽そうな雰囲気に見えて、先程から向けている目付きは何処か鋭い。

「ウルトラビースト――このアローラ地方で、再び出現が確認されました。私達、国際警察は……彼らの捕獲、保護を任務として、派遣された訳です。そしてアローラチャンピォンのヨウさん……貴方の力を借りる為に、此処に来ていただきました」

「ウルトラビーストを捕まえる……そんなことができるんですか?」

 問い掛けるヨウに向けて、ハンサムが取り出した幾何学模様の青いボール――あの時、ルザミーネが持っていたボールと同じ物だった。
 その場にいなかったククイ博士は別として、ヨウとゲッコウガは驚きの反応を見せる……彼らが思い浮かんだ方法こそ、任務の内容で間違いないだろう。
 ▼ 70 z936HaPNeY 17/02/14 21:31:31 ID:ekG5ZGd2 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「一般のポケモンと同じように、バトル&ゲットする……こういえば簡単そうですが、彼らの恐ろしさを貴方ならご存知でしょう?」

「これがヨウ君だけに伝えたかった理由だ……我々としては、少数精鋭で事に当たりたいのが本音だ――チャンピォンの安全は保障します。ここは任せてくれませんか?」

 言外に告げられた戦力外通告に、しばしの間ククイ博士は考える……それが任せていいのかと考えているようにリラとハンサムは思っていたが、そう言うことでは無かった。

「一つお聞きしたいのですが――」

 ポケモン博士では無く“それなりの強さを持つ”ポケモントレーナーとして、ククイは問う……無音で隣に立ったゲッコウガと共に、挑むような視線を放つ。
 ▼ 71 z936HaPNeY 17/02/14 21:32:10 ID:ekG5ZGd2 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「――チャンピォンをサポート出来るほどの強さをお持ちでしょうか?」

「いや、我々は……!?」

「ハンサムさん。ここは、私が――」

 気圧されたハンサム……庇う様に立ったリラが、モンスターボールに手を伸ばす。

「バトルがお望みなら、相手になります――どちらにせよ、悪い話じゃないでしょう?」

「ええ、互いの実力を知りたいなら、全力でぶつかるのが手っ取り早い……!」

 慌てるハンサムと、期待に胸を躍らせるヨウを観客にして、一発勝負のバトルが幕を開けた――。
 ▼ 72 z936HaPNeY 17/02/14 21:34:13 ID:ekG5ZGd2 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告





 国際警察の依頼を前に、断る理由は無かった……ヨウにとっては、ある意味で因縁の相手である。決着を付けられるのなら、ぜひ参加したいと思うくらいには――。

 先程のバトルに勝利したククイ博士は、そのままヨウに同行して任務に参加している……国際警察の二人にとっては、思いがけない即戦力を手にしたようなもんだと、本人でもないのに自分のことの様に嬉しくなるヨウだった。

「ディグダトンネル――“ウツロイド”の目撃情報があったのは此処だな」

「あの時の個体とは違うみたいですけど……放って置いたら、大変なことになりますよね」

 思い出すのは、洗脳されたルザミーネの狂気――自らを守るためとはいえ、他の誰かを操り人形にしてしまうのは良くない……少しでも早く、捕獲しなくてはならない。
 ▼ 73 z936HaPNeY 17/02/14 21:35:20 ID:ekG5ZGd2 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
 用意された専用のボールは十個――普段なら余裕があるとは言え、相手はウルトラビースト……想定外の展開が起きてもおかしくない。

「コウガ……!」

「心配すんなって、言ってるのか?」

「そうじゃないか? まあコイツにとっては、戦ったことのある相手だからな!」

 ルザミーネと融合したウルトラビースト相手に、大立ち回りを演じたゲッコウガ……そう考えれば、必要以上に恐れることは無いだろう。無意識に張りつめていた緊張を解いて、普段と同じ顔付きで進んでいく。

「ヨウとの島巡り、随分と楽しんでいたみたいだな?」

「コウ――!」

「そっか……なら、よかったぜ!」
 ▼ 74 z936HaPNeY 17/02/14 21:35:57 ID:ekG5ZGd2 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
 人もポケモンも、大きく成長する――島巡りの目的は、そこにある。

 思った以上に、何かを得た様子のゲッコウガを見て、ククイ博士はあの選択が間違っていなかったと安心した。頼り切っても、突き放してもいけない……最も大切で、最も難しいそれを、ゲッコウガは成し遂げた――自覚はないだろうが、それはそれだ。

 だからこそ――。

(絶対に、見つけてやるさ……!)

 帰りを待っている誰かを思って、決意を新たにする。今回の事件は、正に僥倖だ――純粋にウルトラビーストの保護を考えているヨウや、まだ何かを隠している国際警察の彼らとは別に、ククイ博士にも目的がある……可能性は低いが、無い訳では無い。



 それが……これまで積み上げてきたものを、全て壊すことになろうとも――。
 ▼ 75 z936HaPNeY 17/02/16 21:52:21 ID:cAANFXIw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





「そうか、よくやってくれた! ではモーテルに戻ってくれ……捕獲したボールはこちらで預かる……ああ、財団の方で一通りの検査が済めば、後は彼らの意思に任せるさ」

 先に目的を果たしたリラが戻ると、報告を受けているハンサムの姿があった。予想よりも早い流れに、脳内で付けていた評価を上方修正する。そしてリラの帰還に気付いたハンサムが、幽霊でも見たかのように驚くのを見て、こらえきれず笑ってしまう……おかしい、気配を消したつもりは無かったのだが――。

「……無事に終わったみたいですね」

「ああ、ボスも無事でなにより……どうした? その資料は……?」

「少し、協力者について――気になる点が、いくつか……」

 リラの顔付きを見て、ハンサムは真剣な表情で頷く。二人の付き合いは長い……冗談や、酔狂の雰囲気ではなく、これからのことに関係する事柄なのは読み取っていた。
 ▼ 76 z936HaPNeY 17/02/16 21:52:53 ID:cAANFXIw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 その男を調べるのは、造作も無かった――。

 アローラ地方を代表するポケモン博士、バトルの腕は一線を退いているとは言え、今のチャンピォンと繰り広げた一戦は、実力の高さを証明している……とあるスタジアムで、似たようなバトルスタイルを繰り広げる覆面レスラーがいるが、それは置いておくとして――。

「調べた所で、特に疑問の無い結果……それなのに、引っ掛かりを感じずにはいられませんでした――むしろ“何かある”と最初から、確信していたんです」

 そんな前情報の無い中で、リラはバトルを挑んだ……結果は敗北、それだけなら問題は無かった。手も足も出なかった訳では無く、互いに力を出し切ったのは分かっている。それでも違和感が、いや……似たような気配を感じたのだ。
 ▼ 77 z936HaPNeY 17/02/16 21:53:48 ID:cAANFXIw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「世間的に明らかになっている情報は成人になってからのものだけ……それ以前のトレーナー時代になると、極端に少なくなる――皆無と言ってもいい。まるで“突然現れた”みたいに……!」

「国際警察の情報網を駆使してもか……?」

「はい……遡って調べた結果が、島巡りを達成した所で止まっていました。これ以上は存在しない。決め付けるのは早々ですが――」

 それは同族としての直感……偶然なら気の毒だったが、彼は知っていて事態に巻き込まれにきたと、リラは確信している。

「――“Fall”だと、私は疑っています」
 ▼ 78 ーランド@やまぶきのミツ 17/02/16 22:34:13 ID:HWWANnKw NGネーム登録 NGID登録 m 報告
ククイフォール説爆誕!
支援!
 ▼ 79 z936HaPNeY 17/02/18 17:02:09 ID:fqFl1efw [1/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告





 リラとハンサムがヨウに困難な頼み事をしたのは、ウルトラビースト捕獲任務が軌道に乗ってきた頃のことだ……本筋に影響が出ては本末転倒だが、無視できる事柄では無い。本人が言ってこないことから、直接聞いた所で話してくれるとは思えない――故に、ヨウに話が行くのは自然な成り行きだった。

「ククイ博士は……“Fall”なんですか?」

「ああ、そうだぜ……って、えっ!?」

 だからと言って真正面からいきなり聞くと、二人は思ってなかったであろう……そして全く身構えていなかった為に、あっさりと認めてしまったククイ博士を見て、気付かれないようにため息を吐くポケモンが一匹。
 ▼ 80 z936HaPNeY 17/02/18 17:02:40 ID:fqFl1efw [2/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「……今の、聞かなかったことにはできないか?」

 乾いた笑いを零すククイ博士だが、ヨウの返答は無言の首振り……横に振られたそれに、ガクリと思いっきり脱力するしかできなかった。

 ヨウもヨウで余りの驚きに、放心状態から回復できていない――結果的に、ほとんど同じタイミングで復帰した後、誘いを掛けたのはククイ博士の方だった。

「少し、付き合ってくれないか……知って欲しいことがあるんだ」
 ▼ 81 z936HaPNeY 17/02/18 17:03:11 ID:fqFl1efw [3/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



 島国のアローラ地方とは言え、ポケモンセンターの設備は世界標準のレベルに達している。最寄りのセンターに入ったククイ博士は、直ぐに見つけたパソコンに向かう。

「知ってると思うが、パソコンから見ることが出来るポケモンの情報は多いぜ――出会った場所、記念品の記録、持っている能力値……そして“おや”の名前だ」

 理論よりは実践、考案するなら実際に試すタイプのククイ博士だが、研究者らしくキーボードを動かす手に淀みは無い。瞬く間に目的のページに辿り着いた所で、身体をずらす……覗きこんだヨウの目に映ったのは、先程から隣にいるポケモンの情報だ。

「この“おや”の所は、基本的に変わらない……そのポケモンを初めて手にしたトレーナーの名前が登録されるんだ。野生に戻ったとみなされる行為をすれば空欄になるけど、パソコンで確認できるポケモンに、そんなケースは無い」

 ククイ博士が指している場所と、ヨウが見ている場所は同じだ――そこにある名前は、二人とも知らないものだ。
 ▼ 82 z936HaPNeY 17/02/18 17:03:45 ID:fqFl1efw [4/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「交換したって変わらない……違法な放棄かもしれないが、アイツ自身が否定している以上、可能性は一つしかないと思うぜ――そうだろ、ゲッコウガ?」

「コウガ……!」

 頷くゲッコウガの姿を見て、ヨウが疑うことは無かった。そして目の前に表示された揺るぎない証拠と、新たに知った事実に、夢中になっていた。

「それじゃあ彼が、ゲッコウガの“本当”のトレーナー……!」

「そう……リーグで叶えたのは“僕”の夢だけど、“僕達”の夢はまだ続いている――アイツの元に帰す為に、僕は研究者になったんだぜ……!」

 そう語るククイ博士を見るゲッコウガの瞳は複雑そうに映っていた。それを知る者はいない……ヨウもククイ博士も、画面に映る名前しか目に入っていないからだ。
 ▼ 83 z936HaPNeY 17/02/18 17:04:23 ID:fqFl1efw [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
 もし気付いていたら、少しは変わっていたのかもしれない……ヨウにとってゲッコウガとの付き合いは決して軽いものではない。だからこそ気を取られてしまったと言えば、仕方ないのかもしれない――。

 もしくは……国際警察の彼らが、どうしてヨウに協力を求めたのかを知っていれば、それを踏まえて動くことができたのかもしれない。

 ウルトラビーストが活発化する最大の原因……帰りたいというシンプルな想いの矛先に、あの空間の面影が理由に含まれるのは必然だった。



 故に、悲劇は起きた――。
 ▼ 84 スカーン@ねむけざまし 17/02/20 00:17:51 ID:G2NhhF9U NGネーム登録 NGID登録 報告
面白い
支援
 ▼ 85 z936HaPNeY 17/03/03 19:05:56 ID:Ks8BgX8k [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告



 その日は雨が降っていた。

 ヨウとジュナイパーが対峙しているのは、ウルトラビーストの一体。電線のような体に、白い突起が付いた存在だ。電気を操るソイツは球体のエネルギー弾と、範囲放電を使い分ける戦法でバトルを有利に進めていた。

 隙の少ない見事な戦い方……だが、それでやられるようではチャンピォンになっていない。数回の攻防で、攻め時を把握したヨウは、ジュナイパーに指示を出す。その指示に応えるだけの技量を、ジュナイパーは持っている。

 そうしてバトルの流れは動く……後に“デンジュモク”と名付けられるウルトラビーストがボールに収まるのは、時間の問題だった。
 ▼ 86 z936HaPNeY 17/03/03 19:06:27 ID:Ks8BgX8k [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
 その日も雨が降っていた――。

「そうか、そっちも無事に終わったか……ああ、合流してからモーテルに向かおうぜ」

 既に捕獲完了したボールを握りながら、連絡を取るククイ博士……それを横目で見ながら、バトル後のストレッチをしていたゲッコウガは一抹の不安を感じていた。

 タイプとしては苦手な相手だったのだろう。放つ電撃は強力で、当たり所が悪ければ一撃で戦闘不能に追い込まれていたと想像できる……だが、嫌な予感と言うには弱い。何の苦労も無く捕獲に持ち込めた……だからこそ、不安は消えなかった。

 その予感をゲッコウガは甘く見ることはしない――あの日も、こんな予感の元に、事件は起きてしまったのだから……なので、彼に話を伝えている。
 ▼ 87 z936HaPNeY 17/03/03 19:07:52 ID:Ks8BgX8k [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ビーストボール――エーテル財団が極秘に開発した特殊ボール、その相手はウルトラビースト……未知の存在に対して、可能な限りの技術を継ぎ込んだとは言え、何も起きないとは限らない……そのこと自体は、この任務に参加している全員が理解していた。

 だが、タイミングが、余りにも致命的だった――。

「ビーストが!?」

「コウガ――!?」

 それは互いの姿を見つけて、その元に向かおうとした瞬間だった。同類の気配を察知して、興奮状態に陥ったのだろうか……同じタイミングで飛び出したデンジュモク達に、ヨウとゲッコウガの思考が止まる――そしていち早く動いていた男が一人。

 彼は冷静に事態を把握していた……付近にいる人達と、飛び出したデンジュモクの立ち位置、そして興奮状態の彼らが迸るような電撃を溜め込み始める所まで、しっかりと確認していた。
 ▼ 88 z936HaPNeY 17/03/03 19:08:37 ID:Ks8BgX8k [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
 世界が一時、止まったかのように彼には見えていた……故に無駄な動きをすることなく、彼は己の身体をビースト達の下に滑り込ませた――余りにも上手くいきすぎた故に、思わず笑ってしまう程に……。

 その意味に気付いたヨウとゲッコウガが、顔色を変えて何かを叫ぼうとするが、それをかき消す程の雷鳴が、全てをかき消した――。

「博士――!?」

「コウガ――!?」

 轟音と閃光が静まった後、目に映り込んだ光景を、悪夢だと思い込もうとした……呆然とする中、再び電撃を放とうとするビースト達を、ただ見送ることしかできなかった。
 ▼ 89 z936HaPNeY 17/03/03 19:09:54 ID:Ks8BgX8k [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
 しかしビースト達は気付かない――。

「カプゥ、コッコ――!!」

 金色に輝く足元を……そして今放とうとする“電撃”を超える“雷撃”が迫っていたことに――。

「――!?」

 閃光が迸る。先程の金色を超えて、色を失くした白に染まる世界……アローラを治める神々が一体、その全力を込めた一撃が、ビースト達に制裁を与えた。

 いや、制裁と言うのは間違いかもしれない。

「コッコ……!」

 瞳に浮かぶ怒りと悲しみ、そして自らを責め立てるように零した嘆きの声……まるで非力さを嘆くような姿に、事の一部始終を見ていた者達は声にならない驚きを見せていた。

 気紛れな性格と伝えられ、そして否定することは無かった彼だが……今回に限っては、純粋な怒りを持って力を行使した。

 大切な存在を傷つけられた――土地神として珍しく、それでも生き物として当たり前な理由だった。
 ▼ 90 ガチルタリス@あおいかけら 17/03/03 19:42:51 ID:iOMDGq.2 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 91 モリ@リザードナイトX 17/03/06 21:37:32 ID:1l4070pI NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 92 スゴドラ@スターのみ 17/03/06 21:39:12 ID:WLWyXn1Q NGネーム登録 NGID登録 報告
すまんがチャンピォンで草生えてしまった
 ▼ 93 ーホー@フレンドボール 17/03/06 22:17:07 ID:lcrOn1hw NGネーム登録 NGID登録 報告
ゲッコウガが言うこと聞くようになるタイミングとか
ほぼ全てゲームと同じ流れだったからすごくワクワクした。
更に支援!!!(*≧∀≦*)
 ▼ 94 デカバシ@あかいバンダナ 17/03/07 03:42:22 ID:n8L99gVg NGネーム登録 NGID登録 m 報告
チャンピォン
 ▼ 95 ンクルス@スーパーボール 17/03/09 22:48:36 ID:zN6GuBx6 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援あげ
 ▼ 96 z936HaPNeY 17/03/13 23:53:29 ID:pJsX5acU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そもそも彼らとの出会いは偶然だった――。



 いつものようにアローラの空を飛び回っていた時に見つけた影――砂浜で倒れている見覚えのない存在に、興味が湧いただけのことだった。
 内訳はニンゲンとポケモンの二つで、怪我しているが命に係わる程のものでは……それでも痛々しいと思う程度には、傷を負っていた。

 見捨てるには罪悪感が湧く程度に、土地神と言われてもポケモンとしての情はある。こういう時、結構な頻度で頼りにするニンゲンの存在を思い浮かべて、その人間の元へ飛んだ。

 当時……いや、今も島キングを務めている男に身柄を預け、とりあえずは心配いらないと聞いて、素直に“ヨカッタ”という想いが浮かんだ。そうして普段と同じ、気紛れにアローラの空を飛び回る……筈、だった。
 ▼ 97 z936HaPNeY 17/03/13 23:54:02 ID:pJsX5acU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
 次の日になっても、そんなことを思っていた――。

「珍しいですな……何か、気になることでもあったのですかな?」

『……』

 背中から声を掛ける島キングに、返事は出なかった……いや、自身でも理解できていなかった。気が付けば、彼らの元に辿り着いていた……気紛れな、土地神ポケモンたる己が。

 もしも彼に聞けば、きっとこう答えただろう――。
 ▼ 98 z936HaPNeY 17/03/13 23:54:35 ID:pJsX5acU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
『トモダチ……?』

「ああ! ボクもコイツだって、そう思ってるぜ!」



 彼らが目を覚ました時、傍にいたのは己だった。ほとんど同時にだったが、とった行動は真逆……すぐさま戦闘態勢になったポケモンと、どこか呆然としているニンゲン。反射的に迎え撃つ構えを見せたのは、迂闊だったと思う。
 見知らぬポケモンと、己を止めたのはニンゲンだった――悪い奴じゃないと思ったからと、後々言われて嬉しいと思ったが、どこか信用し過ぎるところに不安が湧き上がる。
 ▼ 99 z936HaPNeY 17/03/13 23:55:06 ID:pJsX5acU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「コウ、コウガ……」

「……カプッ」

 ポケモンの方はゲッコウガと名乗った……島キングに聞けば、海を渡った別の地方に住むポケモンだと言っていた。先の無礼を詫びるように頭を下げる姿に、己は気にしていないと告げた。何故か畏まられるのを、嫌だと思ったのだ。
 むしろ対等な関係で在りたいと、無意識に望んでいた――それだけの強さを、彼から感じ取っていたからだろうか……。
 ▼ 100 z936HaPNeY 17/03/16 19:37:22 ID:omyiUb4M [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告



 ニンゲンとポケモン、そして大好きなアローラの自然……それが己の認識する全てだった。そのカテゴリーに、新たな存在が加わったことを自覚するのは、もう少し後のことだ。

「カプッ、コッコ――!」

 朝日が昇るのを合図に、いつもの窓辺に急接近。叩きつける風か、己の出す鳴き声か、部屋の主が気付かないことはない――少し待てば、太陽のような笑みが顔を出してくる。

「ハハッ、アローラ! 今日も早いな、カプ・コケコ!」

 ニンゲンが元気になって数日、そして気紛れに一緒に行動して数週間、気が付けば己の日常に彼らの姿を求めるようになっていた。おそらく、それが……“トモダチ”というものなんだろう。そう思って、嬉しいという答えが湧き上がるのを感じていた。
 ▼ 101 z936HaPNeY 17/03/16 19:37:56 ID:omyiUb4M [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
 何度も飛び回った筈の空が、何度も眺めた筈の海が、トモダチと一緒なら新鮮に感じることが出来る。面白いと、楽しいと、心地よい感触を味わうことができた。何度も体験した己がそう思うのだ……初めて見るであろうトモダチの驚きは、もっと大きかった。そして得意気になった己は、もっとすごい所に連れて行きたくなった。

 夢中だった。彼が見せる表情の全ては、己にとっては新鮮そのもので……気まぐれで、忘れっぽい己の筈なのに、ずっと続けばいいと思ってしまうくらいに……。
 ▼ 102 z936HaPNeY 17/03/16 19:38:33 ID:omyiUb4M [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「コウ……」

「カプッ……!?」

 話があると言って、彼が寝た後の夜遅く、満月を眺めながらゲッコウガは告げた事実に、己は衝撃を受けた――いや、知らなかった訳では無い。ただ、その重大さを図り切れなかっただけのことだ。

 記憶喪失……この世界に落ちた時か、謎の空間に巻き込まれてしまった時か、結果として今までの自分を忘れてしまったと、ゲッコウガは悲痛な声音で語る。

「コッコ……」

 忘れることはある。己にとってそれは、特に足らない事柄だ……過去の戦争、忌み嫌われた痛み、邪な心を持ったニンゲンに狙われたこと……そんな悲しいことより、今ある世界を全力で楽しむ方が楽だからだ――でも、彼は違う。
 ▼ 103 z936HaPNeY 17/03/16 19:39:18 ID:omyiUb4M [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「コウガ……!」

 アローラの生活は楽しい。忘れてしまったのなら、思い出す時まで待てばいいと割り切った筈だった……それでも、ゲッコウガは“許せなかった”。

 いつか交わした誓いがある――誰も知らない高みに、一緒に行こうと言った。

 帰りを待つヒトがいる――共に戦う仲間が、待っている。

 まだ見ぬ強者がいる――再戦を約束したライバルが、先に進んでいく。

「コウ――!」

 仕方ない理由かもしれない。だが停滞することこそ、ゲッコウガにとっては苦痛以外の何物でもなかった……無駄なことなど一つも無いと、彼なら言うかもしれない。だとしても、何も成していない現状こそ、無駄な時間を過ごしている以外の何だと言うのか――!

 静かに胸の内に秘めておくはずだった熱情が、溢れ出す、零れ落ちる。立ち止まることを由としないゲッコウガの叫びは、それこそゲッコウガ自身に向けられた怒りだ。
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