【SS】そうだ、島巡りに行こう:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】そうだ、島巡りに行こう:ポケモンBBS

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SS

【SS】そうだ、島巡りに行こう

 ▼ 1 SxCy/NIFN. 17/02/18 06:33:20 ID:lUs7RGUg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ただの少年がこれといった事件に巻き込まれることもなく普通にのんびり島巡りする小説です。
多少設定が適当だったり、たまに原作と矛盾することもあるかと思いますが許してください。

【プロローグ】

俺はしがない短パン小僧。

そろそろ半袖短パン姿が痛々しくなってきた13歳だ。

2年前に島巡りに挑んで最初の試練で挫折してしまい、学校に戻るに戻れず、今までずるずると引きこもっていた。
 ▼ 419 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/19 23:31:19 ID:9oxIHSls [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

バッド「まぁまぁ、そんなに責めんなよ。 家出されても知らねぇぞ?」

背後からバッドボーイが声をかけてくる。

「いや、だから責めてるわけじゃ……。ってか嫌な冗談言うなよ」

背中越しに返す。

バッド「冗談で済めばいいけどな。 でも実際にそうなるバカがたまにいんだよ」

「バカって……!」
 ▼ 420 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/19 23:31:59 ID:9oxIHSls [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

振り向いて掴みかかろうとしたが、表情に気圧されて手が止まる。

果てしない後悔の滲んだ顔だった。

そういえば昼間のバトル、こいつが出してきたポケモンはラッタとスリープ。

本来全ての島巡り挑戦者が持っているはずのポケモンがいなかった。

「お前……」

バッド「ま、そういうことだ。あんたの言ってることは正論だろうが……正しいだけじゃ、ダメだろ」
 ▼ 421 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/19 23:32:56 ID:9oxIHSls [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

随分と重く響く言葉だった。

正論だけでは不十分。

だからと言って、どうすればいいのかは分からないが。

「……明日から、また練習しよう」

「#……」

コイルは俯いたまま、静かにボールの中に戻って行った。
 ▼ 422 ワルン@モコシのみ 17/04/21 22:30:35 ID:WfRZ3NaY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 423 ーケオス@バンギラスナイト 17/04/22 13:41:45 ID:a0sW4.hg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 424 ワシ@いいキズぐすり 17/04/25 00:02:17 ID:w5jdLNXg NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 425 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 00:54:22 ID:HKGuVNU2 [1/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

【26日目】


朝が来た。

体を起こし辺りを見渡すと、今日もサンダースはヤドンとくっついて寝ている。

鉄骨マークのシールが貼られたボールを覗くと、中は空だった。

コイルは今日もどこか別のところに寝床を移しているらしい。

もしかしたら、夜中に起こしにくるサンダースから距離をとっているのかもしれない。

同じでんきタイプとなって以来活躍が目覚ましい後輩に負い目を感じているということだろうか。

下位互換とかいらない子とか、そんなことを言ったことは一度もないのに。
 ▼ 426 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 00:55:09 ID:HKGuVNU2 [2/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「##……」

目をしぱしぱさせながら、天井の梁からコイルが降りて来た。

「コイル……。今日、本当にやるのか?」

「……#」

先程と打って変わって強い意志が覗く表情で、コイルはコクリと頷いた。
 ▼ 427 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 00:55:56 ID:HKGuVNU2 [3/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

何をやるのかと言うと、もちろんチャージと移動の同時遂行の練習のことだ。

昨日はああはいったものの、個人的にはどうも得策とは思えない。

というのも、焦燥感が原動力なのであれば、失敗すればするほどコイルの自尊心に傷がつく結果になるからだ。

仮に上手く言ったとして、同じことを既にできるポケモンが同じ手持ちにいるのだ。

『それならサンダースのほうがいい』となるのは避けられない。

だったらむしろ……。
 ▼ 428 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 00:56:44 ID:HKGuVNU2 [4/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「なぁ、コイル。『みんな違ってみんな良い』って知ってるか?」

「#……」

「まぁ、そういう教えがあんだよ。例えばまぁ、お前とサンダースはどちらにもそれぞれの得意と苦手があるってことだ」

「だから、別にお前が機動力に拘る必要は全くな痛ッッ!!」

コイルは話を遮って火花を放ち、そっぽを向いた。

「#&&!」

「……っ」

……どうしろってんだよ!
 ▼ 429 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 00:57:52 ID:HKGuVNU2 [5/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



結局、今日もコイルは無茶な移動の果てにショートして瀕死になった。

代わりに戦闘を終わらせたサンダースは、酷くしんどそうな顔をしていた。

コイルの精神的な不調が、メンバー全体に伝播し始めているのかもしれない。

いつも頭の上にいるサンダースだが、今日は頭に飛び乗ることなくボールの中に篭りきり。

1人で視線を警戒しながら戻るポケセンまでの道は、耳に痛いほどに静かだった。
 ▼ 430 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 00:59:12 ID:HKGuVNU2 [6/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

【27日目】


こんな不安定な状態でも試練の日はやってくる。

アーカラ島最難関らしいので1週間待ちぐらいならありえるかと思っていたが、一昨日予約を入れたら割とすぐに取れてしまったのだ。

おそらく、直近の2試練を連続で攻略したことにより、中位集団から頭一つ抜け出したのだろう。

その時は小さくガッツポーズをしたものだが、今となってはもう少し時間が欲しかったと思わざるを得ない。

まぁ、時間があればどうにかなったのかと言われれば、当然疑問符が浮かぶわけだが。
 ▼ 431 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:00:10 ID:HKGuVNU2 [7/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ともかく、どんな状態だろうと試練は試練。

越えるため作戦は昨日のうちに話しておいた。

なんとかなるはずだ。

あれも、これも、今ここを乗り越えれば全部解決だ。

自尊心に傷がついたなら、勝利をもって癒せばいい。

だから絶対に勝つぞ、コイル。
 ▼ 432 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:00:48 ID:HKGuVNU2 [8/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


バッドボーイ「あぁークソ、やっぱダメか!」

くさの試練の地、シェードジャングルの中から悪人面の浪人生が現れた。

バッド「やっぱ強ぇわラランテス……っと、お前も試練か。

昨日はお前らお通夜みたいになってたが、大丈夫なのか?」

多分宿舎でやった作戦会議の様子のことだろう。

俺が一方的に作戦を話し3匹が無言で頷くだけの、会議とはとても呼べない内容だった。

だが、作戦の中身自体はちゃんとした勝算があるものだ。
 ▼ 433 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:01:21 ID:HKGuVNU2 [9/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「大丈夫に決まってんだろ。お通夜は昨日で終わりだっつの」

バッド「お、おう、そうかよ。なら別にいいけどよ……」

浪人仲間は煮え切らない返事をするが、まだ何か言いたげだ。

「なんだよ、負けるとでも思ってんのか?」

バッド「いや、そうじゃねぇけど……。でもお前、負けたらどうすんだ?」
 ▼ 434 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:02:43 ID:HKGuVNU2 [10/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「負けたらって……試練の前にそんなこと言ってどうすんだよ」

負けという言葉への不快感から、ついつい剣呑な声になってしまう。

バッド「そりゃ勝てば気分はいいよな。お前のポケモンがどうなってるかは知らねぇが、まぁ多少マシな空気にはなるだろうよ。

でもお前、浪人だろ? 一度は人生レベルでボロ負けしてんだろ?

挫折を知ってる癖にそれを二度と味わずに済むとでも思ってるんなら、随分とめでてぇ話だ」

バッドボーイの声音はあくまでおだやかだったが、代わりに鋭利な視線がこちらを捕まえて離さない。

「!」の視線とはまた違った緊張感が心臓を掴む。
 ▼ 435 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:03:34 ID:HKGuVNU2 [11/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……つまり、何が言いたいんだよ」

詰まった空気を押しのけるように、やっとの思いで言い放つ。

バッド「あー、すまん、俺も何が言いたいか分かんねぇわ。別にお前が負けると思ってるわけじゃねぇけど……

ただ、別に強いわけでもない俺らが勝ちに拘ってどうすんだろうなって、どうしてもな」

バッドボーイは我に返ったかのようなそぶりで頭を掻きながら、ばつが悪そうに言う。

「……? いや、全然意味わからんが。 試練前に水差すようなこと言うなよ」

バッド「そうだな……まぁ、頑張れよ」
 ▼ 436 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:04:09 ID:HKGuVNU2 [12/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

バッドボーイはシェードジャングルに入る俺をいつまでも見守っていた。

困ったような目で見つめるその表情からは、何を思っているのかまでは分からない。

俺は何と無く居心地の悪さを感じて、もう後ろを見ないことにした。
 ▼ 437 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:04:55 ID:HKGuVNU2 [13/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


正論だけじゃダメだとか、勝ちに拘ってどうするのかとか、そんなこと言われたって困る。

正しいことがダメなら何を言えばいい?

勝ちを求めないなら何を求めて島巡りをすればいい?

お前だって何も分かってない癖に。

クソッ。

小道に落ちている枝をばきりと踏み抜きながら、俺はジャングルの奥へ進んだ。
 ▼ 438 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:06:23 ID:HKGuVNU2 [14/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



マオ「おっす! くさの試練担当のキャプテンやってます、マオでっす!

じゃ、早速始めよ! この試練では、ムーランドの力を借りてぬしを呼び出す材料を……」

「あ、もう揃えてきたんで」

マオ「へ?」

素っ頓狂な声を上げるキャプテンに、ラップで包んだ発泡スチロールのトレーを3つ差し出す。

マゴのみ、ふっかつそう、きせきのタネ。

3品合わせて特別価格1494円。

若干財布には響いたが、これでも定価から考えればかなり安く済んだ方だ。
 ▼ 439 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:07:28 ID:HKGuVNU2 [15/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

マオ「待って。ちょ、ちょっと待ってね?」

「ダメなんですか?」

マオ「えっと……そうだよ! シェードジャングル原産じゃないとぬしが機嫌を損ねてアレするの!」

馬鹿め、墓穴を掘ったな!!

「あ、それなら安心ですね。ほらここ、原産地見てください! シェードジャングルですよね?」

Wikiには『ムーランドと材料集め』と書いてあったが、どうせ始まるのはいつもの茶番だ。

今はそういう気分じゃないので、わざわざ付き合うつもりはない。
 ▼ 440 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:08:36 ID:HKGuVNU2 [16/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

マオ「うーん……ま、いっか。いちいち材料埋め直すのも面倒くさいし!」

まさかの開き直り。

何が原産だ、やっぱり市販品じゃねぇか。

なんだか材料集めに費やした金がもったいなかったような気がしてくる。

マオ「それじゃ、始めちゃおう!」

くさのキャプテンは声高に宣言し、岩のついたヘルメットを勢いよく地面に置いた。

……いや、それで何を始めるつもりだ?
 ▼ 441 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:09:21 ID:HKGuVNU2 [17/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「しゃらんしゃらんら!」

「来たな……」

くさの試練ぬしポケモン、ラランテス。

アーカラ島最大の難所と謳われる中盤の壁。


ちなみに、ぬしを呼び出す一連の流れはとても描写に耐えうるものではなかったので割愛した。
 ▼ 442 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:10:11 ID:HKGuVNU2 [18/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ラランテスというポケモンを種族として分析すると、多くの欠点が浮かび上がってくる。

いわゆる必殺技であるソーラーブレードは威力は絶大であるものの、非常に長い溜めを要する。

溜めきったとしてもスピードを要する接近戦は苦手であり、攻撃を当てられないままチャージ切れすることも多い。

また、攻撃手段もあまり多くはなく、ひこう、ほのお、はがねなどのタイプへの有効打をほとんど持っていない。

では何かずば抜けた長所があるのかと言えばそうでもなく、防御面などを見ても微妙そのもの。

この通り、純粋なスペックだけで見るならば問題になるような相手ではないと言えるだろう。
 ▼ 443 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:11:30 ID:HKGuVNU2 [19/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

にもかかわらず、この試練は多くの挑戦者をどん底へと叩き落として来た。

実際、挫折者の半数近くはこの試練で匙を投げている。

攻略者一人当たりの平均挑戦回数も7.3回と、明らかに群を抜いている。

『アローラ最大の理不尽』『守り神公認の犯罪者』『ポータウンへの案内人』『起きていても見える悪夢』『絶望』……

これらは全てこの試練のぬしについたあだ名だ。
 ▼ 444 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:14:35 ID:HKGuVNU2 [20/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ではなぜ、ラランテスがそこまでの脅威足り得るのか?

結論から言うと、これはひとえに露骨なまでの超強化が為されているが故である。


まず第一に、このラランテスはパワフルハーブを隠し持っており、ソーラーブレードの発動に隙がない。

さらに、能力面でのネックである素早さがぬしのオーラによって2倍に跳ね上がっている。

そして試練恒例の仲間呼び。

呼び出されたポワルンのにほんばれによりソーラーブレードは即リロード。大ダメージを与えてもこうごうせいで即全快される。

ポワルンのウェザーボール、ケララッパのロックブラストで相性面の欠点も完全に保管されており、ますます隙がない。

つまり、この試練で戦うのはもはや『ラランテス』ではない。

『超高速で凄まじい威力のわざを連発し、さらに反則的な回復力も併せ持つポケモン』だ。


あとこれは俺には関係ないが、ジャングルでは火気厳禁ということも難易度上昇の一因となっているそうだ。

理不尽すぎる。
 ▼ 445 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:16:04 ID:HKGuVNU2 [21/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

と言うわけで、今回の作戦はぬしを普通のラランテスに戻すところからスタートだ。

防御面の相性が有利なコイルを出し、まずはまもるでハーブを消費させる。

その後仲間呼びをするはずなので、隙を突いてでんじはを命中させ、機動力を削ぐ。

そこまでの運びがうまくいけば、搦め手を使って籠絡するのはさほど難しいことではないはずだ。

コイルにきっちり活躍させて自信を回復してもらい、同時に試練を達成して俺たちを覆う負のオーラも払拭する。

確かに逆境、確かに難関。

だからこそ、乗り越える以外あり得ない!
 ▼ 446 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:17:33 ID:HKGuVNU2 [22/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「しゃら……」

ラランテスが右手を太陽に掲げると、鎌から濃密な光が迸って天を突く。

光はたちまち収束し、一太刀の大剣を形成した。

ラランテスは右の鎌から伸びたソーラーブレードを左の腰元に据え、前傾しながら重心を下げ……

「しゃらんらっ!」

一気に大地を蹴り放ち、突進を開始した!!
 ▼ 447 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:18:35 ID:HKGuVNU2 [23/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

速い!

両脚に纏うぬしオーラの力は思ったより凄まじいようで、見た目にはエンニュートやサンダースよりも速い。

だが、今はどんなに速い攻撃だろうと関係ない。

わざマシン売り曰く、まもるはどんなわざでも壊れない最強の盾。

構えてさえいれば大丈夫……!
 ▼ 448 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:19:07 ID:HKGuVNU2 [24/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「コイル……まもる!!」

「#%%!」

また指示を無視して回避を試みる可能性を懸念していたが、連日の失敗が堪えたのか素直にわざを発動した。

コイルの正面に半球状のバリアが生成され、ラランテスを迎え撃つ態勢にはいる。

よし、まずは初撃攻略……!
 ▼ 449 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:20:20 ID:HKGuVNU2 [25/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

と思ったのもつかの間、ラランテスが想定外の挙動を見せた。

まもるが展開されたのをを見るや否や、もう一段階重心を下げて来たのだ。

たったそれだけの動きなのに、なぜか背筋がぞくりとする。

ほとんど地を這うような格好でラランテスはさらに加速し、一気にコイルの懐まで踏み込む。

ソーラーブレードの射程圏内に入った瞬間、ラランテスの目がギラリと光った。
 ▼ 450 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:21:27 ID:HKGuVNU2 [26/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「コイル、来るぞ!」

「##ッ!」

「しゃらんらっっ!!」

地面スレスレに構えた剣が一瞬にして跳ね上がり、光が一閃。

甲高い打撃音と激しい閃光に、思わず瞬きする。
 ▼ 451 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:22:23 ID:HKGuVNU2 [27/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

宙を舞うラランテスの鎌から伸びる光の軌跡は、コイルの張ったバリアを跳ねあげていた。

「コイル、」

盾を正面に構えろ───

などと言う時間があるはずもなく。

「しゃらんらーッ!!」

即座に身を翻し放たれたラランテスの横斬りが、コイルにクリーンヒットした。
 ▼ 452 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:23:21 ID:HKGuVNU2 [28/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「しゃらんしゃらん、しゃらんらっっ!!」

完全に防御を崩されたコイルに、光剣のラッシュが容赦なく襲いかかる。

ソーラーブレードのエネルギーは10秒ほどで尽きる。

だが、今はその10秒が果てしなく長い。

でんじはもでんきショックも、撃てる状態ではない。

ただ見ていることしか、できない。


鎌から伸びる光剣が霧散した時には、既にコイルは気絶していた。
 ▼ 453 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:23:52 ID:HKGuVNU2 [29/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「お疲れコイル……行ってこい、サンダース!」

「キュゥ……」

ボールから出るなり、サンダースがこちらを振り向いて弱々しく鳴いた。

ラランテスは、こちらをじっと見たまま動かない

なんだ……?
 ▼ 454 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:24:49 ID:HKGuVNU2 [30/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「おい、サンダース?」

「キュウ……キュイ……!」

今にも泣き出しそうな顔で、懸命に何かを訴えてくる。

話の内容はもちろん分からないが、戦闘なんてできそうにないのは明らかだ。

ラランテスもそれを見越して攻撃してこないのだろう。
 ▼ 455 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:25:52 ID:HKGuVNU2 [31/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

じゃあ引っ込めてヤドンを出そう、という空気でもないのは分かる。

つまり……

「すいません……降参します」

マオ「ん……そうだね。それがいいと思う」



くさの試練……敗北。
 ▼ 456 足◆SxCy/NIFN. 17/04/26 01:33:18 ID:HKGuVNU2 [32/32] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>450
ラランテスのソーラーブレードはこんな感じのイメージで書いてます
 ▼ 457 キメノコ@ラブラブボール 17/04/26 17:05:56 ID:tGyxksIo NGネーム登録 NGID登録 報告
ええなぁ

支援
 ▼ 458 スブレロ@こだいのうでわ 17/04/26 19:36:01 ID:lYZklfo. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
おいおい最強かよ
 ▼ 459 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/27 00:39:28 ID:lfDlLnFI [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



夕食の時間、俺もポケモンたちも何も喋らなかった。

一方的な敗北ならメレメレの大試練で経験しているが、今の空気の重さはその比ではない。

あの頃ほど戦闘を避けていたわけでもないのにここまで完璧に負けるとは、思っても見なかった。

コイルのプライドはズタボロだし、サンダースに至っては戦意を喪失。

ヤドンはメンタル的な問題はなさそうだが、そもそも相性が最悪だ。


こういう時こそ何か声をかけなければいけないのだろうが、一体何を言えばいいのだろう。
 ▼ 460 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/27 00:40:55 ID:lfDlLnFI [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



物音に目が覚めた。

辺りは真っ暗だ。まだ夜中らしい。

目をこすり、月明かりを頼りに音のする方に目を凝らすと、サンダースがいた。

寝付けなくてボールから出てきたところらしく、コイルのボールを覗き込んでいる。

多分、そこには今日もコイルはいないのだろう。

表情は暗くて見えないが、しゅんと垂れ下がった体毛から寂しげな感情が伝わってくる。
 ▼ 461 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/27 00:42:10 ID:lfDlLnFI [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サンダースは一つ隣のヤドンのボールに視線を移した。

昨日はこのままヤドンを起こして眠りについていたのだと思う。

だが、開閉スイッチに触れようとするサンダースの前足が寸前で止まった。

そのまま静かに足を引っ込め、自分のボールの正面に戻る。

「キュゥ……」

弱々しく悲しげな鳴き声を漏らしながら、サンダースは自分のボールのシールをガリリと引っ掻いた。

その動作を二度、三度と繰り返した後、サンダースは自分のボールの中に帰って行った。


稲妻のシールが破ける音が、いつまでも耳を離れなかった。
 ▼ 462 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/27 00:42:52 ID:lfDlLnFI [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

【30日目】


試練2回目、敗北。

守りを捨てていきなりでんじはを飛ばしたが、避けられた。

そのあとは1回目と同じだ。
 ▼ 463 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/27 00:43:48 ID:lfDlLnFI [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

【35日目】


コイルもサンダースも日に日に調子が悪くなっていく。

最近はトレーナー戦でのレベル上げもろくにできていない。

そんな中で迎えた三度目の試練も、当然敗北した。

戦闘内容は、下手すれば初回より酷かっただろうか。

もしかすると今は試練を受けるべきではないのかもしれない。

でも、それ以外に現状を打破する方法が思いつかないわけで。
 ▼ 464 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/27 00:44:43 ID:lfDlLnFI [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

【39日目】


4度目の試練の朝が来た。

試練初日以来、朝方にサンダースが他のポケモンとくっついて寝ている光景は見ていない。

俺はボールを突っつき、ヤドンとサンダースを起こした。

コイルはやはりボールの中にはいなかった。

いつも通り天井の梁の上で寝ているのだろう。

と言っても、これを『いつも通り』と認識するようになったのはつい最近のことだが。
 ▼ 465 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/27 00:45:53 ID:lfDlLnFI [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

上に向かって声を掛ける。

「コイル、朝だぞ。降りてこい」

…………。

応答がない。

まぁ、よくあることだ。そういう時はボールの回収機能で強制送還すればいい。

コイルのボールを拾い上げ、いつもコイルが寝ている場所に向けて開閉スイッチを押す。

「……あれ?」

回収機能が反応しない。











宿舎中、ポケセン中探しても、コイルはいなかった。
 ▼ 466 ンキー@ハスボーじょうろ 17/04/27 05:01:37 ID:Jw00Jz4. NGネーム登録 NGID登録 報告
久々重い話やなぁ
支援
 ▼ 467 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 01:10:55 ID:MfArG.j6 [1/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



サンダースとヤドンと協力してポケセン周辺をしらみつぶしに探し回りながら、ふと考える。

コイルを見つけたとして、その後どうすればいいんだろうか。

思えば、捕まえたのは単に手近なところで動けなくなっていたからだ。

何か通じ合うものがあったわけでも、まして『島巡りを手伝ってくれ』と了承をとったわけでもない。

仲間とかパートナーとかどんなに言葉を飾ろうが、俺の都合の押し付けでしかないのは事実だ。

そう考えると、逃げるのはあいつの権利なんじゃないのか?

俺があいつを連れ戻していい理由があるのか?
 ▼ 468 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 01:11:35 ID:MfArG.j6 [2/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「もしかしたら、コイルにとってはこのまま見つからない方がいいのかもなぁ」

何気なく口をついて出た言葉に、前を歩くサンダースの足が止まる。

「キュゥ……キュィイ!」

俺の方を振り向いたサンダースの目からは、大粒の涙が溢れ出していた。
 ▼ 469 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 01:12:31 ID:MfArG.j6 [3/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

すぐに、言ってはいけないことを言ってしまったことに気づいた。

コイルと旅をしていたのは何も俺だけではない。

ヤドンだってサンダースだって、ずっと一緒に、多分俺より近いところで助け合ってたはずだ。

特にサンダースにとって、コイルは兄のような存在だ。

見つからない方がいい?

バカ言え、そんなわけがないだろう。

連れ戻す理由ならここにあるじゃないか。
 ▼ 470 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 01:13:30 ID:MfArG.j6 [4/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

しゃがみ込み、泣きじゃくるサンダースを抱き寄せる。

「ごめん。ごめんな」

かけるべき言葉が分からないが、代わりに背中を撫でて宥めた。

サンダースは、堰を切ったようにいつまでも泣きつづけた。
 ▼ 471 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 01:15:25 ID:MfArG.j6 [5/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

思えば炎の試練の日の夜から、ずっと苦しかったのだろう。

コイルがサンダースの成長に焦り、足掻いては失敗し、ぬしにも歯が立たず、自信を失っていく。

それを見ていたサンダースは、自分自身に責任を感じたのかもしれない。

ボールシールを破ったのも、でんきタイプになったことを後悔したからなんじゃないかと今更ながら思う。

まだ生まれて間もないサンダースにとって、コイルが自分から離れていくことは何より怖かったはずだ。
 ▼ 472 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 01:16:25 ID:MfArG.j6 [6/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「なぁ、サンダース」

「キュウ……?」

サンダースが泣き顔を上げる。

俺はある一つの可能性に思い当たっていた。

試練の攻略はものすごく遅くなるかもしれない。

誰がどう見たって意味の分からない遠回りになるだろう。

だが、それでも俺たちにとってはベストアンサーかもしれない、そんな可能性。

「もしお前が望むなら───」
 ▼ 473 ズレイド@いかずちプレート 17/04/29 01:20:05 ID:uGqmx7vg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 474 クタン@ダークストーン 17/04/29 06:34:46 ID:3l0IeWc2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 475 イアント@アゴのカセキ 17/04/29 10:20:02 ID:af6SAJ8w NGネーム登録 NGID登録 報告
凄くドキドキする
支援
 ▼ 476 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:43:55 ID:MfArG.j6 [7/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「いたっ!!」

「#……!」

灯台下暗しというか、コイルはポケセン裏手の軒下にいた。

逃げられるかと思ったが、こっちをじっと見て動かない。

もしかしたら、見つけてもらうのを待っていたのかもしれない。

思えばこいつからのSOSは何度もあったはずだ。

ここに来るまで、俺はそれを見ているようでずっと目をそらしていた。

だが、これが最後のチャンスだろう。

ようやく気づいたサインに応えるなら今しかない。ちゃんと全てを伝えよう。
 ▼ 477 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:45:08 ID:MfArG.j6 [8/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「コイル、ごめんな」

「……##?」

「俺はトレーナーとしてはすごく弱い。ラランテスを倒せるかも分からないし、この先の試練も多分何度も負けると思う。

それに、俺じゃお前の力を満足に引き出すこともできない。正直言って、俺について来ても多分成功はしないんだ。

だから、お前が逃げて行くのを俺は止められない。俺に力を貸してくれるお前に、俺は、何もしてやれない」

「##……」
 ▼ 478 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:49:53 ID:MfArG.j6 [9/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

バトルが強ければ、勝者の景色を見る喜びをポケモンに与えることができるだろう。

人間的に優れたトレーナーであれば、強さを超えた絆をポケモンと結び、素晴らしい旅ができるだろう。

だが、残念ながらそれは俺にはない力だ。

凡百に霞む雑魚トレーナー。そんな俺がこいつらに与えられるものなんて何もない。
 ▼ 479 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:52:31 ID:MfArG.j6 [10/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

でも。

「それでも一緒に行きたいと思ったんだ。俺たちなりに答えを出したんだよ。

……な、サンダース」

サンダースがほんのりと笑って、静かに頷く。

半分は安堵、半分は覚悟。

そんな笑顔だ。

「コイル、お前が納得できるかどうかは分からない。でも、とりあえず……サンダースの思いを、受け止めてやってくれ」
 ▼ 480 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:52:56 ID:MfArG.j6 [11/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そう言って、俺はポケットからくすんだ緑色の石を取り出した。

膝をついてしゃがみこみ、サンダースと目線を合わせる。

「行くぞ……」

「……キュイ!」
 ▼ 481 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:54:03 ID:MfArG.j6 [12/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ほうっと息を吐き出し、サンダースのひたいに石を軽く押し当てる。

進化の後、記念に残しておいたかみなりのいしの残骸だ。


元の姿に戻りたいという強い意志があれば、進化を破棄できる可能性がある。

ウツギ博士はそう言っていた。


強さよりも大事なものを失うくらいなら。

弱さで守れる居場所があるなら。

それがこいつの願いなら。



ここで一度、スタートに戻ろう。




「進化を棄てろ───メガ退化!!」

 ▼ 482 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:55:02 ID:MfArG.j6 [13/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「キュ……イィーーーッ!!」

サンダースの全身からまばゆい電光がほとばしる。

放たれた電撃はひたいに収束し、くすんだ石が徐々に鮮やかな色味を取り戻して行く。

「ぐっ……!」

石を支える右手に電撃の余波が流れ込んできた。

ゴム手袋をはめていないのは、せめてもの戒めだ。

ただの自己満足かもしれないが、それでも今は痛みを受け止めたい。
 ▼ 483 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:55:51 ID:MfArG.j6 [14/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サンダースから、電光とはまた異なる輝きが溢れ出した。

2つの光が混ざり合い、視界を真っ白に染め上げる。

退化が始まったようだ。

石は一層鮮やかに透き通る緑色になり、使用前の輝きを取り戻しつつある。

右手を流れる電撃は徐々に弱まってきている。

憧れて得たでんきタイプ。日常を壊したでんきタイプ。

進化の力を失いつつあるサンダースが今思うのは、どちらなのだろうか。

「キュゥゥ…………イッ!!」

一瞬強烈なスパークが俺の全身を駆け抜け、ひときわまばゆい閃光が辺りを照らし出した。
 ▼ 484 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:57:12 ID:MfArG.j6 [15/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

瞬きで暗転し切り替わった視界にいたのは、サンダースではなくイーブイだった。

「キュイ!」

イーブイがコイルに駆け寄り、笑顔で鳴いた。

「##……」

コイルは戸惑い気味に、曖昧な声を出す。

「ま、そういうことだ。

イーブイは、強さより何よりもまず、お前といることを選んだ」

多分ヤドンも。もちろん、俺も。

「だから……帰って来てくれ、コイル。俺たちにはお前が必要だ」
 ▼ 485 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 19:58:01 ID:MfArG.j6 [16/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

伝えることは全部伝えた。

あとは、コイルが戻りたいと思うかどうかだけだ。

俺もヤドンもイーブイも、じっとコイルを見つめる。

コイルもこちらから目を逸らさない。

動くのか動かないのか、空中をぎこちなく漂っている。
 ▼ 486 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/04/29 20:00:09 ID:MfArG.j6 [17/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「#……!!」

突然コイルの左右のユニットが高速回転を始めた。

「な!?」

ちょっ、ここで攻撃!?

驚いたのもつかの間、コイルが斜め上空に吹っ飛び、少し遅れて甲高い金属音が響き渡る。

「##ー!」

二階の窓枠に張り付いたコイルはこちらを見下ろし、カタカタとネジの音を鳴らしながらわざとらしく叫ぶ。

あぁなるほど、そういうことか。

「待ってろ、今行く!」


ここが俺たちの、再出発点だ。
 ▼ 487 ブライカ@ドクZ 17/04/29 23:45:54 ID:odG8GvBA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 488 リキリ@ひかりのねんど 17/04/30 08:32:41 ID:aXO1.uDY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 489 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:18:20 ID:hVhI0bbo [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
【39日目: 午後】


コイルを回収してポケセン入り口に戻ると、ちょうど試練から戻ってきたのであろうバッドボーイがいた。

「よう、どうだった?」

バッド「またダメだ。やっぱソーラーブレードが止ま…………オイ」

バッドボーイはこちらを振り向くや否や修羅のごとき形相になり、つかつかと詰め寄ってきた。

バッド「お前、新メンバー捕まえてきたのか? 幾ら何でもそりゃねぇだろ!?」

「は?」

突然何を言い出すんだこいつは?
 ▼ 490 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:19:20 ID:hVhI0bbo [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

意味がわからないが、それを伝える間も無くバッドボーイは胸ぐらを掴んできた。

バッド「何とぼけてやがる!

ポケモンが不調になったらすぐ次のポケモンかよ。戦えねぇ奴に用はねぇってか?

お前はそういう奴じゃねぇと思ってたのに、見損なったぜ!!」

「いや、そういう奴じゃねぇよ!? つーか新メンバーって何の話……あぁ!!」

「キュイ!」

……こいつか!!
 ▼ 491 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:20:15 ID:hVhI0bbo [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



バッド「すまんな、早とちっちまって。狂って対戦脳にでもなったかと思ってよ……」

「もういいって。あれじゃ誤解するのもしゃーないし」


小一時間かけて誤解を解き、今はポケセン内のカフェに来ていた。

謝られる居心地の悪さを誤魔化すように、エネココアをすする。

確かに絶不調のサンダースの代わりに捕まえたと思われても仕方がない状況だった。

昨日までの状況を踏まえても、そういう方向に闇落ちしたと勘違いするのも無理はない。
 ▼ 492 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:21:09 ID:hVhI0bbo [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

バッド「にしても……良かったじゃねぇか。また楽しく島巡りできそうでよ」

「ああ。まぁ、試練攻略からは随分と遠ざかったけどな」

バッド「そうかもな。でもよ、正しさや勝利に拘るだけじゃダメだってこの前言っただろ?

未だに何でそんなこと言ったのかはよく分かんねぇけど、でも今のお前見てるとやっぱそうじゃねぇかと思うんだよな

いや、結局分かんねぇんだけどよ」
 ▼ 493 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:22:16 ID:hVhI0bbo [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「分からなすぎて分からん」

バッド「はは、全くだな。

でももし俺があん時、少しでもその何かを分かろうとしてたら、って思ってよ……」

バッドボーイが天井を仰ぎながら、独り言のように呟く。
 ▼ 494 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:23:23 ID:hVhI0bbo [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

多分、トレーナーなら誰もがつまづく壁だ。

トレーナーとポケモンの、近いようで果てしなく遠い関係性。

対等なようで対等じゃない。

分かり合えるようで分かり合えない。

同じ世界を見ているようで、見えているものはいつも違う。

それでも一緒にいるために、人とポケモンを繋げるものは何なのか?

きっと、その答えを持っているトレーナーは世界に1人もいないのだろう。
 ▼ 495 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:24:18 ID:hVhI0bbo [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

バッド「つーかお前、今日夕方から試練だったよな。 どうすんだ?」

「あっ……」

すっかり忘れていた。

唯一スピードで互角に渡り合えるかもしれなかったサンダースが退化した今、勝算は正直言って全くない。

これはレベルというよりも、種としての力や相性の問題だ。多少経験値を積んだところで焼け石に水だろう。
 ▼ 496 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:25:31 ID:hVhI0bbo [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

となればまた何かしらの策に頼ることになるが、それもよく考えると容易ではない。

何せ、クリア者だけで見ても平均7回も挑戦しているのだ。

くさの試練の中で一体どれだけの試行錯誤が行われたかは及びもつかない。

つまり、たった1匹のラランテスがぬし就任から今日までの間に膨大な量の策を打ち破ってきていることになる。

おそらく、付け焼き刃では容易く撃ち砕かれてしまうだろう。

先の挑戦で、にわか仕上げのまもるが一瞬で攻略されてしまったように。
 ▼ 497 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/01 21:26:37 ID:hVhI0bbo [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

小手先の作戦だけでは超えられない壁。

だったら……。

「悪いっ、もう行くわ!」

残された勝ち筋に気づいた俺は席を立ち、玄関へ駆け出した。

バッド「おい会計……

今度なんか奢れよなー!」

「そのうちっ!」

試練達成したらな!
 ▼ 498 ツボット@おちゃ 17/05/01 21:31:34 ID:pHgfjZrI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 499 ノココ@ムーンボール 17/05/02 16:09:57 ID:BEmE9/TU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 500 ャオブー@するどいツメ 17/05/02 21:46:11 ID:Tolypsz6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 501 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/05/02 22:50:49 ID:BSc7hTe6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 502 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:16:57 ID:WELx/kuI [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

【94日目】

バッド「よう」

シェードジャングルから、俺の前の時間割で試練を受けていたバッドボーイが戻ってきた。

その表情はいたってニュートラルで、勝敗は読み取れない。

「どうだった?」

バッド「…………」

しばしの沈黙。
 ▼ 503 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:18:50 ID:WELx/kuI [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そして突然、ニッと口元を歪ませた。

バッド「ふふ……っはははは! ついに勝っちまったよ!! 」

「おお、おめでとう。……っはは、はははは!」

俺も思わず口元を綻ばせる。

バッド「ま、作戦考えたのはお前だけどな。とりあえずこれでイケるってことは証明されたっつーわけだ。

今度はお前の番だ。頼むぜ?」

「おう。……じゃ、行ってくるわ!」

俺は戦友とハイタッチを交わし、木々の覆う暗がりに向かって軽やかに歩き出した。
 ▼ 504 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:21:05 ID:WELx/kuI [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



マオ「うんうん、また来たね。偉い! じゃ、早速ぬしに来てもらおう!」

マオが指笛を高らかに鳴らし、ぬしに合図を送る。

経費削減のためか4回目から材料探し(笑)のパートが無くなり、それ以来ずっとこの形式だ。

ちなみに今日で通算12回目のくさの試練。

もはやこのシェードジャングルに分け入るのも日常の一部と化している。

最近では、森の中の季節の変化を五感で楽しむ程度の余裕も生まれた程だ。

季節が変わるほど時間がかかるのは誤算だったが。
 ▼ 505 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:24:48 ID:WELx/kuI [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


一陣の風が吹き抜け、ジャングルがざわめいた。

「##……!」

来た。

木々の隙間から飛び出した影は音もなく着地し、コイルと相対する。

「しゃらんら……」

またあなたね、とでも言いたげなトーンだ。

これまでの挑戦でやって来たことを考えれば無理もないが、ラランテスは露骨にげんなりしていた。

だがそんな空気は読まずにキャプテンは告げる。

マオ「それじゃいってみよう! ……試練、開始っっ!!」

 ▼ 506 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:25:30 ID:WELx/kuI [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「しゃら……!」

合図と同時にラランテスの顔つきが変わり、掲げた鎌から光の柱が突き上げた。

必殺の威力を秘めた光剣を下段に構え、コイルに向かって一直線に突っ込んで来る。

ここまではいつもと同じだ。

そして……

「コイル……まもる!」

……ここからもいつもと同じだ!!
 ▼ 507 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:26:15 ID:WELx/kuI [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


まもる。

最強にして不可侵の盾を生成する究極の防御わざ。

……と、初戦であっさりガードを弾かれるまでは思っていた。

実際に防御できるのは盾を構えた正面だけであり、攻撃側の工夫次第ではダメージを防げないこともある。
 ▼ 508 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:26:59 ID:WELx/kuI [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

では、店員に押し付けられたこのまもるは糞わざなのか?

ぬし戦でまもるを使ったのは愚策だったのか?

答えは否。

最強の盾であることに変わりはない。
 ▼ 509 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:28:54 ID:WELx/kuI [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

確かに、ラランテスはまもるを突破する術を持っていた。

これまでにも多くのトレーナーがソーラーブレードをまもるで防ごうとし、ラランテスはそれを毎回破ってきたんだと思う。

だが、破られた後に再び試練でまもるを使ったトレーナーはいないんじゃないだろうか?

この仮説が正しいとすれば、ラランテスは『にわか仕込みの』まもるにしか対処したことがないことになる。

つまり、『熟練した』まもるの使い手ならばぬしの猛攻を防ぎ切ることができるんじゃないだろうか?


最強の盾と、それに比べればそこそこ程度の威力でしかない矛があったとして。

その矛を以って、その盾を通さば如何?
 ▼ 510 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:30:12 ID:WELx/kuI [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「しゃらんらっ!!」

「##ッ!!」

ラランテスが地面スレスレから斬り上げを放ち、コイルがそれに合わせて盾を振り下ろす。

つんざくような金属音が響き渡り、パーティクルが弾け散る。
 ▼ 511 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:30:59 ID:WELx/kuI [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

二発目は左斜め上から折り返す斬り降ろし。

斜め右へ切り払った勢いのまま一回転し、三発目は続けざまに繰り出す右からの水平斬り。

だが、どちらもコイルが最小限の動きでずらした盾の正面に吸い込まれ、火花を散らしてその表面をなぞるのみに留まる。

その後も幾筋もの光の軌跡が描かれるが、どれもコイルに届くことはない。

最初の接触から10秒が経過し、鎌から伸びる光剣は無数の残滓となって消滅。

光の散る右手を睨み顔をしかめつつ、ラランテスがステップバックし距離を取る。

これでまずは1/5。
 ▼ 512 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:33:23 ID:WELx/kuI [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


これが1ヶ月半に渡ってただひたすらにまもってきた成果だ。

試練に挑んでは盾を構え、破られてはバッドボーイとその日の反省会をし、また挑んでは破られて。

時には店員の元を訪ねて指南を受け、暇があったら盾をかざし、寝る前はイメトレを欠かさず。

これまでその場しのぎに小手先の策を弄してきた俺たちが、始めてたった1つの技術に全てを注ぎ込んだ。

そんな、成果だ。
 ▼ 513 回決着◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:36:26 ID:WELx/kuI [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

でんじはを始めとする絡め手も一応試したが、やはりラランテスには一切通じなかった。

だが、修行を重ねたまもるだけは通用するレベルまで持ってこれた。

もうラランテスの攻撃の予備動作のほとんどは見た瞬間に分かる。

コイルはもちろん、ヤドンもイーブイも考えるより先に盾が動くようになっている。

前回は5回目のソーラーブレードにたどり着く前に全滅してしまったが、それでもかなり惜しいところまで防いでいた。

今度こそ、PP枯らしてやろうじゃないか。
 ▼ 514 ブキジカ@ダークメモリ 17/05/02 23:37:28 ID:F6SzwiQM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 515 正◆SxCy/NIFN. 17/05/02 23:59:48 ID:WELx/kuI [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>511
>斜め右へ切り払った勢いのまま一回転し、三発目は続けざまに繰り出す右からの水平斬り。

これ、「左から」の間違いです。
 ▼ 516 ブキジカ@オッカのみ 17/05/03 23:14:40 ID:lxz/FLyY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
55日……
支援
 ▼ 517 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/04 03:47:40 ID:MewTrk.s [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



これまでの全ての敗北を糧として臨んだ12回目のぬし攻略は、かつてないほどに順調だった。

呼ばれたポワルンが現れた瞬間にでんじはを浴びせてにほんばれの発動を遅らせ、その隙にコイルを交代。

2発目のソーラーブレードはイーブイが防御。

最後の一撃を敢えて踏ん張らずに防ぐことで大きくノックバックして距離を取り、速やかにヤドンに交代。

にほんばれの力を受けて連続で来る3セット目の攻撃にギリギリ防御を間に合わせ、これもそのまま10秒間防ぎ切った。
 ▼ 518 うにんこぞう◆SxCy/NIFN. 17/05/04 03:48:23 ID:MewTrk.s [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

幸いなのはラランテスとポワルンの連携がそこまで密ではないことだ。

にほんばれが発動した後はそれぞれのタイミングで各々の攻撃を行うのみで、コンボのようなことはしてこない。

晴天下でのラランテス単騎の突破力が高すぎるが故、他に戦略じみたものは殆ど要らなかったのだろう。

おかげでウェザーボールとソーラーブレードの波状攻撃もどうにか受け流せている。

そして今は4回目のソーラーブレードをコイルが防いでいた。
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