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レッド「メガシンカ……か……」カルム「ラストだ」

 ▼ 2 リゴン@りゅうのキバ 17/03/15 23:59:28 ID:5e01o8qI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もうラストかぁ
 ▼ 3 mTQB7XkZdk 17/03/16 00:00:02 ID:9QGq5iVM [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
……日が暮れ、鮮明な三日月が夜空にて浮かんでいる。

しかし、大都会・ミアレシティの夜はまだまだ静寂に在らず。

寧ろここからが、真に賑やかになる時間帯と言っても良いだろう。

そんな、未だ多くの人々が行き交うストリートを。

「美味しいか?ピカチュウ、メレシー」

「ピカピ!」

「メレー!」

____レッド達一行は、くぐっていた。

「わんぬ!」

「ふふ、やっぱりルカリオはそのガレットが大好きなんだね」

「くわん!」

ほんのり塩味が人気のお菓子・"ミアレガレット"を頬張りながら、彼らが向かった先は。

「……よし、ついた」

……PWTにおけるレッドのパートナー・"カルム"。

その彼が経営する、街角のブティックだった。
 ▼ 4 ワーク@かみなりのいし 17/03/16 00:00:25 ID:W5BTKSZM NGネーム登録 NGID登録 報告
ようやく終わるのか
 ▼ 5 mTQB7XkZdk 17/03/16 00:02:36 ID:9QGq5iVM [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「おっ!いらっしゃい」

レッド達が店のドアを開けた瞬間に、その男は早速彼らを出迎えた。

「お疲れ、カルム」

「お疲れーっ!」

レッドとコルニが、共にカルムに労いを贈る。

「ははっ、サンキュ」

「ところでお前達は今日、何してたんだ?」

カルムがそう問うと。

「コルニ達に手伝って貰って、特訓してたよ」

「この、メレシーのな」

「メレメレー!」

レッドはメレシーを抱き上げ、彼の頑張りを強調した。
 ▼ 6 mTQB7XkZdk 17/03/16 00:03:09 ID:9QGq5iVM [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ほほう……精が出るな」

「俺もお前をスカウトした身として、心強い限りだ」

そんなレッドの強い向上心を、良しと評したカルム。

己の判断は間違ってなかったと、再確認したよう。


……すると、ここでカルムは。

「……よっし!」

突然に、気合いの一声を店内に響かせ。

「カルム?」

「ピカ?」

レッド達が不思議そうな目で見つめていると、彼は……。

「明日からは、俺もお前達の特訓に加わるかな」

「同じカロス代表として、チャンピオンである俺が何もしないわけにはいかねえし」

……翌日から、自身もレッド達と共に切磋琢磨する。

そう宣言してきた。
 ▼ 7 mTQB7XkZdk 17/03/16 00:04:12 ID:9QGq5iVM [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「本当!?それは助か____」

……と、ここまではレッドも喜んだものの。

すぐに、そうするにあたっての問題に気づいてしまった。

それは。

「____この店はどうするの?」

……まさにレッドが今言った通り。

カルムがレッド達の特訓に加わるということは、それ即ち。

このブティックが店長不在になってしまうということだ。

レッドはこれを危惧したが……。

「ははっ、心配いらないさ」

カルムは、軽く返した。

次に彼は、その言い分の根拠を説明する。

「リーグ防衛について聞かれた時も、同じようなことを言ったが……」

「……俺が居なければ何もできない程、ここの店員は無能じゃない」

「だからこそ俺は、他所の店長と比べて自由に動ける」

「よって、余計な心配は一切無用!」
 ▼ 8 mTQB7XkZdk 17/03/16 00:05:04 ID:9QGq5iVM [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
と、レッドの思慮は不要であることをここに明言した上で。

「今の俺達は____」

「____強くなることだけ、考えてりゃ良いのさ!」

PWT優勝への、熱き想いをレッドに語った!

「……ふっ」

「それもそうか」

「メレッ!」

カロスのチャンピオンという重役を務めるカルムが言うのだ。

きっと、間違いないのだろう。

レッドは彼の言葉を信じ、素直に納得したのだった。
 ▼ 9 mTQB7XkZdk 17/03/16 00:06:17 ID:9QGq5iVM [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
……と。

この、二人の一連のやり取りを見ていたコルニは。

(……まさか)

(この二人が手を組むことになるなんて)

……何だか、感慨深い想いに駆られていた。

(どっちも、本気のアタシを打ち負かしてメガシンカを手に入れた数少ないポケモントレーナー)

(その二人が、今こうして楽しげに語り合っている)

この感情は、"誇り"に近い。

己を超えた者同士が、これからカロスの優勝のために奮闘するのだ。

彼女からしたら、それは"感無量"としか言いようがない。

(頑張れ、二人とも)

(アナタ達は……絶対無敵の、史上最強コンビなんだから!)
 ▼ 10 ジアイス@ちかのカギ 17/03/16 00:33:52 ID:XydNj8DY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お、みっけ。支援
 ▼ 11 ャロップ@アイテムドロップ 17/03/16 00:41:29 ID:MpUHqgXE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 12 ェークル@たんけんセット 17/03/16 06:47:38 ID:sIn.Rj0U NGネーム登録 NGID登録 報告
レッコル関係の話も進むのかな?
 ▼ 13 アル@ヤミラミナイト 17/03/16 07:55:56 ID:NnxbMaVY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラストかぁ……
支援!
 ▼ 14 ココ@ふといホネ 17/03/16 08:08:07 ID:wxHjnkN6 NGネーム登録 NGID登録 報告
本当の終わるのやら
 ▼ 15 ーナイト@とんでもこやし 17/03/16 10:04:24 ID:E0ApjnBw NGネーム登録 NGID登録 報告
終わらないで〜
支援
 ▼ 16 グリュー@とうめいなスズ 17/03/16 19:52:39 ID:tqvy5Egk NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
メガシンカを求める話が最後なだけで、大会出場とかZ技を身につける話が続きますよね、そうですよね⁉
 ▼ 17 mTQB7XkZdk 17/03/17 00:05:33 ID:oucCLtn6 [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……特訓、二日目。

この日の朝も、レッド達は大いに躍動していた。

「メレシー」

「今日も一日、はりきって行くぞ!」

「メレッシ!」

願うは、メレシーの爆発的成長。

そして狙うは、PWT優勝。

その野望を胸に抱き、彼らは今日も修行三昧だ。

……と。

「あっ……来たよ、レッド!」

コルニはそう言って、ある方向を指差す。

レッドが振り向くと、そこには……。
 ▼ 18 mTQB7XkZdk 17/03/17 00:06:37 ID:oucCLtn6 [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「よっす」

「約束通り、来たぜ!」

……現カロスチャンピオン・カルム。

その姿が。

「おはよう、カルム」

「おはよーっ!」

「ピカ!」

「メレッ!」

と、まずは一同、朝のご挨拶。

「おはようさんっ、と」

カルムは手短に応えると、早速、彼が肩から下げてるシザーバックから……。

「……よし!」

……赤いモンスターボールを取り出し。

「じゃ、早いとこやってしまうか!」

「"特訓"を、な!」

意気揚々としながら、特訓開始をレッド達に促した。
 ▼ 19 mTQB7XkZdk 17/03/17 00:07:36 ID:oucCLtn6 [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「うん、よろしく頼むよ」

「メッレー!」

……今日の目的は、あくまでも昨日と同じ、メレシーの訓練だ。

だが。

この時レッドは、同時にもう一つ。

"別のこと"も、楽しみだった。

それは……。

(……訓練とはいえ、今日俺は初めて、拝むことができる)

(カロスチャンピオンの……カルムの手持ちを)

____そう。

カルムが自ら出向いてこの訓練に参加したということは、必然的にここでカルムの手持ちが繰り出されるということになる。

それはレッドにとって、非常に興味深い事柄であった。

なにせカルムは、ブティックの店長という立場でありながら、カロスのチャンピオンも務める凄腕のポケモントレーナー。

その実力が如何程か、推し量るには十分たる機会と言えよう。
 ▼ 20 mTQB7XkZdk 17/03/17 00:08:28 ID:oucCLtn6 [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「こっちはいつでも準備オーケーだ、カルム」

「さあ……」

「……お前のポケモンを、見せてくれ!」

これから自分は、どのようなトレーナーと手を組んでPWTに挑むことになるのか。

それを今から知ることに対して、レッドは既にワクワクが止まらない。

おかげで朝の寝惚けなどとっくに醒め、目に映りし世界はこれ以上なく明瞭。

よってレッドは、最高のコンディションのもと、目の当たりに出来るのだ。

……地方を代表する王者の、その"所以"を。

「……行くぞ!」

「俺は、このポケモン____」

「____出ろ!」

「"ゲッコウガ"!」
 ▼ 21 mTQB7XkZdk 17/03/17 00:09:50 ID:oucCLtn6 [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
それは、東国にて遥か太古から伝わりし伝説の戦闘兵____

_____"忍者"を彷彿とさせるような、そんな雅な風貌だった。

全身のラインはシュッとしなやかで、かなりの細身。

また、その顔立ちには蛙の特徴が色濃く残っている。

まるでマフラーのように風に靡いている、長い長いベロを駆使することで、如何なる場所にも神出鬼没に飛び回れる。

俊足、そして鋭利なる水の刃は彼の絶対無比の業であり、魂でもある。

さあ見せるか、その熟練された忍術を。

切り刻むか、全ての標的を。

"ゲッコウガ"よ。

「……ゲロッ」

……その参上は、凄く物静かなものであった。

流石は忍者。

いつ、どんな場合であっても、忍び足の精神は怠らず……ということか。
 ▼ 22 mTQB7XkZdk 17/03/17 00:10:33 ID:oucCLtn6 [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゲッコウガ……!」

レッドも、そんな彼を一目見た瞬間に悟った。

この者は……決してただ者ではないと。

底知れぬ、計り知れぬ何かが、このゲッコウガというポケモンには確かに存在している。

それは恐らく、本日の特訓だけでは到底理解し得ぬ物なのだろう。

だが、これは絶好の機会だ。

なぜなら。

(現役のチャンピオンとして、今もその座を守り続けているカルムのポケモン)

(そんなとんでもない奴を相手取って、こうして修行ができるなんて)

(良い経験に……ならないわけがない!)

……確信を持てるからだ。

今日という日は絶対に、無駄な一日にならないという____

____不動の確信を!
 ▼ 23 ラティナ@はかせのふくめん 17/03/17 00:11:47 ID:BP04Zp7M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 24 チコール@でんきだま 17/03/17 00:18:33 ID:yOJBK33M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこは……ゲロッじゃないコウガッ!
 ▼ 25 マザラシ@おおきなしんじゅ 17/03/17 00:20:07 ID:wNrqLh6Y NGネーム登録 NGID登録 報告
残りのメンツも気になるな
 ▼ 26 タフリー@きょかしょう 17/03/17 07:19:20 ID:ZyYLScxQ NGネーム登録 NGID登録 報告
>>24
サ、サトシのゲッコウガじゃないから…(震え声)
 ▼ 27 ルビル@しめったいわ 17/03/17 08:33:56 ID:zkTFIXPo NGネーム登録 NGID登録 報告
>>26
他のゲッコウガどう鳴いてたっけ?
 ▼ 28 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:23:18 ID:JJKuit7I [1/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「メレシーは、ずは抜けて高い"ぼうぎょ"と"とくぼう"が最大の持ち味だ」

「だから、敵の攻撃をわざわざ避ける必要がない……ってのが強みになる」

「よって、メレシーには"受け"の訓練を薦めるが……どうする?」

カルムに特訓の方針を問われると、レッドはニヤリと笑ってこう答えた。

「元よりそうするつもりだったさ」

「メレシー!……ゲッコウガの攻撃に、耐え抜いてみせろ!」

「メッレ!」

メレシーも気合い十分。

"どこからでもかかってこい!"と、メレシーは何時になく強気だ。

しかし、"いわ"タイプを持つメレシーに対して、相手は"みず"のゲッコウガ。

それも相当の、それこそ雲泥とも言えるほどのレベル差が存在している。

これはいささか手厳しすぎやしないかと、傍らから見守るコルニは思った。

(いきなり飛ばしすぎて、やりすぎなきゃ良いけど……)

とはいえ、大敵を相手にすることで得られる物も多い。

寧ろここを乗り越えれば、メレシーは大きく躍進するだろう。
 ▼ 29 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:26:18 ID:JJKuit7I [2/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
かつてない成長を求め、レッドとメレシーは挑戦するのだ。

この……ゲッコウガに!

「……よし!」

まず口火を切ったのはカルム!

「ゲッコウガ、連続攻撃でメレシーの体を打ち付けろ!」

「……ゲロッ」

指示されたゲッコウガは、なんと……。

(……!?)

音もなく。

「…………メレ?」

一瞬にして。

「ゲロ」

メレシーの懐に____飛び込んだ。

(はや____)

レッドは、"速い"と思おうとしたが。
 ▼ 30 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:26:52 ID:JJKuit7I [3/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
それよりも先に。

「ロッ!」

ゲッコウガの凄脚が伸びた。

「……メレっ!?」

重い。

なんて重い攻撃。

ただの無属性の蹴りなのに、鉄壁と言われたメレシーの守りは早くも崩された。

しかも、それは………。

「ロッ、ロッ、ゲロロッ」

絶え間なく、シャワーを浴びせるように降りかかってくる。

「メレェェェアッ!?」

痛い、痛すぎる。

あたかも、全身にマシンガンが撃ち込まれているかのような凄絶なる痛覚が襲う。

マシンガンと言っても、その一つ一つの弾の威力はまるでバズーカ。

それこそ、この殺戮兵器が如きゲッコウガのラッシュ攻撃がメレシーという虚弱な砦を落とすのは、容易いことだった。
 ▼ 31 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:27:31 ID:JJKuit7I [4/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「メッ……」

メレシーは、薄れゆく意識の中でふと思う。

"こんなはずでは無かった"と。

今の自分はもっと、もっと成長しているはずだった。

それなのに、こうもあっさりやられるなんて。

いくら目の前の敵とはレベル差が圧倒的だからと言ったって。

……でも。

心地よく聞こえてくる声がある。

「……ばれ!メレシー!」

それは、愛すべきレッドのかけ声。

「頑張れメレシー!」

「お前は今より、もっともっと強くなれる!」

レッドは、こんな自分を応援してくれている。

自分なんて期待外れも良いところなはずなのに。

こんな無様な自分を、信じてくれている。
 ▼ 32 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:28:17 ID:JJKuit7I [5/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
だから、頑張りたい。

だけど……もう、ダメだ。

反撃の手立ては既に無い。

自分はここから……何も……出来ない。

……しかし。

「……メレ」

何も出来ない自分もそうだが。

同時に、もう一つの自分が顔を覗かせていた。

それは……。

「ゲッ、ロッ!」

「メ……レ!」

……例え反撃は出来なくとも。

"決して倒れることのない"……自分が。

「メ……」
 ▼ 33 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:29:00 ID:JJKuit7I [6/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
おかしい。

体力の限界は既に超えてるのに。

脆弱な自分が、この連撃に現在進行形で耐えている。

「良いぞ、メレシー!」

そう悟った途端に、レッドからの声も鮮明に聞こえるようになってきた。

ああ……そうか。

これで良いんだ。

自分は、この打ち付けし鉛の大雨をひたすら耐え抜くことのみ考えてれば良いんだ。

それだけで自分は_____

「強くなるぞ、メレシー!」

____そうだ。

強く……なるんだ!

「……メェェェレッ!」


「……ゲロッ」
 ▼ 34 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:29:31 ID:JJKuit7I [7/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……一方、その頃。

PWTに向けて邁進しているのは、決してレッド達だけでは無い。

この少年もまた、一つの"敗北"をバネにして……。

「いけ!オーダイルッ!」

「"アクアジェット"ォッ!」

「オオオゥッダァァッ!!」

……日々、怠ることなく鍛練を積み重ねていた!

そう……このゴールドも!

「す、凄い……またも6000ポイント超え」

「"マスターランク"、二連続達成です!」

今、ゴールドが挑戦しているのは"バトル検定"。

ミアレシティにある"トライアルハウス"という施設にて開催されている、一種の腕試し大会。
 ▼ 35 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:30:49 ID:JJKuit7I [8/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
連続して五人のトレーナーと戦って、そこで残した戦績をポイントとして数値化し。

そのデータを元にして、挑戦者たるトレーナーがどれ程の実力なのかを検定しようというもの。

そこで下される評価の中でも、最優秀とされる地位が"マスターランク"。

まさにピラミッドの頂点であり、ここまで辿り着けるトレーナーはほんの一握り。

そんな幻とも言える境地にゴールドは、なんと二度に渡って到達してしまったのだという。

「よっし……良い調子だ」

「ダイル」

怒濤の結果を叩き出して検定を終えたゴールド達。

一旦休憩するため、向かいのベンチに踵を返した____

____その時だった。

「やっ、お疲れ!」

「"ゴーくん"!」

目の前に、かつての"敵"が姿を現した。

そう……この少女こそが、アローラ代表・"ミヅキ"。

そして……同じくアローラ代表となったゴールドの、パートナーだ。
 ▼ 36 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:32:21 ID:JJKuit7I [9/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……やっぱりその"あだ名"、変えないんですね」

「せっかく仲良くなったんだし、気にしない気にしない♪」

ミヅキは、ゴールドと出会った当初は彼に対して敬語であった。

それはやはり初対面ということもあって、馴れ馴れしいのは彼女が控えたためである。

しかし、こうしてパートナー同士となった今、遠慮することなど何も無い。

今や"ゴーくん"というあだ名が飛び交うまでの仲なのだ。

が、ゴールドの方は元から礼儀正しい気質であるからして、出会った時と口の聞き方はほぼ変わっていない。

そのことをミヅキは、ほんの少しだが気にかけていた。

「ゴーくんの方こそ、敬語はどうしても辞められないの〜っ?」

ミヅキが聞くと。

「これは僕の性分みたいなものですので……すみません」

ペコリと、律儀に頭まで下げてその事を謝罪した。

「……そっか!」

理解したミヅキ。

「じゃあ……ほいっ!」
 ▼ 37 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:33:03 ID:JJKuit7I [10/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
すると唐突にミヅキは、ゴールドに向かって何かを投げ込んだ。

「っ……」

ゴールドはそれを、咄嗟の反射神経で何とか受け取る。

その手に握られていたのは……。

「……サイコ……ソーダ?」

……自販機で良く売られている、清涼飲料水。

「これでも飲んで、また頑張ってねっ」

「それじゃ、また〜っ!」

どうやらこれは、ミヅキの差し入れのよう。

ミヅキはそれだけ言い残すと、軽快な足取りでこの場を去ってしまったのだった……。

「……あ!……お礼を言うのを忘れた」

「……オーダ」

言う間も与えず彼女の方から去ってしまったのだから、気にすることはないのに。

こんなバカ真面目な主人を見て、つくづくオーダイルは哀れに思う。
 ▼ 38 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:33:49 ID:JJKuit7I [11/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
……と。

「……あげるよ、オーダイル」

「オダッ?」

ゴールドはサイコソーダを開封せず、そのままオーダイルに譲った。

「……ダイル?」

オーダイルは受け取りつつも、その真意を問う。

するとゴールドは……。

「日頃から頑張ってるのはお前の方なんだ」

「だからこれは、お前が飲むべきだ」

……これだからこの男はダメなのだ。

面の皮が薄いのなんの。
 ▼ 39 mTQB7XkZdk 17/03/18 00:34:27 ID:JJKuit7I [12/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし……。

「……オーダッ」

……"嫌いじゃない"。

オーダイルは、そう思った。

沸き立つ炭酸と共に、ここまでの疲れを吹き飛ばす……。

「……よし!」

「あともう一つくらい、マスターランクを取ってみるか!」

「オダッ!」
 ▼ 40 ルビル@うすもものミツ 17/03/18 00:37:03 ID:GXIvAVmM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴールドかわいいなおい
 ▼ 41 ルット@アイテムドロップ 17/03/18 05:16:32 ID:9vljGFTA NGネーム登録 NGID登録 報告
毎日更新嬉しい
 ▼ 42 ンメン@なんでもなおし 17/03/18 07:24:33 ID:YYmFzAfo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 43 mTQB7XkZdk 17/03/18 21:32:24 ID:2mcUnAsA NGネーム登録 NGID登録 報告
ごめんなさい。今日は私情により更新できそうに無いので、更新はお休みします。
 ▼ 44 ラベベ@ポロックケース 17/03/19 08:01:12 ID:b6LEHNDA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一日二日くらい休んでもまったく問題ないですよ〜
支援
 ▼ 45 ドイデ@サイコシード 17/03/19 12:53:04 ID:YShwmozE NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 46 mTQB7XkZdk 17/03/20 00:24:11 ID:/ZgFifGU [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……特訓、三日目。

PWT当日が、いよいよ明日にまで迫ってきた。

そして今日も今日とてレッド達は、早朝からトレーニング。

「メレシー、"リフレクター"!」

「からの……"ひかりのかべ"!」

「メレ!」

ここまでの特訓が活きて、メレシーは防御戦法に有効な二つの技を新たに修得していた。

まず"リフレクター"は、物理を寄せ付けぬ堅牢な壁。

かたや"ひかりのかべ"は、特殊攻撃を受け付けぬ鉄壁のバリア。

この対を成せし二つの技で、メレシーは防御の陣を形成し。

「ゲロッ……!!」

「メレッ!」

今や、ゲッコウガの攻撃を軽々と受けれるようにまで成長を遂げたのだった!
 ▼ 47 mTQB7XkZdk 17/03/20 00:24:41 ID:/ZgFifGU [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
つい先日までは、開始数秒で既に限界が見えていたのに。

この恐るべき成長スピードには、レッドやコルニは勿論。

カルムまでもが、驚かされていた。

「昨日あれだけやったとはいえ、一朝一夕でここまでなるとはな……」

(……流石は、かの"伝説のトレーナー"・レッド)

(ポケモンを見る目も超一流……か)

カルムは、レッドと出会ってからは頻繁に思い返している。

とある、一つの"噂"を。

(カントーとジョウトの境にそびえ立つ"シロガネ山")

(その頂上に君臨するは、"レッド"なるポケモントレーナー)

(噂では、レッドは"無口"と聞いたが……)

……しかし。

その噂とは裏腹に。

「良いぞ、メレシー!」

「メレメレー!」

思いの外、レッドはよく喋る。
 ▼ 48 mTQB7XkZdk 17/03/20 00:26:11 ID:/ZgFifGU [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……イメージとはだいぶ違ったが)

(その実力は、噂通り____)

……いや。

(____それ以上か)

……レッドは、山に籠っていた時から随分変わった。

幾多の強敵と幾度も戦い、その度に勝っては強くなって。

時には挫折を経験し、しかしそのおかげで慢心も捨てられた。

心身ともに、ポケモンと一緒に大きくなってきた今のレッドは。

カルムの想像さえも超えた、まさに"最強クラス"のトレーナーなのである。

……この時カルムは、気まぐれながらに。

一つ、好奇心が湧いてきた。

「……なあ、レッド」

落ち着いた声のトーン。

「ん?」

レッドは答えるが、同時に少し違和感を感じていた。
 ▼ 49 mTQB7XkZdk 17/03/20 00:27:01 ID:/ZgFifGU [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
いつもは気さくで、声もハキハキしている方のカルムが、今日は何だか冷静な雰囲気だから。

「明日からいよいよ、PWTの一回戦が始まる」

「俺とお前の初陣だ」

「そこで」

次にカルムは、レッドにある"誘い"を持ちかける。

それは、一人のポケモントレーナーとして受けるべき"誘い"。

言い換えれば、"挑戦"だ。

今回、カロスチャンピオンたるカルムが挑むのは。

「レッド……」

____昔日の最強。

または。

「お前の"本気"を、見ておきたい」

生ける伝説。

リビング・レジェンド……"レッド"!
 ▼ 50 mTQB7XkZdk 17/03/20 00:27:47 ID:/ZgFifGU [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……なるほど」

「良いよ」

迷う余地など無いだろう。

むしろ、望むところだ。

これから共に背中を預け合う仲間として、そろそろ腹を割らねばならない頃合い。

見せようじゃないか。

"本気"を。

「コルニ、審判を頼む」

「分かった!」

そしてレッドとカルムは、舗装されたバトルフィールドにて向き合って。

コルニを審判に据えて、バトルの準備。
 ▼ 51 mTQB7XkZdk 17/03/20 00:28:35 ID:/ZgFifGU [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「勝負は一対一」

「入れ換え無しで、先に瀕死になったポケモンが負け……でどうだ?」

先鋒がやられた地点で勝敗が決する、サドンデスルール。

「構わない」

レッドに依存はない。

ならば後は。

審判の合図を……待つのみだ。

「では、これよりエキシビションマッチ!」

「レッドvsカルムを……始めます!」

コルニの一声によって、決戦の火蓋が切って落とされた!
 ▼ 52 イガニ@きれいなぬけがら 17/03/20 07:05:35 ID:OonXzqSg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
よく喋る……
そういえばそうだな……
支援
 ▼ 53 ングラー@ハバンのみ 17/03/20 08:26:46 ID:lq7QNDwE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
メガリザードン対決期待
 ▼ 54 mTQB7XkZdk 17/03/20 20:24:58 ID:ap.EeyFU [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
("本気"、か)

(だったら……アイツしかないな)

カルムに"本気を出せ"と言われたレッド。

その選択肢は一択だった。

レッドが本気を出すとして……繰り出すポケモンはただ一匹。

「いけ!」

「"リザードン"!」

"リザードン"……かえんポケモン!

炎を尾の先に携えた、橙色の火竜!

「グォォォンッ!」

レッドの手から解き放たれしこのリザードンは、他を圧倒する絶対的な実力を有している。

少なくとも、並みのリザードンではまるで歯が立たないだろう。

まさに彼は別格であり、特別。

これに勝る者は、そうそう居ない。
 ▼ 55 mTQB7XkZdk 17/03/20 20:25:36 ID:ap.EeyFU [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが。

その真価は、まだ……。

「いくぞ____」

……こんな物ではないのだ!

「____"メガシンカ"!」

するとレッドは、彼が首に巻く手編みのマフラーに掌を乗せ。

その言葉を、高らかに叫ぶ。

コルニの想いが秘められたそのマフラーは、やがて遥かなる虹の煌めきに抱擁され。

「グォォォッ……!」

ついには、リザードンまでもが飲み込まれていく。

そして目覚めるは、"Y"の名を冠する緋色の炎龍。

進化を超え、限界を超えたリザードンの、更なる境地。

"メガリザードンY"!!
 ▼ 56 mTQB7XkZdk 17/03/20 20:26:14 ID:ap.EeyFU [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……グォォォォッ!!」

覚醒!

「どうだ、カルム」

「これが俺の……いや」


「"俺達"の、本気だ」


レッドとリザードンの全力が、いまここに在る。

この超強力な布陣を前にしてカルムは、如何なるポケモンで対抗するというのか。

「……ふっ」

「レッド____」

「____"気"が合うな」

……突然の微笑み、そして意味深な発言。

ボールを握りしカルムの雰囲気は、いつしか計り知れなく不気味なものとなっていた。

「……どういう意味だ?」

レッドが聞くと。
 ▼ 57 mTQB7XkZdk 17/03/20 20:27:03 ID:ap.EeyFU [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「こういう意味さ」

カルムは、不透明な真相を明かすことのないまま。

ボールを振りかぶって……。

「……それ!」

一球!

「"リザードン"!」

……それは、この戦場に現れたもう一つの火竜。

「リザァァァァッ!!」

"リザードン"。

火炎の化身が、今、対を成してここに共演した。

「なっ……カルムもリザードンを!?」

「グォ……!」

レッドもリザードンも、この予想外の出来事には驚きを隠せない。

まさか、カルムと手持ちが被っているとは思ってもみなかった。
 ▼ 58 mTQB7XkZdk 17/03/20 20:27:47 ID:ap.EeyFU [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし……。

(……だが、何なんだ)

(あのカルムのリザードンから放たれている……この____)

(____凍てつくようなオーラはッ!)

……種族は同じであるにも関わらず、その性質は全くの別方向にあるような。

そんな気が……レッドにはした。

「ふむ……レッド」

と、カルムがここで口火を切って、レッドに言葉を付け足す。

「俺のリザードンとお前のリザードンが違うのは……」

「……ここからだ」

するとカルムは次に、右腕を天に掲げ。

そこに携えし"腕輪"を、レッド達に見せつけた!

「あれは……!」

よく見るとその腕輪には、丸い宝石が埋め込まれている。

レッドのマフラーにもあるような、丸い宝石が。
 ▼ 59 mTQB7XkZdk 17/03/20 20:28:37 ID:ap.EeyFU [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
……そう。

あれこそ、カルムのキーストーン____

____"メガリング"!

「見せてやるぜ、レッド」

「リザードンの……もう一つの"可能性"って奴をな!」

「さあ……翔り上がれ!"メガシンカ"!」

そしてついに、カルムのメガシンカも解禁される!

しかしその結果は……。

「____!?」

レッドの想像を、遥かに絶していたのだった!

まずレッドのメガリザードンは、明るみを帯びた橙の色をしている。

が、カルムのメガリザードンは……。

「……リザッ!」

……"黒"。

漆黒のボディ。
 ▼ 60 ガハガネール@ボロのつりざお 17/03/20 20:29:04 ID:YSdvBZhQ NGネーム登録 NGID登録 報告
Xか
 ▼ 61 mTQB7XkZdk 17/03/20 20:29:46 ID:ap.EeyFU [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
その鱗は、レッドのリザードンのそれとは全くの別物。

真っ黒だったのだ。

カルムのメガリザードンは。

また、違うのはそこだけではない。

炎の色も違う。

通常、リザードンの……いや、普通の炎は基本的に赤い。

しかし、このリザードンの炎は違う。

身近な例で言えば、それはガスの炎。

オカルトな言い方をすれば、それは人魂。
 ▼ 62 mTQB7XkZdk 17/03/20 20:30:24 ID:ap.EeyFU [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
そう……"青い"のだ。

その炎は。

「お前のメガリザードンが"Y"とするなら」

「俺のメガリザードンは……"X"」

「どうだ?……イカすだろ」

カルムは、リザードンに代わって名乗った。

その名は"X"。

"メガリザードンX"。

リザードンの、もう一つの進化形態……!
 ▼ 63 ットロトム@トレジャーメール 17/03/20 22:49:09 ID:OonXzqSg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Wメガリザードンか
やべえな
 ▼ 64 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:33:17 ID:Te6LRM7U [1/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
XとY、二匹のリザードンが対峙する。

「"X"……」

「リザードンの、もう一つの可能性……ッ!」

レッドは、目の前にて降臨した黒竜の勇ましき姿を刮目して、歯を強く食い縛る。

ふと、自分の手のひらが震えていることに気付いた。

「……恐れているのか」

瞬時にレッドはそう悟る。

レッドは、眼前のメガリザードンXに……戦いているのだ。

奴は、これまで戦ってきた敵とはまた違うベクトルの雰囲気がある。

「リーザァ……」

あのリザードンは、多くをその口では語らない。

無駄に吠えない。

物静かで、冷静。

……いや。

冷静というよりは……"冷徹"か。
 ▼ 65 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:33:59 ID:Te6LRM7U [2/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
そしてあと一つ、確かに感じられるのは。

(あいつ……相当やるぞ)

……その、強者の予感。

(……くっ!)

(何はともあれ、攻めなければ何もならない!)

(先手は……貰った!)

己を縛り結ばんとする戦慄の鎖を、勇気という剣ではね除け一閃。

レッドは、電光石火の指の動きで最初の指令を放った!

「リザードン、"エアスラッシュ"!」

「グォッ!」

レッドのリザードンは、体を急速に旋回させて、つむじ風を形成する。

そして、その渦から飛んでくる強風は鋭利な刃となり。

正面にいるカルムのリザードンを、襲った!

(速い!)

このエアスラッシュの速度は、カルムでさえまともに捉えることが出来なかった。
 ▼ 66 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:34:41 ID:Te6LRM7U [3/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リザッ……!?」

そして指示が遅れ、カルムのリザードンは直撃を食らう。

その横っ腹に、見るも痛々しい切り傷が出来上がった。

(あの技は初見だとまるで見切れないな……流石だ)

現状として、先程のエアスラッシュはカルムにとって十分な驚異。

しかし、それが明日には味方になってると思うと、心底カルムは心強く感じた。

だが、今はそんなこと考えている場合ではない。

まずは、このバトルに集中せねば。

「リザードン、飛翔しろ」

「リザッ」

すると、カルムのリザードンは黒き翼を翻し。

遥か上空へ、飛び立った。

「追え!」

「グォンッ!」

レッドのリザードンはそれを追跡する。

そして。
 ▼ 67 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:35:19 ID:Te6LRM7U [4/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「どんどん速度を上げろ!」

レッドのリザードンは、上昇するごとに凄まじい勢いで加速して……。

「今だ、"りゅうのはどう"!」

「グォォォゥッ!」

紫に染まりし竜の波導を吹き出した!

だがその波導は前方へは進んでいかず。

リザードンの全身を纏うようにして、広がっていく……!

「これはっ!?」

これもまた、カルムにとっては初見。

しかしコルニは、この光景を知っている。

(出た……レッドのリザードンの必殺技!)

その名も……"りゅうのはどうアタック"!

風圧によって拡散するブレスを利用した、超絶威力の突進技だ!

(まずいぜ……)

(これが当たれば、俺のリザードンは致命的ダメージだ)
 ▼ 68 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:36:09 ID:Te6LRM7U [5/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
と言うのも、カルムのメガリザードンXにはある"特徴"がある。

それは、"タイプ"だ。

通常リザードンは、"ほのお"と"ひこう"の複合タイプで知られる。

だが、メガリザードンXの場合は少し違うのだ。

"ひこう"が、"ドラゴン"に変わるのである。

"ドラゴン"タイプのリザードンに、"ドラゴン"の"りゅうのはどう"は効果抜群。

故に、これを食らえばカルムのリザードンは只では済まないのだ。

レッドはそのことを知らないが、今確かにカルムは窮地に立たされているのである。

しかし。

(……ま)

(パワー自体は……こちらの方が上だろうけどな)

メガリザードンXには、まだもう一つの特異点が存在する。

それこそ、従来のリザードンとは大きく異なる点だ。

それは……。

「リザードン!」
 ▼ 69 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:36:58 ID:Te6LRM7U [6/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「____叩き落とせ!」

……その、攻撃力。

「ザァァ____」

「____ドッ!」

瞬間。

レッドのリザードンの視界が……。

「____グオンッ!?」

一気に、飛んでった。

「グォォォォアアアアアッ!?」

何が起こったのか。

突然、レッドのリザードンがアスファルトに向かって一直線に落ちていく。

「リザードンッ!?」

その時カルムのリザードンは、降り下ろしただけだった。

たった一つの……握り拳を。

それだけで、リザードンの"りゅうのはどうアタック"はいとも容易く跳ね返されたのだ。
 ▼ 70 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:37:28 ID:Te6LRM7U [7/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
これこそ、メガリザードンXのもう一つの特異点。

大きく育った"こうげき"のパラメータだ。

普通、リザードンの能力値はとくこう>こうげきであり、物理よりも特殊攻撃で攻めた方が良いとされている。

しかし、メガリザードンXはその逆を往く。

敵をガンガンぶん殴っていくのが、彼のバトルスタイルなのだ。

「グォッ……!」

刹那に及ぶ落下の末、レッドのリザードンは地面に衝突。

そして、発生せし砂煙にその身を埋める。

「グォンッ!」

やがてリザードンは立ち上がるも、衝撃によって大きな擦り傷を負ってしまっていた。

これで、切り傷のカルムのリザードンとは五分五分。

ここまでは、互いに一歩も退かぬ戦況だ。

「グォッ……オオッ!」

勇猛に相手を見上げるメガリザードンY。

「……リザァ」

冷ややかに敵を見下げるメガリザードンX。
 ▼ 71 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:39:31 ID:Te6LRM7U [8/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
(くそ……近距離がダメなら!)

「リザードン、もう一度"りゅうのはどう"!」

「グォッ!」

接近戦では勝ち目が無いと踏んだレッドは、今度は普通の"りゅうのはどう"をリザードンに指示する。

哮りをあげて真っ直ぐに伸びた竜炎のブレスが、カルムのリザードンを強襲した。

____が。

「"ドラゴンクロー"で弾き飛ばせ!」

「ザァドッ」

カルムのリザードンは、迫り来るこの波導を、竜の鋭爪"ドラゴンクロー"で軽々ガード。

そして軌道がズレた"りゅうのはどう"は、あさっての咆哮へと吹き飛んでいった。
 ▼ 72 mTQB7XkZdk 17/03/21 20:40:03 ID:Te6LRM7U [9/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「バカな!?」

こちらに分があるはずの遠距離戦でも、予想外の苦戦を強いられるレッド。

近距離でも遠距離でも、奴の恐るべき威力の攻撃力の前ではまるで成す術が無い。

「リザァ……!」

この時、カルムのリザードンは初めてその頬を歪めた。

しかしそれは、慢心でも愉悦でもなく。

獲物に対する、狩猟本能によるもの……!
 ▼ 73 マズン@キトサン 17/03/21 23:48:10 ID:JlsGp4LU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うわあああ
まだ本番じゃねえのに興奮するよ〜
 ▼ 74 ャーレム@マスターボール 17/03/22 06:37:59 ID:z.zwVwaU NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 75 mTQB7XkZdk 17/03/23 00:24:22 ID:t/bo0hoY [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
(結局、ここまでで効いたのはエアスラッシュだけか)

(残る技は"ほのお"の"かえんほうしゃ"と"オーバーヒート"のみ……)

(……くそ!有効打が無さすぎる)

今回、ここまでレッドの戦いが振るわないのには理由がある。

それは、メガリザードンYの"特性"を活かせてないということ。

と言うのも今、レッドの背後では、凄まじい強さの"陽射し"が戦場を燦々と照らしている。

これはいわば、"にほんばれ状態"という現象。

この天候下に晒されている場合、"ほのお"の技は、この気温の高さによって威力が大きくなり。

逆に"みず"の技は、威力が小さくなってしまう。

その"にほんばれ状態"を瞬時に起こせる能力こそが、メガリザードンYの特性____

____"ひでり"なのだ。

が、今回のバトルの相手は、"ほのお"・"ドラゴン"のタイプを持つメガリザードンX。

元々"ほのお"が今一つな敵に対しては、この特性の真価は十分に発揮されない。

ましてメガリザードンXは、タイプ相性上では"ほのお"を1/4の低威力にまで抑えることができてしまう。
 ▼ 76 mTQB7XkZdk 17/03/23 00:24:53 ID:t/bo0hoY [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
現状としてレッドは、メガリザードンXの"ドラゴン"を把握していないため、そのことは知らない。

だが、リザードン自体は元々が"ほのお"なので、同じく"ほのお"の効果が今一つなことは存じている。

故に、エアスラッシュ以外の技が全て苦肉の策であることも悟っていた。

これではまさにジリ貧。

しかし、だからと言って攻めないわけにはいかない。

「リザードン、エアスラッシュ!」

「グォッ!」

エアスラッシュしかまともに通用しないと言うのなら、何度でも巻き起こしてやろうじゃないか。

旋風の刃を。

「リザッ……!?」

そして、エアスラッシュの直撃をまたも食らったカルムのリザードン。

それを見るとどうやら、向こうはまだこちらのエアスラッシュを見切れてはいないようだ。

これは、不幸中の幸い。

この機を逃さず、一気に畳み掛ける!
 ▼ 77 mTQB7XkZdk 17/03/23 00:26:12 ID:t/bo0hoY [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
(とにかく、接近するとあの化け物じみた爪が飛んでくる)

(何とか距離を開かせながら、戦局を組み立てていかなければ)

作戦としては、遠方からの射撃。

「リザードン、連続エアスラッシュ!」

「グォォッ!」

レッドのリザードンは、全身を旋回させる動きに更に速度をかける。

あたかも駒のように、しかし減速することのないその無電動モーターは、際限なく加速を重ねていって……。

「……グォォォォッ!!」

……無数もの風の剣を次々生み出し、カルムのリザードンを襲撃!

「何だと!?」

これには流石のカルムも焦る。

まだ十分に見れていないあのエアスラッシュを、あの速度であの数で撃たれたりしたら……。

「リ……ザッ……!」

間違いなく、無事ではすまない。
 ▼ 78 mTQB7XkZdk 17/03/23 00:26:58 ID:t/bo0hoY [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リザードンッ!……くっ!」

が、カルムはここで退かない。

退かせはしない。

「耐えろリザードン!」

「耐えて、ドラゴンクローで跳ね返せ!」

「リザァ!」

指示を受けたリザードンだったが、その直後の地点ではそれは到底叶えられない。

今はまだ、このエアスラッシュにひたすら耐えて。

「リザァァッ……アアッ!」

この速度に目が慣れたら……。

「……リッ!」


「ザァァァッ!!」


……一気に、敵の攻撃の波を止める!
 ▼ 79 mTQB7XkZdk 17/03/23 00:27:40 ID:t/bo0hoY [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なっ!?」

「グォォッ!?」

止めやがった。

止められてしまった!

(ば、バカな……こんな早くに見切られるなんてッ!)

一瞬は、確かにエアスラッシュがカルムのリザードンを追い詰めていた。

しかし、反撃されるのも一瞬だった。

カルムのリザードンは、たった一振りのドラゴンクローで、残り全てのエアスラッシュを粉砕。

「ザァァッ……アアッ!」

その代償として、これまで耐え続けてきたエアスラッシュのダメージが一気に彼を襲う。

だが。

「……ザァッ!」

それにも、カルムのリザードンは耐えてみせた。

「ザァァァッ!!」

数えきれぬ切り傷を負いながらも、満身創痍でジッとレッドのリザードンを睨み付ける。

その眼光は、非常に鋭かった。
 ▼ 80 mTQB7XkZdk 17/03/23 00:29:09 ID:t/bo0hoY [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして、その刹那。

「グォッ____」

レッドのリザードンの目の前に。

「リザァ」

カルムのリザードンが、何時の間に迫ってきて____

「リザッ!」


「グォォォォォアアアアアアッ!!!?」


____一撃!

「リザァァッ!!」

更に。

「グォォッ!?」

もう一撃!

「リ……」

「リザァドォォォンッ!!?」
 ▼ 81 mTQB7XkZdk 17/03/23 00:29:40 ID:t/bo0hoY [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
レッドには見えなかった。

瞬間移動でもしたんじゃないかと疑うほどの尋常じゃない速度で、迫られた。

それこそ、瞬きする間もなく。

そして振りかかったのは、想像を絶する破壊力の連続攻撃。

レッドのリザードンを、躊躇なく強打するこの技の名は____

「____"げきりん"」

「俺のリザードンにここまでさせたのは……お前が"二人目"だぜ」

……カルムは、余裕気にそれを語る。

"げきりん"……それは、名だたる"ドラゴン"タイプの技の数々でも筆頭に挙げられる究極奥義。

激情に燃えし竜の怒りを暴走させて、極大なる威力で敵を撃滅するのだ。

諸刃とも言えるその攻撃で、カルムのリザードンは、全力でレッドのリザードンを潰しにかかる……!
 ▼ 82 ンチュラ@サイコシード 17/03/23 00:43:36 ID:qcPqmeAs NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 83 ンテイ@ヒレのカセキ 17/03/23 06:42:36 ID:57MBYPLI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そういえばメガリザXってAとC同じなんだよな
支援
 ▼ 84 メルゴン@ふねのチケット 17/03/23 14:26:04 ID:O0fOlEgI NGネーム登録 NGID登録 報告
一人目誰やろか
 ▼ 85 mTQB7XkZdk 17/03/24 00:04:12 ID:CzitLht. [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……そこからの試合展開は、酷く一方的な物だった。

カルムのリザードンが、"ドラゴン"タイプ最強クラスの技・"げきりん"を発動したのを皮切りに。

「リザァァッ!」

彼は、猛然と本能のままに敵を狩り尽くす"獣"と化したのだ。

ドラゴンという生き物とは本来、伝承の上では"知能を得た獣の王"とされることが多いが。

彼はどうやら違った。

彼は……メガリザードンXは、まさに怒りの使徒となりてレッドのメガリザードンYを襲い。

「グォォォッ!?」

それこそ、反撃が出来なくなるまで傷みつけ。

「グォ……アアッ……!」

その、闘志の炎が消えてなくなるまで踏みつけ。
 ▼ 86 mTQB7XkZdk 17/03/24 00:04:43 ID:CzitLht. [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……アッアアッ……」

……そして、勝利を収めた。

完全たる力を、示したのだ。

「……リザッ」

全てが終わると、カルムのリザードンは再び、元の平静さを取り戻し。

「リザァ……」

足元のレッドのリザードンを、悠々と見下ろしたのだった……。
 ▼ 87 mTQB7XkZdk 17/03/24 00:05:16 ID:CzitLht. [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……そして、敗戦の将は今。

月夜のミアレシティ、そこにありしホテルの一室にて、力なくチェスに腰をかけていた。

「……負けた」

敗戦の将……レッドは、そう溢す。

今日の戦いを、今一度振り返ってみて。

力が及ばなかった。

あのカロスチャンピオン・カルムに。

ポケモンの実力そのものは、確かに拮抗していたはずなのだが……。

「……俺の判断が、もう少し正しければ」

「俺よりカルムの方が、トレーナーとして数段頭が切れていた」

と、していても仕方のない後悔が先程からずっと続いている。

「ピカチュ……」

ピカチュウもそんな落ち込む彼を心配し、困り気な眼差しで見つめていた。
 ▼ 88 mTQB7XkZdk 17/03/24 00:05:54 ID:CzitLht. [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……俺はこんなことで、PWTに勝ち上がって____」


「何しょげてるの!」


……そこへやって来たのは、コルニ。

「……コルニか」

敗北を喫し、挫折に打ちひしがれていたレッドに、コルニは励ましでも送るつもりなのだろう。

前にも確か、こんなことがあった。

というか、何度もあった。

今度もまた、彼女が何かを彼に贈るのか。

「負けちゃったモノは仕方がない!」

「この悔しさをバネにして、立ち上がっていこうよ!」

と、コルニは早速溌剌なエールを、レッドに届けた。

だが。

「……今回俺が気にしているのは、"そういうこと"じゃないんだ」
 ▼ 89 mTQB7XkZdk 17/03/24 00:06:54 ID:CzitLht. [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……えっ?」

するとレッドは、言葉を更に続ける。

「きっと今日の戦いで俺は、カルムの"期待"を裏切ってしまった」

「折角この俺を、この見ず知らずだった俺を、カルムはPWTという大舞台に招待してくれたのに」

「俺は……それに応える相応のバトルが出来なかった」

「俺は……カルムのパートナー失格かもしれん」

と、ここまで言ったが矢先。

「……バーカ」

コルニから、珍しく手厳しい単語が飛んできた。

「え____」

戸惑うレッドだったが、コルニはそれに構わず話を続行。

「期待外れとか、相応のバトルとか、何を一人で背負いこんでるの?」

「アナタはアナタで、今日は全力を尽くしたバトルを繰り広げたじゃん」
 ▼ 90 mTQB7XkZdk 17/03/24 00:07:29 ID:CzitLht. [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
それは、怒りの口調ではなく、優しく諭すような言葉遣い。

「……っ」

レッドは、彼女のそんな柔らかな声に、黙って聞き入る。

「カルムも言ってたよ?」

「"アイツは本当に凄いトレーナーだ"」

「"スカウトして良かった"……ってね!」


「……ッ!」


……コルニのこの一言で、レッドは心が救われたのだった。

「もっと自信を持ちなよ、レッド」

「アナタは、別にアナタ一人で戦う訳じゃ無いんだから」

……そうだ。

自分には、自分自身の信頼できるポケモン達が居るし。

それに、今日自分を負かしたカルムとそのポケモンが仲間なんだ。
 ▼ 91 mTQB7XkZdk 17/03/24 00:08:34 ID:CzitLht. [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
これで、一体何を恐れると言うのか。

確かに自分は、"バカ"だった。

「……ありがとう、コルニ」

「また君に……助けられた」

「ピカッ!」

レッドから礼を言われると、コルニは首を振りながらも可憐に微笑んで。

「明日のPWT一回戦……頑張ってね!」

改めて、レッドに応援のメッセージを贈ったのだった。
 ▼ 92 mTQB7XkZdk 17/03/24 00:09:15 ID:CzitLht. [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
……と。

「……ところで、さ」

「?」

ここで唐突に、レッドが話題を切ってコルニに話しかける。

すると次の瞬間、レッドの口から放たれたのは……。

「……この後」

「ちょっと……"二人で一緒に"、街に出てみないか?」


(……えっ?)


……なんと。

(そ、それってもしかして……)

(……デートの……お誘い〜っ!?)
 ▼ 93 トモシ@メカニカルメール 17/03/24 08:18:53 ID:cFzJ/5ig NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
えっ


えっ
 ▼ 94 ォレトス@ゴーストジュエル 17/03/24 08:23:43 ID:Xbhuynj2 NGネーム登録 NGID登録 報告
バトルよりこっちの方が楽しみ
 ▼ 95 テッコツ@れいかいのぬの 17/03/24 10:15:19 ID:eFmUK0EI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まあ特にレッドはデートに誘ったつもりではないんだろうな
 ▼ 96 ーシャン@くろいてっきゅう 17/03/24 13:23:31 ID:5bVb7jDE NGネーム登録 NGID登録 報告
良いですねぇあ
 ▼ 97 アル@どくけしのみ 17/03/24 13:30:49 ID:9UqgEHfo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Xがドラゴンタイプのことを知ってたらレッドが勝ってそう

コルニとの進展wktk
 ▼ 98 ャルマー@おおきなキノコ 17/03/24 21:18:08 ID:ISzT.zF. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>97
新しいポケモンを知らない分やっぱレッドが不利だよな
ゴールドもミミッキュ知らなかったし
 ▼ 99 mTQB7XkZdk 17/03/25 00:36:41 ID:zS2rHnFE [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……辺りは既に、日の光が閉ざされていた。

今、太陽の代わりにこの世界を照らすのは人が作りし街灯の数々。

時刻は既に八時を回っていて、これが普通の村とかならとっくに静まりかえっているところだが。

ミアレシティの活気は、まだまだ色褪せていなかった。

外に出てみれば、実に賑やかな雰囲気に一瞬にして包み込まれる。

有象無象の人々の波と、あちこち飛び交う喧騒の嵐。

そこに、レッド達もまた飛び込もうとしていた。

「まだ外は混んでるな……はぐれないようにしないと」

「ピカ!」

「う、うんっ!……」

……今、コルニの隣にはレッドが居る。

彼はコルニの、意中の相手。

コルニにとって彼は目標であり、恋慕の対象でもあるのだ。

今宵は、そんなレッドと初デート。
 ▼ 100 mTQB7XkZdk 17/03/25 00:38:10 ID:zS2rHnFE [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし、ここに漕ぎ着けたのはコルニではなく、なんとレッドだった。

(ま、まさか……レッドの方から誘ってくるなんて〜っ!)

コルニからすれば、これはまさに願ってもない申し出だったわけで。

彼女の白く柔らかな肌は、その嬉しさによってか赤く染め上がっていた。

おまけに胸も興奮によりバクついているので、先程から緊張しっぱなし。

モジモジしながらその心境を顕著に表すコルニを見て、レッドは……。

「……行こう、コルニ」

……とても落ち着いたトーンで、コルニに一声。

彼なりに、コルニの緊張を解こうとしている。

「……そだねっ」

……一体なぜ、今日レッドは突然に自分を誘ったのか。

それは分からない。

しかし、折角チャンスが巡ってきたのなら……。

(……今日)

(告白……しようかな)

……思いきって踏み込むのも、悪くないかも知れない。
 ▼ 101 mTQB7XkZdk 17/03/25 00:38:52 ID:zS2rHnFE [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「……美味しいっ!」

「本当だ……これは良い」

「ピカピー!」

今、一行が各々の食レポを口にしながら頬張っているのはクレープ。

屋台にて売っていて、見るからに甘くて美味しそうだったので、買って食べ歩きしていた。

この、薄くもしっかりとしたもちもち食感がある絶妙な生地。

そこに包まれている、沢山の苺の優しい甘味と酸味。

そして、ホイップクリームの一瞬にして口に溶ける心地よさ。

これら全てが素晴らしき食のハーモニーを奏で、レッド達の頬っぺたを地に叩きつけていた。

レッド達は、一様にこう話す。

"スイーツって最高"……と。
 ▼ 102 mTQB7XkZdk 17/03/25 00:40:10 ID:zS2rHnFE [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし一方で、こんな懸念も。

(太っちゃわないかな……)

(最近ちょっと増えてるんだよね)

そう考えを廻らせていたのはコルニ。

彼女は、自らの腹部にくっついてしまった"怠惰の結晶"をつまんでため息を溢す。

(いや……でもアタシほら、割りと運動してる方だから)

(ていうか、めっちゃ動いてる方だから)

しかしどういうわけか、カロリーの方がどうしても上回ってしまうらしい。

なぜ。

(……でも、アレかな)

(昨日、沢山ガレット食べちゃったもんなー……)

それはやはり、運動量を越えるカロリーを摂取してしまったため。

いくら運動をしていても、過剰な食事があれば増量なんてあっという間なのだ。
 ▼ 103 mTQB7XkZdk 17/03/25 00:41:00 ID:zS2rHnFE [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……ダメダメ!弛んでるよアタシ!)

(これを機に、もっともっとルカリオと武術の稽古を____)

……と。

そんな自責の念に溢れ、周りへの意識を欠いていたコルニのお腹を。

「お腹が痛いのか?コルニ」

「大丈夫?」

……レッドが、その手で優しくさすった。

「……ッ!?」

いきなりの、彼からの接触。

しかもそこは、今一番コルニが女子として気にかけていた場所。

マズい。

このままでは……。

「ひゃあっ!」

……バレてしまう!
 ▼ 104 mTQB7XkZdk 17/03/25 00:41:32 ID:zS2rHnFE [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「うぉっ!?」

レッドは、コルニが突飛な声をあげたのでビックリして、思わずたじろいでしまった。

一方でコルニは、顔を恥ずかしさで真っ赤にしながら、お腹の辺りを抑える。

「ご、ごめん……急に触るなんてどうかしてた」

「でも……何かあったら心配だからさ」

レッドは、突然の行動を謝り、しかし悪気があったわけではないことを伝える。

「い、いや……別に嫌だったわけじゃないんだよっ」

勿論、コルニには特に怒りの感情は無い。

寧ろ、心配してくれていたことが素直に嬉しいくらい。

……だけど。

(ううっ……)

(こんなことなら、昨日ガレットあんなに食べなきゃ良かったぁ……)

……ただただ、己の暴食を嘆くばかりではあった。
 ▼ 105 mTQB7XkZdk 17/03/25 00:42:08 ID:zS2rHnFE [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし、一方でレッドは。

(……?)

(何をそんなに気にしてるんだろ……)

……コルニのこの苦悩の原因に、全く気付けていなかった。

それはそうだ。

コルニ自身は今の自らの体型を"太りぎみ"と考えているようだが、男のレッドの目からしてみればそう大差ない。

"太った"なんて、微塵にも考える由は無かったのだ。

まあとはいえ、彼女が思い悩んでいるのであれば。

「……少し、あのベンチで休もう」

「良ければ、話も聞くよ」

レッドは、それに対し真摯に向き合うのみ。
 ▼ 106 mTQB7XkZdk 17/03/25 00:43:49 ID:zS2rHnFE [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……うんっ」

コルニはこの時、嬉しかった。

凄く。

自分が心より慕ってきた人が、今こうして自分だけを気にかけてくれている。

これ程、女の子として嬉しいことは無いだろう。

今日のレッドは、何だか本当に王子様みたいだ。

(……やっぱり楽しいな、この一時)

コルニは、今という時間が幸せで幸せで仕方が無かった。

そして、ミアレシティの街角のベンチに二人は、隣り合わせで座り。

互いに一息ついて、その足を休めながら、つもる話を存分に楽しんだのだった……。
 ▼ 107 ーピッグ@ダートじてんしゃ 17/03/25 07:08:57 ID:Js9KQSQo NGネーム登録 NGID登録 報告
久々の恋愛展開
 ▼ 108 ネズミ@キトサン 17/03/25 07:30:05 ID:e2vVDtYk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ああー
レッドの天然さがすごい
 ▼ 109 リープ@Zリング 17/03/25 08:46:53 ID:M1PohwKU NGネーム登録 NGID登録 報告
どうでもいいけどレッドって引きこもってた間何食ってたんだ?
 ▼ 110 ルノズク@あおぞらプレート 17/03/25 08:53:19 ID:lAI2q9r2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 111 グマッグ@わすれもの 17/03/25 10:31:16 ID:QXyvdx6M NGネーム登録 NGID登録 報告
>>109
ふもとのポケセン行ってたんじゃね?
 ▼ 112 mTQB7XkZdk 17/03/26 01:30:52 ID:39lKQTZM [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……あの後一行は、街の散策を再開した。

次に彼らが目指したのは、ノースサイドエリアに存在する、"ミアレ美術館"。

入ってみるとそこには、カロス地方は勿論、世界中各地方から寄贈された数多くの美術品が展示されていた。

まあ、美術館だから当然と言えば当然なのだが。

しかし美術品と言っても、壺や人形といった類いの物品は殆どなく、大半が絵画で占められている。

どの作品も芸術性が非常に高く、レベルが高い。

レッド達は、そんな色とりどりの絵の世界に、すっかりのめり込んでしまっていた。

「わぁ!このポケモンの絵可愛い!」

「かんしゃポケモン・"シェイミ"……か」
 ▼ 113 mTQB7XkZdk 17/03/26 01:32:13 ID:39lKQTZM [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
最初に二人の目に留まったのは、一匹のポケモンが優しいタッチで描かれたこの絵。

背景には花畑が広がっていて、中心に主役のポケモン……名を"シェイミ"が、飾っている。

シェイミは、四足歩行の小さなポケモン。

白く短い体毛を纏っていて、その背中には、絵の背景と同じく花畑が背負われている。

「シェイミはね、"ありがとう"とかの感謝の言葉を言われると……」

「……背中のお花達が、満開に咲き誇るんだって!」

「あとなんでも、"グラデシアのはな"……っていう綺麗な花束をあげると、姿が変わるらしいよ!」

コルニはここぞとばかりに、何処からか仕入れたウンチクをずらずら並べる。

そんな彼女はドヤ顔だった。

「はは、コルニは物知りだな」

「えっへんっ」

その無邪気な様を見て、レッドも可愛く思ったのか……。
 ▼ 114 mTQB7XkZdk 17/03/26 01:33:57 ID:39lKQTZM [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……そのしなやかな金髪に触れ、そして撫でようとした。

が。

「……っ」

瞬時にそれが出すぎた行動であることを知ったレッドは、慌ててその手を離す。

「?」

その彼の葛藤した様子を見て、コルニはハテと首をかしげた。

(……俺は、この子に対しどんな感情を抱いているんだ)

(さっきのお腹のことといい、何だか……)

……"この子に、触れたい"。

もしかして、そんなことを考えているのか。

だとしたら……。

「変態じゃないかッ!」

「レッド!?」
 ▼ 115 mTQB7XkZdk 17/03/26 01:34:39 ID:39lKQTZM [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……変態かどうかはさておいて。

レッドのコルニへの想いというのは、初めて出会った時と比べれば明らかに違ってきている。

"触れていたい"という感情なんて、まさに"ソレ"なのだ。

仲間を越えた別の何かを、彼女に求め始めている。

しかしレッドは、そんな己の願望に具体性を持たせて気付くことができない。

故に、もしや自分は変態なのではといった思い過ごしだって起こるわけで。

(……俺はコルニに、この気持ちを伝えたい)

(でも……どうやって)

苦悩する元・最強。

レッドは果たして、この複雑に揺れるこの想いを、どのようにしてコルニにぶつけるのか。
 ▼ 116 ゴジムシ@たわわこやし 17/03/26 08:06:10 ID:ZD5fxEpI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
元最強ってなんか悲しいな
 ▼ 117 カグース@セシナのみ 17/03/26 08:39:58 ID:CkrJm4O. NGネーム登録 NGID登録 報告
>>116
これから返り咲くんやで
 ▼ 118 ニノコ@ビスナのみ 17/03/26 09:32:20 ID:ryXCU6z. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>113
×グラデシア
○グラシデア

だったはず
 ▼ 119 ェリンボ@クチートナイト 17/03/26 09:51:36 ID:UbITouA6 NGネーム登録 NGID登録 報告
わかる!分かるぞその気持ち!
好きな娘には触れたいし抱き締めたいしチュッチュしたいもんな!
 ▼ 120 ロベルト@トレジャーメール 17/03/26 11:25:35 ID:8cQitrrw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 121 ッシード@アッキのみ 17/03/26 17:05:37 ID:D4OMhZ22 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>119
普通にキモくて草
 ▼ 122 ンガー@まひなおし 17/03/26 17:06:07 ID:D4OMhZ22 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>121
下げちゃった
上げ
 ▼ 123 mTQB7XkZdk 17/03/27 00:16:44 ID:TLeirQoA [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>118
これは気付きませんでした……
勘違いして書いてしまい、申し訳ありません
 ▼ 124 mTQB7XkZdk 17/03/27 00:17:15 ID:TLeirQoA [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……


……美術館での一時を経て、二人のミアレ歩き旅はいよいよ大詰め。

建物から出たレッド達は、大理石で出来た光沢ある階段を下り、再びストリートへ繰り出した。

そしてそこから少し南に歩き、その先にある開けた石畳の一本道へ出る。

この道は若干傾斜があり、進むごとに高度が増していくのが感じられる。

「ここを出れば、ノースサイド一帯の景色を一望できる高台に着くんだって!」

「今の時間なら、夜景がとっても綺麗なんだろうなー♪」

もうすぐ見れるであろう絶景に、早くも想いを馳せるコルニ。

軽快なステップで、石に靴を"タッ"と弾ませ、その姿はまるで幼い子供だ。

(それで、そこで良い感じのムードになったら……)

(……思いきって、告白するぞぉっ)
 ▼ 125 mTQB7XkZdk 17/03/27 00:17:52 ID:TLeirQoA [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
コルニのこの異様なまでの高揚には、理由があった。

かねてより今夜告白すると決めていたコルニは、今まさに来たろうとしている"その時"を前にして、改めて昂っている。

夜の美しき大都会を背景に、愛しの彼へ運命の告白。

一女子として、これが興奮しないわけがない。

(大丈夫!)

(今日みたいな日が来たときの為に、イメトレは日頃からバッチリしてきたんだから!)

テクテク歩きながらコルニは、ガッツポーズを組んで己にエール。

自分で自分を激励し、告白の成就を祈願する。

一方でレッドはというと。

(この先がいよいよ高台か)

(……今の気持ちをこの子に伝えるには、ちょうど良い場所か)

……彼は彼で、自分が抱きしこの不思議な感情を精算すべく、機を見計らっていた。
 ▼ 126 mTQB7XkZdk 17/03/27 00:19:06 ID:TLeirQoA [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
(コルニがこうして側にいてくれていると、凄く落ち着く)

(自分が自分でいられているような気がして、とても心地が良い)

この気持ちは、自分の愛するポケモン達と過ごしている時に感じるものとは少し違う。

コルニという一人の少女と接していることで、また別の安心感のような物に囚われるのだ。

今回、レッドがこのデート"まがいの"二人旅にコルニを誘ったのには、それを"自覚する"という目的もあった。

そして結果、その確信が持てた。

なので、この想いを今から直接コルニに伝えることで。

……胸のモヤモヤを、取り除く。

「あっ」

「着いた着いたっ!」

ようやく一本道を抜けた二人。

すると、彼らの潤んだ眼に映ったのは……。
 ▼ 127 mTQB7XkZdk 17/03/27 00:20:00 ID:TLeirQoA [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ピカァ〜ッ!」

……人智がもたらした電気と、宇宙が見せる星々が、互いの輝きを融合させて創り出した____まさに、"100万ドルの夜景"だった。

右も左も、上も下も光だらけ。

だけど、決して飽きることはない。

寧ろずっと、永遠に見ていられるのであろう。

特にこの……横に居る人と一緒なら。

「んっ」

と、コルニはここで突然。

「えっ____」

……レッドの手を取り。

「あそこの柵の所まで行こっか!」

半ば強引に、彼を誘導しようとする。
 ▼ 128 mTQB7XkZdk 17/03/27 00:20:58 ID:TLeirQoA [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……!」

この時レッドは、ある意味、一つの願望を叶えた。

それは、"彼女に触れること"。

特に手を繋げるなんて、まさに至福の極み。

既に心拍は最高潮だった。

「……ああ」

その声も、嬉しさのあまり裏返りそうで怖い。

だけど、この先の場所で絶対に伝えて見せる。

この、どうしようもない気持ちを。
 ▼ 129 mTQB7XkZdk 17/03/27 00:21:35 ID:TLeirQoA [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……よし)

ついにその地に立った。

彼女の手を、震えながらも握りながら。

吹き抜ける夜風の中、冷たい深呼吸で心を落ち着かせ。

「……コルニ」

彼女の、美しい青色の瞳をしっかり見据えて。

「話したいことがあるんだ」

「少し、良いかい?」

……ついに、その時へと迫る。
 ▼ 130 オル@しゅんぱつのハネ 17/03/27 05:36:48 ID:Y1Wp0AeE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほう
大会終わってからこうなると思ってた
 ▼ 131 ワーク@スーパーボール 17/03/27 10:24:07 ID:qnCrpzvg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コルニの死を乗り越えてレッドが覚醒…か…()

支援!
 ▼ 132 ガデンリュウ@とつげきチョッキ 17/03/27 11:21:38 ID:31ghSvds NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
普通に小説で欲しいw
支援!!
 ▼ 133 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:14:38 ID:KAqrV2kQ [1/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
一方、コルニからすれば、それは唐突な話の切り出しだった。

「えっ……」

プロポーズのタイミングをひたすら探っていた彼女の脳内に、突如として響いたレッドの声。

振り返ると彼は、いつになく神妙な面立ちでこちらを見つめていた。

それも、手を繋いだまま。

これじゃあ、まるで……。

(……も、もしかして)

(レッドの方から……っ!?)

……そうだとしたら。

(ちょっ……ま、まだ心の準備がっ)

本来は自分が言うはずだったその言葉を、レッドの方から言われたら。

果たして自分は、平静を保っていられるのか。

甚だ不安なところだが。

「……っ」

真剣なレッドの表情を見ていると、"逃げてはダメ"だと再確認させられる。

冷ややかな風が彼女の艶やかな金髪を揺らす中で、二人の時間は始まりを告げた。
 ▼ 134 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:16:01 ID:KAqrV2kQ [2/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……俺が落ち込んでいる時」

「君はいつも、俺の側にかけ寄って言葉をくれた」

「いつかの日も、そして今日も」

例えば、ショウヨウシティで繰り広げたザクロ戦の後。

勝者でありながら、レッドが自分の油断を嘆いたあの夜。

その時コルニは、彼女自身の失敗談も交えて彼を鼓舞した。

そして今日の敗北でも、コルニは優しくレッドを励ました。

そういった彼女の心遣いというのは、レッドの確かな心の支えになっていたようで。

「ありがとう、コルニ」

「君が居たから、俺はこの時まで気持ちが楽でいられるんだ」

その感謝の気持ちを、まずは思いっきり述べる。
 ▼ 135 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:16:41 ID:KAqrV2kQ [3/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あっ……うん!」

「そう思ってくれてるなんて、アタシも嬉しいよっ」

コルニは彼の言葉を受け、まるで"シェイミ"のように、内なる感情にグラシデアの花を咲かせた。

頬を染めて破顔し、モジモジと照れる。

そんな彼女の仕草一つで、レッドはまた心臓を揺らがさせられた。

(……か……可愛い、な)

"触れたい"の次は、"可愛い"。

いや……"可愛い"という感情自体は前々からもあった。

しかしなぜだろう。

この気持ちは、これまでのそれとは違う。

もっと深い意味がある。

だけど、今は彼女に見とれている場合ではない。

そろそろ本題に入らねば。

「……俺は」

「俺は君に対し、何か……"特別な感情"を抱いているかもしれない」

口元を揺らがせながらも、しかし重みを持たせた声色で、レッドは言葉を紡ぐ。
 ▼ 136 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:17:26 ID:KAqrV2kQ [4/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
「だけど俺には、その感情の正体が分からないんだ」

「自分の気持ちなのに、自分で分かっていない」

言いながらレッドは、"俺は何を話しているんだ"と思った。

こんな稚拙で、何が言いたいのかさっぱりな発言。

正直、もう恥ずかしくて冷や汗まで滴っている。

だが、コルニはそんな彼の声を黙々と聞いていた。

彼女は、レッドの話に不思議そうな表情を浮かべてはいるものの、決して彼から目を反らしていない。

常に、彼と目線を交わらせて、一直線に見つめている。

「……っ」

このコルニの真摯な態度は、レッドの羞恥心を少しばかり溶かした。

気を取り直して、彼は対話を再開する。

「……君がいてくれると、それだけで俺は、不思議と本当に励まされる」

「そういった"特別な感情"は、何故か君といる時にしか湧かなくて」

「だから今日……俺は、君を誘った」
 ▼ 137 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:19:10 ID:KAqrV2kQ [5/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
これはもう、端からすれば既に答えを殆ど言っているようなものだ。

特定の誰か、それも異性にしか抱かない"特別な感情"など、人間関係においては一つしかあるまい。

そしてその対象を、今宵の観光に誘ったということは、最早"そう"だとしか言いようが無いのだ。

だが、ここまで具体的に言葉を述べられて、なぜ彼は決定的な答えを求められないのか。

それはやはり、彼の数年にも及ぶ山籠り生活が影響してると言える。

思春期の直前の少年時代から、人とのまともな関わりを断絶していた彼。

恋愛感情など、久しく忘れてしまっていたものなのかもしれない。

だから、彼自身のコルニへの想いというのは、未だ名前を持たぬ妙な感情の一つにしか過ぎないのだ。

だが彼は、レッドはそれで終わりにしたくない。

終わりにしちゃ、いけない。

絶対に。
 ▼ 138 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:20:23 ID:KAqrV2kQ [6/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
「コルニ……!」

この気持ちの正体が分からないのなら。

だったらせめて。

「……この先」

今の己にある、確固たる願いを。

言えば良い。

「この先俺は、ずっと……」


「ずっと、君の側に……いたいんだ……っ!」


____言えた。

ついに、言ってしまった。

これで拒絶されたらどうしよう。

だけど、もう隠すのも嫌だった。
 ▼ 139 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:21:54 ID:KAqrV2kQ [7/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
コルニに触れたい、コルニに可愛いと言いたい。

こんな欲望が湧くぐらいなんだ。

少なくとも自分は、彼女とずっと一緒にいたいのは間違いないはず。

だから……言った。

では次は、コルニの答えだ。

彼女は____

「……アタシも」

「アタシもレッドと、その……」


「……いつまでも、一緒が良いな」


____受け入れた。

受け入れてくれた。

「……!!」

この時レッドにあったのは、ただ一つの素直な感想。

嬉しい。

嬉しすぎる。
 ▼ 140 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:24:30 ID:KAqrV2kQ [8/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……でもっ」

「えっ……?」

と、ここで但しを入れるコルニ。

レッドは心拍を増しながらも、彼女の話をしかと耳に収める。

「レッドは、答えが分からないって言ってたけど」

「アタシには……分かるよ」

「アタシも多分、レッドと同じ気持ちだから」

そう言うコルニの表情は、凛々しくも微笑んでいて。

「……教えてくれ」

そんな彼女の、靡くしなやかな金髪に、レッドは目を奪われないようにしながら、その答えを問う。

すると彼女は、瞬間____

「……っ!?」

____レッドの胸に、体ごと飛び込んで。

顔を埋めて。

ぎゅっと、抱き締めて。
 ▼ 141 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:25:45 ID:KAqrV2kQ [9/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
「"大好き"……ってこと!」


「レッド……好きだよっ!」


……とうとう、念願の告白を果たした。

「____!」

刹那、レッドは、彼自身の中で何かがほどけていくのを感じた。

"そうか"。

"俺はこの子が好きだったんだ"……と。

言われてもみれば、何故今まで気づけなかったんだろう。

もっと早くに気付いていれば。

「……ッッ!」

こんなにも涙が出ることなんて、なかったのに。

幸せだ。

この最高の夜景の中、愛しい少女に抱きつかれ。
 ▼ 142 mTQB7XkZdk 17/03/28 00:26:24 ID:KAqrV2kQ [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……俺も」

「俺も君のことが好きだ……コルニッ!」

自分のありったけの想いを、包み隠さず伝え。

彼女を……抱き止めることが出来たのだから。

ミアレシティの夜。

この高台にて、二人は寄り添い慕い合い。

互いにその愛を……結んだのだった。
 ▼ 143 オラント@レンブのみ 17/03/28 00:28:27 ID:r48/U20s NGネーム登録 NGID登録 報告
良いなこういうの
 ▼ 144 ャモメ@ヤドランナイト 17/03/28 00:33:16 ID:K5drChoY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 145 タモン@ドラゴンメモリ 17/03/28 00:46:14 ID:I2tP1uIk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
泣いた
支援
 ▼ 146 シマリ@はかせのふくめん 17/03/28 06:27:38 ID:moOOqoKw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うわああああああ
レッドが自分の感情を理解できてないところがやけにリアルだ

支援
 ▼ 147 ッポ@ねばりのかぎづめ 17/03/28 07:12:52 ID:poFfrwoI NGネーム登録 NGID登録 報告
良いですねぇ
 ▼ 148 ーナイト@ダークメモリ 17/03/28 07:35:36 ID:sbzTc1qQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!!
 ▼ 149 ーケン@ねらいのまと 17/03/28 07:36:14 ID:NfqTEl2o NGネーム登録 NGID登録 報告
二人がここまで漕ぎ着けてくれて一読者と嬉しい限りです
ここまで失踪しないでくださり本当にありがとうございます
支援
 ▼ 150 ンペルト@ひかるおまもり 17/03/28 09:14:23 ID:MtjEtvLQ NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
このSSが生き甲斐になってます。
 ▼ 151 タグロス@マゴのみ 17/03/28 21:03:47 ID:lmR46yZ6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
好きですねぇ
 ▼ 152 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:10:43 ID:fXgLfajg [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「おおっ……盛り上がってるね」

一夜が明けたミアレのメインストリート。

そこをスタスタと歩くレッドは、辺りを見回してそう感想を述べた。

横を振り向くと、料理やら遊戯やらの屋台が軒を連ね。

反対を振り返ると、風船を持って親に連れられる子供の微笑ましい姿や。

恋人や友人と一緒に進む者と、かたや一人で気ままに歩む者。

色んな人がそれぞれこの道を行くが、その方向は皆同じだった。

そう。

本日はいよいよ、PWT開催日。

一同が向かっているのは勿論。

PWT試合会場。

名を、"ミアレスタジアム"だ。

そしてレッド、カルム、コルニ。

この三人もまた、ミアレスタジアムへ向けて足を進めていたのだった。
 ▼ 153 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:11:31 ID:fXgLfajg [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「レッドもカルムも、今日は頑張ってねっ!」

コルニの応援に、レッドとカルムは"ああ"と一様に頷く。

「しかしまあ……昨日の夜で二人が付き合うことになったなんてな」

「いやはや、おアツいこったねぇ」

ニヤけ顔のカルムが彼らをからかうと。

「も〜、カルムってば」

「改めてそう言われると、ちょっと照れるな……」

レッドとコルニは、互いに羞恥で赤くなった顔を見やって、笑いを溢した。

あの夜、二人して好意を告げ抱き合った彼らは、ついに恋人同士という間柄にまでなり。

心を深くまで許し合う、仲間さえ越えた絆と関係で固く繋がった。

その事実を知ったカルムにも、自然と微笑みが生まれる。

これからレッドとカルムは、代表として戦いに身を乗り出すというのに。

ここを歩く一行の雰囲気は、何だか和やかで。
 ▼ 154 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:14:25 ID:fXgLfajg [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「にしてもコルニが彼女かー……なんか、毎日退屈しなさそうだな」

「ほ、褒めてるよねっ?それ」

「ははっ、確かにいつも元気な君が一緒なら、日々が楽しいだろうね」

「ピカッ!」

「レッドまで、もー……ふふっ」

和気あいあいとしたムードが、皆の緊張を忘れさせて支配していた____

____その時だった。

「よおレッド!」

「お前……ようやくコルニとくっついたんだな!」

……橙の、はねた髪の毛が特徴的なこの青年。

グリーンが、突如として三人の前に姿を現した!

「グリーン!」

「……そういえば、今までどこに行ってたのさ?」

特訓一日目から、"ワタルに会う"とか言い残してレッド達の前から去ったグリーン。

「……忘れられてんじゃねーか」

あれから色々、特訓に集中してたこともあって一時的に存在感が失せてしまっていたが、今こうして再び彼らと相見えた。
 ▼ 155 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:15:03 ID:fXgLfajg [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
それも今度は、レッド達と共に旅する仲間としてではなく……。

「ま、良いさ」

「とにかく"今日は"、負けねーからな」

……違う立場として。

「えっ?」

レッドが、このグリーンの意味深な台詞に問いかけると。

「____久しぶりだね、レッド君」

もう一人、横から別の男が。

久方ぶりの挨拶を述べて参上した。

「……!?」

「貴方は……ッ!」

その男は赤髪で、グリーンよりもはね上がった髪型をしており。

落ち着いた口調ながらも、威厳溢れる黒きマントを背に羽織っていて、かつてない貫禄を纏っている。

この風貌の男を、レッドは前に見たことがあった。
 ▼ 156 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:18:29 ID:fXgLfajg [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
それはいつか、レッドがカントーのポケモンリーグに初挑戦した時のこと。

この男はその際、四天王最後の一人として、道を往くレッドの巨大な壁となった。

"ドラゴン使い"の異名を持ち、使うポケモン達の攻撃力は抜群を誇る。

その名も。

「"ワタル"……さん……!?」

「ピカー!?」

PWT、カントー・ジョウト代表にして。

現役のカントーリーグチャンピオン。

この"ワタル"の名は、レッドの不意を突いて見事に驚かせ。

また、カルムとコルニの耳にも確かに響き渡った。

「あの人がワタルか……なるほど」

(わわっ……本物のチャンピオンだっ!)

カルムは、これから戦う相手を見て密かに戦きを呟き。

かたやコルニは、そのカントーポケモンリーグの重鎮を目の当たりにし、口を半開きにして怯みを露にする。

それだけ、二人にとってもワタルという男は知名度が高く、崇高なポケモントレーナーであり。

これと対峙したことあるレッドとピカチュウでさえも、未だ色褪せぬかつての圧倒された記憶が鮮明に甦る程
 ▼ 157 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:19:07 ID:fXgLfajg [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし、そのワタルがPWTの代表選手であることを、レッドはまだ知らない。

「ど……どうしてワタルさんが、カロス地方に?」

なのでレッドが、真相を知るべく彼に聞くと。

「おや……知らないのかい?」

「俺は一応、カントーとジョウトの代表選手として、PWTに出場するんだけど」

余裕に満ちた笑みと、背丈が劣るレッドを見下ろす目線で、その事実を教えた。

「……!」

ここでレッドは、改めてこのPWTが、各地方を上げての大きな大会であることを再度思い知らされる。

ワタル程の実力者がただの一選手として参戦する、とんでもない祭典なのだな……と。

が、そこでレッドは一つの疑問を手にした。

それは。

「それなら、貴方のパートナーとなるトレーナーはどこに____」

……"いるんですか"。

そう問う前に、レッドは気づいてしまった。
 ▼ 158 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:20:13 ID:fXgLfajg [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……!」

ふと横を見ると。

これ以上なく、カントーチャンピオンのワタルに相応しいパートナーがそこに居たのだ。

考えても見ればその人は、並みいるカントーのジムリーダーの中でも"最強"と称えられる歴戦のポケモントレーナー。

日頃から行動を当たり前のように共にしていたために、その肩書きを忘れてしまっていたが。

いざ思い出してみると、やはり彼は強敵でありライバルなわけで。

「____そうか」

「そりゃ、お前だよな……」

「……グリーン!」

瞬時に悟ることが出来た。

ワタルのパートナーを務めるのは……。

……務められるのは、グリーンしか居ないと!

……が。
 ▼ 159 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:20:47 ID:fXgLfajg [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「うっそぉっ!?」

「グリーンがワタルさんのパートナーなの!?」

「ピカピィィッ!?」

他方コルニとピカチュウは、想像以上の凄まじい驚きを見せ。

「……そんなにオーバーに驚くこと無いだろ、泣くぞオイ」

複雑な心境のグリーンだった。

「はは……カントー最強のジムリーダーとチャンピオンが相手かよ」

「これは勝ち進むのが厳しそうだな?レッド」

一方カルムの、この他人事のような半笑いの質問にレッドは。

「……だけど、勝つしかないだろ」

勝利への意向を、代表の二人を前にして堂々と示した。

「ほう……随分な余裕じゃないか」

ワタルは、その彼の度胸に一目置くも、同時に。

「だが、こちらとしても舐めてもらっては困る」

「君があの山で籠っている間にも、俺はポケモン達と共に幾多の死線をくぐり抜けてきたからね」

対抗意識剥き出しの、迫力ある威圧をかます。
 ▼ 160 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:23:02 ID:fXgLfajg [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ッ!!」

この時コルニは、蛇に睨まれた蛙のように、全身を戦慄によって震わせた。

(こ……この人……)

(何となく分かってはいたけど、相当やりそうだなぁ)

(レッドは昔、こんな人とまともに戦って勝ったんだね……)

そんな強い彼氏を持って嬉しいような、半分恐ろしいような。

だけど、誇らしいことは間違いない。

そしてそれでこそ、応援しがいがあるというもの。

また、コルニのその期待に応えるようにレッドは。

「死線をくぐって来たのは、俺達だって同じです」

「負けるつもりは無いので……よろしくお願いしますね」

「ピッカァチュ!」

あまりにも強気すぎる態度で打って出た。

この、以前とはまるで別人のような彼の言動に、グリーンとワタルは酷く意表を突かれる。
 ▼ 161 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:23:37 ID:fXgLfajg [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「おい……何かお前、人が変わってね?」

これまでは若干控え目な面があった彼が、今日は何とも肝の据わっていること。

自分が居ない数日の間に何があったのだと、グリーンは不思議になるばかりだった。

一方で、久方ぶりのワタルからしてみれば、このレッドの心の変化は最早"豹変"と呼ぶに相応しく。

(……おいおい)

(また一段と化け物になったんじゃないか……?この子は)

昔日に挑戦者として現れた時よりも、遥かに高く強い覇気に。

思わず、恐怖さえ覚えた。

しかしカルムは、レッドのこれを"妥当な成長"と受け止める。

(コルニという一人の"大切な者"が増えたおかげか、レッドの心が芯から強くなったような気がするな)

(今のレッドの、この何者にも臆さない心の強さは、本戦においても重要な意味を持ってくる)

(成長したな……レッド)

また、コルニは寧ろ、そのレッドの勇姿に。

(……カッコ良い……っ!)

なんとまあ、初々しいことに惚れ惚れしていたのであった。
 ▼ 162 mTQB7XkZdk 17/03/29 00:24:17 ID:fXgLfajg [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「じゃあ行こうかコルニ、カルム」

「うんっ!」

「ああ」

と、レッドは二人を連れて会場へ。

その自信に満ち溢れた後ろ姿を、グリーン達は驚愕しながらも見送った。

「……けっ、彼女が出来たからって調子に乗りやがって」

「いや僻むなよ……親友だろ?」

「親友である前に、俺達はライバルっすよ」

"あっ、どう見ても僻みだ"と、ワタルは胸中にて溢す。

「……まっ、ああでなくちゃ張り合いがねえってモンだぜ」

「目にモノ言わせてやっからな……レッドッ!」

グリーンは、今日の敵目掛けて、威勢良く吼えた。

それぞれの選手達の、PWTに賭ける想いが交錯する中。

決戦の刻は、まもなく訪れようとしている……!
 ▼ 164 リボーグ@きぼんぐり 17/03/29 00:28:42 ID:rdGnrpPQ NGネーム登録 NGID登録 報告
いったいどれ程の強者達がいるのか
 ▼ 165 ードー@きのみジュース 17/03/29 00:54:51 ID:MqAFFWjc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
初期からずっと見続けてるけどここからの展開が全く予想出来ない...
 ▼ 166 ラッキー@もうどくプレート 17/03/29 02:20:45 ID:tzapI2TA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「強い彼氏」って響き良い!!
支援!!!
 ▼ 167 ャローダ@ピジョットナイト 17/03/29 07:11:49 ID:faNSSKxc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いいねいいね
頑張れグリーン
 ▼ 168 ッチャマ@こううんのおこう 17/03/29 07:20:28 ID:xtOR2Puc NGネーム登録 NGID登録 報告
期待
 ▼ 169 ラチーノ@ひこうのジュエル 17/03/29 23:36:42 ID:pZC96YvY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
しばらく読んでなかったから一気によんだけど、やっぱいいなこれ
で、次回作はなにを?
 ▼ 170 mTQB7XkZdk 17/03/30 00:46:32 ID:Vb.bcHK2 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「俺らは、選手用出入り口からスタジアム入りする」

「ここでコルニとはお別れだぜ、レッド」

一つの岐路に立ち、カルムはこの地点でレッドとコルニの行く手が別々になることを教えた。

と言うのも、彼らは今まさに"ミアレスタジアム"の入り口の前に居るのだが……。

コルニのような一般ギャラリーは正面の自動ドアから入場し。

対してレッド達のような出場選手は、この建物を右へ少し回った所にある専用の通路から通らなければならないのだとか。

「そっか……それじゃあ、二人とも頑張ってきてねっ!」

「アタシは微力ながらだけど、観客席から思いっきり応援するよ!」

コルニは、レッドと離ればなれにならなければならない必然を惜しみつつ、はりきったガッツポーズで彼らを見送る。

「ありがとう」

「大好きな君が応援してくれるだけで、俺達はどこまでも勝ち進める」

「ピッカァ!」

この彼女の元気な支援を受けたからには、彼氏たるレッドとて応えなければ男じゃないだろう。

若人らしく生き生きとした返事で、コルニの期待に添えて見せるとピカチュウと共に誓ったのだった。
 ▼ 171 mTQB7XkZdk 17/03/30 00:47:09 ID:Vb.bcHK2 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして。

「コルニっ」

レッドはここで急に、コルニの手を優しく握り。


「____行ってくるよ」


それだけ微笑みかけて言い残すと、今度はまた突然に後ろへと振り返って。

そのまま……去ってしまった。

「あ……おい!」

カルムもそんな彼を追って、付いていく。

気付けばコルニは、スタジアムの入り口の前で一人立ち尽くす格好になっていた。
 ▼ 172 mTQB7XkZdk 17/03/30 00:47:42 ID:Vb.bcHK2 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……レッド」

彼女は心底名残惜しそうに、その愛しい名を呟く。

彼が繋いだ手のひらの温もりは、とても心地の良いもので。

だけどもう、今日は暫くその温度を再度味わうことは叶わない。

しかし。

「……よぉっし!」

「アタシも目一杯、はりきってレッド達を応援するぞー!」

それでも彼女は素早く切り替え、会場入りをすべく、自動ドアをくぐり抜けた。

それが、コルニのすべきことだから。

「楽しみだなぁ……っ!」
 ▼ 173 mTQB7XkZdk 17/03/30 00:48:51 ID:Vb.bcHK2 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「……なあ、あれだけで良かったのか?レッド」

他方、これから暫く会えないコルニとの時間をあっさりと終えてしまったレッド。

そそくさと歩く彼にようやく追い付き横に並んだカルムは、その事について問い質した。

するとレッドは。

「あの子が、その……あんまりにも可愛いから」

「なんだかこう……依存してしまいそうで」

……なんとも不器用なことに、そんな理由だったらしく。

これにカルムは、大きな溜め息を吐いて呆れ返ってしまった。

「あのな……付き合ったばかりのカップルが何言ってんだ」

「確かに度を過ぎた依存は良くないが……」

「それでお前達の気持ちに無理矢理蓋してたら、そもそも本末転倒なんだよ」

この軽く説教じみたカルムの口調に、レッドは"確かに……"と、若干の後悔を表情にて浮かばせた。
 ▼ 174 mTQB7XkZdk 17/03/30 00:50:11 ID:Vb.bcHK2 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ま……でもアレか」

「女の子と初めて付き合うんじゃ、そういうのも多少は無理ないか」

と、カルムもレッドの気持ちに一定の理解を示したことでで、話がそこで落ち着き始める。

が、このカルムの発言に。

「……んっ?」

レッドは"もしかして"と思った。

そして、聞いてみた。

「ねえ、もしかしてカルムにも____」

「____付き合ってる人がいたり……?」

この少し踏み入った質問。

レッドもレッドで後ろめたさはあったものの、気になったものでそのまま口から出てしまった。

けれどもカルムはそれを失礼とは捉えず、寧ろ気さくな笑みで。

「正確には"付き合ってた"、だけどな」

その事実が既に過去のものであることを、なんにも意に介することなく述べた。
 ▼ 175 mTQB7XkZdk 17/03/30 00:50:42 ID:Vb.bcHK2 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あっ……そ、そっか」

やっぱ聞いちゃいけないこと聞いちゃったかなと、レッドは申し訳なくてそれ以上の言葉が出ない。

「ははっ、別に気にしなくて良いって」

「昔の恋人のことなんか……どうでも良いからさ」

カルムは笑ってそうフォローを入れたが、レッドには何となく分かっていた。

カルムの"それ"が、悲痛な思い出であろうことを。

「おっ、そろそろ見えてきたぜ」

「あそこに警備員が居るから、適当に挨拶して入るとすっかね」

「……そうだね」

この時レッドは、"人と付き合うこと"の重みを、少しではあるが感じ取った。

そして、同時に思った。

コルニには、絶対に悲しい思いをさせてはならないと。
 ▼ 176 mTQB7XkZdk 17/03/30 00:51:50 ID:Vb.bcHK2 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……まずは、今日の戦いを無事に勝ち抜いてみせる)

(そしたら今夜はまた……彼女とゆっくり過ごそう)

そうだ。

依存云々なんて変なことは考えず。

恋い焦がれる彼女ともっと一緒に居たいって、正直になるべきだ。

そう最初に告白したのは、他でもない自分な訳だし。

何も悩む必要なんてない。

だけど、今はとりあえず……。

「……勝つよ、カルム!」

「勿論だ、レッド!」

「ピッカァ!」

……もうすぐ来たる激戦に、集中することだ!
 ▼ 177 ンバドロ@オーキドのてがみ 17/03/30 03:48:20 ID:lmFk/wYA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ついに始まるのか…
支援
 ▼ 178 イル@ネストボール 17/03/30 07:08:39 ID:CgVS5t4c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カルム本当良いキャラしてるわ〜wこの二人には是非とも優勝してもらいたい! 支援!!
 ▼ 179 ンドロス@リュガのみ 17/03/30 07:14:26 ID:pE5Cs8DQ NGネーム登録 NGID登録 報告
元カノはセレナか?
まさかサナでは・・・
 ▼ 180 リル@とんでもこやし 17/03/30 16:17:07 ID:hSI.AVnI NGネーム登録 NGID登録 報告
良いねえ
支援
 ▼ 181 クノシタ@こおりのいし 17/03/30 22:12:58 ID:zN/7sses NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>179
そういえばSM主人公はサナとカルムの子供説が一時期あったな
 ▼ 182 mTQB7XkZdk 17/03/31 01:14:56 ID:MED/Jlwk [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……"選手様控え室"。

そう記されたプレートが貼ってあるドアが、まるで二人を待ち構えていたかのように、そこにあった。

それはドアノブの無い自動式扉で、今彼らがいる位置からもう半歩前に出れば作動するだろう。

レッド達はそれぞれ息を調え、心の準備を終えた。

いよいよこのドアの先は、各地方の英雄達が割拠する超常的な世界。

十分に覚悟を結集させて、臨むべし。

「……行こうか」

「さてさて……」

いざ、勇猛な一歩を踏み出して。

カロス代表・レッドとカルム。

ついに彼らは、強敵達のいる控え室へと突入した……!
 ▼ 183 mTQB7XkZdk 17/03/31 01:15:37 ID:MED/Jlwk [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「こんちゃーすっ」

(え、軽っ)

先程までの緊迫した二人の空気感が、カルムのその一言によって一気に壊れた。

明らかにタメに近い彼の挨拶は、控え室の中にて軽快に響き。

そして、周囲の視線をこちらに引き寄せた。

すると。

「あら……こんにちは」

「貴方達は……カロス代表の方達ね?」

数いたトレーナー達の中から、一人の大人の女性が、カルムの声に反応してくれた。

その人は長髪で、コルニのそれよりももっと色味の強い金色を帯びている。

全体的な服装は漆黒であしらっており、羽織っているコートは彼女の大人らしい魅力を最大限に引き出していると言える。

どこか妖艶な雰囲気を漂わせるこの女性もまた、PWTの参加者だ。
 ▼ 184 mTQB7XkZdk 17/03/31 01:43:27 ID:MED/Jlwk [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
レッドは、初めてこの人の顔を見るため知らなかったが。

カルムは、この人の名を知っていた。

それは決して、二人が知り合いだからというわけではなく。

目の前の女性が、とんでもない超大物の有名人だったからである。

「どうも、お初にお目にかかります」

「俺の名前はカルム」

「そして貴方が、シンオウ代表でチャンピオンの____」

「____"シロナ"さんですね?」

……"シロナ"。

それが、この女性の名前。

"シンオウ"という地方を代表して来たという彼女の、ポケモントレーナーとしての地位は……。

……シンオウポケモンリーグ・現チャンピオン。
 ▼ 185 mTQB7XkZdk 17/03/31 01:44:30 ID:MED/Jlwk [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
(こ……この人が、シンオウ地方のチャンピオン!?)

レッドは、早速現れた大御所を前にして、これ以上ない緊張を露にした。

確かに言われてみれば、このシロナという人物は、普通とはまるで違うオーラを身に纏っている。

王者の貫禄というか、そういった場数を踏んできた者独特が醸し出す雰囲気が、彼女にはある。

このレベルの猛者達が他にも大勢いると思うと、レッドは身震いが止まらなかった。

「そちらの貴方は?」

と、そんなこんな考えていたら、今度は自分が名前を聞かれた。

「あ……は、はい」

「俺はレッド……カルムのパートナーです」

「今日は、よろしくお願いします」

若干声がどもってしまったが、一応自己紹介と挨拶は果たせた。

「ふふ、こちらこそどうぞよろしく」

しかしこのPWTに出るからには、彼女とて一人では無いはず。

シロナのパートナーは、一体どこに居るのだろうか。
 ▼ 186 mTQB7XkZdk 17/03/31 01:45:32 ID:MED/Jlwk [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
すると。

「やあ!君たち」

「このわたしも話に混ぜてくれないか!」

背後から、突如として男性の声が。

「わぁっ!?」

驚いたレッドは慌てて後ろを振り向いて、声の主と図らずも対面した。

見るとその男もまたシロナと同じように金髪だが、色合いは比較して少し薄め。

歳は、レッドの父親とそう大差ないだろうか。

背中に"王"と刺繍された何とも個性的な服を来ているが、その名に恥じないぐらいの品格のようなモノも同時に感じられる。

突然二人に話しかけてきたこの男の正体は。

それは、次のシロナの言葉によって明かされることとなる。

「あらっ」

「"クロツグ"さん、お帰り」
 ▼ 187 mTQB7XkZdk 17/03/31 01:46:23 ID:MED/Jlwk [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
"クロツグ"。

その名を聞いてカルムは。

「……なんと」

「あの"タワー・タイクーン"のクロツグさんですか!」

……"タワー・タイクーン"。

その聞き慣れない二つ名を口にして。

「ということはもしかして、クロツグさんがシロナさんのパートナー……?」

そう予測した。

クロツグは。

「いかにも!」

「このクロツグこそが、シンオウ代表たるシロナさんのパートナーさ!」

堂々たる態度で、その事実を声高らかに認めたのだった。

「"タワー・タイクーン"……?」

この皆の会話に、レッドだけがついていけていない。

山籠りの情報不足が、ここに来て仇となってしまっている。

"タワー・タイクーン"というのは、果たして如何程の称号なのだろうか。
 ▼ 188 mTQB7XkZdk 17/03/31 01:50:22 ID:MED/Jlwk [7/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
本日3月31日、他SS様のスレッドにて本SSの文を投稿してしまうという誤爆をしてしまいました。

改めまして、スレ主様や読者様の方々にお詫び申し上げます。

本当に、申し訳ありませんでした。
 ▼ 189 ブト@せいしんのハネ 17/03/31 03:43:26 ID:WJTRM3ic NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それはどんまいです
 ▼ 190 タドガス@ガオガエンZ 17/03/31 03:56:30 ID:AtnunLDw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
誰にでも間違いはあります、今度から気を付ければ良い話です!って事で支援させて頂きますね!!
 ▼ 191 ビット@きあいのタスキ 17/03/31 05:32:10 ID:TFDnxyMQ NGネーム登録 NGID登録 報告
まぁスレ間違うのたまにあるし仕方ないね


てことで支援
 ▼ 192 クリン@うつしかがみ 17/03/31 07:29:27 ID:DqlPh/PE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワーオ!
まああまり気に病まないでこれから頑張ってください
ということで支援
 ▼ 193 フレシア@コンペボール 17/03/31 14:41:29 ID:viwsDRxA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 194 シズマイ@ラティオスナイト 17/03/31 14:48:12 ID:MNXG0EQA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 195 mTQB7XkZdk 17/04/01 00:02:56 ID:Ye43tEnA [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……そこは、各国から集いに集った猛者達が己の力を試す場所。

その名も"バトルフロンティア"。

今のところ二地方にて展開している、トレーナー達のもう一つの戦場だ。

多彩な仕掛けを備えたバトル施設が幾つも密集しているのが最大の特徴である。

その各施設には、"フロンティアブレーン"と呼ばれるいわぱ"ボス"的存在がおり。

その中でも群を抜いた"最強"と呼ばれるのが、"タワー・タイクーン"なのだ。

そして、シロナ達の拠点であるシンオウ地方のタワー・タイクーンが、このクロツグ……という訳らしい。

一通りクロツグから話を聞いたレッドは、感嘆の息を大きく吐いて彼を称した。

「凄い人だったんですね……!」

「ピカァ!」

レッドは、バトルフロンティアという場所にも興味を持ったのは勿論。

そこに王として君臨するクロツグに会えて、もう感激するばかり。
 ▼ 196 mTQB7XkZdk 17/04/01 00:04:22 ID:Ye43tEnA [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
リーグチャンピオンとはまた違うその"最強の形"は、彼に大きな衝撃を与えたのだった。

「はっはっ!なんだかなぁ!」

「そこまで褒められたらわたしも照れてしまうよ!はっは!」

おまけに性格もこのように気さくで、レッドには凄く親しみやすい。

会って数分、二人は早くも意気投合をする。

「もうクロツグさんったら、相変わらずどこか子供っぽいのよね」

傍らでシロナは、その光景を微笑ましく思ったのか、不意にそう溢して破顔した。

「いやいや、彼はとても尊敬できるトレーナーですよ」

「勿論、シロナさんも」

対してカルムは、トレーナー界の超大物に敬意を表して一笑。

「ふふ、ありがとね」

シロナもクロツグも、とんでもない実力者でありながら人格者だ。

そんなシンオウコンビは、レッド達の目にも特に輝いて見える。

決戦の前ではあるが、暫し和やかな時間が四人の間で流れていた____

____その時。
 ▼ 197 mTQB7XkZdk 17/04/01 00:05:10 ID:Ye43tEnA [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
再び奴が。

「ボンジュール!」

「これから敵同士で戦うってのに、随分仲が良いな!」

「あ、グリーン」

グリーンとワタルのタッグも、控え室入りを果たした。

そして開口一番にそんな挑発的な態度を取ったグリーンだったが……。

「おー!アイツはレッドの友達か?」

「ええ、まあ」

クロツグが、新しく入ってきた彼がレッドの友人であることを確認すると……。

「そうかそうか!わたしの名前はクロツグ!」

「そこの君も、どうぞよろしく頼むな!」

……最早馴れ馴れしいぐらいのノリで、グリーンにも友好を求めてきた。

(うわっ、俺の嫌いなタイプだわこのオッサン)

まず馬が合わないだろうなと、グリーンは心底嫌そうな表情を浮かべる。
 ▼ 198 mTQB7XkZdk 17/04/01 00:06:05 ID:Ye43tEnA [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ん……後来てないのは、アローラ代表の二人だけか」

一方でワタルは、現在の控え室を一望してそう言った。

まず、カントー・ジョウト代表のグリーンとワタルが居て。

次にホウエン代表。

銀髪で黒いスーツ姿の、飛び抜けた美青年の姿があった。

彼こそが、ホウエンリーグチャンピオンの"ダイゴ"。

世界にその名を轟かす大企業"デボン・コーポレーション"の御曹司でもあり、女性からの支持が専ら高い。

また、パートナーであるもう一人の青年も、彼の隣に見える。

しかしその服装は何とも大胆で、奇抜で……前衛的だった。

白を基調としたヘソ出し衣装が、これまた乙女のハートをガッチリ掴む仕様となっている。

そんな彼の名前は"ミクリ"。

ホウエン地方のジムリーダーの一人を務めているが、その実力はチャンピオン級だとか。

ちなみに余談だが、ダイゴとは親友という親しい間柄のようで、TVのCMなどで二人が共演することも珍しくないと言う。

どちらもシロナやクロツグに見劣りしない敏腕トレーナーだ。
 ▼ 199 mTQB7XkZdk 17/04/01 00:06:53 ID:Ye43tEnA [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして、その二人こそがシンオウ代表。

もう、その強さについては説明するまでもないだろう。

では、お次はイッシュ代表の二人。

まずチャンピオン枠だが、これは意外なことに……。

……幼女。

褐色の美しい肌と紺色の長髪の、まだ年端もいかないであろう幼女であった。

彼女の名は"アイリス"。

つい最近チャンピオンに就任したばかりというが、前述の熟練のトレーナー達を前にして、物怖じをしている様子はない。

寧ろ、遠目で見ても彼女は元気そうに振る舞っていた。

横にいるパートナーらしき青年と、談笑しながら。

「……?」

ふとレッドは一人、そのイッシュ代表の方へと目をやる。

視線は、アイリスの隣にいる青年へと向けられていた。
 ▼ 200 mTQB7XkZdk 17/04/01 00:07:40 ID:Ye43tEnA [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
外見としてその人は、まず顔は白く整っていて、イケメンと言っても差し支えは無い。

緑髪の長髪で、後ろの方で髪を結んでいる。

白いキャプに白いシャツ、下はベージュのチノパンと、どこかの誰かとは違って非常に落ち着いたファッションだ。

だが、ただ一つ。

彼を凝視するレッドが気にかけた点があった。

それは……。

(……あの人)

(なぜだろう……あの人からは"生気"を感じない)

……失礼な話ではあるが。

彼からは覇気や気配というものが一切感じられないということ。

それは単に、彼の影が薄いだけなのか。

それとも。
 ▼ 201 mTQB7XkZdk 17/04/01 00:08:14 ID:Ye43tEnA [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ねえ、カルム」

「あの帽子を被っている男の人は……?」

取り合えず素性が気になったレッドは、カルムに質問を呈した。

が。

「……ん?」

「いや……俺もアイツは良く知らないな」

「ていうか、誰だ?」

……なんと、知らないと言うのだ。

仮にも代表入りしているポケモントレーナーなのに。

「何だって……?」

まるで謎に包まれたあの青年。

彼は一体、何者なのだろうか……。
 ▼ 202 グトリオ@じゃくてんほけん 17/04/01 00:10:32 ID:BsRioh9M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
は!?N!?
 ▼ 203 チュル@ファイヤーメモリ 17/04/01 00:17:56 ID:QF/Eny0. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おーw益々面白くなって来た!
支援!!
 ▼ 204 マゲロゲ@プロテクター 17/04/01 00:20:33 ID:Ye43tEnA [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 205 リーセン@おはなのおこう 17/04/01 00:20:59 ID:ZWkoyw1U NGネーム登録 NGID登録 報告
え、Nですか…

ホウエンはミツル君来るかなーと思ってたけど外した
 ▼ 206 フォクシー@あいいろのたま 17/04/01 00:24:18 ID:C/Aru9t2 NGネーム登録 NGID登録 報告
ええ……Nが無名とか情弱すぎませんかね……
 ▼ 207 ットロトム@ふっかつそう 17/04/01 06:45:49 ID:vFdIeZBY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 208 メハダー@しずくプレート 17/04/01 09:37:01 ID:JTIeLkpA NGネーム登録 NGID登録 報告
トウエヌに期待したワイ無事終了
 ▼ 209 ピナス@カクトウZ 17/04/01 10:16:41 ID:NXjpNEBk NGネーム登録 NGID登録 報告
伝説は渡した後だから問題は無いな
 ▼ 210 チリス@ダークメモリ 17/04/01 22:46:16 ID:/cBoPiPA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>209
むしろカロス組とホウエン組はメガ進化あるからゼクレシぐらいいてちょうどいいのでは?
アローラもZ技使うし
 ▼ 211 ドリーノ@はつでんしょパス 17/04/02 13:50:25 ID:tAGZUoWU NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 212 mTQB7XkZdk 17/04/02 22:58:07 ID:zOhp4jio [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ちなみに、パンフレット等の関連資料を見ても、彼の素性は判明しない。

なぜならそれは、彼がイッシュ代表のアイリスに"スカウト"された選手だから。

と言うのも、代表選手はパートナーを、当日のエントリー締切ギリギリまでじっくり吟味してスカウトすることが出来るようになっている。

そのため、パートナーとなる選手の情報は、大会が始まるまでは不確定な物とされ、資料に載せるといったことは出来ないのだ。

更にあの青年は、レッドは勿論、この手の情報に詳しいカルムでさえ知らないレベルの無名のポケモントレーナー。

よって恐らく、他の人に訪ねてみても期待した返事は帰ってこないだろう。

故に彼の名前などは、彼に直接聞くでもしない限り、開会式が始まるまでは一切知る術が無いわけで。

しかし、そんな名も無き存在の彼が何故、今日この場に代表選手としてイッシュチャンピオンたるアイリスに呼ばれたのか。

彼にはそれだけの強さと、確固たる所以があるのか。

だとすれば、レッド達としては非常に気になる所である。

しかし。

「……でも、今から声をかけるのは時間的にアレだな」

「確かに、もうそろそろだね」

二人はここで、一つのシンプルなデザインの壁掛け時計に注目する。

すると時刻は、午前の11時55分を指していた。

一方で、開会式の最終準備が整うのは、ピッタリ正午の12時予定。
 ▼ 213 mTQB7XkZdk 17/04/02 22:58:58 ID:zOhp4jio [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
つまりあと5分程でこの待機部屋を出て、式に向かわなければならないわけなのだが……。

「アローラ代表はまだ来ないのか」

そう。

アローラ代表の二人が、未だに姿を現していないのだ。

その事が気がかりになり始めたレッド達。

____と。

その時だった。


「____もう!」


「ミヅキさんが迷子になったせいで、危うく遅刻になるところでしたよ!」

「うぅ……ごめんね、ゴーくんっ」

____来た。

ついに来た。

初代アローラリーグチャンピオンの少女・ミヅキと。
 ▼ 214 mTQB7XkZdk 17/04/02 23:00:05 ID:zOhp4jio [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
そのパートナーにして、ジョウトとカントーの二つの地方を遍歴した経験を持つ____

____ゴールド。

アローラ代表の二人が、ようやく。

この控え室に、入室した。

「____ッ!!」

入り口付近から聞こえてきたその声に、レッドはまず固まる。

静止する。

声を詰まらせる。

そして、刹那に思い出す。

数年前の、あの雪山での決戦を。

あの日レッドは、山籠り生活で唯一の敗北を喫した。

"ゴールド"という、自分よりも幾つか年下の少年に。

今でも、当時のことは鮮明に覚えている。

というか、忘れる筈がない。

自分を負かした数少ないトレーナーの内の一人なのだ。

風化することの無い刻印のような記憶が、レッドの脈を激しく打つ。
 ▼ 215 mTQB7XkZdk 17/04/02 23:00:49 ID:zOhp4jio [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あ……あの子は……」

これは運命か、それとも必然か。

なんて、ありふれた言い方をしてみても。

この激情を表現することは出来ない。

絶対に。

「おっ……お前、ゴールド!?」

「ゴールド君!?」

まず彼に反応したのは、グリーンとワタル。

二人もまたカントーとジョウトにて、ゴールドとは面識があった。

一戦交えたこともある。

そしてその時ゴールドは、この両方にも勝って見せた。

「あ……お久しぶりです!グリーンさん、ワタルさん」

「お二人とまたこうして会えて、嬉しいです!」

ゴールドは礼儀正しく二人に挨拶。

「お……おう!」

「いやにしても、その……意外ってか」
 ▼ 216 mTQB7XkZdk 17/04/02 23:02:08 ID:zOhp4jio [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「まさかお前が、アローラ代表の選手になるとは」

グリーンは、ゴールドがアローラ代表選手としてこのPWTに出場するなんて夢にも思っていなかった。

いやそれは、この場にいる全員が同じである。

というかそもそも、ゴールドはいつの間にこのカロス地方に来てたのかという。

もう驚くところが満載すぎて、どこから突っ込んだら良いのかマジで分からない。

「あ……お二人とも、ゴー君のお友達ですか?」

「初めまして♪私はアローラ代表のミヅキですっ!」

このミヅキという女の子も、ゴールドと親しい仲なのか"ゴー君"なんてあだ名まで付けてるし。

「よ……よろしく頼む!ミヅキちゃん」

「よろしくな!はは……」

「はいっ♪」

相も変わらずマイペースなミヅキに対して、二人のこの困惑のしよう。

「おいレッド、あのカントー・ジョウト代表の二人がタジタジだぜ」

「こういう滑稽な様が見られるのもまた、PWTの醍醐____」

……と。

カルムが傍らからその様子を笑っていた時。
 ▼ 217 mTQB7XkZdk 17/04/02 23:04:07 ID:zOhp4jio [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
レッドは既に、カルムの隣からは離れて。

「……君は」

……いつの間にか。

ゴールドの目の前へと、足を進めていた。

「……?」

ゴールドは、そんなレッドをふと見る。

その時ゴールドは、一瞬この男がレッドだということに気付かなかった。

あの時とは違う服装、あの時とは違う雰囲気。

この数年でレッドは、外面的にも内面的にも大きな変化を遂げた。

そのため、過去のレッドしか知らないゴールドは、今の彼を見ても"誰?"という感想しか出ず。
 ▼ 218 mTQB7XkZdk 17/04/02 23:05:02 ID:zOhp4jio [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
が、しかし。

「君は本当に……あのゴールド君か?」

この彼の声を聞いていたら、ゴールドも段々思い出してきた。

いくら見た目が変われど、声色だけはあの時から変わっていない。

まして、あの"伝説のポケモントレーナー"・レッドの声ならば……。

「……ッ!」

……すぐに追憶し、記憶の引き出しを開けることができる。

そうだ。

この人の名前は。

「も……もしかして」

「レッド……さん!?」

……かつて出会い、かつて憧れ。

そして、かつて超えた究極。

かの雪山で出会った、史上最強のポケモントレーナー____

____"レッド"!
 ▼ 219 クレー@ウブのみ 17/04/02 23:19:16 ID:p6TatDlM NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴールドはレッドグリーンワタル破った経歴持つのにジョウト代表にならないのね
 ▼ 220 ビット@のろいのおふだ 17/04/03 00:00:56 ID:apDDHjUQ NGネーム登録 NGID登録 報告
良い展開

支援
 ▼ 221 ディアン@ひかりのねんど 17/04/03 05:50:47 ID:3Qifwz1M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やっぱりレッドってかっこいい
支援
 ▼ 222 リリダマ@げんきのかけら 17/04/03 16:51:38 ID:IF0Jfwjw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 223 インディ@ゴーストジュエル 17/04/03 21:09:16 ID:1j6H1W2E NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
コルニが妊娠したってガチ?
 ▼ 224 mTQB7XkZdk 17/04/04 00:02:24 ID:ENsi4/rw [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

一方、その頃。

あれからレッド達とは別行動のコルニは、既に観客席に到着して腰を降ろしていた。

「楽しみだね、ルカリオ!」

「くわっ!」

彼女の隣の席で、ルカリオが吠える。

コルニは、ルカリオにもPWTを見せたいと思って、彼の分の席も取ったのだ。

何せ今から始まる戦いは、各地方のチャンピオンと、それが認めた一流トレーナー達が繰り広げる壮絶なもの。

それはもう、見てるだけで莫大な経験になること間違いなし。

この機を逃す手は無いわけで。

少々座席の料金が嵩んだが……気にしない。

(今回は、カルムに"譲っちゃった"けど……)

(次にレッドの隣に立つのは……!)

コルニには、最近抱いた密かな野望がある。
 ▼ 225 mTQB7XkZdk 17/04/04 00:03:04 ID:ENsi4/rw [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
最愛の人と共に。

最愛のポケモンと共に。

世界一への階段をかけ上がるという……野望が。

「ルカリオ!頑張ろうっ!」

「く、くわっ?」

と、一人で燃えてるコルニに困惑するルカリオだったが、一応腕をあげて彼女に同調した。

……すると、そんな彼女の隣に。

「おや?」

「貴女はもしかして……シャラジムの」

一人の、大人びていて紳士的な雰囲気の青年の姿が。

「……えっ?」

コルニは、その男性の方へ振り向いた時。

自分の目を疑った。

彼は、コルニと同じく純正の金髪で、形の整った短髪のヘアスタイル。

衣装はまるで、中世の貴族のように高貴なデザインで。

だが、よく見てみるとそれはコックが着るような白衣で、しかしとてもそうとは思えない程の卓越した意匠が凝らされている。
 ▼ 226 mTQB7XkZdk 17/04/04 00:04:03 ID:ENsi4/rw [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
目付きは鋭く、神妙な面構えではあるが、それは彼の崇高な信念の表れ。

そんな彼の名前を、コルニは知っていた。

というか、カロス地方に住まいを持つ者なら大抵が知っているであろうその名前。

一つの顔は、カロスに本店を構える超高級レストランの料理長。

そしてもう一つの顔は、カロスポケモンリーグ____

____"みず"の四天王。

"ズミ"。

「ズ……ズミさぁんっ!?」

本物だ。

コルニは、今まさに自分の目の前に居る有名人の姿を刮目し、驚きのあまり甲高く叫んだ。

「……そんなに驚くことはありませんよ」

「隣、良いですか?」

どうやらズミは、たまたまコルニの隣の席を取っていたらしく。

「あ、あぁっ……はいっ」

「くわん!」

コルニは声を詰まらせながらも、"どうぞ"と彼に着席を促す。
 ▼ 227 mTQB7XkZdk 17/04/04 00:04:49 ID:ENsi4/rw [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「では、失礼」

ズミは音もなく、スッと席に座って一息。

その後、凄く高そうな革製のバッグから、一冊の超意識高そうな自己啓発本・"人間とは全員痴れ者だ"を取りだし、読み始めた。

因みに、本に挟まってたしおりも和紙で出来ているようで、これもそこそこのお値段がしそう。

(わぁ〜っ……)

何もかもがワンランク上の男を前にコルニは、逆にちょっと親しみ辛いタイプだなと感じたのだった。

(ま、本を読むので忙しそうだし、無理に話しかけなくても____)

と。

敢えて関わることはせず、そろそろ始まる開会式に集中しようとした____

____その時。

「そういえば」

ズミはなぜか突然、折角読んでた本をしおりも挟まずパタンと閉じて。

「なぜ貴女は今、ジムリーダーの仕事を放棄してこんな所に居るのですか?」

なんか凄くトゲのある言い方で、コルニにここに居る理由を問うた。
 ▼ 228 mTQB7XkZdk 17/04/04 00:05:34 ID:ENsi4/rw [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
(ひぇっ、何この人)

若干の嫌悪感を表情に示したコルニだったが、この大物には決して口答えしてはいけないと自分に言い聞かせ。

「あ、あの……仕事を放棄したのではなく、ちょっと修行の旅に訳あって出ているんです」

「今日はその修行の一環として、強いトレーナー達の戦いを参考にしようかなと」

「くわん!」

当たり障りの無い言葉を見事に選んで、この場を切り抜けようとする。

が。

「修行の旅、ですか」

「なるほど……それは関心です」

「ジムリーダーたる者、常に精進を怠らないその姿勢……私は評価しますよ」

彼の言葉は堅苦しく、そして長い。

偉大だけど変な人が隣に来たなぁ、とコルニはこの先のPWT観戦にまるで枷を負わされたかのような気分だった。

と、そんなこんな話していたら。

「皆様……大変長らくお待たせ致しました!」

「これより、"ポケモン・ワールド・トーナメント"……」

「……開会式を、始めたいと思います!」
 ▼ 229 mTQB7XkZdk 17/04/04 00:06:09 ID:ENsi4/rw [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
実況の男性の声が、会場全体に大きく響き渡った。

刹那。

「ワァァァァァァァッ!!」

この時を待ちわびたとばかりに、凄まじい歓声が辺りを包み込んでいく。

「おぉーっ!」

「くわーっ!」

コルニとルカリオも、朱に交わって赤くなるようにこの熱気に溶け込んでいって。

「不必要に喚きすぎではないか……?」

ただ一人ズミだけは気難しく腕を組んでいたが、この場に居る殆どの者が声を張り上げ歓喜をさらけ出していた。

まさにここからは、全てのトレーナー達に捧ぐ奇跡の祭典。

PWTの開幕が、ここに宣言されたのである……!
 ▼ 230 ーブイ@メガリング 17/04/04 00:09:25 ID:UquErRFg NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
おい!コルニが妊娠したってガチか

支援
 ▼ 231 ンギラス@サンのみ 17/04/04 06:03:02 ID:wdQAuRnA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>230
中の人がだよ

支援
 ▼ 232 ジスチル@おまもりこばん 17/04/04 06:27:51 ID:gq9JLuK6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 233 ードー@あなぬけのヒモ 17/04/04 10:16:31 ID:f8In/QgU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
“人間とは全員痴れ者だ”で草

支援
 ▼ 234 リーン@ディアンシナイト 17/04/04 16:08:53 ID:06KTpgUI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 235 ルシェン@スピアナイト 17/04/05 16:48:38 ID:Qn6BwCZo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 236 ノズ@きせきのみ 17/04/05 19:10:53 ID:E32QMdiU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ネ
 ▼ 237 mTQB7XkZdk 17/04/06 00:06:18 ID:LkFSFFvs [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「では、待望の代表選手入場から参りましょう!」

実況を務める男性の威勢の良いかけ声が、オーディエンスをエキサイトさせる。

今か今かと選手の登場を待ちわびていた人々の欲望が発散される瞬間。

「まずは、カントー・ジョウト代表!」

「代表の"ワタル"選手と、スカウトされた"グリーン"選手です!」

この実況の一声で、大抵の観客は、その代表にスカウトされた選手の名前を知ることになる。

例えばこの場合なら、グリーンだ。

グリーンは、カントー地方最強と言われる程の力のあるジムリーダーなので、知名度もそれなりにある。

そのため、"ほらみろ"とか"やっぱ"とか、グリーンの名前を予想していた者達のドヤ顔もチラホラ……。

「あっ、グリーンとワタルさんだ!」

「くわ!」

早速仲間が入場したことで、コルニのテンションも上がる。

すると横のズミが。

「グリーン……?呼び捨てなんですね」

ワタルにはきちんと"さん"を付けて読んでいたのに対し、グリーンは呼び捨てだったことを鋭く指摘。
 ▼ 238 mTQB7XkZdk 17/04/06 00:06:51 ID:LkFSFFvs [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「え、あー……はい」

コルニとしては、"グリーンとは友達なんです"と言っても良いのだが。

(それ言うとまたややこしくなりそうだなぁ……)

なにせ相手は、気難しい一面のあるズミ。

あの代表選手と交流があるなんて言ったら、どれだけ話が長くなることやら。

と、そうこう考える内に次の選手が。

「次にホウエン代表!」

「代表の"ダイゴ"選手とスカウトされた"ミクリ"選手です!」

ちなみに、代表がスカウトする選手には、特に規定が設けられていない。

その代表が認めた選手であれば、どこの誰を捕まえようが問題ナシ。

なので、ホウエンのダイゴように、自分の地方から選手をスカウトする定番なやり方があれば。

アローラのミヅキのように、他の地方から選出する型破りな方法もある。
 ▼ 239 mTQB7XkZdk 17/04/06 00:07:26 ID:LkFSFFvs [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「どんどん行きましょう!」

「シンオウ代表の"シロナ"選手と、スカウトされた"クロツグ"選手です!」

ここまでは、概ねネット上などで予想に挙がっていた組み合わせが連続している。

ミクリもクロツグも、世界に名だたるポケモン界の大スターだ。

チャンピオンにスカウトされるには妥当の人物である。

だが。

ここからだ。

ここから、今回の"スカウト制"の異色さが浮き彫りになる。

「ではでは、イッシュ代表!」

ここでまず、巷の予想を見てみる。

開催前から大概予想されていた名前は、"アデク"という、アイリスの前任を務めていた元チャンピオンの男だ。

今ここに居る殆どの観客が、アイリスのパートナーをアデクと思い込んでいる。

だが、それは大きく覆されることになるのだ。

次の実況の一声によって。

「代表の"アイリス"選手と____」

「____スカウトされた、"N"選手です!」
 ▼ 240 mTQB7XkZdk 17/04/06 00:08:45 ID:LkFSFFvs [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
____"N"。

その名が轟いた瞬間。

辺りは、シーン……と一旦静まり返って。

「お……」

「おぉぉぉぉっ!!」

再び、熱狂の渦が巻き起こった。

が……。

「アデクじゃないのか!?」

「てか誰だ、Nって!?」

「やだ、けっこーイケメン!」

Nという経歴不明の謎の存在に、困惑する声も疎らに見受けられる。

だが、こういったダークホース的な枠も、観客達にはウケが良い。

油が注がれた火のような盛り上がりが、会場にて拡散した。

レッド達が待合室で気になっていたあの青年の名は"N"。

彼は、一体どのような経緯でアイリスにスカウトされたのだろうか。
 ▼ 241 mTQB7XkZdk 17/04/06 00:09:34 ID:LkFSFFvs [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
……さて。

次はいよいよ、あの二人の登場だ。

「さあ皆様、お次は今年の開催国である____」

「____カロス地方の代表選手です!」

「オォォォォォッ!!」

やはりホームグラウンドということもあって、会場の沸き方が他の地方とは違うのが伺える。

「おおっ!」

「くわん!」

コルニとルカリオも、"待ってました"と言わんばかりの笑顔だ。

さあ。

出でよ、挑戦者達。

「代表の"カルム"選手と____」

「スカウトされた……"レッド"選手です!」

己らの力と存在を、世に知らしめよ。
 ▼ 242 ュリネ@じゃくてんほけん 17/04/06 00:45:31 ID:blF3T/2c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの伝説のトレーナーレッドだと知った時の観客の反応が超楽しみ!w支援!!
 ▼ 243 チャブル@きんのいれば 17/04/06 06:02:14 ID:Pv0DWbQk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 244 アル@エルレイドナイト 17/04/06 06:04:42 ID:K0YhfXSs NGネーム登録 NGID登録 報告
彼氏が紹介されてるとなるとテンションも上がりまくりでしょう
回りからの黄色い声を聞いてムッとなったりするコルニを見たい

支援
 ▼ 245 ードー@アイスメモリ 17/04/06 06:40:42 ID:CR3dH38Y NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 246 ルード@いわのジュエル 17/04/07 07:59:48 ID:lVL9nqyc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 247 プラス@ありふれたいし 17/04/07 17:47:02 ID:ApdmMLmg NGネーム登録 NGID登録 報告
え、誰?って反応になりそう
しえーん
 ▼ 248 mTQB7XkZdk 17/04/08 00:03:21 ID:lxocdzmg [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オォォォォォッ!!」

ついに会場へと姿を現したレッド。

グリーンとカルムが監修したコーデを華麗に着こなし。

コルニが心を込めて手作りした"メガマフラー"を纏って。

相棒のピカチュウを肩に乗せ、堂々たる登場を果たした。

「きゃ〜っ!レッド〜っ!」

「くわん!」

観客席のコルニは、彼にありったけの声援を送る。

勿論、この広く常に騒がしい会場では、彼女の声が彼に直接届くことは無い。

しかし。

二人の心は、いつも繋がっている。

(見ててくれ……コルニッ!)

レッドは、会場の何処かに居る彼女にそう願って。

右拳を、腕ごと大きく上へと掲げた。
 ▼ 249 mTQB7XkZdk 17/04/08 00:04:00 ID:lxocdzmg [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
この勇ましき誓いのポーズ。

これが、コルニの目に遠目ながらも映ると。

「レッド……!」

彼の熱き闘魂が、コルニの胸の奥にまで伝染し浸透する。

距離は離れていれど、想いを寄せ合う二人ならば決して寂しくない。

この繋がりさえあれば、彼らはいつまでも燃えられる。

「頑張って……!」

コルニが見守るならば、レッドはどこまでも……強くなれる。

(さっきのグリーン氏に対する呼び捨てもそうだったが……)

(……彼女とレッド氏の間には、より何か特別な物がありそうだな)

その横でズミは、先程のコルニの呼び捨て発言を未だに引きずっていたようで。

(後で詳しく聞いてみるか)

またしても、コルニにとっては面倒の種になるような事を考えていたのであった。

「ワー!ワー!」

その一方で、他の観客達も沸きには沸いてるのだが。
 ▼ 250 mTQB7XkZdk 17/04/08 00:04:35 ID:lxocdzmg [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「"レッド"……?」

「アイツも無名のトレーナーか?」

"レッド"の名前を知らない者が多いのか、ハテナを浮かべる声も多々あり……。

しかし、そんな中。

「いや……待て!」

「聞いたことがある」

一人の男性の観客が、その空気に割って入るかのようにしてその一言を放った。

これを受け、周辺の観客は彼から話を聞くため一旦静かになる。

すると彼は、自らが知る限りの"レッド"についての情報を並べ始めた。

「カントー地方とジョウト地方の境にあるという、シロガネ山」

「その頂上には、かつてカントーポケモンリーグを制覇し____」

「当時裏社会で暗躍していた組織を壊滅まで追い込んで____」

「更に、カントーのポケモン図鑑を完成させた____」

「____"伝説のポケモントレーナー"」

「その名も"レッド"という少年にが、日々挑戦者たちを山頂にて待っている……っていう噂があるのさ」
 ▼ 251 mTQB7XkZdk 17/04/08 00:05:59 ID:lxocdzmg [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
それは、カントーとジョウトにおいて流れていた有名な噂で。

レッドが過去にカントーで残した功績が偉大なのと。

頂上にて相見える彼の実力が桁外れであるのが、その知名度を大きく後押ししている。

しかしそれも、海を渡って別の地方へ行ってしまえば単なる眉唾な都市伝説。

故に、カントーやジョウトから来た人以外の人からしてみれば、レッドなんて無名も良いとこなのだ。

が。

彼の実力を知っている者も、ちゃんと居る。

彼の実力を風の噂で耳にし、興味を持ったトレーナーも確かに居る。

そして、そういった人達からは……。

「"レッド"って言ったら……あの伝説のポケモントレーナーか!?」

「おい、あの"レッド"がカロス代表だと!?」

「ウォォォッ!!」

……絶大な支持を集めたのだった。

「ワァァァァァァァッ!!」

やがて、観客達の心は一つに集束していく。
 ▼ 252 mTQB7XkZdk 17/04/08 00:07:59 ID:lxocdzmg [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
勿論、もう一人の代表であるカルムも。

「きゃあー!カルム様ぁっ!」

「こっち向いてーっ!」

女性達からの黄色い声があれば。

「俺ファンなんだよ!」

「マジリスペクトだよなぁ!」

トレーナー達からの羨望の声も山のようだ。

また、一方で。

「ねっ、あのレッドって子も中々良くない?」

「ねー!ちょっとあどけない所もまた……」

一部の女性客は、レッドのルックスにも注目していた。

と言うのも、代表トレーナーの表情や動きといった物は、会場に設置されている超巨大モニターに、リアルタイムで大きく映される。

よって、レッドの顔面偏差値の方もそこそこ確認できるわけで。

彼も顔付きは割りと端正な方なので、異性からのウケは宜しかった。
 ▼ 253 mTQB7XkZdk 17/04/08 00:09:37 ID:lxocdzmg [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「む……な、何よ」

この彼氏の評判を見てコルニは、頬を膨らまして彼女としての複雑な心境を露にする。

まあ早い話、"嫉妬"な訳だが。

「レッドは確かに顔もカッコ良いけど」

「彼の本当の魅力はソコじゃないんだからねっ」

あくまでレッドは中身だぞ、と。

外面ばかり気にかける連中に、コルニは物申したげに苦言をボソッと溢した。

……まあ。

それは置いといて。

「……さてさて、最後は!」

「今大会より初出場する____」

「____アローラ代表のお二人です!」

ネクストにしてラストのチャレンジャー。

まだ誰も知らない"新興勢力"が、PWTに参戦する時。

出てきたのは、年端もいかない少女と少年だった。
 ▼ 254 mTQB7XkZdk 17/04/08 00:11:15 ID:lxocdzmg [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「代表の"ミヅキ"選手と!」

「スカウトされた"ゴールド"選手ですッ!」

少女の名は"ミヅキ"。

新しく作られたアローラリーグの、若き初代チャンピオンで。

その実力は未知数の極み。

かたや、少年の名は"ゴールド"。

彼もまた、数々の功績をジョウトの地にて刻んでいるポケモントレーナー。

ジョウトのポケモンリーグを、厳しい旅の果てに制覇して。

復活しようとした悪の組織を再び成敗し。

そして、最後には……。

……"伝説"をも越えてみせた。
 ▼ 255 mTQB7XkZdk 17/04/08 00:13:07 ID:lxocdzmg [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
そんな彼の武勇は、知る人ぞ知る。

「ゴールド……?」

「おい、ゴールドって」

"彼を知る人"は、この会場にも居たのだった。

知る人共は、敢然たるゴールドの活躍を称して、次のように彼を呼んでいる。

その名も。

「あの……"ジョウトの英雄"か!?」

____"ジョウトの英雄"。

それが、彼の旅の足跡を象徴する覇号だ。
 ▼ 256 ラマネロ@たわわこやし 17/04/08 02:59:09 ID:Gu4RKCK6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やはりコルニは嫉妬したかw
支援!
 ▼ 257 ノムー@しずくプレート 17/04/08 06:30:35 ID:iYq4tGLY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 258 ントル@バグメモリ 17/04/08 07:26:13 ID:oyEHtotM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴールドってレッドに何回か負けてるのかな?
支援
 ▼ 259 インディ@ロメのみ 17/04/08 07:40:46 ID:zUcXAYo. NGネーム登録 NGID登録 報告
>>258
何回かチャレンジして伝説を超えたって流れだと嬉しいな

支援
 ▼ 260 mTQB7XkZdk 17/04/09 00:04:02 ID:UYzY/d8o [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ォォォォッ!!」

「ワァァァァァァァッ!!」

こうして、PWTに参加する全ての代表選手達が揃い踏みした。

各地方が誇る最強が、一つの戦場に集結する時。

その祭典は、雄々しく産声をあげる。

観客達の期待。

選手とポケモン達の闘志。

それら全てが今。

解き放たれるのだ。

本能が赴くままに。

「では、これより!」

「トーナメントの組み合わせを、抽選で決定いたします!」

実況がそう言うと、巨大モニターの画面が変わった。

見てみると、代表とスカウトされた選手の顔写真がそれぞれカードのようになり。

そのカード達が裏返しにされて区別がつかなくなると、画面の中をデタラメに高速で動き始めた。
 ▼ 261 mTQB7XkZdk 17/04/09 00:04:50 ID:UYzY/d8o [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
どうやらこれは、シャッフルの作業らしい。

あらかたカードをランダムに動かし尽くした末。

それらをトーナメント表に全て並べる。

そして。

バッと、裏返しになっていたカード達が再び表向きになった。

これで、代表達の写真が見えるように。

確認すると、まずトーナメント表の左端……。

カロス代表vsシンオウ代表。

次に中央……。

ホウエン代表vsイッシュ代表。

最後に右端……。

カントー・ジョウト代表vsアローラ代表。

……トーナメントは、以上の組合わせに仕上がった。

「ォォォォォォッ!!」

観客達が更なる盛り上がりを見せる。
 ▼ 262 mTQB7XkZdk 17/04/09 00:05:30 ID:UYzY/d8o [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「レッド達が一番最初かぁ……!」

「くわんっ!」

トーナメントは通常、左から消化していくものだ。

つまり表の左端に位置するレッド達は、まさにトップバッターを務めることになるわけで。

「よーっし!頑張れーっ!」

「くわーっ!」

コルニとルカリオは、席から立ち上がって気合いの応援。

拳を突き出す熱血スタイルだ。

また、一方でズミは。

「カルム……貴方は、我らがカロスの代表だ」

「貴方に限って無いと思うが____」

「____情けない戦いだけは、してくれるな」

一人冷ややかに、会場のカルムを見つめ。

熱の無い言葉で、彼を戒めたのだった。
 ▼ 263 mTQB7XkZdk 17/04/09 00:06:24 ID:UYzY/d8o [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なお、カントー・ジョウトとアローラは____」

「____一回戦に勝利した地点で、決勝戦に行けるものとします!」

と、ここで実況が前以てそのことを皆の衆に伝える。

これがどういうことかと言うと。

まず、今回参加する地方の数は六つ。

それで、六つのカードでトーナメント表を作る。

そして、まず一回戦が全て終わったとする。

そうすると、二回戦目はどうだろうか。

勝ち上がった三チームの内、二チームは二回戦を行えるが。

残った一チームは、二回戦を行わず、そのまま決勝まで直通になってしまうのだ。

そういった理由があるため、右端のカントー・ジョウトとアローラは、あたかもシードのような扱いになったわけである。

「グリーンズルーい!」

「くわっ」

コルニはそれを聞いて、グリーンをズルだと軽く罵った。

まあ、レッドとカルムはきちんと二回戦も経て決勝に進まなければならないので、確かにそこに至るまでの苦労ならばグリーン達の方が圧倒的に楽だろう。
 ▼ 264 mTQB7XkZdk 17/04/09 00:07:04 ID:UYzY/d8o [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
だがその代わりグリーン達は、今大会最大の"台風の目"____

____アローラ代表を、初っぱなから相手にしなくてはならない。

そのプレッシャーは、"彼ら"に重たくのし掛かっていた。

「グリーン君」

「相手はあの、本気の俺らを倒したゴールド君と」

「まだ見ぬ未知のトレーナー……ミヅキちゃんだ」

「ここを勝てば決勝に進めるとはいえ、これは……厳しい戦いになるぞ」

ワタルは、戦いの前に予めそのことをグリーンに忠告しておく。

が、グリーンは。

「誰と戦おうが厳しい戦いでしょうよ」

「ここはPWT、チャンピオンリーグですよ?」

まるで呆れたかのような口調で、これに反論した。

「……確かに、な」

ワタルはこのグリーンの言葉を聞いて、安心したように納得する。

"どうやらやる気は十分みたいだな"、と。
 ▼ 265 ールル@おちゃ 17/04/09 00:17:25 ID:zW4nOWRM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 266 スキッパ@アクアカセット 17/04/09 00:21:48 ID:otpfbW/2 NGネーム登録 NGID登録 報告
最後まで頑張って完結させてください

支援
 ▼ 267 デッポウ@にじいろのはね 17/04/09 08:18:25 ID:1Rty8O/c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いきなりシロナとか
 ▼ 268 ルビル@じゅうでんち 17/04/09 09:26:43 ID:QUzADJek NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 269 mTQB7XkZdk 17/04/10 00:20:00 ID:hUOnA0yc [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「本日は、一回戦の内二試合____」

「____カロス代表vsシンオウ代表と、ホウエン代表vsイッシュ代表を、お送りいたします!」

実況の声が鳴る。

トーナメントの試合は一日では終えられないため、数日間のスケジュールに分けられて行われるのだ。

そして実況の言葉からすると、本日はグリーン達の試合は無いらしく。

代わりに、レッドとカルムのカロス代表と、シロナとクロツグのシンオウ代表の試合。

ダイゴとミクリのホウエン代表と、Nとアイリスのイッシュ代表の試合が開かれる。

その中でもレッド達は第一試合で戦う訳だから……。

「では、早速参りましょう!」

「一回戦第一試合____」

「____カロス代表vsシンオウ代表です!」

……当然。

試合直前の時が訪れるのも、一番最初。

この言葉が発せられた瞬間、代表達は場に居るスタッフに誘導され、"待機所"に移動した。
 ▼ 270 mTQB7XkZdk 17/04/10 00:21:19 ID:hUOnA0yc [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
待機所は、観客席とは別に設置されたもう一つの観戦席。

それはバトルフィールドの端に設けられていて、強化ガラスの仕切りの向こうにソファが並んでいる。

試合の様子が間近で見られるため、ある意味では特等席だ。

そしてそこに、各代表が座っていく。

その中で、これより試合を開始するレッド達だけは、立ったままでバトルの準備を進めていた。

「いきなりだなレッド、大丈夫か?」

「問題ないさ……」

「ピカッ!」

レッドとカルムは、本日バトルに選出するポケモンについて、表情を強ばらせて考えている。

両手にモンスターボールを持って、"違う"と思えば片方を下ろし、また別のボールを取り出して。

そうした思考を繰り返し、"至高の選抜"を求めていく。

ちなみに、今回のバトルはマルチ方式で行う"ダブルバトル"のルールで行われる。

一人のトレーナーが持てるポケモンは二体。

それぞれペアを組んで、同時に一体ずつポケモンを繰り出し戦わせるのだ。

そういったダブルバトルの場合、大事になるのは元々そのポケモンが持つ個々の力だけでは無い。
 ▼ 271 mTQB7XkZdk 17/04/10 00:21:59 ID:hUOnA0yc [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
まずはそれ以前の話、ポケモンを操る二人のトレーナー同士の相性があって。

次に、二体のポケモン同士のコンビネーション

その他にもまだまだ、ダブルバトルで戦う上で大切なことは沢山ある。

今までやって来たシングルバトルとは、ひと味もふた味も違う戦い。

しかしレッド達には、それを恐れている時間など無い。

ただ勝つために、進むのみ。

「レッド!」

と、そこへクロツグがレッドに話しかけてきた。

「クロツグさんっ」

呼ばれたレッドは、嬉しそうに笑顔で答える。

「今日はお互い、全力を尽くして戦おう!」

「わたしも、今日の試合を見てくれてるシンオウ地方の人達に____」

「____希望を届けるため、負けるわけにはいかないからなッ!」

……それが、クロツグの"戦う理由"だった。
 ▼ 272 mTQB7XkZdk 17/04/10 00:22:46 ID:hUOnA0yc [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼が欲しているのは、富でも名声でもなく"希望"。

そしてその希望さえも、人々に分け与えることを望んでいる。

それが、今日代表としてカロスにやって来たクロツグの目的。

「……!」

この時レッドはふと思う。

なんで自分は、今ここに居るんだっけ……と。

クロツグは、確固たる信念を持ってここに居るが。

自分には、"カルムが誘ってくれたから"という理由しかない。

が、それを懸念すると同時に感じた。

この、会場中にて巻き起こっている歓声の嵐を。

「ワァァァァァァァッ!」

「オォォォォォッ!!」

これが"大舞台"というヤツだ。
 ▼ 273 mTQB7XkZdk 17/04/10 00:23:21 ID:hUOnA0yc [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
これから始まる戦いを大いに期待し、その目でしかと一部始終を見届けようとする大勢の人々。

そんな者達に囲まれたレッドもまた、クロツグと同じように思うのだった。

"勝たねば"と。

そうだ。

負けられないのはレッドだって同じだ。

「俺達も負けません」

「俺達も……カロスの人達の期待に添えたい」

ならば、クロツグ達に勝つしかない。

勝たなければ、それは叶わない。

「……ふっ」

クロツグはそれだけ一息笑うと、シロナと共にバトルフィールドへと向かって行った。

「……俺達も行くぜ」

「ああ!」

ついに始まる。

レッド達の第一試合が。
 ▼ 274 デカバシ@とつげきチョッキ 17/04/10 03:46:01 ID:w1kQID3o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワクワク支援
 ▼ 275 ピナス@プレミアボール 17/04/10 05:50:02 ID:4UZVsXD6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援支援
 ▼ 276 ッタイシ@サーナイトナイト 17/04/10 19:46:03 ID:dnOK0JKc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 277 ハコモリ@ふうせん 17/04/10 21:44:45 ID:S08FeJ0I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 278 ンバーン@かたいいし 17/04/10 22:35:30 ID:hoez1quU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
わくわく
 ▼ 279 mTQB7XkZdk 17/04/11 00:07:38 ID:q0vUPBxw [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
四人はそれぞれ、決められた定位置についた。

レッドとカルムのコンビと、シロナとクロツグのコンビが向かい合うようにして立っている。

戦場は直方形で、金属素材。

代表達の間には、若い女性の審判が両手に旗を持って待機中。

準備は完了している模様だ。

後は、正式な試合開始の合図を待つのみ。

……と。

そこへ。

「では……このPWTの特別ルール」

「"エンバイロメント"を、発動します!」

またも実況が叫んだ。

"エンバイロメント"。

それは、"環境"を意味する言葉だが……。

「エン……?」

レッドは、このいきなり出てきた単語に戸惑う。

実況が"特別ルール"と言った"エンバイロメント"とは一体、何のことなのだろうか。
 ▼ 280 mTQB7XkZdk 17/04/11 00:08:40 ID:q0vUPBxw [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
……すると。

「……ッ!?」

突然。

床が……揺れ始めた。

「な……なんだ!?」

この唐突な地震にレッドは、狼狽えながら足を揺らす。

そんな彼の怯えた様子を見かねたのか、カルムは……。

「PWTでは、ポケモン達が戦う戦場にも"変化"を持たせている」

「常に平坦で動きやすいバトルフィールドじゃ、盛り上がりに欠けるからな」

……"エンバイロメント"という制度の趣旨を、予め伝えて。

「え……?」

これから起こる事象を前に、レッドにもある程度の理解を持たせたのだった。

ふとレッドは再び、足元を見てみる。

そして、そこにあったのは……。

「……!?」

「"雪"……ッ!?」
 ▼ 281 mTQB7XkZdk 17/04/11 00:10:25 ID:q0vUPBxw [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
そう。

"雪"だ。

本物の冷たい"雪"が、一面に積もっていたのだ。

また周りを見てみると、他にも顕著な変化が。

まずフィールドの側面は、いわゆる"氷海"になっていて。

氷点下をぶっちぎりで越えているであろう水溜まりの上に、巨大な氷の塊がぷかぷかと浮いている。

更に、あちこちに小規模の氷山。

極めつけは、この降り注いでくる"霰"だ。

トレーナーの体を無限に打ち付ける霰の天候は、少なからず戦うポケモンにも影響を及ぼすだろう。

この、まさしく銀世界とも言える環境の名は……。

「一回戦のエンバイロメントは、"雪山"!」

「霰が降り、足元も不安定でしかも寒い!」

「この癖の強いバトルフィールドで、彼らはどのようにして戦うのか!?」

……"雪山"。

それが今回の、レッド達の戦場となった。

(……この感覚……)
 ▼ 282 mTQB7XkZdk 17/04/11 00:10:58 ID:q0vUPBxw [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
ふとレッドは、この肌寒いエンバイロメントの中で思い出す。

"あの日"を。

(……あの山の景色はもっと暗かった)

(けど、この気温の低さが思い出させる)

(あの日の俺を____)

これは郷愁だろうか。

いや、そんなハズは無い。

なぜならレッドは、もう彼処には戻りたくないのだから。

しかしならば、この感情は……。

「……少し、心地が良い」

……ぼそりとそう呟く。

心の何処かでは、あの山での生活も悪くは無いと思っていたのだろうか。

不思議と力が湧いてくる。

……成程。

たまにはこういうのも……良い。
 ▼ 283 mTQB7XkZdk 17/04/11 00:11:56 ID:q0vUPBxw [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「では!」

「カロスvsシンオウ____」

「____バトル・スタートです!」

実況の宣言がようやく下され。

「ッ!」

彼らは同時に、構えたボールを振りかぶった!

肩に覚悟を。

腕に信条を。

指先に未来を込めて……!

「出番だ、"メレシー"ッ!」

「蹴散らせ……"ヌメルゴン"ッ!」

まずはカロスの二人が繰り出したポケモン。

宝石の目映い光と共に照らすのは勝利。

"伝説"に惹かれた彼は、その下で修行を積んで、見違えるほどに強くなった。
 ▼ 284 mTQB7XkZdk 17/04/11 00:12:45 ID:q0vUPBxw [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
さあ。

今こそ成果を見せるとき。

"メレシー"!

「メッレエ!」

……そして。

「ヌメェ!」

ぬめぬめ、でろでろの体を持つ軟体ポケモン。

大きな体から放たれるプレスや、多彩な息吹による攻撃はかなりの驚異だ。

しかしそんな"彼女"も、進化前までは"最弱"と貶められていた存在。

それでも諦めず、カルムと一緒に死線を潜り抜けていったら。

ついになれたのだ。

"最強のドラゴン"に!

"ヌメルゴン"!

「ヌメッルゥゥ!」
 ▼ 285 mTQB7XkZdk 17/04/11 00:14:06 ID:q0vUPBxw [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
かたやシンオウは。

「ふふ……"ミカルゲ"!」

「燃え盛れよ……"ヒードラン"!」

……それは、108もの怨念が結集した"形を持たない存在"。

大昔、悪行の限りを尽くした彼の者は、"かなめいし"と呼ばれる石に封印された。

そのため今は、自力での移動が全く出来ない。

しかし、彼の者の射程距離にひと度入れば、その時は覚悟をしておいた方が良いだろう。

かつて最悪の大悪党だった彼の者が、何千年もの長い年月の間ずっと縛られていたのだ。

積もり積もった恨みの量によって増大した凶暴性は……計り知れない。

"ミカルゲ"!

「……ミョゥゥゥ」
 ▼ 286 mTQB7XkZdk 17/04/11 00:14:42 ID:q0vUPBxw [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告











……一方、それはマグマが生み出した灼熱の生命体。

火山の奥深い所に根城を築き、遥か太古から永久的にエネルギーを持続させて生きている。

奴が吐き出す溶岩は、言うまでもないが超高温。

触れれば一発アウト、漏れ無く全てが溶け落ちる。

まさに炎の化身、恐るべきその生態は、東洋の神話に登場する"火の神"にも例えることができよう。

"ヒードラン"!

「ごぽっ……ごぽぽっ!!

"雪山"のエンバイロメントに集結した四体のポケモン。

彼らの戦いは、極寒の地に熱をもたらす……。
 ▼ 287 スゴドラ@アイスメモリ 17/04/11 06:00:55 ID:5gltuD3A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここで雪山が出てくるとは…
支援
 ▼ 288 クリン@ねばりのかぎづめ 17/04/11 06:15:57 ID:2TyW.9Bk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 289 ウマ@とつげきチョッキ 17/04/11 07:39:11 ID:sKp7hDRA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 290 ムスター@ブーカのみ 17/04/11 08:28:57 ID:evHtfOVc NGネーム登録 NGID登録 報告
レッドの手持ちでメレシーだけ雪山の環境を知らないのか
 ▼ 291 ガオニゴーリ@きんのおうかん 17/04/11 16:32:45 ID:QYicP3go [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
初代
 ▼ 292 コドラ@サイコシード 17/04/11 16:33:24 ID:QYicP3go [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 293 mTQB7XkZdk 17/04/12 01:05:27 ID:m3VIcYvM [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
さて。

ここでレッド達には、この対面を見て同時に把握したことがある。

それは、"どちらがどちらを処理するべきか"だ。

例えば、レッドのメレシーに対して、"ほのお"と"はがね"のヒードランは有効打。

特に"はがね"は、"いわ"と"フェアリー"のメレシーに驚異の"四倍弱点"を取れる。

故に、クロツグがレッドを狙ってくるのはほぼ間違いないだろう。

また一方で、メレシーの役割もハッキリしている。

と言うのも、シロナのミカルゲは"ゴースト"と"あく"タイプなのだが。

これの弱点を突けるのは、メレシーが持つ"フェアリー"タイプだけ。

だから、レッドの方はシロナを狙うのが安定策となる。

よってカルムは、レッドのメレシーをヒードランから守ることで彼をサポートし。

逆にクロツグは、ミカルゲを守りつつメレシーを攻め。

そのヒードランをシロナのミカルゲがどれだけ手助けできるか。

それらの複雑に絡み合う要素が、彼らの勝敗を決める。
 ▼ 294 mTQB7XkZdk 17/04/12 01:06:00 ID:m3VIcYvM [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……よし!」

レッドは一声あげて、臨戦に気持ちを切り替えた。

「メレシー、ミカルゲに"ムーンフォース"!」

「メレッ!」

凍土にて、余韻を残しながら響く開戦の一手。

まずは先手必勝、いきなり弱点を突く電光石火の攻撃だ。

メレシーは、自身の宝石から妖しい月の光を大気に凝縮させ。

それをあたかも、満月のような真ん丸の球体に形成する。

極光を放ちながら浮遊するその塊は。

「メーレェッ!」

メレシーの合図で、豪速球でミカルゲ目掛けて飛んでった。

「させるなヒードラン、庇うんだッ!」

しかしここでクロツグの素早い反応。

「ごぽぉ」

指示を受けたヒードランは、迅速にムーンフォースの軌道上に入って。

それを真っ向から受けた。
 ▼ 295 mTQB7XkZdk 17/04/12 01:06:52 ID:m3VIcYvM [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
目当てのミカルゲには当たらなかったものの、代わりにヒードランが直撃。

だが……。

「ごぽぽっ」

ダメージは無意味に等しい。

"フェアリー"の技は、ヒードランには四分の一にまで威力が抑えられてしまう。

やはりミカルゲを攻略する上で、ヒードランは巨大な障壁だ。

これをどう始末するかは、カルムのヌメルゴンにかかっている。

(ふむ……)

カルムは、一秒にも満たない刹那の中で、一つ策を見出だした。

それを即座に実行に移すべく、ヌメルゴンに指示を出す。

「ヌメルゴン、あそこの氷山の一角を陣取れ」

「ヌメェ!」

サラッと、流れるように述べられた策の序章。

ヌメルゴンは、カルムが指差した氷山に向かって全力疾走した。

そして、一瞬にしてそこに君臨し。
 ▼ 296 mTQB7XkZdk 17/04/12 01:07:34 ID:m3VIcYvM [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「"りゅうのはどう"」

「ヌメェラ!」

ドラゴンの血を継ぐ者のみ放てる紫紺の砲撃"りゅうのはどう"を。

山頂という高所から、ヒードランを一直線に____

「……ごぽっ!?」

____狙い撃ち!

「避けろヒードランッ!」

このクロツグの瞬発的な対応により、ヒードランは……。

「ご、ごぽっ!」

……なんとか体を傾けきって、難を逃れた。

が、注意が一旦 りゅうのはどう に向いたことによって。

「よし!」

メレシーに好機が訪れた。
 ▼ 297 mTQB7XkZdk 17/04/12 01:08:05 ID:m3VIcYvM [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「"マジカルシャイン"!」

「メレェェェ!」

瞬間、メレシーの体が白く輝く。

目も開けてられない程の、凄まじい明度の光だ。

「みょう!?」

「ごっ……!」

その範囲は広く、ミカルゲだけでなくヒードランにも及ぶ。

と言っても、"マジカルシャイン"も"フェアリー"なので、ヒードランへのダメージは雀の涙程度だが。

「みょぉぉぉっ!?」

ミカルゲには見事クリーンヒット。

会心の一撃で、序盤戦を幸先よく進めていくのだった。
 ▼ 298 チリス@コンテストパス 17/04/12 02:04:04 ID:wgsqF0es NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 299 バゴ@ハーバーメール 17/04/12 05:56:00 ID:7M64zFTE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 300 フーライ@ファイトメモリ 17/04/12 07:00:40 ID:LbAznS3c NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 301 ネコ@ていこうのハネ 17/04/13 23:37:07 ID:pmQ/mAlc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 302 ラスル@かわらずのいし 17/04/14 21:41:46 ID:d72iMziI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援じゃ
 ▼ 303 mTQB7XkZdk 17/04/15 02:21:22 ID:lUoqwvpU [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ふふ……中々良い連携ね」

試合の最中、シロナは奮戦するレッド達を見て評価の一言を述べる。

黒きコートと美しき金髪を冷ややかな風に靡かせる彼女の佇まいは、常に冷静かつ高貴。

現在の戦況においては自らが劣勢を取っているにも関わらず、その平静さは解かれることがない。

寧ろ、一定の余裕すら醸し出している。

そんなシロナの自信の根拠は、一体どこにあるのか。

それは、次に彼女が繰り出す一手で____

「ミカルゲ」

「メレシーに"いたみわけ"!」

____判明することとなる。

「みょぉぉぉ!」

その時だった。

ミカルゲは、己が幽体を石から一旦分離させ。

宙を自在に浮遊できる状態になった後。
 ▼ 304 mTQB7XkZdk 17/04/15 02:22:14 ID:lUoqwvpU [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
その状態で、メレシーの方へ一直線に向かい____

「メレッ!?」

____なんと。

驚くべきことに……"憑依"した。

「みょみょみょ!」

するとミカルゲは、メレシーの体に乗り移りながら何らかの呪詛を唱え始める。

不気味な歌声が、会場にて響き渡ると……。

「……メレッ」

次第に、メレシーが弱ってきて。

「みょー!」

その後、メレシーの中にいたミカルゲが元気になって戻り、再び石の中へと帰還。

この数秒の出来事を目の当たりにして、レッドは……。

「な、なんだ……今のは」

……ただ、呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
 ▼ 305 mTQB7XkZdk 17/04/15 02:22:51 ID:lUoqwvpU [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
すると、横にいるカルムがレッドに解説する。

「あの"いたみわけ"という技はな」

「ちょっとややこしい話だが____」

「____"自分と相手の体力を同じにする"……っていう効果だ」

……自分と相手の体力を、同じに。

「え……」

が、これだけでは到底分かりえない。

ぽかんと口を開けるレッドを見かね、カルムは更に詳しく話した。

「例えばだな……」

「元気なヤツと傷ついてるヤツ、そんな二匹がいたとして」

「"いたみわけ"を使うと、元気な方は傷ついてる方に合わせてダメージを負い」

「逆に傷ついてる方は、元気な方に合わせて体力を回復する」

「そうすることで、二匹の体力を均等にならすって訳だな」
 ▼ 306 mTQB7XkZdk 17/04/15 02:23:45 ID:lUoqwvpU [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
……レッドには、分かるような、分からないような、そんな話だったが。

つまり、"マジカルシャイン"を受けたハズのミカルゲはピンピンしてて。

逆にメレシーの方が深手を負ってしまった……ということである。

「そんな……」

これでは、迂闊にダメージを与えても墓穴を掘るだけだ。

弱ったところをヒードランに突かれるのが関の山。

しかし、攻めないことには活路は拓かず。

ならば次こそは、"いたみわけ"を完璧に見切るしかない。

「俺も援護射撃はする」

「お前はミカルゲに徹底的に集中してくれ」

「分かった」

今ので理解はした。

ミカルゲは非常に厄介な存在だと。

明らかにパワーで押しているヒードランは、比較的御しやすい部分もあるが。

このミカルゲはまだ、得体が知れない。
 ▼ 307 mTQB7XkZdk 17/04/15 02:24:20 ID:lUoqwvpU [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
"いたみわけ"以外にどんな技を隠し持っているか、分からないからだ。

(とにかく、何かされる前に倒さなくちゃ)

焦燥と討伐への意思が交互に入り雑じりながらも、レッドの戦いは再開する。

「負けるなメレシー、"ムーンフォース"!」

「メレッ!」

が、問題は決して"いたみわけ"だけではない。

「ヒードラン、"ラスターカノン"!」

「ごぽっ!」

あのヒードランの妨害もまた、絶妙に凶悪だ。

メレシーの"ムーンフォース"は、光輝を纏いし"ラスターカノン"の前に儚く砕け散る。

「"りゅうのはどう"!」

「ヌメェ!」

尤もヌメルゴンの援護のおかげで、ヒードランが直接メレシーに攻撃するという事態は発生しない。

しかしそれでも、あの防御網を突破するのは容易ではなく。

仮に当てたとしても、次に降りかかるはミカルゲの"いたみわけ"。
 ▼ 308 mTQB7XkZdk 17/04/15 02:24:58 ID:lUoqwvpU [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
巨大な壁と害悪なトラップ、この二つの脅威を掻い潜らないことにはどうにもならない。

「メレシーとヌメルゴンの二人ががりでミカルゲを倒せば……」

レッドはそうカルムに提案するも。

「リスクが高いな」

「今みたいに、どちらかがどちらかを相手して食い止める状況ならまだやりやすいが」

「二匹で一匹を潰そうとするとするなら、相手の片割れを野放しするという覚悟がいる」

カルムの話を聞く限り、そう簡単には行かないらしく。

「っ……」

まるで四面楚歌。

打つ手が見当たらなくなって、レッドの頭がこんがらがってしまう。

しかし、ふと彼は思った。

この、自分の周りを取り囲む"環境"を見て。

「……!」

この、雪山という特異な地形。

何か利用する手段は無いのか……と。
 ▼ 309 ソッキー@ライブドレス 17/04/15 06:37:38 ID:6KU0q4Lk NGネーム登録 NGID登録 報告

しえーん
 ▼ 310 ンムー@じゅうでんち 17/04/15 08:25:27 ID:YOjfdt8I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 311 ココ@こんごうだま 17/04/16 00:16:04 ID:aA6PEPi2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 312 mTQB7XkZdk 17/04/16 02:59:47 ID:AZI95mfA [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
今レッド達が立っているこの雪山だが、フィールドの側面には氷張りの床で出来ている部分もある。

そしてそのすぐ下には、浸かれば一瞬にして氷付けになってしまうであろう水温の湖が広がっており。

それを見たレッドは、これを活かす手立てを考えた。

まず真っ先に思い浮かんだのは……。

(ヒードランをあそこに沈める……)

……まあ、定石ともいえる手段。

が、これは言わずもがな……きっと読まれるだろう。

"ほのお"の肉体を持つヒードランが苦手とするのは"みず"だ。

その"みず"が戦場にオブジェクトとして設置されてる地点で、クロツグは既にその辺りの危険性を把握しているはず。

が、"沈める"という発想自体は悪くない。

少なくともこの思考によって、レッドは一定の"手応え"を得た。

後は、これをどのようにして未完の虫食い方程式に埋め込むかだが……。

「ミカルゲ、"シャドーボール"!」

「ヒードラン、"かえんほうしゃ"!」

……眼前の戦場は、絶え間なく流動しているわけで。

常に頭のなかでアレコレ考えている余裕は無い。
 ▼ 313 mTQB7XkZdk 17/04/16 03:01:29 ID:AZI95mfA [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「メレシー、"ひかりのかべ"で防げ!」

「メーレ!」

メレシーは、迫り来る霊と炎の砲弾を"ひかりのかべ"で華麗にカットする。

元々の守備力が高いメレシーが壁系の技を使うと、まさに鬼に金棒____

____いや、鬼に大盾か。

鉄壁が如し守りを、遺憾無く発揮してくれる。

が、それでも攻撃を回避しない分、受け続ければ少ないダメージでもどんどん蓄積していってしまう。

これが一対一のタイマンならともかく。

このように二体から被弾するような状態においては、この防御戦法では中々に苦戦を強いられるというもの。

勿論ヌメルゴンの援護はあるが、このまま防戦の一途を辿れば末は敗北だ。

敵の手数さえ減らせれば、まだ戦況は好転するのだろうが……。

「……!」

……この時、レッドは閃いた。

"敵の手数を減らす"手段を。

「カルム、ちょっと良い?」
 ▼ 314 mTQB7XkZdk 17/04/16 03:02:11 ID:AZI95mfA [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「?」

するとレッドは、唐突にカルムに声をかけ。

何やら、こそこそ話を始めたのだった

そして、十秒にも満たない一瞬の時が過ぎ去った後。

「……オーケー!」

カルムから、了承の一言が飛び出した。

「……?」

シロナとクロツグは、あの二人の不思議なやり取りに呆気を取られるも。

「……ミカルゲ、"あくのはどう"!」

「ヒードラン、"ねっぷう"!」

容赦することなく次の攻撃へと移った。

邪悪な波導と燃え盛る熱波が交わり、そして乱れる。

「メェェェ!」

メレシーは何とか"ひかりのかべ"でそれらを耐えるも、限界が訪れるのは時間の問題だ。

この状況を挽回するために、レッドが選んだ作戦とは。
 ▼ 315 mTQB7XkZdk 17/04/16 03:02:54 ID:AZI95mfA [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
すると。

「ヌメルゴン、そろそろ降りてこい!」

「ヌメ!」

カルムがここで、一つ行動に出た。

それまで、氷山の上にいることでミカルゲ達の射程から外れていたヌメルゴンは、そこから勢いよくジャンプ。

大胆にも地上に再び降り立ち、この混戦に参戦する意思を見せた。

そして。

「ヌメルゴン、ヒードランに"ドラゴンダイブ"!」

早速かついきなりの突進攻撃。

「ヌメェェェ!」

ヌメルゴンは、渾身の力で氷原を蹴り、思いっきり飛び上がって。

ある程度の長さの垂直な線を描くと。

「ヌメラァァァ!」

雄叫びをあげ、竜の魂を全身に巡らせた。
 ▼ 316 mTQB7XkZdk 17/04/16 03:04:24 ID:AZI95mfA [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
また、かたやメレシーは。

「メレシー、最大出力の"マジカルシャイン"!」

「メレェ!」

自身の宝石状の体を一気に発光させ。

氷の大地に、更なる白き輝きをもたらす!

「みょ!?」

「ごっ……!?」

その最中、ヌメルゴンの"ドラゴンダイブ"も……。

「ヌメェ!」

……発射!

二つの技を合わせて放ったレッドとカルム。

これは、真っ向から向こうと火力で張り合うという意味なのか、それとも……。
 ▼ 317 ェリンボ@フォーカスレンズ 17/04/16 07:08:54 ID:HtGZrkCw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 318 イオーガ@ゴーストZ 17/04/16 11:27:07 ID:8s3nJUCc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 319 ブラン@りゅうのキバ 17/04/16 15:45:56 ID:PZAF2taA NGネーム登録 NGID登録 報告
ヌメルゴンはドラゴンダイブ覚えないですよ
 ▼ 320 ァイヤー@せんせいのツメ 17/04/16 18:28:53 ID:ckW3T.TQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>319
まじでか
 ▼ 321 mTQB7XkZdk 17/04/17 00:03:21 ID:FvX9TLno [1/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>319
本当だ……知識不足すみません。
 ▼ 322 mTQB7XkZdk 17/04/17 00:04:33 ID:FvX9TLno [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ぐっ……目が眩む」

「眩しいわね……」

"マジカルシャイン"が与える眼球への刺激は、当然ながらトレーナーの身にも降りかかる。

コロシアムは今、額に掌かざし視界に影を作らなければとても目が開けていられない状態だ。

観客席にまではさほど強く届いていないものの、その光度は馬鹿にはできない。

そしてそこへ。

「ヌメェラ!」

弾丸と姿を変えたヌメルゴンが、ついに。

「ゴンッ!」

ヒードラン達の居る座標に衝突。

"ドラゴンダイブ"が豪快に決まった。

「ごぽぉぉぉっ!?」

強烈なるその突進は、ヒードランに見事直撃し。

「みょぉぉぉ!?」

そこから発生した衝撃波はミカルゲへ上手いこと命中。

単体攻撃の枠を軽々と超える、素晴らしい渾身の一撃だった
 ▼ 323 mTQB7XkZdk 17/04/17 00:05:34 ID:FvX9TLno [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
更に。

先程のヌメルゴンがかました"ドラゴンダイブ"によって。

ビキッ……と、地面のひび割れが。

「よし……!」

その様子を見て、レッドとカルムはガッツポーズで喜ぶ。

どうやら彼らは、攻撃がもたらした敵へのダメージの先に……。

……"別の何か"を、見据えているらしい。

「……!」

と、ここでクロツグは察した。

あの地面に入った亀裂を目にして。

レッドとカルムの……策略を。

(……そうか)

(この勢いで足場を完全に破壊し)

(その下にある湖に、わたしのヒードランを沈めるつもりか)

この戦場に立ってから、元よりそのことをある程度危惧していたクロツグ。

それがあってか、その辺りの危険察知の速度は早かった。
 ▼ 324 mTQB7XkZdk 17/04/17 00:06:47 ID:FvX9TLno [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
(ふ……その手には乗らんさ)

そして、敵の策さえ見抜ければ対策は容易い。

「ヒードラン、ヌメルゴンに"マグマストーム"!」

「ごぽっ!」

クロツグはまず、攻撃の主軸となっているヌメルゴンを潰すことから始めた。

渦巻きし溶岩の流れが、まるで台風のように吹き荒れ踊り。

大地を抉りながら進んで、ヌメルゴンを食い尽くさんとする。

……が。

「相手にするな!」

……ここで、クロツグにとってはまさかの指示が、カルムの口から飛び出した。

「な……」

"相手にするな"……?。

馬鹿な。

向こうの狙いは此方のヒードランのハズ。

なのにそれから目を離させるような指示を出して、一体何を企んで____
 ▼ 325 ルチャイ@ブリーのみ 17/04/17 00:07:44 ID:oR7f0576 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ひっさしぶりにこのss見た
 ▼ 326 mTQB7XkZdk 17/04/17 00:08:28 ID:FvX9TLno [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ハッ!?」

____まさか。

「おいシロナさん!警戒しろ!」

彼らの本当の狙いは、ヒードランではなく……。

……もう一方だったのでは。

「ヌメルゴン!」

「メレシー!」


「ミカルゲに"りゅうせいぐん"!」

「"ムーンフォース"!」


____当たってた。

「……遅かったわ」

シロナは遠い目で、これから始まる形勢逆転を見届ける。

「ヌメェェラッ!」

「メレェッシ!」

レッドとカルムの真の狙いは、ヒードランではなくミカルゲ。
 ▼ 327 mTQB7XkZdk 17/04/17 00:09:55 ID:FvX9TLno [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
レッドはこの作戦を、先刻のカルムの忠告から思い付いた。

"沈めるという作戦はクロツグに容易に読まれる"……という、忠告から。

あれを聞いてレッドは、考えたのだ。

"読まれるのなら、寧ろ逆にこちらから読まさせれば良い"。

"早い話、敵に思い込ませることができれば"……と。

一度何かを思い込ませれば、敵の注意はそれ以外のことには向きづらくなる。

その効果を期待して放たれたレッドの作戦が、まんまと嵌まったのだった。

「みょ……」

「みょぉぉぉぉっ!!」

悠久の時にて流れ落ちる彗星と、妖精瞬く満月の裁き。

それらが交じりあった瞬間が。

巨悪の塊たるミカルゲの……最期だった。

「みょ……」

ミカルゲ……戦闘不能。
 ▼ 328 ドイデ@まんたんのくすり 17/04/17 06:31:23 ID:nuRM6OW2 NGネーム登録 NGID登録 報告
うおおお
支援
 ▼ 329 バニア@かなめいし 17/04/17 06:53:48 ID:6SG17f/E NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 330 クーダ@シルバースプレー 17/04/18 01:32:12 ID:fY/Gg0uE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
流石レッド!支援!
 ▼ 331 mTQB7XkZdk 17/04/18 03:26:22 ID:H6EEn4Kg [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「やったー!良いよレッド、メレシー!」

ミカルゲの瀕死により、これでレッド達が一歩リードする形となった。

コルニはそれを、声を目一杯あげて喜ぶ。

「くわっ!」

ルカリオも、"今のは見事だ"と言わんばかりの吠えっぷりだ。

が。

一方で、彼女の隣の席に座るこの男……ズミはというと。

「あのミカルゲは言ってみれば、"前菜"のような物です」

「"メインデッシュ"と相対してこそ、真のバトルと言えましょう」

何やら料理にまつわる言葉を並べながら、先程の攻防を手厳しく評価するのだった。

しかし。

「え?」

コルニにはイマイチ、その彼の心理というものが分からない。

何にせよ、ここはまず一つ勝ったのだから、素直に喜べば良いじゃないか……と。

ズミは何故、ミカルゲが倒れた今でも表情を強張らせたままなのか。
 ▼ 332 mTQB7XkZdk 17/04/18 03:27:01 ID:H6EEn4Kg [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
その理由は、彼がミカルゲを"前菜"と例えたことに隠されている。

フルコースにおいて、前菜というのは基本的に最初に出される品だ。

その後、細々としたのが色々来たりするのだが……。

……なんと言っても大トリを飾るのは、彼の発言にもあった"メインデッシュ"である。

そしてズミは言ったのだ。

"メインデッシュ"と相対してこそ真のバトル……と。

ならば、前菜を倒されたシロナが次に出すその"皿"は、果たして如何程の物なのか。

が……それを見る前に。

レッド達は、もう一匹敵を倒さなければならない。

そう……ヒードランだ。

「シロナさんが次のポケモンを出す前に片付けるぞ、レッド!」

「分かってる!」

今この一瞬だけは、メレシーとヌメルゴンの二匹がかりでヒードランに集中砲火できる。

ミカルゲにやった様に、ヒードランもフルボッコ戦法で一気に決めるべし。
 ▼ 333 mTQB7XkZdk 17/04/18 03:27:43 ID:H6EEn4Kg [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「メレシー、"ムーンフォース"!」

「ヌメルゴン、"げきりん"!」

月明かりの下____

「メレッ!」

竜は怒りの片鱗を剥き出しにして____

「ぬめっ!」

____突進!

「くっ……!?」

クロツグは、ヒードランの身に迫りし危険に明らかな狼狽えを見せる。

この追撃を食らえば、ヒードランの体力は一瞬にして消沈することだろう。

しかしこの近距離からして、恐らくは回避もできない。

……ならば。

"決断"は、早い方が良いか。

このまま何もせず負けるよりかは。

「……ヒードラン!」
 ▼ 334 mTQB7XkZdk 17/04/18 03:28:19 ID:H6EEn4Kg [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「メレシーに、フルチャージで"ラスターカノン"だ!」

____敢えて玉砕を前提にし。

どちらか一方を道連れにしてから倒される。

「何!?」

「メレッ!?」

これが塔の王たるクロツグの英断。

「ごぽっ!」

ヒードランは、彼の指示通りに、まず力を限界まで溜めてから……。

「_____ごぽぽーっ!」

……最大出力の"ラスターカノン"をぶちかました!

「メッ……」

捨て身の覚悟を以てして放たれた白銀の砲撃は、妖精の燐光を軽く呑み込んだ後。

「メレーーーッ!!」

メレシーを撃ち貫いて。

光と共に……果てた。
 ▼ 335 mTQB7XkZdk 17/04/18 03:30:36 ID:H6EEn4Kg [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……めれ〜っ」

メレシー、戦闘不能。

しかし。

もう一方の攻撃……ヌメルゴンの"げきりん"は。

「ぬめぇぇぇっ!!」

全力の"ラスターカノン"を撃った反動で動けなくなっていたヒードランを……。

「ごっ」

……見事に。

吹き飛ばした!

「ごぉぉぉぉっ!?」

ヌメルゴンに衝突した瞬間、尋常じゃない速度で宙を舞ったヒードラン。

やがてその先にあった氷山にぶつかると、大きなクレーターを作って氷の中に埋もれたのだった。

「ごぽぽっ……」

ヒードラン、戦闘不能。
 ▼ 336 ユルド@ダートじてんしゃ 17/04/18 05:56:29 ID:lVLwm27g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 337 ママ@じゅうでんち 17/04/18 07:41:53 ID:GhAFOJT. NGネーム登録 NGID登録 報告
さすが
支援
 ▼ 338 ドシシ@パイルのみ 17/04/19 20:45:38 ID:YvBFU/pM NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
しえーん
 ▼ 339 mTQB7XkZdk 17/04/20 00:38:01 ID:LMqBhFD2 [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミカルゲに引き続いて、メレシーとヒードランまでもが瀕死に至るダメージを負って退場。

レッドとクロツグの、各々のポケモンをボールに戻す際の表情は中々に苦かった。

互いに敵の討伐と引き換えに散らせてしまったがために、"もっと最善があったのでは"と悔やむ気持ちもある。

しかし、それでも二人は既に後には引けない。

ここまで来たからには、何がなんでも勝利をもぎ取る。

「ゆっくり休んでてくれ、メレシー」

「お前の奮闘は忘れんぞ、ヒードラン」

二人がそれぞれのポケモンに激励を残す中で、勿論シロナも。

「貴方の無念は……"彼"が継いでくれるわ」

ボールの中のミカルゲを安心させるかのような口調で、優しく語りかけていた。
 ▼ 340 mTQB7XkZdk 17/04/20 00:38:39 ID:LMqBhFD2 [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
倒れた仲間の意思は、決して絶やさせない。

腐らせないし、殺させない。

絶対に、貫き通してみせよう。

「いけ!」

「ゆけェッ!」

「いきなさい」

勝つのは我ら。

己の勝利を信じる者共の最後の砦が、今放たれる。

まずはレッド。

「"カメックス"!」

大きな体に立派な甲羅を背負った、亀の怪獣。

その甲羅に内蔵されし二つのキャノン砲からは、超高水圧の水鉄砲が噴射される。

また、亀という見た目の通り防御も一級品の堅さを誇っていて、甲羅をシールドにすれば受け流せない攻撃は無い。

攻守ともに優れた性能の"みず"ポケモン。

"カメックス"!

「ガーッメッメ!」
 ▼ 341 mTQB7XkZdk 17/04/20 00:40:22 ID:LMqBhFD2 [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
次にクロツグ。

「"レジギガス"」

____それは、かのシンオウの伝説に名を刻まれし古の巨兵。

"点字"という概念において、その頂点に立つ。

彼が薙げば大地は裂け、彼が払えば海が割れた。

時には大陸すら縄で豪快に引っ張ったともされる。

歩くだけで周囲に衝撃波を巻き起こす程の巨体で、彼があげるのは反撃の狼煙。

進めよ、"レジギガス"。

「………………」

最後はシロナ。

「"ガブリアス"!」

その生物は竜か、鮫か。

砂上に住まいし凶暴なる狩人。

細身の体を持ち、両腕からは鋭利な刃のような爪が殺意を放ちながら伸びている。

鋭く獲物を見据えると、彼はマッハの速度で宙を駆け抜けそれを捕食するのだ。

"ガブリアス"はまさに、トップクラスの実力を有する"ドラゴン"ポケモンなのである。
 ▼ 342 mTQB7XkZdk 17/04/20 00:41:13 ID:LMqBhFD2 [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ガァーッブ!」

更に。

「メガシンカ!」

ガブリアスは、ここから進化を超える。

その爪は、鋭さを増してあたかも死神の鎌のようになり。

その肌は、海の殺人鬼たる鮫が持つそれよりも尖って殺傷性のあるものと化し。

その性格は、以前と比べて格段に暴虐的だ。

まず元々の能力が強いガブリアス。

そんな彼がメガシンカするのは、もはや反則では無かろうか。

神に愛されたとしか思えぬその存在は、狩り場に居る者全てを食らいつくすまで止まらない。

そう……"メガガブリアス"は無類の戦士なのだ。

「ガァァァッブァ!」

カルム以外の三人が、残り一匹で後がない。

決着の時はもうすぐだ。
 ▼ 343 ドキング@ももぼんぐり 17/04/20 05:55:04 ID:Os0OtYhs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やばい、面白さが止まらない
支援
 ▼ 344 ーランス@4ごうしつのカギ 17/04/20 17:21:21 ID:zxYTrU2U NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 345 ミッキュ@つめたいいわ 17/04/20 18:15:41 ID:KM3oUEdE NGネーム登録 NGID登録 報告
シロナのガブが粉ガブじゃなくて良かったです(小並)
 ▼ 346 mTQB7XkZdk 17/04/20 23:56:23 ID:LMqBhFD2 [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
激震の第二ラウンドが始まる。

「先にレジギガスを始末するぞ、レッド」

開口一番、カルムはレッドにそう提案した。

「ん……良いけど、どうして?」

レッドはそれに了承した上で、その理由を聞く。

するとカルムは、目線を戦場の方へと向けながらもレッドの質問に答えた。

「レジギガスは、普通のポケモンとは比較にならない大きな力を持っている」

「その力は、横のメガガブリアスをも大差をつけて凌駕する程だ」

彼の話によると、なんとあのメガガブリアスですら、レジギガスの実力には大きく及ばない部分があるらしい。

「……っ」

それを聞いたレッドは、悪寒のあまり固唾を飲む思いだった。

だが、それだけでレジギガスを先に倒す理由になるかと言えば、一概にそうでもないともレッドは思う。

寧ろメガガブリアスを先に倒してから、強者たるレジギガスを挟み撃ちにしてしまうという手もあろう。

だが、カルムの話にはまだ続きがあった。

「レジギガスを先に倒す理由自体は、奴の"特性"にある」

「"スロースタート"……っていう特性だ」
 ▼ 347 mTQB7XkZdk 17/04/20 23:57:10 ID:LMqBhFD2 [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
____"スロースタート"。

それは、レジギガスのみが持つ唯一無二の特性。

しかしその効果は、特性らしからぬ異質な物だった。

と言うのも普通、特性というのは、ポケモンのポテンシャルを活かす性質のものが多い。

だがこのスロースタートという特性は、その逆。

ポケモンのポテンシャルを……"潰す"のだ。

スロースタート、その効果は以下の通り。

場に出てから暫くの間、そのポケモンの"こうげき"と"すばやさ"が半分の数値にまで下がる……。

そう。

スロースタートには全くメリットが無いわけである。

言わばこれは、レジギガスに課せられたハンディキャップ。

究極たる破壊力の代償。

以上をもって、つまりカルムが言いたかったのは……。

「……スロースタートの効果が消える前に、レジギガスを倒すのか」
 ▼ 348 mTQB7XkZdk 17/04/20 23:58:07 ID:LMqBhFD2 [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そうだ」

……能力が激減している内に、レジギガスから先に駆逐する。

そういうことだ。

「分かった」

カルムの説明に頷くレッド。

標的は定まった。

後は……狙うのみ!

「よし……カメックス、レジギガスに"きあいだま"!」

「ガァメッ!」

レッドはカメックスに"きあいだま"を指示。

"かくとう"の"きあいだま"は、"ノーマル"タイプのレジギガスには効果抜群の攻撃だ。

ある時はザクロの切り札・メガバンギラスをも沈めたその一撃。

直撃すれば、与えられるダメージは計り知れない。

カメックスは気合いを集中させ、砲撃の準備段階へと移った。

だが……。
 ▼ 349 mTQB7XkZdk 17/04/20 23:59:56 ID:LMqBhFD2 [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ガブリアス、"ダブルチョップ"!」

「ガァブ!」

例のごとく邪魔が入る。

「くっ!」

力を溜めているカメックスは今、完全な無防備状態。

もしこれがシングルバトルなら、"スロースタート"により鈍足になっているレジギガスに"きあいだま"を当てることなど容易いことだが……。

これはあくまでダブルバトル。

片方が本調子でなくとも、片割れが絶好調ならカバーが可能なのだ。

しかし、それはこちらとて同じこと。

「ヌメルゴン、ガブリアスに"ドラゴンダイブ"!」

カメックスの死角は、ヌメルゴンが塞いでくれる。

その分カメックスは、自分の技に専念できる。

こうしたコンビネーションこそが、勝利を手にする鍵だ。

「カメックス……撃てッ!」

「ガァァァ……メェェェ!
 ▼ 350 mTQB7XkZdk 17/04/21 00:00:47 ID:N/nIQNSo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
"きあいだま"、射出。

緋色に燃える気合いの結晶が、ブレの無い一線を辿ってレジギガスに向かっていく。

「拳で受け止めろ!」

「……!!」

主君の命を受けたレジギガスは、ゆっくりとその巨大な腕をあげて。

掌を広げると、迫り来る"きあいだま"をなんとキャッチした。

「なに!?」

「ガァメ……?」

掴まれた"きあいだま"は、段々その威力を落として小さくなっていき……。

「そして"にぎりつぶす"!」

……最終的には散り散りとなって、消えてなくなってしまった。

レジギガスに、握り潰されて。

「な……」

スロースタート……ではなかったのか。

いとも簡単に防がれてしまったではないか。
 ▼ 351 mTQB7XkZdk 17/04/21 00:04:32 ID:N/nIQNSo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「言っておくが、スロースタートだからといって……」

「……そう容易くやられてしまう程このレジギガスは甘い育て方をしていない」

……クロツグのレジギガスが、それだけよく鍛えられているということか。

これが制御されている状態だというなら、スロースタートが解除されれば一体どんな化け物になるのやら。

あまり想像したくはないが……。

「……ふふ、まあ」

「そうこなくちゃね……!」

「ガメェ……!」

その並外れたレジギガスの超パワーに、レッドとは本能でゾクゾクしてしまう。

操る者も、戦う者も、己に眠りし闘争願望には逆らえない。

「カメックス、"ハイドロポンプ"!」

「ガメァ!」

カメックスは、水しぶきを吹かせながら"ハイドロポンプ"を放出。

立ち塞がる伝説の巨人に、彼らの底力はどこまで通用するか。
 ▼ 352 バット@ひかりごけ 17/04/21 01:10:18 ID:hnpM/NeM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 353 ンカラス@かわらのかけら 17/04/21 06:16:59 ID:vbhiL1Gk NGネーム登録 NGID登録 報告
しえ
 ▼ 354 トシゲッコウガ@マトマのみ 17/04/21 06:41:48 ID:qpceKElc NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 355 レベース@たいりょくのハネ 17/04/21 07:40:46 ID:BtBHEoJQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あれ?レジギガスってこんなにカッコいいポケモンだったっけ?
支援
 ▼ 356 ガギャラドス@スピーダー 17/04/21 09:52:55 ID:R0ckrhpc NGネーム登録 NGID登録 報告
>>355
イッチが書いてるクロツグが使ってるからやで

支援
 ▼ 357 ッツー@ポケじゃらし 17/04/21 23:29:26 ID:6gC2b5X2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レジギガスが使いたくなるいいSSだ
 ▼ 358 mTQB7XkZdk 17/04/22 00:31:19 ID:aJpyPvfg [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
カメックスの"ハイドロポンプ"が、歪みない直線を引く。

その水圧は、岩をも削る程の凄烈さ。

生身の生物が受けようものなら、尋常じゃない痛みに見舞われることだろう。

だが。

相手がその痛み以上に凄まじき存在ならば……。

「……ッ!!」

……払われてしまうかもしれない。

あっさりと。

レジギガスは、迫るハイドロポンプを片手を振って粉砕。

明後日の方向に軌道がズレたカメックスの攻撃は、数メートル先にて爆散してしまった。

「これも防ぐか……!」

「……ガメッ」

レジギガスは、確かにその呪いの特性によって己の力を制限されている。

それは彼がなした罪による罰か、あるいは理不尽な封印か。

何にしてもスロースタートは、太古の時代よりレジギガスの自由を束縛してきた。
 ▼ 359 mTQB7XkZdk 17/04/22 00:32:02 ID:aJpyPvfg [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
だがだからこそ、彼は熟知している。

この状態における立ち回りを。
走る力が湧かなければ、寧ろ動かずどっしり構え。

打つ力が出なければ、敢えて動じずガッチリ守る。

そうして守備に徹することで、枷が外されるまで耐えるのだ。

(あれでまともに動くようになったら……!)

レッドはこの時はじめて、真の意味でカルムの言葉を理解した。

この果てしなき焦燥感が全てを物語っている。

"レジギガスを倒せ"。

まるで呪文のように、何者かが脳裏に告げてくるのだ。

苦しくなる程に。

(だが現状として、"きあいだま"も"ハイドロポンプ"も防がれてしまっている)

(どうすれば……!)

……そう考えた時。
 ▼ 360 mTQB7XkZdk 17/04/22 00:33:10 ID:aJpyPvfg [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……!」

レッドはふと思った。

せめてガブリアスだけでも今倒せれば、その後レジギガスは数匹かがりで相手が出来るのでは……と。

「ヌメェ!」

「ガァブ!」

現在横では、ヌメルゴンとガブリアスが激突しているが……。

「ガブリアス、もう一度"ダブルチョップ"!」

「ガァァァッ!!」

メガシンカしたガブリアスの猛威は留まるところを知らない。

ガブリアスは両手の鋭爪をギラリと光らせ、二回連続で攻撃。
 ▼ 361 mTQB7XkZdk 17/04/22 00:34:00 ID:aJpyPvfg [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ヌメァ!?」

ヌメルゴンはこれを防ぎ切れず、直撃を受けてしまった。

「ヌメルゴン!」

カルムは劣勢の最中で叫びをあげる。

状況は非常に困難を極めているようだ。

(もし今ヌメルゴンが倒されたら……!)

レッドは知る。

ヌメルゴンが倒され、カルムまで残り一匹で後が無くなってしまったら……。

……その時こちらは、圧倒的に不利になると。

三対二の今だからこそ、まだ両チームの力は拮抗しているように見えるが。

もしこれが二対二になれば、向こうは一瞬にして流れを持っていくだろう。
 ▼ 362 mTQB7XkZdk 17/04/22 00:35:28 ID:aJpyPvfg [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
そうはさせない。

その前に……。

(……"三対一"にしてみせる!)

____ならば。

"唯一の手段"がある。

それは。

「カメックス……」

「……"ふぶき"!」

全てを巻き込むブリザード。

「ガァメェェェッ!!」

カメックスは背後から、白銀に輝く絶対零度の"ふぶき"を発生させた。

「ガブ!?」

「……!!」

その冷気は二匹を呑み込み、凍てつかせていく……!
 ▼ 363 ヘッド@むしのジュエル 17/04/22 02:28:14 ID:4DC5m7gA NGネーム登録 NGID登録 報告
ふーむ
支援
 ▼ 364 ョロボン@フレンドボール 17/04/22 07:39:13 ID:WNwAAMR. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 365 ガミミロップ@ライブドレス 17/04/22 08:06:33 ID:7DGrGYWs NGネーム登録 NGID登録 報告
これ実際やったら嫌われるぞ…
 ▼ 366 イバニラ@しろぼんぐり 17/04/22 08:41:24 ID:uHZZseSw NGネーム登録 NGID登録 報告
自分の攻撃から自分で庇うのか?
 ▼ 367 mTQB7XkZdk 17/04/23 03:41:27 ID:ZSS.hhmw [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「やられたわね……!」

"しまった"と言わんばかりのシロナ。

と言うのも"ふぶき"は、シングルバトルでも"こおり"タイプトップクラスの高威力の技として非常に重宝されているのだが。

その真価が本当に発揮されるのはダブルバトル。

なぜなら"ふぶき"は、ダブルバトルでは"全体攻撃"として機能するからだ。

これは先程のメレシーの"マジカルシャイン"にも言えることだが、一度に相手のポケモンを二匹狙うことが可能なのである。

その時に、味方を巻き添えにはしないことも"ふぶき"の評価点だろう。

このように、"ふぶき"はダブルバトルでの使い勝手がとても良いわけで。

カメックスの"ふぶき"を予測できなかったシロナは、ガブリアスに窮地の場面を作ってしまったのだった。

「ガァァァァァ!!」

ガブリアスは"じめん"と"ドラゴン"の複合タイプ。

故に"こおり"には滅法弱い。

猛襲する雪風に酷く苦しんでいるのが見てとれる。
 ▼ 368 mTQB7XkZdk 17/04/23 03:42:28 ID:ZSS.hhmw [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
一方、クロツグのレジギガスはというと。

「……」

まるで物ともしていないようで、一ミリ足りとも体を突き動かされてはいなかった。

動かせぬこと山の如し。

如何なる手段も彼の巨人には通用しないのか。

と、言いたいところではあるが、実際"ふぶき"によって足止めは出来ている。

無意味ではない。

「ヌメェ……!」

ヌメルゴンもようやくガブリアスの連撃から解放され、一息つけた様子。

「ナイスだレッド、助かったぜ」

カルムはレッドの成した功績に敬意を表し、礼を述べた。

そしてレッドは実感する。

これがチームプレーなのだ、と。

相方が苦戦を強いられている時は自分が助け。

その逆もまた然り。

そうした相互関係こそが、自分達を本当の意味で強くしてくれるのだ。
 ▼ 369 mTQB7XkZdk 17/04/23 03:44:00 ID:ZSS.hhmw [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
このまま"ふぶき"の力でガブリアスを沈められれば、そんなカルムとの強力タッグでレジギガスを多方面から叩ける。

「いけ……ッ!!」

レッドは願うばかりだった。

一気に押し切れることを。

……だが。

ここで観客席、コルニの横に座るズミが言葉を放った。

「……まだ終わらない」

「シロナさんのガブリアスは____」

「____確実に爪痕を残してくる」

____"爪痕"。

このガブリアスにとって圧倒的不利な"ふぶき"の状態でも、まだシロナに出来ることがあると言うのか。

ズミのそれを隣で聞くコルニとルカリオには、にわかに信じがたい話だったが……。

……それは今に現実になろうとしていた。
 ▼ 370 mTQB7XkZdk 17/04/23 03:44:36 ID:ZSS.hhmw [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ガブリアス!」

「聞こえてるわね!?」

気温は氷点下を下回り、手足の感覚も無くなってきたであろう。

シンオウ・チャンピオンのシロナは、氷結せし世界の中で一つ声を張り上げた。

風にも負けず、霰にも負けず。

「ガァァッ!!」

それに答えるは、彼女の無二の相棒・ガブリアス。

凍えゆく己の体を案じることはせず、対等たる存在の言葉に耳を傾ける。

するとシロナの口から、次の瞬間……。

……"足掻き"とも取れる最終手段が下された。

「準備は良い!?」

「"げきりん"よ!」

"げきりん"。

先刻にはヌメルゴンも繰り出した、ドラゴンタイプ最強の奥義。

竜の逆鱗に触れし者には罰を。

かつてなきガブリアスの激昂が、驚天動地の破壊力を生み出す。
 ▼ 371 mTQB7XkZdk 17/04/23 03:45:30 ID:ZSS.hhmw [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ガァァァァァァッ!!」

このような死線を、ガブリアスは幾度となくシロナと共に越えてきた。

だから彼には分かる。

確かに自分はこの後、力尽きて倒れるのだろう……と。

だがしかし。

ただでは散らない。

例え吹雪が彼を遮ろうとも。

成さねばならないことが、そこにあるのなら。

「ガブァァァッ!!」

標的を定め。

自らの命を賭して。

「ヌメッ____」

それを……道連れにする。

最後まで勝負を諦めなければ、そうすることは可能だ。

そしてガブリアスは……やってみせた。
 ▼ 372 mTQB7XkZdk 17/04/23 03:46:10 ID:ZSS.hhmw [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
ガブリアスが"げきりん"を浴びせたのはヌメルゴン。

効果は……抜群だ。

暫く黒煙が立ち込め、白き雪山に似つかわしくない暗黒が一時広がる。

すると……。

「ヌ……メッ」

「ガァァァ……」

見えてきた。

相討ちになって倒れている両者の姿が。

ヌメルゴンは、激しい衝突による大きなアザを作ってやられ。

対してガブリアスはメガシンカが解け、体が半分氷漬けになりながら力尽きていた。

その死屍累々に、審判は以下の判定を下す。

「ヌメルゴン、ガブリアス、共に戦闘不能!」

「この地点でシロナ選手は全滅です!」

カルムは残り一匹で、シロナは……ゼロ。

彼女の最後の粘りによって、三対一という理想の形にはならなかったが。

これで……レジギガスに集中できる。
 ▼ 373 イパム@ムシZ 17/04/23 06:38:15 ID:NJwZ7jGQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
燃えますねぇ
支援
 ▼ 374 ッキング@ドリのみ 17/04/23 10:18:07 ID:yMVy/ke. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 375 mTQB7XkZdk 17/04/24 01:18:37 ID:JvbJtc0Q [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「後は頼みましたよ?……クロツグさん」

「なんだかなぁ……」

シロナが脱落したことで、無縁孤立となったクロツグとレジギガス。

クロツグは何とも遠い目で、現状たる景色を見渡していた。

この、日頃から彼が羽織ってるコートすら頼りなく感じる程の寒空の中で、クロツグ達は一足先に味方を失う羽目に。

戦況は今、確実にシンオウ勢が不利である。

これを受け、観客席でもカロスとシンオウのサポーター達が沸きに沸いていた。

「良いぞーレッド!」

「あああー!!俺らのシロナさんがーッ!」

歓喜の声や、負の嘆き。

それらの対極なる感情は、交わりながらも盛大に爆発している。

「あぁ!ヌメルゴンまで……」

「……でもこれで二対一!あと少しっ!」

「くわん!」

コルニとルカリオも、散ってしまったヌメルゴンを悔やみながらも、レッド達の一転攻勢を喜んでいる様子。

そして今回はズミも、珍しく頬を緩めていた。
 ▼ 376 mTQB7XkZdk 17/04/24 01:19:30 ID:JvbJtc0Q [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……犠牲を伴っての辛勝」

「それは決して美しくはありませんが、着実に進んでいっているという確かな心強さがあります」

「ここから我らがカロス代表は、流れに乗るでしょう」

何だかまどろっこしいけれど、要するにズミは褒めているのだろう。

彼の言葉の一つ一つがお堅いせいで、コルニはイマイチ同意できかねたが。

レッドとカルムを応援する気持ちは、きっと同じなハズ。

「まだまだ油断しちゃダメだよーっ!」

「くわーっ!」

この想いが届かなくとも、コルニ達は目一杯声援を送ったのだった。

……一方。

「すまないな……ヌメルゴン」

「ヌメェ……」

ヌメルゴンを戦闘不能にされてしまい、ついに全滅にリーチがかかったカルム。

ここまで安定した戦いを見せていた彼だったが、ヌメルゴンの敗北によりそれが少し揺れてしまうかも知れない。
 ▼ 377 mTQB7XkZdk 17/04/24 01:20:02 ID:JvbJtc0Q [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
まだ戦局の上では余裕があるとはいえ、自分のポケモンが瀕死になってしまうというのは、やはりトレーナーからしてみれば辛苦の極み。

この、茨の如く心に絡んで蝕む罪悪としがらみを取り払うためには、ただ一つ____

____挽回して、失敗を成功で上塗りする。

そうすることでしか、カルムは救われないのだ。

贖罪……では無いが、ヌメルゴンの無念は綺麗さっぱり精算してやらねば。

「……頼むぞ」

「アイツの分まで、存分に暴れてこい」

この一回戦第一試合。

カルムが大将に選んだのは____

「いけ!」

「"ゴロンダ"!」

____大きな体躯を誇る、二足歩行の格闘パンダ。

パンダとは言うものの、その目付きは鋭く、まるでゴロツキのよう。

傍若無人という言葉が獣の形をしているような、そんな雰囲気を漂わせている。

その気性は荒く、如何なる敵が相手だろうと彼は堂々とバトルを挑むのだ。

まさに喧嘩番長、その名も"ゴロンダ"。
 ▼ 378 mTQB7XkZdk 17/04/24 01:20:41 ID:JvbJtc0Q [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゴォロォ!」

ゴロンダは"かくとう"と"あく"の複合タイプ。

特に"かくとう"は、"ノーマル"のレジギガスに有効打だ。

どうやらカルムは、確実にレジギガスを仕留める算段らしい。

……と。

「……さて」

「そろそろ起きてもらおうか」

ここでクロツグは、一言そうボソッと呟いて、不敵な笑みを浮かべた。

ゴロンダが出陣してもなお余裕の態度で腕を組むクロツグの、その目線の先には……。

「……、……」

……レジギガス。

しかし。

何やら様子がおかしい。

レジギガスは突然、何故かおもむろに立ち上がり始めた。

ズッシリ重みのある巨体を、突き動かされるかのように起こしていく。

すると、レジギガスの顔とも言えるあの"点字"の部分が_____
 ▼ 379 mTQB7XkZdk 17/04/24 01:25:05 ID:JvbJtc0Q [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……!!!」

_____赤く光った。

そして次の瞬間。

レジギガスは、発した。

「……システム、キドウ」

「モクヒョウ ヲ ホソク ……」

____"システム、起動"。

"目標を捕捉"。

そう。

レジギガスはポケモンでありながら……。

「……え!?」

……"人の言葉"を、喋ったのだ。

「スロースタート ノ カイジョ ヲ カクニン」

「タダチ ニ テキ ヲ ハイジョ スル」

声色からして、明らかに今までとは雰囲気が異質すぎる。

一体これから、何が始まろうとしているのか……。
 ▼ 380 ッギョ@うみなりのスズ 17/04/24 01:29:12 ID:Tei6V.s6 NGネーム登録 NGID登録 報告
あれ、もう5ターン経ちましたか……?
 ▼ 381 オガエン@こうこうのしっぽ 17/04/24 01:38:00 ID:kXl8GBNw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3、4ターンくらいじゃない?
 ▼ 382 ガルガン@りゅうのキバ 17/04/24 05:50:35 ID:8zUoFNxA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まあクロツグさんのだし
支援
 ▼ 383 レベース@すくすくこやし 17/04/24 05:59:05 ID:gUVXuB2M NGネーム登録 NGID登録 報告
>>380
>>347にスロースタートの効果は暫くの間って書いてあるからターン数は関係ないのでは?

動いて戦うとなるとターンとか表現し辛くなるし
 ▼ 384 ンバーン@ブルーカード 17/04/24 20:53:26 ID:FQDzoDuQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 385 ミラミ@みどりのかけら 17/04/24 21:56:15 ID:BcnD0Kaw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 386 mTQB7XkZdk 17/04/25 00:42:45 ID:KBGXV2YQ [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「よし……」

「……レジギガス、進め!」

司令塔のクロツグは、降り注ぐ霰に身を打たれながらも、力強い指示でレジギガスを始動させる。

レジギガスは先程、"スロースタートの解除を確認"……と言った。

その言葉が本当だとしたら。

まずレジギガスの速度は、これまでの____

「……リョウカイ」

____倍になる。

「____」

この時。

レッドには見えなかった。

見えているつもりではあったが。

ほんのコンマ数秒という、そんな一瞬の間に何かが起きたことを気付けなかった。
 ▼ 387 mTQB7XkZdk 17/04/25 00:43:27 ID:KBGXV2YQ [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「な____」

さっきまで目の前に居たはずのレジギガスは、霞のようにうっすらと消えていく。

あれはもしかして、"残像"……という奴だろうか。

だとすれば、本物は一体どこに。

すると。

「ガッ……」

同じく自分の目の前に居たカメックスが。

なぜか後ろに吹っ飛んで。

「ガメェェァァッ!?」

その先にあった氷山に衝突し、埋め込まれてしまっていた。

「カメックス!?」

周辺の氷が木っ端微塵に粉砕されたことによって、白く冷たい煙が立ち込める。

肌に触れると溶けていく結晶が、レッドの体を少し濡らした。

暫くして、徐々に大気へと失せていく純白の霧。
 ▼ 388 mTQB7XkZdk 17/04/25 00:44:51 ID:KBGXV2YQ [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
するとその向こうに居たのは。

勇ましく拳を前に突き出し、かつてない程の闘気を漂わせた……不屈の巨人。

「…… テキ ノ タイリョク …… ノコリ 60% ト スイソク」

レジギガスは、カメックスの命の灯火がもうすぐ半分を切りそうなことを淡々と述べる。

アレに心はあるのか。

こちらを潰そうとする"殺気"のような物は伝わってくるが、"慈悲"のような物は全くもって皆無だ。

まるでロボットのよう。

アレは恐らく、こちらが完全に沈黙するまで絶え間なく襲来してくるだろう。

果たして自分達は、立ち向かっていけるのか。

あんな化け物に。

二対一のハズなのに、全然有利な気がしない。

しかし、立ち止まってなどいられるか。

「立ってくれ、カメックス!」

「カ……メェ!」

氷の瓦礫を退けて、傷だらけで起き上がるカメックス。
 ▼ 389 mTQB7XkZdk 17/04/25 00:46:14 ID:KBGXV2YQ [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
その息は荒く、既に大きく体力を消耗しているようだった。

今のような攻撃をもう一度受けてしまえば、間違いなく致命傷となりえる。

そうならないためにも、次は確実に見切らなければならない。

「今助けるぞ!」

すると、このタイミングでカルムも出撃宣言。

「ゴロンダ、"バレットパンチ"!」

「ゴゥ!」

ゴロンダは、自身の拳を後方に向けて構え。

次の瞬間、瞬きと同等の速度でレジギガスに接近し。

「ロンッ!」

あたかも西部劇の、銃弾を撃ち込むガンマンのような早業で、レジギガスに必殺"バレットパンチ"を浴びせた。

「!!……」

ダメージを受けたレジギガス。

スロースタートが解け攻撃に重きを置いたことで、先程までのような鉄壁の守りは薄れたようだ。
 ▼ 390 mTQB7XkZdk 17/04/25 00:46:51 ID:KBGXV2YQ [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「からの!」

「"スカイアッパー"!」

続けてカルムは指示する。

まずは猫だまし的にバレットパンチをさせてから。

「ゴロゥ!」

拳を振り上げ相手の顎を貫く"スカイアッパー"で、コンボを繋いだ。

「コウカ……バツグン……」

不動と思われたレジギガスの肉体が、微かに揺れる。

勝利への希望が望めた瞬間だった。

「俺達もやるぞカメックス!」

「ガメッ!」

レッド達も加勢に入る。

「カメックス、"ハイドロポンプ"!」

「ガメァァァ!」

カメックスは、背負いし二つの大砲からハイドロポンプを噴出した。
 ▼ 391 mTQB7XkZdk 17/04/25 00:47:29 ID:KBGXV2YQ [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
守りを捨てた今のレジギガスになら、これでも十分なダメージが期待できる。

「……!!」

やはり、先程よりは断然堪えているようだ。

あの巨体がハイドロポンプに圧されている。

そして、レジギガスが水浸しになったところで____

「良いぞ!」

「そしたら……"ふぶき"だ!」

____レッドはそこから、"伏線"を回収する。

「ガァァメェェ!!」

カメックスの"ふぶき"が炸裂。

すると、ハイドロポンプによって水に濡れたレジギガスの体が……。
 ▼ 392 mTQB7XkZdk 17/04/25 00:48:01 ID:KBGXV2YQ [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……システム、トウケツ」

……なんと。

段々と、凍てつき始めた。

「おぉっ!さすがレッドっ!」

このレッドの狙いを即座に理解したのはコルニ。

彼女が称賛したのは、ハイドロポンプの"活用"だった。

レッドはハイドロポンプを直接のダメージソースとせず、次の"ふぶき"に繋げる土台として利用したのである。

そしてそんな彼の思惑通り、レジギガスは自身の体に霜が張り付き、思うように身動きが取れない。

作戦は成功。

ここから一気に、チーム・カロスは攻め立てる。
 ▼ 393 キカブリ@しゅんぱつのハネ 17/04/25 01:03:51 ID:m0fwtB7Q NGネーム登録 NGID登録 報告
これはクオリティ発動で速攻融けるやつですわぁ…
 ▼ 394 イナン@パワフルハーブ 17/04/25 05:56:29 ID:RTVy70.6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フロンティアクオリティ発動不可避
支援
 ▼ 395 ノワール@ひかりごけ 17/04/25 06:21:37 ID:LiqutWsw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 396 マナッツ@ヨプのみ 17/04/25 17:24:03 ID:DeHp4WJE NGネーム登録 NGID登録 報告
これは支援
 ▼ 397 mTQB7XkZdk 17/04/26 01:05:27 ID:wOQzKpQ2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……が。

そのレッド達の快進撃を、クロツグは許さなかった。

「調子に乗らないで貰おうか!」

「レジギガス!そんな氷……弾き飛ばせッ!」

度重なった攻撃の連鎖も、ここで打ち止め。

クロツグの反撃が始まる。

「リョウ……カイ……」

レジギガスは、自らを覆いし冷ややかな氷に、内部のシステムまで凍結させられながらも。

主たるクロツグの声が聞こえると、"了解"と意思表示。

彼は、半ば強引に凍った体を動かそうとする。

そして……。

「……エネルギー、サイダイシュツリョク」

……なんと。

レジギガスに付いてた氷達が、徐々に熱のような何かによって溶け始めた。

「嘘……だろ……」

レッドは、その狂気じみたレジギガスの執念に唖然とし、戦慄する。
 ▼ 398 mTQB7XkZdk 17/04/26 01:06:07 ID:wOQzKpQ2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
恐怖のあまりか、外気は寒いハズなのに、服の裏側から物凄い熱気が込み上げてくるようだ。

せっかく自分が練った策が成功したにも関わらず、それすら無力化される悔しさ。

汗に浸りしレッドの胸中。

「トウケツリツ……ノコリ……20%……」

順調にレジギガスが解凍されていく、そんな絶望の中で。

____大声をあげ、その空気を断ち切る者が居た。

その者は……。

「何をしている、レッド!」

「奴が氷を溶かすのに必死な今がチャンスだろう!」

……カルムだった。

カルムは、ただその場に呆然と立っているだけのレッドに激昂し、怒号を打ち鳴らす。

そして。

「やれ、ゴロンダ!」

「"アームハンマー"!!」

ゴロンダと共に、勇猛たる進撃。

いつ、如何なる場合でも、カルムは好機という好機を見逃さない。
 ▼ 399 mTQB7XkZdk 17/04/26 01:07:08 ID:wOQzKpQ2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
例え完璧に自分の思い通りにはならなくとも、そこにチャンスがあるならば、彼は恐れず飛び込むのだ。

「ロォアアアア!」

そんな彼の勇気に触発され、ゴロンダも攻撃に全力を注ぐ。

レッドのカメックスが作った"動かない的"に向かって、一心不乱に。

ドカン。

と、一発。

「ジ……ジジ……」

その時、レジギガスから無機質な機械音が鳴った。

まるで、砂嵐のテレビ画面のような。

ゴロンダが下した"アームハンマー"の、凄烈な衝撃によって。

カルムの必殺の一手は、見事に命中したのだった。

"かくとう"の"アームハンマー"は、レジギガスには効果抜群。

「システム ノ 60% ヲ……ソンショウ……」

あまりに強い衝突だったために、レジギガスの氷は跡形も無く砕け散ったが……。

……その代わりに、過半数を超えるダメージをレジギガスに与えられたようだ。
 ▼ 400 mTQB7XkZdk 17/04/26 01:08:04 ID:wOQzKpQ2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ぐ……!」

凍結状態からの脱出が完了する前に大打撃を食らってしまったレジギガス。

クロツグは苦悶を表情にて露にする。

しかし同時に、これでレジギガスは氷の獄から解放された。

「システム、フッキュウ」

結局"アームハンマー"の一撃だけでレッド達のターンは終わってしまったが、ゼロよりは遥かにマシ。

勝利には格段に近付いたと言える。

だが。

「もう好きにはさせんぞ!」

ここからが正念場だ。

クロツグもいよいよ、自分のピンチを本格的に危惧し始めてきたことで、面立ちにも真剣味を帯びている。

恐らくこの次からは、指示の方にも隙を無くしてくるだろう。

そんな彼の的確な采配と、レジギガスの圧倒的な戦闘力が合わさるのだ。

どう考えたってヤバい。

だけど、あと少し。

あと少しで……レジギガスを倒せる。
 ▼ 401 ルチャイ@しんかいのウロコ 17/04/26 06:00:58 ID:.//OL2DM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 402 アームド@パークボール 17/04/26 06:37:57 ID:MtROAP5A NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 403 mTQB7XkZdk 17/04/27 01:56:05 ID:79Rt8.kQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「レジギガス、カメックスに"のしかかり"!」

「!!」

レジギガスは、その巨体とは裏腹に猛スピードで前進。

足踏みの度に雪原に亀裂を生じさせながら、カメックスに向かってダイブした。

勢い良く飛び上がった巨人の肉体は、カメックスを押し潰さんと落ちてくる。

「避けて、"あくのはどう"!」

「カメッ!」

カメックスはそれを、甲羅に籠り体を回転させ、地面を滑って回避。

そして"のしかかり"の脅威から逃れた後、今度は砲身から悪意の光線"あくのはどう"を放った。

「……!」

"あくのはどう"は、レジギガスに命中。

しかし、"みず"のカメックスは本来この技を得意としない。

あくまで、"あく"で弱点を突けるポケモンをピンポイントに狙うのを目的に覚えさせた技だ。
 ▼ 404 mTQB7XkZdk 17/04/27 01:56:41 ID:79Rt8.kQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
そのため、ただでさえしぶといレジギガスには大したダメージを与えられない。

が、"あくのはどう"には単純なダメージの他にも追加効果がある。

それは。

「……システム、イチジテイシ」

「くそっ!……"ひるみ"か」

当てた敵を怯ませる効果だ。

怯んだ敵は、一定時間行動することができない。

レッド達にもう一度チャンスが舞い込む。

「ゴロンダ、もう一度"アームハンマー"!」

「カメックス、"ハイドロポンプ"!」

今こそ総攻撃をかけ、一気に畳み掛けるべし。

「ロォン!」

ゴロンダの、金槌が如し右腕と。

「ガメェェァ!」

カメックスの、水の必殺技が、一斉にレジギガスに襲いかかった。
 ▼ 405 mTQB7XkZdk 17/04/27 01:57:28 ID:79Rt8.kQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……だが。

「言ったハズだ!」

「もう好きにはさせない……と!」

クロツグは決して勝負を諦めない。

凍ろうが怯もうが、勝つものは勝つ。

彼は"王"を名乗る者。

タワー・タイクーン。

負けることは許されない。

「レジギガス、全て弾き返せ!」

「リョウカイ」

レジギガスは、己の内蔵エネルギーを外部に解放させ、衝撃波を生み出した。

その威力は極めて絶大で。
 ▼ 406 mTQB7XkZdk 17/04/27 01:58:09 ID:79Rt8.kQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゴロッ!?」

「カメッ!?」

ゴロンダの"アームハンマー"も、カメックスの"ハイドロポンプ"も、皆かき消されてしまう。

高い実力を持つ二匹が束になっても、レジギガスは単体でそれらと対等に戦えるだけの力を持っている。

もしこれがタイマンであったなら、まるで歯が立たなかったであろう。

こちらにはまだ"数"というアドバンテージがある。

しかし、単純に手数で圧し切るのは難しそうだ。

更に必要となるのは……"連携"。

数が多いことの利点を最大限に活かすことで、この局面は突破できるハズ。
 ▼ 407 ータス@ボイスチェッカー 17/04/27 05:57:44 ID:QVVn.wvw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レッドって連携苦手そう
支援
 ▼ 408 mTQB7XkZdk 17/04/28 02:21:24 ID:y4sNSlQI [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「!」

そこでレッドは、あたかも脳内に電流が走ったかのような感覚に見舞われた。

閃いたのである。

自分達だからこそ出来る連携……という奴を。

(ザクロさんとの戦いでも、この戦法は有効だった)

(あれがあのレジギガスに通用するかは分からないけど……やるしかない!)

それは、レッドのカメックスとザクロのバンギラスが対峙した時のこと。

そこで発揮されたカメックスの"とあるポテンシャル"は、今回の戦いでも同じように活かせるのではないか。

若干ダメ元でもあるが……。

「カルム!……ちょっと良い?」

「?」

……レッドはカルムに提案する。

恐らくこの試合最後となるであろう、作戦会議を。
 ▼ 409 mTQB7XkZdk 17/04/28 02:22:05 ID:y4sNSlQI [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
結果は。

「……悪くはないが」

「できるのか?」

……作戦自体は許容の範囲だが、カルム曰く難易度が高いらしく。

きちんと策が成功するかどうかを危惧していた。

半信半疑なカルムのこの問いに、レッドは。

眉を鋭く引き締めて。

目に宿りそうな迷いを全て断絶して。

心に訪れそうな不安を跡形も無く振り払って。

実直に、言った。

「できる」

「信じてくれ」

カルムに、カロスの勝利を約束しながら。

"可能"と、宣言してみせた。
 ▼ 410 mTQB7XkZdk 17/04/28 02:22:52 ID:y4sNSlQI [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ははっ」

「オーケー!……裏切ってくれるなよ?」

話はまとまり、互いの意思が一つとなる。

クロツグが完全な"個の力"で挑むというなら。

こちらは"チームの力"で臨むまで。

「カメックス!」

「"アレ"……やってくれるか!」

その指示があった時。

カメックスは、ニヒルに笑って。

「……ガメェ!」

"お安いご用!"と、鼻息をフンスと鳴らしグーサインした。

そして。

「ガメガメェ!」

レジギガスに向かって、果敢に走る。

ゴロンダはそこに並走しない。

どうやらカメックスは、単身でレジギガスとの一騎討ちに挑戦するようだ。
 ▼ 411 mTQB7XkZdk 17/04/28 02:24:08 ID:y4sNSlQI [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ふっ……無謀な」

クロツグは嘲笑うようにして、そのカメックスの勇姿を無謀と切り捨てる。

「返り討ちにしてくれる!レジギガス、"かみなりパンチ"!」

「code:thunder……」

レジギガスは、豪腕に電撃の力を付与させて、カメックスを強襲した。

高く飛び上がり、黄色い稲妻を浴びせに行く。

「よけろ!」

対してレッドは、レジギガス相手にカメックスを単騎で送り出すという大胆な作戦を取りながらも、慎重に回避を司令。

「ガメッ!」

カメックスは、電流迸る巨腕が到達する前に体を横にズラした。

「……」

攻撃を外したレジギガス。

しかし、彼には一切の表情も言葉もない。

ただひたすら、標的を追うだけ。

攻撃が、当たるまで。
 ▼ 412 mTQB7XkZdk 17/04/28 02:24:40 ID:y4sNSlQI [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「レジギガス、今度はゴロンダに"ほのおのパンチ"!」

「code:fire……」

次のターゲットはゴロンダ。

灼熱の猛炎が、辺りの氷を溶かしながらレジギガスの拳に宿る。

しかし、その攻撃を阻止せんと真っ先に動いたのは。

「させるか!」

「カメックス、"ハイドロポンプ"で消化するんだ!」

……カルムではなく、レッド。

「ガメェェァ!」

カメックスは、"ハイドロポンプ"をレジギガスの腕目掛けて発射する。

それが直撃すると、レジギガスの身にまとわりついていた炎が一瞬にして消え失せた。

「ぐっ……なら、"かみなりパンチ"!」

クロツグは、炎がダメならと言わんばかりに今度は"かみなりパンチ"を指示。

これは、流石のカメックスでも止められまい。

……と、思っていたら。
 ▼ 413 mTQB7XkZdk 17/04/28 02:25:22 ID:y4sNSlQI [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「腕に向かって"ふぶき"!」

「ガメッ!」

レッドは、濡れたレジギガスの腕に向かって"ふぶき"を吹かせた。

氷雪が舞う美しきその絶景は、みるみる内にレジギガスの腕全体を凍り付かせていく。

これではエネルギーが行き届かず、"かみなりパンチ"が出せない。

「ガァーッメッメ!」

"どうだまいったか"と、カメックスはこれでもかというくらいに笑いに笑って見せた。

レジギガスのありとあらゆる攻撃を、的確な処理で全て無効化に成功した今のカメックスはまさに絶好調。

自信過剰な彼の元々の性格もあり、メチャクチャ調子に乗っている。

それこそ、挑発とも捉えられてしまいそうな程に。

「くぅぅ!なんだかなぁ!オイ!」

流石に苛立ちを隠せないクロツグだが、一方でレジギガスは……。
 ▼ 414 mTQB7XkZdk 17/04/28 02:25:57 ID:y4sNSlQI [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「…………」

……やはり、予想はしていたが。

このカメックスの傲慢な態度にも、全くカッカした様子を見せない。

ただただ、無機質な点字の顔で見つめるだけだ。

「……やっぱり、あの時のようにはいかないか」

血の気が多いバンギラスと、常に冷静沈着なレジギガスでは精神力の強さに雲泥の差がある。

勿論、届かぬ雲はレジギガスの方だ。

カメックスがこれだけ鬼の首を取ったが如く無意味に騒ぎ立てても、苛立つ気配が全く無い。

故に、レジギガスを挑発するのは極めて困難だということが、今この瞬間を以て確定的だと判明したわけである。

だけど。

それでもカメックスは、稼がなければならない。

"時間"を。
 ▼ 415 リムガン@マグマのしるし 17/04/28 06:02:30 ID:cPMcrv2U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 416 ガユキノオー@つきのふえ 17/04/28 07:23:49 ID:nIU5WwFg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この感じゴロンダはきあいパンチぽいな
 ▼ 417 ングース@イバンのみ 17/04/28 07:24:53 ID:cBybMwtY NGネーム登録 NGID登録 報告
(正直これこのスレで終わるのか?終わってほしくないけど)
 ▼ 418 ガハガネール@メダルボックス 17/04/28 14:30:25 ID:HkNiCVeU NGネーム登録 NGID登録 報告
>>417
むしろ終わると思ったのか……
 ▼ 419 ガバンギラス@むしのジュエル 17/04/28 14:45:47 ID:PxvsKDLc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何かだんだんと
ギガスが「ジ・アース」に見えてきたwww
支援
 ▼ 420 シマリ@ピーピーマックス 17/04/28 18:03:58 ID:m9zLfYCY NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 421 ガイアス@やけたきのみ 17/04/28 18:50:41 ID:0iH.YdQY NGネーム登録 NGID登録 報告
一戦目で400越えたからな

いつまでも支援
 ▼ 422 ックル@ミストシード 17/04/29 12:37:15 ID:2IautvJU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最初はレッドTueeeeeeのSSかと思ったけどめっちゃ面白くて衝撃を受けたwww

支援
 ▼ 423 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:21:33 ID:b1VXuVMk [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……!!」

レジギガスは、もう片方の腕で、凍てついて動かせない方の腕の氷をぶん殴って破砕。

両腕の自由を取り戻す。

「よし……」

再び攻撃できるようになり、一息つくクロツグ。

だが先程の攻防からして、傍らのカメックスはそう簡単にゴロンダへの攻撃を許してはくれなさそうだ。

しかしなぜ、彼はあそこまで徹底して、動かぬゴロンダを守ろうとするのか。

クロツグはそう考えた時、ふと気付く。

「ロォォォ……」

ゴロンダは、ただ単に動いていないだけではない。

蓄えているのだ。

力を。

彼は腰を低く落とし、右手に沸き立つ気力を集めている。

だが普通、あんな隙だらけの行為は自殺と同意だ。

己の全神経を一点だけに集中させれば、敵からの攻撃には完全に無防備となってしまう。
 ▼ 424 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:22:04 ID:b1VXuVMk [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが、そんなゴロンダのノーガード状態をカバーするのがカメックスの役目だとしたら……。

「……くっ」

「早急に片付けなければやられる、か」

……カメックスを振り抜いてゴロンダを仕留めるか。

あるいはカメックスを先に仕留めてから、ゴロンダをじっくり料理するか。

その二択だ。

果たしてどちらを選べば、自分は勝てるのだろう。

「……ええい!」

「悩んだところで仕方がない!」

クロツグには、考慮する時間すら惜しかった。

そうこうしている内にゴロンダが力を溜めきってしまったら、元も子もないからである。

「レジギガス!」

「カメックスに"にぎりつぶす"!」

そしてクロツグが選んだのは後者の道。

"急がば回れ"というように、一つ一つ確実に標的を倒していく作戦に出た。

この展開は、レッドとしては中々に好都合。
 ▼ 425 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:23:27 ID:b1VXuVMk [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
(良いぞ!)

勿論、クロツグがこちらを無視しようものなら、それはそれで徹底的にレジギガスの後ろを叩いてたが。

予め自分が思い描いていた筋書きの通りに事が運ぶなら、それに越したことはない。

「カメックス、絶対に捕まるな!」

「"ふぶき"で向かい風を作れ!」

「ガメェ!」

カメックスは、極大氷結奥義"ふぶき"で、雪山をより一層純白に塗り潰す。

霰と粉雪の融合は、レジギガスを極寒と裂傷の渦に誘った。

「……!!」

レジギガスはカメックスを握り潰しに行こうとするも、"ふぶき"による風圧のせいで前に進めない。

そして、一緒に流れ込んでくる無数の氷塊がレジギガスの体に傷を付けていく。

この巨人をも苛める強風に、クロツグは。

「"ほのおのパンチ"で溶かしてしまえ!」

「リョウカイ……」

炎の鉄拳で"ふぶき"を振り払うことで凌ぎ。

カメックスまでの道が拓けたところで。
 ▼ 426 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:24:22 ID:b1VXuVMk [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「!!」

レジギガスは再び始動。

大地を強く踏み、目標へとひた走る。

「オワリダ……!」

ついにレジギガスは、手を伸ばした。

ここまで自らに楯突いてきた、勇敢で愚かな戦士に。

「カメッ……!」

「よけろ!」

レッドはすかさず回避を指示した。

だが。

「ガッ!?」

____捕まった。

捕まってしまった。

「しまった……ッ!」

レジギガスの方が、スピードで上手だった。

レジギガスはその右手でカメックスを鷲掴みにし、ミシミシと掴む強さを上げていく。
 ▼ 427 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:25:04 ID:b1VXuVMk [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ガァァァァッ!?」

その時、カメックスの全身に軋むような痛みが迸った。

彼は激痛のあまり、この世の物とは思えない程の苦辛の表情をさらけ出してしまう。

まるで引き抜かれたマンドラゴラのような叫びと共に。

「カ……カメックス!」

万事休すだ。

このままレジギガスの必殺"にぎりつぶす"が決まれば、カメックスは間違いなくお陀仏。

即行で瀕死となる。

だが……。

「悪いが、ここで時間を浪費するわけにはいかない!」

……クロツグには、その時間さえ惜しかったのだった。

次の瞬間、クロツグは____

「レジギガス!」

「残った左腕で、止めの"かみなりパンチ"!」

_____カメックスに、瞬殺の一手を仕掛けた。
 ▼ 428 ンターン@むしのジュエル 17/04/29 23:25:41 ID:veQrfknY NGネーム登録 NGID登録 報告
グロ注意やんけ
 ▼ 429 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:25:43 ID:b1VXuVMk [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ガッ……!?」

「……リョウカイ」

"にぎりつぶす"で痛め付けている時間をもタイムロスとしたクロツグ。

なぜなら、横で力を溜めているゴロンダの存在があったからだ。

奴をあのまま野放しにしていたら、どうなるか分かったものでは無い。

とにもかくにも、カメックスを先に倒す手段を選んだからには、クロツグは早急にカメックスを片付けなければならなかったのだ。

なので。

「カクゴ……」

ここでカメックスには。

雷神の力を以て。

……ご退場を、願う。

「……ガッ」

____ついに、拳が振り切られた。

黄金の雷を纏ったレジギガスの左腕が、カメックスの顔面をぶち抜く。
 ▼ 430 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:26:53 ID:b1VXuVMk [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ガァァァメェェェッ!!」

効果抜群。

一撃必殺。

天下無双のレジギガス、その無類たる所以が今ここに示された。

「カ……」

「カメックスーーーーッ!!!」

後ろに吹き飛ばされたカメックスを刮目し、レッドは慟哭をあげる。

彼の全身には、巨人への畏怖が巡った。

そして悟る。

恐らく、単体での戦闘力ならあのレジギガスは"最強"だと。

レッドが今まで戦ってきたどんなポケモンよりも恐ろしい力を持っている。

その恐怖を身に染みて味わって、レッドは本気でかつてない程の激震を感じたのだった。

なにせ、レッドの手持ちでも随一の防御を誇るカメックスが……。

「……ガァ……」

……あんなにも無様に氷山にめり込んで、目を回しているのだから。
 ▼ 431 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:27:35 ID:b1VXuVMk [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「カメックス、戦闘不能!」

「これでレッド選手は全滅です!」

審判から、絶望の一言が放たれた時。

レッドの目の前は真っ暗になった。

「……ッ!」

敵わなかった。

己の死力を注ぎ込んでも、あのレジギガスには。

これで時間稼ぎは失敗。

次はゴロンダがやられる番____

____そう確信した。

だが。

「十分だ」

そんなレッドの、真っ暗闇な視界を切り裂く一声。

そして。

「ゴロォォォアアアッ!!」

打ち破る景色。
 ▼ 432 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:28:49 ID:b1VXuVMk [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「な……」

「い、いつの間に!?」

レジギガスの頭上に一筋の"矢"が届きそうだったところを、クロツグは今更ながらに気付く。

そう。

ゴロンダは、無事にチャージ完了したのだ。

勝負を決めるための力を。

クロツグの意識がゴロンダに行く、そのギリギリの直前というところで。

「待たせたな……レッド、カメックス」

「お前らの奮闘は……決して無駄にはしないぜ!」

……レッドの目には、カルムが救世主に見えた。

「カルム……!」

時間稼ぎは失敗に終わらず、活きて勝利への引き金となる。

ゴロンダの技が決まる時。

「いけぇ!ゴロンダッ!」

「フルパワーの"アームハンマー"で……全てを終わらせろッ!」
 ▼ 433 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:30:37 ID:b1VXuVMk [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゴロォォォアアアッ!!」

巨人の最期が、訪れるのだ。

ゴロンダは、膨張した右腕の筋肉に全体重を乗せ。

レジギガスという大きな存在すら、一本の"釘"に見立てて。

自身の全てをかけた一撃を____

「ロンダァッ!」

____その釘に、打ち込んだ。

「ジッ……!!!」

脳天を貫かれたレジギガス。

ゴロンダの"アームハンマー"が、巨兵の動きを完全に停止させた。

「……っ」

一瞬、会場の歓声が止む。

そして。
 ▼ 434 mTQB7XkZdk 17/04/29 23:31:15 ID:b1VXuVMk [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……システム……カンゼンテイシ……」

レジギガスは、そのまま力無く前のめりになり。

点字の光が消えると、以降は何も言葉を発しなくなった。

これが意味するのは、レジギガスの完全シャットアウト。

つまり……"瀕死"。

よって。

「レジギガス、戦闘不能!」

「よって勝者……カロス代表チーム!」
 ▼ 435 イコグマ@ポイントアップ 17/04/30 08:23:55 ID:7pYDGVR6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うおおおおお!
支援支援
 ▼ 436 ケニン@クロスメール 17/04/30 08:51:12 ID:y70t0f4Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あっ普通にアームハンマーだったか
 ▼ 437 ッチャマ@クサZ 17/04/30 09:03:28 ID:evbSzQkM NGネーム登録 NGID登録 報告
普通の技も溜め演出できるのはゲームではない利点だよね

支援
 ▼ 438 ガフシギバナ@メタグロスナイト 17/04/30 20:12:25 ID:SqHgtS5M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

シロナのカブはメスじゃない?
 ▼ 439 ルキモノ@きちょうなホネ 17/04/30 20:16:29 ID:Nt4Da4tU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アームハンマーで貯めるってどういうこっちゃ
 ▼ 440 mTQB7XkZdk 17/05/01 00:54:16 ID:WTdbypWQ [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
カロスとシンオウの粋同士が激突した苛烈なバトル。

そこに栄えある白星を盛大に打ち上げたのは、カルムとレッドのカロスチームだった。

カメックスの粘りとゴロンダの一撃必殺が、この栄光をモノにしたのである。

まずは一回戦突破。

我らがカロスが勝ったというところか、観客たちは沸きに沸いた。

そんな有象無象の人々の中に混じる四天王・ズミもまた、カロスの勝利に微笑む。

「……まあ、この辺りは流石と言ったところですね」

ところでズミは日頃、チャンピオンよりもブティックの仕事を優先させているカルムのことを、あまり良くは思っていない。

だが一方で彼は、トレーナーとしてのカルムの実力を本気で認めている部分もある。

故に今回のカルムの活躍は素直に嬉しかった。

彼と同じカロスの民として。

そしてそれは当然、コルニも同じだろうと、ズミはふと横を振り替えって彼女の姿を確認。

……が、しかし。
 ▼ 441 mTQB7XkZdk 17/05/01 00:54:54 ID:WTdbypWQ [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……レッド」

……何故かコルニは、ひどく気がかりそうな表情を浮かべていたのだった。

カルムの相棒"レッド"の名を呟きながら。

「……っ」

ズミは"なぜそんな顔を?"と聞こうとする。

だが、言う前に何となく察した。

コルニは今、カロスの勝利に対する喜びよりも____

____全滅してしまったレッドの気持ちを案じているのだと。

(……やはり彼女と彼は、ただならぬ関係のようだな)

確かにカロスは勝ったが、レッドは負けた。

もしそのレッドがコルニにとって特別な存在だとしたら、彼女が悲しむ動機には十分なり得る。

そう考えた時、ズミから彼女に送る言葉は何もなかった。
 ▼ 442 mTQB7XkZdk 17/05/01 00:55:25 ID:WTdbypWQ [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
……ハズだったのだが。

「……彼は、良い働きをしてくれました」

「それはまるで、料理を完成させるにあたり必要不可欠な"隠し味"のような……」

……つい、言葉が出てしまった。

これは気休めか、それとも励ましか。

どっちとも捉えられるような言い方をしてしまって、若干の後悔の念に駆られるズミ。

余計なことを言った……と。

するとコルニは。

「……ズミさんって、何でも料理に例えますよね」

クスッと、ズミの癖を少し笑って。

「でも」

「今日のレッドも……カッコ良かったなぁ」

本日のレッドの奮戦ぶりを、褒め称えた。
 ▼ 443 mTQB7XkZdk 17/05/01 00:55:56 ID:WTdbypWQ [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……」

「……ふっ」

どうやらズミの言葉は、本当に余分だったらしい。

それこそ彼風に言えば、パスタに垂らしすぎたオリーブオイルのような。

彼女の彼を想う気持ちは、この程度で崩れるような物ではない。

そう確信して、ズミは美しく思った。

彼女らの結んでいる……絆を。
 ▼ 444 mTQB7XkZdk 17/05/01 00:56:32 ID:WTdbypWQ [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……選手用の観戦席。

そこでカロスとシンオウのチャンピオン達は、改めて言葉を交わしていた。

「いやぁなんだかなぁ!強いなキミ達!」

「ホント……最近の子って本当に強いのね」

クロツグとシロナは、負けてても何だか貫禄を感じる。

年功者だからということもあろうが、やはりそれだけ彼らの実力が他とは桁外れだったということなのだろう。

そのせいか、カルム達は……全く勝った気がしなかった。

なにせ、結局最後は二匹がかりでレジギガスを挟み撃ちにしたわけだから、正直フェアだったかと言われればそうでは無いわけで。

これがシングルだったらと思うと心底ゾッとする。

「今度は1vs1でやりたいな!」

「……ソウデスネ」

クロツグのそんな願いも、カルム達からしてみれば恐怖の誘い。

心にも無い返答はカタコトに。
 ▼ 445 mTQB7XkZdk 17/05/01 00:57:11 ID:WTdbypWQ [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「それでは、次の戦いも頑張ってくれよ!」

「私たちはこの席から、貴方達のことを応援してるわね」

……まあ、何はともあれ勝ったのだ。

もっとイイ気になっても良いハズ。

それに、これからはクロツグ達も自分達のことを見守ってくれる。

だからこそ、負けられない。

「……はい!」

「頑張ります!」

「ピカッ!」

そう答えるレッドには、感じた物が一つあった。

それは、クロツグ達から託された想い。

彼らと会話をする度に、それが胸の内に入って心を熱くしてくれる。

自分達はきっと、今この瞬間を以て背負ったのだろう。

そして、受け継いだのであろう。

シンオウの……誇りを。
 ▼ 446 ンノーン@ルアーボール 17/05/01 06:02:55 ID:N7csfBLA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ハンマー
 ▼ 447 ガバンギラス@ゴーストメモリ 17/05/01 07:27:04 ID:zv43PCJs NGネーム登録 NGID登録 報告
久々に読んだ
てっきり気合いパンツかと
 ▼ 448 mTQB7XkZdk 17/05/02 02:09:28 ID:e0oqtgiQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「……さぁ、さぁ!」

「お次は第二試合!」

「イッシュvsホウエンです!」

第一試合が終わり、戦いは次のステージへ。

幼きチャンピオン・"アイリス"と、謎の青年・"N"のイッシュ勢。

デボンの御曹司・"ダイゴ"と、水面の貴公子・"ミクリ"のホウエン勢。

この二つのカードが激突する。

一方で、本日の自分達の試合を終えたレッド達は、選手用の観戦席に腰を掛け、体を休めていた。

「さてさて、連中はどんなバトルをすんのかねぇ……レッド」

「良く見ておかないとね」

「ピカッ!」

レッド達カロスの代表にとって、この第二試合は重要だ。

このバトルに勝った方が、二回戦でレッド達と戦うことになるからである。
 ▼ 449 mTQB7XkZdk 17/05/02 02:09:54 ID:e0oqtgiQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
どちらが相手になるにしても、レッドとカルムはこの試合をじっくり観察して、それなりの対策を立てなければならない。

「俺は、あのアイリスという子が居るイッシュのチームを応援しよう」

と、カントー・ジョウトのワタルは突然そう口走った。

ワタルのこの発言に、同じくカントー・ジョウトのグリーンはこう返す。

「……ワタルさんってロリコ」

「断じて違う」

返される前にワタルは遮った。

幼女を応援するのは決して己の性癖によるモノでは無いと強く否定した上で。

ワタルは、アイリスを応援する理由を次のように述べる。

「あの子は、俺や"イブキ"と同じ"ドラゴン使い"だそうじゃないか」

「何かこう、親近感が湧いてきてね」

……要は、仲間か何かと似たような感情を彼女に抱いているということか。

それはそれでちょっと鳥肌が立つグリーンだったが、それでもギリ納得してその場はそれ以上何も言わなかった。
 ▼ 450 mTQB7XkZdk 17/05/02 02:10:27 ID:e0oqtgiQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「僕は断然、ホウエンの二人を応援します!」

一方で、ワタルとは反対にホウエンを応援すると意気込むゴールド。

「む、どうしてだい?」

自分と対立する意見の持ち主に、ワタルは若干のライバル意識を持ちながら彼に理由を聞く。

「だって、憧れるじゃないですかっ」

「ルックス、実力、スター性……全てを兼ね備えた、言ってみれば"最強の二人"!」

「僕、そういうの凄く好きなんです!」

……それはそれは、少年らしいとても純粋な想いであった。

ウキウキ、満面の笑顔でゴールドはダイゴ達に対する憧憬を露にする。

そんなゴールドを微笑ましく思ったのか、彼の横に居たミヅキが。

「ふふっ、ゴー君可愛い♪」

……唐突に、彼の帽子を優しく撫で始めた。
 ▼ 451 mTQB7XkZdk 17/05/02 02:11:11 ID:e0oqtgiQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「えちょ、何するんですかミヅキさんっ!」

ゴールドは、照れ隠しで彼女の手をはね除けようとする。

その二人の様子は、まるで仲陸まじい姉弟のようであった。

(ちっ、ゴールドの野郎イチャイチャすんじゃねーよ)

すっかりミヅキにデレてるゴールドに、淀んだ負のオーラをぶつけるのはグリーン。

(ふっ……若いな)

一方で、妙に達観した暖かい眼差しで彼らを見守るのはカルム。

カルムは、今のゴールドとミヅキの姿を……。

(……アイツ、今はどうしてっかな)

……ありし日の自分達に、重ねたのかも知れない。

(……"セレナ"……)

(見に来て……るわけねぇよな)
 ▼ 452 ネッコ@ズアのみ 17/05/02 05:58:56 ID:fIcAlVKU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
んん?
支援
 ▼ 453 ラナクシ@ピンクのリボン 17/05/02 06:48:45 ID:t.bTIEmU NGネーム登録 NGID登録 報告
グリーンとゴールド入り乱れてね?

支援
 ▼ 454 ースター@いのちのたま 17/05/02 07:40:41 ID:vslmglrw NGネーム登録 NGID登録 報告
セ、セレナ…?
 ▼ 455 マージョ@ホイップポップ 17/05/02 07:49:47 ID:qBH1DlPI NGネーム登録 NGID登録 報告
カルセレですか
 ▼ 456 ードリオ@サイコソーダ 17/05/03 13:52:17 ID:m2aQ0W.o NGネーム登録 NGID登録 報告
あり?
しえーん
 ▼ 457 mTQB7XkZdk 17/05/04 01:48:33 ID:pwTEkYqo [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そろそろ始まるな」

クロツグがそう言うと、代表選手達の目線は一斉に会場の方へと向く。

イッシュとホウエンの代表二組は既にバトルフィールドにて向かい合っていた。

そして、テンションMAXに騒ぎ立てる観客達と。

「さぁさぁ!お待たせしました!」

「これより第二試合です!」

地声とマイクの掛け算で大音量の音声を発する実況。

この賑やかな様相を見る限り、試合開始の時はもうすぐのようだ。

(Nさん……か)

(一体あの人は、どんな戦いをするのだろう……)

レッドが何よりも注目するのは、緑髪の端正な顔付きの青年・"N"。

他の参加者とは明らかに異質な雰囲気を放つ彼の動向から目が放せない……。
 ▼ 458 mTQB7XkZdk 17/05/04 01:49:29 ID:pwTEkYqo [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……観客席から場所は変わって、バトルフィールド。

イッシュ、ホウエン共に、戦闘への最後の下準備が終わったところだった。

「さて……そろそろかな、"ミクリ"」

「ふ……こうして組むのもいつぶりですかね、"ダイゴ"」

"ダイゴ"と"ミクリ"の会話には、何だか気品がある。

貴公子とか男爵とか、そういった位の高い男性同士の社交パーティのようだ。

オルガンのバックミュージックがよく似合いそう。

喧騒道溢れしPWT会場の中でも、この二人の周辺の空間だけは、何故だか切り離されたように高貴だった。

一方で、イッシュサイド。

「"N"のお兄ちゃんはどの子を出すの?」

「うーん……内緒かな」

無邪気に体を振りながら、物静かな"N"に語りかける天真爛漫な少女・"アイリス"。

ワタルも一目置いているように、アイリスはドラゴン中心の手持ちポケモンを使うイッシュのチャンピオンだ。

対してNは、経歴不詳のポケモントレーナー。
 ▼ 459 mTQB7XkZdk 17/05/04 01:50:20 ID:pwTEkYqo [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
その過去は一切の謎に包まれているが……。

……実は、ほんの数時間だけイッシュのチャンピオンに君臨した者が居たという。

それがN……という噂はあるが、真偽は定かではない。

だが、これだけは言える。

Nも含め、この場にいる全員がチャンピオンクラスの化け物トレーナー。

相当の手練れであることは間違いなし。

観客達の盛り上がりも更にヒートアップする。

「イッシュ代表vsホウエン代表!」

「バトル……スタートッ!」

実況の試合開始の号令が鳴った。

そして、代表達が先鋒に選んだポケモン達が解き放たれる……!

「いけ!」

まずはホウエン代表、ダイゴ。

「"エアームド"!」

それは、鋼鉄の装甲で身を固める鳥。

その防御力は破格であり、強い衝撃もモノともしない優れた耐久性を持つ。
 ▼ 460 mTQB7XkZdk 17/05/04 01:50:54 ID:pwTEkYqo [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
反面、空を飛ぶ速度が体の重みのせいか極端に遅く、戦闘中は自由に移動できないことが多い。

だが、そんな鈍足という欠点を差し引いても、彼の受けとしての役割は十分に大きいのだ。

守りを極めし鋼の鳥……それが、"エアームド"。

「ピシャァァ!」

次にミクリ。

「頼んだよ!」

「"ミロカロス"!」

……その、しなやかな蛇のようなポケモンは、世界で最も美しいとされている。

醜悪な進化前"ヒンバス"が、せめて心だけでも美しくありたいと最大限の努力をした末に到達する姿。

その物語はまさに昔話の"醜いアヒルの子"であり、白鳥となった彼のように、そのポケモンは身も心も美しいのだ。

究極のエレガント……それが、"ミロカロス"。

「ミゥゥゥ」

ホウエン勢のポケモンが出切ったところで。

次は……イッシュ勢だ。
 ▼ 461 タージャ@きんりょくのハネ 17/05/04 06:17:59 ID:wusp7nhA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なんか、ほんとすごいな…
支援!
 ▼ 462 ルヴァディ@タウンマップ 17/05/04 08:21:34 ID:WvtPj9kA NGネーム登録 NGID登録 報告
Nと言えば英雄竜とゾロアークのイメージあるな
 ▼ 463 ゾノクサ@カイスのみ 17/05/04 08:22:52 ID:CF16H60M NGネーム登録 NGID登録 報告
>>462
伝説良いのか?
支援
 ▼ 464 ユルド@むしのジュエル 17/05/04 09:29:29 ID:Yr5law4. NGネーム登録 NGID登録 報告
>>463
ありだろ
 ▼ 465 ルヴァディ@ホズのみ 17/05/04 12:11:12 ID:sSLoO4U. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>463
むしろイッシュはメガ進化いないし使ってやっと同等じゃね?
ホウエンは少なくともメガメタグロス使うだろうし
 ▼ 466 ウマ@フリーズカセット 17/05/04 23:26:28 ID:dJReUKOw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ものすごく久々に読んで
やっぱりSSの鑑だわって思った
 ▼ 467 mTQB7XkZdk 17/05/05 01:36:57 ID:Y4qYmVyc [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「行っちゃってー!」

先陣を切るのはアイリス。

「"クリムガン"!」

胴体は青、しかし顔面は赤という変わった見た目のドラゴン。

その表情は常に怒りに溢れており、獲物を追う形相は般若に例えることができる。

鋭く尖った爪は、敵に永久なる傷を与え。

ギザギザした危険な鮫肌は、触れる者の皮膚を剥ぎ取る。

洞穴に住まいし恐ろしき飛竜・"クリムガン"!

「ガゥゥーーン!」

そして最後は。

「共に戦ってくれ……」

「……ボクの、"トモダチ"」

……この男、N。
 ▼ 468 mTQB7XkZdk 17/05/05 01:37:51 ID:Y4qYmVyc [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「"ギギギアル"!」

……回る歯車。

そのポケモンは、止まることなく悠久の時にて稼働し続けている。

鋼のボディーは錆びず常に光沢を帯びていて、旋回する彼の姿には静止する瞬間がない。

あの歯車の回転を利用して放つ技の数々は強力であり、油断は禁物。

"ギギギアル"の無限地獄に嵌まれば最後、永遠に逃れられないだろう。

「ガチガチガチ」

全員のポケモンが出揃ったところで。

次に、彼らが戦う環境……"エンバイロメント"が制定される。

第一試合では霰の舞う"雪山"だったが、第二試合では如何なる戦場が待ち受けているのか。

地鳴りが響き渡ると、徐々に彼らの居た景色が変わっていき……。

……いつの間にか、N達の立つ床も"木製"のものになっていた。

だが、何故だろう。

揺れている。

揺れているのだ……木造の床が。

また、ふと耳を済ますと、"さざ波"のような音も聞こえてくる。
 ▼ 469 mTQB7XkZdk 17/05/05 01:38:24 ID:Y4qYmVyc [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
更に、極め付きは……。

……この、バトルフィールドにのみ降り注ぐ"大雨"。

曇天に覆われた空。

灰色の薄暗い世界が、そこには広がっていた。

「……これは……」

このエンバイロメントの渦中にあるN達は、その正体に気付く。

それは。

「……"船"……」

……そう。

船だ。

彼らは今、海にて揺れ動く船の上に居るのだ。

それも、雨が頻りに止まない大嵐のまっただ中である。

「第二試合のエンバイロメントは"嵐の甲板"!」

「左右に動いて不安定な床と、"みず"タイプのポケモンを強化する"あめ"天候!」

「その両方が味わえる、スリリングなステージとなっております!」
 ▼ 470 mTQB7XkZdk 17/05/05 01:39:06 ID:Y4qYmVyc [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
……実況の言う通り、確かに今彼らはそこに立つのにも精一杯であった。

足元がふらついて、体勢を中々維持できない状態。

そしてそれは、彼らのポケモン達も同様で。

更に"あめ"の天候ということで、現状では"みず"タイプを持つミクリのミロカロスが強化されている。

そうした面では、N達イッシュは若干のハンデを負わされたのかも知れない。

だが、それでもイッシュ勢の態度は不変だった。

「わーいっ!楽しい楽しいーっ!」

「あまりはしゃぐと怪我するよ、アイリス」

純粋に今の局面を楽しむアイリスと、それを見て軽く注意するN。

その姿はまるで兄妹のようであり、彼らの信頼関係の深さが伺える。

例え足場が不安定でも、N達は心を取り乱していない。

寧ろ、この状況をバネにしようとする気概すら感じられた。

「中々面白そうな子達だ」

「楽しめそうですね」

対してダイゴ達も、強者の余裕。

上から見下ろすような言葉で、彼らは不敵に笑っている。
 ▼ 471 mTQB7XkZdk 17/05/05 01:46:20 ID:Y4qYmVyc [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして。

「ミロカロス!」

いよいよ……。

「ギギギアルに"みずのはどう"!」

……彼らの嵐の中での死闘が、今始まった。

まず口火を切ったのはミクリ。

彼は早速この雨を活かして"みず"の技を繰り出させる。

「ミゥゥゥ!」

ミロカロスは一瞬美しく舞うと、口から円形に広がる水の波導を放った。

これの矛先となったのはギギギアル。

Nは対抗策を指示する。

「"でんじは"で波導を分散させるんだ」

「ガチガチ」

ギギギアルは自身の歯車を高速回転させ、電磁波を生成。

そしてそれを、迫り来る"みずのはどう"にぶつけて……!
 ▼ 472 ンテール@ねばりのかぎづめ 17/05/05 03:31:26 ID:bwCcpxoc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Nも強いからな〜支援
 ▼ 473 ッサム@よごれたハンカチ 17/05/05 05:47:40 ID://FM9rg. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 474 ーディン@コンペボール 17/05/05 08:27:59 ID:6IY.2e0Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Nはレシラムかゼクロムでひっくり返せるしな
しえーん
 ▼ 475 ルキモノ@リーフのいし 17/05/05 11:07:00 ID:teisKqyI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エアームド←飛んでるからフィールド関係ない
ミロカロス←水生生物
圧倒的有利……あっ(察し)
 ▼ 476 レイドル@すごそうないし 17/05/05 11:58:04 ID:5nx5QBJA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>474
キョウヘイかメイに渡した後の可能性もある
支援
 ▼ 477 フレシア@カシブのみ 17/05/05 13:14:28 ID:gm4g1uHc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 478 mTQB7XkZdk 17/05/06 23:19:14 ID:4WDKOAX2 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ミュッ!?」

"みずのはどう"は、あえなく破裂してしまった。

"でんじは"が波導の中で爆裂したのである。

"でんじは"は本来、当たった敵を"まひ"状態にさせるだけで攻撃力の無い技だが……。

……Nはそれを、相殺の役割を持たせて使いこなした。

更に。

「"ギアチェンジ"!」

Nはそこから、すかさず技を重ねる。

ギアチェンジは、"こうげき"を一段階、"すばやさ"を二段階上げる技。

「ガチガチガチ」

するとギギギアルは、先程まで一定だった歯車の挙動を変えた。

その回転速度はより早くなり。

「……キュイーン」

なおかつ歯車同士の接触が滑らかになって、うるさかった金属音が一転して静かになった。

結果として、ギギギアルの歯車の質がワンランク上にあがったと言ったところか。
 ▼ 479 mTQB7XkZdk 17/05/06 23:20:15 ID:4WDKOAX2 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして。

「ミロカロスに"10まんボルト"!」

"みず"を突き刺す"でんき"の光線。

「キュイィィーン」

ギギギアルは、歯車を突如として高速回転させると、体内から強力な電気を発生させ。

それをミロカロス目掛けて、一斉に放出した。

「早い!」

ミクリも驚く、その技の出の早さ。

電光石火が如し"10まんボルト"。

"ギアチェンジ"の効力が早速表れたと言える。

「くっ……"れいとうビーム"!」

これに対しミクリは、触れる者全てをカチカチに凍らせる光線・"れいとうビーム"をミロカロスに指示する。

「ミゥ!」

ミロカロスが口から吐いた白銀の息は、対向する"10まんボルト"と激突。

すると、電気と氷のエネルギーが拡散して……。

……雨に濡れている甲板やポケモンに、それらが飛び散ってしまった!
 ▼ 480 mTQB7XkZdk 17/05/06 23:20:37 ID:4WDKOAX2 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「キュィッィ!?」

ギギギアルには、自身の電気が飛来。

水に濡れた体に、稲妻が迸る。

「ミゥゥゥ……!」

対してミロカロスは、自身の氷で身動きが一時取れない状態に。

振り払うことでなんとか凌いだものの、お互い痛み分けのダメージを負ったのだった。

これが、雨のフィールドにおける厄介な点だろう。

出す技によっては、時として仇となることもある。

また、一方でこちらの戦いも白熱していた。

「エアームド、"エアスラッシュ"!」

「クリムガン、"ドラゴンクロー"!」

ダイゴは"ひこう"の、アイリスは"ドラゴン"の斬撃をそれぞれ繰り出させる。

「ピシャッ!」

エアームドは遠距離から風の刃を放ったのに対して。

「ガゥゥーー!」

クリムガンは飛び上がっての直接攻撃。
 ▼ 481 mTQB7XkZdk 17/05/06 23:21:19 ID:4WDKOAX2 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ガァァ!」

結果、"エアスラッシュ"はクリムガンの体を裂くことが出来なかった。

クリムガンの横っ腹をギリギリ掠めただけで、殆ど無傷のまま通りすぎてしまう。

そして。

「ガゥァ!」

クリムガンの狂暴な竜の爪が炸裂。

「ピシッ!?」

直撃を食らったエアームドは、体勢を崩して甲板へと落ちていく。

だが、そんな場面でもダイゴが戸惑うことは無かった。

「立て直せ!」

「"アイアンヘッド"で反撃だ!」

鋭く力強い一声が、嵐の中で轟く。

「ピシャァ!」

その叫びがエアームドに届くと。

「ピッシャァ!」
 ▼ 482 mTQB7XkZdk 17/05/06 23:24:48 ID:4WDKOAX2 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
エアームドは再び翼を広げ、太陽が閉ざされた暗雲へと上昇し。

徐々に飛行速度を上げていって。

「ピシャァァァァッ!!」

未だ滞空していたクリムガンの腹目掛けて、渾身の頭突き"アイアンヘッド"をぶちかました!

「ガォォァ!?」

この痛撃によって、クリムガンは腹を抱えてうずくまり、怯んでしまう。

その隙をダイゴは見逃さない。

「"エアスラッシュ"!」

「ピシャ!」

エアームドは再度、空を翼で斬って真空波を生み出して攻撃。

「ガァァ!?」

「クリムガン!」

これをまともに受けてしまったクリムガン。

ここまでの技と技の応酬は、クリムガンの劣勢である。

しかし、まだまだ勝負は始まったばかり。

ここからどう巻き返すかが重要なのだ。
 ▼ 483 ニョニョ@ドラゴンメモリ 17/05/07 07:33:21 ID:SDohTduo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 484 ノムー@アクZ 17/05/07 12:33:56 ID:IG8lJ/Dg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
大誤算、怯み技しか使っ取らんやんけ…
 ▼ 485 ドゼルガ@タラプのみ 17/05/08 17:38:54 ID:veuun.j2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 486 mTQB7XkZdk 17/05/08 23:09:47 ID:Evh8TLTM [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……っ」

だが、問題は戦うポケモン達だけに収まらない。

この豪雨と甲板の揺れの脅威は、寧ろトレーナー達に牙を向いている。

時々膝を着いてしまいそうになるほど、現在の足元は不安定な状態だ。

それだけ周囲の波が激しいということだが、それはこのバトルの衝撃によるものもあるのだろう。

故に、バトルの激しさが増す度に、トレーナーとポケモンの負担は倍増する。

おまけにこの雨だ。

実際のところ、今のチャンピオン達の思考回路はままなっていない。

だからこそ、現在の戦局で猛威を振るっているのは……。

「ミロカロス!"ハイドロポンプ"!」

「ミゥゥァァ!!」

……雨の天候下でパワーアップをしている、ミクリのミロカロスだった。

トレーナーの、戦略を練るための知能が低下している時、試されるのはポケモン自身が持つ単純な力の絶対値。

その点でミロカロスは現在、他の誰よりもこの場において有利な位地に立っている。

「キュィッ……」

「ギギギアル……!」
 ▼ 487 mTQB7XkZdk 17/05/08 23:10:33 ID:Evh8TLTM [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
事実、Nのギギギアルは苦戦を強いられていた。

"ハイドロポンプ"の直撃を受けよろめくギギギアルに、Nはピンチの予兆を感じ取る。

(このままだと……!)

この時、Nが心配していたのはバトルの勝敗では無かった。

Nは何よりも……。

(ギギギアル……ボクの"トモダチ"が……!)

……彼が"トモダチ"と呼ぶギギギアルの身を、案じていたのだ。

Nは、生来のポケモン好き____

____いや。

Nからしたらポケモンは、最早"愛"や"絆"と言ったモノを超越した存在なのかもしれない。

その限りなく膨大なポケモンへの想い。

ポケモンを戦わせる"ポケモンバトル"という概念の存在意義すら疑って、かつてはそれを撲滅しようとした程だ。

そんな彼が何故今、こんな所でバトルをしているのか。

それは……。

(……"あの子"と約束した)

(ボクは……)
 ▼ 488 mTQB7XkZdk 17/05/08 23:11:30 ID:Evh8TLTM [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
……とある日、とある者との約束。

(……ボクとトモダチが織り成す"奇跡"を、信じている!)

かつての彼は、こんなことを言わなかっただろう。

何故なら彼にとってポケモンとは、人の上に立つ存在。

故にこのように、人とポケモンを対等なモノとして見るような発言は決してしなかった。

だが今は、彼もその意見を言うようになった。

"あの子"との約束を経て、何かが彼を突き動かしたのか。

そして、その理念を貫くためにNは進撃する。

「……ギギギアル!」

「キュイィィーン」

ポケモンと。

"戦う意志"を同調させて。

「"10まんボルト"!」

再び放った電撃の刃。

黄金の雷が嵐の中で響き渡り、標的を強襲する。
 ▼ 489 mTQB7XkZdk 17/05/08 23:12:03 ID:Evh8TLTM [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ふっ、こんなもの避けてしまえば____」

……と。

ミクリはこの時、その"10まんボルト"が自分のミロカロスに向けられた物だと思い込んだ。

だが、それは勘違い。

Nはまだ……。

……"10まんボルト"の矛先を口にしてはいないのだ!

「エアームドに!」

「キュィッ」

Nは、倒置法でギギギアルに10まんボルトを指示。

ここで改めて、攻撃先が確定されたのである。

「なっ!?」

それを早とちりして回避を指示してしまったミクリは、エアームドの防衛に遅れた。

そして"10まんボルト"は……。
 ▼ 490 mTQB7XkZdk 17/05/08 23:12:26 ID:Evh8TLTM [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ピシャッ!?」

……クリムガンとの戦いに集中していたエアームドの隙を突いて、クリーンヒット!

「ピシャァァァッ!?」

見事、直撃させることに成功したのだった!

"ひこう"のエアームドに、"でんき"の"10まんボルト"は効果抜群。

それも不意打ちの一撃だったために、ダメージは更に大きかったハズ。

「ピ……シャ……」

やがて黒焦げになって撃墜されてしまったエアームドは、床にて目を回して気絶した。

よって。

「エアームド、瀕死により戦闘不能!」

……まずはNが、この戦いにリーチをかける!
 ▼ 491 オラント@ちりょくのハネ 17/05/09 00:01:01 ID:P2ytkxHo NGネーム登録 NGID登録 報告
よし支援。最後まで支援
 ▼ 492 ワーク@ノーマルジュエル 17/05/09 05:56:27 ID:t9st4rFs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 493 mTQB7XkZdk 17/05/09 21:32:06 ID:fsRL16JQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……やるね」

瀕死のエアームドを戻し、Nの奇襲を称賛するダイゴ。

しかし笑みを見せる辺り、その態度にはまだ余裕が残っている。

そんな彼の自信を裏付けるのは、やはり後続の存在だろうか。

残り一匹で後がないダイゴにとって、次のポケモンは最後の頼みの綱。

その綱が圧倒的な力を持っているとすれば、ダイゴのあの不敵な口調にも辻褄が合う。

(…………)

Nは未だ、連中に対する警戒心を解けないでいた。

寧ろ、深まったと言っても過言ではない。

戦況は間違いなくこちらの優勢なハズなのに。

なぜ已然として、この胸のバクバクは止まらないのだろう。
 ▼ 494 mTQB7XkZdk 17/05/09 21:32:36 ID:fsRL16JQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「……ここからですよ、ダイゴさんの真の実力は」

と、観戦席のゴールドは、この局面にてそう口にした。

先程ダイゴ達に"憧れている"と言っていたゴールド。

その憧憬が今不利なこの状況だが、それでも彼は羨望の眼差しを止めることなく、一心に試合を見つめている。

「ま、野郎の"アレ"がどこまで持つかだな」

一方でグリーンもまた、何だか意味深な発言。

"アレ"とは何を示しているのか。

「え……?」

レッドには分からなかったが……。

「……持つかどうかですって?」

「そこは問題じゃありませんよ」
 ▼ 495 mTQB7XkZdk 17/05/09 21:32:53 ID:fsRL16JQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
……ゴールドは、"アレ"の正体を察しているようで。

その上で彼は、グリーンの言葉に反発。

「ダイゴさんの"アレ"は……このバトルを決めるだけの力を持っています」

どこまで持つかなどという次元では無く。

寧ろ、この戦いのフィニッシャーとなりえる存在とまで豪語してみせた。

「……っ」

レッドはそのゴールドの気迫に固唾を飲む。

彼がそこまで褒め称える、ダイゴの"アレ"とは。

一体、どれ程の物なのか……。
 ▼ 496 レザード@あかいいと 17/05/09 23:30:32 ID:lT.2j8ZA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 497 ッシー@ヤチェのみ 17/05/10 06:00:46 ID:Jk..7kNU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 498 mTQB7XkZdk 17/05/11 00:15:36 ID:J8G9coBQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……最初の砦・エアームドが破られたダイゴが次に見せるポケモン。

ゴールドが言うにそれは、この選局を決めるだけの力を有しているらしい。

「……それじゃあ」

「キミで行こうかな」

ダイゴは、手に持った一つのモンスターボールを見下ろして言った。

その彼の笑みは、希望を託す意味合いを持ちながら、敵に対する"企み"の念もある。

そんなダイゴの、起死回生の一手。

「現れよ!」

「"メタグロス"!」

……それは、鋼鉄の体と重き四つ足で進撃するヘビー級モンスター。

その怪力・耐久性は、他の生物を遥かに凌駕し。

特に知能が秀でていて、スーパーコンピュータと同等……もしくはそれ以上とも言われている。

まさに質実剛健と頭脳明晰を兼ね備えた、完璧な戦闘兵器。

その名も、"メタグロス"。
 ▼ 499 mTQB7XkZdk 17/05/11 00:15:56 ID:J8G9coBQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「メェェタァァッ!!」

そして。

「行くよ」

「"メガシンカ"!」

ダイゴが身に付けている"メガラベルピン"が光瞬く時。

「メェェァッ!」

メタグロスは、己の境地すら破壊して。

追い求めた先にある究極の進化を、高らかに遂げる。

メガシンカした"てつあしポケモン"は、まずその四つ足を地面から離して浮遊。

そしてなんとそこから、メタグロスの進化前である"ダンバル"二体と"メタング"が、メタグロスと合体した。

そうすることでメタグロスは、前と後ろに四本ずつ……計八本の足を獲得する。

剛力、叡知を極限まで追求した果てにある、メタグロスの完成形がここに爆誕したのだった。

その名も、"メガメタグロス"!

「メタァァァグァッ!!」
 ▼ 500 ロトック@きのはこ 17/05/11 00:24:46 ID:ro25iVm. NGネーム登録 NGID登録 報告
500支援
 ▼ 501 ルビート@おとどけもの 17/05/11 01:30:03 ID:k/mO7HrM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
折り返し地点かぁ

支援
 ▼ 502 ジギガス@はいぶくろ 17/05/11 05:52:26 ID:hkjDs9Gs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メタグロス!
メガ支援!
 ▼ 503 ーランド@バコウのみ 17/05/11 12:25:56 ID:ZETK8cBo NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 504 mTQB7XkZdk 17/05/12 02:01:56 ID:A2YrGGQc [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「これが、かの有名なメタグロスか……」

「わぁーっ!カッコいい!」

イッシュ勢二人は、その圧巻たるメタグロスの登場に色めき立った。

ホウエンのチャンピオンを務めるダイゴは、このメタグロスを相棒もとい切り札としている。

幾多の挑戦者を屠ってきたその実力は本物で、ひと度対峙すれば死闘は必至。

だが逆に言えば、これがダイゴの"全力"だ。

全力は、"限界"とも言い換えられる。

つまりここさえ突破すれば、勝利は目前。

N達の足は、止まらない。

「クリムガン、メタグロスに"かみくだく"!」

「ガゥゥ!」

アイリスは早速、クリムガンに突撃指令。

"エスパー"を持つメタグロスに対し有効打である"かみくだく"で、牽制を図った。
 ▼ 505 mTQB7XkZdk 17/05/12 02:02:54 ID:A2YrGGQc [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
……だが。

「"バレットパンチ"!」

「メタァ!」

迎撃を指示したダイゴ。

そこから一秒も経たない内に。

「ガッ____」

クリムガンの眼前へメタグロスが飛んできて。

「メタメタァッ!」

超音速。

固い爪による連続攻撃を炸裂させ。

「……ガァァァァッ!?」

クリムガンに攻撃する時間すら与えず、痛烈なカウンターを浴びせた!

「クリムガン……!」

衝撃でクリムガンは、後ろに大きく吹き飛ばされる。

「ガゥゥ!?」

やがて船の木造の壁に激突すると、木の瓦礫に埋もれながら倒れてしまった。
 ▼ 506 ャワーズ@リュガのみ 17/05/12 05:47:15 ID:Y3stIPhA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 507 mTQB7XkZdk 17/05/13 23:30:20 ID:YJKfFatQ [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ガゥゥ」

たった一撃貰っただけで、この損傷率。

クリムガンは、既に体力の過半数が持ってかれたように見える。

そんな満身創痍の洞穴ポケモンは、飛びそうになる意識を何とか留めながら、メタグロスに目を向けていた。

その様子を見るに、まだ戦意は残っているようだが……。

「……強い」

……アイリスは、思わずそう溢してしまった。

メタグロスの強さは桁違いと悟って。

今、彼女の足を掬うのは甲板の揺れではなく。

目の前の敵に対する、絶対的な戦慄。

今、彼女の体を濡らすのはこの降り注ぐ雨ではなく。

目の前の敵に流させられる、大量の冷や汗……。
 ▼ 508 mTQB7XkZdk 17/05/13 23:31:17 ID:YJKfFatQ [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……クリムガン、立ち上がって!」

「ガァァッ!」

そのヒビ割れそうな心に、アイリスは自分自身でムチを打って、クリムガンに再起を命令。

それに呼応し、クリムガンは立ち上がる。

例え降り頻る滴が、己らを押し潰そうとも。

最後まで諦めることの無い彼女達の勇敢な姿は、見る者の目に強く焼き付いたのだった。

特に、観戦席のこの竜使いの男は……。

「……アイリスちゃんとクリムガン……なんて絆なんだ……ッ!」

……感動の余り、なんと涙までちょちょ切れさせていた。

(うわっ……マジかこのオッサン)

彼の相方であるグリーンは、その涙脆い姿にドン引き。

良い年した大の大人が泣くなよ……と。
 ▼ 509 mTQB7XkZdk 17/05/13 23:31:54 ID:YJKfFatQ [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「頑張れ!頑張るんだ!アイリスちゃぁんっ!」

この、まるでアイドルの追っかけのような熱狂っぷり。

「………」

同じ竜使いとして応援したい気持ちはあるだろうが、少々過剰じゃないかと疑う一同だった。

と、そんなワタルの声援が功を奏したのか……。

「ガゥゥァ!」

「メタッ……!」

クリムガンの力が、徐々にメタグロスと拮抗し始めていく。

クリムガンが繰り出す拳が、メタグロスの鋼鉄の体を揺るがしているのだ。

これは、彼の底力……というやつだろうか。

何らかの理由で、今、クリムガンは普段の実力以上の力を発揮している。

「"げきりん"!」

「ガァァァ!」

兵器を追う竜の瞳は、殺気と勇気でたぎっていた。
 ▼ 510 mTQB7XkZdk 17/05/13 23:32:32 ID:YJKfFatQ [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
何としてでも敵を狩ろうとする彼の強い意志が伺える。

逆鱗を纏ったクリムガンの連続攻撃は。

「メタァ!?」

メタグロスに命中。

これは痛手だったらしく、メタグロスは若干痙攣のような挙動を見せる。

「グァァァッ!!」

そこからクリムガンが決めにかかろうとした____

____その時。

「"コメットパンチ"!」

「メタッ!」

ダイゴの指示を聞いたメタグロスは、すぐに立て直し、前方に備えし四つの腕を構え。

「メェタァァッ!!」
 ▼ 511 mTQB7XkZdk 17/05/13 23:33:13 ID:YJKfFatQ [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
____彗星の如く、炎を纏った拳で。

クリムガンを…………強打!

「ガッ……」

その威力は、クリムガンの破滅を一瞬にして呼び込んだ。

「……ガゥゥ」

攻撃を食らったクリムガンは、そのまま積み木のように崩れていって。

どしゃ降りの甲板にて、瀕死によって倒れてしまった。

よって。

「クリムガン、戦闘不能!」

奮戦したクリムガンは、ここで敗退。

メタグロスという強敵に一太刀浴びせることは出来たものの、無念の結果に終わってしまったのだった。
 ▼ 512 ィグダ@はかせのてがみ 17/05/14 07:22:56 ID:GAAN6Kuc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワタルさんwww
支援
 ▼ 513 ーブル@ふしぎのプレート 17/05/15 18:08:08 ID:g77h2i4. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 514 mTQB7XkZdk 17/05/15 23:34:54 ID:SUAoN18w [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……うっ」

「うぅぅぅぅんっ!」

一つ目の敗北を喫したアイリスの表情は、その悔しさによって歪んでいた。

受け入れきれない現実と、倒れた友の悲しき姿。

彼女はチャンピオンだが、その前に一人の少女だ。

精神の面でまだまだ幼い彼女にとって、その光景は痛恨であり……悲痛。

故にアイリスは、クリムガンの敗戦に激昂し、感情を爆発させた。

「……戻って!クリムガンっ!」

「ガゥゥ……」

彼をボールに戻すアイリス。

そして次に取り出すのは、彼女が最後に賭ける希望。

この雪辱を晴らすことができる、チーム最強の英雄……。
 ▼ 515 mTQB7XkZdk 17/05/15 23:35:31 ID:SUAoN18w [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「行って!」

「"オノノクス"!」

____そのアイリスの叫びは、"遊びは終わり"と言わんばかりであった。

ここからは、互いの誇りを賭けた真の戦い。

その血みどろの戦地に赴かせるにあたり、アイリスは適任たる刺客を送り出す。

それは、アイリスが最も信頼するドラゴンポケモン。

黄金の甲殻を持つ二足歩行の竜で、顎には斧のように鋭い牙が備わっており。

彼が他の生物を蹂躙する時、そこに居る誰もがその姿に畏れ戦く。

そんな狂暴な怪竜"オノノクス"は今、とある者の尖兵として出陣するのだ。

たった一人、唯一無二の親友……アイリスの、勝利のために。

「オォォオォッ!!」

この咆哮は、死闘の幕開けを宣言する狼煙。

甲板に降り立ち、オノノクスはメタグロスと対峙する。

「オォォォッ!!」

「メタァァァッ!!」
 ▼ 516 プラス@よごれたハンカチ 17/05/16 05:48:48 ID:m/YmXqlM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 517 ターミー@カロスエンブレム 17/05/16 15:08:46 ID:rfvIZIRk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクスキタ━─━─━ヾ(o✪‿✪o)シ━─━─━ッ♪

オノノクスつおいしカッコイイよおおおお!!メタグロスなんか竜舞地震で倒してしまえ!なお確2
 ▼ 518 ニャット@やけたきのみ 17/05/16 16:25:31 ID:zqn4AgM. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>517
一応前のポケモンのダメージも入ってるから(震え声)
 ▼ 519 mTQB7XkZdk 17/05/17 02:26:12 ID:vjIXhnDQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……その頃。

こちらの戦いも、いよいよ大詰めの段階であった。

そう……ギギギアルとミロカロスである。

「ウィーン……」

「……ミゥゥ!」

今のところは、両者共に技のぶつかり合いが続いている。

序盤同様、ギギギアルが電撃を撃っては、ミロカロスが水や氷で応戦……といった具合に。

しかしそろそろ、二匹の体力にも限界が来始めているようで。

どちらも、動きが鈍くなったり、技の威力が低下したりなど、そういった疲弊が多く見られる状態だ。

この分だと、決着が着くのももうじきだろう。

だが、それでも互いのポケモン達は、最後の最後まで粘っていたのだった。

「…"10まんボルト"ッ!」

「"みずのはどう"だ!」
 ▼ 520 mTQB7XkZdk 17/05/17 02:26:59 ID:vjIXhnDQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
雷と水、その二つの属性は対となって衝突。

そして入り乱れると、それらは激しい爆風を巻き起こして散り散りに。

こんな壮絶な応酬が、今の今までずっと続いてきたのだ。

二匹の実力は全くの互角と言って良いだろう。

だが、ギギギアルの"10まんボルト"は、ミロカロスからしてみれば即死級の攻撃。

技の面で有利なギギギアルの方に、若干の分があるか。

しかしミロカロスも、この荒れた天気によって水技の威力が上昇している。

……つまり、どちらも技をまともに食らったら致命傷。

トレーナーには、シビアな回避指示が求められるところだが……。

(……くぅっ)

……ここでミクリは、ふと思った。

こんな泥試合にも近い勝負の仕方は、まるで自分らしくない……と。

(……こんなに暑苦しく戦うのは、正直言ってワタシの性に合っていないな)

本来は、戦場にて美しく舞うことをモットーとしている彼。

そんなミクリにとって、今の状況は忌むべき事態。

もっと"余裕"のある戦いを魅せなければならない……。
 ▼ 521 mTQB7XkZdk 17/05/17 02:31:51 ID:vjIXhnDQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
……しかし。

目の前の青年は、決してそれをさせてくれなかった。

「……彼の目……」

「……それは一見、輝きが失われているように見えても」

「その内には……とんでもない戦意が芽生えてきている……!」

ミクリは、ここまでNと一緒に白星を巡って争っているわけだが……。

……かつて無い熱気が、今まさにこの船を包んでいるのだ。

Nという一人のトレーナーから犇々と感じ取られる……凄まじい熱気が。

「戦いの中で、彼は徐々に目覚め始めているというのか……!?」

ミクリが見出だしたのは、Nの潜在的能力。

戦いの時を刻むごとに、Nは無限の成長を続ける。

(……これが、ポケモンを戦わせるということか)

(なるほど……確かに感じるよ)

(ポケモンと一つになっていく、この感覚……)

戦わせることを嫌っていた青年は、戦わせることで初めてその意味を知った。

そしてNの興味は、より深層へと沈んでいく……。
 ▼ 522 ノセクト@バトルレコーダー 17/05/17 05:52:21 ID:5TeD.kaM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 523 プ・テテフ@ゴーゴーゴーグル 17/05/17 07:13:36 ID:F4IAUI.g NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 524 mTQB7XkZdk 17/05/18 01:05:52 ID:wZKywRqw [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……あの日、君はボクに教えてくれた。

人とポケモンとを繋ぐ、"絆"の強さを。

そして、その存在意義を。

君が居なければ、きっとボクは未だ狭く暗い世界の中でさ迷っていたことだろう。

だけど今、ボクはここにいる。

それを知ったら、君は驚くに違いない。

なぜなら、そこは……。

……ボクが最も忌み、そして嫌ったコトをする所なのだから。

「……どうして、ボクはここに来たのか」

「ポケモンを戦わせれば、ポケモンが傷付くのは必然なのに」

ボクは、戦わせるのが嫌いだった。

ポケモンが戦い、苦しむ姿を見たくないからである。

しかしなぜだろう。
 ▼ 525 mTQB7XkZdk 17/05/18 01:06:40 ID:wZKywRqw [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
今はもう、そんなこと思わない。

……いや。

思わない……というよりは。

それを、恐れなくなった。

……ボクは、ポケモンの言葉を理解することが出来る。

そして更に、ポケモンの言葉を喋ることも出来る。

だから、ボクはある日、自分のポケモンと会話した。

すると、言ってくるのだ。

"戦いたい"と。

ポケモンは、自ら闘争を望んでいた。

そしてボクは、君の"言葉"を思い出して……。

……それに後押しされるように、ここに立つと決めたのかもしれない。

ポケモンと君がボクに訴える"戦う意味"を、確かめるために……。
 ▼ 526 mTQB7XkZdk 17/05/18 01:07:38 ID:wZKywRqw [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……その時のNは、まるで"初めて"と触れ合う子供のようだった。

"初めて"を知れば知るほどはしゃいでしまう、そんな無邪気な姿。

そして、Nの戦意が増していく度に、ギギギアルの士気も高まっていく。

「ウィーン……!」

ギギギアルの歯車の回転速度は、限り無い上昇を続け。

「"10まんボルト"!」

「ウィーーッ!!」

放つ電撃は、精度と威力の両方が最早最強レベル。

「くっ……"みずのはどう"!」

「ミッ……!」

ミロカロスが何とかそれを相殺しようとしても……。

「……ミァァッ!」

……とうとう、"みずのはどう"では防ぎ切れなくなってきた。

"10まんボルト"は若干水の波を貫通し、ミロカロスの全身に痺れを起こさせる。
 ▼ 527 mTQB7XkZdk 17/05/18 01:08:14 ID:wZKywRqw [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
恐らく今の防御で、ミロカロスの体力は限界に達しただろう。

盾が脆弱となった今、彼女にはもう打つ手が無い。

次の一撃で……。

「……もう一度、"10まんボルト"!」

……ギギギアルの勝利が、確定する。

「ウィーーーーッ!!」

最後の"10まんボルト"が炸裂した。

「ミ……」

「ミァァァァッ!!」

ミロカロスを、超高電圧の嵐が容赦なく襲いかかると……。
 ▼ 528 mTQB7XkZdk 17/05/18 01:08:49 ID:wZKywRqw [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ミゥゥ」

……効果抜群のダメージによって、ミロカロスは即座に瀕死となってしまい。

そのまま……倒れてしまった。

よって、ミロカロスは戦闘不能。

「……これで良かったのだろう?」

「これが……"勝つ"ということなんだ」

Nはこの時、学んだのだった。

"勝つ"ためには、相手を傷付けた末に倒さなくてはならない。

しかしだからこそ、勝負に勝った時には……。

「……よくやった、ギギギアル」

「ギギッ」

……ポケモンと、更に深い信頼で結ばれるようになる。

その瞬間こそが、Nにとって最大の____

____"戦果"だった。
 ▼ 529 ルード@はがねのジュエル 17/05/18 02:10:16 ID:dW1KIxJs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何なんだよこの神SSはヨォ!
 ▼ 530 ノワール@エレキブースター 17/05/18 05:50:37 ID:mJQn26OA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 531 アームド@あおいバンダナ 17/05/18 07:46:26 ID:1gi4w4BM NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
もうこのスレ中には終わらないだろ
 ▼ 532 mTQB7XkZdk 17/05/19 00:50:05 ID:MDwu.qGs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
Nは、"戦い"に対する反逆のために、皮肉ながらも"戦って"、その度に勝利を収めて来たが。

今回のそれは……ひと味もふた味も違う。

本当の意味で、今日……Nは"勝てた"のだろう。

「……戻ってくれ、ミロカロス」

そして、惨敗したのはミクリ。

電撃にやられた仲間を見送りながら、彼はミロカロスをボールに戻した。

「……っ」

ミクリにとっては、"敗北"にも彼なりの美学というものが存在する。

負ける時も……散る時も……美しくありたい。

それが、ミクリの考え方な訳で。

だが、今回はどうだろうか。

まるで美しくない。

格好がつかない。

これでは、自分もミロカロスもまるで顔に泥がついたような……そんな、屈辱の気分。

納得がいくはずが……なかった。
 ▼ 533 mTQB7XkZdk 17/05/19 00:50:53 ID:MDwu.qGs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……次は、もっとエレガントに舞ってみせよう!」

「いでよ……ワタシの新たな"力"!」

ミクリは、次に繰り出すポケモンを"力"と称して叫ぶ。

ミロカロスが破れた今、後がないミクリが最後に送り出すのは……。

「……"アシレーヌ"!」

……新天地"アローラ"に生息する、未知のポケモン。

上半身は真っ白で、顔はアシカの特長を色濃く持っている。

金色の、髪の毛のような体毛を後頭部に持っており、嵐の中でそれは激しく靡いていて。

一方で下半身は魚であり、その姿はまさに人魚。

とても美しい歌声を持つ、絶海の歌姫……それが"アシレーヌ"だ。

「あしれー♪」

このアシレーヌを見た瞬間、一番驚いたのは……。

「おおっ!」

「凄い!あのアシレーヌ……"色違い"だよー!」

……アローラ代表の少女、ミヅキだった。

"色違い"とは、ごく稀に発生すると言われる、体色が通常と異なるポケモンの個体のこと。
 ▼ 534 mTQB7XkZdk 17/05/19 00:51:58 ID:MDwu.qGs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
その存在は非常に希少価値が高く、トレーナーなら誰しもが喉から手が出る程に欲しいところだろう。

ミヅキによると、あのアシレーヌはその色違いらしい。

それを聞いたゴールド達だったが、その瞬間殆どの者が思った。

……元の色を知らない……と。

色違いと言われても……実感が無い……と。

ちなみに、通常のアシレーヌは、髪の毛のように見えるあの体毛が淡い水色なのである。

だが、その姿すら見たことなければ、色違いに対する驚きもあるわけがない。

しかし、この少年だけは……。

「おおっ……綺麗なポケモンだなぁ……」

……レッドだけは、感動したのだった。

初めて見る、あの"アシレーヌ"というポケモンの美しさに。

特にあの金髪は……彼が最も愛する女性のそれを彷彿とさせる。

レッドは思わず、目を奪われてしまった。

……しかし。

それでもやはり、気になってしまう。

アシレーヌの対戦相手である……Nという青年の異質さに。
 ▼ 535 mTQB7XkZdk 17/05/19 00:58:17 ID:MDwu.qGs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……っ」

彼から底知れぬ何かを感じ取るレッド。

観戦席に居ながら、身震いしてしまう程のイレギュラーな雰囲気に見舞われる。

だがそれでも、見届ければその先に……きっと見えるはず。

Nの……トレーナーとしての本質が。

……と。

「……ふむ」

ここでNは、ある行動に出る。

それは。

「……"交代"だ、ギギギアル」

「キミはもう、十分よくやってくれた」

……"交代"。

なんとNは、まだ戦えそうなギギギアルを……ボールに戻してしまった。
 ▼ 536 イーガ@サファイア 17/05/19 05:51:56 ID:nTZTSXS. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
せっかくの色違いなのにw
支援
 ▼ 537 トデマン@きょうせいギプス 17/05/19 21:44:00 ID:DLOGwV3o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いいっすね〜
 ▼ 538 mTQB7XkZdk 17/05/20 02:35:33 ID:BV0/SBxw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……!)

(ここで戻すのか……!)

ミクリがアシレーヌを出した直後のタイミングで、ギギギアルの交代を宣言したN。

このNの判断に、観戦席のレッドは意表を突かれ、息を飲んだ。

ミロカロスを倒したあのギギギアルなら、勢いに乗って二戦目もいけそうだったのだが……。

……何ゆえ彼は、ギギギアルを戻してしまったのだろうか。

ああいった行為は、場合によっては"ストッパー"にもなりかねないというのに。

そのことについては、他の皆もレッドと同じ疑念を抱いた。

しかしそれは……ある意味、Nの元々の性格がそうさせたと言える。

彼は……"分散"させたかったのだ。

一匹のポケモンが受け負う"負担"を。

(これ以上、ギギギアルが戦う必要はない……)

つまりNは、アシレーヌの処理を後続に任せることで、ギギギアルが力尽きる危険性を一旦無くしたのである。

Nは、自分のポケモン……いや、"トモダチ"が瀕死になるのを見たくない。

(……まだ、ボクは甘いのだろうか)

以前までの甘さを捨てきれない自分が居ることは、確かに否めないが……。
 ▼ 539 mTQB7XkZdk 17/05/20 02:36:14 ID:BV0/SBxw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
……。

(……いや)

(それでも……そこはボクの個性だ)

(きっと……"間違い"じゃない)

……この時、Nは"誰か"に強く主張するようにして、渦巻く雑念を振り払った。

自分は自分なのだ、と。

そして。

「……さて」

「後は……頼んだ」

自分が選んだ道は……"トモダチ"と共に切り開く。
 ▼ 540 mTQB7XkZdk 17/05/20 02:39:49 ID:BV0/SBxw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「"デンチュラ"!」

……張り巡らせた電気の網で、かかった獲物を貪る恐ろしき蜘蛛のポケモン。

電撃を纏って、肉眼では捉えきれないスピードで壁や天井を這い回る。

"みず"のアシレーヌに対抗できる、"でんき"の名手だ。

その名も"デンチュラ"。

エレクトリック・スパイダー。

「チュラァッ!」

Nの二匹目として、堂々たる登場を果たす。

タイプ相性で見れば、"でんき"のデンチュラはかなり有利だ。

しかし一方で、デンチュラが同時に備える"むし"では、"フェアリー"も兼ねるアシレーヌの有効打には成り得ない。

よって、Nが取る戦法自体は、先刻のギギギアルとそう大差は無いだろう。
 ▼ 541 スラオ@イーブイZ 17/05/20 05:32:05 ID:LOfIanY. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 542 スブレロ@やわらかいすな 17/05/20 07:25:37 ID:H2zuixO. NGネーム登録 NGID登録 報告
レシゼクはさすがに使わないか
支援
 ▼ 543 テノ@ゴーストジュエル 17/05/20 12:22:09 ID:55zgJTsQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
全部読んだ。わくわくするわ
支援
 ▼ 544 フォクシー@カイスのみ 17/05/20 13:20:26 ID:SC5EWXHs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レッドが主人公だったの忘れてたwww
 ▼ 545 mTQB7XkZdk 17/05/22 00:05:19 ID:t6.OJyZ2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし、ここで一旦、四体のポケモン達の相性関係を見てみると。

確かにデンチュラは、アシレーヌに対して有利な技を数多く持っているが……。

……逆に、アシレーヌにとっても、狙いやすい相手が居る。

そう……オノノクスだ。

アシレーヌの"フェアリー"の技なら、"ドラゴン"のオノノクスに有効打を撃てる。

しかもそのオノノクスは、メタグロスの相手をするので精一杯なため、アシレーヌからの攻撃には無防備になりやすい。

つまりオノノクスは、ミクリにとって格好の的となるわけで。

その分デンチュラは上手く立ち回り、ミロカロスの妨害をしなければならない。

そのことは、当事者たるNも十分把握している。

故に今、Nは普段以上に神経を尖らせ、アシレーヌの出方を慎重に窺っていた。

(オノノクスには、メタグロスとの戦闘に集中してもらいたい)

(ここはボクとデンチュラのコンビネーションで、アイリスをサポートしないと)

一歩リードしてもなお、Nの集中力が途切れることはない。

常に最良を考え、常に最善を尽くすべく、Nは更なる戦術を導き出す。

「デンチュラ、"エレキネット"!」

「チュラッ」
 ▼ 546 mTQB7XkZdk 17/05/22 00:13:39 ID:t6.OJyZ2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
指示されたデンチュラは、口から黄色い糸を吐き出した。

そしてその糸には、なんと電流が走っている。

どうやらアレは電気を帯びているらしい。

その電気の糸を巧みに紡ぎ合わせ、デンチュラはまさに蜘蛛のように自らの根城を築いていく。

すると……。

「メタァッ!?」

「あしっ!?」

……糸の罠は、メタグロスとアシレーヌを見事に巻き込んだ。

ネバネバとした粘着質な糸が、二匹の全身に絡み付いていく。

更にそこへ、電気による痺れが加味されることで……。

「メッ……タァ!」

「あしぃっ」

……二匹の行動速度を、糸と電気の相乗効果で、大幅に低下させることに成功。

おまけにこの天候なら、電気の効力も倍増する。

"エレキネット"……この技一つで、戦況は大きく揺らいだ。

「オノァッ!!」
 ▼ 547 mTQB7XkZdk 17/05/22 00:14:37 ID:t6.OJyZ2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして、弱体化してしまったメタグロスの下へ、オノノクスが来襲。

「メタグロスに"ドラゴンテール"!」

「からの"ドラゴンクロー"!」

ここぞとばかりに、アイリスはメタグロスに対し怒濤の集中攻撃を開始した。

「オノォッ!オノァッ!!」

オノノクスは、尻尾を鞭のようにしならせ、まずはメタグロスの頭上めがけて勢いよく振り降ろす。

「メッタァッ!!?」

ズガッ……と、金属の鈍重な音が響いた。

だがその直後に、それすらも凌駕する大きな音が鳴る。

バキバキ……バキバキ……!

……足元の甲板が、耐久できる限度を超えし衝撃によって、割れていくのだ。

そして。

「オノォォッ!!」

「メタァッ!!」

とうとう床が完全に抜け、オノノクスとメタグロスは、甲板の下……つまり船内へと落ちてしまった。
 ▼ 548 ガジュペッタ@あおいビードロ 17/05/22 00:31:16 ID:4wSBno9k [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクスうううううう!!!頑張れえええええ

支援
 ▼ 549 mTQB7XkZdk 17/05/22 00:33:00 ID:t6.OJyZ2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ノォッ!」

「メタッ……!」

ざっと数えて、二階層程下の空間に陥った彼らの戦場。

瓦礫から全身をようやく出したオノノクス達が、ふと辺りを見回してみると……。

……そこは、一切の照明も無い暗闇の世界だった。

唯一光源として挙げるなら、それこそ、ここと船上とを繋ぐあの大穴ぐらいのものであろう。

しかしそれすらも、曇天のせいで薄暗いばかり。

視界なんて、まるで確保できたものじゃない。

だが、彼らの戦意までは、まだ闇の中に囚われてはいなかった。

「ノァッ!」

「タァッ!!」

オノノクスとメタグロスは、互いを撃滅すべく再び衝突。

暗黒空間の中でも、血肉と鋼鉄の攻防は終わらない。
 ▼ 550 ゲキッス@たまむしプレート 17/05/22 07:01:40 ID:5byjPrPw NGネーム登録 NGID登録 報告
すげえ展開になってきた
支援
 ▼ 551 シギダネ@きいろのバンダナ 17/05/22 22:04:01 ID:4wSBno9k [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクス頑張れええええええ!!

関連のコメ全部俺。

支援
 ▼ 552 mTQB7XkZdk 17/05/23 00:12:57 ID:tyrmbL5U [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ここは"船内"であるため、雨風を防ぐ天井がある。

そのため、天候の影響は受けない。

しかし、代わりに灯りが無いため、室内は非常に暗かった。

ポケモン達の目がこの暗さに慣れてくれれば、もう少しマシにはなるのだろうが……。

……如何せん、それは時を待たない限りはどうにもならない。

だが、アイリスはそれでも、オノノクスを船上に引き戻させようとはしなかった。

なぜなら今この状況は、彼女達にとって____好都合だからである。

(……今なら、アシレーヌに邪魔されずにメタグロスと戦えそうだねっ)

……オノノクスの天敵・アシレーヌの存在がある以上、船上で戦うことは少々アイリスにとって苦しい。

しかし、船上と隔離された船内という空間の中なら、メタグロス一体の撃墜に集中できる。

アイリスは、今が好機と知り、気合いを入れて攻勢に入った。

「オノノクス!"ドラゴンクロー"!」

甲板に開いた歪な穴に向かって、気勢ある指示の叫び。

彼女の声が暗黒に届いた時、オノノクスは鼻息を逞しく鳴らしてそれに応えた。

己が肉体に巡りし竜の血を、最大限にまで沸騰させて放つ。
 ▼ 553 mTQB7XkZdk 17/05/23 00:14:01 ID:tyrmbL5U [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
"ドラゴンクロー"!

「オノォッ!」

オノノクスは、闇の中で微かに見える宿敵に向かって、爪を撃ち込んだ!

「メッ……!」

メタグロスは、これを受けても強がって見せるが……。

……鋼の装甲は、深い裂傷によって泣き顔を見せそうになっている。

「くっ……!」

ダイゴは、この展開に苦悩を強いられた。

自分が船の上に居る以上、メタグロスの居る内部の状況が全く掴めてこない。

これでは、攻撃の指示は出せても、守りや回避の指示を出すのは困難だ。

アイリスが声を発した直後に指示を出すという手もあるが……。

……オノノクスが船の中でどのように攻撃してくるのかが分からないと、適切にダメージを抑えるのは不可能である。

つまり、ダイゴに残された道は、守りをかなぐり捨てた肉弾戦。

ただ一つ、それだけだった。

「……"しねんのずつき"!」
 ▼ 554 mTQB7XkZdk 17/05/23 00:14:41 ID:tyrmbL5U [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「メタッ!」

メタグロスは、後方に装備している四つのブースターを稼働させると、一瞬で加速。

火を吹き、真っ直ぐ進んで、オノノクスに渾身の突進攻撃を仕掛ける。

その顔面に、思念の力を込めて。

「オノッ!?」

それが見事に衝突すると、オノノクスはぐるぐると回転しながら吹っ飛ばされた。

「オノォォォッ!!?」

彼は壁にぶつかり、そのまま突き破って、木片の中に無様な格好で埋もれる。

砂ぼこりが激しく舞い、穴から差す弱き光がその量を著しく物語る。

「……ノッ!」

闇に煙に、自分の道を塞ぐのはそんな鬱陶しい物ばかり。

だがそれでも、進まなければならないのが戦士というモノだ。

幸い、目は慣れ始めている。

メタグロスの姿も、段々ハッキリと見えるようになってきた。

まだまだやれる。
 ▼ 555 mTQB7XkZdk 17/05/23 00:15:21 ID:tyrmbL5U [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
オノノクスは拳を突き出し、暗がりも埃も貫いた。

そして、一歩踏み出し。

「ノァッ!」

一矢、あわよくば二矢報いるため、堅牢なる敵に向かってひた走る。

「"げきりん"!」

「オノォォォォッ!!」

猛り狂う竜の凄烈な連撃。

パンチ、キック、爪、頭突き……オノノクスは、持てる全ての体技と武器を駆使する。

「オノッ!オノォォァゥ!!」

「メタァァッ!!」

刺し違えても良い。

オノノクスは、決心した。

ここでこの化け物を……"仕留める"と。

それが……アイリスに報いる道だと信じて。
 ▼ 556 ノムッチ@おしえテレビ 17/05/23 01:46:04 ID:KcZojUJM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクスカッコイイよおおおお!!


支援
 ▼ 557 リゲイツ@いいキズぐすり 17/05/23 05:50:20 ID:i3PFVc2E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うお…かっけえ…
支援
 ▼ 558 ロカロス@げんきのかけら 17/05/23 19:20:30 ID:SdJyHULY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>545
ミロカロス復活してる
 ▼ 559 コザル@フェアリーメモリ 17/05/23 19:28:28 ID:P5Qgk/jE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>558
反応させて
 ▼ 560 mTQB7XkZdk 17/05/24 02:56:37 ID:Jz1WY/gU [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>558
ミスです……ごめんなさい
 ▼ 561 mTQB7XkZdk 17/05/24 02:57:11 ID:Jz1WY/gU [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノォッ!」

オノノクスは、腕を振り上げて攻撃の構え。

「メタッ……!」

それを感知したメタグロスは、後方に素早く動いて回避。

オノノクスのパンチは、虚空しか砕けなかった。

「メタッ!」

そして、攻撃後の硬直を狙い澄まして、メタグロスが反撃する。

溢れ出る思念を額に集中させて放つ"しねんのずつき"。

「オノァッ!?」

これを食らったオノノクス。

しかし、咄嗟に自身の腕を交差させ"肉の壁"を作ったことで、衝撃はいくらか和らいだ。

本来なら吹っ飛ばされる所を、足腰に力を注ぎ踏ん張って、何とか床に踏み留まってみせる。

ふと足元を見てみると、激しい摩擦によって木の床が焦げていた。

この戦闘の苛烈さを生々しく証明する痕跡。

こういうのを見ると、改めて実感させられる。
 ▼ 562 mTQB7XkZdk 17/05/24 02:57:44 ID:Jz1WY/gU [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
今自分が対峙しているのは、まごうことなき強者なのだと。

そして、強者とのバトルは……やはり楽しい。

「オノッ!」

自ら進んで、向かっていきたくなる。

挑んでみたくなる。

好奇心がそうさせる。

飽くなき強さへの探求は止まらない。

「オノォゥ!」

オノノクスは、初撃でまず爪を横に薙いだのを皮切りに、素早い腕の動きでメタグロスに爪痕を刻んでいく。

腕の残像がいくつも見える程の速さだ。

彼が一振りする度に、文字通りの金切り声が船内にて響く。

その攻撃は手数が段違いに多く、メタグロスの視覚も中々追い付けない。

「メタァッ……!」

この目まぐるしいラッシュにメタグロスは堪え、弱い声を発する。

だが。
 ▼ 563 mTQB7XkZdk 17/05/24 02:58:16 ID:Jz1WY/gU [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノォォァッ!!」

それすらもさせないとばかりに、オノノクスは口端を上げて更に攻め立てる。

爪の次は、蹴りも交えた複雑な連続攻撃。

まずは一発、斧を振り上げるようにして膝をぶつけた。

鋼鉄も揺るがすオノノクスの豪脚。

そこからまた、我を忘れた狂戦士のように、出鱈目ながらも絶大な威力の攻撃を仕掛けていく。

が、メタグロスとて、やられっぱなしではない。

「メタッ!!」

オノノクスの攻撃が、メタグロスの丸太のように太いアームによって阻まれた。

「オッノッ……!」

オノノクスは即座に引き抜こうとするも、離すことができない。

離してくれないのだ。

メタグロスががっちりとオノノクスの腕を掴んでるせいで。

「メェタァッ!」

そして、隙を突かれたオノノクスに、メタグロスの"コメットパンチ"が炸裂。
 ▼ 564 mTQB7XkZdk 17/05/24 02:58:49 ID:Jz1WY/gU [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノァァァッ!?」

人間で言う鳩尾の部位に、見事に入ってしまった。

「……オノォォッ」

痛みのあまり、オノノクスは反射的に空いてる方の腕で腹を抱えてしまう。

だが、メタグロスの腕はまだ離れない。

「……メェェタァァ!!」

すると今度は、オノノクスを掴んだままメタグロスが急速に加速。

「オノッ!?」

ブースターのエンジンをかけ、無人空間を駆け抜ける。

そして。

「オノォォァァァッ!?」

なんと無慈悲にも、壁にオノノクスをそのまま思いっきり叩きつけた。

案の定、壁は一瞬にして破砕され、無惨に抉れ落ちる。

だがそれでもなお、メタグロスは減速しない。

さらにオノノクスを壁の中へ押し込んでいく。
 ▼ 565 mTQB7XkZdk 17/05/24 02:59:18 ID:Jz1WY/gU [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
第一の壁を貫通し、今度は隣室の壁に激突。

勿論、これも破壊。

「オノォッ!?」

オノノクスはこの時、朦朧とする意識の中でも悟ることができた。

メタグロスは、このまま自分を船の外まで押し出すつもりなのだと。

せいぜいあと二つほど壁を破られれば、母なる海はすぐそこと言ったところか。

そうなっては、空を飛べるメタグロスと飛べない自分で優劣の差が雲泥にまで広がる。

それだけは避けなければならない……!
 ▼ 566 クタン@ウイのみ 17/05/24 06:00:25 ID:mseizY2I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 567 mTQB7XkZdk 17/05/26 02:11:57 ID:okr0t/ms [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ふとオノノクスは、背中に湿り気を感じた。

壁が突き破られるごとに、それはどんどん強くなっていく。

木に染み込んだ雨水が、炸裂して飛び散っているのだ。

とすれば、外に出るのは時間の問題。

場外に叩き出される。

「……オノッ!」

さっきまであった、背中を襲っていた衝撃は、突如として無くなった。

視界も途端に明るくなり、一瞬目が眩む。

恐る恐る瞼を開けてみると、そこは案の定"外"だった。

そして已然として、メタグロスの豪腕は離れない。

「……オノォォォォァッ!!」

もがく。

けれど、脱出できない。

メタグロスの握力が圧倒的すぎるのだ。

「……メタァ!」
 ▼ 568 mTQB7XkZdk 17/05/26 02:12:23 ID:okr0t/ms [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
するとメタグロス、今度はオノノクスを掴んだまま急降下。

彼らが進む先にあるのは、嵐によって荒れに荒れている海。

そう……メタグロスは、オノノクスを海に沈めるつもりなのである。

「……オノッ!!」

メタグロスのこの行為に、オノノクスは落下しながらも本格的な生命の危機を感じ取った。

そして、次の瞬間。

「……オノォォォォッ!!」

オノノクスは、防衛本能を発揮する。

彼は雄叫びをあげた後、背筋にグッと力を込めて体をひねらせた。

その時にかかった力は凄まじく、"やられてたまるか"という彼の種としての野生が覚醒した瞬間と言えよう。

そしてそれは、機械仕掛けで動くメタグロスのアームを揺るがした。

「メタァ……!?」
 ▼ 569 ルチャイ@きせきのタネ 17/05/26 06:02:17 ID:J/7qs9TQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 570 ルシアン@はかせのふくめん 17/05/26 11:18:43 ID:yHmktA0c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクスを使いたくなってきたw
 ▼ 571 mTQB7XkZdk 17/05/26 23:35:35 ID:okr0t/ms [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
メタグロスが小さく吠えた時だった。

オノノクスの体が、力強い旋回によって、メタグロスのアームによる呪縛を解いていく。

あたかも駒のように回る金色の体は、肉体の解放への道を進んだ。

そして、ついにオノノクスはメタグロスから離れることに成功。

「オノッ!!」

"やってやったぞ"と言わんばかりに、オノノクスは咆哮をメタグロスに突き刺し、体に戻っていく"自由"の感覚を噛み締めた。

だが、次に問題になるのは、ここからどうするかである。

確かにメタグロスから離れのたは良いのだが、冷静に考えても見れば、今はメタグロスと共に宙を舞っている状態なのだ。

空をブースターによって飛ぶことができる高性能なメタグロスとは違って、オノノクスは普段陸上で生活する翼のない竜。

つまり、このままいけばオノノクスは確実に海にドボンだ。

この荒れ狂いし大海に落ちるようなことがあれば、いくらPWTが用意したバトルフィールドといえども、土左衛門に近い状態になるのは必至。

ヤバいヤバい、とにかくヤバいと、オノノクスは自分で自分を脅迫した。

彼の視界から、どんどんメタグロスが遠ざかっていく。

また、落下によって凄まじいGが全身にかかっているため、オノノクスは金縛りにあっているかのように空中で体を動かせない。

この状況は、人間の言葉で言えばまさに"万事休す"。
 ▼ 572 mTQB7XkZdk 17/05/26 23:36:23 ID:okr0t/ms [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ポケモンにだって、それは起こり得ること。

もう、オノノクスだけでは覆せない現実が、そこにはあった。

……だが。

「頼む、デンチュラ!」

「チュラッ!」

Nの声が響いた次の瞬間。

オノノクスは、水面に着水するその直前で……。

「……オノッ?」

……ぶらさがった。

オノノクスは、宙吊りになる格好で空中にて制止したのだ。

どういうことか、と、ふとオノノクスは自分の足に違和感を覚えて足元を見やる。

すると、黄色い糸がオノノクスの足元を強く縛り付けているのが見えた。

その糸をずっと目で追っていくと、やがて船上にまで到達し。

そこで口から糸を吐いて踏ん張っているデンチュラの姿があった。

「間に合ったか……!」
 ▼ 573 mTQB7XkZdk 17/05/26 23:37:11 ID:okr0t/ms [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
……とにもかくにも、オノノクスはデンチュラに助けられたらしい。

しかしオノノクスは思った。

アシレーヌはどうしたのかと。

助かったのは良いが、こんなことをしていては肝心の対戦相手に隙を突かれてしまうのでは……。

……と、それを危惧するオノノクスとは裏腹に、デンチュラは、糸に絡まったオノノクスを振り子のようにぶん回して。

「オノォォォァッ!!?」

オノノクスの悲鳴も省みず、強引に船の上まで引き上げ、木の床に叩きつけた。

「……荒っぽくてごめん、アイリス」

「い、良いんだよ〜っ」

……良かねえよ、と、雨に濡れし床から身を起こしながらオノノクスは思った。

ふとオノノクスは、アシレーヌが気になって辺りを見回す。

すると……。

「……あし〜っ」

……アシレーヌは、既に倒され、目を回して気絶していた。
 ▼ 574 リリダマ@ポイズンメモリ 17/05/27 00:02:11 ID:A/JrqcLo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 575 ガギャラドス@あさせのしお 17/05/27 00:15:25 ID:mWcBTv/U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンチュラTUEEEEE!!!!
 ▼ 576 クオング@こううんのおこう 17/05/27 06:39:02 ID:2chVQrvY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
!?
支援
 ▼ 577 スブレロ@ハンサムチケット 17/05/27 07:30:42 ID:Dp0.JLY6 NGネーム登録 NGID登録 報告
ここから大誤算逆転できるか!?

支援
 ▼ 578 マンボウ@さらさらいわ 17/05/27 08:02:01 ID:PS8QKgVY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
ここまで倒したの全部Nのポケモンだからオノノクス決めて欲しい
 ▼ 579 ンタイン@ゴージャスボール 17/05/27 08:40:48 ID:GIe0Qn9Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクスはやっぱり至高だったんだね



支援
 ▼ 580 ユルド@ノワキのみ 17/05/27 11:56:38 ID:hvEOMFWs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さすがN
強いわぁ
 ▼ 581 ブリー@つきのいし 17/05/28 00:18:51 ID:hMieV9rM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最後ぐらいアイリスのポケモンが決めてくれ
 ▼ 582 mTQB7XkZdk 17/05/28 00:38:11 ID:5GbhlRH2 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
アシレーヌは、その端麗な白き体に似つかわしくない電流をバチバチと鳴らしながら、多少の焦げ跡も覗かせつつ、水滴りし船上にて倒れ伏している。

あの彼女のやられ方を見る限り、どうやら電気使いのデンチュラの手によって倒されたのは間違いないのだが……。

……早い。

船の中でオノノクスとメタグロスが拮抗する実力をぶつけ合っている間に、上では既に決着が着いていたのだ。

確かに、デンチュラの"でんき"はアシレーヌの"みず"に対して、タイプ相性的にはかなり有利。

デンチュラの攻撃一つ取っても、それらは全てアシレーヌを滅する剣と化す。

だが、だからといってこの速度で倒せたのは規格外と言っても良い。

仮にも相手は、あのホウエン代表ミクリが放った最後の切り札・アシレーヌだったのだから。

まさに、破竹の快進撃である。

「くっ……やられてしまったよ」

「ミクリ……」

心底、新戦力の敗北が悔しかったのか、苦虫を噛み潰したような苦渋の表情を浮き彫りにするミクリ。

何とも格好がつかないまま、彼はアシレーヌをボールに戻す。

その様を、ダイゴは横から心配そうに見つめていた。

ミクリの手持ちが全滅したことにより、ホウエン代表も残すはダイゴのメタグロスのみ。
 ▼ 583 mTQB7XkZdk 17/05/28 00:39:18 ID:5GbhlRH2 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
対してイッシュ代表は、オノノクスとデンチュラの二体がいて。

更にNに関して言えば、まだ戦える状態でボールの中にいるギギギアルの存在がある。

つまり、状況としては三対一でイッシュの優勢。

戦いは、思った以上に一方的なモノとなっていたのだった。

「……メタァ!」

するとメタグロスが、オノノクス達の居る甲板へと空を飛んで帰還してきた。

雨で湿気りきっているこの空気でも、ブースターの炎は弱ることなく燃え盛っている。

孤立無援となり、孤軍奮闘を強いられた戦闘兵器。

しかし、それでもなお衰えない覇気を身に纏いながら、メタグロスは、煢然たる戦いの意思をその飛行する姿で船上のオノノクス達に示した。

「……オノォォ」

状況は一転してこちらが有利なはずなのに、このつんざくような身の痺れは止まらない。

高水準の力と頭脳の両方が備わった完璧無類のポケモンを前にして、竜戦士は今も戦くばかりだ。

……だが。

それでも彼は、この戦慄をも、己を戦場へと突き動かすトリガーに変えて。
 ▼ 584 mTQB7XkZdk 17/05/28 00:39:56 ID:5GbhlRH2 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノノクス!」

「オノォッ!」

アイリスがそれを勇猛に引いて、オノノクスは再び走り出した。

「オノォォォォァッ!!」

力強い足踏みを打ち鳴らしながら、オノノクスは腰を深く落とし拳を構え。

ダッシュが四歩目辺りに達したタイミングで、高く飛び上がった。

オノノクスが叫ぶと同時に、大粒の雨水が彼の口内に入り込んでいく。

しかし、彼が一度胸に灯した勇気の光は、その水に消されない。

硝煙は未だ立ち込めたまま。

水の中には溺れない。

そして、自分の力にも溺れない。

持て余すことなく、最大出力の力で____

「……"げきりん"!」

____一気にカタをつける!

「オノォォォォォォッ!!」
 ▼ 585 mTQB7XkZdk 17/05/28 00:41:11 ID:5GbhlRH2 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
右肩を前方に突き出し。

腕を真っ直ぐ伸ばして。

強固に握られた拳を、メタグロスにぶつける。

「"コメットパンチ"!」

ダイゴとメタグロスは、それに対抗した。

「メタァァァァァッ!!」

メタグロスは、蒼く煌めく彗星を彷彿とさせるような滑らかな直線を描き、必殺の鉄拳を繰り出す。

"げきりん"と"コメットパンチ"は、真っ向から激突した。

刹那、この嵐よりも激しい爆風が辺りに巻き起こる。

周囲の雨粒が、次々とその凄まじい熱気によって蒸発していき。

やがて、二匹がもたらしたこのかつてない衝撃は、あの曇天の空をも見事に貫いて。

嵐に見舞われた哀れな船に……再び、晴れありし安息の航路を取り戻させたのだった。

ぽっかりと雲の中に開いた大きなまんまるの穴から、暖かな太陽の光が神々しく差してくる。

その自然の美しさは、"天使のはしご"とも捉えることができよう。

そして、暫くすると……。
 ▼ 586 mTQB7XkZdk 17/05/28 00:46:55 ID:5GbhlRH2 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
その光に抱き抱えられるようにして、一人の勝者がそこに立ち上がった。

上を見上げ、天に召されるかのような表情をその者は安らかに浮かべている。

勝ったのは……。

「……勝者!」

「"オノノクス"!」

……オノノクスだった。

「……!」

最後は、オノノクスとメタグロスの一騎討ちで終わった今回のバトル。

その一部始終を目の当たりにしたレッドは、その余りの壮絶さ加減に思わず息を飲んだ。

圧倒していたと思われたメタグロスのパワーを、オノノクスはあの一瞬で凌駕してみせたのである。

まさに、火事場の開花。

名だたるチャンピオンが集いしPWTに相応しい、奇跡の一場面だった。
 ▼ 587 ビゴン@ばんのうごな 17/05/28 06:08:43 ID:DTwvgy1Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イッシュ勢強すぎぃ!
支援
 ▼ 588 チム@こわもてプレート 17/05/28 20:12:28 ID:Y8mXn.s6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やっぱりオノノノノノノノは強いんだよ。強いんだよ。強いんだよ!
 ▼ 589 ルジーナ@トロピカルメール 17/05/28 20:13:37 ID:6IuNYYFc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドラゴンはゴミみたいな技構成してるな
 ▼ 590 ルフォン@フラットコール 17/05/29 00:25:15 ID:BeC3q.R2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドラゴンはやっぱり強いんだなあ
 ▼ 591 ガフシギバナ@スキルコール 17/05/29 01:20:09 ID:ONj8nkR. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今更だけどヌメルゴンってドラゴンダイブ覚えなかったはず
支援
 ▼ 592 mTQB7XkZdk 17/05/29 02:00:30 ID:R/eqFsJ6 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……こうして、本日のPWTのプログラムは無事に終了した。

一回戦第一試合は、カロスの勝利。

第二試合は、イッシュの勝利。

ポケモン達がしのぎを削り合い、そして時は瞬く間に過ぎ去って、茜色の日暮れがやがて辺りを淡く染め上げていく。

「____それでは皆様、また明日お会いしましょう!」

実況が、声高らかに観客達へ向けて別れの挨拶を述べた。

マイクを経由したことで音量を爆発的に引き上げられたその声は、会場中に一瞬にして広がって。

それを皮切りに、続々と人々が散り散りになって席を立ち離れ去っていく。

先程まで湧きに湧きまくっていた喧騒も、観客達が荷物と共に持ち帰るかの如く消えていった。

そして、彼らもまた、それぞれの帰路に就く……。
 ▼ 593 mTQB7XkZdk 17/05/29 02:01:09 ID:R/eqFsJ6 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……代表達の帰り道。

会場から出た後、滞りなく解散した彼らは、今日の試合を振り返り、各々が抱いた想いをパートナーと共に語り合っていた。

「……まさか、あのダイゴさんとミクリさんがこうもあっさりやられるなんて」

……ゴールドは、なまじ自分が尊敬していたトレーナーだっただけに、今回のダイゴ達の惨敗がショックだったようで。

彼は俯き、夕焼けに照らされるアスファルトに作られし自らの影をひたすら見つめながら、横のミヅキにその無念の胸中を晒す。

「……まぁ、ヒコザルも木から落ちるとは言うしねぇ」

「……いや、そういう問題では無いですよねこれ」

「あれ?そっかな〜」

……悩みなんて微塵にも無さそうな、のほほんとしたミヅキの佇まい。

艶のある綺麗な黒髪に可愛らしいニット帽を被った彼女は、悲しみに溢れたゴールドとは対称的に、凄く足取りが軽かった。

靴底が地面に触れる度、音符がそこから弾け出てきそうなくらいの軽快さである。

「……オダァ」

お気楽なヤツめと言わんばかりに、オーダイルは呆れたような声を漏らした。
 ▼ 594 mTQB7XkZdk 17/05/29 02:04:55 ID:R/eqFsJ6 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
……と。

「あ、見て見て!」

「あそこに美味しそうなアイスクリーム屋さんがあるよ!行ってみよ〜っ!」

ミヅキはそう言い放つと、ゴールドの二の腕に自分の二の腕を強引に組んで。

空いていたもう一つの腕を目線の方向に真っ直ぐ伸ばし、その先にあったお洒落なアイスクリーム屋さんを指差した。

「ミ、ミヅキさん……!?」

女の子に突然腕を組まれるという美味しいイベントに出くわして、カァッと頬を赤らめたゴールド。

彼がこんなにも困惑しているというのに、ミヅキはそんなのお構い無しで。

眩しすぎる程の笑顔のまま、ゴールドをアイスクリーム屋さんの前へと連れてった。

それを後ろからオーダイルも追う。

「なんだか気持ちがモヤモヤする時は、冷たいアイスを食べるに限るっ!」

「元気出そっ!ゴー君!」

……ゴールドはこの時、自然に笑みが浮かんだ。

この、沈んだ自分を無理矢理引っ張り出してくれるかのような、ミヅキの明るい振る舞い。

それに救われる自分を感じて、ゴールドはふっと笑い、この一時を楽しむこととしたのだった。
 ▼ 595 ナバァ@ふっかつそう 17/05/29 05:55:57 ID:A3yDBqQA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 596 ッシー@アクZ 17/05/30 05:57:45 ID:eCo5X45g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 597 mTQB7XkZdk 17/05/31 02:56:38 ID:iQZMJTXQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……今宵は、形の整った三日月が雲無き夜空にて浮かんでいた。

ミアレシティの、落ち着いた町外れの一角にぽつんとあったベンチ。

横の街灯が燐光を放ち、その腰掛けをぼんやり照らす。

そこへ、賑やかな中心部で一頻り遊んできたゴールド達がやって来た。

「あそこで少し休みませんか?」

「そだねぇ」

ゴールドとミヅキは、ごく自然な流れで。

二人して……"隣同士"で、そのベンチに座る。

「……オダッ」

「え?」

オーダイルは、その二人のムードを見て、少し空気を読んだ。

そして、彼はゴールドのバッグを突然漁り始めると……。

「……ダイル」
 ▼ 598 mTQB7XkZdk 17/05/31 02:57:08 ID:iQZMJTXQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……奥にあった自分のモンスターボールを発掘して、そのボタンを自らの額にコツンとぶつけ、押す。

すると、オーダイルはボールの中へ。

これで、このベンチ周りの空間には、ゴールドとミヅキだけが残る形に。

「オーダイル……?」

ゴールドには、オーダイルがとったこの行為の真意がイマイチ理解できなかった。

普段ボールにはあまり入らず、ゴールドの後ろをテクテクと付いていくオーダイルが、何故今このタイミングで自分からボールに戻ったのか。

暫くその理由を模索したゴールドだったが、全く検討がつかない。

……だけど、なんだろう。

オーダイルがこの場から居なくなったことで……。

……なぜだかゴールドは、凄くドキドキしてきた。

「……っ」

特に、隣のミヅキを見る度にその鼓動は激しさを増していく。

思わず、左胸辺りの服の繊維を鷲掴みにしてしまう程に。

これはもしや、オーダイルが居なくなったことへの恐怖によるものなのだろうか。

……いや。
 ▼ 599 mTQB7XkZdk 17/05/31 02:57:34 ID:iQZMJTXQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
いくらなんでも、その理由は大袈裟すぎる。

確かに、ゴールドとオーダイルは幾何時も共に信頼を築き上げてきた唯一無二のパートナーではあるが、だからといって依存の関係にあるわけではない。

では、この胸の高鳴りは一体どこから……。

……と。

「……ふふっ」

「もっと……近くに寄っても良い?」

……そんな情緒不安定なゴールドに、ミヅキが突然距離を詰めてきた。

「え!」

唐突に失われた、少年と少女の間隙。

「ゴー君……今日は楽しかったね?」

「は……はい、そうですね」

ミヅキは、彼の耳元で優しく囁くようにして、若干息遣いの籠った喋りをする。

「明日は……私達の戦いがあるよ」

「だから……一緒に」

「……一緒に、勝とうね」
 ▼ 600 mTQB7XkZdk 17/05/31 02:58:37 ID:iQZMJTXQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……明日の戦いに対する決意の同調。

それをゴールドに求める彼女の表情は、どこか儚げだった。

そんなミヅキを見た時、ゴールドはふと思う。

今、この瞬間は____

____ポケモンバトルよりも、何よりも____

____自分が最も大切にすべき"時間"なんだな、と。

「……ええ」

「勝ちましょう……絶対に」

ミヅキと目線をしっかり合わせ、気持ちを一つにする。

二人の距離は、限りなく近い。

しかし、接触はしない。

だが、その心は見事に合致している。

まるで……そう。

"融合"……したかのように。
 ▼ 601 ニシズクモ@だいちのプレート 17/05/31 06:24:08 ID:7ZBducWs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 602 ケンカニ@ラブタのみ 17/05/31 22:54:59 ID:GVlwFuTI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
まさかクリムガンやレジワロスをかっこいいと思う日が来るとは
 ▼ 603 ークイン@ライブドレス 17/05/31 22:56:38 ID:nTVvdgaU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴールドたち負けて欲しいなレッドvsグリーンが見たいし
 ▼ 604 レイハナ@ラッカのみ 17/06/01 00:07:11 ID:UogDM/rI NGネーム登録 NGID登録 報告
>>603
そういうことは控えなさい
 ▼ 605 mTQB7XkZdk 17/06/01 01:57:28 ID:Gk6eAzA. [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

____ミアレシティは、ノースサイドストリート。

一軒一軒が空を貫く巨塔が如しの高層ビルが、群れを成して建ち並ぶこの街で。

赤いマフラーを颯爽と靡かせるレッドと、金色のトリプルテールを可憐に揺らすコルニが、仲睦まじく隣り合って歩を進めていた。

空は真夜中の塗り潰されたような暗さだが、下界の街はまだまだ活気が絶えず、電気の灯りが所狭しと輝いている。

ふと視界に現れた小さな時計台は、午後の七時辺りを指していた。

昼頃にトーナメントが開催されてからもうそれほどの時が流れていたのか、と、二人は自分達の体感とのギャップに少し驚く。

「いやぁ、それにしても今日のレッドは格好良かったなぁ〜」

観戦席から今日の試合を見ていたコルニは、第一試合でのレッドの戦いぶりを好評した。

「あの……レジギガス、だっけ?」

「あんな大物にもビビらず立ち向かえてさ!」

「やっぱり、レッドとカメックスのコンビは抜群だよ!」

「勿論、メレシーも良い仕事したよね!」

コルニの口からは、絶賛の嵐が飛んで来る。
 ▼ 606 mTQB7XkZdk 17/06/01 01:58:03 ID:Gk6eAzA. [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかしそれを聞くレッドは、どこか浮かない表情をしていた。

まるで、その誉め言葉が辛いと言わんばかりに。

「…………それでも、単純な実力ではクロツグさんの方が上だったさ」

「カルムが機転を利かせてくれたからこそ、今回のバトルは勝てたんだ」

レッドの発言は、今に始まったことでもないが謙虚だった。

あくまで今回の勝因は自分達では無いと言い張る。

勿論それは、彼自身の代表としての責任感から来ているものなのだが……。

……ネット上などの下馬評というのも、実はいくらか後押ししている。

実際、今回勝てたのはカルムのおかげという意見が世間で多く、レッドの活躍はあまり注目されていない。

その揺るがしようのなき現実が、レッドの心に重くのしかかっていたのだった。

「レッド……」

勿論コルニは、本心からレッドの戦いぶりを評価しているつもりだ。

だがそれ以上に、大多数の人々の容赦のない感想というのは胸に響く。

どういう風に励ませば良いのだろう。

と、コルニが考えていた時だった。
 ▼ 607 mTQB7XkZdk 17/06/01 01:58:33 ID:Gk6eAzA. [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……でも」

ふと、コルニはレッドの方へ振り向く。

"でも"と切り出したレッドは、その時しっかりと前を見据えていた。

「……今度は」

「今度はもっと……もっと、カッコよく決めて見せる」

"もっと"という言葉に、力を込めて。

彼の横をテクテクと歩く、彼が最も慕う女の子に向かい。

「だから……見ていてくれ」

「コルニ」

誓いと、願い。

その両方を、彼女に言い放った。

「……!」

……どうやら、コルニの心配は杞憂だったらしい。

そんな世間の評価で、下手に気に病むレッドでは無かったのだ。

寧ろ、それすらもバネにしようという気概が感じられる一言。
 ▼ 608 mTQB7XkZdk 17/06/01 01:59:44 ID:Gk6eAzA. [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
コルニは、レッドの言葉を貰ってとても嬉しかった。

全身が紅潮し、表情が綻んで。

その微笑む口からは、次のような台詞が当たり前のように飛び出た。

「勿論っ!」

「"大好き"なレッドのためなら……何百回」

「いや何千回、何万回だろうと……応援しまくるよっ!」

少し大袈裟すぎる激励……だけど。

「……ありがとう、コルニ」

レッドは、そんな彼女の想いの丈を一身に受けて、改めて決意する。

この、たった一つの無垢な笑顔を守るためにも。

また、自分と共闘するカルムの勝利のためにも。

そして……自分と一心同体の剣となってくれる、愛するポケモン達のためにも。

"勝つ"。

この信念の矛先は、明日のバトルに向けられる。

相手は、ドラゴン使いのアイリスと、謎に包まれた青年N。

彼らは、あのシンオウ代表よりも強力な敵となり得るのか、果たして……。
 ▼ 609 ジョンド@きちょうなホネ 17/06/01 05:52:39 ID:63cKrbPY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 610 mTQB7XkZdk 17/06/02 02:52:21 ID:mdejSwxk [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……日に向かって、ヤヤコマの群れが飛び立っていく。

大都市ミアレシティが擁するビル共の縫い目をくぐって、その朝日はやって来た。

チュンチュンという、ヤヤコマの可愛らしい鳴き声に耳の安らぎを感じながら、少年____

____レッドは、ふわふわの布団からその細身の上体を起こす。

「ふぁ……」

ホテルの一室で迎えた今朝。

彼は、少しの気の抜けたあくびのあと、意識を次第に覚醒させていった。

ところが、せっかく上半身が起きても、布団を被っている下半身は、未だ夢心地のままで。

"まだ寝させてくれ"と、己の半身がまるで我が儘を言っているかのようだ。

立ち上がろうとしても、中々言うことを聞いてくれない。

「……もう朝か……」

「……歯、みがこ」

レッドは、そんな駄々っ子な下半身を無理矢理叩き起こして、洗面台へと向かっていった。
 ▼ 611 mTQB7XkZdk 17/06/02 02:52:55 ID:mdejSwxk [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……チャァァ」

と、そこへ更にピカチュウも起きて、彼の後をトコトコと追う。

「……」

ふとレッドは、コルニのベッドを通りがかる際、なんとなしにそこへ目線を溢した。

「……Zzz」

……まだ、コルニは寝ている。

それも、健やかでかつ安らかな、汚れなき寝顔で。

すやすや……とても穏やかで、優しい寝息を立てながら。

見ていると、何だかこちらまで幸せにな気分になって、自然と笑みが滲んでくる……そんな純粋な姿が、そこにはあった。

「……っ」

レッドは、そのコルニの安眠を崩さないよう、足音を立てずそっと近付くと。

彼女を覆うかけ布団の位置を修正し、より暖かく、より寝やすそうな形に整えた。

そして彼は、改めて洗面台へ。

歯を磨き、顔を洗って、就寝中に媚り付いた汚れを、しっかり綺麗に落とす。

やがてその作業は"心の洗浄"ともなりて、戦いに向かいしレッドを心機一転させた。
 ▼ 612 mTQB7XkZdk 17/06/02 03:01:19 ID:mdejSwxk [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……今日も……勝つ!」

パチンと、軽快な音が鳴る。

レッドが、両掌で自らの頬をひっぱたいたのだ。

その行為が示すのは、固く強く引き締められた芯のある気持ち。

これから会場に向かうにあたっての、彼の意気込みが大いに感じられる。

「……おはよぉ、レッド、ピカチュウ〜」

と、ここでコルニもようやく起きてきたようだ。

彼女は、寝惚け眼を懸命に……しかしあくまでスローペースで擦りながら、あくび混じりにまずはレッド達へ早朝の挨拶。

「おはよう、コルニ」

「ピッカァ!」

こうして最初の言葉を交わすことで、今日という日は始まりの鐘を鳴らす。

……すると。

「……ねえ、コルニ」

レッドは、コルニに何やら込み入った用事があるのか、キリッと改まった表情で、彼女に声をかけた。

「……今日、大会へ行く前に」

「ちょっと……"寄り道"していっても良いかな?」
 ▼ 613 ュレム@きいろのバンダナ 17/06/02 05:56:15 ID:c0aysfHs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お?
支援
 ▼ 614 トウモリ@ながながこやし 17/06/03 11:51:18 ID:J0SpIz9s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 615 ーボック@ファイヤーメモリ 17/06/03 17:39:27 ID:h/1DpbWk NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
こういう物語じゃなかったらコルニ絶対死ぬよね
しえーん
 ▼ 616 mTQB7XkZdk 17/06/04 01:03:40 ID:zntcjo7Y [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……宿泊中のホテルを出て、レッド達は街へと繰り出した。

ミアレシティは午前から既に喧騒に満ち溢れ、どこもかしこも人やポケモンが行き交い、賑わっている。

そんなごった返しのストリートで、一際存在感を放ち、堂々と看板を掲げ構えている一つの建物があった。

それは、赤い屋根がトレードマークで、施設のシンボルとしてモンスターボールの意匠が施されている。

"ポケモンセンター"……通称"ポケセン"。

世界中、至るところに存在している、ポケモンとそのトレーナーのための施設だ。

そこでは、バトルによって傷付いてしまったポケモン達の治療を無料で請け負ってくれる他。

ポケモンの傷薬や、モンスターボールなどのバトルに役立つ道具を購入できる"フレンドリィショップ"が、ポケセンの中に併設されている。

以上の利便性から、彼らにとってはまさに"拠点"も同然なのであり、非常に重宝されている。

そして……。

「……着いた」

「ピカァ!」

……レッド達もまた、そのポケセンにやって来ていたのだった。
 ▼ 617 mTQB7XkZdk 17/06/04 01:04:10 ID:zntcjo7Y [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ホテルにて、PWTの会場に行く前に"寄り道"をしようとコルニを誘ったレッド。

彼の言う"寄り道"とは、どうやらここのことだったらしい。

しかしなぜ、今になって彼はポケセンに寄ろうなどと思ったのだろうか。

ポケモン達の体力は、今日の戦いに備えて既に全回復させている。

また、PWTでは戦闘中の道具の使用が認められていないため、フレンドリィショップを利用する意味もない。

レッド達には、今更ポケセンに行く理由など無いはずなのだが……?

「ねえレッド、どうしてポケモンセンターなんかに……?」

コルニは、その辺りの事情をレッドに聞いてみた。

するとレッドは、質問に言葉では答えず、スッとコルニの前に出て。

彼女に手招きしながら、ある方向へと歩いていった。

きょとんと目を開き、ハテナを浮かばせるコルニ。

取り合えず、彼の誘いのままにトコトコとついていく。

そして辿り着いた先には……。

……"パソコン"があった。

「えっと確か……やり方はまず、マサキのパソコンに繋いで……と」
 ▼ 618 mTQB7XkZdk 17/06/04 01:05:41 ID:zntcjo7Y [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
レッドはパソコンの前に立つと、キーボードに左手を、マウスに右手を添えて、画面を凝視しながら何やら操作をし始めた。

「おっ……あったあった」

どうやらお目当てのページに行けたらしく、満足そうな表情を浮かべるレッド。

「んー……?」

レッドが何をしているのか気になったコルニは、彼の横から割って入るようにして、画面を若干強引に覗いた。

彼女が見ると……画面は、色々なポケモンの画像で一杯だった。

レッドは、画面のポケモン一匹一匹にカーソルを合わせては、顎に手を当て悩んでいる。

この画面と、それを操作するレッドの思考の仕草から、コルニは何かを察したような表情を浮かべた。

「レッド……これって」

「もしかして……"ボックス"?」
 ▼ 619 mTQB7XkZdk 17/06/04 01:06:14 ID:zntcjo7Y [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……コルニの口から放たれたのは、"ボックス"という単語。

ここで言う"ボックス"とは、ポケモンを一時的に"電子化"して、パソコンの中に預けたり、または引き出すことのできる……いわば電脳的な空間のこと。

通常、一人のポケモントレーナーが一度に持てるポケモンの数は六匹までとされている。

七匹目のポケモンを捕まえた場合、そのポケモンは自動的にボックスへと送られるのだ。

まあ早い話、ポケモン達の倉庫なわけである。

そんなボックスを小慣れた手付きで操るレッド。

やがて、最終的な目的に辿り着くと……。

……彼は、こう言い放った。

「……よし」

「キミに……決めた」
 ▼ 620 ルバット@ひみつのコハク 17/06/04 02:49:22 ID:PK/6STk2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
UBはどうすんだろう
 ▼ 621 ュペッタ@とくせいカプセル 17/06/04 02:52:37 ID:324draps NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 622 ベルタル@フライングメモリ 17/06/04 07:18:39 ID:4D9H8k0I NGネーム登録 NGID登録 報告
>>620
警察がOKだしてるから大丈夫じゃね?(超適当)
 ▼ 623 マワリ@マグマのしるし 17/06/04 08:21:15 ID:RNHT2K4Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドラゴン使いが相手だからラプラス呼び出す感じ?捕まえたばかりのフェアリーが雑魚だったし
 ▼ 624 mTQB7XkZdk 17/06/05 01:22:24 ID:Z.QVGSEM [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……二日目も、PWT会場は大盛況だった。

円形のコロシアム、その観客席に、昨日と同様多くの人々が集結し、これから始まらんとしている激闘を待ちわびている。

各地方の代表たるチャンピオン達による、年に一度の奇跡の祭典。

それは、全てのポケモントレーナー達に捧ぐ極限のバトル。

「今日も熱いバトル、期待してるぞ!」

「やれぇー!ぶっとばせー!」

観客達が、コロシアム中央のバトルフィールドに向けて早速各々のエールを送る。

それぞれ、自分が応援する代表達の勝利を願って。

しかし、今日は昨日と違って、その応援していた代表が負けてしまった……なんて人も居る。

そういった場合、負けたチームの分まで頑張れよと言う者がいれば。

かたや、負けたチームの仇を討ってくれと言う者もいる。

そのため、観客席から飛び交ってくる言葉の数々にも、昨日に比べてより多様性が増した。

そんな混沌渦巻く戦場で、今回剣を交わらせる戦士達は……。
 ▼ 625 mTQB7XkZdk 17/06/05 01:22:59 ID:Z.QVGSEM [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……一回戦、第三試合はカントー・ジョウトvsアローラ!」

「そして続く二回戦は、カロスvsイッシュのスケジュールで本日は参ります!」

……今、実況が言った通りだ。

そして、本日の試合に勝ち上がった代表同士が、明日の決勝戦でラストバトルを繰り広げることとなる。

まず最初は、ワタルとグリーンのカントー・ジョウト。

そして、ミヅキとゴールドのアローラが激突する。

既に選手専用の観戦席に腰をかけていた代表達は、頃合いをスタッフに伝えられると、それぞれ徐に席を立った。

「さてさて……いよいよ俺様の出番ってわけだな」

「テンションが軽いな、君は……もっと気を引き締めろ」

ニヒルに笑みを作りながらバトルに臨まんとするグリーンを、生真面目な性格のワタルは冷静に諌める。

「あたっ……座りっぱなしだったから、腰がちょっと痛いよう」

「お婆ちゃんですか、貴女は……」

一方で、のんびりくつろぎ過ぎたミヅキは、ゆっくり背伸びし腰痛を和らげる。

その年寄りじみた仕草に、ゴールドは思わず苦笑しツッコミを入れてしまった。

「ははっ、アイツら呑気だなぁ」
 ▼ 626 mTQB7XkZdk 17/06/05 01:23:30 ID:Z.QVGSEM [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
そんな、この場に似つかわしくない和やかなムードに、カルムも笑って乗っかる。

しかし、これから始まるのは、決勝進出を賭けた攻防戦。

今に、この雰囲気は砕け散ることとなる。

「…………」

「……ゴールド君」

……ふと、彼の名を呼んだのはレッドだった。

しかしそれは、ゴールドを呼び止めるにはいささか声が小さすぎて。

ゴールドはそのまま、レッドを気に留めることなくバトルフィールドへと向かっていく。

「…………」

(……君は、あの時よりも更に強くなったみたいだな)

(……俺も……強くなったよ)

回想するのは、あの日の雪山での彼とのポケモンバトル。

ダイヤモンドダストが舞う、白銀の頂にて。

レッドは帽子を深く被り、言葉も指示以外は録に発することなく、数多の挑戦者達を冷徹に捩じ伏せてきた。

勝利に飽き、敗北を渇望していた……そんな、傲慢な日々。
 ▼ 627 mTQB7XkZdk 17/06/05 01:24:23 ID:Z.QVGSEM [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
そこに、彼は……ゴールドは、現れた。

カントーとジョウト、二つの地方のポケモンジムを完全制覇した実力で、ゴールドはレッドに、激闘の末……勝利を収めたのだった。

あれからレッドは、自分を負かしたゴールドというトレーナーを片時も忘れたことがない。

今でも、あの日の高揚は鮮明に彼の脳裏に焼き付いている。

そして……今。

また、彼の戦いが見られるのだ。

しかも今度は、アローラ代表として。

中々、感慨深いものがある。

……だが。

(……グリーン)

(お前とは、決勝の最高の舞台で戦いたい)

(だから……勝ってくれ)

……確かに、ゴールドとの因縁を前にして、あの時のリベンジをしたいという気持ちもあるが。

それよりも、自分の一番のライバルであり親友であるグリーンの勝利を……レッドは願った。

試合が、いよいよ始まる。

勝つのはグリーン達か、それとも……ゴールド達か。
 ▼ 628 ハコモリ@ブーカのみ 17/06/05 05:51:50 ID:eMGZMCM6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 629 ュワワー@とうめいなスズ 17/06/05 14:59:57 ID:uXdMWAvc NGネーム登録 NGID登録 報告
しえそ
 ▼ 630 mTQB7XkZdk 17/06/06 03:48:15 ID:5O2mRnsc [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「さて……まずは!」

「試合前の、"エンバイロメント"の制定です!」

実況のその一声が響くと。

次の瞬間、会場は突然の揺れに見舞われた。

平坦で無機質なバトルフィールドが、特異で過酷な環境に変化する"エンバイロメント"の特別ルール。

この地鳴りは、それが執行される時の予兆なのだ。

この揺れを伴って、バトルフィールドは姿形を自在に変えていく。

そして、今回グリーン達が戦うエンバイロメントは……。

「……うおっ!」

「これは……砂嵐か」

……激しく吹きすさむ、砂塵の竜巻。

気付くと足元の床は、既に人工物のそれではなくなっていた。

岩山の表面のようなゴツゴツとした地形の足場が、あたり一面に広がっている。

突如として発生した砂嵐のせいで視界が悪いが、全く全貌が見渡せないと言うほどでもない。

少なくとも、数十メートル先に居る、これから相対する対戦相手の姿くらいは肉眼でも楽に確認できる。
 ▼ 631 mTQB7XkZdk 17/06/06 03:48:54 ID:5O2mRnsc [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが、体を容赦なく打ち付けるこの砂嵐は、ここに立っているだけでも中々の痛みを伴うため、バトルには支障が出そうだ。

「今回のエンバイロメントは……"断崖"!」

「このフィールドの特徴は、吹き荒れているあの砂嵐だけではありません!」

「切り立った崖と、奈落が如し深さの谷もまた、断崖の特筆すべき注意点に挙げられます!」

実況の言葉通り、"断崖"というエンバイロメント名が示すように、ここは頂点と底辺でまさに天と地ほどの高低差がある。

今、グリーン達が立っているのは崖の頂点。

しかし、一歩踏み間違えれば奈落の底へまっ逆さまだ。

勿論、これはあくまで大会側が用意したステージに過ぎないため、落ちたところで死にはしないのだが……。

「もし崖から落ちてしまった場合は、空を飛べるポケモンでも無い限り復帰は不可能!」

「ある一定の深さに到達した場合、ポケモンは自動的に瀕死の扱いになって、トレーナーのボールに戻されます!」

……この説明から読み取るに、もし崖から落下した場合、そのポケモンは戦闘不能として処理されてしまうらしい。

つまり、この戦いではステージアウトの要素が盛り込まれているわけである。

その辺りを如何に有効活用できるかが、勝負の分かれ目となろう。
 ▼ 632 ランセル@きんのいれば 17/06/06 06:07:14 ID:j.Iu3bmk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白いシステムだなぁ
支援!
 ▼ 633 mTQB7XkZdk 17/06/07 04:06:15 ID:LOGGDjng [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「嫌な砂嵐だなぁ〜、グリーン大丈夫かな」

観客席のコルニは、砂が舞いし戦場に立っているグリーンを心配をする。

ちなみに、今日も今日とて彼女の隣には、ルカリオと……。

「……確かにあの砂嵐は厄介ですが、それに屈しているようでは先が思いやられますね」

……相も変わらず饒舌に、解説のような喋りをするこの男……ズミが居た。

「じゃあズミさんは、あの砂嵐に耐えられるんですか?」

「くわ?」

上から目線で物を言うズミにムッと来たのか、コルニは若干口を尖らせながら、ズミに問いを投げ掛ける。

「常に強い精神力を以てすれば、耐えられぬ苦痛などありはしません」

ズミの言葉は、どれもこれも崇高な考えのもと発せられている。

その発言の信憑性はともかくとして、彼は仮にもカロスの四天王。

そんな相手に、ジムリーダーの自分がこれ以上ズミに突っかかっても仕方がないとコルニは悟り、適当に頷いて会話を終わらせたのだった。

何はともあれ、彼女が応援するのは勿論、共に旅をする仲間であるグリーン。

「よっし!頑張れグリーン!」

「くわーっ!」
 ▼ 634 mTQB7XkZdk 17/06/07 04:06:57 ID:LOGGDjng [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
コルニ達の期待も受けて、いよいよ、グリーン達の戦いが始まる……。

「一回戦、第二試合!」

「カントー・ジョウトvsアローラ……バトルスタートです!」

実況が、試合開始の幕開けを宣言すると同時に。

トレーナー達は、鞘から刀身を引き抜く侍が如く、自身のポケモンをボールから繰り出した。

まず、グリーンの先鋒。

「やれ……"カイリキー"!」

その名が示す通り、そのポケモンが誇るのは圧倒的な"怪力"だ。

筋骨隆々とした肉体が特徴の、人形のポケモンで、それはそれは非常に逞しい姿をしている。

そして、その体の構造は"四肢"という枠組みでは収まらない。

と言うのも彼は、なんと"四つ"もの分厚い腕を持っているのだ。

よって、合計"六肢"。

"かくとう"きってのパワーファイター、ここに参上。

"カイリキー"!

「リキィッ!」
 ▼ 635 リトドン@あかいいと 17/06/07 04:09:14 ID:HcWSVVlE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 636 mTQB7XkZdk 17/06/07 04:15:27 ID:LOGGDjng [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
次に、ワタル。

「いでよ……"フライゴン"!」

……それは、"砂漠の精霊"の異名をとる美しきドラゴン。

他のドラゴンとは一線を画すしなやかなフォルムで空を優雅に舞い、敵を翻弄する。

彼は主に砂漠地帯に生息するポケモンなので、こういった砂嵐という環境下では強い耐性を発揮してくれる。

まさに、今回のバトルでは適正たる戦力というわけだ。

ドラゴン使い・ワタルが繰り出す最初のポケモン……"フライゴン"!

「ふりゃぁっ!」

カントー・ジョウトが終わり、お次はミヅキ。

「それっ!"バンバドロ"!」

巨大な馬のモンスターが、断崖の大地にズッシリと音を立てて降り立った。

「ドロォォァァッ!!」

重厚な嘶きを轟かせ、"バンバドロ"はカントー・ジョウトの面々を威嚇する。

その動きはお世辞にも早いとは言えないが、その代わりに防御力が凄まじい。

卓越した耐久性で敵の攻撃を弾き、圧倒する。
 ▼ 637 イリュー@とつげきチョッキ 17/06/07 11:47:44 ID:jQWU2ZTM NGネーム登録 NGID登録 報告
オノノカッコエエ支援
 ▼ 638 カンプー@プテラナイト 17/06/07 17:34:24 ID:gGkgW.gU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクスといい、フリャと言い、この作者、出来る…!(確信)

支援
 ▼ 639 ーギラス@イワZ 17/06/07 21:09:37 ID:kjCU9xkU NGネーム登録 NGID登録 報告
フリャがんばれー!

支援
 ▼ 640 mTQB7XkZdk 17/06/08 01:15:02 ID:r1WxZMJ2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミヅキが初手としてバンバドロを繰り出したところで、残すはゴールドのポケモンのみ。

「いけ!」

「"ポリゴンZ"!」

ゴールドはその名を叫んで、モンスターボールを荒涼とした地面に叩きつけた。

瞬間、出てきたのは……。

「……ビーーーー!ビーーーー!」

……謎の浮遊物体だった。

形状としては全体的に滑らかで、尖ってる部分がなく、あえて言葉で形容するならば球体の塊と言ったところか。

そして、突然に鳴り響いたのは甲高い機械音。

まるで、ゲームのカセットを途中で抜いた時に発生するフリーズのような……そんな、耳に障る音だ。

"ポリゴンZ"は、人工的に作られたポケモンである"ポリゴン"の最終進化形。

しかし、その道は正統を辿らなかった。

進化の際に"あやしいパッチ"をインストールしてしまった結果、システムエラーが発生し、このような異形の姿へと変貌してしまったのだ。

人の手によって作られ、人の手によって歪められたポリゴンZ。

だが、その破壊力は凄まじく、この力を欲する者は後を絶たないという。
 ▼ 641 mTQB7XkZdk 17/06/08 01:15:49 ID:r1WxZMJ2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
さてこれで、全てのポケモンが出揃った。

ここで観戦席の選手達は、とある一体のポケモンに一目置く。

「"バンバドロ"……また、初めて見るポケモンだ」

ミヅキが繰り出した、アローラ地方に生息する馬のポケモン……"バンバドロ"。

それに対し、特に一番目を輝かせていたのはレッドだった。

彼はカロス地方に最近来たばかりで、まだカロスのポケモンも全て把握しきれていない。

そんな発展途上の好奇心の前に、アローラ地方の新たなポケモン・バンバドロなんてものが現れたら……興奮しないわけがないのだ。

勿論、他の皆とてそれは同じ。

見慣れないアローラのポケモンに、一同の目の輝きは一層増す。

「ワタシのアシレーヌも、アローラで捕まえたポケモンだったのですが……見事に破れてしまいました」

と、昨日の試合で色違いのアシレーヌをドヤ顔で出していたミクリは、結局Nに惨敗してしまったことを未だに気にしているようで。

「はっは!まあタイプ相性がアレだったしなぁ!」

そんな気持ちブルーなミクリを、クロツグは腹から声を出して笑い、"まあ気にするな"と彼の肩を叩いて励ます。

「……彼女がどういう戦いをするのか、気になるところだね」

対して、ミクリの話題に挙げられている当のNは、そちらを全く気にすることなく、じっくりとこの試合を観察していたのだった。
 ▼ 642 mTQB7XkZdk 17/06/08 01:16:50 ID:r1WxZMJ2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
顎に手を当て、試合に没頭しながら、次なる戦術を考え込んでいる様子。

そんな彼を見て、隣のアイリスは言った。

「ねえ、Nのお兄ちゃん」

「ポケモンバトル……たのしい?」

この問いに、Nは。

「……ああ」

「楽しいよ」

若干の沈黙の後、そう答えたのだった。
 ▼ 643 mTQB7XkZdk 17/06/08 01:17:27 ID:r1WxZMJ2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……乾燥地帯、そこで圧政を敷くのは砂嵐の猛威。

相対した代表達は、互いに第一の標的を定める段階に入っていた。

「俺はカイリキーで、ポリゴンZを潰しますよ」

「なのでアナタは、適当にあの馬の相手をしててください」

グリーンは、仮にもジョウトのチャンピオンで自分の先輩であるワタルに対し、随分と尊大な態度で自らの戦術を言い伝える。

「……それで俺にも異論は無いが、もう少し敬意を払え敬意を」

"舐められてる"と確信したワタルは、あくまで上下関係はキッチリしろと、グリーンを咎めた。
 ▼ 644 クレー@シルクのスカーフ 17/06/08 06:54:14 ID:J3JZS4tA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 645 バメ@ばんのうごな 17/06/08 07:13:52 ID:50Vd9.Aw NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
やっぱりこのスレでは終わらなさそうw
 ▼ 646 mTQB7XkZdk 17/06/09 02:45:59 ID:z/ERz.po [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「へーへー、サーセンでしたっと」

「それじゃあやるぜ!カイリキー!」

「リキィッ!」

そんなワタルからの注意を軽く受け流したグリーンは、カイリキーと同調してついにバトルに躍り出た。

「ポリゴンZに、"からてチョップ"!」

「リキァ!」

カイリキーは、その屈強な足腰で一歩踏み出すと、ポリゴンZに向かって果敢に前進。

足跡に砂煙を巻かせながら拳を大きく振り上げ、渾身の手刀をお見舞いした。

「……!」

ゴールドはこれに対し、すかさずポリゴンZに回避を指示しようとする。

……だが、彼はふと、あることを思い出した。

と言うのも、ゴールドは以前、ジムリーダーとしてのグリーンと戦ったことがある。

その時に、グリーンが繰り出したカイリキーの特性は確か……。

(……"ノーガード"か!)

……"ノーガード"。
 ▼ 647 mTQB7XkZdk 17/06/09 02:46:36 ID:z/ERz.po [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
互いのポケモンの技が必ず当たるようになる特性。

つまり、カイリキーが繰り出した効果抜群の"かくとう"技・"からてチョップ"は不可避の一撃。

避けようとしても無駄なのだ。

よって、これを防ぐためには回避ではなく……。

「……ポリゴンZ、"10まんボルト"!」

……技によって、防護壁を張る他ない。

「ちっ、覚えてやがったか」

カイリキーの特性を看破されたグリーンは、心底悔しそうな表情を浮かべる。

「リキィィィッ!!」

ノーガードの特性があるといえど、技が当たる前にその威力が殺されてしまえば何の意味もない。

電撃を全身に浴びたカイリキーは、迸る激しい痺れに耐えかね、後退してしまう。

「……キィィ」

おまけに、砂嵐によるスリップダメージも地味に効いてくる。

まだ体は大して傷ついていないものの、精神的な気力が削り取られてるせいで疲労のゲージが溜まりやすい。
 ▼ 648 イプ:ヌル@あくのジュエル 17/06/09 05:54:26 ID:m.KQle5E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おおノーガードか
支援
 ▼ 649 ヤシガメ@さらさらいわ 17/06/09 20:44:56 ID:INKM8GII NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グリーンのカイリキーがサオリキーだったら全員ワンパンで終わりだったというのに…


支援
 ▼ 650 mTQB7XkZdk 17/06/10 03:43:26 ID:xNxaRLSs [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが、この視界の悪い砂煙の中で、比較的小さめなフォルムのポリゴンZを確実に捉えることが出来るのは大きい。

"ノーマル"のポリゴンZに対し、"かくとう"の重い一撃を一発かませば、確実に致命傷を与えられる。

そうすれば、アドバンテージはこちらのモノだ。

問題は、如何にしてあの特殊攻撃による強靭なバリアを掻い潜るか。

何とかして奴の隙を突くしか無さそうだが……。

(……ゴールドは、滅多に隙を見せるようなヤワなトレーナーじゃねぇ)

(さっさと片付けちまいたいトコだが……長期戦は覚悟しとかねぇとな)

……グリーンは、ポケモントレーナー・ゴールドの実力を卓越したモノとして認めている。

なぜならグリーンは、未だに戦績で彼を上回ることが出来ていないからだ。

彼らは互いに、本気のポケモンバトルを繰り広げたこともあったが、その時もグリーンはゴールドに勝利を収められていない。

カントー・ジョウトを制した覇者は、カントー最強のジムリーダーをも凌駕する力を誇っているのだ。

だが、グリーンとてこのままで終わるつもりはない。

ここまでのカロスでの旅路で、グリーンはトレーナーとしての大いなる成長の手応えを感じている。

少なくとも、あの時の様にはいかないハズだ。

「これは受けきれるか!」
 ▼ 651 mTQB7XkZdk 17/06/10 03:44:11 ID:xNxaRLSs [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「"インファイト"!」

「リキァ!」

カイリキーは、ポリゴンZに向かって猛進した後、四つの腕を全て振りかぶり。

「リキリキリキィッ!」

一切の守りを捨てて、拳による怒濤の連続攻撃を仕掛けた。

腕の動作の一つ一つがその素早さの余り残像を生み出し、それが目に何重にも映し出されることで、まるでカイリキーが千手観音のように見える。

「くっ……"10まんボルト"!」

「ビーーーー!」

ゴールドはすぐさま、ポリゴンZに電気の壁を作らせるが……。

「リキィィッ!!」

……インファイトが、最後の一撃____フィニッシュを迎えた時。

そのバリアは、パリンと割れるようにして壊され。

「……ビィィィッ!」

ポリゴンZに、拳が届いた。

「ッ!」
 ▼ 652 オル@リゾチウム 17/06/10 07:22:43 ID:rJgsE1bs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 653 ルーラ@やすらぎのすず 17/06/10 17:06:36 ID:tCvGnIXM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴンが地割れしたら終わるな

支援
 ▼ 654 ノアラシ@グラシデアのはな 17/06/10 17:28:02 ID:I4yeJEkU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>653
フライゴン味方だろうがよ
 ▼ 655 mTQB7XkZdk 17/06/11 02:50:14 ID:OxX4Z/Xs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
電力によって生成した盾を突破されてしまったポリゴンZ。

カイリキー入魂のインファイトが、ポリゴンZに一矢報いた。

威力自体はだいぶ殺されてしまったものの、効果抜群の一撃はそれなりに重い。

彼の体は衝撃によって小刻みに揺れ、不具合のような不気味な音は更にその甲高さを増した。

ポリゴンZは、カイリキーの発揮するパワーに劣勢を強いられる形に。

(……強い)

貫かれた雷壁の残骸……即ち、地面に転がってる電流を見て、ゴールドは表情を狼狽えに染めた。

力任せの攻撃のみでこれを破壊したとなると、何の防御も無しでまともに受けたときのダメージは計り知れない。

(……やられる前に、やるしかないか)

「ポリゴンZ!」

「カイリキーに、"サイコキネシス"!」

「ビビーー!」

ポリゴンZは不協和音を響かせながら、ゴールドに指示され念力を集中させる。

そして、次の瞬間……。
 ▼ 656 ットロトム@ボロのつりざお 17/06/11 18:41:39 ID:rrsF5BiQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やはりこのスレは神だな
このSSを超えるSSを見たことがない
 ▼ 657 チート@ヒールボール 17/06/11 18:48:02 ID:BoSdpYsc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とても面白い 支援
 ▼ 658 mTQB7XkZdk 17/06/11 23:50:35 ID:OxX4Z/Xs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……リキッ!?」

カイリキーの体が、なんと独りでに宙へと浮かび上がった。

……いや。

と言うよりは、持ち上げられた。

"サイコキネシス"。

"エスパー"タイプの技の中でも高い威力を誇る、"かくとう"のカイリキーには効果抜群の技だ。

ポリゴンZは、超能力でカイリキーを浮かし、そこから……。

「ビビーーーーー!!」

……更に強い念力を、彼に向けて送りつける。

すると。

「……リキィィァァァッ!!」

カイリキーの体が、突如として苛烈に締め上げられた。

そこにカイリキーを縛る縄のようなモノは見当たらないが、まるでそれによって束縛されているが如くの苦しみを、カイリキーは慟哭と言う形で叫んでいる。

"サイコキネシス"によって、カイリキーの身動きが完全にポリゴンZに掌握されてしまったのだ。

もはやカイリキーを持ち上げることも、または握り潰すことも、ポリゴンZの自由自在。
 ▼ 659 mTQB7XkZdk 17/06/11 23:51:15 ID:OxX4Z/Xs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが勿論、その時間は限られている。

念力は時間経過と共にどんどん薄れていき、やがてカイリキーは術から解かれる。

その時初めて、"サイコキネシス"はフィニッシュの一撃を迎えるのだ。

「ビーーーー!」

ポリゴンZはその時を悟ると、カイリキーを締め付けるのをやめて。

「リキィ!?」

しかし、"サイコキネシス"という不可視の縄で彼を縛り付けたまま。

遠心力を思いきり働かせながら、最終的にはカイリキーを……乾ききった恵み無き大地へと叩きつけたのだった。

「リキィァッ!」

効果は抜群。

"ノーガード"の効力は発動者自身にも及ぶため、カイリキーは何も出来ずに、成されるがままポリゴンZの"サイコキネシス"を受けてしまった。

「カイリキー……!」

"ノーマル"しかタイプを持たないポリゴンZは、"エスパー"の"サイコキネシス"をあまり得意としない。

故にその威力は最高の域に達しておらず、効果抜群と言えども一撃必殺とはならなかった。

だが、それでも受けてしまった損傷はデカい。
 ▼ 660 mTQB7XkZdk 17/06/11 23:59:52 ID:OxX4Z/Xs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……リ……キ!」

何とか気合いで立ち上がるカイリキー。

満身創痍、ボロボロの肉体ながらも、彼は果敢に構えてみせる。

……と。

二人の戦いが一つの節目を迎えようとした、その時だった。

「ゴー君、代わって!」

「へ?」

ミヅキの焦ったような声が突然響く。

「逃すものか!」

すると次に轟いたのは、ワタルの追撃の一言。

「フライゴン、"だいちのちから"!」

「ふりゃあ!」

フライゴンが叫ぶと、バンバドロの足元から_____

「ドロォォッ!!」

____超高温のマグマが、地を割って噴出した。
 ▼ 661 プ・テテフ@ふたのカセキ 17/06/12 05:53:22 ID:lZmdj0N2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 662 mTQB7XkZdk 17/06/13 01:39:40 ID:/t1iGTNs [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ミヅキさんが……圧されてる!?」

フライゴンの"だいちのちから"の前に、耐えることしかできないバンバドロ。

その光景を見てゴールドは、以前彼女が自分をミミッキュで圧倒していたことを回想しつつ、驚愕した。

あれほどの強さがありながら、ワタルを相手に防戦一方だなんて……と。

「いやぁ、はは……フライゴンの"ふゆう"のせいでバンバドロの"じめん"技が効かないんだよねぇ〜」

……フライゴンには、"ふゆう"という特性がある。

つまり空を飛んでいる状態なので、地面を揺らしたりなどといった攻撃は当たらないのだ。

そして生憎、バンバドロはそういった"じめん"の攻撃を主力としている。

よって、フライゴンと戦うにはバンバドロでは非常に相性が悪いのだ。

「だから……その……代わって?」

"やっちゃった、てへ!"みたいな顔でゴールドにウインクで懇願するミヅキ。

ゴールドは若干呆れたような表情を浮かべながらも、それに頷いた。

「……分かりました」

「では、カイリキーはお願いします」

ゴールドの方も正直、このままカイリキーを相手にし続けていたらポリゴンZを失いかねないと思っていたので、ミヅキの提案はある意味好都合。
 ▼ 663 mTQB7XkZdk 17/06/13 01:40:33 ID:/t1iGTNs [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかしそれは逆に、カントー・ジョウトにとっては不都合の事態だ。

「させっかよ、オイ!」

グリーンは、アローラのバトンタッチを阻止するべく動く。

「カイリキー、ポリゴンZにもう一度"インファイト"!」

「リキィ!!」

カイリキーは再び駆け出し、標的を鋭く睨むと全ての拳に力を込める。

四つもの豪腕を以てして敵に襲いかかるその姿はまるで、古より言い伝えられし神・"阿修羅"のよう。

やがて突き出された鉄拳は、ポリゴンZに直撃____

____するはずだったが。

「バンバドロ、庇って!」

「ドロッ!!」

バンバドロが、カイリキーの前に突如として立ち塞がった!

「何!?」

ポリゴンZに向けられた"インファイト"を、バンバドロが身を呈して防ぐ。

「……リキッ!」
 ▼ 664 mTQB7XkZdk 17/06/13 01:45:49 ID:/t1iGTNs [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
最初の一撃がバンバドロに当たってしまった以上、それまでの標的のことなど考えてはいられない。

こうなったら、最後までバンバドロに連撃をぶつけるまで。

「リキリキリキィィッ!!」

高速の連打、その一つ一つにカイリキーは魂を込める。

無数の哮りと剛拳が止めどなく飛び交い、バンバドロを痛烈に打ち付けていく。

「……ドロッ!」

……だが。

バンバドロは、そんなカイリキーの全力の"インファイト"を受けてもなお、涼しげな表情を浮かべていた。

「……リキッ!?」

効いていない。

カイリキーはそう確信する。

「オイオイ……なんつー堅さだよ」

グリーンの手持ちの中でもトップクラスの破壊力を誇るハズのカイリキーの怪力。

しかしそれは、奇しくもバンバドロには通用しなかった。

今までカイリキーが放ってきた攻撃は、耐えられることはあっても、全く効かなかったなんてことは無い。

未だかつてない事態が、グリーンの戦慄による心拍数を上げていく……。
 ▼ 665 ルトス@ルカリオナイト 17/06/13 06:06:15 ID:IK37i9wM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 666 mTQB7XkZdk 17/06/14 00:45:46 ID:osfqionk [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
(さすが、ミヅキさんのバンバドロだ)

(特性"じきゅうりょく"によって、防御面がかなり堅牢になっている)

バンバドロは、敵から攻撃を受ける度に"ぼうぎょ"があがる"じきゅうりょく"という特性を持っている。

バトルの進行と共に受けるダメージが減っていくという優れた能力だ。

尤も、上がるステータスは"ぼうぎょ"のみなので、特殊攻撃に弱いのが難点だが……。

先程までのフライゴンとの戦闘で、バンバドロは攻撃を相当受けていたようなので……。

……今のバンバドロの肉体は、物理攻撃を全く受け付けない強靭なモノとなっていることだろう。

故に、カイリキーの物理主体の戦法では全くもって相性が悪い。

カイリキーにとっては嫌な壁が立ちはだかったわけである。

対してポリゴンZにとってそれは、己を守る大きな砦だ。

「よし……」

バンバドロがカイリキーを惹き付けている内に、ゴールドはバンバドロを脅かすフライゴンの相手をする。

「ポリゴンZ、フライゴンに"れいとうビーム"!」

巻き上がる砂嵐を凍てつかせながら、"れいとうビーム"が一直線に迸った。

「邪魔をするな!」
 ▼ 667 mTQB7XkZdk 17/06/14 00:46:21 ID:osfqionk [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「フライゴン、"かえんほうしゃ"!」

「ふりゃ!」

ワタルは"こおり"に対抗して、"ほのお"の"かえんほうしゃ"を吐き出した。

炎と氷、二属性の光線は激突すると、段々と炎が氷を溶かしていく。

「……ビビッ!?」

やがて"れいとうビーム"が"かえんほうしゃ"を相殺しきれなくなり、とうとう押し負けたポリゴンZは、あえなく火だるまとなってしまった。

「"こおり"対策は万全……ということか」

"ドラゴン"と"じめん"を持つフライゴンにとって、"こおり"は天敵中の天敵である。

故に、フライゴンを操るトレーナーには、"こおり"への何らかの対策が求められてくる。

それをワタルは、"かえんほうしゃ"という手段で補ったようだ。

因みにタイプ構成がガブリアスと同一なため、二匹はよく比較の対象となる。

そして、多くの者は口を揃えてこう言うのだ。

"ガブリアスの方が強い"……と。

と言うのも、多くのステータスにおいてフライゴンがガブリアスに勝っている点が無いのだ。

特に攻撃力に関していえば、フライゴンはガブリアスに圧倒的に負けてしまっているのが現実。
 ▼ 668 mTQB7XkZdk 17/06/14 00:49:10 ID:osfqionk [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかしワタルは、そんな世間の評価が許せなかった。

なぜなら。

(どうだ!)

(フライゴンだって、ガブリアスには負けてない!)

(フライゴンにはフライゴンの良さがあるんだ!)

彼は生粋のドラゴン使いであり、生粋のドラゴンファン。

"皆違って皆良い!"という考え方を持っているため、フライゴンとガブリアスで優劣をつけようとする下馬評には腹を立てているのである。

そして、そんなワタルとフライゴンの勇姿を、この少女は目を輝かせて刮目していた。

「すごい!あのオジサン、フライゴンを上手く活躍させているよ!」

そう、アイリスだ。

アイリスは、ワタルと同じドラゴン使い。

昨日の第二試合で、彼女はオノノクスを巧みに使い見事ダイゴのメガメタグロスを捩じ伏せてみせた。

大胆かつ華麗なその戦いぶりにワタルも一目置いたその少女が、今日は観戦席で彼を応援している。

しかし、そんなアイリスの横で同じくバトルを見守るこの青年、Nは彼女の発言に対して思ったのだった。

(……オジサン……ではないよね)

……女の子に老けて見られてしまったワタルを、Nは少し憐れむ。
 ▼ 669 ギアル@マグマスーツ 17/06/14 05:55:43 ID:f74frNSQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちょっとフライゴン育ててくる
支援
 ▼ 670 スラオ@こだいのどうか 17/06/17 01:08:31 ID:YDMUr7Xw NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 671 mTQB7XkZdk 17/06/17 03:09:05 ID:EZ8t8.1Y [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……バトル開始の刻から、20分あまりが経過した。

にも関わらず、カントー・ジョウトとアローラの両チームは、未だに互いが退治している相手ポケモンを倒せていなかった。

カイリキーは、バンバドロに持ち前のパワーで攻撃し続けているものの、バンバドロの耐久力がそれ以上に凄まじいせいでダメージを殆ど与えられておらず。

かたやポリゴンZは"れいとうビーム"でフライゴンを凍らせに行こうとするが、フライゴンの"かえんほうしゃ"による炎の障壁がそれを阻んでいる。

また、比較的優位な立ち位置にあるバンバドロとフライゴンも、それぞれの敵に有効打を突けていないのが現状だった。

だが、そんな互いに一歩も譲らぬ一進一退の攻防の中で。

唯一、明確に試合の不利有利を裏付ける要素がここに来て顕れた。

それは……"砂嵐"だ。

「……リキッ」

「ビビーー……」

見ると、カイリキーとポリゴンZの二匹は、"じめん"を持つバンバドロとフライゴンに比べて明らかに体力の消耗が激しい。

息、あるいは不協和音が切れかかっており、体に負っている傷もまた著しく。

そこから負の連鎖が繋がるように、動きが鈍くなったり技の威力が弱まったり……。
 ▼ 672 mTQB7XkZdk 17/06/17 03:11:10 ID:EZ8t8.1Y [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
……と、こういった彼らの弱体化の原因は"砂嵐"にある。

吹き荒れし砂が、カイリキー達の体を無尽蔵に襲うため、カイリキー達は体力を磨耗されてしまうのだ。

「……リキィィィ!!」

傷だらけの武道家は、それでも自らの心と体に鞭を打って進撃する。

その拳の矛先は、何度でもポリゴンZに向けられたが。

「ドロォ!」

バンバドロが、幾度となく肉の壁となりて妨害してくる。

"じきゅうりょく"によるダメージ軽減の上昇率は、今や最高潮にまで達していた。

絶え間ない交戦の果てに、バンバドロは如何なる打撃も受け付けない、無敵の装甲を手にしたのである。

戦火と共に成長していくポケモン、それがバンバドロ。

一方で、カイリキーの体力は砂嵐のせいで減っていくばかりだ。

二匹の命の灯火は、最早業火と種火に例えられるぐらいに差が広がってしまっていたのだった。

「リ……キ……」

ふと、カイリキーの全身がグラッと揺れる。

気付けば、彼の意識は非常に朦朧としていた。
 ▼ 673 チルゼル@きれいなぬけがら 17/06/17 06:38:33 ID:0pFzKysg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 674 エンジシ@じめじめこやし 17/06/18 00:35:32 ID:ZU5rJxwU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 675 mTQB7XkZdk 17/06/18 03:24:32 ID:eMkiOgUI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……リキィィ」

彼の体躯を支える屈強な両足が、安定していない。

指一本でも触れようものなら崩れ落ちそうな……そんな、まさに砂の像のような状態。

このカイリキーの異変に気付いたグリーンは、身に迫りし潮時を感じた。

(くっ……カイリキーはここまでかよ)

本当なら倒せたハズのポリゴンZ。

しかし、バンバドロに行く手を阻まれたせいで、その討伐は叶わなかった。

(にしても、あの馬のバカみてェな防御力は一体何なんだ……)

(もしアレで"とくぼう"の値も高けりゃ笑えるねェぞマジで……)

グリーンに立ちはだかる鉄壁の城塞、バンバドロ。

しかし、そんな驚異的な防御力にも弱点は存在する。

と言うのも、特性"じきゅうりょく"によって上がるステータスは、あくまでも"ぼうぎょ"だけであり。

つまり、バンバドロが完全にシャットアウトできるのは物理攻撃による被ダメージのみ。

だが、そんな"じきゅうりょく"はバンバドロとその進化前である"ドロバンコ"というポケモンだけが持つ珍しい特性。

そのため、バンバドロを本日初めて見るグリーンは、その致命的な特性の欠陥を見抜けていなかった。
 ▼ 676 mTQB7XkZdk 17/06/18 03:25:03 ID:eMkiOgUI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
もしグリーンがバンバドロというポケモンのスペックを知っていたならば、物理主体で戦うカイリキーは直ぐに交代させていたことだろう。

そう……事前に知識があるか否かで、戦局というのはこうも著しく変わる。

いくつも用意されていたパラレルワールド、その中でも特に悪い世界へとグリーンとカイリキーは誘われてしまった。

だが、そんな望みが絶たれし道筋でも、決して光を見失ってはいけない。

例え、巻き起こりし砂塵の突風が視界を曇らせ、その光を閉ざそうとも。

グリーンは、カントー最強の名に恥じない戦いぶりを遺憾無く発揮する。

(……とにかく、バンバドロは後続で処理するとして)

(このままカイリキーだけが先に倒されるのだけはゴメンだ)

(置き土産は置かせてもらうぜ……!)

プライドをバネにし。

どこまでも食い下がる。

「ワタルさん!……頼むぜ」

グリーンの、その突然の合図があった時。

「……良いだろう」

……彼らの"反逆"が、始まる。
 ▼ 677 レディア@こおったきのみ 17/06/18 06:47:55 ID:yQhXjbeU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 678 ィオネ@しんかいのウロコ 17/06/18 23:12:45 ID:zNCIElE2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やったぜ
 ▼ 679 mTQB7XkZdk 17/06/19 02:14:48 ID:Byo2Le2g [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「カイリキー!」

「リキッ!」

これまでとは気迫が一味違う、グリーンの張り上げたその声に、カイリキーは力強く応じた。

彼の筋骨は気合で大きく盛り上がり、その闘志には焔が甦る。

先程までほぼ瀕死になりかけていたカイリキーが、ここにきて息を吹き返した。

「……むむむ」

その復活の引き金となった何かが、グリーン達にはある。

直感的にそう感じたミヅキは、それまで少し抱いていた油断の雑念を瞬時に吹き飛ばし、警戒。

来る最後の"足掻き"に備える。

「よし……」

そしてグリーンは、放った。

予めワタルと打ち合わせて、用意しておいた____

____誰もが一度はやっていそうで。

しかし誰もやらなかった……"奇策"を。

「____フライゴンに、乗れ!」
 ▼ 680 mTQB7XkZdk 17/06/19 02:15:21 ID:Byo2Le2g [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リキッ!」

……刹那、カイリキーは自身という巨体を跳躍によって浮かせると。

「ふりゃあ!」

「リッキィ!」

フライゴンの背に股がり、なんと……"騎乗"した!

「ああっ……そうきたかぁ!」

"しまった"と言わんばかりに表情を汗と共に歪めたミヅキ。

そう。

このようにして飛翔可能なポケモンに飛び移り、ライダーとなることで。

「よっしゃ!行けカイリキー、フライゴン!!」

それまで道を塞いでいたバンバドロを、軽々空を駆けて越えることが出来る。

それこそ、グリーンの狙いだったのだ。

至極単純明快な連携技であるが、この作戦は思いの外敵の奇を突いて。

「……ビビーー!?」

あっという間に、標的たるポリゴンZの所まで辿り着いてしまった。
 ▼ 681 mTQB7XkZdk 17/06/19 02:16:47 ID:Byo2Le2g [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ま、まずい……!」

ゴールドは応戦しようにも、今やカイリキーとフライゴンは一心同体となっているために、まるで突ける隙が無くなっていることに気付く。

その時に、ゴールドの手は完全に止まった。

「フライゴン、ポリゴンZに突っ込め!」

ワタルの指示と。

「カイリキー!ポリゴンZに"インファイト"!」

グリーンの指示。

その二つが融け合った瞬間____新たなる技が生まれる。

フライゴンに搭乗せしカイリキーは、全力で拳を唸らせ突進。

そこにかかる遠心力も、重力も、全てその腕に乗せていき。

敵を穿つ力へと変え。

「リギィィィァァッ!!」

「ビ____」

「ビーーーーーーーーー!!」

……一閃。

効果抜群の大技・"インファイト"で、完膚なきまでに捩じ伏せた。
 ▼ 682 ガハガネール@するどいキバ 17/06/19 06:01:11 ID:asx97zQ2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おおお!?
支援
 ▼ 683 ーデリア@トライパス 17/06/19 23:40:36 ID:Nl2w/MfA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すげええええ!
 ▼ 684 mTQB7XkZdk 17/06/20 02:21:20 ID:eLHcf8p6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ビビッ」

フライゴンに乗ったカイリキーが放った、全身全霊のインファイト。

食らったポリゴンZは、自身の残存体力を遥かに超越するダメージを負い……。

「ビー、ビー、ビー……」

……システムエラーが発生。

再起不能となり、まるで糸の切れた操り人形のように地面にポトッと落ちて、倒れてしまった。

「ポリゴンZ、戦闘不能!」

審判の判断が下され、ポリゴンZの瀕死が確定。

「……くっ」

ゴールドはその知らせを聞くと、歯を食い縛り悔しそうな表情を滲ませながら、モンスターボールにポリゴンZを格納したのだった。

だが、その直後。

「……リキッ」

……なんと。

ポリゴンZを見事に撃破した張本人であるカイリキーまで、力が抜けたのか、フライゴンから転がり落ちてしまい。

「リ……キ」
 ▼ 685 mTQB7XkZdk 17/06/20 02:21:52 ID:eLHcf8p6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
やがて墜落すると、大の字に寝転がって……そのまま、目を回して気絶してしまった。

「……っ」

グリーンはその様子を見て、驚きはしない。

寧ろ、これが"自然"だと思った。

先刻までのバンバドロとの戦いで、ただただ余分に体力を消耗させられていたカイリキー。

砂嵐のスリップダメージも含め、彼に蓄積していた傷の量は既に致命的なモノだった。

そんな満身創痍ともいえる過酷な状態の中で、カイリキーは己の死力を尽くし、インファイトを放った。

結果として、それが最後の一撃となったのである。

まさに命賭け。

「……カイリキー、戦闘不能!」

審判の声がすると、グリーンは微笑しつつカイリキーをボールに戻した。

「上出来だ」

「最高だったぜ」

今日、全力で闘い抜いた者に敬意を表す。

例え、この後の試合が如何なる結果になろうとも。
 ▼ 686 mTQB7XkZdk 17/06/20 02:22:52 ID:eLHcf8p6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
カイリキーの活躍は、この会場に居る全ての者共の目に……強く焼き付いたことだろう。

「……さすが、だな」

「ああ……」

眼前のバトルに、レッドは思わず息を飲んだ。

自身最大のライバルが、かつて自分を負かした因縁のトレーナー相手に、互角以上に渡り合っている。

この時、レッドは思い出した。

常に自分の先を進んでいた……グリーンというトレーナーの強大さを。

彼の"資質"は、あれから数年経った今でも殆ど色褪せていない。

未だなお、彼は強くなり続けている。

偉大な祖父から受け継いだであろう類い稀な才能と、そして……誰にも負けない"努力"によって。

「……うし」

「"コイツ"だな」

と。

グリーンはついに、最後に繰り出す二匹目のポケモンを選出する。
 ▼ 687 mTQB7XkZdk 17/06/20 02:23:45 ID:eLHcf8p6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……いよいよ後がない」

「任せたぞ」

ゴールドも同様だった。

勝つのはカントー最強か、それとも……ジョウトの英雄か。

「やれ!」

「"ギャラドス"!!」

……グリーンのラストは、きょうあくポケモン・"ギャラドス"。

深淵より地上へと舞い上がり、傍若無人に暴れまわる悪龍。

奴が無差別に放つブレスは、周りの風景全てを凄惨な焦土と化し。

奴に食い荒られた者共は、鮮血に彩られながら無惨な屍を晒す。

「ギャォォォォォアアアアアッ!!」

ギャラドスの、鼓膜を貫くが如しの凄まじい咆哮。

激震する水の怪物を前にして、ゴールドも対抗馬を繰り出す。

「これで決める!」

「いけ……"ハガネール"!」
 ▼ 688 ワシ@しずくプレート 17/06/20 05:55:37 ID:R7bxbMM2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 689 mTQB7XkZdk 17/06/21 12:18:10 ID:OXd8qNn2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴールドが繰り出したのは、荒野を這いずり回る巨大な鋼の蛇。

その名もハガネール。

「ガラララララ!!」

いわへびポケモン"イワーク"が、"メタルコート"を纏って進化した姿だ。

その防御力は抜群に高く、また、大きくて頑丈な顎による噛みつき攻撃も、食らったらひとたまりもない。

更に、"はがね"タイプの装甲は砂嵐を跳ね返すので、この天候でも地味な持続的ダメージに邪魔されずに、存分にその力を奮うことができる。

「ギャオオッ!!」

「ガラララッ!!」

二対の蛇、相見える。

バトルフィールドの環境的には、ハガネールの方が砂嵐を無効に出来る分有利だが……。

……"じめん"も併せ持つハガネールは、ギャラドスの強力な"みず"技が効果抜群なので怖いところ。

加えて、"ひこう"を備えるギャラドスに"じめん"の技は通用しない。

もっと言うと、"はがね"では"みず"に余り大きなダメージを与えられない。

もっともっと言うと、横のフライゴンも"ふゆう"の特性を持っているため"じめん"が通用せず、ハガネールの"はがね"ではフライゴンの"じめん"にそれほどのダメージが期待できない。

つまり……ゴールドにとって、タイプ相性的には全くもって最悪な対面なわけだ。
 ▼ 690 mTQB7XkZdk 17/06/21 12:19:30 ID:OXd8qNn2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
とはいえ、二匹目を出してしまったからにはもう交代できない。

結果がどうあれ、最後までハガネールで敢闘しなければならないのだ。

「…………」

……"ニッ"。

そんな擬音が聞こえてきそうな、ゴールドの不敵な笑み。

どうやら彼には、この圧倒的不利な状況を覆す術があるらしい。

しかし一方で、ミヅキはこの状況を危険と判断していた。

(……ゴー君が何を考えているのかは分からないけど)

(流石に"じめん"だけで"ひこう"や"ふゆう"に太刀打ちするのは無理があるよね)

(……代えるかな)

ミヅキが出しているバンバドロもまた、ハガネールと同様"じめん"タイプを持つ。

しかし、相手が"じめん"を無力化するポケモンばかりなために、そのポテンシャルは十分に発揮されない。

ゴールド側には何か策があるにしろ、ミヅキはバンバドロのままじゃ戦えないと悟った。

なのでミヅキは、バンバドロの入っていたボールをまず構え。

「……戻って、バンバドロ!」
 ▼ 691 mTQB7XkZdk 17/06/21 12:24:02 ID:OXd8qNn2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
バンバドロを、ボールに戻す。

そして次に。

もう一つ……別のモンスターボールを大きく振りかぶると。

「行って!」

「"キュウコン"!」

……出てきたのは、氷を操る、美しき白銀の衣を纏った九尾の獣。

彼女が荒れ果てた大地に降臨した、その次の瞬間。

なんと、ポケモン達をあれほど苦しめてきたあの忌まわしき砂嵐が、突然パタリと止み……。

代わりに、細々とした無数の氷の粒……"あられ"が降ってきた。

彼女の特性・"ゆきふらし"の効果である。

砂舞う戦場は、一転、氷結せし世界へと大きく変貌を遂げた。

「ヒュォォォォ……」

"キュウコン"。

その艶やかなる姿を、観戦席から目の当たりにしたレッドは……。

「……えっ?」

まるで鳩が豆鉄砲を食らったかのような、驚きに唖然とする表情を……浮かべたのだった。
 ▼ 692 リミアン@ぎんのはっぱ 17/06/21 15:03:49 ID:mb12Lt4E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
炎じゃないから戸惑うよなそりゃあ
 ▼ 693 フーライ@ていこうのハネ 17/06/21 16:57:35 ID:9eKqFExo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガハガネールの特性
 ▼ 694 ャラコ@ドリのみ 17/06/21 16:58:32 ID:pV4x9k/M [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
あら?いつもと登校時間違う
 ▼ 695 プ・テテフ@ももぼんぐり 17/06/21 16:59:07 ID:pV4x9k/M [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>694
登校→投稿な
 ▼ 696 レシー@ヤゴのみ 17/06/21 17:04:48 ID:0anoOe4E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>693
発動する前に味方に天候変えられてやんのww
 ▼ 697 mTQB7XkZdk 17/06/22 02:52:51 ID:1lJbeHbs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ね、ねえ、カルム」

「ん?」

レッドの突然の呼び掛けに、カルムが応じる。

レッドは、ミヅキの銀に輝くキュウコンを見た時、自分の目を疑った。

なぜなら。

「……あれって、本当にキュウコンなの?」

「色違い……みたいだけど、明らかに雰囲気が違いすぎる気がする」

……レッドの知るキュウコンと、今目の前で氷雪を纏いながら凛々しく佇んでいるミヅキのキュウコンは、明らかに見た目が異なっていたからだ。

「キュウコンは、"ほのお"タイプのポケモン」

「なのにあのキュウコンは……なんだか、"こおり"って感じだ」

……彼の中で起こる矛盾。

レッドの問いに、カルムは少し頭で考えた後……。

「……俺も、噂でしか聞いたことがないんだけどな」

そう前置きをして、ゆっくりと口を開け語り始めた。

「あれは恐らく……"リージョンフォーム"ってヤツだろう」

「単なる"色違い"ではない」
 ▼ 698 mTQB7XkZdk 17/06/22 02:55:36 ID:1lJbeHbs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
それは、ミクリのアシレーヌのような単純な色違いにあらず。

"リージョンフォーム"と呼ばれる、ある一つの確立された概念のもとで存在していると、カルムは言う。

だがレッドは、"リージョンフォーム"なんて言葉を聞いたことが無かった。

「リージョン……?なにそれ」

レッドは、質問に更に質問を重ねる。

カルムは答えた。

「その地方の環境によって、特定のポケモンの姿が通常と大きく変わることがあるらしい」

「"リージョンフォーム"は、そうしたポケモン達の総称って言ったところだな」

カルムのこの説明に、レッドはハッと気付いた。

「……あっ」

「そうかじゃあ、あのキュウコンは……アローラのキュウコンってこと?」

アローラ代表のミヅキが、カルムの言う"リージョンフォーム"のキュウコンを繰り出したということは。

それ即ち、そのキュウコンはアローラの環境下で生まれ育った個体である可能性が高いということ。

レッドのこの推測は確かに的を射ていたようで、カルムはコクリと頷く。

そして。
 ▼ 699 mTQB7XkZdk 17/06/22 02:57:33 ID:1lJbeHbs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「全く……ポケモンってのはホント、面白いヤツばっかだな?」

次の瞬間には、あまりに不思議なポケモンの特異な生態に、思わず笑みを漏らしていた。

「……ふふ、そうだね」

レッドは同調する。

トレーナーが生きる日を重ねるごとに、ポケモンという生き物の謎はどんどん深まっていく。

またそれに比例して、ポケモン達は限りなく魅力的な存在になっていくのだ。

レッドとカルムはそれを感じると、笑わずにはいられなかった。

お互い、本当にポケモンが好きなんだなと実感する。

ポケモンの新たな可能性、"リージョンフォーム"。

しかし、観戦席がそれに対し純粋に夢を見ている一方で。

バトルフィールドに居る彼……ゴールドは。

「ミ、ミヅキさん!」

「あの……折角"すなあらし"に強いハガネールを連れてきたのに、なんで急に"あられ"にしちゃうんですかぁ!」

ほんの数分前まで砂嵐が舞っていた戦場が、唐突に霰が降り注ぐ雪原に変わってしまったことに困惑し、その原因を作ったミヅキに抗議していた。

これでは、わざわざハガネールを持ってきた意味が無くなってしまうじゃないか……と。
 ▼ 700 mTQB7XkZdk 17/06/22 03:01:12 ID:1lJbeHbs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あわわっ!?ご、ごめ〜んっ!」

「いやぁもう私ったら、ついウッカリ♪」

「"ついウッカリ♪"、じゃないですよ!?」

天候が"あられ"になったことで、キュウコン以外のこの場に居る全てのポケモン達に課せられるダメージは等しくなった。

そうなると、タイプ相性でただでさえ全体的に不利をとるゴールドのハガネールは、地の利さえも奪えない形で場に出てしまったことになる。

まさにゴールドは、味方の行動によって窮地に立たされてしまったわけだ。

……だが。

(こんなことなら別のポケモンを出していた方が効率は良かったな……)

(……まあ、これならこれで良いけど)

それでも揺るがない確固たる"勝算"が、ゴールドにはあるらしい。
 ▼ 701 ノガッサ@むげんのふえ 17/06/22 06:33:11 ID:brK.rcSs NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 703 ョボマキ@ミアレガレット 17/06/22 10:47:00 ID:NSa2BY/g NGネーム登録 NGID登録 報告
山篭り時のレッド、只の天狗野郎説
 ▼ 704 キメノコ@ラムのみ 17/06/22 21:49:54 ID:M0HZ9tY2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴールドの勝算が気になるな〜
 ▼ 705 mTQB7XkZdk 17/06/23 02:54:44 ID:/8SgcTHw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「……アレが、アローラのキュウコンってか」

「見たところタイプは"こおり"……俺のフライゴンは厳しくなりそうだな」

彼らの対戦相手であるグリーンとワタルの二人も、突如として出現した氷のキュウコンには意表を突かれている。

特にワタルは、"じめん"・"ドラゴン"のフライゴンが最も不得意とする"こおり"タイプの登場に動揺を隠せなかった。

「あれ?もしかしてワタルさん……ビビってんすか?」

と、焦りによって汗を少し垂らしていたワタルに、グリーンが挑発的に突っかかる。

……すると。

「……ああ」

ワタルは、目の前のキュウコンに対して臆していることをアッサリと認めてしまった。

「"こおり"タイプは、俺らドラゴン使いにとっては永遠の宿敵」

「正直言って、遭遇するだけでも肝を冷やしてしまうよ」

果敢なドラゴン使い・ワタルにしては、随分と弱気な発言だった。

「おいおい……」
 ▼ 706 mTQB7XkZdk 17/06/23 02:56:06 ID:/8SgcTHw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
思った以上に反発の意思を見せなかったワタルに、グリーンは嘲笑を通り越して心配の念を抱く。

「だからとりあえず、キュウコンの相手はよろしく頼むよ」

ワタルのその言葉は、もはや"丸投げ"とも捉えることができよう。

しかし、なぜだろう。

どこか彼は……ワタルは、"余裕"だった。

「……へーへー、分かりましたよ」

ワタルの真意こそ掴めなかったものの、グリーンは一応彼に言われたことに対し承諾する。

そして、サッと身構えた。

「さぁ、やんぜギャラドス!」

「ギャォォ!!」

己が召喚した暴走せし水竜・"ギャラドス"を操って。

「キュウコンに、挨拶代わりの"たきのぼり"!!」

「ギャアアアアアアアッ!!」

下命を賜ったギャラドスは、滝をも昇れる程の凄烈な勢いで、キュウコンに突進攻撃を仕掛ける。

その時のギャラドスの形相は、まるで鬼のようだった。
 ▼ 707 mTQB7XkZdk 17/06/23 02:56:34 ID:/8SgcTHw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
敵に対する殺意で、溢れ返っている。

それに対し、優雅に銀色の体毛を靡かせているキュウコンは。

「"オーロラベール"っ!」

「ヒュォォ!!」

ミヅキの指示を受けると____

「……ヒュォォォォォォ……!!」

____豊かな音色の美しき遠吠えを、氷原にて高らかに響かせた。

すると、次の瞬間。

「ッ!?」

突如として、虹色に輝く謎のベールが、キュウコンを優しく包み込んでいく。

そして。

「ギャォォォァッ!!」

ギャラドスとキュウコンはついに激突。

ギャラドスの必殺・"たきのぼり"が、見事にキュウコンにクリーンヒットした。

……だが。
 ▼ 708 ールナー@やけたきのみ 17/06/23 06:00:16 ID:P5V2TqPc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なるほどー
 ▼ 709 ヤコマ@あかいバンダナ 17/06/23 07:57:37 ID:YGrqWCCI NGネーム登録 NGID登録 報告
アロキュウなんて氷フェアリーだからな、ドラゴン絶対殺すマンみたいなタイプだな
 ▼ 710 mTQB7XkZdk 17/06/24 02:42:23 ID:My4pdpCU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ギャォンッ!?」

……ギャラドスは、その衝突に違和感を覚えた。

思った程の手応えが無かったのである。

どこかで技の威力が殺されているような……そんな感じがした。

現に……。

「ヒュォォン」

……キュウコンは、ギャラドスの殺気立った"たきのぼり"を受けてもなお、涼しい表情を保っている。

あの様子を見るに、ダメージが軽減されているのは確かだ。

「……あの技か」

するとグリーンは、"たきのぼり"が直撃する前にミヅキが放ったとある指示を思い出す。

"オーロラベール"。

確か、あの技はそんな名前だった。

"オーロラベール"が発動した瞬間、キュウコンを包み込んだのはオーロラの如く虹色に輝く美しきベール。

あのベールによって、技の火力が減らされているのだとすれば……。

「……根気よく、だな」
 ▼ 711 mTQB7XkZdk 17/06/24 02:43:46 ID:My4pdpCU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……そう。

グリーンに求められるのは、粘り強き闘い。

しかし逆に言えば、その一方でミヅキ側は、余裕のある落ち着いた戦闘が出来るということ。

「挨拶は返さなきゃねっ!」

「キュウコン、"ふぶき"!」

「ヒュォォ!」

キュウコンは、敵全体を巻き込む極寒の強風・"ふぶき"で凄烈なる反撃。

「!」

これに素早く対応したのはワタルだった。

"ふぶき"は、キュウコンと相対しているギャラドスだけでなく、その隣に居るフライゴンにもダメージが及ぶ攻撃。

そして高威力の氷属性なため、フライゴンが食らえばご臨終ルートまっしぐら。

思い出詰まった走馬灯を見ることになるだろう。

それだけはなんとしてでも避けたいワタルは、ミヅキの"ふぶき"に不意を突かれることなく……。

「"かえんほうしゃ"で、大気を熱するんだ!」

「ふりゃ!」
 ▼ 712 mTQB7XkZdk 17/06/24 02:44:17 ID:My4pdpCU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……"かえんほうしゃ"を指示し、攻撃としてではなく防壁としての活用で、"ふぶき"からしっかりとフライゴンの身を守った。

とはいえ、全てのダメージを0に出来たわけではない。

いくらかの氷が残滓となり、フライゴンの体に若干張り付いている。

「ふりゃぁ!!」

勿論これも、"かえんほうしゃ"で全て溶かすわけだが、常にこのリカバリーが間に合うわけではない。

迫り来る氷雪の猛威に対する、炎による回復が追い付かなくなる時は、いずれやって来る。

そうなる前に、ギャラドスがなんとしてでもキュウコンを仕留めなければならない。

そのためには、"オーロラベール"によるダメージ軽減効果が厄介だ。

「ハッ……そんな小細工ぐらい、すぐにぶっ飛ばしてるぜ」

「ギャォォォゥ!!」

そんな状況の中、あくまでも力で押し切ることを宣言したグリーンとギャラドス。

しかし、そこへ……。

「ハガネール、"いわなだれ"!!」

……今度は、ゴールドのハガネールによる奇襲。

「ガラララララ!!」
 ▼ 713 mTQB7XkZdk 17/06/24 02:44:54 ID:My4pdpCU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハガネールが猛々しく咆哮を上げた、その時だった。

ギャラドスとフライゴンの背後に突然、岩の雪崩が降り注いでいく。

「ギャォォ!?」

「ふりゃ!?」

見事に不意を突かれ、戸惑うポケモン達。

しかしトレーナー達は、これを冷静な判断で対処した。

「んな子供騙しに引っ掛かるな!」

「ギャラドス、全て"かみくだく"で粉砕しろ!」

「フライゴン、"だいちのちから"で木っ端微塵にするんだ!」

この程度の奇襲、彼らはこれまでの人生で何度も経験している。

例えポケモン達がその場で冷静さを欠いても、トレーナー達が落ち着いて指示を出せば……。

「……ギャオ!」

「ふりゃあ!」

……ポケモン達もまたそれに呼応して、本来の実力を発揮し対処することができる。
 ▼ 714 ソクムシ@しらたま 17/06/24 08:33:31 ID:GSBPFQQk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
かっけえ…
支援
 ▼ 715 ュレム@フェアリーZ 17/06/24 15:38:25 ID:xYmk2ou. NGネーム登録 NGID登録 報告
ゾワって来た

支援
 ▼ 716 ョボマキ@ねらいのまと 17/06/24 21:25:45 ID:Gk2cFdN6 NGネーム登録 NGID登録 報告
フリドラぶっ刺さり
 ▼ 717 mTQB7XkZdk 17/06/25 10:33:20 ID:Z30K32o6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ギャラドスは、その強靭なアギトで。

フライゴンは、地底よりの噴火を呼び起こして。

それぞれ、岩々を跡形もなく破砕する。

ハガネールの"いわなだれ"は、失敗に終わった。

「くっ」

「ガララァ……」

ゴールドは不意を突いたつもりだったが、思うようにカントー・ジョウト勢に対して攻撃を当てることが出来ない。

仕掛けた岩の奇襲もことごとく打ち砕かれ、ゴールドの頬に焦燥の流汗が走る。

「さあ、行くぞゴールド君!」

と、ここで声を張り上げたのはワタル。

彼はカントー、並びにジョウトのチャンピオンの座に座る者。

かつては、ジョウトのジムを連覇してきたゴールドを迎え撃った。

その時は、ワタルはゴールドに負けを喫してしまったが……。

「フライゴン!」

「ハガネールに、"だいちのちから"!」
 ▼ 718 mTQB7XkZdk 17/06/25 10:33:53 ID:Z30K32o6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……今度こそ勝利すべく、彼は奮起する。

砂漠の精霊とも唱われる竜・"フライゴン"との、巧みなチームプレイで。

「ふりゃぁぁ!!」

"はがね"に有効打を突く"じめん"の一撃。

「ガラ……ッ!?」

ハガネールはこれを避けきれず、直撃を受けてしまった。

「ハガネール!」

効果は抜群。

しかし……。

「……ガラァ!!」

……ハガネールは、然程のダメージは食らっていないらしく。

"だいちのちから"が終了した後、彼は直ぐに力強い咆哮を上げ、己の有り余る体力を主張した。

「何……!?」

ワタルはこれを不可解に思う。

いくらハガネールが堅牢と言えども、流石にフライゴンの効果抜群"だいちのちから"を食らって平気でいられるハズがない、と。
 ▼ 719 mTQB7XkZdk 17/06/25 10:34:28 ID:Z30K32o6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……!」

「ちょい、ワタルさん……アレを見てみてくださいよ」

と、グリーンは突然ハガネールを指差して、ワタルに直視することを促した。

「?」

彼は言われた通り、その方向に目をやる。

すると……。

「……!」

「ハガネールにも、キュウコンと同じ虹色のベールが……!?」

……そう。

纏っているのだ……ハガネールも。

キュウコンと同じ、"オーロラベール"を。

「アレを見るに、"オーロラベール"とやらは味方にも付与されるらしい」

「だからフライゴンの"だいちのちから"も、そこまで効かなかったんでしょうよ」

「厄介だな……」

グリーンの分析と、それに頭を悩ませ顎に手を当てるワタル。
 ▼ 720 mTQB7XkZdk 17/06/25 10:35:00 ID:Z30K32o6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
"オーロラベール"の防護効果は、もはや万能の域だった。

「ふふふふ、どーだ!えっへん!」

そして、それをダブルバトルで巧みに活かすミヅキは、ドヤ顔で高笑い。

フンスと鼻息を吹かせ、胸を張る。

「ミヅキさん……助かりましたけど、みっともないのでそれは辞めてください」

ゴールドは、彼女のサポートに対し素直に感謝すると共に、少々大人げない態度を改めるように言う。

実力は本物なのだが、イマイチ雰囲気に欠ける人だな……と、ゴールドはこっそり心で思った。

「よっし!まだまだ行くよー!」

と、そんなゴールドの言葉など全く意に介することなく、彼女は更に調子に乗って攻めの一手を仕掛ける。
 ▼ 721 ンメン@ネストボール 17/06/25 10:40:23 ID:PC2GdeeU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
強靭なアギトで草
顎の間違いだよな?


支援
 ▼ 722 ムナイト@バグメモリ 17/06/25 10:44:57 ID:1Hr4E4dI NGネーム登録 NGID登録 報告
>>721
アギトでも良いはず
 ▼ 723 ブネーク@ノワキのみ 17/06/25 10:59:21 ID:PC2GdeeU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>722
そうなの知らんかった

すまん
 ▼ 724 mTQB7XkZdk 17/06/26 02:49:43 ID:m1D91yE6 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「氷を防げるなら、今度は……!」

「……キュウコン、フライゴンに"ムーンフォース"!」

「ヒュォォ!」

キュウコンは、天に向かって甲高く吠えると、妖しい紫に煌めく月のエネルギーを一点に集約。

そして、ある一定の大きさまでそのエネルギーを球体状に凝縮させると……。

「ヒュゥ!」

……強力な念力で、それを標的たるフライゴンへ勢いよく射出。

竜を滅する"フェアリー"タイプの大技・"ムーンフォース"が炸裂した。

「"フェアリー"の技も使えるのか……!」

"こおり"に続いて"フェアリー"も使ってきたキュウコンに、ドラゴン使いのワタルは更なる脅威を感じ取る。

と言うのも、竜にとって氷と妖精の二属性は、タイプ相性上における最大の天敵。

その二つを同時に兼ね備えるミヅキのキュウコンは、もはや"ドラゴンスレイヤー"と言っても過言ではない。

竜殺しの奥義を前に、ワタルは。

「……かわせ!」

「ふりゃ!」
 ▼ 725 mTQB7XkZdk 17/06/26 02:50:35 ID:m1D91yE6 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
氷系の技とは違って、"かえんほうしゃ"で相殺できる気がしなかったのか、とりあえず回避させた。

しかし、この回避の後に何も繋げることが出来なければ、それは敵にとって絶好の隙となる。

その隙を作らないためにワタルは、すぐさまフライゴンに次なる指示を繰り出した。

「からの、キュウコンに"かえんほうしゃ"!」

一旦照準をハガネールからキュウコンに移し、燃え盛る炎のブレス・"かえんほうしゃ"を放つ。

「ふりゃぁぁ!!」

竜をも凍てつかせる忌まわしき氷を、跡形もなく溶かすために編み出した技。

降りしきる霰を巻き込みながら、"かえんほうしゃ"は直線を描いてキュウコンへと向かった。

「ヒュォ!?」

対してキュウコンの方はというと、"ムーンフォース"を放ったばかりなせいで硬直が発生し、機敏に動くことができない。

このまま攻撃が当たれば、いくら"オーロラベール"があろうとも確実なダメージとなろう。

「よし……!」

ワタルはそれを確信すると、勝ち誇ったような笑いを見せた。

……だが、彼がその時一瞬だけ見せた"隙"を。

この少年は……見逃さなかった。
 ▼ 726 mTQB7XkZdk 17/06/26 02:51:01 ID:m1D91yE6 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ハガネール、"こおりのキバ"!」

「ガラララッ!!」

ゴールドの一声。

「何!?」

ワタルが彼の方へ振り向いた時には、もうそこまで迫っていた。

その巨体からは考え付かないような凄まじいスピードで……そう、ハガネールが。

「ガラァァァッ!!」

「ふりゃ____」

……ハガネールが、口を大きく開けた。

その頃"かえんほうしゃ"は、既にキュウコンに直撃していた。

「ひゅぅ!?」

砂漠の精霊が放った獄炎に、氷河の妖精は虹色のベールを纏っていながら苦しげに鳴いている。

しかし、そんなことどうでも良いと思えるようになるほど、今ワタルは激しく戦慄している。

この鋼の大蛇でさえ、氷属性を使うのか……と。
 ▼ 727 タグロス@メガリング 17/06/26 05:58:39 ID:eSPRGfQ2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
落ち着け〜
支援
 ▼ 728 ジギガス@ドラゴンジュエル 17/06/26 09:52:30 ID:4zxs5aQM NGネーム登録 NGID登録 報告
まぁポケモンってゲームはどっからでも氷が飛んでくるからね。しょうがないね
 ▼ 729 ガミュウツーY@じめじめこやし 17/06/26 14:46:39 ID:zxnMOKdo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
個人的にアローラ勝手欲しい
 ▼ 730 オッキー@うみなりのスズ 17/06/26 15:55:51 ID:dQgp3qdk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 731 mTQB7XkZdk 17/06/27 02:46:52 ID:GX9rPMRg [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「危ねぇ!」

「ギャラドス、フライゴンを守るんだ!」

「ギャォォォァゥ!」

ワタルのフライゴンの危機を察知したグリーンは、ギャラドスに早急に助けに向かわせる。

従いしギャラドスは、その蛇のように長い体を豪快にうねらせながら猛進。

そして牙を突き立て、ハガネールに噛み付き攻撃で強襲した。

その顎はハガネールの首もとを確実に捉え、奥に潜ませた鋭利な牙を、グサリと頑丈な岩の体に突き刺す。

だが。

「……ガラッ!」

ハガネールは、その程度の攻撃で止まることはなく。

全く怯む様子も見せないまま、彼は冷ややかな氷に覆われた大顎を____

「ガラァァァッ!!」

____思いっきり、閉じた。

対象たる一匹の竜を、包み込みながら。

「ふりゃぁぁぁっ!!?」
 ▼ 732 mTQB7XkZdk 17/06/27 02:47:29 ID:GX9rPMRg [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
"こおりのキバ"が、フライゴンを打ち砕く。

「フ……フライゴン!!」

ワタルの彼を呼ぶ叫びは、吹きすさむ寒風の中で虚しくかき消えた。

地に降っては溶け続けている冷たい霰。

すっかり水浸しになっていた荒野に、フライゴンは力無くポトリと落下する。

彼は体を氷に侵食されながら、目を回して気絶していた。

「ふ……りゃぁ」

翼も凍結していて、とても飛べるような状態ではない。

砂塵の竜は、鋼鉄の蛇にまんまと食い潰され、敗北してしまった。

「フライゴン、戦闘不能!」

これでワタルも、残り一体という名の窮地に追いやられる形に。

「……よくやってくれた、フライゴン」

「ふりゃぁ……」

フライゴンを、労いと共にボールに戻すワタル。

その胸中は、気が滅入っているという思いで一杯だった。
 ▼ 733 mTQB7XkZdk 17/06/27 02:48:40 ID:GX9rPMRg [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……まいった)

(どいつもこいつも"こおり"ばかり使ってくるせいで、俺のドラゴンは非常に闘いづらい)

敵のキュウコンとハガネールは、二匹とも氷属性の技を有している。

加えて、氷を補助する天候・"あられ"も現在進行形で持続しているために、その技の一つ一つの威力が重い。

氷を弱点とする"ドラゴン"タイプにとっては、かなり不利な状況といえよう。

しかし生憎なことに、本日ワタルは、手持ちのポケモンを全て"ドラゴン"タイプで統一して出場していた。

生粋のドラゴン使いたる彼の、強き信念の証明である。

……それと、まさかここまでドラゴンに逆風が吹くことになるとは、彼自身思って無かったのだ。

(……こういう時こそ、己のポリシーを貫くんだ)

(頼んだぞ)

すると彼は、一つのモンスターボールを取り出し。

胸に秘めたる熱き勝利への想いを、その中に眠っているポケモンにグッと託した。

こんな状況だからこそ、ワタルには、心の底から頼れる一匹のポケモンがいる。

それは____

「……いけ!!」

「"カイリュー"!!」
 ▼ 734 ミカラス@りゅうのプレート 17/06/27 06:34:28 ID:qe8fCGh6 NGネーム登録 NGID登録 報告
カイリューキター!
支援
 ▼ 735 シラム@りゅうのウロコ 17/06/27 06:39:14 ID:Yo9R5nqo NGネーム登録 NGID登録 報告
バリアーカイリューですか!?
 ▼ 736 チュル@オッカのみ 17/06/27 07:30:18 ID:iSo8euVI NGネーム登録 NGID登録 報告
は か い こ う せ ん!!
 ▼ 737 ャヒート@きょかしょう 17/06/27 11:38:24 ID:zuYYIBRQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイリュー!トレーナーに向かってはかいこうせんだ
 ▼ 738 mTQB7XkZdk 17/06/28 02:08:37 ID:sKFQz73E [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……カントー・ジョウト最強のドラゴン使い、その切り札。

"カイリュー"。

「グァァァイッ!」

彼は、その凶暴な鳴き声とは裏腹に、とても優しげな瞳を持っている飛竜のポケモン。

体型は小太りといった感じで肉付きが良く、しかし背中の両翼は巨体に対して極端に小さい。

基本的に海を縄張りにしていることから、時として"海の化身"などと呼ばれることがある。

普段は温厚で人懐っこい性格だが、その逆鱗に触れてしまったが最後、全てを破壊するまで止まらないという……。

「おおっ!出た!ワタルさんのカイリューっ!」

「ミヅキさん?」

と、ワタルのカイリューの登場に急にはしゃぎ出したのは、他でもない、アローラ代表のミヅキであった。

「いやぁ、私は今でこそアローラ在住だけど、元々の生まれはカントーだからさぁ」

「ワタルさんのカイリューは、アローラに引っ越した今でも私の憧れなんだよぉ」

ミヅキは、自分が元はカントー地方で生まれ育った人間だということをゴールドに伝えると共に。

ワタルのカイリューへの憧憬を、熱く語る。

「……確かに、ワタルさんのカイリューと言ったら、カントーやジョウト地方を代表するヒーローみたいな存在ですもんね」
 ▼ 739 mTQB7XkZdk 17/06/28 02:09:40 ID:sKFQz73E [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴールドの言うように、あのカイリューは、強豪ひしめくワタルのドラゴン軍団の中でも群を抜いて強いとされ、カントーとジョウトの人々からは専ら英雄視されている。

また、単にポケモンバトルが強いというだけではなく、実際に地元の人々やポケモンをトラブルから守っていることもあり。

そうした面でも世間から評価され、その名声はまさに鰻登りである。

だがある時、とある悪人に"はかいこうせん"を直で浴びせたことがあり、その際は"いくらなんでもやりすぎ"と若干の非難を受けた。

まあこのように、良くも悪くもワタルのカイリューはとても有名なポケモンで。

故に、元カントー庶民のミヅキのテンションは非常に高かった。

「なんか、あの子から熱い視線を感じるな……」

「グァァゥ」

一方で、そんな熱烈な眼差しで見つめてくるミヅキに対しワタルは、少しこっぱずかしくなったのか、ミヅキから目を逸らしてしまう。

しかし。

「あんまし気を緩めないでくださいよ、ワ・タ・ル・さん」

「わ、分かっているさ」

グリーンから真面目に注意を受けると、ワタルは戸惑い気味ながらも再び目線を前方に合わし、意識をバトルへと向け直した。

フライゴンが倒され、カイリューが出たことによって、ミヅキ以外の三人はついに、それぞれの残存ポケモンが最後の一匹となる。

数の上では、まだ二匹残しているミヅキがいるアローラが有利だが、カイリュー並びにギャラドスの活躍次第では、勢力の逆転は二十分にありえる。
 ▼ 740 mTQB7XkZdk 17/06/28 02:10:20 ID:sKFQz73E [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
このバトルに一筋の勝機を見出だした二人は、より一層集中力を高め、ポケモン達と共に構えた。

「行くぞ、カイリュー!」

「グァッ!」

合図、そして指示。

「"バリアー"!」

「グァァァァウッ!!」

カイリューは一声叫ぶと、体内から強力な念力を放出し、それらをかき集めて具現化していく。

すると次の瞬間、強固で透明なドーム型の壁が、カイリューを覆うようにして形成された。

カイリューを物理的衝撃から守る"バリアー"である。

これで、カイリューの防御力は大幅に増強された。

「出た!ワタルさんのカイリューの"バリアー"!」

と、ここでミヅキはまたしても感激する。

「普通のカイリューじゃ覚えられない"バリアー"を、ワタルさんのカイリューだけは覚えてるんだよねぇ!」

「テレビとかでは見たことあるけど、生で見るのは初めてだよぉ、凄いね生バリアー!」

そう。
 ▼ 741 mTQB7XkZdk 17/06/28 02:11:14 ID:sKFQz73E [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼女の言うように、カイリューは通常"バリアー"を覚えることができない。

だが、ワタルのカイリューだけはなぜか、"バリアー"を使用できるのだ。

それには、多種多様、様々な説があり。

血の滲むような想像を絶する鍛練の結果だとか。

あるいは、生まれもっての天性の才能による賜物だとか。

中には、ヤバい生体実験でもさせられたのではないかなどという黒い噂もある。

その事でワタルは過去に何度も取材を受けているが、あくまで彼は特訓の成果だと主張している。

「……そういえば、実際のところどうなんです?」

と、グリーンはここで突然、ぶっちゃけた話をワタルに要求した。

しかし、ワタルの返答は不変。

「特訓、だよ」

その一点張りだ。

「……そっすか」

グリーンは取り合えず、これ以上考えないことにした。

なんか、掘り下げると色々面倒なことになりそうだったからである。
 ▼ 742 イホーン@しめつけバンド 17/06/28 02:30:44 ID:XRotrtf. NGネーム登録 NGID登録 報告
改造だよ
 ▼ 743 ニドリル@せいしんのハネ 17/06/28 05:51:49 ID:wBF/Px7A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワタルさんは改造厨だから、多少はね?
 ▼ 744 ギギアル@ミュウZ 17/06/28 05:55:39 ID:ujOD9Pf2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワタルさんなら仕方ないな
 ▼ 745 ドグラー@するどいツメ 17/06/28 06:28:55 ID:cI36szZo NGネーム登録 NGID登録 報告
技構成なんじゃろなー
 ▼ 746 シャーモ@きのみぶくろ 17/06/28 07:58:05 ID:n9sSObmI NGネーム登録 NGID登録 報告
くっそwwww
 ▼ 747 ガボスゴドラ@きいろいバンダナ 17/06/28 19:06:33 ID:JuXwThV. NGネーム登録 NGID登録 報告
やっぱり改造じゃないか(呆れ)
 ▼ 748 mTQB7XkZdk 17/06/29 12:09:40 ID:lQorC216 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「でも、"バリアー"は特殊攻撃には弱いハズ!」

「なら、私のキュウコンでどの道一発KOだよ!」

「ヒュォォ!」

と、ミヅキは自信満々にそう豪語する。

彼女の言うように、バリアーが主にその効力を発揮するのは物理的攻撃による衝撃のみ。

つまり、ビームなどといった攻撃に対しては全く耐性がないのだ。

なのでそこを突かれてしまうと、バリアーは盾としての意味を成さなくなってしまう。

そして都合の悪いことに、ミヅキのキュウコンは特殊攻撃主体で戦うポケモン。

そのためカイリューは、その辺りよく注意してバトルに臨まなければならない。

しかし代わりに、物理型のハガネールに対しては、比較的優位に立って戦いやすくなったハズだ。

ならばまず、カイリューが標的に定めるべきはハガネール。

すると、ここでグリーンのギャラドスが請け負うべき役割も明確になってくる。

ギャラドスは、カイリューをキュウコンから守らなければならないのだ。

ハガネールとの戦いに、カイリューが集中するために。

その旨の話を、ワタルがグリーンに簡潔に説明すると。
 ▼ 749 mTQB7XkZdk 17/06/29 12:10:17 ID:lQorC216 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……要は時間稼ぎっすか」

「ま、それが効率的っすよね」

特に異論を唱えることなく合意。

「頼むぞ」

グリーンにキュウコンの引き付けを託したワタルは、その鋭い眼をハガネールへと向け。

カイリューを以てして、戦いを挑んだ。

「カイリュー、"りゅうのまい"!」

「グァァッ!!」

咆哮を撒き散らしたカイリューは、赤黒い稲妻を身に纏いながら激しい乱舞を披露する。

竜の一族に伝わりし"りゅうのまい"は、その者の攻撃力と機動力を底上げするのだ。

「させるなハガネール、"こおりのキバ"!」

「ガララララッ!!」

カイリューの能力上昇を阻止すべく、ハガネールは猛スピードで荒野を這い、カイリューに接近。

そして、牙を氷の白銀に輝かせながら、その大顎を広げた。

だが。
 ▼ 750 mTQB7XkZdk 17/06/29 12:10:54 ID:lQorC216 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「かわせ!」

「グァッ!」

ハガネールが放った"こおりのキバ"は、カイリューが飛翔してあっさり回避したことで不発に終わる。

その時の彼の飛行速度は、先程までとは見違えるほどに速くなっていた。

それは、"りゅうのまい"が成功したことを裏付けている。

察したゴールドは、"一足遅かった"と頭を押さえた。

「いいぞ、流石だカイリュー」

「グァァッ!!」

"バリアー"と"りゅうのまい"のシナジーによって、カイリューの能力は凄まじいまでにパワーアップしている。

その攻撃は鬼神が如く。

その防御は城塞が如く。

その素早さは隼が如く。

まさに手の付けられない、驚異的な力を持った化け物が、今ここに誕生した。

「さあ、やれカイリュー!」

「ハガネールに、"ドラゴンダイブ"!」
 ▼ 751 mTQB7XkZdk 17/06/29 12:12:17 ID:lQorC216 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グァァァオッ!!」

主からの指示を受け、カイリューは翼をはためかせ更に急速上昇。

そして、ある一定の高さに到達すると、今度は翼を畳み。

地上のハガネール目掛けて、一気に加速し突進した。

「グァァァァッ!!」

やがてその体には、青白い竜のオーラが宿る。

かつて無いほどの莫大なオーラは、彼の攻撃力の高さに比例している。

堅牢な守備力を誇るハガネールといえども、これをまともに食らえば大ダメージは免れない。

しかし、これを避けるだけの素早さはハガネールには無い。

よって彼は……迎撃するしかなかった。

「くっ……ハガネール!」

「"アイアンヘッド"!」

「ガララララッ!!」
 ▼ 752 mTQB7XkZdk 17/06/29 12:12:59 ID:lQorC216 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハガネールは、鋼鉄の頭突き・"アイアンヘッド"で、カイリューに真っ向からぶつかった。

「グァァッ!!」

「ガラァッ!」

衝突する二対の怪物。

刹那の衝撃の後、押し勝ったのは。

「……グァァァッ!!」

「ガランッ!?」

……カイリューだった。

「ガラッ……!?」

後方に吹き飛ばされた鋼の巨体。

ハガネールは、モロに受けるよりはダメージを抑えたものの、それでもなお傷が深い。

「ハガネール……!」
 ▼ 753 ロスター@ファイヤーメモリ 17/06/29 19:17:57 ID:CCLCetks NGネーム登録 NGID登録 報告
カイリュー好きだから嬉しいなー
 ▼ 754 クバード@トロピカルメール 17/06/29 19:24:13 ID:SpUQzBsA NGネーム登録 NGID登録 報告
あと1つの技は何かな〜
 ▼ 755 チュー@レンズケース 17/06/29 20:19:44 ID:1mv7w71A NGネーム登録 NGID登録 報告
バリアー 龍舞 ダイブ 破壊光線

実質カイリューの技構成割れたな
 ▼ 756 たやぶリーリエ 17/06/29 21:52:23 ID:Uh2VoDXI NGネーム登録 NGID登録 報告
まぁ破壊光線が無きゃワタルのカイリューじゃないよな
 ▼ 757 mTQB7XkZdk 17/06/30 03:13:19 ID:VzztLkDw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴールドは、負傷したハガネールの身を案じ、心拍を加速させる。

いくら"オーロラベール"で防御力が上がっているといえども、"りゅうのまい"で底上げされた技の威力は、そう容易くは軽減できないようだ。

「ガララッ……!」

重き竜の痛撃を食らったハガネールは、それでも体力を尽かすことなく体を起こす。

しかし、その頑丈なハズの鉄鋼の鎧には、微かながら確かなるヒビがあった。

「グァゥッ」

その様を見たカイリューは、"やってやったぜ"と言わんばかりのニヒルな笑い。

「……ガラァァゥ!!」

カイリューに嘲笑されたと受け取ったハガネールは、それに対し激昂を顕にして、重低音の雄叫びをあげた。

その音波によって大きく震動する断崖。

彼の心からの怒りを耳に響かせたゴールドは、思わずその場で立ち尽くし、唖然とした表情で固まってしまう。

「……ハガネール」

"悔しい"。

ゴールドには、ハガネールがそう言っているように聞こえた。

仲間からオーロラベールという援護まで貰っておいて、相対するカイリューにこんなにも圧倒されている。
 ▼ 758 mTQB7XkZdk 17/06/30 03:13:51 ID:VzztLkDw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
この事実に一番プライドを傷つけてしまっているのは、ゴールドでも、他の誰でもなく。

そう……ハガネール自身なのだろう。

ゴールドは、彼の無念を察し、苦渋に歯を食い縛る。

トレーナーとして、こんなに情けないことはない……と。

「……キュウコン!」

……そんな、自責の念に駆られしゴールドの横で、ミヅキが一声あげた。

「カイリューに"れいとうビーム"!」

「ヒュォォ!」

刹那、ゴールドの視界を横切ったのは冷ややかな氷の光線。

「させっかよ!」

「ギャォォ!!」

そしてまた刹那に、そのビームをグリーンのギャラドスが身を呈して遮断する。

「まだまだぁ!」

「私達は……"諦めない"!」

「ヒュォッ!」
 ▼ 759 mTQB7XkZdk 17/06/30 03:14:38 ID:VzztLkDw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
何とかして、カイリューに氷の一撃をお見舞いしようとするキュウコンと。

それに対抗し、カイリューを守るために自ら肉の盾となるギャラドス。

そんな二匹の争いが、先程から横でずっと続いていた。

そして未だに、キュウコンの攻撃はカイリューに届いていない。

せめぎ合い、気の遠くなるようなその応酬。

しかしそれでも、彼女は言った。

"諦めない"と。

不屈を貫くミヅキとキュウコン。

「……!!」

オーディエンスが響かせる有象無象の歓声の中で、ゴールドにはそのたった一つの言葉だけが轟いた。

そうだ。

諦めてはいけない。

彼は心の導火線に、戦意という名の火をつけた。

そして、燻っていたハズの感情が、今……爆発する。

「……ハガネール、やるぞ!」

「まずは"どくどく"だ!」
 ▼ 760 テッコツ@ドリームボール 17/06/30 07:29:45 ID:Ej/vpb/M NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 761 タチ@どくバリ 17/06/30 07:42:04 ID:6GEOI8SU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>753
しえーん
 ▼ 762 ーケン@かるいし 17/06/30 07:42:36 ID:6GEOI8SU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
安価は気にしないで
 ▼ 763 ターミー@どくバリ 17/06/30 21:42:14 ID:GQ2Koawk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フリドラあったらなー
 ▼ 764 mTQB7XkZdk 17/07/01 02:27:29 ID:o0.0THUk [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ガラァッ!!」

ゴールドが放った"どくどく"の指示。

力強く唸ったハガネールは、カイリューを鋭く睨み付ける。

その瞳には、紫に光りし"魔力"が宿っていた。

「何!?」

「グァゥッ……!?」

その時、カイリューを襲ったのは深き紺色をした謎の液体。

それがカイリューの体に一瞬だけ触れると。

「……グァァァォォ!?」

突然カイリューは、先程まで余裕気だった表情を一転させ酷く歪め、そして苦しみ悶えだした。

瞬く間に青ざめる顔色、止まらない痙攣。

諸症状を訴えるカイリューの体。

これらは全て、ハガネールの放った"どくどく"によるものだった。

"どくどく"は、その毒々しい技名の通り、対象を"どく"の状態にする技。

それも単なる毒ではなく、いわゆる"猛毒"と呼ばれる類いの物。
 ▼ 765 mTQB7XkZdk 17/07/01 02:31:21 ID:o0.0THUk [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
時間が経過する毎に、"どく"の侵食がどんどん増していくのだ。

恐ろしい劇毒を食らったカイリューは、体内から命を食い荒らされるので、バリアー関係なしにダメージを受け続けてしまう。

「くっ……このタイミングでそれを出してくるとはな」

これまで物理主体で戦ってきたハガネールが、ここに来て全くする素振りのなかった"状態異常"という攻撃をしてきた。

そこに意表を突かれ、まんまとカイリューを毒に侵させてしまったワタル。

体力面でかなり危なげになり、多少狼狽えてしまう。

しかし、彼のカイリューにはまだ、他の追随を許さない高い攻撃力と機動力がある。

猛毒に瀕死まで追い込まれる前に二匹を倒してしまえば、何の問題も無いのだ。

「……やれるか、カイリュー!」

「グァァ!!」

例え毒に寄生されても、戦意に燃えしその魂だけは譲らない。

竜使いと竜は、その強固な信念を貫き通す。

「よし、ならハガネールに"ドラゴンダイブ"!」

「グァァァ!!」

再び炸裂、"ドラゴンダイブ"。
 ▼ 766 mTQB7XkZdk 17/07/01 02:33:22 ID:o0.0THUk [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
内にて流れる竜の血を沸騰させ、蒼き光を纏い、自ら敵を射抜く矢と化す必殺の奥義。

カイリューは冷たい大地を思いきり蹴って、ハガネールに突進攻撃を仕掛けた。

「ガラッ……!」

構えるハガネール、しかし彼は戦いの最中で一抹の不安を抱えていた。

果たして自分は、もう一度この攻撃を耐えられるのだろうか……と。

先程も"アイアンヘッド"でアレに対抗したが、その際に味わった撃沈を思い出すと、ハガネールはどうにも自分の体力に絶対の自信を持てない。

だがそれと同時に、その時舐めた苦渋の味も回想する。

そうすると、ハガネールの全身からは燃えるような悔しさが込み上げてきた。

それは彼の原動力となり、また勇気となって、彼を支える。

そしてハガネールはついに、迫り来るカイリューと真っ向からぶつかることを決心した____

____と。

その時。

「助けるよ、ゴー君!」

少女……ミヅキの声が、突如として届く。

「え……」
 ▼ 767 mTQB7XkZdk 17/07/01 02:35:13 ID:o0.0THUk [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴールドが全てを把握するよりも先に、事は起こった。

「キュウコン、カイリューに"れいとうビーム"!」

「ヒュォォォォァッ!!」

一閃、宙を駆けた氷の槍。

それは何者にも阻まれることなく、カイリューへと一直線に迸っていった。

「バカな!?」

「グァァ!?」

ふとワタルは、キュウコンからカイリューを守ってくれるハズのギャラドスの姿を探し始める。

するとすぐ彼は見つかったが、その時ギャラドスは一瞬だけだが怯んでいたようだった。

「ギャォォ……ッ」

「やべっ……」

どうやらグリーンは、ついにミヅキの侵攻を許してしまったらしい。

彼が自分の失態に冷や汗をかいて臆している中、それでもワタルは焦ることなく。

「……まだだ!」
 ▼ 768 mTQB7XkZdk 17/07/01 02:36:55 ID:o0.0THUk [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
この窮地から脱するために、対処を図る。

しかし"ドラゴンダイブ"が発動してしまった今、この期に及んで瞬発的な回避は不可能。

突進中のカイリューの軌道上に"れいとうビーム"があたかも高速道路で逆走してきた対向車の如く来襲しているというのが今の状況なので、このまま行けば間違いなく衝突するだろう。

そんな極めて危機的なケースだが、ワタルにはまだ策があった。

例によって、回避できなければ相殺するという選択肢である。

しかし、竜属性がすこぶる濃い"ドラゴンダイブ"では、タイプ的に不利な氷の"れいとうビーム"には恐らく敵わない。

あえなく押し負けて氷漬けになるのが関の山だ。

だが、"ドラゴンダイブ"の他にももう一つ、カイリューは攻撃技を有している。

そう。

かつて、生身の人間たる一人の悪人にも容赦なく放ったという逸話が残っている、あの技。

その名も……。

「……カイリュー!」

「"はかいこうせん"ッ!!」

……悪を撃滅する正義の閃光。

"はかいこうせん"。
 ▼ 769 ドラン@バトルサーチャー 17/07/01 06:01:24 ID:472dgR.A NGネーム登録 NGID登録 報告
キターーーーーーーー!!
 ▼ 770 ラッタ@チーゴのみ 17/07/01 06:25:44 ID:iFdsd/fQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
トレーナーには打つなよ
 ▼ 771 ガニウム@ヨプのみ 17/07/01 09:47:59 ID:bmWkBUiI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
はかいこうせん!!
支援
 ▼ 772 レセリア@おとどけもの 17/07/01 22:26:45 ID:l0vTeBXQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミヅキにはかいこうせん!
 ▼ 773 mTQB7XkZdk 17/07/02 02:14:48 ID:zmL93QO2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
それは、"ドラゴンダイブ"による風の抵抗を物ともせず発射され、直線を描いて轟音を上げながら飛んでいった。

やがてその"はかいこうせん"が"れいとうビーム"に接触すると、二つの光線は鍔迫り合い、火花と氷塊を散らし始める。

「グァァァォォ!」

「ヒュォォォォ!!」

"はかいこうせん"は、ポケモンが使える全ての技の中で最高峰の威力を持つ、絶対無比の技。

しかしその威力と引き換えに、使用後は反動で少しの間動けなくなる。

なのでカイリューは、例えこの撃ち合いには勝ったとしても、その直後は動作不能になり隙だらけになってしまう。

その時はその時で、それこそギャラドスが上手くフォローすれば良いのだが……。

……もしこの撃ち合いに負けてしまうようなことがあれば、それすらままならなくなる程にカイリューは無防備になるだろう。

そうなれば、刹那に訪れるのはカントー・ジョウトの無惨な敗北。

ワタルは、とんでもなく大きなリスクを孕みし選択を下したのだ。

しかし、そんな彼の表情には粒ほどの悔いすらない。

それは彼に余程の自信があるからなのか、それとも単に匙を投げただけなのか。

その真相はともかくとして、一つ現実として起こっていることがあった。

「……グァァァ!!」
 ▼ 774 mTQB7XkZdk 17/07/02 02:17:22 ID:zmL93QO2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ヒュォ!?」

……カイリューが、徐々にキュウコンを圧し始めているのだ。

時間が経つにつれ、カイリューの放っている"はかいこうせん"が、ゆっくりと、しかし確実にその面積を広げていっている。

「いけェ!!」

「グァァァ!!」

……半々、だったのかもしれない。

自信があったのが半分、もうヤケクソ気味だったのが半分。

その選択の結果、カイリューはワタルの想像を超えたパワーを発揮した。

それは竜の、氷に対する防衛本能からか。

はたまた、純粋にバトルに勝ちたいなどといった願望からか。

あるいは、またしてもその両方なのか。

何にせよ、カイリューは押し切る。

相手が、竜の仇たる氷の名手だとしても関係ない。

自らの前に立ちはだかる敵は、誰だろうとひたすら蹴散らすのみ。

バリアを張って、舞を踊って、蒼炎を帯びて。

破滅を持たらす死の咆哮で。
 ▼ 775 mTQB7XkZdk 17/07/02 02:29:05 ID:zmL93QO2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ヒュ____」

「ヒュォォォォ!!?」

起こる爆発、広がる爆炎、巻き上がる爆風。

"れいとうビーム"を全て飲み切った"はかいこうせん"が、ついにキュウコンに直撃した。

「キュウコンッ!!」

この時ミヅキは初めて、本気で焦ったような表情を見せる。

無理はない。

妨害してくるギャラドスを無理矢理振り切ってまで放った奇襲がことごとく揉み消され、逆に返り討ちにされたのだ。

いくらアローラチャンピオンといえども、これまでのような平静さは保っていられないハズ。

「……〜〜っ!」

カントーを出て、アローラの地で王者の座に君臨した今でも色褪せない伝説が、そこにはあった。

「……ふふっ」

「……そうこなくっちゃ……ね……!!」

するとニヤリと笑い、何故か喜ぶミヅキ。

その目は……"意欲"に燃えていた。
 ▼ 776 ビット@グラウンドメモリ 17/07/02 08:48:49 ID:Fs.fXH62 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
燃えるね〜
支援
 ▼ 777 ョロネコ@エレクトロメモリ 17/07/02 09:25:36 ID:uswbcc5E NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 778 カリオ@しんかいのキバ 17/07/02 20:12:04 ID:Zcb6BDNo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モエルーワ!(迫真)
 ▼ 779 ンベ@くろいヘドロ 17/07/02 20:12:54 ID:T2dyscw. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミヅキぐうかわ
 ▼ 780 mTQB7XkZdk 17/07/03 13:25:05 ID:jwnn8BsE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……キュウコン、"オーロラベール"!」

「ヒュォ!」

と、ここでミヅキは、"オーロラベール"の効果がそろそろ切れる頃合いだと判断し、再度キュウコンに"オーロラベール"を使わせる。

更新された虹のカーテンは、更に煌めきを上乗せしてキュウコンとハガネールを包み込んだ。

(……)

オーロラは美しく輝いている。

しかしミヅキは、その極光が魅せる絶景には目もくれず。

ただひたすら、前だけを、どこか遠い眼差しで見つめていた。

ふとゴールドは、そんな彼女の横顔を視界に入れる。

(……っ)

その時ゴールドの目に映ったのは、凛とした表情で戦場に向かう、勇ましき一人の少女の姿だった。

冷風に靡くその黒髪はとても艶やかで、それでいて無垢で。

思わず見とれてしまう程の美しさ。

しかしそれは、その少女……ミヅキの、いつもの姿ではなかった。

普段はもっとこう、ほんわかとした感じの少女なのだが、今の彼女はそんな和やかな雰囲気を一切放っていない。
 ▼ 781 mTQB7XkZdk 17/07/03 13:26:53 ID:jwnn8BsE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミヅキは、いつになく至極真剣に戦いに臨んでいる。

そしてゴールドは、そんなミヅキを珍しく思った。

(……あのミヅキさんが、真面目だ)

(まるであの時、僕と戦って勝った時のような……)

……ゴールドとミヅキが最初に出会い、そして街角でバトルを繰り広げたあの日。

頂の伝説をも超えしジョウトの英雄は、その少女に完全なる負けを喫する。

その時に、彼女は見せた。

まさに今放っているような……貫禄ある、覇気の漂う佇まいを。

と、過去のミヅキとのポケモンバトルを回想するのも束の間。

「よそ見してんじゃねェぜ、ゴールド!」

「ギャラドス、ハガネールに"たきのぼり"!」

「ギャォォォ!!」

グリーンのギャラドスが水飛沫を散らしながら、ハガネールに突進してきた。

「くっ」

「ハガネール、"アイアンヘッド"で迎え撃____」
 ▼ 782 mTQB7XkZdk 17/07/03 13:27:45 ID:jwnn8BsE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
____て。

と、ゴールドは言おうとしたが。

「キュウコン!」

それを遮る声が一つ。

「ギャラドスに"フリーズドライ"!」

「ヒュォ!」

ミヅキだった。

「ヒュォォォォ!!」

キュウコンは、"れいとうビーム"とはまた少し違う色合いをした氷のレーザーを発射する。

一方、"たきのぼり"の勢いで一直線に進むしかないギャラドスは、これを避けることができなかった。

「ぎゃぉ____」

直撃。

すると、ギャラドスの体を瞬時に白い煙が包み込む。

そして。

「ぎゃぉぉぉぉ!!?」

刹那に、ギャラドスが痛烈なる慟哭をあげた。
 ▼ 783 マナッツ@どくどくだま 17/07/03 18:53:08 ID:t.9alvew NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援

数字見たら3:2で
ミヅキはZを残してて
カイリュー、ギャラドス共にキュウコンに4倍を突かれて
キュウコンを押し返せるカイリューは毒……
ベールも貼られている

ギャラドスがメガでもしない限り勝つビジョンが見えねぇ
 ▼ 784 ッギョ@あかいウロコ 17/07/03 19:13:24 ID:5AKgRuyE NGネーム登録 NGID登録 報告
技が…いやここは何も言わないのが得策だろう
 ▼ 785 ワムラー@ジュナイパーZ 17/07/03 21:41:10 ID:duATmTak NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミヅキのキュウコンが技5つ持ちならカイリューにもあと一個技使わせろよ
 ▼ 786 ャルマー@おいしいシッポ 17/07/03 21:49:08 ID:.5KkmQE2 NGネーム登録 NGID登録 報告
>>785
改造厨には改造を論だろ()
 ▼ 787 mTQB7XkZdk 17/07/04 02:52:14 ID:2ZwVWT.2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>785
ぎゃあ完全に見落としてしまってました。本当に申し訳ないです。

以後気を付けますのでとりあえず今回はこのまま行かせていただきます、ごめんなさい。
 ▼ 788 mTQB7XkZdk 17/07/04 02:52:52 ID:2ZwVWT.2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ギャラドス!!」

猛りの雄叫びが激痛の悲鳴と変じたギャラドスの鳴き声。

キュウコンの放った"フリーズドライ"なる技が、その変化の引き金となった。

その技名から察することができるように、"フリーズドライ"は"こおり"タイプの技。

だが"こおり"は、タイプ相性上では"みず"のギャラドスに対して有効打ではない。

寧ろ、その逆。

その効果は今一つで、与えるダメージが半減されてしまう。

しかし目の前の現実は、その理論を見事に根本から覆していた。

効かないハズの"フリーズドライ"は、"みず"のギャラドスにかなりのダメージを負わせている。

その理由は、"フリーズドライ"が持つそもそもの意味が深く関係していると言えよう。

"フリーズドライ"とは、いわば凍結して"乾燥"させる技術のこと。

そう……"乾燥"させるのだ。

乾燥させるということは、それ即ち水分を枯らせるということ。

であれば、"みず"タイプに対し効果抜群の大ダメージとなるのは必然。

故に"フリーズドライ"は、"こおり"タイプの技でありながら、同時に"みず"タイプに弱点を突けるという特殊な技なのだ。
 ▼ 789 mTQB7XkZdk 17/07/04 02:55:21 ID:2ZwVWT.2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ギャォ……ォォオオオオッ」

己に痛手を負わせたキュウコンを、ギャラドスは激しく憎悪する。

カイリューを守るためにギャラドスは必死で戦うも、キュウコンはそんな彼を上回ってしまう。

だから彼は、憎くて仕方が無かった。

自分より強い力を持っている……あのキュウコンを。

「オォォォォォアアアアアッ!!」

憤怒する水竜。

鼓膜を突き破るが如くの怒号。

それをしかと耳にしたグリーンは……。

「……そうだな」

「そろそろ、良いだろう」

……ある、一つの決断を下した。

「行くぞギャラドス」

「"メガシンカ"ッ!!」

「ギャォォォ!!」

 ▼ 790 mTQB7XkZdk 17/07/04 02:56:00 ID:2ZwVWT.2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
その光は、かの極光のベールよりも眩しく。

その叫びは、如何なる怪物のそれよりも力強く、猛々しい。

そして荒野に現れるは、更なる巨悪と化した激流に住まいし凶暴な化物。

その名も、"メガギャラドス"。

「……グギャァォォォアアアアアッ!!」

なんとここに来て、ギャラドスが唐突にメガシンカを遂げた。

「……このタイミングで、かぁ」

だがミヅキは、この状況でも焦ることはなく、とりあえず冷静に様子を見ている。

メガシンカは普通、そのポケモンを出した直後にするもの。

今のように、戦いの終盤に差し掛かってからメガシンカするなんてことはあまりない。

もしそれに理由があるとすれば、考えられることは二つ。

一つは、力の温存。

そしてもう一つは……タイプの相性だ。

と言うのもギャラドスは、メガシンカすることでそのタイプが変わるのだ。

"ひこう"から……"あく"に。
 ▼ 791 ーバー@かいのカセキ 17/07/04 05:58:05 ID:USzAlWx. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おお!グリーンはてっきりピジョットしかメガ進化しないのかと…
支援
 ▼ 792 ンプジン@すごそうないし 17/07/04 06:53:58 ID:qUvdmCHc NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 793 ーテリー@ブロムヘキシン 17/07/04 20:03:11 ID:SbM0x89c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャラ 水 飛行
氷は等倍
 ▼ 794 ンパン@エネコのシッポ 17/07/04 20:30:31 ID:lEgPNH3. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あっ、うん。そうだね。
 ▼ 795 mTQB7XkZdk 17/07/05 03:00:38 ID:KAd0Mazw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ポケモンのタイプが変わるということは、同時に弱点が変わるということ。

また、メガシンカした後では、その戦闘中は自発的に元に戻ることができない。

そのためギャラドスがメガシンカする際は、時としてそのタイミングを見計らうことが必要になってくる。

そしてグリーンは、今こそメガシンカする時だと判断したのだった。

(キュウコンには"フェアリー"の技があっから、メガシンカは躊躇ってたが……)

(……そんなこと気にしてて火力が出せないようじゃ、どの道勝ち目はねェ)

(なら、ここは諸刃の策だろうと……攻撃的になってやるぜ)

"フェアリー"が"あく"に弱点を突けることを知っていて、それを恐れたグリーンは今までギャラドスをメガシンカさせずにいた。

しかし、それで結局敵にまともなダメージを与えられなければ元も子も無い。

キュウコン達にはダメージを半減する"オーロラベール"も張られているわけであり、火力水準が先程までのままでは確実にじり貧だった。

だが、メガシンカした今ならば、あの鬱陶しいベールをも貫くことが出来るだろう。

とはいえ、これで受けるダメージが増えてしまう可能性が出てきた。

リスクと引き換えの勝ち筋。

しかし、グリーンとギャラドスは迷わない。

「さぁ!攻めんぜギャラドス!!」
 ▼ 796 mTQB7XkZdk 17/07/05 03:01:19 ID:KAd0Mazw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ギャォォォ!!」

ギャラドスは、たぎりし怒りを血肉と昇華させる。

隆起した硬質な筋肉は、敵を砕くためにあり。

溢れるような黒き色の殺意は、敵に思い知らせるためにあり。

そう。

ギャラドスは、全ての敵を倒すために、メガシンカして無類の力を得た。

そしてその力は、奮うためにある。

「キュウコンに"たきのぼり"!」

「ギャォォォ!!」

これまで再三に渡って撃たれた"たきのぼり"だが、メガシンカした後だとその威力は最早別物。

衝撃のあまり突進は地を抉るようになり、ギャラドスが通った跡には無惨に荒らされた大地が広がる。

破壊の権化と恐れられし所以はここにあり。

当たればひとたまりもないことは火を見るよりも明らかだった。

「キュウコン、"ムーンフォース"で迎え撃って!」

「ヒュォォ!」
 ▼ 797 mTQB7XkZdk 17/07/05 03:08:10 ID:KAd0Mazw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
悪しき力を解放せしギャラドスの一撃に、キュウコンは聖なる月の加護を以て対抗する。

真ん丸の球状に凝縮された妖精のエネルギーは、猛攻のギャラドス目掛けて一直線。

そして、衝突。

「ギャォォォォ……ォォォアアアアッ」

自らに効果抜群の"フェアリー"技を真っ向から受けて、既に発生している痛みに激しく悶えながら、しかしギャラドスは必死に抵抗している。

正面に広がる光、その先にいるキュウコンをしっかりと捉えて。

この程度、突き抜けられると確信して。

「ォォォアアアアアッ!!」

獰猛なる叫びの後、光は散り散りとなって消え失せた。

代わりに溢れ出すのは、混沌にも似た狂気の黒。

ギャラドスの怒りや憎しみその物とも言えるそのエネルギーは、光を屠って更に増大する。

「……やるぅ」

カイリューに引き続き、ギャラドスまでもがキュウコンの放つ技を突破してきたことで、ミヅキはどんどん追い込まれていく。

「グギャァァァ!!」

光を離散させたギャラドスは、ついに本丸たるキュウコンに突撃。

ミヅキが窮地に立たされ、"彼"は____。
 ▼ 798 コリザル@まんぷくおこう 17/07/05 05:55:39 ID:P0vHxHYM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 799 ヒドイデ@シールいれ 17/07/05 16:45:20 ID:if3LRzZ. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴールドはなにしてくれるかな
 ▼ 800 ラキオン@ラティオスナイト 17/07/05 18:45:38 ID:OJzFekN6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
800
 ▼ 801 mTQB7XkZdk 17/07/06 01:43:03 ID:gT6Ui2bg [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……僕は……僕達は、このまま何も出来ずにミヅキさんのキュウコンを倒させてしまうのか)

(いくら"オーロラベール"がかかっていると言っても、あの"たきのぼり"を食らったら無事でいられるか分かったものじゃない)

(守らなくちゃ……キュウコンを!)

____ゴールドは噛み締め、そして噛み潰していた。

己の無力さ加減を。

その時広がった味わいは、苦虫なんかよりもよっぽど最低で。

吐き気がしてくるくらいの不味さで。

しかしその辛苦をも彼は糧とし、奮起する。

"今度こそは"と、対抗心を高く燃え上がらせて。

「ハガネール、"アイアンヘッド"!」

「ガララッ!!」

瞬間、ゴールドの闘志がハガネールへと憑依し、彼の力となった。

強き想いが籠った一撃は、時として数値以上の威力を発揮することがある。

そしてそれに賭ける勇気が、技を放つ際にあったなら。

その想いは、必ず届く。
 ▼ 802 mTQB7XkZdk 17/07/06 01:44:14 ID:gT6Ui2bg [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ギャォ……!?」

鋼鉄を纏いし大蛇の怒り……炸裂。

「ギャォォァァ……!!」

直撃を受けたギャラドスは、その苛烈な痛みに耐えかね思わず身をうねらせた。

キュウコンに当たる寸前だった"たきのぼり"は不発に終わる。

ゴールドとハガネールは、見事に切り開いてみせた。

活路を。

「……ありがとっ、ゴー君」

そして、それを次へと繋げるのはミヅキ。

"アイアンヘッド"を食らってギャラドスが怯み、カイリューが"はかいこうせん"の反動で動けない今なら、何にも邪魔されずに渾身の一撃を繰り出すことができよう。

この瞬間こそが最も集中すべき時と直感で悟ったミヅキは、その後の思考を全て破棄して……。

「……はぁっ」

「ほっ!ほっ!」

……無心になり、そして突然舞い始めた。

そう……舞い始めたのだ。
 ▼ 803 mTQB7XkZdk 17/07/06 01:45:55 ID:gT6Ui2bg [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
(え?)

グリーンの目には、それは奇怪に映り。

(な……!)

ワタルの目には、それは挑発に見え。

そして、ゴールドの目には……。

(……来た!!)

……それは、希望でしかなかった。

「……さぁ」

「凍てつきなさいっ」

唐突に冷酷っぽくなったミヅキの声と共に放たれるのは、"Z"を冠せし必殺の極意。

(ミヅキさんの……"Zワザ"!)

このミヅキの秘策は、ゴールドに"Zワザ"と称された。

「カイリューに……"レイジングジオフリーズ"!!」

「ヒュォォォォッ!!」

緋色にゆらめくオーラが、キュウコンを包みし時。
 ▼ 804 mTQB7XkZdk 17/07/06 01:51:45 ID:gT6Ui2bg [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
かの島国で得た力は、この霰降る断崖にて遺憾無く解放される。

"レイジングジオフリーズ"。

キュウコンが放つ、ゼンリョクの……"Zワザ"。

「ヒュォォォァァッ!!」

するとキュウコンは、ここで突然甲高い遠吠えを上げた。

薄暗い曇り空にて反響したその音は、何かの予兆を意味しているのか、それとも何かの引き金が引かれた証拠なのか。

「ヒュォ!」

地鳴り。

そしてその刹那、キュウコンの足下から……。

「ヒュォォォ!!」

……なんと突如として、巨大な氷の塔が出現した。

「こ……これは!?」

標的にされたカイリュー、そのトレーナーであるワタルは、今目の前で起きている事象に対し己の理解を追い付かせることができない。

誰の想像をも超える圧倒的な力。

ミヅキとキュウコンが織り成す、芸術にも似た美しき氷の演舞……。
 ▼ 805 メグマ@せいなるはい 17/07/06 06:03:49 ID:ZaI8vc.M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
zワザきたー!
支援
 ▼ 806 ンリキー@みどりのバンダナ 17/07/06 06:48:22 ID:aoVj795k NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーーーん
 ▼ 807 ャモメ@ねむけざまし 17/07/06 11:52:27 ID:0F5PxTaM NGネーム登録 NGID登録 報告
舞ってるといえばそうだけど……

氷Zのアレを舞と呼べるのか( )
 ▼ 808 ガヘルガー@ペアチケット 17/07/06 13:52:44 ID:QAmh4Y5M NGネーム登録 NGID登録 報告
>>807
剣の舞もチュインチュインだからセーフ
 ▼ 809 ブト@ともだちてちょう 17/07/06 18:40:33 ID:/Em.IN1Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グリーンVSレッド見たかったなぁ…
 ▼ 810 mTQB7XkZdk 17/07/07 03:16:51 ID:tk0jI/ao [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ヒュォォォ!!」

氷塔の頂にて優雅に佇むキュウコンは、吠えることで今一度、自分という存在を誇示する。

その後、彼女は地上を見下ろし、そこで無様に反動を受けて動けなくなっている標的……カイリューを捕捉した。

目を鋭く尖らせ、集中力と殺意を急速に高めていく。

逆に下がっていっているのは、外気の気温。

氷点下ぶっちぎりの境地に達して、この場に居る者全てに極寒という名の地獄が到来していた。

限り無く広がりし寒空。

徐々に手足の感覚が無くなっていき、意識も朦朧とし始めてきた頃。

ついに、その裁きは落とされる。

「ヒュォォォァァ!!」

銀色に輝きし氷の光線を、キュウコンは甲高い咆哮と共に撃ち出した。

塔の頂上から斜め下に直線を描いて、カイリューを貫くべくその一閃は向かっていく。

「グァォ……!?」

超高速で迫った"レイジングジオフリーズ"。

撃たれたカイリューは、始めはその事実に気付かなかった。
 ▼ 811 mTQB7XkZdk 17/07/07 03:18:13 ID:tk0jI/ao [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが……。

「グァ……グァァォ!!」

直撃した氷の矢は、程なくしてカイリューの体を内部から凍てつかせていき。

「グァァァァァ!!」

やがては、カイリューを丸ごと包み込む程の大規模な氷塊となって。

「グ……ア……」

……カイリューを、閉じ込めた。

悠久なる……絶対零度の獄に。

「カ……カイリュー!!」

そのワタルの呼び掛けに、答える者は無し。

檻に囚われた竜は、主と言葉を交わすことも禁じられ。

透き通った氷の中には、無念に叫んだまま、あたかも時を止められたかのように静止しているカイリューの哀れな姿があった。

これは最早、再起不能と見なす他無いだろう。

「カイリュー、戦闘不能!」

審判の判断が下された今、ワタルに残された手札はもう無い。
 ▼ 812 mTQB7XkZdk 17/07/07 03:19:20 ID:tk0jI/ao [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゲームオーバーだ。

「そ……そんな……」

「……クソォォォォォ!!」

彼は、叫んだ。

文字通り氷漬けになってしまったカイリューの分まで。

ひたすら、叫んだ。

声が枯れ果て……そして、かすれるまで。

…………

……

「……………」

……"ポカーン"。

今のレッドの愕然とする様子を漫画の一コマにしたならば、きっとこんな擬音が書かれていたことだろう。

目の前で繰り広げられた凄烈なる攻防に、彼はもう口をあんぐりと開けて驚くしか無かった。

「な、何……今の」

特にレッドが度肝を抜かれたのは、先程キュウコンが放った"Zワザ"。

Zワザのゼの字も知らないレッドにとって、あの一瞬はまさに……未知の世界だった。
 ▼ 813 グラージ@フラットコール 17/07/07 08:04:20 ID:wLfIneK6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワタルさんもメガ進化が使えていたら…!(フライゴンを見ながら)
支援
 ▼ 814 ンバット@きあいのタスキ 17/07/07 09:26:10 ID:sIaB1Twc NGネーム登録 NGID登録 報告
先が見えてしまった試合ほど見てて辛いものはない
 ▼ 815 ザンドラ@むらさきのミツ 17/07/07 21:19:25 ID:j.6.BTpk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今さらだけどミズキさんのパーティ俺の旅パかな?
 ▼ 816 mTQB7XkZdk 17/07/08 01:50:59 ID:6O9LkkFY [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……"Zワザ"、か」

「アローラ代表と言うからにはもしかしたら……と思ってたが」

どうやらカルムは、リージョンフォーム同様、"Zワザ"の存在を風の噂か何かで耳にしたことがあるらしい。

「知ってるの?」

「一応、な」

一方で相変わらず情報に疎いレッドは、ここぞとばかりに彼の知り得ている話に耳を傾ける。

「アローラ地方の伝統……"島巡り"と呼ばれる試練の旅を経た末に会得できる技」

「それが"Zワザ"だとは、聞いたことがある」

「その威力は、まさに今見た通りだ」

「噂に違わぬ火力を見せつけてくれるな、オイ……」

彼の聞きかじった知識から放たれたその解説は、途中からはZワザに対する畏れに変わっていた。

普段は強かな性格のカルムでも、あの規格外の破壊力の大技を見せられてしまっては流石に動じざるを得ない。

もし、アレを自分達が初見で受けてたら……。

……その考えが過った時、同時にカルムは幸運に思った。

先に見ておいて良かった……と。
 ▼ 817 mTQB7XkZdk 17/07/08 01:54:43 ID:6O9LkkFY [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……"Zワザ"……」

その横でレッドは、カルムのようにこの先の戦いを懸念することはせず。

呑気なことに、Zワザというポケモンの新たな力にただ呆然と魅了されていた。

メガシンカをようやく手に入れた矢先に、またしてもこんな面白そうな物を見つけることになるなんて。

そそる好奇心、昂る感情。

即座にレッドは欲した。

Zワザという……ポケモンの更なる真価を。

だが、それでも彼が願うのはただ一つ。

(……グリーン)

(お前はこの状況を、どう覆す?)

親友の勝利である。

…………

……

「……カイリュー、すまない」

「グァァ……」
 ▼ 818 mTQB7XkZdk 17/07/08 01:56:03 ID:6O9LkkFY [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
一頻り叫んだワタル、その無念の一声。

すっかり体力が尽きてしまったカイリューは、未だ体を氷に閉ざされたままボールに戻される。

悔やまれし敗北だった。

これでカントー・ジョウト勢の残存ポケモンは一体。

グリーンのギャラドスだけだ。

「ははっ……マジかー」

「はははははっ!とうとう俺らだけっすか!」

この、ピンチと呼ぶべき由々しき事態。

しかしグリーンが次の瞬間声に出したのは、嘆きではなく笑いだった。

それも、爆笑の域に至るほどの大笑い。

「ギャォ……」

そのグリーンの奇行とも取れる行動にギャラドスは、上手く同調できずに寧ろ動揺している。

ゴールドも同じだった。

(……この絶体絶命の状況で、グリーンさんは笑っている……?)

(気でも狂ったか?……いや、あの人に限ってそんな……)
 ▼ 819 ネコ@ぐんぐんこやし 17/07/08 01:56:41 ID:oiesy1AI NGネーム登録 NGID登録 報告
ハガネールは倒せたとしても残りが無理(無慈悲)
 ▼ 820 mTQB7XkZdk 17/07/08 01:57:05 ID:6O9LkkFY [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
……と。

そんな、邪推にも似た彼の思考は。

「やってくれたな……お前ら」

刹那に変貌したグリーンの声色、そして表情によって。

「だが……」

「これで勝ったと……思うなよ!」

一瞬にして、断ち切られた。

「え……」

鋭い。

彼の放つ言葉には、これまで以上の迫力が宿されている。

これに思わず臆したゴールド。

「…………」

一方で、依然として平静を保っているミヅキ。

両者で正反対の反応を見せる中で、グリーンは更に言葉を続けた。

「この俺様が、世界で一番!強いんだ!」
 ▼ 821 mTQB7XkZdk 17/07/08 01:58:47 ID:6O9LkkFY [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「二人がかりで来られた所で、痛くも痒くもねェ!」

「さぁ……来るなら来いよッ!!」

怒濤の豪語、連発。

凄まじい声量から発せられたは、挑発か、虚勢か。

それとも。

「……強がっちゃって」

「キュウコン、"ムーンフォース"!」

これを"強がり"と見なしたミヅキは、残り一体となっても奮戦する意思を示しているグリーンに終止符を打つべく、最後の攻撃を仕掛ける。

「ヒュォォ!」

妖精が創造し発射する聖魔の弾丸・"ムーンフォース"。

それに対し、グリーンのギャラドスは。

「ギャラドス、"アクアテール"で弾き返せ!」

「ギャォォ!!」

メガシンカして得た強靭な尾を豪快に振るい、大いなる水の力を秘めた一撃をお見舞いした。

"たきのぼり"がそうしたように、"アクアテール"もまた、その威力を存分に解放する。
 ▼ 822 mTQB7XkZdk 17/07/08 02:01:33 ID:6O9LkkFY [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グギャァァァ!!」

やがて力は、魔を上回った。

大きな水しぶきが上がったと同時に"ムーンフォース"は泡沫と化し、そして消滅。

ギャラドスは、キュウコンの攻撃を防ぐことに二連続で見事成功したのである。

「続けて"じしん"!」

「グギャァォォォアアアアアッ!!」

そしてグリーンは、そのまま間髪入れずに次の一手を仕掛ける。

彼が下したのは、"じしん"の指示だった。

「ヒュォ!?」

「ガラッ……!?」

広範囲に及びし大地の激震。

特に"じめん"タイプが効果抜群のハガネールには、この攻撃はかなりの痛手となったようで。

一瞬だけだが、その鋼に覆われし巨体は確かによろめいた。

そしてその瞬間をグリーンは見逃さず、チャンスとしてモノにする。

「隙を見せたな、ゴールド君よォ!」

優れた観察眼で敵の間隙を突き、攻撃へと転じたのだった。
 ▼ 823 ムスター@メタルパウダー 17/07/08 05:33:09 ID:C.ubmrzg NGネーム登録 NGID登録 報告
完 全 に 悪 役
 ▼ 824 ライオン@うつしかがみ 17/07/08 06:34:51 ID:YB7S9KoA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
地震あるなら最初からやれよフライゴミだってカイリューだって無効じゃんよ
 ▼ 825 ラップ@つきのふえ 17/07/08 07:16:06 ID:0ZyPOjjc NGネーム登録 NGID登録 報告
>>824
温かい目で見よう
支援
 ▼ 826 ンクルス@ルカリオナイト 17/07/08 07:59:00 ID:DeRyThSU NGネーム登録 NGID登録 報告
>>824
メガシンカと同じで使いどころ見極めてたんだろ
 ▼ 827 Hope◆SCP948ZBFs 17/07/08 08:00:07 ID:xznc8EUQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グリーンかっこいい
支援
 ▼ 828 ーシィ@おとしもの 17/07/08 08:31:20 ID:cbWlKkbc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グリーンさん悪役に転職ってこマ?
 ▼ 829 ーマンダ@こだいのきんか 17/07/08 09:44:00 ID:gn1Mf.gk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グリーンはやはりこうでなくちゃ
 ▼ 830 mTQB7XkZdk 17/07/09 03:04:31 ID:YZp6hIVo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ギャラドス、"たきのぼり"でハガネールに止めを刺すんだ!」

「ギャォォ!!」

黒き怒りに目覚めし暴獣・ギャラドスは、凄絶な水圧を以てしてハガネールに襲いかかる。

「しまった!?」

グリーンに足下を掬われたゴールド。

しかしそれでも彼は対策を講じることを怠らず、急いで眼前の光景を見渡して、探した。

自分達の方へと接近せし敵……ギャラドスの姿を。

だが……目視のみで彼の者に追い付こうと思ったのが、そもそもの間違いだったのである。

「ガッ____」

ようやくギャラドスを目で捉えることが出来た、その矢先に起きた出来事だった。

ハガネールの体は、瞬間……。

「____ガラァァァァ!!!?」

……後方に、思いっきり吹っ飛んだ。

「ハ____」

「ハガネェルゥゥゥゥッ!!」
 ▼ 831 mTQB7XkZdk 17/07/09 03:07:58 ID:YZp6hIVo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴールドが気づいた時には、既に何もかもが遅く。

「ギャォォォォァァゥ!」

ギャラドスの"たきのぼり"は、ハガネールに見事な直撃を果たし。

接触と同時に発生した凄烈な水の衝撃は、効果抜群の威力となり、ハガネールの体力を一気に削り取って。

「ガッ……ラァァ」

その鋼の大蛇を……無惨に、地に横たわらせた。

「ハガネール、戦闘不能!」

カイリューに引き続いたその判決。

「へっ……ざまあねえぜ!」

カイリューが倒されてから数十分もしない内に、グリーンは速攻で敵の頭数を減らすことに成功したのだった。

ハガネールの戦闘不能によって、ゴールドの残機はゼロ。

「そんな……」

ジョウトの英雄は、とうとうグリーンの前に破れ去ってしまう。

これで残るはただ一人……ミヅキのみ。

いよいよ、アローラ代表も追い詰められてきた。
 ▼ 832 タチマル@きせきのタネ 17/07/09 08:01:00 ID:nOtEDZoc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 833 mTQB7XkZdk 17/07/10 02:55:08 ID:ZEetzs2c [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……あの人は多分、今の今までずっと"じしん"を切り札としてとっておいてたんだろうね)

(繰り出すその時に、最高の奇襲性を持たせるために)

当のミヅキは、先程グリーンが仕掛けて来たあの攻撃を元に、彼の思惑を冷静に推測。

(結果、見事に意表を突かれた私達はあの子の餌食になり)

(ゴー君のハガネールを……失ってしまった)

この時彼女は、自分達が一瞬だけ見せてしまった"隙"を自覚する。

ワタルのカイリューを倒した際、彼女達は確かに油断してしまっていた。

完全に"勝った"と、思い込んでしまっていたのだ。

だが、それは仕方の無いこと。

ダブルバトルにおいて、二対一というのは極めて決定的な場面。

そうなった地点で互いの有利不利は明確になり、そしてそれを覆すのは非常に困難となる。

……その事実があったからこそ、なのかもしれない。

もしそういう状況下になったら、優位に立った側が油断するのは必然。

それを考慮すれば、敵全体を攻撃できる"じしん"は、相手の虚を突く絶好の策となる。

グリーンはそれを見越して、敢えてここまで"じしん"を使ってこなかったのでは。
 ▼ 834 mTQB7XkZdk 17/07/10 02:55:38 ID:ZEetzs2c [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミヅキはそう予想した。

(でも)

と、しかしミヅキはその思考に一旦区切りをつけ。

「……大丈夫だよっ、ゴー君」

まずは、やられてしまったパートナーをフォロー。

柔和な微笑みが、敗戦し消沈していたゴールドに向けられる。

「ミヅキさん……」

まるで包み込むかのような彼女の優しさ。

それに心打たれたゴールドは、感動と申し訳なさで少し涙ぐんでしまう。

もう少し力になりたかったと、自分の非力さをも悔やんだ。

____が、その矢先に。

「ゴー君のハガネールの死は……決して無駄にはしないからっ」

……いつもの天然が、発動した。

「いや死んでませんけど」

「ガラァ……」
 ▼ 835 mTQB7XkZdk 17/07/10 02:56:52 ID:ZEetzs2c [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
折角の感動も束の間、結局彼女のボケに突っ込むしか無かったゴールド。

相変わらず、彼の気苦労は止まらない……。

「オイオイ、随分と余裕そうじゃねぇか」

「流石はアローラの初代チャンピオン様だ」

と、その和やかムードの所へグリーンが手厳しい言葉で乱入。

「!」

それによって、ゴールドも再び戦いの方へと意識が向く。

だがミヅキは。

「いやぁ、そんなに褒められると照れちゃうよ」

依然として、未だに天然モードのままだった。

「……煽ってんだよバカ」

自分の発した皮肉が通じなかったことに、若干苛立ちを隠せないグリーン。

しかし。

「まぁ、実際」

「余裕なのは本当のことだしねぇ」

ミヅキはここで、その笑みをようやく先程までの不敵なモノと変え。
 ▼ 836 mTQB7XkZdk 17/07/10 02:59:52 ID:ZEetzs2c [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「私にはまだ、キュウコンに加えてバンバドロも控えている」

「でも貴方は、そのボロボロになったギャラドス君だけ……」

「分があるのは、どう考えたって私達の方だと思うけどな?」

自らが有するアドバンテージを、自信満々な表情で述べていった。

そう。

仮にここから奇跡的にグリーンが逆転し、ギャラドスがキュウコンを討ち取ったとしても、彼女にはまだバンバドロという鉄壁の控えが残っている。

アローラ勢は攻撃の手数こそ失ったものの、残存戦力自体はまだカントー・ジョウト勢に優勢をとっているのだ。

この彼女の揺るぎない勝算に対し、グリーンは……。

「言ってろ」

「キュウコンさえぶっ倒せれば、手負いのバンバドロなんざもうギャラドスの敵じゃねぇ」

「事実上は既に、ギャラドスとキュウコンの一騎討ちなんだよ」

バンバドロは既に戦力外。

言外にそう彼女に伝えた上で。

「そしてその一騎討ちに勝利するのは……このギャラドスだ!!」

「ギャォォ!!」

改めて、勝利宣言をしたのだった。
 ▼ 837 イドン@ヨプのみ 17/07/10 06:29:30 ID:v9n5J9n6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
んー、かっこいーな
支援
 ▼ 838 ーゴート@エスパーZ 17/07/10 06:43:25 ID:2WyNvk0A NGネーム登録 NGID登録 報告
かっこよ
グリーンもミヅキも好きだから支援するしかないわ
 ▼ 839 イル@ホエルコじょうろ 17/07/10 18:49:00 ID:vW8iMV/k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もう今年の映画これで良くない?
 ▼ 840 ーゴート@まがったスプーン 17/07/11 00:30:59 ID:hcOmt7/M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>839
ほんとそれ
 ▼ 841 mTQB7XkZdk 17/07/11 02:44:02 ID:z1wy7WSA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……」

……対して、きょとんとした表情で少しの間沈黙するミヅキ。

「……ふふっ」

やがてその数秒後、彼女は唐突に破顔し、吹いた。

ミヅキは何故か嬉しそうにしており、グリーンとの会話を楽しんでいる様子。

「あ?……何笑ってやがる」

そんな彼女の真意を掴めないグリーン。

しかし馬鹿にされてるような気がしたので、彼はやや高圧的にミヅキに笑いの理由を問いただした。

すると……。

「……面白いなぁ、って思ってさ」

……彼女から返って来た言葉は、"面白い"。

「何?」

グリーンは、ミヅキの返答の意味が分からず困惑する。

先程までの彼らの会話の中に、笑うほど面白い場面などあっただろうか。

彼は模索したが、いくら考えても見当たらない。
 ▼ 842 mTQB7XkZdk 17/07/11 02:45:52 ID:z1wy7WSA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
寧ろ、発するセリフの一つ一つに敵意に近い何かが込められており、その時は一触即発のムードが漂っていたハズだ。

なのに彼女は、それを"面白い"と言った。

その理由を、ミヅキは次のように続けてから述べる。

「私、今日までトレーナーやってて本当に良かったよ」

「だって……こんなに強い人達と、ゼンリョクのポケモンバトルができるんだもん」

……トレーナーをやって来て良かった。

そう思ったからこそ、ミヅキは笑った。

だとすれば、彼女を真に突き動かしたのは"強者との戦い"と言える。

「…………!」

グリーンは、ミヅキのその言葉で納得し、理解した。

何故なら彼とて、強き者との勝負には燃える物を感じる気質の人間だから。

彼女のトレーナーとしての闘争心は、グリーンにはよく分かる。

「……ここからは、もう絶対に手を抜いたりしないよ?」

「全力で……貴方達を叩き潰しちゃうっ!」

これより先の彼女は、一切の油断をかき消して戦いに臨む。
 ▼ 843 mTQB7XkZdk 17/07/11 02:47:17 ID:z1wy7WSA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
勝利を見据えしその瞳こそが、彼女の決意の裏付け。

もう、如何なる奇襲を以てしても、彼女の不意を突くことは出来ないだろう。

さずれば、グリーンに求められるは単純な実力。

ミヅキを上回る程の実力が彼にあれば、ギャラドスはキュウコンを破る。

そして、控えるバンバドロをも続けて倒せるハズだ。

だが、もし彼女がグリーンよりも強かったら……。

「……ふっ」

……いや。

それ以上はもう、考えまい。

自分こそが、世界で一番強いのだろう?

ならば。

「やれるもんなら……やってもらおうじゃねェの!」

彼はいつだって、強気に出るべきだ。

例え、どんな敵が相手だろうとも。

後先のことはどうでも良い。
 ▼ 844 mTQB7XkZdk 17/07/11 02:59:16 ID:z1wy7WSA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ギャオ!」

ギャラドスが居る限り……彼に"負け"は無いのだから。

「ギャラドス、"アクアテール"!」

「ギャォォォ!!」

練度を極めし、高水圧を込めた尾の一撃。

「キュウコン、"れいとうビーム"!」

「ヒュォォォ!!」

それに対抗の意志を見せるのは、氷狐が放つ冷凍光線。

ギャラドスが尻尾を大きく振るった先に、そのビームは立ち塞がった。

「ギャオッ……!」

ギャラドスは後一歩の所で"れいとうビーム"に阻まれてしまい、"アクアテール"を決めることができず。

そして代わりに、"れいとうビーム"と"アクアテール"の鍔迫り合いが勃発。

「押しきれ!ギャラドス!」

グリーンはギャラドスを鼓舞しつつ、"れいとうビーム"を振り払うことを命じた。

「……ギャォォォゥ!!」
 ▼ 845 ニドリル@おおきなキノコ 17/07/11 05:52:02 ID:7OFjwet6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 846 メパト@ポイズンメモリ 17/07/11 12:48:27 ID:X1jaVKig NGネーム登録 NGID登録 報告
グリーンには頑張って欲しい
支援
 ▼ 847 mTQB7XkZdk 17/07/12 00:30:32 ID:JQq8NA82 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
目一杯踏ん張るギャラドス。

全身の力を尻尾に集約し、迫る"れいとうビーム"をはね除けようと奮闘する。

ギャラドスが力を込める度、氷の粒子が四方に飛び散り、時折それらは彼の体をチクチクと刺す。

「ギャォォォォ……」

その痛みに、ギャラドスの全身は震えたがっていた。

だがここで力を途切れさせたら最後、鮮烈な氷の一撃がギャラドスを襲うことになる。

だから、苦痛がギャラドスをいくら苛もうとも、彼は決して力を抜いてはならない。

"アクアテール"を決めない限り。

「……ギャォウァァァッ!!」

痛みを越え、彼があげたは気迫の咆哮。

何としてでも押しきってみせる……ギャラドスの強き意志が垣間見えた瞬間だった。

そして、その意志は激痛に屈することなく突き進み。

「ギャオウ!!」

"れいとうビーム"を、粉々に打ち壊した。

刹那、無数の氷が辺りに飛散。

氷はクリスタルのような輝きに満ちており、荒野に散りばめられしその残骸は言葉にならぬ程の神秘的な景色を創造していた。
 ▼ 848 mTQB7XkZdk 17/07/12 00:31:29 ID:JQq8NA82 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「打ち破った!」

ギャラドスが"れいとうビーム"をはね除けたのを、ワタルはその目でしかと確認。

そして、熱狂の声をあげる。

「ミヅキさん!!」

ゴールドも同様だった。

二人とも、リタイアこそしてしまったが、熱意は未だに顕在していて。

彼らは少しでも相方の力になりたいのか、互いのパートナーを懸命に応援していた。

「勿論、これぐらいはやると思ってたよっ!」

一方、技を破られてしまった側であるミヅキ。

しかし彼女はそれを"想定内"とし、余裕の表情を崩さない。

が。

「ギャォォォッ!!」

"れいとうビーム"を突破したギャラドスが再び猛進を開始すると、流石の彼女も何もしないわけにはいかないようで。

「キュウコン、避けて!」

すぐに対抗策を用意。
 ▼ 849 mTQB7XkZdk 17/07/12 00:33:36 ID:JQq8NA82 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ヒュォ!」

キュウコンは素早く横に跳躍して、ギャラドスの突進を回避した。

その動作の軌跡には、美しき氷の煌めきが残っている。

「ギャオッ」

「ちっ……ちょこまかと」

虚空を貫いたギャラドス。

すぐさま急ブレーキをかけ、辺りに砂煙を撒き散らしながら豪快に停止する。

動くも止まるも、重量級は非常にダイナミックだ。

一方で、キュウコンは身のこなしがとても軽やか。

勿論、そんな軽くて細い体にあの重量が激突したらひとたまりも無いだろうが、攻撃を当てるまでが大変である。

素早く動き回るキュウコンに苦戦するグリーン。

……と。

「……ん?」

その時。

ふとグリーンは、とある"感覚"が無くなり始めて来たことに気づく……。
 ▼ 850 ヤッキー@エレクトロメモリ 17/07/12 05:53:52 ID:aTs5bel. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 851 mTQB7XkZdk 17/07/14 01:30:10 ID:eNMM.s.s [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
その感覚はグリーン達に、突き刺すような痛みをもたらしていた。

だが今、彼らの痛覚は大人している。

いつの間にか消えていた痛み。

そのことに気付いた時、やがてグリーン達は悟る。

「霰が……」

「……霰が、止んだ!」

そう。

空から絶え間なく降り注いでいた氷の雨……即ち"霰"。

それが、一定時間の経過によって……消え失せたということを。

ふと、肌を伝った冷たい雫。

それは汗か、それとも溶けた氷か。

グリーンにはどちらか分からなかったが。

ただ一つ、感じたことがある。

気持ち良い。

霰が止み、体を蝕むものが無くなった世界。
 ▼ 852 mTQB7XkZdk 17/07/14 01:30:38 ID:eNMM.s.s [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
瞬間、広がったのは限りない解放感。

そんなグリーンの晴れやかな心を体現するかの如く暗雲が退き、代わりに燦々とした太陽が顔を覗かせた。

青天の下の荒野は、光反射せし水滴によって瑞々しく輝いている。

「オーロラベールが……」

と、ここでゴールドは、キュウコンを包んでいた極光のベールが徐々に剥がれてきていることに気付いた。

"オーロラベール"は、その防御性能こそ最強クラスの技だが、霰の時にしか発現しない儚き壁。

実際のオーロラと同じように、発生条件を満たしていない環境ではその存在を維持できないのだ。

「うっ……これは厳しいな」

オーロラベールを失った今のキュウコンは、盾を失った騎士が如し。

「ヒュォォ……」

残ったのは剣のみ……キュウコンは、動揺のせいか足元を一瞬よろめかせた。

「はっはー!さぁどうするよ、お花帽子ちゃんよォ!」

一方、鬼の首を取ったかのような口調と形相で再び煽り散らかすグリーン。

が、ミヅキは例によって。

「お花帽子……って?」
 ▼ 853 mTQB7XkZdk 17/07/14 01:31:02 ID:eNMM.s.s [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ボケる。

「いやお前のことだよ!」

「……あっ、そういうことかぁ!お花って、この帽子のことね!」

だがグリーンも流石に、若干だが慣れ始めてきたようだ。

しっかり彼女のボケに突っ込んで、なんとか会話を繋ぎ止めてみせる。

「ちっ、どうも調子が狂うな」

「ギャラドス、"たきのぼり"!」

「ギャォォ!!」

戦いの最中なのにこんなやり取りをしてしまう自分に呆れながら、それでもグリーンは攻撃の手を緩めなかった。

霰は消えたが、熱闘の火はまだ灯っている。

ギャラドスは気合いを入れて声をあげ、砂と水を散らしながらキュウコンに"たきのぼり"を仕掛けた。

「キュウコン、"ムーンフォース"!」

「ヒュォ!」

一方ミヅキは、幾度となく放ってきた"ムーンフォース"をまた打ち出した。

「ギャッ……ォォォオッッ!!」
 ▼ 854 mTQB7XkZdk 17/07/14 01:31:44 ID:eNMM.s.s [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが、ここまで何度もキュウコンの"ムーンフォース"を破ってきたこのギャラドスに、今更これが通用するハズもなく。

今回もあっさり"たきのぼり"によって壊され、突破されてしまう。

「ダメかぁ……もう手がつけられないって感じ」

「はははははっ!!もうお前は終わりだぜ、ミヅキ!」

お手上げミヅキと、勝ち誇りグリーン。

「これで決めろギャラドス……最大パワーで"たきのぼり"!!」

「ギャォォォッ!!」

その時、この場の誰もが確信した。

キュウコンが持つ技の中で、ギャラドスに対する唯一の有効打……"ムーンフォース"がまるで歯が立たなくなった今、彼女がグリーンに太刀打ちできる手段は無い。

最後の最後、逆転で……グリーンが勝ったと。

そう……次の瞬間までは。

「いけ!グリーンッ!!」

最大のライバルであり、親友……グリーンの勝利を信じ切ったレッドのその声。

だが。

「避けてキュウコン!」
 ▼ 855 ロベルト@パークボール 17/07/14 05:53:53 ID:gJn2iqDk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 856 ダイトス@スターのみ 17/07/14 09:42:28 ID:IeT2WftU NGネーム登録 NGID登録 報告
うーん、神w
 ▼ 857 トマル@くろいてっきゅう 17/07/14 17:27:15 ID:sEosUjcY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 858 ゲツケサル@のろいのおふだ 17/07/15 21:03:49 ID:Qqs1kb8k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フリドラありますから!
 ▼ 859 ライオン@あかいくさり 17/07/15 21:38:39 ID:vrp62KeA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>858
メガってるからムーンフォース以下の威力だぞ
 ▼ 860 ガギャラドス@6ごうしつのカギ 17/07/15 21:47:27 ID:IxDSBlKg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 861 ヒドイデ@あくのジュエル 17/07/15 22:53:42 ID:vf92zdwY NGネーム登録 NGID登録 報告
>>859
ダメ計算してないアニメやSSで威力だの相性だの言っても……
 ▼ 862 ンターン@しんぴのチケット 17/07/15 22:55:43 ID:3oPqQwXY NGネーム登録 NGID登録 報告
このSSなら多少は考えるでしょ
 ▼ 863 mTQB7XkZdk 17/07/16 02:43:36 ID:WXkCAfZU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ヒュオッ」

ミヅキのこの、何でもないような……苦し紛れの延命にも見える指示が。

「へっ、避けてばっかねェで大人しくやられ____」

……グリーンの運命を。

「____何!?」

まさに"文字通り"_____

「ギャオッ!?」

_____"奈落"に、突き落とす。

「ギャォォォッ!!?」

瞬間、ギャラドスの眼下に広がったのは深き暗闇。

底の見えない、幽玄たる大穴だった。

「なっ____」

そして、グリーンの視界からギャラドスが一瞬にして消える。

吸い込まれるようにして墜ちていくギャラドス、その行き先は途方なき闇の果て。

……いや。
 ▼ 864 mTQB7XkZdk 17/07/16 02:45:11 ID:WXkCAfZU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
"果て"など、そこにはあるのだろうか。

ギャラドスは、理たる引力に従いながら問う。

どこまで行っても……落ちても、辿り着くべき場所が見えてこない。

重力による単なる加速だけが、ただただ増していくだけ。

しかし、そんなギャラドスにも一つだけ理解の追い付くことがあった。

それは……。

「……ギャォォ」

……自分はもう、あのキュウコンに負けてしまったのだということ。

そして、あのキュウコンにまんまと嵌められたということ。

地上へ這い上がる術の無き戦士は、もはや戦線復帰すら叶わない。

キュウコンは好機を伺い、ギャラドスをこの穴へ落とすことを企てていたのだ。

そう、今一度言うが……ここは"断崖"という名のエンバイロメント。

砂嵐が舞ったり、霰が降ったり……その気候の変化に目を奪われがちだったが。

この限り無き奈落の渓谷もまた、断崖の特筆すべき点。

故に、空を飛べるポケモンでも使っていない限りは、そこにも気をつけなければならなかった。
 ▼ 865 mTQB7XkZdk 17/07/16 02:46:31 ID:WXkCAfZU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが……グリーンはそれを怠った。

キュウコンに徐々に拮抗するようになり、やがては彼女を上回る程の実力を発揮したことで、慢心が生じたのだ。

一気に決着をつけるべく勝負を焦った彼は、力任せにギャラドスを暴れさせ。

……その結果、虚は生まれ。

……ミヅキに、突かれた。

「……ッ!!!!」

グリーンは、絶句する。

己の愚かさに?

あるいは、ミヅキの卑怯な策略に?

それとも……。

「……クソがぁぁぁぁぁぁっ!!」

……単に、負けてしまったことに?

「……やると思ったよ、グリーンさん」

と、ミヅキは狂乱せしグリーンに一声発する。

「てめぇ……舐めた真似しやがってッ!」

「ふふっ……貴方が完全に勝ち誇ってくれたお陰で助かったよっ?」
 ▼ 866 mTQB7XkZdk 17/07/16 02:47:33 ID:WXkCAfZU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ざけんなッ!!」

この時グリーンには、ひたすら"悔い"しかなかった。

実力では完璧に彼女に勝ったハズなのに、策略によって覆されたと。

それも真っ向から勝負しない、お世辞にも正々堂々とはいえないやり口で。

グリーンのプライドは深く傷ついた。

こんな終わり方があるか。

あってたまるか。

しかしそう何度も叫んだところで、結果は変わらない。

ボールの中には、既にギャラドスが戻っている。

この瞬間、ギャラドスの戦闘不能が確定し。

「ギャラドス、コースアウトにより戦闘不能!」

「よって勝者……アローラ!」

審判の判決で、激闘は幕を閉じた。

"コースアウト"という……異例の事態によって。
 ▼ 867 ルーラ@2ごうしつのカギ 17/07/16 08:24:28 ID:HdUZrT.I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うそおお!?
グリーンこれは説教コースじゃないか…
支援
 ▼ 868 クーダ@おちゃ 17/07/16 11:28:29 ID:JsPlMk1E NGネーム登録 NGID登録 報告
滝登りとはなんだったのか(哲学)
 ▼ 869 カシャモ@むげんのふえ 17/07/16 11:55:30 ID:l/n55zrc NGネーム登録 NGID登録 報告
>>868
水纏ってタックルすんじゃね?(適当)
 ▼ 870 レザード@ふるびたかいず 17/07/16 12:00:58 ID:SdtTQlgE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いや、まだ飛び跳ねる持ってるかもしれん…!!!!
 ▼ 871 メルゴン@もりのヨウカン 17/07/16 18:33:54 ID:3bsy89GY NGネーム登録 NGID登録 報告
衝撃の結末
 ▼ 872 mTQB7XkZdk 17/07/17 02:28:43 ID:j7w.WiEY [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「そんな……グリーンが負けるなんて」

「くぉぉん……」

グリーン擁するカントー・ジョウトの敗北の一報を受けたコルニとルカリオは、彼の高い実力を知っているが故に、その事実に酷く驚く。

「……実に呆気ない終わり方でしたね」

「正直、がっかりです」

と、一方でそう吐き捨てたのはズミ。

彼は、グリーンのその無様な敗因に、心底失望したらしい。

彼の敗因……即ち"コースアウト"。

場外に落下してしまうという、油断が生み出した痛恨の失敗である。

それを、仮にも代表にスカウトされこの誉れ高きPWTに出場したグリーンが犯してしまった。

ズミは、彼のミスに軽蔑の眼差しを向ける。

この程度か……と。

……だが。
 ▼ 873 mTQB7XkZdk 17/07/17 02:30:33 ID:j7w.WiEY [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……っ!」

コルニは、そんな彼の冷ややかな発言に憤りを覚えた。

「グリーンのことを悪く言わないでください!」

「確かに、勝負には負けちゃったけど……それでも彼は最後まで戦い抜きました!」

「なのに、がっかりとか、呆気ないとか……そういうこと言われると凄く不愉快です!」

「くわっ!」

それは、仲間に対する侮辱への抗議だった。

勿論、グリーンが敗北してしまったのは揺らぎようのない事実だ。

また、その負け方も、確かに誉められたような内容では無かったのかもしれない。

だが……それでもコルニは、ズミが発したグリーンへの批判を黙って聞いてはいられなかった。

元々彼女は情が深い性格なので、ああいう冷めた意見は特に嫌悪しがちなのだろう。

……しかし。

「……不愉快、ですか」

「私としては、こんな無様なバトルを見せられたことの方が遥かに不愉快でしたがね」

ズミは、そんな彼女の言葉に揺らぐことはなく、寧ろ更に一蹴する。
 ▼ 874 mTQB7XkZdk 17/07/17 02:31:29 ID:j7w.WiEY [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「な、なにをぅ……!」

もう頭に来たっ!……と、脳内で叫んだコルニは、今にも振りかざしてしまいそうな握り拳を抑え込むので精一杯。

いくらムカつくからと言っても、流石に四天王に手を出す訳にはいかないのである……。

…………

……

「……お帰り、グリーン」

「……ははっ」

「あぁただいま……ってか?レッド」

「……」

選手用の観戦席で交わされたその会話に、笑いは無かった。

レッドとグリーンは、互いに低き声で語り合う。

「……残念、だったね」

「そうだな、残念……だったな」

「……」

レッドが話しかけても、グリーンの返事はどこか上の空で。

また、"残念"……という言葉の割には、彼は妙に清々しい表情をしている。
 ▼ 875 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/07/17 02:43:43 ID:VwsyGOHQ NGネーム登録 NGID登録 報告
四天王の分際でチャンピオン同士の戦いを上から目線で評するズミさん大好き
 ▼ 876 mTQB7XkZdk 17/07/17 02:44:59 ID:j7w.WiEY [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
それがレッドは……気に食わなかった。

「……なあ、グリーン」

「お前……負けを認めてないだろ?」

「……ッ!!」

その、不意にレッドが仕掛けてきた突然の鎌かけ。

図星を突かれたのか、グリーンは明らかに動揺の仕草を見せた。

「そういうところは、あまり昔と変わってないね」

……レッドが指摘したのは、そのグリーンのプライドの高さだった。

確かにグリーンは負けてしまったが、それは単純に実力で押しきられたからではない。

あくまで敗因は、ミヅキの機転を効かせた策略。

その事実が存在する時、一つの自尊心がグリーンの中に生まれる。

実力では彼女に勝っていた……という自尊心が。

すると、グリーンはその自尊心を守るため自分に言い聞かせる。

"今回は決して負けたわけではない"……と。

グリーンとは長い付き合いになるレッドは、そんな彼の心境を見抜いていた。
 ▼ 877 チュー@クチートナイト 17/07/17 06:28:52 ID:yjNiFlm. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さすレッ
支援
 ▼ 878 トム@かいふくのくすり 17/07/17 08:41:23 ID:ikjsDGYE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
良いゾ^〜これ
 ▼ 879 mTQB7XkZdk 17/07/18 02:40:07 ID:.awwNqf. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
内なる声をレッドに看破されたグリーン。

「……俺だって、分かってはいる」

彼はゆっくりと口を開き、実のところを彼に話す。

「分かってはいるんだよ」

「どんな手を使われようが負けは負け」

「負け犬の俺が吠えたところで、無様なだけってのはな……」

どうやら彼は、自分の発した言い訳が間違っていることを自覚しているらしく。

"負けを認めていない"……というレッドの鋭い言葉を突き付けられ冷静になったのか、正直にその事を彼に伝えた。

「……」

レッドは、そんな彼の話を黙って聞く。

……だが。

「……あぁクソ、情けねェ」

「すまねぇな、こんな下らん話に付き合わせて」

「次はお前らの番だろ?……応援してやっから行ってこいよ」

グリーンは自分の語りを"下らん"と自虐し吐き捨てた上で、半ば強引に話題を逸らした。
 ▼ 880 mTQB7XkZdk 17/07/18 02:44:00 ID:.awwNqf. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
そう……彼の言うように、一回戦第三試合・"カントー・ジョウトVSアローラ"が終了したことで、PWTは次なるステージへ。

二回戦・"カロスVSイッシュ"が、間もなく始まろうとしている。

「……ああ」

レッドは、グリーンの気持ちを何となく察した。

彼は彼なりに、今回のことを反省している。

だから、これ以上はもう何も言うまい。

そう思ったレッドは、彼の視界から失せるべく早々にその場を立ち去ろうとした。

……すると。

「……お前には"コルニ"が居るんだからな」

「俺が言えたことじゃねぇが……精々、アイツのヒーローでいてやるこったな」

「ま、それだけだ」

「じゃな、レッド……バイビー」

別れ際、グリーンはレッドの想い人の名を口にし。

決して彼女の期待を裏切らぬよう、世話を焼いて彼に釘を刺す。

そんな、激励にも似た忠告を言い残した後、グリーンはレッドとは反対方向に足を動かし、そのまま去っていったのだった……。
 ▼ 881 mTQB7XkZdk 17/07/18 02:48:32 ID:.awwNqf. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……っ」

彼のその言葉にレッドは少し困惑し、暫く沈黙。

だが、やがて。

「……ははっ」

ふと笑いが、彼の中にて込み上げてきた。

「ヒーロー……か」

「分かった」

「あの子に俺達のカッコいいとこ……見せてやるさ」

そして立てたのは誓い。

コルニという大切な人が出来たことで、背負うべき物が増えたレッドのトレーナー人生。

その集大成がこのPWTにあるとすれば。

かつての慢心し切っていた自分を打ち倒した、唯一無二の因縁の相手……ゴールドと。

並びに、親友のグリーンを見事に破って決勝へと駒を進めてみせたミヅキ。

その二人がレッドの前に立ち塞がるのはある意味必然であり、宿命と言えるだろう。

だとすると、レッドは二回戦では立ち止まれない。
 ▼ 882 ーナンス@ながねぎ 17/07/18 03:00:19 ID:cdbcadkg NGネーム登録 NGID登録 報告
終わんのかこれ
 ▼ 883 ザリガー@ダークメモリ 17/07/18 06:28:55 ID:tbP2EoaU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 884 リゴンZ@ひかりごけ 17/07/18 19:45:05 ID:wFOWDxiA NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>882
4試合でここまでレス番消化したとはいえ、途中から行数制限変わってるからな……

微妙だね
 ▼ 885 mTQB7XkZdk 17/07/19 01:56:39 ID:ZBEJs/rE [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
この後控えている強敵……Nとアイリスを倒してこそ、真に最強の名を取り戻す決戦に挑める。

「行こうか、カルム」

「ああ」

「ピカッ!」

いざ、彼らは戦いの場所へ。

大いなる歓声が待つ、世界最高の舞台へ。

歩く度に迫るは日射し。

徐々に自分達を包んでいくその白。

「……っ」

ふと、足が緊張のせいか止まりそうになる。

だが、彼らは恐れない。

恐れてはならない。

今日、大勢の人々に、ポケモントレーナーの真髄を見せるために。

「……よし」

「やるか……!」
 ▼ 886 mTQB7XkZdk 17/07/19 01:58:12 ID:ZBEJs/rE [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
決心したレッドは、帽子の鍔をつまみ、クイッと回して引き締める。

友の敗北を目の当たりにし、その無念の想いを背負って、彼は臨むのだ。

その足取りは重く、しかしそれでいて勇ましい。

この日、彼は"なる"と決める。

彼女の前で光輝く……"ヒーロー"に。

…………

……

「……さぁ!皆様お待たせいたしましたッ!」

「次はいよいよ第二回戦!」

「カロスvsイッシュであります!」

実況による、相も変わらない熱狂的なアナウンス。

応じる観客達は、より一層熱気を舞い上がらせて雄叫びをあげる。

そして、会場の中心部……バトルフィールドにて、各地方代表の選手達は既に対峙していた。

「…………」

(……ついに、彼とのバトルか)
 ▼ 887 mTQB7XkZdk 17/07/19 01:59:25 ID:ZBEJs/rE [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
("N"……)

レッドの視線は、ある一人のトレーナーへと向けられていた。

イッシュ代表の、アイリスにスカウトされこの大会に出場した謎の青年……"N"だ。

その経歴は一切不詳。

しかし、昨日の戦いで彼について分かったことが一つだけある。

それは……とてつもなく高い実力を持っている、ということだ。

ミクリの強力な水ポケモン達を圧倒するあの戦いぶりは、多くのトレーナー達の度肝を抜いた。

その"トレーナー達"の中には無論、レッドも含まれている。

(……あのアイリスって子には悪いけど、俺の目から見ればNの方がトレーナーとしての実力は卓越しているモノがある)

(なのに何故、彼は……あまりにも"知られていない"んだ?)

そう。

確かにNの強さは本物だ。

他のチャンピオン達に全く引けを取らない、まさに化け物クラスのトレーナーである。

だが……だからこそ、不自然なのだ。

なぜ、あれほどの力を持っていながら、彼は……Nは、無名なのだろう。
 ▼ 888 mTQB7XkZdk 17/07/19 02:00:19 ID:ZBEJs/rE [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……」

その理由を考えていた時、ふとレッドはNの表情を改めて見てみる。

その目は、やはりというかなんというか……生気を宿してはいなかった。

すると、レッドの脳裏に一つの言葉が過る。

それは____

____"罪"。

……何故かは分からないが、何となく思い浮かんでしまった。

だが、それはあまりにも行き過ぎた邪推。

レッドはすぐに振り払い、意識を戦いに戻す。

何にしてもイッシュの二人は、決勝の前に立ち塞がる最強の関門だ。

とにかく奮戦し、勝利をもぎ取らなくてはならない。

余計な事にうつつを抜かしていると、あっという間に足元を掬われることだろう。

「準備は良いか?レッド」

相棒・カルムの最終確認。

勿論レッドは。

「ああ」
 ▼ 889 mTQB7XkZdk 17/07/19 02:02:43 ID:ZBEJs/rE [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
失礼します。

SSがこのスレで終わるのかという疑問についてでございますが、多分終わりません。ごめんなさい。

ラストと言っておいてアレなのですが、次スレは立てることになると思います……(´・ω・`)
 ▼ 890 リゴンZ@マックスアップ 17/07/19 05:59:19 ID:hcHnYE2A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やったー
これで遠慮なく支援ができるぜ
 ▼ 891 ッピ@パワーアンクル 17/07/19 17:42:40 ID:.Dfcnr0k NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カルム「ラストだ(終わるとは言ってない)」

まだ終わって欲しくないから全然いいけど
 ▼ 892 mTQB7XkZdk 17/07/20 02:34:05 ID:7PYKi89o [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「勝とう、カルム」

「ピカピ!」

快く呼応する。

…………

……

「……よぉし!やっちゃえレッドーっ!」

「くわぉーん!」

興奮の渦と化した観客席。

レッドのガールフレンドであるコルニは、彼を応援すべく席から身を乗り出し、体を激しく動かしてパッション溢れる声援を送っていた。

また、その声も出来るだけ大きく、精一杯張り上げている。

「……やはり、レッドさんが出る時の貴女はテンションの方が段違いに高いですね」

「えっ!そ、そうかなぁ……」

ズミの指摘にギクリという擬音を覗かせながら分かりやすく困惑したコルニは、曖昧な返事でひとまず茶を濁す。

彼女は相変わらず、レッドと交際していることをズミに隠したままである。

もはやコルニ自身でも何故隠しているのか分からなくなっていたが、ここまで来ると今更バラすのも面倒。
 ▼ 893 mTQB7XkZdk 17/07/20 02:35:28 ID:7PYKi89o [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ならばいっそ、一生知られないままで良い。

とりあえず、今は彼への応援に注力することの方が重要だ。

コルニは、ひたすらエールを送る。

彼が戦い続ける限り、そう……永遠に。

…………

……

「それでは……バトル・スタート!」

実況による、高らかな試合開始の宣言。

トレーナー達はそれぞれ、ボールの中のモンスターに先陣と想いを託し。

「さぁ……行くよ、僕のトモダチ!」

「頑張ってきてぇっ!」

大きく振りかぶり、気勢昂りし一投を放つ。

まずはイッシュ代表、Nの先鋒。

「いってくれ、"タブンネ"!」

……そのポケモンが得意とするのは癒しの術。

覚える技、備えし特性ともに回復に特化しており、自身は勿論、他のポケモンにもその恩恵を与えることが可能。
 ▼ 894 mTQB7XkZdk 17/07/20 02:37:05 ID:7PYKi89o [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
また、タブンネは"ヒヤリングポケモン"という分類であり、それから察せる通り、聴力が格段に高い。

「……タッブブ」

だが。

このタブンネは、どこか下卑た笑みをチラつかせていた。

本来タブンネは、もっと優しく儚げな鳴き声のポケモンなのだが……。

……が、それを疑問に思う間もなく、今度はアイリスがポケモンを出す番がやって来た。

彼女が選んだポケモンは。

「いって!"ボスゴドラ"!!」

白金の装甲を纏いし鉄壁の怪獣……"ボスゴドラ"。

その防御力は全てのポケモンの中でも抜群を誇る。

「ゴォォォォッ!!」

強き力で他を屈服させ、山一つをテリトリーにし、彼らの縄張りを荒らした者には容赦なき鋼の鉄槌を浴びせる。

だが、彼の限界はまだこんなものじゃない。

ボスゴドラは、更に進化を越える。

「いくよ、ボスゴドラっ!」

「"メガシンカ"!」
 ▼ 895 ラマネロ@まんぷくおこう 17/07/20 05:19:50 ID:FCYj2hKk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もしかして二体ともメガ進化
 ▼ 896 レベース@ねっこのカセキ 17/07/20 06:05:58 ID:BZhqyDMo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 897 ンペルト@ノメルのみ 17/07/20 10:37:03 ID:b0EnrIsc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 898 mTQB7XkZdk 17/07/21 02:14:48 ID:YE8Qo/IE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
アイリスの一声で、ボスゴドラの体は白き瞬きに満ちていく……。

「ゴォォォァッ!!」

その鎧は、更に層を重ねられる。

と、同時に、身に纏わり付きし岩を削ぐ。

彼がメガシンカの過程で高めるは、鋼の純度。

「ゴォォォォ……」

ついに完成した鉄壁の怪物。

"メガボスゴドラ"。

アイリスが一手目にしていきなり放った、強力なメガシンカポケモン……!

「……っ」

これまで幾度となくメガシンカと戦ってきたレッドだが、やはり彼は"この感覚"に慣れることができない。

人との絆が生み出せし傑物たる彼らと対峙した時、レッドは常に"代えのない戦慄"に襲われる。

ザクロのメガバンギラスにしろ、ハンターのメガヘルガーにしろ、彼らはそれぞれ圧倒的な"個"を有しているのだ。

様々なトレーナーと絆を結び、そして成されるメガシンカ……その多様性は、無限と肩を並べる。

故に、その際感じ取れる戦慄もまた、千差万別となるわけで。
 ▼ 899 mTQB7XkZdk 17/07/21 02:15:52 ID:YE8Qo/IE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
それでいて皆共通しているのは、とてつもなく強いということ。

無論、アイリスのメガボスゴドラとて例外ではない。

先刻のバトルでは"Zワザ"なんて妙技も披露されたが……やはりメガシンカはそれにも霞むことの無い唯一無二の力だ。

到底、侮ることなどできない。

「……さぁ、やるぜレッド!」

レッドと手を組みしカルムは、威勢良く声をあげて出撃する。

ボールを投げるその腕は、如何なる戦慄や恐怖、緊迫にも全く縛られてない。

迷いをかなぐり捨てた全力投球。

繰り出されたポケモンは。

「いけ!」

「"ニンフィア"!」

……数多の進化の遺伝子をその身に宿す珍しいポケモン・"イーブイ"が妖精に至った姿。

彼女は、リボンのように伸びて靡く可愛らしい触角を巧みに操ることができる。

幸せなる時には、愛するトレーナーの腕にそれを巻き付け共に歩き。

動乱の時には、それから発せられる安らぎの波導で争いを鎮め。

しかしそれでも争わざるを得ない時には、その波導で戦意を削ぎ、そして生じた隙を突いて敵を襲う。
 ▼ 900 mTQB7XkZdk 17/07/21 02:17:30 ID:YE8Qo/IE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ふぃぃぁっ♪」

そのキュートな見た目から、彼女の虜となったファンはかなり多い。

言うなればニンフィアは、戦場に咲く一輪の可憐な花……と言ったところか。

「……よし!」

さて。

最後はいよいよ、レッドの番。

「俺達の力となってくれ……!」

……これからレッドが繰り出すポケモンだが。

"彼"は……今回のレッドのカロス旅には連れてこられなかったポケモンだった。

言ってみれば彼は、今日限りの強化メンバー。

このカロスの地にて、久々にレッドと共にイッシュに戦いを挑む。

「____"エーフィ"!」

……彼もまたニンフィアと同じく、イーブイから多岐にわたる進化形の内が一つ。

彼の力は、知に溢れし"超能力"である。

全身の細かな体毛から風を感じ取ることで、ありとあらゆる事象を予知することができるのだ。
 ▼ 901 タチマル@ゴスのみ 17/07/21 05:58:12 ID:DSyEIpGI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おおエーフィ!
支援
 ▼ 902 ラナクシ@ダートじてんしゃ 17/07/22 00:43:15 ID:37WK.s8U NGネーム登録 NGID登録 報告
解雇されたエーフィ登場にラプラスさん激怒
 ▼ 903 ョロゾ@そうこのカギ 17/07/23 00:25:32 ID:6db/pEEU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 904 トシゲッコウガ@がくしゅうそうち 17/07/23 00:33:36 ID:gZjwS14Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガボスゴくっそ重い選出
 ▼ 905 mTQB7XkZdk 17/07/23 00:44:42 ID:aRv4Ro3w [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
"エーフィ"は、力を認めたトレーナーに対しては至極忠実とされている。

その卓越した未来予知能力は、信頼を寄せる人間を危険から守り抜くために発達したとも。

「……フィォォ」

チーム・レッドのダークホース……"エーフィ"。

彼とニンフィアのコンビは果たして、イッシュの屈強なる軍勢を退けることができるのか。

「さあ!いよいよ"エンバイロメント"が制定されます!」

この大会において恒例、"エンバイロメント"。

雪山、船、断崖と来て、次は……。

「……っ」

……レッドはふと、頭上から強い光が差し込んでいるのを感じ取る。

彼が視線を空に移した瞬間、広がったのは、これ以上なく澄み切った"青天"だった。

そして、"太陽"もまた、これ以上なく燦々と下界を強く照らしつけている。

また、反対に下を覗いてみると……。

「……雲!?」

……そう。
 ▼ 906 mTQB7XkZdk 17/07/23 00:47:09 ID:aRv4Ro3w [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼らが今立っているのは、透明なガラスで作られたバトルフィールドだったが……。

驚くべき事にその下には、真っ白な"雲"が浮かんでいたのだった。

「今回のエンバイロメントは、"雲海"!」

「このエンバイロメントでも先程のように、バトルフィールドから落下してしまったポケモンは強制的に瀕死となります!」

「また、雲の上から照らす強き太陽は、炎の威力を高めてくれることでしょう!」

……"雲海"。

雲の上の、神秘的なその世界。

まるで天国か何かと錯覚してしまうような美しい景色があたり一面を埋め尽くしているが、戦場としてここで戦う際の難易度は非常に高い。

足場のガラス張りのバトルフィールド以外は全てアウトゾーンなので、コースアウトとなる危険性は断崖よりも遥かに高くなる。

また、実況の言葉から察せる様に、このエンバイロメントは"ひでり"の効果も持たらしている。

レッドとカルムは共に"ほのお"のリザードンを持っているため、是非とも有効活用したいところだが。

「よし……先手を打つ!」

バトル開始直後、先に切り込んだのはレッドだった。

「エーフィ、タブンネに"サイコキネシス"!」

「フィオ!」
 ▼ 907 mTQB7XkZdk 17/07/23 00:48:11 ID:aRv4Ro3w [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
エーフィは、深き紫に染まりし瞳を妖しく光らせ、念力を集中させる。

「フィォォ」

標的はタブンネ。

強力な"サイコキネシス"を、タブンネ目掛けて放出した。

目に見えぬその力は、宙を伝ってタブンネに命中。

「タブっ……」

サイコキネシスの傀儡と化したタブンネは、そのままエーフィの意のままに操られ____

「……タブゥ?」

____なかった。

「フィォ!?」

「何!?」

なんとサイコキネシスは、タブンネには効かなかった。

「バカな……」

タイプ相性上、"エスパー"の"サイコキネシス"は"ノーマル"のタブンネにダメージを与えることが可能。

だが、今この現実は、その法則を真っ向から完全に否定した。
 ▼ 908 mTQB7XkZdk 17/07/23 00:49:15 ID:aRv4Ro3w [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
まさか、エーフィとタブンネとの間に力の差がありすぎると言うわけでもあるまい。

ともすれば、エーフィのサイコキネシスを浴びてもなおタブンネが涼しい表情をしているというのは不可解な事態であり。

レッドにとってそれは、狼狽えざるを得ないケース。

「……タブブッ」

そんな彼を嘲笑うタブンネ。

見るからにこのタブンネは性悪である。

「この……!」

「ならこれはどうだ!"マジカルシャイン"!」

「フィオ!」

とにかく、エスパーが効かないのであれば、別のタイプで試してみるのみ。

今度は"フェアリー"タイプの技・"マジカルシャイン"で、タブンネに一矢報いるべく攻撃する。

妖しき精霊の光が、タブンネに襲いかかった。

……すると。

「避けてくれ!」

「タブッ」
 ▼ 909 mTQB7XkZdk 17/07/23 00:50:31 ID:aRv4Ro3w [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
……ここでNから、タブンネへ初めての指示。

タブンネに、"マジカルシャイン"を回避させた。

「……!」

わざわざマジカルシャインを避けさせたということは、当たればタブンネはダメージを受けてしまうということ。

"サイコキネシス"が効かなかった時、レッドは一瞬タブンネの無敵を恐れたが……どうやら、そんなことはないらしい。

突破口がとりあえず"マジカルシャイン"にあると知ったレッドの次の行動は早かった。

「まだまだ!エーフィ、乱射しろ!」

「フィォ!」

指示を受けたエーフィは、"マジカルシャイン"を怒濤の三連発。

「くっ……!」

張り巡らされた弾幕には、タブンネの逃げ道が用意されていない。

強襲せし不可避の砲撃にNが狼狽えていると、そこへ……。

「ボスゴドラ、タブンネを守って!」

「ゴォ!」

……アイリスのボスゴドラが、彼らを手助けすべく駆け出した。
 ▼ 910 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/07/23 01:12:57 ID:/M56nizQ NGネーム登録 NGID登録 報告
Nの手持ちはこれで完全に割れたのか

支援
 ▼ 911 ビシラス@ロゼルのみ 17/07/23 06:50:47 ID:kz3.EmK6 NGネーム登録 NGID登録 報告
あれ?エーフィにマジカルシャインってことはカルムか誰かに技マシン貰ったって事でいいのかな?
 ▼ 912 ワシ@ぼうごパッド 17/07/23 07:31:56 ID:p6TWdn8o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 913 ーミラー@スチールメモリ 17/07/23 09:19:04 ID:ncq2wFMo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゾロアークパイセン…
 ▼ 914 mTQB7XkZdk 17/07/24 02:12:20 ID:RsAPtSiU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ボスゴドラはタブンネの眼前に立ちはだかり、盾となりて、襲い来る三連マジカルシャインからタブンネを守った。

「ゴォォォォ!」

ボスゴドラは"はがね"タイプ。

"フェアリー"のマジカルシャインなら、まともに受けても大したダメージにはならない。

「っ!」

ことごとく邪魔が入り、少し苛立ちを見せるレッド。

そして、ボスゴドラの救援によって守られたタブンネは、次のNの指示によって攻めへと転じる。

「タブンネ、エーフィに"ナイトバースト"!」

「タブゥ!」

瞬間、タブンネが放ったのは、光を宿せし妖精の技____

____ではなく。

そういったものとは無縁、正反対の属性……"闇"を宿した、暗黒の一撃だった。

「え!?」

「フィォ!?」

その様は、あまりにもギャップのありすぎる光景だった。
 ▼ 915 mTQB7XkZdk 17/07/24 02:16:27 ID:RsAPtSiU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
まさか、あの可愛らしい容姿のタブンネが、こんなにも似つかわしくない邪悪な波導を打ち出してくるなんて。

しかも、あのドス黒いオーラを見るに、"ナイトバースト"は"エスパー"タイプのエーフィが不得意とする"あく"タイプの技と予測される。

とすると、レッドのエーフィがアレを受けたらひとたまりも無い。

……無いのだが。

「____フィォォォッ!?」

……タブンネは"あく"タイプの技を打ってくるという異色の事態に思わず意表を突かれたレッドは、指示が遅れてしまった。

結果、エーフィに"ナイトバースト"をモロに受けさせてしまう。

「し、しまった……ッ!」

これはレッドにとって痛恨の一撃であり、致命的ミス。

一方で、ボスゴドラに介入する隙を与えてしまったカルムは、すぐさまレッドの援護に入る。

(……タブンネには"エスパー"の技が効かず、逆に"フェアリー"の技を明らかに警戒していた)

(そして、あのナイトバーストは……間違いない)

(なら"これ"で……奴の"化けの皮"を剥がしてやる!)

一連の攻防で、どうやらカルムはこの謎のタブンネに対して一つの"確信"を得たらしく。

「ニンフィア、"ハイパーボイス"ッ!」
 ▼ 916 mTQB7XkZdk 17/07/24 02:18:33 ID:RsAPtSiU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ふぃあ♪」

カルムは満を持して、その技の名を叫んだ。

"ハイパーボイス"。

それは"ノーマル"タイプで、相手全体を強力な音波で攻撃する技だが……。

……ニンフィアの特性"フェアリースキン"によって、ハイパーボイスは更に妖精の属性を得る。

「ふぃぁぁあああっ!」

甲高く、鼓膜を劈くかのような超音波が鳴り響いた。

「ゴォ!?」

「タブゥ!?」

二匹の耳の中で、刃先の鋭い音が反響する。

反射的に彼らは掌で耳に蓋をし塞いだが、時すでに遅し。

広域に及んだ妖精の歌声は、"はがね"のボスゴドラはともかくとして、タブンネには確かなダメージを与えた。

「タ……タブゥ……ッッ!!」

……すると。

「タブゥゥゥァァッ!!」
 ▼ 917 mTQB7XkZdk 17/07/24 02:20:33 ID:RsAPtSiU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ニンフィアの放ったハイパーボイスが予想以上に効いたのか、タブンネは突然頭を抱えて苦しみだした。

苦悶に表情を歪ませ、その場で激しくよろめく。

その慟哭の声量は凄まじく、それは最早、ニンフィアのハイパーボイスさえも軽く上回る程であった。

「タブゥゥゥッ!!」

そして徐々に、タブンネの体からは赤みのかかった黒い煙が立ち込めてくる。

……タブンネの様子が、明らかにおかしい。

ハイパーボイスを食らって予想以上に苦しむのは、まだ理解の範疇である。

だが、神聖なる妖精の痛撃を食らって、あのような禍々しい障気を吐き出すのは理に反していると言える。

「な、なんだ……!?」

やがて漂いし黒煙に飲まれ、暗闇へと消えたタブンネ。

その様を、レッドは冷や汗を流しながら刮目していた。

「……タブゥ……ァアア____」

「____ァアアーック」

刹那。

"変わった"。
 ▼ 918 クリン@デンキZ 17/07/24 06:03:06 ID:9J/mmAiA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そういうことかー
支援
 ▼ 919 mTQB7XkZdk 17/07/25 03:06:05 ID:3qPMXopo [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
タブンネの……いや。

"タブンネだった者"の鳴き声が。

「ゾロォォーーアック!!」

温和から一転、邪悪と化して、雲海の戦場にて響き渡る。

そして、ようやく消え失せた黒雲から姿を現したのは。

赤黒い鬣と鋭い目付き、シュッとしなやかな全身を持ち合わせる二足歩行の獣。

その容姿、性質は共に"狐"と非常に似通っている。

彼は、"化かす"のだ。

彼は人間にも、ポケモンにも、何にでもなることが出来る。

タブンネという仮初めの姿を今ここに捨て、悪意に満ちた真の姿を晒したその者の名は"ゾロアーク"。

またの名を、"幻影の覇者"。

敵を化かし、騙し、戦場を撹乱する……影武者である。

「ゾロァァッ!」

彼に悪びれている様子は全くない。

寧ろ、見事に術中に嵌まっていたレッドとエーフィを"愚かだ"と嘲笑っているかのようだ。
 ▼ 920 mTQB7XkZdk 17/07/25 03:08:35 ID:3qPMXopo [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……くっ」

「なるほど……道理で"サイコキネシス"が効かなかった訳だな」

そう。

レッドが納得したように、今までタブンネに"サイコキネシス"が効かなかったことも、タブンネの正体が"あく"タイプのゾロアークだと判明したことで全て辻褄が合う。

まず"エスパー"はタイプ相性上、"あく"に対しては全くダメージを与えることができない。

そしてゾロアークは、ポケモンの姿形を完全にコピーできるが、能力やタイプといった部分までは変化しない。

つまりゾロアークは、"あく"タイプを残したまま姿を自在に変化させるのだ。

"サイコキネシス"が偽タブンネに効かなかったのは、そういう訳である。

だが……だからこそ、タブンネだったゾロアークはエーフィの"マジカルシャイン"を恐れた。

それは、"フェアリー"が"あく"に対して効果抜群だからである。

確かに、"エスパー"しか属性として持たないエーフィでは、"フェアリー"の威力を最大限には発揮できないが……。

……それでも、"あく"のゾロアークにとっては十分に重たい一撃となり得る。

しかし、それはエーフィにとっても同じこと。

「……正体がバレてしまったようだね」

「だけど……それでも有利なのは、依然として僕のゾロアークの方さ」
 ▼ 921 mTQB7XkZdk 17/07/25 03:18:48 ID:3qPMXopo [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
Nのその自信の裏付けとなっているのは、やはりゾロアークが有する"あく"の属性だろう。

これを持っているだけで、エーフィの主砲である"エスパー"を封じ込めることができる上に、エーフィに対して効果抜群の技を最大限の威力で使いこなせる。

ゾロアークが"フェアリー"を恐れるのと同じように、エーフィもまた、彼の"あく"を警戒せざるを得ないのだ。

「ゾロォ……」

「フィォ……」

今、ゾロアークとエーフィは、互いが互いに鋭利な刃を突きつけ合っている状態と言える。

ゾロアークは"ナイトバースト"を。

エーフィは"マジカルシャイン"を。

白昼の中での緊迫が、眼下の雲と共にゆらりと漂う。

「……エーフィ、"マジカルシャイン"!」

「ゾロアーク、"ナイトバースト"!」

「フィオ!」

「ゾロァァッ!」

トレーナーの指示によって、二匹は同時にその刃を振りかざした。

妖精と悪、解き放たれた二つの属性宿せし砲弾は電光石火の速度で宙を駆け抜け、やがて接触。
 ▼ 922 ザードン@エスパーZ 17/07/25 06:01:05 ID:/Hzn.Y8w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すごいなあ
支援
 ▼ 923 クケイル@わすれもの 17/07/25 22:48:47 ID:b6JOktuk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 924 mTQB7XkZdk 17/07/26 03:10:39 ID:FsBTxplk [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
聖魔は空中で拮抗する。

「フィォォ……!」

「ゾロォォォ……ッ!」

二匹は、己の放った技を勝たせるべく、足を精一杯踏ん張り力を込める。

しかしその二つのエネルギー弾は、刹那にしか及ばなかった鍔迫り合いの末に、互いに相殺し合って消滅。

混じり合った光と闇の残滓だけが虚しくガラスに飛び散る結果に。

「……フィォ!」

「ゾロォァッ!」

二匹の力量は今のところ互角である。

しかしだからこそ、どちらかが先にダメージを受けてしまえば、戦局は重石の乗ったシーソーの如く一瞬にしてグラリと偏るだろう。

互いの実力がほぼ等しい時、より手負いの方が不利になっていくのは戦いにおいて常識であり必然。

レッドもNも、そのことは十分把握している。

その上で彼らは、"工夫"をしなければならない。

「エーフィ、ゾロアークに"どろかけ"!」

「フィォッ!」
 ▼ 925 mTQB7XkZdk 17/07/26 03:13:08 ID:FsBTxplk [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
例えば、今のレッドの指示。

"どろかけ"は、まさに読んで字の如く、相手に泥を引っかける技である。

泥そのものが与えるダメージは非常に乏しい、が、泥は被弾した者の視界を奪う。

要は"目潰し"の役割を持っている訳だ。

レッドの狙いとしては、相手の技の命中率を下げ、出来る限りこちらが受けるダメージを減らしたい考えである。

「フィォォッ!!」

エーフィはレッドの指示通り、ゾロアークに"どろかけ"を実行した。

しかし、ここで一つ"疑問"が発生することだろう。

このまっ平らで透明なガラス張りの床の何処に、泥なんてものがあるというのか……という、疑問が。

そこで結論から言うと、ポケモンの出す技はその場の環境には左右されない。

そのポケモンが"どろかけ"を覚えていて、なおかつ"どろかけ"を指示されれば……。

「……フィォ!」

……"そのための泥"は、どこからともなく自然と沸いて出てくる。

ガラス面から顕現したその焦げ茶色の泥を、エーフィはゾロアークにぶつけるべくその細き足で蹴飛ばした。

アーチを描いて飛んでいく泥。
 ▼ 926 mTQB7XkZdk 17/07/26 03:14:11 ID:FsBTxplk [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
その過程でそれはびちゃびちゃと飛散し、伴って辺りが酷く汚れていく。

そして泥はやがて、標的たるゾロアークに接近。

が、Nはその奇襲に動揺することなく。

「避けるんだ!」

「ゾロッ!」

冷静な対応でゾロアークに"どろかけ"を回避させ、この場を切り抜ける。

「続けてエーフィに"かえんほうしゃ"!」

「ゾロアッ!」

宙に退避したゾロアークは、その体勢のまま大きく息を吸い込み、腹を膨らませた後。

「……ロォァァァァァッ!!」

体内に溜め込んだ火炎を一気に放射した。

"かえんほうしゃ"は"ほのお"タイプの技なので、雲海の天候"ひでり"の恩恵を受ける。

威力が増幅した燃え盛る熱線が、エーフィに猛炎の牙をむく。

「くっ……エーフィ、"サイコキネシス"でねじ曲げろ!」

「フィォッ!」
 ▼ 927 ターミー@おちゃ 17/07/26 06:33:05 ID:xOeO6nwc NGネーム登録 NGID登録 報告
泥なんてものがあるのかw
支援
 ▼ 928 ガボーマンダ@ナナのみ 17/07/26 15:35:04 ID:l8OV7pjw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 929 リーセン@べにいろのたま 17/07/26 22:58:53 ID:vu0.rCP6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふしぎなふしぎないきもの、か
 ▼ 930 mTQB7XkZdk 17/07/27 02:40:36 ID:vwtMzixA [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
一方で対抗を強いられたレッドは、エーフィに念力を使わせ"かえんほうしゃ"の軌道を逸らす作戦に出る。

エーフィが念じた瞬間、"かえんほうしゃ"は一度その動きを止めた。

……だが。

「……フィオッ!?」

"ひでり"の加護によって強力になっている"かえんほうしゃ"は、エーフィの"サイコキネシス"では抑えきれなかった。

束の間の静止は虚しく砕け散り、炎は再び動き出す。

威力を軽減することは出来たようだが、"かえんほうしゃ"は無情にも"サイコキネシス"を貫通してしまった。

「フィォッ……!」

そして、細かい飛沫に分断された"かえんほうしゃ"は、エーフィに命中。

そのダメージこそ大したことはなかったものの……。

「……フィォォッ」

……エーフィの体には、暫く取れそうも無い"やけど"の跡が残ってしまった。

「エーフィ!」

"やけど"の状態になってしまったポケモンは、時間が経過する毎に体力がすり減っていくようになる。

エーフィとしては、これはかなり不利な状況と言えるだろう。
 ▼ 931 mTQB7XkZdk 17/07/27 02:41:25 ID:vwtMzixA [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
力が互角の者同士での戦いでは、より体力の絶対値が少ない方が瀕死になるリスクは当然高くなる。

そういう意味で言うと、少しずつとはいえ体力が減少していく状態異常にかかってしまったエーフィはお世辞にも有利な立場とは到底言えない。

……だが。

「……フィオッ!」

"やけど"に陥ったエーフィは、次の瞬間ゾロアークに何らかの"念"を送った。

一瞬赤く光った瞳から発せられたそれは、光の速さでゾロアークに伝達。

すると……。

「……ゾロッ!?」

……なんと。

「ゾロアーク!?」

「ゾロォ……」

……ゾロアークまで"やけど"状態になってしまった。

「……"シンクロ"、だな」

観戦席のグリーンはその名を口にする。

"シンクロ"。
 ▼ 932 mTQB7XkZdk 17/07/27 02:42:21 ID:vwtMzixA [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
それは特性の一つであり、レッドのエーフィが持っている能力。

その効果は、『特性所持者がかかってしまった状態異常を、その状態異常にさせたポケモンに写す』というもの。

今回のケースでは、"かえんほうしゃ"を使ってエーフィに"やけど"させたゾロアークが、"シンクロ"の効果を受けて"やけど"になった。

「……どうやら、尚も互角みたいだね」

「ゾロッ……」

Nは、火傷に苛まれ苦しむゾロアークを心配しつつ、未だ一進一退ばかりが続くこのバトルに若干の"運命"を感じる。

一時はエーフィに"やけど"を負わせることができ、こちらが有利になったと思ったN。

だが、エーフィの特性がここぞとばかりに発動したことでその安心は没収され、再び均衡が正される形に。

そうした攻防の中で、彼はそこに"定め"のようなモノがある気がしてならない。

ふと、Nはレッドの方に目を向けた。

「……そうか」

次に得たのは、少しばかりの理解。

「君は、"彼"に……」

「……いや」

「寧ろどちらかというと、"僕"に……似てるのかな」
 ▼ 933 ブルモ@フライングメモリ 17/07/27 06:00:37 ID:ao8cuMwA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 934 mTQB7XkZdk 17/07/28 03:20:15 ID:Dkvd0FrU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

……レッドとNが拮抗する戦いを見せる中で、それと並ぶもう一つのバトルがあった。

それは。

「____ボスゴドラ、ニンフィアに"アイアンヘッド"!」

「ゴォォォォッ!!」

イッシュの幼きチャンピオン・アイリスと。

「かわせ、ニンフィア!」

「ふぃあっ!」

カロスの若きチャンピオン・カルムが繰り広げる、その激闘である。

二人は、チャンピオンの座についてからまだ間もないという点で共通点がある。

だがその実力は、ベテランのワタルやシロナにも一切引けを取っていない。

アイリスのボスゴドラが放つ鋼鉄の頭突きは、当たりさえすれば如何なる物も破壊する威力を誇っているだろうし。

対するカルムのニンフィアの身のこなしは素早く、並大抵のポケモンではその俊敏な動きに付いていけないだろう。

全てが一線を画した別次元、それがPWT。
 ▼ 935 mTQB7XkZdk 17/07/28 03:21:26 ID:Dkvd0FrU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
その最高の舞台を目の当たりにする観客席の彼らは、皆一様に名だたるチャンピオン達にこれ以上無い憧れを抱いていた。

「レッドもカルムも凄いね、ルカリオっ」

「くわん!」

沸きに沸く観客席、その有象無象の歓声の中に混じるコルニとルカリオは、今一度カロス代表コンビの強さを再確認する。

「ルカリオも、こういう戦いは見てるだけで"経験"になったりするから、よぉく観察しておくんだよ?」

「くわおん!」

と、ルカリオにはそう言い放ったコルニ。

しかし、当の彼女はというと。

「…………」

(……はぁ〜っ、レッド格好いいなぁ〜っ)

……肝心の戦いよりも寧ろ、レッドの方に釘付けになっている節が見られる。

「……くわん?」

ルカリオは、そんなコルニを冷ややかなジト目で見つめた。

「はっ……や、やーねルカリオったら!」

「アタシだってそんな、四六時中男のことしか考えてないような女じゃ____」
 ▼ 936 mTQB7XkZdk 17/07/28 03:27:03 ID:Dkvd0FrU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
……と。

半ば自覚も入り交じってそうな、そんな彼女の浅ましい弁明の途中で。

「……っ」

コルニらの目の前を突然、一人の"少女"が横切ろうとしていた。

「す、すみません……失礼します」

少女は、人々がごった返している観客席の狭い通路を横歩きで通っている。

その様子を見ると彼女は、自分の席を探して会場を右往左往しているようだ。

「あっいえ、どうぞ」

一方で、既に席に座っているコルニはそんな彼女に配慮して、伸ばしていた足を引き、出来る限り縮める。

「くわん!」

ルカリオも同様。

「ありがとうございま____」

……と、少女がコルニ達にお礼を言おうとしたその時。

少女は、コルニとその横に座るルカリオを見て……。

「……!」
 ▼ 937 mTQB7XkZdk 17/07/28 03:29:17 ID:Dkvd0FrU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あなた……コルニさんじゃないですか!」

……唐突に、その名を口にしたのだった。

「へっ?」

「くわん?」

名を呼ばれ、一瞬きょとんという表情を浮かべるコルニ。

確かに彼女は現在修行中の身とはいえ、ここカロスのジムリーダーなので、自分がそこそこの有名人であるという自覚はある。

が……この子の反応からすると、どうやらコルニと彼女はそれ以前にそもそも"知り合い"であるらしい。

コルニは瞬間、模索した。

自らの脳、そのどこかにあるハズの"この少女の記憶"を。

その際、最初にコルニが確認したのは彼女の容姿だった。

まず下から見ていくと、黒のブーツから太ももの中間あたりまでは、同じく黒のニーソックスが足の割合を占めており。

下は赤いミニスカート、上は黒のノースリーブを着用していて、ふと目についた双丘が自分のそれよりも"でかい"と悟った時、コルニは若干の不快感を示した。

とまあそれはさておき、その顔つきは非常に端正で、知的な印象を受ける。

髪の毛はブロンドカラーのポニーテールで、帽子は付けていない。
 ▼ 938 ーピッグ@フェアリーメモリ 17/07/28 03:49:55 ID:oTRyWXRE NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ライバルセレナか
 ▼ 939 ドクイン@バコウのみ 17/07/28 05:52:26 ID:2UQygGIg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 940 mTQB7XkZdk 17/07/29 02:51:47 ID:cZ1ysZEQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………。

「……あっ!」

どうやらコルニは、以上の外面的特徴から過去の記憶を分析し、そして思い出したようだ。

彼女の名を。

「もしかして____」

「____"セレナ"さん!?」

……"セレナ"。

それが、この少女の名前。

「久しぶり!アタシ達のこと覚えててくれてたんだ」

「勿論ですよ」

セレナとコルニは面識があり、互いが互いを認知した途端、会話が少し崩れる。

「……と、私の席はルカリオの隣みたいですね」

「失礼します」

「くわん!」

セレナは丁寧な言葉遣いでルカリオにそう声かけをした後、彼の左隣の空席に腰をかけた。
 ▼ 941 mTQB7XkZdk 17/07/29 02:52:25 ID:cZ1ysZEQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
これで、左からセレナ、ルカリオ、コルニ、ズミの席順となる。

「いやぁ、まさかこんな所で再会するなんて」

「くわん!」

……コルニとセレナの関係は、コルニとカルムのそれと深く関わりがある。

と言うのも、それは"メガシンカの継承者"としてのコルニが、カルムにメガシンカの試練を課した時のこと。

その前にカルムは一回、とある人物と"メガシンカの会得"を賭けたポケモンバトルをしている。

実はその人物こそが、今ルカリオの隣に座っているセレナなのだ。

…………

……

セレナは、カルムと全くの同時期に、そして彼と同じ街でポケモントレーナーになった少女。

彼と彼女はそれぞれ旅に出て、互いに競い、互いに高め合い……そんな、まさに絵に描いたようなライバル関係だった。

そして、その旅路の途中で彼らの道は交わる。

先述の、メガシンカ争奪戦だ。

二人は共に、己の死力を尽くして戦った。

勝った方が"メガシンカ"という新たな力を得て。
 ▼ 942 mTQB7XkZdk 17/07/29 02:53:06 ID:cZ1ysZEQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
逆に負けた者には、手に入らなかった無念しか残らない。

残酷なようで、しかし理に適ったそのバトル。

『やったぞゲコガシラ!』

『ゲロォ!』

……軍配が上がったのは、カルムだった。

『……っ』

その時、カルムととことん善戦したセレナにだってメガシンカを得る資格は十分あったハズである。

だが当時はメガシンカに必要なキーストーンの絶対数が少なかったために、どちらか一方しかメガシンカを手に入れられなかった状況。

その際、敗者たる彼女は、カルムの代わりに苦汁を舐めるしかなかったのだ。

…………

……

「……お隣さん」

と、セレナは突然そう溢した。

「あっ、確かそれカルムのことだったよね」

「……はい」
 ▼ 943 mTQB7XkZdk 17/07/29 02:55:43 ID:cZ1ysZEQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
コルニの指摘にセレナは頷く。

"お隣さん"。

どうやらカルムは、彼女にそう呼ばれているらしい。

あだ名の由来の想像は容易だ。

単純に、カルムとセレナの実家がお隣同士だからである。

「……やっぱり、今でも彼のことが気になるの?」

と、コルニがここで唐突に意味深な問いを投げ掛ける。

しかし。

「…………」

対するセレナは、彼女の方を数秒流し目で見た後。

瞬間、苦い表情を作って黙りこくってしまった。

「……ごめんなさい、こんなこと聞くべきじゃ無かった」

コルニは、自身が放った質問が度の過ぎた詮索であることを悟るとすぐに彼女に謝罪し、自らの口をつぐむ。

「コルニさんは……悪くないです」

「結局"アレ"は……私の選択だったから」
 ▼ 944 ゴーム@ダークメモリ 17/07/29 08:05:36 ID:1CX3zdy2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
んー?
支援
 ▼ 945 オー@ローラースケート 17/07/29 10:51:57 ID:i3clbOTY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なに?セレナとカルムも?
いいっすね^〜
 ▼ 946 mTQB7XkZdk 17/07/30 06:05:34 ID:DCokDvI. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「ニンフィア、"ハイパーボイス"!」

「ふぃあ!」

観客席のセレナが"お隣さん"と呼ぶこの少年・カルム。

彼は今も、雲の上の戦場で熾烈な戦いを繰り広げていた。

戦火の最中、青空の中で響き渡るは妖精の放った大轟音・"ハイパーボイス"。

殺傷力を持つその音波はニンフィアの前方へと広がっていき、ボスゴドラ達を襲う。

「ゴオッ」

動きの鈍重なボスゴドラは、これを避けることが出来なかった。

だが、"はがね"のボスゴドラにはどの道この攻撃は通用しない。

カルムの狙いはあくまで"フェアリー"が弱点のゾロアークだ。

全体攻撃の"ハイパーボイス"を使って、何とか彼にダメージを与えようと試みる。

しかし。

「ゾロッ!」

ゾロアークの身のこなしは極めて軽やか。
 ▼ 947 mTQB7XkZdk 17/07/30 06:08:06 ID:DCokDvI. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
普通は見えないハズの音波さえもしっかり捉え、音をも越える速さで姿を消し、"ハイパーボイス"を難なくかわしてしまう。

「ふぃぁぁっ」

"当たりさえすれば"。

そんな焦燥感に駆られ始め、若干の苛立ちを見せるニンフィア。

「落ち着け、ニンフィア」

「焦らなければ攻撃は当たる」

するとカルムは、そんなニンフィアの気持ちを和らげるべく少し彼女にフォローを入れた。

優しく言葉をかけ、決して焦ったりしないように諭す。

「……ふぃあ!」

どうやらニンフィアの平常心は保てたようだ。

「よし……」

トレーナーの資質というのは、繰り出す戦略や、戦いに込める熱意だけに収まらない。

その時その時のポケモンのコンディションを瞬時に把握し、それを的確にケアできるかどうかもまた、同様に問われる。

……とは言うものの、このままジリ貧ではそのケアも徐々に効力を失っていく。

なので、そうなる前に早急に対策を講じらなければならない。
 ▼ 948 mTQB7XkZdk 17/07/30 06:17:48 ID:DCokDvI. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし……。

(どうする……)

(あのゾロアークは化け物レベルですばしっこい)

(あいつに攻撃を当てるのは正直至難の技だぞ)

……対策を講じるつもりが、頭に浮かぶのはこんな弱音ばかり。

(……っ)

これでは何時まで経っても前に進めないと踏んだカルム。

(……今は寧ろ、無心になってひたすら攻め立てた方が良いのかも知れない)

(技巧を凝らすのはそれからで構わないか)

……今は策をじっくり練るよりも、より攻めに重きを置くべし。

カルムはそう判断した。

すると彼は、すぐさまニンフィアに呼びかけ。

「ニンフィア、もう一度"ハイパーボイス"!」

「ふぃあ!」

再び"ハイパーボイス"を、ゾロアーク達にお見舞いした。
 ▼ 949 スモウム@しんかいのウロコ 17/07/30 07:17:58 ID:mmrEOIrw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 950 ケンカニ@ホイップポップ 17/07/30 13:05:23 ID:09bKFfJ. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 951 mTQB7XkZdk 17/08/01 02:57:20 ID:kFzQDxlM [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゴォッ!?」

「ゾロッ」

やはり、攻撃は鈍足なボスゴドラにしか当たらなかった。

ここは本命のゾロアークに命中させたいところだが、如何せん上手くいかない。

妖精の咆哮は、ゾロアークには軽々避けられてしまう。

「まだまだ!」

「ニンフィア、間髪入れずに"ハイパーボイス"!」

「ふぃあ!」

しかしそれでも、カルムの攻めの手が緩まることは無かった。

寧ろ、その手数はどんどん増えていっている。

度重なる轟音に、周りの雲は微かながらも揺れていた。

雄大なる白きその塊は、音に押し出されるようにして歪み、離散していく。

「ゾッ……!?」

音波をかわすゾロアーク、しかしその表情は若干苦しそうであった。

大音量の"ハイパーボイス"が、ゾロアークの耳を強く刺激しているのである。
 ▼ 952 mTQB7XkZdk 17/08/01 02:57:49 ID:kFzQDxlM [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
確かにハイパーボイスは、あくまでも強力な音波を相手に飛ばして攻撃する技。

だが、ハイパーボイスに伴って発生する爆音もまた、相手にダメージを与える立派な武器となる。

単発では大した威力にはならなくとも、このようにハイパーボイスを連射していけば、音は共鳴し、重なり。

そしてやがては、この雲をも揺るがす力強き歌声と化す。

「ゾロォォォ……!」

歌に化け狐は狼狽え、怯む。

押し寄せる風圧に怖れ戦く。

「くっ……ゾロアーク、"ナイトバースト"で振り払え!」

「ゾロォ!」

と、Nはここで反撃指令。

ゾロアークは闇夜の力をたぎらせ、暗黒の波導を周囲に放った。

場を満たす邪のエネルギーは、ハイパーボイスが持たらす絶大な威力の音響とぶつかりあい、反発し合う。

その瞬間を皮切りに、音は次第に鳴り止んでいき……。

「……ゾロォォッ!!」

……やがてゾロアークの叫びと共に、それは完全にかき消えてしまった。
 ▼ 953 mTQB7XkZdk 17/08/01 02:58:31 ID:kFzQDxlM [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが。

「今だエーフィ、"マジカルシャイン"!!」

「フィォ!!」

ハイパーボイスの処理に集中していたゾロアーク、その間隙を突いてレッドが仕掛けた。

エーフィが放つ妖精の極光・"マジカルシャイン"。

これもまたハイパーボイスと同じで、相手全体を対象にとる技。

広範囲に及ぶフラッシュ攻撃が敵二匹を強く照らしつけ、その双眸を光を以て焼いていく。

「ゴォッ……!?」

例によって鈍いボスゴドラはこれを受け、あまりの眩しさに目を開けらていられない。

そして。

「ゾッ……!?」

今度の攻撃は、本丸のゾロアークにも……。

「____ゾロォォァァァッ!?」

……見事、命中したのだった。

「ゾロアーク!?」
 ▼ 954 ロベルト@ライトストーン 17/08/01 03:01:39 ID:6g4cqZjU NGネーム登録 NGID登録 報告
ボスゴドラ仕事しろ
 ▼ 955 マズン@おとどけもの 17/08/01 03:04:53 ID:ZxXTPFjY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このss、ホントにこのスレで完結出来るのか……?
 ▼ 956 ーピッグ@シルクのスカーフ 17/08/01 05:48:51 ID:kiINupc. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>955
できないでしょう…

さえ
 ▼ 957 ナップ@こわもてプレート 17/08/01 09:08:34 ID:rX6bg/Bk NGネーム登録 NGID登録 報告
>>954
それら
 ▼ 958 グザグマ@こおりのジュエル 17/08/01 21:45:24 ID:7EINjkBY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 959 リトドン@しらたま 17/08/03 10:30:57 ID:bkJkutlU NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん!
 ▼ 960 チャモ@きいろのバンダナ 17/08/04 02:26:51 ID:fDVJwUHM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これもう次スレ行ってる?
 ▼ 961 ラエナ@トロピカルメール 17/08/04 02:31:58 ID:iPKXiX7s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ろん
 ▼ 962 ノプス@エレクトロメモリ 17/08/04 18:47:05 ID:BYOCmvsI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 963 ゲキ@ディアンシナイト 17/08/05 11:42:48 ID:rJZIPKDE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 964 ボミー@ナゾのみ 17/08/05 23:58:30 ID:38/OcBpo NGネーム登録 NGID登録 報告
しえそ
 ▼ 965 ーイーカ@いしょうトランク 17/08/06 19:49:54 ID:Dgnm7v6U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
焦らしプレイやめちくり〜
 ▼ 966 ャーレム@キトサン 17/08/07 17:37:38 ID:DlaQIIW2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 967 mTQB7XkZdk 17/08/08 02:32:43 ID:OGMZ2sHE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ニンフィアに意識を集中し過ぎたN。

それが原因でエーフィに対する警戒を欠き、彼にまんまと攻撃を当てるチャンスを与えてしまった。

だが、それだけのミスなら、相棒のボスゴドラがゾロアークを庇うことでカバーできただろう。

しかしそのボスゴドラも、全体攻撃のマジカルシャインによって一瞬足止めを食らっていた。

あのマジカルシャインは、まさに回避不能の一撃とだったわけである。

「よし、良いぞエーフィ!」

「フィォ!」

活躍を見せるエーフィを、レッドは喝采する。

一方で、マジカルシャインの聖なる光に照らされ大きなダメージを受けたゾロアークは体勢を崩し、ガラス面へと墜落した。

「ゾッ……ゾロァッ……」

光は邪気を払う。

ゾロアークは"あく"タイプのポケモンであり、その内に秘めたる闇は極めて膨大だ。

それ故に、ひと度強き光に晒されれば、ゾロアークはその闇を滅され、全身を焼かれるような痛みに襲われることとなる。

妖精が発した妙技は効果抜群の一手となりて、ゾロアークを強襲したのだった。

「……ゾロォ」
 ▼ 968 mTQB7XkZdk 17/08/08 02:33:30 ID:OGMZ2sHE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
倒れたゾロアークは一頻り悶えた後、やがて魂が抜けたように脱力し、動かなくなってしまう。

ふとNがその様子を見下ろすと、ゾロアークはくるくる目を回していた。

それは、ポケモンが気絶した際に見せるサインである。

この瞬間、確定するのは。

「ゾロアーク、戦闘不能!」

そのポケモンの瀕死、そして敗北。

「ゾロアーク……!」

その名を口にしたNは、ゾロアークの奮闘も虚しくこのような結果になってしまったことを心底悔やんだ。

帽子のツバの影に覆われし虚ろな瞳は今、微かながらも怒りに揺れている。

しかしその矛先は、相打つエーフィには向けられていない。

この激情は、Nが自身に対して湧かせている。

自分の愛する"トモダチ"に、負けの苦痛を与えてしまったと。

彼が持つ優しさ故の憤怒だ。

「……ゆっくり休んでくれ」

この震える感情を、Nは右手に握るボールにゾロアークごと押し込める。
 ▼ 969 mTQB7XkZdk 17/08/08 02:34:27 ID:OGMZ2sHE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼に突き刺さった罪悪の矢。

目に見えないそれは、Nの動きを一瞬止めるも。

「……頼むよ」

貫かれたNに、その罪悪をも越える精神力を分け与える。

次に彼が振りかぶったボールは、前以上に気迫が込められていた。

Nの最後の砦であり、頼みの綱。

そのポケモンの名は。

「"タブンネ"!」

……先程までゾロアークが変化していたポケモン、"タブンネ"。

だが今回は紛い物ではなく、本物のタブンネだ。

「タブゥ!」

タブンネが本来持つ柔らかくも儚げな笑顔で、彼女は天使の如く雲海に降臨する。

彼女を倒すことで得られる経験は凄まじく、討伐に見事成功した暁には絶大なパワーアップが見込めるだろう。

だが、心優しきNはそれを良しとしない。

護身や正式なポケモンバトルでポケモン同士を戦わせることは許容できるようになったが、利己的な狩りを目的とした行為には未だ強い嫌悪感を示す。
 ▼ 970 ガミミロップ@よごれたハンカチ 17/08/08 05:47:50 ID:hyrsc.Cs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 971 ルトロス@ミズZ 17/08/08 18:17:49 ID:5ZWyBMlY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やべぇ、俺Nにボコボコにされるじゃん
 ▼ 972 mTQB7XkZdk 17/08/09 05:07:55 ID:Ws/ZnQeY [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
だからこそNは、経験目的で狙われがちなタブンネをバトルポケモンに選んだ。

Nのタブンネが並み居る強敵達を倒し英雄となれば、彼女は同胞の生きる希望になれると考えたからである。

それは逆襲とも取れるが、例えそうだと言われたとしても、Nには貫徹する覚悟がある。

Nは忘れない。

タブンネ達が舐めさせられてきた苦汁と、そして流してきた涙を。

その想いは、やがて力へと昇華する。

「いくよ、タブンネ」

「タブッ!」

瞬間、Nが首に提げているペンダントが突然光り出した。

「メガシンカ……ッ!」

Nの放った言葉が、タブンネの中に潜在している進化の遺伝子を呼び覚ます。

力が引き出される毎に、その光は比例して強さを増していき。

タブンネの姿形を、変えていく。

ピンクだった体毛は、純白の美しきドレスのような毛並みに。

瞳はより一層慈愛に溢れ、天使の如く微笑みは見る者の心を更に癒す。
 ▼ 973 mTQB7XkZdk 17/08/09 05:08:22 ID:Ws/ZnQeY [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
狩られる者たる彼女は、狩る者共を恨みはしない。

彼女の優しさは、尚も皆平等に分け与えられる。

……が、ひと度彼女に"戦う意志"を与えれば、狩人達は凄惨な返り討ちに合うだろう。

圧倒的な力をメガシンカにより手にした今、彼女の威光に逆らえる者は誰一人として居ない。

"メガタブンネ"は、慈悲と引き換えに屈伏を求める。

「……これが、彼のメガシンカか」

「フィォォ」

メガシンカは、人とポケモンの絆が成す技。

これを使えるということは、それ即ちその者とポケモンの友情が絶対であることを意味している。

Nもまた、絆を信じる者なのだ。

その素性こそ未だ謎に包まれてはいるが、そこだけは揺るがない事実である。

レッドは、"そういうトレーナー"に会う度に心が躍る。

ポケモンとの信頼関係が厚いトレーナーは強い。

レッドはそのことを、"痛感"により知っている。

そして、強いトレーナーと戦うことを望むのはトレーナーとしての性だ。
 ▼ 974 mTQB7XkZdk 17/08/09 05:09:25 ID:Ws/ZnQeY [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
だから彼の腕は鳴る、疼く。

「……狼狽えるな、エーフィ」

「フィオ!」

相手がメガシンカポケモンならば尚更だ。

レッドからしてみれば全力を賭ける甲斐があるというもの。

かつての雪山では得られなかった興奮を、彼はここぞとばかりに堪能する。

「タブンネに"サイコキネシス"!」

「フィオ!」

エスパーが持たらす超常現象は、この技で極まるとされる。

"サイコキネシス"は至高の超能力奥義。

術にかかった者の体を自在に操作し壁や床などに叩き付け、やがて強力な念動波で止めを刺す。

「"かみなり"で迎え撃つんだ」

「タブゥ」

一方でNのタブンネは、"かみなり"による読んで字の如くの電撃でこれの相殺を図った。

迫り来る念力の波を、雷が捉える。
 ▼ 975 ンタイン@ライドギア 17/08/09 06:00:37 ID:0L6HXlNA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 976 mTQB7XkZdk 17/08/10 01:59:23 ID:ynrKeWzg [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
天を走る黄色い稲妻。

すると電撃は念力との接触を果たしたのか、空中のその地点で一時停止した。

そして瞬間、雷は歪み、四方へと分散していく。

"サイコキネシス"が、"かみなり"をねじ曲げているのだ。

エーフィが誇る超能力は、メガシンカしたタブンネが放った高威力の技とも拮抗する力を有している。

だが、タブンネとてここで彼に引けを取るわけにはいかない。

自分が倒されてしまえば、Nに残されたポケモンはもう居なくなってしまう。

Nにとってタブンネは、彼が崖っぷちで最後に握っている命綱のような存在なのだから。

その綱が千切れた時が、Nの命運の尽きる時。

タブンネは、是が非でも全力を出さざるを得ない。

もう後は無いのだ。

「タブゥゥゥ!!」

タブンネは更に力を込める。

その表情には、先程までの余裕など欠片にも残っていなかった。

彼女は全神経を集中させ、雷の放出のみにありったけの力を注ぎ、何とか"サイコキネシス"に打ち勝とうと奮闘する。
 ▼ 977 mTQB7XkZdk 17/08/10 02:00:03 ID:ynrKeWzg [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
やがて"かみなり"は、凄絶な爆音を伴うように。

至近距離から迫るその轟音は、最早それ単体で既に破壊する力を持っている。

聴覚の奪取は勿論のこと、この頑丈なガラス面の空中床にもヒビが入る程の威力だ。

その雷は周辺の雲にも伝わっているようで、フィールド全体が電気を帯びるまでに拡散していく。

こうして規模を増やした"かみなり"は、徐々に"サイコキネシス"を圧し始めた。

「フィオッ……!?」

「まずい!?」

これ程までに増大した電撃をまともに受ければ、エーフィはとんでもないダメージを受けてしまうだろう。

「レッド!」

そんなレッドのピンチに、パートナーのカルムが今すぐ駆けつけようとする。

だが、その行く手を阻むのはボスゴドラだった。

「やっちゃってボスゴドラっ!」

「ニンフィアに"アイアンヘッド"!」

「ゴォッ!」

ボスゴドラはその体躯を豪快に揺らし、鈍足ながらも力強い突進でニンフィアに襲いかかる。
 ▼ 978 mTQB7XkZdk 17/08/10 02:06:53 ID:ynrKeWzg [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「くっ……避けろニンフィア!」

「ふぃあっ!」

エーフィのもとへ行きたいニンフィア。

しかしボスゴドラの妨害は、そう簡単には掻い潜れそうにない。

「まだまだ!」

「ボスゴドラ、"もろはのずつき"!」

「ゴォォォォァッ!!」

今度は、岩石を纏って突き進む"もろはのずつき"だ。

その威力は絶大だが、代償としてボスゴドラ自身も接触時にダメージを受けてしまう。

まさに、諸刃と呼ぶに相応しい大技だ。

だが、どんなに威力が高い技が来ようとも、避けてしまえば皆同じ。

カルムは、バトルにおける基本戦術である"回避"を重視した。

「避け続けろ!」

「ふぃぁ!」

しかし、避けてばかりでは試合は展開できない。
 ▼ 979 ガオニゴーリ@カクトウZ 17/08/10 06:04:28 ID:0SLxWYg6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 980 ネズミ@ブーカのみ 17/08/11 02:09:00 ID:kfmYjD2U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そろそろ新スレ建てたほうが…
 ▼ 981 メハダー@ルアーボール 17/08/11 06:40:38 ID:AZf91UYI NGネーム登録 NGID登録 報告
>>980
まぁそうだな
 ▼ 982 ポエラー@メダルボックス 17/08/11 21:07:45 ID:J60j1xjo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もう埋まるぞ
 ▼ 983 mTQB7XkZdk 17/08/13 04:06:17 ID:ftU59auk [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ボスゴドラ、更に"アイアンヘッド"!」

回避の次の刻には、既にボスゴドラが襲撃している。

空を裂き、風を生むボスゴドラの突進攻撃。

その走行速度は、技を撃つ毎に増している。

(ダメだ、この体勢から更なる回避は出来ない!)

今ニンフィアは、先程の"もろはのずつき"から逃れたばかりで宙にまだ舞っている状態。

なので一度着地しなければ、当たり前だが再度飛び立つことは出来ない。

だがボスゴドラの猛進は、ニンフィアが着地するよりも先に彼女を撃滅することだろう。

今のボスゴドラは、そうすることが出来るだけの速さで走っている。

(ならば……!)

回避がダメなら相殺するしかない。

しかし、何で迎え撃てば良い?

そう考えた時、カルムに答えは無かった。

(……くそっ)

(打つ手が……ない)
 ▼ 984 mTQB7XkZdk 17/08/13 04:07:51 ID:ftU59auk [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ニンフィアの"フェアリー"主体の技構成では、"はがね"で且つ高耐久を誇るボスゴドラを止めることは出来ない。

最高威力の"ハイパーボイス"でも、ボスゴドラは軽々はね除けてしまうだろう。

回避、迎撃、この二つが実行不可能となると、残された手段は。

(仕方ねぇ)

身に迫ろうとする"敗北"を背に、後退を許されないカルムは決断する。

「レッド!」

カルムは叫んだ。

"助け"を。

「!」

その声を聞いて、レッドは振り向く。

そして。

「エーフィ、ボスゴドラに"どろかけ"!」

「大至急だ!」

「フィオ!」

救援要請は、届いた。
 ▼ 985 mTQB7XkZdk 17/08/13 04:09:02 ID:ftU59auk [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
エーフィはレッドの指示に従い、それまで目を向けていたタブンネからボスゴドラへと標的を変更。

虚空から泥を生成し、ボスゴドラへ投擲する。

カタパルトから射出されたが如く放物線を描いて飛んだ泥は、凄まじい速度で走るボスゴドラの数メートル先を狙う。

というか、そこはニンフィアの目の前だった。

ニンフィアの視界に泥が落ちたその時。

彼女の眼前の敵は、その泥に目を潰された。

「ゴォォォッ!!?」

鋼の怪物は、奪われた視力を即座に求める。

だが、失われた物は帰ってこない。

彼はその恐怖に戦き、一瞬動きを止めた。

それが、ニンフィアにとってまたと無い退避のチャンスであった。

「今だ!」

「戻れニンフィア!」

「ふぃあっ!」

刹那の好機に、カルムは手を伸ばす。
 ▼ 986 mTQB7XkZdk 17/08/13 04:14:08 ID:ftU59auk [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
翌日の更新は次スレで行います。

ラストと言っておいてなんですが、あと少しですのでどうか最後までお願いいたします。
 ▼ 987 ジアイス@ローラースケート 17/08/13 07:43:32 ID:esTmZSrs NGネーム登録 NGID登録 報告
甲乙
 ▼ 988 クタン@ミュウツナイトX 17/08/13 11:02:24 ID:3I8mWqmc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
 ▼ 989 イボルト@ボスゴドラナイト 17/08/14 01:10:34 ID:u5Wgse9g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィアの滞空時間長いな
 ▼ 990 マナッツ@いんせき 17/08/14 01:16:20 ID:xQca7YXM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ボスゴドラ、ボディーパージでも積んだのか?

さっきまであんなに鈍重だったのに
 ▼ 991 ラマネロ@あおぞらプレート 17/08/14 09:11:45 ID:3C4.JoII NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 992 Hope◆SCP948ZBFs 17/08/15 13:39:07 ID:XrUuTPdQ NGネーム登録 NGID登録 報告
埋め
 ▼ 993 ンリュウ@ロックメモリ 17/08/15 17:55:54 ID:HW0IHLww NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
次スレのリンク貼ってくれよぉ
 ▼ 994 ガディアンシー@オボンのみ 17/08/15 18:39:08 ID:oNP/zO6o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
勝手に次スレリンク失礼

http://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=653705

多分あってると思う
 ▼ 995 mTQB7XkZdk 17/08/16 03:45:10 ID:2IBzt2t2 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>994
ありがとうございます。
本当は私がやるべきだったのですが忘れてしまってました。

申し訳ありません。
このページは検索エンジン向けページです。
閲覧&書き込みは下URLよりお願いします。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=554297
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